(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】充電器用制御装置および充電設備
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20230209BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20230209BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
H02J7/34 K
H02J7/34 C
H02J7/34 B
H02J1/00 304H
H02H7/18
(21)【出願番号】P 2019144894
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢本 大也
(72)【発明者】
【氏名】細川 雄治
(72)【発明者】
【氏名】片山 幸弘
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-079983(JP,A)
【文献】特開平09-271147(JP,A)
【文献】特開2005-312134(JP,A)
【文献】特開2007-028837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 1/00
H02H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の直流線路に接続された第1の蓄電池および第1の負荷装置に直流電力を供給する第1の充電器と、第2の直流線路に接続された第2の蓄電池および第2の負荷装置に直流電力を供給する第2の充電器と、前記第1または第2の充電器の代替として第1または第2の電路を介して前記第1または第2の直流線路に直流電力を供給する第3の充電器と、
前記第1,第2および第3の充電器と前記第1および第2の直流線路との接続関係を切り替える切替回路と、を有する充電設備から、前記第1の直流線路における第1の電圧と、前記第2の直流線路における第2の電圧と、を受信するデータ入力部と、
前記第1の直流線路または前記第2の直流線路のうち前記第3の充電器が接続される側に対応する前記第1または前記第2の電圧と、
所定の基準電圧との差分値を算出する電圧比較部と、
前記電圧比較部における比較結果に基づいて
前記第3の充電器の出力電圧を設定する出力設定部と、
前記切替回路の状態に応じて、前記第1または第2の直流線路のうち前記第3の充電器が直流電力を出力すべき直流線路を判定する接続判定部と、を備え
、
前記切替回路は、
前記第1の充電器と前記第1の直流線路との接続を開閉する第1の開閉器と、
前記第1の直流線路と前記第1の電路の一端との接続を開閉する第2の開閉器と、
前記第3の充電器と前記第1の電路の他端との接続を開閉する第3の開閉器と、
前記第3の充電器と前記第2の電路の一端との接続を開閉する第4の開閉器と、
前記第2の充電器と前記第2の直流線路との接続を開閉する第5の開閉器と、
前記第2の直流線路と前記第2の電路の他端との接続を開閉する第6の開閉器と、を備え、
前記第1の開閉器と前記第2の開閉器とは、開閉状態が相補的に切り替わるように構成され、
前記第3の開閉器と前記第4の開閉器とは、同時に閉状態にならないように構成され、
前記第5の開閉器と前記第6の開閉器とは、開閉状態が相補的に切り替わるように構成され、
前記接続判定部は、
前記第2の開閉器および前記第3の開閉器が共に閉状態であるときに第1の所定値になり、それ以外の場合に第2の所定値になる第1の論理信号を生成する機能と、
前記第4の開閉器および前記第6の開閉器が共に閉状態であるときに前記第1の所定値になり、それ以外の場合に前記第2の所定値になる第2の論理信号と出力する機能と、
前記第1の論理信号が前記第1の所定値であり、かつ、前記第2の論理信号が前記第2の所定値である場合に、前記第1の直流線路に前記第3の充電器が直流電力を出力可能であると判定する第1の接続判定部と、
前記第1の論理信号が前記第2の所定値であり、かつ、前記第2の論理信号が前記第1の所定値である場合に、前記第2の直流線路に前記第3の充電器が直流電力を出力可能であると判定する第2の接続判定部と、を備える
ことを特徴とする充電器用制御装置。
【請求項2】
前記第1および第2の充電器は、共に
前記基準電圧を出力するものであり、
前記出力設定部は、
前記出力電圧を前記基準電圧に設定する初期値設定部と、
前記出力電圧が前記基準電圧に設定された状態における前記基準電圧と前記第1または前記第2の電圧との差分値と、前記基準電圧と、の合計値を前記出力電圧に再設定する再設定部と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の充電器用制御装置。
【請求項3】
前記第1または前記第2の電圧の過渡的な電圧変動による、前記出力電圧の再設定を抑制する機能をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の充電器用制御装置。
【請求項4】
第1の直流線路に接続された第1の蓄電池および第1の負荷装置に直流電力を供給する第1の充電器と、
第2の直流線路に接続された第2の蓄電池および第2の負荷装置に直流電力を供給する第2の充電器と、
前記第1の充電器または前記第2の充電器の代替として第1の電路または第2の電路を介して前記第1の直流線路または前記第2の直流線路に直流電力を供給する第3の充電器と、
前記第1,第2および第3の充電器と前記第1および第2の直流線路との接続関係を切り替える切替回路と、
前記第3の充電器を制御する充電器用制御装置と、
を備え、
前記充電器用制御装置は、
前記第1の直流線路における第1の電圧と、前記第2の直流線路における第2の電圧と、を受信するデータ入力部と、
前記第1の直流線路または前記第2の直流線路のうち前記第3の充電器が接続される側に対応する前記第1の電圧または前記第2の電圧に基づいて前記第3の充電器の出力電圧を制御する出力設定部と、
前記切替回路の状態に応じて、前記第1または第2の直流線路のうち前記第3の充電器が直流電力を出力すべき直流線路を判定する接続判定部と、を備え
、
前記切替回路は、
前記第1の充電器と前記第1の直流線路との接続を開閉する第1の開閉器と、
前記第1の直流線路と前記第1の電路の一端との接続を開閉する第2の開閉器と、
前記第3の充電器と前記第1の電路の他端との接続を開閉する第3の開閉器と、
前記第3の充電器と前記第2の電路の一端との接続を開閉する第4の開閉器と、
前記第2の充電器と前記第2の直流線路との接続を開閉する第5の開閉器と、
前記第2の直流線路と前記第2の電路の他端との接続を開閉する第6の開閉器と、を備え、
前記第1の開閉器と前記第2の開閉器とは、開閉状態が相補的に切り替わるように構成され、
前記第3の開閉器と前記第4の開閉器とは、同時に閉状態にならないように構成され、
前記第5の開閉器と前記第6の開閉器とは、開閉状態が相補的に切り替わるように構成され、
前記接続判定部は、
前記第2の開閉器および前記第3の開閉器が共に閉状態であるときに第1の所定値になり、それ以外の場合に第2の所定値になる第1の論理信号を生成する機能と、
前記第4の開閉器および前記第6の開閉器が共に閉状態であるときに前記第1の所定値になり、それ以外の場合に前記第2の所定値になる第2の論理信号と出力する機能と、
前記第1の論理信号が前記第1の所定値であり、かつ、前記第2の論理信号が前記第2の所定値である場合に、前記第1の直流線路に前記第3の充電器が直流電力を出力可能であると判定する第1の接続判定部と、
前記第1の論理信号が前記第2の所定値であり、かつ、前記第2の論理信号が前記第1の所定値である場合に、前記第2の直流線路に前記第3の充電器が直流電力を出力可能であると判定する第2の接続判定部と、を備える
ことを特徴とする充電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器用制御装置および充電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、下記特許文献1の要約には、「[構成]常用充電器4側の蓄電池18の出口に電路インピーダンス補償用インピーダンス16:R3とこれを通常時に短絡する電路インピーダンス補償用インピーダンス16短絡用の電磁開閉器10を設け、予備充電器3での運用時には常用充電器4の予備充電器3側の受電遮断器8の閉信号23により、電路インピーダンス補償用インピーダンス16の短絡用の電磁開閉器10を開く。常用充電器4の予備充電器3側の受電遮断器8の閉信号23により予備充電器3の出力電圧を上げる。[効果]予備充電器が配置的に離れた充電器,蓄電池系をバックアップする時に当該蓄電池からの放電量を低減し、蓄電池の放電を抑制できる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、予備充電器から負荷に至る電路における電圧降下は、負荷に流れる電流に応じて変化する。従って、特許文献1のように、補償用インピーダンスの接続状態を単に切り替える方法では、予備充電器から給電先となる蓄電池および負荷側での電圧が安定せず、結果として蓄電池からの放電を抑制できない場合が生じる。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、負荷側へ安定した電圧を供給できる充電器用制御装置および充電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の充電器用制御装置は、第1の直流線路に接続された第1の蓄電池および第1の負荷装置に直流電力を供給する第1の充電器と、第2の直流線路に接続された第2の蓄電池および第2の負荷装置に直流電力を供給する第2の充電器と、前記第1または第2の充電器の代替として第1または第2の電路を介して前記第1または第2の直流線路に直流電力を供給する第3の充電器と、前記第1,第2および第3の充電器と前記第1および第2の直流線路との接続関係を切り替える切替回路と、を有する充電設備から、前記第1の直流線路における第1の電圧と、前記第2の直流線路における第2の電圧と、を受信するデータ入力部と、前記第1の直流線路または前記第2の直流線路のうち前記第3の充電器が接続される側に対応する前記第1または前記第2の電圧と、所定の基準電圧との差分値を算出する電圧比較部と、前記電圧比較部における比較結果に基づいて前記第3の充電器の出力電圧を設定する出力設定部と、前記切替回路の状態に応じて、前記第1または第2の直流線路のうち前記第3の充電器が直流電力を出力すべき直流線路を判定する接続判定部と、を備え、前記切替回路は、前記第1の充電器と前記第1の直流線路との接続を開閉する第1の開閉器と、前記第1の直流線路と前記第1の電路の一端との接続を開閉する第2の開閉器と、前記第3の充電器と前記第1の電路の他端との接続を開閉する第3の開閉器と、前記第3の充電器と前記第2の電路の一端との接続を開閉する第4の開閉器と、前記第2の充電器と前記第2の直流線路との接続を開閉する第5の開閉器と、前記第2の直流線路と前記第2の電路の他端との接続を開閉する第6の開閉器と、を備え、前記第1の開閉器と前記第2の開閉器とは、開閉状態が相補的に切り替わるように構成され、前記第3の開閉器と前記第4の開閉器とは、同時に閉状態にならないように構成され、前記第5の開閉器と前記第6の開閉器とは、開閉状態が相補的に切り替わるように構成され、前記接続判定部は、前記第2の開閉器および前記第3の開閉器が共に閉状態であるときに第1の所定値になり、それ以外の場合に第2の所定値になる第1の論理信号を生成する機能と、前記第4の開閉器および前記第6の開閉器が共に閉状態であるときに前記第1の所定値になり、それ以外の場合に前記第2の所定値になる第2の論理信号と出力する機能と、前記第1の論理信号が前記第1の所定値であり、かつ、前記第2の論理信号が前記第2の所定値である場合に、前記第1の直流線路に前記第3の充電器が直流電力を出力可能であると判定する第1の接続判定部と、前記第1の論理信号が前記第2の所定値であり、かつ、前記第2の論理信号が前記第1の所定値である場合に、前記第2の直流線路に前記第3の充電器が直流電力を出力可能であると判定する第2の接続判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、予備充電器から負荷側へ安定した電圧を供給することで、蓄電池からの放電を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態による直流配電システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈実施形態の構成〉
図1は、本発明の一実施形態による直流配電システム1のブロック図である。
ここで、直流配電システム1は、交流系統(図示せず)から受電した交流電力を直流電力に変換し、負荷装置82,84に供給するシステムである。直流配電システム1は、本設充電器12,14と、予備充電器16と、制御装置20と、蓄電池32,34と、切替回路40と、電圧検出器52,54と、線路62,64と、直流母線72,74と、を備えている。
【0009】
本設充電器12(第1の充電器)は、蓄電池32を充電しつつ直流母線72を介して負荷装置82に直流電力を供給する。また、本設充電器14(第2の充電器)は、蓄電池34を充電しつつ直流母線74を介して負荷装置84に直流電力を供給する。本設充電器12,14は地理的に離れた場所に設置され、そこからそれぞれの負荷装置82,84に給電する。
【0010】
予備充電器16(第3の充電器)は、何れかの本設充電器12,14のメンテナンス時等において、その役割を代替するものである。そのため、予備充電器16は、本設充電器12,14のうち少なくとも一方からは地理的に離れた場所に設置されることになる。ケーブル62は、予備充電器16の付近から本設充電器12の付近に敷設されている。同様に、ケーブル64は、予備充電器16の付近から本設充電器14の付近に敷設されている。このため、ケーブル62,64の少なくとも一方のインピーダンスは無視できない値になり得る。以下、ケーブル62,64の電圧降下をΔVb,ΔVcと呼ぶ。
【0011】
切替回路40は、上述した各部の接続関係を切り替えるものであり、ユーザによって開閉操作される6台の遮断器42A,42B,44A,44B,46A,46Bを備えている。「遮断器42A,42B」、「遮断器44A,44B」、および「遮断器46A,46B」の開閉状態の組み合わせは、何れも「開,閉」「閉,開」「開,開」の三状態のうち何れかである。但し、「遮断器42A,42B」および「遮断器44A,44B」の開閉状態は、通常は連動して相補的に切り替えられる。
【0012】
切替回路40内の各遮断器は、開閉状態を接点信号として出力する。通信インタフェース58は、これら開閉状態を制御装置20に供給する。また、電圧検出器52,54は、直流母線72,74の電圧Vb,Vcを各々検出し、検出結果を制御装置20に供給する。
【0013】
制御装置20は、予備充電器16の出力電圧Vaを制御するものであり、データ入力部22と、接続判定部24と、電圧比較部26と、出力設定部28と、を備えている。データ入力部22は、上述した電圧検出器52,54および通信インタフェース58から、電圧Vb,Vcの検出結果と、切替回路40内の各遮断器の開閉状態とを受信する。
【0014】
接続判定部24は、データ入力部22が受信した情報に基づいて、予備充電器16が何れかの直流母線72,74に電力供給が可能であるか否か、また、可能である場合には、何れの直流母線72,74に電力供給が可能であるかを判定する。電圧比較部26は、基準電圧Vo(図示せず)と、電圧Vb,Vcとを比較する。ここで、基準電圧Voとは、本設充電器12,14が通常状態で出力する電圧であり、例えば、蓄電池32,34の浮動充電電圧である。出力設定部28は、電圧比較部26の比較結果等に基づいて、出力電圧Vaの指令値Va*を予備充電器16に出力する。
【0015】
図2は、制御装置20の要部のブロック図である。
図2において、接続判定部24は、AND回路102,104,112,114と、NOT回路106,116と、を備えている。また、接続判定部24には、データ入力部22(
図1参照)から、信号S42B,S44B,S46A,S46Bが入力される。ここで、信号S42B,S44B,S46A,S46Bは、それぞれ、遮断器42B,44B,46A,46Bが閉状態であれば“1”、開状態であれば“0”になる二値信号である。
【0016】
AND回路102は、信号S1(=S42B・S46A)を出力し、AND回路112は、信号S2(=S44B・S46B)を出力する。NOT回路106,116は、それぞれ、これらの反転信号を出力する。AND回路104は、信号S3(=S1・(-S2))(“-”は論理否定)を出力し、AND回路114は、信号S4(=S2・(-S1))を出力する。
【0017】
従って、予備充電器16(
図1参照)が直流母線72に電力供給可能な状態であれば、信号S3が“1”になり、信号S4が“0”になる。また、予備充電器16が直流母線74に電力供給可能な状態であれば、信号S4が“1”になり、信号S3が“0”になる。また、予備充電器16が直流母線72,74の何れにも電力供給できない場合、信号S3,S4が共に“0”になる。
【0018】
また、
図2において、電圧比較部26は、減算器122,124を備えている。減算器122は、信号S3が“1”である場合に、基準電圧Voと、直流母線72の電圧Vbとの差分値ΔV1(=Vo-Vb)を出力する。また、電圧比較回路124は、信号S4が“1”である場合に、基準電圧Voと、直流母線74の電圧Vcとの差分値ΔV2(=Vo-Vc)を出力する。
【0019】
出力設定部28は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを備えており、ROMには、CPUによって実行される制御プログラムや、各種データ等が格納されている。
図2において、出力設定部28の内部は、制御プログラム等によって実現される機能を、ブロックとして示している。
【0020】
すなわち、出力設定部28は、初期値設定部132と、再設定部134と、を備えている。初期値設定部132は、予備充電器16の指令値Va*の初期値を設定する。再設定部134は、初期設定後の差分値ΔV1またはΔV2に基づいて、指令値Va*を再設定する。
【0021】
ところで、各遮断器の正しい開閉状態が上述の信号S42B,S44B,S46A,S46Bとして、接続判定部24に供給されていれば、NOT回路106,116を除去してもよい。すなわち、AND回路104が信号S3=S1を出力し、AND回路114が信号S4=S2を出力するようにしてもよい。
【0022】
但し、何れかの遮断器に故障が生じた場合、信号S42B,S44B,S46A,S46Bが誤った開閉状態を示すことも考えられ、その場合に不適切な箇所に直流電圧が印加される可能性がある。そこで、本実施形態においては、信号S3,S4を生成する際に、NOT回路106,116の出力信号を関係させている。これにより、信号S3,S4の信頼性を高めることができ、不適切な箇所に直流電圧が印加される可能性を抑制している。
【0023】
〈実施形態の動作〉
次に、本実施形態の動作を説明する。
図1において、遮断器42A,44Aが共に閉状態であったとする。この状態では、遮断器42B,44Bが共に開状態になるため、接続判定部24(
図2参照)が出力する信号S3,S4は共に“0”になる。信号S3,S4が共に“0”になると、制御装置20は、直流母線72,74の何れにも電力供給しない旨を判定する。
【0024】
ここで、遮断器46Bが開状態の場合、ユーザは遮断器46Aを閉状態にすることができる。さらに、ユーザが遮断器42Bを閉状態にすると、AND回路102(
図2参照)の信号S1が“1”になり、AND回路112の信号S2が“0”になる。これにより、信号S3が“1”になる。
【0025】
信号S3が“1”になると、出力設定部28の初期値設定部132は、指令値Va
*を基準電圧Voに設定する。これにより、予備充電器16は、基準電圧Voに等しい電圧Vaを出力する。その後、若干の過渡状態の時間が経過すると、直流母線72の電圧Vbが安定する。減算器122(
図2参照)は、その状態で基準電圧Voと電圧Vbとの差分値ΔV1を出力する。この差分値ΔV1は、ケーブル62(
図1参照)における電圧降下ΔVbに等しい。次に、再設定部134は、指令値Va
*を、Vo+ΔV1に変更する。この新たな指令値Va
*に従って、予備充電器16の出力電圧Vaは、Vo+ΔV1に設定され、電圧Vbは基準電圧Voになる。出力設定部28は、これら一連の制御を電圧Vbが変動する度に実行する。
【0026】
ここで、電圧Vbの過渡的、瞬時的変動によって不必要に出力電圧Vaを変更することを防止するため、出力設定部28は、指令値Va*を変更するまでに適切な確認時間を設けるものとする。すなわち、出力設定部28は、電圧Vb等の過渡的な電圧変動による出力電圧Vaの不要な再設定を抑制する機能を備えている。
【0027】
以上、予備充電器16が直流母線72に電力供給する動作について説明したが、予備充電器16が直流母線74に電力供給する場合の動作も同様である。すなわち、ユーザが遮断器46Bを閉状態にし、遮断器44Bを閉状態にすると、AND回路102(
図2参照)の信号S1が“0”になり、AND回路112の信号S2が“1”になる。これにより、信号S4が“1”になる。
【0028】
次に、出力設定部28の初期値設定部132が指令値Va*を基準電圧Voに設定する。その後、若干の過渡状態の時間が経過した後、減算器124は、差分値ΔV2=Vo-Vcを出力する。これに応じて、再設定部134が、指令値Va*をVo+ΔV2に変更すると、予備充電器16の出力電圧Vaは、Vo+ΔV2に設定される。
【0029】
〈実施形態の効果〉
以上のように本実施形態の充電器用制御装置(20)は、第1の直流線路(72)における第1の電圧(Vb)と、第2の直流線路(74)における第2の電圧(Vc)と、を受信するデータ入力部(22)と、第1の直流線路(72)または第2の直流線路(74)のうち第3の充電器(16)が接続される側に対応する第1の電圧(Vb)または第2の電圧(Vc)に基づいて第3の充電器(16)の出力電圧(Va)を制御する出力設定部(28)と、を備える。
【0030】
これにより、直流電力の供給先における第1の電圧(Vb)または第2の電圧(Vc)に基づいて、第1または第2の蓄電池(32,34)からの放電量を適切に制御できる。換言すれば、第1および第2の電路(62,64)のケーブル長や、第1および第2の負荷装置(82,84)の負荷変動による影響を補償しつつ、第1および第2の直流線路(72,74)の電圧を安定させることができる。これにより、第1および第2の電路(62,64)のケーブル長が変更された場合にも、対応が容易である。
【0031】
また、第1および第2の電路(62,64)における電圧降下ΔVb,ΔVcを自動的に補償できるため、これら電圧降下が大きくなったとしても、さほど問題は生じない。これにより、所定の許容電流値を充足すれば、第1および第2の電路(62,64)として、細いケーブルを適用することができる。また、第3の充電器(16)の出力電圧(Va)は自動的に設定できるため、出力電圧(Va)を設定するユーザ操作の手間を省くことができ、第3の充電器(16)の運用を簡略化できる。
【0032】
また、充電器用制御装置(20)は、第1または第2の電圧(Vb,Vc)の過渡的な電圧変動による、出力電圧(Va)の再設定を抑制する機能をさらに備える。これにより、出力電圧(Va)不要な再設定を抑制することができる。
【0033】
また、第1および第2の充電器(12,14)は、共に所定の基準電圧(Vo)を出力するものであり、出力設定部(28)は、第3の充電器(16)の出力電圧(Va)を基準電圧(Vo)に設定する初期値設定部(132)と、出力電圧(Va)が基準電圧(Vo)に設定された状態における基準電圧(Vo)と第1または第2の電圧(Vb,Vc)との差分値(ΔV1,ΔV2)と、基準電圧(Vo)と、の合計値を出力電圧(Va)に再設定する再設定部(134)と、をさらに備える。
【0034】
また、充電設備(1)は、第1,第2および第3の充電器(12,14,16)と、第1および第2の直流線路(72,74)との接続関係を切り替える切替回路(40)をさらに備えるものであり、充電器用制御装置(20)は、切替回路(40)の状態に応じて、第1または第2の直流線路(72,74)のうち第3の充電器(16)が直流電力を出力すべき直流線路を判定する接続判定部(24)をさらに備える。
【0035】
これにより、第3の充電器(16)が直流電力を出力すべき直流線路を適切に判定し、安定した電圧での給電を可能とすることで、第1または第2の蓄電池(32,34)からの放電を適切に抑制できる。そして、制御対象となる系統を自動的に判断し自動電圧制御を行うことにより、第3の充電器(16)の使用時における運用エラーや、電圧の手動設定におけるヒューマンエラーを防止することができる。
【0036】
また、切替回路(40)は、第3の充電器(16)から第1の直流線路(72)に至る経路に挿入された第1群の開閉器(42B,46A)と、第3の充電器(16)から第2の直流線路(74)に至る経路に挿入された第2群の開閉器(44B,46B)と、を備え、接続判定部(24)は、第1群の開閉器(42B,46A)および第2群の開閉器(44B,46B)の双方の状態に基づいて、第3の充電器(16)から第1の直流線路(72)に直流電力を供給するか否かを判定する機能と、第1群の開閉器(42B,46A)および第2群の開閉器(44B,46B)の双方の状態に基づいて、第3の充電器(16)から第2の直流線路(74)に直流電力を供給するか否かを判定する機能と、を備える。
このように、第1群の開閉器(42B,46A)および第2群の開閉器(44B,46B)の双方の状態に基づいて、第3の充電器(16)が直流電力を供給するか否かを判定するため、判定の信頼性を高めることができる。
【0037】
また、切替回路(40)は、第1の充電器(12)と第1の直流線路(72)との接続を開閉する第1の開閉器(42A)と、第1の直流線路(72)と第1の電路(62)の一端との接続を開閉する第2の開閉器(42B)と、第3の充電器(16)と第1の電路(62)の他端との接続を開閉する第3の開閉器(46A)と、第3の充電器(16)と第2の電路(64)の一端との接続を開閉する第4の開閉器(46B)と、第2の充電器(14)と第2の直流線路(74)との接続を開閉する第5の開閉器(44A)と、第2の直流線路(74)と第2の電路(64)の他端との接続を開閉する第6の開閉器(44B)と、を備え、
第1の開閉器(42A)と第2の開閉器(42B)とは、開閉状態が相補的に切り替わるように構成され、第3の開閉器(46A)と第4の開閉器(46B)とは、同時に閉状態にならないように構成され、第5の開閉器(44A)と第6の開閉器(44B)とは、開閉状態が相補的に切り替わるように構成され、
接続判定部(24)は、第1の開閉器(42A)および第3の開閉器(46A)が共に閉状態であるときに第1の所定値(“1”)になり、それ以外の場合に第2の所定値(“0”)になる第1の論理信号(S1)を生成する機能と、第4の開閉器(46B)および第6の開閉器(44B)が共に閉状態であるときに第1の所定値(“1”)になり、それ以外の場合に第2の所定値(“0”)になる第2の論理信号(S2)と出力する機能と、第1の論理信号(S1)が第1の所定値(“1”)であり、かつ、第2の論理信号(S2)が第2の所定値(“0”)である場合に、第1の直流線路(72)に第3の充電器(16)が直流電力を出力可能であると判定する第1の接続判定部(104)と、第1の論理信号(S1)が第2の所定値(“0”)であり、かつ、第2の論理信号(S2)が第1の所定値(“1”)である場合に、第2の直流線路(74)に第3の充電器(16)が直流電力を出力可能であると判定する第2の接続判定部(114)と、を備える。
このように、切替回路(40)が複数の開閉器を備え、接続判定部(24)が、これら開閉器の状態に基づいて第3の充電器(16)が直流電力を供給するか否かを判定するため、判定の信頼性を高めることができる。
【0038】
〈変形例〉
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施形態の構成に他の構成を追加してもよく、構成の一部について他の構成に置換をすることも可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0039】
(1)上記実施形態においては、切替回路40に遮断器42A,42B,44A,44B,46A,46Bを適用したが、これら遮断器に代えて、遮断器以外の開閉器を適用してもよい。
【0040】
(2)上記実施形態において、制御装置20は予備充電器16とは別体に構成されていたが、制御装置20を予備充電器16の一部にしてもよい。
【0041】
(3)上記実施形態における出力設定部28のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 直流配電システム(充電設備)
12 本設充電器(第1の充電器)
14 本設充電器(第2の充電器)
16 予備充電器(第3の充電器)
20 制御装置(充電器用制御装置)
22 データ入力部
24 接続判定部
26 電圧比較部
28 出力設定部
32 蓄電池(第1の蓄電池)
34 蓄電池(第2の蓄電池)
40 切替回路(切替回路)
42A 遮断器(第1の開閉器)
42B 遮断器(第2の開閉器、第1群の開閉器)
44A 遮断器(第5の開閉器)
44B 遮断器(第6の開閉器、第2群の開閉器)
46A 遮断器(第3の開閉器、第1群の開閉器)
46B 遮断器(第4の開閉器、第2群の開閉器)
62 ケーブル(第1の電路)
64 ケーブル(第2の電路)
72 直流母線(第1の直流線路)
74 直流母線(第2の直流線路)
82 負荷装置(第1の負荷装置)
84 負荷装置(第2の負荷装置)
104 AND回路(第1の接続判定部)
114 AND回路(第2の接続判定部)
132 初期値設定部
134 再設定部
S1 信号(第1の論理信号)
S2 信号(第2の論理信号)
Va* 指令値
Va 出力電圧
Vb 電圧(第1の電圧)
Vc 電圧(第2の電圧)
Vo 基準電圧