(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】移動体の自動運転に用いられる情報処理装置、自動運転システム、その方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230209BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230209BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20230209BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/00 X
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2020084287
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】小椋 直
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 陽夫
(72)【発明者】
【氏名】海老沢 憲一
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 慶介
(72)【発明者】
【氏名】河村 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】大竹 博
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0107280(KR,A)
【文献】国際公開第2018/155159(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180534(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網に設けられた情報処理装置であって、
移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行する機能分散実行部と、
前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信し、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信する通信部と、
を備え
、
前記自動運転機能に含まれる複数の機能のうち、前記移動体との通信が遮断した場合でも実行する必要がある重要度が高い機能は、当該情報処理装置で分散実行せずに前記移動体で実行する、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1の情報処理装置において、
前記重要度が高い機能は前記移動体の危険発生時の自動停止機能であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2の情報処理装置において、
前記移動体の種類ごとに、前記分散実行される自動運転機能の内容と、前記自動運転機能が要求する遅延要求時間と、前記遅延要求時間を満たさないときの前記移動体の自動運転停止時の制御の内容との関係を示す自動運転補助情報を記憶する情報記憶部を備える、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
通信網に設けられた情報処理装置であって、
移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行する機能分散実行部と、
前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信し、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信する通信部と、
を備え、
前記移動体の種類ごとに、前記分散実行される自動運転機能の内容と、前記自動運転機能が要求する遅延要求時間と、前記遅延要求時間を満たさないときの前記移動体の自動運転停止時の制御の内容との関係を示す自動運転補助情報を記憶する情報記憶部を備える、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの情報処理装置において、
前記自動運転機能を構成する複数の機能ブロックのそれぞれが要求する遅延要求時間及び前記自動運転時に前記移動体との間で送受信される情報のデータサイズの少なくとも一方に基づいて、前記複数の機能ブロックのいずれかを分散実行する、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
通信網に設けられた情報処理装置であって、
移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行する機能分散実行部と、
前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信し、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信する通信部と、
を備え、
前記自動運転機能を構成する複数の機能ブロックのそれぞれが要求する遅延要求時間及び前記自動運転時に前記移動体との間で送受信される情報のデータサイズの少なくとも一方に基づいて、前記複数の機能ブロックのいずれかを分散実行する、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項5又は6の情報処理装置において、
前記複数の機能ブロックのうち、前記機能ブロックの実行時間及び前記移動体との間の往復通信時間の合計時間よりも前記遅延要求時間が長い機能ブロックを分散実行する、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
請求項1
乃至7のいずれかの情報処理装置において、
前記自動運転機能が要求する所定の遅延要求時間及び前記自動運転時に前記移動体との間で送受信される情報のデータサイズの少なくとも一方に基づいて、伝送遅延時間及び通信容量が互いに異なる複数種類の通信方式から、前記移動体との通信に用いる通信方式を決定する、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
通信網に設けられた情報処理装置であって、
移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行する機能分散実行部と、
前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信し、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信する通信部と、
を備え、
前記自動運転機能が要求する所定の遅延要求時間及び前記自動運転時に前記移動体との間で送受信される情報のデータサイズの少なくとも一方に基づいて、伝送遅延時間及び通信容量が互いに異なる複数種類の通信方式から、前記移動体との通信に用いる通信方式を決定する、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかの情報処理装置において、
前記自動運転機能は、前記移動体又はその周辺の情報を取得する情報取得機能ブロックと、前記取得された取得情報に基づいて前記移動体の発進、操舵、加速、減速及び停止の少なくとも一つを含む運転制御の内容を判断する判断機能ブロックと、前記運転制御の内容の判断結果に基づいて前記移動体の運転を制御する運転制御機能ブロックとを含み、
前記機能分散実行部で分散実行される前記一部の機能は、前記判断機能ブロックであり、
前記通信部は、
前記移動体又はその周辺の情報を取得した取得結果を、前記通信網を介して前記移動体から受信し、
前記運転制御の内容の判断結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信する、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項11】
請求項
9又は10の情報処理装置において、
前記複数種類の通信方式は、第4世代の移動通信システムにおける通信方式、第5世代を含む次世代の移動通信システムにおけるeMBB(enhanced Mobile BroadBand)の通信方式及び第5世代を含む次世代の移動通信システムにおけるURLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)の通信方式を含む、ことを特徴とする情報処理装置
。
【請求項12】
請求項1乃至
11のいずれかの情報処理装置において、
当該情報処理装置は、移動通信網の基地局又は前記基地局とコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けられたMEC(Multi-access Edge Computing)装置である、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかの情報処理装置と、移動経路を移動するように自動運転可能な移動体と、を備えることを特徴とする自動運転システム。
【請求項14】
請求項13の自動運転システムにおいて、
前記移動体は、
前記移動体の自動運転時に自動運転機能の一部を前記移動体に代わって分散実行するために必要な情報を、通信網を介して情報処理装置に送信し、
前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記情報処理装置から受信し、
前記一部の機能の分散実行の結果に基づいて、前記自動運転機能の残りの機能を実行する、ことを特徴とする
自動運転システム。
【請求項15】
請求項
14の
自動運転システムにおいて、
前記移動体は、地上若しくは地中を移動する車両、水上を移動する船舶、水中を移動する水中移動体又は空中を移動する飛行体であることを特徴とする
自動運転システム。
【請求項16】
請求項
13乃至15のいずれかの自動運転システムにおいて、
前記情報処理装置は、
前記通信網を介して前記移動体から初期接続があったとき、その初期接続時に受信した情報に基づいて前記移動体の種類を特定し、
前記移動体の種類に基づいて、前記移動体の種類に対応する前記分散実行する一部の機能の内容と前記自動運転機能が要求する所定の遅延要求時間と前記移動体の自動運転停止時の制御の内容とを前記移動体に送信し、
前記移動体は、
前記初期接続時に前記自動運転停止時の制御の内容を受信し、
前記移動体の位置情報を含む移動体情報を前記情報処理装置に送信し、
前記移動体情報の送信時のタイムスタンプと前記移動体情報に対する受領確認の受信時のタイムスタンプとに基づいて、前記情報処理装置との間の通信の伝送遅延時間を推定し、
前記伝送遅延時間の推定結果に基づき、前記遅延要求時間の条件を満たすと判断したとき、前記情報処理装置での前記一部の機能の分散実行に必要な情報を前記情報処理装置に送信し、前記情報処理装置での前記一部の機能の分散実行の結果を受信し、
前記伝送遅延時間の推定結果に基づき、前記遅延要求時間の条件を満たしていないと判断したとき、前記自動運転停止時の制御を実行する、ことを特徴とする自動運転システム。
【請求項17】
請求項
16の自動運転システムにおいて、
前記自動運転停止時の制御は、前記移動体を前記移動経路の安全な場所に自動停車させる制御である、ことを特徴とする自動運転システム。
【請求項18】
請求項
17の自動運転システムにおいて、
前記移動体は、前記移動経路の安全な場所に自動停車した後、前記自動運転の機能の一部又は全部を手動で行う手動運転モードに切り替える、ことを特徴とする自動運転システム。
【請求項19】
請求項
17の自動運転システムにおいて、
前記移動体は、
前記移動経路の安全な場所に自動停車した後、前記移動体情報の送信及び前記伝送遅延時間の推定を定期的に継続して実行し、
前記伝送遅延時間の推定結果に基づき、前記遅延要求時間の条件を満たすと判断したとき、前記移動体の自動運転を再開する、ことを特徴とする自動運転システム。
【請求項20】
移動経路を移動する移動体の自動運転を行う方法であって、
通信網に設けられた情報処理装置が、移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行することと、
前記情報処理装置が、前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信することと、
前記情報処理装置が、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信することと、
前記移動体が、前記一部の機能の分散実行の結果に基づいて、前記自動運転機能の残りの機能を実行することと、
前記自動運転機能に含まれる複数の機能のうち、前記移動体との通信が遮断した場合でも実行する必要がある重要度が高い機能は、当該情報処理装置で分散実行せずに前記移動体で実行することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
移動経路を移動する移動体の自動運転を行う方法であって、
通信網に設けられた情報処理装置が、移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行することと、
前記情報処理装置が、前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信することと、
前記情報処理装置が、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信することと、
前記移動体が、前記一部の機能の分散実行の結果に基づいて、前記自動運転機能の残りの機能を実行することと、
前記情報処理装置が、前記移動体の種類ごとに、前記分散実行される自動運転機能の内容と、前記自動運転機能が要求する遅延要求時間と、前記遅延要求時間を満たさないときの前記移動体の自動運転停止時の制御の内容との関係を示す自動運転補助情報を記憶することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
移動経路を移動する移動体の自動運転を行う方法であって、
通信網に設けられた情報処理装置が、移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行することと、
前記情報処理装置が、前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信することと、
前記情報処理装置が、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信することと、
前記移動体が、前記一部の機能の分散実行の結果に基づいて、前記自動運転機能の残りの機能を実行することと、
前記情報処理装置が、前記自動運転機能を構成する複数の機能ブロックのそれぞれが要求する遅延要求時間及び前記自動運転時に前記移動体との間で送受信される情報のデータサイズの少なくとも一方に基づいて、前記複数の機能ブロックのいずれかを分散実行することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
移動経路を移動する移動体の自動運転を行う方法であって、
通信網に設けられた情報処理装置が、移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行することと、
前記情報処理装置が、前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信することと、
前記情報処理装置が、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信することと、
前記移動体が、前記一部の機能の分散実行の結果に基づいて、前記自動運転機能の残りの機能を実行することと、
前記情報処理装置が、前記自動運転機能が要求する所定の遅延要求時間及び前記自動運転時に前記移動体との間で送受信される情報のデータサイズの少なくとも一方に基づいて、伝送遅延時間及び通信容量が互いに異なる複数種類の通信方式から、前記移動体との通信に用いる通信方式を決定することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
通信網に設けられた情報処理装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行するためのプログラムコードと、
前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信するためのプログラムコードと、
前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信するためのプログラムコードと、
前記移動体の種類ごとに、前記分散実行される自動運転機能の内容と、前記自動運転機能が要求する遅延要求時間と、前記遅延要求時間を満たさないときの前記移動体の自動運転停止時の制御の内容との関係を示す自動運転補助情報を記憶するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項25】
通信網に設けられた情報処理装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行するためのプログラムコードと、
前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信するためのプログラムコードと、
前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信するためのプログラムコードと、
前記複数の機能ブロックのうち、前記機能ブロックの実行時間及び前記移動体との間の往復通信時間の合計時間よりも前記遅延要求時間が長い機能ブロックを分散実行するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項26】
通信網に設けられた情報処理装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行するためのプログラムコードと、
前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信するためのプログラムコードと、
前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信するためのプログラムコードと、
前記自動運転機能が要求する所定の遅延要求時間及び前記自動運転時に前記移動体との間で送受信される情報のデータサイズの少なくとも一方に基づいて、伝送遅延時間及び通信容量が互いに異なる複数種類の通信方式から、前記移動体との通信に用いる通信方式を決定するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の自動運転に用いる情報処理装置、自動運転システム、方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路を移動する移動体である車両の自動運転にかかる機能については、車両の内部に組み込んで構築するのが業界標準とされている。特許文献1には、ナビゲーションシステムとともに車両に搭載され、各種センサと、ナビゲーションシステムと通信する通信部と、車両の駆動系に対する指示信号を出力する車両制御部と、各種プログラムや各種データを記憶する記憶部と、ナビゲーションシステムから伝達された経路情報及びセンサから伝達されたセンシングデータに基づいて車両の自動運転制御を実行するCPUとを備えた自動運転システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両(自動車)の機能の高度化に伴い、車両の製造コストが増加傾向にあり、上記特許文献1に記載されている車両のように今後の自動運転機能の追加により更なるコスト増が見込まれる。そのため、車両に自動運転機能を追加した場合の低コスト化が課題になっている。なお、同様な課題は、地上を移動する車両のほか、地下、水上(例えば海上)、水中(例えば海中)、空中を移動する移動体であって自動運転機能を有するものにおいても同様に発生し得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、通信網に設けられた情報処理装置である。この情報処理装置は、移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行する機能分散実行部と、前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信し、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信する通信部と、を備える。
【0006】
前記情報処理装置において、前記自動運転機能は、前記移動体又はその周辺の情報を取得する情報取得機能ブロックと、前記取得された取得情報に基づいて前記移動体の発進、操舵、加速、減速及び停止の少なくとも一つを含む運転制御の内容を判断する判断機能ブロックと、前記運転制御の内容の判断結果に基づいて前記移動体の運転を制御する運転制御機能ブロックとを含み、前記機能分散実行部で分散実行される前記一部の機能は、前記判断機能ブロックであり、前記通信部は、前記移動体又はその周辺の情報を取得した取得結果を、前記通信網を介して前記移動体から受信し、前記運転制御の内容の判断結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信してもよい。
【0007】
前記情報処理装置において、前記自動運転機能が要求する所定の遅延要求時間及び前記自動運転時に前記移動体との間で送受信される情報のデータサイズの少なくとも一方に基づいて、伝送遅延時間及び通信容量が互いに異なる複数種類の通信方式から、前記移動体との通信に用いる通信方式を決定してもよい。ここで、前記複数種類の通信方式は、第4世代の移動通信システムにおける通信方式、第5世代を含む次世代の移動通信システムにおけるeMBB(enhanced Mobile BroadBand)の通信方式及び第5世代を含む次世代の移動通信システムにおけるURLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)の通信方式を含んでもよい。
【0008】
前記情報処理装置において、前記自動運転機能を構成する複数の機能ブロックのそれぞれが要求する遅延要求時間及び前記自動運転時に前記移動体との間で送受信される情報のデータサイズの少なくとも一方に基づいて、前記複数の機能ブロックのいずれかを分散実行してもよい。ここで、前記複数の機能ブロックのうち、前記機能ブロックの実行時間及び前記移動体との間の往復通信時間の合計時間よりも前記遅延要求時間が長い機能ブロックを分散実行してもよい。
【0009】
前記情報処理装置において、前記自動運転機能に含まれる複数の機能のうち、前記移動体との通信が遮断した場合でも実行する必要がある重要度が高い機能は、当該情報処理装置で分散実行せずに前記移動体で実行してもよい。ここで、前記重要度が高い機能は前記移動体の危険発生時の自動停止機能であってもよい。
【0010】
前記情報処理装置において、前記移動体の種類ごとに、前記分散実行される自動運転機能の内容と、前記自動運転機能が要求する遅延要求時間と、前記遅延要求時間を満たさないときの前記移動体の自動運転停止時の制御の内容との関係を示す自動運転補助情報を記憶する情報記憶部を備えてもよい。
【0011】
前記情報処理装置は、移動通信網の基地局又は前記基地局とコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けられたMEC(Multi-access Edge Computing)装置であってもよい。
【0012】
本発明の他の態様に係る移動体は、移動経路を移動するように自動運転可能な移動体である。この移動体は、自動運転時に自動運転機能の一部を前記移動体に代わって分散実行するために必要な情報を、通信網を介して情報処理装置に送信し、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記情報処理装置から受信し、前記一部の機能の分散実行の結果に基づいて、前記自動運転機能の残りの機能を実行する。
【0013】
前記移動体は、地上若しくは地中を移動する車両、水上を移動する船舶、水中を移動する水中移動体又は空中を移動する飛行体であってもよい。
【0014】
本発明の更に他の態様に係る自動運転システムは、前記いずれかの情報処理装置と、前記いずれかの移動体とを備える。
【0015】
前記自動運転システムにおいて、前記情報処理装置は、前記通信網を介して前記移動体から初期接続があったとき、その初期接続時に受信した情報に基づいて前記移動体の種類を特定し、前記移動体の種類に基づいて、前記移動体の種類に対応する前記分散実行する一部の機能の内容と前記自動運転機能が要求する所定の遅延要求時間と前記移動体の自動運転停止時の制御の内容とを前記移動体に送信し、前記移動体は、前記初期接続時に前記自動運転停止時の制御の内容を受信し、前記移動体の位置情報を含む移動体情報を前記情報処理装置に送信し、前記移動体情報の送信時のタイムスタンプと前記移動体情報に対する受領確認の受信時のタイムスタンプとに基づいて、前記情報処理装置との間の通信の伝送遅延時間を推定し、前記伝送遅延時間の推定結果に基づき、前記遅延要求時間の条件を満たすと判断したとき、前記情報処理装置での前記一部の機能の分散実行に必要な情報を前記情報処理装置に送信し、前記情報処理装置での前記一部の機能の分散実行の結果を受信し、前記伝送遅延時間の推定結果に基づき、前記遅延要求時間の条件を満たしていないと判断したとき、前記自動運転停止時の制御を実行してもよい。
【0016】
前記自動運転システムにおいて、前記自動運転停止時の制御は、前記移動体を前記移動経路の安全な場所に自動停車させる制御であってもよい。ここで、前記移動体は、前記移動経路の安全な場所に自動停車した後、前記自動運転の機能の一部又は全部を手動で行う手動運転モードに切り替えてもよい。また、前記移動体は、前記移動経路の安全な場所に自動停車した後、前記移動体情報の送信及び前記伝送遅延時間の推定を定期的に継続して実行し、前記伝送遅延時間の推定結果に基づき、前記遅延要求時間の条件を満たすと判断したとき、前記移動体の自動運転を再開してもよい。
【0017】
本発明の更に他の態様に係る方法は、移動経路を移動する移動体の自動運転を行う方法である。この方法は、通信網に設けられた情報処理装置が、移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行することと、前記情報処理装置が、前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信することと、前記情報処理装置が、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信することと、前記移動体が、前記一部の機能の分散実行の結果に基づいて、前記自動運転機能の残りの機能を実行することと、を含む。
【0018】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、通信網に設けられた情報処理装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、移動経路を移動する移動体の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を、前記移動体に代わって分散実行するためのプログラムコードと、前記移動体の自動運転時に前記自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、前記通信網を介して前記移動体から受信するためのプログラムコードと、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記移動体に送信するためのプログラムコードと、を含む。
【0019】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、移動経路を移動するように自動運転可能な移動体に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記移動体の自動運転時に自動運転機能の一部を前記移動体に代わって分散実行するために必要な情報を、通信網を介して情報処理装置に送信するためのプログラムコードと、前記一部の機能の分散実行の結果を、前記通信網を介して前記情報処理装置から受信するためのプログラムコードと、前記一部の機能の分散実行の結果に基づいて、前記自動運転機能の残りの機能を実行するためのプログラムコードと、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移動経路を移動する移動体の自動運転に必要な複数の機能を、移動体と、通信網を介して移動体の通信部と通信可能な網側装置とに分散させることにより、自動運転機能を有する移動体の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る自動運転システムの全体構成の一例を示す説明図。
【
図2】実施形態に係る情報処理装置及び車両の車載装置を含む自動運転システムの要部構成の一例を示すブロック図。
【
図3】実施形態に係る自動運転システムにおける車両の自動運転機能の分散実行の一例を示すシーケンスフロー図。
【
図4】自動運転機能の特定の対象機能の分散実行の一例を示すタイムチャート。
【
図5】(a)~(c)は、本実施形態の自動運転システムにおける車両の自動運転の一例を示す説明図。
【
図6】(a)~(c)は、本実施形態の自動運転システムにおける車両の自動運転の他の例を示す説明図。
【
図7】実施形態に係る自動運転システムにおける車両の自動運転機能の分散実行の他の例を示すシーケンスフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る自動運転システムの全体構成の一例を示す説明図である。本実施形態の自動運転システムは、移動通信網に設けられた情報処理装置10を備える。情報処理装置10は、車両移動経路としての道路90を走行する一又は複数の移動体である車両30の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を車両30に代わって実行する。車両30には車載装置31が搭載されている。自動運転システムは、情報処理装置10と自動運転対象の車両30とを含んでもよい。
【0023】
以下、複数の車両30及びその車載装置31を互いに区別して説明する場合は、車両30(1),30(2),・・・及び車載装置31(1),31(2),・・・と表記する。また、複数の車両に共通する構成や制御等を説明する場合は車両30と表記し、複数の車載装置に共通する構成及び制御等を説明する場合は車載装置31と表記する。なお、
図1の例では、車載装置31(1)~31(3)をそれぞれ有する自動運転機能を有する3台の車両30(1)~30(3)が走行している場合について示しているが、自動運転機能を有する車両30の数は1台又は2台でもよいし、4台以上であってもよい。
【0024】
車両30は、例えば、地上の移動経路である道路90を移動する自動車、トラック、バス、バイクなどである。本実施形態における自動運転対象の移動体は、地上の車両のほか、所定高度の上空における移動経路を飛行して移動可能な飛行体などの移動体であってもよい。また、自動運転対象の移動体は、地下における移動経路を移動する地下移動体、水上(例えば海上)などにおける移動経路を移動可能な船舶などの水上移動体、又は、水中(例えば海中)の移動経路を移動する潜水ロボットなどの水中移動体であってもよい。
【0025】
車両30の車載装置31は、外部と通信する通信部としての一又は複数の通信端末装置を有する。車載装置31の通信端末装置は、例えば、移動通信サービスの加入者として使用可能なユーザ装置(以下「UE」という。)である。UEは、ユーザ端末、端末、端末装置、移動局、移動機等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。UEは、車両30に組み込んで設置された車載装置(例えばナビゲーション装置の一部として組み込まれた装置)31に設けられている。UEは、車両30の中で利用者が携帯した状態で使用する装置でもよい。
【0026】
車載装置31のUEは、第1の通信方式であるネットワーク通信方式(例えば、3G、4G、LTE、又は次世代のNRの方式)により移動通信網(セルラーネットワーク)の基地局16を介して情報処理装置10と通信可能である(以下、ネットワーク通信方式による通信を「Uu通信」ともいう)。Uu通信の無線ネットワーク通信方式は、例えば、3GPPの第4世代の移動通信システムで提供されるLTE版のLPWA(Low Power, Wide Area)又はLPWAN(Low-Power Wide-Area Network)であるCat.M、Cat.NB、eMTC(enhanced Machine Type Communication)、NB(Narrow Band)-IoT等の仕様に準拠した無線通信方式であってもよい。また、Uu通信の無線ネットワーク通信方式は、第5世代を含む次世代の移動通信システムで提供される、高速大容量の通信に適するeMBB(enhanced Mobile BroadBand)、超高信頼低遅延の通信に適するURLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)、超大量の端末との通信に適するMTC(massive Machine Type Communication)等の仕様に準拠した無線通信方式であってもよい。
【0027】
車載装置31は、近距離のD2D(Device-to-Device)、V2V(Vehicle-to-Vehicle)、V2X(Vehicle-to-Everything)等の直接無線通信を行う通信部を有してもよい。例えば、車両30の車載装置31は、
図1に例示するPC-5通信方式による車両間で無線通信を行う車車間通信機能や、道路90の路側や交差点、駐車場などに設置された路側機等のインフラ設備との間で狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communications)等の無線通信を行う路車間通信機能を有してもよい。
【0028】
例えば、車両30の車載装置31は、移動通信網(セルラーネットワーク)の基地局を介さない第2通信方式により、他の車両との無線通信(以下「車車間通信」ともいう。)を行ってもよい。第2通信方式は、例えば、PC-5(以下「PC5」ともいう。)インターフェースを用いるSidelink方式(以下、「PC5通信方式」又は「PC-5 Sidelink方式」ともいう。)である。PC-5インターフェースは、UE同士、UEと他の装置(例えば車両)、車両同士、又は、車両と他の装置が、基地局を介さないで直接通信を行うD2D(Device to Device)のインターフェースであり、3GPPリリース12以降で標準化されている。PC5通信方式(Sidelink方式)は、PC-5インターフェース等を用いて、UE同士、UEと他の装置(例えば車両)、車両同士、又は、車両と他の装置が、基地局を介さないで比較的狭いエリアで直接通信を行う近距離の無線通信方式である。
【0029】
情報処理装置10は、例えば、移動通信網15の基地局16に設けられたMEC(Multi-access Edge Computing)装置である。MEC装置からなる情報処理装置10は、基地局16と移動通信網15のコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けてもよい。また、情報処理装置10は、図中の破線で示すように移動通信網15のコアネットワークに設けてもよい。
【0030】
基地局16は、一つ又は複数のセル(セクタ、セクタセルとも呼ばれる。)を形成する。セルは地上又は海上に2次元的に形成してもよいし、上空から地上又は海上に向けて3次元的に形成してもよい。セルは、マクロセル、スモールセル、フェムトセル、ピコセル、大セル等であってもよい。複数のセルは、複二次元的に又は三次元的に隣り合うように分布するセルラー構造を構成してもよいし、階層的に一部又は全部が重なり合った階層セル構造を構成してもよい。基地局16は、マクロセル基地局、スモールセル基地局、フェムトセル基地局、ピコセル基地局、大セル基地局、地上等に固定設置された固定基地局、地上、海上、上空などを移動可能な移動型の基地局等であってもよい。基地局16は、eNodeB(evolved Node B:eNB)、gNodeB(gNB)、en-gNodeB(en-gNB)、アクセスポイント等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。
【0031】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置10及び車両30の車載装置31を含む自動運転システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
情報処理装置10は、機能分散実行部101と通信部102と情報記憶部(DB:データベース)103とを備える。
【0032】
機能分散実行部101は、道路90を移動する車両30の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を車両30に代わって分散実行する。機能分散実行部101は、車両30の車載装置31に設けられる制御部313の場合とは異なり、製造コストや設置スペースなどの制約を受けることなく、高度な演算処理や解析処理を伴う判断処理を行うためのデータ処理能力の高いCPUやGPUからなるコンピュータ装置を用いて構成することができる。一方、車両30の車載装置31は、高度な演算処理や解析処理を伴う判断処理を行う必要がなくなるため、データ処理能力の高いCPUやGPUを搭載する必要がない。
【0033】
通信部102は、例えば前述のUu通信により、車両30の自動運転時に自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報を、移動通信網15の基地局16を介して車両30から受信し、前記一部の機能の分散実行の結果を、移動通信網15の基地局16を介して車両30に送信する。
【0034】
情報記憶部103は、車両30の自動運転機能の分散実行に関する情報を記憶する。例えば、情報記憶部103は、車両30の種類(車種及び年式)ごとに、前記分散実行される自動運転機能の内容と、自動運転機能が要求する遅延要求時間と前記遅延要求時間を満たさないときの車両30の自動運転停止時の制御の内容との関係を示す自動運転補助情報(「自動運転マッピング情報」又は「自動運転補助テーブル情報」ともいう。)を記憶する。
【0035】
車両30の自動運転機能は、所定の駐車スペースに自動駐車する自動駐車機能、高速道路などの道路90を安全に走行させるように車両30の運転を制御する自動走行機能、前方、後方又は側方に危険発生を検知したときに車両を自動停車させる自動緊急停車機能等の複数の機能ロジックを有してもよい。また、車両30の自動運転機能は、機能ロジックごとに、車両30又はその周辺の情報を取得する情報取得機能ブロックと、その取得された取得情報に基づいて前記移動体の発進、操舵、加速、減速及び停止の少なくとも一つを含む運転制御の内容を判断する判断機能ブロックと、前記運転制御の内容の判断結果に基づいて車両30の運転を制御する運転制御機能ブロックとを含んでもよい。機能分散実行部101で分散実行される前記一部の機能は、前記複数の機能ブロックの中の判断機能ブロックであってもよい。
【0036】
車両30の自動運転機能が複数の機能ロジックを有する場合、情報処理装置10の通信部102は、車両又はその周辺の情報を取得した取得結果を、移動通信網15の基地局16を介して車両30から受信し、前記運転制御の内容の判断結果を、移動通信網15の基地局16を介して車両30に送信してもよい。
【0037】
情報処理装置10の通信部102は、車両30の自動運転機能が要求する所定の遅延要求時間及び自動運転時に車両30との間で送受信される情報のデータサイズの少なくとも一方に基づいて、伝送遅延時間及び通信容量が互いに異なる複数種類の通信方式から、車両30との通信に用いる通信方式を決定してもよい。ここで、前記複数種類の通信方式は、前述の第4世代の移動通信システムにおける通信方式(例えば、LTE版のLPWA又はLPWANであるCat.M、Cat.NB、eMTC、NB-IoT)、第5世代を含む次世代(NR)の移動通信システムにおけるeMBBの通信方式及びURLLCの通信方式を含んでもよい。
【0038】
情報処理装置10の機能分散実行部101は、自動運転機能を構成する複数の機能ブロックのそれぞれが要求する遅延要求時間及び自動運転時に車両30との間で送受信される情報のデータサイズの少なくとも一方に基づいて、複数の機能ブロックのいずれかを分散実行してもよい。ここで、情報処理装置10は、例えば、前記複数の機能ブロックのうち、機能ブロックの実行時間及び車両30との間の往復通信時間の合計時間よりも遅延要求時間が長い機能ブロックを分散実行してもよい。
【0039】
また、自動運転機能に含まれる複数の機能(機能ロジック)のうち、車両30との通信が遮断した場合でも実行する必要がある重要度が高い機能(例えば、危険発生時の車両30の自動停止機能)は、その機能の一部を情報処理装置10で分散実行せずに、当該機能の全部を車両30で実行してもよい。
【0040】
図2において、車両30の車載装置31は、NW通信部311と車両・周辺情報取得部312と制御部313と記憶部314と近接直接通信部316とを備える。
NW通信部311は、例えば前述のUEの通信モジュールやアンテナなどを用いて構成され、前述のUu通信により、車両30の自動運転時に自動運転機能の一部を車両30に代わって分散実行するために必要な情報を、移動通信網15の基地局16を介して情報処理装置10に送信する。また、NW通信部311は、前記一部の機能の分散実行の結果を、移動通信網15の基地局16を介して情報処理装置10から受信する。
【0041】
制御部313は、例えば、CPU又はGPU等のプロセッサ、RAM、ROM、I/Oインターフェースなどで構成され、所定の制御プログラムを読み込んで実行することにより、前記一部の機能の分散実行の結果に基づいて、自動運転機能の残りの機能を実行するように、駆動部32を制御する。駆動部32は、車両本体のエンジン又はモータ、制動装置、操舵装置などである。
【0042】
車両・周辺情報取得部312は、例えば、周辺の動画又は静止画を撮像する撮像手段としてのカメラ装置と、車両の現在位置を測位する現在位置取得手段としてのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機とを備える。また、車両・周辺情報取得部312は、車両30の速度を検知する速度センサと、車両30の加速度を検知する加速度センサとを備える。更に、車両・周辺情報取得部312は、周辺の車両や歩行者などの物体を検知する赤外光、可視光、超音波又は電磁波などを用いたレーダー装置、ライダー(Lider:light detection and ranging)装置等を備えてもよい。
【0043】
記憶部314は、情報処理装置10に送信する情報(例えば、自動運転機能の一部の機能の分散実行に必要な情報)、情報処理装置10から受信した情報(例えば、自動運転機能の一部の機能の分散実行の結果の情報)、車両・周辺情報取得部312で取得した情報(例えば、周辺の静止画又は動画の画像データ、速度データ、周辺物体検知データ)などを記憶する。
【0044】
近接直接通信部316は、所定の通信モジュールやアンテナなどで構成され、前述の車車間通信や路車間通信等の近接直接通信を行う。
【0045】
図3は、本実施形態に係る自動運転システムにおける車両30の自動運転機能の分散実行の一例を示すシーケンスフロー図である。
図3において、車両30の駆動部32のエンジンを始動する(S101)と、車載装置31は、情報処理装置10に対する初期接続処理を実行し、車載装置31の通信端末装置(UE)について予め登録されている移動通信サービスの加入者情報を記憶部314から読み出し、基地局16を介して情報処理装置10に送信する(S102,S103)。
【0046】
情報処理装置10は、車両30の車載装置31から初期接続時に受信した加入者情報に基づいて、情報記憶部103に記憶されている利用者データベースを参照し、車両30の種類(車種、年式)を特定する。利用者データベースには、例えば、車両30の所有者又は使用者のUEについて予め登録されている加入者情報と車両30の種類(車種及び年式)が互いに対応付けて保存されている。
【0047】
次に、情報処理装置10は、特定した車両30の種類に基づいて、情報記憶部103に記憶されている自動運転補助情報としての自動運転補助テーブルを参照し(S104)、その車両30の種類に対応する分散実行する一部の機能の内容と遅延要求時間と自動運転停止時の制御の内容とを、基地局16を介して車両30の車載装置31に送信する(S105,S106)。
【0048】
表1に例示するように、自動運転補助テーブルには、車両30の複数種類の種類(車種及び年式)のそれぞれについて、車両30の自動運転機能のうち情報処理装置10で分散実行する一部の機能の内容と、その一部機能で要求される遅延要求時間と、自動運転停止時の制御の内容とが対応付けられて保存されている。
【0049】
【0050】
次に、車両30の車載装置31は、自車の現在位置情報を含む車両情報を情報処理装置10に送信して情報処理装置10との間の伝送遅延時間を推定する処理を定期的に実行する(S107~S111)。例えば、車両30の車載装置31は、車両情報の送信時のタイムスタンプと、その車両情報に対する受領確認(ACK)の受信時のタイムスタンプとに基づいて、情報処理装置10との間の通信の伝送遅延時間を推定し、その伝送遅延時間の推定結果を記憶する。
【0051】
次に、車載装置31は、自動運転機能に含まれる複数の機能(機能ロジック)のうちいずれかの特定の機能(以下「対象機能」という。)を実行するタイミングが到来したら、対象機能及び自車の種類について表1の自動運転補助テーブルを参照し、上記伝送遅延時間の推定結果が対象機能で要求される遅延要求時間に対応する閾値(例えば、対象機能が表1の機能Aの場合は1.0s)以下であるか否かを判断する(S112)。
【0052】
上記伝送遅延時間の推定結果が対象機能で要求される遅延要求時間に対応する閾値以下の場合(S112でYES)、車載装置31は、
図4の認識機能ブロックF101に示すように情報処理装置10での対象機能の分散実行に必要な情報(以下「インプットデータ」という。)を取得する認識処理を行い(S113)、取得したインプットデータを、基地局16を介して情報処理装置10に送信する(S114,S115)。インプットデータは、例えば対象機能が表1の機能Aの場合、カメラ画像、速度、加速度、ブレーキ情報である。
【0053】
情報処理装置10は、車載装置31から受信したインプットデータに基づいて、
図4の判断機能ブロックF102に示すように車両30で対象機能を実行するか否かを判断する判断処理を行い(S116)、その判断結果を、基地局16を介して車両30の車載装置31に送信する(S117,S118)。ここで、判断結果は、車両30の制動情報などの車両制御の情報を含んでもよい。
【0054】
ここで、インプットデータ及び判断結果の送受信には、車両30及び対象機能の種類に対応する通信方式(例えば、表1の車種タイプA及び対象機能Aの場合は、前述のLTEの通信方式又はeMBBの通信方式)が用いられる。
【0055】
車両30の車載装置31は、
図4の車両制御機能ブロックF103に示すように情報処理装置10から受信した判断結果に基づき車両30(例えば、駆動部32)を制御する車両制御が実行される(S119)。
【0056】
上記ステップS112において上記伝送遅延時間の推定結果が対象機能で要求される遅延要求時間に対応する閾値より大きい場合(S112でNO)、自動運転機能を実行できないため、車載装置31は、車両30を道路90の安全な場所(例えば路肩)に自動停車させるように車両30(例えば、駆動部32)を制御する(S120)。車両30を自動停車させた後は、車載装置31は、道路90の安全な場所に自動停車した後、自動運転モードから、自動運転の機能の一部又は全部を手動で行う手動運転モードに切り替えてもよい。また、車両30の車載装置31は、道路90の安全な場所に自動停車した後、車両情報の送信及び伝送遅延時間の推定を定期的に継続して実行し、伝送遅延時間の推定結果に基づき、遅延要求時間の条件を満たすと判断したとき、車両30の自動運転を再開してもよい。
【0057】
なお、
図4において、時間n1は車載装置31での認識機能ブロックF101の実行時間であり、時間n3-n2は情報処理装置10での判断機能ブロックF102の実行時間であり、時間n5-n4は車載装置31での車両制御機能ブロックF103の実行時間である。また、
図4中の時間n2-n1は車載装置31から情報処理装置10へインプットデータを送信するときの伝送遅延時間であり、時間n4-n3は情報処理装置10から車載装置31へ判断結果を送信するときの伝送遅延時間である。前述の伝送遅延時間の推定結果は、
図4中の往復の伝送遅延時間(n2-n1)+(n4-n3)に相当する。
【0058】
図5(a)~(c)は、本実施形態の自動運転システムにおける車両30の自動運転(自動パーキング時の基本動作)の一例を示す説明図である。
図5(a)において、自動運転対象の車両30(1)は、駐車場95の目標の駐車スペース95sの手前で停車し、車載装置31の全方位カメラ装置で周辺状況を撮影し、その画像データをインプットデータとして情報処理装置10にアップロード送信する。
【0059】
次に、
図5(b)において、情報処理装置10は、車両30(1)からアップロードされた画像データに基づいて、車両30(1)が目標の駐車スペース95sに駐車するための動作に関する制動情報を判断して決定する。例えば、情報処理装置10は、車両30(1)が駐車スペース95sに駐車するまでの移動ルート、タイムラインにおける移動距離及びハンドルの動作などを演算して制動情報を決定する。情報処理装置10は、判断結果としての制動情報を車両30(1)の車載装置31にダウンロード送信する。
【0060】
次に、
図5(c)において、車両30(1)の車載装置31は、情報処理装置10からダウンロードした制動情報に基づいて車両30(1)の動作を自動制御する。これにより、車両30(1)は目標の駐車スペース95sに移動して所定の正しい向きで停車することができる。
【0061】
図6(a)~(c)は、本実施形態の自動運転システムにおける車両30の自動運転(自動パーキング時の危険回避動作)の他の例を示す説明図である。
図6(a)において、自動運転対象の車両30(1)は、駐車場95の目標の駐車スペース95sの手前で停車し、周辺の歩行者や他の車両30(2)、30(3)等の周辺物体が動いていないか常にセンサ(例えば、レーダー装置、ライダー装置)で検知し、そのセンサ検知データをインプットデータとして情報処理装置10にアップロード送信する。
【0062】
次に、
図6(b)において、情報処理装置10は、車両30(1)からアップロードされたセンサ検知データに基づいて、周辺物体の動作が想定内動作のみか否かを判断する。ここで、周辺物体(図示の例では車両30(3))が想定内動作から外れた動作をしていると検知した場合、情報処理装置10は、動き始めた車両30(1)に対するブレーキ命令を含む制動情報を判断結果として車両30(1)の車載装置31にダウンロード送信する。
【0063】
次に、
図6(c)において、車両30(1)の車載装置31は、情報処理装置10からダウンロードした制動情報に基づいて、車両30(1)をブレーキ制動させるように車両30(1)の動作を自動制御する。これにより、車両30(1)は目標の駐車スペース95sに移動しようとしてときに、駐車スペースから出ようとしている車両30(3)との衝突を回避することができる。
【0064】
図7は、本実施形態に係る自動運転システムにおける車両30の自動運転機能の分散実行の他の例を示すシーケンスフロー図である。
図7は、車載装置31が情報処理装置10からダウンロードした弱電界エリア情報に基づいて伝送遅延時間を推定する例である。なお、
図7のS201~S206は
図3のS101~S106と同様であり、
図7のS212~S220は
図3のS112~S120と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0065】
図7の例における情報処理装置10の自動運転補助テーブルでは、表2に例示するように、前述の表1の項目に加えて、車両30が弱電界エリア情報を情報処理装置10からダウンロードするか否かを指定する欄が追加になっている。弱電界エリア情報の欄が「○」の場合、車両30は現在位置から行先までの経路における弱電界エリア情報を情報処理装置10からダウンロードする。また、情報処理装置10は、管理対象のエリアについて予め調査などの取得された弱電界エリア情報を含む地図データベースを有する。
【0066】
【0067】
図7において、車両30の車載装置31は、自車両の種類に対応する分散実行する一部の機能の内容と遅延要求時間と自動運転停止時の制御の内容とを受信した後、自車の現在位置情報を含む車両情報と行先情報を、基地局16を介して情報処理装置10に送信する(S207,S208)。情報処理装置10は、自動運転補助テーブルで車両30の現在位置情報と行先情報とに基づいて地図データベースを参照し、車両30の現在位置から行先までの経路における弱電界エリア情報を、基地局16を介して車両30の車載装置31に送信する(S209,S210)。
【0068】
車載装置31は定期的に、現在位置情報と、情報処理装置10から受信した弱電界エリア情報とに基づいて、情報処理装置10との間の通信の伝送遅延時間を推定し、その伝送遅延時間の推定結果を記憶する(S211)。
【0069】
図7の例では、情報処理装置10との情報の送受信時のタイムスタンプを用いずに伝送遅延時間を推定できるため、車両30の車載装置31のデータ処理の負荷を更に抑制することできる。
【0070】
以上、本実施形態によれば、情報処理装置10が、移動通信網15を介して車両30から受信した情報に基づいて、車両30の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を車両30に代わって分散実行し、その一部の機能の分散実行の結果を、移動通信網15を介して車両30に送信することにより、車両30が自動運転機能の残りの機能を実行することができる。このよう移動通信網を介した通信により車両30と情報処理装置10が互いに連携して車両の自動運転機能の全体を実行できるとともに、車両30の自動運転時に実行される自動運転機能の一部を情報処理装置10が車両30に代わって分散実行することにより自動運転のための車両30側の構成を削減できるので、自動運転機能を有する車両30の低コスト化を図ることができる。
【0071】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに通信端末装置(UE)、基地局、情報処理装置、サーバ、MEC装置及び通信システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0072】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、eNode B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0073】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0074】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0075】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0076】
10 :情報処理装置
15 :移動通信網
16 :基地局
30 :車両
31 :車載装置
32 :駆動部
90 :道路
95 :駐車場
95s :駐車スペース
101 :機能分散実行部
102 :通信部
103 :情報記憶部
311 :NW通信部
312 :周辺情報取得部
313 :制御部
314 :記憶部
316 :近接直接通信部