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特許7223821ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法
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  • 特許-ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021159885
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2022-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】平 晃暢
(72)【発明者】
【氏名】野原 徳修
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-232939(JP,A)
【文献】特開平7-300537(JP,A)
【文献】特開2004-263033(JP,A)
【文献】特開2005-23302(JP,A)
【文献】特開平8-281762(JP,A)
【文献】特開2005-297464(JP,A)
【文献】特開2003-39565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが1g/10分以上15g/10分以下であるポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料の回収物からなるポリプロピレン系樹脂回収物とを押出機にて溶融混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた前記混合物を前記押出機から押出し切断してポリプロピレン系樹脂粒子を得る押出工程と、
前記押出工程で得られた前記ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、発泡剤を含浸した該ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る発泡工程と、
を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
前記混合物中の、前記ポリプロピレン系樹脂の配合割合が30重量%以上90重量%以下であり、かつ前記ポリプロピレン系樹脂回収物の配合割合が10重量%以上70重量%以下であり(ただし、ポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂回収物との合計は100重量%である)、
前記ポリプロピレン系樹脂回収物がカーボンブラックを含み、前記ポリプロピレン系樹脂回収物中の前記カーボンブラックの含有割合が0.5重量%以上5重量%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂回収物の融点が135℃以上160℃以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂回収物の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが、前記ポリプロピレン系樹脂の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトよりも高く、
前記ポリプロピレン系樹脂回収物のメルトフローレイトと前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトとの差(ポリプロピレン系樹脂回収物のメルトフローレイト-ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイト)が0.1g/10分以上12g/10分以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂と前記ポリプロピレン系樹脂回収物との融点差(ポリプロピレン系樹脂の融点-ポリプロピレン系樹脂回収物の融点)が-10℃以上+10℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂回収物の灰分量が10000重量ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂回収物の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが3g/10分以上20g/10分以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
前記混合物中の、前記ポリプロピレン系樹脂の配合割合が50重量%以上80重量%以下であり、かつ前記ポリプロピレン系樹脂回収物の配合割合が20重量%以上50重量%以下である(ただし、ポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂回収物との合計は100重量%である)であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を試験片とし、JIS K7121-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い加熱終了温度まで加熱溶融させる際に測定される1回目のDSC曲線が、2以上の融解ピークを有し、前記2以上の融解ピークに、前記樹脂発泡粒子を構成する樹脂に固有の融解ピークと、該樹脂に固有の融解ピークの頂点の温度よりも高温側に頂点の温度を有する高温側の融解ピークとが含まれ、前記加熱終了温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い加熱終了温度まで加熱溶融させる際に測定される2回目のDSC曲線には該高温側の融解ピークが現れないことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項7】
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が、表面にポリオレフィン系樹脂からなる被覆層を有する多層樹脂発泡粒子であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトが2g/10分以上8g/10分以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項9】
前記ポリプロピレン系樹脂回収物が、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体のポストコンシューマ材料の回収物からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法に関し、詳しくは、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料を含む樹脂材料を使用したポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂を用いたポリプロピレン系樹脂発泡成形体は、軽量性、緩衝性、及び靭性に優れる。そのため、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体は、バンパー芯材、シート芯材、サンバイザー芯材等の自動車用緩衝材や、電気電子機器包装材等の緩衝包装材等として広く使用されている。またこのようなポリプロピレン系樹脂発泡成形体の使用と平行して、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造工程において発生したスクラップ等の再利用や、同一工場あるいは同一工程内において発生したポリプロピレン系樹脂発泡成形体の廃材等の使用といったリサイクルが行われている。
【0003】
近年の循環型社会を推進する動きの中で、上述するスクラップ等の再利用や前記廃材の使用といったリサイクルのみならず、最終ユーザーが使用済みとした廃棄物を再生材料(ポストコンシューマ材料)として利用することに対し、社会的な要望が高まっている。
【0004】
これに対し、使用済みのポリオレフィン系樹脂発泡成形体の利用に関する技術が提案されている。例えば特許文献1~3には、廃発泡ポリオレフィン系樹脂成形体を粉砕して造粒した造粒物と、バージンのポリオレフィン系樹脂とを混合してペレットを作製し、当該ペレットに発泡剤を含浸させる等してポリオレフィン系樹脂発泡成形体を製造する技術が提案されている。これらの文献には、かかる技術により提供された発泡成形体は、バージンのポリオレフィン樹脂を用いて製造された発泡成形体と比較して、品質の低下が少ない旨、説明されている。
また特許文献4には、ポリプロピレン系樹脂を60重量%以上含有する基材樹脂を押出処理して押出樹脂とし、当該押出樹脂に発泡剤を添加して発泡させポリプロピレン系樹脂発泡体を製造する技術が提案されている。特許文献4には、前記基材樹脂として使用済みの成形品を破砕又は粉砕したものを用いてよいことが記載されている。また、特許文献4には、押出成形によりポリプロピレン系樹脂発泡体を製造しようとした場合、押出機内でポリプロピレン系樹脂材料のメルトフローレイトが上昇し、押出成形品の物性に差が生じるといった問題が発生することが指摘されおり、当該問題を解消するために、押出樹脂が所定範囲のメルトフローレイトを示すことが望ましい旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-297464号公報
【文献】特開2006-116818号公報
【文献】特開2007-283576号公報
【文献】特開平8-281762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発泡成形体の意匠性を向上させる目的で、ポリプロピレン系樹脂発泡体にカーボンブラック(以下、単にCBと記載する場合がある)を含有させる場合がある。例えば自動車用緩衝部材として黒色のポリプロピレン系樹脂発泡体の需要が高まっている。そのため、黒色のポリプロピレン系樹脂発泡体の製造においても、ポストコンシューマ材料の利用が期待される。特に、CBを含有する発泡成形体のポストコンシューマ材料を用いて、新たに黒色のポリプロピレン系樹脂発泡体を製造することができれば、CBについてもリサイクルでき、また新たに配合するCB量を減らすことができるため好ましい。しかしながら、上述特許文献1~4は、いずれもCBを含有する発泡成形体のポストコンシューマ材料の利用ついて何ら検討されていない。
【0007】
そこで本発明者らは、CBを含有するポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料を用いた黒色の発泡粒子成形体の製造について検討した。かかる検討により、CBを含有しないポストコンシューマ材料を用いて製造された発泡粒子成形体に比べて、CBを含有するポストコンシューマ材料を用いて製造された発泡粒子成形体は、外観が不良であり、引張強さや圧縮強度といった物性が劣る傾向にあることがわかった。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、CBを含有するポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料を使用し外観及び物性に優れる黒色の発泡粒子成形体の提供を可能とするため、CBを含有するポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが1g/10分以上15g/10分以下であるポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料の回収物からなるポリプロピレン系樹脂回収物とを押出機にて溶融混合して混合物を得る混合工程と、前記混合工程で得られた前記混合物を前記押出機から押出し切断してポリプロピレン系樹脂粒子を得る押出工程と、前記押出工程で得られた前記ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、発泡剤を含浸した該ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る発泡工程と、を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、前記混合物中の、前記ポリプロピレン系樹脂の配合割合が30重量%以上90重量%以下であり、かつ前記ポリプロピレン系樹脂回収物の配合割合が10重量%以上70重量%以下であり(ただし、ポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂回収物との合計は100重量%である)、前記ポリプロピレン系樹脂回収物がカーボンブラックを含み、前記ポリプロピレン系樹脂回収物中の前記カーボンブラックの含有割合が0.5重量%以上5重量%以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂回収物の融点が135℃以上160℃以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂回収物の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが、前記ポリプロピレン系樹脂の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトよりも高く、前記ポリプロピレン系樹脂回収物のメルトフローレイトと前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトとの差(ポリプロピレン系樹脂回収物のメルトフローレイト-ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイト)が0.1g/10分以上12g/10分以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、CBを含有するポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料を用いてポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造するのに好適な製造方法を提供する。本発明により製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いることにより、CBを含有するポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料が有効に使用されるとともに外観及び物性に優れたポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】発泡粒子の高温ピーク熱量を得るための、JIS K7121-1987に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に従って得たDSC曲線の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法について説明する。なお、以下において、ポストコンシューマ材料を「PCR」と略し、カーボンブラックを「CB」と略し、メルトフローレイトを「MFR」と略して記載する場合がある。また本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法を単に本発明の製造方法という場合がある。
【0013】
本発明の製造方法は、230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが1g/10分以上15g/10分以下であるポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料の回収物からなるポリプロピレン系樹脂回収物と、を用いる。ここで用いられる前記ポリプロピレン系樹脂とは、ポリプロピレン樹脂としてバージン樹脂のみを含む材料である。そのため以下において、適宜、MFRが所定範囲の前記ポリプロピレン系樹脂をバージンポリプロピレン系樹脂と呼ぶ場合がある。本発明は、これらの材料を、押出機にて溶融混合して混合物を得る混合工程と、当該混合工程で得られた混合物を前記押出機から押出し切断してポリプロピレン系樹脂粒子を得る押出工程と、当該押出工程で得られたポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、発泡剤を含浸した該ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る発泡工程と、を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法である。
本発明において、前記混合工程において得られる混合物は、バージンポリプロピレン系樹脂の配合割合が30重量%以上90重量%以下であり、ポリプロピレン系樹脂回収物の配合割合が10重量%以上70重量%以下となるよう調整される(ただし、バージンポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂回収物との合計は100重量%である)。
本発明では、所定範囲のカーボンブラックを含むポリプロピレン系樹脂回収物が用いられる。かかるポリプロピレン系樹脂回収物を好適に使用するために、本発明では、融点が135℃以上160℃以下の範囲であり、ポリプロピレン系樹脂回収物の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが、ポリプロピレン系樹脂の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトよりも高く、ポリプロピレン系樹脂回収物のメルトフローレイトとポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトとの差(ポリプロピレン系樹脂回収物のメルトフローレイト-ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイト)が0.1g/10分以上12g/10分以下であるポリプロピレン系樹脂回収物が用いられる。
【0014】
前記構成を備える本発明の製造方法によれば、樹脂材料としてバージンの一般的なポリプロピレン系樹脂のみを用いて製造された発泡粒子と同等の良好な成形性を示すポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供可能である。
本発明の製造方法により製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いることで、外観及び物性に優れた発泡粒子成形体を製造可能である。
以上のとおり本発明は、PCRを有効活用できることから、循環型社会に求められるマテリアルリサイクルや廃製品利用による二酸化炭素排出量削減等の環境問題解決に貢献する。また本発明は、従来、リサイクルが難しかったCBを含む黒色のポリプロピレン系樹脂発泡成形体のリサイクルを可能とした点でも有意義である。加えて本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体のPCRの回収物を用いて黒色の発泡粒子を提供するにあたり、新たに使用するCBの量を低減することができる。
更に、PCRとして用いられる使用済みのポリプロピレン系樹脂発泡成形体は、紫外線を含む太陽光に晒される屋外で保管される場合があり、紫外線による樹脂の劣化が問題となる場合があった。これに対し、CBが含有されたポリプロピレン系樹脂発泡成形体のPCRは、CBの紫外線遮蔽効果により、屋外保管時の紫外線の影響による樹脂の劣化が抑制されうる。
【0015】
ところで、押出樹脂のMFRの値は、上述する特許文献4にも言及されているとおり、発泡成形体を製造する際の指標として重要である。かかるMFRの値は、一般的に当該樹脂の分子鎖の分子量を反映する指標と認識されている。押出機に入れられ溶融混合されたた樹脂は、押出機内における熱や剪断の影響により当該樹脂の分子鎖の一部が切れて低分子量部分が増え、これによってMFRの値が高くなると理解されている。
しかし本発明者らの鋭意検討により、CBを含むポリプロピレン系樹脂発泡成形体のPCRの回収物のMFRの値は、上述する低分子量部分の増加の影響だけでなく、樹脂に対するCBの作用による影響を受けて変化することが推察された。そのため、CBを含まないポリプロピレン系樹脂発泡成形体のPCRの回収物の利用に関する従来の知見は、CBを含むポリプロピレン系樹脂発泡成形体のPCRの回収物の利用に転用され難く、これが、CBを含むポリプロピレン系樹脂発泡成形体のPCRの回収物の利用が進まない原因であると思われた。
そこで、本発明者らは、CBを含むポリプロピレン系樹脂発泡成形体のPCRの回収物と、バージンポリプロピレン系樹脂とを配合して発泡粒子を製造するにあたり、CBを含むポリプロピレン系樹脂発泡成形体のPCRの回収物のMFRと、バージンポリプロピレン系樹脂のMFRとの差に着眼した。本発明は、当該差を所定の範囲とすることで、所期の課題を達成可能とするものである。
以下に本発明の製造方法について更に詳細に説明する。なお、以下の説明において、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法により製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を単に発泡粒子という場合がある。
【0016】
[ポリプロピレン系樹脂]
本発明の製造方法は、後述するポリプロピレン系樹脂回収物とともに、ポリプロピレン系樹脂(バージンポリプロピレン系樹脂)が用いられる。
本発明において、バージンポリプロピレン系樹脂とは、バージン樹脂であるポリプロピレン樹脂を基材樹脂として含む樹脂材料である。バージンポリプロピレン系樹脂の形態は特に限定されないが、例えばペレット状等に造粒された粒子状物として取り扱われる。バージンポリプロピレン系樹脂は、実質的にバージン樹脂であるポリプロピレン樹脂のみを基材樹脂として含んでもよく、また本発明の目的効果を阻害しない範囲において、ポリプロピレン樹脂以外の他の樹脂や熱可塑性エラストマー等の高分子材料及び任意の添加剤を含んでもよい。
バージンポリプロピレン系樹脂に含まれるポリプロピレン樹脂としては、樹脂中のプロピレン成分単位が50重量%以上の樹脂をいい、プロピレン単独重合体、又はプロピレンと共重合可能な他のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えば、エチレンや、1-ブテン等の炭素数4以上のα-オレフィンが例示される。また前記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、更に二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。また、これらのポリプロピレン樹脂は、1種又は2種以上の組み合わせで用いられ得る。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂に適宜に含まれ得る前記高分子材料として、例えば以下に示すポリプロピレン樹脂以外の他の樹脂が例示される。他の樹脂の例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系樹脂や、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等が例示される。これらの樹脂は、1種又は2種以上の組み合わせで用いられ得る。
また前記高分子材料として、エチレン-ヘキセン共重合体や、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体等のオレフィン系エラストマーや、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体やスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、それらの水添物等のスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを用いることもできる。これらの熱可塑性エラストマーは、1種又は2種以上の組み合わせで用いられ得る。
【0018】
本発明は、上述する高分子材料として、他の樹脂及び前記熱可塑性エラストマーの何れか一方、又は組み合わせで用いることができる。バージンポリプロピレン系樹脂中の高分子材料の配合割合は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが更に好ましい。
【0019】
(メルトフローレイト)
本発明に用いられるバージンポリプロピレン系樹脂の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは、1g/10分以上15g/10分以下である。前記MFRの範囲内であれば、得らえる発泡粒子の発泡性、成形性が向上し、良好な発泡粒子成形体を得ることができる。かかる観点から、ポリプロピレン系樹脂のMFRが2g/10分以上であることが好ましく、4g/10分以上であることがより好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂のMFRは10g/10分以下であることが好ましく、8g/10分以下であることがより好ましい。
前記MFRは、JIS K7210-1:2014に基づいて、230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0020】
(融点)
上述するバージンポリプロピレン系樹脂の融点は限定されるものではないが、引張強さや50%歪圧縮強度により優れる発泡粒子成形体を得るという観点からは、140℃以上であることが好ましく、145℃以上であることがより好ましい。また、成形性に優れる発泡粒子とするという観点からは、バージンポリプロピレン系樹脂の融点が160℃以下であることが好ましく、155℃以下であることがより好ましい。前記融点は、JIS K7121-1987に基づいて測定される。この際、試験片の状態調節としては、前記規格における「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」が採用される。より具体的には、バージンポリプロピレン系樹脂略2mgを試験片として用い、JIS K7121-1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で23℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる融解ピークの頂点温度をバージンポリプロピレン系樹脂の融点とする。なお、DSC曲線において融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。測定装置としては、熱流束示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、型番:DSC7020)等が挙げられる。
【0021】
なお、上述するMFR及び融点の測定は、バージンのポリプロピレン樹脂及び任意で含有されるポリプロピレン樹脂以外の他の樹脂や熱可塑性エラストマー等の高分子材料、添加剤等を含むバージンポリプロピレン系樹脂を用いて行われる。
【0022】
[ポストコンシューマ材料の回収物]
本発明の製造方法には、上述するバージンポリプロピレン系樹脂とともに、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料の回収物からなるポリプロピレン系樹脂回収物が用いられる。
本発明に関し、ポストコンシューマ材料(PCR)とは、消費者が製品として使用した後の材料を指す。詳しくは、JIS Q14021:2000において定義されるとおり、ポストコンシューマ材料とは、家庭から排出される材料、又は製品のエンドユーザとしての商業施設、工業施設及び各種施設から本来の目的のためにはもはや使用できなくなった製品として発生する材料を指し、これには、流通経路から戻される材料が含まれる。またポストコンシューマ材料の回収物は、これら使用済みの材料が回収された物をいう。
前記ポリプロピレン系樹脂回収物は、使用済みのポリプロピレン系樹脂発泡成形体を回収し粉砕及び/又は溶融させてペレット化した回収ポリプロピレン系樹脂であることが一般的である。なお、本発明において、前記使用済みのポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造元は特に問われないが、例えば、当該製造元と本発明の製造方法を実施する会社が同じであることが好ましい。PCRとして自社製品を回収することにより、当該PCRの組成等を十分に把握することができ、また自社製品のリサイクルにより循環型社会に貢献することができるからである。
【0023】
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂回収物は、ポリプロピレン樹脂を含むポリプロピレン系樹脂及びCBを含む。上述するバージンポリプロピレン系樹脂に対し、ポリプロピレン系樹脂回収物に含まれるポリプロピレン系樹脂(以下、回収ポリプロピレン系樹脂ともいう)は、使用済みの発泡成形体から回収された点で相違する。回収ポリプロピレン系樹脂は、バージンポリプロピレン系樹脂と同様、ポリプロピレン樹脂を含み、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、ポリプロピレン樹脂以外の他の樹脂及び熱可塑性エラストマー等の高分子材料、あるいは任意の添加剤が含まれていても良い。回収ポリプロピレン系樹脂に含まれ得るポリプロピレン樹脂、高分子材料、添加剤の種類等は、上述にて説明したバージンポリプロピレン系樹脂と同様であるため、ここでは詳細の説明を割愛する。
なお、ポリプロピレン系樹脂回収物中の他の樹脂及び熱可塑性エラストマーの含有割合は、概ね10重量%以下の範囲であることが好ましい。
【0024】
ポリプロピレン系樹脂回収物を調製するために回収される使用済みのポリプロピレン系樹脂発泡成形体は、ポリプロピレン系樹脂を用いた押出発泡成形体であってもよいし、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いた型内成形体であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体であってもよい。特に、循環型社会の形成には使用済み廃棄物の回収物は、その元となる製品製造に使用する、いわゆる水平リサイクルルートの確立が望まれる。また、元となる製品に戻すことで製品性能維持が容易になる。本発明は発泡粒子の製造方法であることから、ポリプロピレン系樹脂回収物は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体のポストコンシューマ材料の回収物からなることが好ましい。
【0025】
[回収物の調製方法]
ポリプロピレン系樹脂回収物の調製方法は特に限定されないが、回収工程及び再生工程において、熱履歴の回数を少なくするよう配慮されることが好ましい。また、回収工程及び再生工程における加熱温度が過度に高くならないよう配慮されることが好ましい。
より具体的には、ポリプロピレン系樹脂回収物の調製方法としては、以下の方法が挙げられる。
(使用済みポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の収集、粉砕、溶融インゴットの製造)
一般にポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は嵩高い為に、製品形状での輸送は輸送効率悪くコストがかかる問題がある。この為、使用済み最終製品の解体・分別により使用済みポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体が発生する場所(使用済み最終製品の解体・分別施設など)の近郊に、ポリプロピレン系樹脂回収物の製造所を設置することが望ましい。しかしながら使用済み最終製品の解体・分別施設毎にポリプロピレン系樹脂回収物の製造所を設置することは、設備投資がかさみ経済的でない。このことから、使用済み最終製品の解体・分別施設、またはその近郊に選別・粉砕・溶融減容装置を設置し、使用済みの樹脂発泡粒子成形体を減容塊(いわゆる溶融インゴット)とすることが好ましい。そして前記減容塊をポリプロピレン系樹脂回収物の製造所に輸送する方法が経済的であり好ましい。
(選別)
収集された使用済みポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体には、包装袋やラベル等、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体以外のものが含まれる場合がある為、異物選別を行うことが好ましい。異物選別は作業者の目視選別で行っても良く、選別機等を使用しても良い。
(粉砕、溶融インゴット製造)
収集された使用済みポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の粉砕には、粉砕機を用いることが好ましい。粉砕機には、圧縮粉砕機やせん断粉砕機、衝撃粉砕機などがあるが、高倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体にはせん断粉砕機の使用が好ましい。粉砕方法は、例えば衝撃粉砕機などを用いて一度粗粉砕したものを、再度せん断粉砕機などを用いて細粉砕しても良いし、せん断粉砕機などを用いて一度に粉砕しても良い。特に、せん断粉砕機などの出口にパンチングメタルやスクリーンを設置したものを用いて粉砕物粒度を揃えつつ一工程で粉砕を行うものが経済的で好ましい。粉砕物の大きさに特に限りは無いが、1mm以上30mm以下の大きさとすることが好ましい。
得られた粉砕物は、加熱・減容して溶融インゴットとすることが好ましい。加熱・減容機には、押出機型やプレス型などがあるが、高倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体には押出機型の使用が好ましい。減容時の処理温度は特に限定はないが、ポリプロピレン系樹脂の熱劣化を避けるために出来るだけ低い温度で行うことが好ましく、220℃以下樹脂融点以上で行うことが好ましい。
(ポリプロピレン系樹脂回収物の製造)
溶融インゴットは、再度前述の粉砕機などを用いて粉砕した後、押出機を用いて溶融した後にペレット化し、ポリプロピレン系樹脂回収物ペレットとすることが好ましい。
前記粉砕機は、上述と同様の粉砕機を用いることができる。
前記押出機には、単軸押出機、2軸押出機などを使用することができるが、樹脂劣化を防ぐ観点から単軸押出機の使用が好ましい。押出機温度に特に制限は無いが、ポリプロピレン系樹脂の熱劣化を避けるために出来るだけ低い温度で行うことが好ましく、220℃以下樹脂融点以上で行うことが好ましい。
上述のとおり、押出機で溶融されたポリプロピレン系樹脂は一度フィルターを通して異物を取り除くことが好ましい。フィルターは、織金網や焼結金属などが用いられるが、織金網を用いるのが経済的であり好ましい。
(ペレット化)
上述のとおり溶融されたポリプロピレン系樹脂のペレット化は、溶融樹脂をダイスから水中若しくはミスト中に押出しながらダイス前面に取り付けた回転刃で連続的にカットし固化するアンダーウォーターカット法や、ダイスからストランド状に連続して押出した後に水槽で冷却固化し、その後にカット機で切断するストランドカット法などがあるが、ストランドカット法が経済的で好ましい。
ペレットの大きさに特に制限はないが、1~30mgのペレット重量とすることが好ましい。
以上にポリプロピレン系樹脂回収物の調製方法について説明したが、本発明の製造方法に用いられるポリプロピレン系樹脂回収物は、ポストコンシューマ材料として市販される市販品を用いてもよい。
【0026】
(カーボンブラック)
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂回収物は、回収ポリプロピレン系樹脂とともにCBを含む。
CBは、ポリプロピレン系樹脂回収物100重量%において、0.5重量%以上5重量%以下の範囲で含有される。CBの含有割合が低すぎると、良好な黒色の発泡成形体を提供するために新たに多量のCBを使用しなければならない。かかる観点から、ポリプロピレン系樹脂回収物100重量%におけるCBの含有割合は、1重量%以上であることが好ましく、1.5重量%以上であることがより好ましい。一方、CBの含有割合が高すぎるポリプロピレン系樹脂回収物を用いて製造された発泡粒子は、外観及び引張強さに優れる発泡成形体を提供できないおそれがある。かかる観点からは、ポリプロピレン系樹脂回収物100重量%におけるCBの含有割合は、4重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましい。
【0027】
(カーボンブラック量の測定方法)
ポリプロピレン系樹脂回収物に含まれるカーボンブラックの含有量は、JIS K6226-2:2003に基づいて行うことができる。測定装置は、例えばLECO社熱重量分析装置TGA701を用いることができる。具体的には、測定試料であるポリプロピレン系樹脂回収物約5gを秤量後に採取しるつぼに入れ、加熱炉内を窒素気流とし、(1)窒素雰囲気下、加熱炉の温度を室温から105℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、次いで(2)105℃で測定重量が平衡となるまで保持し、(3)105℃から550℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、(4)550℃で測定重量が平衡となるまで保持した後の燃焼残渣の重量W1を求め、更に(5)加熱炉気流を窒素から空気に換え550℃から950℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、(6)950℃で10分間保持した後の燃焼残渣の重量W2を求める。重量W1から重量W2を差し引いて求めた重量W3を、るつぼに入れた測定試料の重量で割った値に100を掛けることにより、ポリプロピレン系樹脂回収物100重量%におけるCBの含有量(重量%)を求めることができる。
【0028】
本発明においてCBとは、黒色の着色剤として用いられる炭素材であればよく、例えば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等を挙げることができる。中でも、ファーネスブラックは、ポリプロピレン系樹脂への分散性と材料コストとのバランスに優れるため、ポリプロピレン系樹脂回収物に含まれるCBとして好ましい。
【0029】
(融点)
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂回収物の融点は、135℃以上160℃以下である。融点が、135℃未満であると耐熱性に劣る場合がある。かかる観点から、ポリプロピレン系樹脂回収物の融点は、140℃以上であることが好ましく、145℃以上であることがより好ましい。一方、融点が、160℃を超えると成形加工性に劣る場合がある。かかる観点から、ポリプロピレン系樹脂回収物の融点は、155℃以下であることが好ましく、153℃以下であることがより好ましい。
【0030】
本発明の所期の課題をより良好に解決するという観点からは、バージンポリプロピレン系樹脂の融点とポリプロピレン系樹脂回収物の融点との差(バージンポリプロピレン系樹脂の融点-ポリプロピレン系樹脂回収物の融点)が-10℃以上+10℃以下であることが好ましく、-5℃以上+5℃以下であることがより好ましく、-3℃以上+3℃以下であることがさらに好ましい。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂回収物の融点は、JIS K7121-1987に基づいて測定することができる。この際、試験片の状態調節としては、前記規格における「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」が採用される。より具体的には、ポリプロピレン系樹脂回収物略2mgを試験片として用い、JIS K7121-1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で23℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる融解ピークの頂点温度をポリプロピレン系樹脂回収物の融点とする。なお、DSC曲線において融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。測定装置としては、熱流束示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、型番:DSC7020)等が挙げられる。なお、前記ポリプロピレン系樹脂回収物の融点測定は、カーボンブラックを含有した状態のポリプロピレン系樹脂回収物を試験片として測定される。
【0032】
(メルトフローレイト)
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂回収物の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトの値は、3g/10分以上であることが好ましく、5g/10分以上であることがより好ましく、7g/10分以上であることがさらに好ましい。一方、
ポリプロピレン系樹脂回収物の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトの値は、20g/10分以下であることが好ましく、10g/10分以下であることがより好ましい。なお、ポリプロピレン系樹脂回収物のメルトフローレイトの値が小さいことは、ポリプロピレン系樹脂回収物を構成する樹脂が過度に劣化していないことを意味する。ポリプロピレン系樹脂回収物のメルトフローレイトの値を小さく維持するためには過度に熱や剪断がかからないように製造することが好ましい。前記MFRは、JIS K7210-1:2014に基づいて測定される。
【0033】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂回収物の前記MFRの値は、バージンポリプロピレン系樹脂の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRよりも高く、ポリプロピレン系樹脂回収物のMFRとポリプロピレン系樹脂のMFRとの差(ポリプロピレン系樹脂回収物のMFR-ポリプロピレン系樹脂のMFR)が0.1g/10分以上12g/10分以下であることが重要である。即ち、ポリプロピレン系樹脂回収物のMFRの値自体が高いか低いかということよりもポリプロピレン系樹脂回収物のMFRとバージンポリプロピレン系樹脂のMFRとの差が前記範囲となるよう調整することが肝要である。該MFRとの差を前記範囲に調整することによって、成形性の良好なポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造することができる。また、当該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いることで、リサイクル材料を活用し外観及び物性に優れる発泡粒子成形体を提供することが可能である。本発明においては、ポリプロピレン系樹脂回収物がカーボンブラックを含むものであり、カーボンブラックを含むポリプロピレン系樹脂回収物のMFRとバージンポリプロピレン系樹脂のMFRとの関係が前記範囲を満足することがリサイクル材料を活用しつつ外観及び物性に優れる発泡粒子成形体を得るために重要となることを見出したものである。かかる観点から、ポリプロピレン系樹脂回収物のMFRとポリプロピレン系樹脂のMFRとの差(ポリプロピレン系樹脂回収物のMFR-ポリプロピレン系樹脂のMFR)が0.5g/10分以上であることが好ましく、1g/10分以上であることがより好ましく、2g/10分以上であることがさらに好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂回収物のMFRとポリプロピレン系樹脂のMFRとの差(ポリプロピレン系樹脂回収物のMFR-ポリプロピレン系樹脂のMFR)が10g/10分以下であることが好ましく、7g/10分以下であることがより好ましく、4g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0034】
なお、上述するポリプロピレン系樹脂回収物の融点及びMFRの測定は、ポリプロピレン樹脂を含む回収ポリプロピレン系樹脂、CB、並びに、任意で含有されるポリプロピレン樹脂以外の他の樹脂や熱可塑性エラストマー等の高分子材料、及び添加剤を含むポリプロピレン系樹脂回収物を用いて行われる。
【0035】
(灰分量)
一般的に、ポストコンシューマ材料は、製造工程内で回収されるリサイクル材料と異なり、使用環境による汚染、劣化、また回収後の保管条件や再生処理による品質変化が大きい。そのような不確定要素により、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体のPCRを用いて製造された発泡粒子成形体は、外観及び引張強さや圧縮強度といった物性が安定しない場合があった。そこで、発泡粒子成形体の品質の安定性を確保するという観点から、材料として使用するポリプロピレン系樹脂回収物の灰分量を指標とするとよい。具体的には、本発明の製造方法に用いられるポリプロピレン系樹脂回収物の灰分量は、10000重量ppm以下であることが好ましく、5000重量ppm以下であることがより好ましい。後述する測定方法により得られる灰分量が少なければ、ポリプロピレン系樹脂回収物の汚れの程度が低く品質変化も少ないと判断することができる。
【0036】
灰分量の測定方法:
ポリプロピレン系樹脂回収物の灰分としては、カルシウム、ナトリウム、ケイ素等が挙げられる。
このような灰分量の測定は、JIS K6226-2:2003に基づいて行うことができる。測定装置は、例えばLECO社熱重量分析装置TGA701を用いることができる。具体的には、測定試料であるポリプロピレン系樹脂回収物約5gを採取し秤量後にるつぼに入れ、加熱炉内を窒素気流とし、(1)窒素雰囲気下、加熱炉の温度を室温から105℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、次いで(2)105℃で測定重量が平衡となるまで保持し、(3)105℃から550℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、(4)550℃で測定重量が平衡となるまで保持し、(5)加熱炉気流を窒素から空気に換え550℃から950℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、(6)950℃で10分間保持した後の燃焼残渣の重量W1を求め、(7)室温まで冷却する。該燃焼残渣の重量W1を、るつぼに入れた測定試料の重量(5g)で割った値に100を掛けることにより得られた値(重量%)に10000を掛けて回収物の灰分量(重量ppm)とする。
【0037】
(その他の添加剤)
ポリプロピレン系樹脂回収物は、上述する回収ポリプロピレン系樹脂及びカーボンブラックに加え、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造上、適宜に添加される添加剤が含まれていてもよい。使用済みの発泡粒子成形体をリサイクルするため、含有される全ての成分を把握することが困難な場合があるが、ポリプロピレン系樹脂回収物の灰分量が前記範囲を満たすことによって、PCRとして好適に利用可能である。
【0038】
[添加剤]
前記混合物には、上述するバージンポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂回収物とともに、更に本発明の目的効果を阻害しない範囲において1種又は2種以上の添加剤が用いられてよい。前記添加剤としては、例えばCB等の着色剤、ホウ酸等の核剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、あるいは気泡調整剤等が例示されるがこれらに限定されない。前記添加剤の配合割合は、従来公知のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法を参照する等して適宜決定してよい。
【0039】
本発明の製造方法により製造される発泡粒子、又は当該発泡粒子を用いて製造される発泡粒子成形体が良好な黒色を呈するために、バージンポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂回収物とともに用いられる添加剤として、CBが用いられることが好ましい。かかるCBの配合割合は、上述するポリプロピレン系樹脂回収物に含有されるCBの含有量、及びバージンポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂回収物の配合割合等を勘案し、調整することができる。混合物中における前記CBの配合割合は、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。また、前記CBの配合割合は5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましい。
【0040】
[発泡粒子の構成]
本発明の製造方法により製造される発泡粒子は、単層の粒子であってもよいし、粒子の表面にポリオレフィン系樹脂からなる被覆層を有する多層樹脂発泡粒子であってもよい。前記被覆層は、従来公知の多層樹脂発泡粒子における被覆層と同様の構成とすることができる。
例えば、被覆層を構成する樹脂としてポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂と、適宜に含有される他の樹脂やエラストマー樹脂等の高分子材料及び任意の添加剤と、を含む。前記ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂又はポリプロピレン系樹脂と他の樹脂との共重合体、ポリエチレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂と他の樹脂との共重合体等が例示されるが、これに限定されない。被覆層を構成する樹脂は、前記ポリプロピレン系樹脂回収物を含んでいてもよい。被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂中のポリプロピレン系樹脂回収物の配合割合は、芯層を構成する樹脂中に含まれるポリプロピレン系樹脂回収物よりも少ないことが好ましい。発泡粒子同士の融着性、二次発泡性及び引張強さに優れる発泡粒子成形体が得られやすくなるという観点からは、被覆層を構成する樹脂には前記ポリプロピレン系樹脂回収物を含まないことが好ましい。
【0041】
前記ポリオレフィン系樹脂の融点は特に限定されないが、芯層を構成する芯層構成材料の融点又は軟化点を下回る温度であることが好ましい。これによって、本発明の製造方法により製造された発泡粒子を用いて発泡粒子の芯層を二次発泡可能な温度に加熱して型内成形する際、芯層より先に被覆層が溶融されて隣り合う発泡粒子同士の融着性を良好なものとすることができる。
なお、上述する芯層を構成するポリプロピレン樹脂の融点及び軟化点とは、バージンポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂回収物からなる混合物の融点及び軟化点を指す。より具体的には、本発明の製造方法を実施するにあたり、所定の割合で用いられるバージンポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂回収物と同じ割合の配合比率の混合物を調整し、これを融点又は軟化点の試料として用いることができる。
【0042】
被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは特に限定されないが、1g/10分以上であることが好ましく、2g/10分以上であることがより好ましい。一方、被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂の230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは、15g/10分以下であることが好ましく、8g/10分以下であることがより好ましい。前記MFRは、JIS K7210-1:2014に基づいて、230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0043】
上述する被覆層には本発明の目的効果を阻害しない範囲において1種又は2種以上の添加剤が用いられてよい。前記添加剤としては、前記混合物に添加されるものと同じ添加剤を用いることができる。前記添加剤の配合割合は、従来公知のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法を参照する等して適宜決定してよい。
【0044】
上述する被覆層にはポリオレフィン系樹脂に加えてCBを配合することが好ましい。これによって、良好な黒色を呈する多層樹脂発泡粒子を製造することができる。被覆層を構成する樹脂と被覆層に配合するCBとの合計100重量%におけるCBの配合割合は、0.5重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましい。被覆層を構成する樹脂と被覆層に配合するCBとの合計100重量%におけるCBの配合割合は、5重量%以下であることが好ましく、4重量%以下であることがより好ましい。
【0045】
芯層と被覆層との重量比は特に限定されないが、ポストコンシューマ材料の回収物を含む芯層を多く配合するという観点からは、芯層100重量部に対し、被覆層が20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることがさらに好ましい。芯層100重量部に対する被覆層の下限は、概ね1重量部である。芯層と被覆層との重量比が前記範囲を満足する発泡粒子は、発泡粒子同士の融着性に優れる発泡粒子成形体が得られやすくなるため好ましい。
【0046】
被覆層は、発泡状態であっても、無発泡状態であってもよいが、得られる発泡粒子成形体が、機械的強度に優れたものとなるためには、実質的に無発泡状態の樹脂層であることが好ましい。なお、ここでいう実質的に無発泡とは、気泡が全く存在しないもの(樹脂粒子を発泡させる際に一旦形成された気泡が溶融破壊されて気泡が消滅したものも包含する。)のみならず、得られる発泡粒子成形体の機械的強度に影響しない範囲で、極微小な気泡が僅かに存在するものも包含される。
【0047】
また、多層樹脂発泡粒子においては、芯層が被覆層で完全に覆われていても、一部の芯層が露出していても構わない。芯層が露出した構造とは、例えば、円柱状の芯層の側面のみが被覆層で覆われており、円柱の上面や底面に芯層が露出している構造などが挙げられる。
【0048】
以下に本発明の製造方法における各工程について説明する。本発明の製造方法は、混合工程、押出工程、発泡工程を含み、更に本発明の目的効果を阻害しない範囲において、更に異なる工程を追加してよく、また各工程は、互いに独立して実施されてもよいし、一部又は全部が重複していてもよい。
【0049】
[混合工程]
本発明の製造方法では、まず混合工程が実施される。混合工程は、バージンのポリプロピレン樹脂を含むバージンポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料の回収物からなるポリプロピレン系樹脂回収物と、適宜に用いられる添加剤と、を押出機に供給し、供給された材料を溶融すると共に混練し、これらの混合物を得る工程である。
前記混合物中の、バージンポリプロピレン系樹脂の配合割合が30重量%以上90重量%以下であり、かつポリプロピレン系樹脂回収物の配合割合が10重量%以上70重量%以下となるよう調整される。ただし、バージンポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂回収物との合計は100重量%とする。
ポリプロピレン系樹脂回収物を十分に活用するとともに、得られる発泡粒子の成形性をより良好なものとするという観点からは、混合物中の、バージンポリプロピレン系樹脂の配合割合が50重量%以上80重量%以下であり、かつポリプロピレン系樹脂回収物の配合割合が20重量%以上50重量%以下であることが好ましい。この場合にもバージンポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂回収物との合計は100重量%である。
【0050】
なお、混合物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、バージンポリプロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂回収物以外の、高分子材料を含有させても良い。高分子材料は、バージンポリプロピレン系樹脂に適宜に含まれ得る高分子材料と同様のものを用いることができる。高分子材料は、他の樹脂及び前記熱可塑性エラストマーの何れか一方、又は組み合わせで用いることができる。前記高分子材料を含有する場合、高分子材料の含有量は合計で、混合物(バージンポリプロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂回収物、およびそれら以外の高分子材料の合計)100重量%中に10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下である。
【0051】
本発明の製造方法により多層樹脂発泡粒子を製造する場合には、芯層を構成する芯層構成材料を調製するための混合工程と、被覆層を構成する被覆層構成材料を調製するための混合工程とを、独立して行うとよい。
【0052】
[押出工程]
次に、上述する混合工程で得られた混合物を押出機から押出し切断してポリプロピレン系樹脂粒子を得る押出工程を実施する。
具体的には、例えば、押出機の下流側に設けられた押出用ダイから混合物を押出してストランドを形成する。次いで、ペレタイザー等によりストランドを所望の寸法に切断することにより、ポリプロピレン系樹脂粒子(以下、単に樹脂粒子ともいう)が得られる。ストランドは、押出方向に直交する断面の形状が円形等である。このようにして得られた樹脂粒子は、例えば、円柱状等の柱状を呈する。
【0053】
なお、被覆層が設けられた多層構造の多層樹脂発泡粒子を製造する場合には、共押出用の押出装置が用いられるとよい。具体的には、押出機の下流側に設けられた共押出用ダイ内で芯層構成材料である混合物と、被覆層構成材料である被覆層を構成する被覆層構成材料とを合流させ、混合物の外周に、被覆層構成材料を積層して共押出すことにより、多層構造のストランドを形成する。次いで、上述と同様に、ストランドを所望の寸法に切断することにより、混合物からなる芯層と、芯層を被覆する被覆層とを有する多層構造の樹脂粒子が得られる。
【0054】
[発泡工程]
次に、押出工程で得られた樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、発泡剤を含浸した該樹脂粒子を発泡させて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る発泡工程を実施する。発泡工程については、後述する分散工程、発泡剤含浸工程、放出工程を有することが好ましい。
(分散工程)
分散工程は、容器内に入れられた水性媒体中に、押出工程で得られた樹脂粒子を分散させる工程である。水性媒体には、無機分散剤が含まれる。また、水性媒体は、無機分散剤以外の任意の添加剤を適宜含有していてもよい。
【0055】
水性媒体:
水性媒体は、樹脂粒子を容器内において分散させるための媒体である。水性媒体として、水、アルコール類、グリコール類、グリセリン等が挙げられ、中でも、排水処理の容易さ等の観点から水が好ましい。樹脂粒子の分散性及び発泡粒子の生産性を良好にするという観点からは、水性媒体に対する樹脂粒子の添加量は、水性媒体100重量部に対して、10重量部以上100重量部以下であることが好ましく、20重量部以上80重量部以下であることがより好ましい。
【0056】
無機分散剤:
無機分散剤は、水性媒体中で樹脂粒子を良好に分散させると共に、発泡工程時において発泡粒子同士のブロッキングを抑制するために用いられる。
発泡粒子の型内成形性を維持しつつ、後述する放出工程において発泡粒子同士の融着を抑制し易くするという観点から、無機分散剤の添加量は、樹脂粒子100重量部に対して、0.01重量部以上2重量部以下であることが好ましく、0.02重量部以上1重量部以下であることがより好ましく、0.03重量部以上0.8重量部以下であることが更に好ましい。
【0057】
無機分散剤としては、例えば、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ等の無機微粒子を使用することができる。これらの無機微粒子は、単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
任意の添加剤:
水性媒体は、無機分散剤に加え、更に分散助剤及び界面活性剤等の任意の添加剤を1種以上含んでいてもよい。分散助剤としては、例えば、硫酸アルミニウム等が挙げられる。また、界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらの添加剤は通常、樹脂粒子100重量部に対して0.01重量部以上1重量部以下の範囲で添加される。
【0059】
上述する分散工程の実施後、又は分散工程の一部又は全部と重複するタイミングで、発泡剤含浸工程が実施される。
発泡剤含浸工程は、一般的な発泡粒子製造方法において行われる、水性媒体中に分散された樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程である。例えば、樹脂粒子が入った密閉容器を密封し、密閉容器内に物理発泡剤を加える。これにより物理発泡剤を樹脂粒子に含浸させて発泡性樹脂粒子を得ることができる。
密閉容器内への物理発泡剤の添加は、樹脂粒子を発泡させる前の任意のタイミングで行われればよい。固体状態又は液体状態の発泡剤を分散工程時に樹脂粒子と共に水性媒体に添加し、その後、加温等により気体状態となった発泡剤を樹脂粒子に含浸させてもよい。また、分散工程と並行して、又は分散工程終了後に、密閉容器に気体である発泡剤を圧入して樹脂粒子に含浸させてもよい。
【0060】
発泡剤:
本発明に用いられる発泡剤は、一般的な発泡粒子を得るために用いられる発泡剤の中から適宜選択されるが、物理発泡剤が好ましい。
物理発泡剤の具体例としては、無機物理発泡剤及び/又は有機物理発泡剤を使用できる。無機物理発泡剤としては、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、水等が挙げられる。有機物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、及び、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0061】
これらの物理発泡剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上併用して用いられてもよい。これらの発泡剤のうち、好ましくは、二酸化炭素、窒素、空気等の無機物理発泡剤を主成分とする発泡剤が用いられ、より好ましくは、二酸化炭素が用いられる。本発明において、前記無機物理発泡剤を主成分とするとは、物理発泡剤が無機物理発泡剤を50モル%以上含有していることを意味する。物理発泡剤が無機物理発泡剤を70モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることがより好ましく、物理発泡剤が無機物理発泡剤のみからなることが更に好ましい。
【0062】
物理発泡剤の添加量は、樹脂粒子を構成する基材樹脂の種類や発泡剤の種類、目的とする発泡粒子の嵩密度等に応じて適宜決定される。例えば、物理発泡剤として二酸化炭素を用いた場合、二酸化炭素の添加量は、樹脂粒子100重量部に対して好ましくは0.1重量部以上30重量部以下、より好ましくは0.5重量部以上15重量部以下、更に好ましくは1重量部以上10重量部以下である。
【0063】
高温ピーク:
また、得られる発泡粒子の結晶状態を調整するために、上述する分散工程及び/又は発泡剤含浸工程において、密閉容器の昇温速度の調整や、密閉容器を所定の温度で所定時間保持する等の調整を行ってもよい。例えば、熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線において、得られる発泡粒子を構成する樹脂固有の融解ピーク(固有ピーク)よりも高温側に融解ピーク(高温ピーク)が現れるよう、調整することが可能である。
高温ピークを示す発泡粒子は、良好な発泡粒子成形体を得ることができる成形条件範囲がより広いという観点から好ましい。上述する高温ピークを得るための調整は、例えば、次のようにして行うことができる。上述する分散工程及び/又は発泡剤含浸工程において、(樹脂粒子の樹脂融点-20℃)以上(樹脂粒子の融解終了温度)未満の温度で10~60分程度保持する一段保持工程を行う。その後、(樹脂粒子の樹脂融点-15℃)以上(樹脂粒子の融解終了温度)未満の温度に調節する。そして、必要によりその温度で更に10~60分程度保持する二段保持工程を行う。次いで、後述する発泡工程を行うことにより、高温ピークを有する発泡粒子を製造することができる。なお、樹脂粒子の融解ピークが2つ以上現れる場合には、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を樹脂粒子の樹脂融点とする。高温ピークを形成するための前記(樹脂粒子の樹脂融点-15℃)以上(樹脂粒子の融解終了温度)未満の範囲内での保持は、該温度範囲内にて多段階に設定することもできるし、また、該温度範囲内で十分な時間をかけてゆっくりと昇温することによっても該高温ピークを形成することも可能である。なお、樹脂粒子の樹脂融点は、樹脂粒子を試験片として用い、JIS K7121-1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で23℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる融解ピークの頂点温度を樹脂粒子の樹脂融点とする。なお、DSC曲線において融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を樹脂融点とする。また、樹脂粒子の融解終了温度は、前記樹脂粒子の樹脂融点の測定において、2回目の昇温で得られる融解ピークの終了温度を樹脂粒子の融解終了温度とする。
【0064】
(放出工程)
上述する発泡剤含浸工程において発泡性樹脂粒子が得られた後、放出工程が実施される。
放出工程は、発泡性樹脂粒子を水性媒体と共に容器から放出して発泡させて発泡粒子を得る工程である。より具体的には、発泡性樹脂粒子を水性媒体と共に密閉容器の内圧よりも低い圧力下に放出することにより、発泡性樹脂粒子を発泡させる。かかる発泡方法は、嵩密度の低い発泡粒子を容易に得られ易く好ましい。
【0065】
(二段発泡工程)
上述のとおり製造される発泡粒子の嵩密度は、例えば、放出工程において、密閉容器の内容物を放出する際の、密閉容器内の温度や圧力等の発泡条件の適宜の変更によって調整可能である。
より嵩密度の低い発泡粒子を所望する場合、以下に示す二段発泡工程のように、発泡粒子を多段的に発泡させる工程を実施してもよい。二段発泡工程は、まず、上述のとおり得られた発泡粒子を加圧可能な密閉容器に貯留し、空気等の気体を該密閉容器内に圧入することにより加圧処理をして発泡粒子の気泡内の内圧を高める操作を行う。その後、該発泡粒子を密閉容器から取り出し、これをスチームや熱風を用いて加熱することにより、該発泡粒子をさらに発泡させることで二段発泡工程が実施される。かかる二段発泡工程を実施することにより、より低い嵩密度である発泡粒子(二段発泡粒子)を得ることが可能である。
【0066】
(多層樹脂発泡粒子の製造方法の変形例)
上述では、多層樹脂発泡粒子を製造するために、押出工程において共押出を実施する方法を説明した。しかし本発明において、多層樹脂発泡粒子を製造する方法はこれに限定されない。
例えば、多層樹脂発泡粒子の異なる製造方法として、混合工程により芯層構成材料である混合物を得て、これを押出工程に供し、予め粒子状に形成された単層の芯層粒子を準備する。そして、これを混合機能及び加熱機能を有する混合装置に投入して芯層粒子の表層部を加熱する。次いで被覆層を構成するためのポリオレフィン系樹脂を前記混合装置等に投入し、加熱された芯層粒子とポリオレフィン系樹脂とを混合することで、芯層粒子の表面に前記ポリオレフィン系樹脂組成物を被覆させることで被覆層を備える多層樹脂粒子を得る。当該多層樹脂粒子を発泡工程に供して発泡させることで多層樹脂発泡粒子が得られる。
【0067】
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子]
上述のとおり製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料の回収物からなるポリプロピレン系樹脂回収物を含み、循環型社会に求められるマテリアルリサイクルや廃製品利用による二酸化炭素排出量削減等の環境問題の解決に貢献する。また本発明により製造された発泡粒子は、バージンのポリプロピレン系樹脂のみを用いて製造された従来の発泡粒子と同等の良好な成形性を示し得るものであり、外観及び物性に優れた発泡粒子成形体を提供可能である。以下に、本発明の製造方法により製造された発泡粒子について説明する。
【0068】
(CBの含有量)
発泡粒子は、少なくともポリプロピレン系樹脂回収物に含有されたCBを含む。好ましい黒色の発泡粒子、あるいは黒色の発泡成形体を提供するという観点からは、発泡粒子中のCBの含有割合は、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。一方、発泡性に優れる発泡粒子とする観点及び成形性に優れる発泡粒子成形体とする観点からは、発泡粒子中のCBの含有割合は、5重量%以下であることが好ましく、4重量%以下であることがより好ましい。発泡粒子中のCBの含有割合は、当該発泡粒子を製造するために用いられた樹脂粒子におけるCBの含有割合と同等とみなすことができる。したがって、製造過程において配合するCBの配合割合(含有割合)及びポリプロピレン系樹脂回収物に含有されるCBの含有割合に、各樹脂の配合割合を考慮することにより発泡粒子に含まれるCBの含有量を求めることができる。あるいは、ポリプロピレン系樹脂回収物に含まれるカーボンブラックの含有量の測定方法と同様に、JIS K6226-2:2003に基づいて、発泡粒子に含まれるCBの含有量を測定することにより求めることもできる。
【0069】
(嵩密度)
本発明に関する発泡粒子の嵩密度は、特に限定されないが、軽量性、緩衝性に優れる発泡粒子成形体とする観点からは100kg/m以下であることが好ましく、50kg/m以下であることがより好ましく、30kg/m以下であることがさらに好ましい。一方、機械的強度に優れる発泡粒子成形体とするという観点からは10kg/m以上であることが好ましく、15kg/m以上であることがより好ましく、20kg/m以上であることがさらに好ましい。 発泡粒子の嵩密度は、以下の方法により測定される。まず、測定に供する発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置する。このようにして得られた重量W(g)の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させる。メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群の嵩体積V(L)を読み取り、発泡粒子群の重量Wを発泡粒子群の嵩体積Vで除す(W/V)。これにより求められる値をkg/mに単位換算することにより、発泡粒子の嵩密度(kg/m)を得ることができる。
【0070】
(高温ピーク)
発泡粒子は、熱流束示差走査熱量測定法により、樹脂固有の融解ピークと、樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得るまでの熱履歴により形成される樹脂の二次結晶に起因する高温側の融解ピーク(高温ピーク)とが測定されるものであることが好ましい。
即ち、発泡粒子を試験片とし、JIS K7121-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い加熱終了温度まで加熱溶融させる際に測定される1回目のDSC曲線が、2以上の融解ピークを有し、当該2以上の融解ピークに、発泡粒子を構成する樹脂に固有の融解ピーク(固有ピーク)と、該樹脂に固有の融解ピークの頂点の温度よりも高温側に頂点の温度を有する高温側の融解ピーク(高温ピーク)とが含まれ、次いで加熱終了温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い加熱終了温度まで加熱溶融させる際に測定される2回目のDSC曲線には該高温側の融解ピークが現れない発泡粒子であることが好ましい。
前記試験片とする発泡粒子は、1~3mg程度のものであればよい。発泡粒子が3mgよりも大きい場合には、発泡粒子を等分することによって1~3mgの試験片として用いればよい。上述のとおり高温ピークが確認される発泡粒子は、型内成形性に優れ、また、得られる発泡粒子成形体の圧縮強度、引張強さ等の機械的物性が向上する。
なお、上述においていう「発泡粒子を構成する樹脂」とは、材料として用いたバージンのポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン系樹脂回収物に含まれるポリプロピレン樹脂を指す。
【0071】
(気泡径)
本発明の製造方法により得られる発泡粒子の気泡径は特に限定されないが、発泡粒子の平均気泡径は50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。一方、発泡粒子の平均気泡径は300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。発泡粒子の平均気泡径が前記範囲を満足すると型内成形性に優れるとともに、得られた発泡粒子成形体が成形後の寸法回復性に優れ、圧縮物性などの機械的強度にも優れた成形体となるため好ましい。発泡粒子の平均気泡径は、発泡粒子を略二等分した切断面を顕微鏡で撮影した拡大写真に基づき、以下のとおり求めることができる。まず、発泡粒子の切断面拡大写真において発泡粒子の一方の表面から他方の表面に亘って、発泡粒子切断面の略中心を通る4本の線分を引く。ただし、該線分は、発泡粒子切断面の略中心から切断粒子表面へ等間隔の8方向に伸びる放射状の直線を形成するように引くこととする。次いで、前記4本の線分と交わる気泡の数の総数N(個)を求める。4本の各線分の長さの総和L(μm)を求め、総和Lを総数Nで除した値(L/N)を発泡粒子1個の平均気泡径とする。この作業を10個以上の発泡粒子について行い、各発泡粒子の平均気泡径を相加平均した値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0072】
[発泡粒子成形体]
本発明の製造方法により得られた発泡粒子を用いて型内成形することにより、発泡粒子成形体を得ることができる。例えば発泡粒子成形体は、次のようにして製造される。まず、所望する発泡粒子成形体の形状に対応したキャビティを有する成形型内に発泡粒子を充填し、スチーム等の加熱媒体により成形型内に充填された発泡粒子を加熱する。キャビティ内の発泡粒子は、加熱によって更に発泡すると共に、相互に融着する。これにより、発泡粒子同士が一体化し、キャビティの形状に応じた発泡粒子成形体が得られる。
前記発泡粒子を用いて製造された発泡粒子成形体は、表面外観においてボイド(粒子間の隙間)が少なく、色むらの発生が抑制され、外観に優れるとともに、引張強さ、50%ひずみ時の圧縮応力といった物性に優れる。
【0073】
(成形体密度)
発泡粒子成形体の密度は特に限定されないが、軽量性の観点からは100kg/m以下であることが好ましく、50kg/m以下であることがより好ましい。一方、機械的物性に優れる成形体とする観点からは、10kg/m以上であることが好ましく、30kg/m以上であることがより好ましい。
前記成形体密度は、発泡粒子成形体の重量を測定し、この重量を水没法により求めた発泡粒子成形体の体積で割り算することにより求められる。
【0074】
(引張強さ)
発泡粒子成形体の引張強さは特に限定されないが、引張強さに優れ破断し難い発泡粒子成形体とする観点から500kPa以上であることが好ましく、600kPa以上であることがより好ましい。一方、発泡粒子成形体の引張強さの上限は概ね1000kPa程度である。
発泡粒子成形体の引張強さは、JIS K6767:1999に記載の引張試験方法に基づき求めることができる。発泡粒子成形体の中心部分からスキン層を含まないように厚み10mmの板状片を切り出した後、プレス機を用いてダンベル状1号形に打ち抜き、試験片を作製する。この試験片を引張試験用オートグラフ(株式会社島津製作所製オートグラフAGS-X万能試験機)を用い、試験速度500mm/minで試験し、引張強さを求める。
【0075】
(50%ひずみ時の圧縮応力)
発泡粒子成形体の50%ひずみ時の圧縮応力は特に限定されないが、圧縮物性に優れる発泡粒子成形体を得る観点から200kPa以上であることが好ましく、250kPa以上であることがより好ましい。一方、発泡粒子成形体の50%ひずみ時の圧縮応力の上限は、概ね500kPa程度である。
発泡粒子成形体の50%ひずみ時の圧縮応力は、JIS K6767:1999に基づき求めることができる。発泡粒子成形体からスキン層を除いた長さ50mm、幅50mm、厚み25mmの試験片を切り出し、圧縮速度10mm/minで50%まで圧縮したときの応力(kPa)を測定することにより得られる値である。なお、50%ひずみ時の圧縮応力は、発泡粒子成形体の剛性の指標である。
【実施例
【0076】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、以下のとおり実施された各実施例及び各比較例に関し、得られた発泡粒子の嵩密度、高温ピーク熱量、気泡径、及び得られた発泡粒子成形体の成形体密度、引張強さ、50%ひずみ時の圧縮応力を測定した。また発泡粒子成形体の外観について評価を行った。測定結果及び評価結果は、表2及び表3に示す。表中、カーボンブラックはCBと記載する。
【0077】
表1に示すバージンのポリプロピレン樹脂100重量%からなる樹脂1~3をバージンポリプロピレン系樹脂(バージンPP系樹脂)又は被覆層形成用のポリオレフィン系樹脂(PO系樹脂)として用いた。また表1に示す回収物1~8をポリプロピレン系樹脂回収物(PP系樹脂回収物)として用いた。
【0078】
(ポリプロピレン系樹脂回収物の灰分量の測定)
ポリプロピレン系樹脂回収物の灰分量の測定は、JIS K6226-2:2003に基づいて行った。測定装置は、例えばLECO社熱重量分析装置TGA701を用いた。具体的には、測定試料であるポリプロピレン系樹脂回収物約5gを採取し秤量後にるつぼに入れ、加熱炉内を窒素気流とし、(1)窒素雰囲気下、加熱炉の温度を室温から105℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、次いで(2)105℃で測定重量が平衡となるまで保持し、(3)105℃から550℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、(4)550℃で測定重量が平衡となるまで保持し、(5)加熱炉気流を窒素から空気に換え550℃から950℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、(6)950℃で10分間保持した後の燃焼残渣の重量W1を求め、(7)室温まで冷却した。該燃焼残渣の重量W1を、るつぼに入れた測定試料の重量(5g)で割った値に100を掛けることにより得られた値(重量%)に10000を掛けて回収物の灰分量(重量ppm)を求めた。上記操作を2回行い、それらの算術平均値をポリプロピレン系樹脂回収物の灰分量とした。
【0079】
(ポリプロピレン系樹脂回収物中のカーボンブラックの含有割合の測定)
ポリプロピレン系樹脂回収物に含まれるカーボンブラックの含有割合は、JIS K6226-2:2003に基づいて行った。測定装置は、LECO社熱重量分析装置TGA701を用いた。具体的には、測定試料であるポリプロピレン系樹脂回収物約5gを秤量後に採取しるつぼに入れ、加熱炉内を窒素気流とし、(1)窒素雰囲気下、加熱炉の温度を室温から105℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、次いで(2)105℃で測定重量が平衡となるまで保持し、(3)105℃から550℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、(4)550℃で測定重量が平衡となるまで保持した後の燃焼残渣の重量W1を求め、更に(5)加熱炉気流を窒素から空気に換え550℃から950℃まで昇温速度10℃/minで加熱し、(6)950℃で10分間保持した後の燃焼残渣の重量W2を求めた。重量W1から重量W2を差し引いて求めた重量W3を、るつぼに入れた測定試料の重量で割った値に100を掛けることにより、ポリプロピレン系樹脂回収物100重量%におけるCBの含有量(重量%)を求めた。上記操作を2回行い、それらの算術平均値をポリプロピレン系樹脂回収物中のカーボンブラックの含有割合とした。
【0080】
(ポリプロピレン系樹脂回収物の融点の測定)
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂回収物の融点は、JIS K7121-1987に基づいて測定した。この際、試験片の状態調節としては、前記規格における「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」を採用した。より具体的には、ポリプロピレン系樹脂回収物略2mgを試験片として用い、JIS K7121-1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で23℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる融解ピークの頂点温度をポリプロピレン系樹脂回収物の融点とした。なお、DSC曲線において融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とした。測定装置としては、熱流束示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、型番:DSC7020)を用いた。なお、前記ポリプロピレン系樹脂回収物の融点測定は、カーボンブラックを含有した状態のポリプロピレン系樹脂回収物を試験片として測定した。
【0081】
<実施例1>
(樹脂粒子の調製)
内径50mmの芯層形成用押出機、該芯層形成用押出機の下流側に付設された多層ストランド形成用ダイ及び内径30mmの被覆層形成用押出機を備える製造装置を準備した。なお、製造装置は、被覆層形成用押出機の下流側と、多層ストランド形成用ダイとが接続されており、ダイ内で各層を形成するための溶融混練物の積層が可能であると共に、共押出が可能な構成とした。
芯層を構成する芯層形成材料として、表1に示す樹脂1(プロピレン系ランダム共重合体)及び回収物1を表2に示す配合割合で用いた。これらの材料に加え、カーボンブラック(ファーネスブラック)及び気泡調整剤としてホウ酸亜鉛(Borax社製「Fire Break ZB」)を用いた。なお、配合したカーボンブラック及びホウ酸亜鉛の配合割合は、混合物(バージンPP系樹脂、PP系樹脂回収物及び添加剤の合計)を100重量%としたときの割合である。前記芯層形成材料を芯層形成用押出機に供給し溶融混練した。
被覆層を構成するポリオレフィン系樹脂として、表1に示す樹脂2(プロピレン系ランダム共重合体)及びCB(ファーネスブラック)を表2に示す配合割合で用い、これらを被覆層形成用押出機に供給して溶融混練した。なお、被覆層に配合したカーボンブラックの配合割合は、樹脂2と被覆層に配合したカーボンブラックとの合計を100重量%としたときの割合である。
上述のとおり溶融混練して得られた各層形成用の混合物を、多層ストランド形成用ダイに導入してダイ内で合流させ、ダイの下流側に取り付けた口金の細孔から、2層構造(被覆層/芯層構造)を有する多層ストランドを押出した。押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーにて切断し、1個当たりの平均重量が1.0mgの円柱形状の樹脂粒子を得た。
【0082】
(発泡粒子の調製)
得られた樹脂粒子20kgを、水性媒体である水60Lと共に、内容量100Lの密閉容器内に供給した。また、樹脂粒子100重量部に対して、無機分散剤としてカオリン0.4重量部、分散助剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.045重量部(有効成分として)、硫酸アルミニウム0.018重量部をそれぞれ密閉容器内に添加した。
次いで、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を圧入し、ゲージ圧で1.8MPa(G)となるまで加圧した。なお、(G)を付した圧力は、ゲージ圧、つまり、大気圧を基準とした圧力の値である。その後、密閉容器内を撹拌しながら2℃/分の昇温速度で、発泡温度(151.8℃)になるまで加熱昇温し、同温度で15分間保持した。これにより、得られる発泡粒子のDSC測定による吸熱曲線に高温ピークが現れるよう調整した。
その後、密閉容器の内容物(樹脂粒子及び水)を大気圧下に放出して、嵩密度77kg/mの発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。
【0083】
(二段発泡)
上述のとおり得た一段発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境に24時間放置して養生を行った。そして加圧可能な密閉容器に養生後の一段発泡粒子を充填し、当該密閉容器内の圧力を常圧から上昇させて発泡粒子を加圧した。発泡粒子を加圧した状態を所定時間維持して空気を発泡粒子の気泡内に含浸させた。その後、密閉容器から一段発泡粒子を取り出し、発泡粒子の気泡の内圧が0.7MPa(G)である一段発泡粒子を得た。その後、この一段発泡粒子を二段発泡装置に供給した。該装置内にスチームを供給して一段発泡粒子を発泡させて、嵩密度22kg/mの発泡粒子を得た。二段発泡により得られた当該発泡粒子を以下の測定や発泡粒子成形体の製造等に用いた。
【0084】
(発泡粒子の測定)
上述のとおり得られた一段発泡粒子及び二段発泡粒子の嵩密度を以下のとおり測定した。また一段発泡粒子の高温ピーク熱量、気泡径を以下のとおり測定した。
<発泡粒子の嵩密度>
測定に供する発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置した。このようにして得られた重量W(g)の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させた。メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群の嵩体積V(L)を読み取り、発泡粒子群の重量Wを発泡粒子群の嵩体積Vで除した(W/V)。これにより求められる値をkg/mに単位換算することにより、発泡粒子の嵩密度(kg/m)を得た。
<発泡粒子の高温ピーク熱量>
約1mgの発泡粒子を試験片とした。JIS K7121-1987に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に従って試験片を加熱溶融させ、この際のDSC曲線を得た。測定温度範囲は23℃から試験片の融解ピーク終了時よりも30℃高い温度までとし、加熱時の昇温速度は10℃/分として1回目のDCS曲線を得た。
このようにして得られた1回目のDSC曲線を図1に示す。当該DSC曲線において、DSC曲線上における80℃に相当する点Iと、発泡粒子の融解終了温度に相当する点IIとを結ぶ直線を引いた。なお、融解終了温度は、高温ピークbにおける高温側の端点であり、DSC曲線における、高温ピークbと、高温ピークbよりも高温側のベースラインとの交点である。
図1に示すとおり、点Iと点IIとを結ぶ直線を引いた後、固有ピークaと高温ピークbとの間に存在する極大点IIIを通りグラフの縦軸に平行な直線と、点Iと点IIとを結んだ直線との交点をIVとした。
そして、点Iと点IVを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点Iと点IIIとを結ぶDSC曲線の面積を固有ピークaの面積とした。また点IVと点IIとを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点IIIと点IIとを結ぶDSC曲線によって囲まれる部分(斜線部分)の面積を高温ピークbの面積とし、これを発泡粒子の高温ピーク熱量の値とした。
上述のとおり1回目のDSC曲線を得た後、加熱終了温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い加熱終了温度まで加熱溶融させる際に測定される2回目のDSC曲線を得た。2回目のDSC曲線には高温ピークが現れないことを確認した。
【0085】
(発泡粒子の平均気泡径)
発泡粒子を二等分した断面の写真を撮影した。撮影した発泡粒子の切断面拡大写真において発泡粒子の一方の表面から他方の表面に亘って、発泡粒子切断面の略中心を通る4本の線分を引いた。なお、該線分は、発泡粒子切断面の略中心から切断粒子表面へ等間隔の8方向に伸びる放射状の直線を形成するように引いた。次いで、前記4本の線分と交わる気泡の数の総数N(個)を求めた。4本の各線分の長さの総和L(μm)を求め、総和Lを総数Nで除した値(L/N)を発泡粒子1個の平均気泡径とした。この作業を30個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の平均気泡径を相加平均した値を発泡粒子の平均気泡径とした。
【0086】
(発泡粒子成形体の製造)
上述のとおり得られた発泡粒子を、加圧式充填ホッパーに充填した後に圧縮空気で0.20MPa(G)に加圧した。この発泡粒子を直ちに、縦400mm×横300mm×高さ80mmの直方体の成形体を成形可能な成形キャビティを有する成形型(金型)に充填して以下の加熱方法で加熱を行った。加熱方法は、金型の両面に設けられたドレン弁を開放した状態で当該金型にスチームを供給して予備加熱(排気工程)を行った。その後、金型の一方側からスチームを供給して加熱し、更に金型の他方側からスチームを供給して加熱を行った。続いて、0.32MPa(G)の成形加熱スチーム圧力で、金型の両側からスチームを供給して加熱した。加熱終了後、放圧し、20秒間の水冷を行った後に発泡粒子成形体の発泡力による表面圧力が0.05MPa(G)になるまでバキューム冷却した後、金型を開放し発泡粒子成形体を取り出した。得られた発泡粒子成形体を80℃のオーブンにて12時間養生した後、室温まで徐冷して前記サイズの直方体の発泡粒子成形体を得た。
得られた発泡粒子成形体について、下記評価及び測定を行った。
【0087】
(発泡粒子成形体の評価)
<外観評価(2次発泡基準)>
発泡粒子成形体の表面外観の評価として、発泡粒子成形体の中央部に100mm×100mmの矩形を描き、矩形状のエリアの角から対角線上に線を引き、その線上の1mm×1mmの大きさ以上のボイド(間隙)の数を数え、発泡粒子間のボイド(隙間)の度合い以下のように評価した。
4(◎):ボイドの数が5個未満であった。
3(〇):ボイドの数が5個以上10個未満であった。
2(△):ボイドの数が10個以上15個未満であった。
1(×):ボイドの数が15個以上であった。
<外観(色目基準)>
目視にて、発泡粒子成形体の板面に著しい色むらがある(1)から色むらがない(4)までの4段階評価で色むらの評価を行い、5人の観者の評価の平均値をもとに以下の基準で発泡粒子成形体の色むらを評価した。なお、観者は事前に一定の基準で色むらの評価ができるよう訓練された者である。
4(◎):4点以上
3(〇):3.5点以上4点未満
2(△):3点以上3.5点未満
1(×):3点未満
【0088】
(発泡粒子成形体の物性の測定)
<成形体密度>
発泡粒子成形体を50mm×50mm×50mmにカットして試験片とした。試験片の重量を測定し、その重量を水が注がれたメスシリンダーに沈めて水位の上昇を測定して求めた体積で割り算することにより成形体密度とした。
<引張強さ>
JIS K6767:1999に基づき測定した値である。発泡粒子成形体の中心部分からスキン層を含まないように厚み10mmの板状片を切り出した後にプレス機を用いてダンベル状1号型に打ち抜き試験片を作製した。この試験片を標準状態で24時間状態調整後、島津製作所製オートグラフAGS-X万能試験機を用い、試験速度500mm/minで試験し、引張強さを求めた。なお、試験で得られた最大荷重を引張強さとし、5個の試験片で求めた引張強さの平均値を表中に記載した。
<50%ひずみ時の圧縮応力>
発泡粒子成形体からスキンを除いた縦50mm×横50mm×厚み25mmの試験片を切り出し、JIS K6767:1999に基づき、圧縮速度10mm/分にて圧縮試験を行い発泡粒子成形体の50%圧縮応力を求めた。試験は5個の試験片について行い、得られた値の平均値を50%ひずみ時の圧縮応力として表中に記載した。
【0089】
実施例2~9、比較例1~6、参考例1、2を以下のとおり実施し、実施例1と同様に測定及び評価を行った。但し、比較例2、3において製造された発泡粒子成形体は、発泡粒子間の隙間が多く脆い状態であり、また比較例4において製造された発泡粒子成形体は収縮が激しく、いずれも成形不良であった。したがってこれらは評価及び物性の測定は行わなかった。
(実施例2~5)
用いる樹脂材料及び添加剤を、表2に示す内容及び配合割合としたこと以外は、実施例1と同様に発泡粒子及び発泡粒子成形体を製造した。
(実施例6)
用いる樹脂材料及び添加剤を、表2に示す内容及び配合割合とし、二段発泡を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に発泡粒子及び発泡粒子成形体を製造した。
(実施例7,8)
芯層を構成するバージンポリプロピレン系樹脂として、表1に示す樹脂3(プロピレン系ランダム共重合体)を用いて、回収物及び添加剤を、表2に示す内容及び配合割合としたこと以外は、実施例1と同様に発泡粒子及び発泡粒子成形体を製造した。
(実施例9)
用いる樹脂材料及び添加剤を、表2に示す内容及び配合割合とし、被覆層を設けず、単層の発泡粒子を製造したこと以外は、実施例1と同様に発泡粒子及び発泡粒子成形体を製造した。
(比較例1~6)
用いる樹脂材料及び添加剤を、表3に示す内容及び配合割合としたこと以外は、実施例1と同様に発泡粒子及び発泡粒子成形体を製造し、実施例1と同様の測定及び評価を行った。
(参考例1)
回収物を用いなかったこと以外は実施例1と同様に発泡粒子及び発泡粒子成形体を製造し、実施例1と同様の測定及び評価を行った。バージンポリプロピレン樹脂だけで構成された多層の発泡粒子及び発泡粒子成形体を参考のために表3に示す。
(参考例2)
回収物を用いず、かつ被覆層を設けなかったこと以外は実施例1と同様に発泡粒子及び発泡粒子成形体を製造し、実施例1と同様の測定及び評価を行った。バージンポリプロピレン樹脂だけで構成された単層の発泡粒子及び発泡粒子成形体を参考のために表3に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
上述にて説明する本発明は、以下の技術思想を包含する。
(1)230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが1g/10分以上15g/10分以下であるポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料の回収物からなるポリプロピレン系樹脂回収物とを押出機にて溶融混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた前記混合物を前記押出機から押出し切断してポリプロピレン系樹脂粒子を得る押出工程と、
前記押出工程で得られた前記ポリプロピレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、発泡剤を含浸した該ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る発泡工程と、
を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
前記混合物中の、前記ポリプロピレン系樹脂の配合割合が30重量%以上90重量%以下であり、かつ前記ポリプロピレン系樹脂回収物の配合割合が10重量%以上70重量%以下であり(ただし、ポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂回収物との合計は100重量%である)、
前記ポリプロピレン系樹脂回収物がカーボンブラックを含み、前記ポリプロピレン系樹脂回収物中の前記カーボンブラックの含有割合が0.5重量%以上5重量%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂回収物の融点が135℃以上160℃以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂回収物の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが、前記ポリプロピレン系樹脂の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトよりも高く、前記ポリプロピレン系樹脂回収物のメルトフローレイトと前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトとの差(ポリプロピレン系樹脂回収物のメルトフローレイト-ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイト)が0.1g/10分以上12g/10分以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(3)前記ポリプロピレン系樹脂回収物の灰分量が10000重量ppm以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(4)前記ポリプロピレン系樹脂回収物の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが3g/10分以上20g/10分以下であることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(5)前記混合物中の、前記ポリプロピレン系樹脂の配合割合が50重量%以上80重量%以下であり、かつ前記ポリプロピレン系樹脂回収物の配合割合が20重量%以上50重量%以下である(ただし、ポリプロピレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂回収物との合計は100重量%である)であることを特徴とする前記(1)から(4)のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(6)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を試験片とし、JIS K7121-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い加熱終了温度まで加熱溶融させる際に測定される1回目のDSC曲線が、2以上の融解ピークを有し、前記2以上の融解ピークに、前記樹脂発泡粒子を構成する樹脂に固有の融解ピークと、該樹脂に固有の融解ピークの頂点の温度よりも高温側に頂点の温度を有する高温側の融解ピークとが含まれ、
次いで前記加熱終了温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い加熱終了温度まで加熱溶融させる際に測定される2回目のDSC曲線には該高温側の融解ピークが現れないことを特徴とする前記(1)から(5)のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(7)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が、表面にポリオレフィン系樹脂からなる被覆層を有する多層樹脂発泡粒子であることを特徴とする前記(1)から(6)のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(8)前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトが2g/10分以上8g/10分以下であることを特徴とする前記(1)から(7)のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(9)前記ポリプロピレン系樹脂回収物が、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体のポストコンシューマ材料の回収物からなることを特徴とする前記(1)から(8)のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。

【要約】      (修正有)
【課題】カーボンブラック(CB)を含有するポリプロピレン(PP)系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料を含むPP系樹脂発泡粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイト(MFR)が1~15g/10分であるPP系樹脂と、PP系樹脂発泡成形体のポストコンシューマ材料の回収物からなるPP系樹脂回収物とを押出機にて溶融混合する混合工程と、押出工程と、発泡工程と、を含み、混合物中の、PP系樹脂の配合割合が30~90重量%、PP系樹脂回収物の配合割合が10~70重量%(PP系樹脂と回収物との合計は100重量%)、PP系樹脂回収物中のCBの含有割合が0.5~5重量%、PP系樹脂回収物の融点が135~160℃、PP系樹脂回収物のMFRが、PP系樹脂のMFRよりも高く、前記PP系樹脂回収物のMFRと前記PP系樹脂のMFRとの差が0.1~12g/10分である。
【選択図】なし
図1