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特許7223822抗ヒトパピローマウイルス16 E6 T細胞受容体
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  • 特許-抗ヒトパピローマウイルス16  E6  T細胞受容体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】抗ヒトパピローマウイルス16 E6 T細胞受容体
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/12 20150101AFI20230209BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230209BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230209BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230209BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230209BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230209BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230209BHJP
【FI】
A61K35/12
A61K39/395 S
A61P35/00
A61P31/20
A61K48/00
C12N15/12 ZNA
C12N5/10
C12N5/0783
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021166407
(22)【出願日】2021-10-08
(62)【分割の表示】P 2019219105の分割
【原出願日】2014-07-14
(65)【公開番号】P2022017292
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】61/846,167
(32)【優先日】2013-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒンリクス、クリスチャン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、スティーヴン エイ.
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-509948(JP,A)
【文献】特表2013-505734(JP,A)
【文献】国際公開第2007/131092(WO,A2)
【文献】Scholten et al.,Cellular Oncology,2010年,Vol.32, No.1-2,p.43-56
【文献】LYONS GRETCHEN EIBEN,IMMUNOTHERAPEUTIC STRATEGIES AGAINST HUMAN PAPILLOMAVIRUS INDUCED CERVICAL CANCER,DISSERTATION,2004年12月,P79-104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/12
A61P 35/00
A61P 31/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において病態を治療又は予防するための組成物であって、ヒトパピローマウイルス(HPV)16 E6に対する抗原特異性を有し且つヒト可変領域及びマウス定常領域を含むT細胞受容体(TCR)を発現する1以上の宿主細胞を含み、TCRが、配列番号3のα鎖相補性決定領域(CDR)1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、配列番号5のα鎖CDR3アミノ酸配列、配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8のβ鎖CDR3アミノ酸配列を含み、
病態が、がん、HPV 16感染、又はHPV陽性の前悪性であり、
1以上の宿主細胞が、哺乳動物に対して同種異系又は自己である
組成物。
【請求項2】
TCRが、配列番号2のアミノ酸配列を含むHPV 16 E629-38に対する抗原特異性を有する、請求項1に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項3】
TCRが、配列番号15及び16のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項4】
TCRが、配列番号17及び18のアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項5】
哺乳動物において病態を治療又は予防するための組成物であって、HPV16 E6に対する抗原特異性を有し且つ配列番号3のα鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、配列番号5のα鎖CDR3アミノ酸配列、配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8のβ鎖CDR3アミノ酸配列を含む単離又は精製されたTCRを発現する1以上の宿主細胞を含み、
病態が、がん、HPV 16感染、又はHPV陽性の前悪性であり、
1以上の宿主細胞が、哺乳動物に対して同種異系又は自己である
組成物。
【請求項6】
TCRが配列番号9及び10のアミノ酸配列を含む、請求項1~3及び5のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項7】
TCRが配列番号13及び14のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項8】
TCRが配列番号11及び12のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項9】
哺乳動物において病態を治療又は予防するための組成物であって、TCR又はその機能的部分を含む単離又は精製されたポリペプチドを発現する1以上の宿主細胞を含み、TCR又はその機能的部分が、配列番号3のα鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、配列番号5のα鎖CDR3アミノ酸配列、配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8のβ鎖CDR3アミノ酸配列を含み且つヒトパピローマウイルス(HPV)16 E6に対する抗原特異性を有し、
病態が、がん、HPV 16感染、又はHPV陽性の前悪性であり、
1以上の宿主細胞が、哺乳動物に対して同種異系又は自己である
組成物。
【請求項10】
ポリペプチドが配列番号9及び10のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項11】
ポリペプチドが配列番号11及び12のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項12】
ポリペプチドが配列番号17及び18のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項13】
哺乳動物において病態を治療又は予防するための組成物であって、TCR又はその機能的部分を含む単離又は精製されたタンパク質を発現する1以上の宿主細胞を含み、TCR又はその機能的部分が、配列番号3のα鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号4のα鎖CDR2アミノ酸配列、配列番号5のα鎖CDR3アミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、並びに配列番号6のβ鎖CDR1アミノ酸配列、配列番号7のβ鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8のβ鎖CDR3アミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み且つヒトパピローマウイルス(HPV)16 E6に対する抗原特異性を有し、
病態が、がん、HPV 16感染、又はHPV陽性の前悪性であり、
1以上の宿主細胞が、哺乳動物に対して同種異系又は自己である
組成物。
【請求項14】
タンパク質が配列番号9のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖及び配列番号10のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含む、請求項13に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項15】
タンパク質が配列番号11のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖及び配列番号12のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含む、請求項13又は14に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項16】
タンパク質が配列番号17のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖及び配列番号18のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含む、請求項13又は14に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項17】
タンパク質が融合タンパク質である、請求項13~16のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項18】
1以上の宿主細胞が、(a)配列番号31~36又は(b)配列番号19及び20のヌクレオチド配列を含む核酸を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項19】
1以上の宿主細胞が、(a)配列番号23及び24又は(b)配列番号25及び26のヌクレオチド配列を更に含む核酸を含む、請求5~6、9~10、及び13~14のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項20】
1以上の宿主細胞が、(a)配列番号21及び22又は(b)配列番号27及び28のヌクレオチド配列を含む核酸を含む、請求5~6、9~10、及び13~14のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項21】
1以上の宿主細胞が、コドン最適化されたヌクレオチド配列を含む核酸を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項22】
1以上の宿主細胞が配列番号38及び39のヌクレオチド配列を含む核酸を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項23】
1以上の宿主細胞が配列番号29又は配列番号30のヌクレオチド配列を含む核酸を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項24】
1以上の宿主細胞がヒトのである、請求項1~23のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項25】
宿主細胞集団を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項26】
医薬上許容される担体を更に含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項27】
病態が、子宮頸部、中咽頭、肛門、肛門管、肛門直腸、膣、外陰部又は陰茎の癌である、請求項1~26のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【請求項28】
病態がHPV 16陽性癌である、請求項1~27のいずれか一項に記載の、病態を治療又は予防するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2013年7月15日出願の米国仮特許出願第61/846,167号(参照により、そ
の全体が本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
電子提出された物件の参照による組み込み
本明細書と同時提出され以下のとおり特定される、コンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:45,955バイトのASCII(テキスト)ファイル1件、名称「716827ST25.TXT」、2014年5月27日作成
【背景技術】
【0003】
発明の背景
いくつかのタイプの癌、例えば子宮頸癌などの主因は、ヒトパピローマウイルス(HPV
)感染である。化学療法などの治療法の進歩にもかかわらず、HPV関連癌を含む多くの癌
の予後は不良である場合がある。従って、癌、特にHPV関連癌に対して、満たされていな
い更なる治療の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の簡単な要旨
本発明の一実施態様は、ヒトパピローマウイルス(HPV)16 E6に対する抗原特異性を有し、ヒト可変領域及びマウス(murine)定常領域を含む、T細胞受容体(TCR)を提供する。
【0005】
本発明の別の実施態様は、HPV 16 E6に対する抗原特異性を有し、配列番号3~8のアミ
ノ酸配列を含む、単離又は精製されたTCRを提供する。
【0006】
本発明はさらに、関連するポリペプチド及びタンパク質、並びに関連する核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞及び細胞集団を提供する。本発明はさらに、本発明のTCRs(その機能的部分及び機能的変異体(functional variants)を含む)と関連する、抗体又はそ
の抗原結合部分、及び医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明はさらに、哺乳動物において病態(condition)の存在を検出する方法、及び哺
乳動物において病態を治療又は予防する方法であって、ここで、該病態が、癌、HPV 16感染、又はHPV陽性の前癌状態(premalignancy)である、方法を提供する。哺乳動物において病態の存在を検出する本発明の方法は、(i)本明細書に記載の本発明のTCRs(その機
能的部分及び機能的変異体を含む)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞集団、抗体若しくはその抗原結合部分、又は医薬組成物のいずれかと、病態の細胞を含むサンプルとを接触させ、それにより複合体を形成すること、及び(ii)該複合体を検出することを含み、ここで、該複合体の検出が、哺乳動物における病態の存在を示し、ここで、該病態は、癌、HPV 16感染、又はHPV陽性の前癌状態である
【0008】
哺乳動物において病態を治療又は予防する本発明の方法は、本明細書に記載のTCRs(その機能的部分及び機能的変異体を含む)、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCRs(その機能的部分及び機能的変異体を含む)、ポリペプチド、タン
パク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCRs(その機能的部分及び機能的変異体を含む)、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれかをコードする組換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは宿主細胞集団を、哺乳動物において病態を治療又は予防するのに有効な量で、哺乳動物に投与することを含み、ここで、該病態は、癌、HPV 16感染、又はHPV陽性の前癌
状態である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の各図の簡単な説明
図1図1は、CaSki細胞、HeLa細胞、624細胞、又は腫瘍3809由来の細胞による、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現に対する、HPV 16 E6(白色バー)、HPV 16 E7(影付き斜線なしバー)、HPV 18 E6(影なし斜線付きバー)、又はHPV 18 E7(影付き斜線付きバー)の発現を示す棒グラフである。
図2図2A及び2Bは、以下をパルスした自己樹状細胞(DCs):HPV 16 E6単独(白色バー)、抗クラスI抗体と組み合わせたHPV 16 E6(影付き斜線なしバー)、HPV 16 E7単独(影なし斜線付きバー)、抗クラスI抗体と組み合わせたHPV 16 E7(影付き斜線付きバー)、gp100(黒色バー)、又はOKT3(横縞バー)、との共培養時に、腫瘍3809のフラグメント(F)2~14由来の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)(A)、腫瘍3809のフラグメント15~24由来のTIL(B)、又はメラノーマTILにより分泌されるインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)(pg/mL)を示す棒グラフである。
図3図3は、緑色蛍光タンパク質(GFP)をトランスフェクトした293-A2細胞(HLA-A2を安定発現するHEK-293細胞)、HPV 16 E6をトランスフェクトした293-A2細胞、ペプチドなしで培養した3809リンパ芽球様細胞株(LCL)(エプスタイン・バール・ウイルスを用いて形質転換されているB細胞)、HPV 16 E6ペプチドプールと共培養した3809 LCL、又はOKT3との共培養時に、数を拡大した3809 4-1BB選択TILにより分泌されるIFN-γ(pg/mL)を示す棒グラフである。
図4図4Aは、HPV 16 E629-38ペプチドをパルスした標的293-A2細胞、HPV 16 E711-19ペプチドをパルスした293-A2細胞、HPV 16 E6をコードするプラスミドを形質導入した293-A2細胞、GFPをコードするプラスミドを形質導入した293-A2細胞、HPV 16 E6をコードするプラスミドを形質導入した293細胞、HPV 16 E6をコードするプラスミドを形質導入した624細胞、HPV 16 E7をコードするプラスミドを形質導入した624細胞、SCC152細胞、SCC90細胞、CaSki細胞、HPV-18子宮頸癌細胞、メラノーマコントロール細胞、胆管(cholangio)コントロール細胞、624細胞、又はSiHa細胞との共培養時に、形質導入されていない末梢血リンパ球(PBL)(非形質導入)(影なしバー)、又は配列番号17及び18をコードするヌクレオチド配列を形質導入した末梢血リンパ球(PBL)(E6 TCR;影付きバー)により分泌されるIFN-γ(pg/mL)を示す棒グラフである。各標的細胞によるHLA-A2及びHPV-16発現を、図4Aの下部に示す(「+」は発現に対して陽性であることを示し、「-」は発現に対して陰性であることを示す)。図4Bは、抗体なしで(黒色バー)、抗MHCクラスI抗体とともに(灰色バー)、又は抗MHCクラスII抗体とともに(影なしバー)、HPV 16 E6をコードするプラスミドを形質導入した標的293-A2細胞、HPV 16 E6をコードするプラスミドを形質導入した293細胞、SCC90細胞、CaSki細胞、624細胞、DMF/624細胞、又はHPV 16 E7ペプチドをパルスした4.7.20細胞と共培養した際の、配列番号17及び18をコードするヌクレオチド配列を形質導入したPBLにより分泌されるIFN-γ(pg/mL)を示す棒グラフである。
図5図5は、HPV 16 E629-38ペプチドをパルスした標的293-A2細胞、HPV 16 E711-19ペプチドをパルスした293-A2細胞、HPV 16 E6をコードするプラスミドを形質導入した293-A2細胞、GFPをコードするプラスミドを形質導入した293-A2細胞、293-A2細胞、HPV 16 E7をコードするプラスミドを形質導入した624細胞、HPV 16 E6をコードするプラスミドを形質導入した624細胞、SCC152細胞、SCC90細胞、CaSki細胞、HPV子宮頸癌細胞、メラノーマコントロール細胞、624細胞、又はSiHa細胞との共培養時に、形質導入されていないCD8陽性PBL(影なし斜線なしバー)、形質導入されていないCD4陽性PBL(クロスハッチングされた影なしバー)、又は配列番号17及び18をコードするヌクレオチド配列を形質導入したPBL(CD8陽性(E6 TCR;影付き斜線なしバー)又はCD4陽性(E6 TCR;クロスハッチングされた影付きバー))により分泌されるIFN-γ(pg/mL)を示す棒グラフである。
図6図6Aは、様々な濃度のE629-38ペプチド(-log M)をパルスした標的T2細胞との共培養時に、形質導入されていない(UT)CD8陽性PBL(影なしバー)、又は配列番号17及び18をコードするヌクレオチド配列を形質導入したCD8陽性PBL(影付きバー)により分泌されるIFN-γ(pg/mL)を示す棒グラフである。図6Bは、様々な濃度のE629-38ペプチド(-log M)をパルスした標的T2細胞との共培養時に、形質導入されていないCD4陽性PBL(影なしバー)、又は配列番号17及び18をコードするヌクレオチド配列を形質導入したCD4陽性PBL(E6 TCR;影付きバー)により分泌されるIFN-γ(pg/mL)を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明の一実施態様は、ヒトパピローマウイルス(HPV)16 E6に対する抗原特異性を有し、ヒト可変領域及びマウス(murine)定常領域を含む、T細胞受容体(TCR)並びにその機能的部分及び機能的変異体を提供する。本発明の一実施態様において、TCRは、HPV 16 E629-38に対する抗原特異性を有する。
【0011】
HPV 16は、悪性腫瘍(malignancy)と最も一般的に関連するHPVサブタイプである。特
定の理論又はメカニズムに拘束されるものではないが、HPV 16は、少なくとも部分的には、細胞周期コントロールを調節解除する、オンコプロテインE6の作用を介して癌を引き起こすと考えられる。HPV 16 E6は、癌細胞では恒常的(constitutively)に発現されるが
、正常な非感染ヒト組織によっては発現されない。HPV 16 E6は、子宮頸部、中咽頭、肛
門、肛門管、肛門直腸、膣、外陰部及び陰茎の癌を含む(これらに限定されない)、様々なヒト癌で発現される。
【0012】
TCRは、任意のHPV 16 E6タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに対する抗原特異性を有してよい。本発明の一実施態様において、TCRは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、該配列からなるか又は実質的に該配列からなるHPV 16 E6タンパク質に対する抗原特異性
を有する。本発明の好ましい実施態様において、TCRは、TIHDIILECV(配列番号2)のアミノ酸配列を含むか、該配列からなるか又は実質的に該配列からなるHPV 16 E629-38ペプチドに対する抗原特異性を有する。
【0013】
本発明の一実施態様において、本発明のTCRsは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)ク
ラスI依存的にHPV 16 E6を認識することができる。本明細書で使用する場合、「MHCクラ
スI依存的」とは、TCRが、MHCクラスI分子との関連の中で、HPV 16 E6との結合に際し免
疫反応を引き起こすことを意味する。MHCクラスI分子は、当分野で既知の任意のMHCクラ
スI分子、例えばHLA-A分子などであり得る。本発明の好ましい実施態様において、MHCク
ラスI分子は、HLA-A2分子である。
【0014】
本発明のTCRs(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、養子細胞移入のために使用される細胞により発現される場合を含み、多くの利点を提供する。特定の理論又はメカニズムに拘束されるものではないが、HPV 16 E6は、複数(multiple)の癌種のHPV 16感
染細胞により発現されることから、本発明のTCRs(その機能的部分及び機能的変異体を含む)は、有利には、複数の種類のHPV 16関連癌の細胞を破壊し、それゆえ複数の種類のHPV 16関連癌を治療又は予防する能力を提供すると考えられる。さらに、特定の理論又はメカニズムに拘束されるものではないが、HPV 16 E6タンパク質は、癌細胞、HPV 16感染細
胞、又はHPV陽性の前癌状態細胞でのみ発現することから、本発明のTCRs(その機能的部
分及び機能的変異体を含む)は、有利には、正常な非癌性細胞、非HPV感染細胞、及び非HPV陽性の前癌状態細胞の破壊を最小化又は排除し、それにより、毒性を低下させながら、例えば、最小化又は排除しながら、癌細胞、HPV 16感染細胞、又はHPV陽性の前癌状態細
胞の破壊を標的化すると考えられる。さらに、本発明のTCRsは、有利には、他のタイプの治療(例えば、化学療法単独、手術、又は放射線など)に応答しないHPV陽性癌を首尾よ
く治療又は予防し得る。さらに、本発明のTCRsは、高いアビディティ(highly avid)のHPV 16 E6認識を提供し、それにより、有利には、非操作の腫瘍細胞(例えば、インターフェロン-ガンマで治療されていないか、HPV 16 E6及びHLA-A2の一方又は両方をコードするベクターがトランスフェクトされていないか、E629-38ペプチドがパルスされていないか
、又はそれらの組み合わせである、腫瘍細胞)を認識する能力を提供し得る。
【0015】
本明細書で使用する場合、語句「抗原特異性」とは、TCRが、高いアビディティ(avidity)で、HPV 16 E6と特異的に結合し、免疫学的に認識できることを意味する。例えば、TCRを発現するT細胞が、抗原陰性のHLA-A2+ 標的細胞に低濃度のHPV 16 E6ペプチド(例えば、約0.05 ng/mlから約5 ng/ml、0.05 ng/ml、0.1 ng/ml、0.5 ng/ml、1 ng/ml、又は5 ng/ml)をパルスしたものとの共培養時に、少なくとも約200 pg/ml以上(例えば、200 pg/ml以上、300 pg/ml以上、400 pg/ml以上、500 pg/ml以上、600 pg/ml以上、700 pg/ml以上、1000 pg/ml以上、5,000 pg/ml以上、7,000 pg/ml以上、10,000 pg/ml以上、又は20,000 pg/ml以上)のインターフェロンガンマ(IFN-g)を分泌する場合、TCRは、HPV 16 E6
に対する「抗原特異性」を有すると考えてよい。代替的又は追加的に、TCRを発現するT細胞が、抗原陰性のHLA-A2+ 標的細胞に低濃度のHPV 16 E6ペプチドをパルスしたものとの
共培養時に、形質導入されていない末梢血リンパ球(PBL)バックグラウンドレベルのIFN-γよりも、少なくとも2倍多いIFN-γを分泌する場合、TCRは、HPV 16 E6に対する「抗原特異性」を有すると考えてよい。本発明のTCRs(その機能的部分及び機能的変異体を含む)を発現する細胞はまた、抗原陰性のHLA-A2+ 標的細胞により高濃度のHPV 16 E6ペプチ
ドをパルスしたものとの共培養時にIFN-γを分泌してもよい。
【0016】
本発明は、2つのポリペプチド(すなわち、ポリペプチド鎖)、例えば、TCRのアルファ(α)鎖、TCRのベータ(β)鎖、TCRのガンマ(γ)鎖、TCRのデルタ(δ)鎖、又はそ
れらの組み合わせなどを含むTCRを提供する。本発明のTCRのポリペプチドは、TCRがHPV 16 E6に対する抗原特異性を有するならば、任意のアミノ酸配列を含み得る。
【0017】
本発明の一実施態様において、TCRは、2つのポリペプチド鎖であって、そのそれぞれが、TCRの相補性決定領域(CDR)1、CDR2及びCDR3を含むヒト可変領域を含む、鎖を含む。
本発明の一実施態様において、TCRは、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR1(α鎖のCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR2(α鎖のCDR2)、及び配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR3(α鎖のCDR3)を含む第一のポリペプチド鎖と、配列番号6のアミノ酸配列を
含むCDR1(β鎖のCDR1)、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2(β鎖のCDR2)、及び配
列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3(β鎖のCDR3)を含む第二のポリペプチド鎖とを含む
。この点について、本発明のTCRは、配列番号3~8からなる群から選択されるアミノ酸配
列のいずれか1つ以上を含み得る。好ましくは、TCRは、配列番号3~5又は配列番号6~8のアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施態様において、TCRは、配列番号3~8のアミノ酸
配列を含む。
【0018】
本発明の一実施態様において、TCRは、上記CDRsを含むTCRの可変領域のアミノ酸配列を含み得る。この点について、TCRは、配列番号9(α鎖可変領域)、配列番号10(β鎖可変領域)、又は配列番号9及び10の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のTCRは、配列番号9及び10の両方のアミノ酸配列を含む。
【0019】
本発明のTCRsは、任意の適切な種、例えばヒト又はマウスなどに由来する定常領域を更
に含んでよい。本発明の一実施態様において、本発明のTCRsは、マウス定常領域を更に含む。この点について、TCRは、配列番号15(マウスα鎖定常領域)、配列番号16(マウス
β鎖定常領域)、又は配列番号15及び16の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましい実施態様において、本発明のTCRsは、ヒト可変領域とマウス定常領域の両方を含むキメラTCRsである。
【0020】
本発明の一実施態様において、本発明のキメラTCRは、可変領域と定常領域の組み合わ
せを含んでよい。この点について、TCRは、配列番号9(ヒトα鎖可変領域)及び配列番号15(マウスα鎖定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むアルファ鎖、配列番号10(ヒトβ鎖可変領域)及び配列番号16(マウスβ鎖定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むベータ鎖、又は配列番号9~10及び15~16のアミノ酸配列の全て、を含み得る。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「マウス(murine)」又は「ヒト」とは、本明細書に記載のTCR又はTCRの任意の構成要素(例えば、相補性決定領域(CDR)、可変領域、定常領
域、アルファ鎖及び/又はベータ鎖)に関する場合、それぞれ、マウス又はヒトに由来するTCR(又はその構成要素)、すなわち、それぞれ、マウスT細胞若しくはヒトT細胞が起
源であったか、又はかつてマウスT細胞若しくはヒトT細胞により発現されたTCR(又はそ
の構成要素)を意味する。
【0022】
本発明の一実施態様において、キメラTCRは、TCRのα鎖及びTCRのβ鎖を含み得る。本
発明のキメラTCRのα鎖及びβ鎖はそれぞれ、任意のアミノ酸配列を独立して含み得る。
好ましくは、α鎖は、上記のような、ヒトα鎖可変領域及びマウスα鎖定常領域を含む。この点について、本発明のキメラTCRは、配列番号17のアミノ酸配列を含み得る。このタ
イプのα鎖は、TCRの任意のβ鎖とペアとなり得る。好ましくは、本発明のキメラTCRのβ鎖は、上記のような、ヒトβ鎖可変領域及びマウスβ鎖定常領域を含む。この点について、本発明のキメラTCRは、配列番号18のアミノ酸配列を含み得る。従って、本発明のキメ
ラTCRは、配列番号17、配列番号18、又は配列番号17及び18の両方のアミノ酸配列を含み
得る。好ましくは、本発明のキメラTCRは、配列番号17及び18の両方のアミノ酸配列を含
む。
【0023】
本発明の一実施態様において、TCRはヒトTCRである。ヒトTCRは、本発明の他の側面に
関して本明細書に記載するようなCDR領域のいずれかを含んでよい。この点について、本
発明の一実施態様は、HPV 16 E6に対する抗原特異性を有し、配列番号3~8のアミノ酸配
列を含む、単離又は精製されたTCRを提供する。本発明の別の実施態様において、ヒトTCRは、本発明の他の側面に関して本明細書に記載する可変領域のいずれかを含んでよい。
【0024】
本発明の一実施態様において、本発明のヒトTCRsは、ヒト定常領域を更に含む。この点について、ヒトTCRは、配列番号13(ヒトα鎖定常領域)、配列番号14(ヒトβ鎖定常領
域)、又は配列番号13及び14の両方のアミノ酸配列を含み得る。
【0025】
本発明の一実施態様において、本発明のヒトTCRは、可変領域と定常領域の組み合わせ
を含んでよい。この点について、TCRは、配列番号9(ヒトα鎖可変領域)及び配列番号13(ヒトα鎖定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むアルファ鎖、配列番号10(ヒトβ鎖可変領域)及び配列番号14(ヒトβ鎖定常領域)の両方のアミノ酸配列を含むベータ鎖、又は配列番号9~10及び13~14のアミノ酸配列の全て、を含み得る。
【0026】
本発明の一実施態様において、ヒトTCRは、TCRのα鎖及びTCRのβ鎖を含み得る。本発
明のヒトTCRのα鎖及びβ鎖はそれぞれ、任意のアミノ酸配列を独立して含み得る。好ま
しくは、α鎖は、上記のような、ヒトα鎖可変領域及びヒトα鎖定常領域を含む。この点について、本発明のヒトTCRは、配列番号11のアミノ酸配列を含み得る。このタイプのα
鎖は、TCRの任意のβ鎖とペアとなり得る。好ましくは、本発明のヒトTCRのβ鎖は、上記のような、ヒトβ鎖可変領域及びヒトβ鎖定常領域を含む。この点について、本発明のヒトTCRは、配列番号12のアミノ酸配列を含み得る。従って、本発明のヒトTCRは、配列番号11、配列番号12、又は配列番号11及び12の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明のヒトTCRは、配列番号11及び12の両方のアミノ酸配列を含む。
【0027】
本発明はまた、本明細書に記載のTCRs(又はその機能的変異体)のいずれかの機能的部分を含むポリペプチドを提供する。本明細書で使用する場合、用語「ポリペプチド」は、オリゴペプチドを含み、1以上のペプチド結合により結合されたアミノ酸の単一鎖をいう
【0028】
本発明のポリペプチドに関して、機能的部分は、該機能的部分がHPV 16 E6と特異的に
結合するならば、TCR(又はその機能的変異体)(該部分はその一部である)の連続アミ
ノ酸を含む任意の部分であり得る。用語「機能的部分(functional portion)」とは、TCR(又はその機能的変異体)に関して用いられる場合、本発明のTCR(又はその機能的変異体)の任意の部分又はフラグメントであって、その部分又はフラグメントがTCR(又はそ
の機能的変異体)(その部分又はフラグメントはその一部である)(親TCR又はその親機
能的変異体)の生物学的活性を保持するものをいう。機能的部分は、例えば、親TCR(又
はその機能的変異体)と類似の程度に、同程度に、又はより高い程度に、HPV 16 E6と特
異的に結合する能力(例えば、HLA-A2依存的に)、又は癌を検出、治療若しくは予防する能力を保持する、TCR(又はその機能的変異体)の部分を包含する。親TCR(又はその機能的変異体)に関連して、機能的部分は、例えば、親TCR(又はその機能的変異体)の約10
%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%又はそれ以上などを含み得る。
【0029】
機能的部分は、該部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端又は両端に、更なるアミノ酸であって、親TCR又はその機能的変異体のアミノ酸配列には見られないものを含み得る
。望ましくは、更なるアミノ酸は、機能的部分の生物学的機能(例えば、HPV 16 E6と特
異的に結合する;並びに/又は癌を検出、癌を治療若しくは予防する能力を有するなど)を妨害しない。更に望ましくは、更なるアミノ酸は、親TCR又はその機能的変異体の生物
学的活性と比較して、その生物学的活性を増強する。
【0030】
ポリペプチドは、本発明のTCRs又はその機能的変異体のα鎖及びβ鎖のいずれか又は両方の機能的部分、例えば、本発明のTCR又はその機能的変異体のα鎖及び/又はβ鎖の可
変領域(複数可)のCDR1、CDR2及びCDR3の1つ以上(one of more)を含む機能的部分などを含み得る。本発明の一実施態様において、ポリペプチドは、配列番号3(α鎖のCDR1)
、4(α鎖のCDR2)、5(α鎖のCDR3)、6(β鎖のCDR1)、7(β鎖のCDR2)、8(β鎖のCDR3)、又はそれらの組み合わせのアミノ酸配列を含む機能的部分を含み得る。好ましく
は、本発明のポリペプチドは、配列番号3~5;6~8;又は配列番号3~8の全て、のアミノ酸配列を含む機能的部分を含む。より好ましくは、ポリペプチドは、配列番号3~8の全てのアミノ酸配列を含む機能的部分を含む。
【0031】
本発明の一実施態様において、本発明のポリペプチドは、例えば、上記CDR領域の組み
合わせを含む本発明のTCR又はその機能的変異体の可変領域を含み得る。この点について
、ポリペプチドは、配列番号9(α鎖可変領域)、配列番号10(β鎖可変領域)、又は配
列番号9及び10の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番
号9及び10の両方のアミノ酸配列を含む。
【0032】
本発明のポリペプチドは、任意の適切な種、例えばヒト又はマウスなどに由来する定常領域を更に含んでよい。この点について、ポリペプチドは、配列番号13(ヒトα鎖定常領域)、配列番号14(ヒトβ鎖定常領域)、配列番号15(マウスα鎖定常領域)、配列番号
16(マウスβ鎖定常領域)、配列番号13及び14の両方、又は配列番号15及び16の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号13及び14の両方、又は配列番号15及び16の両方のアミノ酸配列を含む。
【0033】
本発明の一実施態様において、本発明のポリペプチドは、可変領域と定常領域の組み合わせを含んでよい。この点について、ポリペプチドは、配列番号9及び15の両方、配列番
号9及び13の両方、配列番号10及び16の両方、配列番号10及び14の両方、配列番号9~10及び15~16の全て、又は配列番号9~10及び13~14の全てのアミノ酸配列を含み得る。
【0034】
本発明の一実施態様において、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のTCRs又はその機能的変異体の1つの、α鎖又はβ鎖の全長を含み得る。この点について、本発明のポ
リペプチドは、配列番号11、12、17又は18のアミノ酸配列を含み得る。或いは、本発明のポリペプチドは、本明細書に記載のTCRs又はその機能的変異体のα鎖及びβ鎖を含み得る。例えば、本発明のポリペプチドは、配列番号11及び12の両方、又は配列番号17及び18の両方、配列番号11及び18の両方、又は配列番号17及び12の両方のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、ポリペプチドは、配列番号11及び12の両方、又は配列番号17及び18の両方のアミノ酸配列を含む。
【0035】
本発明は更に、本明細書に記載のポリペプチドの少なくとも1つを含むタンパク質を提
供する。「タンパク質」とは、1つ以上のポリペプチド鎖を含む分子を意味する。
【0036】
一実施態様において、本発明のタンパク質は、配列番号3~5のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号6~8のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。代替的又は追加的に、本発明のタンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を含む第
一のポリペプチド鎖、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。本発明のタンパク質は、例えば、配列番号9及び13の両方、又は配列番号9及び15の両方のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖と、配列番号10及び14の両方、又は配列番号10及び16の両方のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖とを含み得る。本発明のタンパク質は、例えば、配列番号11又は17のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号12又は18のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。この場合、本発明のタンパク質はTCRであり得る。或いは、例えば、タンパク質が配列番号11及び12、若しくは配列番号17及び18のアミノ酸配列を含む単一のポリペプチド鎖を含むか、又
はタンパク質の第一及び/若しくは第二のポリペプチド鎖(複数可)が他のアミノ酸配列(例えば、免疫グロブリン又はその部分をコードするアミノ酸配列)を更に含む場合、本発明のタンパク質は融合タンパク質であり得る。この点について、本発明はまた、本明細書に記載の本発明のポリペプチドの少なくとも1つを、少なくとも1つの他のポリペプチドとともに含む融合タンパク質を提供する。他のポリペプチドは、融合タンパク質の別個(separate)のポリペプチドとして存在し得、或いは本明細書に記載の本発明のポリペプチドの1つとインフレーム(タンデムに)で発現するポリペプチドとして存在し得る。他の
ポリペプチドは、限定されないが、免疫グロブリン、CD3、CD4、CD8、MHC分子、CD1分子
(例えば、CD1a、CD1b、CD1c、CD1dなど)を含む、任意のペプチド性若しくはタンパク質性分子、又はその部分をコードし得る。
【0037】
融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの1以上のコピー、及び/又は他のポリペプ
チドの1以上のコピーを含み得る。例えば、融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの
及び/又は他のポリペプチドの1、2、3、4、5又はそれ以上のコピーを含み得る。融合タ
ンパク質を作製するのに適切な方法は当分野で既知であり、例えば、組換え方法が含まれる。例えば、Choi et al., Mol. Biotechnol. 31:193-202(2005)を参照。
【0038】
本発明のいくつかの実施態様において、本発明のTCRs(並びにその機能的部分及び機能
的変異体)、ポリペプチド及びタンパク質は、α鎖及びβ鎖を連結するリンカーペプチドを含む単一のタンパク質として発現されてよい。この点について、配列番号11及び12、又は配列番号17及び18のアミノ酸配列を含む、本発明のTCRs(並びにその機能的変異体及び機能的部分)、ポリペプチド及びタンパク質は、リンカーペプチドを更に含んでよい。リンカーペプチドは、有利には、宿主細胞における、組換えTCR(その機能的部分及び機能
的変異体を含む)、ポリペプチド及び/又はタンパク質の発現を促進してよい。リンカーペプチドは、任意の適切なアミノ酸配列を含んでよい。例えば、リンカーペプチドは、配列番号37のアミノ酸配列を含んでよい。リンカーペプチドを含む構築物の宿主細胞による発現に際し、リンカーペプチドを切断し、分離したα鎖及びβ鎖をもたらしてよい。
【0039】
本発明のタンパク質は、本明細書に記載の本発明のポリペプチドの少なくとも1つを含
む組換え抗体であり得る。本明細書で使用する場合、「組換え抗体」とは、本発明のポリペプチドの少なくとも1つと、抗体又はその部分のポリペプチド鎖とを含む組換え(例え
ば、遺伝子操作された)タンパク質をいう。抗体又はその部分のポリペプチドは、抗体の重鎖、軽鎖、重鎖若しくは軽鎖の可変若しくは定常領域、一本鎖可変フラグメント(scFv)、又はFc、Fab若しくはF(ab)2’フラグメントなどであり得る。抗体又はその部分の
ポリペプチド鎖は、組換え抗体の別個のポリペプチドとして存在し得る。或いは、抗体又はその部分のポリペプチド鎖は、本発明のポリペプチドとインフレーム(タンデムに)で発現するポリペプチドとして存在し得る。抗体又はその部分のポリペプチドは、任意の抗体又は任意の抗体フラグメント(本明細書に記載の抗体及び抗体フラグメントのいずれかを含む)のポリペプチドであり得る。
【0040】
本発明の範囲には、本明細書に記載の本発明のTCRsの機能的変異体が含まれる。本明細書で使用する場合、用語「機能的変異体(functional variant)」とは、親TCR、ポリペ
プチド又はタンパク質と実質的又は顕著な配列同一性又は類似性を有するTCR、ポリペプ
チド又はタンパク質であって、該機能的変異体が、TCR、ポリペプチド又はタンパク質(
該機能的変異体はその変異体である)の生物学的活性を保持するものをいう。機能的変異体は、例えば、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質と類似の程度に、同程度に、又はよ
り高い程度に、HPV 16 E6(親TCRが抗原特異性を有するか、又は親ポリペプチド若しくはタンパク質が特異的に結合する)と特異的に結合する能力を保持する、本明細書に記載のTCR、ポリペプチド又はタンパク質(親TCR、ポリペプチド又はタンパク質)の変異体を包含する。親TCR、ポリペプチド又はタンパク質に関連して、機能的変異体は、例えば、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質に対して、アミノ酸配列において、少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上同一であり得る。
【0041】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。保存的アミノ酸置換は、当分野で既知であり、特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じ化学的又
は物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されるアミノ酸置換を含む。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性アミノ酸の別の酸性アミノ酸での置換(例えば、Asp又はGlu)、非極性側鎖を有するアミノ酸の、非極性側鎖を有する別のアミノ酸での置換(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Valなど)、塩基性アミノ酸の別の塩基性アミノ酸での置換(Lys、Argなど)、極性側鎖を有するアミノ酸の、極性側鎖を有する別のアミノ酸での置換(Asn、Cys、Gln、Ser、Thr、Tyrなど)などであり得る。
【0042】
代替的又は追加的に、機能的変異体は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有す
る、親TCR、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存
的アミノ酸置換が、機能的変異体の生物学的活性を妨害又は阻害しないことが好ましい。好ましくは、非保存的アミノ酸置換は、機能的変異体の生物学的活性が、親TCR、ポリペ
プチド又はタンパク質と比較して増加するように、機能的変異体の生物学的活性を増強す
る。
【0043】
TCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド又はタンパク質は、TCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド又はタンパク質の他の構成要素(例えば、他のアミノ酸)が、TCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド又はタンパク質の生物学的活性を物質的に変
化しないように、本明細書に記載の特定のアミノ酸配列(複数可)から実質的になり得る。この点について、本発明のTCR(又はその機能的変異体)、ポリペプチド又はタンパク
質は、例えば、配列番号11、12、17若しくは18、配列番号11及び12の両方、配列番号17及び18の両方、配列番号11及び18の両方、又は配列番号17及び12の両方のアミノ酸配列から実質的になり得る。また、例えば、本発明のTCRs(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド又はタンパク質は、配列番号9、10、又は配列番号9及び10の両方のアミノ酸配列(複数可)から実質的になり得る。更に、本発明のTCRs(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド又はタンパク質は、配列番号3(α鎖のCDR1)、配列番号4(α鎖のCDR2)、配列番号5(α鎖のCDR3)、配列番号6(β鎖のCDR1)、配列番号7(β鎖のCDR2)、配列番号8(β鎖のCDR3)、又はそれらの任意の組み合わせ、例えば、配列番号3~5;6~8;又は3~8などのアミノ酸配列から実質的になり得る。
【0044】
本発明のTCRs、ポリペプチド及びタンパク質(その機能的変異体を含む)は、TCRs、ポリペプチド又はタンパク質(又はその機能的変異体)がそれらの生物学的活性(例えば、HPV 16 E6と特異的に結合する能力;哺乳動物において癌、HPV 16感染、又はHPV陽性の前癌状態を検出する能力;又は哺乳動物において癌、HPV 16感染、又はHPV陽性の前癌状態
を治療若しくは予防する能力など)を保持するならば、任意の長さのものであり得、すなわち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチドは、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれ以上のアミノ酸長など、約50から約5000のアミノ酸長の範囲であり得る。この点について、本発明のポリペプチドはまた、オリゴペプチドも含む。
【0045】
本発明のTCRs、ポリペプチド及びタンパク質(その機能的変異体を含む)は、1つ以上
の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。かかる合成アミノ酸は、当分野で既知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-ア
ミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン
、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-
ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシ
ルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒド
ロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベン
ジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチ
ン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-ア
ミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-
ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0046】
本発明のTCRs、ポリペプチド及びタンパク質(その機能的変異体を含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、環化(例えば、ジスルフィド架橋を介して)、又は酸付加塩に変換され、且つ/或いは任意選択で二量体化若しくは重合化、又はコンジュゲート化され得る。
【0047】
本発明のTCR、ポリペプチド及び/又はタンパク質(その機能的変異体を含む)は、当
分野で既知の方法により得ることができる。ポリペプチド及びタンパク質をde novo合成
する適切な方法は、例えば以下の参考文献に記載される:Chan et al., Fmoc Solid Phas
e Peptide Synthesis, Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2005;Peptide and Protein Drug Analysis, ed. Reid, R., Marcel Dekker, Inc., 2000;Epitope Mapping, ed. Westwoood et al., Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2000;及び米国特許第5,449,752号。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組
換え方法を用いて、本明細書に記載の核酸を使用して組換え産生され得る。例えば、Green and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4thed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY 2012;及びAusubel et al., Current Protocols in
Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons, NY, 1994を参照。更に、本発明のTCRs、ポリペプチド及びタンパク質(その機能的変異体を含む)のいくつかは、植物、細菌、昆虫、哺乳動物(例えば、ラット、ヒトなど)などの供給源から単離及び/又は精製され得る。単離及び精製の方法は当分野で周知である。或いは、本明細書に記載のTCRs、ポリペプチド及び/又はタンパク質(その機能的変異体を含む)は、Synpep(Dublin, CA)、Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg, MD)及びMultiple Peptide Systems(San Diego, CA)などの企業によって商業的に合成され得る。こ
れに関して、本発明のTCRs(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド及びタンパク質は、合成、組換え、単離及び/又は精製され得る。
【0048】
本発明の範囲内には、本発明のTCRs、ポリペプチド若しくはタンパク質(その機能的変異体のいずれかを含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分のいずれかを含むコンジュゲート(例えば、バイオコンジュゲート)が含まれる。コンジュゲート、及び通常のコンジュゲートの合成方法は、当分野で既知である(例えば、Hudecz, F., Methods Mol. Biol. 298:209-223(2005)及びKirin et al., Inorg Chem. 44(15):5405-5415(2005)を参照)。
【0049】
本発明の一実施態様は、本明細書のTCRs、ポリペプチド及びタンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本明細書で使用する場合、「核酸」とは、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「核酸分子」を含み、一般に、DNA又はRNAの重合体を意味し、これは一本鎖又は二本鎖の、合成された又は天然の供給源から得られた(例えば、単離及び/又は精製された)ものであり得、天然、非天然又は変更された(altered)ヌクレオチドを含み得、修飾されていないオリゴヌクレオチドのヌ
クレオチド間で見られるホスホジエステル結合の代わりに、天然、非天然又は変更されたヌクレオチド間結合(例えば、ホスホロアミデート(phosphoroamidate)結合又はホスホロチオエート結合など)を含み得る。一実施態様において、核酸は、相補的DNA(cDNA)
を含む。一般に、核酸は、挿入、欠失、逆位及び/又は置換を何れも含まないことが好ましい。しかし、本明細書で論じるように、ある場合には、核酸が1つ以上の挿入、欠失、
逆位及び/又は置換を含むことが適切である場合がある。
【0050】
好ましくは、本発明の核酸は組換え体である。本明細書で使用する場合、用語「組換え体(recombinant)」とは、(i)天然若しくは合成の核酸セグメントを、生きた細胞中で複製できる核酸分子と連結することにより、生きた細胞の外側で構築される分子、又は(ii)上記(i)に記載した分子の複製から生じる分子をいう。本明細書の目的のために、
複製は、in vitro複製又はin vivo複製であり得る。
【0051】
核酸は、当分野で既知の手順を使用して、化学合成及び/又は酵素ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Green and Sambrook et al.(上記)及びAusubel et al.(上記)を参照。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド、又は分子の生物学
的安定性を増加させるように若しくはハイブリダイゼーションの際に形成される二本鎖の物理的安定性を増加させるように設計された多様な修飾ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチドなど)を使用して、化学的に合成され得る。核酸を生成するために使用され得る修飾ヌクレオチドの例としては、以下が挙げら
れるが、これらに限定されない:5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン
、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキ
ューオシン(beta-D-galactosylqueosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-置換アデニン、7-メチルグアニ
ン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン(beta-D-mannosylqueosine)、5’-メトキシカルボキシメチルウ
ラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-
オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル及び2,6-ジアミノプリン。或いは、本発明の核酸の1つ以上は、Macromolecular Resources(Fort Collins, CO)及びSynthegen(Houston, TX)などの企業から購入できる。
【0052】
核酸は、本明細書に記載のTCRs、ポリペプチド、タンパク質、又はその機能的な機能的変異体のいずれかをコードする、任意のヌクレオチド配列を含み得る。本発明の一実施態様において、ヌクレオチド配列は、配列番号31~36(それぞれ、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、CDR3βをコードする)の全て;配列番号31~33の全て;配列番号34~36の全て;配列番号19~20(それぞれ、α鎖及びβ鎖可変領域をコードする)の両方;配列番号23~24(それぞれ、ヒトα鎖及びβ鎖定常領域をコードする)の両方;配列番号25~26(それぞれ、マウスα鎖及びβ鎖定常領域をコードする)の両方、配列番号19~20及び23~24の全て、配列番号19~20及び25~26の全て、配列番号21~22(それぞれ、ヒトα鎖及びβ鎖をコードする)の両方、又は配列番号27~28(それぞれ、キメラα鎖及びβ鎖をコードする)の両方を含むか、該配列番号からなるか、又は実質的に該配列番号からなってよい。本発明の別の実施態様において、ヌクレオチド配列は、配列番号19~28及び31~36のいずれか1つを含むか、該いずれか1つからなるか、又は実質的に該いずれか1つか
らなってよい。
【0053】
本発明の一実施態様において、核酸は、非天然ヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列が天然に発見されない場合に「非天然」であると考えられてよい。いくつかの実施態様において、ヌクレオチド配列はコドン最適化されてよい。特定の理論又はメカニズムに拘束されるものではないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、mRNA転写産物の翻訳効率を増加させると考えられる。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、天然のコドンを、同じアミノ酸をコードするが、細胞内でより容易に利用可能なtRNAにより翻訳され得る別のコドンで置換することを伴い、そのために翻訳効率が増加し得る。ヌクレオチド配列の最適化はまた、翻訳を妨げ得る二次mRNA構造を低下させ、そのために翻訳効率が増加し得る。本発明の一実施態様において、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号38(α鎖可変領域)、配列番号39(β鎖可変領域)、又は配列番号38及び39を含むか、該配列番号からなるか、又は実質的に該配列番号からなってよい。
【0054】
本発明はまた、本明細書に記載のいずれかの核酸のヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、又は本明細書に記載のいずれかの核酸のヌクレオチド配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、を含む核酸も提供する。
【0055】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」とは、
ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能に強い量で、ターゲット配列(本明細書に記載のいずれかの核酸のヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件には、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、又はほんの数個の散らばったミスマッチを含むポリヌクレオチドを、ヌクレオチド配列にマッチした数個の小領域(例えば、3~10塩基)を偶然有するラン
ダム配列から識別し得る条件が含まれる。かかる相補的な小領域は、14~17又はそれ以上の塩基の全長相補体よりも容易に融解され、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションにより、それらを容易に識別できる。比較的高ストリンジェンシーの条件には、例えば、低塩及び/又は高温条件(例えば、約0.02~0.1 MのNaCl又は等価物、約50~70℃の
温度により提供される)が含まれ得る。かかる高ストリンジェンシー条件は、ヌクレオチド配列とテンプレート鎖又はターゲット鎖との間のミスマッチを、存在するとしてもほとんど許容せず、本発明のTCRs(その機能的部分及び機能的変異体を含む)のいずれかの発現を検出するのに特に適している。条件は、増加量のホルムアミドの添加によって、よりストリンジェントになり得ることが一般に理解される。
【0056】
本発明はまた、本明細書に記載の核酸のいずれかと少なくとも約70%又はそれ以上、例えば、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。
【0057】
本発明の核酸は、組換え発現ベクター中に組み込まれ得る。この点について、本発明は、本発明の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本発明の一実施態様において、組換え発現ベクターは、α鎖、β鎖及びリンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。例えば、一実施態様において、組換え発現ベクターは、配列番号29(間に位置するリンカーとともにキメラα鎖及びβ鎖である配列番号17及び18をコードする)を含むコドン最適化されたヌクレオチド配列を含む。
【0058】
本明細書の目的のために、用語「組換え発現ベクター」とは、遺伝子操作されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド構築物であって、該構築物がmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、該ベクターを、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドを発現させるのに十分な条件下で細胞と接触させた場合に、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの発現を可能にするものを意味する。本発明のベクターは、全体としては天然に存在するものではない。しかし、ベクターの一部は天然に存在するものであり得る。本発明の組換え発現ベクターは、DNA及びRNAを含む(これらに限定されない)、任意のタイプのヌクレオチドを含み得、これは、一本鎖又は二本鎖の、合成された又はその一部が天然の供給源から得られたものであり得、天然、非天然又は変更されたヌクレオチドを含み得る。組換え発現ベクターは、天然に存在するヌクレオチド間結合、天然に存在しないヌクレオチド間結合、又は両方のタイプの結合を含み得る。好ましくは、天然に存在しない又は変更されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写も複製も妨害しない。
【0059】
本発明の組換え発現ベクターは、任意の適切な組換え発現ベクターであり得、任意の適切な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするために使用され得る。適切なベクターには、増殖(propagation)及び拡大(expansion)のため、若しくは発現のため、又はそれら両方のために設計されたベクター(例えば、プラスミド及びウイルス)が含まれる。ベクターは、以下からなる群から選択され得る:pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene, LaJolla, CA)、pETシリーズ(Novagen, Madison, WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)及びpEXシリーズ(Clontech, Palo Alto, CA)。バクテリオファージベクター(例えば、λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4及びλNM1149など)もまた使用され得る。植物発現ベクター
の例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clontech)が挙げられ
る。動物発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。好ましくは、組換え発現ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクターなど)である。特に好ましい実施態様において、組換え発現ベクターはMSGV1ベク
ターである。一実施態様において、本発明の配列番号17及び18を含むキメラTCRをコード
するコドン最適化されたヌクレオチド配列を含むMSGV1ベクターは、配列番号30のヌクレ
オチド配列を含む。
【0060】
本発明の組換え発現ベクターは、例えば、Green and Sambrook et al.(上記)及びAusubel et al.(上記)などに記載された標準的な組換えDNA技術を使用して調製できる。環状又は線状の発現ベクターの構築物は、原核生物又は真核生物の宿主細胞において機能的な複製系を含むように調製され得る。複製系は、例えば、ColEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルスなどに由来し得る。
【0061】
望ましくは、組換え発現ベクターは、必要に応じて、そのベクターがDNAベースである
かRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主細胞タイプ(例えば、細菌
、真菌、植物又は動物)に特異的な調節配列(例えば、転写及び翻訳の開始及び終止コドンなど)を含む。
【0062】
組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子には、殺生物剤耐性(例えば
、抗生物質、重金属などに対する耐性)、栄養要求性宿主細胞における原栄養を提供する補完などが含まれる。本発明の発現ベクターに適切なマーカー遺伝子には、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子が含まれる。
【0063】
組換え発現ベクターは、TCR、ポリペプチド若しくはタンパク質(その機能的変異体を
含む)をコードするヌクレオチド配列と、又はTCR、ポリペプチド若しくはタンパク質(
その機能的変異体を含む)をコードするヌクレオチド配列と相補的であるか若しくはそれにハイブリダイズするヌクレオチド配列と、動作可能(operably)に連結された天然又は非天然のプロモーターを含み得る。プロモーターの選択(例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的及び発生特異的など)は、当業者の技術範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモーターとの組み合わせ(combining)もまた、当業者の技術範囲内である。
プロモーターは、非ウイルスプロモーター又はウイルスプロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、及びマウス幹細胞ウイルスの長い末端反復配列中に見出されるプロモーターなどであり得る。
【0064】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性の発現のため、安定な発現のため、又はその両方のため、のいずれかのために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、恒常的(constitutive)発現又は誘導性発現のために製造され得る。更に、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように製造され得る。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「自殺遺伝子」とは、その自殺遺伝子を発現する細胞を死に至らしめる遺伝子をいう。自殺遺伝子は、その遺伝子が発現される細胞に対し薬剤(例えば、薬物)に対する感受性を付与し、細胞がその薬剤と接触したとき又はその薬剤に曝露されたときに細胞を死に至らしめる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は当分野で既知であり(例えば、Suicide Gene Therapy:Methods and Reviews, Springer, Caroline J.(Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research, Sutton, Surrey, UK), Humana Press, 2004を参照)、例えば、単純ヘルペス
ウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ(daminase)、
プリンヌクレオシドホスホリラーゼ及びニトロレダクターゼなどが含まれる。
【0066】
本発明の別の実施態様は更に、本明細書に記載の組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」とは、本発明の組換え発現ベクターを含み得る任意のタイプの細胞をいう。宿主細胞は、真核生物細胞(例えば、植物、動物、真菌又は藻類など)であり得、或いは原核生物細胞(例えば、細菌又は原生動物など)であり得る。宿主細胞は、培養細胞又は初代細胞(すなわち、ヒトなどの生物から直接単離されたもの)であり得る。宿主細胞は、接着細胞又は浮遊細胞(すなわち、懸濁液中で増殖する細胞)であり得る。適切な宿主細胞は当分野で既知であり、例えば、DH5α E. coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞などが含まれる。組換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のために、宿主細胞は、好ましくは、原核生物細胞(例えば、DH5α細胞など)である。組換えTCR、ポリペプチド又はタンパク質を産生する目的のために、宿主細胞は好ましくは哺乳動物細胞である。最も好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。宿主細胞は、任意の細胞タイプのものであり得、任意の組織タイプに由来し得、任意の発生段階のものであり得るが、宿主細胞は、好ましくは、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核細胞(PMBC)である。より好まし
くは、宿主細胞はT細胞である。
【0067】
本明細書の目的のために、T細胞は、任意のT細胞、例えば、培養されたT細胞、例えば
初代T細胞、又は培養T細胞株(例えば、Jurkat、SupT1など)由来のT細胞、又は哺乳動物から得られたT細胞などであり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、多数の供給源(血液、骨髄、リンパ節、胸腺、又は他の組織若しくは体液を含むが、これらに限定されない)から得ることができる。T細胞はまた、濃縮(enriched)又は精製され得る。好ま
しくは、T細胞はヒトT細胞である。より好ましくは、T細胞は、ヒトから単離されたT細胞である。T細胞は、任意のタイプのT細胞であり得、任意の発生段階のものであり得、これには、CD4/CD8ダブルポジティブT細胞、CD4ヘルパーT細胞(例えば、Th1及びTh2
細胞など)、CD4+ T細胞、CD8T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞など)、腫瘍浸潤リン
パ球(TILs)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞など)、ナイーブT細胞などが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
本発明はまた、本明細書に記載の少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞集団も提供する
。細胞集団は、少なくとも1つの他の細胞(例えば、組換え発現ベクターをいずれも含ま
ない宿主細胞(例えば、T細胞)、又はT細胞以外の細胞(例えば、B細胞、マクロファー
ジ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞など))に加えて、記載の組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む、不均質(heterogeneous)
な集団であり得る。或いは、細胞集団は、実質的に均質な集団であり得、この場合、該集団は、組換え発現ベクターを含む宿主細胞を主に含む(例えば、実質的に該宿主細胞からなる)。集団はまた、細胞のクローン集団でもあり得、この場合、集団の全ての細胞は、組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンであり、その結果、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含む。本発明の一実施態様において、細胞集団は、本明細書に記載されるような組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0069】
本発明の一実施態様において、集団中の細胞の数は急速拡大されてよい。T細胞の数の
拡大は、例えば、米国特許第8,034,334号;米国特許第8,383,099号;米国特許出願公開公報第2012/0244133号;Dudley et al., J. Immunother., 26:332-42(2003);及びRiddell et al., J. Immunol. Methods, 128:189-201(1990)などに記載されるように、当分野で既知であるようないくつかの方法のいずれかにより達成され得る。
【0070】
本発明は更に、本明細書に記載のTCRs(又はその機能的変異体)のいずれかの機能的部分と特異的に結合する、抗体又はその抗原結合部分を提供する。好ましくは、機能的部分は癌抗原と特異的に結合し、例えば、機能的部分は、配列番号3(α鎖のCDR1)、4(α鎖
のCDR2)、5(α鎖のCDR3)、6(β鎖のCDR1)、7(β鎖のCDR2)、8(β鎖のCDR3)、配列番号9(α鎖可変領域)、配列番号10(β鎖可変領域)、又はそれらの組み合わせ、例
えば、3~5;6~8;3~8;9;10;又は9~10などのアミノ酸配列を含む。より好ましくは、機能的部分は、配列番号3~8、又は配列番号9及び10のアミノ酸配列を含む。好ましい
実施態様において、抗体又はその抗原結合部分は、6つのCDRs(アルファ鎖のCDR1~3、及びベータ鎖のCDR1~3)全てにより形成されるエピトープと結合する。抗体は、当分野で
既知の任意のタイプの免疫グロブリンであり得る。例えば、抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMなど)のものであり得る。抗体は、モノクローナル
又はポリクローナルであり得る。抗体は、天然に存在する抗体、例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒトなどから単離及び/又は精製された抗体などであり得る。或いは、抗体は、遺伝子操作された抗体、例えば、ヒト化抗体又はキメラ抗体などであり得る。抗体は、モノマー又はポリマーの形態であり得る。また、抗体は、本発明のTCR(又はその機能的変異体)の機能的部分に対し、任意のレ
ベルのアフィニティ又はアビディティを有し得る。望ましくは、抗体は、他のペプチド又はタンパク質と最小限の交差反応性であるように、本発明のTCR(又はその機能的変異体
)の機能的部分に対して特異的である。
【0071】
本発明のTCRの任意の機能的部分又は機能的変異体と結合する能力について抗体を試験
する方法は、当分野で既知であり、任意の抗体-抗原結合アッセイ、例えば、ラジオイム
ノアッセイ(RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降及び競合阻害アッセイなどが含まれる(例えば、Janeway et al.(下記)及び米国特許出願公開公報第2002/0197266 A1号を参照)。
【0072】
抗体を作製する適切な方法は当分野で既知である。例えば、標準的なハイブリドーマ法は、例えば、Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol., 5, 511-519(1976), Harlowand
Lane(eds.), Antibodies:A Laboratory Manual, CSH Press(1988)、及びC.A. Janeway et al. (eds.), Immunobiology, 8th Ed., Garland Publishing, New York, NY(2011))などに記載される。或いは、他の方法、例えば、EBV-ハイブリドーマ法(Haskard and Archer, J. Immunol. Methods, 74(2), 361-67(1984)、及びRoder et al., Methods Enzymol., 121, 140-67(1986))、及びバクテリオファージベクター発現系(例えば
、Huse et al., Science, 246, 1275-81(1989)を参照)などが当分野で既知である。更に、非ヒト動物において抗体を産生する方法が、例えば、米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号及び同第5,714,352号、並びに米国特許出願公開公報第2002/0197266 A1号などに記載される。
【0073】
更にファージディスプレイが、本発明の抗体を作製するために使用され得る。この点について、抗体の抗原結合可変(V)ドメインをコードするファージライブラリーが、標準
的な分子生物学及び組換えDNA技術を使用して作製され得る(例えば、Green and Sambrook et al.(eds.), Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 4th Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York(2012)を参照)。所望の特異性を有する可変領域をコードするファージが、所望の抗原への特異的結合について選択され、選択された可変ドメインを含む完全又は部分抗体が再構成される。再構成された抗体をコードする核酸配列は、適切な細胞株(例えば、ハイブリドーマ産生に使用されるミエローマ細胞)に導入され、その結果、モノクローナル抗体の特徴を有する抗体が、該細胞によって分泌される(例えば、Janeway et al.(上記)、Huse et al.(上記)及び米国特許第6,265,150号を参照)。
【0074】
抗体は、特定の重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックであるトランスジェニックマウスにより産生され得る。かかる方法は当分野で既知であり、例えば、米国特許第5,545,806号及び同第5,569,825号、並びにJaneway et al.(上記)などに
記載される。
【0075】
ヒト化抗体を作製する方法は当分野で周知であり、例えば、Janeway et al.(上記)、米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号及び同第5,693,761号、欧州特許第0239400 B1
号、並びに英国特許第2188638号などに詳細に記載される。ヒト化抗体はまた、例えば、
米国特許第5,639,641号及びPedersen et al., J. Mol. Biol., 235, 959-973(1994)な
どに記載される抗体リサーフェシング(resurfacing)技術を使用して作製され得る。
【0076】
本発明はまた、本明細書に記載の抗体のいずれかの抗原結合部分を提供する。抗原結合部分は、少なくとも1つの抗原結合部位を有する任意の部分であり得、例えば、Fab、F(ab’)2、dsFv、sFv、ダイアボディ(diabodies)及びトリアボディ(triabodies)などである。
【0077】
一本鎖可変領域フラグメント(sFv)抗体フラグメント(これは、合成ペプチドを介し
て抗体軽鎖の可変(V)ドメインに連結された抗体重鎖のVドメインを含む、切断型Fabフ
ラグメントからなる)は、慣用的な組換えDNAテクノロジー技術を使用して作製され得る
(例えば、Janeway et al.(上記)を参照)。同様に、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)は、組換えDNA技術によって調製され得る(例えば、Reiter et al., Protein Engineering, 7, 697-704(1994)を参照)。しかし、本発明の抗体フラグメント
は、これらの例示的な抗体フラグメントタイプに限定されない。
【0078】
また、抗体又はその抗原結合部分は、検出可能な標識、例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)など)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)及び元素粒子(例えば、金粒子など)などを含むように改変され得る。
【0079】
本発明のTCRs、ポリペプチド、タンパク質(その機能的変異体を含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)は、単離及び/又は精製され得る。本明細書で使用する場合、用語「単離され」とは、その天然の環境から取り出されていることを意味する。本明細書で使用する場合、用語「精製され」とは、純度が増加していることを意味し、ここで、「純度」とは相対的な用語であって、必ずしも絶対的純度と解釈されるべきでない。例えば、純度は、少なくとも約50%であり得、60%、70%、80%、90%、95%より高くてもあり得、又は100%であり得る。
【0080】
本発明のTCRs、ポリペプチド、タンパク質(その機能的変異体を含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)(これらは全て、本明細書中以下、集合的に「本発明のTCR材料」と称す)は、医薬組成物な
どの組成物へと製剤化され得る。この点について、本発明は、本明細書に記載のTCRs、ポリペプチド、タンパク質、機能的部分、機能的変異体、核酸、発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)のいずれかと、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。本発明のTCR材料のいずれかを含む本発明の医
薬組成物は、1種より多い本発明のTCR材料、例えば、ポリペプチド及び核酸、又は2以上
の異なるTCRs(その機能的部分及び機能的変異体を含む)を含み得る。或いは、医薬組成物は、他の医薬上活性な薬剤(複数可)又は薬物(複数可)、例えば、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどと組み合わせて、本発明のTCR材料を含み得る。
【0081】
好ましくは、担体は医薬上許容される担体である。医薬組成物に関して、担体は、考慮
中の特定の本発明のTCR材料について慣習的に使用される担体のいずれかであり得る。か
かる医薬上許容される担体は、当業者に周知であり、公に容易に入手可能である。医薬上許容される担体は、使用条件下で有害な副作用も毒性もない担体であることが好ましい。
【0082】
担体の選択は、本発明の特定のTCR材料によって、及び本発明のTCR材料を投与するために使用される特定の方法によって、一部決定されよう。従って、本発明の医薬組成物の適切な製剤は多様である。適切な製剤には、経口、非経口、皮下、静脈内、筋内、動脈内、髄腔内、又は腹腔内(interperitoneal)投与のためのもののいずれかが含まれてよい。
本発明のTCR材料を投与するために2以上の経路を使用でき、ある場合には、特定の経路が、別の経路よりも迅速且つ有効な応答を提供し得る。
【0083】
好ましくは、本発明のTCR材料は、注射により、例えば静脈内に投与される。本発明のTCR材料が、本発明のTCR(又はその機能的変異体)を発現する宿主細胞である場合、注射
用の細胞のための医薬上許容される担体は、任意の等張性の担体、例えば、生理食塩水(水中約0.90% w/vのNaCl、水中約300 mOsm/LのNaCl、又は水1リットルあたり約9.0 gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott, Chicago, IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter, Deerfield, IL)、水中約5%のデキストロース、又は乳酸リンゲル液などを含んでよい。一実施態様において、医薬上許容される担体には、ヒト血清アルブメン(albumen)が補充され
る。
【0084】
本発明の目的のために、投与される本発明のTCR材料の量又は用量(例えば、本発明のTCR材料が1以上の細胞である場合には、細胞数)は、合理的な時間枠にわたって対象又は
動物において、例えば治療応答又は予防応答などをもたらすのに十分でなければならない。例えば、本発明のTCR材料の用量は、投与時点から約2時間又はそれ以上、例えば、12時間から24時間又はそれ以上の時間の期間において、癌抗原と結合するため、又は癌を検出、治療若しくは予防するために、十分でなければならない。特定の実施態様において、この期間は更に長くてもよい。用量は、本発明の特定のTCR材料の効力、及び動物(例えば
、ヒト)の状態、並びに治療されるべき動物(例えば、ヒト)の体重によって決定されるだろう。
【0085】
投与される用量を決定するための多くのアッセイが当分野で既知である。本発明の目的のために、本発明のTCR(又はその機能的変異体若しくは機能的部分)、ポリペプチド又
はタンパク質を発現するT細胞の所与の用量を哺乳動物に投与した際に、かかるT細胞によって標的細胞が溶解される又はIFN-γが分泌される程度を、種々の用量のT細胞をそれぞ
れ与えた哺乳動物のセット間で比較することを含むアッセイが、哺乳動物に投与されるべき出発用量を決定するために使用され得る。特定の用量の投与の際に標的細胞が溶解される又はIFN-γが分泌される程度は、当分野で既知の方法によってアッセイできる。
【0086】
本発明のTCR材料の用量はまた、本発明の特定のTCR材料の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質及び程度によっても決定されよう。典型的には、処方医師は、様々な因子(例えば、年齢、体重、全体的な健康、食事、性別、投与されるべき本発明のTCR材
料、投与経路、及び治療される状態の重篤度など)を考慮して、個々の患者それぞれを治療するための本発明のTCR材料の投与量を決定するだろう。本発明のTCR材料が細胞集団である一実施態様において、注入あたり投与される細胞数は変動してよく、例えば、約1×106細胞から約1×1012細胞又はそれ以上などであってよい。
【0087】
当業者ならば、本発明のTCR材料が、本発明のTCR材料の治療効力又は予防効力を改変によって増加させるように、任意の数の方法で改変され得ることを容易に理解するであろう。例えば、本発明のTCR材料は、直接的に、又は架橋を介して間接的にかのいずれかで、
標的化部分(targeting moiety)にコンジュゲート化され得る。化合物(例えば、本発明
のTCR材料)を標的化部分にコンジュゲート化する実務は、当分野で既知である。例えば
、Wadwa et al., J. Drug Targeting 3:111(1995)及び米国特許第5,087,616号を参照
。本明細書で使用する場合、用語「標的化部分」とは、細胞表面受容体を特異的に認識し、これと結合する任意の分子又は薬剤をいい、その結果、該標的化部分によって、本発明のTCR材料のデリバリーが、該受容体を表面に発現する細胞集団へと向けられる。標的化
部分には、抗体又はそのフラグメント、ペプチド、ホルモン、成長因子、サイトカイン、及び任意の他の天然又は非天然リガンドであって、細胞表面受容体(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、CD28、血小板由来成長因子受容体(PDGF)、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)など)と結合するものが
含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、用語「架橋(bridge)」とは、本発明のTCR材料を標的化部分と繋げる任意の薬剤又は分子をいう。架橋及び/又
は標的化部分が、本発明のTCR材料と結合した場合に、本発明のTCR材料の機能(すなわち、HPV 16 E6と結合する能力;又は癌、HPV 16感染、若しくはHPV陽性の前癌状態を検出、治療若しくは予防する能力)を妨げないことを条件として、本発明のTCR材料の機能に必
要ではない、本発明のTCR材料における部位が、架橋及び/又は標的化部分を結合するた
めの理想的部位であると当業者は理解する。
【0088】
本発明の医薬組成物、TCRs(その機能的変異体を含む)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞又は細胞集団は、癌、HPV 16感染、又はHPV陽性の
前癌状態を治療又は予防する方法で使用され得ることが企図される。特定の理論に拘束されるものではないが、本発明のTCRs(及びその機能的変異体)は、該TCR(又は関連する
本発明のポリペプチド若しくはタンパク質、及びその機能的変異体)が、細胞により発現された場合に、HPV 16 E6を発現する標的細胞に対して免疫応答を媒介できるように、HPV
16 E6と特異的に結合すると考えられる。この点について、本発明は、哺乳動物において病態を治療又は予防する方法であって、本明細書に記載の医薬組成物、TCRs(及びその機能的変異体)、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれか、本明細書に記載のTCRs(及びその機能的変異体)、ポリペプチド、タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む任意の核酸若しくは組換え発現ベクター、又は本明細書に記載のTCRs(及びその機能的変異体)、ポリペプチド若しくはタンパク質のいずれかをコードする組換えベクターを含む任意の宿主細胞若しくは細胞集団を、哺乳動物において病態を治療又は予防するのに有効な量で、哺乳動物に投与することを含み、ここで、該病態が、癌、HPV 16感染、又はHPV陽性の前癌状態である、方法を提供する。
【0089】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」及び「予防する」並びにそれらの派生語は、100%又は完全な治療又は予防を必ずしも意味しない。むしろ、当業者が潜在的利益又
は治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、哺乳動物における病態の任意のレベルの治療又は予防の任意の量を提供し得る。さらに、本発明の方法により提供される治療又は予防は、治療又は予防される病態(例えば、癌)の1つ以上の状態又は症状の治療又は予防を含み得る。例えば、治療又
は予防は、腫瘍の退縮を促進することを含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防」は、病態、又はその症状若しくは状態の発症を遅延させることを包含し得る。
【0090】
また、哺乳動物において病態の存在を検出する方法も提供する。該方法は、(i)本明
細書に記載の本発明のTCRs(及びその機能的変異体)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体若しくはその抗原結合部分、又は医薬組成物のいずれかと、哺乳動物由来の1以上の細胞を含むサンプルとを接触させ、それに
より複合体を形成すること、及び該複合体を検出することを含み、ここで、該複合体の検出が、哺乳動物における病態の存在を示し、ここで、該病態は、癌、HPV 16感染、又はHPV陽性の前癌状態である。
【0091】
哺乳動物において病態を検出する本発明の方法に関して、細胞のサンプルは、全細胞、その溶解物又は全細胞溶解物の画分(fraction)(例えば、核若しくは細胞質画分、全タンパク質画分又は核酸画分など)を含むサンプルであり得る。
【0092】
本発明の検出方法の目的のために、接触は、哺乳動物に関してin vitro又はin vivoで
行うことができる。好ましくは、接触はin vitroである。
【0093】
また、複合体の検出は、当分野で既知の、任意の数の方法を介して生じ得る。例えば、本明細書に記載の本発明のTCRs(及びその機能的変異体)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、又は抗体若しくはその抗原結合部分は、検出可能な標識、例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)など)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)、及び元素粒子(例えば、金粒子など)などで標識され得る。
【0094】
宿主細胞又は細胞集団が投与される本発明の方法の目的のために、細胞は、哺乳動物に対して同種異系又は自己の細胞であり得る。好ましくは、細胞は、哺乳動物に対して自家性(autologous)である。
【0095】
本発明の方法に関して、癌は、以下のいずれかを含む任意の癌であり得る:急性リンパ球性癌(acute lymphocytic cancer)、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨癌、脳腫瘍、乳癌、肛門、肛門管又は肛門直腸(anorectum)の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関
節の癌、頸部、胆嚢又は胸膜の癌、鼻、鼻腔又は中耳の癌、口腔の癌、膣癌、外陰部の癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性癌(chronic myeloid cancer)、結腸癌、食道癌、子宮頸癌(cervical cancer)、消化管カルチノイド腫瘍、グリオーマ、ホジキンリンパ腫
、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、悪性中皮腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、鼻咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、中咽頭癌、卵巣癌、陰茎癌、膵臓癌、腹膜、網(omentum)及び腸間膜の癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、皮膚癌、小腸癌、軟部組織癌、
胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、尿管癌、並びに膀胱癌。好ましい癌は、子宮頸部、中咽頭、肛門、肛門管、肛門直腸、膣、外陰部又は陰茎の癌である。特に好ましい癌は、HPV 16陽性癌である。HPV 16感染と最も一般的に関連する癌は、子宮頸部、中咽頭、肛門、肛門管、肛門直腸、膣、外陰部及び陰茎の癌を含むが、本発明の方法は、他の解剖学的領域で生じるものを含む任意のHPV 16陽性癌を治療するために使用されてよい。
【0096】
本発明の方法で言及される哺乳動物は、任意の哺乳動物であり得る。本明細書で使用する場合、用語「哺乳動物」とは、任意の哺乳動物をいい、Rodentia目の哺乳動物(例えば、マウス及びハムスター)、及びLogomorpha目の哺乳動物(例えば、ウサギ)を含むが、これらに限定されない。哺乳動物は、Carnivora目(Felines(ネコ)及びCanines(イヌ
)を含む)由来であることが好ましい。哺乳動物は、Artiodactyla目(Bovines(ウシ)
及びSwines(ブタ)を含む)由来、又はPerssodactyla目(Equines(ウマ)を含む)のものであることがより好ましい。哺乳動物は、Primates目、Ceboids若しくはSimoids(サル)のもの、又はAnthropoids目(ヒト及び類人猿)のものであることが最も好ましい。特
に好ましい哺乳動物はヒトである。
【0097】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、当然ながら、その範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0098】
実施例1
本実施例は、腫瘍からのヒト抗HPV 16 TCRsの単離を実証する。
【0099】
転移性HPV 16 E6陽性肛門癌腫瘍(腫瘍3809)サンプルを患者から得た。腫瘍サンプル
を、逆転写酵素(RT)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、グリセルアルデヒド3-リン
酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対する、HPV 16 E6、HPV 16 E7、HPV 18 E6及びHPV 18 E7の発現について分析した。HPV 16 E6、HPV 16 E7、HPV 18 E6及びHPV 18 E7の相対発現
を、CaSki細胞、HeLa細胞及び624細胞(メラノーマ細胞株)のものと比較した。結果を図1に示す。図1に示すように、腫瘍3809サンプルは、HPV 16 E6発現に対して陽性であった
【0100】
腫瘍3809サンプルを24のフラグメントに分割し、各種フラグメントから腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を得た。TILを、96ウェルプレート中、以下をパルスした自己の未熟樹状細胞(DCs):HPV 16 E6単独、抗クラスI抗体と組み合わせたHPV 16 E6、HPV 16 E7単独、抗ク
ラスI抗体と組み合わせたHPV 16 E7、gp100、又はOKT3、と共培養した。インターフェロ
ン-ガンマ(IFN-γ)を測定した。結果を図2A及び2Bに示す。図2A及び2Bに示すように、TILは、HPV 16 E6に対して反応性であったが、gp100又はE7に対しては反応性でなかった。TILの抗HPV 16 E6反応性は抗クラスI抗体によりブロックされた。
【0101】
反応性の共培養ウェル由来の細胞を、抗4-1BB磁気ビーズを用いて選択した。以前に記
載されるように(Dudley et al. J. Immunother. 26:332-42(2003)及びRiddell et al. J. Immunol. Methods 128:189-201(1990))、急速拡大プロトコル(Rapid Expansion Protocol)(REP)を用いて、選択した細胞の数の急速拡大を実施した。簡単に述べる
と、TILを、30 ng/mLの抗CD3抗体及び6000 IU/mLのIL-2を有する完全培地(CM)中、放射線照射(40 Gy)同種異系末梢血単核「フィーダー」細胞とともに培養した。
【0102】
数を拡大した3809 4-1BB選択細胞を、緑色蛍光タンパク質(GFP)をトランスフェクト
した293-A2細胞(HLA-A2を安定発現するHEK-293細胞)、E6をトランスフェクトした293-A2細胞、ペプチドなしで培養した3809リンパ芽球様細胞株(LCL)(エプスタイン・バール・ウイルスを用いて形質転換されているB細胞)、HPV 16 E6ペプチドプールと共培養した3809 LCL、又はOKT3と共培養した。ペプチドプールは、HPV 16 E6の完全配列をカバーす
る、11アミノ酸がオーバーラップした15-merのペプチドを含んだ。IFN-γを測定した。結果を図3に示す。図3に示すように、数を拡大したTILは、E6をトランスフェクトした293-A2細胞に対して反応性であったが、GFPをトランスフェクトした293-A2細胞に対しては反応性でなかった。E6ペプチドプールと共培養した3809 LCL細胞が反応性を実証した一方、いずれのペプチドとも共培養しなかった3809 LCL細胞はこれを実証しなかった。フローサイトメトリー研究により、数を拡大した細胞がHLA-A2/E629-38テトラマーと結合したことが示された。
【0103】
REP又はクローニングの更なるサイクルを行うことなく抗4-1BB磁気ビーズを用いたソーティングにより細胞を更に選択し、それに続いて、5’ Rapid Amplification of cDNA Ends(RACE)を行った。磁気ビーズ単離物由来の5’ RACE産物のジェノタイプ分析を表Aに
示す。表Aに示すように、ほぼクローン性の細胞集団が得られた。
【0104】
【表A】
【0105】
配列番号11のアミノ酸配列を含むアルファ鎖をコードするcDNA(配列番号21)を含むヌクレオチド配列をTRAV35*02/TRAJ41*01から得た。配列番号12のアミノ酸配列を含むベー
タ鎖をコードするcDNA(配列番号22)を含むヌクレオチド配列をTRBV7-6*01/TRBV2-3*01/TRBD1*01から得た。
【0106】
実施例2
本実施例は、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含むキメラ抗HPV 16 TCRを作製する方法を実証する。
【0107】
マウス定常領域及びヒト可変領域を含むキメラTCRをコードするヌクレオチド配列を以
下のように調製した。実施例1で得られたTCRのアルファ鎖及びベータ鎖の元の(ヒト)定常領域(それぞれ、配列番号23及び24の定常領域アミノ酸配列)をコードするヌクレオチド配列を切除し、それぞれ、マウスのアルファ鎖及びベータ鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列と置き換えた。結果として得られた、キメラアルファ鎖及びベータ鎖をコードするヌクレオチド配列を、アルファ鎖とベータ鎖との間に位置するピコルナウイルス2Aペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する単一ヌクレオチド配列へとクローニングした。組み合わせたヌクレオチド配列を、ヒト組織における発現のためにコドン最適化(opt)して、ベクター挿入物(配列番号29)を提供した。ベクター挿入物をMSGV1発現ベクターへとクローニングし、配列番号30(E6 TCR)のヌクレオチド配列を得た。ベクターによりコードされるTCRは、配列番号17を含むアミノ酸配列を含むアルファ鎖、及び配列番
号18を含むアミノ酸配列を含むベータ鎖を含んだ。
【0108】
実施例3
本実施例は、配列番号17及び18のアミノ酸配列をコードする組換え発現ベクターを形質導入した末梢血リンパ球(PBL)が、HLA-A2拘束性の様式で、HPV 16陽性腫瘍細胞株を特
異的に認識することを実証する。
【0109】
末梢血リンパ球(PBL)に実施例2の発現ベクターを形質導入し、HPV 16 E629-38ペプチドをパルスした標的293-A2細胞、HPV 16 E711-19ペプチドをパルスした293-A2細胞、HPV 16 E6をコードするプラスミドを形質導入した293-A2細胞、GFPをコードするプラスミドを形質導入した293-A2細胞、HPV 16 E6をコードするプラスミドを形質導入した293細胞、HPV 16 E6をコードするプラスミドを形質導入した624細胞、HPV 16 E7をコードするプラス
ミドを形質導入した624細胞、SCC152細胞、SCC90細胞、CaSki細胞、HPV-18子宮頸癌細胞
、メラノーマコントロール細胞、胆管コントロール細胞、624細胞、又はSiHa細胞と共培
養した。IFN-γを測定した。結果を図4Aに示す。図4Aに示すように、配列番号17及び18のアミノ酸配列をコードする組換え発現ベクターを形質導入したPBMCは、HLA-A2拘束性の様式で、HPV 16陽性腫瘍細胞株及び他のHLA-A2+HPV16+標的を特異的に認識する。
【0110】
実施例2の発現ベクターを形質導入したPBLを、抗体なしで、抗MHCクラスI抗体とともに、又は抗MHCクラスII抗体とともに、E6をコードするプラスミドを形質導入した標的293-A2細胞、E6をコードするプラスミドを形質導入した293細胞、SCC90細胞、CaSki細胞、又は624細胞(メラノーマ細胞株)と共培養した。DMF5(MART-1に対するMHCクラスI拘束性TCRを発現するよう形質導入されたT細胞)を、抗体なしで、抗MHCクラスI抗体とともに、又
は抗MHCクラスII抗体とともに、DMF5により認識されるメラノーマ細胞株(624)と共培養した。4.7.20(HPV 16 E7に対するMHCクラスII拘束性TCRを発現するよう形質導入されたT細胞)を、抗体なしで、抗MHCクラスI抗体とともに、又は抗MHCクラスII抗体とともに、E7ペプチドプールをパルスしたPBMC(「E7ペプチド」)とともに培養した。IFN-γを測定
した。結果を図4Bに示す。図4Bに示すように、抗MHCクラスI抗体は、HLA-A2+HPV16+標的
に対する形質導入細胞の反応性をブロックした一方、抗クラスII抗体は反応性をブロックしなかった。
【0111】
実施例4
本実施例は、配列番号17及び18のアミノ酸配列をコードする組換え発現ベクターを形質導入した細胞が、CD8非依存性の様式で、HLA-A2-E629-38テトラマーと結合することを実
証する。
【0112】
実施例2の組換え発現ベクターを形質導入したPBLを、FACSにより、CD8陽性細胞及びCD8陰性細胞へとソーティングした。HLA-A2-E629-38テトラマーとの結合をフローサイトメトリーにより測定した。CD8陽性細胞及びCD8陰性細胞はともに、HLA-A2-E629-38テトラマーと結合した。
【0113】
実施例5
本実施例は、配列番号17及び18のアミノ酸配列をコードする組換え発現ベクターを形質導入したCD4及びCD8陽性細胞が、HPV-16陽性腫瘍細胞株を特異的に認識することを実証する。
【0114】
CD8陽性又はCD4陽性PBLは、形質導入しないか(非形質導入)又は実施例2の発現ベクターを形質導入し、HPV 16 E629-38ペプチドをパルスした標的293-A2細胞、HPV 16 E711-19ペプチドをパルスした293-A2細胞、HPV 16 E6をコードするプラスミドを形質導入した293-A2細胞、GFPをコードするプラスミドを形質導入した293-A2細胞、293-A2細胞、HPV 16 E7を安定的に発現するレトロウイルス形質導入624細胞(624-E7)、HPV 16 E6を安定的に
発現するレトロウイルス形質導入624細胞(624-E6)、SCC152細胞、SCC90細胞、CaSki細
胞、HPV-18子宮頸癌細胞、メラノーマコントロール細胞、624細胞、又はSiHa細胞と共培
養した。IFN-γを測定した。結果を図5に示す。図5に示すように、配列番号17及び18のアミノ酸配列をコードする組換え発現ベクターを形質導入したCD8陽性及びCD4陽性PBMCはともに、HLA-A2拘束性の様式で、HPV 16陽性腫瘍細胞株及び他のHLA-A2+HPV16+標的を特異
的に認識する。
【0115】
実施例6
本実施例は、配列番号17及び18のアミノ酸配列をコードする組換え発現ベクターを形質導入した細胞が、HPV 16 E629-38をパルスしたT2細胞のアビディティ(avid)認識を実証することを実証する。
【0116】
CD8陽性又はCD4陽性PBLは、形質導入しないか(非形質導入)又は実施例2の発現ベクターを形質導入し、様々な濃度のHPV 16 E629-38ペプチドをパルスした標的T2細胞と共培養した。IFN-γを測定した。結果を図6A及び6Bに示す。図6A及び6Bに示すように、配列番号17及び18のアミノ酸配列をコードする組換え発現ベクターを形質導入したCD4陽性及びCD8陽性細胞は、HPV 16 E629-38をパルスしたT2細胞のアビディティ(avid)認識を実証した
【0117】
実施例7
本実施例は、ヒト患者においてHPV 16+癌を治療する方法であって、配列番号17及び18
のアミノ酸配列を含む抗HPV 16 E629-38 TCRを発現するよう形質導入された自己T細胞を
患者に投与することを含む、方法を実証する。
【0118】
患者は、再発性/難治性又は転移性のHPV-16+癌を有する。癌組織のサンプルを、in situハイブリダイゼーション(ISH)又はPCRによりHPV 16ジェノタイプについて試験する。患者は、HLA-A2発現についても試験される。患者は、再発性/難治性又は転移性の疾患について事前に第一選択治療を受けているか、又は患者は標準治療を辞退している。
【0119】
患者は、-7日目及び-6日目にシクロホスファミド(60 mg/kg/日、静脈内(IV))で、-5日目から-1日目までフルダラビン(25 mg/m2/日、IV)で治療される。実施例2のMSGV1発現ベクターを自己PBMCに形質導入する。以前に記載されるように(Dudley et al. J. Immunother. 26:332-42(2003)及びRiddell et al. J. Immunol. Methods 128:189-201(1990))、形質導入細胞の数を急速拡大する。簡単に述べると、細胞を、30 ng/mLの抗CD3抗体及び6000 IU/mLのIL-2を有する完全培地(CM)中、放射線照射(40 Gy)同種異系末梢血単核「フィーダー」細胞とともに培養する。数を拡大した形質導入細胞を、0日目に
、高用量のインターロイキン(IL)-2とともに患者に投与する。
【0120】
客観的な腫瘍縮小効果(objective tumor responses)を、RECIST(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)1.0に従って評価する。18人の患者のうち少なくとも3人
が、治療から4ヶ月以上後に治療に応答する場合、コホートを35人の患者に拡大する。毒
性も評価する。免疫学的研究(例えば、注入細胞の拡大、持続性、フェノタイプ及び機能などを含む)も研究する。
【0121】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々に且つ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0122】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an
」及び「the」及び「少なくとも1つ(at least one)」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1つ以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛
盾しない限り、列挙した事項から選択される1つの事項(A又はB)、又は列挙した事項の
うち2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈されるべきである。用語「
含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、特記のない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「~を含むがそれ
らに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書に特記のない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書に個々に記述されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的用語(例えば、「など(such as)」)の使用
は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書の全ての用語は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0123】
発明を実施するために本発明者らが知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施態様が本明細書に記載される。これらの好ましい実施態様のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変及び等価物を含む。更に、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせが、本明細書に特記がないか文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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