IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エミテ、インヘニエリア、ソシエダッド、リミターダの特許一覧

特許7223843ハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム
<>
  • 特許-ハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム 図1
  • 特許-ハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム 図2
  • 特許-ハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム 図3
  • 特許-ハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/10 20060101AFI20230209BHJP
   H01Q 19/17 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
G01R29/10 E
G01R29/10 A
G01R29/10 B
H01Q19/17
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021520418
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 ES2018070655
(87)【国際公開番号】W WO2020074752
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】521148957
【氏名又は名称】エミテ、インヘニエリア、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】EMITE INGENIERIA S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】ダビド、アガピト、サンチェス、エルナンデス
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-304860(JP,A)
【文献】特開平10-093286(JP,A)
【文献】特開2011-019031(JP,A)
【文献】実開平05-082120(JP,U)
【文献】特開2017-211211(JP,A)
【文献】特開2017-207464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 29/00-29/26、
H01Q 15/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三つの異なるテストアプローチ(CATR、NFTFおよびDF)を同時に使用して、試験対象のデバイスのアンテナセットが配置されたクワイエットテストゾーンに異なる周波数帯域で複数の波面を提供するためのハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム(1)であって、
ドア(3)とホイール(4)と吸収材(5)とを有する無響室(2)であって、前記吸収材(5)は、その壁、天井、ドアおよび床の内側を覆う、無響室(2)と、
一重または二重偏波の円形導波管波形アンテナホーンタイプまたはプリントアレイタイプのいずれかの一つ以上の一次供給線源アンテナ要素(9)を有する側方コンパクトアンテナテスト範囲一次供給線源アンテナセット(7)と、そのCATR一次供給支持タワー(8)と、を有する湾曲リフレクタ(6)と、
gNodeBタイプまたはユーザ装置タイプのいずれかの試験対象のアンテナセット(AUT)または試験対象のデバイス(DUT)(10)であって、そのAUT/DUTタワーと、クワイエットテストゾーン(12)に配置されるとともに回動、上昇および方位回転を提供可能なターンテーブル支持および位置決め構造体(11)と、を有する試験対象のアンテナセット(AUT)または試験対象のデバイス(DUT)(10)と、
直接的遠方界(DFF)および近傍界-遠方界(NFTF)二次供給線源アンテナセット(13)であって、そのDFF/NFTF支持タワー(14)と、一重または二重偏波の円形導波管波形アンテナホーンタイプまたはプリントアレイタイプのいずれかの一つ以上の次供給線源アンテナ要素(15)と、を有し、それらの開口は、前記湾曲リフレクタの中央で穿孔(16)されて選択的に金属キャップ(17)によりキャップされるか、前記湾曲リフレクタの正面に配置される、直接的遠方界(DFF)および近傍-遠方界(NFTF)二次供給線源アンテナセット(13)と、
電気ケーブル(18)、無線周波数ケーブル(19)、イーサネットケーブル(20)および光ファイバケーブル(21)のセットと、
前記無響室(2)の内側または外側のいずれかに配置された信号分析装置(22)と、
を備える、ハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム(1)。
【請求項2】
前記一次供給線源アンテナ要素および前記二次供給線源アンテナ要素は、狭い放射パターンを有する一つ以上の高ゲインの一重または二重偏波の円形波形導波管ホーンまたはプリントアレイを含む、
請求項1に記載のハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム。
【請求項3】
前記吸収材は、前記波面に寄与することが意図されない放射線を吸収するように、前記無響室の内側に配置された任意の支持構造体上に、またはその周囲に配置される、
請求項1に記載のハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム。
【請求項4】
前記二次供給線源アンテナ要素は、前記円形導波管波形アンテナホーンタイプに代えて矩形導波管波形アンテナホーンタイプを含む
請求項1に記載のハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム。
【請求項5】
前記試験対象のアンテナセット(AUTまたは前記試験対象のデバイス(DUTに異なる温度および/または湿度条件を設定するように、気候エンクロージャが前記クワイエットテストゾーンで使用され得る、
請求項1に記載のハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム。
【請求項6】
前記波面で送信される信号は、放射パターン、ビーム幅、軸比、前後比、ゲイン、指向性、相関、容量、ダイバーシティ、スペクトル効率および放射効率の点において、試験対象のアンテナセットの放射線特性を判定することが意図される、
請求項1に記載のハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム。
【請求項7】
前記波面で送信される信号は、セルラー通信技術の異なるキャリアであって、LTEとして知られる第4世代生成技術(4G)、または5GもしくはNRとして知られる第5世代生成技術のいずれかであり、ビーム形成、スループット、遅延、送信電力または受信機感度について前記試験対象のアンテナセット(AUTまたは前記試験対象のデバイス(DUTの性能を判定することが意図され、シングルキャリア(SC)、SISO、MIMO、マルチユーザMIMO(MU MIMO)、大規模MIMO(mMIMO)、キャリアアグレゲーション(CA)またはデュアルコネクティビティ(EN DC)等のスキームについてそれらの技術で使用される、
請求項1に記載のハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム。
【請求項8】
前記波面で送信される信号は、LTEまたは5Gの異なるキャリアであり、いくつかの波面に更なる干渉、ノイズまたは歪みが同時に存在する場合、シングルキャリア(SC)、SISO、MIMO、マルチユーザMIMO(MU MIMO)、大規模MIMO(mMIMO)、キャリアアグレゲーション(CA)またはデュアルコネクティビティ(EN DC)等のスキームについて前記試験対象のアンテナセット(AUTまたは前記試験対象のデバイス(DUTの性能を判定することが意図される、
請求項1に記載のハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム。
【請求項9】
前記波面で送信される信号は、LTEまたは5Gの異なるキャリアであり、gNodeBエミュレータの一つ以上の同時gNodeBを有する一つ以上の同時UEユニットの無線性能を判定することが意図される、
請求項1に記載のハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム。
【請求項10】
前記波面で送信される信号は、LTEまたは5Gの異なるキャリアであり、一つ以上の同時UEまたはUEエミュレータを有する一つ以上の同時gNodeBユニットの無線性能を決定することが意図される、
請求項1に記載のハイブリッドコンパクト近傍-遠方界テスト範囲システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、アンテナおよびデバイスのテストシステム、より具体的には、近傍界テスト範囲、直接的遠方界テスト範囲およびコンパクトアンテナテスト範囲を同時に採用するハイブリッドコンパクト(CATR)、近傍界-遠方界(NFTF)および直接的遠方(DFF)テスト範囲に関する。
【背景技術】
【0002】
無線デバイスの無線テストでは、通常、アンテナの測定に使用されるものと同様のテストシステムが採用されている。無響室内でアンテナセットまたはデバイスの放射パターンを測定するための三つの異なる方法が存在する。最も古いアプローチは、AUTまたはDUTを遠方の見通し線源からの電磁波で照明することである。点光源から空間に広がる電磁場は、近傍界として理解される線源に近接している場合には球面状であるが、照明アンテナからの波長に関して大きく距離を置くと、波面は、均一の振幅および位相を有する本質的に平面状のものとして観察される。これが起こる境界距離は、科学文献において、遠方界距離として定義され、空間において線源から遠ざかるにつれて連続する遠方界範囲が始まる空間における初期表面が画定される。このような均一の波面を観測するには、試験対象のアンテナセット(AUT)または試験対象のデバイス(DUT)を、送信アンテナの遠方範囲に配置する必要がある。近傍界に配置された場合、AUTまたはDUTは、球面波を観測するので、遠方測定パラメータを得るために何らかの近傍-遠方界への変換式を使用する必要がある。線源からの近傍-遠方界境界距離は、試験対象のアンテナセットまたはデバイスの最大寸法Dおよび動作周波数に応じて異なる。
2D/λ (1)
これは、波面で最大22.5度の位相不均一性を許容することにより得られる。λは、照明信号波長である。異なる周波数の信号が送信された場合、それぞれは異なる近傍-遠方界距離を規定する。この結果、照明されたテスト全体に対する遠方界距離は、最大寸法Dの任意のAUTまたはDUTで採用される最高周波数(最低関連波長)により規定される。上述の式(1)を注意深く観察すると、高周波で大型のアンテナの場合、AUTまたはDUTを遠方界に配置するためには、それらを線源から過度に離間させる必要があることがわかる。例えば、D=25cmのデバイスまたはアンテナのセットは、6GHzでの動作において遠方界にあるとみなされるために、供給線源アンテナセットから2.5m離間している必要がある。このため、直接的遠方界アプローチは、通常、低周波数で比較的小型のアンテナに採用され、直接的近傍界アプローチは、遠方界距離が利用可能なスペースやチャンバ寸法より大きい場合に使用される。このアプローチで評価される、当業者によく知られている他のアンテナパラメータは、ビーム幅、軸比、前後比、ゲイン、指向性、相関、容量、ダイバーシティ、スペクトル効率および放射効率である。
【0003】
また、当業者には、アンテナが受動素子であること、アンテナがエネルギーを送信しているか受信しているかに関係なくゲインおよび方向特性が相反するあるいは等しいこと、ならびにデバイスまたはアンテナの応答が異なる温度および湿度値に対して相違し得ることが知られている。したがって、受信モードにおけるAUTのテストは、送信モードにも同様に適用可能であるという結果をもたらす。このため、本発明は、本明細書において、ある要素が送信機として機能し、別の要素が受信機として機能するものとして説明されるが、相反性を理由として、送信機として機能していた要素が受信機として機能し、受信機として機能すると説明した要素が送信機として機能する場合にも、同一発明が適用される。また、本発明は、AUTまたはDUTにおいて異なる温度および湿度条件の影響をもたらす、空気状パラメータの発泡体で作成された気候エンクロージャを付加する。
【0004】
2番目のアプローチでは、AUTまたはDUTの近傍界内の場の振幅および位相分布を測定し、これらの測定値を数学的に変換して遠方界値を取得する。近傍界-遠方界(NFTF)として知られるこのアプローチは、近傍-遠方界変換、プローブの極めて正確な位置決めが必要であるが、非常に時間がかかり、実際には計算されたパターンの角度範囲が制限される。近傍界アプローチの利点は、供給線源アンテナセットとAUTまたはDUTとが大きく離間していなくてもよいことである。したがって、空間的制限が存在する場合に特に有用であり得る。
【0005】
3番目のアプローチは、コンパクトアンテナテスト範囲(CATR)を使用する。これは、供給線源により送信された信号を通常湾曲したリフレクタで反射し、リフレクタの開口に目的の周波数で、すなわち、遠方界の波動性であるが、直接的遠方界アプローチより線源からはるかに短距離にある平面電磁波を生成することに依存する。CATR用の供給アンテナは、一重または二重偏波を有し得るとともに、複数の信号を励起可能なように一つ以上のユニットであり得る。CATRは、テストフィールドとして、大型のオフセットの通常湾曲したリフレクタの開口に閉鎖した平行近傍界(US3302205)、レンズ(WO2007136964)またはホログラム(US5670965)を使用する。リフレクタは、通常、その焦点または側面に配置された線源アンテナにより給電される。これは、湾曲したリフレクタ表面を可能な限り正確に照明し、リフレクタに正しく向いていない場合のエネルギーの漏出やロスを回避するために必要な操作をする。リフレクタ供給線源アンテナは、電磁波をリフレクタに向けて送信する。リフレクタの湾曲表面は、各一次供給線源アンテナセット要素により送信された各信号に対してその開口に均一な波面を生成する。リフレクタの縁部からの反射は、通常、テスト対象のアンテナまたはデバイスを照明する所望の均一なテストフィールドを歪めさせ、リフレクタ開口のものよりわずかに上の距離が、通常、波面の均一性、したがって、遠方界範囲を判定するように採用される。ロール状縁部(US5341150、US8330640)、鋸歯状縁部(US6115003)、供給パターンをメインの通常湾曲したリフレクタ上に正確にマッピングする二次オフセットサブリフレクタ(WO8606550、US4208661)、より大きい離間距離を有する準コンパクトアンテナテスト範囲であって、範囲を圧縮するが、それでも開口部の近傍界内にあって直接的遠方界離間距離より短い準コンパクトアンテナテスト範囲(US20100039332)、またはCATR供給線源でコイルを有するヘリカルアンテナの使用(US4742359)は、リフレクタ縁部からの波面の歪みを低減するように提案された技術である。CATR法は、テストされるAUTより大きいリフレクタを必要とするとともに、極めて精密にリフレクタの表面を製造することが必要であるが、直接的遠方界法に比べて必要な遠方界距離が大幅に短いため、中高周波数で比較的大型のアンテナに非常に便利に使用できる。
【0006】
三つの方法のうちの一つを使用する複数のテストシステムが文献で見つけられるが、現在まで、三つのアプローチ全てを同時に使用可能である発明は存在しない。これは、これら全てが、試験対象のアンテナに向かって伝搬する単一の波面を採用しているためである。このため、複数のシステムを使用すると、あるアプローチの物理的部品が、他のアプローチによって生成された波面に干渉したりブロックしたりする原因となるであろう。想定される三つのテストアプローチの混成には、試験対象のアンテナまたはデバイスに向いた直接的供給線源アンテナがリフレクタと試験対象のアンテナセットまたはデバイスとの間に配置され、かつ直接的遠方界供給線源アンテナの不使用時にはその位置から取り外し可能であることが必要である。このため、このような設定においては、直接的遠方界供給線源アンテナを設置し、位置合わせし、保管するための時間や人件費が導入される。また、不使用時の直接的遠方界供給線源アンテナの保管および輸送に、設備資金も必要である。二つのテストアプローチ(直接遠方界およびCATR)は、一つのシステムに設定することができるが、これらを同時に操作することはできないと思われる。この理由は、直接的遠方界供給線源アンテナが、リフレクタからAUTが配置されたクワイエットテストゾーンに向かうCATR波面を明らかに物理的にブロックするであろうという点にある。
【0007】
更に、アンテナやデバイスの特性を測定するために三つの方法を同時に利用することは必要とされていなかったが、通信技術、特に高度なセルラーおよび無線システムの進歩に伴い、複数の周波数キャリアを同時に使用することが提案されている。モバイル無線通信の第5世代(5GまたはNew Ratio、NR)において、全く異なる周波数範囲、すなわち低域(FR1すなわち6GHz未満)と高域(FR2すなわちミリ波)とを組み合わせて、更に既存の(ロングタームエヴォリューションすなわちLTEとして知られる)第4世代キャリアと組み合わせて、同時的に使用することが提案されている。この目的は、gNodeBとして知られるモバイル通信基地局と、UEとして知られるユーザ機器との間で要求される非常に高いスループットを達成可能とすることである。通常、実際のgNodeBもしくはUEユニット、またはgNodeBおよびUEユニットのエミュレータのいずれかが、無線テストに使用される。種々の周波数帯域(または無線通信キャリア)に異なる波面を同時に提供する無線AUTまたはDUTテストシステム、およびクワイエットテストゾーンにおけるテストアプローチを発明し、これら全ての異なる周波数帯域およびアプローチを同時に受信および/または送信可能とすることが有用であろう。また、組み合わせた全てのアプローチが、同一の物理的到来角からの波面をAUTまたはDUTに提供することが望まれているため、二つまたは三つ全てのアプローチを直接組み合わせることは当業者に自明ではないが、異なる周波数帯域(低、高)を同時に便利に使用することを試みたり達成したりするための、または少なくとも一つのテストアプローチの欠点を何らかの発明の変形例によって克服するための数個の選択肢が提案されてきた。このような試みのうちのいくつかが記載され得る。
【0008】
DE2603055に記載のように、リフレクタを異なるセクションに分割することにより、コンパクトアンテナテスト範囲において異なる帯域を同時に有効にするとともに、これらの補助リフレクタを個別に考慮することが可能と思われる。励起ユニットは、それらの位相中心がそれぞれメインリフレクタの焦点で一致するように機械的に相互連結されなければならない。メインリフレクタのうち二つのみが、励起システムに取り付けられる。サブリフレクタはメインリフレクタより小さいサイズを有するため、何らかの周波数制限が適用される。しかしながら、一つのアプローチに対して単に小型サイズの複数のユニットを増加しただけのDE2603055は、CATRアプローチの利点だけでなく欠点も有している。
【0009】
JP2002228697において、コンパクトアンテナテスト範囲においてテストゾーンでの交差偏波がほとんどないということが、光軸方向に垂直な平面で半分にカットされた縁部部分より中央において光軸方向の断面が厚いレンズ形状であって、波動吸収材に囲まれたレンズ形状を使用することで達成されている。しかしながら、直接波がクワイエットテストゾーンに送信されないため、JP2002228697では依然として単一の波面が使用されている。
【0010】
US4949093、US4208661およびWO8606550では、長さの短いテストゾーンにおいて平面波を生成する方法として、二つのリフレクタを使用することが報告されている。第2の制御可能なリフレクタは、メインリフレクタに平行に、または反対側に配置される。US494093においては、電磁エネルギーのパルスがリフレクタ間のスペースに投入され、リフレクタの一方に向かって伝播する。多数回の再反射の後、制御可能なリフレクタは透過性とされて、実質的に平面状の波面が、試験対象のアンテナの適用に利用できるようになる。この解決策は、CATRと同様であるが、製造に費用がかかる精密な通常湾曲したリフレクタを使用していない。US4208661においては、第1リフレクタの焦線は、第2リフレクタの対称面に対して非平行にされている。WO8606550においては、二つのリフレクタは、特定の形状とされるとともに、オフセット構成で配置されている。しかしながら、US4949093、US4208661およびWO8606550における改善点は、単一の波面、CATRのものを超えている。CATRシステム用のリフレクタは、通常、動作する波長の1/100の要求精度で極めて精密に製造する必要があるため、二つのリフレクタを使用すると、コストや複雑さに明白な影響があるとともに、単一のリフレクタを有するシステムより大きい無響室が必要となる。現在のところ、全ての三つのアプローチを、あるアプローチによって生成された波面が、同一方向から同一のクワイエットテストゾーンを目指す別のアプローチの物理的部品によって物理的にブロックされないような態様で組み合わせる方法を提案する発明はない。
【発明の概要】
【0011】
本発明の実施形態は、湾曲リフレクタによってコンパクトアンテナテスト範囲から均一な波面を生成することができるとともに、リフレクタの背後に配置された供給線源アンテナセットから異なる周波数帯域のセットで更なる波面を送信および受信することができるが、その開口がリフレクタの中央で穿孔されている、またはその真正面にある、テストシステムを提供する。このようにして、三つの無線AUTまたはDUTテストアプローチ、すなわち、CATR、NFTFおよびDFFを単一のテストシステムで同時に利用することができる。操作の必要条件として、DFFがリフレクタの背後に配置されたときにリフレクタ中央で穿孔された表面は、リフレクタの全表面と比較して、小さくなければならない、すなわち、4分の1以下でなくてはならない。本発明の実施形態は、CATR、NFTFおよびDFFテストモード間で交互利用され同時に利用できない他のアプローチの使用に関連する設備費および人件費を節約することができる。本発明の実施形態は、側方供給部を有するコンパクトなレーダー範囲で使用可能である。有利には、本発明の実施形態は、既存のコンパクト範囲に後から装着することができるため、既存のコンパクト範囲のマルチバンドの複数アプローチ動作が可能となる。これにより、同一の無響室およびテストシステムにおいて、低周波数、中周波数および高周波数の同時テストを実施することができる。本システムは、無響室に組み込まれる。壁、天井、ドアおよび床の内側、ならびに室内に配置された任意の支持構造体の上面に、吸収体が設けられている。それは、所望の波面に寄与することが意図されない放射線を生成可能である。
【0012】
二次線源アンテナセットによる放射線に対するリフレクタの影響は、縮小された円形または矩形の開口を利用することができ、電磁波の大部分をクワイエットテストゾーンに向けて放射することができる高ゲインの波形円形または矩形ホーンアンテナを本発明において二次線源供給アンテナに使用することで大幅に低減される。更に、主放射線は、円形もしくは矩形ホーンまたはプリントアレイにおいて、EH電磁モードを利用する場合は開口の縁部に、またはHE電磁モードを利用する場合は開口の中央に生成され得る。このため、二次線源供給アンテナセットで使用されるアンテナ要素の開口に、選択的に、種々の金属キャップを利用することもできる。金属製のキャップは、ホーンまたはプリントアレイで使用される電磁モードに応じてDFFシステムがリフレクタの背後に配置されている場合、リフレクタにおける穿孔表面積を低減するのに役立つ。
【0013】
ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システム(1)に含まれる第1要素は、無響室(2)である。無響室(2)は、ドア(3)とホイール(4)と吸収材(5)とを有する。吸収材(5)は、その内壁、床、ドアおよび天井を覆っている。
【0014】
ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システム(1)に含まれる第2要素は、湾曲リフレクタ(6)である。湾曲リフレクタ(6)は、ロール状または鋸歯状縁部と、その側方供給二次供給線源アンテナセット(7)と、そのタワー(8)と、を有する。これは、リフレクタ表面に直接向いた狭い放射パターンを有する導波管ホーンまたはプリントアレイタイプの一つ以上の一重または二重偏波の二次供給線源アンテナ要素(9)を利用し得る。テスト対象のアンテナセットまたはデバイスAUT/DUT(10)は、AUTまたはDUTの周囲の容積であるクワイエットテストゾーン(12)に配置された3Dポジショナー(11)を有し、クワイエットテストゾーン(12)において、3Dポジショナーは、AUT/DUTをそのロール軸、仰角軸および方位角軸上で回転させ得る。第2要素は、クワイエットテストゾーン(12)において、種々の周波数帯域で均一な波面のセットを提供する。クワイエットテストゾーンは、選択的に、気候室(23)を収容可能であり、これにより、異なる温度および/または湿度条件で異なる性能指数のテストをすることができる。
【0015】
ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システム(1)に含まれる第3要素は、一次供給線源アンテナセット(13)およびその支持タワー(14)である。これは、狭い放射パターンを有する導波管ホーンまたはプリントアレイタイプの一つ以上の一重または二重の偏波二次供給線源アンテナ要素(15)を利用することができ、開口は、DFFシステムがリフレクタの背後に配置されている場合にはリフレクタの中央に穿孔(16)されているか、リフレクタの真正面に配置されている。二次供給線源アンテナ要素の開口サイズおよびサイドローブレベルを低減するように、これらは、波形円形/矩形ホーンまたはプリントアレイであり得る。第3要素は、クワイエットテストゾーンにおいて、異なる周波数帯域で、NFTFの場合は球面状の、DFFの場合は均一の波面のセットを提供する。一次または二次供給線源アンテナセットのアンテナ要素の個数に制限はないが、供給アンテナセットにおけるアンテナ要素の個数が多いほど、全ての供給アンテナのリフレクタを照明するという一次セットの要件、または湾曲リフレクタに比較的小型の表面孔を穿孔するという二次セットの要件を満たすことが困難になる、または比較的小型の要素をリフレクタの正面に配置することが困難になる。選択的に、リフレクタ中央に穿孔された開口に、使用時に、リフレクタから除かれる表面を小さくするようにキャップ(17)を被せることもできる。有利には、一次供給線源アンテナセットおよび二次供給線源アンテナセットの支持構造は、異なる個数のブラケットを有する複数の構成に適合可能である。これにより、各要素に対する一重または二重偏波のいずれかを有する複数のアンテナ要素が可能となる。このようにして、複数の周波数帯域に対応する複数の波面が、一次供給線源アンテナセットにより提供され得るとともに、同様に、複数の周波数帯域に対応する複数の波面が、二次供給線源アンテナセットにより、クワイエットテストゾーン上に同時に提供され得る。
【0016】
ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システム(1)に含まれる第4要素は、ケーブル、ワイヤ、コンバイナーおよびスイッチのセット、すべての要素に電力供給する電気(18)、チャンバの内外にスイッチまたは結合無線周波数信号を伝送する無線周波数(19)、通信プロトコル信号およびデータを伝送するイーサネット(20)およびgNodeB、AUTまたはDUT用の制御信号を伝送可能な光ファイバ(21)である。
【0017】
ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システム(1)に含まれる第5要素は、受信/送信補助分析装置(22)である。受信/送信補助分析装置(22)は、チャンバの内側または外側に配置され得るとともに、AUTまたはDUTからの、またはそれへの信号を分析し、AUTまたはDUTの応答、受信または送信パラメータを判定することができる。
【0018】
ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システム(1)により実施される第1プロセスは、上記の五つの要素のいずれかを単独でまたは組み合わせて採用し、クワイエットテストゾーン(11)内に特定の波面のセットを提供することである。各波面は、一次アンテナセット1または二次アンテナセット2のアンテナ要素のそれぞれからのものである。このプロセスにより、とりわけ、感度、送信電力、ビーム形成効率、スループット、遅延等の当業者によく知られた無線通信の標準化されたパラメータの観点から、とりわけ、大規模MIMO、マルチユーザMIMO(MU MIMO)、デュアル接続(EN DC)またはキャリアアグリゲーション(CA)について、AUTまたはDUTの応答およびこれら波面への相互作用を判定し、評価することができる。
【0019】
ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システム(1)により実施される第2プロセスは、AUTまたはDUTが単数または複数の信号をクワイエットテストゾーン(11)からリフレクタに向けて、最終的に一次アンテナセット1に向けて、および二次アンテナセット2に向けて送信し、これらの信号の受信および分析を同時に実施可能とすることである。このプロセスにより、AUTまたはDUTの送信特性を、とりわけ、総放射出力電力、ビーム形成効率、スループットまたは遅延等の無線通信の標準化されたパラメータの観点から、測定および評価することができる。
【0020】
本発明は、無線(OTA)アンテナおよびデバイステストの分野で有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1は、本発明の実施形態による要素を組み込んだ、例示的なハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲の断面図である。図1は、ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システム(1)であって、ドア(3)とホイール(4)と吸収材(5)とを有する無響室(2)と、湾曲リフレクタ(6)と、側方CATR一次供給線源アンテナセット(7)およびそのCATR一次供給支持タワー(8)であって、湾曲オフセットリフレクタ表面を向く例としての三つの二次供給線源の二重偏波の導波管波形アンテナホーンまたはプリントアレイ要素(9)から構成される側方CATR一次供給線源アンテナセット(7)およびそのCATR一次供給支持タワー(8)と、AUT/DUTタワーならびにターンテーブル支持および位置決め構造体(11)を有するテスト対象のアンテナセットまたはデバイス(AUT、DUT)(10)と、クワイエットテストゾーン(12)に配置されたその選択的な気候室(23)であって、気候エンクロージャ(23)内において、ロール軸、仰角軸および方位角軸回転を提供し得る気候室(23)と、を備える、ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システム(1)を示す。また、図1は、直接的遠方界(DFF)および近傍界-遠方界(NATF)二次供給線源アンテナセット(13)等の例示的なハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲の他の要素を示し、そのDFF/NFTF支持タワー(14)と、例としての三つの円形波形アンテナホーン二次要素(15)と、湾曲リフレクタ(6)の中央における、またはその正面におけるそれらの円形ホーン穿孔開口(16)と、近傍界-遠方界、直接遠方界およびCATR供給線源アンテナセットならびにAUT/DUTタワーを、例としてチャンバの外側に配置された信号分析装置(22)に接続する、不連続ライン、全ての要素に電力を供給する電気ケーブル(18)のセット、無線周波数(19)のセット、イーサネット(20)および光ファイバケーブルと、を示す。一次および二次供給線源アンテナセットから延びる/に到達する、およびクワイエットテストゾーンから延びる/に到達する不連続ラインは、生成された種々の波面を示す。図示のように、これらの波面は、相反性により、一方向に、またはその反対(双方向)に生成され得る。
【0022】
図2は、リフレクタの中心を通る水平方向切断図であり、二次供給線源アンテナセットが湾曲リフレクタの背後に配置され、(例としての)三つの波形円形ホーンアンテナ要素の開口がリフレクタ中央を穿孔されている、またはその正面にある、例示的な実施形態を概略的に示す。図2の例において、リフレクタ中央に穿孔された円形開口におけるEHまたはHEモードの必要な励起のリフレクタへの影響を最小限にするための円形二次供給アンテナ開口の円形金属キャップ(17)も示されている。図2は、二次供給線源アンテナセットにおいて中央アンテナ要素の円形開口に紐付いたキャップを例として示すが、単なる例示であり、二次供給線源アンテナセットにおけるアンテナ要素のうちの任意の開口がキャップを含み得る。図2には、二次供給線源アンテナセットまたは一次供給線源アンテナセットにプリントアレイアンテナ要素を使用できることも示されている。
【0023】
図3は、クワイエットテストゾーンでの二つの異なる波面の振幅リップルを示す。一方は、40GHzで一次供給線源アンテナセット(CATRアプローチ)からのもので、他方は、6HGzで二次供給線源アンテナセット(DFFアプローチ)からのものである。図3においてρは、クワイエットテストゾーンの中心からの距離を示す。当業者は、本発明のクワイエットテストゾーンにおいて振幅リップルは非常に高い均一性を維持し、振幅の不均一性が常に1dB未満であることを理解できる。
【0024】
図4は、図3における同一波面のクワイエットテストゾーンでの位相リップル分析を示す。図4においてρは、クワイエットテストゾーンの中心からの距離を示す。当業者は、クワイエットテストゾーン内の位相リップルも非常に高い均一性を維持し、位相不均一性は、常に遠方界境界の22.5°未満にあるばかりでなく、60cmのクワイエットテストゾーンにおいても極めて良好に±5°内にあることを理解できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の例は、本発明の説明の助けとなるが、その機能を制限するものとして解釈されてはならない。
【0026】
例1.全ての波面が平面状である、ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲
【0027】
ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システムの好適なモードにおいて、一次供給線源アンテナセットでの二重偏波のアンテナ要素の個数は、5G FR2ミリ波周波数範囲で動作する波形円形導波管ホーンまたはプリントアレイタイプのうちの一つであり、二次供給線源アンテナセットでのアンテナ要素の個数は、5G サブ6GHz周波数範囲で動作するタイプ波形円形導波管ホーンまたはプリントアレイタイプのうちの一つであり、オフセットリフレクタは端から端までで1.2mの寸法を有する鋸歯状縁部を有し、クワイエットテストゾーンは長さ30cm×直径30cmの円筒であって、その内部において、最大四つの異なる波面がそれらの遠方界に提供される。ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システムのこの好適なモードにおいて、全ての波面が遠方界にあり、近傍-遠方界変換が必要ない。
【0028】
このハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システムは、以下の新規性を提示する。
【0029】
小型の無響室において異なる周波数帯域で異なる均一な波面を提供し得ること。
【0030】
異なるテストアプローチにより異なる周波数帯域で異なる波面を同時に提供し得ること。これにより、使用される複数のアプローチの利点が単一のシステムに一体化される。
【0031】
多数の異なる周波数帯域で同時にAUTをテストし得ること。
【0032】
信号が四つの異なるキャリアを組み合わせたとき、DUTをテストし得ること。
【0033】
ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システムの好適なモードは、第5世代の無線通信の分野で使用されるように設計されている。この好適なモードにより、FR1キャリアとFR2キャリアとを組み合わせた無線性能を同時にテストすることができるため、従来の単一テストアプローチに対して競争上の優位性を提供する。
【0034】
例2.全ての波面が平面状であるとは限らない、ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲
【0035】
ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システムの好適なモードにおいて、一次供給線源アンテナセットでの二重偏波のアンテナ要素の個数は、5G FR2ミリ波周波数範囲で動作する波形円形導波管ホーンまたはプリントアレイタイプのうちの三つであり、二次供給線源アンテナセットでのアンテナ要素の個数は、5G サブ6GHz周波数範囲で動作するタイプ波形円形導波管ホーンまたはプリントアレイタイプのうちの一つであり、オフセットリフレクタは端から端までで1.5mの寸法を有する鋸歯状縁部を有し、クワイエットテストゾーンは長さ60cm×直径60cmの円筒であって、その内部において、最大八つの異なる波面がそれらの遠方界または近傍界のいずれかに提供される。ハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システムのこの好適なモードにおいて、全ての波面が遠方界にあるとは限らないため、何らかの近傍-遠方界変換が必要である。
【0036】
このハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システムは、以下の新規性を提示する。
【0037】
小型の無響室において異なる周波数帯域で異なる均一な波面を提供し得ること。
【0038】
異なるテストアプローチにより異なる周波数帯域で異なる波面を同時に提供し得ること。これにより、使用される複数のアプローチの利点が単一のシステムに一体化される。
【0039】
クワイエットテストゾーンに近傍界波面を提供し得ること。これにより、同一の無響室サイズを使用して高周波数または大型のAUTまたはDUTをテストするという利点がもたらされ得る。
【0040】
この例2におけるハイブリッドコンパクト近傍界-遠方界および直接的遠方界テスト範囲システムは、FR1キャリアとFR2キャリアとの組み合わせについて高周波数で大型のデバイスをテストする際に第5世代の無線通信の分野で使用されるように設計されている。このため、従来の単一のテストアプローチに関して、近傍界波面と他のテストアプローチへの組み合わせとを同時に使用することが有利である。
図1
図2
図3
図4