(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】ストラドルドビークル
(51)【国際特許分類】
F02D 29/00 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
F02D29/00 G
(21)【出願番号】P 2021522710
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2020017297
(87)【国際公開番号】W WO2020241127
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2019097416
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 信也
(72)【発明者】
【氏名】岩城 洋平
(72)【発明者】
【氏名】神津 大介
(72)【発明者】
【氏名】原野 和哉
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/013330(WO,A1)
【文献】特開2011-111133(JP,A)
【文献】特許第4722470(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、
トルクを出力する動力源と、
前記動力源により駆動され前記鞍乗型車両を走行させる被駆動部材と、
前記動力源から出力されるトルクを前記被駆動部材へ伝達する動力伝達経路であって、互いの間に遊びを有し且つ互いに相対移動可能であるように設けられ、互いに係合している伝達状態で動力を伝達する一方、互いに係合しない非伝達状態で動力を伝達しない、第1動力伝達部材及び第2動力伝達部材を含む、動力伝達経路と、
前記動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度、又は前記鞍乗型車両の加減速を生じさせ得る前記鞍乗型車両の走行状況を示す少なくとも1つのパラメータを取得する取得部、及びトルク変更期間において、前記少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記動力源から出力されるトルクを変更する変更処理を実行する制御部を有し、前記トルクの変更期間は、前記鞍乗型車両の加減速に伴って前記伝達状態が前記非伝達状態に切り替わってから前記非伝達状態が前記伝達状態に切り替わるまでの非伝達期間内の少なくとも一部を含む、制御装置と
を備え
、
前記取得部は、前記動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度又は前記加減速を生じさせ得る前記鞍乗型車両の走行状況を示すパラメータとして、
(a)前記鞍乗型車両の旋回状態に関わる物理量、
(b)前記鞍乗型車両の前後方向の軸線と水平面の間のピッチ角、及び
(d)前記鞍乗型車両が走行している路面に対する摩擦係数
のうち少なくともいずれかに関するパラメータを取得する。
【請求項2】
請求項1記載の鞍乗型車両であって、
前記取得部は、前記動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度を示す少なくとも1つのパラメータとして、前記鞍乗型車両の旋回状態に関わる物理量を示すパラメータを取得し、
前記制御部は、前記取得部で取得された前記鞍乗型車両の旋回状態に関わる物理量を示すパラメータに基づいて前記動力源のトルクを変更する。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両であって、
前記取得部は、前記鞍乗型車両の前記加減速を生じさせ得る走行状況を示すパラメータとして、さらに、前記鞍乗型車両の前後方向において前記鞍乗型車両よりも前方を走行する先行車両と前記鞍乗型車両との間の距離を示すパラメータを取得し、
前記制御部は、前記取得部で取得された前記鞍乗型車両との間の距離を示すパラメータにも基づいて前記動力源のトルクを変更する。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記取得部は、前記動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度を示す少なくとも1つのパラメータとして、前記鞍乗型車両の前後方向の軸線と水平面の間のピッチ角を示すパラメータを取得し、
前記制御部は、前記取得部で取得された前記ピッチ角を示すパラメータに基づいて前記動力源のトルクを変更する。
【請求項5】
請求項1から4前記動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度を示す少なくとも1つのパラメータとして、前記鞍乗型車両が走行している路面に対する摩擦係数を示すパラメータを取得し、
前記制御部は、前記取得部で取得された前記摩擦係数を示すパラメータに基づいて前記動力源のトルクを変更する。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記制御部は、前記動力源のトルクを変更する変更目標値を取得し、前記トルク変更期間において、前記変更目標値に応じて前記動力源のトルクを変更し、前記変更目標値は、前記少なくとも1つのパラメータに応じて設定されるトルクデザイン成分と、前記非伝達状態が前記伝達状態に切り替わる時に伝達されるショックを低減するように設定され、前記少なくとも1つのパラメータと独立のショック低減成分とを含む。
【請求項7】
請求項2記載の鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、左旋回中に車両左方向に傾斜し、右旋回中に車両右方向に傾斜するリーン姿勢で旋回し、
前記取得部は、前記鞍乗型車両のリーン角に基づいて旋回状態に関わる物理量を取得する。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記制御部は、前記変更処理の開始タイミングを前記非伝達状態の前記伝達状態への切り替わりのタイミングと同時又は前記切り替わりのタイミングよりも前になるように制御するとともに、前記変更処理の終了タイミングを前記非伝達状態の前記伝達状態への切り替わりのタイミングよりも後になるように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
動力源のトルクで走行する鞍乗型車両には、遊びを有して設けられ係合することにより動力を伝達する動力伝達部材を有するタイプの鞍乗型車両がある。このような鞍乗型車両として、例えばドグタイプのクラッチを有する鞍乗型車両が知られている。ドグタイプのクラッチは、動力伝達部材としての複数種類のドグを備えている。例えば、複数種類のドグのうち第1ドグと第2ドグは嵌合可能であるように設けられている。これにより、第1ドグ及び第2ドグは、回転軸方向に相対的に移動することにより、互いに嵌合又は嵌合解除する。これにより、動力の伝達及び切断が切替えられる。嵌合状態の第1ドグと第2ドグとの間には周方向で遊びが設けられている。第2ドグと第1ドグとの間の周方向の遊びには、円滑な動力の伝達及び切断の切替えのためある程度の大きさが設定されている。
【0003】
鞍乗型車両の加減速に伴い動力源の駆動状態が変化する場合に、ドグの間の遊びに起因してショックが生じる場合がある。例えば、ドグが嵌合した状態で動力源の状態が減速状態(例えばエンジンブレーキ動作状態)から加速状態に切り替わる場合にショックが生じる。例えば動力源の状態が減速状態から加速状態に切り替わる場合、隣り合って配置された2つの第2ドグの間にある第1ドグが、一つの第2ドグから離れ(非伝達状態)、加速しながら遊び分移動する。第1ドグが、遊び分移動した後、異なる第2ドグと再接触する(ドグ係合による伝達状態)。つまり、動力が伝達される伝達状態から動力が伝達されない非伝達状態を経て再び伝達状態へ至るまでの間に、第1ドグに非伝達状態で蓄積される角運動量が加速によって増大する。非伝達状態が伝達状態に切り替わる再接触によって、増大した角運動量が伝達される。
この結果、再接触の場合に有段変速機から出力されるトルクの変動量が増大する。トルクの変動は駆動輪に伝達され、最終的に鞍乗型車両にショックが生じる。
【0004】
例えば、特許文献1には、動力伝達部材間の遊びが加速又は減速の際に無くなるときの、動力伝達部材間の接触速度及び伝達トルクのうち少なくとも一つを低減する加減速制御装置が示されている。この加減速制御装置は、動力伝達経路のうち特定の対象部位の入力軸の回転速度に関する情報を検出し、回転速度に関する情報に基づいて入力軸及び出力軸の相対回転位置を演算する。そして加減速制御装置は、演算した相対回転位置に基づいて、接触速度及び伝達トルクのうちの少なくとも一つが小さくなるように、入力軸及び出力軸の少なくとも一つを加速又は減速する。これにより、遊びに起因するショックを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鞍乗型車両は、走行状況に応じて、挙動に対する動力源のトルクの増減より発生し得る車体挙動の変化の程度が異なる。このような鞍乗型車両では、加減速に伴い動力伝達部材の遊びに起因して鞍乗型車両に生じるショックの程度を走行状況に適合させることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、遊びを有して設けられる動力伝達部材を備え、加減速に伴い動力伝達部材の遊びに起因して鞍乗型車両に生じるショックの程度を走行状況に適合させることが可能な鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鞍乗型車両は、次の構成を備える。
【0009】
(1) 鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、
トルクを出力する動力源と、
前記動力源により駆動され前記鞍乗型車両を走行させる被駆動部材と、
前記動力源から出力されるトルクを前記被駆動部材へ伝達する動力伝達経路であって、互いの間に遊びを有し且つ互いに相対移動可能であるように設けられ、互いに係合している伝達状態で動力を伝達する一方、互いに係合しない非伝達状態で動力を伝達しない、第1動力伝達部材及び第2動力伝達部材を含む、動力伝達経路と、
前記動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度、又は前記鞍乗型車両の加減速を生じさせ得る前記鞍乗型車両の走行状況を示す少なくとも1つのパラメータを取得する取得部、及びトルク変更期間において、前記少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記動力源から出力されるトルクを変更する変更処理を実行する制御部を有し、前記トルクの変更期間は、前記鞍乗型車両の加減速に伴って前記伝達状態が前記非伝達状態に切り替わってから前記非伝達状態が前記伝達状態に切り替わるまでの非伝達期間内の少なくとも一部を含む、制御装置と
を備える。
【0010】
上記構成の鞍乗型車両は、動力源から出力されるトルクを被駆動部材へ伝達する動力伝達経路、及び制御装置を備える。動力伝達経路は、互いの間に遊びを有し且つ互いに相対移動可能であるように設けられた第1動力伝達部材及び第2動力伝達部材を含む。第1動力伝達部材及び第2動力伝達部材は、互いに係合している伝達状態で動力を伝達する。第1動力伝達部材及び第2動力伝達部材は、互いに係合しない非伝達状態で動力を伝達しない。
鞍乗型車両の制御装置は、取得部、及び制御部を有する。取得部は、車体挙動の変化の程度を示すパラメータを取得する。或いは、取得部は、鞍乗型車両の加減速を生じさせ得る鞍乗型車両の走行状況を示すパラメータを取得する。
制御部は、トルク変更期間において、動力源から出力されるトルクを変更する変更処理を実行する。トルク変更期間は、鞍乗型車両の加減速に伴って前記伝達状態が前記非伝達状態に切り替わってから前記非伝達状態が前記伝達状態に切り替わるまでの非伝達期間内の少なくとも一部を含む期間である。制御部は、パラメータに基づいて、動力源から出力されるトルクを変更する。
トルク変更期間において、動力源から出力されるトルクを変更する変更処理が実行される。
走行状況を示すパラメータに基づいて、動力源から出力されるトルクが変更される。このため、非伝達状態が前記伝達状態に切り替わることに起因し、動力伝達経路から被駆動部材へ伝達されるショックの程度が低減するとともに、低減の程度が鞍乗型車両の走行状況に合わせて変化する。
従って、上記構成の鞍乗型車両によれば、遊びを有して設けられる動力伝達部材を備え、加減速に伴い動力伝達部材の遊びに起因して鞍乗型車両に生じるショックの程度を走行状況に適合させることが可能である。
【0011】
(2) (1)の鞍乗型車両であって、
前記取得部は、前記動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度、又は前記加減速を生じさせ得る前記鞍乗型車両の走行状況を示すパラメータとして、
(a)前記鞍乗型車両の旋回状態に関わる物理量、
(b)前記鞍乗型車両の前後方向の軸線と水平面の間のピッチ角、
(c)前記鞍乗型車両の前後方向において前記鞍乗型車両よりも前方を走行する先行車両と前記鞍乗型車両との間の距離、及び
(d)前記鞍乗型車両が走行している路面に対する摩擦係数
のうち少なくともいずれかに関するパラメータを取得する。
【0012】
上記構成の鞍乗型車両では、(a)前記鞍乗型車両の旋回状態に関わる物理量、(b)前記鞍乗型車両の前後方向の軸線と水平面の間のピッチ角、(c)前記鞍乗型車両の前後方向において前記鞍乗型車両よりも前方を走行する先行車両と前記鞍乗型車両との間の距離、及び(d)前記鞍乗型車両が走行している路面に対する摩擦係数のうち少なくともいずれかの要素に基づいて動力源から出力されるトルクが変更される。上記構成の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両に生じるショックの程度を、鞍乗型車両の走行状況を示す要素に適合させることが可能である。
【0013】
(3) (1)の鞍乗型車両であって、
前記取得部は、前記動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度を示す少なくとも1つのパラメータとして、前記鞍乗型車両の旋回状態に関わる物理量を示すパラメータを取得し、
前記制御部は、前記取得部で取得された前記鞍乗型車両の旋回状態に関わる物理量を示すパラメータに基づいて前記動力源のトルクを変更する。
【0014】
上記構成の鞍乗型車両では、鞍乗型車両の旋回状態に関わる物理量に基づいて動力源のトルクが変更される。上記構成の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両に生じるショックの程度を、鞍乗型車両の旋回中の状態に適合させることが可能である。
【0015】
(4) (1)から(3)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記取得部は、前記鞍乗型車両の前記加減速を生じさせ得る走行状況を示す少なくとも1つのパラメータとして、前記鞍乗型車両の前後方向において前記鞍乗型車両よりも前方を走行する先行車両と前記鞍乗型車両との間の距離を示すパラメータを取得し、
前記制御部は、前記取得部で取得された前記鞍乗型車両との間の距離を示すパラメータに基づいて前記動力源のトルクを変更する。
【0016】
上記構成の鞍乗型車両では、動力源のトルクの増減に起因する鞍乗型車両の加減速が、先行車両との距離に基づいて生じ得る。従って、鞍乗型車両のショックの大きさ及び頻度は、先行車両との距離に応じて異なる。例えば、先行車両との距離が大きいほど、先行車両の走行状態に合わせて動力源のトルクを増減する頻度が少なくなりやすい。
これに対し、先行車両との距離が小さいほど、先行車両の走行状態に合わせて動力源のトルクを増減する頻度が多くなりやすい。つまり、鞍乗型車両の加減速が増大しやすい。上記構成の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両に生じるショックの程度を、先行車両との距離に適合させることが可能である。
【0017】
(5) (1)から(4)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記取得部は、前記動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度を示す少なくとも1つのパラメータとして、前記鞍乗型車両の前後方向の軸線と水平面の間のピッチ角を示すパラメータを取得し、
前記制御部は、前記取得部で取得された前記ピッチ角を示すパラメータに基づいて前記動力源のトルクを変更する。
【0018】
上記構成の鞍乗型車両では、動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が、鞍乗型車両の前後方向の軸線と水平面の間のピッチ角に応じて異なる。例えば、鞍乗型車両が下り坂を走行している場合、動力源のトルクの小さな増減によって鞍乗型車両の加減速が変化しやすい。上記構成の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両に生じるショックの程度を、鞍乗型車両のピッチ角に適合させることができる。
【0019】
(6) (1)から(5)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記取得部は、前記動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度を示す少なくとも1つのパラメータとして、前記鞍乗型車両が走行している路面に対する摩擦係数を示すパラメータを取得し、
前記制御部は、前記取得部で取得された前記摩擦係数を示すパラメータに基づいて前記動力源のトルクを変更する。
【0020】
上記構成の鞍乗型車両では、鞍乗型車両の路面に対する摩擦係数に基づいて動力源のトルクが変更される。上記構成の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両に生じるショックの程度を、鞍乗型車両の路面に対する摩擦係数に適合させることが可能である。
【0021】
(7) (1)から(6)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記制御部は、前記動力源のトルクを変更する変更目標値を取得し、前記トルク変更期間において、前記変更目標値に応じて前記動力源のトルクを変更し、前記変更目標値は、前記少なくとも1つのパラメータに応じて設定されるトルクデザイン成分と、前記非伝達状態が前記伝達状態に切り替わる時に伝達されるショックを低減するように設定され、前記少なくとも1つのパラメータと独立のショック低減成分とを含む。
【0022】
上記構成の鞍乗型車両によれば、動力源のトルクを変更する変更目標値は、前記第1動力伝達部材と前記第2動力伝達部材の間で伝達される伝達トルクを減少させるよう動力源のトルクを減少するためのショック低減成分を含む。このため、動力伝達経路で伝達されるショックが減少する。また更に、変更目標値は、パラメータに応じて設定されるトルクデザイン成分を含む。このため、鞍乗型車両に生じるショックを抑制しつつ、抑制されたショックの程度を走行状況に適合させることができる。
【0023】
(8) (3)の鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、左旋回中に車両左方向に傾斜し、右旋回中に車両右方向に傾斜するリーン姿勢で旋回し、
前記取得部は、前記鞍乗型車両のリーン角に基づいて旋回状態に関わる物理量を取得する。
【0024】
上記構成の鞍乗型車両では、被駆動部材に伝達されるトルクによって旋回中のリーン姿勢が変わる。上記構成の鞍乗型車両では、鞍乗型車両のリーン角に応じて動力伝達経路で伝達されるショックの程度を、鞍乗型車両の旋回中の姿勢に適合させることが可能である。
【0025】
(9) (1)から(8)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記制御部は、前記変更処理の開始タイミングを前記非伝達状態の前記伝達状態への切り替わりのタイミングと同時又は前記切り替わりのタイミングよりも前になるように制御するとともに、前記変更処理の終了タイミングを前記非伝達状態の前記伝達状態への切り替わりのタイミングよりも後になるように制御する。
【0026】
少なくとも係合のタイミングから、2つの伝達部材の回転速度差による角運動量が鞍乗型車両の速度変化として顕在化するまでの期間、変更処理によって、第1動力伝達部材と第2動力伝達部材の間で伝達される伝達トルクが抑制される。つまり、第1動力伝達部材及び第2動力伝達部材の速度差に起因して動力源から角運動量が供給されることとなる期間に、第1動力伝達部材と第2動力伝達部材の間で伝達される伝達トルクが抑制される。このため、例えば、実際に動力源から供給される角運動量は、動力伝達経路のダンパ成分等にキャッチされ得る程度に減少する。この結果、鞍乗型車両の衝撃が抑えられる。非伝達状態から伝達状態への切り替わりのタイミングよりも後で伝達トルクが抑制されても、鞍乗型車両の衝撃は、抑えられる。この場合、例えば、係合のタイミングで第1及び第2動力伝達部材の速度差をほとんど無い状態にすることが求められない。よって、係合より前の長い期間、動力源のトルク抑制を行う必要が無い。従って、動力伝達経路で伝達されるショックの程度を、鞍乗型車両の走行状況に適合させつつ、例えば第1及び第2動力伝達部材の速度差をほとんど無い状態にする場合と比べ、加速の応答性を向上することができる。
【0027】
動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度、又は前記加減速を生じさせ得る前記鞍乗型車両の走行状況は、例えば鞍乗型車両の旋回状態に関わる物理量として表されるが、走行状況はこれに限られない。
動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化は、動力源のトルクが増減することに起因して発生することとなる車体挙動の変化である。ただし、動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度は、動力源のトルクの変化の程度だけに依存しない。動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化は、動力源のトルクの増減以外の要因にもよるからである。トルクの増減以外の要因とは、例えば、鞍乗型車両の旋回状態に関わる物理量、車両のピッチ角、路面に対する摩擦係数である。
【0028】
複数の第2動力伝達部材が周方向に第1動力伝達部材の周方向長さよりも大きな間隔を空けて配置され、隣合って配置された第2動力伝達部材の間に第1動力伝達部材が配置される場合、隣合って配置された第2動力伝達部材と第1動力伝達部材の間に生じる隙間は遊び(伝達部材のBacklash)である。例えば、動力源の状態が減速状態から加速状態に切り替わる場合、隣り合って配置された2つの第2動力伝達部材の間にある第1動力伝達部材が、一つの第2動力伝達部材から離れた後、逆方向の位置に配置された異なる第2動力伝達部材と再接触する。これにより、第1動力伝達部材が第2動力伝達部材と係合する。第1動力伝達部材が、一つの第2動力伝達部材から離れた後、逆方向の位置に配置された異なる第2動力伝達部材と係合するまで移動する間隔は、遊びである。
【0029】
第1動力伝達部材及び第2動力伝達部材を含む動力伝達経路は、例えば、変速機、クラッチ、チェーン及びスプロケットである。
【0030】
旋回状態に関わる物理量は、例えば、旋回速度である。但し、旋回状態に関わる物理量は、これに限られず、例えば、リーン角でもよい。
旋回速度は、例えば、鞍乗型車両の重心点を通る鉛直軸まわりの回転角速度を表す。旋回速度は、例えば、ヨーレートから取得される。但し、旋回速度は、例えば、鞍乗型車両がリーン車両である場合に、直立状態において鞍乗型車両の重心を鉛直方向に通り、鞍乗型車両の左右方向へのリーンに従い傾く上下線まわりの回転角速度に基づいて取得されてもよい。また、旋回状態に関わる物理量は、例えば、鞍乗型車両がリーン車両である場合に、鞍乗型車両の左右方向へのリーン角として表されてもよい。
【0031】
例えば、第1動力伝達部材及び第2動力伝達部材が有段変速機に用いられる場合、第1動力伝達部材は、駆動ギア及び被駆動ギアのいずれかに設けられている。第1動力伝達部材と周方向に遊びを有して当たる第2動力伝達部材は、周方向に隣り合う第1動力伝達部材の間の空隙内に位置する場合に第1動力伝達部材との間に遊びが生じる形状を有しており、且つ第1動力伝達部材に対して周方向に相対移動して第1動力伝達部材と周方向に当たるように設けられている。第2動力伝達部材は、駆動ギア及び被駆動ギアのいずれかに設けられていてもよく、また、駆動ギア及び被駆動ギアとは異なる部材である動力伝達部材リングに設けられていてもよい。第1動力伝達部材又は第2動力伝達部材は、突部であってもよく、また、他方の動力伝達部材が入る穴又は溝を画定する側壁部分であってもよい。変速段設定機構は、各変速段において第1動力伝達部材及び第2動力伝達部材を有するが、これは、必ずしも、変速段設定機構が、変速段ごとに第1動力伝達部材及び第2動力伝達部材を個別に有することを意味するものではない。変速段設定機構は、各変速段における動力伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定するための動作を行うように第1動力伝達部材及び第2動力伝達部材を有していればよい。例えば、第2動力伝達部材としての1つの動力伝達部材リングが、2つの変速段に対応するように設けられていてもよい。
第1動力伝達部材が第2動力伝達部材に当たる周方向は、第1動力伝達部材が設けられた駆動ギア又は被駆動ギアの回転方向に沿った方向である。
【0032】
動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度又は前記加減速を生じさせ得る鞍乗型車両の走行状況を示すパラメータは、少なくとも次の(a)~(d)のいずれかに関する。
(a)前記鞍乗型車両の旋回状態に関わる物理量。
(b)前記鞍乗型車両の前後方向の軸線と水平面の間のピッチ角。
(c)前記鞍乗型車両の前後方向において前記鞍乗型車両よりも前方を走行する先行車両と前記鞍乗型車両との間の距離。
(d)前記鞍乗型車両が走行している路面に対する摩擦係数。
【0033】
旋回状態に関わる物理量は、例えば、旋回速度、リーン角、操舵力、操舵トルク、又は、鞍乗型車両が走行している道路のカーブ情報である。
旋回速度を取得する手段は、例えば、IMU(Inertial Measurement Unit)である。また、鞍乗型車両がリーン車両の場合、旋回速度は、例えば、リーン角及びリーン車両の速度から計算により取得することができる。旋回速度は、乗員の重心位置の移動により取得することもできる。また、旋回速度は、操舵角に基づいて旋回速度を取得することもできる。また、旋回速度は、ヨーの角度の変化量から取得することもできる。また、旋回速度は、鞍乗型車両1の左右方向の加速度から取得することもできる。また、旋回速度は、例えば、前後の車輪の速度差(回転速度差)に基づいて取得することもできる。また、旋回速度は、例えば、カメラ、レーザーレーダ、又はミリ波レーダによって取得される外部環境の変化量から取得することもできる。
操舵力、及び操舵トルクは、例えば、操舵部に設けられたトルクセンサ、又はグリップ部に設けられた圧力センサによって取得することができる。鞍乗型車両が走行している道路のカーブ情報は、例えば、地図情報の参照、又は路車間通信を行なうことによって取得することができる。
【0034】
ピッチ角を取得する手段は、例えば、IMUである。但し、ピッチ角は、ショックアブソーバのストロークセンサを用い重力加速度の方向を推定することによって取得することもできる。また、ピッチ角は、動力源の出力トルクの指令値に基づいて計算された目標の加速度と、車速センサにより検出される鞍乗型車両の実際の加速度の差に基づいて取得することもできる。また、ピッチ角は、路車間通信を行うことによって取得することもできる。また、ピッチ角は、例えば、道路の勾配情報を参照することによって取得することもできる。勾配情報は、地図情報、又は路車間通信より求められる。また、ピッチ角は、例えば、乗員の重心位置により取得することもできる。またピッチ角は、例えば、カメラ、レーザーレーダ、又はミリ波レーダによって取得される外部環境の変化量から取得することもできる。
【0035】
前記鞍乗型車両の前後方向において鞍乗型車両よりも前方を走行する先行車両と上記鞍乗型車両との間の距離を取得する手段は、例えば、レーザーレーダ装置である。レーザーレーダ装置は、電波を発射し目標物からの反射を利用してその位置を取得する。
また、先行車両と鞍乗型車両との間の距離を取得する手段としては、画像認識装置がある。画像認識装置は、カメラによって取得された前方の画像を用い、画像に含まれる他の車両識別を識別するとともに、当該車両までの距離を取得する。
前記鞍乗型車両の前後方向において鞍乗型車両よりも前方を走行する車両と上記鞍乗型車両との間の距離を取得する手段は、例えば、車車間通信装置である。車車間通信装置は、前方を走行する先行車両にも設けられており、双方の車車間通信装置が通信して位置情報を取得することにより鞍乗型車両との間の距離を取得することができる。また、前記鞍乗型車両の前後方向において鞍乗型車両よりも前方を走行する車両と上記鞍乗型車両との間の距離を取得する手段は、例えば、GPS情報より得られる渋滞情報に基づいて距離を推定することもできる。
【0036】
鞍乗型車両が走行している路面に対する摩擦係数は、例えば、路面荒さから取得することができる。路面荒さは、例えば、鞍乗型車両のピッチ角、ピッチレート、又は、鞍乗型車両の上下方向での加速度から取得される。ピッチ角、ピッチレート、及び、加速度は、鞍乗型車両に設けられたIMUを用いて取得することができる。但し、ピッチ角、ピッチレート、及び、加速度は、例えば鞍乗型車両に設けられたショックアブソーバのストロークセンサを用いて推定することもできる。
また、路面荒さは、例えば、カメラ、レーザーレーダ、又はミリ波レーダが出力する情報から取得することもできる。
また、鞍乗型車両が走行している路面に対する摩擦係数は、例えば、鞍乗型車両の被駆動部材が空転する程度である空転率から取得することができる。鞍乗型車両の被駆動部材の空転率は、被駆動部材の回転速度とIMUから取得される鞍乗型車両の速度に基づいて取得される。車輪の空転は、例えば、鞍乗型車両の車輪の回転速度の変化から検出することも可能である。
鞍乗型車両が走行している路面に対する摩擦係数は、例えば、鞍乗型車両の外部から通信によって推定値として取得することが可能である。例えば、鞍乗型車両の外部の装置は、鞍乗型車両が走行可能な位置に対応づけられた摩擦係数の情報を含む地図情報を有している。地図情報は、予め調査によって取得される。外部の装置は、鞍乗型車両から通信で鞍乗型車両取得の位置を取得し、この位置を用いて地図情報を参照することで、鞍乗型車両の位置に対応する摩擦係数推定値を取得する。ここで、例えば、鞍乗型車両の外部の装置は、路車間通信可能な装置でも良い。鞍乗型車両は、通信を介して摩擦係数推定値を取得する。なお、摩擦係数の情報を含む地図情報は、鞍乗型車両に設けられてもよい。この場合、鞍乗型車両は、例えば全地球測位システムによって取得した鞍乗型車両の位置に基づき地図情報を参照し摩擦係数推定値を取得する。また、摩擦係数は、例えば天気の情報によって補正され得る。
また、鞍乗型車両が走行している路面に対する摩擦係数は、例えば、タイヤの銘柄、劣化度合、温度、又は、空気圧といったタイヤ情報から取得することができる。タイヤの銘柄、又は劣化度合は、タイヤ交換時にユーザがインターフェースツールに情報を登録することで取得することができる。温度、又は空気圧は、ホイールに備え付けられるセンサによって取得することができる。また、鞍乗型車両が走行している路面に対する摩擦係数は、カメラで取得された路面の色又は反射の状態から推定することもできる。
【0037】
鞍乗型車両の走行状況を示すパラメータの値の範囲は、特に限定されない。パラメータは、例えば0から100までの範囲で設定される。但し、パラメータの範囲やレベルの数は特に限定されない。例えば、パラメータは、100以上の数のレベルを有してもよく、100未満の数のレベルを有してもよい。パラメータは、例えば大・中・小の3つのレベルを有してもよい。
【0038】
制御部は、1つのパラメータに基づいて動力源から出力されるトルクを変更する。但し、制御部は、2つ以上のパラメータの組合せに基づいて動力源から出力されるトルクを変更してもよい。制御部は、例えば、各パラメータの重み付け平均を用いてトルクを変更してもよい。
【0039】
トルクの変更目標値は、ショック低減成分及びトルクデザイン成分を含むことができる。ショック低減成分は、鞍乗型車両の加速時において動力源の出力トルクを低減させる成分である。トルクデザイン成分は、鞍乗型車両の加速時において、動力源の出力トルクをショック低減成分よりも増加する成分でもよく、減少する成分でもよい。ショック低減成分は、鞍乗型車両の減速時において動力源の出力トルクを増加させる成分である。トルクデザイン成分は、鞍乗型車両の減速時において、動力源の出力トルクをショック低減成分よりも増加する成分でもよく、減少する成分でもよい。
【0040】
以下の説明において、状態(A)は、ショック低減成分又はトルクデザイン成分のいずれもが駆動源の出力トルクに作用していない状態をいう。状態(B)は、駆動源の出力トルクに対してショック低減成分が作用しているが、トルクデザイン成分が作用していない状態をいう。状態(C)は、駆動源の出力トルクに対してショック低減成分及びトルクデザイン成分の両方が作用している状態をいう。
【0041】
第1動力伝達部材と第2動力伝達部材とが係合した時の出力トルクの変化量に関して、ショック低減成分は、状態(B)における前記変化量が、例えば、状態(A)における前記変化量よりも小さくなるように設定される。トルクデザイン成分は、状態(C)における前記変化量が、例えば、状態(B)における前記変化量よりも小さくなるように設定されることが好ましい。但し、トルクデザイン成分は、状態(C)における前記変化量が、状態(B)における前記変化量以上になるように設定されてもよい。その場合であっても、トルクデザイン成分は、状態(C)における前記変化量が、状態(A)における前記変化量よりも小さくなるように設定されることが好ましい。
【0042】
第1動力伝達部材と第2動力伝達部材とが係合した時の出力トルクの経時変化率(時間微分値)に関して、ショック低減成分は、状態(B)における経時変化率が、例えば、状態(A)における経時変化率よりも小さくなるように設定される。トルクデザイン成分は、状態(C)における経時変化率が、例えば、状態(B)における経時変化率よりも小さくなるように設定されることが好ましい。但し、トルクデザイン成分は、状態(C)における経時変化率が、状態(B)における経時変化率以上になるように設定されてもよい。その場合であっても、トルクデザイン成分は、状態(C)における経時変化率が、状態(A)における経時変化率よりも小さくなるように設定されることが好ましい。
【0043】
動力源として、例えば、エンジン及び電動モータが挙げられる。即ち、鞍乗型車両としては、例えば、エンジン車、電動車両、又は、エンジン-モータのハイブリッド車両が挙げられる。
動力源がエンジンの場合、例えば、エンジンに供給される空気量を増大することによって、動力源のトルクを増大することができる。また、エンジンに供給される燃料を増大することによっても、動力源のトルクを増大することができる。例えば、エンジンに供給される燃料を、ストイキオメトリー状態の燃料と比べて増大することによって、動力源のトルクを増大することができる。
【0044】
鞍乗型車両は、運転者がサドルに跨って着座する形式の車両をいう。鞍乗型車両としては、例えばリーン車両が挙げられる。リーン車両は、左旋回中に車両左方向に傾斜し、右旋回中に車両右方向に傾斜するリーン姿勢で旋回する。鞍乗型車両は例えば自動二輪車である。自動二輪車としては、特に限定されず、例えば、スクータ型、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両としては、リーン車両に限定されず、例えば、ATV(All-Terrain Vehicle)等であってもよい。遊びを有して設けられる伝達部材を備えた鞍乗型車両は、リーン姿勢で旋回可能に構成されていることが好ましい。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、旋回時に鞍乗型車両に加わる遠心力に対向するために、カーブの中心方向に傾いた姿勢で旋回するように構成される。運転者の操作(例えば体重移動)によって、鞍乗型車両はカーブの中心方向に傾く。運転者によって鞍乗型車両の姿勢が制御されるという性質上、鞍乗型車両は、ショックが抑制され、加速又は減速の応答性が高いことが好ましい。搭載される機器や装置も、小型化及び軽量化されることが好ましい。そのような観点から見て、有段変速機の設計自由度は高いことが好ましい。例えば、上述したような機械的強度が低下するおそれがある構造が採用される場合には、機械的強度を保持するためのサイズアップや補強が必要になる可能性がある。これは、有段変速機の構造によって設計自由度が制約を受ける一例であり、設計自由度が制約を受けることにより、小型化及び軽量化に影響が及ぶおそれがある。これに対して、本発明は、設計自由度を高めることができ、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両に好適に適用され得る。特に、後述するように、遊びを有して設けられる伝達部材を備えた鞍乗型車両において、伝達部材の遊びに起因して動力源の状態変化に伴い鞍乗型車両に生じるショックを抑制しつつ、加速又は減速の応答性が更に向上する。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両では、運転者が鞍乗型車両の姿勢を制御するので、運転者は鞍乗型車両の挙動を感じ易い。そのため、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両では、ショックが抑制され、加速又は減速の応答性が高いことが好ましい。そのような観点から見ても、本発明は、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両にとって好適である。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両としては、例えば、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両(例えば、自動二輪車、自動三輪車)が挙げられる。
【0045】
被駆動部材は、例えば車両の駆動輪である。つまり、鞍乗型車両は、駆動輪を有する。但し、鞍乗型車両は、例えば、スノーモービルのような、駆動輪を有さない車両でもよい。被駆動部材は、特に限定されず、例えば、無端のベルト又はスクリューであってもよい。
【0046】
制御装置は、プログラムを実行するプロセッサを有していてもよく、また、電子回路でもよい。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、遊びを有して設けられる伝達部材を備えた鞍乗型車両において、伝達部材の遊びに起因して動力源の状態変化に伴い生じる衝撃を抑制しつつ、加速又は減速の応答性が更に向上した鞍乗型車両が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る鞍乗型車両を説明する図である。
【
図3】
図2に示す鞍乗型車両の駆動に関する概略構成を説明する図である。
【
図4】(A)は、非伝達状態における被駆動ギア及びドグリングを示す図である。(B)は、伝達状態における被駆動ギア及びドグリングを示す図である。(C)は、伝達状態における被駆動ギア及びドグリングの周方向部分断面図である。
【
図6】
図5に示す制御装置の機能ブロックを示す図である。
【
図7】
図5に示す制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図7に示すトルク変更処理の詳細を説明するフローチャートである。
【
図9】鞍乗型車両における旋回中の状態を説明する概略図である。
【
図10】動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が異なる複数の状態を示す概略図である。
【
図11】トルクの変化を示すタイムチャートである。
【
図12】鞍乗型車両の旋回状態を模式的に示す平面図である。
【
図13】第二実施形態に係る鞍乗型車両と先行車両の位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図14】先行車両との距離が異なる複数の状態を示す概略図である。
【
図15】第三実施形態に係る鞍乗型車両1のピッチ角を模式的に示す側面図である。
【
図16】ピッチ角が異なる複数の状態を示す概略図である。
【
図17】第四実施形態に係る鞍乗型車両1の摩擦係数を模式的に示す側面図である。
【
図18】摩擦係数が異なる複数の路面を走行する鞍乗型車両1を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を、実施形態に基づいて図面を参照しつつ説明する。
【0050】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る鞍乗型車両を説明する図である。
図1のパート(A)は、鞍乗型車両の構成を示すブロック図である。
図1のパート(B-a)、パート(B-b)、及びパート(B-c)は、トルクの変化を示すタイムチャートである。
【0051】
図1に示す鞍乗型車両1は、動力源11と、被駆動部材としての駆動輪5と、動力伝達経路9と、制御装置8とを備えている。
動力源11は、トルクを出力する。より詳細には、動力源11は、トルクと回転速度で構成される動力を出力する。鞍乗型車両1の駆動輪5は、動力源11から出力される動力の供給を受け、動力により駆動される。鞍乗型車両1は、駆動輪5によって駆動され、走行する。
【0052】
動力伝達経路9は、動力源11から出力されるトルクを駆動輪5へ伝達する。動力伝達経路9は、第1動力伝達部材D1及び第2動力伝達部材D2を有する。第1動力伝達部材D1、及び第2動力伝達部材D2のそれぞれは、例えば互いにドグ係合するドグである。
第1動力伝達部材D1及び第2動力伝達部材D2は、互いの間に遊びを有し且つ互いに相対移動可能であるように設けられている。
図1のパート(A)に示す第1動力伝達部材D1及び第2動力伝達部材D2の間には、遊び角Aclが設けられている。
第1動力伝達部材D1及び第2動力伝達部材D2は、伝達状態と非伝達状態とを有する。伝達状態は、第1動力伝達部材D1及び第2動力伝達部材D2が互いに係合している状態である。第1動力伝達部材D1及び第2動力伝達部材D2は、伝達状態で動力を伝達する。非伝達状態は、第1動力伝達部材D1が第2動力伝達部材D2から離れている状態である。第1動力伝達部材D1及び第2動力伝達部材D2は、非伝達状態では動力を伝達しない。
【0053】
制御装置8は、動力源11を制御する。制御装置8は、動力源11から出力されるトルクを制御する。制御装置8は、取得部81及び制御部82を有する。
【0054】
取得部81は、少なくとも1つのパラメータを取得する。パラメータは、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度、又は加減速を生じさせ得る鞍乗型車両1の走行状況を示す。取得部81は、鞍乗型車両1に設けられたセンサ又は測定装置によって鞍乗型車両1の走行状況を示すパラメータを取得する。各種センサ及び測定装置の詳細については後述する。
【0055】
パラメータは、例えば鞍乗型車両1における次の走行状況を示す。
(a)鞍乗型車両1の旋回状態に関わる物理量。
旋回状態に関わる物理量は、例えば、旋回速度である。旋回状態に関わる物理量は、例えば、旋回速度又はリーン角(ロール角)を含む物理量でもよい。
旋回速度は、鞍乗型車両の加減速(増減)によって発生し得る車両挙動を変化させる、鞍乗型車両1の走行状況を示す。
例えば、鞍乗型車両1が旋回している場合、鞍乗型車両1が旋回していない場合と比べ、鞍乗型車両1の走行中の姿勢に対する変化の程度が大きい。旋回速度が大きいほど、鞍乗型車両1の走行中、トルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が大きい。
(b)鞍乗型車両1の前後方向の軸線と水平面の間のピッチ角。
ピッチ角は、鞍乗型車両の加減速(増減)によって発生し得る車両挙動を変化させる、鞍乗型車両1の走行状況を示す。また、ピッチ角は、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度を示すといえる。
ピッチ角が大きいほど、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が大きい。
(c)鞍乗型車両1の前後方向において鞍乗型車両1よりも前方を走行する先行車両と鞍乗型車両1との間の距離。
鞍乗型車両1との間の距離を示すパラメータは、鞍乗型車両1の加減速を生じさせ得る鞍乗型車両1の走行状況を示す。
先行車両と鞍乗型車両1との間の距離が小さいほど、鞍乗型車両1の走行中の加減速を生じさせやすい。
(d)鞍乗型車両1が走行している路面に対する摩擦係数。
路面に対する鞍乗型車両1の摩擦係数は、車体挙動の変化の程度を示す。
路面に対する摩擦係数が小さいほど、鞍乗型車両1の車体挙動の変化の程度が大きい。
従って、路面に対する摩擦係数が小さいほど、走行状況を示すパラメータが大きい。
【0056】
本実施形態における走行状況を示すパラメータは、制御のしやすさのため0%から100%までの数値で表される。
【0057】
制御部82は、動力源11を制御する。制御部82は、例えばアクセル検出器7c(
図5参照)で検出されるアクセル操作子7bの操作量に応じて、動力源11から出力されるトルクを制御する。例えば、制御部82は、アクセル操作子7bの加速操作に応じて、動力源11から出力されるトルクを増加する。制御部82は、アクセル操作子7bの減速操作に応じて、動力源11から出力されるトルクを減少する。
しかし、制御部82は、鞍乗型車両1の加減速に伴うトルク変更期間において少なくとも1つのパラメータに基づいて動力源11から出力されるトルクを変更する。
【0058】
制御部82は、例えば、鞍乗型車両1の加速に伴うトルク変更期間において動力源11から出力されるトルクを一時的に減少させる。制御部82は、例えば、パラメータが大きいほど、動力源11から出力されるトルクの減少量を大きくする。制御部82は、例えば、パラメータが小さいほど、動力源11から出力されるトルクの減少量を小さくする。
制御部82は、例えば、鞍乗型車両1の減速に伴うトルク変更期間において動力源11から出力されるトルクを一時的に増加させる。制御部82は、例えば、パラメータが大きいほど、動力源11から出力されるトルクの増加量を大きくする。制御部82は、例えば、パラメータが小さいほど、動力源11から出力されるトルクの増加量を小さくする。
【0059】
図1のパート(B-a)~(B-c)には、動力源11から出力されるトルクの変更を示すタイムチャートが示されている。
図1のパート(B-a)~(B-c)は、パラメータが異なる条件下でのトルクの変更を示している。パラメータは、発生し得る車体挙動の変化の程度が最小である0%から、程度が最大である100%まで変化する。
図1のパート(B-a)は、走行状況を示すパラメータが0%の場合を示している。
図1のパート(B-b)は、走行状況を示すパラメータが50%の場合を示している。
図1のパート(B-c)は、走行状況を示すパラメータが100%の場合を示している。
図1のパート(B-a)~(B-c)のそれぞれは、スロットル開度TH、及び、駆動輪5の駆動トルクPO、動力源11から出力されるトルクTOを示している。
図1のパート(B-a)~(B-c)はいずれも加速に伴う変化を示している。スロットル開度THは、
図1のパート(B-a)~(B-c)のいずれにも共通であり、加速期間ACで、THaからTHbまで増大する。これによって動力源11の状態が減速状態から加速状態に切り替わる。スロットル開度THの増大に伴い、動力源11から出力されるトルクTOが増大する。
【0060】
動力源11の状態が減速状態から加速状態に切り替わる場合、
図1のパート(A)に示す、隣り合って配置された2つの第2動力伝達部材D2の間にある第1動力伝達部材D1が、一つの第2動力伝達部材D2から離れ(非伝達状態)、加速しながら遊び分移動した後、逆方向の位置に配置された異なる第2動力伝達部材D2と再接触する(ドグ係合による伝達状態)。つまり、動力が伝達される伝達状態から動力が伝達されない非伝達状態を経て再び伝達状態へ至るまでの間に、第1動力伝達部材D1に非伝達状態で蓄積される角運動量が加速によって増大する。非伝達状態が伝達状態に切り替わる再接触によって、増大した角運動量が第2動力伝達部材D2に伝達される。伝達状態が非伝達状態に切り替わってから非伝達状態が伝達状態に切り替わるまでの非伝達期間を、トルクの変更期間と称する。
第1動力伝達部材D1が遊び分移動することによって、再接触の時に駆動輪5の駆動トルクPOの変動量が増大する。この結果、鞍乗型車両1にショックが生じる。鞍乗型車両1のショックは、
図1のパート(B-a)~(B-c)における駆動トルクPOの変化時間の短縮と、変化のオーバーシュートとして現われる。
【0061】
動力源11の制御部82は、第1動力伝達部材D1と第2動力伝達部材D2の再接触のタイミングに合わせ、動力源11から出力されるトルクを一時的に減少させる。これにより、第1動力伝達部材D1と第2動力伝達部材D2が非伝達状態から伝達状態に切り替わることに起因するショックが抑えられる。より詳細には、非伝達期間であるトルクの変更期間にトルクを減少させる。
図1のパート(B-a)~(B-c)に示すタイミングt2からt3までの間、動力源11から出力されるトルクTOが減少する。
【0062】
図1のパート(B-a)で、動力源11からのトルクTO1の変化は、実線で示される。
図1のパート(B-a)は、走行状況を示すパラメータが0%の場合であり、走行状況を示すパラメータが、
図1のパート(B-b)に示す50%の場合よりも小さい。この場合、動力源から出力されるトルクTO1の減少量(減少の大きさ)が、
図1のパート(B-b)に示す場合(
図1のパート(B-a)の破線)よりも小さい。
この結果、
図1のパート(B-a)における駆動輪5の駆動トルクPO1の変動よって鞍乗型車両1に生じる衝撃は、
図1のパート(B-b)に示す場合よりも大きい。
【0063】
図1のパート(B-c)で、動力源11からのトルクTO3の変化も、実線で示されている。
図1のパート(B-c)は、走行状況を示すパラメータが100%の場合であり、走行状況を示すパラメータが、
図1のパート(B-b)に示す50%の場合よりも大きい。この場合、動力源から出力されるトルクTO3の減少量が、
図1のパート(B-b)に示す場合(
図1のパート(B-c)の破線)よりも大きい。
この結果、
図1のパート(B-c)における駆動輪5の駆動トルクPO3の変動によって鞍乗型車両1に生じる衝撃は、
図1のパート(B-b)に示す場合よりも小さい。
【0064】
このように、鞍乗型車両1では、発生し得る車体挙動の変化の程度に関する少なくとも1つのパラメータに基づいて動力源11のトルクが変更される。動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が大きい場合、例えば、旋回速度が大きい場合、ショックの程度を小さくすることができる。また、旋回速度が小さい場合ショックの程度を大きくすることができる。この鞍乗型車両1によれば、遊びを有して設けられる動力伝達部材D1,D2を備え、動力伝達部材D1,D2の遊びに起因して鞍乗型車両1に生じるショックの程度を走行状況に適合させることが可能である。
【0065】
図2は、
図1に示す鞍乗型車両1の外観図である。
図2における矢印Fは、鞍乗型車両1における前方向を示している。前方向は、鞍乗型車両1が走行する方向である。矢印Bは、後ろ方向を示している。矢印F及び矢印Bは、鞍乗型車両1における前後方向FBを表している。前方向F、後ろ方向B、及び前後方向FBは、鞍乗型車両1の直立状態における水平面と平行である。矢印Uは上方向を示している。矢印Dは下方向を示している。矢印U及び矢印Dは、鞍乗型車両1における上下方向UDを表している。上方向U、下方向D及び上下方向UDは、鞍乗型車両1の直立状態における鉛直方向と平行である。リーン車両に乗車したライダーから見た右方向と左方向を
図9に表す矢印L及び矢印Rで示す。矢印L及び矢印Rは、鞍乗型車両1における左右方向LRを表している。
本明細書において、鞍乗型車両1に設けられる装置についての方向は、鞍乗型車両1に取り付けられた状態での上述した方向で説明される。
図2に示す鞍乗型車両1は、自動二輪車である。鞍乗型車両1は、リーン姿勢で旋回可能に構成されている。鞍乗型車両1は、動力源11を備えている。動力源11の動力は、制御装置8によって制御される。また、鞍乗型車両1は、シート2と、ハンドル3と、車輪4,5と、アクセル操作子7bとを備えている。アクセル操作子7bは、運転者の手によって操作されるようにハンドル3に設けられる。図に示す車輪4,5のうち、後ろの車輪5が駆動輪5である。動力伝達経路9は、有段変速機13を有している。動力伝達経路9は、ドライブチェーン10と、後輪駆動用スプロケット5aも有している。
【0066】
動力源11から出力された動力は、有段変速機13へ伝達される。有段変速機13に伝達された動力は、ドライブチェーン10と、後輪駆動用スプロケット5aとを介して、駆動輪5に伝達される。
【0067】
図3は、
図2に示す鞍乗型車両1の駆動に関する概略構成を説明する図である。
本実施形態の動力源11はエンジンである。
図1には、動力源11として4気筒エンジンが示されている。動力源11としてのエンジンは、4ストロークエンジンである。
図1では、1つの気筒のみ構成が概略的に示され、残りの気筒については構成の図示が省略されている。動力源11は、動力軸90と、シリンダ102と、ピストン103と、点火プラグ107を備えている。動力軸90はクランクシャフトである。
ピストン103は、シリンダ102内に往復移動自在に設けられている。点火プラグ107は、シリンダ102内に形成される燃焼室104に設けられている。燃焼室104に続く吸気通路には、スロットルバルブ105、燃料噴射装置106が設けられている。スロットルバルブ105、燃料噴射装置106、及び点火プラグ107の動作は、制御装置8によって制御される。
スロットルバルブ105は、燃焼室104に供給される空気の量を調整する。また、燃料噴射装置106は、燃焼室104に燃料を供給する。燃焼室104に供給された空気と燃料の混合気が、点火プラグ107の点火によって燃焼することで、ピストン103を往復動させる。ピストン103の往復動が、動力軸90の回転に変換される。動力源11から、動力軸90のトルクが出力される。
【0068】
鞍乗型車両1には、クラッチ12と、有段変速機13と、トルク検出器19と、変速段検出器55も備えられている。クラッチ12は、トルクの伝達経路における動力源11と有段変速機13との間に設けられている。クラッチ12は、動力源と有段変速機13との間で伝達される動力を断続する。クラッチ12は、運転者の操作に応じて動力を断続する。
【0069】
トルク検出器19は、動力源11の出力トルクと関連し出力トルクを表すトルク関連量を検出する。本実施形態において、トルク検出器19は、スロットル開度検出器191及び動力軸速度検出器192を含んでいる。スロットル開度検出器191で検出されたスロットルバルブ105の開度、及び動力軸速度検出器192で検出された動力軸90の回転速度の組合せが、トルク関連量である。トルク関連量の取得には、制御装置8でのトルク演算が含まれてもよい。本実施形態では、トルク関連量として動力源11の出力トルクが取得される。
【0070】
鞍乗型車両1において、動力源11で生じる動力は、通常、動力軸90、クラッチ12、有段変速機13の入力軸20、駆動ギア(21~26)、被駆動ギア(31~36)、ドグリング(37a~37c)、出力軸30、ドライブチェーン10、そして駆動輪5へと順に伝達される。以降、各部品の位置を、この動力の伝達の流れの向きを基準として、上流又は下流と称する場合もある。
【0071】
有段変速機13は、クラッチ12と接続されている。有段変速機13は、複数の変速段を有する。有段変速機13は、入力軸20と、出力軸30と、駆動ギア(21~26)と、被駆動ギア(31~36)と、変速段設定機構139とを有する。
入力軸20は、回転可能に配置され、動力が入力される。入力軸20には、動力源11から出力された動力がクラッチ12を介して入力される。有段変速機13は、入力軸20に対し出力軸30の回転速度を段階的に変速する。
出力軸30は、入力軸20と平行な軸線上に回転可能に配置される。複数の駆動ギア(21~26)は、入力軸20に設けられ、常に入力軸20と共に回転するように構成されている。また、複数の駆動ギア(21~26)のそれぞれは、各変速段に対応する。複数の被駆動ギア(31~36)は、出力軸30に設けられ、出力軸30と相対回転可能であるように構成される。複数の被駆動ギア(31~36)は、対応する駆動ギア(21~26)と噛み合い可能であるように構成されている。
【0072】
変速段設定機構139は、いずれか一つの変速段に係る駆動ギア(21~26)及び被駆動ギア(31~36)を介した入力軸20から出力軸30への動力伝達を機械的に且つ選択的に有効に設定するように構成されている。
【0073】
変速段設定機構139は、遊び付きドグ係合機構138を有する。遊び付きドグ係合機構138は、第1動力伝達部材としての第1ドグD1、及び第2動力伝達部材としての第2ドグD2を有する。即ち、鞍乗型車両1は、第1ドグD1、及び第2ドグD2を有する。
第1ドグD1は、第1動力伝達部材D1の一例である。また、第2ドグD2は、第2動力伝達部材D2の一例である。以降、第1動力伝達部材D1を第1ドグD1とも称する。また、第2動力伝達部材D2を第2ドグD2とも称する。
遊び付きドグ係合機構138は、入力軸20を介して駆動ギア(21~26)に至る動力又は被駆動ギア(31~36)から出力軸30へ向かう動力のいずれかを、機械的に且つ選択的に有効に設定する。
有段変速機13の第1ドグD1(
図4参照)は、被駆動ギア(31~36)に設けられている。第1ドグD1は、被駆動ギア(31~36)に、周方向に間隔を空けて配置された複数の突部である。第1ドグD1は、被駆動ギア(31~36)から、出力軸30の軸方向に突出している。また、遊び付きドグ係合機構138は、複数のドグリング(37a~37c)を有している。第2ドグD2は、ドグリング(37a~37c)に設けられている。第2ドグD2は、円環状のドグリング(37a~37c)に、周方向に間隔を空けて配置された複数の突起である。
ドグリング(37a~37c)は、出力軸30の軸線上で移動可能なように出力軸30に設けられている。ドグリング(37a~37c)は、出力軸30と常に共に回転するように構成されている。ドグリング(37a~37c)のいずれかが、出力軸30の軸線上で移動することによって被駆動ギア(31~36)のいずれかと係合する。即ち、間隔を空けて配置された第2ドグD2の間隔に第1ドグD1が入り込み、且つ第2ドグD2が第1ドグD1と周方向で当たることにより、動力が伝達されるドグ係合が成立する。周方向は、被駆動ギア(31~36)及びドグリング(37a~37c)の回転方向Rを含む方向である。ドグ係合によって、回転方向Rの動力が伝達される。
【0074】
図4の(A)は、非伝達状態における被駆動ギア32及びドグリング37cを示す図である。
図4の(B)は、伝達状態における被駆動ギア32及びドグリング37cを示す図である。
図4の(C)は、伝達状態における被駆動ギア32及びドグリング37cの周方向部分断面図である。
図4(A)~(C)は、第1ドグD1及び第2ドグD2を有する遊び付きドグ係合機構138を示している。
図4(A)~(C)には、被駆動ギア(31~36)及びドグリング(37a~37c)の例として、第2速に対応する被駆動ギア32及びドグリング37cが示されている。但し、被駆動ギア32及びドグリング37cの基本的な構造は、他の変速段でも同じである。
第1ドグD1は、被駆動ギア32に、周方向に間隔を空けて配置された複数の凸部である。周方向は、被駆動ギア32及びドグリング37cの回転方向Rに沿った方向である。第1ドグD1は、被駆動ギア32から、出力軸30の軸方向に突出している。これに対し、第2ドグD2は、中心に向かって突出した複数の凸部である。第2ドグD2は、ドグリング37cに、周方向に間隔を空けて配置された複数の凹部を形成している。図に示す第1ドグD1は、周方向に並んだ第2ドグD2の間隔に入り込んでいる。周方向に並んだ第2ドグD2の間の周方向の間隔の長さは、第1ドグD1の周方向での長さよりも大きい。第1ドグD1は、周方向に並んだ第2ドグD2の間隔に遊びを有して入り込んでいる。第1ドグD1と第2ドグD2は、互いの間に遊びを有し且つ互いに相対回転可能であるように設けられている。
【0075】
第2ドグD2の間の周方向での間隔の長さが第1ドグD1の周方向での長さよりも大きいため、ドグリング37cが被駆動ギア32に向かって軸方向に移動する場合に、第1ドグD1が、第2ドグD2の間に入り込みやすい。また、ドグリング37cが被駆動ギア32から離れるように軸方向に移動する場合に、第1ドグD1は、第2ドグD2の間から抜けやすい。従って、シフトアップ及びシフトダウンにおける、第1ドグD1と第2ドグD2の係合及び離脱が円滑である。
【0076】
図4(A)~(C)に示す回転方向Rは、鞍乗型車両1の走行時に被駆動ギア32及びドグリング37cが回転する方向を示す。従って、回転方向Rは、加速状態で被駆動ギア32に生じているトルクの向きを示す。回転方向Rを加速方向Rとも称する。
図4の(B)の伝達状態では、第1ドグD1が第2ドグD2と周方向で当ったドグ係合により、第1ドグD1から第2ドグD2へ加速方向Rにトルクが伝達される。第1ドグD1と第2ドグD2は、互いに係合することによりトルクを伝達することが可能であるように構成されている。
【0077】
例えば鞍乗型車両1の走行中、動力源11が駆動輪5からの動力で駆動されている伝達状態から、動力源11から加速のトルクが出力される加速状態に変化するとき、被駆動ギア32が、
図4(A)に示す非伝達状態の位置から、ドグリング37cに対し相対的に、加速方向Rに回転する。被駆動ギア32は、ドグリング37cに対し、
図4の(B)に示す位置まで遊び角Acl分回転する。
図4の(B)に示す被駆動ギア32の位置で第1ドグD1が第2ドグD2と周方向で当たるドグ係合状態となる。
この一連の動作によって、第1ドグD1が第2ドグD2から周方向で離れ動力が伝達されない非伝達状態(
図4の(A))から、第2ドグD2が第1ドグD1と周方向で当ったドグ係合により、加速方向Rに動力が伝達される伝達状態に切り替わる。この結果、有段変速機13の入力軸20(
図3参照)から、出力軸30に加速の動力が伝達される。
【0078】
図4(A)に示す非伝達状態が、
図4(B)に示す伝達状態に切り替わるまでの期間、被駆動ギア32の回転速度は、動力源11からの加速の動力によって増大する。この期間、被駆動ギア32は、駆動対象であるドグリング37cと係合していないため、ドグリング37cから回転の抵抗を受けない。従って、被駆動ギア32の回転速度の増大量は大きい。
増大した回転速度で回転する被駆動ギア32がドグリング37cと係合すると、動力源11の出力トルクに加え、被駆動ギア32に係る回転の角運動量がドグリング37cに伝達される。つまり、動力源11の出力トルクに加え、被駆動ギア32からのイナーシャによる力が第1ドグD1から第2ドグD2に伝達される。被駆動ギア32から伝達される角運動量には、被駆動ギア32よりも動力伝達経路の上流に配置された部材の回転の角運動量も含まれている。被駆動ギア32よりも動力伝達経路の上流に配置された部材の回転の角運動量には、駆動ギア22、入力軸20、クラッチ12、動力軸90等の回転の角運動量も含まれている(
図3参照)。従って、第1ドグD1及び第2ドグD2の状態が非伝達状態(
図4(A))から伝達状態(
図4(B))に切り替わる時、例えば被駆動ギア32単体の回転による角運動量よりも大きな角運動量が短い期間で伝達される。つまり、被駆動ギア32からドグリング37cに大きな角運動量が短い期間で伝達される。
ドグリング37cに短い期間で伝達される角運動量は、有段変速機13の出力軸30(
図3参照)から駆動輪5(
図2参照)に伝達される。この場合、駆動輪5の動力に衝撃が生じる。駆動輪5の動力の衝撃は、鞍乗型車両1のショックとなる。
本実施形態では、制御装置8の制御によりショックが抑制される。
【0079】
図5は、
図3に示す制御装置8の構成を示す図である。
制御装置8は、プログラムを実行するプロセッサ8a、及びプログラム及びデータを記憶する記憶装置8bを備えている。制御装置8では、記憶装置8bに記憶されたプログラムをプロセッサ8aが実行することにより、動力源11を制御する。
制御装置8には、変速段検出器55、アクセル検出器7c、スロットル開度検出器191、燃料噴射装置106、スロットルモータ108、及び点火プラグ107が接続されている。アクセル検出器7cは、アクセル操作子7b(
図2参照)の操作量を検出する。点火プラグ107は図示しない点火装置を介して制御装置8と接続されている。また、制御装置8には、動力軸速度検出器192、及び入力軸速度検出器27が接続されている。入力軸速度検出器27は、入力軸20の回転速度に関する情報を検出する。また、制御装置8には、IMU7dも接続されている。変速段検出器55、アクセル検出器7c、及びIMU7dは、鞍乗型車両1の走行状況を検出する走行状況センサである。
【0080】
図6は、
図5に示す制御装置8の機能ブロックを示す図である。
制御装置8は、取得部81及び制御部82を有する。取得部81は、加減速判定部811及びパラメータ取得部812を有する。また、制御部82は、トルク目標算出部821及びトルク変更処理部822を有する。
図7は、
図5に示す制御装置8の動作を示すフローチャートである。
図6及び
図7を参照して、
図5に示す制御装置8の動作を説明する。
【0081】
まず、制御装置8の取得部81は、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度を示すパラメータを取得する(S81)。パラメータ、例えば、第1ドグD1及び第2ドグD2が第1非伝達状態から伝達状態に切り替わる場合に、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度に関する。
より詳細には、取得部81の加減速判定部811が、アクセル検出器7cで検出された運転者の加減速操作に基づき、ショックを伴う加減速が予想されるか否か判別する(S811)。より詳細には、加減速判定部811は、アクセル検出器7cで検出された加減速操作が、動力源11から出力されるトルクの方向を反転させる操作か否かを判別する。加減速操作が、出力されるトルクの方向を反転させる操作であると判定した場合(S811でYes)、取得部81のパラメータ取得部812が、走行状況センサTSの検出結果に基づき、走行状況を示すパラメータを取得する(S812)。本実施形態では、走行状況を示すパラメータとして、鞍乗型車両1の旋回状態に関わる物理量を示すパラメータを取得する。旋回状態に関わる物理量は、例えば旋回速度である。旋回速度は、鞍乗型車両1のリーン角に基づいて取得される。取得部81は、例えばIMU7dの検出結果に基づいてリーン角を取得する。
取得部81は、例えば、旋回速度とパラメータとが互いに対応づけられ記憶されたマップを参照することで、旋回速度からパラメータを取得する。
【0082】
図9は、鞍乗型車両1における旋回中の状態を説明する概略図である。
図9には、鞍乗型車両1の前後方向に見た鞍乗型車両1及び乗員の姿勢が模式的に示されている。
【0083】
鞍乗型車両1は、リーン姿勢で旋回する。取得部81のパラメータ取得部812は、IMU7dの検出結果を用いて鞍乗型車両1のリーン角P1を取得する。取得部81は、リーン角P1に基づいて、鞍乗型車両1の旋回速度を取得する。取得部81は、旋回速度に基づいて、走行状況を示すパラメータを取得する。
【0084】
制御装置8の制御部82は、走行状況を示すパラメータに基づいて動力源11から出力されるトルクを変更する(S82)。制御部82は、例えば、鞍乗型車両1の加速に伴うトルク変更期間において動力源11から出力されるトルクを一時的に減少させる。制御部82は、パラメータが大きいほど、動力源11から出力されるトルクの減少量を大きくする。制御部82は、例えば、パラメータが小さいほど、動力源11から出力されるトルクの減少量を小さくする。
【0085】
より詳細には、制御部82のトルク目標算出部821は、動力源11から出力されるトルクの変更目標を算出する(S821)。トルクの変更目標は、非伝達状態から伝達状態に切り替わる時にトルクの変更の目標となるレベルである。変更目標は、走行状況を示すパラメータから独立のショック低減成分と、走行状況を示すパラメータに応じたトルクデザイン成分とを含む。
制御装置8の制御部82は、変更の基本レベルとなるショック低減成分に、パラメータに対応するゲイン(係数)を乗算することによって変更目標を算出する。
パラメータに対応するゲインは、例えば0より大きい値である。
例えば、ゲインが1の場合、変更目標値は、ショック低減成分と等しい。この場合、トルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度に関するトルクデザイン成分は実質的に0である。
また、ゲインが1よりも小さい場合、変更目標値の絶対値は、ショック低減成分の絶対値よりも小さくなる。この場合、変更目標値の絶対値は、ショック低減成分から、パラメータに対応するトルクデザイン成分が減算された値である。
また、走行状況を示すパラメータが1よりも大きい場合、変更目標値の絶対値は、ショック低減成分の絶対値よりも大きくなる。この場合、変更目標値の絶対値は、ショック低減成分に、パラメータに対応するトルクデザイン成分が加算された値である。
【0086】
このようにして、本実施形態の鞍乗型車両では、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度を示す少なくとも1つのパラメータが、変更目標に反映される。
【0087】
制御部82は、非伝達状態から伝達状態に切り替わる期間に、変更目標に基づいて動力源11を制御する(S822)。より詳細には、制御部82は、スロットルモータ108による開度及び点火プラグ107の点火タイミングを変更することにより、動力源11から出力されるトルクを変更する。
【0088】
図8は、
図7に示すトルク変更処理の詳細を説明するフローチャートである。
トルク変更処理部において、制御部82のトルク変更処理部822は、動力源11からの出力トルクを検出する(S822A)。トルク変更処理部822は、トルク検出器19の検出結果に基づき、動力源11からの出力トルクを検出する。
【0089】
続いて、トルク変更処理部822は、処理タイミングの設定を行う(S822B)。トルク変更処理部822は、このステップS822Bで、ドグ係合のタイミングを取得する。トルク変更処理部822は、ドグ係合予測時間を取得する。ドグ係合予測時間は、第2ドグD2が第1ドグD1とドグ係合するまでの残り時間を表す。なお、処理開始タイミングはドグ係合のタイミングと同じではない。処理開始タイミングは、ドグ係合予測時間に基づいて決定される。
また、トルク変更処理部822は、このステップS822Bで、ドグ係合予測速度も取得する。ドグ係合予測速度は、第2ドグD2が第1ドグD1とドグ係合するタイミングにおける、第2ドグD2と第1ドグD1の相対速度差である。ドグ係合予測速度は、例えば、入力軸20と、出力軸30との相対速度差として表されることも可能である。トルク変更処理部822は、検出した出力トルクを用いてドグ係合予測速度を演算する。
また、トルク変更処理部822は、このステップS822Bで、回転同期予測時間も取得する。回転同期予測時間は、第2ドグD2が第1ドグD1とドグ係合してから、動力軸90の回転が駆動輪の回転と同期するまでの時間である。回転同期予測時間は、動力軸90の回転速度変化率と駆動輪の回転速度変化率とが同じになるまでの時間として示される。制御装置8は、ドグ係合予測速度を用いて回転同期予測時間を演算する。
【0090】
制御装置8は、動力源11からの出力トルクに基づいてドグ係合予測時間を演算する。ドグ係合予測時間は、例えば、減速状態が加速状態に変化したタイミングからドグ係合のタイミングまでの時間である。制御装置8は、ドグ係合予測時間を、トルク検出器19により検出された動力源11の出力トルクを用いて演算する。ドグ係合予測時間は、動力源11の出力トルクに応じて変化する。ドグ係合予測時間は、出力トルクが大きいほど短い。
【0091】
制御装置8は、非伝達状態の伝達状態への切り替わりのタイミングに対するエンジンの1サイクル前のタイミングから、切り替わりのタイミングまでの間に、動力減少処理を開始する。エンジンの1燃焼期間は、動力源11としてのエンジンで生じる燃焼の間隔である。エンジンの1燃焼期間は、例えば動力源11としてのエンジンが単気筒エンジンの場合、エンジンの1サイクルに相当する期間である。エンジンが複数気筒を有する場合、1燃焼期間は、複数の気筒で順次生じる燃焼の間隔に相当する期間である。例えば、動力源11が4気筒エンジンの場合の1燃焼間隔は1/4サイクルである。
切り替わりのタイミングに対するエンジンの1燃焼期間前のタイミングから、当該切り替わりのタイミングまでの間に処理が開始することによって、次々に到来する点火タイミングのうち少なくとも前記切り替わりのタイミングの前又は次に到来するエンジンの点火タイミングで、点火タイミングの遅延量が変更されやすい。このため、エンジンの出力トルクが制御されやすい。
【0092】
制御装置8は、ステップS822Bで回転同期予測時間を取得する場合、ドグ係合予測速度及び変速段を用いて回転同期予測時間を予測する。
回転同期予測時間は、動力減少処理の終了タイミングを決定するために用いられる。
【0093】
続いて、制御装置8は、動力減少処理の開始タイミングか否か判別する(S822D)。
制御装置8は、現時点でのドグ係合予測時間が、動力源11の応答時間よりも短い場合に、動力減少処理の開始タイミングであると判別する。
動力源11の応答時間は、動力減少処理の開始によって制御装置8がトルク減少のための指示値を動力源に出力してから、動力源の出力トルクが減少するまでの時間である。例えばトルクの減少が点火のタイミングの遅延によって行われる場合、トルクの減少は、燃焼サイクルの中の点火タイミングが到来するまで実施されない。動力源11の応答時間は、制御装置8が指示値を出力してから、点火のタイミングが到来するまでの時間に対応する。制御装置8が指示値を出力してから、点火のタイミングが到来するまでの時間は、制御装置8が指示値を出力するタイミングによって異なる。即ち、点火のタイミングが到来するまでの時間は、時間の経過に応じて変化する。本実施形態の制御装置8は、点火のタイミングが到来するまでの時間を応答時間として常時算出する。
【0094】
ステップS822Dで動力減少処理の開始タイミングであると判別された場合(S822DでYes)、制御装置8は、動力減少処理(S822E)を開始する。これにより、ドグ係合のタイミングに合わせて、動力源11の出力トルクが減少する。この処理によって、遊び付きドグ係合機構138(
図4(A)(B))の状態が非伝達状態(
図4(A)参照)から伝達状態(
図4(B))に切り替わる場合に、動力源11から出力されるトルクが減少する。
【0095】
続いて、制御装置8は、動力減少処理の終了タイミングが到来したか否か判別する(S822F)。制御装置8は、動力減少処理の終了タイミングまで動力減少処理(S822E)を継続する(S822FでNo)。
動力減少処理(S822E)において、制御装置8は、
図7のS821で算出された変更目標に応じたトルク指令値を動力源に出力する。動力源11はトルク指令値に応じた動力を出力する。制御装置8は、動力減少処理(S822E)において、設定されたトルク補正パターンに応じて、動力源11の動力を経時的に変化させることができる。
【0096】
動力減少処理の終了タイミングが到来した場合(S822FでYes)、制御装置8は、動力減少処理(S822E)を終了する。
制御装置8は、ステップS822Bで取得した回転同期予測時間に基づいて動力減少処理を終了する。詳細には、ステップS822Fにおいて、制御装置8は、回転同期予測時間が動力源11の応答時間より小さい場合に、終了タイミングであると判別する。これによって、回転同期のタイミングに合わせて、動力源11の出力トルクの減少が終了する。
【0097】
図10は、動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が異なる複数の状態を示す概略図である。
図10のパート(a)からパート(c)には、互いに異なる旋回速度の状態が示されている。
【0098】
図10のパート(a)における鞍乗型車両1は直立状態である。鞍乗型車両1の旋回速度は実質的に0である。この場合、動力源11のトルクの増減により発生し得る旋回状態の変化の程度は小さい。
図10のパート(a)における走行状況を示すパラメータは、0%と設定される。
図10のパート(c)における鞍乗型車両1は、最大リーン状態で旋回している。鞍乗型車両1は、最大旋回速度で走行している。この場合、動力源11のトルクの増減により発生し得る旋回状態の変化の程度は最大となる。
図10のパート(c)における走行状況を示すパラメータは、100%と設定される。
図10のパート(b)における鞍乗型車両1の状態は、パート(a)における状態とパート(c)における状態との中間の状態である。
図10のパート(b)における走行状況を示すパラメータは、50%と設定される。
図10には、代表として3つの状態が示されているが、走行状況を示すパラメータは、旋回速度に応じて0%から100%まで連続的に設定される。
【0099】
図11は、トルクの変化を示すタイムチャートである。
図11のパート(a)~(c)は、動力源11から出力されるトルクの変更を示すタイムチャートである。
図11のパート(a)~(c)は、
図10のパート(a)~(c)の状態に対応する。すなわち、
図11のパート(a)~(c)は、走行状況を示すパラメータにおける0%、50%、及び100%に対応する。
【0100】
図11のパート(a)~(c)のそれぞれには、スロットル開度TH、及び、駆動輪5の駆動トルクPO、動力源11から出力されるトルクTOが示されている。
図11のパート(a)~(c)はいずれも加速に伴う変化の例を示している。スロットル開度THは、
図11のパート(a)~(c)のいずれも共通であり、加速期間ACで、運転者の操作に基づいてTHaからTHbまで増大する。これによって動力源11の状態が減速状態から加速状態に切り替わる。スロットル開度THの増大に伴い、動力源11から出力されるトルクTOが増大する。
【0101】
動力源11の状態が減速状態から加速状態に切り替わる場合、
図4のパート(C)に示す、隣り合って配置された2つの第2ドグD2の間にある第1ドグD1が、一つの第2ドグD2から離れ(非伝達状態)、加速しながら遊び分移動した後、逆方向の位置に配置された異なる第2ドグD2と再接触する(ドグ係合による伝達状態)。つまり、動力が伝達される伝達状態から動力が伝達されない非伝達状態を経て再び伝達状態へ至るまでの間に、第1ドグD1に非伝達状態で蓄積される角運動量が加速によって増大する。非伝達状態が伝達状態に切り替わる再接触によって、増大した角運動量が第2ドグD2に伝達される。
第1ドグD1が遊び分移動することによって、再接触の時に駆動輪5の駆動トルクPOの変動量が増大する。
制御装置8の動作によって、このような加減速の切替えに伴う鞍乗型車両1のショックが抑制される。
具体的には、制御装置8の制御部82は、非伝達状態が加速方向に動力が伝達される伝達状態に切り替わる場合に、第1ドグD1と第2ドグD2の間で伝達される伝達トルクを減少させる動力減少処理を行う。また、制御装置8の制御部82は、非伝達状態から、減速方向へ動力が伝達される伝達状態に切り替わる場合に、伝達トルクを増加させる動力減少処理を行う。
制御装置8は、処理を開始するタイミングを非伝達状態の伝達状態への切り替わりのタイミング(t2)と同時又は前記切り替わりのタイミング(t2)よりも前になるように制御するとともに、処理を終了するタイミングを非伝達状態の伝達状態への切り替わりのタイミング(t2)よりも後になるように制御する。
【0102】
この結果、第1ドグD1と第2ドグD2が非伝達状態から伝達状態に切り替わることに起因するショックが抑えられる。
図11のパート(a)~(c)では、時刻t2からt3までの間、動力源11から出力されるトルクTOが減少する。
【0103】
図11のパート(a)における動力源11からのトルクTO1の減少量は、実線で示されている。
図11のパート(a)は、走行状況を示すパラメータが0%の場合であり、走行状況を示すパラメータが、
図11のパート(b)に示す50%の場合よりも小さい。この場合、ショック低減成分(パート(a)のトルクTO1破線の値)に乗算されるゲインとして1よりも小さな値が設定される。このため、動力源から出力されるトルクTO1の減少量が、
図11のパート(b)に示す減少量よりも小さい。
この結果、
図11のパート(a)では、駆動輪5の駆動トルクPO1に、
図11のパート(b)に示す場合よりも大きな衝撃が生じる。
但し、
図11のパート(a)における、駆動輪5の駆動トルクPO1は、
図11のパート(b)に示す場合よりも短い時間で増大する。すなわち、アクセルの操作に対する駆動トルクPO1の応答性が高い。
【0104】
図11のパート(c)における動力源11からのトルクTO3の減少量も、実線で示されている。
図11のパート(c)は、走行状況を示すパラメータが100%の場合であり、走行状況を示すパラメータが、
図11のパート(b)に示す50%の場合よりも大きい。この場合、ショック低減成分(パート(c)のトルクTO3破線の値)に乗算されるゲインとして1よりも大きな値が設定される。このため、動力源から出力されるトルクTO3の減少量が、
図11のパート(b)に示す場合よりも大きい。
この結果、
図11のパート(c)における駆動輪5の駆動トルクPO3の変化は緩やかになる。駆動トルクPO3に生じる衝撃は、
図11のパート(b)に示す場合よりも小さい。
【0105】
上述した例では、例えばステップS82において、制御部82が、例えば、鞍乗型車両1の加速に伴うトルク変更期間において動力源11から出力されるトルクを一時的に減少させることを説明した。減少量は、パラメータに基づいて異なる。
但し、上述した例では、制御部82が、例えば、鞍乗型車両1の減速に伴うトルク変更期間において動力源11から出力されるトルクを一時的に増加させる。この場合は、減少量は、パラメータに基づいて異なる。より詳細には、制御部82は、例えば、パラメータが大きいほど、動力源11から出力されるトルクの増加量を大きくする。制御部82は、例えば、パラメータが小さいほど、動力源11から出力されるトルクの増加量を小さくする。
【0106】
このように、鞍乗型車両1では、加減速と共に発生し得る鞍乗型車両1の走行状況を示す少なくとも1つのパラメータに基づいて動力源11のトルクが変更される。動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が大きい場合、例えば、旋回速度が大きい場合ショックの程度を小さくし、旋回速度が小さい場合ショックの程度を大きくすることができる。この鞍乗型車両1によれば、遊びを有して設けられる動力伝達部材D1,D2を備え、動力伝達部材D1,D2の遊びに起因して鞍乗型車両1に生じるショックの程度を走行状況に適合させることが可能である。
【0107】
[旋回速度取得手段の変形例]
鞍乗型車両1の旋回速度を取得する手段として、鞍乗型車両1のリーン角P1を用いない手段が採用可能である。例えば、制御装置8は、
図9に示す乗員の重心位置の、鞍乗型車両1の左右方向LRにおける中心面C1からの距離P2に基づいて旋回速度を取得することができる。この場合、乗員の重心位置は、例えばシートに配置された複数の圧力センサの検出結果に基づいて推定される。
【0108】
図12は、鞍乗型車両1の旋回状態を模式的に示す平面図である。
制御装置8は、例えば、鞍乗型車両1の前輪4に対する操舵角P3に基づいて、旋回速度を取得することができる。操舵角P3は、例えば、ハンドル3に設けられたセンサで検出される。
【0109】
また、制御装置8では、例えば、鞍乗型車両1の単位時間のヨーの角度P4の変化量から、旋回速度を直接的に取得する方法も採用可能である。また、制御装置8は、例えば、鞍乗型車両1の左右方向の加速度P5に基づいて旋回速度を取得する方法も採用可能である。ヨーの角度又は左右方向の加速度は、例えば鞍乗型車両1に搭載されたIMU7d(
図5参照)で検出される。
【0110】
[第二実施形態]
続いて、本発明の第二実施形態について説明する。
本発明の第二実施形態では、パラメータの取得が鞍乗型車両1と先行車両との間の距離に基づいている。第二実施形態におけるこの他の点は、第一実施形態と同じである。従って、第二実施形態の構成の説明では、第一実施形態についての図面を流用し、第一実施形態と同じ符号を用いる。
【0111】
図13は、第二実施形態に係る鞍乗型車両1と先行車両Vpの位置関係を模式的に示す平面図である。
【0112】
先行車両Vpは、鞍乗型車両1の前後方向FBにおいて鞍乗型車両1よりも前方Fで走行している。
先行車両Vpと鞍乗型車両1との間の距離には、車間距離すなわち前後方向FBでの距離P6、及び左右方向LRでの各中心の距離P7が含まれる。前後方向FBでの距離P6が小さいほど、鞍乗型車両1の走行中、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が大きい。また、前後方向FBでの距離P6が同じ条件でも、左右方向LRでの距離P7が小さいほど、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が大きい。
制御装置8は、例えば、レーザーレーダによる測定、カメラ撮影画像による推定、ミリ波による測定、及び、先行車両Vpとの車車間通信による情報取得のいずれか、或いはこれらの組合せを用いて距離P6、P7のそれぞれを取得する。
なお、前後方向FBでの距離P6は、鞍乗型車両1が走行する時間の形式で表す構成も採用可能である。この場合、距離P6は、例えば、距離P6を鞍乗型車両1の速度で除した車間時間で表される。
また、距離P6は、鞍乗型車両1と先行車両Vpの相対速度を用いて表す構成も採用可能である。この場合、距離P6は、鞍乗型車両1の速度から先行車両Vpの速度を引いた値を用いて表される。また、距離P6は、鞍乗型車両1が先行車両Vpに到達するまでの時間の形式で表す構成も採用可能である。この場合、距離P6は、距離P6を、鞍乗型車両1と先行車両Vpの相対速度で除した到達時間で表される。
【0113】
制御装置8は、先行車両Vpと鞍乗型車両1との間の距離P6、P7に対応するパラメータに基づいて動力源11のトルクを変更する。より詳細には、制御装置8は、前後方向FBでの距離P6又は左右方向LRでの距離P7のいずれか、若しくは距離P6、P7の組合せに基づいて、走行状況を示すパラメータを取得する。制御装置8は、パラメータに基づいて動力源11のトルクを変更する。
【0114】
図14は、先行車両Vpとの距離が異なる複数の状態を示す概略図である。
図14のパート(a)からパート(c)には、先行車両Vpに対し、互いに異なる距離P6a~P6cを有する状態が示されている。
【0115】
図14のパート(c)における鞍乗型車両1と先行車両Vpの距離P6cは、パート(a)における鞍乗型車両1と先行車両Vpの距離P6aよりも小さい。パート(c)の場合、鞍乗型車両1の加減速は、パート(a)の場合と比べ、先行車両Vpの加減速に応じてより頻繁に生じやすくなる。また、鞍乗型車両1の加減速の程度も、パート(a)の場合と比べより大きくなりやすい。このため、発生し得る車体挙動の変化の程度が大きい。この場合、鞍乗型車両1の加減速を生じさせ得る鞍乗型車両1の走行状況に対するパラメータは、100%と設定される。
これに対し、
図14のパート(a)における鞍乗型車両1と先行車両Vpの距離P6aは大きい。先行車両Vpの加減速により発生し得る車体挙動の変化が無視できる程度に小さい。この場合、鞍乗型車両1の走行状況に対するパラメータは、0%と設定される。
図14のパート(b)における鞍乗型車両1と先行車両Vpの距離P6bは、
図14のパート(a)の場合の距離P6a、及びパート(c)の場合の距離P6cの中間の距離である。パート(b)における走行状況に対するパラメータは、50%と設定される。
【0116】
[第三実施形態]
続いて、本発明の第三実施形態について説明する。
本発明の第三実施形態では、パラメータの取得内容が更に異なる。第三実施形態の構成の説明では、第一実施形態についての図面を流用し、第一実施形態と同じ符号を用いる。
【0117】
図15は、第三実施形態に係る鞍乗型車両1のピッチ角を模式的に示す側面図である。鞍乗型車両1の前後方向FBの軸線C2と水平面Hの間のピッチ角P8は、0でない角度を有する。この場合、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が大きい。
ピッチ角P8が大きいほど、発生し得る車体挙動の変化の程度が大きい。
【0118】
制御装置8は、IMU7d(
図5参照)の検出結果を用いて鞍乗型車両1のピッチ角P8を取得する。
【0119】
また、制御装置8は、例えば鞍乗型車両1に設けられたショックアブソーバのストロークセンサを用いて重力加速度の方向を推定することもできる。重力加速度の方向に基づいてピッチ角P8が取得される。
【0120】
また、制御装置8は、動力源11の出力トルクの指令値に基づいて計算された目標の加速度と、車速センサにより検出される鞍乗型車両1の実際の加速度の差を取得することもできる。この差に基づいて、鞍乗型車両1のピッチ角P8が取得される。
また、制御装置8は、路上或いはその周辺に設けられた装置と路車間通信を行うことによって、鞍乗型車両1のピッチ角P8を取得することが可能である。
【0121】
制御装置8は、鞍乗型車両1のピッチ角P8に対応するパラメータに基づいて動力源11のトルクを変更する。
【0122】
図16は、ピッチ角が異なる複数の状態を示す概略図である。
図16のパート(a)からパート(c)には、互いに異なるピッチ角を有する状態が示されている。
図16のパート(a)における鞍乗型車両1のピッチ角P8aは、実質的に0である。
図16のパート(c)における鞍乗型車両1のピッチ角P8cは、パート(a)における鞍乗型車両1のピッチ角P8a(=0)よりも大きい。パート(c)の場合、鞍乗型車両1の加減速は、パート(a)の場合と比べ、先行車両Vpの加減速に応じてより頻繁に生じやすくなる。また、鞍乗型車両1の加減速の程度も、パート(a)の場合と比べより大きくなりやすい。このため、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が大きい。この場合、鞍乗型車両1の走行状況に対するパラメータは、100%と設定される。
これに対し、
図16のパート(a)における鞍乗型車両1のピッチ角P8aは実質的に0であるので、鞍乗型車両1の走行状況に対するパラメータは、0%と設定される。
図16のパート(b)における鞍乗型車両1のピッチ角P8bは、
図16のパート(a)の場合のピッチ角、及び、パート(c)の場合のピッチ角の中間のピッチ角である。パート(b)における、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度に関するパラメータは、50%と設定される。
【0123】
[第四実施形態]
続いて、本発明の第四実施形態について説明する。
本発明の第四実施形態では、パラメータの取得内容が更に異なる。第四実施形態の構成の説明では、第一実施形態についての図面を流用し、第一実施形態と同じ符号を用いる。
【0124】
図17は、第四実施形態に係る鞍乗型車両1の摩擦係数を模式的に示す側面図である。
図17には、鞍乗型車両1が、凹凸を有する路面Qを走行している状態を示している。
走行している路面Qは摩擦係数を有する。路面粗さは、摩擦係数に影響する。
摩擦係数が小さいほど、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度が大きい。
【0125】
制御装置8は、IMU7d(
図5参照)の検出結果を用いて路面Qの路面粗さを取得する。より詳細には、制御装置8は、IMU7d(
図5参照)で検出された、上下方向UDの加速度、前後方向FBの加速度、及びピッチ角に基づいて路面粗さを取得する。
路面Qの摩擦係数は、摩擦力限界値とタイヤ力推定値の差で表す構成も採用可能である。この場合、路面Qの摩擦係数は、例えば、摩擦係数を乗員含む車両重量と重力加速度で乗じた力と、タイヤ力推定値との差で表される。タイヤ力推定値は、IMU、駆動力、又は制動力により取得できる。また、乗員体重は、シートの圧力センサによって取得できる。また、乗員体重は、ユーザがインターフェースツールに情報を登録することで取得できる。
【0126】
また、制御装置8は、例えば鞍乗型車両1に設けられたショックアブソーバのストロークセンサを用いて路面Qの路面粗さを取得することも可能である。制御装置8は、路面粗さに基づいて路面Qの摩擦係数を取得する。
【0127】
また、制御装置8は、例えばIMU7d(
図5参照)の検出結果及び駆動輪の回転速度センサの検出結果を用いて、路面Qを走行する場合の駆動輪の空転率を取得することも可能である。制御装置8は、空転率に基づいて路面Qの摩擦係数を取得する。
また、制御装置8は、路上或いはその周辺に設けられた装置と路車間通信を行うことによって、路面Qの摩擦係数を取得することが可能である。
【0128】
制御装置8は、鞍乗型車両1の摩擦係数に対応するパラメータに基づいて動力源11のトルクを変更する。
【0129】
図18は、摩擦係数が異なる複数の路面を走行する鞍乗型車両1を示す概略図である。
図18のパート(a)からパート(c)には、天気に起因して互いに異なる摩擦係数を有する状態が示されている。
図18のパート(a)の路面Qaは、晴天時の路面である。
図18のパート(a)~(c)の中で、パート(a)における路面Qaの摩擦係数は最も大きい。
図18のパート(c)の路面Qcは、降雪時の路面である。
図18のパート(c)における路面Qcの摩擦係数は、パート(a)における路面Qaの摩擦係数よりも小さい。パート(c)の場合、動力源のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度は、パート(a)の場合と比べ操作により大きい。この場合、鞍乗型車両1の走行状況に対するパラメータは、100%と設定される。
これに対し、
図18のパート(a)における路面Qaの摩擦係数は最大であるので、鞍乗型車両1の走行状況に対するパラメータは、0%と設定される。
図18のパート(b)における路面Qbは、降雨時の路面である。
図18のパート(b)における路面Qbの摩擦係数は、
図18のパート(a)の場合の摩擦係数、及びパート(c)の場合の摩擦係数の中間の摩擦係数である。パート(b)における
、動力源11のトルクの増減により発生し得る車体挙動の変化の程度に関するパラメータは、50%と設定される。
【符号の説明】
【0130】
1 鞍乗型車両
5 駆動輪(被駆動部材)
8 制御装置
81 取得部
82 制御部
9 動力伝達経路
11 動力源
D1 第1ドグ(第1動力伝達部材)
D2 第2ドグ(第2動力伝達部材)