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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】点火プラグ抵抗素子および点火プラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
H01T13/20 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021531228
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2019082534
(87)【国際公開番号】W WO2020120121
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】102018221690.8
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】カシヤノフ,エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ラインシュ,ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】ボナ,コリンナ
(72)【発明者】
【氏名】ヌーファー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,フーベルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】キュンツェル,カールステン
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-239582(JP,A)
【文献】特開昭57-020404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/00-13/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火プラグ抵抗素子において、少なくとも1つの無機アモルファス酸化物(9)と、最大15の相対的な絶縁誘電率を有する少なくとも1つの第1の無機結晶性酸化物(10)とを含有し、
さらに少なくとも1つの第2の無機結晶性酸化物(11)を含有しており、前記第2の無機結晶性酸化物(11)がZrO ,TiO ,HfO およびこれらの混合物より選択されていて、
第1の無機結晶性酸化物(10)および第2の無機結晶性酸化物(11)の総含有量が、それぞれ点火プラグ抵抗素子(8)の総質量に対して、20質量%以上100質量%未満である、点火プラグ抵抗素子。
【請求項2】
前記第1の無機結晶性酸化物(10)が、ZnO,SnOおよびこれらの混合物より選択されている、請求項1記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項3】
前記無機アモルファス酸化物(9)が、ガラスである、請求項1または2記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項4】
前記無機アモルファス酸化物(9)が、ホウケイ酸ガラスである、請求項1から3までのいずれか1項記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項5】
さらに少なくとも1つの無機非酸化物材料(12)を含有しており、前記無機非酸化物材料(12)がカーボン、グラファイト、カーバイド、金属およびこれらの混合物より選択されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項6】
前記カーバイドが、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化鉄、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化モリブデンおよびこれらの混合物より選択されていて、ならびに/または前記金属が、鉄、タングステン、チタン、銅、銀およびこれらの混合物より選択されている、請求項記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項7】
第1の無機結晶性酸化物(10)および第2の無機結晶性酸化物(11)の総含有量が、それぞれ点火プラグ抵抗素子(8)の総質量に対して、40乃至80質量%である、請求項からまでのいずれか1項記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項8】
無機アモルファス酸化物(9)の含有量が、それぞれ点火プラグ抵抗素子(8)の総質量に対して、0質量%を超え80質量%までである、請求項1からまでのいずれか1項記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項9】
無機アモルファス酸化物(9)の含有量が、それぞれ点火プラグ抵抗素子(8)の総質量に対して、10乃至30質量%である、請求項1からまでのいずれか1項記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項10】
点火プラグ抵抗素子において、少なくとも1つの無機アモルファス酸化物(9)と、最大15の相対的な絶縁誘電率を有する少なくとも1つの第1の無機結晶性酸化物(10)とを含有し、
無機アモルファス酸化物(9)の含有量が、それぞれ点火プラグ抵抗素子(8)の総質量に対して、10乃至30質量%である、点火プラグ抵抗素子。
【請求項11】
無機非酸化物材料(12)の含有量が、それぞれ点火プラグ抵抗素子(8)の総質量に対して、0質量%を超え20質量%までである、請求項から10までのいずれか1項記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項12】
無機非酸化物材料(12)の含有量が、それぞれ点火プラグ抵抗素子(8)の総質量に対して、0質量%を超え10質量%までである、請求項から11までのいずれか1項記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項13】
それぞれ点火プラグ抵抗素子(8)の総質量に対して、0<x<0.99c,0<y<cおよび0<z<c、この場合、c=20乃至100質量%であり、かつx+y+z=cである、x質量%ZrO,y質量%ZnOおよびz質量%SnOを含有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項14】
点火プラグ抵抗素子において、少なくとも1つの無機アモルファス酸化物(9)と、最大15の相対的な絶縁誘電率を有する少なくとも1つの第1の無機結晶性酸化物(10)とを含有し、
それぞれ点火プラグ抵抗素子(8)の総質量に対して、0<x<0.99 c,0<y<cおよび0<z<c、この場合、c=20乃至100質量%であり、かつx+y+z=cである、x質量%ZrO ,y質量%ZnOおよびz質量%SnO を含有する、点火プラグ抵抗素子。
【請求項15】
それぞれ点火プラグ抵抗素子(8)の総質量に対して、0<x<0.99c,0<y<cおよび0<z<c、この場合、c=40乃至80質量%であり、かつx+y+z=cである、x質量%ZrO,y質量%ZnOおよびz質量%SnOを含有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の点火プラグ抵抗素子。
【請求項16】
点火プラグにおいて、請求項1から15までのいずれか1項記載の点火プラグ抵抗素子(8)を含有する、点火プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火プラグ抵抗素子、および改善された電磁適合性つまり電磁両立性(EMC)を有する点火プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼室内に配置された点火プラグは、点火プラグの電磁両立性を改善するために、1乃至14kΩの比電気抵抗を有している。この場合、一般的に、接続側が中心電極の脚部に接続していて、セラミック材料、正確にはガラスから成っている抵抗素子が使用される。しかしながら、このような従来の抵抗素子は、点火プラグの耐用年数で見て十分な電気的安定性を有していない。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0003】
これに対して、本発明による点火プラグ抵抗素子は、電磁放射線の低い放射を特徴としており、ひいては同程度の電気的絶縁つまり同程度の高さの電気抵抗において、より高い電磁両立性を特徴としている。
【0004】
これは、本発明によれば、点火プラグ抵抗素子が、少なくとも1つの無機アモルファス酸化物と、最大15の相対的な絶縁誘電率を有する少なくとも1つの第1の無機結晶性酸化物とを含有していることによって得られる。この場合、無機アモルファス酸化物は、非結晶性マトリックスを形成し、この非結晶性マトリックス内に第1の無機結晶性酸化物が埋め込まれている。つまり、透過電子顕微鏡(TEM)によって区別することができる2つの相が存在する。無機結晶性酸化物は、電磁放射線を低下させひいては点火プラグの電磁両立性を改善する最大15、特に最大12の相対的な絶縁誘電率を有していることが分かった。この場合、相対的な絶縁誘電率は、絶縁インピーダンス分光学を用いてASTM D2149-13に従って測定される。この場合、第1の無機結晶性酸化物の割合が多ければ多い程、点火プラグ抵抗素子の電磁両立性は高くなる。
【0005】
従属請求項は、本発明の有利な実施態様を示す。
【0006】
好適な1実施態様によれば、第1の無機結晶性酸化物が、ZnO,SnOおよびそれらの混合物より選択されている。ZnO,SnOは、相対的な絶縁誘電率のために非常に低い値、つまりZnO:8およびSnO:12を有している。従って、これらの酸化物を使用することによって、電磁放射線の放出が減少されることにより非常に高い電磁両立性が得られる。その他の無機酸化物、例えばAlは、やはり同様に低い相対的な誘電率を有しているが、ZrO,ZnO,SnOと比較して比較的低い電子伝導率に基づいて、あまり有利ではない。従って、特にAlは使用されない。
【0007】
好適には、無機アモルファス酸化物としてガラス、特にホウケイ酸ガラスが使用される。何故ならば、ガラスは非常に安定していて、電気的に良好な絶縁性を有しているからである。ガラスは、第1の無機アモルファス酸化物のために非常に良好なマトリックスを形成する。以上の理由から、ガラスは、好適にはリチウム-ホウケイ酸ガラスまたはリチウム-カルシウム-ホウケイ酸ガラスである。
【0008】
ガラスの特に好適な組成(この組成の総質量に対する量的なデータ)は次の通り:
SiO:35乃至65質量%
:20乃至55質量%
LiO:0.5乃至10質量%
Na+KO:最大2質量%
CaO:0乃至15質量%
SrO:0乃至15質量%
BaO:0乃至10質量%
MgO:0乃至15質量%
Al:0乃至15質量%
PbO:0乃至5質量%
【0009】
点火プラグ抵抗素子の電気抵抗を改善するために、好適には第2の無機結晶性酸化物が含まれている。この場合、第2の無機結晶性酸化物は、第1の無機結晶性酸化物と同様に無機アモルファス酸化物のマトリックス内に埋め込まれている。特に好適には、第2の無機結晶性酸化物は、ZrO,TiO,HfOおよびこれらの混合物より選択されている。
【0010】
さらに好適には、点火プラグ抵抗素子は、少なくとも1つの無機非酸化物材料を含有しており、この場合、無機非酸化物材料が特に、カーボン、グラファイト、カーバイド、金属およびこれらの混合物より選択されている。無機非酸化物材料は、比較的高い導電率を有しているので、無機非酸化物材料に対する無機結晶性酸化物の混合比によって、点火プラグ抵抗素子の抵抗値およびひいては点火プラグの抵抗値も特に簡単に調整することができる。
【0011】
非常に良好な安定性に基づいて、カーバイドは好適には、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化鉄、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化モリブデンおよびこれらの混合物より選択されていて、ならびに/または前記金属が、鉄、タングステン、チタン、銅、銀およびこれらの混合物もしくは合金より選択されている。
【0012】
点火プラグ抵抗素子の電磁両立性は、同時に高い電気抵抗を有している場合に、好適にはさらに、第1の無機結晶性酸化物および第2の無機結晶性酸化物の総含有量が、それぞれ点火プラグ抵抗素子の総質量に対して、20質量%以上100質量%未満、特に40乃至80質量%であることによって、さらに改善することができる。
【0013】
別の好適な実施態様によれば、ここでは“a”で示された、無機アモルファス酸化物の含有量は、それぞれ点火プラグ抵抗素子の総質量に対して、0質量%を超え80質量%まで、特に10乃至30質量%である、
【0014】
点火プラグ抵抗素子の抵抗値の適合を改善するために、ここでは“n”で示された、無機非酸化物材料の含有量は、それぞれ点火プラグ抵抗素子の総質量に対して、0質量%を超え20質量%まで、特に0質量%を超え10質量%までである。
【0015】
特に良好な、つまり安定した、電磁的に高い両立性を有する、無機結晶性酸化物との組み合わせは、ZrO、ZnOおよびSnOから成る組み合わせである。この場合、特に質量分率はこれらの酸化物に次のように配分される:x質量%ZrO,y質量%ZnOおよびz質量%SnOにおいて、それぞれ点火プラグ抵抗素子の総質量に対して、0<x<0.99c,0<y<cおよび0<z<cであり、この場合、c=20乃至100質量%、特に40乃至80質量%であって、またx+y+z=cである。
【0016】
好適な形式で、点火プラグ抵抗素子は、少なくとも1つの第1の無機結晶性酸化物、少なくとも1つの第2の無機結晶性酸化物、少なくとも1つの無機アモルファス酸化物および少なくとも1つの非酸化物材料の他に、その他の成分を含有していない。従って、a+c+n=100が適用される。
【0017】
同様に本発明によれば、少なくとも1つの前記開示された点火プラグ抵抗素子を含有する点火プラグについても記載される。高い電磁両立性および持続的に安定している、点火プラグ抵抗素子の高い電気抵抗に基づいて、本発明による点火プラグは、低い電磁放射を特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施例による点火プラグの部分断面図である。
図2】本発明の第2実施例による点火プラグ抵抗素子の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施例を添付の図面を用いて詳しく説明する。
【0020】
図面には、本発明の主要な特徴のみが示されている。その他のすべての特徴は、見やすくするために省かれている。さらに、同じ構成部分には同じ符号が付けられている。
【0021】
図1に示されているように、第1実施例による点火プラグ1は、接地電極2および中心電極3を有している。碍子4は、中心電極3が公知の形式で碍子4から僅かに突き出すように設けられている。碍子4自体は部分的にハウジング5によって包囲されている。符号6は電気的な接続ナットを示す。電気的な接続ナット6から導電性の接続部が、接続ピン7および点火プラグ抵抗素子8を介して中心電極3まで設けられている。
【0022】
図2に詳細が示されている点火プラグ抵抗素子8は、電気抵抗のための値が同じ程度に良好であって機械的安定性が高い場合に、点火プラグ1の電磁両立性を改善する。これによって、点火プラグ1のための低い電磁放射も得られる。
【0023】
図2は、図1に示した点火プラグ抵抗素子8の概略的な断面図である。点火プラグ抵抗素子8は、少なくとも1つの無機アモルファス酸化物9と、最大15の相対的な絶縁誘電率を有する少なくとも1つの第1の無機結晶性酸化物10とを有している。この場合、無機アモルファス酸化物9は、ガラス状マトリックスを形成し、このガラス状マトリックス内に第1の無機結晶性酸化物10が埋め込まれている。第1の無機結晶性酸化物10は特に、ZnOまたはSnOまたはこれらの混合物である。
【0024】
さらに、点火プラグ抵抗素子8は少なくとも1つの第2の無機結晶性酸化物11を有しており、この場合、この第2の無機結晶性酸化物11は、特にZrO,TiO,HfOおよびこれらの混合物より選択されている。
【0025】
好適な形式で、第1の無機結晶性酸化物10はZnOとSnOとの混合物、第2の無機結晶性酸化物11はZrOであって、第1の無機結晶性酸化物10および第2の無機結晶性酸化物11の質量分率は次の通りである:x質量%ZrO,y質量%ZnOおよびz質量%SnOにおいて、それぞれ点火プラグ抵抗素子8の総質量に対して、0<x<0.99c,0<y<c、0<z<cであって、この場合、c=20乃至100質量%、特に40乃至80質量%であり、かつx+y+z=cである。
【0026】
さらに、点火プラグ抵抗素子8は少なくとも1つの無機非酸化物材料12を有しており、この場合、無機非酸化物材料12は特に、カーボン、グラファイト、カーバイド、金属およびこれらの混合物より選択されている。この場合、無機非酸化物材料12の含有量は、それぞれ点火プラグ抵抗素子8の総質量に対して、特に0質量%を超え20質量%まで、特に0質量%を超え10質量%までである。
【0027】
点火プラグ抵抗素子8は、良好な電気抵抗において、非常に高い電磁両立性を特徴とする。
【符号の説明】
【0028】
2 接地電極
3 中心電極
4 碍子
5 ハウジング
6 電気的な接続ナット
7 接続ピン
8 点火プラグ抵抗素子
9 無機アモルファス酸化物
10 第1の無機結晶性酸化物
11 第2の無機結晶性酸化物
12 無機非酸化物材料
図1
図2