(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】MEMS素子内の通路の封鎖方法
(51)【国際特許分類】
B81C 1/00 20060101AFI20230209BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20230209BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20230209BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20230209BHJP
H04R 19/04 20060101ALI20230209BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B81C1/00
B81B3/00
B23K26/21 N
H04R31/00 C
H04R19/04
H01L29/84 Z
(21)【出願番号】P 2021534972
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2019085117
(87)【国際公開番号】W WO2020126922
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】102018222749.7
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】アメトウォブラ,マウリ
(72)【発明者】
【氏名】ベーバー,ヘリベルト
(72)【発明者】
【氏名】シュモルングルーバー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヘルメス,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】メノルト,トビアス・ヨアヒム
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0368763(US,A1)
【文献】特表2016-539015(JP,A)
【文献】特開2008-296336(JP,A)
【文献】特開2008-062319(JP,A)
【文献】特開2015-103821(JP,A)
【文献】特開2015-081774(JP,A)
【文献】特開2015-114318(JP,A)
【文献】特開2002-036198(JP,A)
【文献】特開2005-207959(JP,A)
【文献】特開2016-102693(JP,A)
【文献】特開2015-112703(JP,A)
【文献】特開2006-142242(JP,A)
【文献】特表2007-526108(JP,A)
【文献】特表2004-526578(JP,A)
【文献】特開2000-124470(JP,A)
【文献】特許第6050631(JP,B2)
【文献】特許第4206849(JP,B2)
【文献】特許第4111809(JP,B2)
【文献】特開2013-038727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351246(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81C 1/00
B81B 3/00
B23K 26/21
H04R 31/00
H04R 19/04
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 機能領域(2)を有する機能層(16)を提供するステップ(S1)と、
- 前記機能層(16)の前記機能領域(2)の外にある第1の通路(5、9、11)を使って、前記機能層(16)の前記機能領域(2)の平面部に対して垂直方向に空洞(4)を製造するステップ(S2)と、
- 前記第1の通路(5、9、11)を封鎖するステップ(S3)と、
- 前記機能層(16)の前記機能領域(2)の外で、前記空洞(4)への第2の通路(6、7、8)を製造するステップと、
- 前記第2の通路(6、7、8)の領域内の封鎖材料(10、16)を溶融するステップ(S5)と、
- 前記第2の通路(6、7、8)を封鎖するために、前記溶融した封鎖材料(10、16)を冷却するステップ(S6)と
を含み、
前記第2の通路(6、7、8)が、前記空洞(4)と第1の通路(5、9、11)との間で製造される、MEMS素子(1)内の通路(5、9、11;6、7、8)の封鎖方法。
【請求項2】
前記第1の通路(5、9、11)は、前記機能領域(2)の周囲を囲むように形成された複数の溝(5)のうちの一つを含んで構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の通路(6、7、8)の領域内に配置された前記封鎖材料(10、16)の前記溶融がレーザ光線を使って行われ、かつ/または前記溶融すべき封鎖材料(10、16)がレーザ光線を使って前記第2の通路(6、7、8)の領域内に移動させられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の通路(6、7、8)の領域内の封鎖材料(10、16)として、追加的な封鎖材料(10)が施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融のための前記封鎖材料(10、16)が、専ら前記第2の通路(6、7、8)の周囲の周囲材料の形態で提供される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記封鎖材料(10、16)が絶縁材料の形態で提供され、とりわけ前記封鎖材料(10、16)が酸化シリコン、窒化シリコン、および/または酸窒化シリコンとして提供される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記通路(6、7、8)の領域内の封鎖材料(10、16)として、前記溶融時に共融混合物を形成するための層系が配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の通路(6、7、8)が、前記第1の通路(5、9、11)の前記封鎖領域内で、前記第2の通路(6、7、8)が前記第1の通路(5、9、11)を介して前記空洞(4)とつながっているように製造される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の通路(6、7、8)が、前記第1の通路(5、9、11)の開口部(11)の横断面より小さく形成された横断面の開口部(8)を有して形成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の通路(6、7、8)が、前記第1の通路(5、9、11)の開口部(11)の封鎖されていない区間によって、および/または前記封鎖された第1の通路(5、9、11)の部分的な開口によって形成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の通路(6、7、8)が、横流路(6)によって、およびとりわけ前記第1の通路(5、9、11)を介して前記空洞(4)とつながれる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の通路(6、7、8)が、前記第1の通路(5、9、11)と同じやり方で封鎖される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の通路(6、7、8)が、前記第1の通路(5、9、11)の封鎖後に、とりわけ、前記機能層(16)を貫通エッチングするプラズマエッチングプロセスによって製造される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS素子内の通路の封鎖方法に関する。
本発明はさらに、MEMS素子に関する。
本発明は任意のMEMS素子に全般的に適用可能ではあるが、柔軟なダイアフラムおよび規定の空洞内圧を有するMEMSマイクロフォンまたはMEMS圧力センサの形態でのMEMSセンサに関し、本発明を解説する。
【0002】
既知のMEMSセンサ、例えばMEMS圧力センサまたはMEMSマイクロフォン内では、少なくとも1つの柔軟なダイアフラムによって覆われた少なくとも1つの空洞が形成される。圧力に依存する、とりわけ周囲圧力に依存する柔軟なダイアフラムの変位変化は、例えば2つの電極間の容量変化によって検出され、その際、柔軟なダイアフラムが第1の電極であることができ、かつ第2の電極は、固定されたまたは剛性の対電極であることができる。MEMS圧力センサの製造中、なかでもダイアフラムを自由にするためにエッチング通路が必要とされ、これによりダイアフラムを全体的に自由にすることができる。その際にダイアフラムの下で生成される空洞内で規定の内圧を提供できるよう、この開口部は、その後のプロセスステップで再び封鎖されなければならない。
【背景技術】
【0003】
DE102015224520A1から、基板を備えた、および基板と結合しており、かつ基板と共に第1の空洞を包囲しているキャップを備えたマイクロメカニカル部品の製造方法が知られており、この場合、基板の主広がり平面に実質的に平行に走っており、かつ通路開口部のうち主広がり平面に実質的に垂直に形成された領域の、第1の空洞に面していない側に配置された第1の平面と、基板の主広がり平面に実質的に平行に走っており、かつ通路開口部のうち主広がり平面に実質的に垂直に形成された領域の、第1の空洞に面した側に配置された第2の平面との間での、基板またはキャップの、1つのプロセスステップ内で液状の集合状態に移行する材料領域により、通路開口部が実質的に完全に満たされる。
【0004】
DE102015224506A1から、基板を備えた、および基板と結合しており、かつ基板と共に第1の空洞を包囲しているキャップを備えたマイクロメカニカル部品の製造方法が知られており、この場合、第1の空洞内には、第1の圧力がかかっており、かつ第1の化学組成をもつ第1のガス混合物が封入されており、
- 第1のプロセスステップでは、基板内またはキャップ内で、第1の空洞をマイクロメカニカル部品の周囲とつなぐ通路開口部が形成され、
- 第2のプロセスステップでは、第1の空洞内の第1の圧力および/または第1の化学組成が調整され、
- 第3のプロセスステップでは、レーザを使ってエネルギーまたは熱を基板またはキャップの吸収性部分に導入することにより、通路開口部が封鎖され、その際、第3のプロセスステップの前に第1の空洞内に施されたゲッターが、レーザによって生成されたレーザ放射により、第3のプロセスステップ中に少なくとも部分的に活性化される。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、本発明は、
- 機能領域を有する機能層を提供するステップと、
- 機能層の機能領域の外にある第1の通路を使って、機能層の機能領域の下に空洞を製造するステップと、
- 第1の通路を封鎖するステップと、
- 機能層の機能領域の外で、空洞への第2の通路を製造するステップと、
- 第2の通路の領域内の封鎖材料を溶融するステップと、
- 第2の通路を封鎖するために、溶融した封鎖材料を冷却するステップと
を含む、MEMS素子内の通路の封鎖方法を提供する。
【0006】
さらなる一実施形態では、本発明は、機能層を有するMEMS素子を提供し、この機能層の機能領域の下に空洞が配置されており、この空洞は、機能層の機能領域の外に配置された少なくとも2つの封鎖された通路を有し、かつ両方の通路の少なくとも1つが、この少なくとも1つの通路の領域内の封鎖材料の溶融および続く溶融した封鎖材料の冷却によって封鎖されている。
【0007】
それによって達成される利点の1つは、これにより、とりわけエッチング通路のおよび/または換気もしくは排気通路の封鎖によって機能領域内の機能層の特性が変化しないことである。さらなる1つの利点は、通路を機能領域内に配置しなくてもよく、したがって機能領域が妨げられないことである。機能層の機能領域内に、追加的なおよび/または別の材料を配置しなくてもよいので、機能領域内では、機能層にとって、したがってMEMS素子の動作にとって、なかでも以下の利点が生じる。
【0008】
- 均一な熱膨張
- 均一な機械的特性
- 均一な層厚
さらなる1つの利点は高い柔軟性であり、というのも両方の通路は、任意の配置または形成において、機能領域の外に配置され得る。機能層の機能領域が、通路の1つによって完全にまたは部分的に制限される必要もない。言い換えれば、機能領域の形成および配置が通路の配置に左右されない。
【0009】
本発明のさらなる特徴、利点、およびさらなる実施形態を以下に説明し、またはこれによって開示する。
有利な一変形形態によれば、第2の通路の領域内に配置された封鎖材料の溶融がレーザ光線を使って行われ、かつ/または溶融すべき封鎖材料がレーザ光線を使って第2の通路の領域内に移動させられる。その利点は、簡単かつ同時に非常に確実に、溶融を局所的に制限でき、それにより機能領域内の機能層への悪影響が回避され得ることである。溶融すべき封鎖材料が、レーザ光線を使って第2の通路の領域内に移動させられる場合、これにより、封鎖材料を最初は第2の通路の直接的な領域の外に配置して、その後、レーザ光線を使って第2の通路へと、第2の通路を封鎖するために移動させることもできる。したがって封鎖材料を第2の通路の領域内に直接的に、手間をかけて正確に配置する必要はない。
【0010】
さらなる有利な一変形形態によれば、第2の通路の領域内の封鎖材料として、的確に追加的な材料が施される。その利点は、例えば通路領域内に既に存在している封鎖材料を利用しなくてもよいので、通路の封鎖のための材料選択の際の柔軟性が増すことである。さらなる1つの利点は、これにより、通路の領域内の封鎖材料と周囲材料の特に確実な結合を可能にする封鎖材料が選択され得ることである。
【0011】
さらなる有利な一変形形態によれば、溶融のための封鎖材料が、専ら第2の通路の周囲の周囲材料の形態で提供される。その利点は、これにより、第2の通路の領域内でさらなるおよび/または馴染みのない材料が必要とされないことである。
【0012】
さらなる有利な一変形形態によれば、溶融すべき封鎖材料が、レーザ光線を使って第2の通路の領域内に移動させられる。これにより、封鎖材料を最初は第2の通路の直接的な領域の外に配置して、その後、レーザ光線を使って第2の通路へと、第2の通路を封鎖するために移動させることもできる。したがって封鎖材料を第2の通路の領域内に直接的に、手間をかけて正確に配置する必要はない。
【0013】
さらなる有利な一変形形態によれば、封鎖材料が絶縁材料の形態で提供され、とりわけ封鎖材料が酸化シリコン、窒化シリコン、および/または酸窒化シリコンとして提供される。絶縁材料の利点は、それにより望ましくない導電結合が生成されないことである。さらなる1つの利点は、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、および酸窒化シリコンから成る組合せが使用される場合の高い柔軟性であり、なぜならそれぞれの成分量を外的条件に相応に合わせられるからである。
【0014】
さらなる有利な一変形形態によれば、第2の通路の領域内の封鎖材料として、溶融時に共融混合物を形成するための層系が配置される。例えばレーザを使った加熱により、溶融工程の際に共融混合物が形成され、この共融混合物により、通路が簡単に封鎖され得る。これは、例えばAu/Si層系またはAl/Ge層系であり得る。局所的な融体を形成するために、レーザを局所的な加熱に用いることができる。的確に選択された層の組合せにより、封鎖材料の融点を局所的に低くできるので、全面的に加熱する方法を実施することも考えられる。この場合に形成される液相、つまり共融混合物は、凝固した後通路の確実な封鎖をもたらす。
【0015】
さらなる有利な一変形形態によれば、機能領域が柔軟なダイアフラムとして提供される。これにより、非常に確実に働くMEMS圧力センサまたはその類似物が簡単に提供され得る。
【0016】
さらなる有利な一変形形態によれば、第2の通路が、空洞から横方向には、第1の通路の外で製造され、または第2の通路が、空洞から横方向には、空洞と第1の通路の間で製造される。第1の通路の外に第2の通路を配置する場合の利点は、第2の通路の簡単な製造である。空洞と第1の通路の間に第2の通路を配置する場合の利点は、両方の通路のコンパクトな配置である。
【0017】
さらなる有利な一変形形態によれば、第1の通路が、機能領域を少なくとも部分的に取り巻く溝の形態で製造される。その利点は、溝構造により、およびさらなる横向きのエッチング流路の任意選択の使用により、柔軟なダイアフラムの下にある空洞を確実にあけ得ることである。
【0018】
さらなる有利な一変形形態によれば、第2の通路が、第1の通路の封鎖領域内で製造される。この場合、概念「封鎖領域」は、通路のうち封鎖されるよう形成されたおよび/または設けられた領域のことである。それによって達成される利点の1つは、第2の通路が、第1の通路の封鎖部の上または中の一領域内で製造され、よって第2の通路が、追加的な横流路なしで、第1の通路を介して空洞と直接つながることである。それによってさらに達成される利点の1つは、空洞への横流路構造を備えた別々の完全な通路が製造されなければならないのではなく、第1の通路の領域内の封鎖されていない区間または第1の通路の封鎖後に第1の通路の領域内で的確に施された第2の通路が、空洞への出入りを可能にするために利用され得ることである。
【0019】
さらなる有利な一変形形態によれば、第2の通路が、第1の通路の開口部の横断面より小さな横断面の開口部を有して形成される。その利点は、これにより、小さな通路孔だけが封鎖されていればよく、例えば柔軟なダイアフラムを完全に取り巻く溝が封鎖されなくてもよいことである。その際、第2の通路の横断面の形状は任意に選択でき、とりわけ、この横断面の形状は円形に形成される。
【0020】
さらなる有利な一変形形態によれば、第2の通路が、第1の通路の開口部の封鎖されていない区間によって、および/または封鎖された第1の通路の部分的な開口によって形成される。その利点は、設定条件に応じた第2の通路の柔軟な形成である。
【0021】
さらなる有利な一変形形態によれば、第2の通路が、横流路によって、およびとりわけ第1の通路を介して空洞とつながれる。これにより空洞内では、第1の通路の封鎖後に、的確に規定の空洞内圧が調整され得る。言い換えれば、空洞内圧は、第1の通路の封鎖プロセスに左右されるのではなく、第2の通路の封鎖の際に調整され得る。これにより柔軟性が増し、つまり、第1の通路の封鎖プロセスの際のプロセスパラメータである圧力に関する制限がない。これにより、第1の通路のために、明らかにより多数の可能な封鎖プロセスが生じる。横流路が、例えばMEMS層構造の最下層の真上に構成されるのではなく、例えば最下層に対して間隔をあけて配置される場合、柔軟性がさらに増す。これにより、例えばおよびとりわけ層構造および使用される層材料に依存して、横流路が、層構造のうち、設計およびプロセスに起因する制約に従って簡単に組み込まれ得る平面内で実現され得る。
【0022】
さらなる有利な一変形形態によれば、第1の通路が、第2の通路と同じやり方で封鎖される。これは、両方の通路の簡単で確実な封鎖を可能にする。
さらなる有利な一変形形態によれば、第2の通路が、第1の通路の封鎖後に、とりわけ、機能層を貫通エッチングするプラズマエッチングプロセスによって製造される。これにより第2の通路が、簡単に速く、柔軟なダイアフラムを損傷させることなく製造され得る。
【0023】
本発明のさらなる重要な特徴および利点は、従属請求項から、図面から、およびそれに帰属する図面による図の説明から明らかである。
上で挙げたおよび下でさらに解説する特徴を、それぞれ提示した組合せだけでなく、別の組合せでまたは単独でも、本発明の枠を逸脱することなく使用可能であることは自明である。
【0024】
本発明の好ましい実施および実施形態を図面に示しており、かつ以下の説明においてより詳しく解説し、その際、同じ符号は、同じまたは類似のまたは機能的に同じ部品または要素に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態によるMEMS素子の平面図および断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるMEMS素子の平面図および断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるMEMS素子の平面図および断面図である。
【
図4】本発明の実施形態によるMEMS素子の平面図および断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態による方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1および
図2ではそれぞれ、左側には、第1の通路の封鎖後で第2の通路の封鎖前の、2つの通路を備えたMEMS素子の平面図を上におよび断面図を下に示しており、かつ右側には、第1および第2の通路の封鎖後のMEMS素子の平面図を上におよび断面図を下に示している。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態によるMEMS素子を平面図および断面図で示している。
詳しくは
図1では、機能層16を有するMEMS素子1が概略的な形態で示されている。機能層16は、測定ダイアフラムの形態で形成された機能領域2を有する。機能層16の下にはさらなる層12、13、15が重なり合って配置されており、したがってMEMS素子1は全体として層構造を有している。機能領域2の下に空洞4が配置されており、空洞4は層13、15を中断しており、かつ下へは層12によって閉じられている。この場合、層12は、基板上の層または基板自体と解釈でき、例えばシリコンウエハから成り得る。この空洞4は、この場合、ダイアフラム面の外、つまり機能領域2の外に配置されて周りを取り巻いているとりわけスリット状の溝5を介し、および一緒に空洞4用のエッチング通路として役立つ横向きに配置されたエッチング流路9を介して、開口部11とつながっている。つまりこの場合、開口部11を有する溝5はエッチング流路9と一緒に、空洞4への第1の通路を構成している。溝5の開口部11と、溝5と、エッチング流路9とを介し、例えば気相エッチング法を使って空洞4から犠牲材料が除去され得る。その代わりに湿式化学エッチング法によっても空洞4から犠牲材料が除去され得る。
【0028】
MEMS素子1はさらに、機能層16の下で層構造内に配置された少なくとも1つのさらなる横に走る流路6を有している。この横流路6は空洞4とつながっている。
図1では、横に走る流路6は層13内に配置されている。周りを取り巻いている溝5の開口部11が封鎖材料3で、例えば酸化シリコンによって封鎖された後、続いて機能領域2の外の領域内で、開口部8を有する鉛直通路7が横流路6に付設され、したがって空洞4は、横流路6と、鉛直通路7と、その開口部8とを介して換気または排気され得る。したがって横流路6と、開口部8を有する鉛直通路7とが、空洞4への第2の通路を構成している。開口部8を有する鉛直通路7の付設は、例えば、埋没している横流路6への鉛直方向での結合を確立するために、機能領域2の外にある機能層16を相応に貫通エッチングするプラズマエッチングプロセスによって行うことができる。
図1では開口部8は、空洞4から横方向には、溝5の開口部11の外に配置されている。その代わりに開口部8が、横方向には、空洞4と溝5の開口部11との間に配置されていてもよい。開口部8は、ここでは通路孔の形態で形成されている。さらに、機能領域2の下では、例えば柔軟なダイアフラムとしての機能領域2の形成の際に柔軟なダイアフラムの局所的な補強に役立つ補強要素またはその類似物が、機能層16に設けられ得る(
図1には示していない)。機能領域2の下では、MEMS素子1の機能および動作のために使用されるさらなる半導体回路コンポーネントおよび/またはMEMSコンポーネントも配置され得る(
図1には示していない)。さらにその代わりにまたはそれに加えて、空洞4への第2の通路6、7、8の開口部8が、窒化シリコンで、または酸化シリコン、窒化シリコン、および/もしくは酸窒化シリコンから成る多層の層系で封鎖され得る。溝5の開口部11および/または鉛直通路7の上部領域もしくは開口部8を封鎖するために、酸化シリコンシール、窒化シリコンシール、酸窒化シリコンシール、酸化物層と窒化物層と酸窒化物層との組合せから成るシールが使用でき、または例えば500nm~700nmの間および/もしくは900nm~1200nmの間の波長をもつレーザ源によるレーザ再シールプロセスも使用でき、すなわち、鉛直通路7の開口部8および/または溝5の開口部11の領域内の封鎖材料の局所的な溶融および続く冷却により、鉛直通路7または溝5が封鎖される。その際、機能領域2全体、つまりここの
図1ではダイアフラム面全体は、さらなる窒化シリコン層で覆われ得る。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態によるMEMS素子を平面図および断面図で示している。
図2では、実質的に
図1によるMEMS素子1が示されている。
図1によるMEMS素子1とは異なり
図2によるMEMS素子1では、機能層16上の、鉛直通路7の開口部8の領域内で、追加的に封鎖材料10が配置されており、この封鎖材料10は、例えばレーザを使った溶融および続く冷却により、鉛直通路7の気密封鎖を可能にする。封鎖材料10を溝5の開口部11の領域内に施して、例えばレーザを使って溶融することも考えられる。こうして続く冷却により、溝5の気密封鎖も提供され得る。
【0030】
層15上に配置された機能層16は、10nm~500μmの間の厚さを有することができ、かつ多結晶または単結晶シリコンから製造され得る。機能層16の厚さが100nm~2500nmの間であり得ることが好ましい。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態によるMEMS素子を平面図および断面図で示している。
図3では、実質的に
図1によるMEMS素子1が示されている。
図1によるMEMS素子1とは異なり
図3によるMEMS素子1では、横流路6を備えた鉛直通路7が配置されているのではなく、鉛直通路7が、溝5の上に配置されている機能層16内に、空洞4の換気/排気のために付設される。その後、鉛直通路7の上部領域または通路孔8が相応に再び封鎖される。
【0032】
この場合、溝5は、機能層16の下で、その下に配置されている層13、15内にまたは層13、15のうちの1つ内に配置されている。つまり上で述べたように機能層16内に、溝5の領域内で、機能層16の表面から溝5内にまで延びている少なくとも1つの鉛直通路7が、例えばプラズマエッチングプロセスによって付設される場合、この鉛直通路7は、一方では空洞領域4から材料を除去するために利用でき、他方では空洞4を規定通りに換気または排気するために役立ち得る。少なくとも1つの鉛直通路7の封鎖は、上で既に述べたように、例えば酸化シリコンシール、窒化シリコンシール、酸窒化シリコンシール、酸化物層と窒化物層の組合せから成るシールによって行うことができ、またはレーザ再シールプロセスによっても行うことができ、その際、鉛直通路7の上部領域の中または鉛直通路7の開口部8の縁、上、および/もしくは中の材料の局所的な溶融および続く冷却により、鉛直通路7の封鎖が行われ得る。ここでもまた、追加的な封鎖材料10を、それで鉛直通路7を封鎖するために、機能層16上で、鉛直通路7の上部領域の中または鉛直通路7の開口部8の縁、上、および/もしくは中に、周辺に施すことが考えられる。
【0033】
図4は、本発明の実施形態によるMEMS素子を断面図で示している。
図4の上および
図4の下ではそれぞれ
図1によるMEMS素子1が示されている。
図1によるMEMS素子1とは異なり
図4によるMEMS素子1では、鉛直通路7と空洞4をつなぐためのそれぞれの横流路6が、最下層12からの異なる高さで配置されており、詳しくは、空洞4のエッチング通路および/または換気/排気を達成し得るために、空洞4とつながっている溝5の部分領域およびエッチング流路9が利用されるように配置されている。言い換えれば、空洞4の製造および/または換気/排気は、エッチング流路9と、溝5と、溝5に結合した横流路6と、鉛直通路7およびその開口部8とを介して行われる。溝5自体は、機能層16の領域内で封鎖されている。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態による方法のステップを示している。
図5では、MEMS素子内の通路の封鎖方法のステップが示されている。この方法は以下のステップを含む。
【0035】
第1のステップS1では、機能領域を有する機能層の提供が行われる。
さらにその後のステップS2では、機能層の機能領域の下の空洞の製造が、機能層の機能領域の外にある第1の通路を使って行われる。
【0036】
さらにその後のステップS3では、第1の通路の封鎖が行われる。
さらにその後のステップS4では、機能層の機能領域の外で、空洞への第2の通路の製造が行われる。
【0037】
さらにその後のステップS5では、第2の通路の領域内の封鎖材料の溶融が行われる。
さらにその後のステップS6では、第2の通路を封鎖するために、溶融した封鎖材料の冷却が行われる。
【0038】
まとめると、本発明の実施形態の少なくとも1つは、以下の利点の少なくとも1つを有する。
・ とりわけ10nm~500μmの間の範囲内、とりわけ約2μmの薄い層の簡単で確実な封鎖。
【0039】
・ 簡単な実装。
・ 安価な実装。
・ 通路の配置に関するより高い柔軟性。
【0040】
・ 機能領域の特性が封鎖によって変化しない。
・ 機能領域の領域内に通路がなく、したがってこの領域を妨げない。
・ 機能層の機能領域内に追加的なおよび/または別の材料がなく、したがって均一な熱膨張および均一な機械的特性。
【0041】
・ 封鎖プロセスに起因する機能領域内の厚さ変動の回避。
・ 内圧調整が第1の封鎖プロセスに左右されない。
本発明を好ましい例示的実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、この例示的実施形態に限定されるのではなく、多種多様なやり方で改変可能である。よって例えば複数の第2の通路が製造され得る。これらの第2の通路は、同じまたは異なる方法を使って封鎖され得る。