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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】超音波内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20230209BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
A61B8/12
A61B1/00 530
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021555647
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2019044202
(87)【国際公開番号】W WO2021095108
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-204642(JP,A)
【文献】特許第4488203(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の長手方向を揃えて円筒状に配列されており、超音波をそれぞれ送受信する複数の圧電素子と、
前記圧電素子の外周に位置し、前記圧電素子が発生した超音波を外部において収束させるとともに、外部から入射した超音波を前記圧電素子に伝達する音響レンズと、
前記圧電素子及び前記音響レンズの先端側及び基端側を保持するハウジングと、
前記音響レンズの先端又は基端と前記ハウジングとの間に位置し、前記音響レンズよりも弾性率が低い軟性部材と、
を備える超音波内視鏡。
【請求項2】
前記軟性部材は、前記音響レンズの先端および前記ハウジングの間と、前記音響レンズの基端および前記ハウジングの間とに位置する請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項3】
前記円筒の径方向において、前記軟性部材の厚さは、前記音響レンズの厚さ以上である請求項1又は2に記載の超音波内視鏡。
【請求項4】
被検体に照明光を照射する照明部と、
前記被検体からの反射光を受光する撮像素子を有する撮像部と、
を備える請求項1~3のいずれか1つに記載の超音波内視鏡。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記音響レンズの先端側又は基端側を収容する凹部を有し、
前記軟性部材は、前記凹部に配置されている請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項6】
前記軟性部材は、前記凹部の内面と前記音響レンズとに当接している請求項5に記載の超音波内視鏡。
【請求項7】
前記軟性部材は、ゲル又はゴムにより形成されている請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項8】
前記軟性部材は、前記音響レンズにかかる応力を緩和する請求項1に記載の超音波内視鏡。
【請求項9】
前記軟性部材は、前記音響レンズの基端と前記音響レンズの先端とを結ぶ直線に沿った方向にかかる応力を緩和する請求項8に記載の超音波内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子が円筒状に配列されているラジアル型の超音波内視鏡が用いられている(例えば、特許文献1参照)。圧電素子から放射された超音波は、圧電素子の外周に位置する音響レンズを経由して被検体内に照射される。音響レンズは、シリコーン等の軟性の材料からなる。圧電素子や音響レンズは、ハウジングに保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4488203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音響レンズの先端側及び基端側は、ハウジングに当接している。ハウジングを組み付ける際に、ハウジングから音響レンズに応力がかかり、この応力により音響レンズが変形し、超音波観察性能が劣化する場合があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ラジアル型の超音波内視鏡において、音響レンズに応力がかかることによる超音波観察性能の劣化を防止した超音波内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る超音波内視鏡は、各々の長手方向を揃えて円筒状に配列されており、超音波をそれぞれ送受信する複数の圧電素子と、前記圧電素子の外周に位置し、前記圧電素子が発生した超音波を外部において収束させるとともに、外部から入射した超音波を前記圧電素子に伝達する音響レンズと、前記圧電素子及び前記音響レンズの先端側及び基端側を保持するハウジングと、前記音響レンズの先端又は基端と前記ハウジングとの間に位置し、前記音響レンズよりも弾性率が高い軟性部材と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る超音波内視鏡は、前記軟性部材は、前記音響レンズの先端および前記ハウジングの間と、前記音響レンズの基端および前記ハウジングの間とに位置する。
【0008】
また、本発明の一態様に係る超音波内視鏡は、前記円筒の径方向において、前記軟性部材の厚さは、前記音響レンズの厚さ以上である。
【0009】
また、本発明の一態様に係る超音波内視鏡は、被検体に照明光を照射する照明部と、前記被検体からの反射光を受光する撮像素子を有する撮像部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ラジアル型の超音波内視鏡において、音響レンズに応力がかかることによる超音波観察性能の劣化を防止した超音波内視鏡を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る超音波内視鏡を含む超音波内視鏡を模式的に示す図である。
図2図2は、図1に示す超音波内視鏡の挿入部の先端の斜視図である。
図3図3は、図1に示す超音波内視鏡の挿入部の先端を拡大した断面図である。
図4図4は、図3の領域Aの部分拡大図である。
図5図5は、図3の領域Bの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して本発明に係る超音波内視鏡の実施の形態を説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。本発明は、ラジアル型の超音波振動子を備える超音波内視鏡一般に適用することができる。
【0013】
また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
(実施の形態)
〔超音波内視鏡システムの概略構成〕
図1は、実施の形態に係る超音波内視鏡を含む超音波内視鏡を模式的に示す図である。本実施の形態に係る超音波内視鏡システム1は、超音波内視鏡を用いて人等の被検体内の超音波診断を行うシステムである。この超音波内視鏡システム1は、図1に示すように、超音波内視鏡2と、超音波観測装置3と、内視鏡観察装置4と、表示装置5と、光源装置6と、を備える。
【0015】
超音波内視鏡2は、レンズ等で構成される観察光学系及び撮像素子を有する内視鏡観察部に超音波プローブを組み合わせたものであり、内視鏡観察機能及び超音波観測機能を有する。超音波内視鏡2は、挿入部を挿入する方向に直交する方向を超音波観測するラジアル型の超音波内視鏡である。
【0016】
超音波内視鏡2は、その先端に、超音波観測装置3から送信された電気的なパルス信号を超音波パルス(音響パルス)に変換して被検体へ照射するとともに、被検体で反射された超音波エコーを電圧変化で表現する電気的なエコー信号に変換して出力する超音波振動子を有する。超音波振動子の構成については、後述する。
【0017】
超音波内視鏡2は、被検体に照明光を照射する照明部と、被検体からの反射光を受光する撮像部と、を有する。照明部は、光学撮像時に被検体へ照射する照明光を超音波内視鏡2の先端に導くライトガイドを有する。このライトガイドは、先端が超音波内視鏡2の被検体への挿入部の先端まで達している一方、基端部が照明光を発生する光源装置6に接続されている。撮像部は、撮像光学系及び撮像素子を有し、被検体の消化管(食道、胃、十二指腸、大腸)、又は呼吸器(気管、気管支)へ挿入され、消化管や、呼吸器の撮像を行うことが可能である。また、超音波内視鏡2は、その周囲臓器(膵臓、胆嚢、胆管、膵管、リンパ節、縦隔内の臓器、血管等)を、超音波を用いて撮像することが可能である。
【0018】
超音波観測装置3は、超音波ケーブル31を経由して超音波内視鏡2に電気的に接続し、超音波ケーブル31を経由して超音波内視鏡2にパルス信号を出力するとともに超音波内視鏡2からエコー信号が入力される。そして、超音波観測装置3は、当該エコー信号に所定の処理を施して超音波画像を生成する。
【0019】
内視鏡観察装置4は、ビデオケーブル41を経由して超音波内視鏡2に電気的に接続し、ビデオケーブル41を経由して超音波内視鏡2からの画像信号が入力される。そして、内視鏡観察装置4は、当該画像信号に所定の処理を施して内視鏡画像を生成する。
【0020】
表示装置5は、液晶又は有機EL(Electro Luminescence)等を用いて構成され、超音波観測装置3にて生成された超音波画像や、内視鏡観察装置4にて生成された内視鏡画像等を表示する。
【0021】
光源装置6は、ライトガイドを経由して照明光を超音波内視鏡2に供給する。
【0022】
〔超音波内視鏡の構成〕
超音波内視鏡2は、図1に示すように、挿入部21と、操作部22と、ユニバーサルコード23と、コネクタ24と、を備える。なお、以下に記載する「先端」は、挿入部21を被検体内に挿入する方向の先端側に位置する端部を意味する。また、以下に記載する「基端」は、挿入部21を被検体内に挿入する方向の先端と反対側(操作部22側)に位置する端部を意味する。
【0023】
挿入部21は、被検体内に挿入される管状の部分である。この挿入部21は、図1に示すように、挿入部21の先端に位置する超音波振動子211と、超音波振動子211の基端側に連結され湾曲可能とする湾曲部212と、湾曲部212の基端側に連結され可撓性を有する可撓管部213と、を備える。挿入部21の先端の構成については、後述する。
【0024】
超音波振動子211は、挿入部21の長手方向と垂直な方向に超音波を照射する。超音波振動子211は、後述する複数の圧電素子を有し、送受信にかかわる圧電素子を電子的に切り替えたり、各圧電素子の送受信に遅延をかけたりすることで、電子的に走査させる。超音波振動子211は、パルス信号の入力によって圧電素子が振動することで被検体内に超音波を照射する。また、被検体により反射された超音波が圧電素子に伝えられると、伝達された超音波により圧電素子が振動し、圧電素子が該振動を電気的な信号(エコー信号)に変換する。このエコー信号は、超音波ケーブル31等を経由して超音波観測装置3に送信される。
【0025】
操作部22は、挿入部21の基端側に連結され、医師等からの各種操作を受け付ける部分である。この操作部22は、図1に示すように、湾曲部212を湾曲操作するための湾曲ノブ221と、各種操作を行うための複数の操作部材222と、を備える。また、操作部22には、処置具用挿通路に処置具を挿通するための処置具挿入口223が形成されている。
【0026】
ユニバーサルコード23は、操作部22から延在し、各種信号を伝送する複数の信号ケーブル、及び光源装置6から供給された照明光を伝送する光ファイバ等が配設されたケーブルである。
【0027】
コネクタ24は、ユニバーサルコード23の先端に設けられている。そして、コネクタ24は、超音波ケーブル31、ビデオケーブル41、及び光源装置6がそれぞれ接続される第1~第3コネクタ部241~243を備える。
【0028】
〔挿入部の先端の構成〕
図2は、図1に示す超音波内視鏡の挿入部の先端の斜視図である。図2に示すように、挿入部21の先端には、被検体に光源装置6からの照明光を照射する照明部2121と、被検体からの反射光を受光する撮像素子を有する撮像部2122と、吸引口を兼ねる鉗子口2123と、図示しない送気送水ノズルと、が配設されている。
【0029】
図3は、図1に示す超音波内視鏡の挿入部の先端を拡大した断面図である。超音波内視鏡2は、図3に示すように、圧電素子2111と、先端側ハウジング2112と、基端側ハウジング2113と、音響レンズ2114と、先端側軟性部材2115と、基端側軟性部材2116と、第1音響整合層2117と、第2音響整合層2118と、バッキング材2119と、を備える。
【0030】
複数の圧電素子2111は、長尺状をなし、各々の長手方向(図3の紙面に沿った左右方向)を揃えて円筒状に配列されている。複数の圧電素子2111は、超音波をそれぞれ送受信する。具体的には、各圧電素子2111は、電気的なパルス信号を音響パルスに変換して被検体へ照射するとともに、被検体にて反射された超音波エコーを電圧変化によって表現する電気的なエコー信号に変換してから出力する。
【0031】
先端側ハウジング2112は、圧電素子2111及び音響レンズ2114の先端側を保持する。先端側ハウジング2112は、樹脂、金属又は合金等の硬性の材料を用いて形成されている。先端側ハウジング2112は、基端側ハウジング2113と一体的に構成されていてもよいが、基端側ハウジング2113と別体として構成されていてもよい。
【0032】
基端側ハウジング2113は、圧電素子2111及び音響レンズ2114の基端側を保持する。
【0033】
音響レンズ2114は、圧電素子2111の外周に位置し、圧電素子2111が発生した超音波を外部において収束するとともに、外部から入射した超音波を圧電素子2111に伝達する。音響レンズ2114は、シリコーン等の軟性の材料により形成され、一方の面が凸状又は凹状をなして超音波を絞る機能を有し、第2音響整合層2118を通過した超音波を外部に出射したり、外部からの超音波エコーを取り込んだりする。
【0034】
図4は、図3の領域Aの部分拡大図である。図4に示すように、先端側軟性部材2115は、音響レンズ2114の先端と先端側ハウジング2112との間に位置し、音響レンズ2114よりも弾性率が高い。具体的には、先端側軟性部材2115は、ゲル等の弾性体やゴム等の軟性部材からなる。
【0035】
図5は、図3の領域Bの部分拡大図である。図5に示すように、基端側軟性部材2116は、音響レンズ2114の基端と基端側ハウジング2113との間に位置し、音響レンズ2114よりも弾性率が高い。具体的には、基端側軟性部材2116は、ゲル等の弾性体やゴム等の軟性部材からなる。
【0036】
第1音響整合層2117及び第2音響整合層2118は、圧電素子2111と被検体との間にて超音波を効率よく透過させるために、圧電素子2111の音響インピーダンスと被検体の音響インピーダンスとをマッチングさせる。
【0037】
バッキング材2119は、減衰率の大きい材料、例えば、アルミナやジルコニア等のフィラーを分散させたエポキシ樹脂や、上述したフィラーを分散したゴムを用いて形成されており、圧電素子2111の動作によって生じる不要な超音波振動を減衰させる。
【0038】
以上説明したように、実施の形態によれば、先端側ハウジング2112と音響レンズ2114との間に先端側軟性部材2115が配置されていることにより、先端側ハウジング2112から音響レンズ2114にかかる応力が緩和されている。同様に、基端側ハウジング2113と音響レンズ2114との間に基端側軟性部材2116が配置されていることにより、基端側ハウジング2113から音響レンズ2114にかかる応力が緩和されている。その結果、応力により音響レンズ2114が変形することが防止されており、超音波内視鏡2の超音波性能が劣化することが防止されている。
【0039】
なお、円筒状の圧電素子2111の径方向において、先端側軟性部材2115及び基端側軟性部材2116の厚さは、音響レンズ2114の厚さ以上であることが好ましい。径方向において、先端側軟性部材2115及び基端側軟性部材2116の厚さが音響レンズ2114の厚さ以上であると、先端側ハウジング2112又は基端側ハウジング2113から音響レンズ2114にかかる応力を緩和する効果が高い。なお、音響レンズ2114の厚さとは、音響レンズ2114が先端側軟性部材2115及び基端側軟性部材2116に接している端部の厚さである。
【0040】
また、上述した実施の形態では、先端側ハウジング2112と音響レンズ2114との間、及び基端側ハウジング2113と音響レンズ2114との間の双方に軟性部材が位置する例を説明したが、軟性部材は、音響レンズ2114の先端又は基端のいずれか一方とハウジングとの間に配置されていてもよい。この場合、軟性部材が配置された部分において、ハウジングから音響レンズ2114にかかる応力が緩和される。
【0041】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表し、かつ記述した特定の詳細及び代表的な実施の形態に限定されるものではない。従って、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 超音波内視鏡システム
2 超音波内視鏡
3 超音波観測装置
4 内視鏡観察装置
5 表示装置
6 光源装置
21 挿入部
22 操作部
23 ユニバーサルコード
24 コネクタ
31 超音波ケーブル
41 ビデオケーブル
211 超音波振動子
212 湾曲部
213 可撓管部
221 湾曲ノブ
222 操作部材
223 処置具挿入口
241~243 第1~第3コネクタ部
2111 圧電素子
2112 先端側ハウジング
2113 基端側ハウジング
2114 音響レンズ
2115 先端側軟性部材
2116 基端側軟性部材
2117 第1音響整合層
2118 第2音響整合層
2119 バッキング材
2121 照明部
2122 撮像部
2123 鉗子口
図1
図2
図3
図4
図5