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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】水素生成装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20230210BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20230210BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20230210BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230210BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20230210BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20230210BHJP
【FI】
C01B3/38
H01M8/0612
H01M8/04225
H01M8/04746
H01M8/0432
H01M8/04701
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019100851
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020193129
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】田口 清
(72)【発明者】
【氏名】飯山 繁
(72)【発明者】
【氏名】楠山 貴広
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 康章
(72)【発明者】
【氏名】武田 憲有
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-147716(JP,A)
【文献】特開2006-107945(JP,A)
【文献】特開2011-032133(JP,A)
【文献】特開2014-189477(JP,A)
【文献】特開2006-164953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 3/58
H01M 8/0612
H01M 8/04225
H01M 8/04746
H01M 8/0432
H01M 8/04701
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系の原料と水とから水素含有ガスを生成する改質触媒が充填された改質器と、
前記改質器に前記原料を供給する原料供給器と、
前記改質器に前記水を供給する水供給器と、
前記改質器を加熱する加熱器と、
前記改質器に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給器と、
制御器と、を備えた水素生成装置であって、
前記制御器は、
前記水素生成装置の起動工程において、前記加熱器と前記原料供給器と前記二酸化炭素供給器とを動作させることによって、前記改質器を昇温し、前記昇温によって水供給開始条件を満たすと、前記水供給器を動作させてから、前記二酸化炭素供給器を停止させることを特徴とする、水素生成装置。
【請求項2】
炭化水素系の原料と水とから水素含有ガスを生成する改質触媒が充填された改質器と、
前記改質器に前記原料を供給する原料供給器と、
前記改質器に前記水を供給する水供給器と、
前記改質器を加熱する加熱器と、
前記改質器に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給器と、を備えた水素生成装置の運転方法であって、
前記水素生成装置の起動工程において、前記加熱器と前記原料供給器と前記二酸化炭素供給器とを動作させることによって、前記改質器を昇温し、前記昇温によって水供給開始条件を満たすと、前記水供給器を動作させてから、前記二酸化炭素供給器を停止させることを特徴とする、水素生成装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を改質して水素含有ガスを生成する水素生成装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の発電時の燃料として用いる水素含有ガスは、未だ、一般的なインフラガスとして整備されていない。このため、燃料電池システムは、改質器を有する水素生成装置を備える。改質器では、一般的なインフラである都市ガス、液化石油ガス、あるいは天然ガス等の炭化水素である原料から、水素含有ガスが改質反応により生成される。
【0003】
改質反応は、例えば、水蒸気改質反応が用いられている。この水蒸気改質反応では、原料となる炭化水素と水蒸気とをNi系、Ru系またはRh系等の改質触媒を用いて、600℃~700℃程度の高温で反応させることにより、水素を主成分とした水素含有ガスを生成する。例えば原料の炭化水素がメタンの場合は、(化1)と(化2)に示す反応が進行し、水素含有ガスが生成する。
【0004】
【化1】
【0005】
【化2】
改質器から生成される水素含有ガスには水素と同時に生成される一酸化炭素(CO)が含まれるため、改質器の後段に設けられたCO低減器によってCO濃度を低減する。
【0006】
改質器を水蒸気改質反応に必要な温度にするため、加熱器で改質器を加熱する。加熱器では、改質器から排出され燃料電池で利用されなかった可燃ガスを含むオフガスや、炭化水素の燃料を供給して燃焼させる。
【0007】
通常は改質器では約700℃、CO低減器では約300℃とすることが一般的である。このように改質器、CO低減器の触媒に最適な温度に制御するためには、最も温度を高くする必要がある改質部の近傍に加熱器を設置する。
【0008】
また、改質器、およびCO低減器には触媒が充填されていることから熱容量が大きく、昇温させて温度の安定化を図るためには、かなりの時間を要する。そのため、水素生成装置の起動直後には、加熱器による加熱量を少しでも増加させ、改質器の昇温時間を短くするようにすることが一般的である。
【0009】
従来、この種の水素生成装置は、炭化水素系の原料と水とから水素含有ガスを生成する水素発生装置の起動工程で、加熱器を動作させて改質器とCO低減器を昇温させる時に、改質器への水の供給を開始する前に、原料を改質器に供給して、改質器で加熱された原料の熱をCO低減器の昇温に利用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2001-354401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の水素生成装置では、起動工程で、改質器を加熱器で加熱しながら改質器に原料を供給して、改質器を昇温させている時に、改質器内の改質触媒が所定の温度を超えると、改質触媒で原料が分解して炭素が析出し、改質触媒が劣化するという課題を有していた。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、水素生成装置の起動時における改質触媒での炭素析出による改質触媒の劣化を抑制した水素生成装置及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
【0014】
改質器に原料が供給され、改質器に水が供給されていない状態で、改質触媒が所定の温度を超えた場合に、(化3)に示す反応が進行し、改質触媒に炭素が析出して劣化が進行し易くなる。
【0015】
【化3】
ここで、改質触媒に原料の他に二酸化炭素が供給された場合に、(化4)と(化5)に示す反応が進行し易くなることで、炭素析出が抑制される。
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
そこで、本発明者は、水素生成装置の起動工程において、改質器を加熱器で加熱する時に、改質器に原料の他に二酸化炭素を供給することで、改質触媒への炭素析出を抑制することができることを想到した。
【0018】
従来の課題を解決するために、本発明の水素生成装置は、炭化水素系の原料と水とから水素含有ガスを生成する改質触媒が充填された改質器と、改質器に原料を供給する原料供給器と、改質器に水を供給する水供給器と、改質器を加熱する加熱器と、改質器に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給器と、制御器と、を備えた水素生成装置であって、制御器が、水素生成装置の起動工程において、加熱器と原料供給器と二酸化炭素供給器とを動作させることによって、改質器を昇温し、この昇温によって水供給開始条件を満たすと、水供給器を動作させてから、二酸化炭素供給器を停止させるのである。
【0019】
これによって、起動時における改質触媒で原料の炭化水素の熱分解による炭素析出の反
応の進行が二酸化炭素により抑えられるため、改質触媒での炭素析出による改質触媒の劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、起動時における改質触媒での炭素析出による改質触媒の劣化を抑制でき、長期間安定に運転できる水素生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1における水素生成装置の構成を示すブロック図
図2】本発明の実施の形態1における水素生成装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の本発明は、炭化水素系の原料と水とから水素含有ガスを生成する改質触媒が充填された改質器と、改質器に原料を供給する原料供給器と、改質器に水を供給する水供給器と、改質器を加熱する加熱器と、改質器に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給器と、制御器と、を備えた水素生成装置であって、制御器が、水素生成装置の起動工程において、加熱器と原料供給器と二酸化炭素供給器とを動作させることによって、改質器を昇温し、この昇温によって水供給開始条件を満たすと、水供給器を動作させてから、二酸化炭素供給器を停止させることを特徴とする水素生成装置である。
【0023】
この構成によって、起動時における改質触媒で原料の炭化水素の熱分解による炭素析出の反応の進行が二酸化炭素により抑えられるため、改質触媒での炭素析出による改質触媒の劣化を抑制できる。
【0024】
第2の本発明は、炭化水素系の原料と水とから水素含有ガスを生成する改質触媒が充填された改質器と、改質器に原料を供給する原料供給器と、改質器に水を供給する水供給器と、改質器を加熱する加熱器と、改質器に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給器と、を備えた水素生成装置の運転方法であって、水素生成装置の起動工程において、加熱器と原料供給器と二酸化炭素供給器とを動作させることによって、改質器を昇温し、この昇温によって水供給開始条件を満たすと、水供給器を動作させてから、二酸化炭素供給器を停止させることを特徴とする水素生成装置の運転方法である。
【0025】
この運転方法によって、起動時における改質触媒で原料の炭化水素の熱分解による炭素析出の反応の進行が二酸化炭素により抑えられるため、改質触媒での炭素析出による改質触媒の劣化を抑制できる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における水素生成装置の構成を示すブロック図である。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態の水素生成装置41は、改質器1と、加熱器2と、CO低減器3と、原料供給流路4、原料供給器5と、水供給器6と、燃料供給流路7と、燃料供給器8と、空気供給器9と、二酸化炭素供給流路10と、二酸化炭素供給器11と、水素含有ガス供給流路12と、水素含有ガス供給流路開閉弁13と、排気流路14と、排気流路開閉弁15と、温度検知器16と、制御器31とを備えている。また、水素含有ガス供給流路開閉弁13の出口は、水素利用機器である燃料電池51に接続されている。
【0029】
改質器1は、炭化水素系の原料及び水蒸気を用いて改質反応により水素含有ガスを生成する。原料は、本実施の形態では、メタンを主成分とする都市ガスを用いた。本実施の形
態の改質反応は、都市ガスと水蒸気を反応させる水蒸気改質を用いた。改質器1の内部には改質触媒(図示せず)が搭載さている。
【0030】
加熱器2は、水蒸気改質反応に適した温度になるように改質器1を加熱する燃焼器である。
【0031】
CO低減器3は、改質器1から排出された水素含有ガスに含まれるCOの濃度を低減する反応器であり、COと水蒸気を反応させCOを低減するCO変成触媒(図示せず)と、COと微量に加えた酸素を反応させてCOを酸化除去する選択酸化触媒(図示せず)を備える。
【0032】
原料供給流路4は、原料供給器5の出口と改質器1の入口とを接続する都市ガスの流路である。
【0033】
原料供給器5は、原料供給流路4を通じて、都市ガスを改質器1に供給するポンプである。
【0034】
水供給器6は、水を改質器1に供給するポンプである。
【0035】
燃料供給流路7は、燃料供給器8の出口と加熱器2の入口とを接続する燃料の流路である。
【0036】
燃料供給器8は、燃料を加熱器2に供給するポンプであり、燃料供給流路7に接続されている。燃料は、本実施の形態では、メタンを主成分とする都市ガスを用いた。
【0037】
空気供給器9は、加熱器2に燃焼用の空気を供給するファンである。
【0038】
二酸化炭素供給流路10は、二酸化炭素供給器11の出口と原料供給流路4とを接続する、二酸化炭素を改質器1に供給するための流路である。
【0039】
二酸化炭素供給器11は、二酸化炭素供給流路10と原料供給流路4とを通じて、液化炭酸ガスボンベ(図示せず)の二酸化炭素を改質器1に供給するポンプである。
【0040】
水素含有ガス供給流路12は、CO低減器3から排出された水素含有ガスを燃料電池51に導く流路である。
【0041】
水素含有ガス供給流路開閉弁13は、水素含有ガス供給流路12の途中に設置され、水素含有ガス供給流路12を開閉する電磁弁である。
【0042】
排気流路14は、CO低減器3と水素含有ガス供給流路開閉弁13との間の水素含有ガス供給流路12から分岐して、CO低減器3から排出されるガスを水素生成装置41の外部に排気する流路である。
【0043】
排気流路開閉弁15は、排気流路14の途中に設置され、排気流路14を開閉する電磁弁である。
【0044】
温度検知器16は、改質器1の温度を検知する熱電対である。
【0045】
制御器31は、温度検知器16によって改質器1の温度を検知し、加熱器2と、原料供給器5と、水供給器6と、燃料供給器8と、空気供給器9と、二酸化炭素供給器11と、
水素含有ガス供給流路開閉弁13と、排気流路開閉弁15を操作して、水素生成装置41の運転を制御する。また、制御器31は、信号入出力部(図示せず)と、演算処理部(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶部(図示せず)とを備える。
【0046】
燃料電池51は、水素生成装置41から供給された水素含有ガスの水素と空気から発電を行うデバイスである。
【0047】
以上の様に構成された本実施の形態の水素生成装置41について、以下その動作と作用を説明する。
【0048】
まず、水素生成装置41での水素含有ガスの生成動作について説明する。
【0049】
原料供給器5と水供給器6が供給動作することによって、都市ガスと水が改質器1に供給される。
【0050】
燃料供給器8と空気供給器9が供給動作することで、都市ガスと燃焼用の空気が加熱器2に供給され、加熱器2が燃焼用の空気を用いて都市ガスを燃焼し、加熱器2の燃焼により発生する熱で、改質器1が所定の温度になるように加熱される。改質器1における所定の温度とは、水蒸気改質反応に適した温度であり、本実施の形態では600℃とした。
【0051】
加熱器2によって600℃に加熱され、都市ガスと水が供給された改質器1は、水蒸気改質反応により水素含有ガスを生成し、改質器1で生成された水素含有ガスは、CO低減器3において、水素含有ガスに含まれるCOの濃度が低減される。
【0052】
水素生成装置41で生成した(改質器1で生成され、CO低減器3でCOの濃度が低減された)水素含有ガスは、水素含有ガス供給流路12を経由して、燃料電池51に供給され、燃料電池51の発電に利用される
水素生成装置41から燃料電池51に水素含有ガスを供給する場合は、水素含有ガス供給流路開閉弁13を開状態、排気流路開閉弁15を閉状態とする。逆に燃料電池51に水素含有ガスを供給しない(水素生成装置41の起動時などで、燃料電池51の発電に適した水素含有ガスが生成されていない)場合は、水素含有ガス供給流路開閉弁13を閉状態、排気流路開閉弁15を開状態として、排気流路14から可燃ガスを排出する。
【0053】
なお、水素生成装置41の起動時など排気流路14から可燃ガスが排出される運転時には、排出されたガスは排出ガス燃焼器(図示せず)で処理する。なお、水素生成装置41の起動時に排気流路14から排出される可燃ガスを、加熱器2に供給して、改質器1の加熱に利用しても構わない。
【0054】
次に本発明の実施の形態1における水素生成装置41の動作について、図2を参照しながら説明する。
【0055】
図2は、本発明の実施の形態1における水素生成装置41の動作を示すフローチャートである。
【0056】
水素生成装置41の起動前は、水素生成装置41(原料供給器5、水供給器6、燃料供給器8、空気供給器9、二酸化炭素供給器11)は停止しており、水素含有ガス供給流路開閉弁13と排気流路開閉弁15は閉状態である。
【0057】
制御器31は、起動指令を受けると、水素生成装置41を起動するため、まず、燃料供給器8と空気供給器9を動作させて、加熱器2で点火動作を行うことにより、都市ガスと
空気の混合ガスを加熱器2で燃焼させて、改質器1の加熱を開始する(S101)。
【0058】
このとき、燃料供給器8から加熱器2に供給される都市ガスの流量は1L/minであり、空気供給器9から加熱器2に供給される空気の流量は20L/minである。
【0059】
次に、制御器31は、排気流路開閉弁15を開状態にする(S102)。
【0060】
次に、制御器31は、原料供給器5を動作させることにより、改質器1への都市ガスの供給を開始する(S103)。このとき、原料供給器5から改質器1に供給される都市ガスの流量は4L/minである。
【0061】
次に、制御器31は、二酸化炭素供給器11を動作させることにより、改質器1への二酸化炭素の供給を開始する(S104)。このとき、二酸化炭素供給器11から改質器1に供給される二酸化炭素の流量は4L/minである。
【0062】
次に、制御器31は、温度検知器16で改質器1の改質温度Taを検知して、改質器1の改質温度Taが500℃以上であるか否かを判定する(S105)。判定の結果、改質温度Taが500℃未満であれば、改質温度Taが500℃以上になるまで、S105を繰り返す。
【0063】
ここで、500℃とは、予め実験的に取得した、改質器1に所定量の水を供給しても改質器1の下流に接続されているCO低減器3で水が凝縮しない最低温度よりも100℃以上高い温度である。
【0064】
加熱器2によって加熱される改質器1の改質温度Taが500℃以上に上昇すると、S105をYes側に分岐して、制御器31が、水供給器6を動作させることにより、改質器1への水供給を開始する(S106)。このとき、水供給器6から改質器1に供給される水の流量は11cc/minである。
【0065】
ここで、11cc/minの水の供給流量は、4L/minの都市ガスの供給流量に対して、水蒸気と炭素の比率が3となるように設定された流量である。
【0066】
次に、制御器31は、二酸化炭素供給器11の動作を停止させることにより、改質器1への二酸化炭素の供給を停止させる(S107)。
【0067】
次に、制御器31は、温度検知器16で改質器1の改質温度Taを検知して、改質器1の改質温度Taが600℃以上であるか否かを判定する(S108)。判定の結果、改質温度Taが600℃未満であれば、改質温度Taが600℃以上になるまで、S108を繰り返す。
【0068】
ここで、600℃とは、予め実験的に取得した温度であり、改質器1で都市ガスから水素含有ガスを所定の転化率で生成でき、燃料電池51に供給するのに適した水素量が得られる温度である(S108)。
【0069】
加熱器2によって加熱される改質器1の改質温度Taが600℃以上に上昇すると、S108をYes側に分岐して、制御器31が、燃料電池51に水素含有ガスを供給するため、水素含有ガス供給流路開閉弁13を開状態にする(S109)。次に、排気流路開閉弁15を閉状態にする(S110)。
【0070】
次に、燃料電池51において、水素生成装置41から供給された水素含有ガスと空気中
の酸素を用いて、発電が開始され(S111)、水素生成装置41の起動は終了する。
【0071】
この時の燃料電池51の発電出力は1kWである。ここで、1kWとは、本実施の形態の水素生成装置41に、都市ガスを4L/minの流量で供給するとともに、水を11cc/minの流量で供給した場合に、水素生成装置41で生成する水素量から燃料電池51を発電させた場合の燃料電池51の発電出力である。
【0072】
以上のように、本実施の形態の水素生成装置41は、都市ガス(炭化水素系の原料)と水とから水素含有ガスを生成する改質触媒が充填された改質器1と、改質器1で生成された水素含有ガスに含まれるCO(一酸化炭素)の濃度を低減するCO低減器3と、改質器1に都市ガスを供給する原料供給器5と、改質器1に水を供給する水供給器6と、改質器1を加熱する加熱器2と、改質器1の温度を検知する温度検知器16と、改質器1に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給器11と、制御器31と、を備えている。
【0073】
そして、制御器31は、水素生成装置41の起動工程において、加熱器2と原料供給器5と二酸化炭素供給器11とを動作させることによって、改質器1とCO低減器3とを昇温し、水供給開始条件を満たしたことを温度検知器16によって検知すると、水供給器6を動作させてから、二酸化炭素供給器11を停止させるのである。
【0074】
この構成によって、起動時における改質触媒で都市ガスの炭化水素の熱分解による炭素析出の反応の進行が二酸化炭素により抑えられるため、改質触媒での炭素析出による改質触媒の劣化を抑制できる。
【0075】
なお、本実施の形態では、液化炭酸ガスボンベの二酸化炭素を用いたが、排ガスや水素含有ガスに含まれる二酸化炭素を吸着材や分離膜で分離したものを用いても構わない。
【0076】
なお、本実施の形態では、二酸化炭素供給器11から改質器1に供給する二酸化炭素の流量を、原料供給器5から改質器1に供給する都市ガスの流量と同じ4L/minにしたが、これに限らず、搭載している改質触媒の炭素析出のし易さによって、二酸化炭素の供給量を増減させればよい。
【0077】
改質器1への二酸化炭素の供給量が少な過ぎると、改質器1に搭載された改質触媒での炭素析出の抑制が不十分となり、二酸化炭素の供給量が多過ぎると、改質器1の加熱に時間が掛かるために水素生成装置41の起動時間が長くなる。
【0078】
最適な二酸化炭素の供給量は、改質触媒に都市ガスと二酸化炭素を供給しながら加熱するモデル実験で、改質触媒に炭素が析出し難く、起動時間も長くならない二酸化炭素の最適な供給量を設定すればよい。
【0079】
なお、水素含有ガス供給流路開閉弁13と排気流路開閉弁15を、一つの入口と二つの出口を有し、二つの出口の一方を開放し他方を閉塞するように二つの出口を選択的に切換える機能の他に、二つの出口を同時に閉塞する機能を有する三方弁で置き換えても構わない。
【0080】
本実施の形態の上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明にかかる水素生成装置及びその運転方法は、改質触媒で原料の炭化水素の熱分解による炭素析出の反応の進行が二酸化炭素により抑えられるため、起動時における改質触媒での炭素析出による改質触媒の劣化を抑制できる。そのため、改質器への水の供給を開始する前に、炭化水素系の原料を供給しながら改質器を昇温する水素生成装置と、その水素生成装置を備えた燃料電池システムに好適である。
【符号の説明】
【0082】
1 改質器
2 加熱器
3 CO低減器
4 原料供給流路
5 原料供給器
6 水供給器
7 燃料供給流路
8 燃料供給器
9 空気供給器
10 二酸化炭素供給流路
11 二酸化炭素供給器
12 水素含有ガス供給流路
13 水素含有ガス供給流路開閉弁
14 排気流路
15 排気流路開閉弁
16 温度検知器
31 制御器
41 水素生成装置
51 燃料電池
図1
図2