(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】煙発生装置および容器
(51)【国際特許分類】
A23B 4/052 20060101AFI20230210BHJP
【FI】
A23B4/052 B
A23B4/052 Z
(21)【出願番号】P 2019514408
(86)(22)【出願日】2018-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2018015755
(87)【国際公開番号】W WO2018198867
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2017090468
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】新田 浩朗
(72)【発明者】
【氏名】桐石 卓
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-061446(JP,A)
【文献】特開2013-255479(JP,A)
【文献】特開2006-246863(JP,A)
【文献】実開平03-013924(JP,U)
【文献】特開2012-075586(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033388(WO,A1)
【文献】米国特許第06029567(US,A)
【文献】“お気に入りの蒸し器”, [online], 2012.10.15,[2018.7.3 検索], インターネット<URL:http://hiyoridining.blogspot.com/2012/10/blog-post_15.html>,全文
【文献】“蒸し器を流用した簡易蒸留器でハーブの蒸留をしてみる”, [online],2016.10.29,[2018.7.3 検索], インターネット<URL:http://kako.com/blog/?p=21530>,全文
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B,A23L,A47J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、食品を収容するように構成された食品収容室と、
前記筐体内の前記食品より高い位置に設けられ、加熱されて煙を発生する煙発生剤を収容するように構成された煙発生室と、
前記食品収容室を前記煙発生室に連通する連通路と、
前記煙発生剤を加熱するように前記煙発生室
の天井に設けられた加熱源と、を有する煙発生装置において、
前記連通路は前記食品収容室の上部に設け、
前記煙発生室内の煙は、前記連通路を介して前記食品収容室に移動する、
煙発生装置。
【請求項2】
前記加熱源が前記煙発生室の上方に位置する、請求項1に記載の煙発生装置。
【請求項3】
前記連通路が前記食品収容室の内壁面に対向する、請求項2に記載の煙発生装置。
【請求項4】
前記煙発生室と前記食品収容室との間に設けられた断熱部をさらに有する、請求項2に記載の煙発生装置。
【請求項5】
前記食品収容室の下方に配置され、前記食品収容室内を補助的に加熱するように構成された補助加熱源をさらに有する、請求項1に記載の煙発生装置。
【請求項6】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、食品を収容するように構成された食品収容室と、
前記筐体内の前記食品より高い位置に設けられ、加熱されて煙を発生する煙発生剤を収容するように構成された煙発生室と、
前記食品収容室を前記煙発生室に連通する連通路と、
前記筐体内の前記食品収容室より高い位置に設けられ、前記煙発生剤を加熱するように構成された加熱源と、
上部開口を備えた容器本体および前記上部開口を覆う蓋を備えた容器と、
前記筐体内に設けられ、前記容器を取り出し可能に収容するように構成された密閉室と、をさらに有し、
前記容器本体の内部空間が前記食品収容室として機能するように構成され、
前記蓋に前記煙発生室と前記連通路とが設けられ、
前記加熱源が前記密閉室に設けられた、煙発生装置。
【請求項7】
前記容器の前記蓋が、前記煙発生室内を視認するための窓を備えた、請求項
6に記載の煙発生装置。
【請求項8】
前記加熱源が、前記窓を透過して前記煙発生剤を加熱する赤外線を照射するように構成された、請求項
7に記載の煙発生装置。
【請求項9】
前記容器の前記蓋が、前記容器本体の内部空間である前記食品収容室を視認するための窓を備えた、請求項
6に記載の煙発生装置。
【請求項10】
前記蓋が、前記煙発生室と、前記連通路と、前記容器本体の上部開口を覆うように構成された蓋本体と、前記蓋本体の裏面に着脱自在に設けられたトレイと、を備えた、請求項
6に記載の煙発生装置。
【請求項11】
前記煙発生剤が、食品の燻製を行うための煙を発生する燻製剤である、請求項1に記載の煙発生装置。
【請求項12】
上部開口と、食品を収容するように構成された食品収容室としての内部空間とを備えた容器本体、
および、
前記容器本体の上部開口を覆い、加熱されて煙を発生する煙発生剤を収容するように構成された煙発生室と、前記煙発生室を前記食品収容室に連通する連通路とを備えた蓋、を有し、
前記蓋が、熱または赤外線が前記蓋の上方から前記煙発生剤に到達するように構成され、
前記煙発生室と、前記連通路と、前記容器本体の上部開口を覆うように構成された蓋本体と、前記蓋本体の裏面に着脱自在に設けられたトレイと、を備えた、容器。
【請求項13】
前記連通路が、前記食品収容室の内壁面に対向する、請求項
12に記載の容器。
【請求項14】
前記連通路が、前記食品収容室の底面に対向する、請求項
12に記載の容器。
【請求項15】
前記煙発生室と前記食品収容室との間に設けられた断熱部をさらに有する、請求項
12に記載の容器。
【請求項16】
前記容器の前記蓋が、前記煙発生室内を視認するための窓を備えた、請求項
12に記載の容器。
【請求項17】
前記容器の前記蓋が、前記容器本体の内部空間である前記食品収容室を視認するための窓を備えた、請求項
12に記載の容器。
【請求項18】
前記煙発生剤が、食品の燻製を行うための煙を発生する燻製剤である、請求項
12に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば香り付けなどの用途で食品を煙に曝すための煙発生装置および容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品の燻製を行う燻煙装置が知られている。燻煙装置では、チーズ、ハム、魚などの食品が、木材チップなどの燻製剤を加熱して発生させた煙に曝される。
【0003】
例えば特許文献1に記載された燻煙装置の場合、ガスバーナが設けられた燻製室内に、燻製剤と燻製にする食品とを載置する。ガスバーナにより加熱された燻製剤から発生した煙が燻製室内に充満すると、燻製室内で食品の燻製が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記従来の燻煙装置の場合、ガスバーナの熱で食品が過剰に加熱されることがある。過剰に加熱されると、チーズは部分的に変形し、魚介類は水分が過剰に抜けて食感や風味を損なうことがある。
【0006】
本開示は、煙発生剤を加熱する加熱源の熱による食品の過剰な加熱を抑制することを目的とする。
【0007】
本開示の一態様は、筐体と食品収容室と煙発生室と連通路と加熱源とを有する煙発生装置である。
【0008】
食品収容室は筐体内に設けられ、食品を収容するように構成される。煙発生室は筐体内の食品より高い位置に設けられ、加熱されて煙を発生する煙発生剤を収容するように構成される。連通路は食品収容室を煙発生室に連通する。加熱源は筐体内の食品収容室より高い位置に設けられ、煙発生剤を加熱するように構成される。
【0009】
本開示の別態様は、容器本体と蓋とを有する容器である。容器本体は、上部開口と、食品を収容するように構成された食品収容室としての内部空間とを備える。蓋は、容器本体の上部開口を覆い、加熱されて煙を発生する煙発生剤を収容するように構成された煙発生室と、煙発生室を食品収容室に連通する連通路とを備える。蓋はさらに、熱または赤外線が蓋の上方から煙発生剤に到達するように構成される。
【0010】
本開示によれば、燻製剤などの煙発生剤を加熱して発生した煙に食品を曝す場合に、加熱源からの熱による食品の過剰な加熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態1に係る煙発生装置の概略斜視図である。
【
図3】
図3は、蓋が取り付けられた状態の容器の斜視図である。
【
図4】
図4は、蓋が取り外された状態の容器の斜視図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態2に係る煙発生装置の概略断面図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態3に係る煙発生装置の概略断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態4に係る煙発生装置の概略断面図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態5に係る煙発生装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の第1の態様は、筐体と食品収容室と煙発生室と連通路と加熱源とを有する煙発生装置である。
【0013】
食品収容室は筐体内に設けられ、食品を収容するように構成される。煙発生室は筐体内の食品より高い位置に設けられ、加熱されて煙を発生する煙発生剤を収容するように構成される。連通路は食品収容室の上部に設けられ、食品収容室と煙発生室を連通する。煙発生室の煙は、連通路を介して食品収容室に移動する。加熱源は煙発生室に設けられ、煙発生剤を加熱するように構成される。本態様によれば、加熱源の熱による食品の過剰な加熱を抑制することができる。
【0014】
本開示の第2の態様の煙発生装置では、第1の態様に加えて、加熱源が煙発生室の上方に位置する。
【0015】
本開示の第3の態様の煙発生装置では、第2の態様に加えて、連通路が食品収容室の内壁面に対向する。
【0016】
本開示の第4の態様の煙発生装置では、第2の態様に加えて、連絡路が食品収容室の底面に対向する。
【0017】
本開示の第5の態様の煙発生装置は、第2の態様に加えて、煙発生室と食品収容室との間に設けられた断熱部をさらに有する。
【0018】
本開示の第6の態様の煙発生装置は、第1の態様に加えて、食品収容室の下方に配置され、食品収容室内を補助的に加熱するように構成された補助加熱源をさらに有する。
【0019】
本開示の第7の態様の煙発生装置は、食品収容室は筐体内に設けられ、食品を収容するように構成される。煙発生室は筐体内の食品より高い位置に設けられ、加熱されて煙を発生する煙発生剤を収容するように構成される。連通路は食品収容室を煙発生室に連通する。加熱源は筐体内の食品収容室より高い位置に設けられ、煙発生剤を加熱するように構成される。加えて、上部開口を備えた容器本体および上部開口を覆う蓋を備えた容器と、筐体内に設けられ、容器を取り出し可能に収容するように構成された密閉室と、をさらに有する。
【0020】
容器本体の内部空間が食品収容室として機能する。蓋に煙発生室と連通路とが設けられる。加熱源が密閉室に設けられる。
【0021】
本開示の第8の態様の煙発生装置では、第7の態様に加えて、容器の蓋が、煙発生室内を視認するための窓を備える。
【0022】
本開示の第9の態様の煙発生装置では、第8の態様に加えて、加熱源が、窓を透過して煙発生剤を加熱する赤外線を照射するように構成される。
【0023】
本開示の第10の態様の煙発生装置では、第7の態様に加えて、容器の蓋が、容器本体の内部空間である食品収容室を視認するための窓を備える。
【0024】
本開示の第11の態様の煙発生装置では、第7の態様に加えて、蓋が、煙発生室と、連通路と、容器本体の上部開口を覆うように構成された蓋本体と、蓋本体の裏面に着脱自在に設けられたトレイとを備える。
【0025】
本開示の第12の態様の煙発生装置では、第1の態様に加えて、煙発生剤が、食品の燻製を行うための煙を発生する燻製剤である。
【0026】
本開示の第13の態様は、容器本体と蓋とを有する容器である。容器本体は、上部開口と、食品を収容するように構成された食品収容室としての内部空間とを備える。蓋は、容器本体の上部開口を覆い、加熱されて煙を発生する煙発生剤を収容するように構成された煙発生室と、煙発生室を食品収容室に連通する連通路とを備える。蓋はさらに、熱または赤外線が蓋の上方から煙発生剤に到達するように構成される。加えて、蓋が、煙発生室と、連通路と、容器本体の上部開口を覆うように構成された蓋本体と、蓋本体の裏面に着脱自在に設けられたトレイと、を備える。
【0027】
本開示の第14の態様の容器では、第13の態様に加えて、連通路が、食品収容室の内壁面に対向する。
【0028】
本開示の第15の態様の容器では、第13の態様に加えて、連通路が、食品収容室の底面に対向する。
【0029】
本開示の第16の態様の容器が、第13の態様に加えて、煙発生室と食品収容室との間に設けられた断熱部をさらに有する。
【0030】
本開示の第17の態様の容器では、第13の態様に加えて、容器の蓋が、煙発生室内を視認するための窓を備える。
【0031】
本開示の第18の態様の容器では、第13の態様に加えて、容器の蓋が、容器本体の内部空間である食品収容室を視認するための窓を備える。
【0032】
本開示の第19の態様の容器では、第13の態様に加えて、煙発生剤が、食品の燻製を行うための煙を発生する燻製剤である。
【0034】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係る煙発生装置10の概略斜視図である。
図2は、煙発生装置10の概略断面図である。以下の図において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、煙発生装置10の幅方向、奥行き方向、高さ方向をそれぞれ示す。
【0036】
図1、
図2に示すように、煙発生装置10は、チーズ、魚介類などの食品の燻製を行うために、木材チップなどの燻製剤を加熱して煙を発生させ、発生した50~80度の煙に食品を曝すように構成される。
【0037】
煙発生装置10は、略直方体形状の筐体12と、筐体12内に設けられた密閉室14とを有する。
【0038】
本実施の形態では、従来技術のように、密閉室14内を煙で充満させ、煙が充満した密閉室14内で食品の燻製を行うわけではない。煙発生装置10は、食品Fを収容し、かつ、煙発生装置10から取り出し可能な容器20を有する。容器20の内部で食品Fの燻製が行われる。
【0039】
図3は、蓋24が取り付けられた状態の容器20の斜視図である。
図4は、蓋24が取り外された状態の容器20の斜視図である。
図5は、容器20の分解斜視図である。
【0040】
容器20は、密閉室14内に収容された状態で使用される。具体的には、
図3、
図4に示すように、容器20は、容器本体22と蓋24とを有する。
【0041】
容器本体22は、食品Fを収容する食品収容室22aと、食品収容室22aの上部に設けられた上部開口22bとを備える。蓋24は、容器本体22の上端に載置され、上部開口22bを覆う。これにより、容器本体22の食品収容室22aが密閉される。
【0042】
図2に示すように、蓋24は、煙発生室28bと連通路とを備える。煙発生室28bは、加熱されて煙を発生させる木材チップなどの燻製剤Tを収容する。本実施の形態では、燻製剤Tが煙発生剤である。連通路は、煙発生室28bを容器本体22の食品収容室22aに連通する。
【0043】
図5に示すように、蓋24は、蓋本体26とトレイ28とを備える。蓋本体26は上部開口22bを覆う。蓋本体26の裏面、すなわち、容器本体22側の表面に、トレイ28は着脱自在に取り付けられる。
【0044】
図2に示すように、トレイ28のフランジ部28aを蓋24の下面に接触させ、X軸方向にスライドさせると、フランジ部28aが蓋本体26のスライド係合部26aに係合する。これにより、トレイ28が蓋24に装着される。
【0045】
図5に示すように、トレイ28は、燻製剤Tを収容する煙発生室28bを備える。トレイ28を蓋本体26の裏側に取り付けると、煙発生室28bが閉じられる。煙発生室28bの円筒状の側壁28cは、食品収容室22aの内壁面22cに対向するように、全周に亘ってメッシュ部材で形成される。
【0046】
側壁28cに設けられた多数の孔は、煙発生室28bを食品収容室22aに連通する連通路として機能する(
図2参照)。煙発生室28bの円形状の底板28dは、例えば金属プレートで形成される。その理由は後述する。
【0047】
図2に示すように、燻製剤Tを収容する煙発生室28bが、食品収容室22a内に載置された食品Fの上方に配置される。
【0048】
煙発生室28bの上方に、煙発生室28bに収容された燻製剤Tを加熱するための加熱源16が設けられる。具体的には、加熱源16は、密閉室14内に設けられて、近赤外線を放射するように構成された赤外線ヒータである。加熱源16は、密閉室14内に収容された容器20の上方に位置するように、密閉室14の天井14aに設けられる。
【0049】
加熱源16により放射された近赤外線NIRが煙発生室28b内の燻製剤Tを加熱すると、煙Sが発生する。煙発生室28b内に充満した煙Sは、メッシュ部材で形成された側壁28cを介して、食品収容室22aの内壁面22cに向かって移動する。内壁面22cに到達すると、煙Sは内壁面22cに沿って降下する。食品Fは、内壁面22cに沿って降下する際に温度が低下した煙Sに曝される。
【0050】
図2、
図4に示すように、容器本体22には、食品Fが載置される網皿30が設けられる。煙Sの一部は、網皿30を介して容器本体22の底面22dに到達する。底面22dに到達すると、煙Sは底面22dに沿って底面22dの中央部に集まる。集まった煙Sは底面22dの中央部で上昇する。食品Fが網皿30上に載置されるため、食品Fの全体が、食品収容室22a内を対流する煙Sに曝される。
【0051】
本実施の形態では、加熱源16は食品Fの上方に配置される。従って、加熱源16が食品Fの下方に配置される場合に比べて、食品Fが加熱されにくい。加熱源16の熱が、加熱源16と食品Fとの間に配置された煙発生室28bにより遮られることで、食品Fの過剰な加熱が抑制される。
【0052】
本実施の形態では、近赤外線NIRが透過可能な窓であるガラス窓26bが蓋本体26に設けられる。これにより、近赤外線NIRを燻製剤Tに照射するだけでなく、燻製剤Tの炭化度合いを確認することもできる。
【0053】
図1、
図2に示すように、煙発生装置10には、使用者が燻製剤Tの炭化度合いを確認できるように、密閉室14の前面開口を覆う扉18が設けられる。煙Sは容器20内に存在するので、扉18を開けても、煙Sが容器20の外部に漏れることはない。扉18を開ければ、使用者は、煙Sを吸い込むことなく燻製剤Tの炭化度合いを確認することができる。
【0054】
上述のように、煙発生室28bの底板28dが、例えば金属プレートで形成され、ガラス窓26bを透過した近赤外線NIRが食品Fに到達しないように、近赤外線NIRを反射する。これにより、近赤外線NIRによる食品Fの加熱が抑制される。
【0055】
図2に示すように、熱せられた底板28dから食品Fへの放熱を抑制するために、底板28dの下側表面に断熱部材28eが設けられる。断熱部材28eは断熱部に相当する。
【0056】
加熱源16が近赤外線を実質的に放射しない、例えばシーズヒータである場合、底板28dが断熱材料で形成されてもよい。容器本体22が深く、底板28dが食品Fから離れている場合、断熱部材28eを省略してもよい。
【0057】
図1、
図2に示すように、容器20が密閉室14に収容された状態で食品Fの燻製が行われる。すなわち、食品Fは、筐体12と容器20とにより二重に覆われる。これにより、煙Sと臭いとが煙発生装置10の外部に漏れるのを抑制し、住宅内でも気軽に食品Fの燻製を行うことができる。
【0058】
上部開口22bの縁、または、それに対向する蓋24の部分にリング状のシリコンゴムを設けると、容器20の密閉性を向上させることができる。
【0059】
図5に示すように、トレイ28は蓋本体26に着脱自在に設けられる。従って、燻製剤Tの交換や充填が容易に行える。トレイ28を取り外すと、蓋本体26と容器本体22とは蓋付き鍋としても使用可能である。トレイ28が取り付けられていないため、ガラス窓26bを透過した近赤外線NIRにより、容器本体22内の食品Fを加熱することができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態によれば、加熱源16の熱による食品Fの過剰な加熱を抑制することができる。
【0061】
(実施の形態2)
以下、本開示の実施の形態2について説明する。本実施の形態において、容器20は実施の形態1と同一である。
【0062】
図6は、本実施の形態に係る煙発生装置110の概略断面図である。
図6に示すように、煙発生装置110は、筐体112の密閉室114の底面に設けられた補助ヒータ119を有する。すなわち、補助ヒータ119は、食品収容室22aの下方に配置される。
【0063】
補助ヒータ119は、容器20を補助的に加熱する補助加熱源として機能する。例えば、食品Fが冷凍または冷蔵されていた場合、燻製時間を短縮するために、補助ヒータ119により食品収容室22a内の食品Fを予熱する。
【0064】
例えば80~140度の高温の煙Sで食品Fの燻製を行う場合、補助ヒータ119により食品収容室22a内に充満した煙Sを加熱する。補助ヒータ119の出力(パワーおよび持続時間)は調整可能である。
【0065】
(実施の形態3)
以下、本開示の実施の形態3について説明する。本実施の形態の容器220の蓋224は、実施の形態1の蓋24と異なる。
【0066】
図7は、本実施の形態に係る煙発生装置210の概略断面図である。
図7に示すように、煙発生装置210では、蓋224が、実施の形態1のトレイ28と異なるトレイ228を有する。
【0067】
具体的には、トレイ228は、燻製剤Tを収容する煙発生室228bを備える。煙発生室228bは、孔のない円筒状の金属部材で形成された側壁228cと、メッシュ部材で形成された底板228dとを備える。
【0068】
すなわち、底板228dは、底面22dに対向するように設けられた多数の孔を有する。底板228dは、煙発生室228bを食品収容室22aに連通する連通路として機能する。
【0069】
煙発生室228bに充満した煙Sは、食品収容室22a内の食品Fに向かってまっすぐ降下する。そのため、その温度の低下が最小限に抑制された状態で、煙Sが食品Fに到達する。
【0070】
本実施の形態では、煙Sが食品Fに向かってまっすぐ降下するように、大量の煙Sを発生可能な燻製剤Tを用いるのが好ましい。
【0071】
(実施の形態4)
以下、本開示の実施の形態4について説明する。本実施の形態の容器320の蓋324は、実施の形態1の蓋24と異なる。
【0072】
図8は、本実施の形態に係る煙発生装置310の概略断面図である。
図8に示すように、煙発生装置310では、蓋324が、実施の形態1のトレイ28と異なるトレイ328を有する。
【0073】
実施の形態1では、
図2に示すように、トレイ28が存在するために、ガラス窓26bを介して、食品収容室22a内の食品Fを視認することができない。本実施の形態では、トレイ328は、その中央に設けられた貫通孔328eを有する。すなわち、燻製剤Tを収容する煙発生室328bがドーナツ状の形状を有する。
【0074】
従って、ガラス窓326bの中央部分が食品収容室22a内の視認するための窓として機能し、その外側部分が煙発生室328b内を視認するための窓として機能する。
【0075】
本実施の形態では、近赤外線NIRがガラス窓326bの中央部分と貫通孔328eとを通過して食品収容室22a内に到達しないように、加熱源16には遮光板319が設けられる。これにより、蓋324を容器本体22から外さずに、使用者が食品Fの状況を確認することができる。
【0076】
(実施の形態5)
以下、本開示の実施の形態5について説明する。実施の形態1~4では、煙発生室と食品収容室とは、煙発生装置の筐体から取り出し可能な容器に設けられる。本実施の形態5では、煙発生室と食品収容室は、煙発生装置の筐体に直接的に設けられる。
【0077】
図9は、本実施の形態に係る煙発生装置410の概略断面図である。
図9に示すように、本実施の形態に係る煙発生装置410の筐体412は、その上部に設けられた煙発生室412aと、その下部に設けられた食品収容室412bとを備える。煙発生室412aと食品収容室412bは、貫通孔状の複数の連通路412cによって連通される。
【0078】
燻製剤Tは、煙発生室412aから引き出し可能な引き出しトレイ414上に載置される。煙発生室412aの天井412dに、近赤外線NIRを照射して燻製剤Tを加熱する加熱源416が設けられる。
【0079】
食品Fは、回転テーブル418上に載置された網皿420上に載置される。
【0080】
加熱源416によって燻製剤Tが加熱されて煙Sが発生し、煙Sが煙発生室412a内に充満する。煙Sは、連通路412cを介して食品収容室412bに移動する。食品Fが煙Sによって曝される。
【0081】
本実施の形態によれば、煙発生室412aと食品収容室412bとを、実施の形態1~4に比べて大きくすることができる。その結果、大量の食品Fの燻製を行うことができる。食品収容室412b内で煙Sを強制循環させるファン(図示せず)を、実施の形態1~4に比べて容易に食品収容室412b内に設けることもできる。
【0082】
以上、実施の形態1~5を参照して本開示を説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されない。
【0083】
実施の形態1~5では、木材チップなどの燻製剤Tが煙発生剤である。しかしながら、煙発生剤は、例えば食品に香気を付与するためのものであって、加熱されると蒸発する液体または固体であってもよい。
【0084】
実施の形態1~5では、加熱源が近赤外線を放射する。しかしながら、例えば、加熱源が遠赤外線を放射してもよい。
【0085】
加熱源が、例えばニクロム線を熱源として用い、実質的に近赤外線を放射しないシーズヒータであってもよい。この場合、ガラス窓を蓋本体に必ずしも設ける必要はない。例えば、蓋本体の少なくとも中央部が、その裏側の燻製剤にシーズヒータの熱を伝熱する金属材料で形成されてもよい。
【0086】
すなわち、加熱源は、煙発生剤を加熱して煙を発生させることができれば、何でもよい。蓋は、加熱源の熱または赤外線が蓋の上方から煙発生室内の煙発生剤に到達するように構成されていればよい。
【0087】
実施の形態1では、
図2に示すように、加熱源16と煙発生室28bと食品FがZ軸方向に並ぶ。しかしながら、例えば、加熱源と煙発生室とが水平方向に並んでもよい。
【0088】
すなわち、煙発生室が食品より高い位置に設けられ、加熱源が食品収容室より高い位置に設けられればよい。これにより、煙発生室から食品への熱移動が抑制される。その結果、食品への過剰な加熱が抑制される。
【0089】
実施の形態1では、
図2に示すように、燻製剤Tは、蓋本体26に着脱自在に取り付けられたトレイ28上に載置される。そのため、使用済みの燻製剤Tを新しい燻製剤に交換可能である。しかしながら、本開示はこれに限らない。トレイの代わりに燻製剤を収容するために、使い捨てのカートリッジを蓋本体に着脱自在に設けてもよい。
【0090】
この場合、カートリッジは、例えば加熱源からの赤外線が透過可能な透明樹脂で形成され、側壁または底板に貫通孔状の複数の連通路を備えてもよい。蓋本体とカートリッジとが一体化されて、使い捨ての蓋を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示は、例えば香り付けなどの用途で食品を煙に曝すための煙発生装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
10、110、210、310、410 煙発生装置
12、112、412 筐体
14、114 密閉室
14a、412d 天井
16、416 加熱源
18 扉
20、220、320 容器
22 容器本体
22a、412b 食品収容室
22b 上部開口
22c 内壁面
22d 底面
24、224、324 蓋
26 蓋本体
26a スライド係合部
26b、326b ガラス窓
28、228、328、414 トレイ
28a フランジ部
28b、228b、328b、412a 煙発生室
28c、228c 側壁
28d、228d 底板
28e 断熱部材
30、420 網皿
119 補助ヒータ
319 遮光板
328e 貫通孔
412c 連通路
418 回転テーブル