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特許7223930エンドエフェクタおよびエンドエフェクタの制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】エンドエフェクタおよびエンドエフェクタの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20230210BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230210BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20230210BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
B05C1/02 101
B05C11/10
B25J13/08 A
B25J15/08 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021550565
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2020034843
(87)【国際公開番号】W WO2021070574
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019188193
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】河野 秀行
(72)【発明者】
【氏名】磯邉 柚香
(72)【発明者】
【氏名】阪田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】坂口 遼河
(72)【発明者】
【氏名】江口 政史
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-172452(JP,A)
【文献】特開2006-62052(JP,A)
【文献】特開2007-229567(JP,A)
【文献】特開2018-85951(JP,A)
【文献】特開2019-147230(JP,A)
【文献】特開2011-38773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
B25J 13/00-15/12
B43L 13/00-13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームに接続可能なエンドエフェクタであって、
カメラと、
マーカを有し、ワークを支持可能な支持部材と、
前記ワークに塗布を行う筆と、を備え、
前記カメラが、前記筆の筆先と前記マーカとを同時に撮像可能な位置に配置され
前記マーカは、前記支持部材の状態を検知するために前記支持部材の先端に設けられる、
エンドエフェクタ。
【請求項2】
前記マーカは、特徴的な形状または模様である、
請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
前記筆が前記塗布を行う塗布状態において、
前記筆の筆先が、前記支持部材よりも、前記ワーク側に突出する、
請求項1または請求項2に記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
前記筆は、前記カメラと前記支持部材との間に配置される
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1つに記載のエンドエフェクタを制御する制御装置であって、
前記筆が前記塗布を行っている際の、前記カメラが撮像した撮像画像における前記筆の筆先の形状が、前記筆先の初期形状から変化している場合に、前記塗布が成功していると判定する、制御部を備える、
制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記塗布における前記筆の移動方向とは反対側の方向に向けて、前記筆の先端部の位置が変化している場合に、前記塗布が成功していると判定する、
請求項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンドエフェクタおよびエンドエフェクタの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人の腕の動きを再現可能な多自由度多関節ロボットアームを有するスレーブ機構部と、筆記者がワークに対して行う文字の筆記または図画の描画を含む筆記動作を認識し、前記多自由度多関節ロボットアームに前記筆記動作を再現可能に教示するマスター機構部と、前記スレーブ機構部及び前記マスター機構部に接続され、前記マスター機構部によって認識された前記筆記動作を演算処理し、前記スレーブ機構部の前記多自由度多関節ロボットアームを制御するコントローラと、を具備するロボット教示システムが記載されている。前記マスター機構部は、前記筆記者が把持し、前記ワークに前記筆記動作を行うための筆記具に取設され、前記筆記動作に応じて逐次変化する前記筆記具の三次元位置及び姿勢を検出し、筆記情報として取得する筆記情報取得手段と、前記筆記動作が行われる際の前記ワークの傾き角度及び回転角度を検出し、前記筆記情報と時系列を対応させたワーク情報として取得するワーク情報取得手段と、取得した前記筆記情報及び前記ワーク情報を前記コントローラに対して送出する筆記ワーク情報送出手段とを有する。前記コントローラは、前記マスター機構部から送出される前記筆記情報及び前記ワーク情報を受付ける筆記ワーク情報受付手段と、受付けた前記筆記情報に基づいて、前記多自由度多関節ロボットアームに前記筆記動作を再現させる筆記制御データを演算処理し、前記スレーブ機構部に送出する筆記制御データ送出手段と、受付けた前記ワーク情報に基づいて、前記多自由度多関節ロボットアームによって再現される前記筆記動作の際に使用されるスレーブ側ワークの動きを制御するワーク制御データを演算処理し、前記スレーブ機構部に送出するワーク制御データ送出手段とを有する。前記スレーブ機構部は、前記コントローラから送出された前記筆記制御データを受付ける筆記制御データ受付手段と、受付けた前記筆記制御データに基づいて制御され、一端に前記筆記動作を再現するためのスレーブ側筆記具が取設された前記多自由度多関節ロボットアームと、前記コントローラから送出された前記ワーク制御データを受付けるワーク制御データ受付手段と、受付けた前記ワーク制御データに基づいて制御され、前記筆記動作の際の前記ワークの変化に応じて前記スレーブ側ワークの傾き角度及び回転角度を変化させるワーク駆動部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-62052号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ロボットアームに接続可能なエンドエフェクタであって、カメラと、支持部材と、筆とを備えたエンドエフェクタを提供することを目的とする。
【0005】
本開示は、ロボットアームに接続可能なエンドエフェクタであって、カメラと、マーカを有し、ワークを支持可能な支持部材と、ワークに塗布を行う筆とを備え、カメラが、筆の筆先とマーカとを同時に撮像可能な位置に配置される、エンドエフェクタを提供する。
【0006】
本開示によれば、ロボットアームに接続可能なエンドエフェクタであって、カメラと、支持部材と、筆とを備えたエンドエフェクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】エンドエフェクタ2がワークWkを把持している把持状態を示す斜視図
図2】エンドエフェクタ2がワークWkを把持している把持状態を示す側面図
図3】エンドエフェクタ2がワークWkを把持している把持状態を示す正面図
図4】エンドエフェクタ2がワークWkを把持している把持状態を示す平面図
図5】エンドエフェクタ2が備える筆Brによって、ワークWkの表面に防湿剤等のコーティング剤を塗布する塗布時の状態を示す斜視図
図6】エンドエフェクタ2が備える筆Brによって、ワークWkの表面に防湿剤等のコーティング剤を塗布する塗布時の状態を示す側面図
図7】エンドエフェクタ2が備える筆Brによって、ワークWkの表面に防湿剤等のコーティング剤を塗布する塗布時の状態を示す正面図
図8】エンドエフェクタ2が備える筆Brによって、ワークWkの表面に防湿剤等のコーティング剤を塗布する塗布時の状態を示す平面図
図9】エンドエフェクタ2の拡大図
図10】カメラCAMの配置例を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図
図11】制御装置100のハードウェア構成例を示すブロック図
図12】制御装置100による制御に基づいた、塗布工程を示すフローチャート
図13】ワークWkに筆Brの筆先が接していない状態(塗布していない状態)を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図、(c)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す図
図14】ワークWkに対して、撮像画像の下方向に向けて塗布を行っている状態を示す図であり、(a)正面図、(b)正側面図、(c)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第1の図、(d)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第2の図
図15】ワークWkに対して、撮像画像の上方向に向けて塗布を行っている状態を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図、(c)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第1の図、(d)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第2の図
図16】ワークWkに対して、撮像画像の左方向に向けて塗布を行っている状態を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図、(c)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第1の図、(d)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第2の図
図17】ワークWkに対して、撮像画像の右方向に向けて塗布を行っている状態を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図、(c)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第1の図、(d)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第2の図
図18図14から図17のまとめ図
図19】エンドエフェクタ2を示す図であり、(a)正面図、(b)平面図、(c)側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至る経緯)
工場等で用いられるロボット装置は、ロボットアームにエンドエフェクタを取り付けることで、種々の作業を行うことができる。例えば、エンドエフェクタとしてロボットハンドを用いて、工場の生産ライン上を流れる部品をピッキングする、等の作業である。このロボットアームおよびエンドエフェクタは、ロボットアームに接続された制御装置(コントローラ)によって制御される。
【0009】
エンドエフェクタの種類としては、フィンガを有するものや、いわゆるソフトハンドのようにハンドの先端が変形可能であるもの等があり、これらがワークを支持する。すなわち、ワークを支持する支持部材として、フィンガやソフトハンド等がある。また、筆状のエンドエフェクタも存在する。筆状のエンドエフェクタは、例えば車両に用いられる基板等のワークに、防湿剤等のコーティング剤を塗布することを可能にする。この塗布により、ワークの劣化や湿気などを防ぐ。なお、防湿剤はコーティング剤の一例であり、コーティング剤には他にも、絶縁性を確保するための絶縁剤、塵を防ぐ防塵剤、虫害を防ぐ防虫剤、振動に対する耐性を持たせるための耐振動剤などが含まれる。
【0010】
従来、基板に対する自動コーティングを行うための装置は、基板に対してコーティング剤を噴射するスプレータイプのものが多かった。基板に対して噴霧によってコーティングを行う場合、基板の端部にはマスキングが必要となる。また、基板には通常、電子部品が取付けられており、基板上に凹凸があるので、凹凸によって生じる側面部の塗布ができないという問題があった。
【0011】
そこで本開示においては、筆を備えたエンドエフェクタによってコーティング剤の塗布を行う。そして、塗布を行っている筆の筆先形状を、カメラによって撮像し、撮像された画像に基づいて、前述の塗布が適切に行われているか否かをチェックする。
【0012】
上記の構成により、マスキングを行わなくとも基板の端部に塗布を行うことができる。また、基板上に凹凸があっても、側面部の塗布をムラなく行うことができる。以下、このような利点を有する本開示のエンドエフェクタについて説明する。また、本開示のエンドエフェクタを制御する制御装置についても説明する。
【0013】
(エンドエフェクタ2による塗布作業例:把持状態)
まず、本開示のエンドエフェクタ2を用いて、ワークWkに対して防湿剤等のコーティング剤の塗布を行う作業例について説明する。以下の説明においては、ワークWkを支持する支持部材は、フィンガであるという前提で説明を行う。ただし、本開示の範囲をフィンガに限定しようとする意図はなく、支持部材はソフトハンド等の、フィンガ以外の各種の部材を含んでいてよい。なお、ワークWkは、車両用の基板などであってよい。図1図4は、エンドエフェクタ2がワークWkを把持している把持状態を示す図である。図1は斜視図であり、図2は側面図であり、図3は正面図であり、図4は平面図である。
【0014】
ここで、理解を容易とするため、各図に示すように、x軸、y軸、z軸からなる直交座標系が規定される。z軸は、x軸およびy軸に対して垂直であり、高さ方向に延びる。また、各軸の正の方向は、図1における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。
【0015】
図1に示されたロボット装置500はロボットアーム1を備えており、ロボットアーム1がレールRにスライド可能に取り付けられている。ただし、レールRが用いられずに、ロボットアーム1が作業台Tに対して直接固定されていてもよい。図示した例においては、ロボットアーム1は多関節タイプのものであり、複数の関節(リンク)Lを備えている。この各関節(リンク)Lが関節軸Jを介して接続されている。
【0016】
ロボットアーム1には、エンドエフェクタ2が接続されている。各関節(リンク)Lは各関節軸Jを中心として回転するので、ロボットアーム1は、エンドエフェクタ2が把持したワークWkの位置や角度を自在に変えることができる。
【0017】
エンドエフェクタ2は、ワークWkを支持可能なフィンガFと、筆Brとを備えており、本例においては、フィンガFは第1フィンガF1と第2フィンガF2の2本のフィンガを備えている。ただし、フィンガの本数は2本には限られず、ワークWkを支持できるものであればよい。
【0018】
各図、特に図3に示したように、フィンガFと筆Brとは、略平行に配置されていてよいが、フィンガFと筆Brとを、略平行でないように配置してもよい。また、図1図4に見られるように、フィンガFは、2本の第1フィンガF1および第2フィンガF2の先端部分でワークWkを挟み込むようにして把持している。このワークWkは、作業前には図示を省略するストック棚等に収納されている。ロボットアーム1に接続されたエンドエフェクタ2がワークWkを把持して、作業台Tに設けられた載置部T1の上にワークWkを置く。
【0019】
ワークWkが基板などのような薄い平面状のものである場合、図2に示されているように、第1フィンガF1および第2フィンガF2がそれぞれ備える溝GでこのワークWkの端部を受け入れるようして把持する。ワークWkを把持した状態の第1フィンガF1および第2フィンガF2の位置を、フィンガFの把持位置とする。
【0020】
また、エンドエフェクタ2はカメラCAMを備えている。図示した例においては、カメラCAMは2つのレンズを備えているが、レンズの数は2つ以外であってもよい。このカメラCAMの用途および配置については後述する。
【0021】
(エンドエフェクタ2による塗布作業例:塗布時)
図5図8は、エンドエフェクタ2が備える筆Brによって、ワークWkの表面に防湿剤等のコーティング剤を塗布する塗布時の状態を示す図である。図5は斜視図であり、図6は側面図であり、図7は正面図であり、図8は平面図である。
【0022】
ロボットアーム1およびエンドエフェクタ2の基本構成は、図1から図4に基づいて上述した通りであるので説明を省略し、塗布時における筆Brを撮像するカメラCAMについて説明する。図5図8に示したように、エンドエフェクタ2は、ワークWkを作業台T上に載置した後、コーティング剤の入った容器Cの孔C1に、筆Brの先端をつける。容器Cにはコーティング剤が入っているため、筆Brの先端部にはコーティング剤が付着する。その状態で、エンドエフェクタ2が備える筆Brが基板であるワークWkの上をなぞるように移動することで、コーティング剤をワークWkの表面に塗布する。なお、このコーティング剤には、ブラックライトで光る染料等が混入していてもよい。塗布作業が終了したワークWkに図示を省略するブラックライトを当てることで、塗布の漏れ部分を特定することもできる。
【0023】
エンドエフェクタ2は、カメラCAMを備えている。カメラCAMは、ワークWkに対して塗布を行っている最中(塗布時)の筆Brの筆先を撮像する。この撮像画像は、塗布が正しく行われているか否かの確認に用いられる。なお、塗布時にフィンガFがワークWk等と衝突することを避けるために、筆Brの長さは、塗布時におけるフィンガFの長さよりも長いと好適である。なお、フィンガFが図示したように関節(リンク)Lと関節軸Jとを備えるタイプのものである場合は、フィンガFを開くように折り曲げて、筆Brの筆先がフィンガFよりもワークWk側に突出するような姿勢にしてもよい。すなわち、ワークWkに対する筆Brによる塗布を行う塗布時において、筆Brの筆先が、フィンガFよりもワークWk側に突出するように構成する。これにより、塗布時にフィンガFがワークWkと衝突することを回避できる。
【0024】
(エンドエフェクタ2の拡大図)
図9は、上述のエンドエフェクタ2の拡大図である。図示したように、第1フィンガF1および第2フィンガF2の先端部には溝Gが設けられており、この溝GがワークWkの端部を受け入れるようにして、第1フィンガF1および第2フィンガF2がワークWkを挟み込むように把持する。この溝Gの幅dは、ワークWkである基板の厚みと同程度であってよいが、基板の厚みよりも溝Gの幅dが大きくても良い。基板の厚みよりも溝Gの幅dが大きければ、第1フィンガF1および第2フィンガF2がワークWkを挟むように把持した時に、各フィンガの先端部に多少のあそびが発生する。すなわち、エンドエフェクタ2を移動させた時に多少のガタつきが発生する。このガタつきが、エンドエフェクタ2がワークWkを運ぶ際に生じるワークWkに対する衝撃を吸収する。その結果、ワークWkの破損や故障を回避することができる。
【0025】
また、第1フィンガF1および第2フィンガF2はそれぞれ、マーカMを備えている。マーカMは、例えば赤色のランプ等であってよく、カメラCAMで撮像した撮像画像から、このマーカMの位置を検出することにより、エンドエフェクタ2の現在の形状(第1フィンガF1および第2フィンガF2の開き具合等)やワークWkの把持の有無を識別することができる。
【0026】
(カメラの配置)
図10は、カメラCAMの配置例を示す図であり、(a)正面図、(b)測面図である。カメラCAMは、筆Brの筆先を撮像可能な位置に配置される。また、カメラCAMは、エンドエフェクタ2の第1フィンガF1および第2フィンガF2に設けられたマーカMを撮像可能な位置に配置される。このような位置にカメラCAMが配置されることにより、筆Brの筆先の状態と、エンドエフェクタ2の第1フィンガF1および第2フィンガF2の状態とを同時に、撮像画像を用いて確認することができる。
【0027】
図10の(a)において、エンドエフェクタ2は、ワークWkに対してコーティング剤を塗布できる状態にある。この状態においてカメラCAMは、図示した直交座標系のx軸方向に沿ってカメラの向きを変更可能なように取り付けられている。この取り付け方法については、従来の取り付け方法を用いてよい。x軸方向における、カメラCAMの取り付け角度をαとする。また、x軸方向における、カメラCAMの画角をθとする。
【0028】
また、図示した直交座標系のz軸に沿ってカメラCAMの中心から降ろした垂線方向についての、カメラCAMのレンズ先端部とマーカMまでの距離をHとする。x軸方向についての、マーカMからカメラCAMの中心までの距離をLとする。また、β=arctan(L/H)とする。
【0029】
この時、カメラの取り付け角度αを、θ/2+α>βとなるように設定することによって、マーカMがカメラCAMの画角内に収まることになる。
【0030】
図10の(b)においては、カメラCAMについての、y軸方向における画角をθとする。この時、第1フィンガF1が備えるマーカMと、第2フィンガF2が備えるマーカMとが両方とも、カメラCAMの画角θ内に収まるように、θの値を設定してよい。なお、図10の(a)と同様に、カメラCAMの取り付け角度を考慮して、カメラCAMの画角θを決定してもよい。
【0031】
ここで、図示した例においては、カメラCAMはエンドエフェクタ2に取付けられている。すなわち、ロボットアーム1によってエンドエフェクタ2が移動されると、カメラCAMも追随して移動する。前記構成により、筆BrおよびマーカMに対するカメラCAMの相対位置が固定されるので、カメラCAMが撮像した画像に基づいた画像処理や計算処理が減るので好適である。しかし、カメラCAMは、筆Brの筆先およびマーカMを同時に撮像可能な位置にあればよい。そのため、カメラCAMはエンドエフェクタ2に取り付けられていなくともよい。例えば、カメラCAMは工場の天井等に取付けられていてもよい。
【0032】
(制御装置100の構成)
次に、本開示のエンドエフェクタ2を制御する制御装置100の例について説明する。図11は、制御装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。制御装置100は、エンドエフェクタ2と接続され、エンドエフェクタ2を制御する。なお、制御装置100は、ロボットアーム1およびエンドエフェクタ2と接続され、ロボットアーム1およびエンドエフェクタ2を制御しても良い。
【0033】
制御装置100は、プロセッサ101と、メモリ102と、入力装置103と、画像取得部104と、エンドエフェクタ接続部105と、通信装置106と、入出力インターフェース107とを含む構成である。メモリ102、入力装置103、画像取得部104、エンドエフェクタ接続部105、通信装置106、入出力インターフェース107は、それぞれプロセッサ101との間でデータもしくは情報の入出力が可能に内部バス等で接続される。
【0034】
プロセッサ101は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成される。プロセッサ101は、制御装置100の制御部として機能し、制御装置100の各部の動作を全体的に統括するための制御処理、制御装置100の各部との間のデータもしくは情報の入出力処理、データの計算処理、およびデータもしくは情報の記憶処理を行う。また、プロセッサ101は、エンドエフェクタ2を制御する制御部としても機能する。
【0035】
メモリ102は、HDDやROM、RAM等を含んでいてよく、プロセッサ101によって実行される各種プログラム(OS、アプリケーションソフト等)や各種データを格納している。また、メモリ102は、後述の、筆Brの筆先の形状を示すデータを保存していてよい。
【0036】
入力装置103は、キーボードやマウス等を含んでいてよく、ユーザとの間のヒューマンインターフェースとしての機能を有し、ユーザの操作を入力する。言い換えると、入力装置103は、制御装置100により実行される各種の処理における、入力または指示に用いられる。なお、入力装置103は、制御装置100に接続されたプログラミングペンダントであってよい。
【0037】
画像取得部104は、カメラCAMと有線あるいは無線を介して接続可能であり、カメラCAMが撮像した画像を取得する。制御装置100は、画像取得部104が取得した画像に対し、画像処理を適宜行うことができる。この画像処理の主体は、プロセッサ101であってよい。また、制御装置100が、図示を省略する画像処理ユニットを更に備えてよく、該画像処理ユニットが制御装置100に接続される構成でもよい。プロセッサ101による制御の下、この画像処理ユニットによって、画像処理を行うことができる。
【0038】
エンドエフェクタ接続部105は、エンドエフェクタ2との接続を確保する構成要素であり、エンドエフェクタ接続部105を介して制御装置100とエンドエフェクタ2(およびロボットアーム1)とが接続される。この接続は、コネクタおよびケーブル等を用いた有線接続であってよいが、無線による接続であってもよい。この接続の際、エンドエフェクタ接続部105は、エンドエフェクタ2を識別する識別情報をエンドエフェクタ2から取得する。すなわち、エンドエフェクタ接続部105は、識別情報取得部として機能する。なお、識別情報を、プロセッサ101がエンドエフェクタ接続部105からさらに取得してよい。この識別情報によって、接続されたエンドエフェクタ2の種類を特定することが可能である。
【0039】
通信装置106は、ネットワークを介して外部と通信を行うための構成要素である。なお、この通信は有線通信であっても、無線通信であってもよい。
【0040】
入出力インターフェース107は、制御装置100の間でデータもしくは情報の入出力を行うインターフェースとしての機能を有する。
【0041】
なお、制御装置100の上記構成は一例であり、必ずしも上記の構成要素を全て備えていなくともよい。また、制御装置100は追加の構成要素をさらに備えていてもよい。例えば、箱型の制御装置100が車輪を有し、制御装置100の上にロボットアーム1およびエンドエフェクタ2を載せて自走してもよい。この場合、図1から図4に示したようなレールRは不要となる。
【0042】
(コーティング剤の塗布制御例)
図12は、上記の制御装置100による制御に基づいた、塗布工程を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、1つのワークWkに対する処理工程を示している。しかし、複数のワークWkを、同様のフローに従って順次、塗布処理してよい。
【0043】
まず、プロセッサ101による制御の下、ロボット装置500がワークWkを作業台Tの載置部T1にセットする(ステップSt101)。より詳しくは、プロセッサ101によって制御されたロボット装置500は、保管用のストック棚等に配置されたワークWkを第1フィンガF1および第2フィンガF2によって把持し、ワークWkを移動させて、作業台Tの載置部T1にワークWkを載置する。
【0044】
次に、プロセッサ101による制御の下、エンドエフェクタ2が、ワークWkに対してコーティング剤の塗布を行う(ステップSt102)。この塗布は、エンドエフェクタ2が備える筆Brによって行われる。
【0045】
次に、プロセッサ101が、カメラCAMによって撮像された撮像画像に基づき、塗布が成功しているか否かを判定する(ステップSt103)。なお、カメラCAMは、少なくとも筆Brの筆先を撮像する。この撮像は、所定の時間経過ごとに行われて良く、連続的に行われてもよい。撮像された画像は、画像取得部104を介して取得され、プロセッサ101によって判定処理が行われる。この判定処理の具体例については、図13以降に基づき後述する。
【0046】
塗布が成功していると判定された場合(ステップSt103:塗布OK)、プロセッサ101による制御の下、ロボット装置500がワークWkを作業台Tの載置部T1から取り外す(ステップSt104)。取り外されたワークWkは、ロボット装置500によって、次の作業工程へと移送される。
【0047】
塗布が失敗していると判定された場合(ステップSt103:塗布NG)、プロセッサ101は、塗布作業中のワークWkに対する塗布回数が、所定の回数(N)を超えたか否かを判定する。塗布作業中のワークWkに対する塗布回数がN回を超えていた場合(ステップSt105:Yes)、プロセッサ101が異常を検知する(ステップSt106)。なお、異常を検知した際には、図示を省略する通知手段(アラーム、蛍光ランプ等)を用いて、制御装置100の外部に対して異常を通知してもよい。
【0048】
異常を検知した場合(ステップSt106)、ワークWkを作業台Tの載置部T1から取り外す、ステップSt104へと処理が遷移する。ただし、異常が検知されたワークWkは、塗布が失敗しているので、取り外されたワークWkは次の作業工程へは移送されず、修繕後、再利用または破棄等される。
【0049】
ステップSt105において、塗布回数が所定の回数(N)を超えていない場合(ステップSt105:No)は、ステップSt102へと戻って、ワークWkに対する再度の塗布(塗りなおし)を行う。なお、塗りなおしの際には、前回の塗布における塗布条件とは異なる条件で、再度の塗布を行ってもよい。例えば、前回の塗布とは塗布方向を縦方向(x軸方向)から横方向(y軸方向)に変える、塗布する箇所(座標)を前回とは異なるものにする、等である。
【0050】
また、塗布が終了したワークWkに対しては、検査を行ってもよい。上述のように、ワークWkに塗布するコーティング剤には、ブラックライトで光る染料等が混入していてもよい。塗布作業が終了したワークWkに図示を省略するブラックライトを当てることで、塗布の漏れ部分やムラが無いかどうかを検査することができる。この検査は、ワークWkを作業台Tの載置部T1から取り外す(ステップSt104)より前に行ってもよく、後に行ってもよい。
【0051】
(塗布の成功/失敗判定)
次に、図13以降を参照し、前述のステップSt103における、塗布の成功/失敗を判定する具体例について説明する。前述の通り、カメラCAMは、筆Brの筆先を撮像している。この撮像画像に基づいて、プロセッサ101が塗布の成功/失敗を判定する。より特定的には、カメラCAMによって撮像された筆Brの筆先の形状に基づいて、プロセッサ101が塗布の成功/失敗を判定する。
【0052】
まず、図13は、ワークWkに筆Brの筆先が接していない状態(塗布していない状態)を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図、(c)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す図である。
【0053】
図13の(a)および(b)に示すように、塗布が行われていない場合には、筆Brの筆先がワークWkに接していない。そのため、撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状は、変形の無い初期状態の形状(以下、初期形状)を呈している。なお、エンドエフェクタ2が用いる筆Brの筆先の初期形状は種々のものが考えられるが、図13の(c)の例においては、略長方形であるとして例示している。この初期状態における筆先の形状を示すデータが、制御装置100のメモリ102等に保存されてよい。
【0054】
次に、図14は、ワークWkに対して、撮像画像の下方向(+x方向)に向けて塗布を行っている状態を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図、(c)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第1の図、(d)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第2の図である。なお、図14図18において、上下方向(x軸方向)および左右方向(y軸方向)は、カメラCAMによって撮像された撮像画像における上下左右の各方向を示している。
【0055】
図14の(a)および(b)に示すように、撮像画像の下方向に向けて塗布を行っている場合、筆Brの筆先はワークWkに接触して変形する。この変形が、カメラCAMによる撮像画像に写りこむことになる。
【0056】
図14の(c)に示すように、撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状は、初期形状と比べて、より縦長の略長方形の形状を呈している。すなわち、筆Brの筆先の形状が、撮像画像上で認識可能なほどに変形している。そこで、プロセッサ101は、例えば図14の(c)、(d)に示すように、筆先の先端部が変形している場合に、塗布が成功していると判定する(ステップSt103:塗布OK)。反対に、筆先の先端部が変形していることを撮像画像から検知できない場合に、プロセッサ101は、塗布が失敗していると判定する(ステップSt103:塗布NG)。
【0057】
より具体的な判定例を説明する。図14の(d)に示した破線は、初期形状における筆先の先端部の位置を示している。この破線部から撮像画像の上方向に、筆先の先端部がはみ出ていることが、撮像画像から検知できる場合に、塗布が成功していると判定する(ステップSt103:塗布OK)。撮像画像における下方向に筆を動かして塗布しているので、筆Brの筆先の先端部は撮像画像における上方向に移動するのが自然だからである。なお、メモリ102に保存された、筆Brの筆先の初期形状を示すデータをプロセッサ101が取得し、この初期形状との比較を行うことにより、上記の判定を行ってよい。
【0058】
図15は、ワークWkに対して、撮像画像の上方向(-x方向)に向けて塗布を行っている状態を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図、(c)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第1の図、(d)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第2の図である。
【0059】
図15の(a)および図15(b)に示すように、撮像画像の上方向に向けて塗布を行っている場合、筆Brの筆先はワークWkに接触して変形する。この変形が、カメラCAMによる撮像画像に写りこむことになる。
【0060】
図15の(c)に示すように、撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状は、初期形状と比べて、上下方向により短い略長方形の形状を呈している。すなわち、筆Brの筆先の形状が、撮像画像上で認識可能なほどに変形している。そこで、プロセッサ101は、例えば図15の(c)、(d)に示すように、筆先の先端部が変形している場合に、塗布が成功していると判定する(ステップSt103:塗布OK)。反対に、筆先の先端部が変形していることを撮像画像から検知できない場合に、プロセッサ101は、塗布が失敗していると判定する(ステップSt103:塗布NG)。
【0061】
より具体的な判定例を説明する。図15の(d)に示した破線は、初期形状における筆先の先端部の位置を示している。この破線部よりも撮像画像の下方向へと、筆先の先端部が引き込まれていることが、撮像画像から検知できる場合に、塗布が成功していると判定する(ステップSt103:塗布OK)。撮像画像における上方向に筆を動かして塗布しているので、筆Brの筆先の先端部は撮像画像における下方向に移動するのが自然だからである。なお、メモリ102に保存された、筆Brの筆先の初期形状を示すデータをプロセッサ101が取得し、この初期形状との比較を行うことにより、上記の判定を行ってよい。
【0062】
図16は、ワークWkに対して、撮像画像の左方向(+y方向)に向けて塗布を行っている状態を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図、(c)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第1の図、(d)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第2の図である。
【0063】
図16の(a)および(b)に示すように、カメラCAMの左方向に向けて塗布を行っている場合、筆Brの筆先はワークWkに接触して変形する。この変形が、カメラCAMによる撮像画像に写りこむことになる。
【0064】
図16の(c)に示すように、撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状は、初期形状と比べて、毛先が右側にずれたような形状を呈している。すなわち、筆Brの形状が、画像上で認識可能なほどに変形している。そこで、プロセッサ101は、例えば図16の(c)、(d)に示すように、筆先の先端部が変形している場合に、塗布が成功していると判定する(ステップSt103:塗布OK)。図16の例においては、撮像画像における右方向への筆先の先端部の移動を検知した場合である。反対に、筆先の先端部が変形していることを撮像画像から検知できない場合に、プロセッサ101は、塗布が失敗していると判定する(ステップSt103:塗布NG)。
【0065】
より具体的な判定例を説明する。図16の(d)に示した破線は、初期形状における筆先の先端部の位置を示している。この破線部よりも撮像画像の右方向へと、筆先の先端部が引き込まれていることが、撮像画像から検知できる場合に、塗布が成功していると判定する(ステップSt103:塗布OK)。撮像画像における左方向に筆を動かして塗布しているので、筆Brの筆先の先端は撮像画像における右方向に移動するのが自然だからである。なお、メモリ102に保存された、筆Brの筆先の初期形状を示すデータをプロセッサ101が取得し、この初期形状との比較を行うことにより、上記の判定を行ってよい。
【0066】
図17は、ワークWkに対して、撮像画像の右方向(-y方向)に向けて塗布を行っている状態を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図、(c)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第1の図、(d)撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状を示す第2の図である。
【0067】
図17の(a)および(b)に示すように、撮像画像の左方向に向けて塗布を行っている場合、筆Brの筆先はワークWkに接触して変形する。この変形が、カメラCAMによる撮像画像に写りこむことになる。
【0068】
図17の(c)に示すように、撮像画像に写りこんだ筆Brの筆先の形状は、初期形状と比べて、筆先の先端部が左側にずれた形状を呈している。すなわち、筆Brの形状が、画像上で認識可能なほどに変形している。そこで、プロセッサ101は、例えば図17(c)、(d)に示すように、筆先の先端部が変形している場合に、塗布が成功していると判定する(ステップSt103:塗布OK)。図17の例においては、撮像画像における左方向への筆先の先端部の移動を検知した場合である。反対に、筆先の先端部が変形していることを撮像画像から検知できない場合に、プロセッサ101は、塗布が失敗していると判定する(ステップSt103:塗布NG)。
【0069】
より具体的な判定例を説明する。図17の(d)に示した破線は、初期形状における筆先の先端部の位置を示している。この破線部よりも撮像画像の左方向へと、筆先の先端部が移動していることが、撮像画像から検知できる場合に、塗布が成功していると判定する(ステップSt103:塗布OK)。撮像画像における右方向に筆を動かして塗布しているので、筆Brの筆先の先端は撮像画像における左方向に移動するのが自然だからである。なお、メモリ102に保存された、筆Brの筆先の初期形状を示すデータをプロセッサ101が取得し、この初期形状との比較を行うことにより、上記の判定を行ってよい。
【0070】
以上のように、ワークWkに対して、撮像画像の上下左右の各方向に向けて塗布を行った場合について説明した。図18は、これらをまとめたものである。図18の中央部に示された筆Brの筆先の形状が、筆先の初期形状である。この初期形状と比較した場合、下方向塗布であれば撮像画像の上方向に、上方向塗布であれば撮像画像の下方向に、右方向塗布であれば撮像画像の左方向に、左方向塗布であれば撮像画像の右方向に、筆先の先端部が移動、変形する。この移動および変形をカメラCAMによって検知する。
【0071】
以上、撮像画像の上下左右方向に向けて塗布を行っている場合の、塗布の成功/失敗判定について説明したが、例えば撮像画像の右上方向、右下方向等のように、斜め方向に向けて塗布を行う場合も考えられる。このような場合も、筆先の形状変化をカメラCAMによる撮像画像に基づいて検知することにより、塗布の成功/失敗判定を行うことができる。例えば撮像画像の右上に向けて塗布を行っている場合は、筆先の先端部は左下方向に移動するように変形するので、この変形を撮像画像に基づいて検知することができる。この場合は、筆先の先端部の左方向および下方向への移動を、撮像画像から検知すればよい。他の斜め方向に塗布を行う場合も、同様にして塗布の成功/失敗判定を行うことができる。
【0072】
(カメラCAM、筆Br、マーカMの相対位置関係)
次に、図19に基づいて、カメラCAMと、筆Brと、マーカMとの間の相対位置関係を示す。図19は、エンドエフェクタ2を示す図であり、(a)正面図、(b)平面図、(c)側面図である。
【0073】
図19にあるように、フィンガFはマーカMを備えていてよい。この場合、カメラCAMは、筆Brの筆先と、フィンガFのマーカMとが両方映り込む(画角内に両者が入る)位置に配置されている。その結果、カメラCAMが筆Brの筆先とマーカMとを同時に撮像することができる。なお、支持部材がフィンガF以外の部材であった場合も、支持部材にマーカを設ける、または支持部材自体に何らかの特徴的な形状や模様等が現れるように構成する、等の手段により、筆先とマーカ(特徴的な形状や模様等を含む)とを同時に撮像することができる。
【0074】
さらに好適には、図19の(a)~(c)に示されているように、筆Brから見た時に、カメラCAMと、エンドエフェクタ2のフィンガF(およびフィンガFが備えるマーカM)とが同じ側にない。これを言い換えると、図19の(a)、(c)に示すフィンガFがワークWkを把持している把持状態ではz軸方向(図10の(a)に示すワークWkに対してコーティング剤を塗布できる状態ではx軸方向)に、カメラCAM、筆Br、フィンガFの順番で各部材が並んでいる。このような相対位置関係であれば、カメラCAMから見た時の筆Brは、カメラCAMから見たときの第1フィンガF1および第2フィンガF2よりも、より近い位置に配置されることになる。その結果、撮像画像に写りこむ筆Brの筆先をより高精度に撮像することができるので、塗布が成功しているか否かを判定(ステップSt103)する判定精度が向上する。
【0075】
ただし、カメラCAMと、筆Brと、マーカMとの間の相対的位置関係は、上記とは異なるものであってもよい。例えば、マーカMから見た時に、カメラCAMと筆Brとが同じ側にないような位置関係にすることができる。これを言い換えると、カメラCAM、マーカM、筆Brの順番で各部材が並んでいる。このような相対的位置関係であっても、カメラCAMによって撮像を行う際に、マーカMが筆Brの筆先を遮らないような位置に、マーカMを配置することにより、撮像画像に筆先とマーカMとが両方同時に写りこむようにすることができる。
【0076】
以上のように、ワークWkに対する筆Brによる塗布を行う塗布状態において、筆Brの筆先が、支持部材(フィンガF等)よりも、ワークWk側に突出する。これにより、塗布を行う際に、支持部材がワークWk等に衝突することを回避できる。
【0077】
また、カメラCAMと支持部材とが、筆Brから見た同じ側にない。これにより、カメラCAMから見た時の筆Brが、カメラCAMから見たときの支持部材(第1フィンガF1および第2フィンガF2等)よりも、より近い位置に配置されることになる。その結果、撮像画像中における筆Brをより高精度に撮像することができるので、塗布が成功しているか否かを判定する判定精度が向上する。
【0078】
また、エンドエフェクタ2を制御する制御装置100が制御部(プロセッサ101)を備え、制御部は、筆BrによりワークWkに対して塗布を行っている際の、カメラCAMが撮像した撮像画像における筆Brの筆先の形状が、筆先の初期形状から変化している場合に、塗布が成功していると判定する。これにより、カメラCAMを用いて筆先の形状変化を検知して、塗布の成功/失敗を判定することができる。
【0079】
また、塗布における筆Brの移動方向とは反対側の方向に向けて、筆Brの先端部の位置が変化している場合に、塗布が成功していると判定する。これにより、塗布の成功/失敗を、筆Brの移動方向に応じて正しく判定することができる。
【0080】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示は、カメラと、支持部材と、筆とを備えたエンドエフェクタとして有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 ロボットアーム
2 エンドエフェクタ
100 制御装置
101 プロセッサ
102 メモリ
103 入力装置
104 画像取得部
105 エンドエフェクタ接続部
106 通信装置
107 入出力インターフェース
500 ロボット装置
Br 筆
CAM カメラ
F フィンガ(支持部材)
F1 第1フィンガ
F2 第2フィンガ
G 溝
J 関節軸
L 関節(リンク)
M マーカ
R レール
T 作業台
T1 載置部
Wk ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19