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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】農業用被覆シート
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/00 20060101AFI20230210BHJP
   A01G 13/02 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
A01G13/00 302Z
A01G13/02 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022041950
(22)【出願日】2022-03-16
【審査請求日】2022-03-30
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594183473
【氏名又は名称】有限会社山橋建設
(74)【代理人】
【識別番号】593206311
【氏名又は名称】山橋 重隆
(72)【発明者】
【氏名】松本 正市
(72)【発明者】
【氏名】山橋 重隆
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-050442(JP,U)
【文献】実開昭58-041154(JP,U)
【文献】実開平04-028046(JP,U)
【文献】登録実用新案第3188396(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第04222009(DE,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02729536(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/02
A01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形のシートであって、その長辺側の両端を折り返し、前記折り返しの中央部より内側をシートの長辺に沿って接合して筒状部を構成し、前記筒状部の長手方向に所定間隔で複数個の貫通孔を設け、前記筒状部の少なくとも一方に、前記貫通孔より外側に紐を通したことを特徴とする農業用被覆シート。
【請求項2】
略長方形のシートであって、その長辺側の両端を複数回折り返して少なくともシー トの重なり枚数を3枚以上とし、前記シートが3枚以上重なった箇所の中央部より内側と外側をシートの長辺に沿ってそれぞれ接合して帯状部を構成し、前記帯状部の長手方向に 所定間隔で複数個の貫通孔を設けたことを特徴とする農業用被覆シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物を栽培する畝やビニールトンネルに被せるシート、果樹の下に敷くシートなどの農業用被覆シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業用被覆シートには、保温や雑草防止を目的とした黒い不透明のマルチシート、ビニールトンネルに被せる透明シートや不織布シート、果樹の下に敷く反射シートなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭52-05943
【文献】特許3862727
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
畑に畝を作り農作物を栽培する場合、保温ないし雑草防止を目的として、マルチシートと呼ばれる黒い農業用のシートを畝の表面に被せることがある。 一般的には、長方形の黒いシートを畝に沿って被せ、このシートの両端部の上から土を盛り付け畝に固定していた。
また、保温ないし促成栽培を目的として、透明または半透明のシートを半円形の支柱に被せてビニールトンネルを作り、このシートの両端部の上から土を盛り付け畝に固定していた。
しかし、このシートの固定方法は土の盛り付け作業に手間が掛り、土を十分に盛り付けていないと風により捲れ上がって外れることがあり、シートを安全かつ確実に固定し難かった。
【0005】
この解決策として、特許文献1ではシートの両端部のシートを折り返して一定間隔で接合して接縁部に沿ってポケットを形成し、このポケットに土砂などを詰めてその重みでシートを地面に固定している。
特許文献2ではシートの両端部のシートを折り返して、その内側を一定間隔で交互に接合してポケットを形成し、このポケットに土壌などを詰めてその重みでシートを地面に固定している。
前記のいずれの方法においても、シートの両端部にポケットを形成し、シートの取付け前にポケットに土壌を詰めているので、ポケット内に十分な重りとなる量の土壌を詰めるのは単純にシートの上に土を盛付けるよりも手間が掛るし、シートを回収する前には一度詰めたポケット内の土壌をポケットから取り出さなければならず、回収にも相当手間が掛るし雨天後には泥塗れになるので、これを避けるには雨天後に日数を経ないと直ぐには回収できないなどの不具合がある。

本発明は上記に鑑みて、シートの取付け作業が極めて簡単で回収も容易な、安全かつ確実に固定できる農業用被覆シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の農業用被覆シートは略長方形のシートであって、その長辺側の両端を折り返し、折り返しの中央部より内側をシートの長辺に沿って接合して両端に筒状部を構成し、筒状部の長手方向に所定間隔で複数個の貫通孔を設けたことを特徴とする。
本発明の農業用被覆シートの筒状部に棒やパイプ等を通してこれを重りとして活用すると、風でシートが捲れ難く、取り付け作業も極めて容易となる。シートが長い場合は貫通孔から他の棒などをシートの長さ方向に必要本数通すことができる。複数個の貫通孔を設けているので任意の箇所で任意の棒を挿入できる。必要により、前記貫通孔に所定間隔で固定具を通して地面に差し込めば、より強固な固定ができる。
【0007】
第2の発明は、前記農業用被覆シートにおいて折り返しと接合により構成された筒状部の一方に、あるいは両方の筒状部に紐を通したことを特徴とする。この紐は柔軟性があり丈夫な紐を使用する。
第2の発明の農業用被覆シートの筒状部に設けた貫通孔に所定間隔で固定具を通し、紐が外側になるように地面に差し込んで紐とシートを大地に固定する。固定具と固定具の間で紐が大地にしっかりと固定されるとともに、筒状部に紐を通しているのでシートも同時に固定され、風で農業用被覆シートが捲れ難く取り付け作業も極めて容易できれいである。
【0008】
第3の発明の農業用被覆シートは、略長方形のシートのその長辺側の両端を複数回折り返して少なくともシートの重なり枚数を3枚以上とし、前記シートが3枚以上重なった箇所の中央部より内側と外側をシートの長辺に沿ってそれぞれ接合して帯状部を構成し、前記帯状部の長手方向に所定間隔で複数個の貫通孔を設けたことを特徴とする。前記貫通孔は2列の接合部の間に設けるのが望ましい。
第3の発明の農業用被覆シートの帯状部の貫通孔に、所定間隔で固定具を通し地面に差し込んで帯状部を大地に固定する。帯状部は3枚以上のシートが重なり接合されて丈夫な帯状となっているので、固定具と固定具の間も帯状部が大地にしっかりと固定され、風で農業用被覆シートが捲れ難く取り付け作業も極めて容易できれいである。
なお、本発明の農業用被覆シートは、畝に被せる黒色や不織布などのマルチシートや 、地上に支柱を設置しその上に透明や不織布などのビニールシートを被せるビニールトンネルの覆いや、支柱を交差させて支柱間に網を張りエンドウ豆などを栽培する方式の防寒対策用シートとしても用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のいずれの農業用被覆シートにおいても、シートを固定するのに土を盛り付けておらず、また、特許文献1や2のようにシートの両端にポケットを設けて、設置時にポケットに土壌を詰めたり、回収前に詰めた土壌を取り出したりする作業がないので、土壌による汚れが少なく、シートの設置作業が簡単で、また、回収するのも容易で、汚れが少ないので回収したシートを再使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る農業用被覆シートを示す図である。
図2】第2の本発明に係る農業用被覆シートを示す図である。
図3】(a)は第3の本発明に係る農業用被覆シートを示す図である。
図4】(b)(c)はシートを3枚重ねに折り返す方法を示す断面図である。
図5】(d)(e)はシートを4枚重ねに折り返す方法を示す断面図である。
図6】本発明に係る農業用被覆シートをビニールトンネルに適用した断面斜視図である。
図7】第2の本発明に係る農業用被覆シートを畝にマルチングした断面斜視図である。
図8】第3の本発明に係る農業用被覆シートを畝にマルチングした断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例
【0012】
本発明にかかわるシートには、材質、厚さ、幅、長さ、透明、不透明、色付き等により色々な種類があり、用途、畝幅、長さなどに合わせて選定される。例えば、寸法では、厚さは0.02~0.1mm、幅は95~600cm、長さは50m,100m等がある。
畝に直接被せる黒いマルチングフィルムの場合、シートの幅95cm、厚さ0.03mmのポリエチレンフィルムが、ビニールトンネル用の透明フィルムの場合、シート幅は180cm、厚さ0.03mmのポリエチレンフィルムがよく使用されている。
図1は、本発明に係る農業用被覆シート10で、シート1の両端部の約10cm程度を折り返し、折り返したシート1の端部に近い個所でシート1同士を融着接合した接合部3を設けて筒状部4を形成し、前記筒状部4の長さ方向に所定間隔で5cm程度の貫通孔5を開けて農業用被覆シート10は完成する。 完成した農業用被覆シート10はロール状に巻き取って保管する。
【0013】
なお、融着接合は通常連続的に接合するが、接合部と非接合部を交互に設ける場合は、接合部の長さが非接合部の長さよりも長い方が好ましい。また、接合方法は融着接合するのが簡便である。
図1の農業用被覆シート10の筒状部4に長さ2~3mの棒を通し、これを農業用被覆シート10の両側の重りとして機能させる。長い農業用被覆シート10に対しては、筒状部4に設けた貫通孔5から次の棒を容易に差し込むことができるので、長い農業用被覆シート10にも対処できる。必要により、前記貫通孔5の所々に固定具13を通して畝に突き刺せば農業用被覆シート10をより強固に大地に固定できる。
棒として農業現場でよく使用されている鉄パイプを使う場合、重量があるので鉄パイプと鉄パイプの間隔を大きくして貫通孔5に固定具13を通して畝に突き刺してもよい。
【0014】
図2は第2の本発明に係る農業用被覆シート11で、第1の発明の農業用被覆シート10の筒状部4の中に柔軟で丈夫な紐6を通した構成としている。紐6は農業用被覆シート11と同等以上の長さを有している。農業用被覆シート11を長さ方向に引っ張って、筒状部4に開けられた貫通孔5を通して所定間隔で固定具13を大地に差し込んでシート1と紐6を固定する。筒状部4に紐6を通しているので、固定具13と固定具13の間も紐6で農業用被覆シート11が大地にしっかりと固定され、風でシートが捲れ難く取り付け作業も極めて容易である。
【0015】
図3(a)は第3の本発明の農業用被覆シート12を示す。農業用被覆シート12の両端は、幅10cm程度でシート1の重なり枚数を3枚以上とし、前記シート1が3枚以上重なった箇所の中央部より内側と外側をシート1の長辺に沿って重ねた箇所が一体となるようにそれぞれ融着接合して2列の接合部3を有する帯状部7が形成され、帯状部7の接合部3と接合部3の間には5cm程度の複数個の貫通孔5を設けている。貫通孔5を通して所定間隔で固定具13を大地に差し込み、農業用被覆シート12を固定する。農業用被覆シート12の両端部は3枚以上のシートが重なり2列の接合部を有する丈夫な帯状部7を構成しているので、固定具13と固定具13の間の農業用被覆シート12も大地にしっかりと固定され、風でシートが捲れ難く取り付け作業も極めて容易である。
【0016】
図4(b)は図3(a)のA-A断面図でシート1を3枚重ねにする折り返し方法の一例を示している。シート1の両端部を20cm程度折り返し、その後、10cm幅で最初の折り返し方向と反対側に折り返し、シート1の枚数が3枚重ねとなるように構成する。折り返したシート1の10cm幅の中央部より内側と外側をシート1の長辺に沿って重ねた3枚が一体となるようにそれぞれ融着接合して2列の接合部3を有する帯状部7を形成し、帯状部7の中央に約30cm間隔で5cm程度の貫通孔5を設けている。
【0017】
(c)はA-A断面図でシート1を3枚重ねにする折り返し方法の他の例を示している。シート1の両端部を10cm程度折り返し、その後、更に10cm程度を同一方向に先の折り返しを巻き込むように折り返し、シート枚数が3枚重なるように構成する。折り返したシート1の10cm幅の中央部より内側と外側をシート1の長辺に沿って重ねた3枚が一体となるようにそれぞれ融着接合して2列の接合部3を有する帯状部7を形成し、帯状部7の中央に約30cm間隔で5cm程度の貫通孔5を設けている。
【0018】
図5(d)は図3(a)のA-A断面図でシート1を4枚重ねにする折り返し方法を示している。シート1の両端部を30cm幅程度折り返し、その後、最初の折り返し方向と反対側に20cm幅で折り返し、更に最初の折り返し方向と同一方向に10cm幅で折り返し4枚重ね部を作る。
折り返したシート1の10cm幅の中央部より内側と外側をシート1の長辺に沿って重ねた4枚が一体となるようにそれぞれ融着接合して2列の接合部3を有する帯状部7を形成し、帯状部7の中央に約30cm間隔で5cm程度の貫通孔5を設けている。
【0019】
(e)はA-A断面図でシート1を4枚重ねにする折り返し方法の他の例を示している。シート1の両端の20cm幅程度を折り返して2枚重ね部を作り、これを再度同一方向に折り返して約10cm程度の4枚重ね部を作る。折り返したシート1の10cm幅の中央部より内側と外側をシート1の長辺に沿って重ねた4枚が一体となるようにそれぞれ融着接合して2列の接合部3を有する帯状部7を形成し、帯状部7の中央に約30cm間隔で5cm程度の貫通孔5を設けている。
【0020】
図6は本発明の農業用被覆シート10をビニールトンネルに適用した例を示す。農業用被覆シート10は透明または半透明のものを使用する。4は筒状部、5は筒状部に設けた貫通孔、13はT字状の固定具、14はビニールトンネルの支柱、15は畝、16は長さ2~3m、太さ3cm程度の生竹16であり、生竹16が重りとして機能し農業用被覆シート10を固定しているので、風で捲れ難く取り付け作業も極めて容易である。固定具13は生竹16が外側になるように差し込む。長い農業用被覆シート10に対しては、筒状部4に設けた貫通孔5から次の生竹16を容易に差し込むことができるので、長い農業用被覆シート10にも対処できる。必要により、前記貫通孔5の所々に固定具13を通して畝15に差し込めば、より強固な固定ができる。生竹16の代わりに農場でよく使用されている鉄パイプを使うと重り効果をより向上できる。
回収する場合も、生竹16を筒状部4から抜き取り固定具13を引き抜くだけでよく、ポケットへの土壌投入や掻き出しもないので泥で汚れることもなく作業がきれいで簡単であるし、農業用被覆シート10は汚れが少ないので再使用することができる。
【0021】
図7は本発明の農業用被覆シート11を畝15のマルチングに適用した例を示す。シート1は黒で不透明のものを使用する。4は筒状部、5は筒状部に設けた貫通孔、6は紐、13はT字状の固定具であり紐6と農業用被覆シート11を大地に固定する。固定具13は紐6が外側になるように差し込む。筒状部4に紐6を通しているので、固定具13と固定具13の間の筒状部4は紐6で大地にしっかりと固定されるので、風で農業用被覆シート11が捲れ難く、取り付け作業も極めて容易である。
回収する場合も、固定具13を引き抜くだけでよく、ポケットへの土壌投入や掻き出しもないので泥で汚れることもなく、作業がきれいで紐6は柔軟性があるので回収作業が簡単で、回収した農業用被覆シート11は汚れが少ないので再使用することができる。
【0022】
図8は本発明の農業用被覆シート12を畝15のマルチングに適用した例を示す。農業用被覆シート12も他の農業用被覆シート10、11と同様な使用方法ができる。帯状部7は複数枚のシート1を重ねて融着接合され、丈夫な帯となっているので、T字状の固定具13を貫通孔5に通して畝15に差し込むことにより、固定具13と固定具13の間も帯状部7が大地にしっかりと固定されるので、風で農業用被覆シート12が捲れ難く、取り付け作業も極めて容易である。
回収する場合も、固定具13を引き抜くだけでよく、特許文献1や2のようにポケットへの土壌投入や掻き出しもないので泥で汚れることもなく、回収した農業用被覆シート12は汚れが少ないので再使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る農業用被覆シート10,11,12は、固定するのにシートのポケットに土壌を詰めたり、回収する前に詰めた土壌を掻き出したりする作業がなく、筒状部4に棒の出し入れや固定具13の大地への差し込み引き抜きだけでよく、設置作業や回収作業が簡単で土壌による汚れが少なく、また、回収したシートは汚れが少ないので再使用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 シート(ポリエチレン)
3 接合部
4 筒状部
5 貫通孔
6 紐
7 帯状部

10 農業用被覆シート
11 紐を通した農業用被覆シート
12 帯状部を有する農業用被覆シート
13 T字状の固定具
14 支柱
15 畝
16 生竹


【要約】      (修正有)
【課題】畑に畝を作り農作物を栽培する場合、一般的な農業用被覆シートは、長方形の黒いシートを畝に被せ、このシートの両端部の上から土を盛付けるとか、シート両端にポケットを設けてポケットに土を入れて畝に固定していたが、土を扱うので設置作業や回収作業に手間が掛っていた。
【解決手段】本発明の農業用被覆シートは略長方形のシートであって、その長辺側の両端を折り返し、折り返しの内側を長辺に沿って接合して筒状部を設け、筒状部に紐を通すとともに所定間隔で複数個の貫通孔を開けたことを特徴とする。貫通孔に固定具を通して畝に差し込めば紐とシートを固定でき、風でシートが捲れ難く設置や回収作業が簡単で、回収した農業用被覆シートは汚れが少なく再使用できる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8