(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】電子機器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/09 20060101AFI20230210BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20230210BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
H05K1/09 D
H05K1/02 B
H05K1/02 J
H05K1/03 670A
(21)【出願番号】P 2019049146
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】岸 新
(72)【発明者】
【氏名】池内 智史
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-56462(JP,A)
【文献】特開2009-117496(JP,A)
【文献】特開2017-147163(JP,A)
【文献】特開2018-14381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/09
H05K 1/02
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性基材と、
前記伸縮性基材の表面に形成された配線パターンと、
前記配線パターンに接続された電極を備える回路部材と、を備え、
前記配線パターンは、伸縮性樹脂と、導電性材料と、を含み、
前記電極の少なくとも一部は、前記配線パターンに埋没しており、
前記配線パターンを第1方向に伸張したとき、前記第1方向において、伸張後の前記配線パターンの電気抵抗値が伸張前の前記配線パターンの電気抵抗値の120%になるときの前記配線パターンの伸長率は、5%以上である、電子機器。
【請求項2】
前記伸縮性樹脂は、ウレタン樹脂であり、
前記導電性材料は、アスペクト比2以上のフィラーを含む、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記導電性材料の含有量は、前記配線パターンの30体積%以上、80体積%以下である、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂は、分子量300以上、5,000以下のポリオールとブロックイソシアネートとの反応生成物である、請求項2または3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記ポリオールの水酸基価は、40mgKOH/g以上、800mgKOH/g以下である、請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記ポリオールは、ポリエステルポリオールである、請求項4または5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記ポリオールと前記ブロックイソシアネートとの反応温度は、150℃以下である、請求項4~6のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記導電性材料は、アスペクト比2未満のフィラーをさらに含む、請求項2~7のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項9】
ポリオールと、ブロックイソシアネートと、アスペクト比2以上のフィラーを含む導電性材料と、を含む導電性組成物を準備する工程と、
前記導電性組成物を伸縮性基材上に塗布する工程と、
塗布された前記導電性組成物と回路部材の電極とが接触するように、前記伸縮性基材に前記回路部材を搭載する工程と、
塗布された前記導電性組成物を加熱して、前記導電性材料と、前記ポリオールと前記ブロックイソシアネートとの反応生成物とを、含む配線パターンを形成するとともに、前記電極と前記配線パターンとを接続する工程と、を備える、電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有する電子機器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の用途拡大に伴い、電子機器に伸縮性が要求される場合がある。
そこで、特許文献1および2は、金属粉と特定の樹脂とを含み、伸縮性に優れる樹脂組成物を提案している。この樹脂組成物は、例えば、基材上に配線パターンを形成するため用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/114278号パンフレット
【文献】国際公開第2017/026420号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、配線パターンの形成に用いられる樹脂組成物は溶媒を含んでいる。配線パターンは、描画された後、素早く固定させる必要があるため、上記溶媒として揮発性の高い化合物が用いられる。そのため、樹脂組成物はほとんどタック性を有さず、配線パターンと実装される回路部材との密着性は低い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、伸縮性基材と、前記伸縮性基材の表面に形成された配線パターンと、前記配線パターンに接続された電極を備える回路部材と、を備え、前記配線パターンは、伸縮性樹脂と、導電性材料と、を含み、前記電極の少なくとも一部は、前記配線パターンに埋没しており、前記配線パターンを第1方向に伸張したとき、前記第1方向において、伸張後の前記配線パターンの電気抵抗値が伸張前の前記配線パターンの電気抵抗値の120%になるときの前記配線パターンの伸長率は、5%以上である、電子機器に関する。
【0006】
また、本発明は、ポリオールと、ブロックイソシアネートと、アスペクト比2以上のフィラーを含む導電性材料と、を含む導電性組成物を準備する工程と、前記導電性組成物を伸縮性基材上に塗布する工程と、塗布された前記導電性組成物と回路部材の電極とが接触するように、前記伸縮性基材に前記回路部材を搭載する工程と、塗布された前記導電性組成物を加熱して、前記導電性材料と、前記ポリオールと前記ブロックイソシアネートとの反応生成物とを、含む配線パターンを形成するとともに、前記電極と前記配線パターンとを接続する工程と、を備える、電子機器の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、伸縮性および高い接続信頼性を有する電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子機器の一部を模式的に示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電子機器の要部を模式的に示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電子機器の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
配線パターン上には、通常、様々な回路部材が実装される。回路部材は電極を備えており、この電極を配線パターンに接続させることにより、回路部材は機能する。回路部材と配線パターンとの接続は、通常、はんだを用いて行われる。一般的には、はんだペーストを基材(基板等)に印刷した後、回路部材を基材に搭載する。最後に、リフロー工程によりはんだを溶融し、再度はんだを固化することで、回路部材の電極と、基板の配線パターンとが電気的に接続される。伸縮性基材を用いる場合、固化したはんだは変形し難いため、基材の伸縮に追随できずに電極から剥離してしまう場合がある。
【0010】
本実施形態では、伸縮性を有する樹脂を用いて配線パターンの形成とともに、回路部材と配線パターンとの電気的接続を行う。さらに、回路部材の電極の少なくとも一部を配線パターンに埋没させる。これにより、基材が伸張、収縮および/または屈曲する場合(以下、単に伸縮すると称する。)にも、配線パターン自体の断線、基材と配線パターンとの剥離、さらには配線パターンと回路部材との剥離が抑制される。
【0011】
[電子機器]
本実施形態に係る電子機器は、伸縮性基材と、伸縮性基材の表面に形成された配線パターンと、配線パターンに接続された電極を備える回路部材と、を備える。配線パターンは、伸縮性樹脂と導電性材料とを含む。そのため、配線パターンは伸縮性を有している。
【0012】
配線パターンを第1方向に伸張したとき、第1方向において、伸張後の配線パターンの電気抵抗値が伸張前の配線パターンの電気抵抗値の120%になるときの配線パターンの伸張率は、5%以上である。回路部材が配線パターンに接合されている場合、配線パターンの上記伸長率は4%以上であってよい。
【0013】
さらに、電極の少なくとも一部は、上記配線パターンに埋没している。つまり、電極の底面が配線パターンに接触するとともに、側面の少なくとも一部も配線パターンに接触している。そのため、基材が伸縮する場合、配線パターンは伸縮性基材に追随して変形して、回路部材の脱落が抑制される。よって、本実施形態に係る電子機器は、フレキシブルおよび/またはストレッチャブルでありながら、高い接続信頼性を有する。
【0014】
電子機器は、電気的な入出力、演算および通信等を行う。本実施形態に係る電子機器は、特に身体に近接あるいは密着させて使用するウェアラブル機器として適している。このようなウェアラブル機器は、例えば、縫製あるいは熱接着により衣服に取り付けられたり、粘着剤で身体に貼り付けて用いられたりする。
【0015】
回路部材と配線パターンとを接着する接合材と、配線パターンとが異なる伸縮性の材料により形成される場合、基材が伸縮することによりそれぞれの材料にかかる応力、および、それぞれの材料に残留する応力が異なる。そのため、電子機器の電気的特性や着用感等が低下し易い。本実施形態に係る電子機器は、配線パターンが接合材としても機能するため、上記のような不具合は生じ難い。
【0016】
図1は、本実施形態に係る電子機器の一部を模式的に示す側面図である。
図2は、本実施形態に係る電子機器の要部を模式的に示す側面図である。
【0017】
電子機器100は、伸縮性基材10と、伸縮性基材10の表面に形成された配線パターン20と、配線パターン20に接続された電極31を備える回路部材30と、を備える。配線パターン20は、伸縮性樹脂と導電性材料とを含む。電極31の少なくとも一部は、配線パターン20に埋没している。すなわち、電極31の底面31aおよび側面31bの少なくとも一部が配線パターン20に接触している。
【0018】
伸縮性基材は特に限定されない。伸縮性基材としては、フレキシブル基板、ストレッチャブル基板等と言われる伸縮性および/または屈曲性を有する基板や、その他の伸縮および/または屈曲可能な基材が挙げられる。
【0019】
伸縮性基材の形態としては、例えば、織物、編物および不織布等の繊維構造体、ゴム、樹脂フィルム等が挙げられる。基材の素材は特に限定されない。繊維構造体は、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウレタン、ポリビニルアルコール等の合成繊維;レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維;綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維;およびこれらの複合繊維を含んでいてよい。ゴムは、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等を含んでいてよい。樹脂フィルムは、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンスルホン、ウレタン、シリコーン等などを含んでよい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0020】
基材がゴムあるいは樹脂フィルムである場合、JIS K 7126またはJIS K 7127に準拠して測定された破断時伸びが3%以上である場合、伸縮性基材であると評価できる。
基材が繊維構造体である場合、JIS L 1096の引張強さ及び伸び率A法(ストリップ法)に準じて準拠して測定された伸び率が3%以上である場合、伸縮性基材であると評価できる。
【0021】
伸縮性基材の厚みは特に限定されず、用途等に応じて適宜設定すればよい。
【0022】
伸縮性樹脂は特に限定されず、例えば、伸縮性基材と同様に、JIS K 7126またはJIS K 7127に準拠して測定された破断時伸びが3%以上である場合、伸縮性樹脂であると評価できる。具体的には、ウレタン樹脂、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。なかでも、伸縮性に優れる点でウレタン樹脂が好ましい。
【0023】
導電性材料は特に限定されず、従来公知の導電性フィラーを用いることができる。なかでも、配線パターンの伸張時の導電性が確保され易い点で、導電性材料は、アスペクト比が2以上であるフィラー(以下、扁平フィラーと称する。)を含むことが好ましい。扁平フィラーとしては、フレーク状フィラー、鱗片状フィラーおよび繊維状フィラー(金属ナノワイヤー、金属ナノチューブ等)が例示できる。
【0024】
回路部材は、基材との対向面に外部端子を有するものであれば特に限定されない。回路部材としては、例えば、ICチップ等のベアチップ部品や、インターポーザを具備するパッケージ部品、電子部品モジュール、受動素子などのチップ部品、貫通電極を有する積層半導体等が挙げられる。
【0025】
[電子機器の製造方法]
電子機器は、例えば、以下の方法により製造することができる。
すなわち、本実施形態に係る電子機器は、(1)ポリオールと、ブロックイソシアネートと、アスペクト比2以上のフィラーを含む導電性材料と、を含む導電性組成物を準備する工程(S1)と、(2)導電性組成物を伸縮性基材上に塗布する工程(S2)と、(3)塗布された導電性組成物と回路部材の電極とが接触するように、伸縮性基材に回路部材を搭載する工程(S3)と、塗布された導電性組成物を加熱して、導電性材料と、ポリオールとブロックイソシアネートとの反応生成物とを、含む配線パターンを形成するとともに、電極と配線パターンとを接続する工程(S4)と、を備える方法により製造される。
図3は、本実施形態に係る電子機器の製造方法を示すフローチャートである。
【0026】
(1)導電性組成物の準備工程
導電性組成物は、導電性材料、ポリオール、ブロックイソシアネートおよびその他の添加物を、例えばミキサーなどで混合することによって調製される。
【0027】
(2)導電性組成物の塗布工程
導電性組成物を基材に塗布する方法は特に限定されない。塗布方法としては、例えば、アプリケーター、ワイヤーバー、コンマロール、グラビアロール等を用いるコーティング法:スクリーン、平板オフセット、フレキソ、インクジェット、スタンピング、ディスペンサ等を用いる印刷法等が挙げられる。
【0028】
導電性組成物の塗布量は特に限定されず、電子機器の用途、導電性材料の平均粒径、搭載される回路部材等に応じて適宜設定すればよい。電極を埋没させ易くするために、電極と接触する部分に、厚めに導電性組成物を塗布してもよい。
【0029】
(3)回路部材の搭載工程
伸縮性基材に塗布された加熱前の導電性組成物は、流動性およびタック性を有している。そのため、導電性組成物上に回路部材を搭載すると、回路部材の電極の少なくとも一部は導電性組成物中に埋没し、その状態で導電性組成物に密着する。
【0030】
(4)加熱工程
導電性組成物を加熱することにより、ブロックイソシアネートのブロック剤が解離して、イソシアネート成分とポリオールとが反応する。これにより、電極の少なくとも一部を埋没させた状態のままで、配線パターン(導電性組成物の硬化物)が形成されるとともに、電極と配線パターンとが接続される。つまり、配線パターンは、電子機器の配線であるとともに、回路部材と配線とを電気的に接続する接合材である。さらに言い換えれば、導電性組成物は、配線形成用の材料であり、かつ、接合用の材料である。そのため、それぞれの材料の相性や互いの物性の違い等を考慮することが省略されるとともに、材料間での剥離等の懸念も解消される。
【0031】
加熱工程により、配線パターンの形成とともに、回路部材と配線パターンとの電気的接続が行われるため、工数を削減することが可能となり、電子機器の生産性が向上する。さらに、工数削減による製造コストの低減も期待できる。使用する材料も限定されるため、さらに製造コストは低減され得る。加えて、リフロー工程、さらには熱圧着工程を省略することができる。したがって、基材として、あまり耐熱性の高くない材料を用いることができる。伸縮性を有する素材の多くは、耐熱性があまり高くない。
【0032】
加熱温度は、ポリオールとブロックイソシアネートとの反応温度、基材の融点等に応じて適宜決定される。加熱温度は、例えば、100℃~150℃であってよく、110℃~140℃であってよい。加熱時間は特に限定されないが、60分以下であってよく、45分以下であってよく、30分以下であってよい。
【0033】
[導電性組成物]
導電性組成物は、例えば、ポリオールと、ブロックイソシアネートと、導電性材料と、を含む。導電性材料は、アスペクト比2以上のフィラー(以下、扁平フィラーと称する。)を含むことが好ましい。
【0034】
導電性組成物が加熱されると、ブロックイソシアネートからブロック剤が解離してイソシアネートが生成し、これとポリオールとが反応してウレタン樹脂が生成する。つまり、導電性組成物はウレタン樹脂そのものではなく、ウレタン樹脂の原料を含んでいる。このような導電性組成物は、適度な流動性とタック性とを備える。そのため、導電性組成物は基材に密着しやすく、硬化物もまた、基材に対して高い密着性を有する。
【0035】
さらに、ポリオールとイソシアネートとが反応する際、わずかに導電性組成物の体積は収縮する。よって、さらに基材に対する密着性が高まるとともに、硬化物中に分散している導電性材料同士が接触し易くなって、導電性も高まる。
【0036】
A.ポリオール
ポリオールは、ウレタン樹脂の原料の1つであり、1分子内に2以上の水酸基を有する。
ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、アクリルポリオール等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。ポリオールの含有量は、導電性組成物中の不揮発性成分の例えば30質量%以上、80質量%以下であってよい。以下、導電性組成物中の不揮発性成分を固形分と称する場合がある。導電性組成物中の不揮発性成分の質量は、調製された導電性組成物から溶媒の質量を引いて算出される。また、乾燥後および硬化後の導電性組成物の質量は、導電性組成物中の不揮発性成分の質量とみなしてよい。
【0037】
なかでも、得られるウレタン樹脂の柔軟性および伸縮性が向上し易い点で、ポリエステルポリオールが好ましい。ポリエステルポリオールは、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸等との縮合反応により得られる。全ポリオールの80当量%以上がポリエステルポリオールであってよい。
【0038】
多価アルコールとしては特に限定されず、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール:トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
多価カルボン酸は特に限定されず、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等のテトラカルボン酸類等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0040】
ポリオールの分子量は特に限定されない。ハンドリング性、得られる硬化物の柔軟性および伸縮性の観点から、ポリオールの重量平均分子量は、300以上、5,000以下であってよく、300以上、3,000以下であってよい。
【0041】
ポリオールの水酸基価も特に限定されない。ポリオールの水酸基価は、例えば、40mgKOH/g以上、800mgKOH/g以下であってよく、40mgKOH/g以上、600mgKOH/g以下であってよい。
【0042】
B.ブロックイソシアネート
ブロックイソシアネートは、ウレタン樹脂の原料の1つであり、イソシアネート化合物と、それに含まれるイソシアネート基を保護するブロック剤との反応により得られる。ブロック剤は加熱によって解離して、イソシアネートが生成する。本実施形態に係る導電性組成物は、一液型として調製できる。
【0043】
イソシアネート化合物は特に限定されず、エチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート:イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート:2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート等が挙げられる。イソシアネート化合物は、これらの共重合物、イソシアヌレート体、アダクト体、ビウレット体であってもよい。イソシアネート化合物は、上記のポリオールと反応させたプレポリマーとして含まれてもよい。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0044】
ブロック剤は特に限定されず、フェノール系、アルコール系、オキシム系、β-カルボニル化合物、ラクタム系、アミン系、イミン系、アミンイミド系、ニトリルカーボネート系、ピラゾール系、活性メチレン系、メルカプタン系、イミダゾール系、カルバミン酸系、トリアゾール系等が挙げられる。
【0045】
なかでも、反応温度が低くなる点で、活性メチレン系ブロック剤、ピラゾール系ブロック剤等が好ましい。ポリオールとブロックイソシアネートとの反応温度(硬化温度)は、例えば、150℃以下であってよく、140℃以下であってよい。反応温度がこの範囲であると、加熱温度を低く設定することができて、塗布対象である基材の劣化が抑制され易い。
【0046】
ピラゾール系ブロック剤としては、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等が挙げられる。
【0047】
活性メチレン系ブロック剤としては、例えば、メルドラム酸;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸メチルブチル、マロン酸エチルブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸ブチルフェニル等のマロン酸ジアルキル:アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニル等のアセト酢酸アルキル;2-アセトアセトキシエチルメタクリレート;アセチルアセトン;シアノ酢酸エチル等が挙げられる。
【0048】
ブロックイソシアネートのNCO基(ブロック剤で保護されたNCO基を含む)の含有率は特に限定されない。ブロックイソシアネートの有効NCO基含有率は、例えば、5質量%以上、20質量%以下であってよい。
【0049】
ポリオールとブロックイソシアネートとの配合比は特に限定されない。ポリオールが有する活性水素基とブロックイソシアネートが有するNCO基との当量比(NCO基/活性水素基)は、1以上、10以下であってよく、1以上、5以下であってよい。NCO基/活性水素基がこの範囲であると、イソシアネートの副反応が抑制され易くなるとともに、得られるウレタン樹脂の柔軟性および伸縮性が向上しやすい。
【0050】
C.導電性材料
導電性材料は、扁平フィラーを含む。扁平フィラーのアスペクト比は、3以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。フレーク状フィラーおよび鱗片状フィラーのアスペクト比は、厚み方向の平均長さと、面方向の平均長さとの比である。繊維状フィラーのアスペクト比は、長手方向の平均長さと、短手方向の平均長さとの比である。面方向の平均長さは、その面の面積と同じ面積を有する円の直径とすればよい。その他の平均長さは、10個のフィラーの平均値である。
【0051】
アスペクト比は、乾燥後の導電性組成物あるいはその硬化物(配線パターン)の厚み方向の断面から求めてもよい。例えば、配線パターンの厚み方向の任意の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて倍率100倍以上で撮影する。この画像の観察視野内から任意の複数個(例えば、20個)のフィラーを選択して長径と短径とを測定する。長径と短径との比が2以上であるフィラーを扁平フィラーとする。このようにして10個の扁平フィラーを選出し、それぞれの長径と短径との比を算出し、これらの平均値を、扁平フィラーのアスペクト比とする。その他のフィラーのアスペクト比も同様にして求められる。
【0052】
扁平フィラーの平均粒径は、例えば1μm以上、20μm以下であってよく、1μm以上、10μm以下であってよい。扁平フィラーの平均粒径が上記範囲内にあると、導電性組成物の硬化物の伸縮時の導電性が確保され易い。
【0053】
平均粒径は、体積基準の粒度分布における累積体積50%における粒径(D50。以下同じ。)である。平均粒径は、乾燥後の導電性組成物あるいはその硬化物(配線パターン)の厚み方向の断面から求めてもよい。例えば、上記のようにして選出された複数個(例えば、10個)の扁平フィラーについて粒子径を算出し、平均化することにより求めることができる。扁平フィラーの断面の面積と同じ面積を有する円の直径を、その扁平フィラーの粒子径とすればよい。その他のフィラーの平均粒径も同様にして求められる。
【0054】
導電性材料の含有量は、配線パターンを100体積%として、例えば30体積%以上、80体積%以下であってよく、50体積%以上、80体積%以下であってよい。導電性材料の含有量が上記範囲であると、電気的接続の信頼性が確保され易くなる。導電性材料の含有量は、ポリオールとブロックイソシアネートと導電性材料との合計を100体積%として、例えば30体積%以上、80体積%以下であってもよい。
【0055】
導電性材料の含有量(体積割合)は、配線パターンに含まれる成分のそれぞれの質量に、それぞれの比重を考慮することによって算出できる。導電性材料の含有量は、乾燥後の導電性組成物あるいはその硬化物(配線パターン)の厚み方向の断面から求めてもよい。例えば、上記のようにして得られたSEM画像あるいはTEM画像を、有機成分と導電性材料とにわけて二値化する。二値化された画像の観察視野内において、有機成分および導電性材料が占める面積割合をそれぞれ算出する。これら面積割合を、有機成分および導電性材料における各成分の体積割合とみなして、導電性材料の体積割合(含有量)を算出すればよい。
【0056】
扁平フィラーに含まれる元素としては、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、黄銅、モリブデン、タンタル、ニオブ、鉄、白金、錫、クロム、鉛、チタン、マンガン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、オスミウム、イリジウム等が挙げられる。扁平フィラーは、これら元素を合金として含んでいてもよい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、導電性の観点から、扁平フィラーは銀を含むことが好ましい。
【0057】
導電性組成物は、導電性材料として、扁平フィラーとともにアスペクト比が2未満のフィラー(以下、球状フィラーと称する。)を含んでもよい。球状フィラーの平均粒径は特に限定されないが、扁平フィラーの平均粒径より小さくてよい、これにより、扁平フィラー同士の隙間に入り込みやすくなって、硬化物の伸縮時の導電性がより維持され易くなる。球状フィラーの平均粒径は、例えば1μm以上、20μm以下であってよく、1μm以上、10μm以下であってよい。球状フィラーに含まれる元素としては、扁平フィラーと同様のものが挙げられる。
【0058】
D.その他
導電性組成物には、さらに、溶媒、触媒、鎖延長剤、バインダ、カップリング剤、導電助剤、無機フィラー、有機フィラー等が添加されてもよい。
【0059】
鎖延長剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。鎖延長剤としては、ポリアミン化合物、活性水素を有するポリオール等が挙げられる。触媒は特に限定されず、ウレタン樹脂を合成する際に用いられる公知のものを使用することができる。触媒としては、例えば、スズ系触媒、アミン系触媒、有機金属化合物系触媒等が挙げられる。
【0060】
導電助剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。導電助剤としては、例えば、導電性高分子、イオン液体、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0061】
バインダは特に限定されず、公知のものを使用することができる。バインダとしては、伸縮率が高く、不飽和結合を分子内に含まないポリマーが好ましい。具体的には、ウレタン樹脂、ウレタンゴム、アクリル樹脂、アクリルゴム、ブチルゴム、クロロスルフォン化ゴム、フッ素ゴム、シリコーン等が挙げられる。ウレタン樹脂およびウレタンゴムは、溶媒蒸発型であってもよく、熱硬化型であってもよい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0062】
[実施例1~6、比較例1]
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
(i)導電性組成物の準備
表1に示す配合量で各成分を混合し、自転・公転ミキサーにて混練し、ペースト状の導電性組成物を調製した。
【0064】
実施例1~6および比較例1で使用した各成分は、以下の通りである。
ポリオールA:ポリエステルポリオール、数平均分子量 500、製品名 P-520、(株)クラレ製、水酸基価 224
ポリオールB:ポリエステルポリオール、数平均分子量 2000、製品名 P-2010、(株)クラレ製、水酸基価 56
ポリオールC:ポリエステルポリオール、数平均分子量 300、製品名 F-510、(株)クラレ製、水酸基価 336
ポリウレタン樹脂:製品名 ARバインダGS、(株)松井色素化学工業製
ブロックイソシアネートA:ブロック化剤 活性メチレン系、製品名 デュラネートMF-K60B、旭化成(株)製
ブロックイソシアネートB:ブロック化剤 ピラゾール系、製品名 デュラネートSBN-70D、旭化成(株)製
導電性材料:フレーク状銀粉、製品名 AgC-2351、平均粒径(D50) 6.95μm、福田金属箔粉工業(株)製
【0065】
(ii)電子機器の作製
伸縮性基材(ウレタンフィルム、日本マタイ(株)製、エスマーURS)上に、調製した導電性組成物を矩形に塗布した。導電性組成物は、同一直線上に2箇所塗布した。2箇所の導電性組成物に跨がるようにチップ部品を搭載し、
図1に示されるように、チップ部品の2つの電極をそれぞれの導電性組成物に接触させた。この状態で、下記に示す条件で加熱して、矩形の配線パターンを形成するとともに回路部材を実装し、電子機器を得た。
【0066】
(加熱条件)
ブロックイソシアネートAを用いた実施例:120℃、30分
ブロックイソシアネートBを用いた実施例:140℃、30分
【0067】
[評価]
導電性組成物、配線パターンおよび電子機器について、以下の評価を行った。
(1)体積抵抗値
ガラス板上に、調製した導電性組成物を塗布した後、上記の条件で加熱して、ガラス板上に矩形のフィルム(導電性組成物の硬化物)を形成し、フィルムの長手方向の抵抗値を測定した。測定された抵抗値を用いて、下記式によりフィルムの体積抵抗値(比抵抗値)を算出した。
体積抵抗値=(抵抗値×フィルムの膜厚×フィルムの短手方向の長さ/フィルムの長手方向の長さ)×100
【0068】
抵抗値の測定は、JIS C 2525に準じた4端子法により行った。測定温度は25℃であり、抵抗値の温度による補正は省略した。以下の抵抗値も同様にして測定した。
【0069】
(2)タック性
調製した導電性組成物を、ガラス板上にスポット状に2点塗布した後、60秒静置した。各スポットの面積は、チップ部品の搭載面積より小さい。その後、2点のスポットの全面と1つのチップ部品(2.0mm×1.25mm)とが接触するようにチップ部品を搭載して、ボンドテスタ(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製、DAGE ボンドテスターシリーズ4000)によりせん断強度を測定した。せん断強度が70mN以上の場合をA、50mN以上、70mN未満の場合をB、50mN未満の場合をCとして評価した。せん断強度が大きい程、タック性に優れる。
【0070】
(3)伸張時における硬化物の抵抗値特性A
伸縮性基材(ウレタンフィルム、日本マタイ(株)製、エスマーURS)上に調製した導電性組成物を塗布した後、上記の条件で加熱して、伸縮性基材上に矩形の配線パターン(導電性組成物の硬化物)を形成した。その後、配線パターンの長手方向の初期の抵抗値PR0を測定した。
【0071】
次いで、ウレタンフィルムの2箇所の端部を挟持して配線パターンの長手方向に伸張し、配線パターンの電気抵抗値PRが初期の抵抗値PR0の120%になるときの、ウレタンフィルムの伸張率を算出した。ウレタンフィルムの伸張率は、配線パターンの伸張率とみなすことができる。
【0072】
(4)伸張時における硬化物の抵抗値特性B
上記(ii)で得られた電子機器の2つの配線パターン間の初期の抵抗値ER
0を測定した。この抵抗値には、チップ部品の内部抵抗も加味されている。
次いで、ウレタンフィルムの両端部を挟持して配線パターンの直線方向(
図1における左右方向)に伸張し、配線パターン間の電気抵抗値ERが初期の抵抗値ER
0の120%になるときのウレタンフィルムの伸張率を算出した。
【0073】
【0074】
実施例1~6で調製した導電性組成物の硬化物は、いずれも初期の抵抗値が低く、抵抗値特性Aの評価も高かった。これは、硬化物を伸張させても、抵抗値が増加し難いことを示している。さらに、抵抗値特性Bの評価も高く、伸縮性基材の伸張時にもチップの電気抵抗は小さく維持されている。導電性組成物のタック性も高いことから、チップは硬化物に強固に密着されていることがわかる。抵抗値特性Bを評価する際に作製された試料をみると、電極の一部は硬化物に埋没していた。
【0075】
比較例1では、抵抗値特性Aの評価は高いものの、抵抗値特性Bを評価するためにウレタンフィルムを伸張したところ、チップが脱落してしまった。そのため、抵抗値特性Bの評価を行うことができなかった。比較例1は、タック性の評価も低かった。抵抗値特性Bを評価する際に作製された試料をみると、電極は硬化物に埋没していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の電子機器は、伸縮性、屈曲性および高い接続信頼性を有するため、ヘルスケア製品、各種ディスプレイ、太陽電池、RFID等の高性能エレクトロニクス分野の製品に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0077】
100 電子機器
10 伸縮性基材
20 配線パターン(導電性組成物の硬化物)
30 回路部材
31 電極
31a 底面
31b 側面