(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20230210BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20230210BHJP
G02B 27/06 20060101ALI20230210BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230210BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 D
G02B27/06
F21S2/00 311
(21)【出願番号】P 2019066404
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友未
(72)【発明者】
【氏名】山内 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥野 達也
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0283632(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0092623(US,A1)
【文献】特開2008-259601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0122368(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00-21/10
21/12-21/30
21/56-21/64
33/00-33/16
H04N 5/66-5/74
G02B 27/00-30/60
F21S 2/00-45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4以上の光源と、
前記各光源をパルス幅変調法を用いて点灯制御する制御装置と、
前記光源毎に対応づけられ、対応づけられた前記光源からの光が照射される絵柄部と、を備え、
前記制御装置が、前記光源のデューティー比を0から最大デューティー比まで単調に増大させて前記最大デューティー比から0まで単調に減少させる動作を、前記4以上の光源に関して時間差を設けて実行する制御を、先に点灯させた前記光源のデューティー比が0になった後に、後で点灯させた光源のデューティー比が0になる条件で、連続的に複数回繰り返す時間差点灯制御を実行し、
2以上の前記光源の前記デューティー比が増大していると共に2以上の前記光源の前記デューティー比が減少しているタイミングを存在させることが可能である、発光装置。
【請求項2】
前記制御装置が、前記時間差点灯制御において2以上の前記光源の点灯制御を行っている最中に、その2以上の前記光源から出射される光の照度の合計が一定になるように、その2以上の前記光源を点灯制御する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記時間差点灯制御の実行中において、少なくとも1つの前記光源のデューティー比が0から増加して前記最大デューティー比となった後に減少に転じて再び0になるまでの時間が、0.03秒~10秒である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光源のデューティー比が0から増加して前記最大デューティー比となって前記最大デューティー比となった後に減少に転じて再び0になるまでの時間が、0.5秒~2秒である、請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記時間差点灯制御の実行中において、少なくとも1つの前記光源のデューティー比が前記最大デューティー比から0を経て次に前記最大デューティー比となるまでの時間が変化する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記制御装置が、前記時間差点灯制御の実行中において、前記複数の光源を、1つの前記光源が点灯しているとき、次に点灯する前記光源の選択肢が、その前記1つの光源に紐づけされた2以上の前記光源に限られる準ランダムな順序で点灯させ、
複数の前記絵柄部に関して対応する箇所を決定した上で、前記1つの光源に対応する前記絵柄部の前記箇所に対するそれ以外の前記各絵柄部の前記箇所の変化量に基づいて2以上の前記絵柄部を決定し、その決定した2以上の前記絵柄部に対応する2以上の前記光源を、前記1つの光源に紐づけされた前記2以上の光源とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項7】
複数の前記絵柄部が、複数の第1絵柄部と、複数の第2絵柄部とを含み、
前記制御装置が、前記複数の第1絵柄部のみを用いて前記時間差点灯制御を行う第1制御と、前記複数の第2絵柄部のみを用いて前記時間差点灯制御を行う第2制御とを実行し、
前記第1制御における前記複数の第1絵柄部の切り替え速度が、前記第2制御における前記複数の第2絵柄部の切り替え速度よりも速く、かつ、前記第1制御と前記第2制御を同時に行う
ことが可能になっている、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項8】
時間の経過と共に変動する事象の動画を生成でき、
前記動画で再現される前記事象の変動速度が、実際の前記事象の変動速度の75%以下
かつ50%以上になっている、請求項1乃至7のいずれか1つに記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動画を投写する場合、プロジェクタが用いられる。例えば、特許文献1に記載のプロジェクタにおいては、ランプ光源から発射された照明光を、ダイクロイックミラーを介して、赤色光、緑色光、青色光の各色光に分離した後、分離した色光を色光毎に液晶パネル面上に集光させ、各色光を、各色の映像情報に基づいて変調する。そして、変調した各色光を、ダイクロイックプリズム及び投射レンズを介して色合成した後、投影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロジェクタは、動画を円滑に投影できる反面、高価な素子や高価な光学部材を搭載しなければならず、製造コストが高い。また、コンテンツの入力機能を必要とし、煩雑な設定操作も必要となる。
【0005】
そこで、本開示の課題は、安価に製造できて、コンテンツの入力機能や煩雑な設定操作も必要ないにも拘わらず、円滑な動画を投影できる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る発光装置は、複数の光源と、複数の光源を点灯制御する制御装置と、光源毎に対応づけられ、対応づけられた光源からの光が照射される絵柄部と、を備え、制御装置が、いずれかの光源を点灯させてから消灯させるまでに別の光源を点灯させ、先に点灯させた光源を消灯させた後に、別の光源を消灯させる動作を、連続的に複数回繰り返す時間差点灯制御を実行する。
【0007】
また、本開示に係る別態様の発光装置は、複数の光源と、各光源をパルス幅変調法を用いて点灯制御する制御装置と、光源毎に対応づけられ、対応づけられた光源からの光が照射される絵柄部と、を備え、制御装置が、光源のデューティー比を0から最大デューティー比まで単調に増大させて最大デューティー比から0まで単調に減少させる動作を、2つの光源に関して時間差を設けて実行する制御を、先に点灯させた光源のデューティー比が減少するタイミングの少なくとも一部が、後で点灯させた光源のデューティー比が増大するタイミングの少なくとも一部と重なると共に、先に点灯させた光源のデューティー比が0になった後に、後で点灯させた光源のデューティー比が0になる条件で、連続的に複数回繰り返す時間差点灯制御を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る発光装置によれば、安価に製造できて、コンテンツの入力機能や煩雑な設定操作も必要ないにも拘わらず、円滑な動画を投影できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発光装置の主要部の模式構成図である。
【
図2】上記発光装置の制御に関連する部位のブロック図である。
【
図3】本開示における動画を作成する際の原理について説明するタイミングチャートであり、制御装置における複数の光源のPWM制御の一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】比較例の点灯制御における
図3に対応するタイミングチャートである。
【
図5】時間差点灯制御における動画速度と、木漏れ日の動きの自然さとの関係の一例を示す図である。
【
図6】
図5に示す試験における時間差点灯制御を行った際に採用したPWM制御のタイミングチャートである。
【
図7】複数の絵柄部のうちで別制御を行う異なるグループを選ぶ手法について説明する図である。
【
図8】変位が大きい第1グループの絵柄群と、変位が小さい第2グループの絵柄群の具体的な制御の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置1の主要部の模式構成図である。
図1に示すように、発光装置1は、光源モジュール10、絵柄形成部材20、レンズ形成部材30、及び制御装置40を備える。光源モジュール10、絵柄形成部材20、レンズ形成部材30、及び制御装置40は、図示しないケース内に配置され、当該ケースに固定される。光源モジュール10は、基板11と、複数の光源12を有し、複数の光源12は、基板11の表側(絵柄形成部材20側)に互いに間隔をおいて実装される。
【0012】
基板11は、例えば、プリント基板で構成される。基板11は、如何なる硬さを有してもよく、リジット基板、フレキシブル基板、及びリジットフレキシブル基板のうちのいずれの基板で構成されてもよい。また、基板11は、如何なる組成を有してもよく、例えば、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板、テフロン(登録商標)基板、アルミナ(セラミックス)基板、又はコンポジット基板等で構成される。
【0013】
光源12は、発光ダイオード(以下、LEDという)で好適に構成される。しかし、光源12は、LED以外の発光素子で構成されてもよく、例えば、半導体レーザ素子、有機EL(Electro Luminescence)素子若しくは無機EL素子等の固体発光素子、又は白熱電球で構成されてもよい。光源モジュール10には、各光源12に電力を供給するためのケーブル(図示せず)が電気的に接続される。ケーブルは、後述する駆動回路に接続される。
【0014】
絵柄形成部材20は、例えば、樹脂や金属で形成された板部材で構成され、基板11に略平行になっている状態でケースに固定される。絵柄形成部材20は、それを厚さ方向に貫通する複数の円筒孔を有し、複数の円筒孔は、互いに間隔をおいて配置されている。絵柄形成部材20の厚さ方向の一方側の端面には、公知の方法で絵柄が印刷された絵柄付透明フィルムが、貫通孔の一方側の開口を塞ぐように締結部材、溶着、又は接着剤等で貼り付けられている。絵柄印刷が実行される透明フィルムとしては、例えば、PP(ポリプロピレン)フォルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを好適に採用できるが、それ以外の印刷が可能な如何なる透明フィルムを採用してもよい。
【0015】
発光装置1は、絵柄形成部材20の円筒孔の数と同一の数の絵柄付透明フィルムを有し、各貫通孔の上記一方側の開口は、1つのみの絵柄付透明フィルムで塞がれる。絵柄付透明フィルムが絵柄形成部材20に固定されている状態で、絵柄付透明フィルムにおいて絵柄が印刷されている箇所の全ては、絵柄形成部材20の厚さ方向から見たとき貫通孔に重なる。絵柄形成部材20は、間隔をおいて配置される複数の絵柄部21を有し、絵柄付透明フィルムにおいて絵柄が印刷されている箇所は、絵柄部21を構成する。
【0016】
複数の絵柄付透明フィルムに印刷されている複数の絵柄は、全て異なる。複数の絵柄の対象は、時間の経過と共に変動する事象であれば如何なる事象でもよい。例を挙げれば、絵柄の対象には、時間の経過と共に水面が変動する波や、時間の経過と共に枝や葉が揺れ動くことに起因して変動する木漏れ日が含まれる。以下では、絵柄が木漏れ日である場合を例に説明を行う。
【0017】
なお、絵柄形成部材20として、透明フィルムに間隔をおいて複数の絵柄部を印刷したものを用いてもよい。又は、絵柄形成部材20として、透明材料、例えば、ガラス、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、又はシリコン系樹脂等で構成された板材に絵柄が印刷された複数の透明フィルムを互いに間隔をおいて貼り付けたものを用いてもよい。
【0018】
レンズ形成部材30は、例えば、樹脂や金属で形成された板部材で構成され、基板11に略平行になっている状態でケースに固定される。レンズ形成部材30は、互いに間隔をおいて配置される投影レンズ部31を有する。レンズ形成部材30は、如何なる透光材料で構成されてもよく、例えば、ガラス、ポリカ―ボネート樹脂、アクリル樹脂、又はシリコン樹脂等で構成される。
【0019】
各光源12には、1つの絵柄部21と、1つの投影レンズ部31が一対一に対応づけられている。電力が、制御装置40による制御によって各光源12に供給されると、光が光源12から出射されて対応する絵柄部21に照射され、その後、対応する投影レンズ部31を透過した後、照射面35に到達する。各投影レンズ部31の形状は、それを透過した光の絵柄が、照射面の中心に投影されるように形作られている。つまり、絵柄は、いずれの投影レンズ部31を透過した光に基づくものでも、レンズ形成部材30における投影レンズ部31の配置位置に拠らず照射面35の中心に投影される。
【0020】
なお、
図1に示す例では、光源モジュール10、絵柄形成部材20、及びレンズ形成部材30が、円板形状を有しているが、光源モジュール、絵柄形成部材、及びレンズ形成部材のうちの少なくとも1つは、円板形状以外の如何なる形状でもよく、例えば、矩形の板形状でもよい。また、
図1に示す例では、光源12から出射された光が、直接、絵柄に照射されるようになっている。しかし、光源と絵柄形成部材の間に第2レンズ形成部材を設けて、Wレンズ(ダブルレンズ)構造を採用してもよい。第2レンズ形成部材は、例えば各光源に一対一に対応する導光部を有し、各光源から出射された光は、対応する導光部を経由することで対応する絵柄部に効率的に到達する。したがって、Wレンズ(ダブルレンズ)構造を採用すると、各光源から出射された光で対応する絵柄部を、効率的に照射することができる。
【0021】
図2は、発光装置1の制御に関連する部位のブロック図である。次に
図2を用いて、発光装置1における制御について簡単に説明する。
図2に示すように、発光装置1は、光源モジュール10および制御装置40に加えて、電源回路55と、駆動回路60を備える。
【0022】
制御装置40は、制御部41と、記憶部42を含む。制御部41は、例えば、マイクロコンピュータによって好適に構成され、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、記憶部42は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリで構成される。CPUは、記憶部に予め記憶されたプログラム等を読み出して実行する。また、不揮発性メモリは、制御プロラムや所定の閾値等を予め記憶する。また、揮発性メモリは、読み出したプログラムや処理データを一時的に記憶する。制御プログラムには、複数の光源12の点灯制御に関するプログラムが含まれる。
【0023】
電源回路55には、交流電力が商用電源56から供給される。電源回路55は、例えば、供給された交流電力に整流処理や平滑化を施すことで交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を、駆動回路60を介して光源12に供給する。駆動回路60は、例えば、複数のスイッチング部61を有し、複数の光源12と複数のスイッチング部61は、一対一に対応し、各スイッチング部61は、1つの光源12に対応する。制御装置40は、駆動回路60をパルス幅変調(PWM;pulse width modulation)制御し、各スイッチング部61は、制御装置40からの信号に基づいて独立してオンオフ制御され、オンオフ制御の際のデューティー比、すなわち、一定の周期で連続するパルス列における、パルスのオンオフの継続時間の比率が制御される。なお、スイッチング部61は、光源12の数と同一の数だけ存在するが、
図2には、1つのみのスイッチング部61しか記載していない。
【0024】
各スイッチング部61は、例えば、トランジスタ等で構成される。制御装置40にオン制御されたスイッチング部61に対応する光源12は、電源回路55から電力が供給されて点灯し、制御装置40にオフ制御されたスイッチング部61に対応する光源12は、電源回路55からの電力が遮断されて消灯する。各光源12は、制御装置40による制御で個別に(他の光源とは無関係に)電力供給されて点灯状態が制御される。
【0025】
図3は、本開示における動画を作成する際の原理について説明するグラフであり、制御装置40における複数の光源12のPWM制御の一例を示すタイミングチャートである。なお、
図3において、横軸は時間の経過を示し、縦軸はデューティー比を示す。また、
図3においては、発光装置1が、4つのLEDと、4つの絵柄部を有する場合について説明する。しかし、発光装置は、2以上の如何なる数のLED及び絵柄部を有してもよく、各光源は、LEDでなくてもよい。
【0026】
図3に示すように、制御装置40は、LEDのデューティー比を0から最大デューティー比まで単調に増大させて最大デューティー比から0まで単調に減少させる動作を、2つのLEDに関して時間差を設けて実行する制御を、連続的に複数回繰り返す時間差点灯制御を実行する。この時間差点灯制御は、先に点灯させたLEDのデューティー比が減少するタイミングの少なくとも一部が、後で点灯させたLEDのデューティー比が増大するタイミングの少なくとも一部と重なると共に、先に点灯させたLEDのデューティー比が0になった後に、後で点灯させたLEDのデューティー比が0になる条件で実行されている。
【0027】
図3に示す例では、各LEDにおいて、デューティー比が、0から最大デューティー比になるまで一次関数的に単調増加し、最大デューティー比から0になるまで一次関数的に単調減少している。また、デューティー比が単調増加する期間と、デューティー比が単調減少する期間が、同一となっている。また、先に点灯制御されたLEDにおいてデューティー比が減少するタイミングの全期間が、後で点灯制御されたLEDにおいてデューティー比が増大するタイミングの全期間に一致している。
【0028】
図4は、比較例の点灯制御における
図3に対応するタイミングチャートである。
図4に示すように、比較例の点灯制御では、アニメーションと同様の考えに基づいて、LEDを順番に点灯させて絵柄部(静止画)を順番に切り替えて絵柄をコマ送り再生している。比較例の点灯制御では、コンテンツの入力機能や煩雑な設定操作を必要とせずに、動画を再生できる。しかし、比較例の点灯制御では、絵柄の切り替えをはっきり認識でき、連続した映像に感じにくい。コマ送りを行うアニメーションでは、フレームレートが、一般的に8fps(1秒間に、8コマのコマ送り)となっており、それ以下になると動きの不自然さが目立つことが知られている。比較例の点灯制御でも、コマ送り制御を行っているため、不自然さが目立ち易くなっているものと考えられる。
【0029】
これに対し、
図3で原理を説明した本開示の点灯制御では、先行して点灯されたLEDのデューティー比が減少し始めて0になる前に、次のLEDの点灯制御が始まり、デューティー比が徐々に増大する。つまり、時間差点灯制御において、異なる絵柄を照射面に照射する複数のLEDが同時に点灯制御されるタイミングが存在する。よって、コンテンツの入力機能や煩雑な設定操作を必要とせずに、動画を照射できるだけでなく、連続的な映像を自然に感じさせることができ、滑らかで自然な映像を実現できる。
【0030】
次に、より具体的な事例に基づいて更に詳しい説明を行う。
図5は、時間差点灯制御における動画速度と、木漏れ日の動きの自然さとの関係の一例を示すグラフである。なお、
図5に示す試験における時間差点灯制御は、PWM制御を用いて
図6に示すタイミングチャートで行い、より詳しくは、各LEDの点灯から消灯までの時間が1秒で、14個の絵柄部を用い、最大4つの光源が同時に点灯するタイミングが存在する条件で行った。
【0031】
また、
図5において、周期は、照射面に絵柄14枚分の動画を映し出す時間を示し、例えば、一番左に示す動画の場合、3.5秒の間に14枚の絵柄を使用した。また、
図5において、右から2番目の動画は、現実の木漏れ日の動きと同じ速度の動きを再現しており、この動画の速度を100%とし、その動画の速度を基準速度とした。
【0032】
図5に示すように、この試験例においては、現実の木漏れ日の速度と同一の速度とした場合、木漏れ日の動きが滑らかであった反面、繰り返し感が顕著なものとなって、動画の動きがビジーに(忙しく)感じられ、動画の動きが不自然なものになりがちになった。
【0033】
他方、動画速度を、現実の木漏れ日の速度の75%にした場合、動きが活発なものとなって、滑らかさも問題がないレベルとなり、動画速度を100%にした場合との比較で、木漏れ日の動きを自然なものにできた。更には、動画速度を、現実の木漏れ日の速度の50%まで低減した場合、実速度の場合と比較して飛び感があるが、その飛び感は、動画にブラーをかければ改善されて問題がないものとなり、動画の動きのビジーさがなくなった。更には、動画速度が、現実の木漏れ日の速度の50%まで低減されることで、繰り返し感を最も感じにくくなり、総合的に最も良好で心地よい動画を実現できた。
【0034】
すなわち、本願発明者は、照明特有の動画再生技術として、時間差点灯制御を行う場合、動画の速度を現実の速度以下に遅くすると、自然な動画になり易いことを見出し、特に、自然のものの半分程度の速さにすると、人が疲れにくくて、最も現実を再現し易いという顕著な作用効果を見出した。
【0035】
また、更に詳しい主観結果では、時間差点灯制御の実行中において、少なくとも1つの光源のデューティー比が0から増加して最大デューティー比となった後に減少に転じて再び0になるまでの時間が最適値の1/2倍から2倍の間にある場合、木漏れ日の動画が滑らかで自然なものとなり易いことを見出した。
【0036】
よって、時間差点灯制御を行う場合、現実の速度以下の速度であれば、動画が自然なものとなり易くなる。よって、一般的な映像におけるフレームレートが30fps(0.03sに1枚)であることを考慮すると、時間差点灯制御の実行中において、少なくとも1つの光源のデューティー比が0から増加して最大デューティー比となった後に減少に転じて再び0になるまでの時間を、0.03秒以上にすると、繰り返し感を抑制できて、動画の動きを自然なものとでき、特に、当該時間を10秒以下にすると、動画の動きが遅くなりすぎず、動画の動きを滑らかなものにできる。
【0037】
また、少なくとも1つの光源のデューティー比が0から増加して最大デューティー比となって最大デューティー比となった後に減少に転じて再び0になるまでの時間が、0.5秒~2秒である場合、動画の動きが滑らかなものとなり易く、動きの速度も自然なものになり易い。
【0038】
また、制御装置40は、時間差点灯制御において2以上の光源12の点灯制御を行っている最中に、その2以上の光源12から出射される光の照度(ルクス)の合計が一定になるように、その2以上の光源12を点灯制御してもよい。例えば、制御装置40は、時間差点灯制御において2以上の光源12の点灯制御を行っている最中に、その2以上の光源12に供給する電流の合計が一定になるように、その2以上の光源12を点灯制御してもよい。この場合、照射面35における照度を略一定にできるので、照射面35上の動画を違和感がない連続的な映像として認識し易くなる。
【0039】
また、時間差点灯制御の実行中において、少なくとも1つの光源12のデューティー比が最大デューティー比から0を経て次に最大デューティー比となるまでの時間が変化してもよい。この場合、動画に周期をなくすことができる。よって、映像の繰り返し感をなくすことができ、映像を、心地よくて、滑らかで、自然なものとできる。
【0040】
なお、この制御は、乱数を用いて容易に実現できる。例えば、乱数としての1から9までの数字の夫々に、互いに異なる時間を割り当てておき、少なくとも1つの光源12のデューティー比が最大デューティー比となった時点で、1から9までの数字のうちの1つを、モンテカルロ法を用いてランダムに決定し、決定された1つの数字に割り当てられた時間を、デューティー比が次の最大デューティー比となるまでの時間に設定するようにしてもよい。
【0041】
また、制御装置40が、時間差点灯制御の実行中において、複数の光源12を、ランダムな順序で点灯させるか、又は、1つの光源12が点灯しているとき、次に点灯する光源12の選択肢が、その1つの光源12に紐づけされた2以上の光源12に限られる準ランダムな順序で点灯させてもよく、この場合、動画を、つながりのある動きで、繰り返し感が抑制された自然なものにできる。
【0042】
ここで、ランダムな順序は、例えば、乱数を用いたモンテカルロ法により決定されることができる。また、準ランダムな順序は、一定のつながりを持った複数の絵柄部21を用いて決定され、例えば、乱数を用いたモンテカルロ法により決定されることができる。より詳しくは、発光装置1に、絵柄部21が、N個存在する場合において、ある絵柄部21が、照射面35に投影されている場合、その次に照射面35に投影される絵柄部21の候補が、M<Nを満たすM個に限られ、そのM個のうちから1の絵柄部21を、乱数を用いてランダムに決定してもよい。なお、ここで、Mの数は、絵柄部21毎に異なってもよい。
【0043】
例を挙げれば、複数の絵柄部21において互いに対応する箇所を、各絵柄部21に対して1箇所決定して、合計で複数個所決定する。そして、現在点灯制御されている基準の絵柄部21の対応箇所に対する、それ以外の絵柄部21の対応箇所の変位量(距離)を他の絵柄部21毎に計算する。そして、基準となる絵柄部21に対して変位量が小さい順からK個(K<N)の絵柄部21を基準となる絵柄部21の次に点灯制御する絵柄候補としてもよく、次に点灯する絵柄部21をK個の絵柄部21の中から乱数を用いて決定してもよい。
【0044】
更には、絵柄群毎に別の制御を行ってもよく、2以上の制御のうちから選択的に1の制御を実行してもよく、2以上の制御を互いに独立に行ってもよい。ここで、別の制御は、例えば、同時に点灯させる最大の光源12の数が異なる2以上の制御を含んでもよく、各光源12が点灯してから消灯するまでの時間が異なる2以上の制御を含んでもよく、又は、フレームレートが異なる2以上の制御を含んでもよい。
【0045】
また、複数の絵柄部21を異なる制御を行うグループに分けてもよい。複数の絵柄部21を異なる第1グループと第2グループに分ける場合について具体例で説明すると、
図7に示すように、第1グループでは、それに含まれる2枚の絵柄部21の全ての組みにおいて、上述の変位量が所定距離以上となっていてもよく、第2グループでは、それに含まれる2枚の絵柄部21の全ての組みにおいて、上述の変位量が上記所定距離未満となっていてもよい。
【0046】
そして、そのように、第1及び第2グループを決めた場合に、
図8に示すように、変位が大きい第1グループの絵柄群は、切り替えを速く、同時点灯の光源の数を多く制御してもよく、変位が小さい第2グループの絵柄群は、切り替えを遅く、同時点灯の光源の数を少なく制御してもよい。そして、第1グループの制御(第1制御)と、第2グループの制御(第2制御)を、選択的に実行してもよい。
【0047】
又は、異なる独立の複数の制御を実行する場合において、2以上の制御を同時に実行してもよい。例えば、木漏れ日の動画を照射する場合、第1グループで幹と枝の動きを照射面に照射すると共に、第2グループで多数(複数)の葉の動きを照射面に照射し、二つのグループの動画を合成することで、木漏れ日の動画を照射するようにしてもよい。
【0048】
又は、他の例について説明すると、台風等の風の強い日において、高い木では、上側が激しく揺動する一方、下側はそれ程、揺れていない現象が見られることがある。このような場合、上側と下側で異なるグループとして動画を表現し、二つのグループの動作を合成することで、一体の木の動きの動画を形成してもよい。
【0049】
なお、上記実施形態では、複数の光源をPWM制御する場合について説明し、
図3、4、6、8の縦軸が、デューティー比を表す場合について説明した。しかし、複数の光源12は、PWM制御されなくてもよく、
図3、4、6、8の縦軸は、単に、光源12に供給する電流値を表してもよい。
【0050】
より詳しくは、発光装置1は、複数の光源12と、複数の光源12を点灯制御する制御装置40と、光源12毎に対応づけられ、対応づけられた光源12からの光が照射される絵柄部21と、を備えてもよい。そして、制御装置40が、いずれかの光源12を点灯させてから消灯させるまでに別の光源12を点灯させ、先に点灯させた光源12を消灯させた後に、別の光源12を消灯させる動作を、連続的に複数回繰り返す時間差点灯制御を実行してもよい。
【0051】
各光源12に供給する電流をこのように制御する場合でも、上述のPWM制御の場合と同様に、コンテンツの入力機能や煩雑な設定操作を必要とせずに映像(動画)を照射できるだけでなく、コマ送り制御を行う場合との比較で、映像を滑らかで自然なものとできる。
【0052】
また、特に、
図3及び
図6の縦軸の値が電流値である場合に示すように、先に点灯制御された光源の電流が減少しているタイミングの少なくとも一部と、後で点灯制御された光源の電流が増大しているタイミングの少なくとも一部が一致していると、映像を更に自然で滑らかなものとできる。
【0053】
また、電流制御を行う場合に、PWM制御の場合と同様に、制御装置40が、時間差点灯制御において2以上の光源12の点灯制御を行っている最中に、その2以上の光源12に供給する電流の合計が一定になるように、その2以上の光源12を点灯制御してもよい。この場合、照射面35における照度を略一定にできるので、照射面35上の動画が、違和感がない連続的な映像になる。
【0054】
また、電流制御を行う場合に、時間差点灯制御の実行中において、少なくとも1つの光源12が点灯してから消灯するまでの時間を、0.03秒~10秒としてもよい。PWM制御で説明した場合と同様に、電流制御を採用した場合においても、時間差点灯制御を行った場合、現実の動画の速度よりも遅くした方が、照射する動画が滑らかで自然なものになり易い。そして、電流制御を採用した場合においても、本構成を採用すれば、動画の動きを滑らかなものとでき、動きの速度も自然なものとできる。
【0055】
また、電流制御を行う場合に、時間差点灯制御の実行中において、少なくとも1つの光源12が点灯してから消灯するまでの時間を、0.5秒~2秒としてもよい。この場合、PWM制御で説明した場合と同様に、動画の動きが滑らかなものとなり易く、動きの速度も自然なものになり易い。
【0056】
また、電流制御を行う場合に、時間差点灯制御の実行中において、少なくとも1つの光源12が点灯してから消灯を経て次に点灯するまでの時間を変化させてもよい。この場合、PWM制御で説明した場合と同様に、動画に周期をなくすことができ、映像の繰り返し感をなくすことができ、映像を、心地よくて、滑らかで、自然なものとできる。
【0057】
また、電流制御を行う場合に、制御装置40が、時間差点灯制御の実行中において、複数の光源12を、ランダムな順序で点灯させるか、又は、1つの光源12が点灯しているとき、次に点灯する光源12の選択肢が、その1つの光源12に紐づけされた2以上の光源12に限られる準ランダムな順序で点灯させてもよい。この場合、PWM制御で説明した場合と同様に、動画を、つながりのある動きで、繰り返し感が抑制された自然なものにできる。
【0058】
また、電流制御を行う場合でも、PWM制御で説明した場合と同様に、複数の絵柄部21が、複数の第1絵柄部と、複数の第2絵柄部とを含み、制御装置40が、複数の第1絵柄部のみを用いて時間差点灯制御を行う第1制御と、複数の第2絵柄部のみを用いて時間差点灯制御を行う第2制御を実行してもよい。
【0059】
また、上記実施形態及び変形例では、時間差点灯制御中に、同時に2つの光源12が点灯しているタイミングが存在する場合について
図3を用いて説明すると共に、同時に4つの光源12が点灯しているタイミングが存在する場合とについて
図6を用いて説明した。しかし、時間差点灯制御中に、同時に3又は5以上の光源が点灯しているタイミングが存在してもよい。
【0060】
また、時間差点灯制御中においてPWM制御又は電流制御を行う場合に、
図3及び
図6に示すように、デューティー比又は電流値が、0から一次関数的に最大値まで増大した後、傾きの絶対値が増大しているときの傾きと同一になっている条件で、傾きが一次関数的に0まで減少する場合について説明した。しかし、デューティー比(又は電流値)が増大しているときの傾きと、デューティー比(又は電流値)が減少しているときの傾きの絶対値は、同一でなくてもよい。
【0061】
また、デューティー比又は電流値が、0から最大値を経て0になるまでの形状は、
図3及び
図6に示す山形でなくてもよく、上に凸の滑らかな曲線(微分可能な曲線)、例えば、放物線等でもよい。要は、デューティー比又は電流値が、0から最大値を経て0になるまでの形状は、増大した後に最大値となって、その後、減少すればよく、最大値は、所定時間継続してもよい。
【0062】
本開示の発光装置1は、連続的に静止画を写しだすことで物又は現象の動きを表す画像を照射面に照射できるが、例えば次の用途で使用されることができる。すなわち、静止画の光では、演出効果が小さく、人は疲れやすい。このような背景において、昨今の大都会の住宅事情として、自然光を取り入れたいのだけど適切な方向に窓がない場合がある。このような場合、本開示の発光装置1が出射する照明光で自然光をつくる陰を室内で再現できる。更には、本開示の発光装置1が照射する光を用いれば、プロジェクタ等の高価な投影装置を用いなくても、店舗等で手軽におしゃれな空間を演出できる。
【符号の説明】
【0063】
1 発光装置、 10 光源モジュール、 11 基板、 12 光源、 20 絵柄形成部材、 21 絵柄部、 30 レンズ形成部材、 31 投影レンズ部、 35 照射面、 40 制御装置、 55 電源回路、 60 駆動回路。