(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20230210BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20230210BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230210BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20230210BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
H01M8/04 Z
H01M8/04014
(21)【出願番号】P 2019090928
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2018111810
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡
(72)【発明者】
【氏名】フアヨル マリン
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-526344(JP,A)
【文献】特開2016-009573(JP,A)
【文献】特開2004-281157(JP,A)
【文献】特開2004-292183(JP,A)
【文献】特開2017-183199(JP,A)
【文献】特開2017-183034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードとアノードとを有し、前記カソードにおいてメディエータを還元させることによって電力を生成する燃料電池と、
前記カソードによって還元された前記メディエータを酸化剤によって酸化させる再生器と、
前記アノードに供給される水素含有ガスを生成する改質器と、
前記改質器を加熱する燃焼器から排出された燃焼排ガス又は前記燃焼排ガスとの熱交換により加熱された熱媒体が流れ、前記再生器を加熱するように設けられた加熱経路と、を備えた、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記加熱経路は、前記再生器の少なくとも一部を覆っている、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記加熱経路と前記再生器との間に配置され、前記加熱経路における前記燃焼排ガス又は前記熱媒体が有する熱を前記再生器に伝える部材をさらに備えた、
請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記再生器に接続されており、前記再生器に供給されるべき前記酸化剤が流れる酸化剤供給経路と、
前記燃焼排ガスと前記再生器に供給されるべき前記酸化剤とを熱交換させる熱交換器と、をさらに備えた、
請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記再生器に供給されるべき前記酸化剤を、前記再生器を加熱する前の前記燃焼排ガスで加熱する、
請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記熱交換器は、前記再生器に供給されるべき前記酸化剤を、前記再生器を加熱した後の前記燃焼排ガスで加熱する、
請求項4に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池では、アノードで水素が酸化され、カソードで酸素が還元される。カソードにおける酸素の還元速度は遅い。このことは、燃料電池における反応効率を低下させる主たる要因である。この欠点を克服することができる燃料電池として、レドックスフロー型燃料電池の開発が進められている。
【0003】
レドックスフロー型燃料電池とは、カソード及びアノードの少なくとも1つにおける反応がメディエータを介した反応であることを特徴とする燃料電池である。レドックスフロー型燃料電池においては、例えば、アノードに水素ガスが供給され、カソードにメディエータ溶液が供給される。
【0004】
レドックスフロー型燃料電池を用いたシステムは、通常、メディエータを再生させるための再生器を有している(特許文献1)。メディエータを再生器で再生させ、再生されたメディエータをカソードに再び供給することによって、燃料電池における反応を繰り返し進行させることができる。例えば、再生器においてメディエータ溶液に空気を接触させ、メディエータの還元体と酸素との化学反応を進行させる。これにより、メディエータが酸化体へと再生される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池システムの効率を向上させるためには、再生器におけるメディエータの再生速度を向上させることが重要である。
【0007】
本開示は、メディエータの再生速度を向上させるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、
カソードとアノードとを有し、前記カソードにおいてメディエータを還元させることによって電力を生成する燃料電池と、
前記カソードによって還元された前記メディエータを酸化剤によって酸化させる再生器と、
改質器を加熱する燃焼器から排出された燃焼排ガス又は前記燃焼排ガスとの熱交換により加熱された熱媒体が流れ、前記再生器を加熱するように設けられた加熱経路と、を備えた、
燃料電池システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、メディエータの再生速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【
図2】
図2は、加熱器の一例を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、加熱器の別の一例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の第2実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【
図5】
図5は、本開示の第3実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【
図6】
図6は、本開示の第4実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【
図7】
図7は、本開示の第5実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る燃料電池システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者らは、メディエータの再生速度を向上させるために再生器を所定の温度に保つことが重要であり、再生器を所定の温度に保つためには必要に応じて再生器を加熱できる技術が必要であると考えた。そこで、本発明者らは、このような技術を開発するために日夜検討を重ねた。その結果、本発明者らは、改質器を加熱する燃焼器から排出された燃焼排ガスを利用して再生器を加熱することが有利であることを新たに見出した。本発明者らは、この新たな知見に基づいて本開示の燃料電池システムを案出した。
【0012】
(本開示に係る態様の概要)
本開示の第1態様に係る燃料電池システムは、
カソードとアノードとを有し、前記カソードにおいてメディエータを還元させることによって電力を生成する燃料電池と、
前記カソードによって還元された前記メディエータを酸化剤によって酸化させる再生器と、
改質器を加熱する燃焼器から排出された燃焼排ガス又は前記燃焼排ガスとの熱交換により加熱された熱媒体が流れ、前記再生器を加熱するように設けられた加熱経路と、を備えている。
【0013】
第1態様によれば、加熱経路によって再生器が加熱されるので、再生器を所望の温度に保つことができる。その結果、再生器におけるメディエータの再生速度を向上させることができる。加えて、再生器を加熱するための熱源として燃焼器から排出された燃焼排ガスを利用できる。
【0014】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る燃料電池システムでは、前記加熱経路は、前記再生器の少なくとも一部を覆っていてもよい。第2態様によれば、再生器の少なくとも一部を覆う加熱経路からの放熱により、再生器を効率的に加熱でき、熱エネルギーのロスが少ない。
【0015】
本開示の第3態様において、例えば、第2態様に係る燃料電池システムは、前記加熱経路と前記再生器との間に配置され、前記加熱経路における前記燃焼排ガス又は前記熱媒体が有する熱を前記再生器に伝える部材をさらに備えていてもよい。第3態様によれば、燃焼排ガス又は熱媒体が有する熱を、部材を介して再生器に適切に伝えることができる。このため、再生器におけるメディエータの変質が防止され、燃料電池システムの耐用期間が長い。
【0016】
本開示の第4態様において、例えば、第1態様~第3態様のいずれか1つの態様に係る燃料電池システムは、前記再生器に接続されており、前記再生器に供給されるべき前記酸化剤が流れる酸化剤供給経路と、前記燃焼排ガスと前記再生器に供給されるべき前記酸化剤とを熱交換させる熱交換器と、をさらに備えていてもよい。第4態様によれば、熱交換器における燃焼排ガスと酸化剤との熱交換により、酸化剤が加熱される。加熱された酸化剤が再生器へ導入されるので、再生器の中のメディエータ溶液の温度の低下を抑制できる。その結果、再生器におけるメディエータの再生速度を向上させることができる。
【0017】
本開示の第5態様において、例えば、第4態様に係る燃料電池システムでは、前記熱交換器は、前記再生器に供給されるべき前記酸化剤を、前記再生器を加熱する前の前記燃焼排ガスで加熱してもよい。第5態様によれば、熱交換器における燃焼排ガスと酸化剤との熱交換により、燃焼排ガスの温度は低下する。このため、熱交換器に導入される燃焼排ガスの温度は、加熱経路に導入される燃焼排ガスの温度よりも高い。このため、再生器に供給される酸化剤の温度が高くなりやすく、酸化剤による再生器の中のメディエータ溶液の温度の低下を抑制できる。その結果、再生器におけるメディエータの再生速度を向上させることができる。
【0018】
本開示の第6態様において、例えば、第4態様に係る燃料電池システムでは、前記熱交換器は、前記再生器に供給されるべき前記酸化剤を、前記再生器を加熱した後の前記燃焼排ガスで加熱してもよい。第6態様によれば、前記再生器を加熱した後の燃焼排ガスが有する熱を酸化剤の加熱に利用できる。加熱された酸化剤が再生器へ導入されるので、再生器の中のメディエータ溶液の温度の低下を抑制できる。その結果、再生器におけるメディエータの再生速度を向上させることができる。
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る燃料電池システムの構成を示している。燃料電池システム1aは、燃料電池10と、再生器20と、加熱経路42とを備えている。加熱経路42によって加熱器40の少なくとも一部が構成されている。燃料電池10は、レドックスフロー型燃料電池である。再生器20は、燃料電池10と再生器20との間でメディエータ溶液が循環できるように燃料電池10に接続されている。
【0021】
燃料電池システム1aは、高価な貴金属触媒の使用量を減らせること、過電圧を減らして高い発電効率を達成できること、メディエータ溶液の利用によって冷却システムを簡素化できることなどの利点を有する。
【0022】
燃料電池10は、アノード11(燃料極)、カソード12(酸化剤極)、及び電解質膜13を有する。電解質膜13は、アノード11とカソード12との間に配置されている。アノード11、カソード12、及び電解質膜13は、膜電極接合体を構成している。燃料電池10は、単一のセルによって構成されていてもよく、複数のセルの積層体によって構成されていてもよい。燃料電池10は、アノード11において燃料ガスを酸化させ、カソード12においてメディエータを還元させることによって電力を生成する。カソード12だけでなく、アノード11における反応がメディエータを介した反応であってもよい。
【0023】
アノード11は、多孔質構造を有する電極である。電極は、例えば、炭素材料などの導電性材料によって構成されている。炭素材料としては、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンフェルトなどが挙げられる。アノード11において燃料ガスを直接酸化させる場合には、例えば、導電性材料上に白金などの触媒が担持されている。メディエータを用いてアノード11での反応が行われる場合には、触媒は省略されうる。
【0024】
カソード12は、例えば、多孔質基板によって構成されている。アノード11に使用できる多孔質基板をカソード12にも使用できる。燃料電池10においては、メディエータを用いてカソード12での反応が行われる。そのため、カソード12は、白金などの触媒を必要としない。ただし、カソード12が触媒を有していてもよい。
【0025】
電解質膜13は、プロトン伝導性を有する膜である。電解質膜13の材料は特に限定されない。電解質膜13としては、フッ素系高分子電解質膜、炭化水素系高分子電解質膜などが挙げられる。フッ素系高分子電解質膜としては、Nafion(DuPont社の登録商標)などのパーフルオロスルホン酸高分子電解質膜が挙げられる。炭化水素系高分子電解質膜としては、プロトン酸基(プロトン伝導性基)が導入された炭化水素高分子を用いた電解質膜が挙げられる。炭化水素高分子としては、エンジニアリングプラスチック、汎用プラスチックなどが挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリパラフェニレンなどが挙げられる。汎用プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどが挙げられる。プロトン酸基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ボロン酸基などが挙げられる。
【0026】
再生器20は、例えば、容器21によって構成されている。再生器20は、メディエータを酸化させる役割を担っている。容器21は、メディエータ溶液を貯留できる内部空間を有する。容器21は、断熱性を有する容器であってもよい。
【0027】
再生器20は、バブラー22を備えていてもよい。バブラー22は、酸化剤の細かい泡を作り出して、酸化剤とメディエータ溶液との接触を促進するための部材である。バブラー22は、容器21の内部に配置されている。本実施形態では、容器21の底面上にバブラー22が配置されている。バブラー22には、外部から酸化剤が供給される。酸化剤は、バブラー22から噴出され、メディエータ溶液に接触しながら上昇する。これにより、メディエータが酸化される。本実施形態において、酸化剤は気体である。典型的には、酸化剤は、空気に含まれた酸素(酸素ガス)である。
【0028】
メディエータ溶液は、メディエータ及び溶媒を含む。メディエータの種類は特に限定されない。メディエータは、例えば、ポリオキソメタレート、金属イオン、又は金属錯体である。ポリオキソメタレートとして、リンモリブデン酸、リンバナジウム酸、リンタングステン酸などを使用できる。ポリオキソメタレートは、例えば、バナジウム、モリブデン、タングステンなどの金属を有している。金属錯体としては、ポルフィリン金属錯体、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル)を配位子として有する金属錯体、オキシダーゼ又はその誘導体を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。オキシダーゼとしては、ガラクトースオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどが挙げられる。複数の種類のメディエータがメディエータ溶液に含まれていてもよい。溶媒の種類も特に限定されない。溶媒としては、水、硫酸水溶液、リン酸水溶液などが挙げられる。溶液のpHは、酸性であってもよい。メディエータ溶液に適切な電解質が含まれていてもよい。
【0029】
メディエータ溶液におけるメディエータの濃度は、カソード12における反応がスムーズに進行するように適切に調整されている。メディエータの濃度は、メディエータの種類に応じて調整されうる。メディエータ溶液がPOM水溶液であるとき、POM水溶液におけるPOMの濃度は、例えば、0.05mol/リットル以上であり、0.1mol/リットル以上であってもよい。
【0030】
燃料電池システム1aは、酸化剤供給経路24をさらに備えている。酸化剤供給経路24は、再生器20に接続されている。詳細には、酸化剤供給経路24は、再生器20のバブラー22に接続されている。酸化剤供給経路24は、再生器20に供給されるべき酸化剤が流れる流路である。酸化剤供給経路24には、酸化剤をメディエータ溶液に吹き込むことができるように、ファン、ブロワなどの酸化剤供給器が設けられていてもよい。
【0031】
燃料電池システム1aは、循環経路30をさらに備えている。循環経路30は、燃料電池10と再生器20とを接続している。循環経路30を通じて、燃料電池10のカソード12と再生器20との間でメディエータ溶液を循環させることができる。詳細には、カソード12で還元されたメディエータを再生器20で酸化させ、カソード12に再度供給することができる。これにより、カソード12における反応をスムーズに進行させることができる。
【0032】
本実施形態において、循環経路30は、第一経路30a及び第二経路30bを有する。第一経路30aは、再生器20の溶液出口とカソード12の入口とを接続している。第二経路30bは、カソード12の出口と再生器20の溶液入口とを接続している。循環経路30には、ポンプが設けられていてもよい。ポンプは、第一経路30aに配置されていてもよく、第二経路30bに配置されていてもよい。第一経路30a及び第二経路30bのそれぞれにポンプが配置されていてもよい。
【0033】
循環経路30の第一経路30a及び第二経路30bは、それぞれ、少なくとも1つの配管によって構成されうる。循環経路30には、ポンプ以外のコンポーネント、例えば、コネクタ、フィルタ、弁、流量計、センサなどが配置されていてもよい。これらは、他の経路にも当て嵌まる。
【0034】
燃料電池システム1aは、改質器32をさらに備えている。改質器32は、例えば、水蒸気改質反応(CH4+H2O→3H2+CO)などの改質反応によって水素含有ガスを生成するための機器である。改質器32には、改質反応を進行させるための改質触媒が収められている。改質器32には、一酸化炭素を除去するための触媒(CO変成触媒及びCO選択酸化除去触媒)が収められていてもよい。改質器32は、水蒸気及び原料ガスを用いて、水素含有ガスを生成する。原料ガスは、例えば、都市ガス、LPガス(液化石油ガス)などの炭化水素ガスである。水素含有ガスは、燃料ガスとして燃料電池10に供給される。
【0035】
燃料電池システム1aは、さらに、燃焼器33及び排気経路35を備えている。燃焼器33は、可燃性ガスを燃焼させることによって改質器32を加熱するための機器である。燃焼器33は、改質器32に隣接している。燃焼器33は、改質器32の内部に配置されていてもよい。排気経路35は、燃焼器33に接続されている。排気経路35は、燃焼器33で生じた燃焼排ガスの流路である。排気経路35は、例えば、燃料電池システム1aの筐体の外部まで延びている。
【0036】
加熱経路42は、再生器20を加熱するように設けられている。燃焼器33から排出された燃焼排ガスが加熱経路42を流れる。これにより、加熱経路42からの放熱によって再生器20が加熱される。その結果、再生器20の内部を所望の温度に保つことができ、メディエータの再生速度が高い。加熱経路42は、例えば、排気経路35の一部によって構成されている。
【0037】
加熱経路42は、例えば、再生器20の少なくとも一部を覆っている。ここで、「覆っている」とは、加熱経路42をなす部材が再生器20と接している構成と、加熱経路42をなす部材が空間又は部材を介して再生器20を覆う構成とを含みうる。
図2に示す通り、加熱経路42は、例えば、再生器20に巻き回された配管によって構成されている。この配管は、典型的には、高い伝熱性を有する材料でできている。加熱経路42は、再生器20の少なくとも一部を取り囲むジャケット(図示省略)によって構成されていてもよい。この場合、ジャケットは、燃焼排ガスの入口及び出口を有する。
【0038】
加熱経路42の少なくとも一部は、断熱材によって覆われていてもよい。断熱材の材料としては、樹脂、金属、ガラス、セラミックなどが挙げられる。断熱材の構成も特に限定されない。断熱材の構成としては、発泡体、繊維集合体などが挙げられる。断熱材は、空気層をなす中空の部材であってもよい。
【0039】
燃料電池システム1aは、例えば、ガス排出経路25をさらに備えている。ガス排出経路25は、再生器20に接続されている。ガス排出経路25は、例えば、メディエータ溶液の液面よりも上の位置において、再生器20の内部空間に向かって開口している。メディエータの酸化反応に伴い水が生成されうる。一方、再生器20は、加熱器40によって加熱されるので、メディエータの酸化反応に伴い生成された水の一部は蒸発して水蒸気になる。この水蒸気は、ガス排出経路25を通って再生器20の外部に排出される。これにより、再生器20において、メディエータ溶液のメディエータ濃度の低下を抑制できる。なお、未反応の酸化剤もガス排出経路25を通って再生器20の外部に排出されうる。
【0040】
加熱経路42の少なくとも一部は、例えば、再生器20におけるメディエータ溶液の液面よりも上に位置している。このため、再生器20の内部に存在するガスも加熱器40によって加熱される。その結果、再生器20の内部の水蒸気が凝縮することなく再生器20の外部に排出されやすい。
【0041】
図3に示す通り、燃料電池システム1aは、加熱経路42と再生器20との間に配置された部材44をさらに備えていてもよい。部材44は、加熱経路42における燃焼排ガスが有する熱を再生器20に伝える。部材44は、例えば、加熱経路42と再生器20との間の空間を固体及び流体からなる群より選ばれる少なくとも1つで満たすための部材である。部材44を介して燃焼排ガスが有する熱を再生器20に適切に伝えることができる。例えば、燃焼排ガスの温度が再生器20の加熱の観点から高すぎる場合に、部材44によって再生器20の外面を所望の温度に調整できる。これにより、再生器20におけるメディエータの変質が防止され、燃料電池システム1aの耐用期間が長くなる。
【0042】
部材44は、例えば、再生器20の少なくとも一部を取り囲むジャケットであり、ジャケットの内部には所定の液体が存在している。液体の沸点は、例えば、再生器20におけるメディエータの変質が防止される温度に定められている。これにより、燃焼排ガスが液体の沸点よりも高い温度を有していても、再生器20の外面の温度は、メディエータの変質が防止される温度に保たれやすい。部材44の内部に存在している液体は、特に制限されないが、例えば、水である。
【0043】
燃料電池システム1aは、さらに、原料ガス供給経路37、燃料ガス供給経路38、及びアノードガス排出経路39を備えている。原料ガス供給経路37は、原料の貯蔵タンク、都市ガスのインフラストラクチャなどの原料供給源(図示省略)から改質器32に原料ガスを供給するための流路である。燃料ガス供給経路38は、改質器32から燃料電池10に水素含有ガスを供給するための流路である。燃料ガス供給経路38は、改質器32と燃料電池10とを接続している。アノードガス排出経路39は、未反応の水素含有ガスを燃料電池10のアノード11から排出するための流路である。アノードガス排出経路39は、燃料電池10のアノードガス出口と燃焼器33とを接続している。未反応の水素含有ガスは、アノードガス排出経路39を通じて燃焼器33に供給される。燃焼器33は、水素含有ガスを燃焼させて改質器32を加熱する。
【0044】
以下、他のいくつかの実施形態について説明する。第1実施形態と他の実施形態との間の共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。各実施形態に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、相互に適用されうる。技術的に矛盾しない限り、各実施形態は、相互に組み合わされてもよい。
【0045】
(第2実施形態)
図4は、本開示の第2実施形態に係る燃料電池システムの構成を示している。
図4に示す通り、燃料電池システム1bは、例えば、熱交換器50をさらに備えている。熱交換器50は、燃焼器33から排出された燃焼排ガスと再生器20に供給されるべき酸化剤とを熱交換させる。再生器20に供給されるべき酸化剤は、燃焼排ガスによって加熱される。熱交換器50は、酸化剤供給経路24に配置されている。詳細には、熱交換器50は、酸化剤供給経路24及び排気経路35に配置されている。熱交換器50によって酸化剤供給経路24の一部が構成され、熱交換器50によって排気経路35の一部が構成されている。
【0046】
熱交換器50によれば、燃焼器33から排出された燃焼排ガスの熱を再生器20へと供給されるべき酸化剤に伝達することができる。加熱された酸化剤が再生器20へと導入されるので、再生器20の中のメディエータ溶液の温度の低下を抑制できる。場合によっては、メディエータ溶液の温度を酸化剤の顕熱によって上昇させることができる。その結果、再生器20におけるメディエータの再生速度を向上させることができる。
【0047】
燃焼排ガスと酸化剤との間の熱交換が可能である限りにおいて、熱交換器50の構造は特に限定されない。熱交換器50に採用可能な熱交換器としては、シェルアンドチューブ式熱交換器、プレート式熱交換器、フィンアンドチューブ式熱交換器、二重管式熱交換器などが挙げられる。また、酸化剤供給経路24を構成する配管が排気経路35を構成する配管に直接又は他の部材を介して接していたり、酸化剤供給経路24を構成する配管が排気経路35を構成する配管の近傍に配置されていたりすることも考えられる。このような場合、酸化剤供給経路24を構成する配管と排気経路35を構成する配管とによって熱交換器50が構成されていると理解されうる。
【0048】
図4に示す通り、熱交換器50は、再生器20に供給されるべき酸化剤を、再生器20を加熱する前の燃焼排ガスで加熱する。例えば、熱交換器50は、排気経路35において加熱経路42の上流に配置されている。この場合、熱交換器50に導入される燃焼排ガスの温度は、加熱器40に導入される燃焼排ガスの温度よりも高い。このため、再生器20に供給される酸化剤の温度が高くなりやすく、酸化剤による再生器20の中のメディエータ溶液の温度の低下を抑制できる。なお、酸化剤として外気中の酸素を用いることが考えられる。燃料電池システム1bによれば、冬期に外気温が低下したときでも、熱交換器50によって再生器20に供給されるべき酸化剤を所望の温度に加熱しやすい。
【0049】
(第3実施形態)
図5は、本開示の第3実施形態に係る燃料電池システムの構成を示している。燃料電池システム1cは、特に説明する場合を除き、燃料電池システム1bと同様に構成されている。熱交換器50は、再生器20に供給されるべき酸化剤を、再生器20を加熱した後の燃焼排ガスで加熱する。例えば、熱交換器50は、排気経路35において加熱経路42の下流に配置されている。この場合、加熱器40を通過した燃焼排ガスが有する熱を酸化剤の加熱に利用できる。加熱された酸化剤が再生器20へ導入されるので、再生器20の中のメディエータ溶液の温度の低下を抑制できる。その結果、再生器20におけるメディエータの再生速度を向上させることができる。
【0050】
(第4実施形態)
図6は、本開示の第4実施形態に係る燃料電池システムの構成を示している。燃料電池システム1dにおいて、燃焼排ガスとの熱交換により加熱された熱媒体が加熱経路42を流れる。燃料電池システム1dは、例えば、熱交換器70と、熱媒体経路75とを備えている。熱交換器70は、燃焼器33から排出された燃焼排ガスと熱媒体とを熱交換させる。熱媒体は、特定の物質に限定されない。熱媒体は、例えば、水を含んでいる。熱媒体経路75は、熱交換器70と加熱器40とを接続しており、熱交換器70と加熱器40との間で熱媒体を循環させる経路である。熱媒体経路75の一部は、加熱経路42を構成している。また、熱交換器70は、排気経路35の一部を構成している。熱交換器70において、燃焼排ガスと熱媒体との熱交換により、熱媒体が加熱される。熱交換器70から排出された熱媒体は、加熱経路42に導入される。加熱経路42の熱媒体が有する熱によって再生器20を加熱できる。
【0051】
熱交換器70に採用可能な熱交換器としては、シェルアンドチューブ式熱交換器、プレート式熱交換器、フィンアンドチューブ式熱交換器、二重管式熱交換器などが挙げられる。また、熱媒体経路75を構成する配管が排気経路35を構成する配管に直接又は他の部材を介して接していたり、熱媒体経路75を構成する配管が排気経路35を構成する配管の近傍に配置されていたりすることも考えられる。このような場合、熱媒体経路75を構成する配管と排気経路35を構成する配管とによって熱交換器70が構成されていると理解されうる。
【0052】
熱媒体経路75は、加熱器40における熱媒体の出口が熱交換器70に接続されることなく延びていてもよい。
【0053】
(第5実施形態)
図7は、本開示の第5実施形態に係る燃料電池システムの構成を示している。燃料電池システム1eにおいて、加熱経路42は、例えば、再生器20の内部に配置されている。燃料電池システム1eによれば、加熱器40が再生器20の内部を効率的に加熱でき、熱損失が少ない。
【0054】
(その他の変形例)
燃料電池システム1b又は燃料電池システム1cは、排気経路35が熱交換器50及び加熱経路42の上流において分岐点を有するように変更されてもよい。例えば、燃料電池システム1b又は燃料電池システム1cは、
図8に示す燃料電池システム1fのように変更されてもよい。燃料電池システム1fにおいて、熱交換器50は、排気経路35において分岐点BPと加熱経路42とを接続している流路とは異なる流路によってその分岐点BPと接続されている。換言すると、熱交換器50及び加熱経路42は、排気経路35において並列に配置されている。この場合、例えば、燃料電池システム1fの運転条件に応じて、熱交換器50に供給される燃焼排ガスの流量と加熱経路42に供給される燃焼排ガスの流量との比を調整できる。排気経路35には、必要に応じて、その比を調整するための弁が配置される。
【0055】
燃料電池システム1b又は燃料電池システム1cは、熱交換器50と加熱経路42との間における燃焼排ガスの流れ方向を切り替え可能に変更されてもよい。これにより、燃料電池システムの運転条件に応じて、燃焼排ガスが熱交換器50を通過して加熱経路42に供給される第一モードと、燃焼排ガスが加熱経路42を通過して熱交換器50に供給される第二モードとを切り替えることができる。この変形例において、第一モードと第二モードとを切り替えるための構成は特に制限されない。例えば、排気経路35が熱交換器50及び加熱経路42を迂回する2つの迂回経路を含み、かつ、各迂回経路の両端に三方弁が配置されていることによって第一モードと第二モードとを切り替えることができる。
【0056】
燃料電池システム1dは、熱交換器50をさらに備えるように変更されてもよい。この場合、熱交換器50は、排気経路35において熱交換器70の上流に配置されていてもよいし、熱交換器70の下流に配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本明細書に開示された技術は、燃料電池システムに有用である。
【符号の説明】
【0058】
1a、1b、1c、1d、1e、1f 燃料電池システム
10 燃料電池
11 アノード
12 カソード
20 再生器
24 酸化剤供給経路
32 改質器
33 燃焼器
40 加熱器
42 加熱経路
44 部材
50 熱交換器