(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】非破壊検査システム及び非破壊検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/204 20060101AFI20230210BHJP
【FI】
G01N23/204
(21)【出願番号】P 2019034643
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】永野 繁憲
(72)【発明者】
【氏名】石黒 哲
(72)【発明者】
【氏名】大竹 淑恵
(72)【発明者】
【氏名】須長 秀行
(72)【発明者】
【氏名】吉村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】井門 孝治
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043581(WO,A1)
【文献】特開昭63-070153(JP,A)
【文献】特開2013-174587(JP,A)
【文献】特開2010-175362(JP,A)
【文献】特開2006-010356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N23/00-G01N23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス状の中性子を照射可能な中性子照射部と、
前記中性子照射部から照射され被検査物を介した中性子を検出可能な中性子検出器と、
被検査物の材質と中性子の減衰の関係を示す減衰情報を記憶する記憶部と、
前記中性子検出器が検出する中性子量の時間変化の情報である時間変化情報に応じて前記被検査物内の特異部分の位置を示す距離情報を演算可能な演算部と、
を備え、
前記演算部は、前記距離情報と前記減衰情報を用いて前記時間変化情報の中性子量に基づく情報
を補正し、当該補正した時間変化情報の中性子量に基づく情報から前記特異部分の量に関する情報を生成可能な非破壊検査システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記距離情報を前記時間変化情報のピークとなる時間情報から演算する請求項1に記載の非破壊検査システム。
【請求項3】
前記演算部は、前記時間変化情報の前記ピークにおける中性子量に基づく情報から前記特異部分の量を演算する請求項2に記載の非破壊検査システム。
【請求項4】
前記演算部は、前記時間変化情報の時間経過に基づく積分値から前記特異部分の量を演算する請求項1又は2に記載の非破壊検査システム。
【請求項5】
前記演算部は、前記距離情報に基づき前記中性子検出器が検出する中性子量の時間変化情報から中性子量の情報を抽出する抽出時間を演算し、前記抽出時間における前記時間変化情報の中性子量に応じて、特異部分の量を演算する請求項1から4のいずれか一項に記載の非破壊検査システム。
【請求項6】
前記演算部は、前記中性子検出器が検出する中性子量の時間変化情報から、前記特異部分の組成に関する情報を生成する請求項1から5のいずれか一項に記載の非破壊検査システム。
【請求項7】
前記中性子検出器は、前記被検査物の内部にて後方散乱した中性子を検出可能である請求項1から6のいずれか一項に記載の非破壊検査システム。
【請求項8】
前記中性子検出器は、前記被検査物を透過した中性子を検出可能である請求項1から7のいずれか一項に記載の非破壊検査システム。
【請求項9】
中性子を照射可能な中性子照射部と、
前記中性子照射部から照射され被検査物を介した中性子を検出可能な中性子検出器と、
前記被検査物と前記中性子検出器との間に位置し、前記被検査物を介した中性子を所定の指向性を以って前記中性子検出器に入射するように配置されるコリメータと、
被検査物の材質と中性子の減衰の関係を示す減衰情報を記憶する記憶部と、
前記中性子検出器で検出する結果に基づいて演算するように構成された演算部と、
を備え、
前記中性子照射部は、中性子を照射する中心軸が前記コリメータの中心軸方向に対して交差するように中性子を照射するように構成され、
前記演算部は、
前記中性子検出器が検出する中性子量の時間変化の情報である時間変化情報を生成可能であり、前記中性子検出器の位置情報及び/又は前記中性子照射部の位置情報と、中性子を照射する中心軸と前記コリメータの中心軸方向の交差する角度に関する情報と、前記中性子検出器で検出する中性子量と、から、前記コリメータの中心軸方向の特異部分の位置を示す距離情報を演算可能であり、前記距離情報と前記減衰情報を用いて
前記時間変化情報の中性子量に基づ
く情報を補正し、当該補正した時間変化情報の中性子量に基づく情報から前記特異部分の量に関する情報を生成可能な非破壊検査システム。
【請求項10】
前記中性子照射部は、中性子を照射する中心軸が前記コリメータの中心軸方向の交差する角度が10度から80度となるように中性子を照射するように構成される請求項9に記載の非破壊検査システム。
【請求項11】
パルス状の中性子を照射可能な中性子照射部と、
前記中性子照射部から照射され被検査物を介した中性子を検出可能な中性子検出器と、
被検査物の材質と中性子の減衰の関係を示す減衰情報を記憶する記憶部と、
前記中性子検出器が検出する中性子量の時間変化の情報である時間変化情報に応じて前記被検査物内の特異部分の位置を示す距離情報を演算可能な演算部と、
を用いて、
前記中性子照射部が、中性子を被検査物に向けて照射するステップと、
前記中性子検出器が中性子を検出するステップと、
前記演算部が、前記距離情報と前記減衰情報を用いて前記時間変化情報の中性子量に基づく情報
を補正し、補正後の時間変化情報から前記特異部分の量に関する情報を生成するステップと、
を備える非破壊検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子線を用いた被検査物の非破壊検査システム及び非破壊検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路、橋梁、トンネル、建築物等のインフラストラクチャー(以下、インフラ構造物という)の老朽化に対して、適切な維持管理、補修、更新が望まれている。
【0003】
このようなインフラ構造物の検査においては、物体に対して透過性を有するX線等の放射線を用いることで、被検査物を破壊することなく内部構造を解析することが可能な非破壊検査が行われている。
【0004】
特に近年においては、X線よりも透過性の高い中性子を用いた非破壊検査装置も検討されている。例えば、特許文献1には、車両に可搬型の中性子発生源を搭載して、橋梁の上を走行しつつ、当該中性子を用いて当該橋梁内部に対する非破壊検査を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開番号WO2016/035151
【文献】特開2008-180700
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の中性子を用いた非破壊検査は、中性子検出器の対向する位置に欠陥があることを検査することができるが、深さ方向のどの位置にどの程度の欠陥があるのかを特定することが困難であった。
【0007】
そこで、特許文献2の検出方法では、高速中性子の発生時刻を基準とする熱中性子検出率の分布情報を算出し、この分布情報を用いて被検査物内に水が存在する場合の水の位置及び水の量を求める方法が開示されている。この発明に係る方法では、予め水の量に応じた熱中性子の検出率を計測しておき、メモリに記憶された水の量と対応する熱中性子検出率と検出した熱中性子から水の量を計測するものである。
【0008】
しかしながら、特許文献2の方法では、水で発生した熱中性子が検出器で検出するまでの透過距離による減衰の影響が考慮されておらず、例えば橋梁の深い部分にある水の量と、浅い部分にある水の量を精度よく計測することが困難である。
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、被検査物に対して中性子を用いて行う非破壊検査において、被検査物の特異部分の位置情報から特異部分の量を精度よく検出することができる非破壊検査システム、非破壊検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明に係る非破壊検査システムは、パルス状の中性子を照射可能な中性子照射部と、前記中性子照射部から照射され被検査物を介した中性子を検出可能な中性子検出器と、被検査物の材質と中性子の減衰の関係を示す減衰情報を記憶する記憶部と、前記中性子検出器が検出する中性子量の時間変化の情報である時間変化情報に応じて前記被検査物内の特異部分の位置を示す距離情報を演算可能な演算部と、を備え、前記演算部は、前記距離情報と前記減衰情報を用いて前記時間変化情報の中性子量に基づく情報を補正し、当該補正した時間変化情報の中性子量に基づく情報から前記特異部分の量に関する情報を生成可能である。
【0011】
また、上記非破壊検査システムとして、前記演算部は、前記距離情報を前記時間変化情報のピークとなる時間情報から演算してもよい。
【0012】
また、上記非破壊検査システムとして、前記演算部は、前記時間変化情報の前記ピークにおける中性子量に基づく情報から前記特異部分の量を演算してもよい。
【0013】
また、上記非破壊検査システムとして、前記演算部は、前記時間変化情報の時間経過に基づく積分値から前記特異部分の量を演算してもよい。
【0014】
また、上記非破壊検査システムとして、前記演算部は、前記距離情報に基づき前記中性子検出器が検出する中性子量の時間変化情報から中性子量の情報を抽出する抽出時間を演算し、前記抽出時間における前記時間変化情報の中性子量に応じて、特異部分の量を演算してもよい。
【0015】
また、上記非破壊検査システムとして、前記演算部は、前記中性子検出器が検出する中性子量の時間変化情報から、前記特異部分の組成に関する情報を生成してもよい。
【0016】
また、上記非破壊検査システムとして、前記中性子検出器は、前記被検査物の内部にて後方散乱した中性子を検出可能となるように構成してもよい。
【0017】
また、上記非破壊検査システムとして、前記中性子検出器は、前記被検査物を透過した中性子を検出可能となるように構成してもよい。
【0018】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係る非破壊検査システムは、中性子を照射可能な中性子照射部と、前記中性子照射部から照射され被検査物を介した中性子を検出可能な中性子検出器と、前記被検査物と前記中性子検出器との間に位置し、前記被検査物を介した中性子を所定の指向性を以って前記中性子検出器に入射するように配置されるコリメータと、被検査物の材質と中性子の減衰の関係を示す減衰情報を記憶する記憶部と
、前記中性子検出器で検出する結果に基づいて演算するように構成された演算部と、を備え、
前記中性子照射部は、中性子を照射する中心軸が前記コリメータの中心軸方向に対して交差するように中性子を照射するように構成され、前記演算部は、前記中性子検出器が検出する中性子量の時間変化の情報である時間変化情報を生成可能であり、前記中性子検出器の位置情報及び/又は前記中性子照射部の位置情報と、中性子を照射する中心軸と前記コリメータの中心軸方向の交差する角度に関する情報と、前記中性子検出器で検出する中性子量と、から、前記コリメータの中心軸方向の特異部分の位置を示す距離情報を演算可能であり、前記距離情報と前記減衰情報を用いて前記時間変化情報の中性子量に基づく情報を補正し、当該補正した時間変化情報の中性子量に基づく情報から前記特異部分の量に関する情報を生成可能である。
【0019】
また、上記非破壊検査システムとして、前記中性子照射部は、中性子を照射する中心軸が前記コリメータの中心軸方向の交差する角度が10度から80度となるように中性子を照射してもよい。
【0020】
また、上記非破壊検査方法として、パルス状の中性子を照射可能な中性子照射部と、前記中性子照射部から照射され被検査物を介した中性子を検出可能な中性子検出器と、被検査物の材質と中性子の減衰の関係を示す減衰情報を記憶する記憶部と、前記中性子検出器が検出する中性子量の時間変化の情報である時間変化情報に応じて前記被検査物内の特異部分の位置を示す距離情報を演算可能な演算部と、を用いて、前記中性子照射部が、中性子を被検査物に向けて照射するステップと、前記中性子検出器が中性子を検出するステップと、前記演算部が、前記距離情報と前記減衰情報を用いて前記時間変化情報の中性子量に基づく情報を補正し、補正後の時間変化情報から前記特異部分の量に関する情報を生成するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0021】
上記手段を用いる本発明によれば、被検査物に対して中性子を用いて行う非破壊検査において、被検査物の特異部分の位置情報から特異部分の量を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る非破壊検査システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1の非破壊検査システムの特異部分の位置を変えた状態を示す概略構成図である。
【
図3】被検査物中の深さの異なる位置および異なる量の水により散乱された熱中性子量比の時間変化のデータを示す図である。
【
図4】本発明のコントロールユニットを示すブロック図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る非破壊検査システムの動作を示すフローチャートである。
【
図6】被検査物中の深さの異なる位置および異なる量の空隙からの熱中性子量比の時間変化のデータを示す図である。
【
図7】被検査物中の深さの異なる位置および異なる量の水により散乱された熱中性子量比の時間変化の積分領域を示す図である。
【
図8】被検査物中の深さの異なる位置および異なる量の水により散乱された熱中性子量比の時間変化の検出時間を区切った積分領域を示す図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る非破壊検査システムの変形例を示す概略構成図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る非破壊検査システムを示す概略構成図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る非破壊検査システムにおける中性子検出器の検出結果および、被検査物と中性子検出ユニットの位置関係を示す概略構成図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る非破壊検査システムにおける中性子検出器の検出結果および、被検査物と中性子検出ユニットの位置関係を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0024】
(第1実施形態)
まず本発明の第1実施形態について説明する。
【0025】
<全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る非破壊検査システム1の概略構成図である。以下これらの図に基づき本実施形態の非破壊検査システム1の構成について説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の非破壊検査システム1は、移動体である車両2に中性子照射源システム3、検出システム4、コントロールユニット5が搭載されて構成されている。車両2は例えばトラックであり、荷台2aに中性子照射源システム3、検出システム4がそれぞれ搭載され、運転席2bにコントロールユニット5が搭載されている。本実施形態では、車両2は主にコンクリートからなる橋101の上を走行し、橋101を被検査物とした非破壊検査を行う。
【0027】
中性子照射源システム3は、電源部10、荷電粒子線である陽子ビームP(プロトンビーム)を出射する線形加速器11、中性子照射部12を有している。また、検出システム4は、被検査物を介した中性子線を検出する中性子検出器14、中性子が外部へ拡散するのを防ぐための遮蔽筒15を有している。
【0028】
詳しくは、電源部10は、各部に電力を供給する発電機である。電源部10の発電機は、少なくとも荷電粒子である陽子(プロトン)を発生可能な発電性能を備え、電圧変動が少なく、高調波電流に耐えられるものが好ましい。また、電源部10は、発電機が発電した電力を蓄電可能なバッテリを有していてもよい。
【0029】
線形加速器11は、陽子を発生するイオン源11aを有し、当該イオン源11aから円筒状の加速器11bを介して中性子照射部(中性子照射部)12に接続される。加速器11bは、イオン源11aで発生した陽子を加速し、陽子ビームPとして中性子照射部12に照射する。イオン源11aは、陽子の発生を断続的に行うことで、中性子照射部12から時間的に離散したパルス状の中性子を照射することができる。
【0030】
中性子照射部12は、ターゲット部(不図示)と照射コリメータ(不図示)とを含んで構成される。ターゲット部は、陽子と衝突して中性子を生じるものであり、例えばベリリウムを含んで形成されている。ターゲット部には、ターゲット部から発生した中性子のうち所定方向の中性子を選択する照射コリメータが接続される。照射コリメータによって、照射される高速中性子Nhの指向性を高めることができる。なお、線形加速器11からターゲット部までは、荷電粒子の飛翔を妨げないようにその経路は高真空状態を維持可能な構造となっている。
【0031】
中性子検出器14は、矩形の板状をなし中性子照射部12の下方に配置されている。本実施形態の中性子検出器14は、中性子照射部12から生じた中性子が橋101内にて後方散乱した熱中性子Nsを検出するものである。なお、
図1では中性子照射部12から照射される高速中性子Nhを実線の矢印で示し、熱中性子Nsを点線の矢印で示している。
【0032】
図1では、非破壊検査システム1は、被検査物である橋101の上に配置されている状態である。また、中性子照射部12の下方で、橋101の舗装面から距離dの位置に特異部分121がある状態を示している。特異部分は、橋101を構成するコンクリートにできたクラックに水がたまった状態の部分である。中性子照射部12から照射された1MeVのエネルギーを持つ高速中性子Nhは、橋101を構成するコンクリート内を進行し、その構成元素により、散乱や減衰を生じる。水を構成する元素である水素の原子核は、中性子と質量が近いため弾性散乱時の中性子のエネルギー損失が大きい。そのため、高速中性子Nhは、水に入射すると熱中性子として散乱する。
図1の点線で示す特異部分122は、特異部分121に比べてクラックが大きくクラックにたまった水の量が多い部分である。
【0033】
図2は、
図1における特異部分121が、橋101の舗装面から距離dよりも離れた距離d’の位置に特異部分121’がある状態を示している。散乱される熱中性子Ns’は、特異部分121’から最短距離d’で舗装面に到達し、中性子検出器14で検出される。
図2の点線で示す特異部分122’は、特異部分121’に比べてクラックが大きくクラックにたまった水の量が多い部分であり、
図1の特異部分122と同じ量である。
【0034】
<検出データについて>
図3は、非破壊検査システム1で測定した、被検査物中の位置の異なる水に対する熱中性子量比の時間変化のデータを示す図である。
図3において、横軸は、中性子照射部12が被検査物へパルス状の高速中性子を照射した時点を原点とする時間を示す。なお、横軸は、絶対的な時間を示すものではなく、所定の値で規格化したものである。また、縦軸も、中性子検出器14で検出した熱中性子の検出数を示す。縦軸の検出数は、被検査物に水や空隙のない状態、すなわち特異部分がなく被検査物がコンクリートで満たされている状態を標準状態である1として規格化している。
【0035】
図3の線511は、
図1の深さdに位置する特異部分121に、高速中性子Nhを照射した際に中性子検出器14で検出される熱中性子の量の時間変化を示している。また、線511’は、
図2の深さd’に位置する特異部分121’に高速中性子Nhを照射した際に中性子検出器14で検出される熱中性子の量の時間変化を示している。同様に、線512は、
図1の深さdに位置する特異部分122に、高速中性子Nhを照射した際に中性子検出器14で検出される熱中性子の量の時間変化を示している。また、線512’は、
図2の深さd’に位置する特異部分122’に高速中性子Nhを照射した際に中性子検出器14で検出される熱中性子の量の時間変化を示している。
【0036】
熱中性子の速度は約2200[m/s]であり、例えば1.0[MeV]の高速中性子の速度1.4×107[m/s]に対してきわめて遅い。そのため、高速中性子の照射タイミングから熱中性子の検出タイミングまでの時間差は、熱中性子の透過距離による。線511は、検出時間tcで熱中性子数比のピークを持つ。また線511’は、tcよりも遅れたtc’でピークを持つ。線511のピークtcは、実質的に熱中性子が距離dを透過する時間により決まり、また線511’のピークtc’は、熱中性子が距離d’を透過する時間により決まる。すなわち、横軸におけるピークの位置は特異部分の深さに対応する。そのため、非破壊検査システム1は、ピークの位置から特異部分の深さ(距離情報)を推定することができる。
【0037】
次に、ピークの高さについて説明する。先に説明したように、
図3において、縦軸も、中性子検出器14で検出した熱中性子の検出量を規格化した値である。すなわち、同じ深さにおいて、水の量が多ければ、その水により散乱されて検出される熱中性子の量は多くなる。ここで、特異部分121により散乱された熱中性子の検出結果である線511のピークの高さはrc1である。特異部分121よりも水の量が多い特異部分122により散乱された熱中性子の検出結果である線512のピークの高さはrc1よりも大きいrc2である。
【0038】
特異部分121と同じ水の量である特異部分121’により散乱された熱中性子の検出結果である線511’のピークの高さは、rc1よりも小さいrc1’である。
【0039】
ここで、高速中性子、熱中性子の減衰について説明する。高速中性子は、空気中ではほぼ減衰することなく透過することができる。しかし、コンクリート等の物体中を透過する場合、構成元素との衝突により減衰が生じる。熱中性子は、空気中および物体中で減衰する。減衰率をβとしたときに、入射量CN0に対する減衰後の中性子量CNXは、その透過する距離Xとの関係で、下記数1で表すことができる。なお、減衰率βは、透過する中性子と透過する物質の関係により決まる値である。
【0040】
(数1)
CNx=F(β、X)・CN0
【0041】
関数Fは、例えば、指数関数を用いることができる。
【0042】
特異部分121の位置と特異部分121’の位置は、d<d’の関係であることから、特異部分121’に到達する高速中性子は、特異部分121に到達する高速中性子に比べて減衰する。また、特異部分121’で散乱された熱中性子は、特異部分121で散乱された熱中性子に対して透過距離の分、減衰する。そのため、ピークの位置から推定した距離d、d’と、減衰率の関係から式1を用いて減衰前の熱中性子の量を推定することができる。それにより、距離dとピークの高さrc1の関係と、距離d’とピークの高さrc1’の関係のそれぞれから、特異部分121と特異部分121’の水の量が同じであることを算出することができる。
【0043】
なお、非破壊検査システム1は、予め特異部分の量と深さが既知であるデータを用いて、検出データと対応させることにより、特異部分の量を推定することができる。
【0044】
<コントロールユニット構成>
次に、コントロールユニットの構成について説明する。
図4は、コントロールユニット5の構成を示すブロック図である。コントロールユニット5は、制御部311と、記憶部312と、演算部313と、表示部314と、線源出力部321と、検出器入力部322と、位置入力部323とを含んで構成されるユニットであり、専用のコンピュータや、ソフトウエアがインストールされた汎用のコンピュータ等により構成される。
【0045】
制御部311は、コントロールユニット5全体の制御を行う。記憶部312は、中性子検出器14の中性子量の検出結果の情報を記憶する。また、材質毎の減衰率のデータを記憶する。また、特異部分の量と深さが既知である基準となるデータを記憶する。
【0046】
演算部313は、検出結果の処理を行い、中性子量の時間変化情報を生成する。また、演算部313は、時間変化情報のピークを検出するための演算を行う。さらに、演算部313は、ピークの検出時間から、特異部分の位置を推定する演算を行う。また、演算部313は、ピークの検出時間に応じて時間変化情報から中性子量の情報を抽出する抽出時間を演算する。そして、時間変化情報と演算した抽出時間および、ピーク位置による減衰率の補正を行うことで、特異部分の量を推定する演算を行う。
【0047】
表示部314は、演算した特異部分の位置、深さ、量の情報をユーザが視認できるように表示する装置である。線源出力部321は、接続される線形加速器11の制御を行う。例えば、時間的に離散したパルス中性子を中性子照射部12から照射するように線形加速器11を制御することができる。また、検出器入力部322は、接続される中性子検出器14からの出力を受信する。また、位置入力部323は、非破壊検査システム1の位置を位置検出部31から受信する。位置検出部31は、例えばGPSや、カメラや、他の計測手段を用いても構わない。それにより、非破壊検査システム1が被検査物のどの位置を計測しているかを知ることができる。
【0048】
<処理の流れ>
次に、第1実施形態に係る非破壊検査システム1の動作について、
図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0049】
ステップS101において、位置入力部323は、非破壊検査システム1の位置情報と被検査物の位置情報から、検出場所の位置を取得する。検出場所の位置とは、例えば橋の表面の平面上の位置を示すものである。
【0050】
ステップS102において、線源出力部321は、線形加速器11を制御して、パルス中性子を中性子照射部12から照射する。
【0051】
ステップS103において、検出器入力部322は、中性子検出器14で検出する中性子量のデータを取得し、時間情報を付与して中性子量の時間変化情報として記憶部312に記憶する。
【0052】
ステップS104において、演算部313は、時間変化情報のピークを検出するための演算を行う。さらに、演算部313は、ピーク時間から、特異部分の位置を推定する演算を行う。
【0053】
ステップS105において、演算部313は、推定された特異部分の位置による熱中性子の透過距離を用いて、時間変化情報のピーク高さについて減衰率の補正を行う。また、演算部313は、補正を行ったピーク高さから特異部分の量を推定する演算を行う。
【0054】
ステップS106において、表示部314は、演算部313で演算された特異部分の推定された位置や量をユーザが視認できる形で表示する。
【0055】
ステップS107において、制御部311は、ユーザの要求により、測定を終了するかどうかを判別し、終了すると判別(Y)の場合処理を終了し、終了しないと判別(N)の場合、ステップS101へ処理を戻す。
【0056】
以上、特異部分が水である場合について説明したが、特異部分が空隙である場合には、
図6で示すように、縦軸の1を基準に、カーブは下向きのピークを持つ。水の場合と同様にピークの位置の検出時間から空隙の深さ方向の位置を検出可能である。また、ピークの高さから空隙の量を推定することができる。このように、検出された中性子量の時間変化情報であるカーブが上向きか下向きかにより、特異部分が水であるか、空隙であるか、すなわち、特異部分の組成を推定することができる。
【0057】
以上、説明したように、パルス状の高速中性子を被検査物に照射し、検出した熱中性子の時間変化情報のピーク位置により特異部分の距離(位置)を推定し、また、その距離の情報と減衰情報を用いて時間変化情報のピーク高さから特異部分の水や空隙の量を推定し、その情報を生成することができる。
【0058】
なお、熱中性子の量は、ピークの高さに換えて、
図7で示すカーブが作る面積の積分値を用いても構わない。線511が基準値との間で作る面積Sは、特異部分121により散乱された熱中性子を積算したものであり、すなわち、特異部分の量に応じた値を示す。線511’が基準値との間で作る面積S’は、同様に特異部分121’により散乱された熱中性子を積算したものである。特異部分121と特異部分121’は同じ量であるが、深さがdと、dより大きなd’で異なる。深さdに位置する特異部分121により散乱される熱中性子は、dの距離で減衰される。また、深さd’に位置する特異部分121’により散乱される熱中性子は、d’の距離で減衰される。そのため、面積Sと面積S’をそれぞれの減衰量を補正することにより、特異部分の量を推定することができる。
【0059】
また、積分を行う時間の範囲は、特異部分の距離情報により変化させても構わない。
図1において、熱中性子Nsは最短の距離であるdを透過し中性子検出器14に検出される。これに加えて、熱中性子は、コンクリート内で更なる散乱を繰り返し、距離dよりも長い距離を透過して舗装面に到達し、中性子検出器14で検出されるものもあり、それらの中性子の検出時間は遅れる。距離が長くなれば、遅れは大きくなり、線511’の描くカーブは、線511のカーブよりもよりブロードになる。ピークから遅延して検出される熱中性子は、散乱を繰り返したものであり、その中性子数は、水の量だけではなく、周囲の環境に応じて変化する場合がある。そのため、検出時間を長期に摂り、積分値を算出すると、遅延して検出される熱中性子により、水の量を異なって算出するおれがある。そのため、ピークに対して、中性子量を抽出するための積分のための時間を設定し、当該時間内での中性子量を積分することで、安定した水の量を測定することができる。
図8では、線511では、ピークがtcから、t1からt2の期間を抽出時間として設定し、その間の積分値がStとなる。線511’では、ピークがtc’であり、t1’からt2’の期間を抽出時間として設定し、その間の積分値がSt’となる。積分を行う範囲を限定することにより、周囲の環境の影響を除外して特異部分の量を精度よく推定することができる。
【0060】
また、第1実施形態では、中性子照射部12と中性子検出器14が被検査物に対して同じ方向、すなわち被検査物に対して後方散乱した熱中性子を検出するものであるが、これに限られるものではない。
図9で示す非破壊検査システム1’では、検出システム4’を構成する中性子検出器14’を、中性子照射部12と被検査物を挟んで配置し、被検査物を透過して得られる熱中性子Ns1’’を検出しても構わない。その際、位置情報は特異部分121から、舗装面の反対面までの距離であるd’’の距離に基づいて演算を行い、特異部分の量の推定を行う。
【0061】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係る非破壊検査システム1’’の概略構成図である。以下これらの図に基づき本実施形態の非破壊検査システム1’’の構成について説明する。なお、第1実施形態と同じ要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0062】
第2の実施形態では、非破壊検査システム1’’は、中性子検出器の位置情報や中性子照射部の位置情報と、中性子を照射する中心軸とコリメータの中心軸方向の交差する角度に関する情報から、距離情報を算出することができる。そして、非破壊検査システム1’’は、当該距離情報と減衰情報を用いて、特異部分の水や空隙の量を推定することができるシステムである。
【0063】
中性子検出ユニット21は、熱中性子を検出可能な中性子検出器22a~22eと、それぞれの中性子検出器に入射する熱中性子の指向性を高めるためのコリメータ23a~23eとを含んで構成される。中性子検出ユニット21は、連結部24を介して車両2に接続されている。中性子検出器22a~22eは、車両2の進行方向に平行に1列に配置されるアレイ構造である。
【0064】
図10では、非破壊検査システム1’’は、被検査物である橋101の上に配置されている状態である。橋101は内部に、水で満たされた特異部分123、124が存在する。
【0065】
中性子照射部12は、橋101に向けて照射できるように車両2の上で傾けられて設置される。中性子照射部12から照射される高速中性子は照射コリメータにより指向性が高められ、橋101に照射される。
図10では、照射される高速中性子の中心軸を点線で示しNhと表示する。照射される高速中性子は、照射コリメータにより指向性を高められているが、完全な平行ビームである必要はなく、多少の拡散角を持っていても構わない。その場合、拡散角を持って拡散する高速中性子のビームの中心軸が
図10のNhとなる。
【0066】
図10では、コリメータ23a~23eの中心軸を一点鎖線で示す。各コリメータの中心軸は、コリメータの指向性の中心を示している。中性子照射部12から照射される高速中性子は、コリメータ23a~23eの中心軸方向と高速中性子のビームの中心軸が角度θ1で交差するように照射される。具体的には、中性子照射部12は、照射する高速中性子の中心軸が前記コリメータの中心軸方向の交差する角度が10度から80度となるように高速中性子を照射する。角度を小さくすれば、高速中性子は橋101に深く侵入し、角度を大きくすれば、浅く侵入することになる。高速中性子Nhの各コリメータの中心軸が交差する位置を、
図10で位置111aから位置111eで示す。高速中性子は、橋101を構成する材質に衝突し、その一部が熱中性子として散乱される。位置111aで散乱した熱中性子Nsaはコリメータ23aを介して中性子検出器22aで検出される。同様に位置111bから位置111eで散乱した熱中性子は、それぞれ中性子検出器22bから22eで検出される。
【0067】
次に
図11を用いて、中性子検出器22aから22eで検出される検出結果である中性子量、および、被検査物である橋101と中性子検出ユニット21の関係を説明する。
図11(a)は、中性子検出器22aから22eで検出される検出結果である中性子量を示すグラフである。また
図11(b)は、橋101と中性子検出ユニット21の関係を示す概略構成図である。なお、
図10で説明したものについては省略する。
【0068】
図11(a)は、縦軸に中性子検出器が検出した中性子量を示し、横軸に中性子検出器の位置を示すグラフである。実線は、被検査物に特異部分がない場合であり、点線は被検査物に特異部分がある場合を示している。縦軸の中性子量は、中性子検出器が検出した熱中性子の量を示しており、検出した熱中性子の量をカウントした値である。中性子量は、実施例1における深さ方向の位置に応じた抽出時間により積分により求めた値を用いても構わない。点211aは、中性子照射部12から照射された高速中性子Nhが、被検査物である橋101を介して散乱した熱中性子Nsaを中性子検出器22aが検出した中性子量である。以下、同様に点211bから点211eは、中性子検出器22bから22eが検出した中性子量である。
【0069】
ここで、
図11(a)、
図11(b)を用いて、中性子照射部12から照射された高速中性子Nhが、中性子検出器22aに到達する過程における減衰について説明する。
図11(b)において、中性子照射部12から照射される高速中性子の中心軸(照射方向)と、コリメータ23aの中心軸(検出方向)は、角度θ1で交差する。コリメータ23aの中心軸が、被検査物である橋101と直交する場合、中性子照射部12から照射される高速中性子Nhの被検査物への入射角α1は下記数2で表すことができる。
【0070】
(数2)
α1=90°-θ1
【0071】
高速中性子Nhが、橋101に位置110で入射し、位置111aに到達するまでの距離Lhaは、位置110からコリメータ23aの中心軸までの距離をXaとすると下記数3で表すことができる。
【0072】
(数3)
Lha=Xa/cosα1
【0073】
次に、高速中性子は物質中で散乱し、熱中性子が発生する。位置111aで発生した熱中性子が、位置111aから、被検査物の表面、すなわち中性子検出器側に熱中性子が透過する距離Lsa、すなわち特異部分の舗装面からの距離情報は以下の数4で表すことができる。
【0074】
(数4)
Lsa=Xa・tanα1
【0075】
また、被検査物の表面から出射した熱中性子は、空気中を透過し、コリメータ23aを介して中性子検出器22aで検出される。この際、空気中を透過する距離をZaとする。この場合、高速中性子の照射量CNhに対する減衰後の熱中性子の量CNsは、下記数5の関係で表すことができる。なお、高速中性子の橋の構成物質における減衰率をβh、熱中性子の橋の構成物質における減衰率をβs、熱中性子の空気中における減衰率をβaとする。なお、位置110の位置、Za、XaからXeは、中性子照射部12の位置、中性子検出ユニット21の位置を被検査物との関係で測定することで決定することができる。
【0076】
(数5)
CNs∝F(βh,βa,βs,Lha,Lsa,Za)・CNh
【0077】
すなわち、各減衰率および高速中性子の入射角度および各中性子検出器の位置により、各中性子検出器が検出する中性子量の相対関係が定まる。
図11(a)のグラフの実線は、数5の関係が成立している。
【0078】
図11(a)の点線は、コリメータ23cの下に特異部分123、124が存在する場合の中性子量を示すグラフである。特異部分123、124は、橋にできた欠陥であるクラックに水が満たされている状態である。水は、その量に応じて高速中性子Nhが散乱し熱中性子を生じる。つまり、
図11(b)で示すように、位置111cに存在する特異部分123に入射する高速中性子Nhが特異部分124の水の量に応じて散乱させる熱中性子Nscが中性子検出器22cで検出される。そのため、
図11(a)で示すように、点211c’は、特異部分123が存在しない場合の中性子量を示す点211cに対して増加する。また、生じた熱中性子Nscはコンクリート内の距離Lscを透過する間に減衰する。さらに、位置111dで熱中性子Nsdを生じさせる高速中性子Nhは特異部分123で減衰しているため、中性子検出器22dで検出される中性子量を示す点211d’は点211dに比べて減少する。点211e’が点211eよりも減少しているのも同様の理由である。
【0079】
このように、
図11(a)において、特異部分のない状態を測定した実線のデータとの比較により、水平方向のXcの位置の、深さ方向の距離Lscに特異部分123が存在することを推定することができる。また、演算部313は、検出した中性子量を、実施形態1と同様に距離Lscから抽出時間を演算し、その時間内における中性子量を積分することにより、特異部分123の水の量を推定することができる。
【0080】
次に、
図12(b)は、非破壊検査システム1’’全体が、橋101に対して相対的に右側に移動した状態である。そのため、中性子照射部12から照射された高速中性子Nhは、特異部分124に照射される。特異部分124の水により散乱された熱中性子Nseは、特異部分123を透過し中性子検出器22eで検出される。
【0081】
図12(a)において、点211e、211e’’、211e'''は、それぞれ特異部分の有無による中性子検出器22eで検出される中性子量を示している。点211eは、特異部分が存在しない場合の中性子量を示している。点211e’’は、特異部分123のみが存在する場合の中性子量を示している。特異部分123に存在する水の量に応じて、熱中性子Nseの量は増加するため、点211e’’の中性子量は、点211eの中性子量よりも多い。点211e'''は、特異部分123、124が存在する場合の中性子量を示している。特異部分124で散乱された熱中性子Nseは、特異部分123を透過することによる減衰が生じるため、点211e'''の中性子量は点211e’’の中性子量に比べて少なくなる。特異部分123の水の量は、非破壊検査システム1’’全体の移動前の測定により既に推定されているため、当該推定量から減衰量を定めることができる。このようにして、演算部313は、中性子検出器22eで検出された中性子量に対して減衰要素を補正することにより、特異部分124の水の量を推定することができる。また、特異部分のない状態を測定した実線のデータとの比較により、水平方向のXeの位置の、深さ方向の距離Lseに特異部分124が存在することを推定することができる。このように、高速中性子の照射方向と、中性子検出器の検出方向が斜めになるように各構成を配置することにより、中性子検出器の下方に複数の特異部分がある場合においても、それぞれの位置、深さと特異部分の量(水の量)を推定することができる。当然に、特異部分が1か所の場合においては、その特異場所の位置、深さと特異部分の水の量を推定することができる。
【0082】
以上で本発明の各実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、以上の説明において、水や空隙の量と表現しているものは、水の量においては、水分子の量ととらえても良いし、空隙の量においては、空隙の体積ととらえても構わない。
【符号の説明】
【0083】
1、1’、1’’ 非破壊検査システム
2 車両
3 中性子照射源システム
4 検出システム
5 コントロールユニット
10 電源部
11 線形加速器
12 中性子照射部
14 中性子検出器
22、22a~22e 中性子検出器
23、23a~23e コリメータ
24 連結部
101 橋
121、121’、122、122’、123、124 特異部分
311 制御部
312 記憶部
313 演算部
314 表示部
321 線源出力部
322 検出器入力部
323 位置入力部