(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】Axl阻害剤を有効成分として含む固形がん治療剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4709 20060101AFI20230210BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230210BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230210BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20230210BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230210BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61K31/506
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P1/18
A61P11/00
A61P17/00
(21)【出願番号】P 2019547546
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2018038202
(87)【国際公開番号】W WO2019074116
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2017199598
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠明
(72)【発明者】
【氏名】康廣 とも子
(72)【発明者】
【氏名】田中 昂平
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/012298(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/146236(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、C07D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とするAxl阻害剤を有効成分として含む固形がん治療剤であって、前記Axl阻害剤がN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物である固形がん治療剤。
【請求項2】
固形がんが頭頸部がん、鼻咽頭がん、食道がん、胃食道接合部がん、食道腺がん、胃がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、小腸がん、肛門がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆管がん、胆道がん、膵臓がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、卵管がん、子宮がん、膣がん、外陰部がん、陰茎がん、腎がん、副腎がん、尿路上皮がん、前立腺がん、精巣腫瘍、骨・軟部肉腫、皮膚がん、神経膠腫、脳腫瘍、脊椎腫瘍、カポジ肉腫、扁平上皮がん、胸膜中皮腫、原発性腹膜がん、内分泌系がん、小児がんまたは原発不明がんである、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
固形がんが、膵臓がん、肺がんまたは皮膚がんである請求項1または2に記載の剤。
【請求項4】
肺がんが、EGFR阻害剤耐性肺がんである請求項3に記載の剤。
【請求項5】
EGFR阻害剤耐性肺がんが、ゲフィチニブ耐性肺がんである請求項4に記載の剤。
【請求項6】
EGFR阻害剤耐性肺がんが、EGFR T790M変異陽性の肺がんである請求項4に記載の剤。
【請求項7】
肺がんが、非小細胞肺がんである請求項3ないし6のいずれか一項に記載の剤。
【請求項8】
同時または別々に投与することを特徴とする、請求項1に記載の剤。
【請求項9】
オシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とする固形がん治療剤の製造のための、N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物の使用。
【請求項10】
Axl阻害剤と組み合わせて投与されることを特徴とするオシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む固形がん治療剤であって、前記Axl阻害剤がN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物である固形がん治療剤。
【請求項11】
Axl阻害剤とオシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩とを組み合わせて投与されることを特徴とする固形がん治療のための医薬組成物であって、前記Axl阻害剤がN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物である医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一態様において、オシメルチニブと組み合わせて投与されることを特徴とするAxl阻害剤を有効成分として含む固形がん治療剤であって、前記Axl阻害剤がN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド(以下、化合物Aと略記することがある)、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物である固形がん治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
Axl(別名:UFO、ARK、Tyro7)は、腫瘍細胞からクローニングされたTAMファミリー(Axl、MerおよびTyro3)に属する受容体型チロシンキナーゼである。細胞増殖停止時に特異的に発現する遺伝子としてクローニングされたGas6(growth-arrest-specific protein 6)が、Axlのリガンドとして知られている。Gas6の結合により活性化されたAxlは、リン酸化を介してシグナルを伝達する。そのシグナルは、Erk1/2経路やPI3K/Akt経路を活性化するため、Axlの活性化は、がん、免疫系疾患、循環器系疾患等の病態に関与することが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
特に、Axlと各種がんとの関連はよく知られており、例えば、Axlの発現が、乳がんの転移や予後に関与していること(非特許文献2参照)、Axlが急性骨髄性白血病(AML; acute myeloid leukemia)の病態に関与していること(非特許文献3参照)等が知られている。また、Axlを含むTAMファミリーは樹状細胞やマクロファージといった免疫細胞に発現しており、抗腫瘍免疫を抑制性に制御することが報告されている(非特許文献4参照)。したがって、Axlの活性化を阻害する化合物は、各種がん、免疫系疾患、循環器系疾患の治療に有用であると考えられる。
【0004】
特許文献1には、化合物Aが、Axl阻害作用を有し、がん治療薬として有用であることが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献2には、一般式(I)で示される化合物と、免疫チェックポイント阻害剤とを組み合わせることががん治療に有用であることが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2015/012298号
【文献】国際公開第2017/146236号
【非特許文献】
【0007】
【文献】クリニカル・サイエンス(Clinical Science)、第122巻、361-368ページ、2012年
【文献】プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the national academy of sciences of the United States of America)、第107巻、第3号、1124-1129ページ、2010年
【文献】ブラッド(Blood)、第121巻、2064-2073ページ、2013年
【文献】ネイチャー・レビューズ・キャンサー(Nature Reviews Cancer)、第14巻、769-785ページ、2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、有効な固形がん治療法を見出し、医薬品として提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、化合物A、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物であるAxl阻害剤とオシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩との組み合わせ(以下、本発明の組み合わせと略記することがある。)により、前記課題を解決できることを見出した。
【0010】
本発明は、例えば、下記の実施態様を提供する。
[1] オシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とするAxl阻害剤を有効成分として含む固形がん治療剤であって、前記Axl阻害剤がN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物である固形がん治療剤、
[2] 固形がんが頭頸部がん、鼻咽頭がん、食道がん、胃食道接合部がん、食道腺がん、胃がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、小腸がん、肛門がん(例えば、肛門管がん)、肝臓がん(例えば、肝細胞がん)、胆嚢がん、胆管がん、胆道がん、膵臓がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(例えば、扁平上皮非小細胞肺がん、非扁平上皮非小細胞肺がん)、小細胞肺がん)、乳がん、卵巣がん(例えば、漿液性卵巣がん、卵巣明細胞腺がん)、卵管がん、子宮がん(例えば、子宮頚がん、子宮体がん、子宮内膜がん)、膣がん、外陰部がん、陰茎がん、腎がん(例えば、腎細胞がん、淡明細胞型腎細胞がん)、副腎がん、尿路上皮がん(例えば、膀胱がん、上部尿路がん、尿管がん、腎盂がんおよび尿道がん)、前立腺がん、精巣腫瘍(例えば、胚細胞腫瘍)、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫および子宮体部平滑筋肉腫)、皮膚がん(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、メルケル細胞がん)、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫、神経膠肉腫)、脳腫瘍(例えば、膠芽腫)、脊椎腫瘍、カポジ肉腫、扁平上皮がん、胸膜中皮腫、原発性腹膜がん、内分泌系がん、小児がんまたは原発不明がんである、前記[1]に記載の剤、
[3] 固形がんが、膵臓がん、肺がんまたは皮膚がんである前記[1]または[2]に記載の剤、
[4] 固形がんが、肺がんである前記[1]ないし[3]のいずれか1つに記載の剤、
[5]肺がんが、EGFR遺伝子エクソン19欠失変異陽性肺がんである前記[4]に記載の剤、
[6]EGFR遺伝子エクソン19欠失変異陽性肺がんが、EGFR阻害剤高感受性肺がんである前記[5]に記載の剤、
[7]肺がんが、EGFR阻害剤耐性肺がんである前記[4]に記載の剤、
[8]EGFR阻害剤耐性肺がんが、ゲフィチニブ耐性肺がんである前記[7]に記載の剤、
[9]EGFR阻害剤耐性肺がんが、EGFR T790M変異陽性の肺がんである前記[7]記載の剤、
[10]肺がんが、非小細胞肺がんである前記[3]ないし[9]のいずれか1つに記載の剤、
[11] N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物の有効量をオシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて、固形がんの治療を必要とする患者に投与することを特徴とする固形がん治療方法、
[12] N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物の有効量を患者に投与することを特徴とする固形がん治療方法であって、当該患者はオシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩による治療を受けている、固形がん治療方法、
[13] オシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて固形がん治療に使用される、N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物、
[14] オシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とする固形がん治療剤の製造のための、N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物の使用、
[15] Axl阻害剤と組み合わせて投与されることを特徴とするオシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む固形がん治療剤であって、前記Axl阻害剤がN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物である固形がん治療剤、
[16] Axl阻害剤とオシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩とを組み合わせて投与されることを特徴とする固形がん治療のための医薬組成物であって、前記Axl阻害剤がN-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物である医薬組成物、
[17] 固形がん治療に使用される、N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物とオシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩との組み合わせ、
[18] 固形がん治療のための医薬組成物の製造のための、N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物とオシメルチニブまたはその薬学的に許容される塩との組み合わせの使用等の実施態様が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組み合わせは、固形がん治療に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)Axl阻害剤
本発明の組み合わせに用いられるAxl阻害剤は、一態様において、国際公開第2015/012298号に記載された下記式
【化1】
で示される、N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物が挙げられる。
【0013】
また、Axl阻害剤の別の態様として、国際公開2007/030680号、国際公開2007/057399号、国際公開2007/070872号、国際公開2008/045978号、国際公開2008/080134号、国際公開2008/083356号、国際公開2008/128072号、国際公開2008/083353号、国際公開2008/083354号、国際公開2008/083367号、国際公開2008/083357号、国際公開2009/007390号、国際公開2009/024825号、国際公開2009/047514号、国際公開2009/053737号、国際公開2009/054864号、国際公開2009/127417号、国際公開2010/005876号、国際公開2010/005879号、国際公開2010/090764号、国際公開2010/128659号、国際公開2012/028332号、国際公開2012/135800号、国際公開2013/074633号、国際公開2013/115280号、国際公開2013/162061号、国際公開2014/091265号、国際公開2015/012298号、国際公開2016/006706号、国際公開2016/097918号、国際公開2016/183071号、国際公開第2017/028797号、国際公開第2017/172596、または国際公開第2018/071343号に記載されている化合物が挙げられる。
【0014】
本発明の組み合わせに用いられるAxl阻害剤として、化合物A以外には、国際公開第2015/012298号の実施例に記載された化合物、その薬学的に許容される塩またはそれらの水和物が挙げられる。好ましくは、(1)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-7,7-ジメチル-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(2)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-(2,2-ジメチルプロピル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(3)N-[5-({7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-4-キノリニル}オキシ)-2-ピリジニル]2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(4)N-{4-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-3-フルオロフェニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(5)N-{4-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]フェニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(6)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(7)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-(3-フルオロフェニル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(8)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-(2-フルオロフェニル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(9)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キナゾリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(10)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キナゾリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-(4-フルオロフェニル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(11)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-1-[(2S)-1-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタニル]-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(12)N-{4-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-3-フルオロフェニル}-1-(3-フルオロフェニル)-2,5-ジオキソ-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(13)N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-6,6-ジメチル-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(14)N-[5-({6-メトキシ-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-4-キノリニル}オキシ)-2-ピリジニル]-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、(15)N-(5-{[7-(3-ヒドロキシ-3-メチルブトキシ)-6-メトキシ-4-キノリニリル]オキシ}-2-ピリジニル)-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、または(16)N-[5-({6-メトキシ-7-[3-(1-ピロリジニル)プロポキシ]-4-キノリニル}オキシ)-2-ピリジニル]-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、それらの薬学的に許容される塩またはそれらの水和物である。
【0015】
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における幾何異性体(E体、Z体、シス体、トランス体)、不斉炭素原子の存在等による光学異性体(R、S体、α、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。また、本発明においては、互変異性体による異性体をもすべて包含する。
【0016】
また、本発明における光学異性体は、100%純粋なものだけでなく、50%未満のその他の光学異性体が含まれていてもよい。
【0017】
化合物Aは、公知の方法で相当する薬学的に許容される塩に変換される。薬学的に許容される塩は、水溶性のものが好ましい。適当な薬学的に許容される塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩、薬学的に許容される有機アミン(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N-メチル-D-グルカミン等)の塩、酸付加物塩(無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等)等)等が挙げられる。
【0018】
化合物Aおよびその塩は、水和物に変換することもできる。
【0019】
さらに、化合物Aは同位元素(例えば、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、35S、18F、36Cl、123I、125I等)等で標識されていてもよい。
【0020】
化合物Aは、国際公開第2015/012298号に記載された実施例5に従い製造することができる。
【0021】
本発明の組み合わせで用いられる化合物A、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物は、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。経口剤としては、例えば、内服用液剤(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤)、内服用固形剤(例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、ゼラチンカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、トローチ剤)等が挙げられる。非経口剤としては、例えば、液剤(例えば、注射剤(皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤等)、点眼剤(例えば、水性点眼剤(水性点眼液、水性懸濁点眼液、粘性点眼液、可溶化点眼液等)、非水性点眼剤(非水性点眼液、非水性懸濁点眼液等))等)、外用剤(例えば、軟膏(眼軟膏等))、点耳剤等が挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤、徐放性製剤などの放出制御剤であってもよい。これらの製剤は公知の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。
【0022】
経口剤としての内服用液剤は、例えば、有効成分を一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化されることにより製造される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0023】
経口剤としての内服用固形剤は、例えば、有効成分を賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合し、常法に従って製剤化される。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0024】
非経口剤としての外用剤は公知の方法または通常使用されている処方により製造される。例えば、軟膏剤は有効成分を基剤に研和、または溶融させて製造される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0025】
非経口剤としての注射剤には溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含される。注射剤は、例えば有効成分を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0026】
本発明の組み合わせに用いられる化合物A、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、1ngから1000mgの範囲で一日一回から数回経口投与されるか、または成人一人当たり、一回につき、0.1ngから100mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるか、または一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0027】
例えば、投与量の一態様は、2mg/kg~20mg/kg体重であり、好ましくは1日あたり2mg/kg~20mg/kg体重である。
【0028】
(2)オシメルチニブ
本発明において、オシメルチニブ(Osimertinib)は、上皮成長因子受容体(EGFR)のT790M遺伝子変異(以下、T790M変異)および活性化変異を選択的に阻害する不可逆的EGFRチロシンキナーゼ阻害薬である。日本では、タグリッソ(登録商標)として「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん」の適応で製造販売承認を取得した薬剤である。また、オシメルチニブとしてその薬学的に許容される塩(例えば、オシメルチニブメシル酸塩)を用いてもよい。
【0029】
本発明の組み合わせに用いられるオシメルチニブ、またはその薬学的に許容される塩の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、最適な所望の効果をもたらすように調整される。
【0030】
オシメルチニブ、またはその薬学的に許容される塩を使用する場合、投与量の一態様は、0.01~20mg/kg体重であり、好ましくは、0.1~10mg/kg体重である。
【0031】
[毒性]
本発明の組み合わせの毒性は十分に低いものであり、医薬品として安全に使用することができる。
【0032】
[医薬品への適用]
本発明の組み合わせによって治療される疾患の一態様として、固形がんが挙げられる。本発明において固形がんとしては、特に限定されないが、例えば、頭頸部がん、鼻咽頭がん、食道がん、胃食道接合部がん、食道腺がん、胃がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、小腸がん、肛門がん(例えば、肛門管がん)、肝臓がん(例えば、肝細胞がん)、胆嚢がん、胆管がん、胆道がん、膵臓がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(例えば、扁平上皮非小細胞肺がん、非扁平上皮非小細胞肺がん)、小細胞肺がん)、乳がん、卵巣がん(例えば、漿液性卵巣がん、卵巣明細胞腺がん)、卵管がん、子宮がん(例えば、子宮頚がん、子宮体がん、子宮内膜がん)、膣がん、外陰部がん、陰茎がん、腎がん(例えば、腎細胞がん、淡明細胞型腎細胞がん)、副腎がん、尿路上皮がん(例えば、膀胱がん、上部尿路がん、尿管がん、腎盂がんおよび尿道がん)、前立腺がん、精巣腫瘍(例えば、胚細胞腫瘍)、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫および子宮体部平滑筋肉腫)、皮膚がん(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、メルケル細胞がん)、神経膠腫(例えば、神経膠芽腫、神経膠肉腫)、脳腫瘍(例えば、膠芽腫)、脊椎腫瘍、カポジ肉腫、扁平上皮がん、胸膜中皮腫、原発性腹膜がん、内分泌系がん、小児がんまたは原発不明がんが挙げられる。このうち、例えば、Axl阻害剤またはEGFR阻害剤単独での治療効果が十分ではない固形がん患者に対して、本発明の組み合わせは、特に、その抗腫瘍効果を最大限に発揮することが期待できる。また、本発明の組み合わせにより、それぞれの薬剤の用量を下げて投与することも可能となり、副作用の軽減が期待できる。
【0033】
本発明におけるEGFR遺伝子エクソン19欠失変異陽性肺がんとは、EGFR遺伝子変異陽性の肺がんである。
【0034】
本発明におけるAxl阻害剤による治療効果が十分でない固形がん患者とは、(1)Axl阻害剤が効きにくい固形がんに罹患した固形がん患者または(2)Axl阻害剤による治療中に増悪もしくは治療後に再燃した固形がん患者である。
【0035】
本発明におけるEGFR阻害剤による治療効果が十分でない固形がん患者とは、(1)EGFR阻害剤が効きにくい固形がんに罹患した患者または(2)EGFR阻害剤による治療中に増悪もしくは治療後に再燃した固形がん患者である。
【0036】
本発明におけるEGFR阻害剤が効きにくい固形がんとして、例えばEGFR阻害剤耐性肺がん(例えば、ゲフィチニブ耐性肺がん)が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0037】
本発明の組み合わせは、一態様として、転移性がんの治療や転移の抑制にも適用可能である。
【0038】
本発明の組み合わせは、一態様として、再発を抑制する。
【0039】
本発明において、治療は、無増悪生存期間(PFS)延長、全生存期間(OS)の延長、無病生存(DFS)の延長、無進行期間(TTP)の延長、無イベント生存(EFS)の延長、無再発生存(RFS)の延長、腫瘍サイズの低下、腫瘍の成長の抑制(遅延または停止)、腫瘍の転移の抑制(遅延または停止)、再発の抑制(防止または遅延)、およびがんと関連する一つ又は複数の症状の緩和のうち少なくとも1つの効果を生じさせることを意味する。
【0040】
本発明の組み合わせは、一態様として、悪性黒色腫、肺がん、腎がん、胸膜中皮腫、頭頸部がん、胃がん、神経膠腫または大腸がんの治療に使用される。
【0041】
本発明において、「組み合わせて投与」とは、同じまたは異なる剤形における化合物の同時投与、あるいは化合物の別々の投与(例えば、逐次的投与)を含む。より具体的には、1つの製剤中に全ての成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、または別々の製剤として投与する形態をとってもよい。この別々の製剤として投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、化合物Aその薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物を先に投与し、オシメルチニブ、またはその薬学的に許容される塩を後に投与してもよいし、オシメルチニブ、またはその薬学的に許容される塩を先に投与し、化合物Aその薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物を後に投与してもよい。それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0042】
本発明において、本発明の組み合わせは、(1)治療効果の補完および/または増強、(2)動態・吸収改善、投与量の低減、および/または(3)副作用の軽減のために、さらに他の薬物(例えば、公知の抗がん剤)と組み合わせて、投与してもよい。
【0043】
本発明において、「オシメルチニブ、またはその薬学的に許容される塩による治療を受けている」固形がん患者、および「N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物による治療を受けている」固形がん患者とは、本発明の組み合わせの他方の薬剤による治療を行う前に、「オシメルチニブ、またはその薬学的に許容される塩」または「N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物」による治療を受けている固形がん患者、および本発明の組み合わせの他方の薬剤による治療中に、「オシメルチニブ、またはその薬学的に許容される塩」または「N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド、その薬学的に許容される塩、またはそれらの水和物」による治療を受けることの双方の意味を有する。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
Axl阻害剤として、N-{5-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリニル)オキシ]-2-ピリジニル}-2,5-ジオキソ-1-フェニル-1,2,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-3-キノリンカルボキサミド(化合物A)を使用した。化合物Aは、公知の方法、例えば、国際公開第2015/012298号の実施例5に記載された方法により製造することができる。
【0046】
生物学的実施例:EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子活性化変異陽性ヒト肺がん細胞株に対する化合物Aとオシメルチニブ併用による抗腫瘍作用の評価(in vitro)
[操作]
(1)細胞の培養
EGFR遺伝子のエクソン19が欠失したことでEGFRが異常活性化したヒト非小細胞肺がん細胞株(株式会社免疫生物研究所)を使用した。細胞は、10%非動化牛胎児血清、2mM L-glutamineを含むRPMI1640(以下、培地)を用いて5%CO2、37℃の条件下で継代培養した。
【0047】
(2)細胞生存性評価
培地に懸濁した細胞を、1ウェルあたり2.0×103cells/100μLの密度で96ウェルプレートに播種し、一晩5%CO2、37℃の条件下で培養した。各ウェルの培地に、最終濃度の4倍濃度のオシメルチニブまたは媒体および各最終濃度の4倍濃度の化合物Aまたは媒体を含む培地を、1ウェルあたり50μLずつ添加し、5%CO2、37℃の条件下で72時間培養した。培養終了後、生細胞の還元反応で呈色するテトラゾリウム塩基質であるMTT(3-(4,5-di-methylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide, yellow tetrazole)を利用して,生存する細胞数を測定した。
【0048】
(3)データ解析
各化合物処置群における細胞増殖抑制率(%)を媒体処置群を100%とした相対値として算出した。算出した細胞増殖抑制率(%)を用いて、アドバンスィズ イン エンザイム レギュレーション(Advances in enzyme regulation)、第22巻、1984年、27-55ページに記載のCombination index(CI)値を算出し、各化合物の併用効果を解析した。なお、CI値は併用効果の強度を判定するために一般的に用いられる指標であり、各CI値から中央値(Median CI)を算出し、CI<1が相乗効果、CI=1が相加効果、CI>1が拮抗作用を示したと判断した。
【0049】
[結果]
化合物Aとオシメルチニブの併用処置による抗腫瘍作用の評価結果を表1に示す。化合物Aとオシメルチニブを併用処置した場合のCIの中央値は0.30未満であり、強い相乗効果を示した。以上のことから、化合物Aとオシメルチニブの併用は強い抗腫瘍効果を発揮することが確認された。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の組み合わせは、顕著な抗腫瘍効果を発揮するため、固形がん治療に有用である。