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特許7223999リチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/131 20100101AFI20230210BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230210BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230210BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019548129
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2018036513
(87)【国際公開番号】W WO2019073830
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】201710936706.2
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811068266.4
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518382094
【氏名又は名称】江西理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大角 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】永井 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】鐘 盛文
(72)【発明者】
【氏名】陳 軍
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲チィェン▼
(72)【発明者】
【氏名】曾 敏
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-182989(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114590(WO,A1)
【文献】特開2015-115106(JP,A)
【文献】国際公開第2017/166147(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/179909(WO,A1)
【文献】特開2008-034376(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083481(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/131
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な活物質及び導電剤を含むリチウムイオン二次電池用正極組成物であり、
前記活物質はリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物であり、
前記導電剤はカーボンブラック、及びカーボンナノチューブであり、
前記カーボンブラックのBET比表面積が100~400m2/gであり、DBP吸収量が240~380ml/100gであり、
前記カーボンナノチューブの平均直径が7~15nmであることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極組成物。
【請求項2】
前記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物のBET比表面積が0.20~0.55m2/gであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極組成物。
【請求項3】
前記正極組成物中の前記カーボンブラックの含有量X(単位:質量%)、及び前記カーボンナノチューブの含有量Y(単位:質量%)が、下記条件(A)、(B)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極組成物。
(A)1.0≦(X+Y)≦3.0
(B)0.65≦{X/(X+Y)}≦0.75
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極組成物を含むリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項5】
請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用正極を備えたリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
環境・エネルギー問題の高まりから、化石燃料への依存度を減らす低炭素社会の実現に向けた技術の開発が盛んに行われている。このような技術開発の例としては、ハイブリッド電気自動車や電気自動車等の低公害車の開発、太陽光発電や風力発電等の自然エネルギー発電・蓄電システムの開発、電力を効率よく供給し、送電ロスを減らす次世代送電網の開発等があり、多岐に渡っている。
【0003】
これらの技術に共通して必要となるキーデバイスの一つが電池であり、このような電池に対しては、システムを小型化するための高いエネルギー密度が求められる。また、使用環境温度に左右されずに安定した電力の供給を可能にするための高い出力特性が求められる。さらに、長期間の使用に耐えうる良好なサイクル特性等も求められる。そのため、従来の鉛蓄電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池から、より高いエネルギー密度、出力特性及びサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池への置き換えが急速に進んでいる。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池の基本構成は、正極、負極、セパレーター、電解質からなり、正極は、一般的には、リチウム複合酸化物等の正極活物質、導電剤、結着剤を含む正極組成物、及びアルミニウム等の金属箔集電体からなる。導電剤には、一般的には、カーボンブラック等の粒子状炭素材料が用いられる。
【0005】
ところで、カーボンブラックはその共通の構造として球形に近い1次粒子が数珠上に繋がりあった構造を有しており、このような構造をストラクチャと呼ぶ。ストラクチャの長さは、一般的にJIS K6217-4に準拠して測定されるDBP吸収量を用いて間接的に評価され、DBP吸収量が大きいほどストラクチャが長く、導電性に優れるとされる。
【0006】
近年ではこのリチウムイオン二次電池のエネルギー密度及び電池性能の更なる向上が求められている。このため電極中で充放電容量に寄与しない成分である導電剤の含有量をより少なくすることが求められている。そこで、カーボンブラック等の粒子状炭素材料よりも高いアスペクト比を有し、より少ない量で導電性を向上できる繊維状炭素材料を導電剤として併用する技術が提案されている。
【0007】
特許文献1では、カーボンナノファイバが活物質とカーボンブラックとの電気的な橋渡しを行うことにより、電極中に極めて良好な導電経路が作られ、サイクル特性に優れた電池が得られることが提案されている。しかし、より少ない量で導電性を向上できるとされる、粒子径が小さくストラクチャの長いカーボンブラックを用いた場合は、良好な導電経路が十分に作られず、実用上十分な性能が得られないことが課題であった。
【0008】
特許文献2では、カーボンブラックとカーボンナノチューブを併用することで、電極中に導電剤が偏在することを防ぎ、出力特性に優れた電池が得られることが提案されている。しかし、粒子径が小さくストラクチャの短いカーボンブラックを用いることを想定しているため、より導電性に優れるとされる、粒子径が小さくストラクチャの長いカーボンブラックを用いた場合にはストラクチャ同士の絡み合いによる凝集によって、電極中に導電剤が偏在し、実用上十分な性能が得られないことが課題であった。
【0009】
特許文献3では、導電剤全体を100重量%としたときの繊維状炭素材料の割合を1~20重量%、粒状炭素材料の割合を99~80重量%とすることで、電極内での導電性が向上し、サイクル特性、出力特性に優れた電池が得られることを提案している。しかし、粒状炭素材料の割合が多いため、導電性に優れるとされる、粒子径が小さくストラクチャの長いカーボンブラックを用いた場合には、ストラクチャの絡み合いによる凝集によって、良好な導電経路が十分に作られず、実用上十分な性能が得られないことが課題であった。
【0010】
特許文献4では、カーボンブラックと黒鉛化カーボンファイバーを併用することで、正極中の導電パスを安定なものとし、出力特性、サイクル特性に優れた電池が得られることが提案されている。また、特許文献5では、カーボンブラックと繊維状炭素を併用することで、抵抗が低く、放電容量、サイクル特性に優れた電池が得られることが提案されている。しかし、いずれにおいても繊維状炭素材料の繊維径が太く、良好な導電経路を造るために多くの繊維状炭素材料を必要とするため、電解液の保液性に優れるとされるカーボンブラックの割合が少なくなり、低温環境使用時での出力特性が実用上不十分であることが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2013/179909号
【文献】特開2007-80652号公報
【文献】特開平11-176446号公報
【文献】特開2001-126733号公報
【文献】特開2010-238575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題と実情に鑑み、内部抵抗が小さく、出力特性、サイクル特性、低温特性に優れたリチウムイオン二次電池を簡便に得ることができるリチウムイオン二次電池用正極組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意研究の結果、特定の活物質に対して、粒子径が小さくストラクチャの長いカーボンブラック、繊維径が細いカーボンナノチューブを導電剤として用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。
具体的には、本発明は活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、導電剤として粒子径が小さくストラクチャの長いカーボンブラックと繊維径の細いカーボンナノチューブを含むリチウムイオン二次電池用正極組成物を用いて製造したリチウムイオン二次電池は、内部抵抗が小さく、出力特性、サイクル特性、低温特性に優れることを見出して完成されたものである。
【0014】
すなわち、本願発明は以下のように特定される。
(1)リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な活物質及び導電剤を含むリチウムイオン二次電池用正極組成物であり、
前記活物質はリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物であり、
前記導電剤はカーボンブラック、及びカーボンナノチューブであり、
前記カーボンブラックのBET比表面積が100~400m2/gであり、DBP吸収量が210~380ml/100gであり、
前記カーボンナノチューブの平均直径が7~15nmであることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極組成物。
(2)前記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物のBET比表面積が0.20~0.55m2/gであることを特徴とする(1)に記載のリチウムイオン二次電池用正極組成物。
(3)前記正極組成物中の前記カーボンブラックの含有量X(単位:質量%)、及び前記カーボンナノチューブの含有量Y(単位:質量%)が、下記条件(A)、(B)を満たすことを特徴とする(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池用正極組成物。
(A)1.0≦(X+Y)≦3.0
(B)0.65≦{X/(X+Y)}≦0.75
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極組成物を含むリチウムイオン二次電池用正極。
(5)(4)に記載のリチウムイオン二次電池用正極を備えたリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内部抵抗が小さく、出力特性、サイクル特性、低温特性に優れたリチウムイオン二次電池を簡便に得ることができるリチウムイオン二次電池用正極組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のリチウムイオン二次電池用正極組成物は、活物質及び導電剤を含むリチウムイオン二次電池用正極組成物であり、前記活物質はリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物であり、前記導電剤はカーボンブラック、及びカーボンナノチューブであり、前記カーボンブラックのBET比表面積が100~400m2/gであり、DBP吸収量が210~380ml/100gであり、前記カーボンナノチューブの平均直径が7~15nmであることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極組成物である。
【0017】
本発明における活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物である。リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物は、一般の電池用活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物同様、LiNi0.8Mn0.1Co0.12、LiNi0.6Mn0.2Co0.22、LiNi0.5Mn0.3Co0.22、LiNi0.4Mn0.4Co0.22、LiNi1/3Mn1/3Co1/32などの中から選ばれるものである。中でも、電気伝導性、容量、サイクル特性のバランスに優れるLiNi0.5Mn0.3Co0.22が好ましい。
【0018】
本発明におけるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物のBET比表面積は、0.20~0.55m2/gであることが好ましい。BET比表面積を0.20m2/g以上とすることで、集電体及び導電剤との電気的接点が多くなり、十分な活物質の利用効率が得られるようになる。また、0.55m2/g以下とすることで、粒子間の相互作用が抑制されるため、正極組成物中により均一に分散され、十分な活物質の利用効率が得られるようになる。
【0019】
本発明における導電剤は、カーボンブラック、及びカーボンナノチューブである。カーボンブラックは、一般の電池用導電剤としてのカーボンブラック同様、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどの中から選ばれるものである。中でも、結晶性及び純度に優れるアセチレンブラックが好ましい。
【0020】
本発明におけるカーボンブラックのBET比表面積は100~400m2/gである。BET比表面積を100m2/g以上とすることで、活物質及び集電体との電気的接点が多くなり、良好な電子伝導性が得られる。また、400m2/g以下とすることで、粒子間の相互作用が抑制されるため、正極組成物中により均一に分散され、良好な導電性が得られる。この観点から、カーボンブラックのBET比表面積は100~210m2/gであることが好ましく、100~160m2/gであることがさらに好ましい。
【0021】
本発明におけるカーボンブラックのDBP吸収量は210~380ml/100gである。DBP吸収量を210ml/100g以上とすることで、導電剤として使用される際のストラクチャが十分な長さを持ち、良好な導電性が得られる。また、380ml/100g以下とすることで、ストラクチャ同士の絡み合いによる凝集が抑えられるため、正極組成物中により均一に分散され、良好な導電性が得られる。この観点から、カーボンブラックのDBP吸収量は240~280ml/100gであることが好ましい。
【0022】
本発明におけるカーボンブラックの体積抵抗率はとくに限定されるものではないが、導電性の観点から低いほど好ましい。具体的には、7.5MPa圧縮下で測定した体積抵抗率は0.30Ω・cm以下が好ましく、0.25Ω・cm以下が好ましい。
【0023】
本発明におけるカーボンブラックの灰分及び水分はとくに限定されるものではないが、副反応の抑制の観点から、どちらも少ないほど好ましい。具体的には、灰分は0.04質量%以下が好ましく、水分は0.10質量%以下が好ましい。
【0024】
本発明におけるカーボンナノチューブの平均直径は7~15nmである。平均直径を7nm以上とすることで、絡み合いによる凝集が抑えられるため、正極組成物中により均一に分散され、良好な導電性が得られる。また、15nm以下とすることで、活物質及び集電体との電気的接点が多くなり、良好な電子伝導性が得られる。この観点から、カーボンナノチューブの平均直径は7~11nmであることが好ましい。
【0025】
本発明におけるカーボンブラックの含有量X(単位:質量%)及びカーボンナノチューブの含有量Y(単位:質量%)は1.0≦(X+Y)≦3.0かつ0.65≦{X/(X+Y)}≦0.75であることが好ましい。1.0≦(X+Y)≦3.0とすることで、正極組成物中で充放電容量に寄与しない成分である導電剤の含有量を低く抑え、かつ十分な導電性を保つことができるようになる。また、0.65≦{X/(X+Y)}≦0.75とすることで、正極組成物中でカーボンブラックとカーボンナノチューブが複雑に橋渡しをすることにより、良好な導電性が得られるようになる。
【0026】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極組成物の製造には公知の方法を用いることができる。例えば、正極活物質、導電剤、結着剤の溶媒分散溶液をボールミル、サンドミル、二軸混練機、自転公転式攪拌機、プラネタリーミキサー、ディスパーミキサー等により混合することで得られ、一般的には、スラリーにして用いられる。正極活物質及び導電剤としては、既述したものを用いれば良い。カーボッブラックとカーボンナノチューブは別々に混合器に投入しても、あるいは公知の方法で事前に混合しておいても良い。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコール、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、カルボン酸変性(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の高分子が挙げられる。これらの中では、耐酸化性の点でポリフッ化ビニリデンが好ましい。分散媒としては、水、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。結着剤としてポリフッ化ビニリデンを使用する際は、溶解性の点でN-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
【0027】
また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、正極活物質、導電剤、結着剤、及び分散媒以外の成分を含むことができる。例えば、分散性を向上させる目的でポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロース又はカルボン酸変性(メタ)アクリル酸エステル共重合体などを含んでも良い。
【0028】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、前記スラリーをアルミニウム等の金属箔集電体上に塗布した後、加熱によりスラリーに含まれる溶剤を除去し、正極活物質が結着剤を介して集電体表面に結着された多孔質体である電極合材層を形成する。さらに集電体と電極合材層をロールプレス等により加圧して密着させることにより、目的とする電極を得ることができる。
【0029】
本発明のリチウムイオン二次電池の作製方法には、特に制限は無く、従来公知の二次電池の作製方法を用いて行えば良いが、例えば、以下の方法により作製することもできる。すなわち、正極と負極との間に絶縁層となるポリオレフィン製微多孔膜を配し、正極、負極及びポリオレフィン製微多孔膜の空隙部分に非水電解液が十分に染込むまで注液することで作製することができる。
【0030】
本発明のリチウムイオン二次電池は、特に限定されないが、例えば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ポータブルオーディオプレイヤー、携帯液晶テレビ等の携帯AV機器、ノート型パソコン、スマートフォン、モバイルPC等の携帯情報端末、その他、携帯ゲーム機器、電動工具、電動式自転車、ハイブリット自動車、電気自動車、電力貯蔵システム等の幅広い分野において使用することができる。
【実施例
【0031】
以下、実施例及び比較例により、本発明のリチウムイオン二次電池用正極組成物を詳細に説明する。しかし、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
<実施例1>
(リチウムイオン二次電池用正極組成物)
活物質としてBET比表面積が0.48m2/gのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物LiNi0.5Mn0.3Co0.22(Jiangxi Jiangte Lithium Battery Materials社製、「S532」)、導電剤としてBET比表面積が133m2/g、DBP吸収量が267ml/100gのカーボンブラック(デンカ社製、「Li-435」)、及び平均直径が9nmのカーボンナノチューブのN-メチルピロリドン溶液(CNano社製、「LB107」)を用意した。前記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物96質量%、前記カーボンブラック1.4質量%、前記カーボンナノチューブを溶質量で0.60質量%に、結着剤としてポリフッ化ビニリデンのN-メチルピロリドン溶液を溶質量で2.0質量%、さらに分散媒としてN-メチルピロリドンを加えて混合し、リチウムイオン二次電池用正極組成物を得た。
【0033】
(リチウムイオン二次電池用正極)
前記リチウムイオン二次電池用正極組成物を、ベーカー式アプリケーターを用いて厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布、乾燥し、その後、プレス、裁断して、リチウムイオン二次電池用正極を得た。
【0034】
(リチウムイオン二次電池用負極)
リチウムイオン二次電池用負極組成物[黒鉛(Shenzhen BTR社製、「AGP-2A」)95質量%、カーボンブラック(デンカ社製、「Li-400」)1.0%、ポリフッ化ビニリデン1.5%、スチレン-ブタジエン共重合体2.5%]をベーカー式アプリケーターを用いて厚さ20μm銅箔に塗布、乾燥し、その後、プレス、裁断して、リチウムイオン二次電池用負極を得た。
【0035】
(リチウムイオン二次電池)
前記正極、セパレーター(LLC社製、「Celgard」)、前記負極を共に重ね、積層した後、アルミラミネートフィルムでパック、プレシーリングし、続いて電解液を注入し、バッテリーフォーマッティング、真空シーリングして、ラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。
【0036】
[内部抵抗]
作製したリチウムイオン二次電池を、電圧範囲2.75~4.2Vで5サイクル、充電/放電した後、周波数範囲10MHz~0.001Hz、振動電圧5mVでインピーダンス解析を行った。本実施例の内部抵抗は37.5mΩであった。
【0037】
[出力特性(3C放電時の容量維持率)]
作製したリチウムイオン二次電池を、25℃において4.2V、0.2C制限の定電流定電圧充電をした後、0.2Cの定電流で2.75Vまで放電した。次いで、放電電流を0.2C、3Cと変化させ、各放電電流に対する放電容量を測定した。そして、0.2C放電時に対する3C放電時の容量維持率を計算した。本実施例の3C放電時の容量維持率は96.5%であった。
【0038】
[サイクル特性(サイクル容量維持率)]
作製したリチウムイオン電池を、25℃において4.2V、1C制限の定電流定電圧充電をした後、6Cの定電流で2.75Vまで放電した。充電及び放電のサイクルを繰り返し行い、1サイクル目の放電容量に対する800サイクル目の放電容量の比率を求めてサイクル容量維持率とした。本実施例のサイクル容量維持率は84.0%であった。
【0039】
[低温出力特性(-20℃放電時の容量維持率)]
作製したリチウムイオン二次電池を、25℃において4.2V、0.2C制限の定電流定電圧充電をした後、1Cの定電流で2.75Vまで放電した。次いで、-20℃において4.2V、0.2C制限の定電流定電圧充電をした後、1Cの定電流で2.75Vまで放電した。そして、25℃放電時に対する-20℃放電時の容量維持率を計算した。本実施例の-20℃放電時の容量維持率は63.9%であった。
【0040】
<実施例2>
実施例1のカーボンブラックの含有量を1.2質量%、カーボンナノチューブの含有量を0.80質量%に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0041】
<実施例3>
実施例1のカーボンブラックの含有量を1.6質量%、カーボンナノチューブの含有量を0.40質量%に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0042】
<実施例4>
実施例1のカーボンブラックの含有量を0.63質量%、カーボンナノチューブの含有量を0.27質量%に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0043】
<実施例5>
実施例1のカーボンブラックの含有量を2.2質量%、カーボンナノチューブの含有量を0.93質量%に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0044】
<実施例6>
実施例1のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を、BET比表面積が0.15m2/gのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物LiNi0.5Mn0.3Co0.22(Jiangxi Jiangte Lithium Battery Materials社製、「L532」)に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0045】
<実施例7>
実施例1のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を、BET比表面積が0.15m2/gのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物LiNi1/3Mn1/3Co1/32(Jiangxi Jiangte Lithium Battery Materials社製、「L333」)に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0046】
<実施例8>
実施例1のカーボンブラックを、BET比表面積が382m2/g、DBP吸収量が305ml/100gのカーボンブラック(デンカ社製)に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表1に示す。
【0047】
<比較例1>
実施例1のカーボンブラックの含有量を0質量%、カーボンナノチューブの含有量を2.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表2に示す。
【0048】
<比較例2>
実施例1のカーボンブラックの含有量を2.0質量%、カーボンナノチューブの含有量を0質量%に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表2に示す。
【0049】
<比較例3>
実施例1のカーボンブラックを、BET比表面積が58m2/g、DBP吸収量が200ml/100gのカーボンブラック(デンカ社製、「Li-250」)に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表2に示す。
【0050】
<比較例4>
実施例1のカーボンブラックを、BET比表面積が877m2/g、DBP吸収量が390ml/100gのカーボンブラック(ライオン社製)に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表2に示す。
【0051】
<比較例5>
実施例1のカーボンナノチューブを、平均直径が5nmのカーボンナノチューブ(ワコーケミカル社製)に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表2に示す。
【0052】
<比較例6>
実施例1のカーボンナノチューブを、平均直径が25nmのカーボンナノチューブ(ワコーケミカル社製)に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表2に示す。
【0053】
<比較例7>
実施例1のカーボンナノチューブを、平均直径が150nmの気相成長炭素繊維に変更した以外は、実施例1と同様な方法でリチウムイオン二次電池用正極組成物、リチウムイオン二次電池用正極、及びリチウムイオン二次電池を作製し、各評価を実施した。結果を表2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1及び2の結果から、本発明のリチウムイオン二次電池用正極組成物を用いて作製したリチウムイオン二次電池は、内部抵抗が小さく、出力特性、サイクル特性、低温特性に優れることがわかった。