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特許7224004インバート施工装置及びインバート施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】インバート施工装置及びインバート施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20230210BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021202120
(22)【出願日】2021-12-14
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390030384
【氏名又は名称】末広産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】592179067
【氏名又は名称】株式会社ガイアート
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】張 春陽
【審査官】宇都宮 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-232196(JP,A)
【文献】特開2018-025082(JP,A)
【文献】特開2006-257763(JP,A)
【文献】特開平03-194063(JP,A)
【文献】特開2001-173386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00-19/06,23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
覆工が形成されたトンネルの底部にインバートを形成するインバート施工装置であって、トンネル内を走行可能な車両部と、前記車両部に設置され前記車両部とともに移動しながら前記トンネルの底部にコンクリートを打設する型枠部と、前記車両部の前後に車体に対して略垂直に設置された第1の車輪と、前記車両部の前後に設置されキャンバー角が調整可能な第2の車輪と、を有し、前記第1の車輪と第2の車輪とは上下機構を個別に備え、上下動がそれぞれ可能であることを特徴とするインバート施工装置。
【請求項2】
第2の車輪を保持する車輪部と、前記車輪部と前記車両部とを繋ぎ前記上下機構を備えた脚部と、を有し、前記第2の車輪は前記脚部と前記車輪部との間に略三角柱形状の楔板を挿入することでキャンバー角の調整を行うことを特徴とする請求項1記載のインバート施工装置。
【請求項3】
第2の車輪は底部のインバートもしくは覆工の曲面の法線方向に接するとともに、左右の舵取りが可能であり、さらに前記第2の車輪が鉛直方向に上下動することで上下位置決めを行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインバート施工装置。
【請求項4】
覆工が形成されたトンネルの底部にインバートを形成するインバート施工方法であって、
底部用の型枠部を請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインバート施工装置に固定する型枠設置工程と、
第2の車輪のキャンバー角を前記覆工の左右の下端部に応じた角度にそれぞれ調整するキャンバー角調整工程と、
前記第2の車輪が前記覆工の左右の下端部を走行して前記型枠部をトンネルの底部に沿って移動させながら生コンクリートを供給し、前記覆工の間のトンネル底部にコンクリートを打設する底部コンクリート打設工程と、を有することを特徴とするインバート施工方法。
【請求項5】
覆工が形成されたトンネルの底部を、前記トンネルに沿った複数の列に分割してインバートを形成するインバート施工方法であって、
前記複数の列のうち少なくとも一つのインバートの形成を請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインバート施工装置を用いて行うことを特徴とするインバート施工方法。
【請求項6】
覆工が形成されたトンネルの底部を、前記トンネルに沿った中央部と左右のサイド部に少なくとも3分割してインバートを形成するインバート施工方法であって、
サイド用インバート施工装置に左サイド用もしくは右サイド用のいずれか一方のサイド用型枠部を固定する第1の型枠設置工程と、
前記サイド用インバート施工装置が前記トンネルの底部を走行して前記一方のサイド用型枠部を移動させながら生コンクリートを供給し、前記一方のサイド用型枠部と対応したサイド部に側底部を形成する第1の側底部コンクリート打設工程と、
サイド用インバート施工装置に左サイド用もしくは右サイド用の残りの一方のサイド用型枠部を固定する第2の型枠設置工程と、
前記サイド用インバート施工装置が前記トンネルの底部を走行して前記残りの一方のサイド用型枠部を移動させながら生コンクリートを供給し、前記残りの一方のサイド用型枠部と対応したサイド部にもう一方の側底部を形成する第2の側底部コンクリート打設工程と、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインバート施工装置に中央底部用の型枠部を固定する中央型枠設置工程と、
前記インバート施工装置の第2の車輪のキャンバー角を左右の前記側底部の曲面もしくは傾斜面に応じた角度に調整するキャンバー角調整工程と、
前記第2の車輪が左右の前記側底部を走行して前記型枠部をトンネルの中央部に沿って移動させながら生コンクリートを供給し、左右の前記側底部の間にコンクリートを打設して中央底部を形成する中央部コンクリート打設工程と、を有することを特徴とするインバート施工方法。
【請求項7】
サイド用型枠部が、施工面を有する本体部と、前記本体部の外縁部に設けられ位置調整により覆工の下端部と前記施工面との間を塞ぐ擦付部と、前記本体部の内縁部に設けられ高さ調整によりトンネルの底部と前記施工面との間を塞ぐ内枠部と、を有し、
前記擦付部は、前記本体部に摺動可能に設置された擦付板と、前記擦付板を前記本体部に沿って摺動させるスライド機構と、を備え、
前記擦付板を覆工の下端部に接するようにスライド移動させることで前記覆工の下端部と施工面との間を閉塞することを特徴とする請求項6に記載のインバート施工方法。
【請求項8】
サイド用型枠部が、施工面を有する本体部と、前記本体部の外縁部に設けられ位置調整により覆工の下端部と前記施工面との間を塞ぐ擦付部と、前記本体部の内縁部に設けられ高さ調整によりトンネルの底部と前記施工面との間を塞ぐ内枠部と、を有し、
前記擦付部は、前記本体部の外縁に設けられ上方に立ち上がった外縁側壁部と、施工面の延長方向に下面を有する擦付板と、前記擦付板と固定し前記外縁側壁部に沿って摺動する摺動部と、前記摺動部を前記外縁側壁部に沿って摺動させることで前記擦付板を上下方向に移動させるスライド機構と、を備え、
前記擦付板を覆工の下端部に接するように上下動させることで前記覆工の下端部と前記施工面との間を閉塞することを特徴とする請求項6に記載のインバート施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覆工が形成されたトンネルの底部にコンクリートを打設するインバート施工装置及びこれを用いたインバート施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川の導水路や下水道、雨水溝等の地中に建設される水路としてのトンネルの底部は水が滞留しないように逆アーチ形状のインバートとされる。また、道路や地下鉄、線路等のトンネルにおいても底部側からの耐圧性を向上するためインバートとする場合も少なくない。そして、このようなインバートの形成は作業者が手作業で行う事が一般的であった。
【0003】
ここで、本願発明者らは自走しながら道路脇の法面や鉄道の路盤コンクリートを連続して構築する下記[特許文献1]に記載の発明を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6621441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の[特許文献1]に記載の発明は道路脇の法面や鉄道の路盤コンクリートを打設するものであるが、基本的に車両部は平らな面を走行するため、その車輪は車体に対し略垂直に設置されている。しかしながら、インバートの形成時には走行面が曲面となる場合があり、略垂直に設置された車輪では安定的な走行が出来ないという問題点がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、キャンバー角が調整可能な車輪を備え走行面が曲面の場合でも安定的な走行が可能なインバート施工装置及びこれを用いたインバート施工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)覆工1が形成されたトンネルの底部1aにインバートを形成するインバート施工装置であって、トンネル内を走行可能な車両部20と、前記車両部20に設置され前記車両部20とともに移動しながら前記トンネルの底部1aにコンクリートを打設する型枠部70、70aと、前記車両部20の前後に車体に対して略垂直に設置された第1の車輪22aと、前記車両部20の前後に設置されキャンバー角が調整可能な第2の車輪22bと、を有し、前記第1の車輪22aと第2の車輪22bとは上下機構26を個別に備え、上下動がそれぞれ可能であることを特徴とするインバート施工装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)第2の車輪22bを保持する車輪部27aと、前記車輪部27aと前記車両部20とを繋ぎ前記上下機構26を備えた27a脚部と、を有し、前記第2の車輪22bは前記脚部27aと前記車輪部27bとの間に略三角柱形状の楔板29を挿入することでキャンバー角の調整を行うことを特徴とする上記(1)記載のインバート施工装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)第2の車輪22bは底部のインバートもしくは覆工1の曲面の法線方向に接するとともに、左右の舵取りが可能であり、さらに前記第2の車輪22bが鉛直方向に上下動することで上下位置決めを行うことを特徴とする上記(1)または(2)に記載のインバート施工装置80を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)覆工1が形成されたトンネルの底部1aにインバートを形成するインバート施工方法であって、
底部用の型枠部70aを上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のインバート施工装置80に固定する型枠設置工程S206と、第2の車輪22bのキャンバー角を前記覆工1の左右の下端部に応じた角度にそれぞれ調整するキャンバー角調整工程S208と、前記第2の車輪22bが前記覆工1の左右の下端部を走行して前記底部型枠部70aをトンネルの底部1aに沿って移動させながら生コンクリートを供給し、前記覆工1の間のトンネル底部にコンクリートを打設する底部コンクリート打設工程S210と、を有することを特徴とするインバート施工方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(5)覆工1が形成されたトンネルの底部1aを、前記トンネルに沿った複数の列に分割してインバートを形成するインバート施工方法であって、
前記複数の列のうち少なくとも一つのインバートの形成を上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のインバート施工装置80を用いて行うことを特徴とするインバート施工方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(6)覆工1が形成されたトンネルの底部1aを、前記トンネルに沿った中央部と左右のサイド部に少なくとも3分割してインバートを形成するインバート施工方法であって、
サイド用インバート施工装置80aに左サイド用もしくは右サイド用のいずれか一方のサイド用型枠部50a、50bを固定する第1の型枠設置工程S102Aと、
前記サイド用インバート施工装置80aが前記トンネルの底部1aを走行して前記一方のサイド用型枠部50a、50bを移動させながら生コンクリートを供給し、前記一方のサイド用型枠部50a、50bと対応したサイド部に側底部2を形成する第1の側底部コンクリート打設工程S104Aと、
サイド用インバート施工装置80aに左サイド用もしくは右サイド用の残りの一方のサイド用型枠部50a、50bを固定する第2の型枠設置工程S102Bと、
前記サイド用インバート施工装置80aが前記トンネルの底部1aを走行して前記残りの一方のサイド用型枠部50a、50bを移動させながら生コンクリートを供給し、前記残りの一方のサイド用型枠部50a、50bと対応したサイド部にもう一方の側底部2を形成する第2の側底部コンクリート打設工程S104Bと、
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のインバート施工装置80に中央底部用の型枠部70を固定する中央型枠設置工程S106と、
前記インバート施工装置80の第2の車輪22bのキャンバー角を左右の前記側底部2の曲面もしくは傾斜角に応じた角度に調整するキャンバー角調整工程S108と、
前記第2の車輪22bが左右の前記側底部2を走行して前記底部型枠部70をトンネルの中央部に沿って移動させながら生コンクリートを供給し、左右の前記側底部2の間にコンクリートを打設して中央底部3を形成する中央部コンクリート打設工程S110と、を有することを特徴とするインバート施工方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(7)サイド用型枠部50aが、施工面34を有する本体部32と、前記本体部32の外縁部に設けられ位置調整により覆工1の下端部と前記施工面34との間を塞ぐ擦付部52aと、前記本体部32の内縁部に設けられ高さ調整によりトンネルの底部1aと前記施工面34との間を塞ぐ内枠部36と、を有し、
前記擦付部52aは、前記本体部32に摺動可能に設置された擦付板54aと、前記擦付板54aを前記本体部32に沿って摺動させるスライド機構56aと、を備え、
前記擦付板54aを覆工1の下端部に接するようにスライド移動させることで前記覆工1の下端部と施工面34との間を閉塞することを特徴とする上記(6)記載のインバート施工方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(8)サイド用型枠部50bが、施工面34を有する本体部32と、前記本体部32の外縁部に設けられ位置調整により覆工1の下端部と前記施工面34との間を塞ぐ擦付部52bと、前記本体部32の内縁部に設けられ高さ調整によりトンネルの底部1aと前記施工面34との間を塞ぐ内枠部36と、を有し、
前記擦付部52bは、前記本体部32の外縁に設けられ上方に立ち上がった外縁側壁部58と、施工面34の延長方向に下面を有する擦付板54bと、前記擦付板54bと固定し前記外縁側壁部58に沿って摺動する摺動部54cと、前記摺動部54cを前記外縁側壁部58に沿って摺動させることで前記擦付板54bを上下方向に移動させるスライド機構56bと、を備え、
前記擦付板54bを覆工1の下端部に接するように上下動させることで前記覆工1の下端部と前記施工面34との間を閉塞することを特徴とする上記(6)記載のインバート施工方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るインバート施工装置は、車体に対し略垂直な第1の車輪と、キャンバー角を調整可能な第2の車輪とを有している。そして、第2の車輪のキャンバー角を調整することで、曲面である覆工の下端や左右の側底部での安定的な走行が可能となる。また、本発明に係るインバート施工装置は、第1の車輪と第2の車輪とを個別に有しているため、第1の車輪を用いた平面での走行と、第2の車輪を用いた曲面での走行とを瞬時に切り替えることができる。これにより、このインバート施工装置を用いた本発明に係るインバート施工方法は、インバートの形成を安定して効率良く行うことができる。
また、インバートの形成を複数に分割して行う際に用いるサイド用型枠部は、外縁部に位置調整が可能な擦付部を有し、また内縁部に高さ調節が可能な内枠部を有している。そして、擦付部がサイド用型枠部と覆工との間を塞ぎ、内枠部がサイド用型枠部とトンネルの底部との間とを塞ぐ。これにより、これらの部分から生コンクリートが漏れ出すことはなく、またインバートの左右の側底部を覆工の下端部と連続した形で形成することができる。さらに、覆工の下端部やトンネルの底部の位置がばらつく場合でも、擦付部及び内枠部を適宜調節することで、上記の閉塞状態を維持することができる。これにより、インバートの側底部の形成を安定して効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るインバート施工装置の車両部を示す図である。
図2】本発明に係るインバート施工装置の車両部の他の例を示す図である。
図3】本発明のインバート施工方法に用いるサイド用型枠部の第1の形態を示す図である。
図4】本発明のインバート施工方法に用いるサイド用型枠部の第2の形態を示す図である。
図5】本発明のインバート施工方法に用いる底部型枠部を示す図である。
図6】本発明に係るインバート施工方法の工程フローチャートである。
図7】本発明に係るインバート施工方法を説明する図である。
図8】本発明に係るインバート施工方法を説明する図である。
図9】インバートの形成を一括して行う本発明に係るインバート施工方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るインバート施工装置80及びインバート施工方法の実施の形態について図面に基づいて説明する。先ず、本発明に係るインバート施工装置80の車両部20に関して説明を行う。ここで、図1(a)は、本発明に係るインバート施工装置80の車両部20を後方側から見た図であり、図1(b)、(c)は車両部20の上面図及び側面図である。また、図2(a)は、本発明に係るインバート施工装置80の車両部20の他の例を後方側から見た図であり、図2(b)、(c)は他の例の車両部20の上面図及び側面図である。
【0011】
図1図2に示す車両部20は、インバート施工装置80に用いられるものであり、車体と、この車体に設置された第1の車輪22aと第2の車輪22bと、を有している。尚、ここでの第1の車輪22a、第2の車輪22b、及び後述の車輪22とは、一般的な車輪の他に、無限軌道(キャタピラ)を含むものとする。そして、第1の車輪22aは車体に対し略垂直に固定される。また、第2の車輪22bはキャンバー角をそれぞれ個別に調整可能となっている。尚、キャンバー角とは車両部20を正面から見た時の車輪の傾き角度のことを意味する。また、車両部20のキャンバー角の調整方法としては、図1に示すように、目的とするキャンバー角を有する略三角柱形状の楔板29を作製し、この楔板29を第2の車輪22bの脚部27aと車輪部27bとの間に挿入し固定して行うことが好ましい。また、図2に示すように第2の車輪22bをキャンバー角を調整可能な車輪取付板28を介して固定するようにしても良い。またさらに、第1の車輪22a、第2の車輪22bは、例えば油圧モータ等により回転可能に構成され、第1の車輪22a、第2の車輪22bが回転することで車両部20を移動させることができる。また、第1の車輪22a、第2の車輪22bは、油圧シリンダ等の上下機構26による上下動がそれぞれ可能であり、この上下機構26は走行に使用する側の車輪を下位置として接地させるとともに、走行に使用しない側の車輪を上位置として地面から浮かせ待機状態とする。さらに、第1の車輪22a、第2の車輪22bは図示しない方向転換機構によって車輪の方向を変化させて舵取りを行うことが可能であり、トンネルがカーブしていても、このカーブに沿って車両部20を移動させることができる。
【0012】
また、後述の図8(a)、(b)に示す、本発明のインバート施工方法に用いるサイド用インバート施工装置80aは、サイド用型枠部50a、50bを固定可能な車両部20aと、車両部20aの車体に対して略垂直に設置された車輪22と、を有している。尚、車輪22は第1の車輪22aと同様、油圧モータ等により回転可能に構成され、車輪22が回転することで車両部20aを移動させることができる。また、上下機構26による上下動が可能であり、サイド用型枠部50a、50bの不使用時には車高を上げてサイド用型枠部50a、50bを地面から浮かせた待機位置とすることができる。さらに、車輪22は方向転換機構を備えており、トンネルのカーブに沿って車両部20aを移動させることができる。尚、サイド用インバート施工装置80aはインバート施工装置80で兼用するようにしても良い。
【0013】
次に、本発明のインバート施工方法に用いるサイド用型枠部50a、50b及び底部用もしくは中央底部用の型枠部70a、70に関して説明を行う。先ず初めに、インバートの形成を中央部と左右のサイド部の少なくとも3列に3分割して行う際の、サイド用型枠部50a、50bに関して説明を行う。ここで、図3(a)、(b)、(c)は、本発明に係る第1の形態のサイド用型枠部50aの上面図、側面図、及びX-X視略断面図であり、また図4(a)、(b)、(c)は、本発明に係る第2の形態のサイド用型枠部50bの上面図、側面図、及びX-X視略断面図である。尚、サイド用型枠部50a、50bは基本的に左右対称な左用と右用のサイド用型枠部が1組となって存在し、図3図4ではこのうち左用のサイド用型枠部50a、50bを図示している。
【0014】
先ず、本発明に係る第1の形態、第2の形態のサイド用型枠部50a、50bは、トンネル底部1aのサイド部にコンクリートを打設してインバートの側底部2を形成するものであり、これらに共通する構成として、施工面34を有する本体部32と、この本体部32の外縁部に設けられた擦付部52a、52bと、本体部32の内縁部に設けられた内枠部36と、を有している。
【0015】
また、施工面34は本体部32の下面に位置し、構築するインバートの右もしくは左の側底部2の曲面と同一の曲面で構成される。従って、施工面34の外縁部は覆工1の下端部の表面とほぼ連続する方向となる。また、施工面34の進行方向前面には前枠体32aが設けられ、これにより施工面34の下方は前方が前枠体32aで閉塞され、内側面は内枠部36によって閉塞され、外側面と後方とが開口している。ただし、サイド用型枠部50a、50bの使用時には、外側面は覆工1の下端部によって閉塞されるため、車両部20の後方のみが開口することとなる。また、サイド用型枠部50a、50bの上部前寄りには、施工面34に通じ上方が開口した供給部40が設けられ、この供給部40の下部にはコンクリートバイブレータ等の周知の振動装置(図示せず)が設けられる。
【0016】
また、内枠部36は高さ調整が可能であり、施工面34の内側面とトンネルの底部1aとの間を塞ぐ機能を有する。尚、内枠部36の高さ調節機構に関しては特に限定は無いが、以下のように構成することが好ましい。先ず、本発明に好適な内枠部36は、本体部32の内縁に固定し下方に伸びた固定内枠36aと、この固定内枠36aの外側に位置し上下方向に摺動が可能な可動内枠36bと、可動内枠36bの移動方向を固定内枠36aに沿うように制限するガイド板35と、可動内枠36bをスライド移動させる油圧シリンダ等の周知のスライド機構37と、を有している。そして、このスライド機構37の伸縮動作によって可動内枠36bが固定内枠36aに沿って上下方向にスライド移動する。これにより、可動内枠36bの下端、即ち内枠部36の下端の高さ調節が可能となる。
【0017】
次に、第1の形態のサイド用型枠部50aの特徴的な構成である擦付部52aに関して説明を行う。第1の形態のサイド用型枠部50aの擦付部52aは、図3に示すように、本体部32の上面に摺動可能に設置された擦付板54aと、この擦付板54aの移動方向を本体部32の上面に沿う方向に制限するガイド部材55aと、擦付板54aを本体部32の上面に沿って摺動させる油圧シリンダ等の周知のスライド機構56aと、を有している。そして、スライド機構56aが伸縮動作することで、擦付板54aの位置、即ち、擦付板54aの本体部32の外縁からの突出量の調整が可能となる。
【0018】
次に、第2の形態のサイド用型枠部50bの特徴的な構成である擦付部52bに関して説明を行う。第2の形態のサイド用型枠部50bの擦付部52bは、図4に示すように、本体部32の外縁に設けられ上方に立ち上がった外縁側壁部58と、施工面34の外縁の延長方向と略同等な方向に下面を有する擦付板54bと、この擦付板54bと固定し外縁側壁部58に沿って摺動する摺動部54cと、摺動部54cの移動方向を外縁側壁部58に沿うように制限するガイド部材55bと、摺動部54cを外縁側壁部58に沿って摺動させることで擦付板54bを上下方向に移動させる油圧シリンダ等の周知のスライド機構56bと、を有している。そして、スライド機構56aが伸縮動作することで、擦付板54aの上下位置の調整が可能となる。
【0019】
次に、少なくとも3分割したトンネルの底部1aの中央部に、本発明に係るインバート施工装置80を用いてコンクリートの打設を行う中央底部用の型枠部70に関して説明を行う。ここで、図5(a)は中央底部用の型枠部70を後方から見た時の概略構成図であり、図5(b)は型枠部70を側方から見た時の概略構成図である。図5に示す中央底部用の型枠部70は、下面が施工面72であり、この施工面72は構築するインバートの中央底部の曲面と同一の曲面で構成される。また、型枠部70の上部前寄りには施工面72に通じ上方が開口した供給部40が設けられる。また、供給部40の下方には例えばスクリューコンベア74を設置して、供給部40から供給される生コンクリートを施工面72の全体に行き渡らせるようにすることが好ましい。また、スクリューコンベア74の下方にはコンクリートバイブレータ等の周知の振動装置76が設置される。
【0020】
尚、トンネルの底部1aの幅が比較的狭い場合等には、インバートの形成を分割せずに一括して行う場合もある。この場合に本発明に係るインバート施工装置80が使用する底部用(底部一括形成用)の型枠部70aは、後述の図9(a)に示すように中央底部用の型枠部70とほぼ同一の構成を有し、施工面72が底部1aに構築するインバートの曲面と略同一の曲面で構成される。また、型枠部70aの施工面72の左右の外縁部は左右の覆工1の下端部の表面からほぼ連続するように構成される。尚、底部一括形成用の型枠部70aでは施工面72の左右の外縁部にサイド用型枠部50a、50bと同様の擦付部52a、52bを設けても良い。
【0021】
次に、本発明に係るインバート施工装置80の動作及びインバート施工方法の説明を行う。先ず、インバートの形成をトンネルに沿った複数の列に分割して行う際の説明を行う。尚、ここでは、インバートの形成を中央部と左右のサイド部の3つの列に3分割して行う例を用いて説明を行うが、分割数には特に限定は無く例えば4分割、5分割、6分割、7分割、・・n分割、としても良い。この場合、左右の側底部2の内側に第2、第3、・・第nの側底部2が形成される。尚、側底部2の形成が進み、トンネルの底部1aの平面部分の幅が狭まり車両部20aの走行に支障をきたす場合、本発明に係るインバート施工装置80を用い、第2の車輪22bのキャンバー角を形成後の側底部2の曲面に応じて調整した上でこの側底部2を走行し、残りの側底部もしくは中央底部3の形成を行う。
【0022】
ここで、図6(a)はトンネルの底部1aへのインバートの形成を中央部と左右のサイド部に3分割して行う際のインバート施工方法の工程フローチャートであり、図7図8はこれを説明するための図である。尚、図8では左右の側底部2の形成に第1の形態のサイド用型枠部50aを用いた例を図示している。
【0023】
先ず、インバートを形成するトンネルは、図7(a)に示すように、掘削されたトンネルの側面及び天井部分を覆うようにアーチ形状の覆工1が形成されている。
【0024】
次に、サイド用インバート施工装置80aの車両部20aに左サイド用もしくは右サイド用のいずれか一方のサイド用型枠部50a、50bを固定する(第1の型枠設置工程S102A)。尚、ここでは左用のサイド用型枠部50aを固定した例を示す。そして、図8(a)に示すように、サイド用型枠部50a、50bを固定したサイド用インバート施工装置80aをインバートの形成開始位置に配置する。また、作業者はスライド機構56a、56aを操作して、サイド用型枠部50a、50bの擦付板54a、54bが覆工1の左側の下端部に接するように調節する。これにより、覆工1の左側の下端部と施工面34との間が擦付部52a、52b(擦付板54a、54b)によって塞がれる。また、作業者はスライド機構37を操作して、内枠部36の可動内枠36bの下端がトンネルの底部1aに接するように調節する。これにより、本体部32の内側の側面とトンネルの底部1aとの間が内枠部36(可動内枠36b)によって塞がれる。
【0025】
次に、コンクリート供給車両がサイド用型枠部50a、50bの供給部40へ生コンクリートを搬送する。供給部40内へ搬送された生コンクリートには図示しない振動装置によって高周波の内部振動が加えられ、生コンクリート内のセメントペースト及び細骨材が液状化して粗骨材の空隙等を埋め高密度化するとともに、施工面34下の前枠体32a、内枠部36、及び覆工1の左側の下端部で囲われた部分に均一に充填する。これにより、左のサイド部の側底部2の打設が行われる。このとき、擦付部52a、52bが施工面34と覆工1の左側の下端部との間を塞いでいるため、この部分から生コンクリートが漏れ出すことはなく、また側底部2は覆工1の左側の下端部と連続した形で形成される。また、これと並行して車両部20aの車輪22がトンネルの底部1aの中央部を低速で走行し、サイド用インバート施工装置80aをトンネルに沿って移動させる。これにより、サイド用型枠部50a、50bも左側のサイド部に沿って移動し、左の側底部2の形成が連続的に行われるとともに、形成された側底部2はサイド用型枠部50a、50bの後方から吐出される。尚、この移動に伴い覆工1の下端部やトンネルの底部1aの位置が変化する場合には、スライド機構56a、56a、37を適宜操作して、覆工1の下端部と施工面34との間及び内枠部36とトンネルの底部1aとの間の閉塞状態を維持する。これにより、図7(b)に示すように、トンネルの底部1aの一方(左側)のサイド部に所定の厚み及び曲面の側底部2が覆工1の左側の下端部と繋がった状態で形成される(第1の側底部コンクリート打設工程S104A)。
【0026】
次に、サイド用インバート施工装置80aの車両部20aに残りの一方、即ち右用のサイド用型枠部50a、50bを固定する(第2の型枠設置工程S102B)。そして、右用のサイド用型枠部50a、50bを固定したサイド用インバート施工装置80aを、図8(b)に示すようにインバートの形成開始位置に配置する。尚、この位置には第1の側底部コンクリート打設工程S104Aにより左側の側底部2が既に形成されている。また、作業者は第1の型枠設置工程S102Aと同様に、右側のスライド機構56a、56aを操作して、サイド用型枠部50a、50bの擦付板54a、54bが覆工1の右側の下端部に接するように調節する。これにより、覆工1の右側の下端部と施工面34との間が擦付部52a、52b(擦付板54a、54b)によって塞がれる。また、作業者はスライド機構37を操作して、内枠部36の可動内枠36bの下端がトンネルの底部1aに接するように調節する。これにより、本体部32の内側の側面とトンネルの底部1aとの間が内枠部36(可動内枠36b)によって塞がれる。
【0027】
次に、この状態でコンクリート供給車両が右側のサイド用型枠部50a、50bの供給部40へ生コンクリートを搬送する。供給部40内へ搬送された生コンクリートには高周波の内部振動が加えられ、高密度化するとともに施工面34下の前枠体32a、内枠部36、及び覆工1の右側の下端部で囲われた部分に均一に充填する。これにより、右のサイド部の側底部2の打設が行われる。このとき、擦付部52a、52bが施工面34と覆工1の右側の下端部との間を塞いでいるため、この部分から生コンクリートが漏れ出すことはなく、また側底部2は覆工1の右側の下端部と連続した形で形成される。また、これと並行して車両部20aの車輪22がトンネルの底部1aの中央部を走行してサイド用インバート施工装置80aをトンネルに沿って移動させる。これにより、サイド用型枠部50a、50bも右側のサイド部に沿って移動し、右のサイド部の側底部2の形成が連続的に行われるとともに、形成された側底部2はサイド用型枠部50a、50bの後方から吐出される。尚、この移動に伴い覆工1の下端部やトンネルの底部1aの位置が変化する場合には、スライド機構56a、56a、37を適宜操作して、覆工1の下端部と施工面34との間及び内枠部36とトンネルの底部1aとの間の閉塞状態を維持する。これにより、図7(c)に示すようにトンネルの底部1aのもう一方の右側のサイド部に所定の厚み及び曲面の側底部2が覆工1の右側の下端部と繋がった状態で形成される(第2の側底部コンクリート打設工程S104B)。
【0028】
上記の第1の側底部コンクリート打設工程S104A、第2の側底部コンクリート打設工程S104Bによりトンネルの底部1aに左右の側底部2が形成され、これらが十分に硬化すると、次に、本発明に係るインバート施工装置80の車両部20に中央底部用の型枠部70を固定する(中央型枠設置工程S106)。そして、型枠部70を固定したインバート施工装置80を、インバートの形成開始位置に配置する。また、この配置の際にインバート施工装置80が平地を移動する必要がある場合には、上下機構26によって第1の車輪22aを下位置とし、第1の車輪22aを用いて移動を行う。このとき、第2の車輪22bは上下機構26によって上位置とされ走行を妨害しない位置で待機状態とする。
【0029】
次に、車両部20の第2の車輪22bのキャンバー角を楔板29もしくは車輪取付板28等を用いて左右の側底部2の曲面もしくは傾斜面に応じた角度(インバートとなる側底部2の曲面もしくは傾斜面の法線方向)に調整して固定する(キャンバー角調整工程S108)。尚、側底部2の曲面等は設計時に既に決定しているから、このキャンバー角調整工程S108は車両部20の準備段階で予め行っておくことが好ましい。これは後述するキャンバー角調整工程S208、S118においても同様である。そして、上下機構26を操作して第2の車輪22bを下位置とする。特に図1に示す車両部20では上下機構26の動作により第2の車輪22b及び脚部27aが鉛直方向に上下動して、第2の車輪22bの上下位置決めが行われる。これにより、図8(c)に示すように第2の車輪22bが左右の側底部2に良好な状態(側底部2の法線方向)で接地して側底部2の走行が可能となる。また、第1の車輪22aは上下機構26によって上位置とされ、コンクリートの打設を妨害しない位置で待機状態となる。このとき、型枠部70の施工面72の両側縁は側底部2の内縁部分と接し、施工面72下の両側面は左右の側底部2によって塞がれる。
【0030】
次に、コンクリート供給車両が型枠部70の供給部40へ生コンクリートを搬送する。供給部40内へ搬送された生コンクリートは、スクリューコンベア74等によって施工面72下の全体に行き渡る。また、生コンクリートには振動装置76により高周波の内部振動が加えられ高密度化するとともに、施工面72下の左右の側底部2の内側面で囲われた部分に均一に充填する。これにより、左右の側底部2の間に中央底部3の打設が行われる。また、これと前後して車両部20の第2の車輪22bが左右の側底部2を走行して、インバート施工装置80をトンネルに沿って移動させる。これにより、型枠部70もトンネルに沿って移動し中央底部3の形成が連続的に行われるとともに、形成された中央底部3は型枠部70の後方から吐出される。これにより、図7(d)に示すようにトンネルの底部1aに左右の側底部2と連続した中央底部3が形成されていく(中央部コンクリート打設工程S110)。そして、打設された中央底部3が硬化することで、トンネルの底部1aに覆工1の下端部と連続したインバートが完成する。
【0031】
次に、インバートの形成を一括して行う際の本発明に係るインバート施工方法及びインバート施工装置80の動作の説明を行う。ここで、図6(b)はトンネルの底部1aへのインバートの形成を一括して行うインバート施工方法の工程フローチャートであり、図9はこれを説明するための図である。
【0032】
インバートの形成を一括して行う際のインバート施工方法では、先ず、底部一括形成用の型枠部70aをインバート施工装置80の車両部20に固定する(型枠設置工程S206)。そして、底部一括形成用の型枠部70aを固定したインバート施工装置80を、インバートの形成開始位置に配置する。尚、この配置の際にインバート施工装置80が平地を移動する必要がある場合には、上下機構26によって第1の車輪22aを下位置とし、第1の車輪22aを用いて行う。
【0033】
次に、車両部20の第2の車輪22bのキャンバー角を楔板29もしくは車輪取付板28等を用いて覆工1の左右の下端部の曲面に応じた角度(覆工1の下端部の曲面の法線方向)にそれぞれ調整して固定する(キャンバー角調整工程S208)。このキャンバー角調整工程S208は車両部20の準備段階で予め行っておくことが好ましい。そして、上下機構26を操作して第2の車輪22bを下位置とする。特に図1に示す車両部20では上下機構26の動作により第2の車輪22b及び脚部27aが鉛直方向に上下動して、第2の車輪22bの上下位置決めが行われる。これにより、図9(a)に示すように、第2の車輪22bが覆工1の左右の下端部に良好な状態(覆工1の法線方向)で接地して覆工1の下端部での走行が可能となる。また、第1の車輪22aは上下機構26によって上位置とされ、コンクリートの打設を妨害しない位置で待機状態となる。このとき、底部一括形成用の型枠部70aの施工面72の両側縁は覆工1の左右の下端部と接し、施工面72下の両側面は左右の覆工1によって塞がれる。
【0034】
次に、コンクリート供給車両が底部一括形成用の型枠部70aの供給部40へ生コンクリートを搬送する。供給部40内へ搬送された生コンクリートは、図示しないスクリューコンベア等によって施工面72下の全体に行き渡る。また、生コンクリートには振動装置76により高周波の内部振動が加えられ高密度化するとともに、左右の覆工1の内側面で囲われた部分に均一に充填する。これにより、トンネルの底部1aに表面が左右の覆工1と連続したインバート4の打設が行われる。また、これと並行して車両部20の第2の車輪22bが覆工1の左右の下端部を走行して、インバート施工装置80をトンネルに沿って移動させる。これにより、底部一括形成用の型枠部70aもトンネルの底部1aに沿って移動し、インバート4の形成が連続的に行われるとともに、形成されたインバート4は底部一括形成用の型枠部70aの後方から吐出される。これにより、図9(b)に示すようにトンネルの底部1aにインバート4が形成されていく(底部コンクリート打設工程S210)。そして、打設されたインバート4が硬化することで、トンネルの底部1aに覆工1の下端部と連続したインバートが完成する。
【0035】
次に、インバートの形成を左右のサイド部に2分割して行う際の本発明に係るインバート施工装置80の動作及びインバート施工方法の説明を行う。ここで、図6(c)はトンネルの底部1aへのインバートの形成を2分割して行うインバート施工方法の工程フローチャートである。
【0036】
インバートの形成を2分割して行う際のインバート施工方法では、先ず、3分割時のインバート施工方法の第1の型枠設置工程S102Aと同様に、サイド用インバート施工装置80aの車両部20aに左サイド用もしくは右サイド用のいずれか一方のサイド用型枠部50a、50bを固定する。そして、第1の側底部コンクリート打設工程S104Aと同様にして、一方のサイド部に所定の厚み及び曲面の側底部2を覆工1の下端部と繋がった状態で形成する。
【0037】
そして、この側底部2が十分に硬化した後、本発明に係るインバート施工装置80の車両部20に残りの一方のサイド用の型枠部を固定する(型枠設置工程S107)。尚、この時用いるサイド用の型枠部は、例えばサイド用型枠部50a、50bの構成の内、内枠部36を有しておらず、施工面34の内縁が開口したものである。ただし、使用時にはこの内縁の開口は既に形成されている側底部2の内側面によって閉塞されるため、車両部20の後方のみが開口することとなる。
【0038】
次に、車両部20の左右の第2の車輪22bのうち、側底部2が既に形成されている側の第2の車輪22bのキャンバー角を楔板29もしくは車輪取付板28等を用いて、この側底部2の曲面もしくは傾斜面に応じた角度(インバートとなる側底部2の曲面もしくは傾斜面の法線方向)に調整して固定する。また、側底部2が形成されていない側の第2の車輪22bのキャンバー角を側底部2が形成されていない側の覆工1の下端部の曲面に応じた角度(覆工1の下端部の曲面の法線方向)に調整して固定する(キャンバー角調整工程S118)。そして、上下機構26を操作して第2の車輪22bを下位置とする。特に図1に示す車両部20では上下機構26の動作により第2の車輪22b及び脚部27aが鉛直方向に上下動して、第2の車輪22bの上下位置決めが行われる。これにより、側底部2が既に形成されている側の第2の車輪22bが側底部2に良好な状態(側底部2の法線方向)で接地して側底部2の走行が可能となる。また、側底部2が形成されていない側の第2の車輪22bが覆工1の下端部に良好な状態(覆工1の法線方向)で接地して覆工1の下端部での走行が可能となる。
【0039】
次に、第1、第2の側底部コンクリート打設工程S104A、S104B、底部コンクリート打設工程S210と同様に、インバート施工装置80に設置されたサイド用の型枠部に生コンクリートを供給し、既に形成されている側底部2と覆工1の下端部との間にもう一方の側底部2の打設を行う。また、これと前後して車両部20の一方の第2の車輪22bが側底部2を、もう一方の第2の車輪22bが覆工1の下端部を走行して、インバート施工装置80をトンネルに沿って移動させる。これにより、既に形成されている側底部2と覆工1の下端部との間にもう一方の側底部2が形成されていく(第2の側底部コンクリート打設工程S104C)。そして、打設された側底部2が硬化することで、トンネルの底部1aに覆工1の下端部と連続したインバートが完成する。
【0040】
以上のように、本発明に係るインバート施工装置80は、車体に対し略垂直な第1の車輪22aと、キャンバー角を調整可能な第2の車輪22bとを有している。そして、第2の車輪22bのキャンバー角を覆工1の下端やインバートの左右の側底部2の曲面に合わせて調整することで、第2の車輪22bによる覆工1の下端や左右の側底部2での走行が可能となる。これにより、走行面が曲面となる場合でもインバート施工装置80を安定して走行させることができる。また、本発明に係るインバート施工装置80は、平面走行用の第1の車輪22aと曲面走行用の第2の車輪22bとを個別に有し、第2の車輪22bのキャンバー角を予め調整しておくことで、上下機構26の操作により第1の車輪22aを用いた平地での走行と、第2の車輪22bを用いた曲面での走行とを瞬時に切り替えることができる。これにより、このインバート施工装置80を用いた本発明に係るインバート施工方法は、現地でのキャンバー角の変更や車輪の付け替えが必要なく、インバートの形成を迅速かつ効率良く行うことができる。
【0041】
また、インバートの形成を分割して行う際に用いるサイド用型枠部50a、50bは、外縁部に位置調整が可能な擦付部52a、52bを有し、また内縁部に高さ調節が可能な内枠部36を有している。そして、擦付部52a、52bがサイド用型枠部50a、50bの施工面34と覆工1との間を塞ぎ、内枠部36が施工面34とトンネルの底部1aとの間とを塞ぐ。これにより、これらの部分から生コンクリートが漏れ出すことはなく、また側底部2を覆工1の下端部と連続した形でコンクリートの打設を行うことができる。さらに、覆工1の下端部やトンネルの底部1aの位置がばらつく場合でも、擦付部52a、52b及び内枠部36を適宜調節することで、上記の閉塞状態を維持することができる。これにより、インバートの側底部2の形成を安定して効率良く行うことができる。
【0042】
尚、本例で示したインバート施工装置80、サイド用インバート施工装置80a、車両部20、20a、サイド用型枠部50a、50b、型枠部70、70a、擦付部52a、52b、内枠部36等の各部の構成、デザイン、機構、動作及びインバート施工方法の工程順、その他は一例であるから上記の例に限定されるわけでは無く、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 覆工
1a (トンネルの)底部
2 側底部
3 中央底部
20、20a 車両部
22a 第1の車輪
22b 第2の車輪
27a 脚部
27b 車輪部
29 楔板
32 本体部
34 施工面
36 内枠部
50a、50b サイド用型枠部
70、70a 型枠部
52a、52b 擦付部
54a、54b 擦付板
54c 摺動部
56a、56b スライド機構
58 外縁側壁部
80 インバート施工装置
80a サイド用インバート施工装置
【要約】
【課題】キャンバー角が調整可能な車輪を備え走行面が曲面の場合でも安定的な走行が可能なインバート施工装置及びこれを用いたインバート施工方法を提供する。
【解決手段】このインバート施工方法に用いるインバート施工装置80は、車体に対し略垂直な第1の車輪22aと、キャンバー角を調整可能な第2の車輪22bとを有している。そして、第2の車輪22bのキャンバー角を覆工1の下端やインバートの左右の側底部2の曲面に合わせて調整することで、第2の車輪22bによる覆工1の下端や左右の側底部2での走行が可能となる。これにより、走行面が曲面となる場合でもインバート施工装置80を安定して走行させることができる。また、このインバート施工装置80は、第1の車輪22aと第2の車輪22bとを個別に有するため、第1の車輪22aを用いた平面での走行と、第2の車輪22bを用いた曲面での走行とを瞬時に切り替えることができる。
【選択図】図1
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