IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】抗ウイルス組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/16 20060101AFI20230210BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20230210BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20230210BHJP
   A01N 25/06 20060101ALI20230210BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20230210BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20230210BHJP
   D06M 13/207 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
A01N59/16 Z
A01P1/00
A01N25/10
A01N25/06
A61L9/00 C
A61L9/14
D06M13/207
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019004723
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020111546
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】乾 圭一郎
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-532201(JP,A)
【文献】米国特許第05728404(US,A)
【文献】特開2017-043559(JP,A)
【文献】特開2010-143875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 59/16
A01P 1/00
A01N 55/02
A01N 25/06
A61L 9/00
A61K 33/00
A61P 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類塩および亜鉛塩を含有することを特徴とする抗ウイルス組成物。
【請求項2】
希土類塩がランタン塩、セリウム塩、ネオジム塩から選択される少なくとも一種、亜鉛塩がヒドロキシ酸の亜鉛塩であることを特徴とする、請求項1に記載の抗ウイルス組成物。
【請求項3】
ヒドロキシ酸が、グルコン酸、リンゴ酸、乳酸から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抗ウイルス組成物
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の抗ウイルス組成物を加工した不織布、壁紙、フィルター材料、繊維または繊維製品、建築用内装材。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の抗ウイルス組成物を、対象とする環境中の空間または表面に噴霧することを特徴とするウイルスの活性を低減させる方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウイルスを不活性化する工業用の抗ウイルス組成物およびその用途に関するものであり、特に変色や着色を起こすことがない抗ウイルス組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは生物とは異なる非細胞性生物として分類されており、哺乳類、鳥類等の宿主の宿主細胞に感染することによって増殖する。ウイルスは、口蹄疫や鳥インフルエンザ等の感染症の原因となり、社会的な問題になりつつある。また最近では、生活環境の向上と衛生意識の変化に伴って、環境中に存在するウイルスを不活性化できる抗ウイルス製品や抗ウイルス加工品が要求されている。
【0003】
抗ウイルス製品としては、銀等を含む無機化合物を利用することが従来より行われており、広く実用化されている。例えば、リン含有酸素酸の銀塩(特許文献1)、銀を含む無機酸化物微粒子(特許文献2)等が挙げられる。
【0004】
また種々の有機化合物や界面活性剤系化合物等も抗ウイルス剤として提案されている(特許文献3~6)。しかしながら、銀を含む抗ウイルス製品は経時的に褐色に変色する、また加工時に加熱することにより変色するという問題があり、また銀を含まない抗ウイルス剤は銀を含む化合物と比較して抗ウイルス性能が十分ではないという問題があった。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-68913号公報
【文献】特開2003-221304号公報
【文献】特開2016-166135号公報
【文献】特開2011-136977号公報
【文献】特開2015-67658号公報
【文献】特開2016-128395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、抗ウイルス製品が変色や着色するという問題を起こすことなく、室内等の環境中に存在するウイルスを不活性化するための抗ウイルス組成物、さらにフィルター類、塗料や樹脂エマルジョン等のコーティング剤、繊維または繊維製品に抗ウイルス活性を付与するための工業用の抗ウイルス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意種々の研究を行った結果、希土類塩および亜鉛塩を含有する組成物が高い抗ウイルス性能を有し、またフィルター類、塗料や樹脂エマルジョン等のコーティング剤、繊維または繊維製品に抗ウイルス機能を付与できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、
(1)希土類塩および亜鉛塩を含有する抗ウイルス組成物であり、
(2)希土類塩がランタン塩、セリウム塩、ネオジム塩から選択される少なくとも一種、亜鉛塩がヒドロキシ酸の亜鉛塩である抗ウイルス組成物であり、
(3)ヒドロキシ酸が、グルコン酸、リンゴ酸、乳酸から選択される少なくとも一種である上記の抗ウイルス組成物であり、
(4)上記に記載の抗ウイルス組成物を加工した不織布、壁紙、フィルター材料、繊維または繊維製品、建築用内装材であり、
(5)上記に記載の抗ウイルス組成物を、対象とする環境中の空間または表面に噴霧することを特徴とするウイルスの活性を低減させる方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抗ウイルス組成物を、噴霧剤として環境中に存在する種々のウイルスに接触させることにより抗ウイルス性能を発揮し、またフィルター類、塗料または樹脂エマルジョン等のコーティング剤、さらに繊維または繊維製品等に加工することによって抗ウイルス性能を付与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の抗ウイルス組成物に使用する希土類塩は、スカンジウム塩、イットリウム塩、ランタン塩、セリウム塩、プラセオジム塩、ネオジム塩、サマリウム塩、ユウロピウム塩、ガドリニウム塩、テルビウム塩、ジスプロシウム塩、ホルミウム塩、エルビウム塩、ツリウム塩、イッテルビウム塩、ルテチウム塩が挙げられ、特に高い抗ウイルス性能の相乗効果を発揮し且つ透明性が高いランタン塩、セリウム塩、ネオジム塩、サマリウム塩、ガドリニウム塩、イッテルビウム塩が好ましく、ランタン塩、セリウム塩、ネオジム塩がより好ましい。これらの原料は一般に工業用原料として流通しているものを使用することができる。
【0011】
本発明の抗ウイルス組成物に使用する希土類塩の対イオンとして、いずれの対イオンを有する塩でも使用することができる。塩としては、塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、炭酸塩、有機酸塩、水酸化物等が挙げられ、これらのうち水溶性である塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、有機酸請求項が「加工」のため変更しました塩を使用することが好ましい。有機酸塩としては、一価または二価のカルボン酸やヒドロキシ酸の塩が挙げられ、具体的にはヒドロキシ酸として乳酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸が例示でき、一価または二価のカルボン酸として酢酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等が例示できる。これらのうち、塩化物塩、ヒドロキシ酸塩が溶解性、安全性の点で好ましく、さらに塩化物塩、グルコン酸塩、乳酸塩がより好ましい。ここで「水溶性」とは、20℃において1gの化合物を溶解させるのに必要な水の量が10mL未満であることを示す。
【0012】
本発明に使用する亜鉛塩は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等の無機亜鉛塩、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛等の有機酸亜鉛塩が挙げられるが、安全性の点からヒドロキシ酸の亜鉛塩が望ましい。ヒドロキシ酸は、水酸基をひとつあるいは二つ以上有するカルボン酸であり、具体的な例としては、グリコール酸、グリセリン酸、グルコン酸、グルクロン酸、乳酸、タルトロン酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、シキミ酸等が挙げられ、これらのうちグルコン酸、クエン酸、乳酸が好ましく、さらにグルコン酸がより好ましい。これらのうち、グルコン酸亜鉛が特に好ましい。これらのヒドロキシ酸の亜鉛塩は、一般に試薬や工業用原料として市販されているものを使用することができる。
【0013】
抗ウイルス組成物の中に占める亜鉛塩と希土類塩の混合比は、金属イオンのモル比として、(亜鉛塩):(希土類塩)=1:99~99:1、好ましくは20:80~80:20、より好ましくは40:60~60:40である。この範囲の比率を外れると亜鉛塩と希土類塩を混合することによる相乗効果が十分に得られなくなる。
【0014】
本発明において「抗ウイルス」とは、ウイルスが不活性化されることによってウイルスの増殖が抑制されることを示し、またウイルスの感染性を低減させることも含有する。このようなウイルスの増殖を抑制する効果は、日本工業規格JIS L1922等の抗ウイルス性試験方法によって評価することができる。
【0015】
本発明の抗ウイルス組成物を適用する用途としては、噴霧用途として業務用において使用する噴霧剤が挙げられる。また本発明の抗ウイルス組成物の加工用途としては、空気清浄機用フィルター、エアコン用フィルター、掃除機用フィルター、換気扇用フィルター、車用キャビンフィルター等のフィルター類、塗料、樹脂エマルジョン等のコーティング剤、さらにポリ塩化ビニル等のプラスチックや、綿、ナイロン、ポリエステル、羊毛等の繊維や、ポリエチレンやポリプロピレンを用いた不織布、マスク、ウェットワイパー等への表面加工または練り込み加工が挙げられる。繊維は前記の繊維を二種類以上使用した複合繊維であっても差し支えない。
【0016】
塗料、樹脂エマルジョン等のコーティング剤は、建築用内装材としての塩ビ等の樹脂を用いた壁紙、天井材、合板等の木質材料、床材等の表面加工として使用され、特に水溶性または水性の表面処理剤やコーティング剤、または水性の塗料へ添加することが好ましい。繊維製品に関しては、カーペット、ソファー、壁紙、カーテン等のインテリア類、布団側地、布団カバー、布団中綿、シーツ、枕カバー、マット等の寝具類、カーシート、カーマット等の自動車部品類、タオル、衣類、ぬいぐるみ等が挙げられる。
【0017】
本発明の抗ウイルス組成物を噴霧剤用途に使用する場合には、抗ウイルス組成物中に亜鉛塩および希土類塩を、合計として0.01~10重量%、好ましくは0.1~3重量%、さらに好ましくは0.2~2重量%の範囲で含有させることができる。10重量%を超える濃度を配合した場合には噴霧性能に影響が出る恐れがあり、0.01重量%未満の濃度の場合には十分な抗ウイルス性能が発揮されない恐れがある。
【0018】
加工用途で使用する場合には、抗ウイルス組成物中に亜鉛塩および希土類塩を、合計として0.01~70重量%、好ましくは0.1~30重量%、さらに好ましくは0.5~20重量%の範囲で含有させることができる。70重量%を超える濃度の場合には亜鉛塩または希土類塩が、液体の製剤の場合には安定に溶解しない恐れ、固体の製剤の場合には潮解性のために取り扱いに支障が出る恐れがあり、0.01重量%未満の濃度の場合には十分な抗ウイルス性能が発揮されない恐れがある。
【0019】
製剤を液剤とするために、亜鉛塩および希土類塩を含有する組成物を溶剤に溶解させる。溶剤としては水を用いることが適しているが、アルコール類やグリコールエーテル類等の極性溶剤を使用あるいは併用することもできる。このような極性溶剤の例としては、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量1000以下)、ポリプロピレングリコール(分子量1000以下)等が挙げられる。これらの溶剤は2種類以上を混合して使用しても差し支えない。
【0020】
製剤を行う上で、亜鉛塩および希土類塩を含有する組成物に界面活性剤を、本発明の物性を損なわない範囲で、安定性や相溶性の向上等の目的のために添加しても差し支えない。界面活性剤の種類は特に限定されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン性界面活性剤にはアルキルベンゼンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ジアルキルスルホサクシネート等が挙げられる。カチオン性界面活性剤では脂肪族アミン塩およびその4級アンモニウム塩等が挙げられ、両イオン性界面活性剤ではベタイン型界面活性剤、アミノカルボン酸塩等が挙げられる。また、これらの非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤は一種を単独に用いても二種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明の抗ウイルス剤組成物には、物性を損なわない範囲で、公知となっている抗菌成分をさらに添加することも可能である。抗菌剤の種類は特に限定されないが、例えば、5-クロロ-2-メチルイソチアゾロン、2-メチルイソチアゾロン、メチレンビスチオシアネート、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、グルタルアルデヒド、ヨードプロピニルブチルカーバメート、1,2-ベンゾイソチアゾロン、1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタン、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、オルトフェニルフェノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラクロロメタキシレノール、パラクロロメタクレゾール、ポリリジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、銀ゼオライト、銀塩、N-n-ブチルベンゾイソチアゾロン、N-オクチルイソチアゾロン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、2-ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチル、テトラクロロイソフタロニトリル、ジヨードメチルパラトリルスルホン、パラクロロフェニル-3-ヨードプロパギルホルマール、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、脂肪酸グリセリンエステル、ヒノキチオール等を挙げることができる。
【0022】
本発明の抗ウイルス組成物の製剤化に際しては、前述の溶剤、界面活性剤、抗菌成分の他に、必要に応じ性能や物性を損なわない範囲で消臭成分、防カビ成分、キレート剤、防錆剤、香料、スケール防止剤、消泡剤、帯電防止剤、樹脂バインダー、増粘剤、柔軟加工剤等を添加することも可能である。
【0023】
本発明において「抗ウイルス」とは、ウイルスが不活性化されることによってウイルスの増殖が抑制されることを示し、またウイルスの感染性を低減させることも含有する。このようなウイルスの増殖を抑制する効果は、日本工業規格JIS L1922等の抗ウイルス性試験方法によって評価することができる。対象とするウイルスは、生物とは異なる非細胞性生物と分類されており、その遺伝子がカプシドと呼ばれる外殻タンパク質の中に保持されている。ウイルスは、そのカプシドが脂質二重膜からなるエンベロープで覆われているものと覆われていないものの二種類に分類される。例えば、エンベロープで覆われているウイルスとしてヘルペスウイルス、インフルエンザウイルスが挙げられ、エンベロープを持たないウイルスとしてアデノウイルス、ノロウイルス、ネコカリシウイルス、ポリオウイルス等が挙げられる。本発明の抗ウイルス組成物が作用するウイルスに関しては特に限定されないが、インフルエンザウイルスまたはネコカリシウイルスが好ましく、さらにインフルエンザウイルスがより好ましい。
【実施例
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0025】
[実施例1]
グルコン酸亜鉛(ヘルシャスZn(登録商標)、扶桑化学工業株式会社製)2.5g、塩化ランタン・七水和物(和光純薬工業株式会社製)2.5g、をイオン交換水95gに溶解させ、得られた溶液を実施例1とした。
【0026】
[実施例2]
グルコン酸亜鉛(ヘルシャスZn(登録商標)、扶桑化学工業株式会社製)1g、塩化ランタン・七水和物(和光純薬工業株式会社製)4g、をイオン交換水95gに溶解させ、得られた溶液を実施例2とした。
【0027】
[実施例3]
グルコン酸亜鉛(ヘルシャスZn(登録商標)、扶桑化学工業株式会社製)4g、塩化ランタン・七水和物(和光純薬工業株式会社製)1g、をイオン交換水95gに溶解させ、得られた溶液を実施例3とした。
【0028】
[実施例4]
グルコン酸亜鉛(ヘルシャスZn(登録商標)、扶桑化学工業株式会社製)3.5g、塩化セリウム・七水和物(和光純薬工業株式会社製)1.5g、をイオン交換水95gに溶解させ、得られた溶液を実施例4とした。
【0029】
[実施例5]
グルコン酸亜鉛(ヘルシャスZn(登録商標)、扶桑化学工業株式会社製)3.5g、塩化ネオジム・六水和物(和光純薬工業株式会社製)1.5g、をイオン交換水95gに溶解させ、得られた溶液を実施例5とした。
【0030】
[実施例6]
グルコン酸亜鉛(ヘルシャスZn(登録商標)、扶桑化学工業株式会社製)2.5g、酢酸イッテルビウム・四水和物(和光純薬工業株式会社製)2.5g、をイオン交換水95gに溶解させ、得られた溶液を実施例6とした。
【0031】
[実施例7]
酸化亜鉛(和光純薬工業株式会社製)1.0g、90%乳酸(株式会社武蔵野化学研究所製)3.0をイオン交換水60gに加え、攪拌しながら65℃に加熱し溶解させた。室温に冷却した後、さらに塩化ランタン・七水和物(和光純薬工業株式会社製)2.5gおよびイオン交換水33.5gを加えて溶解させ、得られた溶液を実施例7とした。
【0032】
[実施例8]
グルコン酸亜鉛(ヘルシャスZn(登録商標)、扶桑化学工業株式会社製)0.4g、塩化ランタン・七水和物(和光純薬工業株式会社製)0.2g、を20%エタノール水溶液99.4gに溶解させ、得られた溶液を噴霧剤の実施例8とした。
【0033】
[比較例1]
グルコン酸亜鉛(ヘルシャスZn(登録商標)、扶桑化学工業株式会社製)5gをイオン交換水95gに溶解させ、得られた溶液を比較例1とした。
[比較例2]
塩化ランタン・七水和物(和光純薬工業株式会社製)5gをイオン交換水95gに溶解させ、得られた溶液を比較例2とした。
【0034】
[比較例3]
塩化セリウム・七水和物(和光純薬工業株式会社製)5gをイオン交換水95gに溶解させ、得られた溶液を比較例3とした。
【0035】
[比較例4]
塩化ネオジム・六水和物(和光純薬工業株式会社製)5gをイオン交換水95gに溶解させ、得られた溶液を比較例4とした。
【0036】
[比較例5]
酢酸イッテルビウム・四水和物(和光純薬工業株式会社製)5gをイオン交換水95gに溶解させ、得られた溶液を比較例5とした。
【0037】
[比較例6]
酸化亜鉛(和光純薬工業株式会社製)1.0g、90%乳酸(株式会社武蔵野化学研究所製)3.0をイオン交換水60gに加え、攪拌しながら65℃に加熱し溶解させた。室温に冷却した後、さらにイオン交換水36gを加えて溶解させ、得られた溶液を比較例6とした。
【0038】
[比較例7]
塩化ランタン・七水和物(和光純薬工業株式会社製)3gを20%エタノール水溶液97gに溶解させ、得られた溶液を噴霧剤の比較例7とした。
【0039】
[比較例8]
硝酸銀(和光純薬工業株式会社製)1gをイオン交換水99gに溶解させ、得られた溶液を比較例8とした。
【0040】
(ネコカリシウイルスに対する抗ウイルス組成物の抗ウイルス試験)
ヒトノロウイルスは、細胞培養や小動物での増殖方法が確立していないため、その有効性評価は同じカリシウイルス科に属するネコカリシウイルスで代替試験されることが一般的である。このため本実施例でもノロウイルスに対する抗ウイルス評価として、ネコカリシウイルスF-9株(Feline calicivirus、Strain:F-9 ATCC VR-782)を用いた試験を実施した。まず、このウイルスをCRFK細胞(ネコ腎臓由来細胞)で培養することによりウイルス感染価5.3×10PFU/mLの試験ウイルス懸濁液を得た。
【0041】
実施例1~7、比較例1~6を、それぞれイオン交換水を用いて15倍に希釈した液を調製し、これらの液それぞれ0.9mLに試験ウイルス懸濁液0.1mLを加え、25℃の条件下で2時間静置した。これらのそれぞれの試料液0.1mLに、牛血清を終濃度10%添加したSCDLP培地0.9mLを加え、プラーク測定法によりウイルス感染価を測定した。結果を表1に示した。
【0042】
【表1】
PFU=plaque forming units
【0043】
(インフルエンザウイルスに対する組成物の抗ウイルス試験)
インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス評価としては、A型インフルエンザウイルス(H3N2、A/Hong Kong/8/68;TC adapted ATCC1679)を用い、このウイルスをMDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)で培養することによりウイルス感染価3.6×10PFU/mLの試験ウイルス懸濁液を得た。その後の試験操作はネコカリシウイルスに対する試験と同様に実施しプラーク測定法によりウイルス感染価を測定した。結果を表2に示した。
【0044】
【表2】
PFU=plaque forming units
【0045】
(ネコカリシウイルスに対する抗ウイルス組成物噴霧剤の抗ウイルス試験)
ネコカリシウイルスF-9株(Feline calicivirus、Strain:F-9 ATCC VR-782)をCRFK細胞(ネコ腎臓由来細胞)で培養することによりウイルス感染価5.3×10PFU/mLの試験ウイルス懸濁液を得た。この懸濁液1mLを10cm×10cmのポリエステル布に塗布し、これにトリガースプレーに充填した実施例8または比較例7を約1g噴霧した。3時間静置し、牛血清を終濃度10%添加したSCDLP培地10mLを用いてポリエステル布から洗い出しを行った。洗い出しを行った液についてプラーク測定法によりウイルス感染価を測定した。試料を噴霧せずに洗い出しを行った液をブランクとし、同様にウイルス感染価を測定した。結果を表3に示した。
【0046】
【表3】
【0047】
(抗ウイルス組成物加工布の抗ウイルス試験)
実施例1~3または比較例1~2をそれぞれイオン交換水で4倍に希釈した液に、5cm×5cmのポリエステル布(100g/m)をそれぞれ1分間浸漬し、絞り率200%で処理後、110℃の乾燥機にて15分間乾燥させた。この処理布0.4gを切り取り、抗ウイルス組成物噴霧剤の抗ウイルス試験にて使用したネコカリシウイルス懸濁液およびインフルエンザウイルス懸濁液をそれぞれ0.2mLを均一に付着させ、4時間静置した。牛血清を終濃度10%添加したSCDLP培地20mLを用いてポリエチエステル布から洗い出しを行い、この液についてプラーク測定法によりウイルス感染価を測定した。ポリエステル布のみから洗い出しを行った液をブランクとし、同様にウイルス感染価を測定した。また外観の変化を観察し、変色および着色のない場合を「○」、変色または着色した場合を「×」で表示した。結果を表4に示した。
【0048】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の抗ウイルス組成物を使用することにより、フィルター類、塗料または樹脂エマルジョン等のコーティング剤、繊維または繊維製品に加工することにより抗ウイルス性能を付与することができ、また本発明の抗ウイルス組成物を環境中の空間や表面に噴霧することによって環境中のウイルスを低減させることが可能となり、衛生環境の向上に寄与することができる。