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  • 特許-インスツルメントホルダー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】インスツルメントホルダー
(51)【国際特許分類】
   A61G 15/16 20060101AFI20230210BHJP
【FI】
A61G15/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019006958
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020115930
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】502080704
【氏名又は名称】長田電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 純
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-056316(JP,U)
【文献】実開昭49-127295(JP,U)
【文献】特開平07-024024(JP,A)
【文献】特開2010-137044(JP,A)
【文献】米国特許第04880381(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0040054(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102009052700(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用のインスツルメントを把持可能なアタッチメント部材と、該アタッチメント部材を介して前記インスツルメントを収納するホルダー部材と、を備えたインスツルメントホルダーであって、
前記アタッチメント部材は、該アタッチメント部材を前記ホルダー部材から着脱する際に摘まれる大径部分と、該大径部分に連なり、前記インスツルメントを把持可能に形成された小径部分と、を有した漏斗状に形成され、
前記ホルダー部材は、前記インスツルメントが突出して配置されるホルダー上面と、前記インスツルメントの一端に接続されたインスツルメントホースが引き出されるホルダー下面と、前記ホルダー上面と前記ホルダー下面との間を貫通し、前記アタッチメント部材の小径部分を受容する貫通孔部と、を有しており、
前記ホルダー部材は、前記アタッチメント部材の前記大径部分を前記ホルダー上面に対して上方に所定距離だけ離して配置させることを特徴とするインスツルメントホルダー。
【請求項2】
前記アタッチメント部材が、前記大径部分と前記小径部分の間に配置され、下方に向けて次第に縮径するすり鉢状部を有し、
該すり鉢状部の裏面に、下方に向けて突出して、前記アタッチメント部材の前記大径部分を前記ホルダー上面に対して上方に所定距離だけ離して配置させる脚部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインスツルメントホルダー。
【請求項3】
前記ホルダー上面は、前記すり鉢状部に対向する位置に凹み部を有し、
該凹み部の表面に、前記脚部を下方から支持する支持部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のインスツルメントホルダー。
【請求項4】
前記アタッチメント部材が、上下方向で開放された正面開口部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のインスツルメントホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスツルメントホルダーに関し、詳細には、歯科用のインスツルメントを把持可能なアタッチメント部材と、アタッチメント部材を介してインスツルメントを収納するホルダー部材と、を備えたインスツルメントホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療では、エアータービン、マイクロモーター、マルチシリンジ等の歯科用のインスツルメントが使用される。インスツルメントは例えば棒状に形成され、インスツルメントの一端には、エアー、水、電気等をインスツルメントに供給可能なインスツルメントホースが接続されている。例えば、特許文献1には、インスツルメントやインスツルメントホースを収納するインスツルメントホルダーの構造が開示されている。
【0003】
詳しくは、特許文献1に記載のインスツルメントホルダーは、ホルダー部材(インスツルメント支持部材)を有する。インスツルメントは、アタッチメント部材(筒状補助部材)を介してホルダー部材に収納される。アタッチメント部材は、大径部分と小径部分を有し、下方が細くなる漏斗状に形成される。アタッチメント部材の小径部分は、インスツルメントを把持可能に構成され、アタッチメント部材の大径部分は、例えばホルダー部材の上面の寸法と略同等の寸法で形成されている。
【0004】
アタッチメント部材をホルダー部材に取り付ける場合、例えば手の親指(母指、第一指ともいう)と人差し指(示指、第二指ともいう)でアタッチメント部材の大径部分の外周を摘み、アタッチメント部材をホルダー部材の上方に配置する。次いで、小径部分を先頭にしてホルダー部材に降し、大径部分がホルダー部材の上面に接触したら摘んだ指を離す。これにより、アタッチメント部材がホルダー部材に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-24024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のインスツルメントホルダーでは、アタッチメント部材は、ホルダー部材に着脱自在であるので、滅菌できるのに対し、ホルダー部材は、インスツルメントホルダーから外さないので、滅菌できないもの(不衛生域ともいう)である。
しかしながら、アタッチメント部材をホルダー部材に配置した場合、アタッチメント部材の大径部分を摘んだ手、詳しくは大径部分を摘んだ母指や示指が、不衛生域であるホルダー部材に接触して汚染することがある。よって、アタッチメント部材を摘んだ手の汚染を防止する構造が望まれる。
【0007】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、アタッチメント部材を摘んだ手の清潔状態を保ちやすくなり、衛生管理が容易になるインスツルメントホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、歯科用のインスツルメントを把持可能なアタッチメント部材と、該アタッチメント部材を介して前記インスツルメントを収納するホルダー部材と、を備えたインスツルメントホルダーであって、前記アタッチメント部材は、該アタッチメント部材を前記ホルダー部材から着脱する際に摘まれる大径部分と、該大径部分に連なり、前記インスツルメントを把持可能に形成された小径部分と、を有した漏斗状に形成され、前記ホルダー部材は、前記インスツルメントが突出して配置されるホルダー上面と、前記インスツルメントの一端に接続されたインスツルメントホースが引き出されるホルダー下面と、前記ホルダー上面と前記ホルダー下面との間を貫通し、前記アタッチメント部材の小径部分を受容する貫通孔部と、を有しており、前記ホルダー部材は、前記アタッチメント部材の前記大径部分を前記ホルダー上面に対して上方に所定距離だけ離して配置させることを特徴としたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記アタッチメント部材が、前記大径部分と前記小径部分の間に配置され、下方に向けて次第に縮径するすり鉢状部を有し、該すり鉢状部の裏面に、下方に向けて突出して、前記アタッチメント部材の前記大径部分を前記ホルダー上面に対して上方に所定距離だけ離して配置させる脚部が形成されていることを特徴としたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記ホルダー上面は、前記すり鉢状部に対向する位置に凹み部を有し、該凹み部の表面に、前記脚部を下方から支持する支持部が形成されていることを特徴としたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1の発明において、前記アタッチメント部材が、上下方向で開放された正面開口部を有することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アタッチメント部材の大径部分は、ホルダー上面に対して上方に所定距離だけ離して配置されるので、アタッチメント部材をホルダー部材に配置した場合に、この大径部分を摘んだ指がホルダー部材に接触しない。よって、アタッチメント部材を摘んだ手の清潔状態を保ちやすくなり、衛生管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態のインスツルメントホルダー付きのドクターテーブルを備えた歯科治療ユニットを説明する図である。
図2】インスツルメントホルダーの外観斜視図である。
図3】アタッチメント部材を装着したホルダー部材の斜視図である。
図4】アタッチメント部材とホルダー部材の分解斜視図である。
図5】アタッチメント部材を装着したホルダー部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明のインスツルメントホルダーについて説明する。図1は、本発明の一実施形態のインスツルメントホルダー付きのドクターテーブルを備えた歯科治療ユニットを説明する図である。
歯科治療ユニット1は歯科治療椅子2を有し、歯科治療椅子2の側方には、スピットン3が配置される。スピットン3には、無影灯4や、アシスタント用のホルダー5が設置されている。また、歯科治療ユニット1は、歯科治療椅子2の周辺に、フットスイッチ6や、ドクターテーブル20を備える。
【0015】
ドクターテーブル20は、上部と下部とを一端側で接続した正面視でコ字状に形成され、下部の裏面には例えば4個のコロ21が設置されている。これにより、ドクターテーブル20は歯科治療椅子2に対して移動可能である。ドクターテーブル20の上部にはテーブル面22が設けられ、種々の器具等が載置される。また、テーブル面22の裏側には、例えば縦置き式のインスツルメントホルダー30が設けられている。
【0016】
図2は、インスツルメントホルダーの外観斜視図であり、図3は、アタッチメント部材を装着したホルダー部材の斜視図である。
図2に示すように、インスツルメントホルダー30は、図示のXY軸方向にそれぞれ延びた平面視略L字状に形成され、X軸方向の一端に回動軸23を有する。回動軸23は、テーブル面22の裏側に回動自在に支持されており、インスツルメントホルダー30は、例えば図示のZ軸回り(水平方向)に回動可能である。
【0017】
インスツルメントホルダー30には、例えば5個の縦置きホルダー31が、図示のY軸に沿って並設される。なお、縦置きホルダー31が本発明のホルダー部材に相当する。
図2,3に示すように、縦置きホルダー31には、アタッチメント部材50が取り付けられる。インスツルメントTは、その長手方向を図示のZ軸方向(上下方向)に向けた姿勢でアタッチメント部材50に把持され、縦置きホルダー31に収納される。その際、インスツルメントホースHは縦置きホルダー31の下方に引き出される。
【0018】
図4は、アタッチメント部材とホルダー部材の分解斜視図であり、図5は、アタッチメント部材を装着したホルダー部材の側面図である。
アタッチメント部材50は縦置きホルダー31に着脱自在に構成される。具体的には、アタッチメント部材50は、上方が大径で下方が小径の漏斗状に形成されており、下方に向けて次第に縮径したすり鉢状部54を有する。
【0019】
すり鉢状部54の上端は大径筒部53に連なり、大径筒部53の上端にはカラー部51が形成されている。カラー部51は、後述するホルダー上面32の幅(図3のY軸方向の長さ)と略同等の幅に形成される。なお、カラー部51が本発明の大径部分に相当する。また、カラー部51には、例えばY軸方向で対向する位置に突起52がそれぞれ形成されており、カラー部51を母指と示指で摘まむ際に例えば目印として機能する。
【0020】
一方、すり鉢状部54の下端は、インスツルメントTを把持可能に形成された収納筒部56を有する。なお、収納筒部56が本発明の小径部分に相当する。
図4に示すように、すり鉢状部54の裏面には、下方に向けて突出する脚部55が形成されている。脚部55は対向する位置、例えば、突起52の下方にそれぞれ設けられている。
【0021】
また、図4に示すように、アタッチメント部材50には、カラー部51から収納筒部56までを上下方向で開放した正面開口部57が形成されている。このため、インスツルメントホースHをアタッチメント部材50の正面側からアタッチメント部材50内に容易に配置できる。また、カラー部51を摘んで側方から加圧した場合、大径筒部53、すり鉢状部54が縮径しやすくなるので、縦置きホルダー31に対する着脱が容易になる。よって、アタッチメント部材50のメンテナンスが容易になる。
【0022】
これに対し、縦置きホルダー31は、図3のZ軸方向で離間したホルダー上面32とホルダー下面36とを有し、ホルダー上面32とホルダー下面36とは、Z軸方向に延びたホルダー側面37で連なっている。
ホルダー上面32の後方(図3のX軸の負方向)には、インスツルメントホルダー30に回動自在に支持される軸孔35が形成されている。これにより、縦置きホルダー31は、図3に示すY軸回りに回動可能になる。
【0023】
図4に示すように、ホルダー上面32の前方には、アタッチメント部材50のすり鉢状部54を受容可能な凹み部33が形成される。凹み部33には、アタッチメント部材50の脚部55に対応する位置に、支持部34が形成されている。支持部34は、例えば有底の穴で形成され、脚部55を下方から支持する。これにより、縦置きホルダー31に対するアタッチメント部材50の位置決めが容易になる。
【0024】
ホルダー下面36は、縦置きホルダー31の前方が後方よりも競り上がった段付き形状に形成される。ホルダー上面32の凹み部33とホルダー下面36の前方とは、図3に示すZ軸方向で貫通した貫通孔部38で連通している。貫通孔部38には、アタッチメント部材50の収納筒部56を受容可能である。
縦置きホルダー31には、凹み部33から貫通孔部38までを上下方向で開放した正面開口部39が形成されている。このため、インスツルメントホースHを縦置きホルダー31の正面側から縦置きホルダー31内に容易に配置できる。
【0025】
アタッチメント部材50(滅菌済み)を縦置きホルダー31(滅菌不可)に取り付ける場合、グローブを装着した手の母指と示指でカラー部51の突起52を外側から摘み、アタッチメント部材50を縦置きホルダー31の上方に配置する。次いで、摘んだカラー部51を中央に向けて押圧すると、カラー部51や、大径筒部53、すり鉢状部54が撓んで縮径する。この状態で、収納筒部56の下端を先頭にして縦置きホルダー31に降ろす。
【0026】
収納筒部56が縦置きホルダー31の貫通孔部38に入り、すり鉢状部54の脚部55が凹み部33の支持部34に接触したら摘んだ指をカラー部51から離すと、カラー部51等が拡径し、脚部55が支持部34に弾性的に保持される。
これにより、図5に示すように、アタッチメント部材50の収納筒部56が縦置きホルダー31のホルダー上面32よりも下方に配置されるとともに、アタッチメント部材50のカラー部51は、ホルダー上面32に対して上方に所定距離(例えば大径筒部53の高さ)だけ離して配置される。なお、ホルダー上面32に対するカラー部51の位置は、大径筒部53の高さや、脚部55の長さ、支持部34の深さを調整して設定できる。
【0027】
続いて、例えばインスツルメントTを持ち上げて、縦置きホルダー31の上方に配置し、インスツルメントホースHを収納筒部56内に配置する。そして、インスツルメントTの下端を先頭にして縦置きホルダー31に降ろし、アタッチメント部材50に上方から差し込むと、インスツルメントTは、その途中位置でアタッチメント部材50に把持され、その先端がホルダー上面32から突出する。インスツルメントホースHは縦置きホルダー31から下方に向けて引き出される。
【0028】
このように、アタッチメント部材50のカラー部51は、ホルダー上面32に対して上方に所定距離だけ離して配置されるので、カラー部51は、仮に、ホルダー上面32の幅と略同等の幅で形成されていたとしても、アタッチメント部材50を縦置きホルダー31に配置した場合に、アタッチメント部材50を摘んだ手が縦置きホルダー31に接触しない。より具体的には、カラー部51を摘んで縮径された状態(摘んだ母指から示指までの距離が短くなった状態)で、収納筒部56を先頭にして縦置きホルダー31に降ろしても、カラー部51を摘んだ母指や示指が、ホルダー上面32やホルダー側面37に接触しない。よって、アタッチメント部材50を摘んだ手の清潔状態を保ちやすくなり、衛生管理が容易になる。
【0029】
また、大径筒部53や、脚部55、支持部34が、カラー部51とホルダー上面32との間に、母指や示指を縦置きホルダー31に接触させない緩衝空間を形成させるので、アタッチメント部材50を摘んだ手の清潔状態を確実に保つことができる。
【0030】
なお、上記実施例では、アタッチメント部材50に脚部55を設け、縦置きホルダー31に支持部34を設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこの例に限定されない。例えば、縦置きホルダーに上方に向けて突出した脚部を設け、アタッチメント部材に上方に向けて凹んだ支持部を設けてもよい。
また、インスツルメントホルダー30をドクターテーブル20に設けた例を挙げて説明したが、本発明はアシスタント用のホルダー5にも適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…歯科治療ユニット、2…歯科治療椅子、3…スピットン、4…無影灯、5…アシスタント用のホルダー、6…フットスイッチ、20…ドクターテーブル、21…コロ、22…テーブル面、23…回動軸、30…インスツルメントホルダー、31…縦置きホルダー、32…ホルダー上面、33…凹み部、34…支持部、35…軸孔、36…ホルダー下面、37…ホルダー側面、38…貫通孔部、39…正面開口部、50…アタッチメント部材、51…カラー部、52…突起、53…大径筒部、54…すり鉢状部、55…脚部、56…収納筒部、57…正面開口部。
図1
図2
図3
図4
図5