(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】薬液回路、注入システム、及び閉鎖機構
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20230210BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
A61M5/168 506
A61M5/14 510
(21)【出願番号】P 2019509864
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2018012344
(87)【国際公開番号】W WO2018181270
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2017062582
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391039313
【氏名又は名称】株式会社根本杏林堂
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
(72)【発明者】
【氏名】吹越 由美子
(72)【発明者】
【氏名】川辺 朋之
(72)【発明者】
【氏名】平野 進
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-510677(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0120505(US,A1)
【文献】特開2009-247404(JP,A)
【文献】特開2004-357985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1薬液が流れる第1ベースラインと、
第2薬液が流れる第2ベースラインと、
前記第1ベースライン及び前記第2ベースラインに接続される被験者ラインと、
内部流路を閉鎖する第1閉鎖機構を有する第1閉鎖部とを備え、
前記第1閉鎖機構は、それぞれ流路を有する第1移動部材及び第2移動部材と、前記第1移動部材及び前記第2移動部材を摺動可能に収容する第1ハウジングとを備えており、前記第1移動部材の前記流路を開放した後に、前記第2移動部材の前記流路が開放されるように構成されている、薬液回路。
【請求項2】
前記第1閉鎖機構は、一対のOリングを有しており、
前記第1移動部材の前記流路は、前記一対のOリングの間に形成されている、請求項1に記載の薬液回路。
【請求項3】
前記第1閉鎖機構は、前記第1移動部材の前記流路の周囲を封止するスリーブを備えている、請求項1に記載の薬液回路。
【請求項4】
前記第1閉鎖機構は、一対のOリングを有しており、
前記第1移動部材の前記流路は、前記一対のOリングの間に形成されており、
前記スリーブは、前記一対のOリングの間に配置されている、請求項3に記載の薬液回路。
【請求項5】
前記第1移動部材及び前記第2移動部材の摺動方向において、前記第1移動部材の前記流路は、前記第2移動部材の前記流路よりも大きい、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薬液回路。
【請求項6】
前記第1移動部材及び前記第2移動部材は、駆動部に押圧されるヘッドをそれぞれ有しており、
前記第1移動部材の前記ヘッドは、前記第2移動部材の前記ヘッドよりも長い、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薬液回路。
【請求項7】
前記第1移動部材及び前記第2移動部材は、駆動部に押圧されるヘッドをそれぞれ有しており、
前記第1移動部材における前記ヘッドから前記流路までの距離は、前記第2移動部材における前記ヘッドから前記流路までの距離よりも長い、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薬液回路。
【請求項8】
前記第1移動部材及び前記第2移動部材は、駆動部に押圧されるヘッドをそれぞれ有しており、
前記駆動部は、前記第1移動部材の前記ヘッドを、前記第2移動部材の前記ヘッドよりも先に押圧する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薬液回路。
【請求項9】
前記第1移動部材及び前記第2移動部材は、駆動部に押圧されるヘッドをそれぞれ有しており、
前記駆動部は、前記第1移動部材の前記ヘッドを、前記第2移動部材の前記ヘッドよりも速く移動させる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薬液回路。
【請求項10】
トランスデューサに接続されると共に、内部流路を閉鎖する第2閉鎖機構を有する第2閉鎖部をさらに備え、
前記第2閉鎖機構は、流路を有する第3移動部材と、前記第3移動部材を摺動可能に収容する第2ハウジングとを備えており、
前記第1閉鎖部は、前記被験者ラインに配置されている、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の薬液回路。
【請求項11】
前記第1閉鎖機構は、前記第1移動部材及び前記第2移動部材の摺動方向における前記第1ハウジングの端部に配置されたキャップを有している、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の薬液回路。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の薬液回路と、
第1薬液及び第2薬液を注入する注入装置とを備えている、注入システム。
【請求項13】
それぞれ流路を有する第1移動部材及び第2移動部材と、
前記第1移動部材及び前記第2移動部材を摺動可能に収容するハウジングとを備えており、
前記ハウジングは、前記第1移動部材と前記第2移動部材との間に孔部が設けられており、前記孔部の一方の端部は前記第1移動部材の前記流路と連通することができ、前記孔部の他方の端部は前記第2移動部材の前記流路と連通することができるように構成されており、
前記第1移動部材及び前記第2移動部材の摺動方向において、前記第1移動部材の前記流路は、前記第2移動部材の前記流路よりも大きい、閉鎖機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を閉鎖する閉鎖部を備えた薬液回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1シリンジに連結される第1チューブと第2シリンジに連結される第2チューブとを個々に遮断する第1及び第2遮断機構が記載されている。この第1遮断機構は第1保持部材と第1押圧部材とを有しており、第2遮断機構は第2保持部材と第2押圧部材とを有している。また、第1保持部材は第1チューブを介して第1押圧部材に対向して配置されており、第2保持部材は第2チューブを介して第2押圧部材に対向して配置されている。そして、第1シリンジから被験者に造影剤を注入する場合は、第2遮断機構によって第2チューブを遮断する。同様に、第2シリンジから被験者に生理食塩水を注入する場合は、第1遮断機構によって第1チューブを遮断する。
【0003】
また、特許文献2には、可撓性チューブを押し潰して流路を閉塞するクランピング機構が記載されている。このクランピング機構は、チューブを押圧する一対のクランプ部材を有しており、駆動源からの駆動力によってクランプ部材が動かされて、可撓性チューブを押し潰す。さらに、特許文献2には、チューブに当接する角部を有するクランプ部材、当該角部と略相補的なV型の溝を有するクランプ部材、及び曲面状に突出した突出部を有するクランプ部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-065736号公報
【文献】国際公開第2014/104338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の薬液回路においては、チューブ内を逆流する被験者の血液(逆血)が閉鎖部よりも上流側の領域に到達することを防止するための措置が取られている。ここで、近年は、血液の逆流をより確実に防止でき且つより容易に注入装置に装着可能である薬液回路が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一例としての薬液回路は、流路を閉鎖する閉鎖部と、第1薬液が流れる第1ベースラインと、第2薬液が流れる第2ベースラインと、前記第1ベースライン及び前記第2ベースラインに接続される被験者ラインとを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の他の例としての薬液回路は、第1薬液が流れる第1ベースラインと、第2薬液が流れる第2ベースラインと、前記第1ベースライン及び前記第2ベースラインに接続される被験者ラインと、内部流路を閉鎖する第1閉鎖機構を有する第1閉鎖部とを備え、前記第1閉鎖機構は、それぞれ流路を有する第1移動部材及び第2移動部材と、前記第1移動部材及び前記第2移動部材を摺動可能に収容する第1ハウジングとを備えており、前記第1移動部材の前記流路を開放した後に、前記第2移動部材の前記流路が開放されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の例としての注入システムは、上記薬液回路と、第1薬液及び第2薬液を注入する注入装置とを備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の例としての閉鎖機構は、それぞれ流路を有する第1移動部材及び第2移動部材と、前記第1移動部材及び前記第2移動部材を摺動可能に収容するハウジングとを備えており、前記ハウジングは、前記第1移動部材と前記第2移動部材との間に孔部が設けられており、前記孔部の一方の端部は前記第1移動部材の前記流路と連通することができ、前記孔部の他方の端部は前記第2移動部材の前記流路と連通することができるように構成されており、前記第1移動部材及び前記第2移動部材の摺動方向において、前記第1移動部材の流路は、前記第2移動部材の流路よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
これにより、血液の逆流をより確実に防止でき且つより容易に注入装置に装着可能である薬液回路を提供できる。
【0011】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態の薬液回路の概略図である。
【
図11】本発明の第2実施形態の使い捨て回路の概略図である。
【
図15】Aは閉鎖状態の第1閉鎖機構の概略断面図であり、Bは開放状態の第1閉鎖機構の概略断面図である。
【
図17】第1及び第2ピストンの概略斜視図である。
【
図20】Aは閉鎖状態の第2閉鎖機構の概略断面図であり、Bは開放状態の第2閉鎖機構の概略断面図である。
【
図21】ローテータ付コネクターの概略分解図である。
【
図22】ローテータ付コネクターの概略断面図である。
【
図23】第3オスコネクターに接続された液溜りキャップの概略図である。
【
図25】本発明の第3実施形態の薬液回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態において説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において耐圧とは、例えば6.895×10
5
Pa(100psi)以上の高圧、特に6.895×10
6
Pa(1000psi)以上の超高圧に耐えることができる性質を意味する。また、本明細書における注入装置の説明では、シリンジが搭載される側が前側に対応し、その反対側が後側に対応する。また、特に言及しない限り、上流側は注入装置側に対応し、下流側は被験者側に対応する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、例えば心臓カテーテル検査に使用される薬液回路500の概略図である。この薬液回路500は第1閉鎖部100a及び第2閉鎖部100bを備えている。ただし、説明の便宜上、第1閉鎖部100aの第1閉鎖機構120aを動作させる第1駆動部130aと、第2閉鎖部100bの第2閉鎖機構120bを動作させる第2駆動部130bとは、概略的に図示している。
【0015】
薬液回路500は、造影剤等の医療用の第1薬液と生理食塩水等の医療用の第2薬液とを、それぞれ薬液供給源からシリンジ内に吸引すると共に、被写体である被験者に注入する際に用いられる。この薬液回路500には、第1薬液供給源としての造影剤チャンバ601と、第2薬液供給源としての生理食塩水チャンバ602とが接続される。
【0016】
また、薬液回路500は、造影剤チャンバ601に接続される造影剤ライン501と、生理食塩水チャンバ602に接続される生理食塩水ライン502とを備えている。造影剤ライン501は、造影剤チャンバ601にドリップチャンバー付スパイク針607を介して接続される。生理食塩水ライン502は、生理食塩水チャンバ602にドリップチャンバー付スパイク針607を介して接続される。代替的に、造影剤ライン501及び生理食塩水ライン502のそれぞれは、造影剤チャンバ601及び生理食塩水チャンバ602に、ドリップチャンバー及びコネクターを介して接続してもよい。また、造影剤ライン501及び生理食塩水ライン502は、薬液が流れるチューブを有している。ここでラインとは、液体が流れる流路であり、液体が流れる各部材(例えば、各種チューブ、T字コネクター、オスコネクター、メスコネクター、一方弁、接続管、ミキシングデバイス、ストップコック、ドリップチャンバー付スパイク針、閉鎖機構、エア検出部、及びローテータ)を備える。
【0017】
造影剤チャンバ601は、例えば、造影剤が充填されたボトル状の容器であり、不図示の吊り具(例えば、注入装置608に取り付けられた吊り具)に吊り下げられて使用される。この造影剤チャンバ601から流れ出た造影剤は、ドリップチャンバー付スパイク針607のドリップチャンバー内に滴下して、造影剤ライン501を流れる。生理食塩水チャンバ602は、例えば、生理食塩水が充填されたバッグ状の容器であり、不図示の吊り具に吊り下げられて使用される。この生理食塩水チャンバ602から流れ出た生理食塩水は、ドリップチャンバー付スパイク針607のドリップチャンバー内に滴下して、生理食塩水ライン502を流れる。
【0018】
さらに、薬液回路500には、造影剤チャンバ601及び生理食塩水チャンバ602から薬液を吸引すると共に、被験者に薬液を注入する注入装置608が接続される。この注入装置608には、第1シリンジとしての造影剤シリンジ604と、第2シリンジとしての生理食塩水シリンジ605とが搭載される。造影剤シリンジ604及び生理食塩水シリンジ605は、プランジャー(不図示)が取り付けられた状態でシリンジ保護ケースに固定されている。そして、シリンジ保護ケースは、シリンジクランパーによって注入装置608に固定されている。
【0019】
注入装置608は、シリンジのプランジャーと係合するプレッサー(不図示)を有している。そして、注入装置608は、プランジャーを前方向又は後方向に移動する(前進又は後退させる)。また、注入装置608は、操作部609を有している。この操作部609には、前進ボタン、後退ボタン、スタートボタン、及びプライミングボタン等の操作ボタンが設けられている。また、注入装置608は、床面に置かれたキャスタースタンドに回動自在に接続される。これにより、注入装置608の前側を床面に向ける姿勢(下向き姿勢)と、注入装置608の後側を床面に向ける姿勢(上向き姿勢)とに注入装置608を回動できる。さらに、注入装置608は、傾斜センサーを備えていてもよい。この傾斜センサーが、注入装置608が下向き姿勢であることを検知した場合、プライミング及び薬液の注入が許可される。また、傾斜センサーが、注入装置608が上向き姿勢であることを検知した場合、薬液の吸引が許可される。好ましくは、注入装置608は、左右方向に回動できるようにキャスタースタンドに接続される。代替的に、注入装置608は、天井から天吊するように天吊部材に接続することもでき、又はカテテーブル若しくはカテレールに接続することもできる。
【0020】
さらに、注入装置608は、制御装置(不図示)に有線又は無線接続されており、例えば、ヘッドケーブルを介して制御装置に接続されている。この制御装置は、タッチパネルを備えると共に、注入装置608のコントローラーとして機能する。また、制御装置には、動作パターン(注入プロトコル)のデータ及び薬液のデータが予め記憶されている。被験者に薬液を注入する場合、オペレーターは、タッチパネルを操作して、注入速度、注入量、注入時間及び体重等の被験者の身体的データと、ヨード量及び薬液の種類等の薬液データとを制御装置に入力する。
【0021】
制御装置は、入力されたデータと予め記憶されているデータに応じて、最適な注入条件を算出する。そして、制御装置は、算出された注入条件に基づいて、被験者に注入する薬液の量を含む注入プロトコルを決定する。その後、オペレーターの操作に従い、注入装置608は、決定された注入プロトコルに応じて薬液を注入する。代替的に、制御装置は、注入プロトコル及びその他データを、外部の記憶媒体から取得することもできる。
【0022】
さらに、薬液回路500は、注入装置608と被験者ライン503との間で、第1薬液としての造影剤が流れる第1ベースライン508を備えている。この第1ベースライン508は、第1チューブ504と、第1チューブ504に接続される第1上流チューブ506aと、第1上流チューブ506aの下流側のオスコネクターに接続される第1下流チューブ507aとを有している。そして、第1上流チューブ506aは、第1チューブ504及び造影剤ライン501に接続される。この第1チューブ504の上流側のメスコネクターは、造影剤シリンジ604の先端、又は造影剤シリンジ604に接続されたチューブ(不図示)に接続される。また、第1チューブ504は、第1T字コネクターT1によって、第1上流チューブ506a及び造影剤ライン501に接続されている。
【0023】
また、薬液回路500は、注入装置608と被験者ライン503との間で、第2薬液としての生理食塩水が流れる第2ベースライン509を備えている。この第2ベースライン509は、第2チューブ505と、第2チューブ505に接続される第2上流チューブ506bと、第2上流チューブ506bの下流側のオスコネクターに接続される第2下流チューブ507bとを有している。そして、第2上流チューブ506bは、第2チューブ505及び生理食塩水ライン502に接続される。この第2チューブ505の上流側のメスコネクターは、生理食塩水シリンジ605の先端、又は生理食塩水シリンジ605に接続されたチューブ(不図示)に接続されている。また、第2チューブ505は、第2T字コネクターT2によって、第2上流チューブ506b及び生理食塩水ライン502に接続されている。
【0024】
また、薬液回路500は、第1ベースライン508及び第2ベースライン509に接続される被験者ライン503を備えている。この被験者ライン503は、上流側から順に、ミキシングデバイスSと、第1閉鎖部100aと、エア検出部400と、第3下流チューブ507c(例えば耐圧チューブ)と、ストップコックCとを有している。そして、第1閉鎖部100aは、第3T字コネクターT3によって、エア検出部400及び第2閉鎖部100bに接続されている。また、エア検出部400は、接続管を介して第3下流チューブ507cに接続されている。そして、第3下流チューブ507cには、ローテータを介してストップコックC又は三方活栓が取り付けられている。
【0025】
被験者ライン503は、ストップコックCを介して、被験者に穿刺又は挿入されるカテーテル(不図示)に接続される。このカテーテルの先端は、例えば、心臓カテーテル検査においては冠動脈等に移送される。そして、薬液は、カテーテルの先端から冠動脈へ注入される。また、被験者ライン503は、ミキシングデバイスS(例えば、株式会社根本杏林堂製の「SPIRAL FLOW」(登録商標))を介して第1ベースライン508及び第2ベースライン509に接続される。代替的に、T字コネクターを介して被験者ライン503を接続することもできる。
【0026】
さらに、薬液回路500は、トランスデューサラインとしての第2閉鎖部100bを備えている。この第2閉鎖部100bは、第3T字コネクターT3を介して被験者ライン503及び第1閉鎖部100aに接続される。また、第2閉鎖部100bは、トランスデューサ603に接続される。このトランスデューサ603は、被験者の血圧を検出して脈をモニタリングするために、被験者の脈の波形を表示するディスプレイ(不図示)に接続されている。
【0027】
被験者ライン503、第2閉鎖部100b、第1ベースライン508及び第2ベースライン509は、少なくともその一部が使い捨て可能に構成されている。例えば、第1ベースライン508の第1下流チューブ507aは使い捨て可能であり、第1一方弁V1を介して第1上流チューブ506aに取り外し可能に接続されている。また、第2ベースライン509の第2下流チューブ507bも使い捨て可能であり、第2一方弁V2を介して第2上流チューブ506bに取り外し可能に接続されている。これにより、薬液回路500における、第1上流チューブ506aよりも下流側に位置する部分、及び第2上流チューブ506bよりも下流側に位置する部分は、使い捨て可能に構成することができる。
【0028】
さらに、被験者ライン503は、第1ベースライン508及び第2ベースライン509に取り外し可能に接続することができる。また、第2閉鎖部100bは、被験者ライン503と取り外し可能に接続することができる。これにより、被験者ライン503及び第2閉鎖部100bをそれぞれ使い捨て可能に構成することができる。ただし、第1駆動部130a及び第2駆動部130bは再使用される。
【0029】
第1チューブ504、第1上流チューブ506a、第1下流チューブ507a、第2チューブ505、第2上流チューブ506b、第2下流チューブ507b、及び第3下流チューブ507cは、耐圧チューブである。この耐圧チューブは、例えば、ポリアミド製の内層と、ポリウレタン製の外層とを有する。また、第1閉鎖部100a及び第2閉鎖部100bは、耐圧ブレードチューブ又は耐圧チューブを有している。この耐圧ブレードチューブは、8.274×10
6
Pa(1200psi)の高圧に耐えることができることが好ましく、例えば、ポリエステル製のブレードが編みこまれたポリウレタン製の内層及び外層を有する。なお、第1チューブ504、第1上流チューブ506a、第1下流チューブ507a、第2チューブ505、第2上流チューブ506b、第2下流チューブ507b、及び第3下流チューブ507cは、耐圧ブレードチューブであってもよい。
【0030】
薬液回路500は、第1一方弁V1、第2一方弁V2、第3一方弁V3、及び第4一方弁V4を備えている。これらの各一方弁は、いずれも耐圧一方弁であり、下流方向への流れを許容し上流方向への流れを遮断する。
図1においては、各一方弁に付した三角マークによって薬液を遮断する方向を示しており、三角形の先端は薬液が流れない方向を指し示している。例えば、造影剤ライン501に接続された第3一方弁V3に付された三角形は、造影剤が造影剤チャンバ601(上流方向)に向かって流れないことを意味している。
【0031】
第1一方弁V1は、第1下流チューブ507aに取り付けられている。そして、第1下流チューブ507aは、第1一方弁V1を介して第1上流チューブ506aに接続される。この第1一方弁V1は、被験者ライン503に向かう方向の流れを許容すると共に、造影剤シリンジ604に向かう方向の流れを遮断する。
【0032】
第2一方弁V2は、第2下流チューブ507bに取り付けられている。そして、第2下流チューブ507bは、第2一方弁V2を介して第2上流チューブ506bに接続される。この第2一方弁V2は、被験者ライン503に向かう方向の流れを許容すると共に、生理食塩水シリンジ605に向かう方向の流れを遮断する。
【0033】
第3一方弁V3は、第1T字コネクターT1に取り付けられている。そのため、造影剤ライン501は、第3一方弁V3及び第1T字コネクターT1を介して第1チューブ504に接続されている。この第3一方弁V3は、造影剤シリンジ604に向かう方向の流れと第1上流チューブ506aに向かう方向の流れとを許容すると共に、造影剤チャンバ601に向かう方向の流れを遮断する。
【0034】
第4一方弁V4は、第2T字コネクターT2に取り付けられている。そのため、生理食塩水ライン502は、第4一方弁V4及び第2T字コネクターT2を介して第2チューブ505に接続されている。この第4一方弁V4は、生理食塩水シリンジ605に向かう方向の流れと第2上流チューブ506bに向かう方向の流れとを許容すると共に、生理食塩水チャンバ602に向かう方向の流れを遮断する。
【0035】
これらの一方弁により、造影剤が第1ベースライン508の上流側、すなわち造影剤シリンジ604に向かって吸引された場合は、造影剤が造影剤ライン501から造影剤シリンジ604に向かって流れる。造影剤が第1ベースライン508の上流側からその下流側、すなわち被験者ライン503に向かって排出された場合は、造影剤が造影剤ライン501に逆流しない。
【0036】
生理食塩水が第2ベースライン509の上流側、すなわち生理食塩水シリンジ605に向かって吸引された場合は、生理食塩水が生理食塩水ライン502から生理食塩水シリンジ605に向かって流れる。生理食塩水が第2ベースライン509の上流側からその下流側、すなわち被験者ライン503に向かって排出された場合は、生理食塩水が生理食塩水ライン502に逆流しない。
【0037】
さらに、薬液回路500は、回路内の流路を閉鎖する閉鎖部として、第1閉鎖部100a及び第2閉鎖部100bを備えている。この閉鎖部は、チューブ対(第1チューブ対110a及び第2チューブ対110b)と、流路を閉鎖する閉鎖機構(第1閉鎖機構120a及び第2閉鎖機構120b)と、当該閉鎖機構を作動させる駆動部(第1駆動部130a及び第2駆動部130b)とを有している。そして、閉鎖部は、チューブ対に接続された閉鎖機構の内部流路を閉鎖できる。駆動部は、外部のコントローラーに無線又は有線接続されており、コントローラーからの制御信号に応じて動作し、閉鎖機構を動作させて内部流路を閉鎖する。以下の説明においては、注入装置608がコントローラーとして機能する。
【0038】
薬液回路500は、トランスデューサ603及び注入装置608を備える注入システムの一部として機能する。この注入システムによれば、造影剤及び生理食塩水の注入を自動で行うことができる。以下、薬液回路500の使用方法について説明する。なお、以下の説明において注入装置608は、二つのプレッサーを別々に前進又は後退させることもできるし、同時に前進又は後退させることもできる。
【0039】
[エア抜き]
薬液の注入前には、エア抜きを目的としたプライミングが行われる。プライミングは、オペレーターが注入装置608の操作部609のプライミングボタンを押し下げることによって開始される。代替的に、プライミングは、所定のタイミングで注入装置608が自動で行ってもよい。さらに、オペレーターは、所定の操作を行うことにより手動でプライミングを行うこともできる。
【0040】
プライミングを行う前に、オペレーターはストップコックCを開いて被験者ライン503に接続されているカテーテル内のエア抜きが可能な状態にする。そして、プライミングが開始されると、注入装置608は、造影剤シリンジ604のプランジャーを前進させ、造影剤シリンジ604から造影剤を排出する。これにより、一例として造影剤が、第1チューブ504、第1上流チューブ506a、及び第1下流チューブ507a(第1ベースライン508)を満たす。代替的に、注入装置608は、第1チューブ504から被験者ライン503までを造影剤で満たしてもよい。また、注入装置608は、造影剤の排出前に造影剤チャンバ601内の造影剤を吸引してもよい。この場合、注入装置608は、造影剤シリンジ604のプランジャーを後退させる。これにより、造影剤ライン501及び第1チューブ504を介して造影剤シリンジ604内に造影剤が充填される。ただし、造影剤チャンバ601内に十分な造影剤がないことをエアセンサー606が検知した場合、造影剤の吸引は禁止される。
【0041】
次いで、注入装置608は、生理食塩水シリンジ605のプランジャーを前進させ、生理食塩水シリンジ605から生理食塩水を排出する。これにより、生理食塩水が、第2チューブ505、第2上流チューブ506b、及び第2下流チューブ507b(第2ベースライン509)と、第2閉鎖部100b及び被験者ライン503とを満たす。代替的に、注入装置608は、第2ベースライン509のみを生理食塩水で満たしてもよい。また、注入装置608は、生理食塩水の排出前に生理食塩水チャンバ602内の生理食塩水を吸引してもよい。この場合、注入装置608は、生理食塩水シリンジ605のプランジャーを後退させる。これにより、生理食塩水ライン502及び第2チューブ505を介して生理食塩水シリンジ605内に生理食塩水が充填される。ただし、生理食塩水チャンバ602内に十分な生理食塩水がないことをエアセンサー606が検知した場合、生理食塩水の吸引は禁止される。
【0042】
このプライミングにより、薬液回路500全体が薬液で満たされ、エアが抜かれた状態となる。注入装置608は、造影剤を先に排出する代わりに、造影剤及び生理食塩水を同時に排出してプライミングを行ってもよい。また、注入装置608は、生理食塩水を排出した後に造影剤を排出してプライミングを行ってもよい。
【0043】
[薬液の注入]
注入装置608の制御装置は、タッチパネルを有しており、薬液の量及び注入プロトコルが決定すると、所定のデータ又はグラフをタッチパネルに表示させる。オペレーターは、タッチパネルの表示を確認し、薬液の注入を開始するならばタッチパネルの決定ボタン又は操作部609のスタートボタンを押す。すると、制御装置が注入装置608に薬液の注入指令を送信する。
【0044】
薬液の注入前に、注入装置608は、造影剤又は生理食塩水がトランスデューサ603に向かって流れないように、第2閉鎖部100bを制御して内部流路を閉鎖する。このとき、第1閉鎖部100aは流路を閉鎖しない開放状態である。必要であれば注入装置608は、第1閉鎖部100aを制御して内部流路を開放する。
【0045】
その後、注入装置608は、造影剤シリンジ604のプランジャーを前進させて、造影剤シリンジ604から造影剤を排出する。このとき、第3一方弁V3は、造影剤チャンバ601に向かう方向の流れを遮断する。そのため、造影剤は、第1チューブ504、第1上流チューブ506a、及び第1下流チューブ507a(第1ベースライン508)を介してミキシングデバイスSに流入する。
【0046】
さらに、造影剤と生理食塩水とを同時に注入する場合、注入装置608は、生理食塩水シリンジ605のプランジャーを前進させて、生理食塩水シリンジ605から生理食塩水を排出する。このとき、第4一方弁V4は、生理食塩水チャンバ602に向かう方向の流れを遮断する。そのため、生理食塩水は、第2チューブ505、第2上流チューブ506b、及び第2下流チューブ507b(第2ベースライン509)を介してミキシングデバイスSに流入する。これにより、造影剤及び生理食塩水は、ミキシングデバイスSに流入し、ミキシングデバイスS内において混合される。その後、造影剤及び生理食塩水の混合薬液は、被験者ライン503及びカテーテルを介して所定の撮像部位(例えば、被験者の冠動脈)へと注入される。
【0047】
また、薬液を注入する場合、注入装置608は、薬液がトランスデューサ603に向かって流れないように、第2閉鎖部100bを制御して内部流路を閉鎖する。このとき、第1閉鎖部100aは開放状態である。必要であれば注入装置608は、第1閉鎖部100aを制御して内部流路を開放する。そして、注入装置608は、造影剤シリンジ604のプランジャーを前進させて、造影剤シリンジ604から造影剤を排出する。
【0048】
[フラッシュ]
造影剤の注入が完了した後、注入装置608は、生理食塩水シリンジ605のプランジャーを前進させて、生理食塩水シリンジ605から生理食塩水を排出する。このとき、第2閉鎖部100bは閉鎖状態である。必要であれば注入装置608は、第2閉鎖部100bを制御して内部流路を閉鎖する。そして、生理食塩水は、第2チューブ505、第2上流チューブ506b、及び第2下流チューブ507b(第2ベースライン509)と、被験者ライン503及びカテーテルとを介して所定の撮像部位へと注入される。これにより、生理食塩水による造影剤のフラッシュが行われる。
【0049】
[血圧の検出]
その後、注入装置608は、第1閉鎖部100aを制御して内部流路を閉鎖する。一例として、注入装置608は、薬液回路500内の残圧が十分に低下した後に内部流路を閉鎖する。同時に、注入装置608は、第2閉鎖部100bを制御して内部流路を開放する。これにより、トランスデューサ603よりも被験者側の加圧状態が解除される。そして、被験者ライン503及び第2閉鎖部100bを通じて血圧ルートが確立される。その結果、トランスデューサ603が血圧を検出できる状態となる。なお、トランスデューサ603に代えて、国際公開第2017/038575号に記載の流量センサーを用いてもよい。
【0050】
このとき、第1閉鎖部100aによって、第1閉鎖部100aよりも上流側に向かう液体の流れは、遮断されている。そのため、第1閉鎖部100aよりも上流側の領域にまで逆流することが防止できる。また、第1一方弁V1及び第2一方弁V2よりも上流側に向かう液体の流れは、両一方弁によって遮断されている。これにより、第1一方弁V1及び第2一方弁V2よりも上流側の回路に血液が流れることを、より確実に防止できる。
【0051】
[薬液の吸引]
造影剤シリンジ604内の造影剤の量が所定量よりも少なくなった場合、注入装置608は造影剤の吸引を行う。すなわち、注入装置608は、造影剤シリンジ604のプランジャーを後退させることで、造影剤チャンバ601から造影剤シリンジ604に向かって造影剤を吸引する。このとき、第3一方弁V3は、第1チューブ504を介して造影剤シリンジ604に向かう方向の流れと、第1上流チューブ506aに向かう方向の流れとを許容する。そして、第3一方弁V3は、造影剤ライン501を介して造影剤チャンバ601に向かう方向の流れは遮断する。また、第1一方弁V1は、第1下流チューブ507aに向かう方向の流れは許容するが、造影剤シリンジ604に向かう方向の流れは遮断する。
【0052】
生理食塩水シリンジ605内の生理食塩水の量が所定量よりも少なくなった場合、注入装置608は生理食塩水の吸引を行う。すなわち、注入装置608は、生理食塩水シリンジ605のプランジャーを後退させることで、生理食塩水チャンバ602から生理食塩水シリンジ605に向かって生理食塩水を吸引する。このとき、第4一方弁V4は、第2チューブ505を介して生理食塩水シリンジ605に向かう方向の流れと、第2上流チューブ506bに向かう方向の流れとを許容する。そして、第4一方弁V4は、生理食塩水ライン502を介して生理食塩水チャンバ602に向かう方向の流れは遮断する。また、第2一方弁V2は、第2下流チューブ507bに向かう方向の流れは許容するが、生理食塩水シリンジ605に向かう方向の流れは遮断する。
【0053】
吸引後、注入装置608は、造影剤シリンジ604のプランジャーを前進させることで、吸引した造影剤を第1ベースライン508に向かって排出することができる。同様に、注入装置608は、生理食塩水シリンジ605のプランジャーを前進させることで、吸引した生理食塩水を第2ベースライン509に向かって排出することができる。
【0054】
[第1閉鎖部]
次に、
図2から
図4を参照して、第1閉鎖部100aの第1閉鎖機構120aについて説明する。この
図2は、閉鎖状態の第1閉鎖機構120aを示す概略斜視図である。また、
図3は、閉鎖状態の第1閉鎖機構120aを示す概略断面図であり、第1閉鎖機構120aの内部流路の中心軸に沿った長手方向断面を示している。また、
図4は、閉鎖状態の第1閉鎖機構120aを示す概略底面図である。なお、第1閉鎖機構120aは第1チューブ対110aに接続されているが、
図2から
図4においては、説明の便宜上、第1チューブ対110aの図示は省略している。
【0055】
内部流路を閉鎖する第1閉鎖機構120aは、第1駆動部130aのプレッサーに押圧される第1ヘッド121a1,121a2と、第1ヘッド121a1が形成された略円筒状の第1ピストン122a1(第1移動部材)と、第1ヘッド121a2が形成された略円筒状の第1ピストン122a2(第2移動部材)とを備えている。さらに、第1閉鎖機構120aは、不図示の第1チューブ対110aにそれぞれ接合される一対の第1導管部123aを備えている。第1チューブ対110aは、例えば、溶剤接着によって第1導管部123aに接合することができる。なお、
図2においては、右側が注入装置608側に対応し、左側が被験者側に対応する。
【0056】
また、第1閉鎖機構120aは、第1ピストン122a1,122a2を受け入れる一対の穴が形成された第1ハウジング124aを備えている。この第1ハウジング124aの胴部には、第1ハウジング124aの外周上に延在する第1補強リブ125aが形成されている。そして、第1補強リブ125aには三角マークが形成されている。この三角マークは、薬液が流れる方向を示しており、三角形の先端は薬液が流れる方向(すなわち、被験者側)を指し示している。代替的に、三角マークは、他の部分、例えば第1ハウジング124aの上面に形成することができる。なお、第1閉鎖機構120aは、3つ以上のピストンを備えていてもよい。3つ以上のピストンが存在する場合、第1ハウジング124aには、ピストンと同数の穴が形成される。
【0057】
図3に示すように、第1ピストン122a1,122a2は、矢印で示す摺動方向Aに摺動可能に第1ハウジング124aに収容されている。すなわち、第1ピストン122a1,122a2は、第1ハウジング124aに対して出没可能に取り付けられている。具体的に、第1閉鎖機構120aの内部流路(第1流路126a1,126a2)を開放する場合には、第1ピストン122a1,122a2を
図3中下方に移動させる。そして、第1ピストン122a1の第1流路126a1と、第1ピストン122a2の第1流路126a2とを、それぞれ第1導管部123a内の開口と対向させる。これにより、一対の第1導管部123aが、第1流路126a1,126a2を介して連通し、内部流路が開放される。一方、第1ピストン122a1,122a2を
図3中上方に移動させると、第1ピストン122a1,122a2の側面が、それぞれ第1導管部123a内の開口と対向して、内部流路が閉鎖される。
【0058】
注入装置608側(
図3中右側)に配置された第1ピストン122a1は、摺動方向Aにおいて長い略楕円形状の断面を有する第1流路126a1を備えている。一方、被験者側(
図3中左側)に配置された第1ピストン122a2は、摺動方向Aにおいて短い略円形の断面を有する第1流路126a2を備えている。そのため、第1ピストン122a1及び第1ピストン122a2の摺動方向Aにおいて、第1ピストン122a1の第1流路126a1は、第1ピストン122a2の第1流路126a2よりも大きい。そして、第1流路126a1,126a2の上端位置は、対応する第1導管部123a内の開口からの距離が同一になるように設定されている。すなわち、第1流路126a1,126a2の形成位置は、第1流路126a1,126a2の上端が第1導管部123a内の開口と対向した時に、第1流路126a2の上端も第1導管部123a内の開口と対向するように設定されている。また、第1流路126a1,126a2の上端位置は、孔部128からの距離が同一になるように設定されている。
【0059】
内部流路を開放するときには、第1ピストン122a1,122a2を同時に下降させる。そのため、第1流路126a1の下端が第1導管部123a内の開口に対向したタイミングでは、第1ピストン122a2の側面が第1導管部123a内の開口に対向している。その結果、注入装置608側(上流側)において、流路は開放されるが、被験者側(下流側)においては流路が開放されない。その後、第1流路126a2が第1導管部123a内の開口に対向する。これにより、上流側及び下流側の双方において、流路が開放される。
【0060】
代替的に、第1流路126a1を、第1流路126a2よりも下方に形成してもよい。すなわち、第1ピストン122a1における第1ヘッド121a1から第1流路126a1までの距離は、第1ピストン122a2における第1ヘッド121a2から第1流路126a2までの距離よりも長く設定してもよい。さらに、第1ヘッド121a1の頂面が第1ヘッド121a2の頂面よりも先に第1駆動部130aのプレッサーに押圧されるように、摺動方向Aにおいて、第1ヘッド121a1は、第1ヘッド121a2よりも長くしてもよい。さらに、第1ヘッド121a1を、第1ヘッド121a2よりも先に押圧するように、第1駆動部130aを制御しても良い。さらに、第1ピストン122a1の押し下げ速度が、第1ピストン122a2の押し下げ速度よりも速くなるように、第1駆動部130aを制御しても良い。すなわち、第1ヘッド121a1を、第1ヘッド121a2よりも速く移動させるように、第1駆動部130aを制御しても良い。これらによっても、被験者側よりも先に注入装置608側において流路を開放することができる。これらの場合、第1流路126a1は、第1流路126a2と同じ大きさ及び形状を有していてもよい。また、第1駆動部130aは、第1ヘッド121a1及び第1ヘッド121a2のそれぞれを押圧する2つのプレッサーを備えていてもよい。この場合、さらに、第1駆動部130aは、2つのプレッサーを駆動する2つのモーターを備えていてもよい。
【0061】
このように、被験者側よりも先に注入装置608側において流路が開放される。これにより、仮に逆血が第1ピストン122a2に到達していても、流路開放時には薬液によって血液が被験者側に押し流される。そのため、第1ピストン122a1に到達することを防止できる。また、流路閉鎖時には、第1ピストン122a1の第1流路126a1が第1導管部123a内の開口から隔離されている。そのため、流路閉鎖時には逆血が第1流路126a1に到達しない。その結果、第1閉鎖部100aよりも上流側に逆流することを、より確実に防止することができる。
【0062】
内部流路を閉鎖するときには、第1流路126a2の下端が第1導管部123a内の開口から離間した(側面が開口に対向した)タイミングでは、まだ第1流路126a1が第1導管部123a内の開口に対向している。そのため、第1流路126a2は閉鎖されるが、第1流路126a1は閉鎖されない。その後、第1流路126a1が第1導管部123a内の開口から離間する(側面が開口に対向する)。これにより、第1流路126a1,126a2の双方が閉鎖される。
【0063】
また、第1ピストン122a1,122a2はそれぞれ、摺動方向Aにおいて第1流路126a1,126a2を挟むように配置された一対の第1Oリング127aを備えている。これにより、第1ピストン122a1,122a2の側面と、第1ハウジング124aの内面との間からの液漏れを防止できる。また、より確実に液漏れを防止するために、少なくとも第1ピストン122a2において、第1導管部123a内の開口と対向するように下側の第1Oリング127aを形成してもよい。すなわち、閉鎖状態において第1導管部123a内の開口を遮蔽する位置に、下側の第1Oリング127aを配置してもよい。代替的に、閉鎖状態において第1導管部123a内の開口を遮蔽する位置に、少なくとも第1ピストン122a2の側面にゴム製のシール部材を配置してもよい。
【0064】
第1ハウジング124aの略中央には、第1流路126a1,126a2と共に第1閉鎖部100aの内部流路を構成する孔部128が形成されている。すなわち、第1ピストン122a1,122a2を受け入れる一対の穴同士の間に、孔部128が形成されている。この孔部128の両端は、流路の開放状態において、それぞれ第1流路126a1,126a2と対向する。これにより、第1閉鎖部100aの内部流路が開放される。この孔部128には、注入装置608側から被験者側への流れを許容し、被験者側から注入装置608側への流れを遮断する一方弁を設けてもよい。
【0065】
図4に示すように、第1ピストン122a1,122a2の下部には、側方に突出する一対の第1位置合わせ部129a1,129a2が形成されている。第1ハウジング124aの内面には、この第1位置合わせ部129a1,129a2の外形と相補的な内面形状を有する溝が形成されている。そして、当該溝に第1位置合わせ部129a1,129a2が挿入されることにより、第1ピストン122a1,122a2を正しい位置に位置づけることができる。これにより、第1導管部123a内の開口と第1流路126a1,126a2との位置ずれを防止できる。
【0066】
一対の第1位置合わせ部129a1は、一対の第1位置合わせ部129a2とは異なる位置に形成されている。具体的に、一対の第1位置合わせ部129a2は、互いに第1ピストン122a1の外周上で反時計回り方向に略90°ずれた位置に形成されている。一方、一対の第1位置合わせ部129a1は、互いに反時計回り方向に略180°ずれた位置に形成されている。これにより、第1ピストン122a1を誤って被験者側に取り付けることが防止される。なお、一対の第1位置合わせ部129a1を互いに略90°ずれた位置に形成し、一対の第1位置合わせ部129a2を互いに略180°ずれた位置に形成してもよい。
【0067】
[第2閉鎖部]
次に、
図5から
図7を参照して、第2閉鎖部100bの第2閉鎖機構120bについて説明する。この第2閉鎖部100bは、一つの第2ピストン122b(第3移動部材)を有する点で、第1閉鎖部100aと異なる。
【0068】
図5は、閉鎖状態の第2閉鎖機構120bを示す概略斜視図である。また、
図6は、閉鎖状態の第2閉鎖機構120bを示す概略断面図であり、第2閉鎖機構120bの内部流路の中心軸に沿った長手方向断面を示している。また、
図7は、閉鎖状態の第2閉鎖機構120bを示す概略底面図である。なお、第2閉鎖機構120bは第2チューブ対110bに接続されているが、
図5から
図7においては、説明の便宜上、第2チューブ対110bの図示は省略している。
【0069】
内部流路を閉鎖する第2閉鎖機構120bは、第2駆動部130bのプレッサーに押圧される第2ヘッド121bと、第2ヘッド121bが形成された略円筒状の第2ピストン122bとを備えている。さらに、第2閉鎖機構120bは、不図示の第2チューブ対110bにそれぞれ接合される一対の第2導管部123bを備えている。第2チューブ対110bは、例えば、溶剤接着によって第2導管部123bに接合することができる。なお、
図5においては、右側が被験者側に対応し、左側がトランスデューサ603側に対応する。
【0070】
また、第2閉鎖機構120bは、第2ピストン122bを受け入れる穴が形成された第2ハウジング124bを備えている。この第2ハウジング124bの胴部には、第2ハウジング124bの外周に延在する第2補強リブ125bが形成されている。そして、第2補強リブ125bには、三角マークが形成されている。この三角マークは、薬液が流れる方向を示しており、三角形の先端は薬液が流れる方向(すなわち、トランスデューサ603側)を指し示している。代替的に、三角マークは、他の部分、例えば第2ハウジング124bの上面に形成することができる。なお、第2ピストン122bの数は1つには限定されず、2つ以上であってもよい。2つ以上の第2ピストン122bが存在する場合、第2ハウジング124bには、第2ピストン122bと同数の穴が形成される。
【0071】
図6に示すように、第2ピストン122bは、矢印で示す摺動方向Aに摺動可能に第2ハウジング124bに収容されている。すなわち、第2ピストン122bは、第2ハウジング124bに対して出没可能に取り付けられている。具体的に、第2閉鎖機構120bの内部流路を開放する場合には、第2ピストン122bを
図6中下方に移動させる。そして、第2ピストン122bの第2流路126bを、第2導管部123b内の開口と対向させる。これにより、一対の第2導管部123bが、第2流路126bを介して連通し、内部流路が開放される。一方、第2ピストン122bを
図6中上方に移動させると、第2ピストン122bの側面が第2導管部123b内の開口と対向して、内部流路が閉鎖される。すなわち、第2流路126bは、第2閉鎖部100bの内部流路を構成している。
【0072】
第2ピストン122bは、略円形の断面を有する第2流路126bを備えている。すなわち、第2ピストン122bは、第1閉鎖機構120aの被験者側(
図3中左側)の第1ピストン122a2と同じ構造を有している。これにより、両ピストンは、同一の方法で製造することができる。
【0073】
第2ピストン122bは、摺動方向Aにおいて第2流路126bを挟むように配置された一対の第2Oリング127bを備えている。これにより、第2ピストン122bの側面と、第2ハウジング124bの内面との間からの液漏れを防止できる。また、より確実に液漏れを防止するために、第2導管部123b内の開口と対向するように下側の第2Oリング127bを形成してもよい。すなわち、閉鎖状態において下側の第2Oリング127bが第2導管部123b内の開口を遮蔽する位置に、下側の第2Oリング127bを配置してもよい。代替的に、閉鎖状態において第2導管部123b内の開口を遮蔽する位置に、第2ピストン122bの側面にゴム製のシール部材を配置してもよい。
【0074】
図7に示すように、第2ピストン122bの下部には、側方に突出する一対の第2位置合わせ部129bが形成されている。第2ハウジング124bの内面には、この第2位置合わせ部129bの外形と相補的な内面形状を有する溝が形成されている。そして、当該溝に第2位置合わせ部129bが挿入されることにより、第2ピストン122bを正しい位置に位置づけることができる。これにより、第2導管部123b内の開口と第2流路126bとの位置ずれを防止できる。
【0075】
[エア検出]
薬液回路500は、造影剤チャンバ601とドリップチャンバー付スパイク針607との間、生理食塩水チャンバ602とドリップチャンバー付スパイク針607との間、及び被験者ライン503に配置された超音波式のエアセンサー606(
図1)を備えている。このエアセンサー606は、気泡の存在を検出した場合に、注入装置608に信号を送信する。そして、信号を受信した注入装置608は、薬液の注入の停止、薬液の吸引の停止、及びエア検出の報知(警告)の少なくともいずれかを行う。さらに、エアセンサー606を、第1下流チューブ507a及び第2下流チューブ507bに配置しても良い。
【0076】
薬液回路500は、各チャンバ内の薬液量を監視するセンサーを備えていてもよい。例えば、各チャンバ内の薬液が所定量未満になった場合、当該センサーは注入装置608に信号を送信する。そして、信号を受信した注入装置608は、薬液の吸引の停止、薬液の注入の停止、及び各チャンバの交換を促す報知の少なくともいずれかを行う。
【0077】
被験者ライン503に配置されたエアセンサー606は、送信部と受信部との間に配置されるエア検出部400内の気泡の存在を検出する。このエア検出部400は、気泡の検出精度を向上させるため、
図8に示すような平坦部402を備えている。そして、エア検出部400は、平坦部402がエアセンサー606の送信部と受信部との間に位置するように、エアセンサー606に対して配置される。このようなエア検出部400は、例えば、成型によって作られたポリカーボネート製の2つの部材を接着して製造される。以下、
図8から
図10を参照して、エア検出部400を説明する。
【0078】
図8は、エア検出部400の概略斜視図である。
図9は、エア検出部400の中央の概略断面図であり、平坦部402の平面406に平行であり且つエア検出部400の長手方向に沿った断面を示している。
図10は、エア検出部400の中央の概略断面図であり、平坦部402の平面406に直交し且つエア検出部400の長手方向に沿った断面を示している。なお、エア検出部400は一対のチューブ401(
図1)を備えているが、
図8から
図10においては、説明の便宜上、一対のチューブ401の図示は省略している。
【0079】
エア検出部400は、外側に一対の平面406を有する平坦部402と、不図示の一対のチューブ401にそれぞれ接合される一対の導管部403を備えている。この一対の導管部403は、平坦部402を挟んでエア検出部400の両端に形成されている。また、平坦部402は、略楕円状の断面形状と、丸みを帯びた側面を有している。
【0080】
図9に示すように、平坦部402には、導管部403内の開口部分404よりも幅広な内部空間405が形成されている。すなわち、平坦部402の平面406と平行な断面において、内部空間405の幅の長さは、開口部分404よりも長い。この内部空間405は、左右対称な八角形状の断面形状を有している。また、一例として、平面406と平行な断面において、平坦部402の幅の長さは、導管部403よりも長い。そして、内部空間405は、エアセンサー606の検出面に対応する大きさを有している。
【0081】
図10に示すように、一対の平面406に対して直交する断面において、平坦部402の厚みは、導管部403よりも薄い。また、一例として、当該断面において、内部空間405の高さは、開口部分404よりも長い。なお、内部空間405の断面積は、導管部403の断面積と略等しく設定することができる。
【0082】
以上説明した薬液回路500は、血液の逆流をより確実に防止でき、且つ部品点数が少ないためより容易に注入装置608に装着可能である。なお、注入装置608から注入された薬液が流れる各チューブは、耐圧チューブであることが好ましい。ただし、各チューブは、例えば、10~20psiの比較的に低い圧力に耐えるチューブであってもよい。
【0083】
[第2実施形態]
図11から
図13は、第2実施形態に係る薬液回路2500の概略図である。
図11は、薬液回路2500の使い捨て回路を示し、
図12及び
図13は薬液回路2500の再使用回路を示している。なお、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態において説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0084】
薬液回路2500は、第1閉鎖部200a及び第2閉鎖部200bを備えている。
図11においては、説明の便宜上、第1閉鎖部200aの第1閉鎖機構220aを駆動する第1駆動部230aと、第2閉鎖部200bの第2閉鎖機構220bを駆動する第2駆動部230bとは、概略的に図示している。また、薬液回路2500は、造影剤ライン501(
図12)と生理食塩水ライン502(
図13)と、第1薬液としての造影剤が流れる第1ベースライン508と、第2薬液としての生理食塩水が流れる第2ベースライン509と、第1ベースライン508及び第2ベースライン509に接続される被験者ライン503とを備えている。この被験者ライン503には、第1閉鎖部200aが配置されている。
【0085】
薬液回路2500の第1閉鎖部200aは、内部流路を閉鎖する第1閉鎖機構220aと、第1閉鎖機構220aを駆動する第1駆動部230aとを有している。また、薬液回路2500の第2閉鎖部200bは、トランスデューサ603に接続されると共に、内部流路を閉鎖する第2閉鎖機構220bを有する。さらに、第2閉鎖部200bは、第2チューブ対110bと、第2閉鎖機構220bを駆動する第2駆動部230bとを有している。
【0086】
第1ベースライン508は、第1上流チューブ506aと、第1上流チューブ506aに取り付けられた第1オスコネクターM1(
図12)に接続される第1メスコネクターF1と、第1メスコネクターF1が取り付けられた第1下流チューブ507aとを有している。また、第2ベースライン509は、第2上流チューブ506bと、第2上流チューブ506bに取り付けられた第2オスコネクターM2(
図13)に接続される第2メスコネクターF2と、第2メスコネクターF2が取り付けられた第2下流チューブ507bとを有している。
【0087】
薬液を吸引するときには、第1メスコネクターF1と第1オスコネクターM1との間、及び第2メスコネクターF2と第2オスコネクターM2との間には、使い捨て可能な一方弁付きチューブを接続できる。また、造影剤を注入するときには、第2下流チューブ507bの内部流路を閉鎖する手動又は電動クランプを、第2下流チューブ507bに取り付けることができる。これにより、造影剤が生理食塩水ライン502に流入することを防止できる。
【0088】
被験者ライン503は、上流側から順に、ミキシングデバイスSと、エア検出部2400と、第1閉鎖部200aと、第3下流チューブ507cと、第3オスコネクターM3とを有している。この被験者ライン503は、第3オスコネクターM3を介して、被験者に穿刺又は挿入されるカテーテル(不図示)に接続される。また、被験者ライン503は、ミキシングデバイスSを介して第1ベースライン508及び第2ベースライン509に接続されている。なお、被験者ライン503は、他のチューブ等を介して第1ベースライン508及び第2ベースライン509に接続されてもよい。
【0089】
第1閉鎖部200aは、第3T字コネクターT3を介して、第3下流チューブ507c及び第2閉鎖部200bに接続されている。また、第2実施形態の第1閉鎖部200aは、第5一方弁V5を介して第3T字コネクターT3に接続されている。この第5一方弁V5は、薬液が被験者に向かう流れを許容し、第1閉鎖部200aに向かう(上流方向)の流れを遮断する。さらに、第2実施形態のエア検出部2400は、ミキシングデバイスSと第1閉鎖部200aとの間に配置されている。
【0090】
エア検出部2400は例えば耐圧チューブであり、好ましくは、メッシュチューブである。エア検出部2400に対向してエアセンサー606が配置されており、エアセンサー606を押し付けることにより、その検出部の形状に倣ってメッシュチューブを変形させて、エアの検出精度を向上させることができる。このエアセンサー606は、送信部と受信部との間に配置されるエア検出部2400内の気泡の存在を検出する。また、エアセンサー606を第1閉鎖機構220aの上流側に配置することにより、エアが検出された場合に第1閉鎖機構220aによって流路を閉鎖できる。代替的に、エアセンサー606は、ミキシングデバイスSに配置してもよい。
【0091】
さらに、薬液回路2500は、トランスデューサラインとしての第2閉鎖部200bを備えている。この第2閉鎖部200bは、第3T字コネクターT3を介して第3下流チューブ507cに接続される。また、第2閉鎖部200bは、第3メスコネクターF3を介してトランスデューサ603に接続される。さらに、薬液回路2500には、造影剤シリンジ604と生理食塩水シリンジ605とが搭載され、造影剤(第1薬液)及び生理食塩水(第2薬液)を注入する注入装置608が接続される。そして、薬液回路2500は、トランスデューサ603及び注入装置608を備える注入システムの一部として機能する。この注入システムによれば、造影剤及び生理食塩水の注入を自動で行うことができる。なお、第2閉鎖部200bは、他のチューブ等を介してトランスデューサ603に接続されてもよい。
【0092】
被験者ライン503、第2閉鎖部200b、第1ベースライン508及び第2ベースライン509は、少なくともその一部が使い捨て可能に構成されている。すなわち、第1ベースライン508の第1下流チューブ507aは、第1上流チューブ506aに対して取り外し可能に接続されている。また、第2ベースライン509の第2下流チューブ507bは、第2上流チューブ506bに対して取り外し可能に接続されている。これにより、被験者ライン503、第2閉鎖部200b、第1下流チューブ507a及び第2下流チューブ507bは、使用後に新たなものと交換可能である。ただし、第1駆動部230a及び第2駆動部230bは再使用される。
【0093】
[閉鎖部の制御]
薬液回路2500の注入装置608は、第1駆動部230a及び第2駆動部230bに無線又は有線接続されている。この注入装置608は、外部コントローラーとして機能し、一例として以下のように第1閉鎖部200a及び第2閉鎖部200bを制御する。
【0094】
注入装置608は制御装置(不図示)に有線又は無線接続されており、薬液の注入前には、エア抜きを目的としたプライミングが行われる。このプライミングは、例えば、制御装置が備えるタッチパネルに表示されたプライミングボタンを、オペレーターが押すことによって開始される。プライミングによって、薬液回路2500全体が薬液で満たされ、エアが抜かれた状態となる。代替的に、オペレーターは、注入装置608の操作部609を操作することによってプライミングを行うこともできる。
【0095】
また、プライミングは、一例として第1~第4モードを含んでいる。第1モードでは、造影剤によって、第1上流チューブ506a、及び第1下流チューブ507a(第1ベースライン508)が満たされる。第2モードでは、生理食塩水によって、第2上流チューブ506b及び第2下流チューブ507b(第2ベースライン509)と、被験者ライン503とが満たされる。第3モードでは、造影剤及び生理食塩水によって、第2閉鎖部200b(トランスデューサライン)を除いた各ラインが満たされる。第4モードでは、生理食塩水及び/又は造影剤によって、第2上流チューブ506b及び第2下流チューブ507b(第2ベースライン509)と、第2閉鎖部200bと、被験者ライン503とが満たされる。
【0096】
エア抜き後、第1閉鎖部200a及び第2閉鎖部200bは、自動的に内部流路を閉鎖する。そのため、注入装置608は、第1閉鎖部200aを制御して薬液の注入前に内部流路を開放する。なお、自動的に内部流路を閉鎖しない場合、注入装置608は、造影剤又は生理食塩水がトランスデューサ603に向かって流れないように、第2閉鎖部200bを制御して薬液の注入前に内部流路を閉鎖する。その後、注入装置608は、造影剤シリンジ604のプランジャーを前進させて、造影剤シリンジ604から造影剤を排出する。造影剤と生理食塩水とを同時に注入する場合、注入装置608はさらに、生理食塩水シリンジ605のプランジャーを前進させて、生理食塩水シリンジ605から生理食塩水を排出する。
【0097】
薬液の注入が完了した後、第1閉鎖部200aは、自動的に内部流路を閉鎖する。そのため、生理食塩水によって造影剤のフラッシュを行う場合、注入装置608は、第1閉鎖部200aを制御して内部流路を開放する。その後、注入装置608は、生理食塩水シリンジ605のプランジャーを前進させて、生理食塩水シリンジ605から生理食塩水を排出する。また、造影剤の注入と生理食塩水の注入(フラッシュを含む)とが連続して自動的に行われることがある。この場合、注入装置608は、第1閉鎖部200aの開放状態を維持するため、第1閉鎖部200aの内部流路の開放は省略される。なお、自動的に第2閉鎖部200bの内部流路を閉鎖しない場合、注入装置608は、第2閉鎖部200bを制御してフラッシュ前に内部流路を閉鎖する。
【0098】
薬液の注入後に血圧を検出するとき、注入装置608は、第2閉鎖部200bを制御して内部流路を開放する。一例として、注入装置608は、薬液回路2500内の残圧が十分に低下した後に第2閉鎖部200bの内部流路を閉鎖する。なお、薬液の注入後、第1閉鎖部200aが内部流路を閉鎖すると同時に、注入装置608が第2閉鎖部200bの内部流路を開放してもよい。
【0099】
このように、薬液の注入が完了した後、第1閉鎖部200aが自動的に内部流路を閉鎖し、第1閉鎖部200aよりも上流側に向かう液体の流れは遮断されている。そのため、第1閉鎖部200aよりも上流側の領域に逆流することを防止できる。また、第5一方弁V5よりも上流側に向かう液体の流れは、第5一方弁V5によって遮断されている。これにより、第5一方弁V5よりも上流側の回路に血液が流れることを、より確実に防止できる。
【0100】
[再使用回路]
図12に示すように、薬液回路2500の造影剤ライン501には、造影剤チャンバ601が接続される。造影剤ライン501は、ドリップチャンバー付スパイク針607を有している。造影剤チャンバ601から流れ出た造影剤は、ドリップチャンバー付スパイク針607のドリップチャンバー内に滴下して、造影剤ライン501を流れる。また、造影剤ライン501は、薬液が流れるチューブを有しており、これは耐圧チューブであってもなくともよい。
【0101】
第3一方弁V3は、第1T字コネクターT1に取り付けられている。そして、第3一方弁V3は、造影剤シリンジ604に向かう方向の流れと第1上流チューブ506aに向かう方向の流れとを許容すると共に、造影剤チャンバ601に向かう方向の流れを遮断する。この第3一方弁V3と第5一方弁V5(
図11)とにより、造影剤が第1ベースライン508の上流側、すなわち造影剤シリンジ604に向かって吸引された場合は、造影剤が造影剤ライン501から造影剤シリンジ604に向かって流れる。造影剤が第1ベースライン508の上流側からその下流側、すなわち被験者ライン503に向かって排出された場合は、造影剤が造影剤ライン501に逆流しない。
【0102】
第1T字コネクターT1に接合されたコネクターRは、注入装置608に搭載された造影剤シリンジ604の先端、又は造影剤シリンジ604に接続されたチューブに接続される。また、造影剤ライン501は、第1上流チューブ506aを介して第1ベースライン508の第1メスコネクターF1に接続される。この第1上流チューブ506aは、耐圧ブレードチューブとすることにより、その耐久性を向上できる。
【0103】
図13に示すように、薬液回路2500の生理食塩水ライン502には、生理食塩水チャンバ602が接続される。生理食塩水ライン502は、ドリップチャンバー付スパイク針607を有している。生理食塩水チャンバ602から流れ出た生理食塩水は、ドリップチャンバー付スパイク針607のドリップチャンバー内に滴下して、生理食塩水ライン502を流れる。また、生理食塩水ライン502は、薬液が流れるチューブを有しており、これは耐圧チューブであってもなくともよい。
【0104】
第4一方弁V4は、第2T字コネクターT2に接合されている。そして、第4一方弁V4は、生理食塩水シリンジ605に向かう方向の流れと第2上流チューブ506bに向かう方向の流れとを許容すると共に、生理食塩水チャンバ602に向かう方向の流れを遮断する。この第4一方弁V4と第5一方弁V5(
図11)とにより、生理食塩水が第2ベースライン509の上流側、すなわち生理食塩水シリンジ605に向かって吸引された場合は、生理食塩水が生理食塩水ライン502から生理食塩水シリンジ605に向かって流れる。生理食塩水が第2ベースライン509の上流側からその下流側、すなわち被験者ライン503に向かって排出された場合は、生理食塩水が生理食塩水ライン502に逆流しない。
【0105】
第2T字コネクターT2に接合されたコネクターRは、注入装置608に搭載された生理食塩水シリンジ605の先端、又は生理食塩水シリンジ605に接続されたチューブに接続される。また、生理食塩水ライン502は、第2上流チューブ506bを介して第2ベースライン509の第2メスコネクターF2に接続される。この第2上流チューブ506bは、耐圧ブレードチューブとすることにより、その耐久性を向上できる。
【0106】
さらに、造影剤ライン501には、造影剤チャンバ601とドリップチャンバー付スパイク針607との間にエアセンサー606が配置されている。また、生理食塩水ライン502には、生理食塩水チャンバ602とドリップチャンバー付スパイク針607との間にエアセンサー606が配置されている。これらのエアセンサー606は、気泡の存在を検出した場合に、注入装置608に信号を送信する。そして、信号を受信した注入装置608は、薬液の注入の停止、薬液の吸引の停止、及びエア検出の報知(警告)の少なくともいずれかを行う。
【0107】
[第1閉鎖部]
次に、
図14から
図18を参照して、第1閉鎖部200aの第1閉鎖機構220aについて説明する。
図14は、閉鎖状態の第1閉鎖機構220aを示す概略斜視図である。
図15A,Bは、閉鎖状態及び開放状態の第1閉鎖機構220aを示す概略断面図であり、第1閉鎖機構220aの内部流路の中心軸に沿った長手方向断面を示している。
図16は、閉鎖状態の第1ピストン222a1,222a2を第1キャップ252aから見た概略底面図である。
図17は、第1閉鎖機構220aの第1ピストン222a1(第1移動部材)と、第1ピストン222a2(第2移動部材)とを示す概略斜視図である。また、
図18は、第1ピストン222a2の概略分解図である。
【0108】
第1閉鎖機構220aは、第1駆動部230aのプレッサーに押圧される(押し引きされる)第1ヘッド221a1,221a2と、第1ヘッド221a1,221a2が形成された略円筒状の第1ピストン222a1,222a2(第1及び第2移動部材)を備えている。この第1ヘッド221a1,221a2は、略円筒状(円盤状)の形状を有しているが、第1駆動部230aに挿入し易い形状であれば、他の形状を有していてもよい。さらに、第1閉鎖機構220aは、第1ピストン222a1,222a2を、
図14の矢印で示す摺動方向Aに摺動可能に収容する第1ハウジング224aを備えている。また、第1閉鎖機構220aは、一対の第1導管部223aを備えている。この一対の第1導管部223aは、第5一方弁V5と、エア検出部2400とにそれぞれ接合される(
図11)。なお、
図14、
図15A,Bにおいては、右側が注入装置608側(上流側)に対応し、左側が被験者側(下流側)に対応する。
【0109】
第1ヘッド221a1,221a2と、第1ピストン222a1,222a2の本体との間には、テーパ面254aが形成されている。これにより、第1ピストン222a1,222a2に一対の第1Oリング227a(
図15A,B)を容易に嵌めることができる。また、第1ヘッド221a1,221a2の角部を面取し、第1ヘッド221a1,221a2の頂面及び底面を曲面で構成してもよい。これにより、第1ピストン222a1,222a2を容易に第1ハウジング224aに挿入できる。
【0110】
また、第1閉鎖機構220aは、第1ピストン222a1,222a2を受け入れる一対の穴が形成された第1ハウジング224aを備えている。この第1ハウジング224aの胴部には、第1ハウジング224aの外周に延在する第1補強リブ225aが形成されている。そして、第1補強リブ225aには、第1薄肉部251aが形成されている。この第1薄肉部251aは、第1補強リブ225aの略中央部に対応する位置に形成されている。また、第1ハウジング224aは、透明材料によって形成してもよい。これにより、第1ハウジング224a内に逆血が生じていないことを、外部から視認できる。
【0111】
さらに、第1閉鎖機構220aは、第1ピストン222a1,222a2の摺動方向Aにおける第1ハウジング224aの端部に配置された第1キャップ252aを有している。すなわち、第1キャップ252aは、摺動方向Aにおいて、第1ヘッド221a1,221a2とは反対側に配置されている。この第1キャップ252aは、第1ハウジング224aの第1取付部253aに接着剤によって接着されているが、超音波融着等の方法により取り付けてもよい。さらに、第1キャップ252a及び第1取付部253aの一方にラッチを形成し、他方にラッチに対応する溝を形成して、両者をラッチ係合させてもよい。また、第1キャップ252aは、第1ハウジング224aと同じ材料で形成できる。このような第1キャップ252aを備えることにより、第1ピストン222a1,222a2の抜け落ちを防止できる。
【0112】
図15Aに示すように、第1キャップ252aの内側には、第1厚肉部255aが形成されている。この第1厚肉部255aと当接するように、第1ピストン222a1,222a2それぞれの第1キャップ252a側の端部には、側方に向かって突出する第1突出部256aが形成されている。この第1突出部256aは、第1厚肉部255aと当接し、第1ピストン222a1,222a2の回り止めとして機能する。また、第1キャップ252aには、第1取付部253aの端部と当接する第1段差部257aが形成されている。この第1段差部257aが、第1取付部253aと第1キャップ252aとの間の蓋として機能する。そのため、両者の間に塗布される接着剤が、第1キャップ252a内に流れ込むことを抑制できる。さらに、第1取付部253aの端部には、接着剤が流れ込む液溜りとして機能する溝を形成してもよい。
【0113】
図16に示すように、第1ハウジング224aの第1キャップ252a側の端部には、第1キャップ252aの第1厚肉部255aと対応する位置に、第2厚肉部258aが形成されている。説明の便宜上、
図16においては、第1キャップ252aの摺動方向Aに直交する水平断面も図示している。第1突出部256aは、この第2厚肉部258aと当接し、第1ピストン222a1,222a2の回り止めとして機能する。なお、
図15Aにおいては、第1ピストン222a1,222a2と重なる第2厚肉部258aを点線で図示している。
【0114】
図15Aに示す第1キャップ252aの深さ、すなわち、第1ピストン222a1,222a2の端面から第1キャップ252aの内面までの距離L1は、
図15Bに示す第1ピストン222a1,222a2の移動距離L2よりも長く設定されている。そのため、内部流路を開放した状態でも、第1ピストン222a1,222a2の端面と第1キャップ252aの内面との間には、わずかに隙間がある。また、摺動方向Aにおける第1突出部256aの長さも、移動距離L2よりも長く設定されている。
【0115】
上流側に配置された第1ピストン222a1は、摺動方向Aにおいて長い略楕円形状の断面を有する第1流路226a1を備えている。一方、下流側に配置された第1ピストン222a2は、摺動方向Aにおいて短い略円形の断面を有する第1流路226a2を備えている。そのため、摺動方向Aにおいて、第1ピストン222a1の第1流路226a1は、第1ピストン222a2の第1流路226a2よりも大きい。また、第1流路226a1,226a2の上端位置は、それぞれ対応する第1導管部223a内の開口からの距離が同一になるように設定されている。その結果、両ピストンを同時且つ同速度で押圧した場合、第1流路226a1の上端が第1導管部223a内の開口と対向した時に、第1流路226a2の上端も第1導管部223a内の開口と対向する。また、第1流路226a1,226a2の上端位置は、孔部228からの距離も同一になるように設定されている。
【0116】
第1ハウジング224aの略中央には、第1流路226a1,226a2と共に第1閉鎖部200aの内部流路を構成する孔部228が形成されている。すなわち、第1ピストン222a1,222a2を受け入れる一対の穴同士の間に、孔部228が形成されている。この孔部228の両端は、流路の開放状態において、それぞれ第1流路226a1,226a2と対向する。これにより、第1閉鎖部200aの内部流路が開放される。
【0117】
内部流路を開放するときには、第1ピストン222a1,222a2を同時に第1キャップ252a(
図15A中下方)に向けて移動させる。そして、
図15Bに示すように、第1ピストン222a1の第1流路226a1と、第1ピストン222a2の第1流路226a2とを、それぞれ第1導管部223a内の開口と対向させる。ここで、第1流路226a1の下端が第1導管部223a内の開口に対向したタイミングでは、第1ピストン222a2の側面が第1導管部223a内の開口に対向している。そのため、上流側の第1流路226a1は開放されるが、下流側の第1流路226a2は開放されない。その後、第1ピストン222a1,222a2がさらに移動し、第1流路226a2の上端が第1導管部223a内の開口に対向する。すると、一対の第1導管部223aが、第1流路226a1,226a2、及び孔部228を介して液体連通し、内部流路が開放される。
【0118】
一方、第1ピストン222a1,222a2を反対方向(
図15B中上方)に移動させると、
図15Aに示すように、第1ピストン222a1,222a2の側面が、それぞれ第1導管部223a内の開口と対向して、内部流路が閉鎖される。このとき、第1流路226a2の下端が第1導管部223a内の開口から離間した(側面が開口に対向した)タイミングでは、まだ第1流路226a1が第1導管部223a内の開口に対向している。そのため、第1流路226a2は閉鎖されるが、第1流路226a1は閉鎖されない。その後、第1流路226a1が第1導管部223a内の開口から離間する(側面が開口に対向する)。これにより、第1流路226a1,226a2の双方が閉鎖される。
【0119】
内部流路を開放する際には、第1ピストン222a1の第1流路226a1を開放した後に、第1ピストン222a2の第1流路226a2を開放する。これにより、仮に逆血が第1ピストン222a2に到達していても、流路開放時には薬液によって血液が被験者側に押し流されるため、第1ピストン222a1に到達することを防止できる。また、流路閉鎖時には、第1ピストン222a1の第1流路226a1が第1導管部223a内の開口から隔離されているため、逆血が第1流路226a1に到達しない。その結果、第1閉鎖部200aよりも上流側に逆流することを、より確実に防止することができる。
【0120】
第1駆動部230a及び第2駆動部230bを制御する注入装置608は、第1閉鎖機構220aの上流側のライン内の圧力を、第1閉鎖機構220aの下流側のライン内の圧力よりも高めた状態で、第1閉鎖機構220aの内部流路を開放してもよい。例えば、注入装置608は、薬液の注入を開始してから所定時間(一例として1秒)経過した後に内部流路を開放してもよい。この場合、注入装置608は、造影剤シリンジ604及び生理食塩水シリンジ605の少なくとも一方のプランジャーを前進させて、第1ピストン222a1の上流側のライン内の圧力を高める。
【0121】
その後、注入装置608は、第1ピストン222a1,222a2を第1キャップ252aに向けて移動させて内部流路を開放する。これにより、第1ピストン222a1の上流側のライン内の圧力を、第1ピストン222a2の下流側のライン内の圧力よりも高めた状態で、第1ピストン222a1の第1流路226a1が開放される。そのため、内部流路の開放時に、第1ピストン222a2の近傍に逆血に到達していても、第1ピストン222a1に向かって血液が移動することを防止できる。そして、内部流路を開放すると、血液は薬液によって押し流され、第1閉鎖機構220aの下流方向に向かって流れる。
【0122】
また、注入装置608は、第1ピストン222a1の上流側のライン内の圧力又は薬液の注入圧力が所定値に到達した時に、内部流路を開放してもよい。一例として、注入装置608は、ライン内の圧力又は薬液の注入圧力を検知する検知部を備え、検知部から圧力値を取得する。そして、注入装置608は、圧力値が所定値に到達した時に内部流路を開放する。この場合、注入装置608は、薬液の注入開始と同時に内部流路を開放してもよい。
【0123】
第1閉鎖機構220aは、第1ピストン222a1,222a2のそれぞれに対応する一対の第1Oリング227aを有する。そして、第1流路226a1,226a2はそれぞれ、一対の第1Oリング227aの間に形成されている。この第1Oリング227aは、第1ピストン222a1,222a2の周面に形成された環状凹部内に嵌め込まれている。そして、第1Oリング227aにより、第1ピストン222a1,222a2の側面と、第1ハウジング224aの内面との間からの液漏れを防止できる。また、より確実に液漏れを防止するために、第1閉鎖機構220aは、一対の第1Oリング227aの間に配置されると共に、第1流路226a2の周囲を封止する第1スリーブ240aを有している。
【0124】
図15Aに示すように、第1キャップ252aの内側の第1角部259aは、いずれも面取りされ曲面が形成されている。これにより、第1閉鎖機構220aの組み立て時に、第1Oリング227aが第1角部259aと接触して傷つくことを抑制できる。すなわち、第1閉鎖機構220aを組み立てる際には、まず第1スリーブ240aがインサート成型された第1ピストン222a1と、第1ピストン222a2とに、第1ヘッド221a1,221a2側から一対の第1Oリング227aをそれぞれ圧入する。次いで、第1ピストン222a1,222a2を、第1取付部253a側から第1ハウジング224aに挿入する。その後、第1取付部253aに第1キャップ252aを接着する。ここで、第1ピストン222a1,222a2を挿入する際に、第1Oリング227aが第1角部259a接触する可能性がある。しかし、第1角部259aに曲面が形成されていることにより、第1Oリング227aが傷つくことを抑制できる。
【0125】
図17に示すように、略円筒状の第1スリーブ240aは、第1ピストン222a2に嵌っている。この第1スリーブ240aは、シリコン製であり、インサート成型によって形成できる。また、第1スリーブ240aには、第1流路226a2の入口と出口を露出させるように一対の穴241が形成されている。この一対の穴241は、第1流路226a2の内径よりもわずかに大きい内径を有している。そして、一対の穴241が圧入時にそれぞれ縮小する結果、第1流路226a2とほぼ同じサイズとなる。
【0126】
また、第1スリーブ240aには、略矩形状の凹部242が形成されている。この凹部242は、第1ハウジング224aに接触しない。これにより、第1ピストン222a2と第1スリーブ240aの摩擦抵抗を低減している。また、凹部242と一対の第1Oリング227aとの間には、それぞれ凸部246が形成されている。凸部246は、凹部242に対して突出しており、第1ピストン222a2の周囲において第1流路226a2に沿って延在している。この凹部242は、第1ピストン222a2の摺動時に、第1スリーブ240aの変形を抑制する。これにより、一対の穴241が変形して、第1流路226a2に引っ掛ることを防止できる。
【0127】
第1スリーブ240aの一対の穴241を囲む部分は、凹部242と比較して肉厚であり、第1ハウジング224aの内面と当接する。
図18に示すように、第1ピストン222a2は、当該肉厚な部分と対応する位置に薄肉部243を有している。一方、第1ピストン222a2は、凹部242に対応する位置に突出部244を有している。第1スリーブ240aは、薄肉部243及び突出部244と相補的な内側形状を有している。そして、薄肉部243及び突出部244に第1スリーブ240aが嵌っている。これにより、第1ピストン222a2が摺動する際に、第1スリーブ240aが変位してしまうことを抑制できる。
【0128】
[第2閉鎖部]
次に、
図19及び
図20A,Bを参照して、第2閉鎖部200bの第2閉鎖機構220bについて説明する。この第2閉鎖部200bは、一つの第2ピストン222b(第3移動部材)を有する点で、第1閉鎖部200aと異なる。なお、第2ピストン222bは、第1ピストン222a2と同じ構成を有するので、その詳細な説明は省略する。代替的に、第2ピストン222bは、第1ピストン222a1と同じように構成してもよい。
【0129】
図19は、閉鎖状態の第2閉鎖機構220bを示す概略斜視図である。また、
図20A,Bは、閉鎖状態及び開放状態の第2閉鎖機構220bを示す概略断面図であり、第2閉鎖機構220bの内部流路の中心軸に沿った長手方向断面を示している。なお、第2閉鎖機構220bは第2チューブ対110bに接続されているが、
図19及び
図20A,Bにおいては、説明の便宜上、第2チューブ対110bの図示は省略している。
【0130】
内部流路を閉鎖する第2閉鎖機構220bは、第2駆動部230bのプレッサーに押圧される(押し引きされる)第2ヘッド221bと、第2ヘッド221bが形成された略円筒状の第2ピストン222bとを備えている。また、第2閉鎖機構220bは、第2ピストン222bを摺動可能に収容する第2ハウジング224bを備えている。さらに、第2閉鎖機構220bは、第2チューブ対110bが接合される一対の第2導管部223bを備えている。
【0131】
第2ヘッド221bと、第2ピストン222bの本体との間には、テーパ面254bが形成されている。これにより、第2ピストン222bに一対の第2Oリング227b(
図20A,B)を容易に嵌めることができる。また、第2ハウジング224bには、第2ピストン222bを受け入れる穴が形成されている。この第2ハウジング224bには、第2ハウジング224bの外周に延在する第2補強リブ225bが形成されている。そして、第2補強リブ225bには、略中央部に第2薄肉部251bが形成されている。
【0132】
また、第2閉鎖機構220bは、第2ピストン222bの摺動方向Aにおける第2ハウジング224bの端部に配置された第2キャップ252bを有している。すなわち、第2キャップ252bは、摺動方向Aにおいて、第2ヘッド221bとは反対側に配置されている。この第2キャップ252bは、第2ハウジング224bの第2取付部253bに接着されている。さらに、第2取付部253bには、第2キャップ252bの回り止めとして機能する突起250b1が形成されている。第2キャップ252bには、突起250b1と相補的な形状を有する凹部250b2が形成されており、突起250b1は当該凹部250b2と係合する。
【0133】
図20Aに示すように、第2キャップ252bの内側には、第3厚肉部255bが形成されている。この第3厚肉部255bと当接するように、第2ピストン222bの第2キャップ252b側の端部には、側方に向かって突出する第2突出部256bが形成されている。第2突出部256bは、この第3厚肉部255bと当接し、第2ピストン222bの回り止めとして機能する。また、第2キャップ252bには、第2取付部253bの端部と当接する第2段差部257bが形成されている。この第2段差部257bが、第2取付部253bと第2キャップ252bとの間の蓋として機能する。
【0134】
第2ハウジング224bの第2キャップ252b側の端部には、第2キャップ252bの第3厚肉部255bと対応する位置に、第4厚肉部258bが形成されている。第2突出部256bは、この第4厚肉部258bと当接し、第2ピストン222bの回り止めとして機能する。なお、
図20Aにおいては、第2ピストン222bと重なる第4厚肉部258bを点線で図示している。
【0135】
第2閉鎖機構220bにおいても、第2キャップ252bの深さ、すなわち、第2ピストン222bの端面から第2キャップ252bの内面までの距離は、第2ピストン222bの移動距離よりも長く設定されている。そのため、内部流路を開放した状態でも、第2ピストン222bの端面と第2キャップ252bの内面との間には、わずかに隙間がある。また、摺動方向Aにおける第2突出部256bの長さも、第2ピストン222bの移動距離よりも長く設定されている。
【0136】
第2ピストン222bは、摺動方向Aにおいて短い略円形の断面を有する第2流路226bを備えている。内部流路(第2流路226b)を開放するときには、第2ピストン222bを第2キャップ252bに向けて(
図20A中下方)移動させる。そして、
図20Bに示すように、第2ピストン222bの第2流路226bを、第2導管部223b内の開口と対向させる。これにより、一対の第2導管部223bが、第2流路226bを介して液体連通し、内部流路が開放される。一方、第2ピストン222bを反対方向(
図20B中上方)に移動させると、
図20Aに示すように、第2ピストン222bの側面が、第2導管部223b内の開口と対向して、内部流路が閉鎖される。
【0137】
第2閉鎖機構220bは、第2ピストン222bに対応する一対の第2Oリング227bを有する。そして、第2流路226bは、一対の第2Oリング227bの間に形成されている。この第2Oリング227bは、第2ピストン222bの周面に形成された環状凹部内に嵌め込まれている。また、第2閉鎖機構220bは、一対の第2Oリング227bの間に配置されると共に、第2ピストン222bの第2流路226bの周囲を封止する第2スリーブ240bを有している。さらに、第2キャップ252bの内面側の第2角部259bは、いずれも面取りされ曲面が形成されている。これにより、第2閉鎖機構220bの組み立て時に、第2Oリング227bが第2角部259bと接触して傷つくことを抑制できる。
【0138】
[ローテータ付コネクター]
図21及び
図22を参照して、ローテータ付コネクターRについて説明する。
図21はコネクターRの概略分解斜視図であり、
図22はシリンジ接続後のコネクターRの長手方向に沿った概略断面図である。
【0139】
図21に示すように、コネクターRは、貫通穴701が形成されたローテータ700と、貫通穴701の先端(被験者側の端部)に取り付けられる先端部800とを有している。この貫通穴701の末端(注入装置608側の端部)には、シリンジの先端又はシリンジに接続されたチューブが取外し可能に接続される。このローテータ700の側面には、複数のリブ702が形成されている。また、先端部800は、側面と、側面に形成された傾斜爪802と、傾斜爪802から離間して側面に形成された環状凸部803とを有する。この環状凸部803は、傾斜爪802よりも先端部800の末端側に形成されている。さらに、先端部800には、薬液が流れる貫通穴801が形成されている。
【0140】
傾斜爪802は、徐々に高くなる段差を形成するように先端部800の側面から突出しており、側面に対して傾斜する斜面を有している。この傾斜爪802は、先端部800の周囲に等間隔で4つ形成されているが、3つ以下又は4つ以上の傾斜爪802が形成されていてもよい。また、先端部800は、先端部800の側面から突出している環状凸部803を有している。環状凸部803は傾斜爪802よりも高く側面から突出しており、環状凸部803と傾斜爪802との間には隙間が存在している。また、組み立てられたコネクターRにおいて、ローテータ700は先端部800に対して回転可能である。
【0141】
図22に示すように、ローテータ700は、貫通穴701内において突出する環状の係合爪703を有する。この係合爪703は、ローテータ700の先端に形成されている。コネクターRをシリンジに接続する際には、貫通穴701の末端にシリンジの先端を挿入して、ローテータ700を回転させる。これにより、ローテータ700の内面上に形成されたネジ溝704とシリンジの先端とが螺合する。このとき、係合爪703は、先端部800の傾斜爪802の斜面上を摺動し、傾斜爪802と環状凸部803の間の隙間に係合する。作業者は、係合爪703が係合する際にクリック感を得られるため、接続完了を確認することができる。
【0142】
螺合後には、係合爪703が傾斜爪802と当接し、ローテータ700の先端側への移動が規制される。このようなコネクターRを備えることにより、オペレーターは、シリンジの先端に触れずにシリンジを薬液回路2500に接続できる。なお、傾斜爪802は、先端部800の全周に1つのみ形成してもよい。ただし、全周に1つのみ形成した場合と比較して接触面積が減るため、4つの傾斜爪802を形成する場合には、螺合時の抵抗を抑えることができる。
【0143】
図23は第3オスコネクターM3に接続された液溜りキャップ900を示しており、
図24は液溜りキャップ900の概略斜視図である。この液溜りキャップ900は、エア抜き時に第3オスコネクターM3に接続される。これにより、薬液回路を満たして、第3オスコネクターM3から排出される薬液が液溜りキャップ900内に溜まるため、薬液の漏出が抑制される。エア抜き後、液溜りキャップ900は第3オスコネクターM3から取り外され、カテーテルが第3オスコネクターM3に接続される。
【0144】
図24に示すように、液溜りキャップ900は、平らな底面901と、円弧状の曲面からなる周面902と、周面から突出する接続口903とを備えている。平らな底面901を備えることにより、第3オスコネクターM3から取り外した液溜りキャップ900を載置することができる。そのため、接続口903から内部の薬液が漏れ出ることを防止できる。この液溜りキャップ900は、ポリプロピレン製であり、ブロー成形によって製造することができる。
【0145】
接続口903には、第3オスコネクターM3のオスルアーが挿入される。この接続口903の内部には4つの平面904が等間隔に形成されており、接続口903の内径はオスルアーの外径よりも大きい。そのため、オスルアーが挿入されると、接続口903の平面904の一部のみがオスルアーの外面に当接する。これにより、平面904の周辺においてオスルアーと接続口903との間には隙間が生じる。この隙間が液溜りキャップ900内の空気の逃げ道として機能する。
図24における接続口903の断面形状は矩形状であり、接続口903の角部は湾曲している。代替的に、接続口903は、多角形状(例えば正方形)の断面形状を有していてもよい。
【0146】
造影剤又は生理食塩水を吸引するときには、液溜りキャップ900を、一方弁付きチューブを介して第1オスコネクターM1及び第2オスコネクターM2に接続してもよい。これにより、薬液の吸引後に、一方弁付きチューブの先端からの薬液の漏出を抑制できる。この一方弁付きチューブ及び液だまりキャップは、薬液を吸引した後に、第1オスコネクターM1及び第2オスコネクターM2から取り外される。その後、第1オスコネクターM1及び第2オスコネクターM2には、第1下流チューブ507a及び第2下流チューブ507bがそれぞれ接続される。
【0147】
以上説明した第2実施形態の薬液回路2500によっても、血液の逆流をより確実に防止でき、且つ部品点数が少ないためより容易に注入装置608に装着可能である。また、第2実施形態の薬液回路2500においては、第1閉鎖部200aのエアセンサー606と注入装置608との間のラインに一方弁を配置していない。そのため、シリンジ内に存在するエアが、一方弁によって細分化されることを防止して、エア検知精度を向上できる。
【0148】
[第3実施形態]
図25は、第3実施形態に係る薬液回路3500の概略図である。なお、第3実施形態の説明においては、第1及び第2実施形態との相違点について説明し、第1及び第2実施形態において説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0149】
第3実施形態においては、第2ベースライン509の第2下流チューブ507bに、流路を閉鎖するクランプCL(例えば、特開2017-143851号公報に記載の閉鎖装置)を配置している。このクランプCLは、第2下流チューブ507bを支持する支持部と、支持部に向かって突出する突出部とを備えている。そして、突出部は、不図示の押圧部材によって押圧されて支持部に向かって移動する。なお、電動のクランプCLに代えて、手動のクランプを配置してもよく、又は第2閉鎖機構220bを接続してもよい。
【0150】
クランプCLによって第2下流チューブ507bを挟んで押し潰すことによって、第2下流チューブ507bの内部流路を閉鎖できる。一例として、注入装置608は、生理食塩水を注入するとき(プライミングを含む)以外は自動的に流路を閉鎖するように、クランプCLを制御する。代替的に、注入装置608は、造影剤又は生理食塩水を吸引するとき及び造影剤を注入するときに、開放状態のクランプCLを制御して流路を閉鎖してもよい。
【0151】
第2実施形態においては、造影剤又は生理食塩水を吸引するときには、第1オスコネクターM1及び第2オスコネクターM2に一方弁付きチューブを接続する。これにより、薬液の吸引時に、生理食塩水が第1ベースライン508に流入すること、及び造影剤が第2ベースライン509に流入することを防止できる。
【0152】
一方、第3実施形態においては、クランプCLによって第2下流チューブ507bの内部流路を閉鎖するため、一方弁付きチューブを接続しなくとも薬液吸引時の薬液の流入を防止できる。そのため、低コストで薬液回路3500を製造することができる。また、造影剤の注入時には、クランプCLによって第2下流チューブ507bの内部流路を閉鎖する。これにより、造影剤が第2ベースライン509に流入することを防止できる。
【0153】
以上説明した第3実施形態の薬液回路3500によっても、血液の逆流をより確実に防止でき、且つ部品点数が少ないためより容易に注入装置608に装着可能である。また、第3実施形態の薬液回路3500においては、エア検出部2400と注入装置608との間のラインに、一方弁を配置していない。そのため、シリンジ内にエアが存在していても、一方弁によってエアが細分化されることを防止して、エア検知精度を向上させることができる。
【0154】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0155】
例えば、注入装置608に搭載されるシリンジは、薬液が充填されているシリンジ及び薬液が充填されていない空シリンジのいずれであってもよい。そして、薬液が充填されているシリンジには、予め薬液が充填されているプレフィルドシリンジ、オペレーターが吸引器若しくは充填器で空のシリンジに薬液を充填して得られたシリンジ、及びオペレーターが手動により空のシリンジに薬液を充填して得られたシリンジが含まれる。なお、注入装置608に搭載される2つのシリンジには、濃度が異なる造影剤が充填されていてもよい。また、2つのシリンジのうち少なくとも一方のシリンジに、造影剤及び生理食塩水の混合薬液が充填されていてもよい。さらに、シリンジには、RFID(Radio Frequency Identifier)及びバーコード等のデーターキャリアを設けることができる。このデーターキャリアには、充填された薬液の情報が記録されている。そして、注入装置608は、データーキャリアから記録された情報を読み取り、薬液の注入圧力を制御できる。
【0156】
また、注入装置608は、撮像装置と有線又は無線接続することができる。そして、薬液の注入時及び画像の撮影時には、撮像装置と注入装置608との間で各種データが送受信される。この場合、例えば、注入装置608において撮像条件が設定又は表示されてもよく、撮像装置において注入条件が設定又は表示されてもよい。このような撮像装置としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、CT(Computed Tomography)装置、アンギオ撮像装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、超音波診断装置、及び血管撮像装置等の各種医療用撮像装置がある。
【0157】
また、注入装置608は、注入結果(注入履歴)に関する情報を、ネットワーク経由でRIS(Radiology Information System)、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)、及びHIS(Hospital Information System)等の外部記憶装置に送信し記憶させることもできる。
【0158】
さらに、注入装置608には、フットスイッチ及びハンドスイッチ等の遠隔操作装置が有線又は無線接続されていてもよい。オペレーターは、操作部609に代えて遠隔操作装置を操作して注入装置608を操作できる。例えば、オペレーターが遠隔操作装置のスタートボタンを押すと、注入装置608の制御装置は、注入装置608に薬液の注指令を送信する。さらに、オペレーターが遠隔操作装置を操作して、注入速度を変更してもよい。また、1つの閉鎖ユニット内に第1閉鎖部200a及び第2閉鎖部200bが一体的に設けられていてもよい。また、エアセンサー606は、光学式(例えば赤外線式)のセンサーであってもよい。さらに、また、第1ハウジング又は第2ハウジングは、第1駆動部又は第2駆動部に挿入し易い形状であれば、他の外側形状を有していてもよい。
【0159】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0160】
(付記1)
薬液回路の閉鎖機構の制御方法であって、
前記閉鎖機構の上流側のライン内の圧力を、前記閉鎖機構の下流側のライン内の圧力よりも高めた状態で、前記閉鎖機構の内部流路を開放する、制御方法。
【0161】
(付記2)
薬液の注入を開始してから所定時間経過した後に前記内部流路を開放する、付記1に記載の制御方法。
【0162】
(付記3)
前記閉鎖機構は、それぞれ流路を有する第1移動部材及び第2移動部材と、前記第1移動部材及び前記第2移動部材を摺動可能に収容するハウジングとを備えており、
前記第1移動部材の上流側のライン内の圧力を、前記第2移動部材の下流側のライン内の圧力よりも高めた状態で、前記第1移動部材の流路を開放する、付記1又は2に記載の制御方法。
【0163】
(付記4)
側面と、前記側面に形成された傾斜爪と、前記傾斜爪から離間して前記側面に形成された環状凸部とを有する先端部と、
前記先端部に対して回転可能であると共に、貫通穴と、前記貫通穴内において突出する係合爪とを有するローテータとを備え、
前記環状凸部は、前記傾斜爪よりも前記先端部の末端側に形成されている、コネクター。
【0164】
この出願は2017年3月28日に出願された日本国特許出願第2017-062582号からの優先権を主張し、その全内容を引用してこの出願の一部とする。
【符号の説明】
【0165】
100a:第1閉鎖部、120a:第1閉鎖機構、122a1:第1移動部材、122a2:第2移動部材、124a:第1ハウジング、130a:駆動部、200a:第1閉鎖部、220a:第1閉鎖機構、222a1:第1移動部材、222a2:第2移動部材、224a:第1ハウジング、230a:第1駆動部、500:薬液回路、503:被験者ライン、508:第1ベースライン、509:第2ベースライン、2500:薬液回路、3500:薬液回路