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特許7224056薄型均一銀ナノワイヤー、合成方法及びナノワイヤーから形成された透明導電性フィルム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】薄型均一銀ナノワイヤー、合成方法及びナノワイヤーから形成された透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20230210BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20230210BHJP
   B22F 1/0545 20220101ALI20230210BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20230210BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230210BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20230210BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20230210BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230210BHJP
   B82Y 99/00 20110101ALI20230210BHJP
【FI】
B22F1/00 K
B22F9/24 E
B22F1/0545
H01B5/00 H
H01B13/00 501Z
H01B5/14 A
B82Y30/00
B82Y40/00
B82Y99/00
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020531147
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018063995
(87)【国際公開番号】W WO2019113162
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】15/951,758
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/595,281
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514325310
【氏名又は名称】シー3ナノ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】C3Nano Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】ホゥ・ヨンシン
(72)【発明者】
【氏名】イン-シイ・リ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・シーチアン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・シュン・アン
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ・ビーカー
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-201007(JP,A)
【文献】特開2013-159825(JP,A)
【文献】国際公開第2016/160759(WO,A1)
【文献】特表2017-515983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00
B22F 9/24
B22F 1/17
H01B 5/00
H01B 13/00
H01B 5/14
B82Y 30/00
B82Y 40/00
B82Y 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール溶媒と、ポリビニルピロリドンと、塩化物塩及び臭化物塩とのブレンドを含んでなり、常磁性イオンを実質的に含まず、少なくとも1個であるが3個以下の窒素原子及び少なくとも1個の炭素原子を有する5員芳香族複素環カチオンを含んでなる反応溶液を形成するステップ、
前記反応溶液をピーク温度まで加熱するステップ、並びに
溶解性の銀塩を添加するステップ
を含んでなる、銀ナノワイヤーの合成方法。
【請求項2】
臭化物イオンのモルが、塩化物イオンのモルの約0.6~約15倍であり、
前記反応溶液は、前記5員芳香族複素環カチオンの濃度が約0.00002Mから0.005Mである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも約145℃のピーク温度に達するように反応混合物を加熱し、その後、前記加熱を終了しても、終了しなくてもよい、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応溶液が、アンモニウム、有機官能基を有するアンモニウム、アルカリカチオン又はその混合物を含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記芳香族複素環カチオンが、イミダゾリウム、ピラゾリウム、その誘導体又はその混合物を含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応溶液が、PVP K30及びPVP K90のブレンドを含んでなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶解性の銀塩が標的ピーク温度の±5℃の範囲内で添加され、且つ段階的な冷却を可能にするために、前記加熱が中止されるか、又は減少される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
反応器中に添加された量に基づく前記反応溶液の濃度が、PVPは0.1重量%~10重量%、臭化物塩は0.00002M~0.005M、塩化物塩は0.00002M~0.005M、イミダゾリウム塩は0.00002M~0.005M、そしてAgNOは0.0025M~0.25Mである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶解性の銀塩と一緒に、又は前記溶解性の銀塩の前記添加後に、2~40パーセントの前記溶媒が添加される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応の開始時における反応器中の混合物が、約0.01~約5重量%の水をさらに含んでなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
完了した反応混合物から、約18nm以下の平均直径及び約2.5nm以下の直径の標準偏差を有する銀ナノワイヤーを精製することをさらに含んでなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ポリオール溶媒と、ポリビニルピロリドンと、塩化物及び/又は臭化物を含んでなる塩と、少なくとも1個であるが3個以下の窒素原子及び少なくとも1個の炭素原子を含んでなる5員芳香族複素環を有する中性有機化合物とのブレンドを含んでなる反応溶液を形成するステップ、
前記反応溶液をピーク温度まで加熱するステップ、並びに
溶解性の銀塩を添加するステップ
を含んでなる、銀ナノワイヤーの合成方法。
【請求項13】
前記溶解性の銀塩が標的ピーク温度の±5℃の範囲内で添加される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記5員芳香族環を有する化合物が、イミダゾール、ピラゾール、イミダゾールの誘導体、ピラゾールの誘導体又はその混合物である、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
反応器中に添加された量に基づく前記反応溶液の濃度が、PVPは0.1重量%~10重量%、臭化物塩は0.00002M~0.005M、塩化物塩は0.00002M~0.005M、芳香族複素環化合物は約0.0001M~約0.1M、そしてAgNOは0.0025M~0.25Mであり、前記反応溶液が、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、その誘導体又はその混合物を含んでなる、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶解性の銀塩と一緒に、又は前記溶解性の銀塩の前記添加後に、2~40パーセントの前記溶媒が添加される、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
反応の開始時における前記反応溶液が、約0.01~約5重量%の水をさらに含んでなる、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
完了した反応混合物から、約20nm以下の平均直径及び約3.5nm以下の直径の標準偏差を有する銀ナノワイヤーを精製することをさらに含んでなる、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
透明基材と、前記透明基材の表面上の薄く広がった金属導電性層とを含んでなる、透明電気導電性構造であって、
約100ohms/sq以下のシート抵抗、少なくとも約90%の可視光の全透過度、及び約0.60%以下のヘイズを有し、
黒色表面を有する基材上の拡散反射構造において得られたΔL値が2.0以下の値であり、ΔLは、前記透明電気導電性構造のLから、薄く広がった金属導電性層又はオーバーコート層を有さない参照構造のLを差し引いたものである、透明電気導電性構造。
【請求項20】
前記薄く広がった金属導電性層が多糖を含んでなる、請求項19に記載の透明電気導電性構造。
【請求項21】
前記薄く広がった金属導電性層が溶融金属導電性ネットワークを含んでなる、請求項19又は20に記載の透明電気導電性構造。
【請求項22】
前記薄く広がった金属導電性層上にポリマーオーバーコートをさらに含んでなる、請求項19~21のいずれか一項に記載の透明電気導電性構造。
【請求項23】
約75ohms/sq以下のシート抵抗、少なくとも約91%の可視光の全透過度、及び約0.35%以下のヘイズを有する、請求項22に記載の透明電気導電性構造。
【請求項24】
0.40%以下のヘイズ、及び1.5以下のΔLを有する、請求項22又は請求項23に記載の透明電気導電性構造。
【請求項25】
前記ポリマーオーバーコートがアクリレートポリマーを含んでなる、請求項22~24のいずれか一項に記載の透明電気導電性構造。
【請求項26】
約75ohms/sq以下のシート抵抗、少なくとも約91%の可視光の全透過度、及び約0.40%以下のヘイズを有する、請求項19又は20に記載の透明電気導電性構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Thin and Uniform Silver Nanowires,Methods of Synthesis and Transparent Conductive Films Formed from the Nanowires」と題された、Huらに対する2017年12月6日に出願された米国仮特許出願第62/595,281号及び「Thin and Uniform Silver Nanowires,Methods of Synthesis and Transparent Conductive Films Formed from the Nanowires」と題された、Huらに対する2018年4月12日に出願された係属中の米国特許出願第15/951,758号の(両方とも参照によって本願明細書に組み込まれる)優先権を主張する。
【0002】
本発明は、非常に均一な直径で有用な量で組み立てることができる、非常に小さい直径及び大きいアスペクト比を有する銀ナノワイヤーに関する。さらに本発明は、限定されないが、合成のために特に望ましい触媒をベースとする方法を含む、ナノワイヤーの合成方法に関する。同様に、本発明は、高い透明度及び低い電気抵抗を達成しながらも、非常に低いヘイズを有する透明導電性フィルムにも関する。
【背景技術】
【0003】
銀ナノワイヤーは、酸化インジウムスズ及び他の導電性材料などの従来の導電性酸化物に対する、より用途の広い選択肢としての透明電気導体及び他の導体応用に関する有望な技術を意味する。種々の用途に対する銀ナノワイヤーの市場浸透は今まで限定されていたが、銀ナノワイヤーが高性能応用のための材料の供給増大をもたらすであろうことが予想される。銀ナノワイヤーは、一般に、合成後、製品中に組み込むための構造にされる。したがって、商業化努力の第1のステップは銀ナノワイヤーの合成を伴う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、本発明は、銀を含んでなり、且つ約20nm以下の平均直径及び約2.5nm以下の直径の標準偏差を有するナノワイヤーの集合体に関する。薄型均一ナノワイヤーに関しては、ナノワイヤーの集合体は、ジメチルスルホキシド溶媒による希釈溶液中で測定される場合、狭い吸収ピークと一緒の、約0.225以下である最大吸収に対する410nmにおける吸収を特徴とすることができる。いくつかの実施形態において、ナノワイヤーの約10%以下が18nmより大きい直径を有する。
【0005】
さらなる態様において、本発明は、ポリオール溶媒、ポリビニルピロリドン、塩化物塩及び臭化物塩のブレンドを含んでなる、常磁性イオンを実質的に含まない反応溶液を形成することを含んでなる、銀ナノワイヤーの合成方法に関する。反応溶液は、少なくとも1個であるが3個以下の窒素原子及び少なくとも1個の炭素原子を有する5員芳香族複素環式カチオンを含んでなる。適切な5員複素環式イオンとしては、例えば、イミダゾリウム、ピラゾリウム、その誘導体及びその混合物が含まれる。選択されたピーク温度に達するように反応溶液を加熱することができ、その後、加熱を終了しても、終了しなくてもよい。溶解性の銀塩を反応溶液に添加する。いくつかの実施形態において、溶解性の銀塩は、ピーク温度に達する付近又は後、例えば約5℃の範囲内で添加することができる。
【0006】
別の態様において、本発明は、ポリオール溶媒と、ポリビニルピロリドンと、塩化物及び/又は臭化物を含んでなる塩と、少なくとも1個であるが3個以下の窒素原子及び少なくとも1個の炭素原子を含んでなる5員芳香族複素環を有する中性有機化合物とのブレンドを含んでなる反応溶液を形成するステップ、反応溶液をピーク温度まで加熱するステップ、並びに溶解性の銀塩を添加するステップを含んでなる、銀ナノワイヤーの合成方法に関する。いくつかの実施形態において、溶解性の銀塩は、ピーク温度に達する付近又は後、例えば約5℃の範囲内で添加することができる。中性有機化合物は、イミダゾール、ピラゾール、その誘導体又はその混合物であることができる。
【0007】
他の態様において、本発明は、透明基材と、透明基材の表面上の薄く広がった金属導電性層とを含んでなる、透明電気導電性構造に関する。本明細書に記載される改良された銀ナノワイヤーをベースとする実施形態において、透明電気導電性構造は、約100ohms/sq以下のシート抵抗、少なくとも約90%の可視光の全透過度、及び約0.60%以下のヘイズを有することができる。いくつかの実施形態において、黒色表面を有する基材上の反射構造において得られたΔL値は2.0以下の値である。ΔLは、電気導電性構造のLから、薄く広がった金属導電性フィルムを有さない構造のLを差し引いたものである。
【0008】
追加の態様において、本発明は、透明基材と、透明基材の第1の表面上の第1の薄く広がった金属導電性層と、第1の表面の反対側の基材の第2の表面上の第2の薄く広がった金属導電性層とを含んでなる、透明電気導電性構造に関する。いくつかの実施形態で、透明電気導電性構造のそれぞれの表面は、約100ohms/sq以下のシート抵抗を有し、且つ透明電気導電性構造は、少なくとも約90%の可視光の全透過度、及び約0.90%以下のヘイズを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】反応物の第1の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図2図1のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図3図1に示されたナノワイヤーに関するUV-可視吸収スペクトルである。
図4】PVP K90キャッピングポリマー以外、図1の銀ナノワイヤーを形成するために使用された反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図5図4のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図6】PVP 85Nキャッピングポリマー以外、図1の銀ナノワイヤーを形成するために使用された反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図7図6のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図8図6に示されたナノワイヤーに関するUV-可視吸収スペクトルである。
図9】第1の別の臭化物塩以外、図1の銀ナノワイヤーを形成するために使用された反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図10図9のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図11図9に示されたナノワイヤーに関するUV-可視吸収スペクトルである。
図12】第2の別の臭化物塩以外、図1の銀ナノワイヤーを形成するために使用された反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図13図13のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図14】対照反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図15図14のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図16】第1の濃度においてイミダゾール触媒の添加を行って、図14の銀ナノワイヤーを形成するために使用された対照反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図17図16のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図18図14に示された銀ナノワイヤーに関する対照スペクトルと一緒の、図16に示されたナノワイヤーに関するUV-可視吸収スペクトルである。
図19】第2の濃度においてイミダゾールの添加を行って、図14の銀ナノワイヤーを形成するために使用された対照反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図20図19のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図21図14に示された銀ナノワイヤーに関する対照スペクトルと一緒の、図19に示されたナノワイヤーに関するUV-可視吸収スペクトルである。
図22】第1の濃度においてイミダゾールの添加を行って、図1の銀ナノワイヤーを形成するために使用された反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図23図22のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図24】イミダゾール添加剤を用いずに比較のために形成された銀ナノワイヤーに関する対照スペクトルと一緒の、図22に示されたナノワイヤーに関するUV-可視吸収スペクトルである。
図25】第2の濃度においてイミダゾールの添加を行って、図1の銀ナノワイヤーを形成するために使用された反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図26図25のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図27】イミダゾール添加剤の添加を行わない銀ナノワイヤーに関する対照スペクトルと一緒の、図25に示されたナノワイヤーに関するUV-可視吸収スペクトルである。
図28】ピラゾールの添加を行って、図1の銀ナノワイヤーを形成するために使用された反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図29図28のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図30】イミダゾール添加剤の添加を行わない銀ナノワイヤーに関する対照スペクトルと一緒の、図28に示されたナノワイヤーに関するUV-可視吸収スペクトルである。
図31図28の銀ナノワイヤーを形成するために使用された反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図32図31のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図33】イミダゾール添加剤の添加を行わない銀ナノワイヤーに関する対照スペクトルと一緒の、図31に示されたナノワイヤーに関するUV-可視吸収スペクトルである。
図34】5倍の体積スケールアップを行って、図28の銀ナノワイヤーを形成するために使用された反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図35図34のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図36】ピラゾール添加剤の添加を行わない銀ナノワイヤーに関する対照スペクトルと一緒の、図34に示されたナノワイヤーに関するUV-可視吸収スペクトルである。
図37】反応器への少量の水の添加を行って、図1の銀ナノワイヤーを形成するために使用された反応物に相当する反応物の組を使用して形成された銀ナノワイヤーの透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
図38図37のナノワイヤーを形成するために使用された反応条件を使用して製造された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径をプロットするヒストグラムである。
図39】イミダゾール添加剤の添加を行わない銀ナノワイヤーに関する対照スペクトルと一緒の、図37に示されたナノワイヤーに関するUV-可視吸収スペクトルである。
図40】導電性層上にオーバーコートを有する、基材上に溶融金属ナノ構造化ネットワークを含んでなる導電性層を有する構造の断面概略図である。
図41図40の構造を黒色表面上に接着する光学的に透明な接着剤層を有する黒色表面を有し、環式オレフィン基材の反対側表面上に反射防止層が追加された構造の断面概略図である。
図42】導電性層又はオーバーコート層を有さない、図41の構造に相当する対照構造である。
図43】透明導電性フィルムに適用されたポリマーオーバーコートを有する基材の反対側表面に適用された透明導電性フィルムを有する基材の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
改善された性能を有する透明導電性フィルムの製造のために使用することが可能な、非常に小さい直径を有する高度に均一な銀ナノワイヤーの製造のための合成技術が提供される。いくつかの実施形態において、均一ナノワイヤーは、約20nm以下の平均直径及び約2.5nm以下の直径の標準偏差によって表される均一性を有することができる。ナノワイヤーは、ナノワイヤーの希釈溶液の分光学的特性をさらに特徴とすることができ、そして分光学的特性決定によってナノワイヤーの集合体の特性を特徴づけるための別のアプローチが提供される。合成技術は塩化物ベースの触媒及び臭化物ベースの触媒の両方の使用をベースとすることが可能であり、そしていくつかの実施形態において、触媒の少なくとも1種は、イミダゾリウムなどの5員芳香族複素環式カチオンをベースとする触媒を有し得る。追加の、又は別の実施形態において、イミダゾール、ピラゾール、その他の異性体、或いはその誘導体などの非イオン性5員有機複素環式化合物も触媒として添加することができる。反応は、精製銀ナノワイヤーの高度の均一性とともに、小さい平均ワイヤー直径を達成するように制御可能である。精製銀ナノワイヤーは非常に小さい平均直径とともに、より高度の均一性を示すことが可能であり、そして高度に望ましい特性の透明導電性フィルムの形成のために分散体/インク中に配合されることが可能である。特に、製品透明導電性フィルムは、ディスプレイ用途に関して重要な特性である、非常に低いヘイズ及び望ましく暗い反射特性を達成することができる。
【0011】
銀ナノワイヤーの分散体を表面上に堆積させて、そして導電性フィルムへと加工することができる。結果として得られる導電性フィルムは、その機械特性、可視光に対する透明度、これらの特徴の組合せ、又は導電性フィルムの他の態様のために望ましくなる可能性がある。特に、透明導電性フィルムを形成するためのナノワイヤーの使用は、ディスプレイを有するデバイスにおける有意な応用を有することができる。銀ナノワイヤーをフィルムへと加工することは、結果として得られる特性に有意に影響を与える可能性があるが、高品質ナノワイヤーの使用は、結果として得られる透明導電性フィルムの品質における有意要因となる可能性もある。ナノワイヤーの品質はいくつかの要因によって影響を受ける可能性があるが、重要な要因としては、ナノワイヤーの純度、ナノワイヤーの薄さ、アスペクト比、及び本明細書に記載されるナノワイヤーサイズの均一性が含まれる。本明細書に記載の薄型均一銀ナノワイヤーは、非常に低いヘイズ及び非常に低い色彩強度、又は本明細書中、以下にさらに説明されるCIELABスケールにおける反射Lとして表される明度を有する透明導電性フィルムの製造において有効となる可能性がある。
【0012】
本明細書に記載される合成アプローチは、高度の均一性を有する特に薄いナノワイヤーの合成に関して好結果であった。加えて、合成アプローチは、結果として得られる銀ナノワイヤーの即時商業化をもたらすための適切な精製技術を受けることができる型式で高い収率を達成した。銀ナノワイヤーの高度に薄型且つ均一の特徴のために、電気伝導率(低いシート抵抗)及び高い透過率の所望の値において改善された低レベルのヘイズ及び反射率を有する透明導電性フィルムへとナノワイヤーを加工することは可能であった。
【0013】
銀ナノワイヤーの合成のためのいくつかの別のアプローチが報告されているが、銀ナノワイヤー合成のための商業的に実行可能なアプローチは、一般にポリビニルピロリドンキャッピング剤及びグリコール溶媒還元剤を伴う、ポリオールプロセスと呼ばれるものをベースとするものであった。ポリビニルピロリドンキャッピング剤をベースとする銀ナノワイヤー合成のためのポリオールプロセスの第1の報告は、一般に、参照によって本明細書に組み込まれる「Synthesis and Characterization of Fine and Monodisperse Silver Particles of Uniform Shape」と題された、Ducamp-Sanguesaら,Journal of Solid State Chemistry,100,272-280(1992)に帰される。この技術は、Xia教授(Professor Xia)の研究室によって拡張された。「Methods of Nanostructure Formation and Shape Selection」と題された、Xiaらに対する米国特許第7,585,349号明細書及びWileyら,「Synthesis of Silver Nanostructures with Controlled Shapes and Properties」,Acc.Chem.Res.2007,40,1067-1076を参照のこと。両方とも参照によって本明細書に組み込まれる。Xiaら,「Shape Controlled Synthesis of Metal Nanocrystals:Simple Chemistry Meets Complex Physics?」Angew.Chem.Int.Ed.,48,60(2009)によって、Fe+2又はCu+2ハロゲン化物塩を用いて同様の合成が実行された。種々の他の金属ハロゲン化物塩の使用は、金属ナノワイヤー合成において使用されてきた。金属ハロゲン化物の代用としての第四ホスホニウム塩の使用は、参照によって本明細書に組み込まれる「Nanowire Preparation Methods,Compositions,and Articles」と題された、Whitcombに対する米国特許第8,741,025号明細書に記載される。
【0014】
常磁性アニオンを有するハロゲン化イミダゾリウムは、Joら,「Synthesis of small diameter silver nanowires via a magnetic-ionic-liquid-assisted polyol process」,RSC Advances 2016,6,104273-104279において議論される通り、銀ナノワイヤーの形成のための触媒として使用されてきた。Joらの研究はFeCl アニオンを伴った。彼らの研究のいくつかは、bmimBrと一緒に1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロフェラート(bmim(FeCl))の使用を伴った。イミダゾリウム塩触媒を用いる本研究は、常磁性成分(FeCl)の使用を回避しており、そしていくつかの実施形態においては、イミダゾリウムカチオンと組み合わせて、より単純なカチオンを有する別の第二塩を使用する。反応溶液中の鉄カチオンの存在は、本研究において回避される有意な様式で合成条件を変更する。本研究は、合成条件の態様においてもJoらとは異なる。本研究は、Joらの結果と比較して、高度に均一なナノワイヤー、並びにより薄いナノワイヤーの形成を伴う。
【0015】
一般に、反応は、エチレングリコール、プロピレングリコール、その組合せなどの液体ポリオール溶媒中で実行される。ポリビニルピロリドンキャッピング剤が使用され、そして種々の分子量のPVPポリマーが例証される。より薄いナノワイヤーを合成するためのより高分子量のポリビニルピロリドンの使用は、参照によって本明細書に組み込まれる、da Silvaら,「Facile Synthesis of Sub-20 nm Silver Nanowires Through Bromide-Mediated Polyol Method」,ACSNano 2016,10,7892-7900に記載される。
【0016】
本明細書に記載される均一薄型銀ナノワイヤーは、5員芳香族複素環部分を有するカチオンによって合成され、そしてこれらはいくつかの特定の実施形態に関連して記載される。有機複素環式カチオンは、ハロゲン化物として都合よく提供可能であるが、硝酸塩などのこれらのカチオンを有する他の塩も有効に使用されることができる。有機複素環式カチオンがハロゲン化物として提供されるかどうかにかかわらず、ハロゲン化物アニオンは、追加的に又は代わりに、Na、K、NH 、その混合物などの反応条件に適切なカチオンを有することができる。いくつかの特に望ましいカチオン性複素環は最初に議論され、そしてこれらのカチオン性触媒のより一般的な議論は後の部分に提供される。
【0017】
いくつかの実施形態において、イミダゾリウム塩化合物、例えば、塩化物及び/又は臭化物塩、(1,3-置換ジアザシクロペンタ-2,4-ジエンハロゲン化物)は、次式:
【化1】
(式中、R及びRは、独立して水素、直鎖、分岐鎖又は環式アルキル基、例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、シクロヘキシル、不飽和基、例えばビニル、アリールアルキル基、例えばベンジル、ナフチルメチル、又は少なくとも30個までの炭素原子を有する他の基であるが、ただし、R及びRの両方が水素であることはなく、且つRは、ハロゲン又はR及びRに関して記載されたいずれかの置換基であり、且つ独立して、5員環の2位、4位若しくは5位に位置し得、且つX-は、アニオン、例えばBF 、PF 、Cl又はBrである)によって表すことができる。対称性のため、1位及び3位が同等物であることに留意されるが、いくつかのイミダゾリウムベースの化合物は、3位において1-メチル基及びより長鎖を有する。環の他の位置に追加の置換基があることも考えることができる。本明細書の反応溶液中、溶液は、溶液中のイオンの平衡条件を変更することが予想される錯化金属カチオンを含ない。同様に、本発明の反応溶液は常磁性成分を含まない。遊離塩化物イオンは、一般に、塩化銀の非常に低い溶解性のため、小粒子として形成することができる塩化銀を沈殿させる。臭化銀もグリコール中で非常に低い溶解性を有する。もちろん平衡時に、少量の塩化銀及び臭化銀の両方がそれぞれの平衡定数に従ってグリコール中で溶解する。
【0018】
さらに、ピラゾリウム塩、例えば、ハロゲン化物はイミダゾリウム塩の異性形態であり、且つ有用な触媒化合物である可能性がある。集合的に、イミダゾリウム及びピラゾリウムイオンを、環上に2個の窒素原子を有する5員芳香族環をベースとするジアゾリウムと呼ぶことができる。ピラゾリウム塩の一般構造は、次式:
【化2】
(式中、R、R及びRは、それぞれ、イミダゾリウム塩に関して上記された通りであり、且つピラゾリウム塩に関して同一であることが可能であり、且つXはアニオンである)によって表される。
【0019】
さらに5員芳香族複素環イオンは、チアゾリウム塩:
【化3】
(式中、R及びRは、それぞれ、イミダゾリウム塩に関して記載された通りであり、且つRは、水素、直鎖、分岐鎖又は環式アルキル基、例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、シクロヘキシル、不飽和基、例えばビニル、アリールアルキル基、例えばベンジル、ナフチルメチル、又は少なくとも30個までの炭素原子を有する他の基であり、且つXは、アニオン、例えばCl又はBrである)などの選択された5員芳香族複素環によって表される。
【0020】
塩化物触媒及び臭化物触媒の組合せの使用は、参照によって本明細書に組み込まれる、「Scalable Coating and Properties of Transparent,Flexible,Silver Nanowire Electrodes」と題されたHuら(以後、Hu)の論文、ACSNano,Vol.4(5),(2010年4月),2955-2963に記載されている。本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、触媒中のイミダゾリウムイオンは、非常に小さく且つ均一サイズを有する改良された銀ナノワイヤーを合成するための改善されたプロセス制御と組み合わせられる。一般に、塩化物塩及び臭化物塩の両方を使用することができる。同様に、非ポリマー有機分子、イミダゾール及びその誘導体は、ナノワイヤーの幾何構造を改善することが見出された。
【0021】
イオン触媒との組合せにおいて、より薄い高度に均一なナノワイヤーの合成をさらに容易にするための中性有機触媒の使用が見出された。溶解性の小有機触媒分子によって、いくつかの実施例が提示される。例えば、イミダゾール化合物及びピラゾール化合物(又はより一般に、炭素及び窒素を有する5員芳香族複素環式環)は、高収率でさらにより均一であるナノワイヤーを製造しながら、選択されたイオン触媒によるより薄型のナノワイヤーの形成に寄付することが実施例に示される。非イオン性有機触媒添加剤の使用は、合成を容易にする薬剤の新規分類として提供する。中性有機触媒は、適切なハロゲン化物塩触媒と組み合わせて使用された。15nm未満の直径を有するナノワイヤーの有意な割合を有するナノワイヤーの集合体を形成することが可能であることが示される。
【0022】
当該分野において、プロピレングリコールもエチレングリコールの代用として、又はエチレングリコールと混合された状態で銀ナノワイヤー合成用に作用することが知られているが、以下の実施例はエチレングリコール溶媒をベースとするものである。キャッピング剤に関して、ポリビニルピロリドン(PVP)及びPVPコポリマーが成功裏に使用されている。他の極性ポリマーが(PVP)の代用になる可能性も想像できるが、今までのところ、ポリオールによって引き起こされる合成において他のポリマーキャッピング剤による同等の結果の報告はなされていない。PVPコポリマーは、参照によって本明細書に組み込まれる、「Process for Making Silver Nanostructures and Copolymer Useful in Such Process」と題された、Alsayedらに対する米国特許出願公開第2014/0178247A1号明細書に記載されるように、比較的厚い銀ナノワイヤーを合成するために使用されていた。ポリマーキャッピング剤の使用を伴わない水性合成アプローチは、参照によって本明細書に組み込まれる、「Metal Nanowires,Methods for Producing the Same and Transparent Conductor」と題された、Miyagishimaらに対する米国特許出願公開第2010/0078197A1号明細書で議論されている。実施例の結果は、約40,000g/モル~50,000g/モルの分子量を有するPVP K30、約1,000,000の分子量を有するより純粋な形態のPVPであるPVP K85N、又は約900,000~1,600,000の分子量を有するPVP K90(PVP K90、BASF)を使用して報告される。PVPのK値は、特定の粘度測定値に関連するが、これらの値は一般に分子量範囲に変換可能である。ポリマーは、一般に、容認された分析技術に基づいて推定される分子量の範囲によって特徴づけられる。分子量の分布は、使用される合成技術次第であり、そして特定の製品に対して変動し得る。BASFは世界最大のPVP供給業者であると考えられるが、Ashland Chemical Company及びNippon Shokubaiなどの他の供給元も知られている。より高分子量のPVPによって、より小さい直径、すなわち、より薄型のナノワイヤーが得られる傾向があったが、収率がいくらか低下した。
【0023】
より高いピーク温度と一緒に触媒を選択することによって、より短い反応時間がもたらされるが、高いナノワイヤー収率ももたらされる。一般に、本明細書の反応は、周知の同等の合成技術と比較して改善された収率をもたらすものである。高い収率及びより短い反応時間は、商業的なナノワイヤー合成に関して望ましい特徴である。高い反応温度及び短い反応時間は、上記で引用されたHuによっても使用されていた。しかしながら、Huは固体塩化銀触媒を使用しており、そしてこれらの反応物による出願人の経験によると、いくらかより薄型のワイヤーを得るために、より低い反応温度及びより長い反応時間が示唆される。本明細書に記載の反応物系を使用すると、より高いピーク反応温度及びより短い反応時間でさえも、非常に薄く、且つ均一の銀ナノワイヤーが得られる。当該技術における経験に基づき、銀ナノワイヤーの直径は、より大規模な製造収率に関して、約22nmに制限されている。より薄型のワイヤーを製造するためのいくつかの努力によって、銀ナノワイヤー平均直径のわずかな減少に成功しているが、一般に均一性及び/又は収率を犠牲にするものであった。本明細書の観点によって、直径均一性を改善しながら、且つ22nmの平均直径において達成された収率に相当する収率を得ながらも、前例のない薄型ナノワイヤーに成功した。
【0024】
いくつかの実施形態において、改良された銀ナノワイヤーは、約20ナノメートル(nm)以下及び一般に約19nm以下の平均直径を有することができる。相応して、ナノワイヤーは同時に高度の均一性を有し、これは両方とも以下に説明される通り、顕微鏡写真及び分光学的測定における直径の測定によって決定される。ナノワイヤー直径は、電子顕微鏡法からのイメージの試験によって決定することができる。平均は、一般に、約100本の代表的なナノワイヤーの測定を通して評価される。直径の均一性は好都合に標準偏差として表すことができるが、指定されたカットオフ値以下(特に18nm以下)のワイヤーの数などの直径分布の他の態様によっても分布の有用な特性決定をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、標準偏差は約3.5nm以下である。同様に、いくつかの実施形態において、銀ナノワイヤーの少なくとも約75%が18nm未満の直径を有する。平均ナノワイヤー長さは約10ミクロン~約30ミクロンであることが可能である。歴史的に、ナノワイヤー長さは重要なパラメーターであると考えられていたが、約10ミクロンを超える長さに達すると、さらなる長さの増加が、ナノワイヤーから形成される透明導電性層の特性を有意に改善しないことが分かった。適切な分散剤中でのUV可視吸収スペクトルもナノワイヤーの特徴決定のために使用することができる。低濃度における正規化スペクトルは一般に濃度に有意に影響を受けないが、適切な液体は0.005重量%の銀ナノワイヤー濃度を有するジメチルスルホキシド(DMSO)であることが可能である。本明細書に使用される場合、正規化吸収スペクトルは、300nm~800nmの波長範囲内で最高値1及び最低値0に設定される。平均ナノワイヤー直径が小さくなるにつれて、吸収最大はより低い波長にシフトする傾向がある(ブルーシフト)。銀ナノワイヤーが均一になるほど、吸収ピークが狭くなる傾向がある。まだ完全に理解されていないピーク形状における変化のため、吸収ピークが狭くなることへの追加的な寄与があり得る。それにもかかわらず、均一薄型銀ナノワイヤーに関して、吸収ピークは狭く、且つブルーシフトしている。これは410nmにおける吸収の減少によって、又は吸収ピーク幅によって測定可能である。
【0025】
本明細書の特定の目的の透明な電気導電性要素、例えば、フィルムは、薄く広がった金属導電層を含む。導電層は一般的に、所望の量の光学透明性をもたらすように薄く広がっているので、金属の被覆範囲は導電性要素の層の上に、及びその間にかなり大きい間隙を有する。例えば、透明な電気導電性フィルムは、層に沿って堆積される金属ナノワイヤーを含むことができ、電子パーコレーションのために十分な接触をもたらして適した導電経路を提供することができる。薄型及び均一な銀ナノワイヤーは、薄く広がった金属導電性層を伴う透明導電性フィルムを提供する構造の範囲で有効に使用されることが可能である。他の実施形態において、透明電気導電性フィルムは、所望の電気的及び光学的特性を示すことが分かっている溶融金属ナノ構造化ネットワークを含んでなることができる。
【0026】
一般に、種々の薄く広がった金属導電性層は、金属ナノワイヤーから形成可能である。導電率を改善するために接合部においてナノワイヤーを平坦化するために加工される金属ナノワイヤーから形成されたフィルムは、参照によって本明細書に組み込まれる、「Transparent Conductors Comprising Metal Nanowires」と題された、Aldenらに対する米国特許第8,049,333号明細書に記載されている。金属導電率を増加させるための表面包埋金属ナノワイヤーを含んでなる構造は、参照によって本明細書に組み込まれる、「Patterned Transparent Conductors and Related Manufacturing Methods」と題された、Srinivasらに対する米国特許第8,748,749号明細書に記載されている。しかしながら、高い電気伝導率、並びに透明度及び低いヘイズに関する所望の光学特性に関して、溶融金属ナノ構造化ネットワークの改善された特性が見られた。隣接した金属ナノワイヤーの溶融は、商業的に適切なプロセス条件下での化学プロセスに基づいて実行可能である。
【0027】
特に、金属ナノワイヤーをベースとした電気導電性フィルムの達成に関する著しい前進は、金属ナノワイヤーの隣接した部分が融着する融着金属ネットワークを形成するための十分に制御可能な方法の発見であった。特に、ハロゲン化物イオンが、融着金属ナノ構造を形成するために金属ナノワイヤーの融着を促すことができることが発見された。ハロゲン化物アニオンを含む融剤が、電気抵抗の対応する大幅な低下を伴って融着を首尾よく行うために様々な方法で導入された。
このプロセスに関連するハロゲン化物イオンは、ナノワイヤー合成反応において使用されるハロゲン化物イオンと混同されるべきではないことは留意されるべきである。具体的には、ハロゲン化物アニオンによる金属ナノワイヤーの融着は、蒸気および/または酸ハロゲン化物の溶液ならびにハロゲン化物塩の溶液を用いて行われた。ハロゲン化物源による金属ナノワイヤーの融着はさらに、“Metal Nanowire Networks and Transparent Conductive Material”と題されたVirkarらに対する米国特許出願公開第2013/0341074号明細書、および“Metal Nanostructured Networks and Transparent Conductive Material”と題されたVirkarらに対する米国特許第9920207号明細書(‘207特許)(両方とも参照によって本願明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0028】
融着金属ナノワイヤーネットワークを形成するための方法の拡張は、得られるフィルムの光学的性質を損なわずに、融着ナノワイヤーをもたらすように提供され得る還元/酸化(レドックス)反応に基づいていた。接合部における堆積のための金属は、溶解された金属塩として有効に加えられ得、または金属ナノワイヤー自体から溶解され得る。金属ナノワイヤーをナノ構造ネットワークへと融着するためのレドックス化学の効果的な使用はさらに、“Fused Metal Nanostructured Networks,Fusing Solutions with Reducing Agents and Methods for Forming Metal Networks”と題されたVirkarらに対する米国特許出願公開第2014/0238833A1号明細書(‘833出願)(参照によって本願明細書に組み込まれる)に記載されている。‘833出願には、融着金属ナノ構造ネットワークの形成のための単一溶液手法も記載されている。融着金属ナノ構造層の形成のための単一溶液手法はさらに、“Metal Nanowire Inks for the Formation of Transparent Conductive Films with Fused Networks”と題された、Liらに対する米国特許第9,183,968B1号明細書(以下、‘968特許)(参照によって本願明細書に組み込まれる)に記載されており、融着金属ナノ構造ネットワークを形成するための単一溶液またはインク処理が、以下の実施例に使用される。
【0029】
硬化して融着ナノ構造金属ネットワークになる有効な単一堆積インクを達成するのに望ましいインクは、得られるフィルム中の金属の適切な充填量を達成するために所望の量の金属ナノワイヤーを含む。適切な溶液中で、インクは、インクの堆積および乾燥の前に安定している。インクは、さらなる処理のために安定した導電性フィルムの形成に寄与する妥当な量のポリマーバインダーを含み得る。一インク系で良好な融着結果を得るために、セルロースまたはキトサン系ポリマーなどの親水性ポリマーは、有効であることが判明した。融着プロセスの金属の源としての金属イオンが、可溶性金属塩として供給され得る。
【0030】
単一インク配合物は、基材表面上にフィルムとしての所望の充填量の金属の堆積を提供すると同時に、インクが適切な条件下で乾燥される際、融着プロセスを誘発するインク中の成分を提供する。これらのインクは、融着が一般的に乾燥するまで起こらないという理解の下で、便宜上、融着金属ナノワイヤーインクと呼ばれ得る。インクは一般的に、アルコールおよび/またはいくつかの実施形態において他の有機溶媒をさらに含み得る水性溶媒を含む。インクは、融着プロセス用の金属源として溶解された金属塩をさらに含み得る。理論によって制限されることを望むものではないが、インクの成分、例えば、アルコール、または他の有機組成物が、溶液からの金属イオンを還元して、融着プロセスを促すものと考えられる。これらの系における融着プロセスに関する過去の経験は、金属が、隣接する金属ナノワイヤー間の接合部において優先的に堆積することを示唆している。ポリマーバインダーが、フィルムを安定させるため、およびインクの性質に影響を与えるために提供され得る。インクの具体的な配合は、具体的な堆積手法に適したインクの性質を選択するように、および基材表面上の特定のコーティング性を有するように調整することができる。以下にさらに記載されるように、乾燥条件が、融着プロセスを有効に行うように選択され得る。2種の溶液溶融系も確立されており、そして本明細書に記載された改善された銀ナノワイヤーを利用することができる。
【0031】
溶融金属ナノ構造化ネットワークは、相応して高い透過率及び低いヘイズを提供しながら、低いシート抵抗を提供することが分かった。ナノワイヤーの厚さを減少することによって、光学特性を改善することができる。本明細書の結果は、ナノワイヤーの均一性も光学特性のさらなる改善に寄付することを明示する。特に、18nm以上の直径を有するナノワイヤーの数が減少すると、非常に低いヘイズ値及び非常に低い拡散反射Lの値がもたらされることが分かった。本明細書に記載された合成技術は、ナノワイヤーの75%より多くが18nm以下の直径を有することに相当する均一性を有する銀ナノワイヤーを製造するために選択されることができる。いくつかの実施形態において、透明導電性フィルムに帰因する反射構造におけるLの値は約2.0以下であることが可能である。このパラメーターは、以下、他の構造特徴のLがLの全体値から差し引かれるΔLとして記載される。透過構造におけるヘイズの値は、より薄型の均一銀ナノワイヤーから形成された約100ohms/sq以下のシート抵抗値において、溶融金属ナノ構造化ネットワークに関して約0.6%以下であることが可能である。
【0032】
銀ナノワイヤー合成及び精製
改善された銀ナノワイヤー合成によって、小さい平均直径を有する高度に均一な銀ナノワイヤーが達成された。合成は、比較的高い収率における大規模な合成に適切である。所望の改善された短い反応時間とともに、改善された触媒及び触媒の組合せによって、高度に均一なナノワイヤーを提供することができる。特に、所望の結果は、無機カチオンも含んでなってもよい塩化物塩及び臭化物塩による塩ブレンドにおけるハロゲン化ジアルキルイミダゾリウムによって記載される。さらに驚くべきことに改善された結果は、イミダゾールなどの小分子有機触媒によって得られ、且つその異性体からも同様に予想され得る。PVPキャッピングポリマーの選択も銀ナノワイヤーの薄さに好都合に影響を与える可能性がある。一般に、精製ステップは、ナノ粒子などの他のナノ構造の有意量を含んでなる反応混合物からナノワイヤーを単離するために必要である。この項目において示された濃度は、反応溶液及び体積に添加された量をベースとし、そして溶液中の実際の濃度は、溶液中の種の相互作用及び反応に基づき進展する。
【0033】
ポリオールプロセスにおいて、溶媒はジオール、一般にエチレングリコール、プロピレングリコール又はそのブレンドである。ジオールは、熱の適用などによる制御可能な特性を有する還元剤として作用することができる。溶媒であるが、グリコールの量は一般に反応の規模に基づいて設定され、そして他の反応物はそれに応じて調整される。ナノワイヤー中に形成される銀イオンを供給するための標準的な銀塩の供給源は、グリコール中に溶解性である硝酸銀であるが、原則として他の銀塩を使用することもできる。溶解性の銀塩は、ナノワイヤー合成を引き起こすために添加される。銀は実質的に全て消費されるため、銀の濃度は反応の間に有意に変化する可能性がある。一般に、硝酸銀は固体として添加されても、又はグリコール溶媒中に溶解されていてもよく、そしてさらに硝酸銀は実質的に全てが一度に、又は段階的に添加することが可能である。本明細書の実施例においては、エチレングリコール中の硝酸銀溶液が実質的に全て一度に添加されるが、これは実用的な目的のため、約10分以下の時間で行われる。
【0034】
ポリビニルピロリドンは、ポリオールプロセスにおいてキャッピング剤として使用された。理論によって制限されることを望まないが、ポリビニルピロリドン(PVP)は、結晶銀の特定の結晶格子と優先的に連結し、次いで、銀は、結晶の他の側面に沿って堆積し、ナノワイヤーを形成すると考えられる。Xiaの研究グループの研究によって、種々の銀ナノ構造の合成が調査された。PVPの分子量は合成反応に影響を与える可能性がある。約40,000~60,000g/モルの分子量を有するPVP K30は、薄型ナノワイヤーを形成するために成功裏に使用されることが可能である。900,000~1,600,000の分子量を有するPVP K-90(又はK-85)或いはPVP K30とのブレンドも、本明細書に提示されるものと同様の結果を得るために成功裏に使用された。他のパラメーターが等しい状態で、より高分子量のPVPキャッピング剤は、いくらか薄いナノワイヤーを形成する傾向があるが、現在のところ、収率の有意な減少が見られた。反応混合物は、一般に、反応混合物中に約0.1重量%~約10重量%、さらなる実施形態において、約0.2重量%~約9重量%、他の実施形態において、約0.25重量%~約8重量%PVPを含んでなる。当業者は、上記の明示的な範囲内のPVP濃度の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0035】
ナノワイヤー中に組み立てられる銀への化学的還元のための銀イオンを提供するために、溶解性の銀塩が添加される。実務的な問題として、硝酸銀(AgNO)は、グリコール溶媒中で適切に溶解性である唯一の容易に入手可能な銀塩であった。他のより難解な銀塩が適切な溶解性によって識別されることができる限り、それらは硝酸銀と比較して高コストであると予想される。硝酸銀に関して、反応混合物は、一般に、反応混合物中に約0.0025M~約0.25M、さらなる実施形態において、約0.005~約0.20M、他の実施形態において、約0.01M~約0.15Mの硝酸銀を含んでなり、そして他の銀塩は同等のモル濃度を達成するように添加されることが可能である。当業者は、上記の明示的な範囲内の溶解性銀濃度の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。硝酸銀は反応の間に変換するため、特定の量の硝酸銀「を含んでなる」反応混合物の表示は、必ずしも、不安定であり且つ容易に測定可能ではない、特定の時間における溶液中の銀の量ではなく、むしろ反応の間に添加された硝酸銀の相対量を指す。
【0036】
触媒塩の特定のブレンドの使用は、本明細書に記載される改善されたナノワイヤー合成をもたらした。一般に、反応溶液は、塩化物塩及び臭化物塩を含んでなり、したがって、少なくとも2種の塩がグリコール溶媒中に混合される。所望の銀ナノワイヤー特性を得るために、反応溶液は実質的に鉄イオンなどの常磁性イオンを含まない。本願に関連して、実質的に含まないとは、添加されたイオンがないこと、及び一般に1×10-6M以下の常磁性イオンを意味する。いくつかの実施形態において、所望のイオン触媒は、約0.5~約15、さらなる実施形態において、約0.75~約10、追加的な実施形態において、約0.9~約7、他の実施形態において、約0.95~約6の添加された触媒の塩化物濃度で割られた臭化物濃度のモル比を含んでなる。当業者は、上記の明示的な範囲内のイオン比の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0037】
カチオンに関して、塩は、一般にイミダゾリウムなどの有機カチオンを含んでなり、且ついくつかの実施形態において、カチオンのブレンドを有効に使用することができる。2種の別個のカチオンが使用される場合、カチオンの1種はNa又はKなどのアルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオンNH 、テトラメチルアンモニウム又はヘキシルトリメチルアンモニウムなどの置換アンモニウムカチオン、或いはその混合物などの無機カチオンであることが可能である。イミダゾリウム塩化物塩及びイミダゾリウム臭化物塩のブレンドを用いる実施例において、いくつかの好結果が得られる。さらなる任意選択的な非イオン性触媒及び/又は上記有機カチオンのブレンドが含まれることも可能である。有機カチオンは、所望の塩化物及び/又は臭化物アニオンが提供される限り、硝酸塩などの別のアニオンによって送達されることが可能である。一般に、薄型ナノワイヤー合成に関して特に興味深い有機カチオンは、酸素又は硫黄などの任意選択的な追加のヘテロ原子と一緒に芳香環上に1~3個の窒素原子及び1個又はそれ以上の炭素を有する5員芳香族複素環を含んでなる。一般に、触媒塩は、個々に、約0.00001M~約0.01M、さらなる実施形態において、約0.00002M~約0.005M、他の実施形態において、約0.00005M~約0.0025Mの濃度であることが可能である。当業者は、これらの明示的な範囲内の濃度の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0038】
5員芳香族複素環を有する有機カチオンは、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウムなどをベースとする部分を含む。適切なイミダゾリウムカチオンとしては、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム、1,3-ジ-イソプロピルイミダゾリウム、1,3-ジシクロヘキシルイミダゾリウムなど又はその混合物が含まれる。他の複素環に関して類似の誘導体を使用することができる。以下に提示された実施例は、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物を用いて実行されるが、これらの他の列挙されたカチオンを用いたいくつかの予備実験では、それらの実験条件下で適切に同等の結果が得られた。
【0039】
いくつかの実施形態において、非イオン性有機触媒も添加することができる。所望の薄型且つ均一のナノワイヤーを提供するために、塩化物及び臭化物塩触媒添加剤と一緒にイミダゾール又はピラゾールが添加された実施例が示される。しかしながら、非イオン性触媒は、塩化物又は臭化物などの単一ハロゲン化物塩触媒のみを用いる場合、並びに反応溶液が塩化物塩及び臭化物塩の両方を有する場合に有用となることが可能である。単一ハロゲン化物塩が非イオン性触媒と一緒に使用される実施形態に関して、ハロゲン化物塩の濃度の範囲は、なお上記で提示された値の範囲内であり、且つ非イオン性触媒を用いた合成のための一般的な反応条件は、イオン性塩触媒のみの場合の合成反応のための反応条件と重複する。
【0040】
イミダゾールなどの芳香族複素環が、匹敵するか又はより良好な均一性及び高い収率において、より薄型のナノワイヤーの形成を促進することが見出される。特に、非イオン性触媒として、炭素及び窒素を有する5員芳香族複素環式環を使用することができる。5員芳香族ヘテロ環は、1~3個の窒素原子及び少なくとも1個の炭素原子を有することが可能であり、且つチアゾール又はオキサゾールなど、他の原子を含むことができる。イミダゾールに加えて、2-メチルイミダゾール、4(5)-(ヒドロキシメチル)イミダゾール、4-イソプロピルイミダゾール、4(5)-ブロモ-5(4)-メチル-イミダゾール、2-ブロモ-1H-イミダゾール、1ビニルイミダゾール及びそのオリゴマーなど又はその混合物などの置換イミダゾールも触媒として使用することができる。ピラゾール及び置換ピラゾール、例えば3-シクロプロピル-1H-ピラゾール、5-メチル-1H-ピラゾール、3-(トリフルオロメチル)ピラゾール及び1,4,5,6-テトラヒドロシクロペンタ[c]ピラゾールも有用な触媒であり得る。未置換又は置換オキサゾール、例えばオキサゾール-5-メタノール、ピロール及び置換ピロール、並びにチアゾール及び置換チアゾール、例えば2-メチル-1,3-チアゾールもイミダゾール及びピラゾールの異性体として有用な触媒であり得る。ビニル誘導体を重合して、それらの触媒能力を維持することが予想される二量体及びより大きいオリゴマー又はポリマーを形成することができる。他の誘導体としては、例えば、二環式誘導体、例えばピリミジン複素環式環に隣接する芳香族イミダゾールを有するプリンが含まれる。反応混合物中、有機非イオン性触媒は、約0.0001M~約0.1M、さらなる範囲において、0.00025M~約0.025M、他の実施形態において、約0.0005M~約0.02Mの範囲の濃度を有することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内の濃度の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0041】
合成されたナノワイヤーの直径をより小さい値に制御するために、反応へ小量の水を添加することによって、直径分布を広くすること、又はわずかに改善することなく、ナノワイヤーの直径をいくらか減少させることができることが見出された。水は硝酸銀の添加の前に添加することができる。一般に、脱イオン水を使用することができるが、様々な入手可能なグレードの純水を使用することができる。いくつかの実施形態において、反応溶液は、反応開始時に、約0.01~約5重量%の水、さらなる実施形態において、約0.025~約4重量%、追加的な実施形態において、約0.05~約2重量%の水を含んでなることが可能である。反応は、水がない場合と同様に進行することが可能である。当業者は、上記の明示的な範囲内の水量の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0042】
合成手順は、適切な径の撹拌反応器によって開始する。一般に、反応は閉鎖系又は開放系で好結果となることが可能であるが、より良好な再現性を達成するために閉鎖系が望ましくなる可能性がある。本明細書に記載の合成に関して、閉鎖系はパージされておらず、且つ系は冷却管を通して周囲空気に対して開放されている。溶媒の有意な部分は、一般に、PVPと一緒に反応の開始時に添加され、そして溶媒温度を増加させるために熱が導入される。加熱は、例えば加熱マントルを用いて実行することができる。撹拌は、機械撹拌機又は磁気撹拌機のいずれかを使用して開始することができる。標的温度に達するまで加熱を継続する。反応容器が標的ピーク温度に達した時、加熱を停止しても、停止しなくてもよく、そして冷却速度は、一部において所望の反応時間に基づいて調整することができる。標的ピーク温度は、少なくとも約130℃、さらなる実施形態において、少なくとも135℃、他の実施形態において、少なくとも約140℃、追加的な実施形態において、約145℃から、いずれのこれらの範囲に関しても溶媒の沸点より1度低い温度までであることが可能である。当業者は、上記の明示的な範囲内の温度の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0043】
合成反応を開始するための硝酸銀の添加の前に、触媒は連続的に、又は一緒に添加することができる。一般に、触媒、塩触媒及び/又は中性触媒は、固体、液体塩、溶液又はその組合せとして添加することができる。複数の触媒を連続的に、又は同時に、或いはその組合せで添加することができる。触媒の撹拌後、そしてピーク標的温度においてか又はその付近において、溶解性の銀塩、一般に硝酸銀を添加する。銀塩を固体又はグリコール溶液として添加することができる。特に触媒及び銀塩が固体として添加されるが、他の実施形態において、反応混合物の所望の全体積に達するまで、トップオフ溶媒と呼ばれる追加的なグリコールを添加することができる。いくつかの実施形態において、全溶媒の約2パーセント~約40パーセントがトップオフ溶媒として添加され、これは触媒の添加と同時に、又は触媒の添加後、或いは一部は触媒の添加と同時に、そして一部は触媒の添加の後に添加することが可能であり、これによって反応混合物の形成が完了可能であるが、追加的な実施形態においては、溶媒の全量は溶解性の銀塩と一緒に添加されることが可能である。反応が完了するまで、撹拌を継続する。溶媒が装填された反応器の加熱の開始から反応完了までは、約1時間(hr)から約10時間、さらなる実施形態において、約1.75時間から約8時間、他の実施形態において、約1.9時間から約3.5時間であることが可能である。当業者は、明示的な範囲内の時間の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0044】
反応の完了後、完了した反応混合物を冷却後にすぐに精製することができる。合成後の反応器中のいずれの大きい構造も、濾過、遠心分離又は他の適切なプロセスによって除去することができる。大きい粒子を除去するためのいずれかの基本的な精製ステップの後、銀ナノワイヤーは一般に分散の不安定化によって、そして遠心分離後などに沈降したナノワイヤーを収集することによって、さらに精製された。銀ナノワイヤー精製に関する不安定化は、ナノワイヤーが安定せずに分散可能であるグリコールと混和性であるアセトン又は類似の有機溶媒の添加によって実施することができる。分散体の不安定化後、遠心分離を実行してナノワイヤーを収集するが、小さい銀粒子は分散したままであってもよい。さらに精製を改善するために、プロセスを繰り返すことができる。
【0045】
精製後、反応の収率を評価することができる。収率を決定するために、精製され、収集されたナノワイヤーの重量を、溶解性の銀塩によって提供された銀の重量で割る。本明細書に記載される反応において、収率は少なくとも約10%、さらなる実施形態において、少なくとも約12%、他の実施形態において、約15%~約35%であることが可能である。当業者は、上記の明示的な範囲内の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0046】
構造の安定性及び化学的不活性を改善するために銀ナノワイヤー上に金又は白金などの貴金属をコーティングすることができることが見出された。コーティングされたナノワイヤーを用いて形成された構造の光学特性を有意に変更することのない薄型均一コーティングを形成するためのコーティングを実行するための有効なプロセスが開発された。ナノワイヤーのコーティングは、参照によって本明細書に組み込まれる、「Transparent Conductive Film」と題された、Huらに対する米国特許第9,530,534号明細書にさらに記載されている。ナノワイヤーは、全ナノワイヤー重量に対して約0.05重量%~約15重量%の貴金属の貴金属コーティングを有することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内の堆積量の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0047】
貴金属コーティングを適用するための1つの方法において、直接金属堆積による貴金属がコーティングされた銀ナノワイヤーの形成方法は、銀ナノワイヤー上に貴金属コーティングを形成するために、溶解した貴金属イオン及び金属イオン錯化配位子を含んでなるコーティング溶液を段階的に添加することを含んでなる。反応溶液は、PVP(ポリビニルピロリドン)などのキャッピングポリマーをさらに含んでなることができる。貴金属コーティングを適用するための別法において、ガルバノ交換による貴金属がコーティングされた銀ナノワイヤーの形成方法は、銀を貴金属で段階的に置き換えて、貴金属コーティングを有する未変化の銀コアを形成するために、銀ナノワイヤー及びポリマーキャッピング剤の分散ブレンドを含んでなる加熱された反応溶液に、貴金属イオン及び錯化配位子を含んでなるコーティング溶液を段階的に添加することを含んでなる。
【0048】
銀ナノワイヤー特徴決定
精製されたナノワイヤーは、ナノワイヤーの分散体の電子顕微鏡法及び吸収スペクトルを使用して特徴決定することができる。透過電子顕微鏡写真を使用して、ナノワイヤー直径を測定することができる。ナノワイヤーの長さは、走査型電子顕微鏡写真を使用して、又は良好な品質の光学顕微鏡を使用することによって測定することができる。倍率に基づいて、電子顕微鏡像は関連目盛を有する。目盛を使用して、直径及び長さの測定をするためにイメージを直接使用することができる。
【0049】
約100本以上のナノワイヤーの無作為に選択された組を一般に使用することができるが、より少ないナノワイヤーによって適切に正確な結果を得ることができる。本明細書に記載される均一ナノワイヤーに関して、100本以上のナノワイヤーに基づいて報告された数は、測定に基づく直径に関して、ほぼ0.1ナノメートルまで正確であると考えられる。均一銀ナノワイヤーの平均直径は、約20nm以下、他の実施形態において、約19nm以下、いくつかの実施形態において、約18nm以下、さらなる実施形態において、約17.5nm以下、追加的な実施形態において、約17.0nm以下、他の実施形態において、約12nm~約19.0nmであることが可能である。長さに関して、銀ナノワイヤーは、約5ミクロン~約30ミクロンの平均長さを有することができる。アスペクト比は、平均直径で割られた平均長さの比率として指定されることができる。いくつかの実施形態において、ナノワイヤーは、少なくとも約400、さらなる実施形態において約500~約10,000の平均アスペクト比を有することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内の銀ナノワイヤー直径の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0050】
ナノワイヤー直径分布の特徴決定に関して、いくつかの方法が有用であるように思われる。例えば、18nm未満又は15nm未満の直径を有するナノワイヤーのパーセントを提供することができる。いくつかの応用に関して、より大きいナノワイヤーのパーセンテージが大き過ぎないことが望ましくなる可能性があり、これは直径分布に関するさらなる情報を提供する。いくつかの実施形態において、銀ナノワイヤーは、少なくとも約60%、さらなる実施形態において、少なくとも約65%、他の実施形態において、少なくとも約75%、追加的な実施形態において、少なくとも約85%の18nm以下の直径を有する銀ナノワイヤーを有することができる。以下に記載の通り、18nmより大きい直径を有するナノワイヤーの大部分を除去することによって、ヘイズ及び拡散明度(L)の特に低い値を有する透明導電性フィルムの形成を提供することができる。さらに、銀ナノワイヤーは、少なくとも約2%が15nm以下の直径を有することが可能であり、さらなる実施形態において、少なくとも約15%、他の実施形態において、少なくとも約40%のナノワイヤーが15nm以下の直径を有することが可能である。上記のとおり、標準偏差によって、ナノワイヤー直径の均一性に関する重要な情報が提供される。直径の標準偏差(SD)は、SD=(Σ(d-d)1/2/(N-1)として算出される。式中、Nは測定された直径であり、n=Σによって示される全体にわたって合計された1~Nであり、dは平均直径である。いくつかの実施形態において、標準偏差は約3.5nm以下、さらなる実施形態において、約3.0nm以下、他の実施形態において、約2.5nm以下、追加的な実施形態において、約2.0nm以下である。当業者は、上記の明示的な範囲内の均一性測定値の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0051】
銀ナノワイヤーの径及び均一性を特徴決定するための独立したアプローチであることが可能である、吸収スペクトルを得るために、ナノワイヤーを適切な溶媒中に分散させることができる。銀ナノワイヤーはDMSO中に分散可能であり、且つDMSOは興味深い領域(300~500nm)の範囲内で低い吸収を得、DMSOは比較的高い屈折率を有するため、銀ナノワイヤーのスペクトルを測定するためにジメチルスルホキシド(DMSO)は望ましい溶媒である。DMSOは、UV-可視吸収研究のために一般に使用される溶媒であり、且つ銀ナノワイヤースペクトルに対する参照は、希釈DMSO分散体中で得られたスペクトルに対して参照されるであろう。一般に、正規化吸収スペクトルは、希釈分散体の濃度に依存しないべきである。アルコール及び水などの他の極性溶媒も使用可能であるが、これらの溶媒はDMSOと比較してより低い屈折率を有する。一般に、水中の銀ナノワイヤーの対応するスペクトルは、DMSO中でのスペクトルと比較してより鋭くなり、そしてわずかにブルーシフトすることが予想される。
【0052】
通則として、より薄い銀ナノワイヤーが350nm~400nmの間にピーク吸収スペクトルを示し、これは、銀ナノワイヤーがより薄く、且つより均一になると、より低い波長へとシフトすることが見出された。希釈DMSO分散体で得られたスペクトルに関して、吸収スペクトルは376nm未満で、いくつかの実施形態において、374nm未満でピークを有することができる。正規化吸収は、測定と関係する有意なスケーリング複雑性を排除するために、吸収スペクトルを評価するために容易に使用することができる。本明細書で使用される場合、300nm~800nmのスペクトルは0~1の吸収値を有するように正規化される。同様に、より均一な銀ナノワイヤー直径は、より狭い吸収ピークを示すことができ、そしてこのようなより狭いピークは、吸収ピークのより高い波長減少端部に沿う410nmにおける正規化吸収によって特徴づけることができる。そのようにして、410nmにおけるより小さい正規化吸収は、一般に、より狭い吸収ピーク、そしてそれに対応して、より均一な銀ナノワイヤー直径と関連する。いくつかの実施形態において、410nmにおける正規化吸収は、0.20以下、さらなる実施形態において、約0.185以下である。当業者は、上記の明示的な範囲内の正規化吸収値の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。本明細書に提示された結果は、一般にこのような定性的な理解と一致するが、吸収スペクトルは、銀ナノワイヤー分布に関してまだ完全には理解されていない。
【0053】
薄く広がった金属導電層
薄く広がった金属導電層は一般的に、金属ナノワイヤーから形成される。十分な添加量および選択されるナノワイヤーの性質によって、相応する適切な光学的性質を有するナノワイヤーを使用して適度の導電率を達成することができる。本明細書に記載された薄型均一銀ナノワイヤーで形成される透明導電性フィルム構造物が様々な薄く広がった金属導電性構造物を有するフィルムの望ましい性能をもたらすことができることが予想される。しかしながら、特に望ましい性質は融着金属ナノ構造ネットワークによって達成された。溶融成分がプロセス溶液中に含まれず、且つ特性の相対的な改善の要因になる薄型、均一銀ナノワイヤーによる溶融されていないフィルムを用いて満足がいく結果を一般に達成することができる、別の実施形態を提供することができる。本明細書の議論は、透明導電性フィルムとしての改善された性能特性を提供することが判明した溶融金属ナノ構造化ネットワークに関する実施形態に焦点を合わせる。
【0054】
いくつかの実際的なアプローチは、金属ナノワイヤー溶融を達成するために開発された。金属装填は、良好な光学特性と一緒に電気伝導率の所望のレベルを達成するためにバランスを取ることができる。導電性フィルムに関する光学特性は、本明細書に記載される薄型、均一銀ナノワイヤーの使用によって、特定レベルの電気伝導率において改善されることが可能である。一般的には、金属ナノワイヤー加工は、金属ナノワイヤーを含む第1のインクと融着組成物を含む第2のインクとを有する二インクの堆積によって、または融着要素を金属ナノワイヤー分散体中に混ぜるインクの堆積によって達成され得る。インクは、付加的な加工助剤、バインダー等を含んでもよくさらに含まなくてもよい。特定のインク系のために適しているように好適なパターン化方法を選択することができる。
【0055】
一般的には、金属ナノ構造ネットワークの形成のための1つまたは複数の溶液またはインクは、よく分散された金属ナノワイヤー、融剤、および任意選択のさらに別の成分、例えば、ポリマーバインダー、架橋剤、湿潤剤、例えば、界面活性剤、増粘剤、分散剤、他の任意選択の添加剤またはそれらの組合せを一括して含むことができる。金属ナノワイヤーインクおよび/またはナノワイヤーインクと異なっている場合融着溶液のための溶媒は、水性溶媒、有機溶媒またはそれらの混合物を含むことができる。特に、適した溶媒には、例えば、水、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、例えばグリコールエーテル、芳香族化合物、アルカン等およびそれらの混合物が含まれる。具体的な溶媒には、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、第三ブチルアルコール、メチルエチルケトン、グリコールエーテル、メチルイソブチルケトン、トルエン、ヘキサン、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルラクテート、PGMEA(2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート)、ジメチルカーボネートまたはそれらの混合物が含まれる。溶媒は金属ナノワイヤーの良い分散体を形成する能力に基づいて選択されるのがよいが、溶媒はまた、他の選択される添加剤が溶媒に可溶性であるように添加剤と相溶性であるのがよい。融剤が金属ナノワイヤーを有する単一溶液に含有される実施形態については、溶媒またはその成分は、アルコールなどの融着溶液の重要な成分であってもなくてもよく、必要ならばそれに応じて選択され得る。
【0056】
金属ナノワイヤーインクは、一インクまたは二インク構成のどちらかで、約0.01~約1重量パーセントの金属ナノワイヤー、さらなる実施形態において約0.02~約0.75重量パーセントの金属ナノワイヤーおよびさらに別の実施形態において約0.04~約0.5重量パーセントの金属ナノワイヤーを含有することができる。上記の明示範囲内の金属ナノワイヤー濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。金属ナノワイヤーの濃度は、基材表面上の金属の添加量ならびにインクの物理的性質に影響を与える。
【0057】
銀は優れた電気伝導率を提供し、そして市販品の銀ナノワイヤーが入手可能である。しかしながら、本明細書のプロセスを使用して合成された薄型且つ均一の銀ナノワイヤーは、改良された透明導電性フィルムを提供する。これらのナノワイヤーの特性は、上記及び下記の実施例において詳細に要約される。
【0058】
ポリマーバインダーおよび溶媒は一般的に、ポリマーバインダーが溶媒に可溶性または分散性であるように一貫して選択される。適切な実施形態において、金属ナノワイヤーインクは一般的に約0.02~約5重量パーセントのバインダー、さらなる実施形態において約0.05~約4重量パーセントのバインダーおよびさらに別の実施形態において約0.1~約2.5重量パーセントのポリマーバインダーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーバインダーは、放射線架橋性有機ポリマーおよび/または熱硬化性有機バインダーなどの架橋性有機ポリマーを含む。バインダーの架橋を促進するために、金属ナノワイヤーインクは、いくつかの実施形態において約0.0005重量%~約1重量%の架橋剤、さらなる実施形態において約0.002重量%~約0.5重量%およびさらに別の実施形態において約0.005重量%~約0.25重量%を含むことができる。ナノワイヤーインクは任意選択により、レオロジー改質剤またはその組合せを含むことができる。いくつかの実施形態において、インクは、表面張力を低下させるための湿潤剤または界面活性剤を含むことができ、湿潤剤は、コーティング性を改良するために有用であり得る。湿潤剤は一般的に溶媒に可溶性である。いくつかの実施形態において、ナノワイヤーインクは、約0.001重量パーセント~約1重量パーセントの湿潤剤、さらなる実施形態において約0.002~約0.75重量パーセントおよび他の実施形態において約0.003~約0.6重量パーセントの湿潤剤を含むことができる。増粘剤を任意選択によりレオロジー改質剤として使用して分散体を安定化すると共に沈降を低減するかまたは除くことができる。いくつかの実施形態において、ナノワイヤーインクが任意選択により約0.05~約5重量パーセントの増粘剤、さらなる実施形態において約0.075~約4重量パーセントおよび他の実施形態において約0.1~約3重量パーセントの増粘剤を含むことができる。上記の明示範囲内のバインダー、湿潤剤および増粘剤濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0059】
広範囲のポリマーバインダーが金属ナノワイヤーのための溶媒中に溶解/分散させるのに適し得るが、適したバインダーには、コーティング用途のために開発されたポリマーが含まれる。ハードコートポリマー、例えば、放射線硬化性コーティングは、水性または非水性溶媒中に溶解するために選択され得る、例えば広範囲の用途のためのハードコート材料として市販されている。放射線硬化性ポリマーおよび/または熱硬化性ポリマーの適した種類には、例えば、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロースエーテルおよびエステル、他の水不溶性構造多糖類、ポリエーテル、ポリエステル、エポキシ含有ポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。商用ポリマーバインダーの例には、例えば、NEOCRYL(登録商標)銘柄アクリル樹脂(DMS NeoResins)、JONCRYL(登録商標)銘柄アクリルコポリマー(BASF Resins)、ELVACITE(登録商標)銘柄アクリル樹脂(Lucite International)、SANCURE(登録商標)銘柄ウレタン(Lubrizol Advanced Materials)、セルロースアセトブチレートポリマー(Eastman(商標)Chemical製のCAB銘柄)、BAYHYDROL(商標)銘柄ポリウレタン分散体(Bayer Material Science)、UCECOAT(登録商標)銘柄ポリウレタン分散体(Cytec Industries,Inc.)、MOWITOL(登録商標)銘柄ポリビニルブチラール(Kuraray America,Inc.)、セルロースエーテル、例えば、エチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース、他の多糖系ポリマー、例えばキトサンおよびペクチン、ポリ酢酸ビニルのような合成ポリマー等が含まれる。特に、多糖類ベースのポリマーは、薄く広がった金属導電性層中で結合剤として望ましいことが判明した。ポリマーバインダーは放射線に露光時に自己架橋性であり得る、および/またはそれらは光開始剤または他の架橋剤によって架橋され得る。いくつかの実施形態において、光架橋剤は放射線に露光時にラジカルを形成する場合があり、次に、ラジカルはラジカル重合機構に基づいた架橋反応を引き起こす。適した光開始剤には、例えば、IRGACURE(登録商標)銘柄(BASF)、GENOCURE(商標)銘柄(Rahn USA Corp.)、およびDOUBLECURE(登録商標)銘柄(Double Bond Chemical Ind.,Co,Ltd.)などの市販の製品、それらの組合せ等が含まれる。
【0060】
湿潤剤を使用して金属ナノワイヤーインクの被覆性ならびに金属ナノワイヤー分散体の特質を改良することができる。特に、湿潤剤は、コーティングの後にインクが表面上に十分に広がるようにインクの表面エネルギーを低下させることができる。湿潤剤は界面活性剤および/または分散剤であり得る。界面活性剤は、表面エネルギーを低下させるように機能する材料のクラスであり、界面活性剤は、材料の溶解性を改良することができる。界面活性剤は一般的に、その性質に寄与する分子の親水性部分と分子の疎水性部分とを有する。広範囲の界面活性剤、例えば非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤が市販されている。いくつかの実施形態において、界面活性剤に伴った性質が問題ではない場合、非界面活性剤湿潤剤、例えば、分散剤もまた本技術分野に公知であり、インクの湿潤能力を改良するために有効であり得る。適した商用の湿潤剤には、例えば、COATOSIL(商標)商標エポキシ官能化シランオリゴマー(Momentum Performance Materials)、SILWET(商標)商標オルガノシリコーン界面活性剤(Momentum Performance Materials)、THETAWET(商標)商標短鎖非イオン性フッ素系界面活性剤(ICT Industries,Inc.)、ZETASPERSE(登録商標)商標ポリマー分散剤(Air Products Inc.)、SOLSPERSE(登録商標)商標ポリマー分散剤(Lubrizol)、XOANONS WE-D545界面活性剤(Anhui Xoanons Chemical Co.,Ltd.)、EFKA(商標)PU 4009ポリマー分散剤(BASF)、MASURF FP-815 CP、MASURF FS-910(Mason Chemicals)、NOVEC(商標)FC-4430フッ素化界面活性剤(3M)、それらの混合物等が含まれる。
【0061】
増粘剤を使用して、金属ナノワイヤーインクからの固形分の沈降を低減または取り除くことによって分散体の安定性を改良することができる。増粘剤は、インクの粘度または他の流体性質をかなり変化させる場合もない場合もある。適した増粘剤は市販されており、例えば、変性尿素のCRAYVALLAC(商標)商標、例えばLA-100(Cray Valley Acrylics,USA)、ポリアクリルアミド、THIXOL(商標)53L商標アクリル増粘剤、COAPUR(商標)2025、COAPUR(商標)830W、COAPUR(商標)6050、COAPUR(商標)XS71(Coatex,Inc.)、変性尿素のBYK(登録商標)商標(BYK Additives)、アクリゾール DR73、アクリゾール RM-995、アクリゾール RM-8W(Dow Coating Materials)、Aquaflow NHS-300、Aquaflow XLS-530疎水性変性ポリエーテル増粘剤(Ashland Inc.),Borchi Gel L 75N、Borchi Gel PW25(OMG Borchers)等が含まれる。
【0062】
付加的な添加剤を一般的にそれぞれ約5重量パーセント以下、さらなる実施形態において約2重量パーセント以下およびさらなる実施形態において約1重量パーセント以下の量で金属ナノワイヤーインクに添加することができる。他の添加剤には、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、脱泡剤または消泡剤、沈降防止剤、粘度改質剤等が含まれ得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、薄く広がったナノワイヤーフィルムが最初に堆積され、さらなる加工が銀ナノワイヤーの溶融を含んでも、含まなくてもよいプロセスが使用される。上記の通り、単一溶融金属ナノ構造化ネットワークへの溶融によって、透明導電性フィルムの改善された特性が提供される。金属ナノワイヤーインクの堆積のために、任意の適当な堆積方法、例えば浸漬コーティング、噴霧コーティング、ナイフエッジコーティング、バーコーティング、マイヤーロッドコーティング、スロットダイコーティング、グラビア印刷、スピンコーティング等を使用することができる。インクは、所望の堆積方法のために添加剤で適切に調節された、粘度などの性質を有することができる。同様に、堆積方法が堆積される液体の量を管理し、インクの濃度を調節して所望の添加量の金属ナノワイヤーを表面上に提供することができる。分散体でコーティングを形成した後、薄く広がった金属導電層を乾燥させて液体を除去することができる。
【0064】
金属ナノワイヤーの溶融は、種々の薬剤によって達成することができる。理論によって制限されることを望まないが、溶融剤は金属イオンを動かすと考えられ、そして自由エネルギーは溶融プロセスにおいて低下するように思われる。いくつかの実施形態において、過度の金属移動又は増加は、光学特性の悪化をもたらし得、したがって、望ましい結果は、一般に短時間で、望ましい光学特性を維持しながら、望ましい電気伝導率を得るために十分な溶融を生じるように、適切に制御された様式での平衡のシフトによって達成可能である。一般に、溶融プロセスは、溶融蒸気への制御された曝露によって、且つ/又は溶液中での溶融剤の使用によって実行可能である。適切な条件下で、溶融金属導電性ネットワークは単一構造である。
【0065】
いくつかの実施形態において、溶融プロセスの開始は、成分の濃度を増加するための溶液の部分乾燥によって制御可能であり、そして溶融プロセスの停止は、例えば、金属層のすすぎ、又はより完全な乾燥によって達成することができる。いくつかの実施形態において、別のインクの堆積によるその後のプロセスによって、電気伝導性である金属ナノ構造化ネットワーク中への金属ナノワイヤーの溶融が提供される。溶融剤は、金属ナノワイヤーと一緒に単一インク中に組み込まれることが可能である。一インク溶液は、溶融プロセスの適切な制御を提供することができる。薄型、均一金属ナノワイヤーによる単一溶金属導電性ネットワークを形成するための一インク配合物は以下の実施例において記載される。
【0066】
薄く広がった金属導電性層は、一般に、選択された基材表面上で形成される。いくつかの実施形態において、基材は透明ポリマーフィルムである。加工はフィルムのパターン化に適合させることができる。基材のための適切なポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリノルボルネン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、環式オレフィンポリマー、環式オレフィンコポリマー(COC)、環式オレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート、そのコポリマー又はそのブレンドなどが含まれる。フルオロポリマーとしては、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ポリクロロトリフルオロエチレンなどが含まれる。いくつかの実施形態のためのポリマーフィルムは、約5ミクロン~約5mm、さらなる実施形態において、約10ミクロン~約2mm、追加的な実施形態において、約15ミクロン~約1mmの厚さを有することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内の厚さの追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。基材は、組成及び/又は他の特性によって識別される複数の層を含んでなることができる。透明導電性フィルム用の基材に関して適切な材料のより特定の範囲は以下に提供され、そして一般的な基材の範囲はこれらの特定の材料及び特性を含むであろう。
【0067】
フィルムは、例えば、ヒートガン、炉、サーマルランプ等で乾燥され得るが、いくつかの実施形態においては空気乾燥され得るフィルムが望ましいことがある。いくつかの実施形態において、フィルムは、乾燥中に約50℃~約150℃の温度に加熱することができる。乾燥させた後、フィルムを1回もしくは複数回、例えば、エタノールもしくはイソプロピルアルコールなどのアルコールまたは他の溶媒もしくは溶媒ブレンドで洗浄して、過剰な固形分を除去してヘイズを低下させることができる。パターン化はいくつかの適当な方法で達成することができる。例えば、金属ナノワイヤーの印刷は、パターン化を直接にもたらすことができる。さらにまたは代わりに、リソグラフィ技術及び/又は除去方法を使用して、融着の前または後に金属ナノワイヤーの部分を除去又は適切に損傷し、パターンを形成することができる。上記の通り、薄く広がった金属導電性層上に1層又はそれ以上のオーバーコート層を適用することができる。
【0068】
基材上に薄く広がった金属導電性層によって形成される透明導電性フィルムの使用に関して、フィルムは一般に追加的な構造中に集積化される。透明導電性フィルムの取り扱いのために、一般に、導電性層上に保護ポリマーオーバーコートが配置される。同様に、加工に関して、ポリマーオーバーコートは、溶液コーティング技術、又は押出成形、ラミネーション、カレンダリング、メルトコーティング技術などの他の加工アプローチを使用して適用することができる。複数のポリマーオーバーコートがある場合、それらは類似のアプローチを使用して適用されても、又は適用されなくてもよい。溶液加工オーバーコートに関して、上記の種々のコーティングアプローチをこれらの層に等しく適用することができる。しかしながら、ポリマーオーバーコートの溶液加工は、金属ナノワイヤーの良好な分散体を形成することと必ずしも適合性がなくてもよい溶媒に関することが可能である。
【0069】
一般に、ポリマーオーバーコートは、約10ナノメートル(nm)~約12ミクロン、さらなる実施形態において、約15nm~約10ミクロン、そして追加的な実施形態において、約20nm~約8ミクロンの平均厚さを有することができる。いくつかの実施形態において、オーバーコートの適用後に他の性能を有意に悪化させることなく、ヘイズを有意に減少させるような屈折率及び厚さの選択によって、オーバーコートを選択することが可能であり得る。同様に、オーバーコートを通してのシート抵抗測定値が、オーバーコートを含まない場合の測定値と比較して有意に異ならないように、オーバーコートの厚さ及び組成を選択することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内のオーバーコート厚さの追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0070】
適切な市販のオーバーコート用コーティング組成物としては、例えば、デクセリアルズ株式会社(日本)からのコーティング溶液、Hybrid Plastics,Inc.(Mississippi,USA)からのPOSS(登録商標)Coatings、California Hardcoating Company(California,USA)からのシリカ充填シロキサンコーティング、SDC Technologies,Inc.(California,USA)からのCrystalCoat UV硬化性コーティングが含まれる。ポリマー濃度及び対応して他の非揮発性薬剤の濃度は、選択されたコーティングプロセスに関して適切な粘度などのコーティング溶液の所望のレオロジーを達成するように選択することができる。全固体濃度を調節するために、溶媒を添加又は除去することができる。仕上げられたコーティング組成物の組成を調節するために固体の相対量を選択することができ、且つ乾燥コーティングの所望の厚さを達成するために固体の全量を調節することができる。一般に、コーティング溶液は、約0.025重量%~約50重量%、さらなる実施形態において、約0.05重量%~約25重量%、追加的な実施形態において、約0.075重量%~約20重量%のポリマー濃度を有することができる。当業者は、上記の特定の範囲内のポリマー濃度の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。抗反射及び抗グレアなどの所望の光学透明度及び他の特性のために、オーバーコート材料として種々の屈折率を有するポリマー又はその複合材料を選択することができる。
【0071】
透明コーティングは、透明導電性フィルムのための架橋剤、湿潤剤、粘度変性剤、特性変性ナノ粒子及び/又は安定剤、例えば酸化防止剤及び/又はUV安定剤などの任意選択的な特性変性剤を含んでなることができる。ナノダイヤモンドなどの特性変性ナノ粒子を含むことについては、参照によって本明細書に組み込まれる、「Property Enhancing Fillers for Transparent Coatings and Transparent Conductive Films」と題された、Virkarらに対する米国特許出願公開第2016/0096967号明細書に記載されている。オーバーコート中への安定剤の組み込みは、参照によって本明細書に組み込まれる、「Stabilized Sparse Metal Conductive Films and Solutions for Delivery of Stabilizing Compounds」と題された、Yangらに対する係属中の米国特許出願第15/730,053号明細書に記載されている。
【0072】
コーティング前駆体溶液の堆積に関して、ディップコーティング、スプレーコーティング、ナイフエッジコーティング、バーコーティング、メイヤー(Meyer)ロッドコーティング、スロットダイコーティング、グラビア印刷、スピンコーティングなどのいずれの適切な堆積アプローチも使用可能である。堆積アプローチは堆積された液体の量に関連し、そして溶液の濃度は、表面上製品コーティングの所望の厚さを提供するように調節することができる。分散体によってコーティングを形成した後、液体を除去するためにコーティングを乾燥させ、そして適切に架橋させることができる。
【0073】
製品の形成に関して、光学的に透明な接着剤層、及び任意選択的に上記されたオーバーコートと一緒に、薄く広がった金属導電性層を被覆するより厚い保護フィルムは、電気接続を導電性層に提供するために適切な位置で正孔などを有するように形成させることができる。一般に、これらのポリマーシートの加工のために、種々のポリマーフィルム加工技術及び装置を使用することができ、そのような装置及び技術は当該分野において十分に開発されており、且つさらに開発された加工技術及び装置を、本明細書の材料に対応して適合させることができる。光学的に透明な接着剤層などを有するこれらの構造の形成については、参照によって本明細書に組み込まれる、「Stabilized Transparent Conductive Elements Based on Sparse Metal Conductive Layers」と題された、Yangらに対する米国特許出願公開第2016/0122562A号明細書にさらに記載されている。
【0074】
透明導電性フィルム-CEI色彩特性
薄く広がった金属導電性層に関して、フィルムは、次の項目において議論される電気伝導、透過率及びヘイズに加えて、それらの色彩特性によって特徴づけることができる。色パラメーターは色知覚に相当するものとして定義された。透明導電性フィルムに帰する色変化を評価するために測定を実行することができる。特に銀ベースの薄く広がった金属導電性層に関して、いくらかの黄変を観察することができ、これは一般に低値に保持されるように標的が定められ、そして拡散反射率強度(L)も低い知覚可視性のために低値に保持されることが望ましい。本明細書に記載される薄型均一ナノワイヤーは、透明導電性フィルムに関するそれらの所望の特性にさらに寄与する優れた低い色の寄与を達成することができる。
【0075】
色空間は、スペクトルの波長を色の人体知覚に関連づけるように定義することができる。CIELABは、International Commission on Illumination(CIE)によって決定された色空間である。CIELAB色空間は、座標、L、a及びbの3元組を使用するものであり、Lは色の明度に関連し、aは赤及び緑の間の色の位置に関連し、そしてbは黄及び青の間の色の位置に関連する。「」値は、標準白色点と比較して標準化された値を表す。a及びbCIELABパラメーターは、透明導電性フィルムを通しての透過に基づいて分光測光器で実行された測定から、市販のソフトウェアを使用して決定することができる。LABパラメーターは、透過又は反射構造のいずれかにおいて評価することができ、本明細書中、a及びbは、透明導電性フィルムと関連する透過構造において評価され、そしてLは、色メーター/分光光度計によって反射構造において評価され、以下にさらに記載される積層構造を使用して測定される。本明細書において報告されるL測定値は、不確かな反射を除外する、拡散反射値である。測定を実行するために使用される分光光度計は、正反射を除いて、積分球上で測定を実行することができる積分球を有する。
【0076】
薄く広がった金属導電性ネットワークを組み込むフィルムが、黄色がかった淡色を有することが分かっており、そしてbを低下させることによってフィルムのより中性の外観を得ることができる。本明細書に記載される薄型均一銀ナノワイヤーは、bの比較的低い値と一緒に低いシート抵抗を有する高度に透明なフィルムを形成することが分かっていた。同様に、構造の全体的なb値を低下させるために、ナノスケール着色剤が構造中に導入可能であることが分かった。ナノスケール着色剤の使用は、参照によって本明細書に組み込まれる、「Transparent Films with Control of Light Hue Using Nanoscale Colorants」と題された、Yangらに対する米国特許出願公開第2016/0108256号明細書に記載されている。
【0077】
いくつかの用途に関して、反射L値も重要となる。Lを測定するために、反射配向において黒色バックグラウンドに対する測定をすることがしばしば望ましい。Lは色の明度に関連し、そして黒色に対応するゼロに近いLの値は、黒色バックグラウンドを有する積層構造上での反射測定に基づいて望ましくなる可能性がある。色が黒色に近くなり得るが、導電性層を通しての透過は高く、したがって、色が変化する限り、透明導電性フィルムは暗い色相のみを提供する。特定の用途に関して、黒色バックグラウンドと比較して、光の反射にほとんど寄与しない透明導電性フィルムが望ましくなる可能性がある。実施例において報告されるように、L(TCF)-L(ベース)に等しいΔLの値が報告される。L(TCF)は、黒色バックグラウンドを有する基材上に載置された透明導電性フィルムを有する構造に関する値であり、L(ベース)は、透明導電性層を含まない対応する構造に関するものである。測定は、CIELAB値を提供することができるSpectraMagic NXソフトウェアを備えた、透過又は反射測定が可能であり、且つ積分球上に組み込まれたKonica-Minolta Spectrophotometer CM-3700Aを使用して、拡散反射(又はSCE、Specular Contribution Excluded)モードで行なわれる。
【0078】
いくつかの実施形態において、シート抵抗が約100ohms/sq以下である透明導電性フィルムは、黒色バックグラウンドに対して反射構造で測定される場合、約2.0以下、さらなる実施形態において、約1.75以下、追加的な実施形態において、約1.5以下であるΔL値をもたらすことができる。同様に、透明導電性フィルムの透過bの絶対値が、1.0以下、さらなる実施形態において、0.9以下、追加的な実施形態において、0.75以下の値であることが望ましくなる可能性がある。当業者は、上記の明示的な範囲内の光学パラメーター及び対応するシート抵抗の追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。b及びaの値は、標準CIELAB94及び/又はCIE DE2000、Center International Commission on Illumination(Commission Internationale de L’Eclairage)における方程式を使用して評価することができる。参照によって本明細書に組み込まれる、Colorimetry,3rd Edition,CIE,2004を参照のこと。これらの計算は、SpectraMagic(商標)NXソフトウェアを備えたKonica Minolta Spectrophotometer CM-3700Aなどの市販の分光光度計及びソフトウェアを使用して実行することができる。
【0079】
透明導電性フィルム-電気及び光学特性
薄く広がった金属導電層を含む透明導電性フィルム、例えば融着金属ナノ構造ネットワーク、は、良い光学的性質を提供しながら低い電気抵抗を提供することができる。したがって、フィルムは透明導電性電極等として有用であり得る。透明導電性電極は、太陽電池の受光表面に沿う電極などの様々な用途に適し得る。ディスプレイのためにおよび特にタッチスクリーンのために、フィルムをパターン化して、フィルムによって形成される電気導電性パターンを提供することができる。透明導電性フィルムを有する基材は一般的に、パターンの各部分において良い光学的性質を有する。
【0080】
薄いフィルムの電気抵抗はシート抵抗として表わすことができ、それをオーム/スクエア(Ω/□またはohms/sq)の単位で記録し、測定法に関連したパラメーターに従ってバルク電気抵抗値から値を識別する。フィルムのシート抵抗は一般的に、4点プローブ測定または別の適した方法を使用して測定される。いくつかの実施形態において、融着金属ナノワイヤーネットワークは、約200ohms/sq以下、さらなる実施形態において約150ohms/sq以下、さらに別の実施形態において約100ohms/sq以下および他の実施形態において約75ohms/sq以下のシート抵抗を有することができる。上記の明示範囲内のシート抵抗のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。実施例において、70ohms/sq又は50ohms/sqの標的シート抵抗を有する透明導電性フィルムが形成される。一般的に、シート抵抗は、ナノワイヤーの装填を増加させることによって減少させることが可能であるが、装填の増加は他の見地から望ましくなり得るか、又はなり得ない。
【0081】
特定の用途に応じて、デバイスにおいて使用するためのシート抵抗の商用規格は、さらなるコストが必要とされる場合がある時など、シート抵抗のより低い値を必ずしも目的としていない場合があり、現在商業的に重要な値は、異なった品質および/またはサイズのタッチスクリーンの目標値として例えば、270ohm/sqか、150ohms/sqか、100ohms/sqか、50ohms/sqか、40ohms/sqか、30ohms/sq以下であってもよく、これらの値のそれぞれが範囲の端点として特定の値の間の範囲を画定し、例えば270ohms/sq~150ohms/sq、270ohms/sq~100ohms/sq、150ohms/sq~100ohms/sq等となり、15の特定の範囲が画定される。このように、より低コストのフィルムが、適度に高めのシート抵抗値と引き換えに特定の用途のために適している場合がある。
【0082】
透明導電性フィルムとしての用途のために、融着金属ナノワイヤーネットワーク又は他の薄く広がった金属導電層が良い光学透明性を維持することが望ましい。基本的には、光学透明性は金属添加量と反比例しており、より高い添加量は透明性の低下をもたらすが、ネットワークの加工もまた、透明性にかなり影響を与え得る。また、ポリマーバインダーおよびその他の添加剤は、良い光学透明性を維持するように選択され得る。透明度は、無次元量、透過率に関して報告することができる。透過率は、入射光強度(I)に対する透過した光の強度(I)の比率である。透過率は、以下の実施例中、透明基材上の透明導電性層に対して報告される。透明導電性層の光学透明度は、透明導電性フィルムを支持する基材を通る透過光に対して評価することができる。例えば、本明細書に記載される導電性層の透明度は、UV-可視分光光度計を使用することによって、そして導電性層及び支持基材を通る全透過を測定することによって測定することができる。透過率値は、透明フィルム基材上の透明導電性層に関して報告される。導電性層を通しての透過率(Tlayer)は、測定された全透過率(T)を、支持基材を通しての透過率(Tsub)によって割ることによって推定することができる。(T=I/I及びT/Tsub=(I/I)/(Isub/I)=I/Isub=Tlayer)。したがって、報告された全透過率は、基材を通る透過率を除去して、導電性層、オーバーコート又は他の成分単独の透過率を得るために修正することができる。
【0083】
可視スペクトルにわたって良い光学透明性を有することが一般的に望ましいが、便宜上、550nmの波長の光で光の透過を記録することができる。代わりにまたはさらに、400nm~700nmの波長の光の全透過率として透過を記録することができ、このような結果は以下の実施例において報告される。一般的には、融着金属ナノワイヤーフィルムについて、550nmの透過率および400nm~700nmの全透過率(または便宜上、単に「全透過率」)の測定は、定性的に異なっていない。いくつかの実施形態において、融着ネットワークによって形成されるフィルムは、少なくとも80%、さらなる実施形態において少なくとも約85%、さらに別の実施形態において、少なくとも約90%、他の実施形態において少なくとも約94%およびいくつかの実施形態において約95%~約99%の全透過率(全透過率%)を有する。フィルムの透過率は、標準ASTM D1003(“Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics”)(本願明細書に参照によって組み込まれる)を使用して評価することができる。上記の明示範囲内の透過率のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0084】
また、融着金属ネットワークは、望ましくは低いシート抵抗を有しながら可視光線の高い透過と共に低いヘイズを有することができる。ヘイズは、上に参照されたASTM D1003に基づいてヘイズメーターを使用して測定することができ、基材のヘイズ寄与を除去して透明導電性フィルムのヘイズ値を提供することができる。ASTM D1003に基づいて測定されるヘイズは透過ベースのヘイズであり、そして反射ベースのヘイズに関して別個の測定を実行することができる。他に明示されない限り、ヘイズは透過ベースのヘイズを意味する。いくつかの実施形態において、透明導電性フィルムは、約0.6%以下、さらなる実施形態において、約0.5%以下、追加的な実施形態において、約0.4%以下、他の実施形態において、約0.35%~約0.15%のヘイズ値を有することができる。選択された透明オーバーコートは、透明導電性層による構造からのヘイズを有意に減少させることができ、そしてオーバーコートを有する構造の値は、これらの範囲のヘイズ値に関して考慮することができることが分かった。ポリマーオーバーコートは上記で議論された通りである。当業者は、上記の明示的な範囲内のヘイズの追加的な範囲が予想され、且つ本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0085】
以下の実施例において、2つの標的シート抵抗値、70ohms/sq又は50ohms/sqを有する透明導電性フィルムが形成されるが、実際のシート抵抗値は測定される。より低いシート抵抗値を得るために、表面上でのより高い金属装填を使用可能であるが、これは対応して、ヘイズ及びbの増加と一緒に透過率のわずかな減少をもたらす可能性がある。
【0086】
実施例において説明されるように、適切に選択された銀ナノワイヤーによってヘイズおよびシート抵抗の非常に低い値が同時に達成された。ポリマーオーバーコートがさらに、ヘイズを低下させ得る。添加量を調節して、可能な限り非常に低いヘイズ値とまだ良いシート抵抗値を有するようにシート抵抗とヘイズ値とのバランスをとることができる。具体的には、0.8%以下、そしてさらなる実施形態において約0.15%~約0.7%のヘイズ値を少なくとも約60ohms/sqのシート抵抗の値と共に達成することができる。また、0.3%~約0.8%、およびいくつかの実施形態において約0.35%~約0.7%のヘイズ値を約30ohms/sq~約60ohms/sqのシート抵抗の値と共に達成することができる。これらのフィルムの全てが良い光学透明性を維持した。上記の明示範囲内のヘイズのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0087】
複数層フィルムの相当する性質に関して、付加的な成分は一般的に、光学的性質に及ぼす効果が小さいように選択され、透明要素において使用するために様々なコーティングおよび基材が市販されている。適した光学コーティング、基材および関連材料が上に要約される。構造材料のいくつかは電気絶縁性であり得るが、厚めの絶縁層が使用される場合、フィルムをパターン化して、他の場合なら埋設される電気導電性要素への接触および電気的接触を、絶縁層を貫通する間隙またはボイドが提供することができる位置を設けることができる。
【0088】
センサーなどの製造に関して、両方とも透明である電気伝導性領域及び電気絶縁性領域を生じるために、上記で概説されるようにパターン化が一般に実行される。薄型均一ナノワイヤーを含んでなるインクから製造された透明導電性フィルムを基材の片面又は両面上にコーティングすることも可能であり、且つタッチセンサーを製造するために使用することも可能である。タッチセンサーは光学的に透明な接着剤によって分離された透明導電性フィルムの2つの別個の層から構成されることが可能であるが、(コーティング)を堆積させて、次いで1つの基材上に薄く広がった金属層をパターン化することによって、センサーを製造することも可能である。単一層上のセンス及びグラウンド(又は「X」-及び「Y」-)の両方を定義するために、基材の片面上の薄く広がった金属層の単一コーティングをパターン化及び加工することが可能である。代わりに、基材は、それぞれの面上での連続的な堆積及び加工など、同一基材の両面上でコーティングされることが可能である。構造中に透明導電性フィルムを組み込むためのパターン化及びさらなる加工の後、超薄型センサーを製造することができる。酸化インジウムスズ(又は他のドープされた金属酸化物)と比較して、薄く広がった金属層から製造された透明導体の1つの主要な利点は、優れた可撓性である。単一基材上にセンサー全体を製造することによって、この利点はさらに利用されることが可能となる。両表面上で透明導体を有する基材の一般的なパターン化については、参照によって本明細書に組み込まれる、「Double Sided Touch Sensor on Transparent Substrate」と題された、Zhongらに対する米国特許出願公開第2015/0116255号明細書に記載されている。基材の両面上で銀ナノワイヤーベースの透明導電性フィルムを加工することは、参照によって本明細書に組み込まれる、「Two-Sided Laser Patterning on Thin Film Substrates」と題された、Jonesらに対する米国特許出願公開第2014/0202742号明細書に記載されている。
【実施例
【0089】
実施例1-KBrを含む塩触媒による銀ナノワイヤー合成
本実施例には、改善された触媒組合せ及び加工を使用する、非常に薄型且つ高度に均一の銀ナノワイヤーの合成を記載した。
【0090】
第1の合成反応は、閉鎖された2リットル反応器中で実行され、そして分析のためにそれぞれの実施形態から4つのバッチを組み合わせた。最初に、室温で約1.67Lのエチレングリコールを反応器中に入れ、そして加熱を開始した。加熱開始前に、連続攪拌下でポリビニルピロリドン(K30、BASF)をEGに添加し、そして加熱を継続した。反応器が標的ピーク温度にほぼ達したら、加熱を停止し、そして連続的な混合下、触媒(KBr及び1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物(OMMCl))のエチレングリコール溶液を反応器に添加した。適切な混合後、硝酸銀のエチレングリコール溶液を添加した。反応器に添加した量に基づいて、反応器中の濃度は、PVPが0.1重量%~10重量%、KBrが0.00002M~0.002M、OMMClが0.00002M~0.002M、AgNOが0.0025M~0.25Mである。もちろん、反応物が添加され、そしてAgCl沈殿及びAg還元などの様々な反応が起こったら、種々の種の溶液中濃度は進展し、添加された量への参照は有用な基準点を提供する。硝酸銀を混合した後、望ましい体積に達するように追加量のエチレングリコールを添加し、そして反応器への最後の添加の約1時間後に反応が終了するまで、撹拌を継続した。
【0091】
合成の完了後、繰り返しアセトン沈殿、遠心分離及び水中再分散を使用することによって銀ナノワイヤーを精製した。収率を評価するために、精製された銀ナノワイヤーを分散体から除去し、そして乾燥させた。収率は、硝酸銀の形態で添加された銀の合計量と比較された、精製された銀ナノワイヤー中の銀の量に基づくものである。本実験に関して、収率は一般に約12~15%であった。
【0092】
収集された銀ナノワイヤーを、透過電子顕微鏡法(TEM)によって特徴決定した。代表的なTEM顕微鏡写真を図1に示す。108本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図2に示す。1.9nmの標準偏差で平均直径は17.3nmであり、ナノワイヤーの69%が18nm以下の直径を有し、そしてナノワイヤーの1.8%が15nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は14.2nmであった。
【0093】
銀ナノワイヤーの分散体をDMSO中で形成し、そして吸収スペクトルを測定した。イミダゾリウム塩化物塩を用いずに合成された代表的な対照の吸収スペクトルとともに、代表的なUV-可視吸収スペクトルを図3に示す。同対照吸収スペクトルは、次の吸収スペクトルプロットの全てに示される。376.6nmの対照吸収最大と比較して、吸収最大は375.5nmであり、そして0.246の410nmにおける対照正規化吸収と比較して、410nmにおける正規化吸収は0.208であった。410nmにおける吸収の減少は、より薄く、且つヘイズの少ないナノワイヤーと一致する。
【0094】
第2の合成反応は、PVP K30の代わりにPVP K90(BASF)を用いて実行した。合成の残りの態様は、上記の第1の合成と実質的に同一であった。この反応に関する収率は低かった。この試料の代表的な電子顕微鏡写真を図4に示す。52本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図5に示す。2.1nmの標準偏差で平均直径は16.2nmであり、ナノワイヤーの82.7%が18nm以下の直径を有し、そしてナノワイヤーの29%が15nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は12.7nmであった。第3の合成反応は、最初のPVP K30の3%をPVP K85(市販のより均一なポリマー)で置き換えることによって実行した。合成の残りの態様は、上記の第1の合成と実質的に同一であった。この反応に関する収率は約12%であった。
【0095】
代表的なTEM顕微鏡写真を図6に示す。128本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図7に示す。1.7nmの標準偏差で平均直径は16.9nmであり、ナノワイヤーの74.3%が18nm以下の直径を有し、そしてナノワイヤーの8.6%が15nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は14.2nmであった。PVP(高分子量)K85によって得られた結果は、他の合成結果のいずれよりもPVP K85(高分子量)によって合成された銀ナノワイヤーに関するナノワイヤー直径の標準偏差がより小さかったことを除き、PVP K30による合成及びPVP K90による合成からの銀ナノワイヤー特性の間の中間であった。代表的な吸収スペクトルを図8に示す。吸収最大は372.1nmであり、且つ410nmにおける正規化吸収は0.166であった。狭いピーク幅及び410nmにおける小さい吸収は、高度に直径均一性であり、且つ薄型であるナノワイヤーと一致している。
【0096】
実施例2-別の臭化物塩触媒による銀ナノワイヤー合成
本実施例は、多原子カチオンを有する臭化物塩触媒を使用する銀ナノワイヤー合成に関する。
【0097】
実験の第1の組は、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物触媒と一緒にヘキシルトリメチルアンモニウム臭化物(C13(CHNBr)を用いて実行された。合成の残りの態様は、実施例1で記載の通りに実行された。代表的なTEM顕微鏡写真を図9に示す。123本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図10に示す。2.1nmの標準偏差で平均直径は17.3nmであり、ナノワイヤーの81.3%が18nm以下の直径を有し、そしてナノワイヤーの5.7%が15nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は14.4nmであった。銀ナノワイヤーの分散体をDMSO中で形成し、そして吸収スペクトルを測定した。代表的な吸収スペクトルを図11に示す。吸収最大は372.1nmであり、且つ410nmにおける正規化吸収は0.176であった。410nmにおける小さい吸収は、高度の直径均一性と一致している。
【0098】
実施例1のKBrの代わりに1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム臭化物を使用して、別の試料を合成した。合成の残りの態様は、実施例1に記載の通りに実行された。代表的なTEM顕微鏡写真を図12に示す。134本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図13に示す。1.8nmの標準偏差で平均直径は17.4nmであった。最小の測定された直径は13.7nmであったが、他方、最大の測定された直径は23.6nmであった。
【0099】
実施例3-イミダゾールによって合成される銀ナノワイヤー
本実施例は、イミダゾール有機触媒を使用して合成された銀ナノワイヤーの特性を示す。
【0100】
イミダゾール添加剤を使用せずに塩化アンモニウム及び臭化カリウムのみを使用した対照試料とともに、塩化アンモニウム及び臭化カリウム塩触媒と一緒にイミダゾール添加剤を使用して、2種の試料を形成した。イミダゾール添加剤は、約0.0001M~約0.05Mの濃度で添加された。イミダゾールの添加以外、合成反応は、本質的に実施例1の通りに実行された。それぞれの試料中、イミダゾールの2つの異なる濃縮を使用し、第2の試料中では第1の試料に対して3倍のイミダゾールが使用された。
【0101】
代表的なTEM顕微鏡写真を図14に示す。100本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図15に示す。2.4nmの標準偏差で平均直径は21.5nmであった。最小の測定された直径は17.2nmであった。銀ナノワイヤーの分散体をDMSO中で形成し、そして吸収スペクトルを測定した。さらに以下に説明されるように、代表的な吸収スペクトルをイミダゾールによる試料と組み合わせて示す。吸収最大は377.6nmであり、且つ410nmにおける正規化吸収は0.243であった。
【0102】
第1のイミダゾール濃度で合成された銀ナノワイヤーの代表的なTEM顕微鏡写真を図16に示す。108本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図17に示す。1.8nmの標準偏差で平均直径は19.6nmであり、ナノワイヤーの20%が18nm以下の直径を有し、そしてナノワイヤーの0%が15nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は16.8nmであった。銀ナノワイヤーの分散体をDMSO中で形成し、そして吸収スペクトルを測定した。イミダゾールを用いない対照用のスペクトルとともに、代表的な吸収スペクトルを図18に示す。吸収最大は376.0nmであり、且つ410nmにおける正規化吸収は0.214であった。イミダゾールによるナノワイヤー合成は、ナノワイヤー直径の減少、並びに標準偏差、UV-可視ピーク幅、吸収最大の波長及び410nmにおける相対的な吸収によって表される、より高い均一性を有した。
【0103】
第2のイミダゾール濃度で合成された銀ナノワイヤーの代表的なTEM顕微鏡写真を図19に示す。105本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図20に示す。2.0nmの標準偏差で平均直径は18.9nmであり、ナノワイヤーの38%が18nm以下の直径を有し、そしてナノワイヤーの0%が15nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は15.5nmであった。銀ナノワイヤーの分散体をDMSO中で形成し、そして吸収スペクトルを測定した。イミダゾールを用いない対照用のスペクトルとともに、代表的な吸収スペクトルを図21に示す。吸収最大は376nmであり、且つ410nmにおける正規化吸収は0.206であった。より高いイミダゾール濃度によるナノワイヤー合成は、ナノワイヤー直径のさらなる減少を有したが、標準偏差によって表される均一性はさらに改善されなかった。
【0104】
1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物及び臭化カリウム塩を用いて、2つのイミダゾール濃度において2つの追加的な銀ナノワイヤー合成を実行した。第2のイミダゾール濃度は、第1のイミダゾール濃度の2倍であった。第1のイミダゾール濃度を使用して合成された銀ナノワイヤーの代表的なTEM顕微鏡写真を図22に示す。109本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図23に示す。1.5nmの標準偏差で平均直径は15.8nmであり、ナノワイヤーの90%が18nm以下の直径を有し、そしてナノワイヤーの32%が15nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は13.3nmであった。銀ナノワイヤーの分散体をDMSO中で形成し、そして吸収スペクトルを測定した。イミダゾールを用いない対照用のスペクトルとともに、代表的な吸収スペクトルを図24に示す。376.1nmの対照吸収最大と比較して、吸収最大は373.5nmであり、且つ0.216の対照410nm正規化吸収と比較して、410nmにおける正規化吸収は0.188であった。イミダゾールによって合成されたナノワイヤーは、標準偏差及び吸収スペクトルに基づき、非常に小さく、且つ均一のナノワイヤー直径を有した。
【0105】
(1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物及び臭化カリウムと一緒に)第2のイミダゾール濃度を使用して合成された銀ナノワイヤーの代表的なTEM顕微鏡写真を図25に示す。102本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図26に示す。2.8nmの標準偏差で平均直径は17.7nmであり、ナノワイヤーの70.6%が18nm以下の直径を有し、そしてナノワイヤーの12.7%が15nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は13.7nmであった。銀ナノワイヤーの分散体をDMSO中で形成し、そして吸収スペクトルを測定した。イミダゾールを用いない対照用のスペクトルとともに、代表的な吸収スペクトルを図27に示す。376.1nmの対照吸収最大と比較して、吸収最大は374.4nmであり、且つ0.216の対照410nm正規化吸収と比較して、410nmにおける正規化吸収は0.178であった。より低いイミダゾール濃度を用いた前段に記載の飼料と比較して、イミダゾール濃度がより高いと、より厚く、且つ均一性のより低い銀ナノワイヤーが得られた。
【0106】
実施例4-ピラゾールによって合成される銀ナノワイヤー
本実施例は、ピラゾール有機触媒を使用して合成された銀ナノワイヤーの特性を示す。
【0107】
1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物及び臭化カリウム塩と一緒にピラゾール添加剤を使用して、2リットル反応器の規模で2種の銀ナノワイヤー試料を形成した。ピラゾール添加剤は、約0.0001M~約0.05Mの濃度で添加された。ピラゾールの添加以外、合成反応は、本質的に実施例2の通りに実行された。2つの試料に関して、ピラゾールの同一濃度で合成を繰り返した。
【0108】
第1のピラゾール濃度を使用して合成された銀ナノワイヤーの代表的なTEM顕微鏡写真を図28に示す。103本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図29に示す。1.65nmの標準偏差で平均直径は14.9nmであり、ナノワイヤーの94%が18nm以下の直径を有し、そしてナノワイヤーの62%が15nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は12.5nmであった。銀ナノワイヤーの分散体をDMSO中で形成し、そして吸収スペクトルを測定した。ピラゾールを用いない対照用のスペクトルとともに、代表的な吸収スペクトルを図30に示す。376.1nmの対照吸収最大と比較して、吸収最大は368nmであり、且つ0.216の対照410nm正規化吸収と比較して、410nmにおける正規化吸収は0.154であった。ピラゾールによって合成されたナノワイヤーは、イミダゾールによって合成されるものよりもさらに小さい平均直径及び類似の標準偏差で非常に小さく、且つ均一のナノワイヤー直径を有した。
【0109】
第2の選択されたピラゾール濃度で合成された銀ナノワイヤーの代表的なTEM顕微鏡写真を図31に示す。90本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図32に示す。1.73nmの標準偏差で平均直径は15.25nmであり、ナノワイヤーの95%が18nm以下の直径を有し、そしてナノワイヤーの54%が15nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は12.3nmであった。銀ナノワイヤーの分散体をDMSO中で形成し、そして吸収スペクトルを測定した。ピラゾールを用いない対照用のスペクトルとともに、代表的な吸収スペクトルを図33に示す。376.1nmの対照吸収最大と比較して、吸収最大は370nmであり、且つ0.216の対照410nm正規化吸収と比較して、410nmにおける正規化吸収は0.154であった。第2のピラゾールによって合成されたナノワイヤーは、類似の非常に小さく、且つ均一なナノワイヤー直径を有したが、第1のピラゾールで合成された銀ナノワイヤーと比較して、わずかにより大きい平均直径及び標準偏差を有した。
【0110】
1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム塩化物及び臭化カリウム塩と一緒に上記の試料の濃度でピラゾール添加剤を使用して、10リットル反応器の規模でさらなる銀ナノワイヤー試料を形成した。第2のピラゾール濃度を使用して合成された銀ナノワイヤーの代表的なTEM顕微鏡写真を図34に示す。94本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図35に示す。1.21nmの標準偏差で平均直径は15.29nmであり、ナノワイヤーの99%が18nm以下の直径を有し、そしてナノワイヤーの39%が15nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は12.9nmであった。銀ナノワイヤーの分散体をDMSO中で形成し、そして吸収スペクトルを測定した。ピラゾールを用いない対照用のスペクトルとともに、代表的な吸収スペクトルを図36に示す。376.1nmの対照吸収最大と比較して、吸収最大は371nmであり、且つ0.216の対照410nm正規化吸収と比較して、410nmにおける正規化吸収は0.158であった。イソプロピルアルコール中の分散体、及び3種の全試料に関して吸収スペクトルを測定した。吸収最大は、第1の試料に関しては358.5nmにあり、且つ他の2種に関しては359nmにあった。10リットル規模で合成されたナノワイヤーは、一般に、本明細書において観察されたバッチ間の変動内で、より小さいバッチで製造された銀ナノワイヤーとほぼ等しい特性を有した。
【0111】
実施例5-合成間の水の添加
本実施例は、ナノワイヤーの合成の間の少量の水の添加によって、均一なナノワイヤーを維持しながら、ナノワイヤー直径の減少をもたらすことができることを示す。
【0112】
銀ナノワイヤーの試料を実施例1に記載の通り、OMMCl及びKBr触媒を用いて合成したが、硝酸銀の添加の前に0.3重量%の水を溶媒に添加した。反応中に少量の水を使用して合成された銀ナノワイヤーの代表的なTEM顕微鏡写真を図37に示す。127本のワイヤーに関して、ワイヤー直径を測定し、平均化した。銀ナノワイヤー直径のヒストグラムを図38に示す。1.69nmの標準偏差で平均直径は16.5nmであり、ナノワイヤーの72%が17nm以下の直径を有した。最小の測定された直径は14.3nmであった。銀ナノワイヤーの分散体をDMSO中で形成し、そして吸収スペクトルを測定した。水の添加を用いない代表的な対照用のスペクトルとともに、代表的な吸収スペクトルを図39に示す。376.6nmの対照吸収最大と比較して、吸収最大は373nmであり、且つ0.246の対照410nm正規化吸収と比較して、410nmにおける正規化吸収は0.182であった。水が含まれることによって平均直径が0.8nm減少し、そしてナノワイヤーのより高い均一性が得られた。
【0113】
実施例6-透明導電性フィルム
本実施例は、本明細書に記載される通りに合成された、より薄く、且つ均一な銀ナノワイヤーから形成された透明導電性フィルムの改善された特性を確証する。
【0114】
上記実施例において記載された通りに合成された、より薄く、且つ均一な銀ナノワイヤーの選択された組に関して、透明導電性フィルムの光学特性を調査した。透明導電性フィルムを含まない参照構造を使用して、Lの対照測定と一緒に2つの構造上で測定を実行する。導電性構造の両方に関して、上記で引用された’968特許の実施例5に本質的に記載される銀ナノワイヤーインクを使用して透明導電性フィルムが形成される。フィルムは基材上に手でスロットコーティングを使用して堆積される。インクを乾燥させるために、銀ナノワイヤーインクを有する構造を100℃のオーブン中で最高10分間まで乾燥させた。溶媒が除去され、成分が濃縮されるため、乾燥プロセスは化学溶融を引き起し、そこでさらなる反応は乾燥を継続することによって終了する。堆積された銀の量は、以下の特定の試料において記載される通り、約50ohms/sq又は70ohms/sqのいずれかのシート抵抗を有するフィルムを標的に定めるように選択される。導電性フィルムの乾燥後、乾燥された透明導電性フィルム上に市販のオーバーコートを手でスロットコーティングする。UVランプを用いてオーバーコートを乾燥及び架橋し、約85nmの厚さを有するオーバーコートが形成される。
【0115】
フィルム特性を試験するための構造に関して、これらの構造は図40~42に概略的に示される。図40を参照すると、透明導電性層102上に市販のアクリレートベースのコーティング組成物によって形成された約85nmのオーバーコート層106と一緒に、基材104(厚さ50ミクロンの環式オレフィンポリマー(COP))上の(溶融金属ナノ構造化ネットワークを有する)透明導電性層102を有する透明構造100が示される。図41を参照すると、反射測定に適切である第2の構造110が示される。黒色アクリルボードを使用して、測定用の黒色バックグラウンドを提供する。いくつかの意味で、黒色基材は黒色の携帯電話スクリーンに似せるために使用される。図41中、2つの接着剤表面を有する光学的に透明な接着剤層112をオーバーコート層106上に配置する。光学的に透明な接着剤層112の他の表面は、黒色アクリルのボード114上に配置される。反射防止層116は、基材104の他の表面上に配置される。参照構造120は図42に示される。図42を参照すると、透明導電性層102又はオーバーコート層106を用いずに、黒色アクリルボード114、光学的に透明な接着剤層112、基材104及び反射防止層116が積層されている。
【0116】
図40のこのような構造は、シート抵抗、透過率、b及びヘイズを測定するために使用される。シート抵抗及びヘイズの積は、堆積させたナノワイヤーの量の変動のために調節するべき有用な基準点であるため、この積も以下に表にまとめる。第2の構造は図41に示され、そして透明導電性フィルムを有さない参照構造は図42に示される。図41及び42中の構造を使用して、SCEモードでの反射Lを測定する。図42の参照構造120に関してのSCE反射モードでのCIELAB測定値は、L=1.62、a=0.19及びb=-0.07であった。
【0117】
フィルム試料のヘイズ値は、BYK Haze-Gard plus 4725 Haze Meterを使用して測定した。以下の試料に関するヘイズ測定値を調節するために、透明導電性層(図41)による測定値から、対照試料(図42)に関する基材ヘイズの値を差し引き、別々に透明導電性フィルム及びオーバーコートに関するおよそのヘイズ測定値を得ることができる。TT%及びヘイズの値は、参照によって本明細書に組み込まれる、ASTM D 1003規格(「Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics」)に基づき、BYK Haze-Gard plus 4725 Haze Meterを用いて測定した。フィルムに関して提示された全透過及びヘイズ値には、92.6%の全透過、0.08%のヘイズ及びb0.09を有する厚さ50ミクロンのCOP基材が含まれる。b及びaのCIELAB値は、SpectraMagic(商標)NXソフトウェアを備えたKonica Minolta Spectrophotometer CM-3700Aによって行われた測定から、市販のソフトウェアを使用して決定された。
【0118】
シート抵抗は、4点プローブ法、非接触式抵抗計で、又は銀ペーストから形成された銀の2本の実線(不透明)によって画定された正方形を使用することによってフィルムの抵抗を測定することによって測定された。いくつかの実施形態において、シート抵抗測定を実行するために、正方形又は長方形を画定する試料の表面上にペーストを塗布し、次いで銀ペーストを硬化及び乾燥するために、それを20分間、約120℃で焼鈍しすることによって、銀ペーストの1対の平行なストライプを使用したこともあった。ワニ口クリップを銀ペーストストライプに接続し、そしてリードを市販の抵抗測定デバイスに接続した。
【0119】
対照ナノワイヤーに対して、及び減少した直径及び均一性を有するナノワイヤーに対して、導電性及び光学測定を実行した。2つの堆積量に関して測定を実行した。1つ目はシート抵抗約50ohms/sqを標的とし、そして2つ目は約70ohms/sqを標的としていた。オーバーコートがある場合とない場合の測定も行った。結果を表1(オーバーコートなし)及び2(オーバーコートあり)に示す。シート抵抗及びヘイズの積は、より薄く、均一のナノワイヤーに関して有意に減少する。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
類似のナノワイヤー特性を有する3種の異なる薄型均一ナノワイヤーバッチを使用する導電性及び光学測定も決定された。結果を表3(オーバーコートなし)及び表4(オーバーコートあり)に示す。これらの結果において、表1及び2に示された結果と同様に、オーバーコートは、透過率(TT%)の変化をわずかのみもたらすか、又は全くもたらさない一方で、H%及びbにおいて有意な減少をもたらした。
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
は、表1及び2を作成するために使用された試料に関する反射構造において測定された。Lは、図42の対照構造に対して測定され、且つ1.62であることが分かった。透明導電性フィルムを有する試料に関して、この値が透明導電性フィルムの特性に関連するため、L 試料-L 対照であるΔLの値が報告される。値を表5に示す。薄いナノワイヤーほど、ΔLの有意に小さい値を示した。
【0126】
【表5】
【0127】
直径分布がどのように光学特性に影響を与えたか調査するために、7バッチのより薄い均一銀ナノワイヤーを評価した。測定された特定の値を表にまとめるが、コーティングは約70ohms/sqのシート抵抗を有するように標的が定められた。ナノワイヤー特性を表6に示し、そしてナノワイヤーの光学特性を表7に示す。
【0128】
【表6】
【0129】
【表7】
【0130】
表5及び6の結果に基づき、Lのより低い値を、18nmより大きい直径を有するナノワイヤーがより少ないことに関連づけることができる。したがって、小さい標準偏差と関連する、より薄い平均直径の両方が、Lの小さい値を達成するために特に重要となる可能性がある。
【0131】
COPポリマー基材の対立表面上に溶融金属ナノ構造化ネットワークを有する構造が形成された。構造を図43に示す。透明導電性フィルム及びポリマーオーバーコートは連続的に形成され、そしてそれぞれの透明導電性フィルムは、本質的に、本実施例の以前の結果に関して上記される通りに構成された。2つの透明導電性フィルムを有する得られた構造は、各フィルムは約70ohms/sqのシート抵抗を有した。最終構造のヘイズ(H%)は0.56であった。
【0132】
上記の実施形態は例示のためのものであり限定的でないことを意図している。さらなる実施形態が請求の範囲内である。さらに、本発明は特定の実施形態を参照して説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに形態および詳細に変更を加えることができることを当業者は認識するであろう。本明細書の明示的な開示に反する主題が組み込まれないように上記の文献の参照による任意の組み込みは制限される。構成部品、要素、成分又は他の分割を有する特定の構造、組成物及び/又はプロセスが記載される限り、本明細書の開示が、特定の実施形態、特定の構成部品、要素、成分、他の分割又はその組合せを含んでなる実施形態、並びに別途特に示されない限り、本議論中で示される対象の基本的な特性を変更しない追加的な特徴を有することが可能である、そのような特定の構成部品、成分、又は他の分割若しくはその組合せから本質的になる実施形態を包含することは理解される。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
銀を含んでなり、且つ約20nm以下の平均直径及び約2.5nm以下の直径の標準偏差を有するナノワイヤーの集合体。
(態様2)
約18nm以下の平均直径を有する、態様1に記載のナノワイヤーの集合体。
(態様3)
約16nm以下の平均直径を有する、態様1に記載のナノワイヤーの集合体。
(態様4)
約2.25nm以下の直径の標準偏差を有する、態様1~3のいずれか一つに記載のナノワイヤーの集合体。
(態様5)
約2.0nm以下の直径の標準偏差を有する、態様1~3のいずれか一つに記載のナノワイヤーの集合体。
(態様6)
DMSO中の前記ナノワイヤーの希釈分散体が、376.5nm以下の最大吸収波長、約0.225以下の410nmにおける正規化吸収を有する、態様1~5のいずれか一つに記載のナノワイヤーの集合体。
(態様7)
300nm~800nmのスペクトルが0~1の吸光度値を有するように正規化される場合、DMSO中の前記ナノワイヤーの希釈分散体が、約0.18以下の410nmにおける吸収を有する、態様1~5のいずれか一つに記載のナノワイヤーの集合体。
(態様8)
前記ナノワイヤーの25%以下が18nmより大きい直径を有する、態様1~7のいずれか一つに記載のナノワイヤーの集合体。
(態様9)
前記ナノワイヤーの約10%以下が18nmより大きい直径を有する、態様1~7のいずれか一つに記載のナノワイヤーの集合体。
(態様10)
貴金属コーティングを有する、態様1~9のいずれか一つに記載のナノワイヤーの集合体。
(態様11)
ポリオール溶媒と、ポリビニルピロリドンと、塩化物塩及び臭化物塩とのブレンドを含んでなり、常磁性イオンを実質的に含まず、少なくとも1個であるが3個以下の窒素原子及び少なくとも1個の炭素原子を有する5員芳香族複素環カチオンを含んでなる反応溶液を形成するステップ、
前記反応溶液をピーク温度まで加熱するステップ、並びに
溶解性の銀塩を添加するステップ
を含んでなる、銀ナノワイヤーの合成方法。
(態様12)
臭化物イオンのモルが、塩化物イオンのモルの約0.6~約5倍である、態様11に記載の方法。
(態様13)
少なくとも約145℃のピーク温度に達するように反応混合物を加熱し、その後、前記加熱を終了しても、終了しなくてもよい、態様11又は態様12に記載の方法。
(態様14)
前記反応溶液が、アンモニウム、有機官能基を有するアンモニウム、アルカリカチオン又はその混合物を含んでなる、態様11~13のいずれか一つに記載の方法。
(態様15)
前記芳香族複素環カチオンが、イミダゾリウム、ピラゾリウム、その誘導体又はその混合物を含んでなる、態様11~14のいずれか一つに記載の方法。
(態様16)
前記反応溶液が、PVP K30及びPVP K90のブレンドを含んでなる、態様11~15のいずれか一つに記載の方法。
(態様17)
前記溶解性の銀塩が標的ピーク温度の±5℃の範囲内で添加され、且つ段階的な冷却を可能にするために、前記加熱が中止されるか、又は減少される、態様11~16のいずれか一つに記載の方法。
(態様18)
反応器中に添加された量に基づく前記反応溶液の濃度が、PVPは0.1重量%~10重量%、臭化物塩は0.00002M~0.005M、塩化物塩は0.00002M~0.005M、イミダゾリウム塩は0.00002M~0.005M、そしてAgNO は0.0025M~0.25Mである、態様11~17のいずれか一つに記載の方法。
(態様19)
前記溶解性の銀塩と一緒に、又は前記溶解性の銀塩の前記添加後に、2~40パーセントの前記溶媒が添加される、態様11~18のいずれか一つに記載の方法。
(態様20)
反応の開始時における反応器中の混合物が、約0.01~約5重量%の水をさらに含んでなる、態様11~19のいずれか一つに記載の方法。
(態様21)
完了した反応混合物から、約18nm以下の平均直径及び約2.5nm以下の直径の標準偏差を有する銀ナノワイヤーを精製することをさらに含んでなる、態様11~20のいずれか一つに記載の方法。
(態様22)
ポリオール溶媒と、ポリビニルピロリドンと、塩化物及び/又は臭化物を含んでなる塩と、少なくとも1個であるが3個以下の窒素原子及び少なくとも1個の炭素原子を含んでなる5員芳香族複素環を有する中性有機化合物とのブレンドを含んでなる反応溶液を形成するステップ、
前記反応溶液をピーク温度まで加熱するステップ、並びに
溶解性の銀塩を添加するステップ
を含んでなる、銀ナノワイヤーの合成方法。
(態様23)
前記溶解性の銀塩が標的ピーク温度の±5℃の範囲内で添加される、態様22に記載の方法。
(態様24)
前記5員芳香族環を有する化合物が、イミダゾール、ピラゾール、イミダゾールの誘導体、ピラゾールの誘導体又はその混合物である、態様22又は態様23に記載の方法。
(態様25)
反応器中に添加された量に基づく前記反応溶液の濃度が、PVPは0.1重量%~10重量%、臭化物塩は0.00002M~0.005M、塩化物塩は0.00002M~0.005M、芳香族複素環化合物は約0.0001M~約0.1M、そしてAgNO は0.0025M~0.25Mであり、前記反応溶液が、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、その誘導体又はその混合物を含んでなる、態様22~24のいずれか一つに記載の方法。
(態様26)
前記溶解性の銀塩と一緒に、又は前記溶解性の銀塩の前記添加後に、2~40パーセントの前記溶媒が添加される、態様22~25のいずれか一つに記載の方法。
(態様27)
反応の開始時における前記反応溶液が、約0.01~約5重量%の水をさらに含んでなる、態様22~26のいずれか一つに記載の方法。
(態様28)
完了した反応混合物から、約20nm以下の平均直径及び約3.5nm以下の直径の標準偏差を有する銀ナノワイヤーを精製することをさらに含んでなる、態様22~27のいずれか一つに記載の方法。
(態様29)
透明基材と、前記透明基材の表面上の薄く広がった金属導電性層とを含んでなる、透明電気導電性構造であって、
約100ohms/sq以下のシート抵抗、少なくとも約90%の可視光の全透過度、及び約0.60%以下のヘイズを有する、透明電気導電性構造。
(態様30)
黒色表面を有する基材上の拡散反射構造において得られたΔL 値が2.0以下の値であり、ΔL は、前記電気導電性構造のL から、薄く広がった金属導電性フィルムを有さない構造のL を差し引いたものである、態様29に記載の透明電気導電性構造。
(態様31)
前記薄く広がった金属導電性層が多糖を含んでなる、態様29又は態様30に記載の透明電気導電性構造。
(態様32)
前記薄く広がった金属導電性層が溶融金属導電性ネットワークを含んでなる、態様29~31のいずれか一つに記載の透明電気導電性構造。
(態様33)
前記薄く広がった金属導電性層上にポリマーオーバーコートをさらに含んでなる、態様29~32のいずれか一つに記載の透明電気導電性構造。
(態様34)
約75ohms/sq以下のシート抵抗、少なくとも約91%の可視光の全透過度、及び約0.35%以下のヘイズを有する、態様33に記載の透明電気導電性構造。
(態様35)
0.40%以下のヘイズ、及び1.5以下の前記薄く広がった金属導電性層及び前記ポリマーオーバーコートに関連するΔL を有する、態様33又は態様34に記載の透明電気導電性構造。
(態様36)
前記ポリマーオーバーコートがアクリレートポリマーを含んでなる、態様33~35のいずれか一つに記載の透明電気導電性構造。
(態様37)
約75ohms/sq以下のシート抵抗、少なくとも約91%の可視光の全透過度、及び約0.40%以下のヘイズを有する、態様28~31のいずれか一つに記載の透明電気導電性構造。
(態様38)
透明基材と、前記透明基材の第1の表面上の第1の薄く広がった金属導電性層と、前記第1の表面の反対側の前記基材の第2の表面上の第2の薄く広がった金属導電性層とを含んでなる、透明電気導電性構造であって、
前記透明電気導電性構造のそれぞれの表面が、約100ohms/sq以下のシート抵抗を有し、且つ前記透明電気導電性構造が、少なくとも約90%の可視光の全透過度、及び約0.90%以下のヘイズを有する、透明電気導電性構造。
(態様39)
前記透明電気導電性構造のそれぞれの表面が、約60~約90ohms/sqのシート抵抗を有し、且つ前記透明電気導電性構造が、少なくとも約90%の可視光の全透過度、及び約0.75%以下のヘイズを有する、態様38に記載の透明電気導電性構造。
(態様40)
前記透明電気導電性構造のそれぞれの表面が、約40~約60ohms/sqのシート抵抗を有し、且つ前記透明電気導電性構造が、少なくとも約90%の可視光の全透過度、及び約0.85%以下のヘイズを有する、態様38に記載の透明電気導電性構造。
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