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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】姿勢矯正用衣料及び女性用衣料
(51)【国際特許分類】
   A41C 3/08 20060101AFI20230210BHJP
   A41C 3/00 20060101ALI20230210BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20230210BHJP
   A41C 1/00 20060101ALI20230210BHJP
   A61F 13/14 20060101ALI20230210BHJP
   A41C 3/12 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
A41C3/08
A41C3/00 A
A41D13/05 118
A41C1/00 Z
A41D13/05 131
A61F13/14 A
A41C3/12 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021162760
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2021-10-05
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306040805
【氏名又は名称】株式会社MIC
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(72)【発明者】
【氏名】川俣 誓子
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3183991(JP,U)
【文献】特開平09-241903(JP,A)
【文献】登録実用新案第3193895(JP,U)
【文献】特開2019-119961(JP,A)
【文献】登録実用新案第3226463(JP,U)
【文献】特開2011-072323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 3/08
A41C 3/00
A41D 13/05
A41C 1/00
A61F 13/14
A41C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体胸部の体側部側に配置されるサイドパネル部と、
前記サイドパネル部の下端部を人体胸部の前面において連結する前身頃部と、
前記サイドパネル部の背面側同士を左右の肩甲骨を通るよう互いに連結し、前記左右の肩甲骨を人体の中央に引き寄せる伸縮性素材からなり、バックパネル部以外に設けられる肩甲骨引寄部と、
を備え、
前記肩甲骨引寄部は、人体の中央部から体側部側に位置する斜め上方へ向けて下向きの凸形状に湾曲した上端縁と、体側部側に位置する下端から人体の中央部側へ向けて上向きの凸形状に湾曲した下端縁と、体側部側の端部に上下方向に沿って直線状に設けられ、前記サイドパネル部と接合された体側部側の端縁とを有し、且つその上端縁が肩甲骨の外側角の下方から内側縁の下部へわたるように配置されるとともに、その下端縁が肩甲骨の下角より下方に位置するよう配置されて、着用時に前記肩甲骨を鎖骨を回転軸として肋骨の上をすべるように人体の中央部へ向けて斜め上方へスライドさせる動きを生じさせ、着用前の人体の周方向に沿った長さが、当該人体の周方向に沿った長さより短く設定されて、着用時、120~300%に伸縮される姿勢矯正用衣料。
【請求項2】
女性のバストを覆うバストカップ部と、
前記バストカップ部の体側部側に配置されるサイドパネル部と、
前記サイドパネル部の上部に配置され前記サイドパネル部の背面側同士を左右の肩甲骨を通るよう互いに連結し、前記左右の肩甲骨を人体の中央に引き寄せる伸縮性素材からなり、バックパネル部以外に設けられる肩甲骨引寄部と、
を備え、
前記肩甲骨引寄部は、人体の中央部から体側部側に位置する斜め上方へ向けて下向きの凸形状に湾曲した上端縁と、体側部側に位置する下端から人体の中央部側へ向けて上向きの凸形状に湾曲した下端縁と、体側部側の端部に上下方向に沿って直線状に設けられ、前記サイドパネル部と接合された体側部側の端縁とを有し、且つその上端縁が肩甲骨の外側角の下方から内側縁の下部へわたるように配置されるとともに、その下端縁が肩甲骨の下角より下方に位置するよう配置されて、着用時に前記肩甲骨を鎖骨を回転軸として肋骨の上をすべるように人体の中央部へ向けて斜め上方へスライドさせる動きを生じさせ、着用前の人体の周方向に沿った長さが、当該人体の周方向に沿った長さより短く設定されて、着用時、120~300%に伸縮される姿勢矯正用衣料。
【請求項3】
前記バストカップ部の上部から前記バックパネル部にわたり配置される肩掛け部を備える請求項2に記載の女性用衣料。
【請求項4】
前記肩甲骨引寄部の体側部側の端部は、前記サイドパネル部及び前記肩掛け部の双方にわたり接合されている請求項3に記載の女性用衣料。
【請求項5】
前記肩甲骨引寄部は、その上端縁が肩甲骨の外側角の下方から内側縁の下部へわたるように配置される請求項2乃至4のいずれかに記載の女性用衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、肩甲骨を引き寄せて姿勢を矯正することが可能な姿勢矯正用衣料及びブラジャーやブラスリップ、ボディスーツ、ブラキャミなどのファンデーション等を広く含む女性用衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、姿勢矯正効果を備えた女性用衣料に関する技術としては、例えば、特許文献1や特許文献2等に開示されたものが既に提案されている。
【0003】
特許文献1は、使用者の胸部を覆う前身頃と、前記前身頃の右上方端部から延設される右肩ベルトを介して使用者の右背部から左背部まで傾斜して覆設する第1後身頃と、前記前身頃の左上方端部から延設される左肩ベルトを介して使用者の左背部から右背部まで傾斜して覆設する第2後身頃と、前記前身頃、前記第1後身頃及び前記第2後身頃の下端部に位置し使用者の胸部及び背部を周回して覆う帯状の締着部と、前記第1後身頃の使用者側に配設され前記第1後身頃より摩擦係数の大きい第1摩擦部と、前記第2後身頃の使用者側に配設され前記第2後身頃より摩擦係数の大きい第2摩擦部を備えるよう構成したものである。
【0004】
特許文献2は、前身頃及び後身頃を有するブラジャー機能を有するハーフトップにおいて、後身頃地を横方向に伸縮性を有する生地で構成し、前身頃のブラジャーカップ部両上縁端よりそれぞれ肩上を通り、後身頃背中央部分を縦方向に覆って後身頃下縁に至る略Y字状の背中に伸縮性の少ない生地を、後身頃地に縫着せず遊離した状態で設け、略Y字状の伸縮性生地下端を後身頃下縁に縫着したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第3226122号公報
【文献】特開2012-52244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、肩甲骨を引き寄せて姿勢を矯正することが可能な姿勢矯正用衣料及び女性用衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、人体胸部の体側部側に配置されるサイドパネル部と、
前記サイドパネル部の下端部を人体胸部の前面において連結する前身頃部と、
前記サイドパネル部の背面側同士を左右の肩甲骨を通るよう互いに連結し、前記左右の肩甲骨を人体の中央に引き寄せる伸縮性素材からなり、バックパネル部以外に設けられる肩甲骨引寄部と、
を備え、
前記肩甲骨引寄部は、人体の中央部から体側部側に位置する斜め上方へ向けて下向きの凸形状に湾曲した上端縁と、体側部側に位置する下端から人体の中央部側へ向けて上向きの凸形状に湾曲した下端縁と、体側部側の端部に上下方向に沿って直線状に設けられ、前記サイドパネル部と接合された体側部側の端縁とを有し、且つその上端縁が肩甲骨の外側角の下方から内側縁の下部へわたるように配置されるとともに、その下端縁が肩甲骨の下角より下方に位置するよう配置されて、着用時に前記肩甲骨を鎖骨を回転軸として肋骨の上をすべるように人体の中央部へ向けて斜め上方へスライドさせる動きを生じさせ、着用前の人体の周方向に沿った長さが、当該人体の周方向に沿った長さより短く設定されて、着用時、120~300%に伸縮される姿勢矯正用衣料である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、女性のバストを覆うバストカップ部と、
前記バストカップ部の体側部側に配置されるサイドパネル部と、
前記サイドパネル部の上部に配置され前記サイドパネル部の背面側同士を左右の肩甲骨を通るよう互いに連結し、前記左右の肩甲骨を人体の中央に引き寄せる伸縮性素材からなり、バックパネル部以外に設けられる肩甲骨引寄部と、
を備え、
前記肩甲骨引寄部は、人体の中央部から体側部側に位置する斜め上方へ向けて下向きの凸形状に湾曲した上端縁と、体側部側に位置する下端から人体の中央部側へ向けて上向きの凸形状に湾曲した下端縁と、体側部側の端部に上下方向に沿って直線状に設けられ、前記サイドパネル部と接合された体側部側の端縁とを有し、且つその上端縁が肩甲骨の外側角の下方から内側縁の下部へわたるように配置されるとともに、その下端縁が肩甲骨の下角より下方に位置するよう配置されて、着用時に前記肩甲骨を鎖骨を回転軸として肋骨の上をすべるように人体の中央部へ向けて斜め上方へスライドさせる動きを生じさせ、着用前の人体の周方向に沿った長さが、当該人体の周方向に沿った長さより短く設定されて、着用時、120~300%に伸縮される姿勢矯正用衣料である。
【0009】
請求項3に記載された発明は、前記バストカップ部の上部から前記バックパネル部にわたり配置される肩掛け部を備える請求項2に記載の女性用衣料である。
【0010】
請求項4に記載された発明は、前記肩甲骨引寄部の体側部側の端部は、前記サイドパネル部及び前記肩掛け部の双方にわたり接合されている請求項3に記載の女性用衣料である。
【0011】
請求項5に記載された発明は、前記肩甲骨引寄部は、その上端縁が肩甲骨の外側角の下方から内側縁の下部へわたるように配置される請求項2乃至4のいずれかに記載の女性性用衣料である。
【0012】
請求項6に記載された発明は、前記肩甲骨引寄部は、その伸長率が120~300%に設定される請求項2乃至5のいずれかに記載の女性性用衣料である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、肩甲骨を引き寄せて姿勢を矯正することが可能な姿勢矯正用衣料及び女性用衣料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施の形態1に係る姿勢矯正用衣料及び女性用衣料の一例としてのブラジャーを示す着用時の前面側の斜視構成図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る姿勢矯正用衣料及び女性用衣料の一例としてのブラジャーを示す着用時の背面側の斜視構成図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る姿勢矯正用衣料及び女性用衣料の一例としてのブラジャーの前面側を構成する部材を示す分解正面図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る姿勢矯正用衣料及び女性用衣料の一例としてのブラジャーの背面側を構成する部材を示す分解正面図である。
図5】バストカップを示す断面正面図である。
図6】この発明の実施の形態1に係る姿勢矯正用衣料及び女性用衣料の一例としてのブラジャーの要部を示す内面構成図である。
図7】この発明の実施の形態1に係る姿勢矯正用衣料及び女性用衣料の一例としてのブラジャーを示す背面構成図である。
図8】人体の肩甲骨を示す概略構成図である。
図9】人体の肩甲骨を示す概略構成図である。
図10】この発明の実施の形態1に係る女性用衣料の一例としてのブラジャーを示す斜視構成図である。
図11】この発明の実施の形態1に係る女性用衣料の一例としてのブラジャーの作用を示す斜視構成図である。
図12】この発明の実施の形態2に係る姿勢矯正用衣料を示す着用時の正面構成図である。
図13】この発明の実施の形態2に係る姿勢矯正用衣料を示す着用時の背面構成図である。
図14】この発明の実施の形態2に係る姿勢矯正用衣料の作用を示す着用時の正面構成図である。
図15】この発明の実施の形態2に係る姿勢矯正用衣料の作用を示す着用時の背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
[実施の形態1]
図1及び図2は、実施の形態1に係る姿勢矯正用衣料及び女性用衣料としてのブラジャーをそれぞれ示す斜視構成図である。尚、図1は着用時におけるブラジャーの前面側の形状を、図2は着用時におけるブラジャーの背面側の形状をそれぞれ示したものである。
【0017】
このブラジャー1は、図1及び図2に示されるように、大別して、女性の左右のバストをそれぞれ覆う左右のバストカップ部2,3と、これら左右のバストカップ部2,3を互いに連結するよう当該左右のバストカップ部2,3の下方に人体中央部から体側部側に亙り配設されるフロント構成部としてのフロントパネル部4と、左右のバストカップ部2,3の体側部側に配設される体側構成部としてのサイドパネル部5,6と、サイドパネル部5,6の背面側に配設されるバック構成部としてのバックパネル部7,8を備えている。なお、フロントパネル部4とサイドパネル部5,6は、別体として構成する場合に限らず、一体的に構成しても良い。
【0018】
また、左右のバストカップ部2,3、フロントパネル部4及びサイドパネル部5,6は、例えば、縫着等の手段によって互いに接合される。これらの左右のバストカップ部2,3、フロントパネル部4及びサイドパネル部5,6は、図3に示されるように、表面側構成部材と裏面側構成部材からなる二重構造として構成されている。左右のバストカップ部2,3、フロントパネル部4及びサイドパネル部5,6の裏面側構成部材は、左右のバストカップ9,10と、フロントパネル11及びサイドパネル12,13とから構成されている。一方、左右のバストカップ部2,3、フロントパネル部4及びサイドパネル部5,6の表面側構成部材は、左右のバストカップ部2,3とサイドパネル部5,6の一部を一体的に形成する左右のバストカップ構成部材14,15と、フロントパネル部4及びサイドパネル部5,6をそれぞれ個別に形成するフロントパネル構成部材16及びサイドパネル構成部材17,18とから構成されている。左右のバストカップ構成部材14,15は、人体の中央部側に位置する部材14a,15aが別部材となっている。これらの左右のバストカップ部2,3、フロントパネル部4及びサイドパネル部5,6は、表面側構成部材と裏面側構成部材からなる二重構造に限定されるものではなく、裏面側構成部材のみからなる単一構造であっても良い。
【0019】
この実施の形態1に係るブラジャー1は、図4に示されるように、左右のバックパネル部7,8の背面側の端部に、フック19及びアイ20からなる連結具が縫着や接着等の手段によって取り付けられている。ブラジャー1は、左右のバックパネル部7,8の端部を人体の背面においてフック19及び複数のアイ20からなる連結具によって互いに連結することで女性のバスト部分に着用される。
【0020】
この実施の形態1において、左右のバストカップ部2,3の構成は任意であり、特に限定されるものではない。左右のバストカップ部2,3は、例えば、女性のバスト形状に対応した三次元形状にモールド成型等によって形成するのが望ましい。また、左右のバストカップ部2,3の構成は、女性の左右のバストをそれぞれ被覆可能なものであれば良く、例えば、モールド成型されたバストパッドを有するパディッドタイプや、バストサイドを押さえる補正パネルや裏当て等を備えた複合構成からなるものなどであっても良い。
【0021】
更に説明すると、左右のバストカップ部2,3は、図5に示されるように、女性のバスト形状に対応した三次元形状にモールド成型等によって形成された3/4カップとしてのバストカップ9,10と、バストカップ9,10の下端縁に沿って配置された保形用の合成樹脂等からなるワイヤーボーン21,22を備えている。バストカップ9,10は、図3に示されるように、その上端縁9a,10aが人体の中央へ向けて所要の曲率半径を有する上向きの湾曲形状に形成されている。また、バストカップ9,10は、その上端から人体の体側部側へ向けた端縁9b,10bが所要の曲率半径を有する下向き(内向き)の短い湾曲形状に形成されている。このバストカップ9,10の体側部側に位置する端縁9b,10bは、ブラジャー1の肩回りの一部(図1参照)を構成している。さらに、バストカップ9,10は、その下端縁9c,10cが人体の中央から体側部側の上部へ向けて所要の曲率半径を有する下向き(外向き)の湾曲形状に形成されている。
【0022】
バストカップ9,10は、図5に示されるように、発泡ウレタン等の素材をモールド成型等により所定のカップ形状に形成したカップ本体23の表裏両面を接着等により表裏の生地24,25で一体的に被覆して構成されている。バストカップ9,10には、その中央部に相対的に厚く形成されたパッド部26が一体的に設けられている。また、バストカップ9,10の内面には、肌当たりを良好とするため、円形又は楕円形状に湾曲した凸部27が所要の間隔で突出するよう形成されている。また、バストカップ9,10の上端縁には、縁取りテープ28が縫着されている。なお、バストカップ9,10は、パッド部26、27を備えないものであっても勿論良い。
【0023】
バストカップ9,10の下端縁には、その人体中央部から下端部に掛けてセンターパネル11が縫着されている。センターパネル11は、図3に示されるように、その上端縁11aがバストカップ9,10の下端縁9c、10cに沿った湾曲形状に形成された正面略三角形状に形成されている。また、バストカップ9,10の下端縁9c,10cには、その下端部から体側部に掛けてサイドパネル12,13が縫着されている。サイドパネル12,13は、その人体中央部側の端縁12a,13aがバストカップ9,10の下端縁9c,10cと同一の曲率半径を有する湾曲形状に形成されている。また、サイドパネル12、13は、その上端から体側部側へ向けて端縁12b,13bが所要の曲率半径を有する下向き(内向き)の短い湾曲形状に形成されている。このサイドパネル12,13の体側部側に位置する端縁12b,13bは、バストカップ9,10とともに、ブラジャー1の肩回りの一部(図2参照)を構成している。さらに、サイドパネル12,13は、その体側部側の端縁12c,13cが上下方向に沿って下端部がやや人体中央に向けて傾斜した直線状に形成されている。また、サイドパネル12,13は、その下端縁12d,13dが水平方向に沿って直線状に形成されている。サイドパネル12,13は、人体中央部側の端縁12e,13eがセンターパネル11の体側部側の端縁11b,11bと縫着されている。
【0024】
この実施の形態1では、着用感を向上させるため、センターパネル11及びサイドパネル12,13として、ウレタン等の弾性材料からなる薄い弾性体層の表裏両面を接着剤を介して布地で被覆したものを用いている。なお、センターパネル11及びサイドパネル構12,13としては、通常の布地を用いても良いことは勿論である。
【0025】
左右のバックパネル部7,8は、図4に示されるように、人体の中央部側の端部から斜め上方へ向けて大きな曲率半径を有して下向きに湾曲した上端縁7a,8aと、上端縁7a,8aの体側部側に位置する上端から体側部側の端部へ下向きの湾曲形状に短く形成された体側部側の上縁7b,8bと、体側部側の端部に上下方向に沿った配置された体側部側の端縁7c,8cと、下端部に水平方向に沿ってアンダーバスト形状に配置された下端縁7d,8dと、人体中央部側の端部に幅が狭く形成され、先端にフック19及び複数のアイ20からなる連結具が縫着された中央部側の端縁7e,8eを備えている。左右のバックパネル部7,8には、その上端縁7a,8a、体側部側の上縁7b,8b及び下端縁7d,8dに伸縮テープが縫着されている。また、左右のバックパネル部7,8の体側部側の端縁7c,8cは、サイドパネル12,13の体側部側の端縁12c,13cと全長にわたり互いに縫着されている。なお、左右のバックパネル部7,8は、フック19やアイ20を備えずに一体的に構成されたものであっても良い。
【0026】
また、左右のバストカップ構成部材14,15は、図3に示されるように、上下方向に沿って伸縮性を有するレース生地によって構成されている。左右のバストカップ構成部材14,15は、一枚又は複数枚のレース生地を縫着することにより、左右のバストカップ9,10に対応した立体形状に形成されている。左右のバストカップ構成部材14,15は、バストカップ9,10の端縁9b,10bと、サイドパネル12,13の端縁12b,13b及び端縁12c,13cのみで、バストカップ9,10及びサイドパネル12,13と縫着されている。
【0027】
さらに、フロントパネル構成部材16及びサイドパネル構成部材17,18は、水平方向に沿って伸縮性を有する左右のバストカップ構成部材14,15と同じレース生地によって構成されている。フロントパネル構成部材16及びサイドパネル構成部材17,18は、その上端縁が左右のバストカップ構成部材14,15の下端縁、及びその左右端縁がサイドパネル12,13の端縁12c,13cのみと縫着されている。なお、フロントパネル構成部材16及びサイドパネル構成部材17,18は、センターパネル11及びサイドパネル12,13より長さが若干長く設定されている。
【0028】
また、この実施の形態1に係るブラジャー1は、図1及び図2に示されるように、左右のバストカップ部2,3の内側面にそれぞれ左右の第一内側パネル30,31が配置されている。左右の第一内側パネル30,31は、図3に示されるように、伸縮性を有するストレッチ素材からなり、人体の頭部を鉛直方向の上方とした場合における上下方向に沿って所要の幅を有する細長い帯形状に形成されている。
【0029】
更に説明すると、左右の第一内側パネル30,31は、長手方向に沿った下方に位置するバスト支持部32,34と、長手方向に沿った上方に位置するストラップ部34,35とから一体的に構成されている。左右の第一内側パネル30,31は、一方向又は交差する二方向に沿って伸縮性を有するパワーネット、ストレッチレース、2ウエイトリコット、ベア天竺などの伸縮性素材からなる。この実施の形態1では、左右の第一内側パネル30,31が長手方向に沿って伸縮を有する素材から構成されている。また、左右の第一内側パネル30,31は、長手方向及び長手方向と交差する方向の二方向に沿って伸縮を有する素材から構成しても良い。左右の第一内側パネル30,31は、その人体の中央部側に位置する端縁30a,31aが略直線状に形成されている。また、左右の第一内側パネル30,31の体側部側の端縁30b,31bは、バスト支持部32,34の上端32a,34aが体側部側へ向けて略三角形状に突出した形状に形成されている。左右の第一内側パネル30,31のストラップ部33,35は、図2に示されるように、人体の肩部から背面側へ至る位置まで延長して設けられている。
【0030】
この実施の形態1では、左右の第一内側パネル30,31は、そのバスト支持部32,34の体側部側に位置する端縁が所定の幅にわたり裏面側に折り返されて表面側の面と縫い止められている。また、左右の第一内側パネル30,31は、その人体中央部側に位置する端縁30a,31aに伸縮性を有する伸縮テープが全長にわたり縫い止められている。
【0031】
左右の第一内側パネル30,31のバスト支持部32,34は、図6に示されるように、左右のバストカップ部2,3の内側面に遊離した状態で配置されている。左右の第一内側パネル30,31のバスト支持部32,34は、その下端縁32a,34aがバストカップ9,10の下端縁9c,10cのうち、人体の中央部側の端部に対応した湾曲形状に形成されている。そして、第一内側パネル30,31のバスト支持部32,34の下端縁32a,34aは、バストカップ9,10の対応する下端縁9c,10cに縫着されて固定されている。
【0032】
左右の第一内側パネル30,31のバスト支持部32,34は、その長さ(自由長)が左右のバストカップ9,10の内側面に沿った周長と同寸か又は周長より短く設定されている。この実施の形態1では、バスト支持部32,34は、その長さ(自由長)が左右のバストカップ9,10の内側面に沿った周長より短く設定されており、バスト支持部32,34は、左右のバストカップ9,10の内側面に対して張った状態(浮いた状態)で設けられている。
【0033】
左右の第一内側パネル30,31のバスト支持部32,34は、体側部側へ向けて略三角形状に突出した上端32a,34aの一部(突出部)がバストカップ9,10の上端縁9b,10bに縫着されている。バスト支持部32,34は、上端32a,34aの一部(突出部)を除いてバストカップ9,10の上端縁9b,10bに縫着されておらず、自由に伸縮等の移動が可能な状態となっている。
【0034】
左右の第一内側パネル30,31のバスト支持部32,34は、上述したように、左右のバストカップ9,10の内側面に対して張った状態(浮いた状態)で設けられている。そのため、ブラジャー1を着用した女性の左右のバストには、左右のバストカップ9,10とともに第一内側パネル30,31のバスト支持部32,34の内面が接触することになる。したがって、バスト支持部32,34の張りが大きく、バスト支持部32,34がバストカップ9,10の内側面から大きく内側に突出した状態では、当該バスト支持部32,34が伸縮性を有するものの、バスト支持部32,34が女性の左右のバストの上部を圧迫して着用感を損ねる虞れがある。
【0035】
左右の第一内側パネル30,31は、本来的に、バストの揺れを抑制する部材であって、通常の着用時に女性の左右のバストを圧迫することなく良好な着用感を実現することが望ましい。
【0036】
そこで、この実施の形態1では、左右の第一内側パネル30,31を構成する素材として、伸縮性を有するフリーカット素材を用いることが好ましい。フリーカット素材は、所望の形状に裁断した場合においても、端縁の繊維がほずれる虞れがなく、折り返して縫い止める必要がない。そのため、左右の第一内側パネル30,31を構成する素材としてフリーカット素材を用いた場合には、端縁の段差や折り返し或いは縫い目が着用感に影響するのを防止することができる。ただし、コスト面やデザインの都合等でフリーカット素材を使用することができない場合は、左右の第一内側パネル30,31を構成する生地を折り返して縫い止めるように構成しても良い。
【0037】
なお、応用技術としては、左右の第一内側パネル30,31を構成する生地の折り返し幅を広くとり、その中にパッドを入れて保持するよう構成しても良い。パッドを入れる理由としては、体形の急激な変化などでプラジャー1のサイズが合わなくなってしまった場合や、バストカップ9,10の上辺にパッド材を介在させて隙間を埋めることでジャストサイズとなり、この意味からもバストの揺れを抑える機能を持たせることが可能となる。
【0038】
一方、左右の第一内側パネル30,31のストラップ部33,35は、図2及び図3に示されるように、その上端部が人体の肩方向へ向けて延在するよう配置されてストラップ部(肩掛け部)の一部を構成している。この第一内側パネル30,31のストラップ部33,35は、比較的幅の広い帯状に形成されており、人体の肩部に接触する面積が大きく、人体の肩部に食い込む虞れがなく、着用感に優れたものとなっている。
【0039】
左右の第一内側パネル30,31のストラップ部33,35は、その上端部が上下方向に沿って伸縮性を有するレース生地等からなる背面ストラップ部36,37に縫着されている。背面ストラップ部36,37は、図4に示されるように、デザイン性等を考慮して略羽根形状に形成されている。背面ストラップ部36,37は、その人体中央部側の端縁36a,37aがレース生地の小さなアーチを連ねて形状に形成されている。また、背面ストラップ部36,37は、人体の体側部側の端縁36b,37bが肩回りの一部(図2参照)を構成する湾曲状に形成されている。さらに、背面ストラップ部36,37は、その下端縁36c,37cが左右のバックパネル部7,8へ向けて大きくな曲率半径を有して下向きに湾曲した形状に形成されている。背面ストラップ部36,37の下端縁36c,37cは、左右のバックパネル部7,8の上端縁7a,8aと縫着されている。
【0040】
更に、この実施の形態1では、左右のバストカップの上部において左右の第一内側パネルを互いに連結し、左右のバスト全体の揺れを抑制する第二内側パネルを備えるよう構成されている。
【0041】
すなわち、この実施の形態1に係るブラジャー1は、図1に示されるように、左右の第一内側パネル30,31のバスト支持部32,34において、人体の中央部に位置する端縁を互いに連結するよう第二内側パネル40が設けられている。
【0042】
第二内側パネル40は、図3に示されるように、伸縮性を有する素材からなり、上下を逆にした正面略二等辺三角形状に形成されている。第二内側パネル40は、その表面が同一形状に形成されたレース生地からなる第二内側パネル構成部材41によって覆われている。
【0043】
第二内側パネル40は、水平方向に沿って伸縮性を有し、上下方向に沿って伸縮性を有しないか又は伸縮性を殆ど有しない素材によって構成されている。第二内側パネル40は、左右の第一内側パネル30,31と同一の素材で構成されている。なお、第二内側パネル40は、左右の第一内側パネル30,31と必ずしも同一の素材で構成されている必要はなく、異なる素材で構成されていても良い。
【0044】
第二内側パネル40は、その体側部側に位置する両端縁40a,40bが左右の第一内側パネル30,31のバスト支持部32,34と縫着されている。第二内側パネル40は、その下端縁40cがセンターパネル11の上端縁と縫着されている。第二内側パネル構成部材41は、第二内側パネル40と同様に他の部材と縫着されているとともに、その上端縁41dが第二内側パネル40の上端縁40dと縫着されている。
【0045】
ところで、上記の如く構成されるブラジャー1を着用する女性は、姿勢が悪いとバストの下垂を早めてしまう要因になると言われている。更に説明すると、猫背によるバストの垂みやバスト周辺の血行不良、あるいは大胸筋の衰えなどによる姿勢の悪化は、バストの下垂を早めることになる。
【0046】
そこで、この実施の形態1に係るブラジャー1は、女性の左右の肩甲骨を人体の中央部に引き寄せて正しい姿勢を維持することを可能とするため、バックパネル部の上部に配置されサイドパネル部の背面側同士を左右の肩甲骨を通るよう互いに連結し、左右の肩甲骨を人体の中央に引き寄せる伸縮性素材からなる肩甲骨引寄部を備えるよう構成したものである。
【0047】
すなわち、この実施の形態1に係るブラジャー1は、図1及び図2図7に示されるように、バックパネル部7,8の鉛直方向に沿った上部に配置されサイドパネル部12,13の背面側同士を左右の肩甲骨45,46を通るよう互いに連結し、左右の肩甲骨を人体の中央に引き寄せる伸縮性素材からなる肩甲骨引寄部の一例としての肩甲骨引寄パネル50,51を備えている。
【0048】
肩甲骨45,46は、図8に示されるように、肩に一対あり、背面側から第2番目から第7番目にわたり肋骨を覆う略三角形状の大型の骨である。肩甲骨45,61の背面側は、図9に示されるように、相対的に長く形成される上縁45a,46aと、大きな曲率半径を有する湾曲形状に形成された人体の中央部側に位置する内側縁45b,46bと、下端部に位置する下角45c,46cと、下角45c,46cから体側部側の斜め上方に向けた外側縁45d,46dと、上端部よりやや下方も位置して外側に突出する外側角45e,46eと、上縁45a,46aよりやや下方に位置して体側部側の斜め上方へ向けた三角型あるいは楕円形の突起であり、前方に行くにつれ平たくなり、関節窩を覆うかのように始めは外側に、やがて前方および上方に曲面を描き肩の最も上部に突出した肩峰45f,46fを備える。人体の上腕の上腕骨47,48と肩甲骨45,46は、図8に示されるように、肩峰45f,46fの先端部で靭帯を介して連結されている。
【0049】
肩甲骨45,46は、鎖骨を回転軸として肋骨の上をすべるように移動する。肩甲骨45,46は、強く固定されているわけではないので、比較的自由度が高い構造となっている。肩甲骨45,46の動きは、大別して、上へスライドする動き(挙上)と、下へスライドする動き(下制)と、内側(背骨方向)へスライドする動き(内転)と、外側へスライドする動き(外転)と、斜め上へスライドする動き(上方回旋)と、斜め下へスライドする動き(下方回旋)の六種類である。このような肩甲骨45,46の動きを可能としているのは、肩甲骨45,46を支える僧帽筋、肩甲挙筋、大菱形筋、小菱形筋、前鋸筋、小胸筋、三角筋、烏口腕筋、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋、大円筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、肩甲舌骨筋、広背筋からなる17種類に及ぶ筋肉である。
【0050】
肩甲骨45,46は、一つの骨に17種類にも及ぶ筋肉が集中しているため、上半身の中継地点とも言い得るものであり、上半身の姿勢を決定する重要な要素となっている。
【0051】
肩甲骨引寄パネル50,51は、図4に示されるように、人体の中央側に位置する上端から体側部側に位置する斜め上方へ向けて下向きの凸形状に湾曲した上端縁50a,51aと、上端縁50a,51aが左右の背面ストラップ部36,37の体側部側の端縁36b,37bと交差する上端50b,51bと、上端50b,51bから体側部側に位置する斜め下方へ向けて下向きの凸形状に湾曲した体側部側の上端縁50c,51cと、体側部側の端部に上下方向に沿って直線状に設けられた体側部側の端縁50d,51dと、体側部側に位置する下端から人体の中央部側に位置する斜め上方へ向けて上向きの凸形状に湾曲した下端縁50e,51eと、人体の中央部側の端部が上下方向に沿って短く直線状に設けられた中央部側の端縁50f,51fを備えている。
【0052】
肩甲骨引寄パネル50,51の体側部側の上端縁50c,51cは、図4に示されるように、左右のバックパネル部7,8の体側部側の上端縁7b,8b及び左右の背面ストラップ部36,37の体側部側の端縁36b,37bの一部と同一形状に形成されている。
【0053】
肩甲骨引寄パネル50,51は、体側部側の端縁50d,51dが左右のバックパネル部7,8の体側部側の端縁7c,8cとともに、サイドパネル12,13の体側部側の端縁12c,13cと縫着されている。また、肩甲骨引寄パネル50,51は、その体側部側の上端縁50c,51cが左右のバックパネル部7,8の体側部側の上端縁7b,8bから左右の背面ストラップ部36,37における体側部側の端縁36b,37bの一部にわたり縫着されている。
【0054】
肩甲骨引寄パネル50,51は、図7に示されるように、その上端縁50,51が肩甲骨45,46の外側角45e,46eの下方から内側縁45b,46bの下部へわたるように配置される。肩甲骨引寄パネル50,51は、その下端縁50e,51eが肩甲骨45,46の下角45c,46cより下方に位置するよう配置されている。
【0055】
肩甲骨引寄パネル50,51は、図4に示されるように、水平方向に沿って伸縮性を有する素材から構成されている。図示例において、肩甲骨引寄パネル50,51は、人体の中央部側の端縁50f,51fの幅が左右のバックパネル部7,8の端縁7e,8eより大幅に大きく(2~3倍程度)設定されている。ただし、肩甲骨引寄パネル50,51は、人体の中央部側の端縁50f,51fの幅が左右のバックパネル部7,8の端縁7e,8eと同程度あるいは小さく設定されていても良い。
【0056】
肩甲骨引寄パネル50,51は、上端縁50a,51a、体側部側の上端縁50c,51c及び下端縁50e,51eに伸縮性テープが縫着されている。また、肩甲骨引寄パネル50,51は、中央部側の端縁50f,51f同士が伸縮性テープを介して互いに縫着されている。なお、肩甲骨引寄パネル50,51は、その端縁に伸縮性テープが縫着されていないものであっても良い。
【0057】
甲骨引寄パネル50,51を構成する素材としては、例えば、二方向に伸縮性を有する2ウエイトリコット、一方向に伸縮性を有するワンウエイトリコット、パワーネット、ストレッチレースなどポリウレタンを含む生地やレース等が好ましく、伸縮する方向性は左右方向に引っ張り力を発生させて肩甲骨を背中心に寄せるように構成されている。
【0058】
肩甲骨引寄パネル50,51は、図4に示されるように、着用する前の人体の周方向に沿った長さが、人体の周方向に沿った長さより大幅に短く(1/2~1/3程度)設定されており、着用時には、120~300%程度に伸張された状態となる。
【0059】
以上の構成において、この実施の形態1に係るブラジャーの場合には、次のようにして、肩甲骨を引き寄せて姿勢を矯正することが可能となっている。
【0060】
すなわち、この実施の形態に係るブラジャー1は、図1及び2に示されるように、肩甲骨引寄パネル50,51を大幅に伸張させた状態で着用される。
【0061】
そのため、この実施の形態1に係るブラジャー1は、図10及び図11に示されるように、着用時、人体の背面には、肩甲骨引寄パネル50,51によって左右の肩甲骨45,46の外側角45e,46eの下方から内側縁45b,46bの下部へわたるとともに、左右の肩甲骨45,46の下角45c,46cを人体の中央部へと引き寄せる引寄力が作用する。
【0062】
その結果、左右の肩甲骨45,46には、肩甲骨引寄パネル50,51によって、鎖骨を回転軸として肋骨の上をすべるように斜め上へスライドする動き(上方回旋)が作用し、人体の中央部側に位置する内側縁45b,46bが互いに引き寄せられて胸を張って開いた姿勢となるよう矯正される。
【0063】
よって、この実施の形態1に係るブラジャー1を着用することにより、猫背が矯正されて背筋が伸びた状態となり、バストの垂みやバスト周辺の血行不良が改善され、バストの下垂を抑制することが可能となる。
【0064】
これに対して、特許文献1の場合には、横方向に伸縮性を有する後身頃において、略Y字型の縦方向に伸縮性の少ないY字型部片を、後身頃の背布と重なるように遊離の状態で設けたので、縦横両方向に保持する力が背中に作用し、背中の高いホールド感を達成することが出来たものであり、Y字型部片によって背筋を伸ばす方向の力を作用させることができるものの、左右の肩甲骨を引き寄せて姿勢を正すことはできないものである。
【0065】
また、上述した特許文献2の場合は、左右の肩甲骨を引き寄せて姿勢を正すことはできないものである。
【0066】
[実施の形態2]
図12及び図13は、実施の形態2に係る姿勢矯正用衣料としてのバストカップ部を有しない姿勢矯正用衣料をそれぞれ示す正面図及び背面図である。なお、図示の実施の形態では、男性用の姿勢矯正用衣料について説明するが、女性用の姿勢矯正用衣料として用いても良いことは勿論である。
【0067】
この姿勢矯正用衣料100は、図12及び図13に示されるように、大別して、人体である男性の胸部の体側部側にそれぞれ配置される左右のサイドパネル部101,102と、サイドパネル部101,102の背面側に配置されるバックパネル部103,104と、サイドパネル部101,102の下端部を人体胸部の前面において連結する前身頃部105,106と、サイドパネル部101,102の背面側同士を左右の肩甲骨を通るよう互いに連結し、左右の肩甲骨を人体の中央に引き寄せる伸縮性素材からなる肩甲骨引寄部の一例としての肩甲骨引寄パネル107,108とを備えている。なお、この実施の形態2に係る姿勢矯正用衣料100では、前身頃部105,106とサイドパネル部101,102が一体的に構成されているが、前身頃部105,106とサイドパネル部101,102は、別体として構成しても良い。
【0068】
左右のサイドパネル部101,102は、人体の胸部における体側部側にそれぞれ配置されており、その下部101a,102aは、腕回り部(アームピット部)を切り欠いて脇の下に回り込むよう、人体の頭部を上方とした場合に体側部の上下方向に沿って設けられている。また、左右のサイドパネル部101,102の上部101b,102bは、両肩を介して人体の背面側にわたる肩掛け部の一部を一体的に構成している。左右のサイドパネル部101,102は、上下方向に沿って伸縮性を有する素材によって形成されている。
【0069】
左右のサイドパネル部101,102の上部101b,102bは、その先端が左右の背面ストラップ部109,110にそれぞれ縫着されている。左右の背面ストラップ部109,110は、実施の形態1の左右の背面ストラップ部36,37と同様に構成されている。
【0070】
左右のサイドパネル部101,102の下端部には、当該サイドパネル部101,102の下端部を人体胸部の前面において連結する前身頃部105,106が正面略L字形状に一体的に設けられている。前身頃部105,106は、左右のサイドパネル部101,102の下部から湾曲部を介して人体の中央部において幅が相対的に狭い帯状を成すように形成されている。前身頃部105,106は、水平方向に沿って伸縮性を有する素材によって形成されている。前身頃部105,106の中央部側の端部は、フックやアイ等の連結具によって連結可能に構成されている。また、前身頃部105,106の中央部側の端部は、一体的に縫着されていても良い。
【0071】
また、左右のサイドパネル部101,102の背面側に配置されるバックパネル部103,104は、実施の形態1と同様に構成されている。
【0072】
肩甲骨引寄パネル107,108は、上述した実施の形態1の肩甲骨引寄パネル50,51と同様に構成されている。ただし、本実施の形態2に係る姿勢矯正用衣料100は、男性用の姿勢矯正用衣料100として構成する場合、肩甲骨引寄パネル50,51の伸張力(引寄力)が女性用に比較して大きな値に設定される。
【0073】
以上の構成において、この実施の形態2に係る姿勢矯正用衣料の場合には、次のようにして、肩甲骨を引き寄せて姿勢を矯正することが可能となっている。
【0074】
すなわち、この実施の形態に係る姿勢矯正用衣料100は、図14及び図15に示されるように、肩甲骨引寄パネル107,108を大幅に伸張させた状態で着用される。
【0075】
そのため、この実施の形態2に係る姿勢矯正用衣料100は、着用時、人体の背面には、肩甲骨引寄パネル107,108によって左右の肩甲骨45,46の外側角45e,46eの下方から内側縁45b,46bの下部へわたるとともに、左右の肩甲骨45,46の下角45c,46cを人体の中央部へと引き寄せる引寄力が作用する。
【0076】
その結果、左右の肩甲骨45,46には、肩甲骨引寄パネル107,108によって、鎖骨を回転軸として肋骨の上をすべるように斜め上へスライドする動き(上方回旋)が作用し、人体の中央部側に位置する内側縁45b,46bが互いに引き寄せられて胸を張って開いた姿勢となるよう矯正される。
【0077】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
なお、上記実施の形態1では、ブラジャーに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ブラスリップ、ボディスーツ、ブラキャミなどのファンデーションを広く含む女性用衣料に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1:ブラジャー、2,3:バストカップ部、4:フロントパネル、5,6:サイドパネル、7,8:バックパネル、50,51:肩甲骨引寄パネル。
【要約】      (修正有)
【課題】肩甲骨を引き寄せて姿勢を矯正することが可能な姿勢矯正用衣料及び女性用衣料を提供する。
【解決手段】人体胸部の体側部側に配置されるサイドパネル部と、サイドパネル部の下端部を人体胸部の前面において連結する前身頃部と、サイドパネル部の背面側同士を左右の肩甲骨45,46を通るよう互いに連結し、前記左右の肩甲骨45,46を人体の中央に引き寄せる伸縮性素材からなる肩甲骨引寄部としての肩甲骨引寄パネル50,51と、を備える。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15