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  • 特許-表面保護材料および電気光学パネル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】表面保護材料および電気光学パネル
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20230210BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230210BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20230210BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230210BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230210BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20230210BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20230210BHJP
【FI】
G09F9/00 302
G09F9/00 313
H05B33/14 A
H05B33/02
C09J201/00
C09J175/04
C09J7/00
C09J7/20
G09F9/00 342
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017187344
(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2019061186
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-07-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一貴
(72)【発明者】
【氏名】玉井 和彦
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0208536(US,A1)
【文献】特開2007-154045(JP,A)
【文献】特開2008-174612(JP,A)
【文献】特開2008-133349(JP,A)
【文献】特開2006-232896(JP,A)
【文献】特開2002-023649(JP,A)
【文献】特開2017-031349(JP,A)
【文献】特開2003-240951(JP,A)
【文献】特表2013-533131(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0170416(US,A1)
【文献】特開2017-036393(JP,A)
【文献】特開2003-207626(JP,A)
【文献】国際公開第2016/196458(WO,A2)
【文献】特表2015-513477(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0120436(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09J1/00-201/10
C09J7/00-7/50
G02F1/133-1/1334
1/13357
1/1339-1/1341
1/1347
G09F9/00-9/46
H01L27/32
51/50
H05B33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルな電気光学パネル用の表面保護材料であって、該表面保護材料は、
一層のフィルムを有し、
前記フィルムはフィルム全体において同じ種類の架橋構造を含み、
前記フィルムは界面がない三次元架橋構造を有し、
前記フィルムは一方の外表面から反対側の他方の外表面へ連続的に組成比が変化する構成であり、
前記フィルムの前記一方の外表面が表面保護機能を有し、前記他方の外表面が接着機能を有している、表面保護材料。
【請求項2】
折り曲げる及び/又は丸めることができるフレキシブルな電気光学パネル用である、請求項1に記載の表面保護材料。
【請求項3】
架橋構造が、熱硬化性樹脂由来の架橋構造である、請求項1又は2に記載の表面保護材料。
【請求項4】
架橋構造が、ウレタン結合である、請求項1からのいずれか一項に記載の表面保護材料。
【請求項5】
前記フィルムがポリウレタンを用いて形成された、請求項からのいずれか一項に記載の表面保護材料。
【請求項6】
前記フィルムが熱硬化性ポリウレタンを用いて形成された、請求項からのいずれか一項に記載の表面保護材料。
【請求項7】
前記フィルムが2種以上の熱硬化性ポリウレタンを用いて形成された請求項からのいずれか一項に記載の表面保護材料。
【請求項8】
前記フィルムの表面保護機能を有する外表面のA硬度が、A50以上である、請求項からのいずれか一項に記載の表面保護材料。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の表面保護材料を有する、フレキシブルな電気光学パネル。
【請求項10】
フレキシブルな電気光学パネル用の表面保護材料の製造方法であって、該製造方法は、
一層のフィルムを形成する工程を有し、
前記フィルムはフィルム全体において同じ種類の架橋構造を含み、
前記フィルムは界面がない三次元架橋構造を有し、
前記フィルムは一方の外表面から反対側の他方の外表面へ連続的に組成比が変化する構成であり、
前記フィルムの前記一方の外表面が表面保護機能を有し、前記他方の外表面が接着機能を有している、表面保護材料の製造方法。
【請求項11】
前記フィルムを熱硬化させる工程をさらに有する、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記フィルムをポリウレタンを用いて形成する、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記フィルムを熱硬化性ポリウレタンを用いて形成する、請求項10から12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記フィルムを2種以上の熱硬化性ポリウレタンを用いて形成する、請求項10から13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記フィルムの表面保護機能を有する外表面のA硬度がA50以上である、請求項10から14のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護材料および電気光学パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(organic light-emitting diode)表示パネル、OLED照明パネル、コレステリック液晶表示パネル、PDLC(高分子分散型液晶)表示パネル、電気泳動表示パネルといった電気光学パネルは、発光素子および液晶素子などの電気光学素子の他に、複数の層を有する(特許文献1)。この明細書において、「電気光学素子」とは、電気の作用により光を発するOLED素子などの発光素子、および電気の作用により光の透過を制御する液晶素子などの光透過制御素子を含み、「電気光学パネル」とはこのような電気光学素子を有するパネルを指す。
【0003】
近年では、フレキシブルな表示パネルおよび照明パネル等の電気光学パネルが開発されている。これらのフレキシブルな電気光学パネルは、複数の積層されたフィルムを有し、フィルムの少なくともいくつかは樹脂などの高分子材料から形成されている。
【0004】
電気光学パネルの表面保護材料として、フロントカバーフィルム及び透明接着層(optical clear adhesive, OCA)が一般的に用いられている。フロントカバーフィルムは通常、透明接着層を介して、電気光学素子層、もしくは電気光学素子層の上に積層されたタッチパネルなどの層の上に積層されている。例えば、特許文献2には、二液熱硬化型ポリウレタン樹脂組成物を用いた透明接着層が開示されている。しかしながら、特許文献2では上記透明接着層をフレキシブルな電気光学パネルに適用した時の課題については考慮されていない。
【文献】特開2015-152922号公報
【文献】特開2013-18856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレキシブルな電気光学パネルは、折り曲げたり丸めたりすることができるという特徴を有している。電気光学パネルが折り曲げられると、その表面に形成された表面保護材料には、せん断力が印加される。また、電気光学パネルの耐久性や信頼性の指標として、鉛筆硬度試験が行われることがある。鉛筆硬度試験時に電気光学パネルの表面が鉛筆で押圧されて表面が凹んだ場合には、微視的にせん断力が印加されている領域が存在する。そのため、フレキシブルな電気光学パネルの表面に用いられる接着層は、座屈や凹み等に耐えうる接着力を達成するため、従来のフラットパネルディスプレーにおいて要求されている剥離強度の他に、せん断弾性率についても考慮する必要がある。従来の表面保護材料は、剥離強度については考慮されていたものの、せん断弾性率については十分に考慮されてはおらず、フレキシブルな表示パネルに特有の、座屈や凹みの発生などの問題を解決するに至っていない。
【0006】
本発明は、剥離強度とせん断弾性率とを両立でき、フレキシブルな電気光学パネルに好適な表面保護材料及びそれを用いた電気光学パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、以下のとおりである。
[1]フロントカバーフィルム、及び該フロントカバーフィルムに接する透明接着層を有し、フロントカバーフィルム及び透明接着層が、少なくとも、同じ種類の架橋構造を含む、電気光学パネル用表面保護材料。
[2]フレキシブルな電気光学パネル用である、[1]に記載の表面保護材料。
[3]架橋構造が、熱硬化性樹脂由来の架橋構造である、[1]又は[2]に記載の表面保護材料。
[4]フロントカバーフィルムから透明接着層へ向かって連続的に組成が変化し、透明接着層側の表面に接着機能を有している、[1]から[3]のいずれかに記載の表面保護材料。
[5]架橋構造が、ウレタン結合である、[1]から[4]のいずれかに記載の表面保護材料。
[6]フロントカバーフィルム及び透明接着層の少なくとも一方がポリウレタンを用いて形成された、[1]から[5]のいずれかに記載の表面保護材料。
[7]フロントカバーフィルム及び透明接着層の少なくとも一方が熱硬化性ポリウレタンを用いて形成された、[1]から[6]のいずれかに記載の表面保護材料。
[8][1]から[7]のいずれかに記載の表面保護材料を有する、電気光学パネル。
[9]フロントカバーフィルム、及び該フロントカバーフィルムに接する透明接着層を形成する工程を有し、フロントカバーフィルム及び透明接着層が、少なくとも、同じ種類の架橋構造を有する樹脂を含む、電気光学パネル用表面保護材料の製造方法。
[10]フロントカバーフィルム及び透明接着層を熱硬化させる工程を有する、[9]に記載の製造方法。
[11]フロントカバーフィルム及び透明接着層の少なくとも一方を、ポリウレタンを用いて形成する、[9]又は[10]に記載の製造方法。
[12]フロントカバーフィルム及び透明接着層の少なくとも一方を、熱硬化性ポリウレタンを用いて形成する、[9]から[11]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剥離強度とせん断強度とを両立でき、フレキシブルな電気光学パネルに好適な表面保護材料及び電気光学パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電気光学パネルの一例であるOLED表示パネルを概略的に示す断面図である。
図2】実施例における180度剥離強度及びせん断弾性率の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
[表面保護材料]
本発明者は、フロントカバーフィルムと透明接着層の材料を架橋構造の種類が同じ材料で構成することにより、剥離強度とせん断弾性率とを両立でき、フレキシブルな電気光学パネルに好適な表面保護材料とすることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本実施形態に係る表面保護材料は、フロントカバーフィルム、及び該フロントカバーフィルムに接する透明接着層を有し、フロントカバーフィルム及び透明接着層が、少なくとも、同じ種類の架橋構造を有する。これにより、層間の親和性を向上させることができる。加えて、フロントカバーフィルムから透明接着層へ向かって連続的に組成が変化する構成にすることで、層間の架橋密度を増加し、更に層間の親和性を向上することができる。
【0012】
(フロントカバーフィルム)
フロントカバーフィルムは、電気光学パネルの表面を保護する機能を有する層であり、少なくとも、透明接着層を構成する材料と同じ種類の架橋構造を有する材料で形成されている。「架橋構造」とは、反応性官能基が結合して形成された架橋構造のことを意味する。反応性官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、イソシアネート基を挙げることができる。架橋構造は、これらから選択される反応性官能基が結合した架橋構造とすることができる。架橋構造としては、例えば、ヒドロキシ基及びイソシアネート基から形成されたウレタン結合、イソシアネート基及びアミノ基から形成されたウレア結合、カルボキシル基及びアミノ基から形成されたアミド結合、エポキシ基及びアミン基から形成された結合、(メタ)アクリル基から形成された結合、ビニル基とシリコーンとから形成された結合、カチオン性基及びアニオン性基から形成されたイオン結合等を挙げることができる。
【0013】
また、架橋構造は、熱硬化性樹脂由来の架橋構造であることが好ましい。架橋構造を熱硬化性樹脂由来の架橋構造とすることで、架橋反応の種類が熱硬化反応となる。熱硬化反応の場合、層の順次重ね合わせにより製造する場合にも、架橋反応の進行を制御しやすく、層間の架橋密度すなわち親和性を上げやすい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また架橋構造は、三次元架橋構造であることが好ましい。三次元架橋構造であることにより、せん断弾性率を向上させやすい。
【0014】
架橋構造のより好ましい例として、熱により反応速度を制御しやすく、かつ三次元架橋構造を形成しやすい点から、ヒドロキシ基及びイソシアネート基から形成されたウレタン結合を挙げることができる。ウレタン結合を有する樹脂、すなわちポリウレタンは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含む反応成分から形成され、熱硬化性ポリウレタンであることがより好ましい。ポリウレタンエラストマー又はポリウレタンゲルを用いることもできる。なお、本発明におけるゲルとは、ゲル状の力学特性を持つ材料全般を指すものとする。
【0015】
ポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン-プロピレンエーテル)ポリオール等を挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートグリコール、ポリカーボネートトリオール、ポリカーボネートテトラオール等を挙げることができる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とグリコール成分とを脱水縮合させたものが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等を挙げることができる。グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;p-キシレンジオール等の芳香族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。
【0016】
ポリイソシアネート成分としては、特に限定されず、例えば、芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートが挙げられ、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、上記のポリオール成分やポリイソシアネート成分は、部分的にフッ素化されていても良い。
フロントカバーフィルム中のポリウレタンの含有量は、フロントカバーフィルムの全材料中、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。
【0017】
フロントカバーフィルムは、電気光学パネルの強度を高める点で、JIS K 6253およびISO 7619に規定のA硬度で、A50以上であることが好ましい。
【0018】
フロントカバーフィルムは、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリコーン系添加剤、シリカナノ粒子などの金属酸化物微粒子や、オイルディスパージョン等の添加剤を含有していてもよい。また、硬化触媒を含んでいてもよい。フロントカバーフィルムの原料には、成形工程が容易になることから、硬化触媒を含んでいることが望ましい。
【0019】
(透明接着層)
透明接着層は、電気光学素子側の表面に接着する機能を有する層であり、少なくとも、フロントカバーフィルムと同じ種類の架橋構造を有する。接着の方法は限定されず、例えば、物理的な相互作用及び化学的な相互作用に由来する種々の力による接着や、拡散による接着などが挙げられるが、電気光学素子層、もしくは電気光学素子層の上に積層されたタッチパネルなどの層との貼り合せ工程が容易であることから、感圧型の粘着であることがより好ましい。「架橋構造」についてはフロントカバーフィルムについて説明したとおりである。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、フロントカバーフィルム及び透明接着層を構成する樹脂が、いずれもウレタン結合を含むことが好ましい。ポリウレタンを構成するポリオール成分及びポリイソシアネート成分については、上記と同じであるためここでは記載を省略する。透明接着層を構成する材料は、熱硬化性ポリウレタンを含むことが好ましい。ポリウレタンエラストマー又はポリウレタンゲルを用いることもできる。
透明接着層中のポリウレタンの含有量は、透明接着層の全材料中、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。
透明接着層は、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリコーン系添加剤、シリカナノ粒子などの金属酸化物微粒子や、オイルディスパージョン等の添加剤を含有していてもよい。また、硬化触媒を含んでいてもよい。透明接着層の原料には、成形工程が容易になることから、硬化触媒を含んでいることが望ましい。
【0020】
(フロントカバーフィルム及び透明接着層の構成)
フロントカバーフィルム及び透明接着層は、連続的に組成が変化する一層のフィルムで構成することがより好ましい。「連続的に組成が変化する」とは、フロントカバーフィルムと透明接着層との界面がない三次元架橋構造となっており、表面保護層の外表面から透明接着層の外表面に向かって連続的に組成が変化していることをいう。この場合、表面保護材料の片面が表面保護機能を有し、反対側の面が接着機能を有しているように構成することができる。こうした構成にすることで、高い剥離強度を維持しながら、せん断弾性率の向上により表面保護の作用を高めることができる。
【0021】
[製造方法]
表面保護材料の製造方法は、フロントカバーフィルム、及び該フロントカバーフィルムに接する透明接着層を形成する工程を有する。フロントカバーフィルム及び透明接着層の形成方法は、特に限定されず、フロントカバーフィルム及び透明接着層を別々に成形した後、貼り合わせてもよいし、フロントカバーフィルム及び透明接着層を各種の多層式塗工装置を用いて、同時に成形してもよい。また、各種の塗工装置を用いて、電気光学素子層、もしくは電気光学素子層の上に積層されたタッチパネルなどの層の上に透明接着層及びフロントカバーフィルムを順次に塗工してもよい。
架橋反応は、熱硬化反応でもよく、光硬化反応でもよいが、熱硬化反応であることが好ましい。熱硬化反応とすることで、層の順次重ね合わせにより製造する場合にも、架橋反応の進行を制御しやすく、層間の架橋密度を上げやすい。例えば、架橋反応が完了していないフロントカバーフィルムと、架橋反応が完了していない透明接着層とを貼り合せた後、架橋反応を進めることで、界面の親和性を向上することができるが、この工程は熱硬化反応の場合に容易である。
連続的に組成が変化する一層のフィルムを製造する方法としては例えば、熱硬化性樹脂を、多層式塗工装置を用い塗工しながら加熱硬化する方法が挙げられる。熱による硬化反応の制御により、層間の界面を不明瞭にすることができる。
【0022】
[電気光学パネル]
本実施形態に係る電気光学パネルは、電気光学素子層の少なくとも一つの表面に、上記の表面保護材料を有する。図1は、電気光学パネルの一例であるOLED表示パネル100を概略的に示す断面図である。このOLED表示パネル100は、OLED素子層1で発生した光を透明接着層2、フロントカバーフィルム3に向けて放出する。図の矢印は、光の放出方向を示す。
【0023】
詳細な図示はしないが、OLED素子層1は、陽極、陰極、発光層などの層を有する。また、OLED素子層1は、図示しないTFT層を有しており、TFT層は、複数のTFTを有する。図1で示されているOLED表示パネル100では、OLED素子層1の下には接着剤層4を介してバックフィルム5が接着されている。この接着剤層4としては、感圧接着剤(pressure sensitive adhesive、PSA)が使用されている。バックフィルム5は、OLED表示パネル100の強度を向上させる。バックフィルム5は、例えば発泡ウレタンなどから形成されている。
【0024】
OLED素子層1の上には、透明接着層2及びフロントカバーフィルム3を有する表面保護材料10が、OLED素子層1、透明接着層2、フロントカバーフィルム3の順となるよう接着されている。OLED表示パネル100は、このほかに、タッチパネルなどの層を積層していてもよい。表面保護材料10は、OLED表示パネル100の耐久性や信頼性を向上させる。従来のフロントカバーフィルムは、PI(ポリイミド)又は、PA(ポリアミド)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、等から形成されていたが、本実施形態のOLED表示パネル100は、フロントフィルム3が、透明接着層2を構成する樹脂と同じ種類の架橋構造を少なくとも有する樹脂で形成されている。この構成により、フロントカバーフィルム3及び透明接着層2の架橋の方向が三次元となっているので、剥離強度及びせん断強度を両立できる電気光学パネルにすることができる。
【実施例
【0025】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0026】
実施例及び比較例で用いた材料は、以下のとおりである。
PUエラストマー: 熱硬化性ポリウレタンエラストマー、三洋化成工業株式会社製、商品名: 「サンプレンP-663L」及び「ニューポールNP-300」(サンプレンP-663L 100質量部に対してニューポールNP-300 4.8質量部を混合したもの)。
PUゲル: 熱硬化性ポリウレタンゲル、株式会社エクシール製、商品名: H00-100J
OCA: 透明接着剤、組成:アクリル系樹脂、DIC株式会社製、商品名: 「ZB7011W
PI:ポリイミド樹脂フィルム、東レ・デュポン株式会社製、商品名: 「カプトン200H」
【0027】
[実施例1]
せん断弾性率及び180度剥離強度の測定に用いるため、図2に示す構成を有する試験片を作製した。図2に示す試験片は、基材フィルム40上に、透明接着層2、フロントカバーフィルム3をこの順で有している。さらに、フロントカバーフィルム3上に、透明接着層2’、基材フィルム40’をこの順で有している。なお、この試験片の構成は、あくまでも180度剥離強度及びせん断弾性率の測定用の試験片としての構成であり、本実施形態の表面保護材料は、透明接着層2及びフロントカバーフィルム3を有していればよく、電気光学パネルに用いる場合は図1に示す構成とすることができる。
試験片の作製は、以下のようにして行った。長さ70mm、幅20mm、厚さ50μmの上記ポリイミド樹脂製の基材フィルム40上に、透明接着層2を構成する樹脂として上記熱硬化性ポリウレタンゲルを、硬化後の厚さが長さ10mm、幅20mm、厚さ25μmとなるように、アプリケータを用いて塗工した。60℃、15分間加熱し、ポリウレタンゲルを予備硬化した。この部材Aを2枚作製した。
次いで、2枚のうちの一方に、透明接着層2を構成する材料上に、フロントカバーフィルム3を構成する材料として上記熱硬化性ポリウレタンエラストマーを、硬化後の厚さが長さ10mm、幅20mm、厚さ50μmとなるように、上記と同様の方法で塗工し、部材Bを作製した。
さらに、部材Aと部材Bとを貼り合せた。
その後、オーブンを用いて、120℃、16時間加熱し、ポリウレタンゲル及びポリウレタンエラストマーを硬化させ、実施例1の試験片を得た。
【0028】
[比較例1]
部材Bに形成したフロントカバーフィルム3をポリイミド樹脂に変えた以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
[比較例2]
透明接着層2及び透明接着層2’の材料をOCAに変え、加熱しないで作製した以外は、比較例1と同様にして試験片を作製した。
【0029】
[評価]
(試験1:せん断弾性率)
島津製作所株式会社製、引張り試験器(装置型番「EZ-SX」)を用いて、引張り速度10mm/分で、図2のB,B’方向に引っ張り、せん断弾性率(面方向に平行方向の弾性率)(MPa)を測定した。結果を表1に示した。
【0030】
(試験2:180度剥離強度)
島津製作所株式会社製、引張り試験器、装置型番「EZ-SX」を用いて、引張り速度10mm/分で、図2のA,A’方向に引っ張り、180度剥離強度(面方向に垂直方向の剥離強度)(N/cm)を測定した。結果を表1に示した。
【0031】
【表1】
【0032】
表1から明らかなように、実施例1の試験片は、比較例1,2と同等の180度剥離強度を達成しつつ、比較例1,2よりもせん断弾性率が優れている。よって、実施例1の表面保護材料は、剥離強度とせん断強度とを両立できるので、フレキシブルな表示パネルに好適な表面保護材料とすることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 OLED素子層
2 透明接着層
3 フロントカバーフィルム
4 接着剤層
5 バックフィルム
10 表面保護材料
100 OLED表示パネル
図1
図2