(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】柱脚構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20230210BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E02D27/12 Z
(21)【出願番号】P 2018145620
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504357772
【氏名又は名称】有限会社江尻建築構造設計事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 匡
(72)【発明者】
【氏名】塚田 義明
(72)【発明者】
【氏名】栗山 貴生
(72)【発明者】
【氏名】野口 武彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佑治
(72)【発明者】
【氏名】江尻 憲泰
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-060008(JP,A)
【文献】特開2014-169577(JP,A)
【文献】特開2011-256695(JP,A)
【文献】特開2006-083642(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0115512(KR,A)
【文献】特開平02-164930(JP,A)
【文献】特開平04-285211(JP,A)
【文献】特開2018-062812(JP,A)
【文献】特開2017-075453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸に沿って延在する杭が鉄骨柱の脚部に接合されてなる柱脚構造であって、
前記軸に対して平行に延在するとともに前記杭の近傍に配置される複数のアンカーボルトと、
前記軸に対して平行に延在するとともに前記杭の杭頭部及び前記アンカーボルトを外側から包囲するように配置される鋼管と、
前記鋼管の鉛直方向上方に形成された開口に接合されるとともに前記アンカーボルトの上部が挿通されて固定されるベースプレートと、を備え、
前記鋼管内の空間に充填剤が充填されることにより前記杭頭部及び前記アンカーボルトが外側から拘束され、
前記ベースプレートは、前記鋼管の前記開口を塞ぐ面積を有し
、かつ、前記アンカーボルトの下端部を起点とするコーン状破壊線の領域外に延在し、
前記ベースプレートの上部に前記鉄骨柱の脚部が接合される、柱脚構造。
【請求項2】
所定の軸に沿って延在する杭が鉄骨柱の脚部に接合されてなる柱脚構造であって、
前記軸に対して平行に延在するとともに前記杭の近傍に配置される複数のアンカーボルトと、
前記軸に対して平行に延在するとともに前記杭の杭頭部及び前記アンカーボルトを外側から包囲するように配置される鋼管と、
前記鋼管の鉛直方向上方に形成された開口に接合されるとともに前記アンカーボルトの上部が挿通されて固定されるベースプレートと、を備え、
前記鋼管内の空間に充填剤が充填されることにより前記杭頭部及び前記アンカーボルトが外側から拘束され、
前記ベースプレートの上部に前記鉄骨柱の脚部が接合され、
前記アンカーボルトは、平面視で前記杭の径方向外側に配置される、柱脚構造。
【請求項3】
前記ベースプレートは、前記鋼管の前記開口を塞ぐ面積を有する、請求項2に記載の柱脚構造。
【請求項4】
所定の軸に沿って延在する杭が鉄骨柱の脚部に接合されてなる柱脚構造であって、
前記軸に対して平行に延在するとともに前記杭の近傍に配置される複数のアンカーボルトと、
前記軸に対して平行に延在するとともに前記杭の杭頭部及び前記アンカーボルトを外側から包囲するように配置される鋼管と、
前記鋼管の鉛直方向上方に形成された開口に接合されるとともに前記アンカーボルトの上部が挿通されて固定されるベースプレートと、を備え、
前記鋼管内の空間に充填剤が充填されることにより前記杭頭部及び前記アンカーボルトが外側から拘束され、
前記ベースプレートは、前記鋼管の前記開口を塞ぐ面積を有し、
前記ベースプレートの上部に前記鉄骨柱の脚部が接合され、
前記ベースプレートの外径は、前記鋼管の外径と略同一に設定されている
、柱脚構造。
【請求項5】
前記アンカーボルトの下端部は、前記杭頭部よりも鉛直方向上方に配置される、請求項1から4の何れか一項に記載の柱脚構造。
【請求項6】
所定の軸に沿って延在する杭が鉄骨柱の脚部に接合されてなる柱脚構造であって、
前記軸に対して平行に延在するとともに前記杭の近傍に配置される複数のアンカーボルトと、
前記軸に対して平行に延在するとともに前記杭の杭頭部及び前記アンカーボルトを外側から包囲するように配置される鋼管と、
前記鋼管の鉛直方向上方に形成された開口に接合されるとともに前記アンカーボルトの上部が挿通されて固定されるベースプレートと、を備え、
前記鋼管内の空間に充填剤が充填されることにより前記杭頭部及び前記アンカーボルトが外側から拘束され、
前記ベースプレートは、前記鋼管の前記開口を塞ぐ面積を有し、
前記ベースプレートの上部に前記鉄骨柱の脚部が接合され、
前記アンカーボルトの下端部は、前記杭頭部よりも鉛直方向下方に配置される
、柱脚構造。
【請求項7】
前記杭頭部の外周面に、前記鋼管に向かって突出する突起が形成されている、請求項6に記載の柱脚構造。
【請求項8】
前記鋼管の下端部の内周面に、前記杭に向かって突出する突起が形成されている、請求項1から7の何れか一項に記載の柱脚構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱脚構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、予め設置された既成杭に対して、アンカーボルト等を介して、構造物の柱の脚部(柱脚)を接合する技術が種々提案されている。例えば、杭を取り囲むように4本のアンカーボルトを据え付ける際に、アンカーボルトを2本(又は3本)ずつ拘束する拘束型定着プレートを設ける技術が提案されている(特許文献1参照)。かかる技術を採用すると、杭の打設位置がずれた場合でも効率良く作業を行うことができる、とされている。
【0003】
また、現在においては、杭の頭部に型枠を設置し、この型枠にコンクリートを打設して支持部を構築し、この支持部の上面にアンカーフレームを設置してアンカーボルトを固定し、杭の頭部とアンカーボルトの周囲に鋼管を配置して鋼管内部にコンクリートを充填し、鋼管の上部に突出したアンカーボルトを利用して柱脚を固定する技術が提案されている(特許文献2参照)。かかる技術を採用すると、杭の頭部にコンクリート平面を構築してアンカーフレームを設置できるため、アンカーボルトの精度が向上する、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-75453号公報
【文献】特許第2964924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術を採用すると、アンカーボルトを定着させるために比較的大きい躯体断面が必要となり、限られたスペースに柱脚構造を構築することが困難であるという問題がある。また、特許文献2に記載された構造は構成部材が多く、施工や設計が難しくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、比較的小さい躯体断面で耐力を確保しつつ、アンカーボルトの定着度を増大させることができる柱脚構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る柱脚構造は、所定の軸に沿って延在する杭が鉄骨柱の脚部に接合されてなるものであって、軸に対して平行に延在するとともに杭の近傍に配置される複数のアンカーボルトと、軸に対して平行に延在するとともに杭の杭頭部及びアンカーボルトを外側から包囲するように配置される鋼管と、鋼管の鉛直方向上方に形成された開口に接合されるとともにアンカーボルトの上部が挿通されて固定されるベースプレートと、を備え、鋼管内の空間に充填剤が充填されることにより杭頭部及びアンカーボルトが外側から拘束され、ベースプレートの上部に鉄骨柱の脚部が接合されるものである。
【0008】
かかる構成を採用すると、杭の杭頭部及びアンカーボルトが鋼管によって外側から拘束されているため、比較的小さい躯体断面で耐力を確保することができる。また、アンカーボルトが固定されるベースプレートが鋼管上部の開口に接合されているため、アンカーボルトに引張力が作用した場合においてもアンカーボルトの抜け出しを抑制することができ、アンカーボルトの定着度を増大させることができる。
【0009】
本発明に係る柱脚構造において、鋼管の開口を塞ぐ面積を有するベースプレートを採用することができる。
【0010】
かかる構成を採用すると、ベースプレートが鋼管の開口を塞ぐ面積を有しているため、ベースプレートを鋼管上部の開口に接合する際に、ベースプレートを開口の縁の全周に亘って接合させることができる。従って、より大きな耐力を確保することができる。
【0011】
本発明に係る柱脚構造において、アンカーボルトを、平面視で杭の径方向外側に配置することができる。
【0012】
かかる構成を採用すると、アンカーボルトを杭の径方向内側に配置する場合よりも径方向外側に配置する場合の方が大きな耐力を確保することができる。また、このようにアンカーボルトを杭の径方向外側に配置すると、アンカーボルトを杭頭より下方向に配置することができるため、さらに大きな耐力を確保することができる。
【0013】
本発明に係る柱脚構造において、アンカーボルトの下端部を、杭頭部よりも鉛直方向上方に配置することができる。
【0014】
かかる構成を採用すると、アンカーボルトの破壊線と杭頭部が干渉することがなく、複合応力が作用しないため、設計が容易となる。
【0015】
本発明に係る柱脚構造において、アンカーボルトの下端部を、杭頭部よりも鉛直方向下方に配置することができる。かかる場合において、杭頭部の外周面に、鋼管に向かって突出する突起を形成することができる。
【0016】
かかる構成を採用すると、アンカーボルトの下端部を起点とするコーン状破壊が生じた場合でも、杭頭部の外周面に形成した突起により、鋼管からアンカーボルトが引き抜かれるような外力に対して抵抗することができる。
【0017】
本発明に係る柱脚構造において、鋼管の下端部の内周面に、杭に向かって突出する突起を形成することができる。
【0018】
かかる構成を採用すると、鋼管の下端部の内周面に設けた突起により、鋼管から杭が引き抜かれるような外力に対して抵抗することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、比較的小さい躯体断面で耐力を確保しつつ、アンカーボルトの定着度を増大させることができる柱脚構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る柱脚構造の構成を説明するための構成図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る柱脚構造の構成を説明するための構成図である。
【
図3】本発明の第三実施形態に係る柱脚構造の構成を説明するための構成図である。
【
図4】本発明の第四実施形態に係る柱脚構造の構成を説明するための構成図である。
【
図5】従来の柱脚構造の構成を説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれら実施形態にのみ限定するものではない。従って、本発明はその要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0022】
<第一実施形態>
まず、
図1を用いて、本発明の第一実施形態に係る柱脚構造1の構成について説明する。
【0023】
本実施形態に係る柱脚構造1は、所定の軸(仮想の鉛直軸)Aに沿って延在する杭10が鉄骨柱20の脚部21に接合されてなるものであって、複数のアンカーボルト30と、鋼管40と、ベースプレート(鋼管側ベースプレート50及び柱側ベースプレート60)と、を備えている。
【0024】
杭10は、軸Aに沿って延在する管状部材である。本実施形態においては円筒状の鋼管杭を杭10として採用しているが、杭10の形状はこれに限られるものではない。杭10は、地盤の所定の深さまで達するように埋設されて、構造物を支持するように機能する。
【0025】
鉄骨柱20は、鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造の構造物を構成する柱状部材である。本実施形態においては角柱状の鉄骨柱20を採用しているが、鉄骨柱20の形状はこれに限られるものではない。
【0026】
アンカーボルト30は、例えばSNR鋼材から構成されており、軸Aに対して平行に延在するとともに杭10の近傍に配置されている。本実施形態においては、ベースプレート50の各隅部のみに一本ずつ(計4本)アンカーボルト30を配置している。この際、各アンカーボルト30は、平面視で杭10の径方向外側に配置されている。また、
図1に示すように、各アンカーボルト30の下端部31は、杭頭部11よりも鉛直方向上方に配置されている。なお、アンカーボルト30の本数は4本に限られず、6本、8本、12本等とすることもできる。
【0027】
鋼管40は、軸Aに対して平行に延在するとともに杭10の杭頭部11及びアンカーボルト30を外側から包囲するように配置されている。本実施形態においては角柱状の鋼管40を採用しているが、鋼管40の形状はこれに限られるものではない。鋼管40内の空間には、コンクリート等の充填剤Cが充填される。これにより、杭10の杭頭部11及びアンカーボルト30が外側から拘束されることとなる。鋼管40の下端部42の内周面には、
図1に示すように、杭10に向かって突出する突起43が形成されている。
【0028】
鋼管側ベースプレート50は、鋼板、鋳造、鍛造等によって構成された所定厚さを有する板状部材であり、鋼管40の鉛直方向上方に形成された開口41に接合されている。本実施形態における鋼管側ベースプレート50は、平面視矩形状を呈しており、鋼管40の開口41を塞ぐ面積を有している。また、鋼管側ベースプレート50の各隅部には、図示されていない挿通孔が設けられており、これら挿通孔にアンカーボルト30の上部が挿通されて固定される。
【0029】
柱側ベースプレート60は、鋼板、鋳造、鍛造等によって構成された所定厚さを有する板状部材であり、ベースモルタル61を介して鋼管側ベースプレート50の上部に配置され、その上部には鉄骨柱20の脚部21が接合されている。本実施形態における柱側ベースプレート60は、平面視矩形状を呈している。また、柱側ベースプレート60の各隅部には、図示されていない挿通孔が設けられており、これら挿通孔にアンカーボルト30の上部が挿通されて固定される。なお、柱側ベースプレート60とベースモルタル61を一体化させることもできる。また、鋼管側ベースプレート50とベースモルタル61と柱側ベースプレート60を一体化させて一枚のベースプレートとしてもよい。
【0030】
次いで、本実施形態に係る柱脚構造1の機能について説明する。
【0031】
図5に示す従来の(例えば特許文献2に示すような)柱脚構造100においては、鋼管側ベースプレート500が鋼管400の開口410を塞いでいない。このため、アンカーボルト300の定着が不十分となり、
図5に示すような引張力F及びモーメントMがアンカーボルト300に作用した場合には、アンカーボルト300が降伏する前にアンカーボルト300がコンクリートCから抜け出す場合がある。また、鋼管側ベースプレート500の面積が小さいと、
図5に示すようにコーン状破壊線Dの領域内に鋼管側ベースプレート500が位置することとなるため、コンクリートCのコーン状破壊を阻止することができず、コンクリートCとともにアンカーボルト300が抜け出す場合がある。
【0032】
これに対し、本実施形態に係る柱脚構造1においては、
図1に示すように、鋼管側ベースプレート50が鋼管40の開口41を塞いでいるため、アンカーボルト30の定着度を増大させることができ、
図1に示すような引張力F及びモーメントMがアンカーボルト30に作用した場合においても、アンカーボルト30の抜け出しを抑制することができる。鋼管側ベースプレート50は、
図1に示すようにコーン状破壊線Dの領域外にも延在しているため、コンクリートCのコーン状破壊を抑制することもできる。
【0033】
以上説明した実施形態に係る柱脚構造1においては、杭10の杭頭部11及びアンカーボルト30が鋼管40によって外側から拘束されているため、比較的小さい躯体断面で耐力を確保することができる。また、アンカーボルト30が固定される鋼管側ベースプレート50が鋼管40上部の開口41に接合されているため、アンカーボルト30に引張力Fが作用した場合においてもアンカーボルト30の抜け出しを抑制することができ、アンカーボルト30の定着度を増大させることができる。
【0034】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1においては、鋼管側ベースプレート50が鋼管40の開口41を塞ぐ面積を有しているため、鋼管側ベースプレート50を鋼管40上部の開口41に接合する際に、鋼管側ベースプレート50を開口41の縁の全周に亘って接合させることができる。従って、より大きな耐力を確保することができる。
【0035】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1においては、アンカーボルト30を、平面視で杭10の径方向外側に配置しているため、アンカーボルト30を杭10の径方向内側に配置する場合よりも大きな耐力を確保することができる。
【0036】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1においては、アンカーボルト30の下端部31を、杭10の杭頭部11よりも鉛直方向上方に配置しているため、アンカーボルト30の破壊線Dと杭頭部11が干渉することがなく、複合応力が作用しないため、設計が容易となる。
【0037】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1においては、鋼管40の下端部42の内周面に、杭10に向かって突出する突起43を形成しているため、鋼管40から杭10が引き抜かれるような外力に対して抵抗することができる。
【0038】
<第二実施形態>
次に、
図2を用いて、本発明の第二実施形態に係る柱脚構造1Aの構成について説明する。本実施形態に係る柱脚構造1Aは、第一実施形態のアンカーボルト30の構成を変更したものであり、その他の構成は第一実施形態と実質的に同一である。このため、変更した構成を主に説明し、共通する構成については同一の符号を付して説明を省略することとする。
【0039】
本実施形態に係る柱脚構造1Aは、所定の軸Aに沿って延在する杭10が鉄骨柱20の脚部21に接合されてなるものであって、複数のアンカーボルト30Aと、鋼管40と、ベースプレート(鋼管側ベースプレート50及び柱側ベースプレート60)と、を備えている。杭10、鉄骨柱20、鋼管40及びベースプレートは第一実施形態と実質的に同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0040】
アンカーボルト30Aは、第一実施形態と同様に、軸Aに対して平行に延在するように、杭10の近傍でベースプレート50の各隅部に一本ずつ(計4本)配置されている。この際、各アンカーボルト30Aは、平面視で杭10の径方向外側に配置されている。本実施形態における各アンカーボルト30Aの下端部31は、
図2に示すように、杭頭部11よりも鉛直方向下方に配置されている。
【0041】
本実施形態に係る柱脚構造1Aもまた、第一実施形態に係る柱脚構造1と同様の機能を果たすものである。すなわち、本実施形態に係る柱脚構造1Aにおいては、
図2に示すように、鋼管側ベースプレート50が鋼管40の開口41を塞いでいるため、アンカーボルト30Aの定着度を増大させることができ、
図2に示すような引張力F及びモーメントMがアンカーボルト30Aに作用した場合においても、アンカーボルト30Aの抜け出しを抑制することができる。
【0042】
以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Aにおいては、杭10の杭頭部11及びアンカーボルト30Aが鋼管40によって外側から拘束されているため、比較的小さい躯体断面で耐力を確保することができる。また、アンカーボルト30Aが固定される鋼管側ベースプレート50が鋼管40上部の開口41に接合されているため、アンカーボルト30Aに引張力Fが作用した場合においてもアンカーボルト30Aの抜け出しを抑制することができ、アンカーボルト30Aの定着度を増大させることができる。
【0043】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Aにおいては、鋼管側ベースプレート50が鋼管40の開口41を塞ぐ面積を有しているため、鋼管側ベースプレート50を鋼管40上部の開口41に接合する際に、鋼管側ベースプレート50を開口41の縁の全周に亘って接合させることができる。従って、より大きな耐力を確保することができる。
【0044】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Aにおいては、アンカーボルト30Aを、平面視で杭10の径方向外側に配置しているため、アンカーボルト30Aを杭10の径方向内側に配置する場合よりも大きな耐力を確保することができる。
【0045】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Aにおいては、アンカーボルト30Aの下端部31を、杭10の杭頭部11よりも鉛直方向下方に配置しているため、アンカーボルト30Aの下端部31を起点とするコーン状破壊が生じた場合でも、鋼管40からアンカーボルト30Aが引き抜かれるような外力に対して抵抗することができる。
【0046】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Aにおいては、鋼管40の下端部42の内周面に、杭10に向かって突出する突起43を形成しているため、鋼管40から杭10が引き抜かれるような外力に対して抵抗することができる。
【0047】
<第三実施形態>
次に、
図3を用いて、本発明の第三実施形態に係る柱脚構造1Bの構成について説明する。本実施形態に係る柱脚構造1Bは、第二実施形態の杭10の構成を変更したものであり、その他の構成は第二実施形態と実質的に同一である。このため、変更した構成を主に説明し、共通する構成については同一の符号を付して説明を省略することとする。
【0048】
本実施形態に係る柱脚構造1Bは、所定の軸Aに沿って延在する杭10Bが鉄骨柱20の脚部21に接合されてなるものであって、複数のアンカーボルト30Bと、鋼管40と、ベースプレート(鋼管側ベースプレート50及び柱側ベースプレート60)と、を備えている。鉄骨柱20、アンカーボルト30B、鋼管40及びベースプレートは第二実施形態と実質的に同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0049】
杭10Bは、第一、第二実施形態と同様に、軸Aに沿って延在する管状部材(円筒状の鋼管杭)であり、地盤の所定の深さまで達するように埋設されて、構造物を支持するように機能する。本実施形態における杭10Bの杭頭部11の外周面には、
図3に示すように、鋼管40に向かって突出する突起12Bが形成されている。
【0050】
本実施形態に係る柱脚構造1Bもまた、第一、第二実施形態に係る柱脚構造1、1Aと同様の機能を果たすものである。すなわち、本実施形態に係る柱脚構造1Bにおいては、
図3に示すように、鋼管側ベースプレート50が鋼管40の開口41を塞いでいるため、アンカーボルト30Bの定着度を増大させることができ、
図3に示すような引張力F及びモーメントMがアンカーボルト30Bに作用した場合においても、アンカーボルト30Bの抜け出しを抑制することができる。
【0051】
以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Bにおいては、杭10Bの杭頭部11及びアンカーボルト30Bが鋼管40によって外側から拘束されているため、比較的小さい躯体断面で耐力を確保することができる。また、アンカーボルト30Bが固定される鋼管側ベースプレート50が鋼管40上部の開口41に接合されているため、アンカーボルト30Bに引張力Fが作用した場合においてもアンカーボルト30Bの抜け出しを抑制することができ、アンカーボルト30Bの定着度を増大させることができる。
【0052】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Bにおいては、鋼管側ベースプレート50が鋼管40の開口41を塞ぐ面積を有しているため、鋼管側ベースプレート50を鋼管40上部の開口41に接合する際に、鋼管側ベースプレート50を開口41の縁の全周に亘って接合させることができる。従って、より大きな耐力を確保することができる。
【0053】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Bにおいては、アンカーボルト30Bを、平面視で杭10Bの径方向外側に配置しているため、アンカーボルト30Bを杭10Bの径方向内側に配置する場合よりも大きな耐力を確保することができる。
【0054】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Bにおいては、アンカーボルト30Bの下端部31を、杭10Bの杭頭部11よりも鉛直方向下方に配置しており、かつ、杭頭部11の外周面に、鋼管40に向かって突出する突起12Bを形成しているため、アンカーボルト30Bの下端部31を起点とするコーン状破壊が生じた場合でも、杭頭部11の外周面に形成した突起12Bにより、鋼管40からアンカーボルト30Bが引き抜かれるような外力に対して抵抗することができる。
【0055】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Bにおいては、鋼管40の下端部42の内周面に、杭10Bに向かって突出する突起43を形成しているため、鋼管40から杭10Bが引き抜かれるような外力に対して抵抗することができる。
【0056】
<第四実施形態>
続いて、
図4を用いて、本発明の第四実施形態に係る柱脚構造1Cの構成について説明する。本実施形態に係る柱脚構造1Cは、第三実施形態の杭10Bの構成を変更したものであり、その他の構成は第三実施形態と実質的に同一である。このため、変更した構成を主に説明し、共通する構成については同一の符号を付して説明を省略することとする。
【0057】
本実施形態に係る柱脚構造1Cは、所定の軸Aに沿って延在する杭10Cが鉄骨柱20の脚部21に接合されてなるものであって、複数のアンカーボルト30Cと、鋼管40と、ベースプレート(鋼管側ベースプレート50及び柱側ベースプレート60)と、を備えている。鉄骨柱20、アンカーボルト30C、鋼管40及びベースプレートは第三実施形態と実質的に同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0058】
杭10Cは、第一、第二、第三実施形態と同様に、軸Aに沿って延在する管状部材(円筒状の鋼管杭)であり、地盤の所定の深さまで達するように埋設されて、構造物を支持するように機能する。本実施形態における杭10Cの外周面には、
図4に示すように、鋼管40に向かって突出する突起12Cが形成されている。本実施形態における突起12Cは、第三実施形態と異なり、アンカーボルト30Cの下端部31よりも鉛直方向下方の位置に配置されている。
【0059】
本実施形態に係る柱脚構造1Cもまた、第一、第二、第三実施形態に係る柱脚構造1、1A、1Bと同様の機能を果たすものである。すなわち、本実施形態に係る柱脚構造1Cにおいては、
図4に示すように、鋼管側ベースプレート50が鋼管40の開口41を塞いでいるため、アンカーボルト30Cの定着度を増大させることができ、
図4に示すような引張力F及びモーメントMがアンカーボルト30Cに作用した場合においても、アンカーボルト30Cの抜け出しを抑制することができる。
【0060】
以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Cにおいては、杭10Cの杭頭部11及びアンカーボルト30Cが鋼管40によって外側から拘束されているため、比較的小さい躯体断面で耐力を確保することができる。また、アンカーボルト30Cが固定される鋼管側ベースプレート50が鋼管40上部の開口41に接合されているため、アンカーボルト30Cに引張力Fが作用した場合においてもアンカーボルト30Cの抜け出しを抑制することができ、アンカーボルト30Cの定着度を増大させることができる。
【0061】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Cにおいては、鋼管側ベースプレート50が鋼管40の開口41を塞ぐ面積を有しているため、鋼管側ベースプレート50を鋼管40上部の開口41に接合する際に、鋼管側ベースプレート50を開口41の縁の全周に亘って接合させることができる。従って、より大きな耐力を確保することができる。
【0062】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Cにおいては、アンカーボルト30Cを、平面視で杭10Cの径方向外側に配置しているため、アンカーボルト30Cを杭10Cの径方向内側に配置する場合よりも大きな耐力を確保することができる。
【0063】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Cにおいては、アンカーボルト30Cの下端部31を、杭10Cの杭頭部11よりも鉛直方向下方に配置しており、かつ、杭頭部11の外周面に、鋼管40に向かって突出する突起12Cを形成しているため、鋼管40からアンカーボルト30Cが引き抜かれるような外力に対して抵抗することができる。
【0064】
また、以上説明した実施形態に係る柱脚構造1Cにおいては、鋼管40の下端部42の内周面に、杭10Cに向かって突出する突起43を形成しているため、鋼管40から杭10Cが引き抜かれるような外力に対して抵抗することができる。
【0065】
本発明は、以上の各実施形態に限定されるものではなく、これら実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0066】
1・1A・1B・1C…柱脚構造
10・10B・10C…杭
11…杭頭部
12B・12C…突起
20…鉄骨柱
21…脚部
30・30A・30B・30C…アンカーボルト
31…下端部
40…鋼管
41…開口
42…下端部
43…突起
50…鋼管側ベースプレート
60…柱側ベースプレート
A…所定の軸
C…充填剤