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特許7224163心拍周期測定装置及び心拍周期測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】心拍周期測定装置及び心拍周期測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20230210BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230210BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20230210BHJP
   G01S 13/56 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
A61B5/0245 Z
A61B5/11 110
A61B5/113
G01S13/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018231688
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020092783
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500557048
【氏名又は名称】学校法人日本医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】松本 景子
(72)【発明者】
【氏名】神野 信夫
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-175031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0073961(US,A1)
【文献】特開平08-044395(JP,A)
【文献】特開2017-225834(JP,A)
【文献】特開2007-163406(JP,A)
【文献】特表2014-500742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/06-5/22
G01S 13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面へと照射され生体表面から反射されたレーダ信号の時系列変化について、呼吸成分を除去し心拍成分を抽出する心拍成分抽出部と、
心拍成分を抽出されたレーダ信号の時系列変化について、複数種類の信号時間長で相関処理を実行する相関処理実行部と、
前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピーク時刻を心拍周期として測定する心拍周期測定部と、を備え
前記心拍周期測定部は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、又は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピークを心拍成分又は高調波成分に分類するにあたり、(1)第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい自然数nの個数が、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい自然数nの個数より多いときに、第2ピーク時刻を心拍周期として測定する、又は、(2)第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい現在又は過去の相関処理結果の個数が、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい現在又は過去の相関処理結果の個数より多いときに、第2ピーク時刻を心拍周期として測定する
ことを特徴とする心拍周期測定装置。
【請求項2】
前記相関処理実行部は、心拍成分を抽出されたレーダ信号の時系列変化について、現時点を終端時とする前記複数種類の信号時間長で相関処理を並列して実行する
ことを特徴とする、請求項1に記載の心拍周期測定装置。
【請求項3】
前記相関処理実行部は、心拍成分を抽出されたレーダ信号の時系列変化について、前記複数種類の信号時間長で自己相関処理を実行する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の心拍周期測定装置。
【請求項4】
前記心拍周期測定部は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、又は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の心拍周期測定装置。
【請求項5】
前記心拍周期測定部は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、又は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピーク時刻のヒストグラムの代表値又は中央値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定するにあたり、相関処理結果の時間的新旧及び相関ピーク値の少なくともいずれかに基づいて頻度の重み付けを実行する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の心拍周期測定装置。
【請求項6】
前記心拍周期測定部は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、又は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関処理結果の加算結果の最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定するにあたり、相関処理結果の時間的新旧及び相関ピーク値の少なくともいずれかに基づいて加算の重み付けを実行する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の心拍周期測定装置。
【請求項7】
生体表面へと照射され生体表面から反射されたレーダ信号の時系列変化について、呼吸成分を除去し心拍成分を抽出する心拍成分抽出ステップと、
心拍成分を抽出されたレーダ信号の時系列変化について、複数種類の信号時間長で相関処理を実行する相関処理実行ステップと、
前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピーク時刻を心拍周期として測定する心拍周期測定ステップと、
を順にコンピュータに実行させ
前記心拍周期測定ステップは、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、又は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピークを心拍成分又は高調波成分に分類するにあたり、(1)第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい自然数nの個数が、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい自然数nの個数より多いときに、第2ピーク時刻を心拍周期として測定する、又は、(2)第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい現在又は過去の相関処理結果の個数が、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい現在又は過去の相関処理結果の個数より多いときに、第2ピーク時刻を心拍周期として測定する
ことを特徴とする心拍周期測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ信号の時系列変化に基づいて、心拍周期を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生体表面へと照射され生体表面から反射されたレーダ信号の時系列変化に基づいて、心拍周期を測定する技術が、特許文献1~5に開示されている。特許文献1では、レーダ信号の時系列変化の山又は谷のカウント数に基づいて、心拍周期を測定するが、レーダ信号の時系列変化の波形の歪みがあると、心拍周期の測定が困難になる。特許文献2~4では、レーダ信号の時系列変化の周波数スペクトルに基づいて、心拍周期を測定するが、レーダ信号の時系列変化の波形間隔の変動があると、心拍周期の測定が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5606606号明細書
【文献】特開2018-011948号公報
【文献】特許第6086939号明細書
【文献】特開2015-027550号公報
【文献】特許第6290501号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献5では、レーダ信号の時系列変化の相関処理結果に基づいて、心拍周期を測定する。よって、レーダ信号の時系列変化の波形の歪みがあっても、心拍周期の測定が可能になる。しかし、レーダ信号の時系列変化の波形間隔の変動があると、心拍周期の測定が困難になる。つまり、心拍周期が短いときには、短い相関処理時間を採用すれば、相関ピークを観測することができるが、その後に、心拍周期が長くなると、短い相関処理時間のままでは、相関ピークを観測することができない。一方で、心拍周期が長いときには、長い相関処理時間を採用すれば、相関ピークを観測することができるが、その後に、心拍周期が短くなると、長い相関処理時間のままでは、相関ピークを観測しにくくなる。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、レーダ信号の時系列変化の相関処理結果に基づいて、心拍周期を測定するにあたり、レーダ信号の時系列変化の波形間隔の変動があっても、心拍周期の測定を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、レーダ信号の時系列変化について、呼吸成分を除去し心拍成分を抽出したうえで、複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピーク時刻を心拍周期として測定する。
【0007】
具体的には、本開示は、生体表面へと照射され生体表面から反射されたレーダ信号の時系列変化について、呼吸成分を除去し心拍成分を抽出する心拍成分抽出部と、心拍成分を抽出されたレーダ信号の時系列変化について、複数種類の信号時間長で相関処理を実行する相関処理実行部と、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピーク時刻を心拍周期として測定する心拍周期測定部と、を備えることを特徴とする心拍周期測定装置である。
【0008】
また、本開示は、生体表面へと照射され生体表面から反射されたレーダ信号の時系列変化について、呼吸成分を除去し心拍成分を抽出する心拍成分抽出ステップと、心拍成分を抽出されたレーダ信号の時系列変化について、複数種類の信号時間長で相関処理を実行する相関処理実行ステップと、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピーク時刻を心拍周期として測定する心拍周期測定ステップと、を順にコンピュータに実行させるための心拍周期測定プログラムである。
【0009】
これらの構成によれば、心拍周期が短いときには、長い相関処理時間及び短い相関処理時間のうち、短い相関処理時間を採用すれば、相関ピークを観測することができる。一方で、心拍周期が長いときには、長い相関処理時間及び短い相関処理時間のうち、長い相関処理時間を採用すれば、相関ピークを観測することができる。よって、レーダ信号の時系列変化の波形間隔の変動があっても、心拍周期の測定を可能とすることができる。
【0010】
また、本開示は、前記相関処理実行部は、心拍成分を抽出されたレーダ信号の時系列変化について、現時点を終端時とする前記複数種類の信号時間長で相関処理を並列して実行することを特徴とする心拍周期測定装置である。
【0011】
この構成によれば、心拍周期が短い期間から心拍周期が長い期間へと遷移するときでも、長い相関処理時間及び短い相関処理時間で相関処理を並列して実行すれば、短時間の相関処理結果から長時間の相関処理結果へと直ちに切り替えることができる。一方で、心拍周期が長い期間から心拍周期が短い期間へと遷移するときでも、長い相関処理時間及び短い相関処理時間で相関処理を並列して実行すれば、長時間の相関処理結果から短時間の相関処理結果へと直ちに切り替えることができる。よって、レーダ信号の時系列変化の波形間隔の変動があっても、心拍周期のリアルタイム測定を可能とすることができる。
【0012】
また、本開示は、前記相関処理実行部は、心拍成分を抽出されたレーダ信号の時系列変化について、前記複数種類の信号時間長で自己相関処理を実行することを特徴とする心拍周期測定装置である。
【0013】
この構成によれば、レーダ信号の時系列変化とサンプル波形との間の相互相関処理を実行するのではなく、レーダ信号の時系列変化の自己相関処理を実行するため、生体個体差又は心拍測定環境によらないで、心拍周期の測定を可能とすることができる。そして、心拍成分の抽出前後のレーダ信号の時系列変化の間の相互相関処理を実行するのではなく、心拍成分の抽出後のレーダ信号の時系列変化の自己相関処理を実行するため、心拍成分より大きい呼吸成分によらないで、心拍周期の測定を可能とすることができる。
【0014】
また、本開示は、前記心拍周期測定部は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、又は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定することを特徴とする心拍周期測定装置である。
【0015】
この構成によれば、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻に分散がないときには、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定することができる。そして、複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果では、複数種類の信号時間長での相関処理結果と比べて、長期的に安定した変動がより見やすくなる。
【0016】
また、本開示は、前記心拍周期測定部は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、又は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピーク時刻のヒストグラムの代表値又は中央値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定するにあたり、相関処理結果の時間的新旧及び相関ピーク値の少なくともいずれかに基づいて頻度の重み付けを実行することを特徴とする心拍周期測定装置である。
【0017】
この構成によれば、(1)最大ピーク値を有する相関ピーク時刻に分散があるときでも、(2)相関ピーク時刻のうちの最短時刻よりも長い時刻において最大ピーク値をとる場合が稀にあるときでも、(3)小さいピーク値を有する相関ピーク時刻が存在するときでも、ヒストグラムの代表値又は中央値を心拍周期として測定することができる。そして、複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果では、複数種類の信号時間長での相関処理結果と比べて、長期的に安定した変動がより見やすくなる。
【0018】
また、本開示は、前記心拍周期測定部は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、又は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関処理結果の加算結果の最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定するにあたり、相関処理結果の時間的新旧及び相関ピーク値の少なくともいずれかに基づいて加算の重み付けを実行することを特徴とする心拍周期測定装置である。
【0019】
この構成によれば、(1)最大ピーク値を有する相関ピーク時刻に分散があるときでも、(2)相関ピーク時刻のうちの最短時刻よりも長い時刻において最大ピーク値をとる場合が稀にあるときでも、(3)小さいピーク値を有する相関ピーク時刻が存在するときでも、相関処理結果の加算結果での最大ピーク時刻を心拍周期として測定することができる。そして、複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果では、複数種類の信号時間長での相関処理結果と比べて、長期的に安定した変動がより見やすくなる。
【0020】
また、本開示は、前記心拍周期測定部は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、又は、前記複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピークを心拍成分又は高調波成分に分類するにあたり、(1)第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい自然数nの個数が、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい自然数nの個数より多いときに、第2ピーク時刻を心拍周期として測定する、又は、(2)第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい現在又は過去の相関処理結果の個数が、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい現在又は過去の相関処理結果の個数より多いときに、第2ピーク時刻を心拍周期として測定することを特徴とする心拍周期測定装置である。
【0021】
この構成によれば、第2nピーク時刻での心拍成分の相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での高調波成分の相関ピーク値より小さい自然数nが稀に存在するときでも、相関ピークを心拍成分又は高調波成分に精度良く分類することができる。そして、複数種類の信号時間長での相関処理結果の自己相関処理結果では、複数種類の信号時間長での相関処理結果と比べて、長期的に安定した変動がより見やすくなる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本開示は、レーダ信号の時系列変化の相関処理結果に基づいて、心拍周期を測定するにあたり、レーダ信号の時系列変化の波形間隔の変動があっても、心拍成分より大きい呼吸成分によらないで、心拍周期の測定を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の心拍周期測定の原理を示す図である。
図2】本開示の心拍周期測定の原理を示す図である。
図3】本開示の心拍周期測定システムの構成を示す図である。
図4】本開示の心拍周期測定プログラムの手順を示す図である。
図5】本開示のレーダ信号の時系列変化の抽出処理を示す図である。
図6】本開示のレーダ信号の時系列変化の自己相関処理を示す図である。
図7】本開示のレーダ信号の時系列変化の自己相関処理を示す図である。
図8】本開示の心拍周期測定プログラムの更なる手順を示す図である。
図9】本開示の相関ピーク時刻のヒストグラム作成処理を示す図である。
図10】本開示の最初の及び更なる自己相関処理結果の加算処理を示す図である。
図11】本開示の最初の及び更なる自己相関処理結果の加算処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0025】
本開示の心拍周期測定の原理を図1、2に示す。レーダ信号の時系列変化について、呼吸成分を除去し心拍成分を抽出しておく。レーダ信号の時系列変化として、レーダ信号のI成分、Q成分、位相又は振幅の時系列変化が挙げられる。
【0026】
図1の上段において、心拍周期が短いときには、現時点から長い自己相関処理時間を採用すれば、相関ピークをリアルタイム観測しにくくなるが(心拍周期の平均値に対する心拍周期の変動幅の比率が大きくなるため。)、現時点から短い自己相関処理時間を採用すれば、相関ピークをリアルタイム観測することができる。
【0027】
図1の下段において、心拍周期が長いときには、現時点から短い自己相関処理時間を採用すれば、相関ピークをリアルタイム観測することができないが(心拍周期の長さと比べて現時点からの自己相関処理時間が短くなるため。)、現時点から長い自己相関処理時間を採用すれば、相関ピークをリアルタイム観測することができる。
【0028】
そこで、本開示では、心拍周期が短いときには、現時点から長い自己相関処理時間及び現時点から短い自己相関処理時間のうち、短い自己相関処理時間を採用すれば、相関ピークを観測することができる。一方で、心拍周期が長いときには、現時点から長い自己相関処理時間及び現時点から短い自己相関処理時間のうち、長い自己相関処理時間を採用すれば、相関ピークを観測することができる。よって、レーダ信号の時系列変化の波形間隔の変動があっても、心拍周期のリアルタイム測定を可能とすることができる。
【0029】
図2の本開示の第1の方法では、現時点から長い自己相関処理時間及び現時点から短い自己相関処理時間で、自己相関処理を「切り替え」実行する。つまり、前回の心拍周期が短いときには、今回の自己相関処理時間を短くし、前回の心拍周期が長いときには、今回の自己相関処理時間を長くし、心拍周期の変動に応じて自己相関処理時間を切り替える。
【0030】
すると、心拍周期が短い期間から心拍周期が長い期間へと遷移するときでも、短時間の自己相関処理結果から長時間の自己相関処理結果へと遅れて切り替えることができる。一方で、心拍周期が長い期間から心拍周期が短い期間へと遷移するときでも、長時間の自己相関処理結果から短時間の自己相関処理結果へと遅れて切り替えることができる。
【0031】
図2の本開示の第2の方法では、現時点から長い自己相関処理時間及び現時点から短い自己相関処理時間で、自己相関処理を「並列して」実行する。つまり、前回の心拍周期が短いときにも、前回の心拍周期が長いときにも、今回の自己相関処理時間として、短い時間及び長い時間をともに用い、心拍周期の変動によらず自己相関処理時間を併用する。
【0032】
すると、心拍周期が短い期間から心拍周期が長い期間へと遷移するときでも、短時間の自己相関処理結果から長時間の自己相関処理結果へと直ちに切り替えることができる。一方で、心拍周期が長い期間から心拍周期が短い期間へと遷移するときでも、長時間の自己相関処理結果から短時間の自己相関処理結果へと直ちに切り替えることができる。
【0033】
本開示の心拍周期測定システムの構成を図3に示す。本開示の心拍周期測定プログラムの手順を図4に示す。心拍周期測定システムHは、レーダ装置1及び心拍周期測定装置2から構成される。レーダ装置1は、レーダ送受信部11、IQ検波部12及びAD変換部13から構成される。心拍周期測定装置2は、重心位置算出部21、IQ変位抽出部22、心拍成分抽出部23、相関処理実行部24及び心拍周期測定部25から構成され、図4、8に示した心拍周期測定プログラムをコンピュータにインストールすることにより実現される。
【0034】
本開示のレーダ信号の時系列変化の抽出処理を図5に示す。本開示のレーダ信号の時系列変化の自己相関処理を図6、7に示す。本実施形態では、図2の本開示の第2の方法として、現時点から長い自己相関処理時間及び現時点から短い自己相関処理時間で、自己相関処理を「並列して」実行している。変形例では、図2の本開示の第1の方法として、現時点から長い自己相関処理時間及び現時点から短い自己相関処理時間で、自己相関処理を「切り替え」実行してもよい。
【0035】
レーダ送受信部11は、人間又は動物の生体表面Vへとレーダ照射信号を送信し、人間又は動物の生体表面Vからレーダ反射信号を受信する。IQ検波部12は、受信されたレーダ反射信号に対して、IQ検波を行う。AD変換部13は、IQ検波されたレーダ反射信号に対して、AD変換を行う。重心位置算出部21は、図5の左上欄に示したように、レーダ信号のIQ平面での移動軌跡の重心位置をIQ原点として算出する(ステップS1)。IQ変位抽出部22は、図5の右上欄に示したように、レーダ信号のIQ平面でのI成分、Q成分、位相又は振幅の時系列変化を抽出する(ステップS2)。
【0036】
心拍成分抽出部23は、レーダ信号の時系列変化について、呼吸成分を除去し心拍成分を抽出する(ステップS3)。図5の左下欄では、図5の右上欄に示したレーダ信号の位相の時系列変化について、移動平均を算出することにより、呼吸成分を抽出する。図5の右下欄では、図5の右上欄に示したレーダ信号の位相の時系列変化から図5の左下欄に示したレーダ信号の位相の移動平均結果を減算することにより、呼吸成分を除去し心拍成分を抽出する。変形例として、図5の右上欄に示したレーダ信号の位相の時系列変化について、フィルタ処理をすることにより、呼吸成分を除去し心拍成分を抽出してもよい。本実施形態及び変形例のいずれでも、心拍成分のうちの基本波成分及び高調波成分を除去することなく、呼吸成分の少なくとも基本波成分を除去することが望ましい。図5の右下欄では、レーダ信号の位相の時系列変化は、約0.40秒で規則的に変動している。
【0037】
相関処理実行部24は、第1相関処理実行部24-1、・・・、第n相関処理実行部24-nから構成され、心拍成分を抽出されたレーダ信号の時系列変化について、現時点を終端時とする複数種類の信号時間長で自己相関処理を並列して実行する(ステップS4)。
【0038】
図6では、時間無相関な雑音成分及び周期的な振動成分等がフィルタ処理で除去される前における、レーダ信号の位相の時系列変化についての、現時点を終端時とする複数種類の信号時間長での自己相関処理結果を示す。図7では、時間無相関な雑音成分及び周期的な振動成分等がフィルタ処理で除去された後における、レーダ信号の位相の時系列変化についての、現時点を終端時とする複数種類の信号時間長での自己相関処理結果を示す。
【0039】
図6、7の左上欄では、図5の右下欄に示した心拍成分を抽出されたレーダ信号の位相の時系列変化についての、現時点を終端時とする0.5秒の信号時間長での自己相関処理結果を示す。なお、「0.5秒」とは、最も短い心拍周期として期待される約0.2秒の2倍の時間として設定されている。また、「1倍」ではなく「2倍」であるのは、相関ピーク時刻を少なくとも1個得るためである。0.5秒の信号時間長での自己相関処理結果では、相関ピーク時刻は、図6では約0.40秒であり、図7でも約0.40秒であり、最大ピーク値は、図6では約0.20であり、図7でも0.20である。
【0040】
図6、7の右上欄では、図5の右下欄に示した心拍成分を抽出されたレーダ信号の位相の時系列変化についての、現時点を終端時とする1秒の信号時間長での自己相関処理結果を示す。1秒の信号時間長での自己相関処理結果では、相関ピーク時刻は、図6では約0.39、0.80秒であり、図7でも約0.39、0.80秒であり、最大ピーク値は、図6では相関ピーク時刻=約0.39秒での約0.40であり、図7でも相関ピーク時刻=約0.39秒での約0.40である。
【0041】
図6、7の左下欄では、図5の右下欄に示した心拍成分を抽出されたレーダ信号の位相の時系列変化についての、現時点を終端時とする2秒の信号時間長での自己相関処理結果を示す。2秒の信号時間長での自己相関処理結果では、相関ピーク時刻は、図6では約0.39n秒(nは自然数)であり、図7でも約0.39n秒であり、最大ピーク値は、図6では相関ピーク時刻=約0.39秒での約0.30であり、図7では相関ピーク時刻=約0.78秒での約0.35である。
【0042】
図6、7の右下欄では、図5の右下欄に示した心拍成分を抽出されたレーダ信号の位相の時系列変化についての、現時点を終端時とする5秒の信号時間長での自己相関処理結果を示す。なお、「5秒」とは、最も長い心拍周期として期待される約2秒の2倍の時間として設定されている。また、「1倍」ではなく「2倍」であるのは、相関ピーク時刻を少なくとも1個得るためである。5秒の信号時間長での自己相関処理結果では、相関ピーク時刻は、図6では約0.39n秒(nは自然数)であり、図7でも約0.39n秒であり、最大ピーク値は、図6では相関ピーク時刻=約0.79秒での約0.25であり、図7では相関ピーク時刻=約0.79秒での約0.50である。
【0043】
心拍周期測定部25は、最大相関ピーク抽出部25-1、ヒストグラム作成部25-2及び相関処理結果加算部25-3から構成され、以下の方法で心拍周期を測定する。
【0044】
心拍周期測定の第1の方法として、最大相関ピーク抽出部25-1は、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定する(ステップS5)。
【0045】
図6では、最大相関ピーク抽出部25-1は、0.5秒、1秒、2秒及び5秒の信号時間長での自己相関処理結果のうち、5秒の信号時間長での自己相関処理結果において、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻=約0.79秒を心拍周期として測定する。図7では、最大相関ピーク抽出部25-1は、0.5秒、1秒、2秒及び5秒の信号時間長での自己相関処理結果のうち、2秒及び5秒の信号時間長での自己相関処理結果において、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻=約0.79秒を心拍周期として測定する。
【0046】
もしも、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻に分散がないときには、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定することができる。しかし、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻に分散があるときには、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定することができない。特に、図6、7では、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍成分ではなく高調波成分として測定してしまう。
【0047】
そこで、本開示の心拍周期測定プログラムの更なる手順を図8に示す。図8では、心拍周期測定の第1の方法を含めて、心拍周期測定の第2~6の方法を挙げる。
【0048】
心拍周期測定の第2の方法として、ヒストグラム作成部25-2は、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピーク時刻のヒストグラムの代表値又は中央値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定するにあたり、自己相関処理結果の時間的新旧及び相関ピーク値の少なくともいずれかに基づいて頻度の重み付けを実行する(図8の中央の破線枠内の「最初の自己相関処理結果」を参照。)。
【0049】
本開示の相関ピーク時刻のヒストグラム作成処理を図9に示す。図9の上段では、ヒストグラム作成部25-2は、自己相関処理結果が時間的に新しければ、そして、相関ピーク値が大きければ、相関ピーク時刻の頻度の重み付けを大きくすることができる。例えば、自己相関処理時間p秒を用いて、第q時刻において、最大相関ピーク及び第2相関ピークについて、相関ピーク時刻がtp、1(q)及びtp、2(q)であり、自己相関係数がcp、1(q)及びcp、2(q)であれば、相関ピーク時刻tp、1(q)及びtp、2(q)についての相関ピーク頻度はw×cp、1(q)及びw×cp、2(q)である。ただし、第(m-2)、(m-1)、m時刻(第m時刻は現時点。)についての重み付け係数wm-2、wm-1、wについて、wm-2<wm-1<w≦1が成り立つ。
【0050】
図9の下段では、ヒストグラム作成部25-2は、0.5秒、1秒、2秒及び5秒の信号時間長での自己相関処理結果のうち、全ての信号時間長での自己相関処理結果(図9の上段を参照。)において、相関ピーク時刻のヒストグラムの代表値又は中央値を心拍周期として測定する。このように、(1)最大ピーク値を有する相関ピーク時刻に分散があるときでも、(2)相関ピーク時刻のうちの最短時刻よりも長い時刻において最大ピーク値をとる場合が稀にあるときでも、(3)小さいピーク値を有する相関ピーク時刻が存在するときでも、ヒストグラムの代表値又は中央値を心拍周期として測定することができる。
【0051】
心拍周期測定の第3の方法として、相関処理結果加算部25-3は、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、自己相関処理結果の加算結果の最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定するにあたり、自己相関処理結果の時間的新旧及び相関ピーク値の少なくともいずれかに基づいて加算の重み付けを実行する(図8の中央の破線枠内の「最初の自己相関処理結果」を参照。)。
【0052】
本開示の最初の自己相関処理結果の加算処理を図10、11の左欄に示す。図10、11の左欄では、相関処理結果加算部25-3は、自己相関処理結果が時間的に新しければ、そして、相関ピーク値が大きければ、自己相関処理結果の加算の重み付けを大きくすることができる。または、変形例として、0.5秒、1秒、2秒及び5秒の信号時間長での自己相関処理結果を同じ重みで加算してもよい。さらに、変形例として、(1)時間0~0.5秒では、0.5秒、1秒、2秒及び5秒の信号時間長での自己相関処理結果をそれぞれ1/4の重みで加算し、(2)時間0.5~1秒では、1秒、2秒及び5秒の信号時間長での自己相関処理結果をそれぞれ1/3の重みで加算し、(3)時間1~2秒では、2秒及び5秒の信号時間長での自己相関処理結果をそれぞれ1/2の重みで加算し、(4)時間2~5秒では、5秒の信号時間長での自己相関処理結果を採用してもよい。
【0053】
図10の左欄では、相関処理結果加算部25-3は、自己相関処理結果の加算結果において、相関ピーク時刻のうちの最大ピーク時刻=約0.79秒を心拍周期として測定する。このように、(1)最大ピーク値を有する相関ピーク時刻に分散があるときでも、(2)相関ピーク時刻のうちの最短時刻よりも長い時刻において最大ピーク値をとる場合が稀にあるときでも、(3)小さいピーク値を有する相関ピーク時刻が存在するときでも、自己相関処理結果の加算結果での最大ピーク時刻を心拍周期として測定することができる。
【0054】
図11の左欄では、相関処理結果加算部25-3は、自己相関処理結果の加算結果において、相関ピーク時刻のうちの最大ピーク時刻=約0.39秒を心拍周期として測定してしまう。最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍成分ではなく高調波成分として測定してしまう問題を解決するためには、図11の下欄の処理を実行すればよい。
【0055】
心拍周期測定の第4の方法として、最大相関ピーク抽出部25-1は、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の更なる自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定する(図8の右欄の破線枠内の「更なる自己相関処理結果」を参照。)。心拍周期測定の第4の方法については信号データを図示しないが、心拍周期測定の第1の方法と同様に信号データを解析すればよい。
【0056】
このように、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻に分散がないときには、最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定することができる。そして、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の更なる自己相関処理結果では、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果と比べて、長期的に安定した変動がより見やすくなる。ただし、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の更なる自己相関処理結果では、長期的に安定した高調波変動がより現れやすくなることがあり得ることに注意することが望ましい。
【0057】
心拍周期測定の第5の方法として、ヒストグラム作成部25-2は、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の更なる自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピーク時刻のヒストグラムの代表値又は中央値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定するにあたり、自己相関処理結果の時間的新旧及び相関ピーク値の少なくともいずれかに基づいて頻度の重み付けを実行する(図8の右欄の破線枠内の「更なる自己相関処理結果」を参照。)。心拍周期測定の第5の方法については信号データを図示しないが、心拍周期測定の第2の方法と同様に信号データを解析すればよい。
【0058】
このように、(1)最大ピーク値を有する相関ピーク時刻に分散があるときでも、(2)相関ピーク時刻のうちの最短時刻よりも長い時刻において最大ピーク値をとる場合が稀にあるときでも、(3)小さいピーク値を有する相関ピーク時刻が存在するときでも、ヒストグラムの代表値又は中央値を心拍周期として測定することができる。そして、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の更なる自己相関処理結果では、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果と比べて、長期的に安定した変動がより見やすくなる。ただし、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の更なる自己相関処理結果では、長期的に安定した高調波変動がより現れやすくなることがあり得ることに注意することが望ましい。
【0059】
心拍周期測定の第6の方法として、相関処理結果加算部25-3は、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の更なる自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、自己相関処理結果の加算結果の最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍周期として測定するにあたり、自己相関処理結果の時間的新旧及び相関ピーク値の少なくともいずれかに基づいて加算の重み付けを実行する(図8の右欄の破線枠内の「更なる自己相関処理結果」を参照。)。本開示の更なる自己相関処理結果の加算処理を図10、11の右欄に示す。心拍周期測定の第5の方法についても、心拍周期測定の第2の方法と同様に、相関処理結果加算部25-3は、自己相関処理結果の加算の重み付けを実行すればよい。
【0060】
図10の右欄では、相関処理結果加算部25-3は、自己相関処理結果の加算結果において、相関ピーク時刻のうちの最大ピーク時刻=約0.79秒を心拍周期として測定する。このように、(1)最大ピーク値を有する相関ピーク時刻に分散があるときでも、(2)相関ピーク時刻のうちの最短時刻よりも長い時刻において最大ピーク値をとる場合が稀にあるときでも、(3)小さいピーク値を有する相関ピーク時刻が存在するときでも、自己相関処理結果の加算結果での最大ピーク時刻を心拍周期として測定することができる。そして、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の更なる自己相関処理結果では、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果と比べて、長期的に安定した変動がより見やすくなる。ただし、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の更なる自己相関処理結果では、長期的に安定した高調波変動がより現れやすくなることがあり得ることに注意することが望ましい。
【0061】
図11の左欄では、相関処理結果加算部25-3は、自己相関処理結果の加算結果において、相関ピーク時刻のうちの最大ピーク時刻=約0.37秒を心拍周期として測定してしまう。最大ピーク値を有する相関ピーク時刻を心拍成分ではなく高調波成分として測定してしまう問題を解決するためには、図11の下欄の処理を実行すればよい。
【0062】
心拍周期測定の第1~6の方法を用いても、相関ピークを心拍成分又は高調波成分に精度良く分類することができないときには、以下の追加方法で心拍周期を測定すればよい。
【0063】
心拍周期測定部25は、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、又は、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の更なる自己相関処理結果の少なくともいずれかにおいて、相関ピークを心拍成分又は高調波成分に分類する。
【0064】
ここで、第1の追加方法として、心拍周期測定部25は、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい自然数nの個数が、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい自然数nの個数より多いときに、第2ピーク時刻を心拍周期として測定する。
【0065】
なお、第1の追加方法に先立ち、自然数nの個数範囲を設定することが望ましい。また、第1の追加方法に代えて、心拍成分の相関ピーク値が高調波成分の相関ピーク値より大きくなるように、解析パラメータを適応的に設定してもよい。例えば、信号データを図11から図10へと変更するように、解析パラメータを適応的に設定してもよい。
【0066】
図11では、心拍周期測定の第3、6の方法(自己相関処理結果の加算処理)を前提として、第1の追加方法を実行する。変形例として、心拍周期測定の第1、4の方法(各自己相関処理結果の最大ピーク値検出)を前提として、第1の追加方法を実行してもよい。
【0067】
自然数n=1であるときに、第2ピーク時刻での相関ピーク値は、第1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい。自然数n=2であるときに、第4ピーク時刻での相関ピーク値は、第3ピーク時刻での相関ピーク値より大きい。自然数n=3であるときに、第6ピーク時刻での相関ピーク値は、第5ピーク時刻での相関ピーク値より大きい。よって、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい自然数nの個数(2個)は、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい自然数nの個数(1個)より多い。そこで、心拍周期測定部25は、第2ピーク時刻=約0.79秒を心拍周期として測定する。
【0068】
一方で、第2の追加方法として、心拍周期測定部25は、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい現在又は過去の自己相関処理結果の個数が、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい現在又は過去の自己相関処理結果の個数より多いときに、第2ピーク時刻を心拍周期として測定する。
【0069】
なお、第2の追加方法に先立ち、自己相関処理結果の個数範囲を設定することが望ましい。また、第2の追加方法に代えて、心拍成分の相関ピーク値が高調波成分の相関ピーク値より大きくなるように、解析パラメータを適応的に設定してもよい。例えば、信号データを図11から図10へと変更するように、解析パラメータを適応的に設定してもよい。
【0070】
図11では、心拍周期測定の第3、6の方法(自己相関処理結果の加算処理)を前提として、第2の追加方法を実行する。変形例として、心拍周期測定の第1、4の方法(各自己相関処理結果の最大ピーク値検出)を前提として、第2の追加方法を実行してもよい。
【0071】
自然数n=1であるとする。現在の自己相関処理結果(図11に図示。)では、第2ピーク時刻での相関ピーク値は、第1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい。現在より1回分だけ過去の自己相関処理結果(図11に不図示。)では、第2ピーク時刻での相関ピーク値は、第1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい。現在より2回分だけ過去の自己相関処理結果(図11に不図示。)では、第2ピーク時刻での相関ピーク値は、第1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい。よって、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より大きい現在又は過去の自己相関処理結果の個数(2個)は、第2nピーク時刻での相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での相関ピーク値より小さい現在又は過去の自己相関処理結果の個数(1個)より多い。そこで、心拍周期測定部25は、第2ピーク時刻=約0.79秒を心拍周期として測定する。
【0072】
このように、第2nピーク時刻での心拍成分の相関ピーク値が第2n-1ピーク時刻での高調波成分の相関ピーク値より小さい自然数nが稀に存在するときでも、相関ピークを心拍成分又は高調波成分に精度良く分類することができる。そして、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果の更なる自己相関処理結果では、複数種類の信号時間長での自己相関処理結果と比べて、長期的に安定した変動がより見やすくなる。
【0073】
本実施形態では、レーダ信号の時系列変化について、「現時点」を終端時とする相関処理を実行している。変形例として、レーダ信号の時系列変化について、「任意時刻」を終端時とする相関処理を実行してもよい。本実施形態では、レーダ信号の時系列変化の波形間隔の変動があっても、心拍周期のリアルタイム測定を可能とすることができる。
【0074】
本実施形態では、レーダ信号の時系列変化について、複数種類の信号時間長で相関処理を「並列して」実行している。変形例として、レーダ信号の時系列変化について、複数種類の信号時間長で相関処理を「順次」実行してもよい。本実施形態では、レーダ信号の時系列変化の波形間隔の変動があっても、心拍周期の高速測定を可能とすることができる。
【0075】
本実施形態では、心拍成分の抽出後のレーダ信号の時系列変化の「自己」相関処理を実行している。第1の変形例として、心拍成分の抽出後のレーダ信号の時系列変化とサンプル波形(例えば、患者の過去の波形を事前に取得、又は、ウェーブレット変換のマザー関数及びスケール数等のパラメータを事前に設定。)との間の「相互」相関処理を実行してもよい。本実施形態では、生体個体差又は心拍測定環境によらないで、心拍周期の測定を可能とすることができる。第2の変形例として、心拍成分の抽出前後のレーダ信号の時系列変化の間の「相互」相関処理を実行してもよい。本実施形態では、心拍成分より大きい呼吸成分によらないで、心拍周期の測定を可能とすることができる。
【0076】
本実施形態(例えば、図7以外。)では、時間無相関な雑音成分、周期的な振動成分及び心拍成分の高調波成分等がフィルタ処理で除去される前における、レーダ信号の時系列変化について、相関処理を実行している。変形例(例えば、図7。)として、時間無相関な雑音成分、周期的な振動成分及び心拍成分の高調波成分等がフィルタ処理で除去された後における、レーダ信号の時系列変化について、相関処理を実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示の心拍周期測定装置及び心拍周期測定プログラムは、レーダ信号の時系列変化の相関処理結果に基づいて、心拍周期を測定するにあたり、レーダ信号の時系列変化の波形間隔の変動があっても、心拍成分より大きい呼吸成分によらないで、心拍周期の測定を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0078】
H:心拍周期測定システム
V:生体表面
1:レーダ装置
2:心拍周期測定装置
11:レーダ送受信部
12:IQ検波部
13:AD変換部
21:重心位置算出部
22:IQ変位抽出部
23:心拍成分抽出部
24:相関処理実行部
24-1:第1相関処理実行部
24-n:第n相関処理実行部
25:心拍周期測定部
25-1:最大相関ピーク抽出部
25-2:ヒストグラム作成部
25-3:相関処理結果加算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11