(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】連続生産システム及び連続生産方法
(51)【国際特許分類】
B65G 53/34 20060101AFI20230210BHJP
【FI】
B65G53/34
(21)【出願番号】P 2018237253
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000176763
【氏名又は名称】三菱ケミカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松木 章洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】村田 克浩
(72)【発明者】
【氏名】竹田 浩伸
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-034113(JP,A)
【文献】実公平07-047372(JP,Y2)
【文献】特開平11-030345(JP,A)
【文献】特許第5794904(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 53/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の粉体から製品を連続生産する連続生産システムであって、
原料の粉体に第1の処理を行う第1処理装置と、
前記第1処理装置が前記第1の処理を行った粉体へ第2の処理を行う第2処理装置と、
前記第1処理装置から前記第2処理装置へ送られる粉体が通過する検査室を有する検査選別装置と、を備え、
前記検査選別装置は、前記第1処理装置から前記検査室へ繋がる経路を開閉する入口側仕切弁の下流側において前記経路の内面に形成された入口側開口から、
前記入口側仕切弁を閉じた状態で前記経路の内面に沿った旋回流となる方向へ気体を吹き込
み、残留する粉体を前記検査室の下流側の流出経路へ送る洗浄機構を有する、
連続生産システム。
【請求項2】
前記洗浄機構は、前記入口側仕切弁の直下に形成された前記入口側開口から、前記経路の内面に沿った旋回流となる方向へ気体を吹き込む、
請求項1に記載の連続生産システム。
【請求項3】
前記洗浄機構は、前記検査室の出口側の経路を開閉する出口側仕切弁を開いた状態で前記入口側開口から気体を吹き込む、
請求項1又は2に記載の連続生産システム。
【請求項4】
前記出口側仕切弁は、前記検査室から前記第2処理装置へ繋がる経路の一部を形成する弾性のチューブと、前記チューブを挟み込んで前記チューブ内の経路を閉鎖する開閉機構部とを有し、
前記洗浄機構は、前記開閉機構部による前記チューブの挟み込みを解除した状態で前記入口側開口から気体を吹き込む、
請求項3に記載の連続生産システム。
【請求項5】
前記洗浄機構は、前記出口側仕切弁の直下に形成された出口側開口から、前記経路の内面に沿った旋回流となる方向へ気体を更に吹き込む、
請求項3又は4の記載の連続生産システム。
【請求項6】
前記洗浄機構は、前記出口側仕切弁を閉じた状態で前記出口側開口から気体を吹き込む、
請求項5に記載の連続生産システム。
【請求項7】
前記検査選別装置は、前記検査室の排出経路を、前記検査室から前記第2処理装置へ繋がる経路と、前記検査室から前記第2処理装置以外へ繋がる経路との間で切り替える流路切替手段を、前記出口側仕切弁よりも下流側に有する、
請求項3から6の何れか一項に記載の連続生産システム。
【請求項8】
原料の粉体から製品を連続生産する連続生産方法であって、
原料の粉体に第1の処理を行う第1処理装置と、前記第1処理装置が前記第1の処理を行った粉体へ第2の処理を行う第2処理装置と、前記第1処理装置から前記第2処理装置へ送られる粉体が通過する検査室を有する検査選別装置と、を有する検査選別装置において、
前記第1処理装置から前記検査室へ繋がる経路を開閉する入口側仕切弁の下流側において前記経路の内面に形成された入口側開口から、
前記入口側仕切弁を閉じた状態で前記経路の内面に沿った旋回流となる方向へ気体を吹き込
み、残留する粉体を前記検査室の下流側の流出経路へ送る洗浄処理を実行する、
連続生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続生産システム及び連続生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医薬品や食品の製造においては、製品の品質を維持するために各種の検査が行われている。例えば、医薬品の錠剤の製造においては、錠剤を所定の硬度にするため、造粒機や乾燥機を使って製造された粉粒体は、打錠機へ投入される前に水分含有量が測定される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉体の原料を取り扱う製造現場では、混合や造粒、乾燥といった各工程を担う装置がそれぞれ用意され、各工程間における原料(以下、「中間製品」も含む)の移動に容器が用いられている。バッチ式とも呼ばれるこのような製造方法において、製品の品質を維持するために行われる検査は、例えば、原料が入った容器から試料を抜き取って行われる。そして、例えば、検査結果が不良の場合、当該試料を抜き取った容器に入っていた原料は廃棄される。
【0005】
しかし、バッチ式の場合、試料が不良と判定されれば、試料を抜き取った容器内の原料は、良品が混在する可能性があるにも関わらず全て不良と判定されて廃棄されることになる。そこで、医薬品や食品を連続式で製造することにし、品質不良が生じないように製造プロセスのパラメータを自動制御することが望ましい。医薬品や食品の連続生産において製造プロセスのパラメータを適切に自動制御するには、品質に関わるパラメータを高精度に連続で測定する必要がある。しかし、例えば、硬度や溶解性といったパラメータは非破壊で直接的に連続で測定することはできない。よって、硬度や溶解性といった非破壊で直接的に連続で測定することができないパラメータについては、水分や粒径分布、潤沢剤含量といった当該パラメータに関連性のある他のパラメータを用いて品質を間接的に管理する手法が採られる。そして、水分や粒径分布といったパラメータを、例えば、分光分析で測定する場合であれば、測定対象の粉体の嵩密度変動といった計測の精度を低下させる外乱の抑制が重要となる。また、品質を光学的手段で測定する場合においては、サイトグラス等の測定箇所における粉体の付着が計測精度の低下の要因となる。また、連続生産においては、測定されたパラメータから品質不良が検知された場合、製造プロセス中の品質不良部分が他の部分と混ざる前に速やかに排出する必要がある。
【0006】
そこで、原料の粉体から製品を連続生産するシステムの途中に、粉体が通過する検査室を有する検査選別装置を設けておき、当該検査室に溜まった粉体を分析することにより、製品の品質を管理することが考えられる。しかし、このような装置構成において当該検査室で品質不良が検知され、品質不良の粉体を他の粉体と混ざらないように当該検査室から排出するには、当該検査室内に粉体を残留させない必要がある。しかしながら、検査室には出入口を閉鎖する弁等の部品類が存在し、弁やその周辺は粉体が残留しやすい構造となっている。
【0007】
そこで、本発明は、原料の粉体から製品を連続生産するシステムの途中に設けられた粉
体検査用の装置における粉体の残留を可及的に抑制する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、検査室の入口側仕切弁の下流側において、経路の内面に沿った旋回流となる方向へ気体を吹き込む洗浄機構を設けることにした。
【0009】
詳細には、本発明は、原料の粉体から製品を連続生産する連続生産システムであって、原料の粉体に第1の処理を行う第1処理装置と、第1処理装置が第1の処理を行った粉体へ第2の処理を行う第2処理装置と、第1処理装置から第2処理装置へ送られる粉体が通過する検査室を有する検査選別装置と、を備え、検査選別装置は、第1処理装置から検査室へ繋がる経路を開閉する入口側仕切弁の下流側において経路の内面に形成された入口側開口から、経路の内面に沿った旋回流となる方向へ気体を吹き込む洗浄機構を有する。
【0010】
このような連続生産システムであれば、入口側仕切弁の下流側において経路の内面に沿った旋回流が生じるため、粉体が残留しやすい入口側仕切弁付近が旋回流によって洗浄される。また、入口側仕切弁の下流側において経路の内面に沿った旋回流が生じるため、粉体が通過する経路内で気体の淀みによる低流速域が生じることなく、経路内の隅々に気体が流れる。このため、粉体が通過する経路内に、洗浄用の気体が行き届かずに洗浄不良となる箇所が生じにくい。従って、この連続生産システムであれば、検査選別装置における粉体の残留を可及的に抑制することが可能である。
【0011】
なお、洗浄機構は、入口側仕切弁の直下に形成された入口側開口から、経路の内面に沿った旋回流となる方向へ気体を吹き込むものであってもよい。気体が入口側仕切弁の直下の入口側開口から吹き出る形態であれば、入口側仕切弁の下部に付着した粉体が流れやすい。
【0012】
また、洗浄機構は、検査室の出口側の経路を開閉する出口側仕切弁を開いた状態で入口側開口から気体を吹き込むものであってもよい。出口側仕切弁が開いた状態で洗浄が行われれば、検査室に残留する粉体を出口側仕切弁より下流側へ洗浄用の気体で流すことが可能である。
【0013】
また、出口側仕切弁は、検査室から第2処理装置へ繋がる経路の一部を形成する弾性のチューブと、チューブを挟み込んでチューブ内の経路を閉鎖する開閉機構部とを有し、洗浄機構は、開閉機構部によるチューブの挟み込みを解除した状態で入口側開口から気体を吹き込むものであってもよい。チューブを挟み込んで経路を閉鎖するものであれば、開弁状態においては基本的に粉体の経路に構造的な障害となるものを形成しないため、出口側仕切弁が開弁状態で行われる洗浄により、出口側仕切弁付近も洗浄することができる。
【0014】
また、洗浄機構は、出口側仕切弁の直下に形成された出口側開口から、経路の内面に沿った旋回流となる方向へ気体を更に吹き込むものであってもよい。このような箇所からも洗浄用の気体が吹き込まれれば、出口側仕切弁の下流側も洗浄可能となる。
【0015】
また、洗浄機構は、出口側仕切弁を閉じた状態で出口側開口から気体を吹き込むものであってもよい。これによれば、出口側仕切弁付近に残留していた粉体が検査室側へ流れないため、検査選別装置に残留する粉体を可及的に抑制することが可能である。
【0016】
また、検査選別装置は、検査室の排出経路を、検査室から第2処理装置へ繋がる経路と、検査室から第2処理装置以外へ繋がる経路との間で切り替える流路切替手段を、出口側仕切弁よりも下流側に有するものであってもよい。これによれば、粉体の行先を切り換え
可能であるため、検査室における検査結果に応じた粉体の処理が可能となる。
【0017】
また、本発明は、方法の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、原料の粉体から製品を連続生産する連続生産方法であって、原料の粉体に第1の処理を行う第1処理装置と、第1処理装置が第1の処理を行った粉体へ第2の処理を行う第2処理装置と、第1処理装置から第2処理装置へ送られる粉体が通過する検査室を有する検査選別装置と、を有する検査選別装置において、第1処理装置から検査室へ繋がる経路を開閉する入口側仕切弁の下流側において経路の内面に形成された入口側開口から、経路の内面に沿った旋回流となる方向へ気体を吹き込む洗浄処理を実行するものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記の連続生産システム及び連続生産方法であれば、原料の粉体から製品を連続生産するシステムの途中に設けられた粉体検査用の装置における粉体の残留を可及的に抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る連続生産システムを示した図である。
【
図2】
図2は、連続生産システムに備わる検査選別装置の一例を示した図である。
【
図3】
図3は、検査選別装置の第1の動作説明図である。
【
図4】
図4は、検査選別装置の第2の動作説明図である。
【
図5】
図5は、乾燥機の出口における原料の含水率と乾燥機の操作量との相関関係の一例を示したグラフである。
【
図6】
図6は、乾燥機を出た原料の含水率の時間変化の一例を示したグラフである。
【
図7】
図7は、検査選別装置におけるエアーブロー時の気流の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、単なる例示であり、本開示の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0021】
<ハードウェア構成>
図1は、実施形態に係る連続生産システム1を示した図である。本実施形態では、医薬品を製造する場合を例に説明するが、例えば、食品やその他各種製品の製造にも適用可能である。連続生産システム1は、粉状の原料から錠剤を生産するシステムであり、
図1に示すように、混合機2、造粒機3、乾燥機4、混合機5、打錠機6、コーティング機7を備える。混合機2は、粉体の原料が投入される投入口を有し、錠剤の原料である各種の粉を混合する。造粒機3は、混合機2で混合された原料に水若しくは結合液を添加して小粒子群に結着させて粒状にする。乾燥機4は、造粒機3で造粒された原料に温風を接触させて乾燥させる。混合機5は、乾燥機4で乾燥された粒状の原料に潤沢剤を添加して混合する。打錠機6は、混合機5で混合された粒状の原料を型枠に入れて圧縮し、錠剤にする。コーティング機7は、打錠機6で固化された錠剤にコーティングを施す。連続生産システム1では、混合機2からコーティング機7へ至る一連の設備が繋がっている。よって、連続生産システム1では、混合機2に投入された原料に対し、混合機2からコーティング機7へ至る一連の設備でそれぞれ行われる様々な処理が連続的に行われる。
【0022】
なお、
図1では、混合機2からコーティング機7へ至る一連の機器が1つずつ図示されているが、連続生産システム1はこのような形態に限定されるものではない。例えば、混合機2や造粒機3、乾燥機4が1乃至複数用意されており、複数種の原料が混合機5で混合されるようにしてもよい。
【0023】
混合機2からコーティング機7へ至る一連の設備は、連続生産システム1に設けられた図示しない制御装置によって制御される。制御装置は、連続生産システム1に備わる各種センサの計測値に基づいて各機器の操作量を決定する。制御装置が参照する計測値としては、例えば、混合機2に備わるスクリューフィーダーの回転速度や乾燥機4の温度といった混合機2からコーティング機7までの各機器から得られる値の他、各機器を繋ぐ経路の途中に設けられたセンサから得られる値が含まれる。各機器を繋ぐ経路の途中に設けられるセンサの位置としては、例えば、
図1において符号A~Eで示されるような位置が挙げられる。乾燥機4と混合機5とを繋ぐ経路の途中にある符号Cにセンサが設置されていれば、制御装置は、例えば、乾燥機4を出た原料の性状に応じて造粒機3や混合機5の操作量を変更することができる。また、例えば、乾燥機4と混合機5とを繋ぐ経路の途中にある符号Cにセンサが設置されていれば、制御装置は、例えば、乾燥機4を出た原料の性状に応じて当該原料の行先を混合機5以外へ変更することが可能となる。
【0024】
図2は、連続生産システム1に備わる検査選別装置10の一例を示した図である。検査選別装置10は、連続生産システム1の適宜の箇所に設けることが可能である。検査選別装置10は、例えば、
図1において符号A~Eで示されるような、混合機2からコーティング機7へ至る各機器を繋ぐ経路の途中に設けられる。
【0025】
検査選別装置10は、検査選別装置10の上流側に繋がる機器から送られた原料が流入する流入経路11、流入経路11の下端に設置された入口側仕切弁12、入口側仕切弁12の下側に形成された検査室16、入口側仕切弁12の直下に形成されたエアー吹込み経路の開口13U(本願でいう「入口側開口」の一例である)、検査室16の壁面を構成すると共に検査室16内を周囲から透視可能にするサイトグラス14、サイトグラス14の下部に設置された出口側仕切弁18、出口側仕切弁18の直下に形成されたエアー吹込み経路の開口13L(本願でいう「出口側開口」の一例である)を備える。検査室16の上部には、通過する粉体の粒子径分布を測定する粒子径分布測定装置20が設けられている。粒子径分布測定装置20のプローブは、検査室16の壁面を構成する管に設けられた孔に挿通されている。当該孔とプローブとの隙間は、原料が入り込むのを防ぐため、シール材によってシールされていてもよいし、或いは、微量な気体の流入によって陽圧にされていてもよい。また、検査室16の周囲には、サイトグラス14を通して検査室16内の光学的な測定を行うレーザーセンサ15,24と分光分析計17が設けられている。開口13U,13Lから経路内に吹き出るエアーは、検査選別装置10に供給される高圧空気の経路を遮断する電磁弁19U,19L(本願でいう「洗浄機構」の一例である)の開閉動作によって制御される。なお、開口13U,13Lから吹き出る気体は、空気に限定されるものでなく、不活性ガスやその他の各種成分の気体であってもよい。
【0026】
入口側仕切弁12は、弁体が円形のバタフライ弁であり、図示しない制御装置によって開閉される。そして、開口13Uは、入口側仕切弁12の弁室近傍の経路内面に形成されている。入口側仕切弁12が円形のバタフライ弁であるため、弁室内が内周面となっており、開口13Uから吹き出る気体は、粉体が通過する経路の内周面に沿った旋回流となる方向で吹き出されることにより、経路の内周面に沿った旋回流となって粉体の経路内を流れる。なお、入口側仕切弁12は、バタフライ弁に限定されるものでなく、例えば、チョーク弁やその他各種の弁であってもよい。
【0027】
出口側仕切弁18は、検査室16から検査選別装置10の下流側の機器へ繋がる経路の一部を形成する弾性のチューブ18Tと、チューブ18Tを挟み込んでチューブ18T内の経路を閉鎖する開閉機構18M(本願でいう「開閉機構部」の一例である)とを有する。チューブ18Tは、円筒状の形態を有しており、内部に粉体が通過する経路を形成する。出口側仕切弁18は、チューブ18Tを開閉機構18Mで挟み込んで粉体の経路を閉鎖
する弁であるため、開弁状態においては基本的に粉体の経路に構造的な障害となるものを形成しない。そして、出口側仕切弁18は、チューブ18Tを開閉機構18Mで挟み込んで閉弁する形態なので、粉体が通過する経路に粉体が入り込むような微細な隙間等が存在しない。よって、出口側仕切弁18は、粉体が残留する可能性が低い構造の弁と言える。なお、出口側仕切弁18は、このような形態に限定されるものでなく、例えば、チョーク弁やその他各種の弁であってもよい。
【0028】
検査選別装置10では、入口側仕切弁12が開弁状態にあり且つ出口側仕切弁18が閉弁状態において、検査選別装置10の上流側に繋がる機器から原料が送られると、検査室16には当該原料が溜まる。そして、検査選別装置10では、検査選別装置10の上流側に繋がる機器から検査室16へ原料が送られている間、粒子径分布測定装置20による粒径の測定が行われる。そして、検査室16に所定の量の原料が溜まったことがレーザーセンサ15に検知されると入口側仕切弁12が閉じ、分光分析計17を使った原料の検査が行われる。出口側仕切弁18の下側には流路切替弁21(本願でいう「流路切替手段」の一例である)が設けられており、検査を終えた原料は検査結果に応じて流出経路22或いは流出経路23へ送られる。そして、検査室16に残留する原料の有無がレーザーセンサ24で検査される。なお、本実施形態では、分光分析計17の一例として近赤外線センサを用いたものを例に説明するが、本願で開示する連続生産システムはこのような形態に限定されるものではない。
【0029】
図3は、検査選別装置10の第1の動作説明図である。また、
図4は、検査選別装置10の第2の動作説明図である。検査選別装置10は、連続生産システム1の制御装置に接続されている。そして、検査選別装置10は、連続生産システム1の制御装置から送られる制御信号に従い、以下のように動作する。すなわち、検査選別装置10では、入口側仕切弁12が開弁状態にあり且つ出口側仕切弁18が閉弁状態において、検査選別装置10の上流側に繋がる機器から原料が送られると、
図3(A)に示されるように、検査室16内に原料が溜まる。そして、検査室16内に溜まる原料が所定の高さに達したことがレーザーセンサ15によって検知されると、
図3(B)に示されるように、入口側仕切弁12が閉じる。入口側仕切弁12が閉じると、流入経路11から検査室16への新たな原料の流入が停止する。流入経路11から検査室16への新たな原料の流入が停止されている間、検査室16内の原料の嵩密度は一定に保たれる。そこで、入口側仕切弁12が閉じられた後は、分光分析計17を使った検査室16内の原料の検査が開始される。分光分析計17を使った検査が入口側仕切弁12の閉弁状態で行われれば、検査室16内に溜まる原料の高さの増大に起因する原料の嵩密度の変化が無いため、安定した検査結果を得ることが可能となる。
【0030】
検査室16内に溜まる原料の検査が完了した後は、検査結果に応じた流路切替弁21の切替動作が行われる。例えば、検査室16内に溜まる原料の検査結果が良好な場合、
図3(C)に示されるように、検査室16内に溜まる原料に対して次に行う処理を担う機器が繋がる流出経路22が検査室16と連通するように流路切替弁21の向きが切り替わる。また、例えば、検査室16内に溜まる原料の検査結果が不良の場合、検査室16内に溜まる原料を廃棄するための流出経路23が検査室16と連通するように流路切替弁21の向きが切り替わる。流路切替弁21の切替動作が完了した後は、
図3(D)に示されるように、出口側仕切弁18が開くと同時もしくは開いてから一定時間経過後に開口13Uから検査室16内へのエアーブローが開始され、検査室16内にあった原料は検査室16内から速やかに排出される。
【0031】
原料の排出が完了した後は、
図4(A)に示されるように、開口13Uから検査室16内へのエアーブローが停止されると同時に出口側仕切弁18が閉じられる。出口側仕切弁18が閉じられた後は、レーザーセンサ24を使った光学的な検査により、検査室16に
残留する原料の有無が検査され、洗浄効果が確認される。また、出口側仕切弁18が閉じられた後は、
図4(B)に示されるように開口13Lからエアーブローが開始され、出口側仕切弁18の下流側に残留する原料が排出される。そして、開口13Lからのエアーブローが開始されてから一定時間が経過すると、
図4(C)に示されるように、開口13Lからのエアーブローが停止され、流路切替弁21が元の状態に戻る。そして、入口側仕切弁12が再び開く。入口側仕切弁12が開くと、入口側仕切弁12が閉じている間に検査選別装置10の上流側の機器から送られて入口側仕切弁12の上側に溜まっていた原料が検査室16内に流入する。なお、取り扱う粉体の性状や検査選別装置10の機器の構造上の理由により、開口13Lからのエアーブローが不要な場合には、開口13Lからのエアーブローを省略してもよいし、開口13L自体を省略してもよい。
【0032】
検査選別装置10では、
図3(A)~(D)及び
図4(A)~(C)を使って説明した上記一連の動作が数十秒から数分単位で繰り返し行われる。よって、検査選別装置10の上流側や下流側に繋がる機器の連続的な動作に実質的な支障を与える可能性は殆ど無い。そして、分光分析計17を使った原料の検査は、レーザーセンサ15によって検知される所定の高さで入口側仕切弁12が閉弁状態で行われるため、原料の嵩密度が毎回一定の状態で行われることになる。よって、粉体の嵩密度次第で分光分析計17の計測値が変動する可能性も殆ど無い。したがって、検査選別装置10を使った検査であれば、粉状の原料から錠剤を連続的に生産する連続生産システム1においても、粉体の嵩密度次第で変動するような計測値を精度良く得ることが可能である。また、検査選別装置10であれば、連続生産システム1で連続的に取り扱われる原料の全てを検査室16で検査し、流路切替弁21で選別することが可能であるため、仮に連続生産システム1で不良品が一時的に発生した場合であっても、検査室16内に溜まる量の単位で良品と不良品とに分別することが可能であり、廃棄される原料を可及的に低減することが可能となる。
【0033】
以下、検査選別装置10が
図1の符号Cに設置された場合に連続生産システム1で実現可能となる全体の制御フローの一例について説明する。
【0034】
図1に示した連続生産システム1の乾燥機4では、造粒機3で造粒された原料に各種の追加原料が加えられて乾燥が行われる。乾燥機4には、加熱乾燥を行うための1以上のヒータが設けられており、適切な乾燥温度となるようにヒータの通電量が制御装置で調整される。また、乾燥機4には、可変速のブロワーが設けられており、造粒機3で造粒された原料が乾燥機4内を適切な風速で通過するようにブロワーの回転速度が制御装置で調整される。
【0035】
図5は、乾燥機4の出口における原料の含水率と乾燥機4の操作量との相関関係の一例を示したグラフである。例えば、含水率が比較的多い場合、乾燥を促進するため、乾燥機4の温度も含水率に応じて高めに設定する必要がある。また、含水率が比較的少ない場合、過乾燥を防ぐため、乾燥機4の温度も含水率に応じて低めに設定する必要がある。そこで、乾燥機4では、乾燥機4から出た原料の含水率に応じてヒータやブロワーの操作量がフィードバック制御され、温度や風量の調整が行われる。このフィードバック制御が適切に行われていれば、乾燥機4から出た原料の含水率は、規定の管理範囲内に収まる。一方、フィードバック制御が適切に行われなければ、乾燥機4から出た原料の含水率は、規定の管理範囲を逸脱する。また、含水率の計測やプロセスに何らかの不具合が生じることにより、操作量が正常範囲を逸脱しているにも関わらず、乾燥機4から出た原料の含水率が規定の管理範囲内に収まっているように見える場合がある。
図4に示されるように、操作量と制御量の正常範囲が予め定まっていれば、このような含水率の計測の不具合等を検出することもできる。
【0036】
粉体を原料とする医薬品の連続生産において、粉体の含水率を連続的に計測することは
一般的に難しい。しかし、上記の検査選別装置10では、
図3(A)~(D)及び
図4(A)~(C)を使って説明した上記一連の動作が数分単位で繰り返し行われるため、乾燥機4と混合機5を繋ぐ経路の途中に検査選別装置10を設置しても、上流側に繋がる乾燥機4や下流側に繋がる混合機5の連続的な動作に実質的な支障を与える可能性は殆ど無い。そして、分光分析計17を使った原料の含水量の検査が、レーザーセンサ15によって検知される所定の高さで入口側仕切弁12が閉弁状態で行われるため、原料の嵩密度の変動による含水量の計測値の変動が生ずる可能性も殆ど無い。よって、本実施形態の連続生産システム1において、乾燥機4と混合機5を繋ぐ経路の途中に上記の検査選別装置10を設置すれば、乾燥機4を出た原料の含水率を基に、乾燥機4の温度や風量のフィードバック制御が可能となる。また、検査選別装置10に粒径の測定装置を併設すれば、例えば、乾燥機4よりも上流側にある造粒機3の操作量(例えば、造粒回転数等)のフィードバック制御も可能となる。
【0037】
また、検査選別装置10には流路切替弁21が設けられているため、本実施形態の連続生産システム1において、乾燥機4と混合機5を繋ぐ経路の途中に上記の検査選別装置10を設置すれば、連続的に処理される原料を検査結果に応じて排出することも可能である。
図6は、乾燥機4を出た原料の含水率の時間変化の一例を示したグラフである。例えば、
図6に示されるように、乾燥機4を出た原料の含水率が管理範囲を一時的に逸脱する可能性がある。そのような場合、含水率の管理範囲を逸脱した原料を混合機5へ送ることは望ましくない。しかし、検査選別装置10には流路切換弁21が設けられているため、乾燥機4と混合機5を繋ぐ経路の途中に上記の検査選別装置10を設置すれば、検査室16における検査で含水率が管理範囲を逸脱している原料については、流路切替弁21で混合機5以外の箇所へ排出することが可能である。
【0038】
上記実施形態の検査選別装置10では、開口13U,13Lが、粉体が通過する経路の内周面に沿った旋回流となる方向へ気体を吹き込むように形成されているため、検査室16等に原料が残留しない。
図7は、検査選別装置10におけるエアーブロー時の気流の様子を示した図である。開口13Uは、入口側仕切弁12の直下において、粉体が通過する経路の内周面に沿った旋回流となる方向へ気体を吹き込むために、開口13Uへ至る高圧空気の配管経路の中心軸が、粉体が通過する経路の内周面を形成する円の接線寄りとなる位置に形成されている。よって、
図7に吹き出し表示された図を見ると判るように、開口13Uから吹き出た空気は、粉体が通過する経路の内周面に沿った旋回流となる。この結果、粉体が通過する検査室16等の内周面は、高圧の空気によって洗浄され、残留していた原料の粉体が確実に除去される。したがって、検査室16内にある原料の品質を、サイトグラス14を通じて分光分析計17により光学的に測定する検査選別装置10において、サイトグラス14における粉体の付着による分光分析計17の計測精度の低下が防止される。なお、洗浄効果の確認を、サイトグラス14を通じて光学的手段により自動的に行い、当該確認を経た後に
図3(A)~(D)及び
図4(A)~(C)を使って説明した上記一連の動作が行われるようにしてもよい。
【0039】
上記実施形態の場合に粉体が残留しない理由は以下の通りである。すなわち、上記実施形態の検査選別装置10では、開口13Uが入口側仕切弁12の直下に設けられているため、粉体が残留しやすい入口側仕切弁12付近が高圧の空気によって確実に洗浄される。また、検査選別装置10では、開口13Uから吹き出た空気が螺旋状に流れるため、粉体が通過する経路内で空気の淀みによる低流速域が生じることなく、経路内の隅々に空気が流れる。このため、粉体が通過する経路内に、洗浄用の空気が行き届かずに洗浄不良となる箇所が生じにくい。更に、上記実施形態の検査選別装置10では、検査室16の下流側の経路を開閉する出口側仕切弁18が、チューブ18Tを挟み込んでチューブ18T内の経路を閉鎖するものであり、開弁状態においては基本的に粉体の経路に構造的な障害となるものを形成しないため、出口側仕切弁18が開弁状態で行われる開口13Uによるエア
ーブローにより、出口側仕切弁18付近も洗浄される。更に、上記実施形態の検査選別装置10では、出口側仕切弁18を閉じた後に開口13Lによるエアーブローが行われるため、出口側仕切弁18から流路切替弁21までの間の経路も洗浄される。従って、上記実施形態の連続生産システム1であれば、検査選別装置10における粉体の残留を可及的に抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1・・連続生産システム:2・・混合機:3・・造粒機:4・・乾燥機:5・・混合機:6・・打錠機:7・・コーティング機:10・・検査選別装置:11・・流入経路:12・・入口側仕切弁:13U,13L・・開口:14・・サイトグラス:15,24・・レーザーセンサ:16・・検査室:17・・分光分析計:18・・出口側仕切弁:18T・・チューブ:18M・・開閉機構:19U,19L・・電磁弁:20・・粒子径分布測定装置:21・・流路切替弁:22,23・・流出経路