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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】DNAサンプルを特徴付ける方法
(51)【国際特許分類】
   G16B 20/00 20190101AFI20230210BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20230210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230210BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20230210BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20230210BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230210BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
G16B20/00
C12Q1/68
A61P35/00
A61K33/24
A61K31/704
A61K45/00
A61K31/282
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018557362
(86)(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2017060294
(87)【国際公開番号】W WO2017191074
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-20
(31)【優先権主張番号】1607630.9
(32)【優先日】2016-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1703903.3
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518369590
【氏名又は名称】ゲノム・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニク-ザイナル,セリーナ
(72)【発明者】
【氏名】デービス,ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】グロドジク,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】モーガネッラ,サンドロ
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2002/006481(JP,A1)
【文献】Alexandrov LB. et al.,Deciphering signatures of mutational processes operative in human cancer.,Cell Reports,2013年01月31日,3,246-259
【文献】Nik-Zainal S. et al.,Mutational processes molding genomes of 21 breast cancers.,Cell,2012年05月25日,149,979-993 (Suppl. pp. S1-S6)
【文献】Alexandrov LB. et al.,A mutational signature in gastric cancer suggests therapeutic strategies.,Nature Communications,2015年10月29日,6,8683(pp. 1-7)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16B 5/00 - 99/00
C12Q 1/68
A61P 35/00
A61K 33/24
A61K 31/704
A61K 45/00
A61K 31/282
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍から得られたDNAサンプルを特徴付ける方法であって、
前記サンプルにおける体細胞変異をカタログ化して、そのサンプルについての変異カタログを生成するステップ;
サンプルにおける塩基置換シグネチャ、サンプルにおけるインデルシグネチャの複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップであって、前記塩基置換シグネチャ及び/又はインデルシグネチャの存在又は不在は、前記変異カタログから導き出される、ステップ;
存在すると決定された塩基置換シグネチャ及び/又はインデルシグネチャのそれぞれに帰属させることができる変異カタログにおける変異の数を決定するステップ;
サンプルにおける塩基置換シグネチャ、サンプルにおけるインデルシグネチャの前記複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルから、確率的スコアを生成するステップであって、確率的スコアを生成するステップが以下の下位ステップ:
シグネチャのそれぞれに帰属された変異の数を対数変換するステップ;
各シグネチャに対する変異の対数変換された数及びコピー数プロファイルを標準化するステップ;及び
前記標準化された値のそれぞれを、腫瘍に相同組換え(HR)欠損を引き起こすその値に関連するシグネチャ又はプロファイルの可能性を表す所定の重み付け因子によって重み付けするステップ;
を含む、ステップ;及び
前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、HR欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
腫瘍由来のDNAサンプルを特徴付ける方法であって、
次のステップの2つ以上又は3つ以上を実施するステップ:
a)前記サンプルにおける体細胞変異をカタログ化して、そのサンプルについての変異カタログを生成するステップ;
b)サンプルにおける少なくとも1つの塩基置換シグネチャの存在又は不在を決定するステップであって、前記塩基置換シグネチャの存在又は不在は前記変異カタログから導きだされる、ステップ;
c)サンプルにおける少なくとも1つのインデルシグネチャの存在又は不在を決定するステップであって、前記インデルシグネチャの存在又は不在は前記変異カタログから導きだされる、ステップ;
d)存在すると決定された塩基置換シグネチャ及び/又はインデルシグネチャのそれぞれに帰属させることができる変異カタログにおける変異の数を決定するステップ;及び
e)サンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップ;
上記決定から、確率的スコアを生成するステップであって、確率的スコアを生成するステップが以下の下位ステップ:
シグネチャのそれぞれに帰属された変異の数を対数変換するステップ;
各シグネチャに対する変異の対数変換された数及びコピー数プロファイルを標準化するステップ;及び
前記標準化された値のそれぞれを、腫瘍に相同組換え(HR)欠損を引き起こすその値に関連するシグネチャ又はプロファイルの可能性を表す所定の重み付け因子によって重み付けするステップ;
を含む、ステップ;及び
前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、HR欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップ
を含む、方法。
【請求項3】
方法が、そのサンプルにおける少なくとも1つの塩基置換シグネチャ、少なくとも1つのインデルシグネチャの存在又は不在、及び、そのサンプルについてのコピー数プロファイルを決定することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのインデルシグネチャの存在又不在を決定することが、複数のインデルシグネチャの存在若しくは不在を決定することを含み、複数のインデルシグネチャが、マイクロホモロジー媒介インデルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
コピー数プロファイルが、HRDコピー数ベースの指数を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
確率的スコアが、
【数1】
として生成され、
式中、
は、i番目のサンプルの状態をコードする変数であり、
βは、切片の重みであり、
は、i番目のサンプルの特性をコードするベクトルであり、及び
βは、重みのベクトルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
同定するステップが、前記スコアを所定の閾値と比較し、前記比較に基づいて前記同定を行うことを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
コンピュータ上で実行されると、以下のステップ:
サンプルにおける体細胞変異をカタログ化して、そのサンプルについての変異カタログを生成するステップ;
腫瘍から得られたDNAサンプルにおける塩基置換シグネチャ及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在を決定し、及びサンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップであって、前記塩基置換シグネチャ及び/又はインデルシグネチャの存在又は不在は、前記変異カタログから導き出される、ステップ;
存在すると決定された塩基置換シグネチャ及び/又はインデルシグネチャのそれぞれに帰属させることができる変異カタログにおける変異の数を決定するステップ;
サンプルにおける塩基置換シグネチャ及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルから、確率的スコアを生成するステップであって、確率的スコアを生成するステップが以下の下位ステップ:
シグネチャのそれぞれに帰属された変異の数を対数変換するステップ;
各シグネチャに対する変異の対数変換された数及びコピー数プロファイルを標準化するステップ;及び
前記標準化された値のそれぞれを、腫瘍に相同組換え(HR)欠損を引き起こすその値に関連するシグネチャ又はプロファイルの可能性を表す所定の重み付け因子によって重み付けするステップ;
を含む、ステップ;及び
前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、HR欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップ
を実施するコンピュータプログラムを格納した非一時的メモリを含有するコンピュータプログラム製品。
【請求項9】
コンピュータ上で実行されると、
次のステップの2つ以上、又は3つ以上を実施するステップ:
a)サンプルにおける体細胞変異をカタログ化して、そのサンプルについての変異カタログを生成するステップ;
b)サンプルにおける少なくとも1つの塩基置換シグネチャの存在又は不在を決定するステップであって、前記塩基置換シグネチャの存在又は不在は前記変異カタログから導きだされる、ステップ;
c)サンプルにおける少なくとも1つのインデルシグネチャの存在又は不在を決定するステップであって、前記インデルシグネチャの存在又は不在は前記変異カタログから導きだされる、ステップ;
d)サンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップ;及び
e)存在すると決定された塩基置換シグネチャ及び/又はインデルシグネチャのそれぞれに帰属させることができる変異カタログにおける変異の数を決定するステップ;
上記決定から、確率的スコアを生成するステップであって、確率的スコアを生成するステップが以下の下位ステップ:
シグネチャのそれぞれに帰属された変異の数を対数変換するステップ;
各シグネチャに対する変異の対数変換された数及びコピー数プロファイルを標準化するステップ;及び
前記標準化された値のそれぞれを、腫瘍に相同組換え(HR)欠損を引き起こすその値に関連するシグネチャ又はプロファイルの可能性を表す所定の重み付け因子によって重み付けするステップ;
を含む、ステップ;及び
前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、HR欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップ;
を実施するコンピュータプログラムを格納した非一時的メモリを含有するコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
決定ステップの実行が、そのサンプルにおける少なくとも1つの塩基置換シグネチャ、そのサンプルにおける少なくとも1つのインデルシグネチャの存在又は不在、及び、そのサンプルについてのコピー数プロファイルを決定することを含む、請求項8又は請求項9に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
プロセッサを有するコンピュータであって、該プロセッサが、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成されている、プロセッサを有するコンピュータ。
【請求項12】
がんを有する患者が、DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤に応答する可能性が高いかどうかを予測する方法であって、該方法は、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を用いて、患者における腫瘍から得られたサンプルを、相同組換え(HR)欠損である高い又は低い可能性を有すると特徴付けるステップを含み、サンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられる場合、患者は、DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤に応答する可能性が高い、方法。
【請求項13】
前記薬剤は、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤を用いた治療についてがんを有する患者を選択する方法であって、該方法は、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を用いて、患者における腫瘍から得られたサンプルを、相同組換え(HR)欠損である高い又は低い可能性を有すると特徴付けるステップ、及びサンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられる場合、DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤を用いた治療について患者を選択するステップを含む、方法。
【請求項15】
前記薬剤は、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAサンプルを特徴付ける方法に関する。本発明は、腫瘍由来のDNAサンプルに基づいてがんの性状を特徴付ける方法にのみではないが、特に該方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体細胞変異は、人体の全ての細胞に存在し、生涯を通じて発生する。それらは、複数の変異プロセス、例えば、DNA複製機構の固有のわずかな不正確性、外因性若しくは内因性変異原曝露、DNAの酵素的改変、並びに欠陥のあるDNA修復の結果である。異なる変異プロセスは、「変異シグネチャ」と呼ばれる変異タイプの独自の組み合わせを生成する。
【0003】
全ゲノム配列決定(WGS)は、塩基置換、挿入/欠失(インデル(indel))、再編成/構造変動(SV)、及びコピー数異常(CNA)を含む、ヒトがんゲノムにおける体細胞変異の全てのクラスの探索を可能にする。現在までに、複数の腫瘍タイプの約2,500個の全がんゲノムが世界中で報告されている。
【0004】
これらの膨大なデータセットは、集約された分析のための並外れた力を提供し、基礎的ながん生物学の我々の理解を促進するために、これらのデータを注意深く調べる努力が行われている(国際がんゲノムコンソーシアム全がん分析ワーキンググループ(International Cancer Genome Consortium Pan-Cancer Analysis Working Group)(https://dcc.icgc.org/pcawg))。既に、がんWGS研究は、患者間(腫瘍間の不均一性)及び個々のがん内(腫瘍内の不均一性)に存在する非常に多様な変異を明らかにしている。確かに、何より重要なメッセージは、がんが非常に複雑であるということである。似ている2つのがんはない。したがって、膨大な量のWGSデータは、やっかいであり、臨床的に有意であるにはあまりにも複雑に見える。
【0005】
最近、560個のWGS乳がんが報告された; これは、現在までの単一がんタイプのWGSがんの最大コレクションである。重要な生物学的洞察は、データの全体から、具体的には、選択優位性(「ドライバ」変異)、及びがん発達を介して正道からそれている生物学的現象を報告するパッセンジャ変異パターン(「変異シグネチャ」)を付与する推定上の原因変異から抽出された。このWGS乳がんデータセットの産物は、93個の遺伝子における1,628個の推定ドライバ変異、12個の塩基置換シグネチャ、2個のインデルシグネチャ、6個の再編成シグネチャ、及びコピー数プロファイルを含んだ。
【0006】
しかし、集約されたデータセットから抽出されたドライバ及び変異シグネチャ情報は、個々の患者について引き出され、個人化されたゲノムプロファイルを生成することができる。興味深いことに、2人の患者は体細胞変異の同じセットを共有しないが、統合されたゲノムプロファイルの全体論的考察は有益であり、臨床上の可能性を有し得る。
【0007】
1つの塩基置換シグネチャ(シグネチャ3)は、乳がんの小さなコホートにおいて、散発性乳がんからBRCA1/2ヌルを区別することが以前に示された。その後、シグネチャ3は、乳がん、膵臓がん、及び卵巣がんに存在することが判明した。BRCA1/2は、相同組換え(HR)二本鎖切断修復に関与し、これらの遺伝子の不活性化は、BRCA1の生殖細胞系列及び/若しくは体細胞変異又はプロモータ過剰メチル化によって達成され得る。
【0008】
BRCA1及び/又はBRCA2における生殖細胞系列の不活性化変異は、早期発症乳がん[1、2]、卵巣がん[2、3]、及び膵臓がん[4]のリスクの増加を引き起こすが、これらの2つの遺伝子における体細胞変異及びBRCA1プロモータ過剰メチル化もまた、これらのがんタイプの発達に関与している[5、6]。BRCA1及びBRCA2は、エラーのない相同性指向型二本鎖切断修復に関与している[7]。BRCA1及びBRCA2における欠損を有するがんは、結果的に、二本鎖切断修復の責任を負う、非相同末端結合機構によるエラープローン修復に起因して、多数の再編成及びインデルを示す[8、9]。
【0009】
欠陥のある二本鎖切断修復は、細胞の変異負荷を増加させ、こうして、新生物形質転換をもたらす体細胞変異を獲得する機会を増加させるが、それはまた、白金ベースの抗新生物薬などの薬剤へ曝露された場合に、細胞を、細胞周期停止及びその後のアポトーシスに対してより感受性にする[10、11]。この感受性は、BRCA1及び/又はBRCA2変異を含む乳がん、卵巣がん、及び膵臓がんの治療のための、標的化された毒性の低い治療戦略、特にポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤の開発にうまく活用されている[10、11]。これらの治療は、欠陥のあるBRCA1及びBRCA2機能を有する新生細胞が、二本鎖切断を効果的に修復する能力を欠くため、該細胞を強制的にアポトーシスさせる多くのDNA二本鎖切断を引き起こす。対照的に、正常細胞は、それらの修復機構が損なわれていないため、ほとんど影響を受けないままである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Ford, D. et al. Genetic heterogeneity and penetrance analysis of the BRCA1 and BRCA2 genes in breast cancer families. The Breast Cancer Linkage Consortium. American journal of human genetics 62, 676-689 (1998).
【文献】King, M. C., Marks, J. H., Mandell, J. B. & New York Breast Cancer Study, G. Breast and ovarian cancer risks due to inherited mutations in BRCA1 and BRCA2. Science 302, 643-646, doi:10.1126/science.1088759 (2003).
【文献】Risch, H. A. et al. Prevalence and penetrance of germline BRCA1 and BRCA2 mutations in a population series of 649 women with ovarian cancer. American journal of human genetics 68, 700-710, doi:10.1086/318787 (2001).
【文献】Greer, J. B. & Whitcomb, D. C. Role of BRCA1 and BRCA2 mutations in pancreatic cancer. Gut 56, 601-605, doi:10.1136/gut.2006.101220 (2007).
【文献】Alexandrov, L. B. et al. Signatures of mutational processes in human cancer. Nature 500, 415-421, doi:10.1038/nature12477 (2013).
【文献】Waddell, N. et al. Whole genomes redefine the mutational landscape of pancreatic cancer. Nature 518, 495-501, doi:10.1038/nature14169 (2015).
【文献】Merajver, S. D. et al. Somatic mutations in the BRCA1 gene in sporadic ovarian tumours. Nature genetics 9, 439-443, doi:10.1038/ng0495-439 (1995).
【文献】Miki, Y., Katagiri, T., Kasumi, F., Yoshimoto, T. & Nakamura, Y. Mutation analysis in the BRCA2 gene in primary breast cancers. Nature genetics 13, 245-247, doi:10.1038/ng0696-245 (1996).
【文献】Jackson, S. P. Sensing and repairing DNA double-strand breaks. Carcinogenesis 23, 687-696 (2002).
【文献】Nik-Zainal, S. et al. Mutational processes molding the genomes of 21 breast cancers. Cell 149, 979-993, doi:10.1016/j.cell.2012.04.024 (2012).
【文献】Walsh, T. et al. Spectrum of mutations in BRCA1, BRCA2, CHEK2, and TP53 in families at high risk of breast cancer. Jama 295, 1379-1388, doi:10.1001/jama.295.12.1379 (2006).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、がんがBRCA1/2欠損であるか、又は非欠損(proficient)であるかの同定は、治療の計画においてかなりの助けとなり得る。したがって、DNAサンプル、例えば腫瘍由来サンプルを分類する方法は、その腫瘍における可能性のあるがんタイプの診断にかなりの恩恵をもたらし、又は特定のタイプの療法について患者の選択を可能にし得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の記載
本発明の例示的な実施形態は、腫瘍から得られたDNAサンプルを特徴付ける方法であって、サンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及び挿入/欠失(インデル)シグネチャの複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップ; サンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの前記複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルから、確率的スコアを生成するステップ; 及び前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップを含む、方法を提供する。
【0013】
本発明のさらなる例示的な実施形態は、コンピュータ上で実行されると、腫瘍から得られたDNAサンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在を決定し、及びサンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップ; サンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルから、確率的スコアを生成するステップ; 及び前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップを行うコンピュータプログラムを格納した非一時的メモリを含有するコンピュータプログラム製品を提供する。
【0014】
本発明のさらなる例示的な実施形態は、プロセッサを有するコンピュータであって、該プロセッサは、腫瘍から得られたDNAサンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在を決定し、及びサンプルについてのコピー数プロファイルを決定し; サンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルから、確率的スコアを生成し; 及び前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するように構成されている、コンピュータを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、概略的な形で、本発明の一実施形態によるDNAサンプルを特徴付ける方法を示すフロー図である。
図2図2は、本発明の実施形態による方法を用いた、アントラサイクリンによる治療に対する9人の患者の応答、及び関連する予測を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本発明の第1の態様は、腫瘍由来のDNAサンプルを特徴付ける方法であって、サンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及び1つ以上のインデルシグネチャの複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップ; サンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの前記複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルから、確率的スコアを生成するステップ; 及び前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップを含む、方法を提供する。
【0017】
本発明の第2の態様は、腫瘍由来のDNAサンプルを特徴付ける方法であって、
次のステップの2つ以上を実施するステップ:
a)サンプルにおける少なくとも1つの塩基置換シグネチャの存在又は不在を決定するステップ
b)サンプルにおける少なくとも1つの再編成シグネチャの存在又は不在を決定するステップ
c)サンプルにおける少なくとも1つのインデルシグネチャの存在又は不在を決定するステップ; 及び
d)サンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップ;
上記決定から、確率的スコアを生成するステップ; 及び前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップ
を含む、方法を提供する。
【0018】
好ましくは、この態様の決定ステップの3つ以上、より好ましくは4つ全てが実施される。確率的スコア、及びその確率的スコアの生成における決定の重み付けは、どの決定ステップが実施されるかに応じて、並びに/又は実施される決定ステップの数及び/若しくは各決定ステップで使用されるシグネチャ若しくはプロファイルの数に応じて変化し得る。
【0019】
任意の組合せで上記の態様のいずれか及び全てに適用できる選択的な及び好ましい特性がここに記載される。
【0020】
塩基置換シグネチャが考慮される場合、好ましくは、塩基置換シグネチャは、塩基置換シグネチャ3又は塩基置換シグネチャ8のいずれか、又は両方を含む。
【0021】
再編成シグネチャが考慮される場合、好ましくは、複数の再編成シグネチャは、再編成シグネチャ5又は再編成シグネチャ3のいずれか、又は両方を含む。
【0022】
インデルシグネチャが考慮される場合、好ましくは、複数のインデルシグネチャは、マイクロホモロジー媒介インデルを含む。
【0023】
好ましくは、コピー数プロファイルは、考慮される場合、HRDコピー数ベースの指数を含む。
【0024】
本発明の特定の実施形態では、複数の塩基置換シグネチャ、複数の再編成シグネチャ、及び複数のインデルシグネチャは、塩基置換シグネチャ3、塩基置換シグネチャ8、再編成シグネチャ5、及び再編成シグネチャ3、並びにマイクロホモロジー媒介インデルからなる。乳がんからのWGSの広範な研究の追跡により、これらの5つの因子は、コピー数プロファイルと共に、腫瘍がHR欠損であるか否かに最大の影響を与えることが見出された。
【0025】
好ましくは、そのような実施形態では、確率的スコアは、以下の優先順位(最大が最初)で因子に重みを与える重み付きスコアである: マイクロホロジー媒介インデル、塩基置換シグネチャ3、再編成シグネチャ5、HRDコピー数ベースの指数、再編成シグネチャ3、及び塩基置換シグネチャ8。乳がんからのWGSの研究は、上記の順序が、これらの6つの因子の重要性を示すことを見出した。
【0026】
この方法は、前記サンプルにおける体細胞変異をカタログ化して、そのサンプルについての変異カタログを生成するステップをさらに含んでもよく、ここで、前記塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及び/又はインデルシグネチャの存在又は不在は、必要に応じて、前記変異カタログから導き出される。
【0027】
このようなカタログが得られている場合、この方法は、必要に応じて、存在すると決定された塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及び/又はインデルシグネチャのそれぞれに帰属させることのできる(起因する)、変異カタログにおける変異の数を決定するステップをさらに含んでもよい。
【0028】
確率的スコアの生成は、以下の下位ステップを含んでもよい: シグネチャのそれぞれに帰属された(起因する)変異の数を対数変換するステップ; 各シグネチャに対する変異の対数変換された数及びコピー数プロファイルを標準化するステップ; 及び前記標準化された値のそれぞれを、腫瘍にHR欠損を引き起こすその値に関連するシグネチャ又はプロファイルの可能性を表す所定の(予め決定された)重み付け因子によって重み付けするステップ。
【0029】
変異の数を対数変換し、特性の全てを標準化することによって、種々の因子の影響の間の正確なバランスを得ることができる。
【0030】
一実施形態では、確率的スコアは、
【数1】
として生成され、
式中、
Ciは、i番目のサンプルの状態をコードする変数であり、
β0は、切片の重みであり、
は、i番目のサンプルの特性をコードするベクトルであり、及び
βは、重みのベクトルである。
【0031】
特性が上記の6つの特性からなる実施形態では、重みのベクトルβは、以下の表1に示す通りであってもよく、又はこれらの重みの±10%、好ましくは±5%の変動内であってもよい:
【0032】
【表1】
【0033】
特性が上記の6つの特性からなる他の実施形態では、重みのベクトルβは、以下の表2に示す通りであってもよく、又はこれらの重みの±10%、好ましくは±5%の変動内であってもよい:
【0034】
【表2】
【0035】
特性が上記の6つの特性のサブセットからなる実施形態では、重みのベクトルβは、以下の表3に示す通りであってもよく、又はこれらの重みの±10%、好ましくは±5%の変動内であってもよい:
【0036】
【表3】
【0037】
同定するステップは、前記スコアを所定の閾値と比較し、前記比較に基づいて前記同定を行うことを含んでもよい。閾値は、臨床的パラメータに基づいて設定してもよい。例えば、重み付きスコアを閾値と比較してもよく、その比較から、DNAサンプルが採取された腫瘍をどのように治療するかに関する臨床的決定を行うことができる。
【0038】
本態様の方法は、上記の好ましい及び選択的な特性のいくつか若しくは全ての任意の組み合わせを含んでもよく、又はいずれも含まなくてもよい。
【0039】
本発明のさらなる態様は、その態様の好ましい及び選択的な特性のいくつか若しくは全てを含むか、又はいずれも含まない、上記態様の方法を実施するコンピュータシステム上で実行するためのコンピュータプログラムを含む。
【0040】
本発明のさらなる態様は、コンピュータ上で実行されると、腫瘍から得られたDNAサンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在を決定し、及びサンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップ; サンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルから、確率的スコアを生成するステップ; 及び前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップを実施するコンピュータプログラムを格納した非一時的メモリを含有するコンピュータプログラム製品を提供する。
【0041】
本発明のさらなる態様は、プロセッサを有するコンピュータであって、該プロセッサは、腫瘍から得られたDNAサンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在を決定し、及びサンプルについてのコピー数プロファイルを決定し; サンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルから、確率的スコアを生成し; 及び前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するように構成されている、コンピュータを提供する。
【0042】
上記の2つの態様のコンピュータプログラム及びプロセッサはまた、第1の態様に関連して上述した選択的な又は好ましいステップのいくつか又は全てを実施してもよい。
【0043】
本発明のさらなる態様は、がんを有する患者が、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンに応答する可能性が高いかどうかを予測する方法であって、該方法は、上記の第1の態様の選択的な又は好ましいステップのいくつか若しくは全てを含むか、又はいずれも含まない、該態様による方法を用いて、患者における腫瘍から得られたサンプルを、相同組換え(HR)欠損である高い又は低い可能性を有すると特徴付けるステップを含み、サンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられる場合、患者は、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンに応答する可能性が高い、方法を提供する。
【0044】
本発明のさらなる態様は、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンを用いた治療についてがんを有する患者を選択する方法であって、該方法は、上記の第1の態様の選択的な又は好ましいステップのいくつか若しくは全てを含むか、又はいずれも含まない、該態様による方法を用いて、患者における腫瘍から得られたサンプルを、相同組換え(HR)欠損である高い又は低い可能性を有すると特徴付けるステップ、及びサンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられる場合、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンを用いた治療について患者を選択するステップを含む、方法を提供する。
【0045】
本発明のさらなる態様は、DNAサンプルが得られた患者におけるがんの治療方法に使用するためのPARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンを提供し、DNAサンプルは、上記の第1の態様の選択的な又は好ましいステップのいくつか若しくは全てを含むか、又はいずれも含まない、該態様による方法によって、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられている。
【0046】
本発明のさらなる態様は、HR欠損である高い可能性を有する腫瘍を有すると決定された患者におけるがんを治療する方法であって、HR欠損である腫瘍の可能性は、上記の第1の態様の選択的な又は好ましいステップのいくつか若しくは全てを含むか、又はいずれも含まない、該態様による方法を用いて、腫瘍から得られたDNAサンプルを特徴付けることによって決定される、方法を提供する。
【0047】
本発明のさらなる態様は、患者におけるがんの治療方法に使用するためのPARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンであって、該方法は、(i)上記の第1の態様の選択的な又は好ましいステップのいくつか若しくは全てを含むか、又はいずれも含まない、該態様による方法を用いて、前記患者から得られたDNAサンプルが、HR欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを決定するステップ; 及び(ii)DNAサンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると決定される場合、患者にPARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンを投与するステップを含む、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンを提供する。
【0048】
本発明のさらなる態様は、がんを有する患者が、DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤に応答する可能性が高いかどうかを予測する方法であって、該方法は、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を用いて、患者における腫瘍から得られたサンプルを、相同組換え(HR)欠損である高い又は低い可能性を有すると特徴付けるステップを含み、サンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられる場合、患者は、DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤に応答する可能性が高い、方法を提供する。
【0049】
本発明のさらなる態様は、DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤を用いた治療についてがんを有する患者を選択する方法であって、該方法は、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を用いて、患者における腫瘍から得られたサンプルを、相同組換え(HR)欠損である高い又は低い可能性を有すると特徴付けるステップ、及びサンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられる場合、DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤を用いた治療について患者を選択するステップを含む、方法を提供する。
【0050】
本発明のさらなる態様は、DNAサンプルが得られた患者におけるがんの治療方法に使用するためのDNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤を提供し、DNAサンプルは、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられている。
【0051】
本発明のさらなる態様は、患者におけるがんの治療方法に使用するためのDNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤であって、該方法は、(i)請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を用いて、前記患者から得られたDNAサンプルが、HR欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを決定するステップ; 及び(ii)DNAサンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると決定される場合、患者にDNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤を投与するステップを含む、薬剤を提供する。
【0052】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下にさらに詳細に記載される。
【0053】
予測因子結果の使用
腫瘍サンプルがBRCA欠損であると予測されるがん患者は、相同組換えによるDNA二本鎖修復の障害を有し、二本鎖切断を生じる薬物、例えば、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンに感受性である可能性が高い。
【0054】
酵素ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP1)は、「ニック」としても知られている一本鎖切断を修復するために重要なタンパク質である。DNAが複製されるまで、このようなニックが未修復のままでいると、複製自体が、多数の二本鎖切断の形成を引き起こし得る。PARP1を阻害する薬物は、大量の二本鎖切断を引き起こす。エラーのない相同組換えによる二本鎖DNA切断修復の障害を伴う腫瘍において、PARP1の阻害により、これらの二本鎖切断を修復できなくなり、腫瘍細胞の死がもたらされる。本発明に使用するためのPARP阻害剤は、好ましくは、PARP1阻害剤である。PARP阻害剤の例としては、イニパリブ、タラゾパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、及びベリパリブが挙げられる。
【0055】
白金ベースの抗新生物薬は、がんを治療するために使用される化学療法剤である。それらは、単一付加物、鎖間架橋、鎖内架橋、又はDNAタンパク質架橋としてDNAの架橋を引き起こす白金の配位錯体である。大部分は、それらは、グアニンの隣接するN-7位に作用し、1,2鎖内架橋を形成する。得られた架橋は、がん細胞におけるDNA修復及び/又はDNA合成を阻害する。いくつかの一般的に使用される白金ベースの抗新生物薬としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、及びリポプラチンが挙げられる。
【0056】
アントラサイクリンは、様々ながんを治療するために使用される一般的に使用される化学療法剤である。一般的に、それらの作用機序は以下を含む: a)鎖の塩基対間にインターカレートすることによってDNA及びRNA合成を阻害し、したがって複製を防止すること; b)トポイソメラーゼIIの阻害によってDNA転写及び複製を妨げること。一般的に使用されるアントラサイクリンの例は、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ネモルビシン、ピクサントロン、サバルビシン、及びバルルビシンである。
【0057】
本発明はまた、上記の方法によってBRCA欠損と同定された腫瘍を有する患者におけるPARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンによるがんの治療にも関する。
【0058】
例えば、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンは、上記の方法によってBRCA欠損と同定された腫瘍を有する患者におけるがんの治療方法に使用するためのものであってもよい。治療の前に、この方法は、前記患者から得られたDNAサンプルに基づいて、腫瘍がBRCA非欠損であるか、又は欠損であるかを予測するステップを含んでもよい。好ましくは、これらは全ゲノムサンプルであり、本明細書に記載の予測ツールへの入力の基礎となる体細胞変異は、全ゲノム配列決定によって決定されてもよい。DNAサンプルは、全エクソームサンプルであってもよく、本明細書に記載の予測ツールへの入力の基礎となる体細胞変異は、全エクソーム配列決定によって決定されてもよい。
【0059】
DNAサンプルは、好ましくは、患者から得られた腫瘍組織及び正常組織の両方、例えば、患者からの血液サンプル、及び生検によって得られた腫瘍組織から得られる。腫瘍サンプルにおける体細胞変異は、標準的に、そのゲノム配列を正常組織のものと比較することによって検出される。
【0060】
治療方法は、BRCA欠損であると予測された腫瘍を有するがん患者に、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンを投与するステップを含む。任意の適切な投与経路を使用することができる。
【0061】
治療されるべき患者は、好ましくはヒト患者である。
【実施例
【0062】
BRCA1/2欠損対BRCA1/2非欠損のがんを区別するためのゲノムプロファイリング
野生型対立遺伝子の体細胞不活性化を伴うBRCA1又はBRCA2生殖細胞系列変異に関連する腫瘍は、より多くの全体の変異の数、過剰の塩基置換シグネチャ3若しくは8、インデルの接合点におけるマイクロホモロジーを有する過剰の大きな欠失(>3bp)、再編成シグネチャ5、並びにヘテロ接合性の広範な消失に関連するコピー数プロファイルを特徴とする顕著なゲノムプロファイルを有することが以前に報告されている。
【0063】
さらに、BRCA1ヌル腫瘍はまた、主に過剰の再編成シグネチャ3を有し、時には過剰の再編成シグネチャ1を有していた。対照的に、典型的なER陽性腫瘍は、より少ない変異、シグネチャ1及び5、少ないインデル、少ない再編成、並びに典型的なコピー数異常(1qゲイン(gain)及び16qロス(loss)を含む)を有していた。
【0064】
上記の560個の乳がんのWGS内で、本発明者らは、訓練セットとして274個の明らかなBRCA1/2非欠損の散発性腫瘍、並びにBRCA1若しくはBRCA2について遺伝的にヌルである77個の乳がんを同定し、BRCA性(BRCAness)の特性を定量的に定義しようとした。
【0065】
ラッソロジスティック回帰モデルを、訓練セット上の塩基置換、インデル、再編成、及びコピー数シグネチャを含む、BRCA性に寄与すると同定された全てのゲノムパラメータに対して使用した。
【0066】
データセット間の最大の分散を伝えるために、6つの識別パラメータを個別に見出した。減少する影響によってランク付けされ、これらは、マイクロホモロジー媒介インデル、塩基置換シグネチャ3、再編成シグネチャ5、HRD指数、再編成シグネチャ3、塩基置換シグネチャ8であった。
【0067】
したがって、本発明者らは、以下でより詳細に記載するように、各サンプルについてBRCA性をスコア付けするために、訓練セットで同定されたゲノムパラメータを使用して、柔軟性のある重み付けモデルを開発することができた。
【0068】
DNAサンプルがHR欠損であるか否かを決定する既存の方法(BRCA1/BRCA2遺伝子の配列決定、又はプロモータ過剰メチル化の探索)と比較して、このモデルは、はるかに多数の腫瘍をHR欠損として正確に同定することができた。調べた560個の全ゲノム内で、腫瘍におけるBRCA1/BRCA2タンパク質の完全な無効の証拠を有する23人の女性は、この研究に採用される前に、これらの遺伝子に遺伝性変異を有することが知られていた。本発明の実施形態によるモデルを用いて、本発明者らは、BRCA1/BRCA2における遺伝性変異を有するさらなる35人の女性を同定することができ、さらに59人の女性が、HR欠損腫瘍(これの以前の兆候はなかった)を有する高い可能性を有すると予測された。
【0069】
腫瘍サンプル由来DNAの、BRCA欠損又は非欠損としての予測
様々な塩基置換、再編成、及びインデルシグネチャ、並びにHRD指数の重みを開発及び決定するために、WGSからのDNAサンプルからの体細胞変異を、上記の方法(又は他の方法)によって処理して、置換、再編成、及びインデルの存在若しくは不在、及びしたがって、各サンプルにおけるこれらのシグネチャのそれぞれに起因する変異の数を決定した。HRDスコアと共に、これらの「特性」は、以下の実施形態に関連して記載される予測段階への入力である。
【0070】
この「訓練」段階を、利用可能な全てのパラメータ(すなわち、12個の全ての関連塩基置換シグネチャ、インデル両方のシグネチャ、及び6つ全ての再編成シグネチャ、並びにHRD指数)に適用した。560個のWGSデータセットに、以下に記載される対数変換及びラッソロジスティック回帰モデルを適用することによって、モデルは、有益であったパラメータを学習し、散発性及び非HR欠損であることが知られていた乳がんサンプルと比較した場合、腫瘍レベルでBRCA1/BRCA2ヌル(HR欠損)であることが知られていたサンプルに基づいてこれらのパラメータのそれぞれの重みを学習した。
【0071】
次の式に従って、入力のそれぞれ(特定の塩基置換、インデル、及び再編成シグネチャに起因する変異の数、並びにHRD指数)を対数変換した:
【数2】
【0072】
対数変換されたデータを、その特性についての全てのデータにわたって標準化した:
【数3】
【0073】
データを、ラッソアプローチを介して回帰収縮(regression shrinkage)及び選択モデルによって解析し、ここでは、全てのβの重みは、変異プロセス(この場合はHR欠損)の生物学的存在を反映しているため、正であるように制約されている。複数の変異プロセスが腫瘍に存在することができ、いくつかの場合には、特定のハイパーミューテータ(hypermutator)変異表現型が、特定のがんを支配し、他の変異プロセスの評価を覆い隠すようになる可能性がある。したがって、正の重みに制約されたモデルは、特定の患者においてどれほど名目上のものであっても、変異プロセスの検出を可能にする。
【0074】
ロジスティック回帰についてのパラメータは、訓練データの罰則付き尤度を最大化することによって得られる。罰則付き尤度関数は、以下:
【数4】
であり、
式中、
β0は、BRCA性のバックグラウンド対数オッズに等しい、切片であり、
βは、各特性に対応する1つの実数値を有する重みのベクトルであり、
pは、各サンプルを特徴付ける特性の数であり、
Nは、サンプルの数であり、
は、i番目のサンプルを特徴付ける特性のベクトルであり、
λは、重みの希薄性を促進する罰則(実数値)であり、
は、重みのベクトルのL1ノルム、すなわち、重みベクトルの全てのエントリの絶対値の合計である。
【0075】
分類子(classifier)について選択されたベータ重みの頑健性を、10倍ネストされた(ten-fold nested)クロスバリデーション技術を用いて試験した。分類子において導出され使用された最終係数及びパラメータは、以下の表4に示される:
【0076】
【表4】
【0077】
訓練に対する代替的なアプローチでは、上記のプロセスを、560個のWGSデータセットからのサンプルの異なる訓練セットに対して、及びBRCA1/2欠損(HR欠損)と同定された77個のサンプルの同じセットを用いて、しかしBRCA1/2非欠損(HR非欠損)サンプルのより洗練された選択を用いて行った。このデータセットから導出された、及び分類子において代替的に使用できる最終係数及びパラメータは、以下の表5に示される:
【0078】
【表5】
【0079】
因子のより小さな選択を用いた予測
本発明者らはまた、利用可能なパラメータの意図的に制限されたサブセットの、有用な予測を提供する能力を試験した。これを試験するために、上記の対数変換及びラッソロジスティック回帰モデルを、560個のWGSデータセットに適用したが、上記のパラメータの限定されたサブセットに関してのみ適用した。特に、関連する塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、インデルシグネチャ、及びHRD指数から選択されたパラメータの組み合わせ又は2つ以上のカテゴリかどうかを試験した。
【0080】
これらのサブセットのそれぞれから、モデルは、有益であったパラメータを学習し、散発性及び非HR欠損であることが知られていた乳がんサンプルと比較した場合、腫瘍レベルでBRCA1/BRCA2ヌル(HR欠損)であることが知られていたサンプルに基づいてこれらのパラメータのそれぞれの重みを学習した。
【0081】
この学習プロセスから、良好な予測能力(利用可能な全てのパラメータを使用して見出されるほど良好ではないが)が、塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、インデルシグネチャ、及びHRD指数のうちの2つ以上の組み合わせについて見出された。これらの組み合わせのそれぞれにおいて分類子において導出され使用された最終係数及びパラメータは、以下の表6に示される。
【0082】
【表6】
【0083】
単一の腫瘍からのサンプルが、BRCA非欠損であるか、又は欠損であるかの有用な予測因子としてのこれらの組み合わせの適用性を決定するために、特性及び重みの上記の組み合わせのそれぞれの感度を、サンプルがBRCA欠損であることを示す0.7の確率的スコアの閾値に基づいて、計算した。結果を以下の表7に示す。比較のために、表7はまた、上記の6つの特性の組み合わせの感度、及び単独で採用した場合の個々の特性のそれぞれの感度を示す。
【0084】
【表7】
【0085】
個々のサンプルからのBRCA非欠損又は欠損DNAの予測
本発明の実施形態では、単一の患者の腫瘍からのDNAサンプルが、BRCA非欠損であるか、又は欠損であるかの予測が行われる。これらの実施形態では、この予測は、そのDNAサンプルにおける塩基置換及び再編成シグネチャ、マイクロホモロジー媒介インデルの相対的な存在若しくは不在、並びにHRDコピー数ベースの指数をその入力とするコンピュータ実装方法又はツールによって行われる。
【0086】
この実施形態の開発では、コンピュータ実装方法又はツールは、新鮮凍結由来DNA、循環腫瘍DNA、又は患者からの疑わしい若しくは公知の腫瘍を代表するホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)DNAから得られた核酸材料の高カバレッジ又は低パス配列決定によって生成された体細胞変異のリストをその入力としてもよい。次いで、これらの体細胞変異を分析して、塩基置換及び再編成シグネチャ、マイクロホモロジー媒介インデルの相対的な存在若しくは不在、並びにHRDコピー数ベースの指数を決定することができる。
【0087】
塩基置換シグネチャの相対的な存在又は不在の決定は、[17]に記載されているような方法によって行うことができる。
【0088】
再編成シグネチャの相対的な存在又は不在の決定は、PCT特許出願第PCT/EP2017/060279号(本願と同日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような方法によって行うことができる。
【0089】
マイクロホモロジー媒介インデル(挿入及び欠失の全範囲のうち欠失のみがマイクロホモロジー媒介とこれまでに分類されるが、「マイクロホモロジー媒介欠失」とも呼ばれる)の存在又は不在の決定は、以下のように行うことができる。
【0090】
まず、インデルを、[18]及び[19]に記載されているように、cgpPindelを使用して同定する。
【0091】
各挿入/欠失(インデル)について、25bp以上の隣接配列を、Ensembl APIを使用して同定する。
【0092】
残りの分析では、欠失のみを考慮する。欠失モチーフのヌクレオチドの全てではなく最初の数個のヌクレオチドが、直近3'隣接配列の最初の数個のヌクレオチドと一致する場合、これは「マイクロホロジー媒介欠失」又は「マイクロホモロジー媒介インデル」と呼ばれる。
【0093】
HRDコピー数ベースの指数の決定は、HRD「スコア」とも呼ばれ、ヘテロ接合性、テロメア対立遺伝子不均衡、及び大規模状態遷移スコアの喪失の合計である。これらのそれぞれを決定するプロセスは、[14~16]に記載されている。HRDスコアは、0~50の範囲の整数である。
【0094】
この方法のステップを、図1に概略的に示す。最初に、DNAサンプルからの体細胞変異を場合によりロードし(S101)、次いで、上記の方法(又は他の方法)によって処理して、予測因子への入力を決定する(S102)。置換、再編成、及びインデルについてのシグネチャの存在又は不在が得られたら、サンプルにおけるこれらのシグネチャのそれぞれに起因する変異の数を決定する。HRDスコアと共に、これらの「特性」は、予測段階への入力である。
【0095】
予測因子は、これらの入力から重み付きスコアを生成し(S103)、これは以下のように計算される。
【0096】
次の式に従って、入力のそれぞれ(特定の塩基置換、インデル、及び再編成シグネチャに起因する変異の数、並びにHRD指数)を対数変換する:
【数5】
【0097】
対数変換されたデータを、上の表2に示されるその特性についての平均値及び標準偏差を用いて標準化する。
【数6】
【0098】
次いで、標準化されたスコアを使用して、サンプルがBRCA欠損である確率を決定する:
【数7】
式中、
Ciは、i番目のサンプルの状態をコードする変数であり、
β0は、BRCA性のバックグラウンド対数オッズに等しい、切片であり、
は、i番目のサンプルの特性をコードするベクトルであり、
βは、重みのベクトルである。
【0099】
次いで、このステップからの確率を使用して、腫瘍がBRCA欠損である可能性に基づいて採られ得る臨床的決定を知らせることができる。
【0100】
例えば、重み付きスコアを閾値と比較してもよく(S104)、その比較から、DNAサンプルが採取された腫瘍が、BRCA非欠損であるか、又は欠損であるかに関する臨床的決定を行うことができる(S105)。
【0101】
臨床的決定は、特定の治療コース、例えば、上に論じたPARP阻害剤を用いた治療又は白金療法に対する腫瘍の適合性を含み得る。
【0102】
臨床試験
上記の実施形態による方法の潜在的な臨床的有用性を調べるために、本方法を、大きな標本について術後に実施したのではなく、小さな針生検サンプルからのDNAサンプルについて実施した。
【0103】
18個のDNAサンプル(14個の針生検及び4個の手術後の腫瘍ブロック標本)を、ネオアジュバントアントラサイクリン+/-タキサンで治療したトリプルネガティブ腫瘍を有する9人の患者から得た[20]。PARP阻害剤とは異なる化合物ではあるが、アントラサイクリンに対する感受性が、BRCA1/BRCA2欠損を示す腫瘍について報告されている[21、22]。図2は、これらの9人の患者に対して上記の方法を適用した結果を示す。重複する治療前針生検サンプルが、サンプルの5つについて利用可能であった(治療前生検1及び2)。1人の患者(PD9770)は、多病巣性腫瘍を有していた。両方の生検において非常に低い腫瘍細胞性を有し、変異がほとんどない1人の患者を除外した(PD9773)。上記の方法から得られた確率的スコアを、各サンプルの下に提供する。
【0104】
4人の患者は、治療に対する完全な応答を示し、全てが、上記の方法を用いてBRCA欠損である高い確率を有していた。図2に示すように、2人は、生殖細胞系列BRCA1変異キャリアであることが確認され、2人は、散発性腫瘍であった。対照的に、残存疾患を示した5人の患者は、上記の方法を用いてBRCA欠損である低い確率を有していた。さらに、上記の方法は、患者毎に独立した生検で、及び患者毎に生検と手術後標本との間で、例外なく一貫して機能した。
【0105】
数は少ないが、これらの分析は、本発明の実施形態による方法が、患者の臨床経過の早い段階で、最も早ければ最初の生検で、治療感度を識別できることを示唆する。さらに、それらは、これらの方法が、生検/標本間で頑健であることを示唆する。乳がんの診断に一般的に適用された場合に、この予測因子がどのように機能するかを完全に理解するためには、より大きな臨床試験が明らかに必要である。
【0106】
さらなる情報
上記の実施形態のシステム及び方法は、記載された構造コンポーネント及びユーザインタラクションに加えて、コンピュータシステムで(特に、コンピュータハードウェア又はコンピュータソフトウェアで)実施されてもよい。
【0107】
用語「コンピュータシステム」は、上記の実施形態による方法を実施するための、又はシステムを具体化するためのハードウェア、ソフトウェア、及びデータ記憶デバイスを含む。例えば、コンピュータシステムは、中央処理装置(CPU)、入力手段、出力手段、及びデータ記憶装置を含んでもよい。好ましくは、コンピュータシステムは、(例えば、ビジネスプロセスの設計において)視覚的出力ディスプレイを提供するためのモニタを有する。データ記憶装置は、RAM、ディスクドライブ、又は他のコンピュータ可読媒体を含んでもよい。コンピュータシステムは、ネットワークによって接続され、そのネットワークを介して互いに通信することができる複数のコンピューティングデバイスを含んでもよい。
【0108】
上記の実施形態の方法は、コンピュータプログラムとして、又はコンピュータ上で実行されると、上記の方法を実施するように用意されたコンピュータプログラムを担持するコンピュータプログラム製品又はコンピュータ可読媒体として提供されてもよい。
【0109】
用語「コンピュータ可読媒体」は、限定されないが、コンピュータ又はコンピュータシステムによって直接読み取られ、アクセスされ得る任意の非一時的媒体を含む。媒体は、以下に限定されないが、磁気記憶媒体、例えば、フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体、及び磁気テープ; 光学記憶媒体、例えば、光学ディスク又はCD-ROM; 電気記憶媒体、例えば、RAM、ROM及びフラッシュメモリを含むメモリ; 並びに磁気/光学記憶媒体などの上記のハイブリッド及び組み合わせを含むことができる。
【0110】
参考文献
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2 King, M. C., Marks, J. H., Mandell, J. B. & New York Breast Cancer Study, G. Breast and ovarian cancer risks due to inherited mutations in BRCA1 and BRCA2. Science 302, 643-646, doi:10.1126/science.1088759 (2003).
3 Risch, H. A. et al. Prevalence and penetrance of germline BRCA1 and BRCA2 mutations in a population series of 649 women with ovarian cancer. American journal of human genetics 68, 700-710, doi:10.1086/318787 (2001).
4 Greer, J. B. & Whitcomb, D. C. Role of BRCA1 and BRCA2 mutations in pancreatic cancer. Gut 56, 601-605, doi:10.1136/gut.2006.101220 (2007).
5 Alexandrov, L. B. et al. Signatures of mutational processes in human cancer. Nature 500, 415-421, doi:10.1038/nature12477 (2013).
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8 Miki, Y., Katagiri, T., Kasumi, F., Yoshimoto, T. & Nakamura, Y. Mutation analysis in the BRCA2 gene in primary breast cancers. Nature genetics 13, 245-247, doi:10.1038/ng0696-245 (1996).
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10 Nik-Zainal, S. et al. Mutational processes molding the genomes of 21 breast cancers. Cell 149, 979-993, doi:10.1016/j.cell.2012.04.024 (2012).
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【0111】
上記の参考文献の全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] 腫瘍から得られたDNAサンプルを特徴付ける方法であって、
サンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップ;
塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの前記複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルから、確率的スコアを生成するステップ; 及び
前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップ
を含む、方法。
[2] 腫瘍由来のDNAサンプルを特徴付ける方法であって、
次のステップの2つ以上を実施するステップ:
a)サンプルにおける少なくとも1つの塩基置換シグネチャの存在又は不在を決定するステップ
b)サンプルにおける少なくとも1つの再編成シグネチャの存在又は不在を決定するステップ
c)サンプルにおける少なくとも1つのインデルシグネチャの存在又は不在を決定するステップ; 及び
d)サンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップ;
上記決定から、確率的スコアを生成するステップ; 及び
前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップ
を含む、方法。
[3] 3つ以上の決定ステップが実施される、実施形態1に記載の方法。
[4] 複数の塩基置換シグネチャが、塩基置換シグネチャ3及び塩基置換シグネチャ8を含む、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
[5] 複数の再編成シグネチャが、再編成シグネチャ5及び再編成シグネチャ3を含む、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
[6] 複数のインデルシグネチャが、マイクロホモロジー媒介インデルを含む、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
[7] コピー数プロファイルが、HRDコピー数ベースの指数を含む、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
[8] 複数の塩基置換シグネチャ、複数の再編成シグネチャ、及び複数のインデルシグネチャが、塩基置換シグネチャ3、塩基置換シグネチャ8、再編成シグネチャ5、及び再編成シグネチャ3、並びにマイクロホモロジー媒介インデルからなる、実施形態1に記載の方法。
[9] 確率的スコアが、マイクロホロジー媒介インデル、塩基置換シグネチャ3、再編成シグネチャ5、HRDコピー数ベースの指数、再編成シグネチャ3、及び塩基置換シグネチャ8の優先順位(最大が最初)で因子に重みを与える重み付きスコアである、実施形態8に記載の方法。
[10] 前記サンプルにおける体細胞変異をカタログ化して、そのサンプルについての変異カタログを生成するステップをさらに含み、前記塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及び/又はインデルシグネチャの存在又は不在は、前記変異カタログから導き出される、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
[11] 存在すると決定された塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及び/又はインデルシグネチャのそれぞれに帰属させることのできる、変異カタログにおける変異の数を決定するステップをさらに含む、実施形態10に記載の方法。
[12] 確率的スコアを生成するステップが、以下の下位ステップ:
シグネチャのそれぞれに帰属された変異の数を対数変換するステップ;
各シグネチャに対する変異の対数変換された数及びコピー数プロファイルを標準化するステップ; 及び
前記標準化された値のそれぞれを、腫瘍にHR欠損を引き起こすその値に関連するシグネチャ又はプロファイルの可能性を表す所定の重み付け因子によって重み付けするステップを含む、実施形態11に記載の方法。
[13] 確率的スコアが、
[数1]
として生成され、
式中、
C i は、i番目のサンプルの状態をコードする変数であり、
β 0 は、切片の重みであり、
は、i番目のサンプルの特性をコードするベクトルであり、及び
βは、重みのベクトルである、実施形態12に記載の方法。
[14] 同定するステップが、前記スコアを所定の閾値と比較し、前記比較に基づいて前記同定を行うことを含む、実施形態1~13のいずれかに記載の方法。
[15] コンピュータ上で実行されると、
腫瘍から得られたDNAサンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在を決定し、及びサンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップ;
サンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルから、確率的スコアを生成するステップ; 及び
前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップ
を実施するコンピュータプログラムを格納した非一時的メモリを含有するコンピュータプログラム製品。
[16] コンピュータ上で実行されると、
次のステップの2つ以上を実施するステップ:
a)サンプルにおける少なくとも1つの塩基置換シグネチャの存在又は不在を決定するステップ
b)サンプルにおける少なくとも1つの再編成シグネチャの存在又は不在を決定するステップ
c)サンプルにおける少なくとも1つのインデルシグネチャの存在又は不在を決定するステップ; 及び
d)サンプルについてのコピー数プロファイルを決定するステップ;
上記決定から、確率的スコアを生成するステップ; 及び
前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定するステップ
を実施するコンピュータプログラムを格納した非一時的メモリを含有するコンピュータプログラム製品。
[17] 3つ以上の決定ステップが実施される、実施形態16に記載のコンピュータプログラム製品。
[18] プロセッサを有するコンピュータであって、該プロセッサは、
腫瘍から得られたDNAサンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在を決定し、及びサンプルについてのコピー数プロファイルを決定し;
サンプルにおける塩基置換シグネチャ、再編成シグネチャ、及びインデルシグネチャの複数の存在又は不在、及びサンプルについてのコピー数プロファイルから、確率的スコアを生成し;
前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定する
ように構成されている、コンピュータ。
[19] プロセッサを有するコンピュータであって、該プロセッサは、
次のステップの2つ以上を実施し:
a)サンプルにおける少なくとも1つの塩基置換シグネチャの存在又は不在を決定する b)サンプルにおける少なくとも1つの再編成シグネチャの存在又は不在を決定する
c)サンプルにおける少なくとも1つのインデルシグネチャの存在又は不在を決定する; 及び
d)サンプルについてのコピー数プロファイルを決定する;
上記決定から、確率的スコアを生成し; 及び
前記確率的スコアに基づいて、前記サンプルが、相同組換え(HR)欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを同定する
ように構成されている、コンピュータ。
[20] がんを有する患者が、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンに応答する可能性が高いかどうかを予測する方法であって、該方法は、実施形態1~14のいずれかに記載の方法を用いて、患者における腫瘍から得られたサンプルを、相同組換え(HR)欠損である高い又は低い可能性を有すると特徴付けるステップを含み、サンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられる場合、患者は、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンに応答する可能性が高い、方法。
[21] PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンを用いた治療についてがんを有する患者を選択する方法であって、該方法は、実施形態1~14のいずれかに記載の方法を用いて、患者における腫瘍から得られたサンプルを、相同組換え(HR)欠損である高い又は低い可能性を有すると特徴付けるステップ、及びサンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられる場合、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンを用いた治療について患者を選択するステップを含む、方法。
[22] DNAサンプルが得られた患者におけるがんの治療方法に使用するためのPARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンであって、DNAサンプルは、実施形態1~14のいずれかに記載の方法によってHR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられている、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリン。
[23] HR欠損である高い可能性を有する腫瘍を有すると決定された患者におけるがんを治療する方法であって、HR欠損である腫瘍の可能性は、実施形態1~14のいずれかに記載の方法を用いて腫瘍から得られたDNAサンプルを特徴付けることによって決定される、方法。
[24] 患者におけるがんの治療方法に使用するためのPARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンであって、該方法は、
(i)実施形態1~14のいずれかに記載の方法を用いて、前記患者から得られたDNAサンプルが、HR欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを決定するステップ; 及び
(ii)DNAサンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると決定される場合、患者にPARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリンを投与するステップ
を含む、PARP阻害剤又は白金ベースの薬物又はアントラサイクリン。
[25] がんを有する患者が、DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤に応答する可能性が高いかどうかを予測する方法であって、該方法は、実施形態1~14のいずれかに記載の方法を用いて、患者における腫瘍から得られたサンプルを、相同組換え(HR)欠損である高い又は低い可能性を有すると特徴付けるステップを含み、サンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられる場合、患者は、DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤に応答する可能性が高い、方法。
[26] DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤を用いた治療についてがんを有する患者を選択する方法であって、該方法は、実施形態1~14のいずれかに記載の方法を用いて、患者における腫瘍から得られたサンプルを、相同組換え(HR)欠損である高い又は低い可能性を有すると特徴付けるステップ、及びサンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられる場合、DNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤を用いた治療について患者を選択するステップを含む、方法。
[27] DNAサンプルが得られた患者におけるがんの治療方法に使用するためのDNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤であって、該DNAサンプルは、実施形態1~14のいずれかに記載の方法によって、HR欠損である高い可能性を有すると特徴付けられたものである、薬剤。
[28] 患者におけるがんの治療方法に使用するためのDNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤であって、該方法は、
(i)実施形態1~14のいずれかに記載の方法を用いて、前記患者から得られたDNAサンプルが、HR欠損である高い可能性を有するか、又は低い可能性を有するかを決定するステップ; 及び
(ii)DNAサンプルが、HR欠損である高い可能性を有すると決定される場合、患者にDNA修復経路を標的とするか又はDNA損傷を引き起こす薬剤を投与するステップ
を含む、薬剤。

図1
図2