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特許7224186癌を処置するためのグルタミン酸調節剤と免疫療法の併用
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  • 特許-癌を処置するためのグルタミン酸調節剤と免疫療法の併用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】癌を処置するためのグルタミン酸調節剤と免疫療法の併用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/428 20060101AFI20230210BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230210BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
A61K31/428 ZMD
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K45/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018560528
(86)(22)【出願日】2017-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 US2017033690
(87)【国際公開番号】W WO2017201502
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】62/339,433
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517178900
【氏名又は名称】バイオヘイブン・ファーマシューティカル・ホールディング・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ブラディミア・コリック
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0045401(US,A1)
【文献】特表2018-508525(JP,A)
【文献】特表2019-516711(JP,A)
【文献】Journal of the Neurological Sciences,2005年,Vol.233,pp.113-115
【文献】岡山医学会雑誌,2015年,Vol.127,pp.63-65
【文献】Clin Cancer Res,2014年,Vol.20, No.20,pp.5290-5301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の処置を必要とする患者における癌の処置のための組合せ医薬であって、グルタミン酸調節剤および免疫療法抗癌剤を含む、組合せ医薬であり、
グルタミン酸調節剤が、下記式:
【化1】
[式中、R23は、H、CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CCH、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、CH(CH3)CH2CH3、CH2OH、CH2OCH2Ph、CH2CH2OCH2Ph、CH(OH)CH3、CH2Ph、CH2(シクロヘキシル)、CH2(4-OH-Ph)、(CH2)4NH2、(CH2)3NHC(NH2)NH、CH2(3-インドール)、CH2(5-イミダゾール)、CH2CO2H、CH2CH2CO2H、CH2CONH2、およびCH2CH2CONH2からなる群から選択される]
を有するもの、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、またはそれらの複合体であり、
免疫療法抗癌剤が、イピリムマブおよびニボルマブの組み合わせである、
組合せ医薬。
【請求項2】
グルタミン酸調節剤が、下記式:
【化2】
を有するものである、請求項1記載の組合せ医薬。
【請求項3】
グルタミン酸調節剤および免疫療法抗癌剤が、少なくとも2.0の60日目のマウス生存比(MSR60)を提供する能力を有する、請求項1記載の組合せ医薬。
【請求項4】
免疫療法抗癌剤で処置されている患者においてグルタミン酸を調節するための、グルタミン酸調節剤を含む医薬であって、該医薬が、免疫療法抗癌剤による処置に近い時期に患者においてグルタミン酸受容体またはグルタミン酸輸送体とグルタミン酸調節剤とが接触するように投与されるものであり、
グルタミン酸調節剤が、下記式:
【化3】
[式中、R23は、H、CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CCH、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、CH(CH3)CH2CH3、CH2OH、CH2OCH2Ph、CH2CH2OCH2Ph、CH(OH)CH3、CH2Ph、CH2(シクロヘキシル)、CH2(4-OH-Ph)、(CH2)4NH2、(CH2)3NHC(NH2)NH、CH2(3-インドール)、CH2(5-イミダゾール)、CH2CO2H、CH2CH2CO2H、CH2CONH2、およびCH2CH2CONH2からなる群から選択される]
を有するもの、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、またはそれらの複合体であり、
免疫療法抗癌剤が、イピリムマブおよびニボルマブの組み合わせである、
医薬。
【請求項5】
グルタミン酸受容体またはグルタミン酸輸送体とグルタミン酸調節剤との接触が、免疫療法抗癌剤による処置の前、同時または後に行われる、請求項記載の医薬。
【請求項6】
近い時期が、免疫療法抗癌剤による処置の1週間以内である、請求項または記載の医薬。
【請求項7】
グルタミン酸調節剤が、静脈内に、筋肉内に、非経口的に、舌下に、経鼻的に、または経口的に投与される、請求項4~6いずれか1項記載の医薬。
【請求項8】
グルタミン酸調節剤が、下記式:
【化4】
を有するものである、請求項4~7いずれか1項記載の医薬。
【請求項9】
免疫療法抗癌剤で処置されている癌を患っている患者を感作させるための、グルタミン酸調節剤を含む医薬であって、該医薬が、免疫療法抗癌剤による処置と近い時期に、該患者に投与されるものであり、
グルタミン酸調節剤が、下記式:
【化5】
[式中、R23は、H、CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CCH、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、CH(CH3)CH2CH3、CH2OH、CH2OCH2Ph、CH2CH2OCH2Ph、CH(OH)CH3、CH2Ph、CH2(シクロヘキシル)、CH2(4-OH-Ph)、(CH2)4NH2、(CH2)3NHC(NH2)NH、CH2(3-インドール)、CH2(5-イミダゾール)、CH2CO2H、CH2CH2CO2H、CH2CONH2、およびCH2CH2CONH2からなる群から選択される]
を有するもの、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、またはそれらの複合体であり、
免疫療法抗癌剤が、イピリムマブおよびニボルマブの組み合わせである、
医薬。
【請求項10】
感作が、抗腫瘍効果の増強を促進する、請求項記載の医薬。
【請求項11】
抗腫瘍効果の増強が、患者の客観的奏効率の増加または奏効期間の増大によって測定される、請求項または10記載の医薬。
【請求項12】
抗腫瘍効果の増強が、患者の全生存期間の増大を促進する、請求項9~11いずれか1項記載の医薬。
【請求項13】
全生存期間が、免疫療法抗癌剤の初回投与後、少なくとも約10か月間、少なくとも約11か月間、少なくとも約12か月間、少なくとも約13か月間、少なくとも約14か月間、少なくとも約15か月間、少なくとも約16か月間、少なくとも約17か月間、少なくとも約18か月間、少なくとも約19か月間、少なくとも約20か月間、少なくとも約21か月間、少なくとも約22か月間、少なくとも約23か月間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、または少なくとも約5年間の全生存期間に増大する、請求項9~12いずれか1項記載の医薬。
【請求項14】
全生存期間が、治療有効量の免疫療法抗癌剤により処置されたがグルタミン酸調節剤によって処置されなかった患者の全生存期間の少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2.0倍、少なくとも約3.0倍、または少なくとも約3.0倍である、請求項9~13いずれか1項記載の医薬。
【請求項15】
免疫療法抗癌剤で処置されている癌を患っている患者における応答を改善するための、グルタミン酸調節剤を含む医薬であって、
グルタミン酸調節剤が、下記式:
【化6】
[式中、R23は、H、CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CCH、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、CH(CH3)CH2CH3、CH2OH、CH2OCH2Ph、CH2CH2OCH2Ph、CH(OH)CH3、CH2Ph、CH2(シクロヘキシル)、CH2(4-OH-Ph)、(CH2)4NH2、(CH2)3NHC(NH2)NH、CH2(3-インドール)、CH2(5-イミダゾール)、CH2CO2H、CH2CH2CO2H、CH2CONH2、およびCH2CH2CONH2からなる群から選択される]
を有するもの、またはそのエナンチオマー、ジアステレオマー、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、またはそれらの複合体であり、
免疫療法抗癌剤が、イピリムマブおよびニボルマブの組み合わせである、
医薬。
【請求項16】
改善された応答が、全生存期間、クオリティ・オブ・ライフ、全奏効割合、奏効期間、無増悪生存期間、患者報告アウトカム、微小残存病変または免疫応答の1つ以上である、請求項15記載の医薬。
【請求項17】
さらに、抗LAG3抗体、抗CD137抗体、抗KIR抗体、抗TGFp抗体、抗IL-10抗体、抗B7-H4抗体、抗Fasリガンド抗体、抗CXCR4抗体、抗メソテリン抗体、抗CD20抗体、抗CD27抗体、抗GITR抗体、抗OX40抗体、またはそれらの組合せから選択される抗体による処置と併せて用いられる、請求項1~いずれか1項記載の組合せ医薬、または請求項4~16いずれか1項記載の医薬。
【請求項18】
さらに、放射線療法、化学療法、ワクチン、サイトカイン、チロシンキナーゼ阻害剤、抗VEGF阻害剤、IDO阻害剤、IDO1阻害剤、TGF-β阻害剤、またはそれらの組合せによる処置と併せて用いられる、請求項1~いずれか1項記載の組合せ医薬、または請求項4~16いずれか1項記載の医薬。
【請求項19】
癌が、黒色腫癌(melanoma cancer)、腎癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、骨癌、膵癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚もしくは眼内悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部分の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性もしくは急性白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を包含する)、幼児期固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管の癌、腎盂腎癌、中枢神経系(CNS)新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、環境誘発癌(アスベストによって誘発される癌を包含する)、およびそれらの組合せから選択される、請求項1~いずれか1項記載の組合せ医薬、請求項4~16いずれか1項記載の医薬、または請求項17もしくは18記載の組合せ医薬または医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年5月20日に出願された米国仮出願番号第62/339,433号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、癌の処置におけるグルタミン酸調節剤および免疫療法の抗癌剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
グルタミン酸は、正常な能機能におけるシグナル伝達の調節に起因する主要な興奮性神経伝達物質である。グルタミン酸シグナル伝達の研究は、主に中枢神経系(CNS)に重点を置いているが、他の研究は、末梢組織におけるそれらの機能的役割に光を当てている。例えば、非特許文献1および非特許文献2を参照。
【0004】
グルタミン酸は、細胞表面にあるグルタミン酸受容体に作用することによって、そのシグナル伝達能を発揮することができる。グルタミン酸受容体は、イオンチャネル型受容体(iGluR)または代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)として存在する。iGluRは、リガンド開口型イオンチャネルであり、N-メチル-d-アスパラギン酸(NMDA)受容体および非NMDA受容体[α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)受容体](iGluR1-4)およびカイニン酸(kainite)(KA)サブファミリー(iGluR5-7、KA1およびKA2)を包含する。mGluRは、グアノシン三リン酸(GTP)結合タンパク質(Gタンパク質)と共役することによってそれらのシグナルを媒介し、イノシトール1,4,5-三リン酸(IP3)、ジアシルグリセロール(DAG)、および環状アデノシン一リン酸(cAMP)などのセカンドメッセンジャーを刺激する、ドメイン受容体である。種々のmGluRサブタイプは、同定され、それらの配列相同性、薬理反応および細胞内セカンドメッセンジャーに従って分類されている。リガンドが結合すると、mGluR1およびmGluR5からなる受容体I型は、Gqを介してホスホリパーゼC(PLC)と共役し、IP3およびDAGの形成をもたらす。II型は、mGluR2およびmGluR3を含み、III型は、mGluR4、mGluR6、mGluR7およびmGluR8を含む。II型およびIII型の両方が、Gi/oを介してアデニルシクラーゼとネガティブに共役し、cAMP形成をもたらす。例えば、非特許文献3を参照。
【0005】
グルタミン酸はまた輸送され得る。グルタミン酸輸送体は、哺乳動物の中枢神経系からクローン化された。グリアにおいて主に2つが発現し[グリア型グルタミン酸・アスパラギン酸輸送体(GLAST)およびグリア型グルタミン酸輸送体(GLT)]、ニューロンにおいて3つが発現する[EAAC1、興奮性アミノ酸輸送体(EAAT)4およびEAAT5]。例えば、非特許文献4を参照。グルタミン酸輸送に関するさらなる情報は、文献に見ることができる。例えば、非特許文献5を参照。
【0006】
グルタミン酸は、また、代謝され得る。グルタミン酸代謝反応は、アクチベーターおよび阻害剤によって調節される酵素によって触媒され得る。例えば、N-アセチルグルタミン酸シンターゼ(NAGS)の存在下でのL-グルタミン酸からN-アセチル-L-グルタミン酸への変換は、L-アルギニンによって活性化され、コハク酸、補酵素A、N-アセチル-L-アスパラギン酸およびN-アセチル-L-グルタミン酸によって阻害される。例えば、非特許文献6を参照。同様に、グルタミンからグルタミン酸への変換は、グルタミナーゼ(GLS/GLS2)、ホスホリボシルピロリン酸アミドトランスフェラーゼ(PPAT)およびグルタミン-フルクトース-6-リン酸トランスアミナーゼ(GFPT1およびGFPT2)を含む酵素によって触媒され得る。例えば、非特許文献7および非特許文献8を参照。
【0007】
グルタミン酸の前駆体として機能するグルタミンは、栄養枯渇、酸化ストレスおよび腫瘍ストレスから体を保護することが知られている。例えば、非特許文献9を参照。グルタミナーゼの作用によりグルタミンから放出されるアンモニアが、グルタミノリシスとして知られている過程を介して癌細胞におけるオートファジーを調節することを示している報告がある。例えば、非特許文献10を参照。癌細胞において、グルタミノリシスは、脂肪酸、ヌクレオチドおよびアミノ酸の合成を介して、細胞増殖(cell growth and proliferation)にとって燃料の役割を果たすことができる。例えば、非特許文献11を参照。グルタミナーゼの発現は、転写因子c-Mycによって調節され得、そして次に、ヒト前立腺癌細胞の細胞増殖および細胞死を調節する。例えば、非特許文献12を参照。神経膠腫のような脳腫瘍において、神経膠腫細胞が過剰のグルタミン酸を細胞外空間に放出して、腫瘍関連てんかんまたは発作を引き起こし得ることが示されている。例えば、非特許文献13を参照。グルタミン酸放出が神経膠芽腫における細胞増殖、細胞浸潤および腫瘍壊死を促進することも示唆されている。例えば、非特許文献14を参照。グルタミン酸およびグルタミン代謝に関するさらなる情報を文献に見ることができる。例えば、非特許文献15および非特許文献16を参照。
【0008】
リルゾール(6-(トリフルオロメトキシ)ベンゾチアゾール-2-アミン)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の処置に使用されている医薬品である。最近、リルゾールは、他の臨床的有用性を有することが示されてきた。例えば、総用量100mg/日で1日2回リルゾールを経口投与することにより、気分障害、不安症、難治性うつ病、強迫性不安症などの精神神経症状および精神神経障害を緩和または処置することができる。例えば、非特許文献17を参照。また、リルゾールには抗癌効果がある可能性があるといういくつかの指摘がある。例えば、非特許文献18を参照。
【0009】
ヒト癌は、多数の遺伝的およびエピジェネティック変異を内部に持っており、免疫系によって認識できる可能性があるネオアンチゲンを産生する。例えば、非特許文献19を参照。TおよびBリンパ球からなる適応免疫系は、強力な抗癌能を有しており、多様な腫瘍抗原に応答する広い能力および精巧な特異性を有する。また、該免疫系は、相当な柔軟性および記憶要素を示している。適応免疫系のこれらの特性をうまく利用することにより、免疫療法は現行の癌処置様式の中で独特なものとなる。
【0010】
癌免疫療法は、活性化エフェクター細胞の養子移植、関連抗原に対する免疫化、またはサイトカインのような非特異的免疫賦活剤の提供による、抗腫瘍免疫応答を増強するアプローチを含む。癌免疫療法は、また、例えばプログラム死-1(PD-1)受容体を標的として阻害性PD-1/PD-1リガンド経路および細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)受容体を遮断する阻害剤を包含する、癌処置のための新規免疫療法アプローチを提供している免疫チェックポイント経路阻害剤を含む。
【0011】
PD-1は、活性化TおよびB細胞によって発現される重要な免疫チェックポイント受容体であり、免疫抑制を媒介する。PD-1は、CD28、CTLA-4、ICOS、PD-1およびBTLAを含むCD28ファミリーの受容体のメンバーである。PD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンド、プログラム死リガンド-1(PD-L1)およびプログラム死リガンド-2(PD-L2)が同定されており、これらは、抗原提示細胞および多くのヒト癌上に発現され、PD-1への結合によりT細胞活性化およびサイトカイン分泌をダウンレギュレートすることが示されている。PD-1/PD-L1相互作用の阻害は、前臨床モデルにおいて強力な抗腫瘍活性を媒介し(例えば、特許文献1および2を参照)、臨床試験において、癌処置のためのPD-1/PD-L1相互作用の抗体阻害剤の使用が研究されている。例えば、非特許文献20;非特許文献21を参照。
【0012】
ニボルマブ(商品名「オプジーボ(OPDIVOTM)」でBristol-Myers Squibb Company(Princeton, NJ, USA)によって販売されており、5C4、BMS-936558、MDX-1106またはONO-4538としても知られている)は、PD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との相互作用を選択的に予防することによって抗腫瘍T細胞機能のダウンレギュレーションを遮断する、完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害剤抗体である。例えば、特許文献1;非特許文献22を参照;比特許文献23も参照。ペンブロリズマブ(商品名「キートルーダ(KEYTRUDATM)」でMerck & Co., Inc(Whitehouse Station, NJ, USA)によって販売されており、ランブロリズマブおよびMK-3475としても知られている)は、ヒト細胞表面受容体PD-1に対するヒト化モノクローナルIgG4抗体である。ペンブロリズマブは、例えば、特許文献3および4に記載されている;非特許文献24も参照。
【0013】
イピリムマブ(商品名「ヤーボイ(YERVOYTM)」でBristol-Myers Squibb Company(Princeton, NJ, USA)によって販売されている)は、CTLA-4とそのB7リガンドとの結合を阻害してT細胞活性化を刺激し、進行メラノーマ患者の全生存期間(overall survival)を改善する、完全ヒトIgG1モノクローナル抗体である。イピリムマブは、例えば、特許文献5に記載されている;非特許文献25も参照。
【0014】
免疫標的抗癌剤による癌への他の治療アプローチの例としては、種々の受容体、ならびにペプチド、タンパク質、小分子、アジュバント、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、ワクチン、二特異的分子および細胞治療薬を標的とする他の抗体が挙げられる。See、例えば、非特許文献26および非特許文献27を参照。
【0015】
免疫療法による癌処置を通して患者が受けてきた利益にもかかわらず、改善が望まれている。例えば、例えば、全生存期間、クオリティ・オブ・ライフ、全奏効割合(overall response rate)、奏効期間(duration of response)、無増悪生存期間(progression free survival)、患者報告アウトカム(patient reported outcome)、微小残存病変(minimal residual disease)または免疫応答などの分野における患者による応答の改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第8,008,449号明細書
【文献】米国特許第7,943,743号明細書
【文献】米国特許第8,354,509号明細書
【文献】米国特許第8,900,587号明細書
【文献】米国特許第6,984,720号明細書
【非特許文献】
【0017】
【文献】Skerry T, Genever P, Glutamate signalling in non-neuronal tissues. Trends Pharmacol Sci 2001, 22:174-181
【文献】Frati C, Marchese C, Fisichella G, Copani A, Nasca MR, Storto M, Nicoletti F, Expression of functional mGlu5 metabotropic glutamate receptors in humanmelanocytes. J Cell Physiol 2000, 183:364-372
【文献】Teh J, Chen S, Metabotrobic glutamate receptors and cancerous growth, WIREs Membr Transp Signal 2012, 1:211-220. doi: 10.1002/wmts.21, 2011 WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim. Volume 1, March/April 2012
【文献】Seal, R, Amara, S, (1999) Excitatory amino acid transporters: a family in flux. Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 39: 431-456
【文献】Meldrum B, Glutamate as a Neurotransmitter in the Brain: Review of Physiology and Pathology, J. Nutr. 130:1007S-1015S, 2000
【文献】Shigesada K, Tatibana M, N-acetylglutamate synthetase from rat-liver mitochondria. Partial purification and catalytic properties. Eur J Biochem. 1978; 84:285-291. doi: 10.1111/j.14321033.1978. tb12167.x
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【発明の概要】
【0018】
本発明は、疾患、特に癌処置のための、グルタミン酸調節剤および免疫治療薬を有する併用免疫療法を対象とする。本発明のおかげで、現在、より有効な免疫腫瘍処置を患者に提供することが可能になり得る。患者は、例えば、全生存期間、クオリティ・オブ・ライフ、全奏効割合、奏効期間、無増悪生存期間、患者報告アウトカム、微小残存病変または免疫応答を含む1つ以上の分野において応答の改善を経験し得る。
【0019】
本発明の一の態様において、癌処置を必要とする患者における癌処置方法であって、該患者に治療有効量のグルタミン酸調節剤および免疫療法抗癌剤を投与することを含む方法が提供される。
【0020】
一の態様において、グルタミン酸調節剤は、(i)イオンチャネル型グルタミン酸受容体;(ii)代謝型グルタミン酸受容体;または(iii)グルタミン酸輸送体の調節、制御、減弱または増強を促進する薬剤である。一の態様において、グルタミン酸調節剤は、グルタミン酸放出を阻害する薬剤である。一の態様において、グルタミン酸調節剤は、グルタミン酸またはグルタミンの代謝を調節するか、制御するか、減弱するか、または増強する薬剤である。一の態様において、イオンチャネル型グルタミン酸受容体は、NMDA、AMPAおよびカイニン酸(kainite)から選択される。一の態様において、代謝型グルタミン酸受容体は、mGluR1およびmGluR5から選択される1型受容体;mGluR2およびmGluR3から選択されるII型受容体;またはmGluR4、mGluR6、mGluR7およびmGluR8から選択されるIII型受容体のうち1つ以上である。一の態様において、グルタミン酸輸送体は、グリアまたはニューロンにおいて発現する。
【0021】
本発明の一の態様において、グルタミン酸調節剤は、リルゾール、メマンチン、n-アセチルシステイン、アマンタジン、トピラマート、プレガバリン、ラモトリギン、ケタミン、s-ケタミン、AZD8108、AZD6765(ラニセミン)、BHV-4157(トリグリルゾール(trigriluzole))、デキストロメトルファン、AV-101、CERC-301、GLY-13、およびそれらの薬学的に許容される塩、プロドラッグまたは類似体から選択される。
【0022】
本発明の一の態様において、免疫療法抗癌剤は、抗体、ペプチド、タンパク質、小分子、アジュバント、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、ワクチン、二特異的分子および細胞治療薬から選択される。一の態様において、免疫療法抗癌剤は、チェックポイント阻害剤である。一の態様において、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1およびCTLA-4から選択されるチェックポイント受容体の阻害剤である。一の態様において、PD-1の阻害剤は、ニボルマブ、ペンブロリズマブおよびピディズマブ(pidilizumab)から選択される抗PD-1抗体である。一の態様において、PD-L1の阻害剤は、BMS-936559、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブおよびMDX-1105から選択される抗PD-L1抗体である。一の態様において、PD-L1の阻害剤は、ペプチドである。一の態様において、CTLA-4の阻害剤は、イピリムマブおよびトレメリムマブから選択される抗CTLA-4抗体である。
【0023】
本発明の一の態様において、グルタミン酸調節剤および免疫療法抗癌剤は、少なくとも2.0の60日目のマウス生存比(MSR60)を提供する能力を有する。
【0024】
本発明の一の態様において、免疫療法抗癌剤による処置を受けている患者におけるグルタミン酸の調節方法であって、免疫療法抗癌剤による処置に近い時期に、該患者におけるグルタミン酸受容体またはグルタミン酸輸送体とグルタミン酸調節剤とを接触させることを含む方法が提供される。一の態様において、グルタミン酸調節剤はリルゾールである。一の態様において、リルゾールは、静脈内に、筋肉内に、非経口的に、舌下に、経鼻的に、または経口的に投与される。一の態様において、リルゾールは、プロドラッグの形態で投与される。一の態様において、プロドラッグは、以下の式:
【化1】
を有する。
【0025】
一の態様において、グルタミン酸受容体またはグルタミン酸輸送体とグルタミン酸調節剤との接触は、免疫療法抗癌剤による処置の前、同時または後に行われる。一の態様において、近い時期とは、免疫療法抗癌剤による処置の1週間以内である。
【0026】
本発明の一の態様において、免疫療法抗癌剤による処置を受けている癌を患っている患者を感作させる方法であって、免疫療法抗癌剤による処置に近い時期に、該患者に治療有効量のグルタミン酸調節剤を投与することを含む方法が提供される。一の態様において、感作は、抗腫瘍効果の増強を促進する。一の態様において、抗腫瘍効果の増強は、患者の客観的奏効率の増加または奏効期間の増大によって測定される。
【0027】
一の態様において、抗腫瘍効果の増強は、患者の全生存期間の増加を促進する。一の態様において、該患者は、免疫療法抗癌剤の初回投与後、少なくとも約10か月間、少なくとも約11か月間、少なくとも約12か月間、少なくとも約13か月間、少なくとも約14か月間、少なくとも約15か月間、少なくとも約16か月間、少なくとも約17か月間、少なくとも約18か月間、少なくとも約19か月間、少なくとも約20か月間、少なくとも約21か月間、少なくとも約22か月間、少なくとも約23か月間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、または少なくとも約5年間の全生存期間を示す。一の態様において、全生存期間は、治療有効量の免疫療法抗癌剤により処置したがグルタミン酸調節剤によって処置しなかった患者の全生存期間の少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2.0倍、少なくとも約3.0倍、または少なくとも約3.0倍である。
【0028】
本発明の一の態様において、免疫療法抗癌剤による処置を受けている癌を患っている患者における応答を改善する方法であって、該改善を必要とする患者に有効量の免疫療法抗癌剤およびリルゾールまたはそのプロドラッグを投与することを含む方法が提供される。一の態様において、免疫療法抗癌剤は、チェックポイント阻害剤である。一の態様において、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1およびCTLA-4から選択されるチェックポイント受容体の阻害剤である。一の態様において、該患者は、加えて、抗LAG3抗体、抗CD137抗体、抗KIR抗体、抗TGFp抗体、抗IL-10抗体、抗B7-H4抗体、抗Fasリガンド抗体、抗CXCR4抗体、抗メソテリン抗体、抗CD20抗体、抗CD27抗体、抗GITR抗体、抗OX40抗体、またはそれらの組合せから選択される抗体による処置を受ける。一の態様において、該患者は、加えて、放射線療法、化学療法、ワクチン、サイトカイン、チロシンキナーゼ阻害剤、抗VEGF阻害剤、IDO阻害剤、IDO1阻害剤、TGF-β阻害剤、またはそれらの組合せによる処置を受ける。
【0029】
本発明の一の態様において、癌は、黒色腫癌(melanoma cancer)、腎癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、骨癌、膵癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚もしくは眼内悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部分の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性もしくは急性白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を包含する)、幼児期固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは尿管の癌、腎盂腎癌、CNS新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、環境誘発癌(アスベストによって誘発される癌を包含する)、およびそれらの組合せから選択される。
【0030】
一の態様において、改善された応答は、全生存期間、クオリティ・オブ・ライフ、全奏効割合、奏効期間、無増悪生存期間、患者報告アウトカム、微小残存病変または免疫応答のうちの1つ以上である。
【0031】
本発明の一の態様において、癌を患っている患者の処置のためのキットであって、
(a)免疫療法抗癌剤;および
(b)本発明の方法においてグルタミン酸調節剤と併せて免疫療法抗癌剤を投与することについての説明書
を含むキットが提供される。一の態様において、免疫療法抗癌剤は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディルズマブ(pidilzumab)、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、イピリムマブおよびトレメリムマブから選択される。
【0032】
本発明の一の態様において、癌を患っている患者の処置のためのキットであって、
(a)グルタミン酸調節剤;および
(b)本発明の方法において免疫療法抗癌剤と併せてグルタミン酸調節剤を投与することについての説明書
を含むキットが提供される。一の態様において、グルタミン酸調節剤は、リルゾールまたはそのプロドラッグである。
【0033】
本発明のこれらおよび他の態様および特徴は、図面および詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、リルゾールプロドラッグ(BHV-4157)、抗PD-1抗体を、単独で、および組み合わせて、対照と共に試験する神経膠芽腫動物モデルにおける生存率を示す実施例1に記載の試験の結果を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
以下の詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのを助けるために提供される。当業者は、本開示の趣旨または範囲から逸脱せずに、本明細書に記載の実施態様に改変および変更を加えることができる。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を説明するためだけのものであって、限定することを意図するものではない。
【0036】
本願で使用される場合、本明細書において他に明示的に記載されている場合を除き、以下の用語は、各々、下記の意味を有するものとする。本願を通して追加の定義が記載される。ある用語が本明細書において具体的に定義されていない場合、その用語は、本発明を説明する際のその使用に関連してその用語を適用する当業者によって当該技術分野において認識された意味を与えられる。
【0037】
冠詞「a」および「an」は、文脈上明白に他の意味が指示されていない限り、その冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「an element」とは、1つのelementまたは2つ以上のelementを意味する。
【0038】
用語「約」とは、値または組成がどのように測定または決定されるかについて部分的に依存する、当業者によって決定されるような特定の値または組成についての許容誤差範囲内の値または組成、すなわち、測定系の限界をいう。例えば、「約」とは、当該技術分野の慣例に従って1以上の標準偏差内を意味し得る。別法として、「約」とは、最大10%または20%の範囲(すなわち、±10%または±20%)を意味し得る。例えば、約3mgは、2.7mg~3.3mg(10%では)または2.4mg~3.6mg(20%では)の間の数字を包含することができる。さらにまた、特に生物学的系または過程に関しては、該用語は、値の最大1桁または最大5倍を意味し得る。特定の値または組成が本願および特許請求の範囲に記載されている場合、特に明記しない限り、「約」の意味は、この特定の値または組成の許容誤差範囲内であると想定されるべきである。
【0039】
用語「ALS」とは、筋萎縮性側索硬化症をいう。
【0040】
用語「投与すること」とは、当業者に知られている種々の方法および送達系のいずれかを使用する、治療剤を含む組成物の対象体への物理的導入をいう。例えば、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体)の投与経路は、静脈内投与経路、筋肉内投与経路、皮下投与経路、腹腔内投与経路、脊髄投与経路または他の非経口投与経路(例えば、注射または注入による)を包含することができる。本明細書で使用される語句「非経口投与」は、経腸投与および局所投与(通常、注射による)以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、被膜内(intracapsular)、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下(subcapsular)、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内(intrasternal)への注射および注入、ならびにインビボエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、免疫療法抗癌剤、例えば免疫チェックポイント阻害剤は、非-非経口経路によって投与され、いくつかの実施態様においては、経口投与される。グルタミン酸調節剤、例えばリルゾールの典型的な投与経路は、頬側、鼻内、眼部、経口、浸透圧式、非経口、直腸、舌下、局所、経皮、または膣を含むことができる。投与はまた、例えば、1回、複数回、および/または1回以上の長期間にわたり実施し得、治療有効量または治療量以下の用量であり得る。
【0041】
用語「抗抗原」抗体とは、抗原に特異的に結合する抗体をいうが、これに限定されない。例えば、抗PD-1抗体は、PD-1に特異的に結合し、抗CTLA-4抗体は、CTLA-4に特異的に結合する。
【0042】
抗体の「抗原結合部分」(「抗原結合性フラグメント」とも称される)とは、抗体全体によって結合される抗原に対する特異的結合能を保持する、抗体の1以上の断片をいうが、これに限定されない。
【0043】
用語「抗体」(Ab)とは、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質免疫グロブリンまたはその抗原結合部分をいうが、これに限定されない。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、VHと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメインCH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、VLと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメインCLを含む。VH領域およびVL領域は、さらに、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存されている領域で分断される相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に細分化され得る。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序で配置される3つのCDRおよび4つのFRを含む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む宿主組織または因子への結合を媒介することができる。
【0044】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含むがこれらに限定されない、一般的に知られているアイソタイプのいずれかに由来し得る。IgGサブクラスもまた当業者に周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を包含するがこれらに限定されない。「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラスまたはサブクラス(例えば、IgMまたはIgG1)をいうが、これに限定されない。特定の実施態様において、アイソタイプの1つ以上のアミノ酸は、エフェクター機能を変更するように変異し得る。用語「抗体」としては、例として、天然に存在するAbおよび天然に存在しないAbの両者;モノクローナルAbおよびポリクローナルAb;キメラAbおよびヒト化Ab;ヒトAbまたは非ヒトAb;完全合成Ab;ならびに一本鎖抗体が挙げられる。非ヒト抗体は、ヒトにおけるその免疫原性を低減させるために、組換え法によってヒト化され得る。明示されない場合、また、文脈上他の意味が示されていない限り、用語「抗体」は、上記のいずれかの免疫グロブリンの抗原結合性フラグメントまたは抗原結合部分も包含し、一価および二価フラグメントまたは部分、ならびに一本鎖抗体を包含する。
【0045】
用語「AUC」(曲線下面積)とは、対象体が吸収したか曝露された薬物の合計量をいう。一般に、AUCは、濃度がごくわずかになるまでの経時的な対象体中の薬物濃度のプロットにおける数学的方法から得られ得る。用語「AUC」(曲線下面積)はまた、(より早い時間間隔でAUCを増加させることになる舌下吸収の場合のように)特定の時間間隔での部分AUCをいうこともあり得る。
【0046】
用語「癌」とは、体内の異常細胞の未制御の増殖により特徴付けられる広範な群の種々の疾患をいう。未制御の細胞分裂および増殖は、近隣組織に浸潤し、リンパ系または血流を通って体の遠位部分に転移し得る悪性腫瘍の形成をもたらす。「癌」は、原発癌、転移癌および再発癌、ならびに前癌状態、すなわち、癌のリスク増加に関連する細胞の異常形態の状態を包含する。用語「癌」としては、以下の増殖性疾患が挙げられるが、これらに限定されない:急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、小児癌、AIDS関連癌、カポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、肛門癌、アストロサイトーマ、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、皮膚癌(非黒色腫)、胆管癌、膀胱癌、骨癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、骨肉腫および悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、胚芽腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、乳癌、気管支癌、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、カルチノイド腫瘍、消化器癌、心臓腫瘍、原発リンパ腫、子宮頚癌、胆管癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉腫およびセザリー症候群、非浸潤性乳管癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜癌、脳室上衣腫、食道癌、感覚神経芽腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌、眼球内黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、骨悪性線維性組織球腫および骨肉腫(Fibrous Histiocytoma of Bone, Malignant, and Osteosarcoma)、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、卵巣および精巣の胚細胞腫瘍(Germ Cell Tumor, Ovarian, Testicular)、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞(肝)癌、ランゲルハンス細胞組織球増殖症(Histiocytosis, Langerhans Cell)、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、カポジ肉腫、腎臓、腎細胞、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭癌、白血病(慢性リンパ性(CLL)、慢性骨髄性(CML)、ヘアリー細胞)、口唇および口腔癌(Lip and Oral Cavity Cancer)、肝癌(原発)、肺癌(非小細胞、小細胞)、リンパ腫(ホジキン、非ホジキン)、マクログロブリン血症(ワルデンストレーム)、男性乳癌、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明の転移性頚部扁平上皮癌(Metastatic Squamous Neck Cancer with Occult Primary)、NUT遺伝子関与正中管癌(Midline Tract Carcinoma Involving NUT Gene)、口部癌(Mouth Cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、骨髄性白血病(慢性(CML))(Myelogenous Leukemia, Chronic (CML))、骨髄性白血病(急性(AML)骨髄腫)(Myeloid Leukemia, Acute (AML) Myeloma)、多発性骨髄増殖性腫瘍(Multiple, Myeloproliferative Neoplasms)、鼻腔および副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌(Oral Cancer)、口腔癌(Oral Cavity Cancer)、口唇および中咽頭癌、骨肉腫および骨悪性線維性組織球腫(Osteosarcoma and Malignant Fibrous Histiocytoma of Bone)、卵巣癌、低悪性度腫瘍(Low Malignant Potential Tumor)、膵癌、膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)、乳頭腫、傍神経節腫、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、妊娠期乳癌(Pregnancy and Breast Cancer)、原発性CNSリンパ腫、原発腹膜癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞(腎)癌(腎盂および尿管)(Renal Cell (Kidney) Cancer, Renal Pelvis and Ureter)、移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、子宮横紋筋肉腫(Rhabdomyosarcoma, Uterine)、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明の転移性頚部扁平上皮癌(Squamous Neck Cancer with Occult Primary, Metastatic)、胃癌、T細胞リンパ腫、精巣癌、喉の癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行上皮癌(Transitional Cell Cancer of the Renal Pelvis and Ureter)、原発不明の尿管および腎盂移行上皮癌(Unknown Primary, Ureter and Renal Pelvis, Transitional Cell Cancer)、尿管癌、子宮癌、子宮内膜子宮肉腫(Endometrial, Uterine Sarcoma)、膣癌、外陰癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍。
【0047】
用語「キメラ抗体」とは、可変領域がマウス抗体に由来し、定常領域がヒト抗体に由来する抗体のような、可変領域がある種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体をいうが、これに限定されない。
【0048】
用語「Cmax」とは、初回用量の投与と二次用量(second dose)の投与との間の、対象体の血液、血清、特定のコンパートメントまたは試験領域における薬物の最大濃度をいう。用語Cmaxは、指定されている場合には、用量標準化比(dose normalized ratio)をいうこともできる。
【0049】
用語「細胞傷害性Tリンパ球抗原4」(CTLA-4)とは、CD28ファミリーに属している免疫阻害性受容体をいう。CTLA-4は、インビボにてT細胞上で排他的に発現し、2つのリガンド、CD80およびCD86(それぞれ、B7-1およびB7-2とも称される)と結合する。用語「CTLA-4」は、ヒトCTLA-4(hCTLA-4)、hCTLA-4の変種、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhCTLA-4と少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを含む。完全hCTLA-4配列は、GenBank Accession No. AAB59385の下に見ることができる。
【0050】
用語「投与間隔」とは、対象体に投与されている本明細書に記載の製剤の複数回投与の間に経過する時間量をいう。したがって、投与間隔は、範囲として示すことができる
【0051】
用語「投与回数」とは、一定時間に本明細書に記載の製剤の複数用量を投与する回数をいう。投与回数は、一定時間あたりの投与回数、例えば、週に1回または2週間に1回として示すことができる。
【0052】
用語「有効量」とは、意図された結果をもたらすのに十分な量をいう。有効量は、処置されている対象体および病態、苦痛の重篤度および投与方法に応じて変わり、当業者はルーチン的に決定することができる。
【0053】
用語「フラット用量(flat dose)」とは、患者の体重または体表面積(BSA)に関係なく患者に投与される用量をいう。したがって、フラット用量は、用量mg/kgとして提供されず、薬剤(例えば、抗PD-1抗体)の絶対用量として提供される。例えば、60kgのヒトおよび100kgのヒトは同じ用量の抗体(例えば、抗PD-1抗体240mg)を受ける。
【0054】
本発明の組成物に関する用語「固定用量(fixed dose)」とは、単一の組成物中に2つ異常の異なる治療剤がお互いに特定の(固定した)比で該組成物中に存在することをいう。いくつかの実施態様において、固定用量は、治療剤の重量(例えば、mg)に基づく。特定の実施態様において、固定用量は、2つの抗体の濃度(例えば、mg/ml)に基づく。いくつかの実施態様において、該比は、第1の抗体mg対第2の抗体mgが、少なくとも約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:15、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、約1:100、約1:120、約1:140、約1:160、約1:180、約1:200、約200:1、約180:1、約160:1、約140:1、約120:1、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約15:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、または約2:1である。例えば、第1の抗体および第2の抗体の比3:1は、バイアルが、第1の抗体約240mgおよび第2の抗体80mg、または第1の抗体約3mg/mlおよび第2の抗体1mg/mlを含有することができることを意味することができる。
【0055】
用語「ヒト抗体」(HuMAb)とは、フレームワーク領域およびCDR領域の両者がヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体をいうが、これに限定されない。さらにまた、抗体が定常領域を含有する場合、該定常領域もまたヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発により、またはインビボで体細胞変異により、導入される変異)を含むことができる。しかしながら、本明細書で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、マウスのような別の哺乳動物種の生殖系由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことは意図されない。用語「ヒト」抗体および「完全ヒト」抗体は、同義的に用いられる。
【0056】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト抗体のCDRドメインの外側にあるアミノ酸のうちいくつか、ほとんど、または全てがヒト免疫グロブリンに由来する対応アミノ酸と置き換えられた抗体をいうが、これに限定されない。抗体のヒト化形態の一に実施態様において、CDRドメインの外側にあるアミノ酸のうちいくつか、ほとんど、または全ては、ヒト免疫グロブリンからのアミノ酸と置き換えられているが、1つ以上のCDR領域内のいくつかの、ほとんどの、または全てのアミノ酸は変わらない。アミノ酸のわずかな付加、欠失、挿入、置換または修飾は、それらが該抗体の特定抗原に対する結合能を消失させない限り許容される。「ヒト化」抗体は、原抗体と同様の抗原特異性を保持する。
【0057】
用語「免疫療法抗癌剤」、「免疫療法剤」および「癌免疫療法剤」とは、腫瘍を直接攻撃しないが、代わりに、対象体の適応免疫または自然免疫によって免疫系を起動する薬剤をいい、このような薬剤としては、例えば、抗体、ペプチド、タンパク質、小分子、アジュバント、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、ワクチン、二特異的分子および細胞治療薬を含む広範囲の薬剤を包含する。免疫療法抗癌剤は、免疫系を標的として抗癌治療効果をもたらす薬剤を含む。このような標的および薬剤としては、以下のものが挙げられるがこれらに限定されない:抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA4または他の免疫療法もしくはチェックポイント阻害剤標的。
【0058】
用語「免疫療法」とは、免疫応答を誘導するか、増強するか、抑制するか、または免疫応答に他の変更を与えること含む方法による、疾患に苦しんでいる対象体、または疾患に罹患するリスクもしくは疾患の再発を受けるリスクを有する対象体の処置をいう。
【0059】
用語「免疫関連」応答パターンとは、癌特異的免疫応答を誘導することによって、または自然免疫応答を変更することによって、抗腫瘍効果を生じる免疫治療剤によって処置された癌患者においてしばしば観られる臨床応答パターンをいう。この応答パターンは、伝統的な化学療法剤の評価において病状悪化と分類され、薬物不全(drug failure)と同義である腫瘍量の初期増加または新たな病変の出現に続く有益な治療効果によって特徴付けられる。したがって、免疫治療剤の適正な評価には、標的疾患に対するこれらの薬剤の効果の長期モニタリングが必要とされ得る。
【0060】
用語「と併せて」(in combination with)および「と組み合わせて」(in conjunction with)とは、1つの処置様式を別の処置様式に加えて施すことをいう。それ故、「と併せて」または「と組み合わせて」とは、対象体に対して、1つの処置様式を、他の処置様式の前、間、または後に施すことをいう。
【0061】
「単離抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいうが、これに限定されない(例えば、PD-1に特異的に結合する単離抗体は、PD-1以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、PD-1と特異的に結合する単離抗体は、異なる種からのPD-1分子のような他の抗原との交差反応性を有し得る。さらにまた、単離抗体は、他の細胞性材料および/または化学物質を実質的に含まずにいられる。
【0062】
用語「モノクローナル抗体」(「mAb」)とは、単一の分子組成の抗体分子、すなわち、一次配列が本質的に同一であり、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す抗体分子の天然に存在しない調製物をいうが、これに限定されない。mAbは、単離抗体の一例である。mAbは、ハイブリドーマ、組換え体、トランスジェニック、または当業者に知られている他の技術によって生産され得る。
【0063】
「MSRx」とも称される用語「マウス生存比」とは、実施例1に記載の手順に従って、マウスに腫瘍を移植してから「x」日後の、(i)免疫療法抗癌剤+グルタミン酸調節剤によって処置されたマウスの生存率を(ii)免疫療法抗癌剤単独で処置したマウスの生存率で割ることによって算出した値をいう。かくして、MSR60とは、腫瘍移植から60日目のマウス生存比をいう。
【0064】
用語「薬学的に許容される塩」とは、化合物の溶出およびバイオアベイラビリティを向上させるために、患者の消化管の胃液または消化液への化合物の溶解性を増大させるために提供される、本明細書に記載の1つ以上の化合物またはプロドラッグの塩形態をいう。薬学的に許容される塩としては、該当する場合には、無機および有機の塩基および酸に由来するものが挙げられる。適切な塩としては、製薬技術分野において周知の多数の酸および塩基の中でも、カリウムおよびナトリウムのようなアルカリ金属、およびカルシウムおよびマグネシウムのようなアルカリ土類金属に由来するもの、ならびにアンモニウム塩が挙げられる。
【0065】
「プログラム死-1(PD-1)」とは、CD28ファミリーに属する免疫阻害性受容体をいう。PD-1は、インビボで以前に活性化されたT細胞の上で主に発現し、2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2と結合する。本明細書で使用される場合、用語「PD-1」は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1の変種、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhPD-1と少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを含む。完全hPD-1配列は、GenBank Accession No. U64863の下に見ることができる。
【0066】
プログラム死リガンド-1(PD-L1)」は、PD-1と結合した後にT細胞活性化およびサイトカイン分泌をダウンレギュレートするPD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドのうちの1つである(他方はPD-L2である)。本明細書で使用される場合、用語「PD-L1」は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1の変種、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhPD-L1と少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを含む。完全hPD-L1配列は、GenBank Accession No. Q9NZQ7の下に見ることができる。
【0067】
用語「プロドラッグ」とは、変化した形態またはより活性の低い形態で投与され得る薬物の前駆体をいう。プロドラッグは、加水分解または他の代謝経路によって生理学的環境において活性薬物形態に変換され得る。プロドラッグの議論は、T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems (1987) 14 of the A.C.S. Symposium Series、およびBioreversible Carriers in Drug Design, (1987) Edward B. Roche, ed., American Pharmaceutical Association and Pergamon Presssに記載されている。
【0068】
用語「舌下投与」とは、化学薬品または薬物を対象体の舌の下に置くことによって投与する経路をいう。
【0069】
用語「対象体」および「患者」とは、ヒトまたは非ヒト動物をいう。用語「非ヒト動物」としては、脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ならびにマウス、ラットおよびモルモットのような齧歯類が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、対象体はヒトである。用語「対象体」および「患者」は、本明細書において互換的に使用される。
【0070】
用語「治療量以下の用量」とは、疾患(例えば、癌)の処置のために単独で投与された場合の治療剤(例えば、抗体またはグルタミン酸調節剤)の通常の用量または典型的な用量よりも低い治療剤の用量をいう。本発明のいくつかの態様において、治療有効量は、免疫療法抗癌剤もしくはグルタミン酸調節剤のいずれか、または両方の治療量以下の用量を含むことができる。
【0071】
薬剤(本明細書において、しばしば、「薬物」とも称される)の「治療有効量」、「治療有効投与量」および「治療有効用量」という用語は、単独でまたは他の薬剤と併用した場合、対象体を疾患の発症から保護するか、または、疾患症状の重篤度の低下、無疾患症状期間の頻度および期間の増加、または疾患の苦痛(disease affliction)に起因する機能障害(impairment)もしくは能力障害(disability)の予防によって証明される疾患退行を促進する、薬剤の量をいう。薬剤の疾患退行促進能は、当業者に知られている種々の方法を使用して、例えば、臨床試験中のヒト対象体において、ヒトにおける効力を予測する動物モデル系において、またはインビトロアッセイにおいて該薬剤の活性をアッセイすることによって、評価され得る。特定の実施態様において、治療有効量は、全体的に癌の発生または再発を予防する。癌の発生または再発を「阻害すること」とは、癌の発生もしくは再発の可能性を低めること、または全体的に癌の発生もしくは再発を予防することを意味する。
【0072】
用語「Tmax」とは、対象体の血液、血清、特定のコンパートメントまたは試験領域において最大濃度(Cmax)に達した、薬物投与後の時または期間をいう。
【0073】
用語「処置」とは、対象体における状態または疾患の処置をいい、以下のことを包含し得る:(i)疾患にかかりやすい素因をもっているが該疾患を有するとまだ診断されていない対象体において該疾患または状態が生じることを予防すること;(ii)該疾患または状態を阻害すること、すなわち、その発生を抑止すること;該疾患または状態を緩和すること、すなわち、該状態の退行を引き起こすこと;または(iii)該疾患によって生じる状態、すなわち、疾患の症状を寛解することまたは緩和すること。処置は、他の標準的な治療と併せてまたは単独で使用され得る。対象体の処置または「治療」は、f症状、合併症もしくは状態、または疾患に関連する生化学的兆候の発症、進行、発生、重篤度または再発を、回復に向かわせるか、軽減するか、寛解するか、阻害するか、遅延させるか、または予防する目的で、対象体に対して行われるあらゆるタイプの介入または過程、または対象体への薬剤の投与も包含する。
【0074】
用語「体重ベース用量」とは、患者の体重に基づいて算出した患者に投与される用量をいう。例えば、体重60kgの患者が1mg/kgの抗CTLA-4抗体と併せて3mg/kgの抗PD-1抗体を必要とする場合、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体の3:1比固定用量製剤から直ちに適切な量の抗PD-1抗体(すなわち、180mg)および抗CTLA-4抗体(すなわち、60mg)を引き出すことができる。
【0075】
免疫チェックポイント阻害剤は、本発明に従って使用するのに好ましい。好ましい免疫チェックポイント阻害剤としては、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体および抗CTLA-4抗体、または所望の効力および安全性を提供するその組合せが挙げられる。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、またはその抗原結合部分は、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体、またはその一部分である。ヒト対象体を処置するための特定の実施態様において、抗体はヒト化抗体である。ヒト対象体を処置するための他の実施態様において、抗体はヒト抗体である。IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの抗体を使用することができる。
【0076】
本発明に従って使用するのに好適な好ましい免疫チェックポイント阻害剤は、高い特異性および親和性をもってPD-1と結合し、PD-L1の結合を遮断し、PD-1シグナル伝達経路の免疫抑制効果を阻害する抗PD-1抗体を含む。本明細書に記載の治療方法において、抗PD-1または抗PD-L1抗体は、リガンド結合の阻害および免疫系のアップレギュレートにおいて、それぞれPD-1またはPD-L1受容体と結合し、全抗体のものと同様の機能的特性を示す、抗原結合部分を包含する。一の実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。一の実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、米国特許第8,008,449号に記載されているヒト抗体17D8、2D3、4H1、4A11、7D3および5F4から選択される。さらに他の実施態様において、抗PD-1抗体は、MEDI0608(以前は、AMP-514)、AMP-224、またはBGB-A317またはピディリズマブ(CT-011)である。
【0077】
本発明に従って使用できる抗PD-1抗体としては、ヒトPD-1と特異的に結合し、ヒトPD-1との結合について別の抗体(例えば、ニボルマブ)と交差競合する、単離抗体も挙げられる。抗体の抗原との結合についての交差競合能は、これらの抗体が、抗原の同一エピトープ領域と結合し、他の交差競合抗体の、この特定エピトープ領域との結合を立体的に妨害することを示している。これらの交差競合抗体は、それらの、PD-1の同一エピトープ領域との結合により、このような抗体(例えば、ニボルマブ)と非常に類似した機能的特性を有することが期待される。交差競合抗体は、それらの、このような抗体(例えば、ニボルマブ)との交差競合能に基づいて、Biacore分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーなどの標準的なPD-1結合アッセイにおいて容易に同定することができる(例えば、国際公開第2013/173223号を参照)。ヒト対象体への投与について、これらの交差競合抗体は、キメラ抗体、またはヒト化抗体もしくはヒト抗体であり得る。このようなキメラmAb、ヒト化mAbまたはヒトmAbは、当該技術分野で周知の方法によって調製して単離することができる。
【0078】
本発明の方法で使用できる抗PD-1抗体としては、上記抗体の抗原結合部分も挙げられる。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって果たされ得る。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含される結合フラグメントの例としては、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結した2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントであるF(ab”)2フラグメント;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;ならびに(iv)抗体の1本のアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFvフラグメントが挙げられる。
【0079】
IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの抗体は、本発明に従って使用され得る。特定の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgG1またはIgG4アイソタイプのものである重鎖定常領域を含む。特定の他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分のIgG4重鎖定常領域の配列は、ヒンジ領域におけるセリン残基をIgG1アイソタイプ抗体において対応する位置に通常見ることができるプロリン残基に置き換えるS228P変異を含有する。ニボルマブに存在するこの変異は、野生型IgG4抗体に関連するFc受容体を活性化するための低い親和性を保持しながら、内在性IgG4抗体とのFabアーム交換を予防する。例えば、Wang et al. (2014)を参照。さらに他の実施態様において、抗体は、ヒトκまたはλ定常領域である軽鎖定常領域を含む。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、mAbまたはその抗原結合部分である。
【0080】
抗PD-1および抗PD-L1は、同一のシグナル伝達経路を標的としており、臨床試験においてRCCを包含する種々の癌において類似レベルの効力を示すことが示されている。例えば、Brahmer et al. (2012) N Engl J Med 366:2455-65; Topalian et al. (2012a) N Engl J Med 366:2443-54;国際公開第2013/173223号)を参照。したがって、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載の治療方法のいずれかにおいて、抗PD-1抗体の代わりに用いることができる。特定の実施態様において、抗PD-L1抗体はBMS-936559(以前は、12A4またはMDX-1105)である(例えば、米国特許第7,943,743号;国際公開第2013/173223号を参照)。他の実施態様において、抗PD-L1抗体はMPDL3280A(RG7446としても知られている)である。例えば、Herbst et al. (2013) J Clin Oncol 31(suppl):3000 and Abstract;米国特許第8,217,149号を参照。他の実施態様において、抗PD-L1抗体はMEDI4736である。例えば、Khleif (2013) In: Proceedings from the European Cancer Congress 2013; Sep. 27-Oct. 1, 2013; Amsterdam, The Netherlands. Abstract 802)を参照。いくつかの実施態様において、本発明で使用される、免疫チェックポイント阻害剤、例えば抗PD-1アンタゴニストはPD-1Fc融合タンパク質である。
【0081】
本発明に従って使用するのに好適な好ましい免疫チェックポイント阻害剤としては、抗CTLA-4抗体も挙げられる。抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4と結合して、CTLA-4とヒトB7受容体との相互作用を妨害することができる。CTLA-4とB7との相互作用は、CTLA-4受容体を有するT細胞の不活性化を導くシグナルを伝達するので、該相互作用の妨害は、そのようなT細胞の活性化を効果的に誘導、増強または延長し、それによって、免疫応答を誘導、増強または延長する。
【0082】
高い親和性をもってCTLA-4と特異的に結合するHuMAbは、米国特許第6,984,720号および第7,605,238号に記載されている。他のCTLA-4mAbは、例えば、米国特許第5,977,318号、第6,051,227号、第6,682,736号および第7,034,121号に記載されている。米国特許第6,984,720号および第7,605,238号に記載されているCTLA-4HuMAbは、以下の特徴の1つ以上を示すことが示されている:(a)Biacore分析によって決定した、少なくとも約107-1、または約109-1、または約1010-1から1011-1までまたはそれ以上の平衡結合定数(Kα)に反映される結合親和性をもつ、ヒトCTLA-4への特異的な結合;(b)少なくとも約103、約104、または約105-1-1の動態結合定数(ka);(c)少なくとも約103、約104、または約105-1-1の動態解離定数(kd);および(d)CTLA-4とB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)との結合の阻害。本発明における使用に好ましい抗CTLA-4抗体としては、ヒトCTLA-4と特異的に結合し、上記特徴のうち少なくとも1つ、少なくとも2つ、または一の実施態様においては少なくとも3つを示すmAbが挙げられる。一の実施態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。イピリムマブは、本明細書に記載の方法における費用に好適な抗CTLA-4抗体である。イピリムマブは、CTLA-4とそのB7リガンドとの結合を遮断して、T細胞活性化を刺激し、好ましくは癌(例えば、進行メラノーマ)患者において全生存期間(OS)を向上させる、完全ヒトIgG1モノクローナル抗体である。本発明の方法に有用な別の抗CTLA-4抗体は、トレメリムマブ(CP-675,206としても知られている)である。トレメリムマブは、ヒトIgG2モノクローナル抗CTLA-4抗体である。トレメリムマブは、例えば、国際公開第2012/122444号、米国特許出願公開第2012/263677号および国際公開第2007/113648A2号に記載されている。
【0083】
本発明の記載された方法に使用できる抗CTLA-4抗体としては、ヒトCTLA-4と特異的に結合し、ヒトCTLA-4との結合についてイピリムマブもしくはトレメリムマブと交差競合するかまたはイピリムマブまたはトレメリムマブと同一のヒトCTLA-4エピトープ領域と結合する単離抗体も挙げられる。特定の実施態様において、ヒトCTLA-4との結合についてイピリムマブもしくはトレメリムマブと交差競合するかまたはイピリムマブもしくはトレメリムマブと同一のヒトCTLA-4エピトープ領域と結合する抗体は、ヒトIgG1アイソタイプの重鎖を含む抗体である。ヒト対象体への投与について、これらの交差競合抗体は、キメラ抗体、またはヒト化抗体もしくはヒト抗体である。使用できる抗CTLA-4抗体としては、Fab、F(ab”)2、FdまたはFvフラグメントなどの上記抗体の抗原結合部分も挙げられる。
【0084】
リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)阻害剤もまた本発明に従って使用するのに好適であり得る。LAG-3は、ヒトLAG-3(hLAG-3)、hLAG-3の変種、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhLAG-3と少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを包含する。用語「ヒトLAG-3」とは、Genbank Accession No. NP 002277を有するヒトLAG-3の完全アミノ酸配列のようなヒト配列LAG-3をいう。用語「マウスLAG-3」とは、Genbank Accession No. NP_032505を有するマウスLAG-3の完全アミノ酸配列のようなマウス配列LAG-3をいう。LAG-3は、当該技術分野において、例えばCD223としても知られている。ヒトLAG-3配列は、例えば保存変異または非保存領域における変異を有することによりGenbank Accession No. NP_002277のヒトLAG-3とは異なり得、LAG-3は、Genbank Accession No. NP_002277のヒトLAG-3と実質的に同一の生物学的機能を有する。例えば、ヒトLAG-3の生物学的機能は、本開示の抗体によって特異的に結合するLAG-3の細胞外ドメインにおけるエピトープを有することであるか、または、ヒトLAG-3の生物学的機能は、MHCクラスII分子と結合することである。LAG-3と結合する抗体は、例えば、国際公開第2015/042246号ならびに米国特許出願公開第2014/0093511号および第2011/0150892号に記載されている。本発明に有用であり得る例示的なLAG-3抗体は、25F7(米国特許出願公開第2011/0150892号に記載されている)である。本発明に有用であり得るさらなる例示的なLAG-3抗体は、BMS-986016である。一の実施態様において、本発明に有用であり得る抗LAG-3抗体は、25F7またはBMS-986016と交差競合する。別の実施態様において、本発明に有用であり得る抗LAG-3抗体は、25F7またはBMS-986016と同一のエピトープと結合する。他の実施態様において、抗LAG-3抗体は、25F7またはBMS-986016の6個のCDRを含む。
【0085】
抗CD137を標的とする薬剤は、本発明に従って使用するのに好適であり得る。抗CD137抗体は、CD137発現免疫細胞と特異的に結合して該細胞を活性化し、腫瘍細胞に対する免疫応答、特に細胞傷害性T細胞応答を刺激する。CD137と結合する抗体は、米国特許出願公開第2005/0095244号ならびに米国特許第7,288,638号、第6,887,673号、第7,214,493号、第6,303,121号、第6,569,997号、第6,905,685号、第6,355,476号、第6,362,325号、第6,974,863号および第6,210,669号に記載されている。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第7,288,638号(20H4.9-IgG4[10C7またはBMS-663513])に記載されているウレルマブ(BMS-663513)である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第7,288,638号に記載されているBMS-663031(20H4.9-IgGl)である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第6,887,673号に記載されている4E9またはBMS-554271である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第7,214,493号、第6,303,121号、第6,569,997号、第6,905,685号または第6,355,476号に記載されている抗体である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第6,362,325号に記載されている1D8またはBMS-469492;3H3またはBMS-469497;または3E1である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第6,974,863号(例えば、53A2)に記載されている抗体である。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、米国特許第6,210,669号(例えば、1D8、3B8または3E1)に記載されている抗体である。いくつかの実施態様において、抗体は、PfizerのPF-05082566(PF-2566)である。他の実施態様において、本発明に有用な抗CD137抗体は、本明細書に記載の抗CD137抗体と交差競合する。いくつかの実施態様において、抗CD137抗体は、本明細書に記載の抗CD137抗体と同一のエピトープと結合する。
【0086】
KIRを標的とする薬剤は、本発明に従って使用するのに好適であり得る。用語「キラーIg様受容体」、「キラー細胞抑制受容体(Killer Inhibitory Receptor)」、または「KIR」とは、KIR遺伝子ファミリーの一員である遺伝子または該遺伝子から作成されたcDNAによってコードされたタンパク質またはポリペプチドをいう。KIR遺伝子およびKIR遺伝子産物の命名、ならびに例示的なKIRのGenbank登録番号を含むKIR遺伝子ファミリーの詳細なレビューは、BookshelfというNCBIウェブサイト(ncbi.nlm.nih.gov/booksでアクセス可能)で入手可能な、M. CarringtonおよびP. Normanによる「The KIR Gene Cluster」である。KIRという用語は、ヒトKIR(hKIR)、hKIRの変種、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhKIRと少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを包含する。ヒトKIR遺伝子およびcDNA、ならびにそれらのタンパク質産物の配列は、GenBankを含む公共のデータベースで入手可能である。ヒトKIRの非限定的で例示的GenBankエントリーは、以下のアクセス番号を有する:KIR2DL1:Genbankアクセス番号U24076、NM_014218、AAR16197またはL41267;KIR2DL2:Genbankアクセス番号U24075またはL76669;KIR2DL3:Genbankアクセス番号U24074またはL41268;KIR2DL4:Genbankアクセス番号X97229;KIR2DS1:Genbankアクセス番号X89892;KIR2DS2:Genbankアクセス番号L76667;KIR2DS3:Genbankアクセス番号NMO12312またはL76670(スプライスバリアント);KIR3DL1:Genbankアクセス番号L41269;およびKIR2DS4:Genbankアクセス番号AAR26325。KIRは、1~3個の細胞外ドメインを含み得、長い(すなわち、40個を超えるアミノ酸)または短い(すなわち、40個未満のアミノ酸)細胞質側末端を有し得る。KIRは、さらに、国際公開第2014/055648号に記載されている。抗KIR抗体の例は、国際公開第2014/055648号、国際公開第2005/003168号、国際公開第2005/009465号、国際公開第2006/072625号、国際公開第2006/072626号、国際公開第2007/042573号、国際公開第2008/084106号、国際公開第2010/065939号、国際公開第2012/071411号および国際公開第2012/160448号に記載されている。本発明に有用であり得る一の抗KIR抗体は、国際公開第2008/084106号に記載されているリリルマブ(BMS-986015、IPH2102、または1-7F9のS241P変種とも称される)である。本発明に有用であり得るさらなる抗KIR抗体は、国際公開第2006/003179号に記載されている1-7F9(IPH2101とも称される)である。
【0087】
GITRを標的とする薬剤は、本発明に従って使用するのに好適であり得る。用語「GITR」、「腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18」、「活性化誘導TNFRファミリー受容体」および「グルココルチコイド誘導性TFR関連タンパク質」とは全て、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの一員であるタンパク質をいう。GITRは、ヒトにおいてはTNFRSF18遺伝子によってコードされている。それは、細胞外ドメインにおける3つのシステインシュードリピートによって特徴付けられる241アミノ酸I型膜貫通タンパク質であり、Fasトリガー、デキサメタゾン処置、またはUV照射を包含する他のアポトーシスシグナルから細胞を保護しないがT細胞受容体誘導アポトーシスを特異的に保護する。例えば、Nocentini, G, et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci, USA 94:6216-622)を参照。GITRという用語は、ヒトGITR(hGITR)、hGITRの変種、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhGITRと少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを包含する。hGITRの3つのアイソフォームが同定されており、それらの全ては、そのC末端部分を除いて、同一の細胞外ドメインを共有する。変種1(アクセス番号NP_004186)は、241個のアミノ酸からなり、最長の転写物を表す。それは、変種2と比較して、フレームシフトを導く余分なコード化セグメントを含む。得られたタンパク質(アイソフォーム1)は、アイソフォーム2と比較して、明確で短いC末端を含む。変種2(アクセス番号NP683699)は、最長のタンパク質(アイソフォーム2)をコードしており、255個のアミノ酸からなり、可溶性である。変種3(アクセス番号NP683700)は、変種2と比較して、フレームシフトを導く余分なコード化セグメントを含む。得られたタンパク質(アイソフォーム3)は、アイソフォーム2と比較して、明確で短いC末端を含み、234個のアミノ酸からなる。GITR活性化は、エフェクターT細胞の増殖および機能、ならびに活性化制御性T細胞によって誘導された抑制の無効化を増大させる。加えて、GITR刺激は、NK細胞、抗原提示細胞およびB細胞などの他の免疫細胞の活性を増大させることにより、抗腫瘍免疫を促進する。抗GITR抗体の例は、国際公開第2015/031667、国際公開第2015/184,099号、国際公開第2015/026,684号、国際公開第2006/105021号、米国特許第7,812、135号および第8,388,967号、ならびに米国特許出願公開第2009/0136494号、第2014/0220002号、第2013/0183321号および第2014/0348841号に記載されている。一の実施態様において、本発明に有用であり得る抗GITR抗体は、TRX518である(例えば、Schaer et a/. Curr Opin Immunol. (2012) Apr; 24(2): 217-224、および国際公開第2006/105021号に記載されている)。別の実施態様において、本発明に有用であり得る抗GITR抗体は、MK4166またはMK1248、ならびに国際公開第2011/028683号および米国特許第8,709,424号に記載されており、例えば、配列番号104を含むVH鎖および配列番号105を含むVL鎖(ここで、該配列番号は、国際公開第2011/028683号または米国特許第8,709,424号からのものである)を含む、抗体である。特定の実施態様において、抗GITR抗体は、国際公開第2015/031667に記載されている抗GITR抗体、例えば、それぞれ国際公開第2015/031667号の配列番号31、71および63を含むVH CDR1~3、ならびに国際公開第2015/031667号の配列番号5、14および30を含むVL CDR1~3を含む抗体である。特定の実施態様において、抗GITR抗体は、国際公開第2015/184099号に記載されている抗GITR抗体であり、例えば、抗体Hum23\#\もしくはHum231#2、またはそのCDR、またはその誘導体(例えば、pabl967、pabl975またはpabl979)である。特定の実施態様において、抗GITR抗体は、日本特許出願公開第2008278814号、国際公開第09/009116号、国際公開第2013/039954号、米国特許出願公開第20140072566号、米国特許出願公開第20140072565号、米国特許出願公開第20140065152号、または国際公開第2015/026684号に記載されている抗GITR抗体であるか、またはINBRX-110(INHIBRx)、LKZ-145(Novartis)またはMEDI-1873(Medlmmune)である。特定の実施態様において、抗GITR抗体は、PCT/US2015/033991に記載されている抗GITR抗体(例えば、28F3、18E10または19D3の可変領域を含む抗体)である。
【0088】
本発明に従って使用するのに好適であり得る全ての癌免疫療法剤の網羅的なリストを提供しようとするものではないが、市販されているかまたは開発中のいくつかの薬剤を以下に列挙する。本発明に従って使用するのに好適であり得るPD-1抗体の例としては、例えば、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、AMP-224、MEDI0680、AMP-514およびREGN2810が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るPD-L1抗体の例としては、例えば、アテゾリズマブ、MDX-1105、オールバルマブ(aurvalumab)、アベルマブが挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るCTLA-4抗体の例としては、例えば、イピリムマブおよびトレメリムマブが挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るKIR抗体の例としては、例えば、リリルマブおよびNNC0141-0000-0100が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るLAG3抗体の例としては、例えば、BMS-986016、IMP321およびMK-4280が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るGITR抗体の例としては、例えば、TRX518、MK-4166およびMK-1248が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るOX40抗体の例としては、例えば、MEDI6383、MEDI6469およびMOXR0916が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適で有り得るIDO/IDO1剤の例としては、例えば、インドキシモド、INCB024360、F001287およびNGL919が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るTGF-β剤の例としては、例えば、ソタラセプト(sotaracept)、フレソリムマブ、トラベデルセン、ルカニックス(lucanix)、LY2157299およびACE-536が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るCD137抗体の例としては、例えば、ウレルマブおよびウトミルマブが挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るCD289/TLT9剤の例は、MGN1703である。本発明に従って使用するのに好適であり得るMUC-1/CD227剤の例としては、例えば、ONT-10およびASN-004が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るCCF2剤の例は、PF-04136309である。本発明に従って使用するのに好適であり得るCD27抗体の例としては、例えば、バルリルマブおよびAMG172が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るCD40抗体の例は、ダセツズマブである。本発明に従って使用するのに好適であり得るSLAMF7/CS1抗体の例は、エロツズマブである。本発明に従って使用するのに好適であり得るCD20剤の例は、DI-Leu16-IL2である。本発明に従って使用するのに好適であり得るCD70剤の例は、ARGX-110である。本発明に従って使用するのに好適であり得るIL-10剤の例としては、例えば、AM0010およびMK-1966が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るPSA剤の例、プロストバック(prostvac)である。本発明に従って使用するのに好適であり得るGP100抗体の例は、MDX-1379である。本発明に従って使用するのに好適であり得るSTAT3剤の例は、AZD9150である。本発明に従って使用するのに好適であり得るIL-12剤の例としては、例えば、ベルジメックス(veledimex)、INXN-2001、MSB0010360N、イムノパルス(immunopulse)、Gen-1およびINO-9012が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るIL-2剤の例としては、例えば、MSB0010445およびRG7813/RO6895882が挙げられる。本発明に従って使用するのに好適であり得るIL-33剤の例は、アラーミン(alarmin)IL-33である。本発明に従って使用するのに好適であり得るM-CSF剤の例は、PD-0360324である。本発明に従って使用するのに好適であり得るhTERT剤の例は、INO-1400である。本発明に従って使用するのに好適であり得るSMACミメティック剤の例はビリナパントである。本発明に従って使用するのに好適であり得るImmTACs剤の例はIMCgp100である。本発明に従って使用するのに好適であり得るCD-40剤の例は、RO7009789である。本発明に従って使用するのに好適であり得るCD39剤の例は、IPH52である。本発明に従って使用するのに好適であり得るCEACAM1剤の例は、MK-6018である。
【0089】
VEGFを標的とする薬剤は、本発明に従って使用するのに好適で有り得る。血管内皮増殖因子(「VEGF」)は、内皮細胞特異的マイトジェンおよび血管新生促進剤である。VEGFは、血管新生ならびに腫瘍増殖および発生において重要な役割を果たす。特定の実施態様において、抗VEGFアンタゴニストは、抗VEGF抗体、抗原結合分子またはそのフラグメントである。特定の実施態様において、抗VEGF抗体は、ベバシズマブ(米国特許第7,169,901号に記載されている)、またはラニビズマブ(米国特許第7,297,334号)、VGX-100(米国特許第7,423,125)、r84(米国特許第8,034,905)、アフリベルセプト(米国特許第5,952,199)、IMC-18F1(米国特許第7,972,596)、IMC-1C11(PCT/US2000/02180)、およびラムシルマブ(米国特許第7,498,414号)を包含する当該技術分野で知られている他のVEGF抗体である。
【0090】
ALKを標的とする薬剤は、本発明に従って使用するのに好適であり得る。ALK阻害剤は、EML4-ALK転座のような未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の変動を伴う腫瘍に対して作用する。本発明に従って有用であり得るALK阻害剤としては、WHO Drug Information, Vol. 28, No. 1, page 79 (2014)に記載されている構造を有するクリゾチニブ(Pfizer;ザーコリ(XalkoriTM)、PF-02341066);WHO Drug Information, Vol. 28, No. 1, page 79 (2014)に記載されている構造を有するセリチニブ(Novartis;ジカディア(ZykadiaTM)、LDK378);ならびにWHO Drug Information, Vol. 27, No. 3, page 70 (2013)に記載されている構造を有するアレクチニブ(Roche/Chugai;アレセンサ(AlecensaTM)、RO542802、CH542802)が挙げられる。ALK阻害剤のさらなる例としては、例えば、PF-06463922(Pfizer)、NVP-TAE684(Novartis)、AP26113(Ariad)、TSR-011(Tesaro)、X-396(Xcovery)、CEP-37440(Cephalon/Teva)およびRXDX-101(Igynta;NMS-E628、Nerviano)が挙げられる。例えば、Wang et al., Med. Chem. Commun. 2014, 5:1266を参照。クリゾチニブは、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)およびその発癌変種(すなわち、ALK融合事象および選択的発癌ALK変異)、ならびに肝細胞増殖因子受容体(HGFR、c-Met)、c-ros癌遺伝子1(ROS1)およびその発癌変種、Recepteur d'Origine Nantais(RON)受容体チロシンキナーゼ(RTK)、LTK、Trk(TrkA、TrkB、TrkC)、および/またはインスリン受容体の阻害剤である。ザーコリ(XALKORITM)(クリゾチニブ)は、米国において、腫瘍がFDA承認検査によって検出された未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性である転移性非小細胞肺癌(NSCLC)を有する患者の処置に対して承認されており、欧州、日本および他の管轄において、ALK陽性NSCLCの処置に対して承認されている。クリゾチニブおよびその薬学的に許容される塩は、国際公開第2006/021884号、国際公開第2006/021881号および国際公開第2007/066185号、ならびに米国特許第7,858,643号、第8,217,057号および第8,785,632号に記載されている。ALKまたはc-MET/HGFRによって媒介される癌のような異常細胞増殖の処置におけるクリゾチニブの使用は、国際公開第2007/06617号および米国特許第7,825,137号に記載されている。ROS媒介癌の処置におけるクリゾチニブの使用は、国際公開第2013/017989号に記載されている。
【0091】
他の抗体は、本発明に従って使用するのに好適であり得る。いくつかの実施態様において、これは、国際公開第2009/073533号に記載されているような抗TGFp抗体である。いくつかの実施態様において、該抗体は、国際公開第2009/073533号に記載されているような抗IL-10抗体である。他のいくつかの実施態様において、該抗体は、国際公開第2009/073533号に記載されているような抗B7-H4抗体である。特定の実施態様において、該抗体は、国際公開第2009/073533号に記載されているような抗Fasリガンド抗体である。いくつかの実施態様において、該抗体は、米国特許出願公開第2014/0322208号に記載されているような抗CXCR4抗体(例えば、ウロクプルマブ(BMS-936564))である。いくつかの実施態様において、該抗体は、米国特許第8,399,623号に記載されているような抗メソテリン抗体である。いくつかの実施態様において、該抗体は、抗HER2抗体、例えば、ハーセプチン(米国特許第5,821,337号)、トラスツズマブ、またはアドトラスツズマブエムタンシン(カドサイラ、例えば、国際公開第2001/000244号)である。実施態様において、該抗体は、抗CD27抗体である。実施態様において、抗CD-27抗体は、例えば米国特許第9,169,325号に記載されているような、ヒトCD27に対するアゴニストであるヒトIgGl抗体であるバルリルマブ(「CDX-1127」および「1F5」としても知られている)である。いくつかの実施態様において、該抗体は、抗CD73抗体である。特定の実施態様において、抗CD73抗体は、CD73.4.IgG2C219S.IgGlである。
【0092】
上記の抗体に加えて、本発明に従って使用するのに好適な他の免疫療法の抗癌剤は、ペプチド、タンパク質、小分子、アジュバント、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、ワクチン、二特異的分子および細胞治療薬を包含する様式から機能するものを包含する。
【0093】
本発明に従って、例えば、外科手術、放射線療法、他の薬剤による処置、抗体および化学療法を含む、さらなる腫瘍療法および薬剤を使用することができる。
【0094】
いくつかの実施態様において、免疫治療剤は、当該技術分野で知られている化学療法と併せて投与される。特定の実施態様において、化学療法は、白金ベースの化学療法である。白金ベースの化学療法剤は、白金の配位錯体である。いくつかの実施態様において、白金ベースの化学療法は、白金ダブレット化学療法である。一の実施態様において、化学療法は、特定の適応症に対して承認された用量で投与される。いくつかの実施態様において、白金ベース化学療法は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、リポプラチン、またはそれらの組合せである。特定の実施態様において、白金ベース化学療法は、当該技術分野で知られている他の白金ベース化学療法である。いくつかの実施態様において、該化学療法は、ヌクレオチド類似体ゲムシタビンである。実施態様において、該化学療法は、葉酸代謝拮抗剤である。実施態様において、葉酸代謝拮抗剤は、ペメトレキセドである。特定の実施態様において、該化学療法は、タキサンである。他の実施態様において、タキサンは、パクリタキセルである。他の実施態様において、該化学療法は、ヌクレオシド類似体である。一の実施態様において、ヌクレオシド類似体は、ゲムシタビンである。いくつかの実施態様において、該化学療法は、当該技術分野で知られている他の化学療法である。
【0095】
特定の実施態様において、免疫治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤と併せて投与される。特定の実施態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、それらの組合せ、または当該技術分野で知られている他のチロシンキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、上皮増殖因子受容体(EGFR)に対して作用する。特定の実施態様において、免疫治療剤は、ブルトンチロシンキナーゼ(Btk)阻害剤と併せて投与される。癌の処置に有用なBtk阻害剤としては、米国特許第8,940,725号(Yamamoto et al.)および米国特許第7,514,444号(Honigberg et al.)、米国特許出願公開第2015/0118222号(Levy et al.)および国際公開第2017/059224号において教示されているものが挙げられる。
【0096】
種々のタイプの癌に対する標準治療療法は当業者に周知である。例えば、米国における21の主要な癌センターの連合である全米総合がん情報ネットワーク(National Comprehensive Cancer Network)(NCCN)は、多種多様の癌に対する標準治療療法に対する詳細な最新情報を提供するNCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology(NCCN GUIDELINESTM)出版している(NCCN GUIDELINES, 2014を参照)。
【0097】
腫瘍の処置の例として、免疫療法剤の治療有効量は、未処置の対象体と比較して、特定の実施態様においては標準治療療法で処置された患者と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、または少なくとも約80%細胞増殖または腫瘍増殖を阻害することができる。本発明の他の実施態様において、腫瘍退縮は、少なくとも約20日間、少なくとも約40日間、または少なくとも約60日間、観察され、続くことができる。治療効果のこれらの最終的な測定にもかかわらず、免疫療法薬の評価は、また、「免疫関連」応答パターンを考慮に入れなければならない。
【0098】
本発明は、単剤療法として、または他の抗癌剤およびグルタミン酸調節剤と併せて、1つ以上の免疫療法抗癌剤、例えば、抗PD-1抗体を使用する癌処置方法を提供する。一の実施態様において、癌は、固形腫瘍である。別の実施態様において癌は、原発癌である。他の実施態様において、癌は、転移または再発癌である。いくつかの実施態様において、対象体は、ヒト患者である。特定の実施態様において、対象体は、化学療法未経験患者(例えば、以前にいかなる化学療法も受けたことがない患者)である。他の実施態様において、対象体は、別の癌治療(例えば、化学療法)を受けていたが、このような別の癌治療に抵抗性を示すかまたは反応しない。
【0099】
投与計画は、最適な所望の応答、例えば、最大治療応答および/または最小有害作用を提供するように調節される。特定の実施態様において、本発明の方法は、フラット用量または重量ベース用量で使用することができる。さらなる実施態様において、免疫治療剤は、フラット用量として投与される。さらなる実施態様において、免疫治療剤は、重量ベース用量として投与される。単剤療法としての、または別の抗癌剤と併せた抗PD-1抗体の投与について、用量は、約0.01~約20mg/kg、約0.1~約10mg/kg、約0.1~約5mg/kg、約1~約5mg/kg、約2~約5mg/kg、約7.5~約12.5mg/kg、もしくは約0.1~約30mg/kg対象体体重の範囲、または約80mg~少なくとも800mg、約80mg~約700mg、約80mg~約600mg、約80mg~約500mg、約80mg~約400mg、約80mg~約300mg、約100mg~約300mg、もしくは約200mg~約300mgの範囲であり得る。例えば、用量は、約0.1、約0.3、約1、約2、約3、約5もしくは約10mg/kg体重、または約0.3、約1、約2、約3もしくは約5mg/kg体重;または約80mg、約100mg、約160mg、約200mg、約240mg、約300mg、約320mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、もしくは約800mgであり得る。投与スケジュールは、典型的には、抗体の典型的な薬物動態特性に基づいて持続的な受容体占有(RO)をもたらす曝露を達成するように設計される。例示的な処置計画は、1週間に約1回、約2週間おきに1回、約3週間おきに1回、約4週間おきに1回、約1か月に1回、約3~6か月おきまたはそれ以上の間おきに約1回の投与を伴う。特定の実施態様において、ニボルマブのような抗PD-1抗体は、対象体に、約2週間おきに1回投与される。他の実施態様において、該抗体は、約3週間おきに1回投与される。用量およびスケジュールは、治療過程の間に変更することができる。例えば、抗PD-1単剤療法の投与スケジュールは、Abの以下の投与を含むことができる:(i)約6週サイクルの間に約2週間おきの投与;(ii)約4週間おきの投与を約6回、次いで、約3か月間おきの投与;(iii)約3週間おきの投与;(iv)約3~約10mg/kgで1回、次いで、約1mg/kgで約2~3週間おきの投与。IgG4抗体の半減期が典型的に2~3週間であることを考慮すると、本発明の抗PD-1抗体のための投与計画は、静脈内投与により、少なくとも約0.3~少なくとも約10mg/kg体重、少なくとも約1~少なくとも約5mg/kg体重、または少なくとも約1~少なくとも約3mg/kg体重、または少なくとも約80~少なくとも約800mgを含み、該抗体は、完全寛解までまたは進行性疾患が確認されるまで、最大約6週間または約12週間のサイクルで、約14~21日間おきに投与される。特定の実施態様において、抗PD-1単剤療法は、進行性疾患まで2週間おきに、進行性疾患または許容できない毒性まで数週間、3mg/kgで投与される。いくつかの実施態様において、抗体処置、または本明細書に記載の併用処置は、少なくとも約1か月間、少なくとも約3か月間、少なくとも約6か月間、少なくとも約9か月間、少なくとも約1年間、少なくとも約18か月間、少なくとも約24か月間、少なくとも約3年間、少なくとも約5年間、または少なくとも約10年間、続けられる。免疫療法抗癌剤についての用量の他の例は、約1~100mg/kg;例えば、1mg/kg、2mg、kg、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、50mg/kg、75mg/kg、100mg/kg、または中間値であり得る。
【0100】
他の抗癌剤と併用する場合、免疫治療剤の用量は、単剤療法用量と比較して少ない量であり得る。例えば、典型的な3mg/kgよりも低いが0.001mg/kg以上であるニボルマブの用量は、治療量以下の用量である。本明細書に記載の方法で使用される抗PD-1抗体の治療量以下の用量は、0.001mg/kgよりも多く、3mg/kgよりも少ない。いくつかの実施態様において、治療量以下の用量は、約0.001mg/kg~約1mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg、約0.1mg/kg~約1mg/kg、または約0.001mg/kg~約0.1mg/kg体重である。いくつかの実施態様において、治療量以下の用量は、少なくとも約0.001mg/kg、少なくとも約0.005mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg、少なくとも約0.05mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.5mg/kg、または少なくとも約1.0mg/kg体重である。いくつかの実施態様において、治療量以下のフラット用量は、2週間おきに約240mg未満、例えば、2週間おきに約160mgまたは約80mgである。ニボルマブ0.3mg/kg~10mg/kgを投与された15人の対象体の受容体占有データは、この用量範囲において、PD-1占有が用量非依存であるように思われることを示しているしない。全用量において、平均占有率は、85%(範囲、70%~97%)であり、平均プラトー占有は72%(範囲、59%~81%)であった(Brahmer et al. (2010) J Clin Oncol 28:3167-75)。いくつかの実施態様において、0.3mg/kgの投薬は、最大の生物学的活性をもたらすのに十分な曝露を可能にし得る。
【0101】
特定の実施態様において、免疫治療剤の用量は、医薬組成物における固定用量である。他の実施態様において、本発明の方法は、フラット用量(患者の体重に関係なく患者に投与される用量)で使用され得る。例えば、ニボルマブのフラット用量は、約240mgであり得る。例えば、ペンブロリズマブのフラット用量は、約200mgであり得る。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約240mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約360mgの用量で投与される。実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約480mgの用量で投与される。一の実施態様において、抗PD-1抗体または抗原結合フラグメント360mgは、3週間おきに1回投与される。別の実施態様において、抗PD-1抗体または抗原結合フラグメント480mgは、4週間おきに1回投与される。
【0102】
イピリムマブ(ヤーボイ(YERVOYTM))は、黒色腫の処置に対して、3mg/kgで、3週間おきに1回、4回の静脈内投与が承認されている。特定の実施態様において、抗CTLA-4抗体の用量は、体重に関係なく患者に投与されるフラット用量である。特定の実施態様において、抗CTLA-4抗体のフラット用量は約80mgである。
【0103】
かくして、いくつかの実施態様において、約3mg/kgは、抗PD-1抗体と併用するイピリムマブの再考用量であるが、特定の実施態様において、イピリムマブのような抗CTLA-4抗体は、抗PD-1抗体、例えばニボルマブと併せる場合、約2または3週間おきに、約0.3~約10mg/kg、約0.5~約10mg/kg、約0.5~約5mg/kg、または約1~約5mg/kg体重の範囲内で投与され得る。他の実施態様において、イピリムマブは、抗PD-1抗体とは異なる投与スケジュールで投与される。いくつかの実施態様において、イピリムマブは、約1週間おきに、約2週間おきに、約3週間おきに、約4週間おきに、約5週間おきに、約6週間おきに、約7週間おきに、約8週間おきに、約9週間おきに、約10週間おきに、約11週間おきに、約12週間おきに、または約15週間おきに投与される。
【0104】
3週間おきに典型的な3mg/kgよりも少ないが0.001mg/kg以上であるイピリムマブの用量は、治療量以下の用量である。本明細書における方法で使用される抗CTLA-4抗体の治療量以下の用量は、0.001mg/kgよりも多く、3mg/kgよりも少ない。いくつかの実施態様において、治療量以下の用量は、約0.001mg/kg~約1mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg、約0.1mg/kg~約1mg/kg、または約0.001mg/kg~約0.1mg/kg体重である。いくつかの実施態様において、治療量以下の用量は、少なくとも約0.001mg/kg、少なくとも約0.005mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg、少なくとも約0.05mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.5mg/kg、または少なくとも約1.0mg/kg体重である。特定の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体との組合せは、誘導期の対象体に、約2または3週間おきで、1、2、3または4回、静脈内投与される。特定の実施態様において、抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体の組合せは、誘導期に、約2週間おきまたは約3週間おきで、約4回、静脈内投与される。誘導期の後、処置の有効性が証明される限り、または管理不能な毒性または疾患進行が生じるまで、該対象体に、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体だけを、約2または3週間おきに、約0.1、約0.3、約1、約2、約3、約5もしくは約10mg/kg、または約40mg、約80mg、約100mg、約160mg、約200mg、約240mg、約320mgもしくは約400mgの用量で投与する維持期が続く。特定の実施態様において、ニボルマブが、維持期の間、約2週間おきに、約3mg/kg体重または約240mgの用量で投与される。
【0105】
特定の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の用量は、第2の抗癌剤を含む医薬組成物中の固定用量である。特定の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と、抗CTLA-4抗体とを、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の用量と抗CTLA-4抗体の用量が1:50、1:40、1:30、1:20、1:10。1:5、1:3、1:1、3:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、または50:1の比率で配合されている単一の組成物として製剤化する。
【0106】
免疫治療剤と他の抗癌剤との組合せのために、これらの薬剤は、典型的には、それらの承認された用量で投与される。臨床的有用性が観られる限り、または許容されない毒性または疾患進行が生じるまで、処置を続ける。それにもかかわらず、特定の実施態様において、投与されたこれらの抗癌剤用量は、承認された用量よりも著しく低く、すなわち、治療量以下の用量の該薬剤が免疫治療剤と併せて投与される。
【0107】
特定の実施態様において、免疫療法抗癌剤は、特定のタイプの癌の標準治療と併せて投与される。さらなる実施態様において、免疫療法抗癌剤は、5-FU、エトポシドおよび白金ベース薬物(例えば、カルボプラチンまたはシスプラチン)を包含する化学療法と併せて投与される。いくつかの実施態様において、免疫療法抗癌剤は、放射線療法の前、それと同時、またはその後に投与される。いくつかの実施態様において、免疫療法抗癌剤は、外科的切除の前、それと同時、またはその後に投与される。
【0108】
用量および回数は、対象体における免疫療法抗癌剤の半減期に応じて変わる。一般的に、ヒト抗体は、最長の半減期を示し、次にヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体が続く。用量および投与回数は、処置が予防的であるか治療的であるかに応じて変わり得る。予防的用途においては、典型的には、比較的低用量が比較的頻度の低い間隔(relatively infrequent intervals)で長期間にわたって投与される。終生、処置を受け続ける患者もいる。治療的用途においては、しばしば、疾患の進行が低下もしくは停止するまで、または患者が疾患の症状の部分的もしくは完全寛解を示すまで、比較的短い間隔での比較的高用量が必要となる。その後、患者に予防的計画を施すことができる。
【0109】
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の用量レベルは、患者に過度に有毒ではなく、特定の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変えることができる。選択された用量レベルは、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与の時、使用される特定化合物の排泄率、処置の期間、使用される特定の組成物と併用する他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、総体的な健康および前病歴、ならびに医療分野で周知の同様の因子を包含する種々の薬物動態因子に依存する。免疫治療剤を含む本発明の組成物は、当該技術分野で周知の種々の方法のうち1つ以上を使用して、1つ以上の投与経路により投与され得る。当業者には明らかであるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて変わる。
【0110】
本発明の免疫治療剤は、組成物、例えば、抗体および薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物中に構成することができる。本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される担体」としては、生理学的に適合性のあるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに同類のものが挙げられる。一の実施態様において、抗体を含有する組成物のための担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与または表皮投与(例えば、注射もしくは注入による)に適しているものであるが、ペプチド、タンパク質、小分子、アジュバント、サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルス、ワクチン、二特異的分子および細胞治療薬を含有する組成物のための担体は、非-非経口投与、例えば経口投与に適しているものである。本発明の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される塩、抗酸化剤、水性および非水性担体、および/またはアジュバント、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含むことができる。
【0111】
本発明に従って使用するのに好適なグルタミン酸調節剤としては、(a)(i)イオンチャネル型グルタミン酸受容体;(ii)代謝型グルタミン酸受容体;もしくは(iii)グルタミン酸輸送体の調節、制御、減弱または増強を促進する薬剤;(b)グルタミン酸放出を阻害する薬剤;または(c)グルタミン酸もしくはグルタミンの代謝を調節、制御、減弱または増強する薬剤が挙げられる。イオンチャネル型グルタミン酸受容体としては、NMDA、AMPAおよびカイニン酸(kainite)が挙げられる。代謝型グルタミン酸受容体としては、mGluR1およびmGluR5を包含する1型受容体;mGluR2およびmGluR3を包含するII型受容体;ならびにmGluR4、mGluR6、mGluR7およびmGluR8を包含するIII型受容体が挙げられる。グルタミン酸輸送体は、グリアまたはニューロンにおいて発現し得る。好ましくは、グルタミン酸調節剤は、(i)患者におけるグルタミン酸レベルを正常化するか;(ii)患者におけるグルタミン酸放出を減弱もしくは正常化するか;または(iii)患者におけるグルタミン酸の取り込みを正常化、亢進もしくは増強する。グルタミン酸調節剤は、グルタミン/グルタミン酸レベルの減少を引き起こし得るか、または興奮性アミノ酸輸送体の発現を増加させることによってグルタミン酸の循環を増加させて、増殖およびエフェクター機能の減少を減少させ得る。
【0112】
好ましいグルタミン酸調節剤は、リルゾール、メマンチン、n-アセチルシステイン、アマンタジン、トピラマート、プレガバリン、ラモトリギン、ケタミン、s-ケタミン、AZD8108、AZD6765(ラニセミン)、BHV-4157(トリグリルゾール(trigriluzole))、デキストロメトルファン、AV-101、CERC-301およびGLY-13、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、プロドラッグまたは類似体から選択される。リルゾールは、現在、リルテック(RILUTEK(登録商標))(リルゾール)として市販されており、Sanofi-Aventis(Bridgewater, NJ)から入手でき、以下に示される構造を有する。
【化2】
【0113】
用語「リルゾール」とは、他に注記がなければ、すべてのプロドラッグ、エナンチオマーまたは誘導体、およびその薬学的に許容される塩もいう。用語「リルゾールプロドラッグ」とは、修飾を有するリルゾールからの誘導体である化合物をいう。リルゾールプロドラッグとは、身体によってリルゾールの活性形態に代謝される化合物をいうこともできる。
【0114】
特定の好ましいリルゾールプロドラッグは、エナンチオマー、ジアステレオマー、水和物、溶媒和物、薬学的に許容される塩、ならびにそれらの複合体を包含する、構造:
【化3】
[式中、R23は、H、CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CCH、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、CH(CH3)CH2CH3、CH2OH、CH2OCH2Ph、CH2CH2OCH2Ph、CH(OH)CH3、CH2Ph、CH2(シクロヘキシル)、CH2(4-OH-Ph)、(CH2)4NH2、(CH2)3NHC(NH2)NH、CH2(3-インドール)、CH2(5-イミダゾール)、CH2CO2H、CH2CH2CO2H、CH2CONH2、およびCH2CH2CONH2からなる群から選択される]
を有する。当業者は、他のグルタミン酸調節剤から類似または変種プロドラッグが調製され得ることを認識する。このような薬剤は、本発明の組合せの一部として有用であり得る。
【0115】
一の特に好ましいグルタミン酸調節剤、トリグリルゾール(trigriluzole)は、以下の式:
【化4】
を有する。
【0116】
リルゾールのプロドラッグは、例えば、米国特許出願第14/385,551号、米国特許出願第14/410,647号、PCT出願第PCT/US2016/019773号およびPCT出願第PCT/US2016/019787号に記載されている。安定性および優れた特性を提供するリルゾールの舌下製剤は、PCT出願第PCT/US2015/061106号およびPCT出願第PCT/US2015/061114号に記載されている。
【0117】
グルタミン酸調節剤は、本明細書に詳述されている化合物の同位体標識形態として存在し得る。同位体標識化合物は、1つ以上の原子が選択された原子質量または質量数を有する原子に置き換わっていることを除いて、本明細書に記載される式によって表される構造を有する。本開示の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体、例えば、2H(重水素、D)、3H(トリチウム)、nC、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、CIおよびIが挙げられるがこれらに限定されない。本開示の種々の同位体標識化合物、例えば3H、13Cおよび14Cなどの放射性同位体を組み込んだものが提供される。このような同位体標識化合物は、薬物または物質の組織分布アッセイを包含する陽電子放射断層撮影(PET)または単一光子放射断層撮影(SPECT)などの、代謝研究、反応速度研究、検出または画像技術に、または対象体(例えば、ヒト)の放射線処置に有用であり得る。場合によっては、本明細書に記載の同位体標識化合物について、薬学的に許容される塩または水和物も提供される
【0118】
いくつかのバリエーションにおいて、本明細書に記載の化合物は、炭素原子に結合した1~「n」個の水素が重水素に置き換わるように変化し得る(ここで、「n]は、分子中の水素の数である)。このような化合物は、代謝に対する抵抗性の増大を示すことができ、かくして、対象体に投与した場合に該化合物の半減期を増大させるのに有用である。例えば、Foster, "Deuterium Isotope Effects in Studies of Drug Metabolism", Trends Pharmacol. Sci. 5(12):524-527 (1984)を参照。このような化合物は、当該技術分野で周知の手段によって、例えば、1つ以上の水素が重水素に置き換わった出発物質を用いることによって、合成される。
【0119】
本開示の重水素標識または置換治療化合物は、吸収・分布・代謝・排泄(ADME)に関して、改善された薬物代謝および薬物動態(DMPK)特性を有し得る。重水素のような重い同位体との置換は、大きな代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加、必要用量の減少および/または治療係数の向上により引き起こされる特定の治療上の利点を得ることができる。18F標識化合物は、PETまたはSPECT研究に有用であり得る。本開示の同位体標識化合物は、一般に、非同位体標識試薬の代わりに容易に入手できる同位体標識試薬を用いることによって、当業者に知られている手順を行うことによって調製することができる。この文脈における重水素は本明細書に記載の化合物における置換基とみなされると解される。
【0120】
このような重い同位体、具体的には重水素の濃度は、同位体濃縮因子によって定義され得る。本開示の化合物において、特定の同位体として具体的に指定されていない原子は、その原子の安定な同位体をあら和すことを意味する。特記しない限り、位置が「H」または「水素」として具体的に指定されている場合、該位置は、その天然存在度同位体組成で水素を有すると解される。
【0121】
本発明のグルタミン酸調節剤は、経口的に、舌下に、鼻内に、頬側的に、皮下的に、または他の好適な送達手段で、投与され得る。グルタミン酸調節剤は、体内で薬剤を放出するプロドラッグ、持続放出ビヒクル、遅延放出ビヒクル、または他の好適な送達形態であり得る。グルタミン酸調節剤および免疫療法剤は、同時にまたは逐次送達され得る。薬剤が逐次送達される場合、どちらかの薬剤が最初に投与されてよく、時差(separation of time)は、他の薬剤の投与を開始する前に1つの薬剤の投与を完全に終了するか、またはそれらはやがて混ざり合うことができることを含み得る。典型的には、グルタミン酸調節剤は、免疫療法抗癌剤の投与に最も近い時、例えば、免疫療法抗癌剤投与の前または後の1週間、1時間、1分間以内、または免疫療法抗癌剤と同時に投与される。
【0122】
投与される免疫治療剤とともに用いるためのグルタミン酸調節剤の用量は、処置される対象体の年齢、性別、体重および総体的な健康状態を含めて、処置される対象体に依存し得る。これに関して、投与のための薬剤の正確な量は、医師の判断に依存する。該症状および障害に関連する状態の処置または軽減において投与されるグルタミン酸調節剤および免疫治療剤の有効量を決定する際に、医師は、症状の重篤度または障害の進行を含む臨床的因子を評価し得る。いくつかの状態において、グルタミン酸調節剤または免疫治療剤の急速な吸収が望まれ得る。該処置の有効量は、処置される対象体および病態、苦痛の重篤度、ならびに投与方法に応じて変わり、当業者によってルーチン的に決定され得る。
【0123】
癌または症状を処置するための製剤の一部としてのグルタミン酸調節剤は、約400mg/日以下、約300mg/日以下、約150mg/日以下、約100mg/日以下、約70mg/日以下、約60mg/日以下、約50mg/日以下、約42.5mg/日以下、約37.5mg/日以下、約35mg/日以下、約20mg/日以下、約17.5mg/日以下、約15mg/日以下、約10mg/日以下、約5mg/日以下、または約1mg/日以下で投与され得る。
【0124】
グルタミン酸調節剤を含む本発明の医薬組成物は、典型的には、他の薬学的に許容される担体および/または賦形剤、例えば、結合剤、滑沢剤、希釈剤、コーティング剤、崩壊剤、障壁層成分、流動促進剤、着色剤、溶解性増強剤、ゲル化剤、充填剤、タンパク質、コファクター、乳化剤、可溶化剤、懸濁化剤およびそれらの混合物も含む。当業者は、他のどのような薬学的に許容される担体および/または賦形剤が本発明の製剤に含まれ得るか分かる。賦形剤の選択は、組成物の特徴および製剤中の他の薬学的に活性な化合物の性質に依存する。適切な賦形剤は、当業者に知られており(Handbook of Pharmaceutical Excipients, fifth edition, 2005 edited by Rowe et al., McGraw Hillを参照)、予想外の特性を有する新規舌下製剤を得るために用いられる。
【0125】
本発明の医薬組成物の調製に使用され得る薬学的に許容される担体の例としては、充填剤、例えば、ラクトース、シュークロース、マンニトールまたはソルビトールを包含する糖;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニル-ピロリドン(PVP)、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、乳化剤、等張生理食塩水、パイロジェンフリー水およびそれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。所望により、崩壊剤も同様に併せることができ、例示的な崩壊剤としては、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩を挙げることができるが、これらに限定されない。組成物は、調剤方法のいずれかによって調製され得るが、すべて方法は、1つ以上の上記化学薬剤を1つ以上の必要な成分を構成する担体と組み合わせる工程を含む。一般に、本発明の医薬組成物は、当該技術分野で知られている慣用の方法で、例えば、慣用の混合、溶解、造粒、糖衣製造、リビゲート(levigating)、乳化、カプセル化、封入、凍結乾燥のプロセスなどによって、製造され得る。リルゾールおよびその薬学的に許容される塩のようなグルタミン酸調節剤は、当該技術分野で周知の薬学的に許容される担体を使用して、舌下、経鼻または頬側投与に適した投与量に製剤化することができる。このような担体は、グルタミン酸調節剤を錠剤、散剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、フィルム剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などの剤形に製剤化することを可能にする。
【0126】
グルタミン酸調節剤のいくつかは舌下投与され得る。PCT出願第PCT/US2015/061106号およびPCT出願第PCT/US2015/061114号には、好ましいグルタミン酸調節剤であるリルゾールの舌下製剤が記載されている。舌下製剤は、必要とする対象体に有効量で投与され得る。対象体は、動物またはヒトであり得る。グルタミン酸調節剤が舌下製剤として調製される場合、舌下投与された化学薬剤または薬物は、舌の下の粘膜を介して毛細血管に拡散し、次いで、対象体の静脈循環に入ることができる。このように、舌下投与は、消化管における分解、肝臓における薬物代謝による変質などのリスクなしで、静脈循環への直接またはより迅速な進入を可能にするという点で経口投与よりも有利であり得る。
【0127】
本発明に有用な舌下製剤は、リルゾールまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、アノマー、エナンチオマー、水和物もしくはプロドラッグの有効量を含む。該製剤は、リルゾールが比較的大量に舌下製剤に組み込まれて舌下送達されるのに十分な溶解性を提供する。該製剤は、好ましくは、リルゾールの改変された口腔内崩壊製剤である。マンニトールおよびゼラチンを包含する賦形剤を混合し、水で可溶化し、別々に製粉されている活性医薬成分(または「API」)であるリルゾールと混合する前に脱気する。APIの粒径(D50)は、約2ミクロン未満である。該混合物を、フラッシュ冷凍により凍結乾燥し、次いで、凍結乾燥する。該製剤は、良好な経口嗜好性を有する。より低い治療用量を達成するために本発明において有用な舌下製剤のためのグルタミン酸調節剤の有効量は、経口投与した薬剤のものよりも少なくてよい。さらにまた、グルタミン酸調節剤の舌下製剤の有効用量は、経口投与した薬剤の約1~95%であり得る。免疫治療剤の舌下製剤を調製することができる程度まで、それはまた改善された特性を有し得る。
【0128】
本発明の一の態様において、グルタミン酸調節剤は、経口溶解性または崩壊性錠剤(ODT)の剤形の舌下製剤で提供される。本明細書で用いられるODTは、グルタミン酸調節剤および/または免疫治療剤を水溶性希釈剤と混合することによって調製され、錠剤に打錠される。活性な生成物を含む懸濁液は、適切な賦形剤を用いて調製することができ、該懸濁液は、ブリスターパック剤に調剤され、凍結乾燥することができる。ODTに使用することができる例示的な凍結乾燥製剤プラットフォームは、ZYDIS(登録商標)(Catalent, Somerset, NJ, USA)製剤である。特に、水を包含する賦形剤を混合し、グルタミン酸調節剤をサイズに合わせて別に粉砕し、賦形剤と混合する。次いで、懸濁液を、急速冷凍および凍結乾燥によって凍結乾燥させる。他のODT調製方法を制限なく使用することができ、その一般的な方法の詳細な記載は、例えば、米国特許第5,631,023号;第5,837,287号;第6,149,938号;第6,212,791号;第6,284,270号;第6,316,029号;第6,465,010号;第6,471,992号;第6,471,992号;第6,509,040号;第6,814,978号;第6,908,626号;第6,908,626号;第6,982,25l号;第7,282,217号;第7,425,341号;第7,939,105号;第7,993,674号;第8,048,449号;第8,127,516号;第8,158,152号;第8,221,480号;第8,256,233号;および第8,313,768号に記載されている(各々、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。グルタミン酸調節剤のいくつかは、舌下投与することができる。PCT出願第PCT/US2015/061106号およびPCT出願第PCT/US2015/061114号には、好ましいグルタミン酸調節剤であるリルゾールの舌下製剤が記載されている。舌下製剤は、必要とする対象体に有効量で投与することができる。対象体は、動物またはヒトであり得る。
【0129】
舌下製剤化されたグルタミン酸調節剤の臨床的または治療的効果は、標準試験パラメータによって測定されるように、医薬薬剤について改善された薬物動態プロファイルを有し得る。グルタミン酸調節剤が舌下投与されると、該薬物のTmax、CmaxおよびAUCは、同じ用量の同じ化合物の経口投与型と比較して改善され得る。例えば、グルタミン酸調節剤の舌下製剤は、経口投与したグルタミン酸調節剤よりも大きいCmaxを有して、治療上有益な効果を提供し得る。グルタミン酸調節剤の舌下製剤は、経口投与したグルタミン酸調節剤よりも早いかまたは小さいTmaxを有して、治療上有益な効果、および場合によってはより迅速な治療効果を提供し得る。別法として、グルタミン酸調節剤の舌下製剤は、経口投与したグルタミン酸調節剤よりも大きい、薬剤1mgあたりのAUCを有し得る。加えて、グルタミン酸調節剤は免疫治療剤をより効果的にすることができるので、固有の副作用を減少させながら同じ結果を達成するために、より少ない量の免疫治療剤が必要とされ得る。
【0130】
一の態様において、本発明は、癌を処置する方法であって、該処置を必要とする対象体に、有効量のグルタミン酸調節剤またはその薬学的に許容される塩および抗癌免疫治療剤またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを舌下投与することを含む方法を提供する。これら2つの薬物の組合せは、組合せ製品として単回投与で投与すること、同一もしくは異なるフォーマットを使用して同時に投与すること、または同一または異なる送達形態を用いて逐次投与することができる。例えば、両者を錠剤にまたは舌下剤形の一部にすることができる場合、それらを一緒に投与することができる。同様に、免疫治療剤が注射(ボーラスまたは静脈内)によってのみ投与することができ、グルタミン酸調節剤が同じフォーマットで投与することができる場合、これはまた同時または逐次投与にも使用することができる。しかしながら、免疫治療剤が注射によってのみ送達することができ(例えば、抗体である場合)、グルタミン酸調節剤が錠剤として投与または舌下投与することができる場合、この2つの薬剤の送達は、異なるフォーマットによって起こり得る。免疫治療剤およびグルタミン酸調節剤の具体的な投与方法についてのさらなる詳細は、当業者によって決定され得る。
【0131】
かかる処置を必要とする対象体の同定は、対象体または医療専門家の判断であり得、主観的(例えば、意見)または客観的(例えば、試験または診断方法により測定可能)であり得る。同定された対象体は、該処置を必要とする動物またはヒト、特にヒトであり得る。このような処置は、疾患に苦しんでいる対象体、特にヒトに、適切に投与される。
【0132】
組合せ製品の治療効果は、特にそれが症状の処置に適用される場合、その投与から約数分~約1時間以内に生じることが明らかであり得る。特に、治療効果は、投与から約1分以内、約2分以内、約3分以内、約4分以内、約5分以内、約6分以内、約7分以内、約8分以内、約9分以内、約10分以内、約11分以内、約12分以内、約13分以内、約14分以内、約15分以内、約16分以内、約17分以内、約18分以内、約20分以内、約60分以内、約90分以内に始まり得る。しかしながら、疾患の長期的な治癒または寛解は、投与から数週間または数ヶ月間は起こらないかもしれない。
【0133】
症状に対する効果は、その投与から約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間、約2日間、または約3日間またはそれ以上の間維持され得る。うまくいけば、病態に対する長期的な効果が達成されると、疾患および症状は、永久に排除される。
【0134】
グルタミン酸調節剤の典型的な投与回数としては、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日おきに1回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、2週間おきに1回、1か月に1回または2回などが挙げられる。
【0135】
特定の実施態様において、グルタミン酸調節剤と併せた本発明の免疫療法(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体、および、所望により別の抗癌剤の投与)は、対象体の生存期間を有効に増加させる。いくつかの実施態様において、本発明の併用療法は、標準治療療法と比べて、対象体の生存期間を増加させる。特定の実施態様において、本発明の該療法は、対象体の全生存期間を増加させる。いくつかの実施態様において、対象体は、投与から少なくとも約10か月間、少なくとも約11か月間、少なくとも約12か月間、少なくとも約13か月間、少なくとも約14か月間、少なくとも約15か月間、少なくとも約16か月間、少なくとも約17か月間、少なくとも約18か月間、少なくとも約19か月間、少なくとも約20か月間、少なくとも約21か月間、少なくとも約22か月間、少なくとも約23か月間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、または少なくとも約5年間の全生存期間を示す。いくつかの実施態様において、対象体の生存期間または全生存期間は、標準治療療法のみで処置した別の対象体と低くした場合、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、または少なくとも約75%増加する。他の実施態様において、対象体の生存期間または全生存期間は、標準治療療法のみで処置した別の対象体と比較した場合、少なくとも約1か月間、少なくとも約2か月間、少なくとも約3か月間、少なくとも約4か月間、少なくとも約6か月間、少なくとも約1年間、少なくとも約18か月間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、または少なくとも約5年間増加する。
【0136】
特定の実施態様において、本発明の併用療法は、対象体の無増悪生存期間を効果的に増加させる。例えば、対象体の無増悪生存期間は、標準治療療法のみで処置した別の対象体と比較した場合、少なくとも約2週間、少なくとも約1か月間、少なくとも約2か月間、少なくとも約3か月間、少なくとも約4か月間、少なくとも約6か月間、または少なくとも約1年間増加する。特定の実施態様において、グルタミン酸調節剤と併せた免疫治療剤(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体療法)の投与後、対象体は、標準治療療法の投与後の応答率と比較して、少なくとも約30%、35%、36%、37%、39%、40%、45%、または50%の全奏効割合を示す。
【0137】
特定の実施態様において、本発明の併用療法は、例えば全生存期間、クオリティ・オブ・ライフ、全奏効割合、奏効期間、無増悪生存期間、患者報告アウトカム、微小残存病変または免疫応答のうち1つ以上であり得る処置応答の改善を提供する。
【0138】
好ましいグルタミン酸調節剤はリルゾールであり、好ましい免疫療法剤は、チェックポイント阻害剤、例えば抗PD-1抗体である。グルタミン酸調節剤は、癌細胞を免疫治療剤のような抗癌剤に対してより感受性にし得ると考えられる。また、グルタミン酸調節剤は、免疫治療剤による処置をより効果的にするために患者を感作させ得る。
【0139】
免疫治療剤(例えば、抗PD-1抗体またはおよび抗PD-L1抗体)および/またはグルタミン酸調節剤(例えば、リルゾール)、ならびに所望により別の抗癌剤を含む治療用キットもまた本発明の範囲内である。キットは、典型的には、キットの内容物の意図された使用を説明するラベルおよび使用説明書を含む。ラベルという用語は、キットの上またはキットと共に供給されるか、そうでなければキットに付随するあらゆる書面または記録された材料を含む。特定の実施態様において、ヒト患者を処置するために、キットは、本明細書に記載の抗ヒトPD-1抗体または抗ヒトPD-L1抗体、例えば、ニボルマブまたはペンブロリズマブを含む。他の実施態様において、キットは、本明細書に記載の抗ヒトCTLA-4抗体、例えば、イピリムマブまたはトレメリムマブを含む。他の実施態様において、キットは、グルタミン酸調節剤、例えば、リルゾールまたはトリグリロゾール(trigrilozole)を含む。
【0140】
種々の固形悪性腫瘍は、グルタミンをグルタミン酸に変換するリン酸依存性グルタミナーゼ(GLS)を過剰発現することが示されており、癌代謝におけるグルタミンの役割を強調している。しかしながら、グルタミン酸は、重要な窒素「廃棄物」バンクであり、種々の細胞代謝経路において重要である。このように、免疫細胞に対するグルタミン/グルタミン酸レベルの低下は、増殖およびエフェクター機能を低下させ、抗腫瘍免疫媒介応答を制限し得る。この効果はGLS産生腫瘍細胞に対して明らかであるが、グルタミン酸受容体は多数の他の腫瘍細胞に見られ、この併用療法はそれらの細胞に対しても同様に有効であり得ると考えられる。
【実施例
【0141】
以下の実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。いくつかの実施例においては、当業者に知られているか、または実施例に引用されている文書、例えばEuropean Medicines Agencyによって発行されている製品の特徴概要(Summary of Product Characteristics)から容易にアクセスできる略語が用いられている。
【0142】
実施例1
この実施例において、免疫治療剤である抗PD-1と併せたグルタミン酸調節剤であるBHV-4157の組合せの効果は、Zeng, J., et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys., 2013 June 1; 86(2):343-349に実質的に記載されている神経膠腫モデル(その一部を以下に再現する)においていずれか単独のものと比較した。
【0143】
細胞
GL261-Luc細胞は、5%COおよび5%O2に維持した湿式インキュベーター(Gibco)において、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)+10%ウシ胎仔血清+1%ペニシリンストレプトマイシン中にて37℃で増殖させる。
【0144】
腫瘍モデル
4~6週齢または6~8週齢の雌性C57BL/6Jマウス(Harlan)を、Sonabend AM, Velicu S, Ulasov IV, et al. A safety and efficacy study of local delivery of interleukin12 transgene by PPC polymer in a model of experimental glioma. Anticancer Drugs. 2008;19:133-142に記載の同所性神経膠腫実験に使用する。同系神経膠腫を確立するために、130,000個のGL261-Luc細胞を1分間にわたって左線条体に1μLの体積で定位的に以下の座標に注射する:前方1mm、ブレグマから側方1mm、および皮質表面から深さ3mm。移植から7日目、21日目および35日目にルシフェラーゼイメージングにより腫瘍負荷をモニターし、各群の平均腫瘍放射輝度がほぼ同等になるようにマウスを腫瘍放射輝度に基づいて無作為に処置アームに割り当てる。動物が予め決定された神経脱落の兆候(歩行不能(failure to ambulate)、体重減少>20%体重、嗜眠、猫背の姿勢)を示した時に、該動物を安楽死させる。腫瘍の発生率は100%である。生存実験において、各アームは、マウス6~10匹を有する。全ての実験は少なくとも3回繰り返される。
【0145】
抗PD-1抗体
ハムスター抗マウスPD-1モノクローナル抗体産生ハイブリドーマG4は、Hirano F, Kaneko K, Tamura H, et al. Blockade of B7-H1 and PD-1 by monoclonal antibodies potentiates cancer therapeutic immunity. Cancer Res. 2005;65:1089-1096に記載されているように抗体を産生するために使用される。
【0146】
具体的なプロトコール
4~6週齢の雌性C57BL/6Jマウスの左線条体に各々130,000個のGL261細胞を頭蓋内移植した。マウスは、Johns Hopkins University Animal FacilityのInstitutional Animal Care and Use Committeeプロトコルに従って収容および維持した。腫瘍負荷を評価するために7日目、21日目および35日目にマウスを生物発光IVIS(登録商標)イメージング(Perkin Elmer)によって画像化し、以下のように、1アーム当たり10匹のマウスの群に無作為に割り当てた:
1. 対照
2. 抗PD-1
3. トリグリルゾール15mg/kg
4. トリグリルゾール30mg/kg
5. トリグリルゾール45mg/kg
6. 抗PD-1+トリグリルゾール15mg/kg
7. 抗PD-1+トリグリルゾール30mg/kg
8. 抗PD-1+トリグリルゾール45mg/kg
【0147】
プロトコルを以下の図に示す:
【化5】
【0148】
0日目は、頭蓋内移植の日を表す。対照アーム1は処置を受けなかった。対照アーム2には、10日目、12日目、14日目に腹腔内注射により200μg/動物の用量でαPD-1だけを投与した。対照アーム3、4および5には、10日目から始めて毎日、腹腔内注射により15、30および45mg/kg(それぞれ)の用量でBHV-4157だけを投与した。対照アーム6、7および8には、10日目から始めて毎日、腹腔内注射により15、30および45mg/kg(それぞれ)の用量でBHV-4157を投与し、10日目、12日目、14日目に腹腔内注射により200μg/動物の用量でαPD-1を投与した。
【0149】
マウスがIVISイメージングにより腫瘍負荷が無いことを示した時に処置を終了した。動物は、中枢神経系障害、猫背の姿勢(hunched posture)、嗜眠、体重減少および歩行不能を含むヒトのエンドポイントに従って安楽死させた。
【0150】
実験の目的は、併用療法がどちらかの療法単独よりも利益をもたらすかどうかを確かめることであった。結果を図1に示す。図1から明らかなように、併用療法は、いずれの個別療法よりも実質的に優れており、その効果は、単に相加的ではなく、相乗的に見える。かくして、グルタミン酸/グルタミン代謝に対するグルタミン酸調節剤の効果は腫瘍細胞を弱め、抗PD-1抗体をより効果的にすると思われる。まったく驚くべきことに、本発明によれば、移植から約30日目、40日目および60日目のマウスの生存率について、免疫療法抗癌剤と併せてグルタミン酸調節剤で処置したマウスの生存率は、免疫療法抗癌剤単独と比較して、約2倍以上であった。下記の表1は実施例1からのデータを示す。
【0151】
【表1】
【0152】
表1から、26日目までに、アーム1(対照)のマウスは0%の生存率を有し、アーム2(PD-1)のマウスは、50%の生存率を有し、アーム6、7および8のマウスは少なくとも70~80%の生存率を有したことが分かる。したがって、26日目に、マウス生存比(MSR26)は約1.4~1.6(すなわち、70/50および80/50)であった。28日目には、アーム1(対照)のマウスは、0%の生存率を有し、アーム2(PD-1)のマウスは、30%の生存率を有し、アーム6、7および8のマウスは、少なくとも60~80%の生存率を有した。したがって、28日目に、マウス生存比(MSR28)は約2.0~2.6(すなわち、60/30および80/30)であった。60日目に、アーム1(対照)のマウスは0%の生存率を有し、アーム2(PD-1)のマウスは30%の生存率を有し、アーム6、7および8のマウスは60~70%の生存率を有した。したがって、60日目に、マウス生存比(MSR60)は約2.0~2.3(すなわち、60/30および70/30)であった。好ましくは、本発明によれば、腫瘍移植から26日目に測定したとき、マウス生存比(MSR26)は、少なくとも1.4、より好ましくは少なくとも1.6である。好ましくは、本発明によれば、腫瘍移植から28日目に測定したとき、マウス生存比(MSR28)は、少なくとも2.0、より好ましくは少なくとも2.6である。好ましくは、本発明によれば、腫瘍移植から60日目に測定したとき、マウス生存比(MSR60)は、少なくとも2.0、より好ましくは少なくとも2.3である。好ましくは、本発明によれば、未処置マウスが0%の生存率に達した時点またはその後腫瘍移植から60日目までに測定したマウス生存比は、少なくとも1.4、少なくとも1.6、少なくとも2.0、少なくとも2.3、または少なくとも2.6である。
典型的には、本発明による併用療法、すなわち、免疫療法抗癌剤およびグルタミン酸調節剤は、少なくとも2.0、より典型的には少なくとも2.3(60日目に測定した、MSR60)のマウス生存比をもたらす。
【0153】
実施例2
以下は、Merck & Co., Inc.(Whitehouse Station, NJ, USA)から入手可能なキートルーダ(KEYTRUDA)(登録商標)(ペンブロリズマブ)との併用療法において本発明のグルタミン酸調節剤をどのように使用できるかの例を例示する。追加情報については、静脈内使用のための、静脈内用キートルーダ(KEYTRUDA)(ペンブロリズマブ)注射のための、注射用キートルーダ(KEYTRUDA)(ペンブロリズマブ)の重要事項説明書(HIGHLIGHTS OF PRESCRIBING INFORMATION)(uspi-mk3475-iv-1703r007)(「キートルーダ(KETRUDA)添付文書」)を参照のこと。
【0154】
キートルーダ(KETRUDA)添付文書によると、キートルーダ(KEYTRUDA)は、以下の患者の処置に適応されるプログラム死受容体-1(PD-1)遮断抗体である:切除不能または転移性の黒色腫の患者;EGFRまたはALKゲノム腫瘍異常を有さず、転移性NSCLCに対して事前に全身化学療法処置を受けていない、FDA承認試験によって決定された、腫瘍が高いPD-L1発現を有する転移性NSCLCの患者[(腫瘍比率スコア(TPS)≧50%)];白金含有化学療法以降に疾患進行がある、FDA承認試験によって決定された、腫瘍がPD-L1を発現する(TPS≧1%)転移性NSCLCの患者。EGFRまたはALKゲノム腫瘍異常を有する患者は、キートルーダ(KEYTRUDA)を受ける前にこれらの異常に対するFDA承認の治療中に疾患進行がある。白金含有化学療法以降に疾患進行がある再発または転移性HNSCCの患者。この適応症は、腫瘍奏効割合および奏効の持続性に基づく早期承認の下に承認されている。この適応症に対する継続的な承認は、確認試験における臨床的有用性の検証および説明が条件であり得る。難治性cHL、または過去3回異常の治療後に再発した、成人および小児患者。この適応症は、腫瘍奏効割合および奏効の持続性に基づく早期承認の下に承認されている。この適応症に対する継続的な承認は、確認試験における臨床的有用性の検証および説明が条件であり得る。
【0155】
European Medicines Agencyによって発行されているキートルーダ(KETRUDA)の製品特徴の概要(Summary of Product Characteristics)には、以下の臨床試験が記載されている。この試験は、本出願人が行ったものではないが、例示目的で提示する。
【0156】
黒色腫
KEYNOTE-006: イピリムマブ処置を受けていない黒色腫患者における対照試験。
ペンブロリズマブの安全性および効力は、イピリムマブで処置されたことがない患者における進行メラノーマの処置についての多施設の対照III相試験KEYNOTE-006で研究された。患者は、2週間おき(n=279)または3週間おき(n=277)にペンブロリズマブ10mg/kgを受けるか、または3週間おき(n=278)にイピリムマブ3mg/kgを受けるように無作為化した(1:1:1)。BRAF V600E変異体黒色腫の患者は、以前にBRAF阻害剤治療を受けていることを必要としなかった。疾患進行または許容できない毒性があるまで患者をペンブロリズマブで処置した。疾患進行の初期証拠を有する臨床的に安定な患者は、疾患進行が確認されるまで処置を続けることが許された。腫瘍状態の評価は、12週間目、次いで、6週間おきに48週間目まで、その後、12週間おきに行われた。834人の患者のうち、60%が男性であり、44%が65歳以上であり(年齢の中央値は62歳であった[範囲18~89])、98%が白人であった。患者の65%がステージM1cであり、9%が脳転移の病歴があり、66%が以前に治療を受けておらず、34%が以前に1回治療を受けていた。31%が1のECOG活動指標(Performance Status)を有しており、69%が0のECOG活動指標(Performance Status)を有しており、32%が上昇したLDHを有していた。BRAF変異は、302人(36%)の患者で報告された。BRAF変異腫瘍を有する患者のうち、139(46%)が以前にBRAF阻害剤で処置されていた。主要効力評価基準は、無増悪生存期間(PFS;固形腫瘍における奏効評価基準[RECIST]、バージョン1.1を用いた放射線学的および腫瘍学総合評価[IRO]レビューによって評価される)および全生存期間(OS)であった。二次的効力評価基準は、全奏効割合(ORR)および奏効期間であった。表2は、イピリムマブによる治療を受けていない患者における重要な効力基準を要約している。
【0157】
【表2】
【0158】
本発明によれば、上記のような研究に参加している患者は、併用療法においてグルタミン酸調節剤、例えば、リルゾールまたはそのプロドラッグBHV-4157(2-アミノ-N-{[メチル({[6-(トリフルオロメトキシ)-1,3-ベンゾシアゾール-2-イル]カルバモイル}メチル)カルバモイル]メチル}アセトアミド)で処置され得る。具体的な処置計画は、当業者によって決定され得る。しかしながら、例示目的で、処置計画を設計する際に以下のことを考慮することができる。以下で使用される略語は当業者に一般的に知られている。
【0159】
【0160】
処置 - 例えば1週間、3週間、5週間、7週間、9週間および11週間のような予め決められた間隔でのペンブロリズマブによるIV処置を伴う、毎日のBHV-4157の経口投与で処置することができた。主要なエンドポイントは、BHV-4157の最大耐容量(MTD)および推奨第2相用量(RP2D)である。二次的エンドポイントは以下のものが挙げられる:
・ 客観的奏効率(ORR)
・ 有害事象の種類、重篤度および頻度
・ 生存期間(OS)、1年目および2年目での画期的な生存率
・ 応答している患者の奏効期間
・ 進行性疾患への時間(PFS)
・ 処置が失敗するまでの時間
・ 次の治療または死までの時間(TTNTD)
・ 新しい転移が存在しないこと
・ 相関科学:以下のカテゴリーにおける腫瘍の微小環境および末梢血の変化:
・ TILおよびPD-L1発現
・ 免疫細胞の表現型および遺伝子発現
・ 血管新生マーカー
・ 代謝エフェクター分子
・ エキソソーム形成。
【0161】
上記の試験が完了したら、グルタミン酸調節剤と併せて免疫腫瘍療法を受けている患者にとって有用な処置を同定するために、効力、投与量のリファインメント、副作用などを決定するためにさらなる試験を実施することができる。
【0162】
実施例3
以下は、Bristol-Myers Squibb Company(Princeton, NJ USA)から入手可能なオプジーボ(OPDIVO)(登録商標)(ニボルマブ)との併用療法において本発明のグルタミン酸調節剤をどのように使用できるかの例を例示する。追加情報については、静脈内使用のための、オプジーボ(OPDIVO)(ニボルマブ)注射の重要事項説明書(1506US1700258-01-01)(「オプジーボ(OPDIVO)添付文書」)を参照のこと。
【0163】
オプジーボ(OPDIVO)添付文書によると、オプジーボ(OPDIVO)は、以下の患者の処置に適応されるプログラム死受容体-1(PD-1)遮断抗体である:・BRAF V600野生型切除不能または転移性の黒色腫(単剤として)。・BRAF V600変異陽性切除不能または転移性の黒色腫(単剤として)。この適応症は、無増悪生存期間に基づく早期承認の下に承認されている。この適応症に対する継続的な承認は、確認試験における臨床的有用性の検証および説明が条件であり得る。・切除不能または転移性の黒色腫(イピリムマブとの併用)。この適応症は、この適応症は、無増悪生存期間に基づく早期承認の下に承認されている。この適応症に対する継続的な承認は、確認試験における臨床的有用性の検証および説明が条件であり得る。・転移性非小細胞肺癌および白金ベース化学療法以降の進行。EGFRまたはALKゲノム腫瘍異常を有する患者は、オプジーボ(OPDIVO)を受ける前にこれらの異常に対するFDA承認の治療中に疾患進行が見られる。・以前に抗血管新生療法を受けた進行性腎細胞癌。・自家造血幹細胞移植(HSCT)および移植後のブレンツキシマブベドチン投与の後に再発または進行した古典的ホジキンリンパ腫。この適応症は、全奏効割合に基づく早期承認の下に承認されている。この適応症に対する継続的な承認は、確認試験における臨床的有用性の検証および説明が条件であり得る。・白金ベース療法以降に疾患進行を有する再発性または転移性頭頚部扁平上皮癌。・白金含有化学療法の間またはその後に疾患進行を有する、・白金含有化学療法とネオアジュバントもしくはアジュバント療法の12か月以内に疾患進行を有する、局所進行性または転移性の尿路上皮癌。この適応症は、腫瘍奏効割合および奏効期間に基づく早期承認の下に承認されている。この適応症に対する継続的な承認は、確認試験における臨床的有用性の検証および説明が条件であり得る。
【0164】
European Medicines Agencyによって発行されているオプジーボ(OPDIVO)の製品特徴の概要(Summary of Product Characteristics)には、以下の臨床試験が記載されている。この試験は、本出願人が行ったものではないが、例示目的で提示する。
【0165】
黒色腫 - 無作為化第3相試験対ダカルバジン(CA209066)
進行性(切除不能または転移性)黒色腫の処置のためのニボルマブ3mg/kgの安全性および効力は、第3相無作為化二重盲検試験(CA209066)で評価された。該試験には、確認された未治療のステージIIIまたはIVのBRAF野生型黒色腫および0または1のECOG活動指標(performance-status)スコアを有する成人患者(18歳以上)が含まれていた。活動性自己免疫疾患、眼球黒色腫、または活動性脳および軟膜髄膜転移を有する患者は、該試験から除外した。合計418人の患者が、2週間おきにニボルマブ(n=210)3mg/kgを60分間にわたる静脈内投与または3週間おきにダカルバジン(n=208)1000mg/m2を受けるように無作為化された。無作為化は、腫瘍PD-L1状態およびM期(M0/M1a/M1b対M1c)によって層別化された。処置は、臨床的有用性が観られる限り、または処置がもはや許容されなくなるまで、継続された。疾患進行後の処置は、研究者によって決定されるとおり、臨床的有用性を有するか、または試験薬物に対して実質的な有害作用を有しなかった患者に対して許可された。固形腫瘍効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumours)(RECIST)バージョン1.1に従った腫瘍評価は、無作為化の9週間後に行われ、最初の1年間は6週間おきに続け、その後、12週間おきに続けられた。主要効力評価基準は、全生存期間(OS)であった。重要な二次的効力評価基準は、研究者評価PFSおよび客観的奏効率(ORR)であった。ベースライン特性は、2つのグループ間でバランスがとれていた。年齢の中央値は65歳であり(範囲:18~87)、59%が男性であり、99.5%が白人であった。ほとんどの患者は、0(64%)または1(34%)のECOG活動スコアを有していた。患者の61%が試験参加時にM1c期疾患を有していた。患者の74%が皮膚黒色腫を有しており、11%が粘膜黒色腫を有しており;患者の35%がPD-L1陽性黒色腫(>5%腫瘍細胞膜発現)を有していた。患者の16%が以前にアジュバント療法を受けており;最も一般的なアジュバント処置はインターフェロン(9%)であった。患者の4%が脳転移歴を有しており、患者の37%が試験参加時にULNよりも高いベースラインLDHレベルを有していた。効力の結果は、表3に示される。
【0166】
【表3】
【0167】
本発明によれば、上記のような研究に参加している患者は、グルタミン酸調節剤、例えば、リルゾールまたはそのプロドラッグBHV-4157(2-アミノ-N-{[メチル({[6-(トリフルオロメトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル]カルバモイル}メチル)カルバモイル]メチル}アセトアミド)で処置され得る。グルタミン酸調節剤を使用する処置計画は、例えば、実施例2に記載されているように特定され得る。
【0168】
実施例4
以下は、Bristol-Myers Squibb Company(Princeton, NJ USA)から入手可能なヤーボイ(YERVOY)(登録商標)(イピリムマブ)との併用療法において本発明のグルタミン酸調節剤をどのように使用できるかの例を例示する。追加情報については、静脈内使用のための、ヤーボイ(YERVOY)(イピリムマブ)注射の重要事項説明書(1506US1700258-01-01)(「ヤーボイ(YERVOY)添付書類」)を参照のこと。
【0169】
ヤーボイ(YERVOY)添付書類によると、ヤーボイ(YERVOY)は、以下のことに適応するヒト細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)遮断抗体である:・切除不能または転移性の黒色腫の処置。・リンパ節全摘術(total lymphadenectomy)を含む完全切除を受けた1mmを超える局所リンパ節の病理学的関与を伴う皮膚黒色腫を有する患者のアジュバント処置。
【0170】
European Medicines Agencyによって発行されているヤーボイ(YERVOY)の製品特徴の概要(Summary of Product Characteristics)には、以下の臨床試験が記載されている。この試験は、本出願人が行ったものではないが、例示目的で提示する。
【0171】
MDX010-20
第3相二重盲検試験に、以前に下記のうち1つ以上を含む処置計画で処置された進行性(切除不能または転移性)黒色腫を有する患者が登録された:IL-2、ダカルバジン、テモゾロミド、フォテムスチンまたはカルボプラチン。患者は、3:1:1の比率で、イピリムマブ3mg/kg+治験用gp100ペプチドワクチン(gp100)、イピリムマブ3mg/kg単剤療法、またはgp100単独を受けるように、無作為化された。すべ点患者は、HLA-A2*0201タイプであった;このHLAタイプは、gp100の免疫提示を支持する。患者は、それらのベースラインBRAF変異状態にかかわらず登録された。患者は、許容されるように、3週間おきにイピリムマブを4回投与された(導入療法)。導入期間の完了前に明らかな腫瘍負荷の増加を示した患者は、十分な活動指標を示し場合には、許容されるように、導入療法を続けた。イピリムマブに対する腫瘍応答の評価は、導入療法の完了から約12週間後に行われた。初期臨床応答後(PRまたはCR)または最初の腫瘍評価から3か月以上経ってからのSD(修正WHO基準による)後にPDを発症した患者に、イピリムマブによるさらなる処置(再処置)が与えられた。主要なエンドポイントはイピリムマブ+gp100グループ対gp100グループにおけるOSであった。重要な二次的エンドポイントは、イピリムマブ+gp100グループ対イピリムマブ単剤療法グループ、およびイピリムマブ単剤療法グループ対gp100グループにおけるOSであった。合計676人の患者が以下のように無作為化された:イピリムマブ単剤療法グループに137人、イピリムマブ+gp100グループに403人、およびgp100単独グループに136人。大多数が導入の間に全4回の投与を受けた。32人の患者が再処置を受けた:イピリムマブ単剤療法グループに人において8人、イピリムマブ+gp100グループにおいて23人、gp100グループにおいて1人。追跡調査期間は、55か月間までであった。ベースライン特性は、グループ間で十分にバランスがとれていた。年齢の中央値は57歳であった。患者の大多数(71~73%)がM1c期疾患を有しており、患者の37~40%がベースラインで乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の上昇を有していた。合計77人の患者が以前に処置された脳転移の病歴を有していた。イピリムマブを含有する処置計画は、OSにおいてgp100対照グループに対して統計学的に有意な利点を示した。イピリムマブ単剤療法とgp100との間のOSの比較のためのハザード比(HR)は0.66(95%CI:0.51、0.87;p=0.0026)であった。17サブグループ分析により、観察されたOS利点は、ほとんどのサブグループの患者内で一致していた(M[転移]期、以前のインターロイキン2、ベースラインLDH、年齢、性別、および以前の治療のタイプおよび数)。しかしながら、50歳を超える女性に関しては、イピリムマブ処置のOS利点を支持するデータは限られていた。したがって、50歳を超える女性に対するイピリムマブの効力は不明である。サブグループ分析は少数の患者しか含まないので、これらのデータから決定的な結論を引き出すことはできない。1年目および2年目のOSの中央値および推定値を表4に示す。
【0172】
【表4】
【0173】
イピリムマブ3mg/kg単剤療法グループにおいて、OSの中央値は、SD患者およびPD患者でそれぞれ22か月および8か月であった。この分析時点で、CR患者またはPR患者の中央値は到達していなかった。再処置が必要な患者に関しては、、BORRは、イピリムマブ単剤療法グループにおいて38%(3/8患者)、gp100グループにおいて0%であった。疾患制御率(DCR)(CR+PR+SDと定義される)は、それぞれ、75%(6/8患者)および0%であった。これらの分析における患者数は限られているので、イピリムマブ再処置の効力に関する決定的な結論を引き出すことはできない。イピリムマブ処置後の臨床活性の発達または維持(development or maintenance of clinical activity)は、全身コルチコステロイドの使用の有無にかかわらず同様であった。
【0174】
本発明によれば、上記のような研究に参加している患者は、グルタミン酸調節剤、例えば、リルゾールまたはそのプロドラッグBHV-4157(2-アミノ-N-{[メチル({[6-(トリフルオロメトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル]カルバモイル}メチル)カルバモイル]メチル}アセトアミド)で処置され得る。グルタミン酸調節剤を使用する処置計画は、例えば、実施例2に記載されているように特定され得る。
【0175】
実施例5
以下は、Merck & Co., Inc.(Whitehouse Station, NJ, USA)から入手可能なキートルーダ(KEYTRUDA)(登録商標)(ペンブロリズマブ)との併用療法において本発明のグルタミン酸調節剤をどのように使用できるかの例を例示する。追加情報については、静脈内使用のための、静脈内用キートルーダ(KEYTRUDA)(ペンブロリズマブ)注射のための、注射用キートルーダ(KEYTRUDA)(ペンブロリズマブ)の重要事項説明書(HIGHLIGHTS OF PRESCRIBING INFORMATION)(uspi-mk3475-iv-1703r007)(「キートルーダ(KETRUDA)添付文書」)を参照のこと。
【0176】
European Medicines Agencyによって発行されているキートルーダ(KETRUDA)の製品特徴の概要(Summary of Product Characteristics)には、以下の臨床試験が記載されている。この試験は、本出願人が行ったものではないが、例示目的で提示する。
【0177】
NSCLC - KEYNOTE-010: 以前に化学療法で処置されたNSCLC患者の対照試験
ペンブロリズマブの安全性および効力は、以前に白金含有化学療法で処置された患者における進行NSCLCの処置についての多施設の非盲目対照試験KEYNOTE-010において研究された。患者は、≧1%のTPSをもってPDL1 IHC 22C3 pharmDxTM Kitに基づいてPD-L1発現を有した。EGFR活性化変異またはALK転座を有する患者は、また、ペンブロリズマブの投与前にこれらの変異に対する承認された治療中に疾患進行を有した。患者は、疾患進行または許容できない毒性があるまで3週間おきに2mg/kg(n=344)もしくは10mg/kg(n=346)の用量でペンブロリズマブを受けるか、または3週間おきに75mg/m2の用量でドセタキセル(n=343)を受けるように無作為化された(1:1:1)。該試験では自己免疫疾患を有する患者;免疫抑制を必要とする病状を有する患者;または過去26週間以内に30Gyを超える胸部照射を受けた患者は除外された。腫瘍状態の評価は、9週間おきに行われた。この母集団のベースライン特性は、以下を含んだ:年齢の中央値63歳(65歳以上42%);男性61%;白人72%およびアジア人21%、ならびにECOG活動指標0および1を有する人それぞれ34%および66%。疾患特性は、扁平(21%)および非扁平(70%);M1(91%);安定した脳転移(15%)および変異の発生率EGFR(8%)またはALK(1%)であった。以前の治療は、included白金ダブレット計画(100%)を含んでいた;患者は、1(69%)または2以上(29%)の治療ラインを受けた。主要効力評価基準は、RECIST 1.1を用いて盲検独立中央判定(BICR)によって評価されるOSおよびPFSであった。二次的効力評価基準は、ORRおよび奏効期間であった。表5に、全集団(TPS≧1%)およびTPS≧50%を有する患者に対する重要な効力基準をまとめている。
【0178】
【表5】
【0179】
効力結果は、ペンブロリズマブ2mg/kgおよび10mg/kgアームについても同様であった。OSの効力結果は、グループ間比較に基づくと、腫瘍標本の年齢(新規対アーカイブ)に関わらず一貫していた。サブグループ分析では、非喫煙者である患者または少なくとも白金ベース化学療法およびチロシンキナーゼ阻害剤を受けたEGFR活性化変異を有する腫瘍を有する患者について、ドセタキセルと比較したペンブロリズマブの生存率低下が観察された;しかしながら、患者が少数であったため、これらのデータから決定的な結論を引き出すことはできない。PD-L1を発現しない腫瘍を有する患者におけるペンブロリズマブの効力および安全性は、確立されていない。
【0180】
本発明によれば、上記のような研究に参加している患者は、グルタミン酸調節剤、例えば、リルゾールまたはそのプロドラッグBHV-4157(2-アミノ-N-{[メチル({[6-(トリフルオロメトキシ)-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル]カルバモイル}メチル)カルバモイル]メチル}アセトアミド)で処置され得る。グルタミン酸調節剤を使用する処置計画は、例えば、実施例2に記載されているように特定され得る。
【0181】
本出願を通して、様々な刊行物が、著者名および日付によって、特許番号もしくは特許出願公開番号によって、言及されている。これらの刊行物の開示は、本明細書および特許請求の範囲に記載された発明の日現在において当業者に知られている技術水準を完全に記載するために、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する。しかしながら、本明細書中の参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術であるという認識として解釈されるべきではない。
【0182】
当業者であれば、ルーチンに過ぎない実験法を用いて、本明細書に記載されている特定の手順に対する多数の等価物を認識するかまたは確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲によってカバーされる。例えば、本発明によれば、本明細書の説明および実施例に記載の特定の癌以外の癌を処置するために、グルタミン酸調節剤および免疫治療剤を使用する併用療法を使用することができることが意図されている。さらに、本明細書の説明および実施例に記載されたグルタミン酸調節剤および免疫治療剤以外のグルタミン酸調節剤および免疫治療剤を使用することができる。さらにまた、アイテムのリスト内の特定のアイテム、またはより大きなアイテムグループ内のサブセットグループのアイテムは、他の特定のアイテム、アイテムサブセットグループのアイテムまたはより大きなグループのアイテムとの組み合わせが、そのような組合せを同定する本明細書の記載があるか否かに関係なく、可能である。
図1