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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】クレーンとワイヤリング方法
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/04 20060101AFI20230210BHJP
   B66C 1/68 20060101ALI20230210BHJP
   B66D 3/08 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
B66D3/04 J
B66C1/68 A
B66D3/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019003213
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020111432
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】野島 昌芳
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-203530(JP,A)
【文献】米国特許第01436608(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00- 5/34
B66C 1/00- 3/20
B66C 13/00-15/06
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方がクレーンのジブトップに支持され、他方に連結部を備える吊掛け体と、
下部に吊フックが取り付けられ、上部に上向き開口の切欠き溝が設けられたフックブロックと、
前記切欠き溝に挿脱可能、且つ前記連結部に連結可能な連結体と、
を備え、
前記フックブロックは、ジブトップに取り付けられた2個の頂部滑車に巻掛けられたワイヤロープによって巻上げ・巻下しがなされるクレーンであって、
前記連結体は、下部にn(nは2以上の整数)個の中間滑車が滑車の軸方向に連設され、
前記フックブロック内の上部には、一対の上部滑車が前記切欠き溝を挟んで水平方向に両側設けられ、
前記フックブロック内の略中央部には、n-1個の下部滑車が中間滑車の鉛直方向に設けられ、
ワイヤロープを巻上げて連結体を連結部に連結した後、ワイヤロープを巻下げたときには、中間滑車にワイヤロープが掛けられ2×(n+1)本吊り状態となり、ワイヤロープを巻上げて、連結体が切欠き溝に収納されワイヤロープが中間滑車の溝内に収まった状態で連結を解除したときには、連結体とフックブロックは一体に巻下げられ2本吊り状態に切替えられる構成となされ、
一方の頂部滑車に巻掛けられたワイヤロープは、一方の上部滑車を経由し、滑車の軸方向に関して一方側の中間滑車に巻掛けられ、下部滑車に巻掛けられ、他方側の中間滑車に巻掛けられ、他方の上部滑車を経由し、他方の頂部滑車に巻掛けられた状態である、
クレーン。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーンにおいて、
n-1個の前記下部滑車は、n個の前記中間滑車間のn-1個ある隙間のセンターの位置にそれぞれ配置されている、
クレーン。
【請求項3】
一方がクレーンのジブトップに支持され、他方に連結部を備える吊掛け体と、
下部に吊フックが取り付けられ、上部に上向き開口の切欠き溝が設けられたフックブロックと、
前記切欠き溝に挿脱可能、且つ前記連結部に連結可能な連結体と、
を備え、
前記フックブロックは、ジブトップに取り付けられた2個の頂部滑車に巻掛けられたワイヤロープによって巻上げ・巻下しがなされ、
前記連結体は、下部にn(nは2以上の整数)個の中間滑車が滑車の軸方向に連設され、
前記フックブロック内の上部には、一対の上部滑車が前記切欠き溝を挟んで水平方向に両側設けられ、
前記フックブロック内の略中央部には、n-1個の下部滑車が中間滑車の鉛直方向に設けられ、
前記頂部滑車のうち一方からワイヤロープが垂らされ、前記一対の上部滑車を夫々経由し、他方の頂部滑車へワイヤロープが掛け回されることで、フックブロックを巻上げ・巻下し可能にするワイヤリング方法であって、
一対の上部滑車を夫々経由する過程において、
一方の上部滑車からワイヤローブが、n個の中間滑車のうち該中間滑車の軸方向一方側に掛け回される工程aと、
工程aの後、n-1個の下部滑車、或いはn-1個の下部滑車のうち該下部滑車の軸方向一方側に掛け回される工程bと、
工程bの後、中間滑車の他方、或いは中間滑車の軸方向一方側から他方側に向けて次番手の中間滑車に掛け回される工程cと、
を含み、
前記工程a-工程cの手順を少なくとも1回行った後に、
他方の上部滑車を経由させる、ワイヤリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事用に使用され、吊荷の重量に応じて巻上げ・巻下しするワイヤロープの本数を切替るクレーンとそのワイヤリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事現場に設置されて、吊荷の巻上げ・巻下しに使用されるクレーンには、所定本数のワイヤロープが取り付けられており、そのワイヤロープによって吊荷(フックブロック)を例えば、2本吊り状態で巻上げ・巻下しを行っている。
吊荷の重量が重い場合は、ジブを降ろして地上付近でワイヤロープを2本吊りの姿勢から4本吊りの姿勢へと手作業により半日以上かけて掛け替えている。
【0003】
本出願人は、この手作業による作業性の非効率性を改善すべく、特許文献1に開示されるように、ジブに支持された吊掛け体と、下部に吊フックが固定されたフックブロックと、フックブロックに挿脱可能、且つ吊掛け体に連結可能な連結体等で構成され、連結体の下部には滑車が備えられ、フックブロックの内部には一対の滑車が水平方向に備えられ、フックブロックが巻上げられて連結体が吊掛け体に連結した後、フックブロックが巻下げられるとワイヤロープが2本吊りから4本吊りの姿勢に自動で切替わり、一方、連結体が吊掛け体から解除され、フックブロック内に格納されると、ワイヤロープが4本吊りから2本吊りの姿勢に自動で切替わるクレーンの複滑車機構を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-75406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、クレーンが風力発電やダム用途等の建設工事現場に設置される場合、従来のビルなどの建造物の吊荷の重量に比べて30~150tと重量が変わり、非常に重たくなる。それ故、特許文献1の4本吊りの姿勢では、ワイヤロープが太くなり、それによって減速機やシーブなどの構造が大きくなり、重量も重くなる。また、クレーン自体も大きくなるため、従来の手作業でのワイヤロープの掛け替えは、時間が非常にかかり非効率で危険な作業となる。
【0006】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ワイヤロープの自動切替え構造である基本的概念は維持したまま、ワイヤロープの吊り本数を増やすことで、さらに重い重量の吊荷であっても安全に巻上げ・巻下しができるクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、一方がクレーンのジブトップに支持され、他方に連結部を備える吊掛け体と、下部に吊フックが取り付けられ、上部に上向き開口の切欠き溝が設けられたフックブロックと、切欠き溝に挿脱可能、且つ連結部に連結可能な連結体と、を備え、フックブロックは、ジブトップに取り付けられた2個の頂部滑車に巻掛けられたワイヤロープによって巻上げ・巻下げがなされるクレーンであって、連結体は、下部にn(nは2以上の整数)個の中間滑車が滑車の軸方向に連設され、フックブロック内の上部には、一対の上部滑車が切欠き溝を挟んで水平方向に両側設けられ、フックブロック内の略中央部には、n-1個の下部滑車が中間滑車の鉛直方向に設けられ、ワイヤロープを巻上げて連結体を連結部に連結した後、ワイヤロープを巻下げたときには、中間滑車にワイヤロープが掛けられ2×(n+1)本吊り状態となり、ワイヤロープを巻上げて、連結体が切欠き溝に収納されワイヤロープが中間滑車の溝内に収まった状態で連結を解除したときには、連結体とフックブロックは一体に巻下げられ2本吊り状態に切替えられる構成となされている、クレーンが提供される。
【0008】
本発明に係るクレーンでは、2×(n+1)本掛けによって、重い吊荷であっても巻上げ・巻下しができる。また、ワイヤロープが常に中間滑車の溝内に収まった状態であるため、安全に確実に自動切替えが可能である。
【0009】
好ましくは、前記クレーンにおいて、一対の上部滑車は、少なくとも略滑車1個分の距離を有して配置されている、クレーンが提供される。
【0010】
好ましくは、前記クレーンにおいて、一対の上部滑車は、どちらか一方が軸方向において他方に重ならない程度の距離を有して配置されている、クレーンが提供される。
【0011】
好ましくは、前記クレーンにおいて、下部シーブは、n個の中間滑車間のセンターの位置に配置されている、クレーンが提供される。
【0012】
好ましくは、前記クレーンにおいて、一方の頂部滑車に巻掛けられたワイヤロープは、一方の上部滑車を経由し、滑車の軸方向に関して一方側の中間滑車に巻掛けられ、下部滑車に巻掛けられ、他方側の中間滑車に巻掛けられ、他方の上部滑車を経由し、他方の頂部滑車に巻掛けられた状態である、クレーンが提供される。
【0013】
本発明の別の観点によれば、一方がクレーンのジブトップに支持され、他方に連結部を備える吊掛け体と、下部に吊フックが取り付けられ、上部に上向き開口の切欠き溝が設けられたフックブロックと、切欠き溝に挿脱可能、且つ連結部に連結可能な連結体と、を備え、フックブロックは、ジブトップに取り付けられた2個の頂部滑車に巻掛けられたワイヤロープによって巻上げ・巻下しがなされ、連結体は、下部にn(nは2以上の整数)個の中間滑車が滑車の軸方向に連設され、フックブロック内の上部には、一対の上部滑車が切欠き溝を挟んで水平方向に両側設けられ、フックブロック内の略中央部には、n-1個の下部滑車が中間滑車の鉛直方向に設けられ、頂部滑車のうち一方からワイヤロープが垂らされ、一対の上部滑車を夫々経由し、他方の頂部滑車へワイヤロープが掛け回されることで、フックブロックを巻上げ・巻下し可能にするワイヤリング方法であって、一対の上部滑車を夫々経由する過程において、一方の上部滑車からワイヤローブが、n個の中間滑車のうち該中間滑車の軸方向一方側に掛け回される工程aと、工程aの後、n-1個の下部滑車、或いはn-1個の下部滑車のうち該下部滑車の軸方向一方側に掛け回される工程bと、工程bの後、中間滑車の他方、或いは中間滑車の軸方向一方側から他方側に向けて次番手の中間滑車に掛け回される工程cと、を含み、工程a-工程cの手順を少なくとも1回行った後に、他方の上部滑車を経由させる、ワイヤリング方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワイヤロープの自動切替え構造である基本的概念は維持したまま、ワイヤロープの吊り本数を増やすことで、さらに重量の重たい吊荷でも巻上げ・巻下しができるクレーンを提供することができる。
また、ワイヤロープが常に中間滑車の溝内に収まった状態となるため、切替え時にワイヤロープのキャッチミスをすることなく、安全に確実にワイヤロープの切替えが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】クレーンの2本吊り状態を示した図。
図2図2(a)は図1の側面図、図2(b)は図1の矢視Yから見た平面図、図2(c)は図 1の矢視Zから見た平面図。
図3図1のワイヤロープを巻上げた際の連結体の連結状態を示した図。
図4】クレーンの6本吊り状態を示した図。
図5】連結体であって、図5(a)は正面図、図5(b)は側面図。
図6】フックブロックであって、図6(a)は正面図、図6(b)は側面図。
図7】吊掛体であって、図7(a)は正面図、図7(b)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
クレーンの好適な実施形態について、図面を用いて具体的に説明する。以下においては、便宜上、ジブクレーンに組み込む場合を例に挙げてクレーンを説明するが、それ以外のクレーン(天井クレーンや橋形クレーン、デリック等)にも好適に組み込むことができる。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではないし、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0017】
1.クレーンの概略構成
第1節では、クレーン10の概略構成を説明する。図1は、クレーン10の2本吊り状態を模式的に示している。図2(a)は、図1のフックブロックと連結体のワイヤロープを外した側面図、図2(b)は図1の矢視Yから見た平面図、図2(c)は図1の矢視Zから見た平面図を夫々示している。
クレーン10は、クレーン本体の旋回盤上に搭載された巻上機(不図示)に取り付けられたワイヤロープ11の“巻き取られ”又は“繰り出され”によって、フックブロック30を巻上げ又は巻下しをなす構成となっている。
【0018】
図1に示すように、巻上機から繰り出されたワイヤロープ11は、ジブトップ12に回転可能に設けられた一対の頂部滑車13のうち、一方の頂部滑車13に巻掛けられてから垂下げられ、フックブロック20を経由して上向きに折り返して他方の頂部滑車13に巻掛けられ、クレーン本体(不図示)に固定されている。
【0019】
すなわち、起伏機が駆動していない状態で、巻上機が駆動されるとワイヤロープ11は“巻き取られ”又は“繰り出され”、もってフックブロック20が垂直に上昇(巻上げ)又は下降(巻下し)する構成となっている。
【0020】
また、クレーン10のジブトップ12には、一対の頂部滑車13間の略中央位置に吊掛体30が支持されており、該吊掛体30にフックブロック20の上部に挿脱可能に格納された連結体40が連結することで、フックブロック20の吊り本数を自動的に切替えることが可能な構成となっている。
【0021】
2.吊掛体30の構成
第2節では、連結体40を吊り掛ける吊掛体30について説明する。
図7は、吊掛体30であって、図7(a)は正面図、図7(b)は側面図を夫々示している。図7に示すように、吊掛体30は、一対のプレート31と接合ピン32(接合手段の一例)とを備え、各プレート31は、上部にジブトップに支持される支持孔33と下部に接合ピン32が接合される接合孔34を夫々設けている。
【0022】
これにより、各プレート31は、ジブトップ12の一対の頂部滑車13間の略中央位置に、連結体40が挿脱可能な隙間sを有して支持され、連結体40が隙間sに挿入された後に接合ピン32によって接合することで、吊掛体30と連結体40との接合がなされる構成となっている。
【0023】
また、このとき、正面視において、各プレート31の下部は吊掛体30の中心線上で上すぼみのテーパ状に形成されている。これにより、連結体40は吊掛体30に挿入される際、テーパ部によって誘導され隙間sに納まることで、吊掛体30と確実に接合することができる。
【0024】
尚、本実施形態では、接合手段として接合ピン32を備えているが、接合手段は接合ピン32に限らず、ボルトで固定しても良いし、他の手段を用いても構わない。
また、連結体と接合ピン32との接合は手作業によって行っても良いし、次に述べるように自動で行うようにしても良い。例えば、接合ピン32の進行方向反対側に、シリンダなどの押出手段を設け、連結体40が吊掛体30に挿入時に検知手段(リミットスイッチなど)によって検知した信号をもとにシリンダを作動させることで、自動的に遠隔操作によって接合をするようにしても構わない。
【0025】
3.連結体40の構成
第3節では、吊掛体30に吊り掛けられ、又はフックブロック20内に格納される連結体40について説明する。
図5は、連結体40であって、図5(a)は正面図、図5(b)は側面図を夫々示している。図5に示すように、連結体40は、連結部41と一対の滑車支持部42等で構成されている。
【0026】
連結部41は、板状で形成され、上部には接合ピンと連結可能な連結孔46が貫通されており、下端には回り止めピン43が固定されている。これによって、連結体40が後述のフックブロック20の切欠き溝に挿入された際に、連結体40が一体に回転することなく、垂直な姿勢で維持することができる。
【0027】
各滑車支持部42は、板状で形成され、図5(b)に示すように、回り止めピン43を跨って連結部41に夫々間隔を有して固定されている。また、幅wは、後述のフックブロック20の切欠き溝22の幅jより長くなるように設けている。これによって、連結体40が切欠き溝22から外れることなく、後述のプレート21によって連結体40の動きを規制することができる。
【0028】
また、各滑車支持部42の各下部には、夫々を経由するガイドピン44が嵌合されており、このガイドピン44には、一対の滑車支持部42間に中間滑車45が回転可能な状態でガイドピン44の軸方向にn(本実施形態では2)個連設されている。このガイドピン44によって、連結体40は、フックブロック20の切欠き溝22に案内され、フックブロック20に確実に挿入することができる。
【0029】
尚、回り止めピン43とガイドピン44の夫々の長さは、特段限定しないが、最低限の機能を果たす、後述のフックブロック20の一対のプレート21間の距離以上であって、各ピンの両端部がフックブロック20の一対のプレート21から突出する状態であれば構わない。
【0030】
4.フックブロック20の構成
第4節では、連結体40が格納可能なフックブロック20について説明する。
図6は、フックブロック20であって、図6(a)は正面図、図6(b)は側面図を夫々示している。図6に示すように、フックブロック20は、一対のプレート21内で複数の滑車を格納する構成とされている。
【0031】
具体的には、図6(a)に示すように、一対のプレート21は略逆さ三角形状をしており、上端の中央部から鉛直方向に所定の長さを有した切欠き溝22が、夫々設けられている。
【0032】
また、下部にはフックピン23が夫々を経由するように嵌合されており、このフックピン23に吊フック24が嵌合されている。
【0033】
また、上部には一対の上部滑車ピン25が夫々のプレート21を経由するとともに、切欠き溝22を挟んで水平方向両側に嵌合されており、この各上部滑車ピン25に上部滑車26が夫々嵌合されている。
【0034】
このとき、各上部滑車26は、正面視において、一対の上部滑車26との間に少なくとも滑車1個分が納まる間隔を有して夫々設けられており、且つ、図6(b)に示すように、各上部滑車26は、側面視において、どちらか一方が軸方向において他方に重ならない程度の距離を有して配置されている。
【0035】
さらに、フックブロック2の略中央部(切欠き溝22とフックピン23との間)には、下部滑車ピン27が夫々のプレート21を経由するように嵌合されており、この下部滑車ピン27にn-1(本実施形態では1)個の下部滑車28が中間滑車の鉛直方向となる位置に嵌合され、且つ、図6(b)に示すように、側面視において、一対の上部滑車26間の中心に嵌合されている。尚、n-1が複数個の場合は、下部滑車ピン27の軸方向にn(本実施形態では2)個連設される。
【0036】
このように、一対の上部滑車26の間隔によって中間滑車45を備えた連結体40は、切欠き溝22に挿入される際、中間滑車45が各上部滑車26に干渉することなく、確実に挿入することが可能となる。
【0037】
5.ワイヤリング
以下、第1節~第4節での構成において、図1図4を用いて、ワイヤリングを説明する。尚、図1図3及び図4の各図面において、便宜上、正面視における右側を右、左側を左、手前側を手前、奥側を奥、天地の天側を上、地側を下と定義して説明する。
【0038】
図1図3及び図4に示すように、巻上機(不図示)から繰り出されたワイヤロープ11は、ジブトップ12に回転可能に設けられた一対の頂部滑車13のうち、右の頂部滑車13に巻掛けられてから垂下げられ、フックブロック20に設けられた右の上部滑車26に巻掛けられ(矢印I参照)、水平方向に送られてから連結体40に設けられた手前の中間滑車45に巻掛けられ(矢印II参照)、その後、垂下げられ、フックブロック20に設けられた下部滑車28に巻掛けられ(矢印III参照)、上向きに折り返され、奥の中間滑車に巻掛けられ(矢印IV参照)、水平方向に送られてから左の上部滑車26に巻掛けられてから上向きに折り返して左の頂部滑車13に巻掛けら、クレーン本体の旋回盤上に搭載された起伏機(不図示)に巻き付くようにしている。
【0039】
このとき、図2(a)及び図2(c)に示すように、右の上部滑車26と手前の中間滑車45は、各径方向において、同一線上となるように構成されている。同様に、左の上部滑車26と奥の中間滑車45も、各径方向において、同一線上となるように構成されている。
【0040】
さらに、フックブロック20の切欠き溝22の深さhは、連結体40の中間滑車45が切欠き溝22の下部に収まっている際に、ワイヤロープ11が中間滑車45の溝深さkの下部に常時収まるように設けられている。
【0041】
これにより、フックブロック20の掛け本数を切替える際に、必ず、中間滑車45にワイヤロープ11が掛け回されるため、確実に安全に切替えをすることが可能となる。
尚、矢印II~矢印IVの手順は、中間滑車45及び下部滑車28の個数が増えれば、複数回行うことで、フックブロック20の掛け本数を増やすことが可能となる。
【0042】
すなわち、中間滑車45に対する下部滑車28の個数は、中間滑車45の個数-1であるため、中間滑車45の個数を3とした場合、下部滑車28の個数は2となり、矢印II~矢印IVの手順を2回行うことで、2本吊り状態から8本吊り状態に切替えることが可能となる。
このように、中間滑車45の個数をピンの軸方向に増やし、それに伴い、下部滑車28の個数も中間滑車45の個数-1でピンの軸方向に増やすことで、フックブロック20は、略逆さ三角形状を変えることなく、幅方向のみ長さを変えるだけで掛け本数を増やすことができ、部品のモジュール化にもなり、カスタマイズ性の向上となる。
【0043】
6.切替え作用
次に、本実施形態による切替え作用を図1図3及び図4を用いて説明する。
図1は、2本吊り状態を示しており、通常の揚重作業時は、ワイヤロープ11によって2本吊り状態にあり、この時点ではフックブロック20の切欠き溝22には連結体40が嵌挿されている。
【0044】
まず、巻上機によりワイヤロープ11が巻き取られていくと、フックブロック20と連結体40とが一体に巻上げられ、吊掛体30の隙間sに連結体40の連結部41を進入することとなる。進入すると、連結部41に設けられた連結孔46に接合ピン32が挿入され、図3に示すように、吊掛体30と連結体40とが強固に連結される。
この状態(吊掛体30と連結体40とが連結された状態)で、巻上機によりワイヤロープ11が繰り出されていくと、図4に示すように、連結体40の中間滑車45にワイヤロープ11が巻掛けられた状態でフックブロック20のみが巻下されていき、6本吊り状態となる。
このとき、上述のように、各中間滑車45には、ワイヤロープ11が確実に巻掛けられているため、ワイヤロープ11が滑車から外れてピンにワイヤロープ11がかかることもなく、安全に2本吊り状態から6本吊り状態へと切替えをすることができる。
【0045】
次に、6本吊り状態から2本吊り状態に戻す作用を図4を用いて説明する。
まず、巻上機によりワイヤロープ11が巻き取られていくと、フックブロック20が巻上げられ、吊掛体30に固定されている連結体40のガイドピン44がフックブロック20の切欠き溝22に誘導されて侵入していく。切欠き溝22の下部にあたると、巻上機による巻取りが停止し、接合ピン32による接合が解除され、吊掛体30と連結体40とは分離可能となる。
このとき、連結体40の回り止めピン43は、切欠き溝22内に格納されている。
この状態(吊掛体30と連結体40とが分離可能状態)で、巻上機によりワイヤロープ11が繰り出されていくと、図1に示すように、フックブロック20と連結体40とが一体に巻下されていき、2本吊り状態となる。
このとき、回り止めピン43は切欠き溝22内に格納されているため、回り止めピン43は切欠き溝22によって回転方向の移動が規制され、連結体40はガイドピン44を支点として回転することなく、切欠き溝22内に確実に格納された状態となる。
【0046】
7.結言
以上のように、本実施形態によれば、建設工事用に使用され、吊荷の重量に応じて巻上げ・巻下しするワイヤロープの掛け本数を切替ることができるクレーンを実施することができる。
【0047】
かかるクレーンは、一方がクレーンのジブトップに支持され、他方に連結部を備える吊掛け体と、下部に吊フックが取り付けられ、上部に上向き開口の切欠き溝が設けられたフックブロックと、切欠き溝に挿脱可能、且つ連結部に連結可能な連結体と、を備え、フックブロックは、ジブトップに取り付けられた2個の頂部滑車に巻掛けられたワイヤロープによって巻上げ・巻下しがなされるクレーンであって、連結体は、下部にn(nは2以上の整数)個の中間滑車が滑車の軸方向に連設され、フックブロック内の上部には、一対の上部滑車が切欠き溝を挟んで水平方向に両側設けられ、フックブロック内の略中央部には、n-1個の下部滑車が中間滑車の鉛直方向に設けられ、ワイヤロープを巻上げて連結体を連結部に連結した後、ワイヤロープを巻下げたときには、中間滑車にワイヤロープが掛けられ2×(n+1)本吊り状態となり、ワイヤロープを巻上げて、連結体が切欠き溝に収納されワイヤロープが中間滑車の溝内に収まった状態で連結を解除したときには、連結体とフックブロックは一体に巻下げられ2本吊り状態に切替えられる構成とされる。
【0048】
また、建設工事用に使用され、吊荷の重量に応じて巻上げ・巻下しするワイヤロープの掛け本数を切替ることができるワイヤリング方法を実施することができる。
【0049】
かかるワイヤリング方法は、一方がクレーンのジブトップに支持され、他方に連結部を備える吊掛け体と、下部に吊フックが取り付けられ、上部に上向き開口の切欠き溝が設けられたフックブロックと、切欠き溝に挿脱可能、且つ連結部に連結可能な連結体と、を備え、フックブロックは、ジブトップに取り付けられた2個の頂部滑車に巻掛けられたワイヤロープによって巻上げ・巻下しがなされ、連結体は、下部にn(nは2以上の整数)個の中間滑車が滑車の軸方向に連設され、フックブロック内の上部には、一対の上部滑車が切欠き溝を挟んで水平方向に両側設けられ、フックブロック内の略中央部には、n-1個の下部滑車が中間滑車の鉛直方向に設けられ、頂部滑車のうち一方からワイヤロープが垂らされ、一対の上部滑車を夫々経由し、他方の頂部滑車へワイヤロープが掛け回されることで、フックブロックを巻上げ・巻下し可能にするワイヤリング方法であって、一対の上部滑車を夫々経由する過程において、一方の上部滑車からワイヤローブが、n個の中間滑車のうち該中間滑車の軸方向一方側に掛け回される工程aと、工程aの後、n-1個の下部滑車、或いはn-1個の下部滑車のうち該下部滑車の軸方向一方側に掛け回される工程bと、工程bの後、中間滑車の他方、或いは中間滑車の軸方向一方側から他方側に向けて次番手の中間滑車に掛け回される工程cと、を含み、工程a-工程cの手順を少なくとも1回行った後に、他方の上部滑車を経由される。
【符号の説明】
【0050】
10 クレーン
11 ワイヤロープ
12 ジブトップ
13 頂部滑車
20 フックブロック
22 切欠き溝
24 吊フック
26 上部滑車
28 下部滑車
30 吊掛体
40 連結体
41 連結部
45 中間滑車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7