(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】潜水用送気管理システム
(51)【国際特許分類】
B63C 11/20 20060101AFI20230210BHJP
G08B 21/14 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
B63C11/20
G08B21/14
(21)【出願番号】P 2019046844
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】596080879
【氏名又は名称】國富株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【氏名又は名称】西山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】佐川 功
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-067244(JP,A)
【文献】特開2017-154678(JP,A)
【文献】特開平11-014546(JP,A)
【文献】特開2002-068081(JP,A)
【文献】特開2018-188052(JP,A)
【文献】米国特許第04195628(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/20
G08B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を供給するコンプレッサーと、前記コンプレッサーから潜水士の元に送気する第1のラインと、前記第1のラインから分岐してガス検知ボックスを備える第2のラインと、前記第1のラインの途中に設けられている
第1の電磁弁と、
非常用空気槽と第2の電磁弁とを備え前記第1の電磁弁より下流側で前記第1のラインに合流する第3のラインと、を有し、
常時に前記第1の電磁弁が開、かつ、前記第2の電磁弁が閉であって、
前記ガス検知ボックスが設定濃度以上の異常ガスを検知したとき、
前記第1及び第2の電磁弁に制御信号が送信され、前記第1の電磁弁が閉、かつ、前記第2の電磁弁が開になることを特徴とする潜水用送気管理システム。
【請求項2】
前記ガス検知ボックスの検知する異常ガスが、一酸化炭素、酸素、可燃性ガス及び硫化水素のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項
1に記載の潜水用送気管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送気式潜水において、常に安全な空気を供給するための潜水用送気管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送気式潜水は、船上や陸上に設置したコンプレッサーで外気を取り込み、圧縮空気として潜水士に供給する潜水方式である。
【0003】
図5は、従来の送気式潜水システムの概念図である。送気式潜水システム100は、外気を取り込むコンプレッサー20と、そのコンプレッサー20から圧縮空気を潜水士80に送気するラインを有している。なお、圧縮空気をレギュレータによって減圧することで、潜水士80は呼吸できる。
【0004】
一般的にラインの途中には予備空気槽31が設けられており、コンプレッサー20に故障等の不具合が生じた場合でも、予備空気槽31に蓄えられた空気を使って、一定時間は潜水士80へ空気を供給できる構成になっている。なお、潜水士80は非常用ボンベ81を携えていることで、更に安全性が確保されている。
【0005】
このような送気式潜水は、コンプレッサー20が取り込んだ外気を圧縮して送気するという構成なので、外気が排気ガスなどで汚染されているような場合には、潜水士80は有害な空気を吸うことになる。そこで、特許文献1では、携帯型CO検出警報装置をシステムに組み込むことで、コンプレッサー20から送気される空気の一酸化炭素濃度がある設定値を超えたときに、警報を発するという発明が開示されている。
【0006】
図6は、CO検出器を備えた送気式潜水システムの概念図である。CO検出器を備えた送気式潜水システム101は、従来の送気式潜水の構成に加え、CO検出器102が送気ラインの途中またはラインを分岐して設けられている。なお、
図6は分岐した図である。そして、CO検出器102が設定濃度以上の一酸化炭素を含んでいることを検知すると、ブザーや回転灯などの警報機103を作動させ、オペレータに知らせるシステムになっている。オペレータは、警報を認知するとコンプレッサー20の作動を止め、空気の供給を停止し、潜水士80に異常を知らせる。
【0007】
しかし、このようなシステムでは、警報が発せられた後、オペレータが潜水士80へ連絡して、非常用ボンベ81等に切り替えをするまでの間は、潜水士80は予備空気槽31に蓄えられている空気を吸うことになる。つまり、停止作業や潜水士80への連絡が遅れた場合などには、潜水士80は高濃度の一酸化炭素を含む異常ガスを吸気してしまう危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような事情に鑑み、本発明では、供給される空気に一酸化炭素などの異常ガスが設定濃度以上含まれていることを検知すると、直ぐに潜水士への空気の供給を停止し、潜水士の安全を確保する潜水用送気管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の潜水用送気管理システムは、圧縮空気を供給するコンプレッサーと、そのコンプレッサーから潜水士の元に送気する第1のラインと、その第1のラインから分岐してガス検知ボックスを備える第2のラインと、第1のラインの途中に設けられている電磁弁と、を有し、ガス検知ボックスが設定濃度以上の異常ガスを検知したとき、電磁弁に制御信号が送信され、電磁弁が閉になるシステムとする。
【0011】
さらに、前記電磁弁を第1の電磁弁とし、非常用空気槽と第2の電磁弁とを備え第1の電磁弁より下流側で第1のラインに合流する第3のラインを有し、常時に第1の電磁弁が開、かつ、第2の電磁弁が閉であって、ガス検知ボックスが設定濃度以上の異常ガスを検知したとき、第1及び第2の電磁弁に制御信号が送信され、第1の電磁弁が閉、かつ、第2の電磁弁が開になる潜水用送気管理システムにするとよい。
【0012】
また、非常用空気槽を備える第3のラインを有し、電磁弁が、第1の入口、第2の入口、及び出口、を備える3方向の電磁弁であって、第1の入口及び出口は第1のラインと接続し、第2の入口は前記第3のラインと接続し、電磁弁は、常時に第1の入口が開、かつ、第2の入口が閉であって、ガス検知ボックスが設定濃度以上の異常ガスを検知したとき、電磁弁に制御信号が送信され、第1の入口が閉、かつ、第2の入口が開になる潜水用送気管理システムとしてもよい。
【0013】
また、ガス検知ボックスの検知する異常ガスが、一酸化炭素、酸素、可燃性ガス及び硫化水素のうち少なくとも1つを含むこととするとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の潜水用送気管理システムを使用すれば、供給される空気が一酸化炭素などの異常ガスを設定濃度以上含んでいることを検知したときに制御信号を発することで、自動的に空気の供給を停止するので、早急に潜水士の安全を確保することができるという効果を奏する。
【0015】
さらに、異常ガスを含む空気の供給を停止するのと同時に、非常用空気槽からの空気の供給に切り替えることで、潜水士は安全に継続して潜水作業を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の潜水用送気管理システムの概念図である。
【
図2】非常用空気槽を備えた潜水用送気管理システムの概念図である。
【
図3】3方向の電磁弁を用いた潜水用送気管理システムの概念図である。
【
図4】3方向の電磁弁の概略断面図であって、(a)は常時、(b)は異常時である。
【
図6】CO検出器を備えた送気式潜水システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の潜水用送気管理システムの概念図である。本発明の潜水用送気管理システム10は、船上や陸上にコンプレッサー20を設置し、そのコンプレッサー20によって外気を取り込み、圧縮空気を潜水士80に供給する送気式潜水をより安全に実施するためのシステムである。
【0019】
コンプレッサー20から潜水士80に送気するラインを第1のライン30とし、第1のライン30の途中には電磁弁60が備えられている。したがって、電磁弁60は、常時は開になっている。なお、潜水士80の元では、レギュレータによって圧縮空気が減圧され、潜水士80の呼吸を可能としている。
【0020】
第1のライン30は、途中でガス検知ボックス41を備える第2のライン40に分岐されている。ガス検知ボックス41はボックス内に4種ガス検知器などの複合型ガス検知器を備えており、第2のライン40から減圧弁を介して空気を取り入れ、一酸化炭素(CO)だけでなく、酸素(O2)、可燃性ガス(CH4など)、硫化水素(H2S)といった複数の異常ガスの濃度が測定できる構成になっている。また、濃度測定した空気は、ガス検知ボックス41から大気中に排出される。なお、このようなガス検知ボックス41に備えられる複合型ガス検知器は、市販やレンタルされているものを用いることができるので、容易に入手できる。
【0021】
ガス検知ボックス41において少なくとも1つの異常ガスが設定濃度以上であることを検知すると、ガス検知ボックス41から電磁弁60に制御信号が送信され、制御信号を受信した電磁弁60は閉になる。このとき、制御信号と同時に警報を発することにしておくと、オペレータは直ぐに異常を認知することができ、素早くその後の対応を取ることができる。警報の種類は特に限定せず、ブザーや回転灯のほか、空気起動の目印のようなものであってもよい。
【0022】
なお、一般的には、第1のライン30の途中に予備空気槽31が設けられていて、コンプレッサー20の不具合などに備えて、圧縮空気を蓄えておくことができる。つまり、コンプレッサー20が故障等の不具合を生じた場合は、予備空気槽31に蓄えられた空気を潜水士80に送気することになる。しかし、ガス検知ボックス41において異常ガスが設定濃度以上含まれていることを検知した場合は、既に予備空気槽31の中にも異常ガスが含まれている可能性が高いことから、予備空気槽31に蓄えられている空気を継続して供給するのは望ましくない。したがって、異常ガス検知時には予備空気槽31からの送気も停止するために、電磁弁60は予備空気槽31の下流側に設けることが望ましい。
【0023】
なお、制御信号によって電磁弁60が閉になるので、潜水士80に空気が供給されなくなるのだが、潜水士80は非常用ボンベ81を携えて潜水しているので、レギュレータから空気が吸えなくなったことに気付いた際には、非常用ボンベ81に切り替えて、浮上することが可能である。
【0024】
しかし、潜水士への空気の供給を停止し、直ぐに非常用ボンベに切り替えさせるとすると、潜水士は、潜水作業を中断して早目に浮上しなければならなくなるので、作業の終盤などでは、あまり効率がよくないこともある。また、一時的にではあるが、潜水士に空気が供給されなくなるので、潜水士の対応が遅れると大惨事につながる恐れもある。そこで、潜水士が携えている非常用ボンベとは別に非常用空気槽を予めシステムに組み込んでおき、設定濃度以上の異常ガスを検知したときに、自動的に非常用空気槽からの供給に切り替えられることにしてもよい。
【0025】
図2は、非常用空気槽を備えた潜水用送気管理システムの概念図である。非常用空気槽を備えた潜水用送気管理システム11は、非常用空気槽51を備える第3のライン50を有し、第1のライン30の途中に第1の電磁弁61、第3のライン50に第2の電磁弁62を設けている。ここで、第3のライン50は、第1の電磁弁61よりも下流側で第1のライン30に合流することとする。そして、常時においては、第1の電磁弁61は開、かつ、第2の電磁弁62は閉とする。そうすることによって、常時は、コンプレッサー20からの圧縮空気が潜水士80に供給されることになり、非常用空気槽51からの空気は供給されない。
【0026】
第1のライン30から分岐してガス検知ボックス41を備えた第2のライン40を設ける構成は
図1に示した潜水用送気管理システム10と同様とする。そして、ガス検知ボックス41において、設定濃度以上の異常ガスを検知した場合に、第1の電磁弁61及び第2の電磁弁62にそれぞれ制御信号が送信され、第1の電磁弁61は閉、かつ、第2の電磁弁62は開にする。つまり、異常時には、コンプレッサー20からの圧縮空気の供給が止められ、非常用空気槽51からの空気が供給されることになる。また、制御信号の送信と同時に警報を発するようにしておくのが好ましい。
【0027】
このような構成の非常用空気槽を備えた潜水用送気管理システム11では、コンプレッサー20からの異常ガスを含む空気の供給を停止するのと同時に、非常用空気槽51からの安全な空気の供給に切り替えることができるので、潜水士80は、しばらくの間は継続して潜水作業を行うことができることになる。
【0028】
非常用空気槽を備えた潜水用送気管理システム11では電磁弁を2カ所に設けていたが、電磁弁を3方向の電磁弁にすれば、電磁弁の制御を1カ所に限定することができる。
図3は、3方向の電磁弁を用いた潜水用送気管理システムの概念図である。3方向の電磁弁を用いた潜水用送気管理システム12は、非常用空気槽51を備える第3のライン50を有し、3方向の電磁弁63を用いて空気の供給方法を制御するシステムである。
【0029】
第1のライン30から分岐してガス検知ボックス41を備えた第2のライン40を設ける構成は
図1に示した潜水用送気管理システム10や
図2に示した非常用空気槽を備えた潜水用送気管理システム11と同様であり、設定濃度以上の異常ガスを検知した場合に、3方向の電磁弁63に制御信号が送信される。なお、制御信号と同時に警報を発するようにしてもよい。
【0030】
図4は、3方向の電磁弁の概略断面図であって、(a)は常時、(b)は異常時である。3方向の電磁弁63は、第1の入口60a、第2の入口60b、及び出口60c、を備えており、第1の入口60aは第1のライン30のコンプレッサー側、出口60cは第1のライン30の潜水士側、第2の入口60bは第3のライン50とそれぞれ接続している。この電磁弁63は、常時に第1の入口60aが開、かつ、第2の入口60bが閉となっているが、設定濃度以上の異常ガスを検知した異常時には、ガス検知ボックス41から制御信号が送信され、第1の入口60aが閉、かつ、第2の入口60bが開になる。
【0031】
なお、3方向の電磁弁63において、第1の入口60aと第2の入口60bは、一方が開のときは他方が閉になる構造なので、一つの制御信号で、送気ラインを変更することが可能である。つまり、常時には、第1のライン30を通ってコンプレッサー20から潜水士80に圧縮空気が送気されるが、異常時には、第1のライン30は電磁弁63の第1の入口60aで閉じられ、替わりに非常用空気槽51を有する第3のライン50から電磁弁63を介して潜水士80に圧縮空気が送気されることになる。
【0032】
以上より、コンプレッサー20からの異常ガスを含む空気の供給を停止するのと同時に、非常用空気槽51からの空気の供給に切り替えることができるので、潜水士80は、しばらくの間は継続して安全に潜水作業を行うことができることになる。さらに、電磁弁63が1つでよく、制御信号も1カ所に送信すればよいので、システムをシンプルにすることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 潜水用送気管理システム
11 非常用空気槽を備えた潜水用送気管理システム
12 3方向の電磁弁を用いた潜水用送気管理システム
20 コンプレッサー
30 第1のライン
31 予備送気槽
40 第2のライン
41 ガス検知ボックス
50 第3のライン
51 非常用空気槽
60 電磁弁
61 第1の電磁弁
62 第2の電磁弁
63 (3方向の)電磁弁
63a 第1の入口
63b 第2の入口
63c 出口
80 潜水士
81 非常用ボンベ
100 送気式潜水システム
101 CO検出器を備えた送気式潜水システム
102 CO検出器
103 警報機