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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20230210BHJP
【FI】
A61M1/16 140
A61M1/16 111
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019052351
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020151191
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】古橋 智洋
(72)【発明者】
【氏名】真木 秀人
(72)【発明者】
【氏名】フェレンツ カヅィンツィ
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/174419(WO,A1)
【文献】特開2014-000168(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104720(WO,A1)
【文献】特開2016-195812(JP,A)
【文献】特開2011-007577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化器を介して患者の血液が体外循環する血液回路と、
前記血液浄化器若しくは前記血液回路に供給される供給液が流通する供給液ライン、及び前記血液浄化器から排出される供給液の排液が流通する供給液排液ラインを有する供給液回路と、
前記供給液回路において前記供給液または前記排液を貯留する貯留チャンバと、
前記供給液回路において前記貯留チャンバの送液方向上流側に配置され、前記貯留チャンバに前記供給液または前記排液を導入する液導入ポンプと、
前記供給液回路において前記貯留チャンバの送液方向下流側に配置され、前記貯留チャンバから前記供給液または前記排液を導出する液導出ポンプと、
前記貯留チャンバの残量を検出する検出部と、
前記液導入ポンプが前記貯留チャンバに導入する前記供給液または排液の導入量、前記液導出ポンプが前記貯留チャンバから導出する前記供給液または排液の導出量、及び前記検出部が検出する前記貯留チャンバの残量に基づいて、前記供給液ライン若しくは供給液排液ラインの閉塞、又は前記貯留チャンバへの前記供給液の不足を原因とした前記供給液回路の送液状態の異常を検出する異常検出部と、を具備する血液浄化装置。
【請求項2】
前記異常検出部は、前記液導入ポンプの導入量及び前記液導出ポンプの導出量に応じた前記貯留チャンバの残量理論値と、前記検出部が検出する検出値に応じた残量実測値との差分に基づいて、前記供給液回路の送液状態の異常を検出する請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記貯留チャンバが前記排液を貯留するものであって、前記異常検出部は、前記残量理論値から前記残量実測値を減算した前記差分が閾値より高くなったことを条件として前記供給液排液ラインの閉塞を検出する請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記貯留チャンバが前記排液を貯留するものであって、前記異常検出部は、前記差分の変化量または変化速度に応じて前記供給液排液ラインの完全な閉塞と、前記供給液排液ラインの不完全な閉塞または前記液導入ポンプ若しくは液導出ポンプの異常とを判別する請求項3記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記貯留チャンバに供給する供給液が収容された供給液収容部を具備するとともに、前記異常検出部は、前記残量理論値から前記残量実測値を減算した前記差分が閾値より低くなったことを条件として前記供給液収容部内の供給液の不足を検出する請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記異常検出部が異常を検出したことを報知する報知部を具備するとともに、当該報知部は、前記差分に応じた報知を行う請求項2~5の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記貯留チャンバの重量を検出する重量計である請求項1~6の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記液導入ポンプ及び液導出ポンプは、駆動量に対して吐出量が一定とされた蠕動ポンプである請求項1~7の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項9】
前記貯留チャンバは、前記供給液回路において前記供給液を貯留する供給液貯留チャンバと、前記供給液回路において前記排液を貯留する排液貯留チャンバと、を有し、
前記検出部は、前記供給液貯留チャンバ及び前記排液貯留チャンバの残量を検出し、
前記検出部が検出する残量に基づいて前記血液回路の水収支量を算出する、請求項1~8の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項10】
前記貯留チャンバは、前記供給液回路において前記供給液を貯留する供給液貯留チャンバと、前記供給液回路において前記排液を貯留する排液貯留チャンバと、を有し、
前記液導入ポンプは、前記供給液回路において前記供給液貯留チャンバの送液方向上流側に配置され、前記供給液貯留チャンバに前記供給液を導入する供給液導入ポンプと、前記供給液回路において前記排液貯留チャンバの送液方向上流側に配置され、前記排液貯留チャンバに前記排液を導入する排液導入ポンプと、を有し、
前記液導出ポンプは、前記供給液回路において前記供給液貯留チャンバの送液方向下流側に配置され、前記供給液貯留チャンバから前記供給液を導出する供給液導出ポンプと、前記供給液回路において前記排液貯留チャンバの送液方向下流側に配置され、前記排液貯留チャンバから前記排液を導出する排液導出ポンプと、を有する請求項1~9の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血液を体外循環させつつ浄化するための血液浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、透析治療を行うための血液浄化装置は、患者の血液を体外循環させるための血液回路を構成する脱血側血液回路及び返血側血液回路と、血液回路にて体外循環する血液を浄化するための血液浄化手段と、血液回路及び血液浄化手段にて血液浄化治療させるための血液ポンプ等の種々の治療手段が配設された装置本体とを具備している。脱血側血液回路及び返血側血液回路の先端には、それぞれバスキュラーアクセスカテーテル、或いは穿刺針(脱血側穿刺針及び返血側穿刺針)が取り付け可能とされる。
【0003】
そして、例えば脱血側穿刺針及び返血側穿刺針を患者に穿刺した後、血液ポンプを駆動させることにより、患者の血液が脱血側血液回路及び返血側血液回路を流動することとなり、その流動過程において血液浄化手段にて血液浄化されるようになっている。また、透析治療においては、血液浄化手段に透析液を導入するための透析液導入ラインと、血液浄化手段から排液を排出するための排液排出ラインとがそれぞれ血液浄化手段に接続されている。
【0004】
ところで、血液浄化治療においては、血液浄化器の透析液流路に透析液を流通させることにより、血液浄化膜を介して血液中の物質を拡散作用によって除去する血液透析治療(HD)、血液浄化器において限外濾過圧の作用によって血液中の水分及び物質を除去し、除去した水分と同量の補充液を血液中に注入する血液濾過治療(HF)、血液透析治療(HD)及び血液濾過治療(HF)を同時に行う血液透析濾過(HDF)なる治療法が確立されており、特に急性腎不全等の疾患を有する患者に対して血液浄化治療を行う場合、その患者の容態に合わせて、血液透析(HD)、血液濾過(HF)及び血液透析濾過(HDF)を一治療過程で切り替えて行うこと必要がある。
【0005】
このようなニーズに応えるべく、例えば特許文献1にて開示されているように、従来、透析液や補液を貯留する供給液貯留チャンバと、供給液排液を貯留する排液貯留チャンバとを具備するとともに、供給液貯留チャンバに供給液を導入しつつ排液貯留チャンバに貯留された供給液排液を排出する充填工程と、供給液貯留チャンバに貯留された供給液及び排液貯留チャンバに貯留された供給液排液の重量を重量計で計測する計測工程とを実行していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の血液浄化装置においては、排液貯留チャンバから装置外部に供給液排液を排出する流路が閉塞している場合、或いは供給液貯留チャンバに供給する供給液が不足している場合などの装置の異常を検出する場合、専用のセンサ(圧力センサ等)が必要とされるので、コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、専用のセンサ等を具備することなく安価に装置の異常を検出することができ、コストを低下することができる血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、血液浄化器を介して患者の血液が体外循環する血液回路と、前記血液浄化器若しくは前記血液回路に供給される供給液が流通する供給液ライン、及び前記血液浄化器から排出される供給液の排液が流通する供給液排液ラインを有する供給液回路と、前記供給液回路において前記供給液または前記排液を貯留する貯留チャンバと、前記供給液回路において前記貯留チャンバの送液方向上流側に配置され、前記貯留チャンバに前記供給液または前記排液を導入する液導入ポンプと、前記供給液回路において前記貯留チャンバの送液方向下流側に配置され、前記貯留チャンバから前記供給液または前記排液を導出する液導出ポンプと、前記貯留チャンバの残量を検出する検出部と、前記液導入ポンプが前記貯留チャンバに導入する前記供給液または排液の導入量、前記液導出ポンプが前記貯留チャンバから導出する前記供給液または排液の導出量、及び前記検出部が検出する前記貯留チャンバの残量に基づいて、前記供給液ライン若しくは供給液排液ラインの閉塞、又は前記貯留チャンバへの前記供給液の不足を原因とした前記供給液回路の送液状態の異常を検出する異常検出部と、を具備する。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の血液浄化装置において、前記異常検出部は、前記液導入ポンプの導入量及び前記液導出ポンプの導出量に応じた前記貯留チャンバの残量理論値と、前記検出部が検出する検出値に応じた残量実測値との差分に基づいて、前記供給液回路の送液状態の異常を検出する。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の血液浄化装置において、前記貯留チャンバが前記排液を貯留するものであって、前記異常検出部は、前記残量理論値から前記残量実測値を減算した前記差分が閾値より高くなったことを条件として前記供給液排液ラインの閉塞を検出する。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の血液浄化装置において、前記貯留チャンバが前記排液を貯留するものであって、前記異常検出部は、前記差分の変化量または変化速度に応じて前記供給液排液ラインの完全な閉塞と、前記供給液排液ラインの不完全な閉塞または前記液導入ポンプ若しくは液導出ポンプの異常とを判別する。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項2に記載の血液浄化装置において、前記貯留チャンバに供給する供給液が収容された供給液収容部を具備するとともに、前記異常検出部は、前記残量理論値から前記残量実測値を減算した前記差分が閾値より低くなったことを条件として前記供給液収容部内の供給液の不足を検出する。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項2~5の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記異常検出部が異常を検出したことを報知する報知部を具備するとともに、当該報知部は、前記差分に応じた報知を行う。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項1~6の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記検出部は、前記貯留チャンバの重量を検出する重量計である。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1~7の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記液導入ポンプ及び液導出ポンプは、駆動量に対して吐出量が一定とされた蠕動ポンプである。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項1~8の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記貯留チャンバは、前記供給液回路において前記供給液を貯留する供給液貯留チャンバと、前記供給液回路において前記排液を貯留する排液貯留チャンバと、を有し、前記検出部は、前記供給液貯留チャンバ及び前記排液貯留チャンバの残量を検出し、前記検出部が検出する残量に基づいて前記血液回路の水収支量を算出する。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項1~9の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記貯留チャンバは、前記供給液回路において前記供給液を貯留する供給液貯留チャンバと、前記供給液回路において前記排液を貯留する排液貯留チャンバと、を有し、前記液導入ポンプは、前記供給液回路において前記供給液貯留チャンバの送液方向上流側に配置され、前記供給液貯留チャンバに前記供給液を導入する供給液導入ポンプと、前記供給液回路において前記排液貯留チャンバの送液方向上流側に配置され、前記排液貯留チャンバに前記排液を導入する排液導入ポンプと、を有し、前記液導出ポンプは、前記供給液回路において前記供給液貯留チャンバの送液方向下流側に配置され、前記供給液貯留チャンバから前記供給液を導出する供給液導出ポンプと、前記供給液回路において前記排液貯留チャンバの送液方向下流側に配置され、前記排液貯留チャンバから前記排液を導出する排液導出ポンプと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、供給液回路において供給液または排液を貯留する貯留チャンバと、供給液回路において貯留チャンバの送液方向上流側に配置され、貯留チャンバに供給液または排液を導入する液導入ポンプと、供給液回路において貯留チャンバの送液方向下流側に配置され、貯留チャンバから供給液または排液を導出する液導出ポンプと、貯留チャンバの残量を検出する検出部と、液導入ポンプが貯留チャンバに導入する供給液または排液の導入量、液導出ポンプが貯留チャンバから導出する供給液または排液の導出量、及び検出部が検出する貯留チャンバの残量に基づいて、供給液ライン若しくは供給液排液ラインの閉塞、又は貯留チャンバへの供給液の不足を原因とした供給液回路の送液状態の異常を検出する異常検出部と、を具備するので、専用のセンサ等を具備することなく安価に装置の異常を検出することができ、コストを低下することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、異常検出部は、液導入ポンプの導入量及び液導出ポンプの導出量に応じた貯留チャンバの残量理論値と、検出部が検出する検出値に応じた残量実測値との差分に基づいて、供給液回路の送液状態の異常を検出するので、精度よく装置の異常を検出することができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、異常検出部は、貯留チャンバが排液を貯留するものであって、残量理論値から残量実測値を減算した差分が閾値より高くなったことを条件として供給液排液ラインの閉塞を検出するので、供給液排液ラインの閉塞によって貯留チャンバ内の供給液の排液が溢れてしまうのを回避することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、貯留チャンバが排液を貯留するものであって、異常検出部は、差分の変化量または変化速度に応じて供給液排液ラインの完全な閉塞と、供給液排液ラインの不完全な閉塞または液導入ポンプ若しくは液導出ポンプの異常とを判別するので、供給液排液ラインの閉塞と他の異常とを区別して対応させることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、貯留チャンバに供給する供給液が収容された供給液収容部を具備するとともに、異常検出部は、残量理論値から残量実測値を減算した差分が閾値より低くなったことを条件として供給液収容部内の供給液の不足を検出するので、供給液の不足によって供給液貯留チャンバが空になってしまうのを回避することができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、異常検出部が異常を検出したことを報知する報知部を具備するとともに、当該報知部は、差分に応じた報知を行うので、異常に対する措置を素早く行わせることができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、検出部は、貯留チャンバの重量を検出する重量計であるので、重量計で検出した重量により貯留チャンバの重量バランスを監視することができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、液導入ポンプ及び液導出ポンプは、駆動量に対して吐出量が一定とされた蠕動ポンプであるので、液導入ポンプの駆動量及び液導出ポンプの駆動量に基づく残量理論値を高精度に求めることができる。
【0027】
請求項9の発明によれば、貯留チャンバは、供給液回路において供給液を貯留する供給液貯留チャンバと、供給液回路において排液を貯留する排液貯留チャンバと、を有し、検出部は、供給液貯留チャンバ及び排液貯留チャンバの残量を検出し、検出部が検出する残量に基づいて血液回路の水収支量を算出するので、専用のセンサ等を具備することなく安価に装置の異常を検出することができ、コストを低下することができる。
【0028】
請求項10の発明によれば、貯留チャンバは、供給液回路において供給液を貯留する供給液貯留チャンバと、供給液回路において排液を貯留する排液貯留チャンバと、を有し、液導入ポンプは、供給液回路において供給液貯留チャンバの送液方向上流側に配置され、供給液貯留チャンバに供給液を導入する供給液導入ポンプと、供給液回路において排液貯留チャンバの送液方向上流側に配置され、排液貯留チャンバに排液を導入する排液導入ポンプと、を有し、液導出ポンプは、供給液回路において供給液貯留チャンバの送液方向下流側に配置され、供給液貯留チャンバから供給液を導出する供給液導出ポンプと、供給液回路において排液貯留チャンバの送液方向下流側に配置され、排液貯留チャンバから排液を導出する排液導出ポンプと、を有するので、精度よく装置の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図2】同血液浄化装置の異常検出部による異常の検出方法(異常がない場合)を示すグラフ
図3】同血液浄化装置の異常検出部による異常の検出方法(差分が上限の閾値を超えた場合)を示すグラフ
図4】同血液浄化装置の異常検出部による異常の検出方法(差分が下限の閾値を超えた場合)を示すグラフ
図5】同血液浄化装置の異常検出部による異常の検出のためのフローチャート
図6】本発明の他の実施形態に係る血液浄化装置における排液貯留チャンバの状態を示す模式図
図7】本発明の他の実施形態に係る血液浄化装置における供給液貯留チャンバの状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、患者の血液を体外循環させつつ浄化するための血液透析装置に適用されたもので、図1に示すように、脱血側血液回路1a及び返血側血液回路1bを有する血液回路1と、脱血側血液回路1a及び返血側血液回路1bの間に介装されて血液回路1を流れる血液を浄化するダイアライザ2(血液浄化器)と、第1透析液導入ラインL1a及び第2透析液導入ラインL1bと、第1補液ラインL2a、第2補液ラインL2bと、前補液ラインL2c及び後補液ラインL2dと、第1排液排出ラインL3a及び第2排液排出ラインL3bと、血液ポンプP1と、透析液導入ポンプP2と、第1補液ポンプP3と、排液排出ポンプP4と、透析液移送ポンプP5と、補液移送ポンプP6と、排液移送ポンプP7と、第2補液ポンプP8と、重量計4(検出部)と、異常検出部5と、報知部6と、第1加温器H1及び第2加温器H2とを具備して構成されている。
【0031】
また、ダイアライザ2に供給する透析液及び血液回路1に供給する補充液は、本発明の供給液であり、透析液収容バッグB1及び補充液収容バッグB2は、供給液を収容する供給液収容部である。さらに、補充液貯留チャンバK1及び透析液貯留チャンバK2は、本発明の供給液貯留チャンバであり、重量計4は、本発明の検出部であるとともに、第1透析液導入ラインL1a、第2透析液導入ラインL1b、第1補液ラインL2a及び第2補液ラインL2bは、本発明の供給液ラインであり、第1排液排出ラインL3a及び第2排液排出ラインL3bは、本発明の供給液排液ラインである。かかる供給液ラインは、ダイアライザ2(血液浄化器)若しくは血液回路1に供給される供給液が流通する可撓性チューブから成るとともに、供給液排液ラインは、ダイアライザ2(血液浄化器)から排出される供給液排液が流通する可撓性チューブから成り、これら供給液ライン及び供給液排液ラインを供給液回路と称する。
【0032】
またさらに、透析液移送ポンプP5及び補液移送ポンプP6は、供給液回路において供給液貯留チャンバ(補充液貯留チャンバK1及び透析液貯留チャンバK2)の送液方向上流側に配置され、供給液貯留チャンバ(補充液貯留チャンバK1及び透析液貯留チャンバK2)供給液を導入する液導入ポンプであり、透析液導入ポンプP2及び第1補液ポンプP3は、供給液回路において貯留チャンバ(補充液貯留チャンバK1及び透析液貯留チャンバK2)の送液方向下流側に配置され、貯留チャンバ(補充液貯留チャンバK1及び透析液貯留チャンバK2)から供給液を導出する液導出ポンプである。
【0033】
加えて、排液排出ポンプP4は、供給液回路において排液貯留チャンバK3の送液方向上流側に配置され、排液貯留チャンバK3に供給液排液を導入する液導入ポンプであり、排液移送ポンプP7は、供給液回路において排液貯留チャンバK3の送液方向下流側に配置され、排液貯留チャンバK3から供給液排液を導出する液導出ポンプである。
【0034】
なお、図中符号Pa、Pbは、圧力センサを示している。また、本実施形態に係る血液ポンプP1、透析液導入ポンプP2、第1補液ポンプP3、排液排出ポンプP4、透析液移送ポンプP5、補液移送ポンプP6、排液移送ポンプP7及び第2補液ポンプP8は、流路を構成する可撓性チューブをしごいて送液するしごき型ポンプにて構成されている。かかるしごき型ポンプは、駆動量に対して吐出量が一定とされた蠕動ポンプから成る。
【0035】
また、血液ポンプP1、透析液導入ポンプP2、第1補液ポンプP3、排液排出ポンプP4、透析液移送ポンプP5、補液移送ポンプP6、排液移送ポンプP7及び第2補液ポンプP8は、モータ等の各駆動源(不図示)に、ギア等の駆動伝達部材を介して接続されており、各駆動源の駆動力が供給されて、ポンプとして動作可能に構成されている。また、各駆動源(モータ)には、駆動量(回転量)を検出するために、駆動量検出部としてエンコーダが設けられている。これにより、駆動量検出部が検出する駆動量に基づいて、適切に各駆動源の駆動制御を行うことが可能である。また、詳細は後述するが、異常検出部5は、上記駆動量検出部が検出する各ポンプP1~P8の駆動量を用いて、異常検出を行っている。
【0036】
脱血側血液回路1a及び返血側血液回路1bには、それぞれの先端にコネクタが接続されており、当該コネクタを介して脱血側穿刺針及び返血側穿刺針(不図示)が接続可能とされている。そして、脱血側血液回路1aの先端に接続された脱血側穿刺針及び返血側血液回路1bの先端に接続された返血側穿刺針を患者に穿刺した状態で、血液ポンプP1を駆動させると、血液回路1にて患者の血液を体外循環させ得るようになっている。
【0037】
すなわち、脱血側穿刺針及び返血側穿刺針を患者に穿刺した状態において、血液ポンプP1を駆動させると、患者の血液は、脱血側血液回路1aを通ってダイアライザ2に至り、ダイアライザ2によって血液浄化が施された後、返血側血液回路1bを通って患者の体内に戻るようになっている。なお、本明細書においては、血液を脱血(採血)する穿刺針の側を「脱血側」と称し、血液を返血する穿刺針の側を「返血側」と称しており、「脱血側」及び「返血側」とは、穿刺の対象となる血管が動脈及び静脈の何れかによって定義されるものではない。
【0038】
また、返血側血液回路1bの途中には、エアトラップチャンバ3が接続されており、血液回路1にて体外循環する血液は、当該エアトラップチャンバ3にて気泡が取り除かれた後、患者に戻ることとなる。なお、脱血側穿刺針及び返血側穿刺針を患者の血管に穿刺する形態に代えて、ダブルルーメンカテーテルを患者の鎖骨下静脈或いは大腿静脈に挿入、或いは患者の腕の血管に挿入する等の形態であってもよい。
【0039】
ダイアライザ2は、血液を導入可能な血液導入ポート2aと、血液を導出可能な血液導出ポート2bと、透析液を導入可能な透析液導入ポート2cと、透析液を導出可能な透析液導出ポート2dと、血液導入ポート2a及び血液導出ポート2bに亘って延設されて血液を流通可能な血液流路(不図示)と、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dに亘って延設されて透析液を流通可能な透析液流路(不図示)と、血液流路と透析液流路との間に介在して当該血液流路を流通する血液を浄化し得る血液浄化膜(不図示)とを有している。
【0040】
より具体的には、ダイアライザ2は、その筐体部に、血液導入ポート2a、血液導出ポート2b、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dが突出形成されており、このうち血液導入ポート2aには脱血側血液回路1aが、血液導出ポート2bには返血側血液回路1bがそれぞれ接続されるとともに、透析液導入ポート2cには第2透析液導入ラインL1bが、透析液導出ポート2dには第1排液排出ラインL3aがそれぞれ接続されるようになっている。さらに、効率的な透析治療を行わせるために、血液の入り口である血液導入ポート2aと透析液の入り口である透析液導入ポート2cの上下方向の位置関係が逆になっており、血液流路にて流通する血液と対向する向きに透析液が流通するよう構成されている。
【0041】
また、ダイアライザ2内には、複数の中空糸膜が収容されており、この中空糸が血液を浄化するための血液浄化膜を構成している。すなわち、中空糸を構成する血液浄化膜の内部が血液流路とされるとともに、筐体と中空糸との間の空間が透析液流路とされているのである。そして、血液浄化膜は、中空糸膜を形成しており、その外周面と内周面とを貫通した微小な孔(ポア)が多数形成され、当該中空糸該膜を介して血液流路を流通する血液中の不純物等が透析液流路を流通する透析液内に透過(濾過)し得るよう構成されている。
【0042】
第1透析液導入ラインL1aは、透析液収容バッグB1(透析液収容部)に収容された透析液を透析液貯留チャンバK2に流通させる可撓性チューブから成り、一端が透析液収容バッグB1(透析液収容部)の下部に接続されるとともに、他端が透析液貯留チャンバK2の下部に接続されている。透析液収容バッグB1は、ダイアライザ2に供給する透析液を所定容量収容したもので、装置本体に取り付けられた支持部(不図示)にて所定高さの位置で支持されている。透析液貯留チャンバK2は、透析液収容バッグB1(透析液収容部)の透析液を貯留するもので、透析液収容バッグB1より小さい容量の容器から成るものである。
【0043】
また、第1透析液導入ラインL1aには、透析液の流路を構成する可撓性チューブをしごいて送液するしごき型ポンプから成る透析液移送ポンプP5が配設されている。しかして、透析液移送ポンプP5は、駆動によってロータが回転し、ローラが可撓性チューブを長手方向にしごくことにより、透析液収容バッグB1に収容された透析液を透析液貯留チャンバK2に送液して貯留させ得るようになっている。
【0044】
第2透析液導入ラインL1bは、透析液貯留チャンバK2に貯留された透析液をダイアライザ2に流通させる可撓性チューブから成り、一端が透析液貯留チャンバK2の下部に接続されるとともに、他端がダイアライザ2の透析液導入ポート2cに接続されている。また、第2透析液導入ラインL1bには、透析液の流路を構成する可撓性チューブをしごいて送液するしごき型ポンプから成る透析液導入ポンプP2が配設されている。しかして、透析液導入ポンプP2は、駆動によってロータが回転し、ローラが可撓性チューブを長手方向にしごくことにより、透析液貯留チャンバK2に貯留された透析液をダイアライザ2に送液して導入させ得るようになっている。
【0045】
さらに、本実施形態に係る第2透析液導入ラインL1bには、透析液を加温するための加温器H1が取り付けられている。かかる加温器H1は、透析液貯留チャンバK2からダイアライザ2に導入される透析液を加温し得るヒータから成るもので、加温バッグ7を取り付け可能とされている。この加温バッグ7は、例えば可撓性のシートを2枚重ねて溶着することによって流路が形成されるとともに、当該流路の一端側及び他端側に第2透析液導入ラインL1bと接続可能な接続部を有して構成されている。
【0046】
第1補液ラインL2aは、補充液収容バッグB2(補充液収容部)に収容された補充液を補充液貯留チャンバK1に流通させる可撓性チューブから成り、一端が補充液収容バッグB2(補充液収容部)の下部に接続されるとともに、他端が補充液貯留チャンバK1の下部に接続されている。補充液収容バッグB2は、血液回路1に供給する補充液を所定容量収容したもので、装置本体に取り付けられた支持部(不図示)にて所定高さの位置で支持されている。補充液貯留チャンバK1は、補充液収容バッグB2(補充液収容部)の補充液を貯留するもので、補充液収容バッグB2より小さい容量の容器から成るものである。
【0047】
また、第1補液ラインL2aには、補充液の流路を構成する可撓性チューブをしごいて送液するしごき型ポンプから成る補液移送ポンプP6が配設されている。しかして、補液移送ポンプP6は、駆動によってロータが回転し、ローラが可撓性チューブを長手方向にしごくことにより、補充液収容バッグB2に収容された補充液を補充液貯留チャンバK1に送液して貯留させ得るようになっている。
【0048】
第2補液ラインL2bは、補充液貯留チャンバK1に貯留された補充液を前補液ラインL2c又は後補液ラインL2dを介して血液回路1に流通させる可撓性チューブから成り、一端が補充液貯留チャンバK1の下部に接続されるとともに、他端が前補液ラインL2c及び後補液ラインL2dに接続されている。また、第2補液ラインL2bには、補充液の流路を構成する可撓性チューブをしごいて送液するしごき型ポンプから成る第1補液ポンプP3が配設されている。かかる第1補液ポンプP3は、駆動によってロータが回転し、ローラが可撓性チューブを長手方向にしごくことにより、補充液貯留チャンバK1に貯留された補充液を前補液ラインL2cを介して脱血側血液回路1a、又は後補液ラインL2dを介して返血側血液回路1bに送液して補液し得るものである。
【0049】
さらに、本実施形態に係る第2補液ラインL2bには、補充液を加温するための加温器H2が取り付けられている。かかる加温器H2は、補充液貯留チャンバK1から血液回路1に導入される補充液を加温し得るヒータから成るもので、加温バッグ7を取り付け可能とされている。この加温バッグ7は、例えば可撓性のシートを2枚重ねて溶着することによって流路が形成されるとともに、当該流路の一端側及び他端側に第2補液ラインL2bと接続可能な接続部を有して構成されている。
【0050】
またさらに、第2補液ラインL2bにおける加温器H2と脱血側血液回路1a又は返血側血液回路1bとの間には、補充液中の気泡を捕捉し得るエアトラップチャンバ8が取り付けられている。しかして、加温器H2で加温された補充液中の気泡は、エアトラップチャンバ8にて捕捉されるので、血液回路1に流れてしまうのを防止することができる。また、エアトラップチャンバ8の上部には、圧力センサPbが取り付けられた連結ラインL4が接続されており、エアトラップチャンバ8内の空気層を介して第2補液ラインL2bを流通する補充液の液圧を検出し得るようになっている。なお、連結ラインL4には、エアフィルタF4が接続されている。
【0051】
前補液ラインL2cは、脱血側血液回路1aに補充液を導入して前補液するための流路から成り、一端が第2補液ラインL2bに接続されるとともに、他端が脱血側血液回路1aにおける血液ポンプP1とダイアライザ2との間に接続されている。そして、第1補液ポンプP3が駆動して補充液貯留チャンバK1から第2補液ラインL2bにて補充液が送液されると、その補充液が前補液ラインL2cを介して脱血側血液回路1aに導入されるようになっている。
【0052】
後補液ラインL2dは、静脈血液回路1bに補充液を導入して後補液するための流路から成り、一端が第2補液ラインL2bに接続されるとともに、他端が返血側血液回路1bにおけるエアトラップチャンバ3との間に接続されている。そして、第1補液ポンプP3が駆動して補充液貯留チャンバK1から第2補液ラインL2bにて補充液が送液されると、その補充液が後補液ラインL2dを介して返血側血液回路1bに導入されるようになっている。
【0053】
本実施形態に係る前補液ラインL2cには、補充液の流路を構成する可撓性チューブをしごいて送液するしごき型ポンプから成る第2補液ポンプP8が配設されるとともに、後補液ラインL2dには、補充液の血液回路1に対する流動を許容しつつ反対側への流動を規制する逆止弁V1が接続されている。また、本実施形態に係る補液ポンプは、補液ライン(第2補液ラインL2b)に配設された第1補液ポンプP3と、前補液ラインL2c又は後補液ラインL2dの少なくとも一方(本実施形態においては、前補液ラインL2c)に配設された第2補液ポンプP8とを有して構成されている。
【0054】
これにより、第1補液ポンプP3と略同一の流動となるように第2補液ポンプP8を駆動させることにより、補充液貯留チャンバK1の補充液を脱血側血液回路1aに導入させて前補液することができるとともに、第1補液ポンプP3を駆動させつつ第2補液ポンプP8を停止させることにより、補充液貯留チャンバK1の補充液を返血側血液回路1bに導入させて後補液することができる。また、第2補液ポンプP8を第1補液ポンプP3よりも低い送液量となるよう駆動させることにより、当該第2補液ポンプP8の流量に応じた割合で、脱血側血液回路1a及び返血側血液回路1bに補充液を導入させて前後補液することができるようになっている。ここで、制御部は、第1補液ポンプP3及び第2補液ポンプP8の送液量の比率を変更するように第1補液ポンプP3及び第2補液ポンプP8を制御することによって、前捕液量及び後捕液量の比率を変更可能である。
【0055】
さらに、後補液ラインL2dには、逆止弁V1が接続されているので、第1補液ポンプP3と第2補液ポンプP8との間の流路に陰圧が生じた場合であっても、血液回路1内の血液が後補液ラインL2dに吸入されてしまうのを防止することができる。なお、第2補液ポンプP8の送液量が第1補液ポンプP3の送液量より大きい場合に、第1補液ポンプP3と第2補液ポンプP8との間の流路に陰圧が生じる。また、前補液ラインL2cに逆支弁V1が接続されるとともに、後補液ラインL2dに第2補液ポンプP8が配設されたもの、或いは前補液ラインL2c及び後補液ラインL2dのそれぞれに第2補液ポンプP8が配設されたものとしてもよい。
【0056】
またさらに、第2補液ラインL2b(補液ライン)、前補液ラインL2c及び後補液ラインL2dにおける第1補液ポンプP3、第2補液ポンプP8及び逆止弁V1で囲まれた補充液の流路の液圧を検出する圧力センサPbを具備するとともに、制御部は、当該圧力センサPbにより検出された液圧に応じて第1補液ポンプP3又は第2補液ポンプP8の駆動速度を補正するようになっている。
【0057】
第1排液排出ラインL3aは、ダイアライザ2から排出された排液を排液貯留チャンバK3に流通させる可撓性チューブから成り、一端がダイアライザ2の透析液導出ポート2dに接続されるとともに、他端が排液貯留チャンバK3の下部に接続されている。排液貯留チャンバK3は、ダイアライザ2から排出された排液を貯留するもので、透析液貯留チャンバK2及び補充液貯留チャンバK1と略等しい容量の容器から成るものである。
【0058】
また、第1排液排出ラインL3aには、排液の流路を構成する可撓性チューブをしごいて送液するしごき型ポンプから成る排液排出ポンプP4が配設されている。しかして、排液排出ポンプP4は、駆動によってロータが回転し、ローラが可撓性チューブを長手方向にしごくことにより、ダイアライザ2の排液を排液貯留チャンバK3に送液して貯留し得るようになっている。
【0059】
第2排液排出ラインL3bは、排液貯留チャンバK3に貯留された排液を装置外部に排出させる可撓性チューブから成り、一端が排液貯留チャンバK3の下部に接続されるとともに、他端が装置外部に取り付けられた処理装置や排液受け等まで延設されている。また、第2排液排出ラインL3bには、排液の流路を構成する可撓性チューブをしごいて送液するしごき型ポンプから成る排液移送ポンプP7が配設されている。かかる排液移送ポンプP7(排出部)は、排液貯留チャンバK3に貯留された排液を任意タイミングで装置外部に送液して排出させるもポンプから成り、駆動によってロータが回転し、ローラが可撓性チューブを長手方向にしごくことにより、排液貯留チャンバK3の排液を装置外部に送液して排出し得るようになっている。
【0060】
一方、透析液貯留チャンバK2、補充液貯留チャンバK1及び排液貯留チャンバK3は、装置本体の保持部(不図示)に保持されるようになっている。また、透析液貯留チャンバK2、補充液貯留チャンバK1及び排液貯留チャンバK3の各上部は、エアフィルタF1~F3を介して大気開放されており、貯留した液体が流出すると各貯留チャンバ内に空気が導入されるとともに、液体が流入すると各貯留チャンバから空気が排出されるようになっている。
【0061】
本実施形態においては、透析液貯留チャンバK2に貯留された透析液及び補充液貯留チャンバK1に貯留された補充液を規定量以上(満タン状態)とし、且つ、排液移送ポンプP7により排液を排出させることにより、排液貯留チャンバK3に貯留された排液を規定量以下(初期化状態)とする充填工程と、透析液貯留チャンバK2に貯留された透析液、補充液貯留チャンバK1に貯留された補充液、及び排液貯留チャンバK3に貯留された排液の重量を重量計4で計測する計測工程とを実行するよう構成されている。なお、排液貯留チャンバK3の初期化状態として、完全に空になる直前の状態が望ましいが、これに限らず、任意の規定量が設定され得る。
【0062】
具体的には、計測工程において、透析液導入ポンプP2を駆動して透析液貯留チャンバK2に貯留された透析液をダイアライザ2に導入し、第1補液ポンプP3(必要に応じて第2補液ポンプP8)を駆動して補充液貯留チャンバK1に貯留された補充液を血液回路1に導入するとともに、排液排出ポンプP4を駆動してダイアライザ2からの排液を排液貯留チャンバK3に貯留させる。このとき、透析液移送ポンプP5、補液移送ポンプP6及び排液移送ポンプP7は停止した状態となっている。
【0063】
そして、計測工程においては、重量計4によって、透析液貯留チャンバK2、補充液貯留チャンバK1及び排液貯留チャンバK3に貯留された透析液、補充液及び排液の重量バランスをリアルタイムで検出して監視し得るようになっている。しかして、重量計4の計測値に応じて、透析液導入ポンプP2、第1補液ポンプP3(第2補液ポンプP8)及び排液排出ポンプP4の駆動を制御することにより、透析液、補充液及び排液の重量バランスを所望な状態とすることができ、正常な治療を行わせることができる。
【0064】
充填工程においては、透析液導入ポンプP2、第1補液ポンプP3(必要に応じて第2補液ポンプP8)及び排液排出ポンプP4の駆動を維持しつつ、透析液移送ポンプP5、補液移送ポンプP6及び排液移送ポンプP7を駆動させる。これにより、透析液移送ポンプP5の駆動によって透析液収容バッグB1から透析液貯留チャンバK2に透析液が補充されて貯留され、補液移送ポンプP6の駆動によって補充液収容バッグB2から補充液貯留チャンバK1に補充液が補充されて貯留されるとともに、排液移送ポンプP7の駆動によって排液貯留チャンバK3に貯留された排液が装置外部に排出される。
【0065】
そして、液面センサS1、S2にて透析液貯留チャンバK2及び補充液貯留チャンバK1の液面を検知することによって、これら透析液貯留チャンバK2及び補充液貯留チャンバK1で貯留された透析液及び補充液が規定量に達したことを検出することができる。このとき、排液貯留チャンバK3の液面を検知する液面センサが配設されていないので、当該排液貯留チャンバK3が初期化状態(規定量以下)となったことを直接検出することはできない。
【0066】
そこで、本実施形態においては、充填工程時、液面センサS1、S2にて透析液及び補充液が規定量に達したことを検知し、透析液及び補充液が規定量(満タンの状態)に達した状態となったことが検出されると、重量計4にて計測された透析液貯留チャンバK2、補充液貯留チャンバK1及び排液貯留チャンバK3の透析液、補充液及び排液の総重量(重量計4の計測値)が規定値以下(初期化状態)となったことを条件として、排液移送ポンプP7(排出部)による排液の排出を終了させて計測工程に移行するようになっている。
【0067】
これにより、排液貯留チャンバK3の液面を検知する液面センサを具備しなくても、排液貯留チャンバK3が初期化状態(規定値以下)になった時点で排液の排出を終了させることができるので、排液の排出量が不足したり、或いは初期化状態から更に排液移送ポンプP7を駆動させて第1排液排出ラインL3aや第2排液排出ラインL3bまで液面が下がり、空気が混入してしまうのを回避することができる。
【0068】
ここで、本実施形態に係る血液浄化装置は、液導入ポンプの駆動量及び液導出ポンプの駆動量に基づく残量理論値と、重量計4(検出部)が検出する検出値に基づく残量実測値との差分を算出して異常を検出する異常検出部5を具備している。具体的には、かかる異常検出部5は、装置本体に配設されたマイコン等から成り、貯留チャンバの上流側の液導入ポンプの駆動量(吐出量の積算)から求められる貯留チャンバに対する供給液又は供給液排液の導入量から、貯留チャンバの下流側の液導出ポンプの駆動量(吐出量の積算)から求められる貯留チャンバからの供給液又は供給液排液の導出量を減算(貯留チャンバに対する導入量-貯留チャンバからの導出量)して残量理論値を算出する。
【0069】
そして、算出された残量理論値と重量計4(検出部)が検出する検出値に基づく残量実測値との差分を算出し(例えば、残量理論値-残量実測値)、その差分をリアルタイムで監視することにより異常を検出することができる。すなわち、充填工程において、例えば第2排液排出ラインL3bが閉塞していると、残量実測値が残量理論値より高くなるので、図3に示すように、異常検出部5にて求められた差分が上限の閾値(+C1)を超えることとなり、例えば透析液収容バッグB1の透析液又は補充液収容バッグB2の補充液(供給液収容部の供給液)が不足(液切れ)していると、残量実測値が残量理論値より低くなるので、図4に示すように、異常検出部5にて求められた差分が下限の閾値(-C1)を超えることとなる。なお、監視する差分が、残量実測値=チャンバの導入量-チャンバの導出量であることから、例えばチャンバの導入量=残量実測値+チャンバの導出量、チャンバの導出量=チャンバの導入量-残量実測値を監視してもよい。
【0070】
すなわち、本実施形態に係る異常検出部5は、差分が上限の閾値(+C1)を超えたことを条件として第2排液排出ラインL3b(供給液排液ライン)の閉塞を検出するとともに、差分が下限の閾値(-C1)を超えたことを条件として透析液収容バッグB1又は補充液収容バッグB2(供給液収容部)内の供給液の不足を検出するのである。こうして、差分が上限の閾値(+C1)又は下限の閾値(-C1)を超えたか否か監視することにより、第2排液排出ラインL3bが閉塞や供給液収容部の供給液の不足等の異常を検出することができる。
【0071】
本実施形態においては、重量計4(検出部)にて補充液貯留チャンバK1、透析液貯留チャンバK2及び排液貯留チャンバK3の重量を検知しているので、残量理論値は、補充液貯留チャンバK1、透析液貯留チャンバK2及び排液貯留チャンバK3の3つの貯留チャンバに対する導入量から導出量を減算することにより得られ、(透析液移送ポンプP5の吐出積算-透析液導入ポンプP2の吐出積算)+(補液移送ポンプP6の吐出積算-第1補液ポンプP3の吐出積算)-(排液移送ポンプP7の吐出積算-排液排出ポンプP4の吐出積算)なる演算式にて求めることができる。ここで、透析液移送ポンプP5、透析液導入ポンプP2、補液移送ポンプP6、第1補液ポンプP3、排液移送ポンプP7、及び排液排出ポンプP4の各吐出積算は、ロータの回転数積算×1回転当たりの吐出量として算出可能である。なお、残量理論値は、3つの貯留チャンバの初期量(基準となる量)に、3つの貯留チャンバの増減量(導入量から導出量を減算した量)を加算することにより得ても良い。
【0072】
報知部6は、異常検出部5で異常が検出されたことを報知するもので、例えば効果音や音声を出力して異常を報知するスピーカ、文字や図形等を表示して異常を報知する表示器、点灯又は点滅して異常を報知するLED等にて構成されている。また、報知部6は、差分に応じた報知を行うものであってもよく、例えば差分が上限の閾値(+C1)を超えた場合、第2排液排出ラインL3bの閉塞の可能性がある旨を報知するとともに、差分が下限の閾値(-C1)を超えた場合、給液収容部の供給液の不足の可能性がある旨を報知するようにしてもよい。
【0073】
次に、本実施形態に係る異常検出部5による異常の検出方法について、図5のフローチャートに基づいて説明する。
計測工程において、液導入ポンプ(透析液移送ポンプP5、補液移送ポンプP6及び排液排出ポンプP4)の駆動量(ロータの回転数)と、液導出ポンプ(透析液導入ポンプP2、第1補液ポンプP3及び排液移送ポンプP7)の駆動量(ロータの回転数)に基づいて残量理論値を求めるとともに、その残量理論値と重量計4(検出部)が検出する検出値に基づく残量実測値との差分を算出する(S1)。
【0074】
そして、S2にて、算出した差分が所定の閾値(本実施形態においては、上限の閾値(+C1)及び下限の閾値(-C1))を超えたか否かを判定する。差分が所定の閾値を超えない正常な場合、図2に示すように、差分が一定値C0を維持した状態となる一方、異常がある場合、時間経過に伴って差分が上昇して上限の閾値(+C1)を超える場合と、及び時間経過に伴って差分が下降して下限の閾値(-C1)を超える場合とが想定される。
【0075】
S2にて、差分が所定の閾値を超えないと判定されると、S3に進み、貯留チャンバ(補充液貯留チャンバK1、透析液貯留チャンバK2及び排液貯留チャンバK3)が初期状態に達したか否かが判定され、初期状態に達したと判定されると充填工程が終了するとともに、初期状態に達していないと判定されると、S1に戻って差分が再度算出される。このように、充填工程において、差分が繰り返し算出され、リアルタイムで監視されることとなる。
【0076】
一方、S2にて、差分が所定の閾値を超えたと判定されると、S4に進み、報知部6による報知が行われる。かかる報知部6は、差分が上限の閾値(+C1)を超えた場合、第2排液排出ラインL3bの閉塞の可能性がある旨を報知するとともに、差分が下限の閾値(-C1)を超えた場合、給液収容部の供給液の不足の可能性がある旨を報知するのが好ましい。
【0077】
また、異常検出部5は、差分の変化量または変化速度に応じて第2排液排出ラインL3b(供給液排液ライン)の閉塞と他の異常とを判別するようにしてもよい。例えば、S1で算出された差分の変化量または変化速度が所定より大きい場合、第2排液排出ラインL3b(供給液排液ライン)が完全に閉塞していると判定するとともに、差分の変化量または変化速度が所定より小さい場合、不完全な閉塞或いはポンプ等の異常であると判定することができる。この場合、報知部6は、差分の変化量または変化速度に応じた報知を行うようにするのが好ましい。
【0078】
本実施形態によれば、液導入ポンプの駆動量及び液導出ポンプの駆動量に基づく残量理論値と、重量計4(検出部)が検出する検出値に基づく残量実測値との差分を算出して異常を検出するので、専用のセンサ等を具備することなく安価に装置の異常を検出することができ、コストを低下することができる。特に、貯留チャンバの送液方向上流側及び下流側の双方において液導入ポンプと液導出ポンプとが設けられることで、貯留チャンバに対して正確に液の導入及び導出を行うことができる。
【0079】
また、本実施形態に係る異常検出部5は、差分が上限の閾値(+C1)を超えたことを条件として供給液排液ラインの閉塞を検出するので、供給液排液ラインの閉塞によって貯留チャンバ内の供給液排液が溢れてしまうのを回避することができる。特に、異常検出部5は、差分の変化量または変化速度に応じて供給液排液ラインの閉塞と他の異常とを判別するようにすれば、供給液排液ラインの閉塞と他の異常とを区別して対応させることができる。
【0080】
さらに、貯留チャンバに供給する供給液が収容された供給液収容部を具備するとともに、異常検出部5は、差分が下限の閾値(-C1)を超えたことを条件として供給液収容部内の供給液の不足を検出するので、供給液の不足によって供給液貯留チャンバが空になってしまうのを回避することができる。またさらに、異常検出部5で異常が検出されたことを報知する報知部6を具備するとともに、当該報知部6は、差分に応じた報知を行うので、異常に対する措置を素早く行わせることができる。
【0081】
また、本実施形態に係る検出部は、貯留チャンバの重量を検出する重量計4であるので、重量計4で検出した重量により貯留チャンバの重量バランスを監視することができる。詳細には、本実施形態に係る血液浄化装置は、補充液貯留チャンバK1、透析液貯留チャンバK2、及び排液貯留チャンバK3を備えるため、これらの貯留チャンバの総重量を重量計4が検出することによって、血液回路1に対する導入量(透析液及び補充液の量)及び導出量(透析液排液の量)の水収支量(除水量)を監視することができる。さらに、液導入ポンプ及び液導出ポンプは、駆動量に対して吐出量が一定とされた蠕動ポンプ(しごきポンプ)であるので、液導入ポンプの駆動量及び液導出ポンプの駆動量に基づく残量理論値を高精度に求めることができる。
【0082】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、例えば図6に示すように、重量計4(検出部)は、専ら排液貯留チャンバK3の重量を検出し、その排液貯留チャンバK3の残量を検出するものであってもよい。この場合、異常検出部5は、排液排出ポンプP4(液導入ポンプ)の駆動量及び排液移送ポンプP7(液導出ポンプ)の駆動量に基づく残量理論値と、重量計4(検出部)が検出する検出値に基づく残量実測値との差分を算出して異常を検出することとなる。
【0083】
また、図7に示すように、重量計4(検出部)は、補充液貯留チャンバK1及び透析液貯留チャンバK2の重量を検出し、重量計4(検出部)は、それら補充液貯留チャンバK1及び透析液貯留チャンバK2の残量を検出するものであってもよい。この場合、異常検出部5は、透析液移送ポンプP5及び補液移送ポンプP6(液導入ポンプ)の駆動量及び透析液導入ポンプP2及び第1補液ポンプP3(液導出ポンプ)の駆動量に基づく残量理論値と、重量計4(検出部)が検出する検出値に基づく残量実測値との差分を算出して異常を検出することとなる。
【0084】
さらに、重量計4に代えて、貯留チャンバの残量を検出する他の検出部としてもよく、その場合、液面センサ(光学式、静電容量式、超音波式など)等により貯留チャンバの残量を検出するようにしてもよい。い。なお、透析液収容バッグB1及び補充液収容バッグB2は、可撓性の容器にて構成されているが、これに代えて、硬質の容器や液槽等で構成された透析液収容部及び補充液収容部としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
導入ポンプが貯留チャンバに導入する供給液または排液の導入量、液導出ポンプが貯留チャンバから導出する供給液または排液の導出量、及び検出部が検出する貯留チャンバの残量に基づいて、供給液ライン若しくは供給液排液ラインの閉塞、又は貯留チャンバへの供給液の不足を原因とした供給液回路の送液状態の異常を検出する異常検出部を具備する血液浄化装置であれば、他の機能が付加されたもの等であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 血液回路
1a 脱血側血液回路
1b 返血側血液回路
2 ダイアライザ(血液浄化器)
3 エアトラップチャンバ
4 重量計(検出部)
5 異常検出部
6 報知部
7 加温バッグ
8 エアトラップチャンバ
K1 補充液貯留チャンバ(供給液貯留チャンバ)
K2 透析液貯留チャンバ(供給液貯留チャンバ)
K3 排液貯留チャンバ
B1 透析液収容バッグ(透析液収容部)(供給液収容部)
B2 補充液収容バッグ(補充液収容部)(供給液収容部)
L1a 第1透析液導入ライン(供給液ライン)
L1b 第2透析液導入ライン(供給液ライン)
L2a 第1補液ライン(供給液ライン)
L2b 第2補液ライン(供給液ライン)
L2c 前補液ライン
L2d 後補液ライン
L3a 第1排液排出ライン(供給液排液ライン)
L3b 第2排液排出ライン(供給液排液ライン)
P1 血液ポンプ
P2 透析液導入ポンプ
P3 第1補液ポンプ
P4 排液排出ポンプ
P5 透析液移送ポンプ
P6 補液移送ポンプ
P7 排液移送ポンプ
P8 第2補液ポンプ
H1 第1加温器
H2 第2加温器
S1、S2 液面センサ
Pa、Pb 圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7