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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20230210BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20230210BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 100C
B60C11/12 D
B60C11/13 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019057920
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020157868
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 剛史
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-245903(JP,A)
【文献】特開2008-110625(JP,A)
【文献】特開2007-182097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/12
B60C 11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの主溝により区画されるリブであってタイヤ赤道に沿ってタイヤ周方向に延びるセンターリブと、
2つの主溝により区画されるリブであって前記センターリブのタイヤ幅方向の両側に隣接し且つタイヤ周方向に延びる一対のメディエイトリブと、を備え、
前記センターリブ及び前記一対のメディエイトリブは、各リブのタイヤ幅方向中央部にリブ内で終端し且つタイヤ周方向に間隔をあけて配置される複数のクローズドサイプを有し、
各々の前記クローズドサイプは、平面視でタイヤ幅方向及びタイヤ周方向に対して傾斜し、タイヤ周方向の長さがタイヤ幅方向の長さよりも長く、
前記センターリブに配置される前記複数のクローズドサイプの向きと、前記一対のメディエイトリブに配置される前記複数のクローズドサイプの向きは、タイヤ幅方向に対して互いに逆向きであり、
前記メディエイトリブは、前記メディエイトリブを区画する前記2つの主溝に開口し且つタイヤ周方向に延びる複数のスリットを有し、
前記複数のスリットは、タイヤ周方向に間隔をあけて配置され、前記複数のクローズドサイプの間に配置されており、
前記スリットのタイヤ周方向の長さは、タイヤ幅方向の長さの0.8倍以上且つ1.2倍以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
2つの主溝により区画されるリブであってタイヤ赤道に沿ってタイヤ周方向に延びるセンターリブと、
2つの主溝により区画されるリブであって前記センターリブのタイヤ幅方向の両側に隣接し且つタイヤ周方向に延びる一対のメディエイトリブと、を備え、
前記センターリブ及び前記一対のメディエイトリブは、各リブのタイヤ幅方向中央部にリブ内で終端し且つタイヤ周方向に間隔をあけて配置される複数のクローズドサイプを有し、
各々の前記クローズドサイプは、平面視でタイヤ幅方向及びタイヤ周方向に対して傾斜し、タイヤ周方向の長さがタイヤ幅方向の長さよりも長く、
前記センターリブに配置される前記複数のクローズドサイプの向きと、前記一対のメディエイトリブに配置される前記複数のクローズドサイプの向きは、タイヤ幅方向に対して互いに逆向きであり、
前記メディエイトリブは、前記メディエイトリブを区画する前記2つの主溝に開口し且つタイヤ周方向に延びる複数のスリットを有し、
前記複数のスリットは、タイヤ周方向に間隔をあけて配置され、前記複数のクローズドサイプの間に配置されており、
第1メディエイトリブにおける前記スリットと、第2メディエイトリブにおける前記スリットとは、平面視でタイヤ幅方向に沿って投影した場合に、互いに重なる位置関係にあり、
前記センターリブにおける前記クローズドサイプの少なくとも一部は、前記重なり領域に配置されており、
前記重なり領域のタイヤ周方向寸法は、前記第1メディエイトリブ及び前記第2メディエイトリブの前記スリットのタイヤ周方向の長さの40%以上且つ80%以下である、空気入りタイヤ。
【請求項3】
2つの主溝により区画されるリブであってタイヤ赤道に沿ってタイヤ周方向に延びるセンターリブと、
2つの主溝により区画されるリブであって前記センターリブのタイヤ幅方向の両側に隣接し且つタイヤ周方向に延びる一対のメディエイトリブと、を備え、
前記センターリブ及び前記一対のメディエイトリブは、各リブのタイヤ幅方向中央部にリブ内で終端し且つタイヤ周方向に間隔をあけて配置される複数のクローズドサイプを有し、
各々の前記クローズドサイプは、平面視でタイヤ幅方向及びタイヤ周方向に対して傾斜し、タイヤ周方向の長さがタイヤ幅方向の長さよりも長く、
前記センターリブに配置される前記複数のクローズドサイプの向きと、前記一対のメディエイトリブに配置される前記複数のクローズドサイプの向きは、タイヤ幅方向に対して互いに逆向きであり、
前記センターリブを区画する前記2つの主溝は、タイヤ周方向にジグザグに延びており、底部の振幅が開口部の振幅よりも大きく、
前記溝底部における湾曲外側部位に、溝底から突出する棚部を有する、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤとして、トラックなどに用いられる重荷重用空気入りタイヤがあり、その中でも、北米においてはリブタイヤが用いられている。北米においては、耐偏摩耗性能が求められる長距離走行用のLongと呼ばれるリブタイヤと、トラクション性能が求められる街中などの短距離走行用のRegionalと呼ばれるリブタイヤとがある。前輪として装着されるフロントタイヤにはリブパターンが多く、後輪のドライブ軸に装着されるリアタイヤにはブロックパターンが含まれる場合が多い。
【0003】
参考として、特許第4705684号公報(特許文献1)及び特許第5149955号公報(特許文献2)には、重荷重用タイヤにおいて耐偏摩耗性能及びウエット性能についての言及がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4705684号公報
【文献】特許第5149955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の第1目的として、フロントタイヤとしての耐偏摩耗性能の向上が求められる。
【0006】
本開示の第2目的として、フロントタイヤとしての耐偏摩耗性能を向上させつつ、ドライブ軸に装着されるリアタイヤとしてのトラクション性能も確保した、Long及びRegionalの双方の性能を併せ持つ新たなカテゴリの重荷重用タイヤを提供することである。
【0007】
本開示の目的は、少なくとも第1目的である、フロントタイヤとしての耐偏摩耗性能を向上させた空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の空気入りタイヤは、
2つの主溝により区画されるリブであってタイヤ赤道に沿ってタイヤ周方向に延びるセンターリブと、
2つの主溝により区画されるリブであって前記センターリブのタイヤ幅方向の両側に隣接し且つタイヤ周方向に延びる一対のメディエイトリブと、を備え、
前記センターリブ及び前記一対のメディエイトリブは、各リブのタイヤ幅方向中央部にリブ内で終端し且つタイヤ周方向に間隔をあけて配置される複数のクローズドサイプを有し、
各々の前記クローズドサイプは、平面視でタイヤ幅方向及びタイヤ周方向に対して傾斜し、タイヤ周方向の長さがタイヤ幅方向の長さよりも長く、
前記センターリブに配置される前記複数のクローズドサイプの向きと、前記一対のメディエイトリブに配置される前記複数のクローズドサイプの向きは、タイヤ幅方向に対して互いに逆向きである。
【0009】
このように、センターリブ及びメディエイトリブのタイヤ幅方向中央部にクローズドサイプが配置されているので、クローズドサイプが無ければ接地圧が高くなるタイヤ幅方向中央部の接地圧をクローズドサイプにより逃がすことができ、接地圧の均一化を図り、偏摩耗を抑制可能となる。さらに、クローズドサイプは、平面視でタイヤ幅方向及びタイヤ周方向に対して傾斜し、タイヤ周方向の長さがタイヤ幅方向の長さよりも長いので、タイヤ幅方向に向かう横力が入力されても横滑りを抑制可能となる。それでいて、クローズドサイプの向きがセンターリブとメディエイトリブでタイヤ幅方向に対して互いに逆向きであるので、旋回時の様々な向きの横力が入力されても滑りを抑制し偏摩耗の発生を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図
図2】本実施形態のトレッドパターンを示す平面図
図3】センターリブ及びメディエイトリブを示す拡大平面図
図4】変形例を示すトレッドパターンの拡大平面図
図5】センターリブを区画する主溝の形状を示す平面図及び断面図
図6A】センターリブを区画する主溝の形状を示す斜視図
図6B】センターリブを区画する主溝の形状を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態の空気入りタイヤについて、図面を参照して説明する。図において、「CD」はタイヤ周方向を意味し、「WD」はタイヤ幅方向を意味し、「RD」はタイヤ径方向を意味する。各図は、タイヤ新品時の形状を示す。
【0012】
図1に示すように、空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、各々のビード部1からタイヤ径方向外側RD1に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向外側RD1端同士を連ねるトレッド部3とを備える。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配置されている。ビード部1は、リム8のビードシート8bに装着され、空気圧が正常(例えばJATMAで決められた空気圧)であれば、タイヤ内圧によりリムフランジ8aに適切にフィッティングし、タイヤがリム8に嵌合される。
【0013】
また、このタイヤは、一対のビード部1の間に架け渡されるように配され、トレッド部3からサイドウォール部2を経てビード部1に至るトロイド状のカーカス層4を備える。カーカス層4は、少なくとも一枚のカーカスプライにより構成され、その端部がビードコア1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス層4の内周側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム(図示せず)が配置されている。
【0014】
トレッド部3におけるカーカス層4の外周には、たが効果によりカーカス層4を補強するベルト層5が配置されている。ベルト層5は、タイヤ周方向に対して所定角度で傾斜して延びるコードを有する2枚のベルトプライを有し、各プライはコードが互いに逆向き交差するように積層されている。ベルト層5の外周側には、ベルト補強層7が配され、更にその外周側表面には、トレッドパターンが形成されたトレッドゴムが配置されている。
【0015】
上述したゴム層等の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。また、これらのゴムはカーボンブラックやシリカ等の充填材で補強されると共に、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等が適宜配合される。
【0016】
図2は、本実施形態のタイヤのトレッドパターンを示す平面図である。図2に示すように、本実施形態のタイヤのトレッドには、複数の主溝30(30a、30b)が形成されている。トレッドは、タイヤ赤道CLに沿ってタイヤ周方向CDに延びるセンターリブ31と、センターリブ31のタイヤ幅方向WDの両側に隣接し且つタイヤ周方向CDに延びる一対のメディエイトリブ32と、を有する。センターリブ31は、2つの主溝30aにより区画されている。メディエイトリブ32は、2つの主溝30bにより区画されている。なお、タイヤ幅方向WDにて最も外側となる主溝30bは、ショルダーリブ33を区画している。
【0017】
図2に示すように、センターリブ31及び一対のメディエイトリブ32は、各リブ31、32のタイヤ幅方向WDの中央部に、複数のクローズドサイプ34、35を有する。複数のクローズドサイプ34、35は、リブ内で終端し、タイヤ周方向CDに間隔をあけて配置されている。図3に示すように、各々のクローズドサイプ34、35は、平面視でタイヤ幅方向WD及びタイヤ周方向CDに対して傾斜しており、タイヤ周方向CDの長さLcが、タイヤ幅方向WDの長さLwよりも長い。このように、クローズドサイプ34、35は、タイヤ周方向CDの長さLcが、タイヤ幅方向WDの長さLwよりも長いので、旋回時にタイヤ幅方向WDに向かう横力が入力されても横滑りを抑制可能となる。横滑りを抑制して偏摩耗の発生をより一層抑制するためには、平面視における各々のクローズドサイプ34、35のタイヤ周方向CDの長さLcは、タイヤ幅方向WDの長さLwの1.5倍以上であることが好ましい。
【0018】
図2及び図3に示すように、センターリブ31に配置される複数のクローズドサイプ34の向きと、一対のメディエイトリブ32に配置される複数のクローズドサイプ35の向きは、タイヤ幅方向WDに対して互いに逆向きである。例えば、センターリブ31におけるクローズドサイプ34の向きは、右下がりである。言い換えれば、センターリブ31のおけるクローズドサイプ34は、タイヤ幅方向第1方向WD1及びタイヤ周方向第1方向CD1に向かって延びている。メディエイトリブ32におけるクローズドサイプ35の向きは、右上がりである。言い換えれば、メディエイトリブ32におけるクローズドサイプ35は、タイヤ幅方向第1方向WD1及びタイヤ周方向第2方向CD2に向かって延びている。このように、クローズドサイプ34、35の向きがセンターリブ31とメディエイトリブ32とでタイヤ幅方向WDに対して互いに逆向きであるので、旋回時に様々な向きの横力が入力されても滑りを抑制し偏摩耗の発生を抑制可能となる。
【0019】
クローズドサイプ34、35は、主溝よりも浅く、主溝よりも幅が狭い。本実施形態においてクローズドサイプ34、35の幅は0.6mmであるが、これに限定されない。クローズドサイプ34、35の幅は0.3mm以上且つ1.5mm以下であることが好ましい。本実施形態においてクローズドサイプ34、35の深さは、主溝よりも浅く、11.6mmであり、主溝30の深さの70%であるが、これに限定されない。クローズドサイプ34、35の深さは、主溝30の深さの30%以上且つ80%以下であることが好ましい。
【0020】
図2及び図3に示すように、メディエイトリブ32は、メディエイトリブ32を区画する2つの主溝30a、30bに開口し且つタイヤ周方向に延びる複数のスリット36を有する。複数のスリット36は、タイヤ周方向CDに間隔をあけて配置され、複数のクローズドサイプ35の間に配置されている。スリット36は、タイヤ幅方向WDに延びて主溝30a、30bに開口しているので、トラクションを発揮可能となる。よって、リアタイヤとしてタイヤを装着可能となる。さらに、スリット36はタイヤ周方向CDに延びているので、横滑りを抑制でき、偏摩耗の発生を抑制可能となる。スリット36は、主溝30の幅よりも狭く、且つ主溝30の深さよりも浅い。本実施形態においてスリット36の幅は3.0mmで、主溝幅の約25%であるが、これに限定されない。本実施形態においてスリット36の深さは1.0mmであるが、これに限定されない。なお、スリット36は、クローズドサイプ34、35よりも幅が広い。
【0021】
図3に示すように、スリット36のタイヤ周方向CDの長さScは、タイヤ幅方向WDの長さSwの0.8倍以上且つ1.2倍以下であることが好ましい。この構成であれば、スリット36のタイヤ周方向CDの長さScとタイヤ幅方向WDの長さSwを略同等に設定しているので、トラクション性能と耐横滑性能とをバランスよく発揮可能となる。なお、センターリブ31は、接地圧が高く滑りにくいので、リブ剛性を低下させる要素(すなわち、スリット36)を設けていない。
【0022】
図3に示すように、対をなすメディエイトリブ32のうち、一方のリブを第1メディエイトリブ32aとし、他方のリブを第2メディエイトリブ32bと呼ぶ。同図に示すように、第1メディエイトリブ32aにおけるスリット36と、第2メディエイトリブ32bにおけるスリット36とは、平面視でタイヤ幅方向WDに沿って投影した場合に、互いに重なる位置関係にあり、2つのスリット36の重なる領域Ar1がタイヤ周方向CDに間隔をあけて繰り返し出現する。本実施形態におけるセンターリブ31のクローズドサイプ34の全てが前記重なり領域Ar1に配置されているが、これに限定されない。例えば、図4に示すように、センターリブ31のクローズドサイプ34の少なくとも一部が重なり領域に配置されていればよい。横滑りを的確に抑制するためには、センターリブ31のクローズドサイプ34は、そのタイヤ周方向CDの長さLcの50%以上が前記重なり領域Ar1に配置されていることが好ましい。
【0023】
図3に示すように、スリット36の重なり領域Ar1のタイヤ周方向寸法D1は、第1メディエイトリブ32a及び第2メディエイトリブ32bにおけるスリット36のタイヤ周方向CDの長さScの40%以上且つ80%以下であることが好ましい。40%未満であれば、重なり領域が小さく、横滑り抑制効果が小さくなるからである。一方、80%を超えれば、タイヤ周上でスリット36が配置されていない重なり領域Ar1以外の領域が増大し、偏摩耗発生の要因となるからである。本実施形態では、スリット36の重なり領域Ar1のタイヤ周方向寸法D1は、第1メディエイトリブ32a及び第2メディエイトリブ32bにおけるスリット36のタイヤ周方向CDの長さScの約64%である。
【0024】
図5は、センターリブ31を区画する主溝30aの平面図及び断面図である。図6A及び図6Bは、図5のA1-A1部位を示す斜視図である。同図に示すように、主溝30aは、タイヤ周方向CDにジグザグに延びており、底部の溝幅W1が開口部の溝幅W2よりも小さい。また、主溝30aの底部の振幅は開口部の振幅よりも大きい。主溝30aは、溝底部における湾曲外側部位に、溝底30cから突出する棚部30dを有する。スリット36は、棚部30dが設けられている湾曲外側部位に開口している。
【0025】
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤは、
2つの主溝30aにより区画されるリブであってタイヤ赤道CLに沿ってタイヤ周方向CDに延びるセンターリブ31と、
2つの主溝30a、30bにより区画されるリブであってセンターリブ31のタイヤ幅方向WDの両側に隣接し且つタイヤ周方向CDに延びる一対のメディエイトリブ32と、を備え、
センターリブ31及び一対のメディエイトリブ32は、各リブ31、32のタイヤ幅方向中央部にリブ内で終端し且つタイヤ周方向CDに間隔をあけて配置される複数のクローズドサイプ34、35を有し、
各々のクローズドサイプ34、35は、平面視でタイヤ幅方向WD及びタイヤ周方向CDに対して傾斜し、タイヤ周方向CDの長さLcがタイヤ幅方向WDの長さLwよりも長く、
センターリブ31に配置される複数のクローズドサイプ34の向きと、一対のメディエイトリブ32に配置される複数のクローズドサイプ35の向きは、タイヤ幅方向WDに対して互いに逆向きである。
【0026】
このように、センターリブ31及びメディエイトリブ32のタイヤ幅方向中央部にクローズドサイプ34、35が配置されているので、クローズドサイプ34、35が無ければ接地圧が高くなるタイヤ幅方向中央部の接地圧をクローズドサイプ34、35により逃がすことができ、接地圧の均一化を図り、偏摩耗を抑制可能となる。さらに、クローズドサイプ34、35は、平面視でタイヤ幅方向WD及びタイヤ周方向CDに対して傾斜し、タイヤ周方向CDの長さLcがタイヤ幅方向WDの長さLwよりも長いので、タイヤ幅方向WDに向かう横力が入力されても横滑りを抑制可能となる。それでいて、クローズドサイプ34、35の向きがセンターリブ31とメディエイトリブ32でタイヤ幅方向WDに対して互いに逆向きであるので、旋回時の様々な向きの横力が入力されても滑りを抑制し偏摩耗の発生を抑制可能となる。
【0027】
本実施形態のように、平面視における各々のクローズドサイプ34、35のタイヤ周方向CDの長さLcは、タイヤ幅方向WDの長さLwの1.5倍以上であることが好ましい。
【0028】
フロントタイヤとして装着されれば、旋回による横力の影響を受けやすい。このように、クローズドサイプ34、35のタイヤ周方向CDの長さLcは、タイヤ幅方向WDの長さLwの1.5倍以上であるので、より一層横滑りを抑制し偏摩耗の発生を抑制可能となる。
【0029】
本実施形態のように、メディエイトリブ32は、メディエイトリブ32を区画する2つの主溝30a、30bに開口し且つタイヤ周方向CDに延びる複数のスリット36を有し、複数のスリット36は、タイヤ周方向CDに間隔をあけて配置され、複数のクローズドサイプ35の間に配置されていることが好ましい。
【0030】
このように、スリット36はタイヤ幅方向WDに延びて主溝30a、30bに開口しているので、トラクションを発揮でき、リアタイヤとして装着可能になる。更に、スリット36はタイヤ周方向CDに延びているので、横滑りを抑制でき、偏摩耗の発生を抑制可能となる。
【0031】
本実施形態のように、スリット36のタイヤ周方向CDの長さScは、タイヤ幅方向WDの長さSwの0.8倍以上且つ1.2倍以下であることが好ましい。
【0032】
この構成であれば、スリット36のタイヤ周方向CDの長さScとタイヤ幅方向WDの長さSwを略同等に設定しているので、トラクション性能と耐横滑性能とをバランスよく発揮可能となる。
【0033】
本実施形態のように、第1メディエイトリブ32aにおけるスリット36と、第2メディエイトリブ32bにおけるスリット36とは、平面視でタイヤ幅方向WDに沿って投影した場合に、互いに重なる位置関係にあり、センターリブ31におけるクローズドサイプ34の少なくとも一部は、重なり領域Ar1に配置されていることが好ましい。
【0034】
このように、第1メディエイトリブ32a及び第2メディエイトリブ32bのスリット36同士が、平面視でタイヤ幅方向WDに投影されて重なる領域Ar1に、センターリブ31のクローズドサイプ34の少なくとも一部が配置されているので、重なり領域Ar1に、3つの横滑りを抑制するサイプ34、スリット36、スリット36が配置されることになり、横滑りをより一層抑制し偏摩耗の発生を抑制可能となる。
【0035】
本実施形態のように、センターリブ31におけるクローズドサイプ34の全てが重なり領域Ar1に配置されていることが好ましい。
【0036】
この構成によれば、横滑りを抑制し偏摩耗の発生を抑制可能となる。
【0037】
本実施形態のように、重なり領域Ar1のタイヤ周方向寸法D1は、第1メディエイトリブ32a及び第2メディエイトリブ32bのスリット36のタイヤ周方向CDの長さScの40%以上且つ80%以下であることが好ましい。
【0038】
重なり領域Ar1のタイヤ周方向寸法D1が、各メディエイトリブ32のスリット36のタイヤ周方向CDの長さScの40%未満であれば、重なり領域Ar1が小さく、横滑り抑制効果が小さくなるからである。一方、上記数値が80%を超えれば、タイヤ周上でスリット36が配置されていない部分が増大し、偏摩耗の発生の要因となるからである。したがって、上記数値範囲内であれば、横滑り効果の確保と、偏摩耗の発生を抑制可能となる。
【0039】
本実施形態のように、センターリブ31を区画する2つの主溝30aは、タイヤ周方向CDにジグザグに延びており、底部の振幅が開口部の振幅よりも大きく、溝底部における湾曲外側部位に、溝底30cから突出する棚部30dを有することが好ましい。
【0040】
このように、主溝30aの底部の振幅が開口部の振幅よりも大きいので、摩耗中末期のトラクション性能を確保可能となる。さらに、溝底部における湾曲外側部位に、溝底30cから突出する棚部30dを有するので、石噛みを抑制できると共に棚部によるトラクション性能を向上させることが可能となる。
【0041】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0042】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
30 主溝
30a 主溝
30b 主溝
30d 棚部
31 センターリブ
32 メディエイトリブ
32a 第1メディエイトリブ
32b 第2メディエイトリブ
34 クローズドサイプ
35 クローズドサイプ
36 スリット
Ar1 重なり領域
CL タイヤ赤道
WD タイヤ幅方向
CD タイヤ周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B