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特許7224242ベータカゼインA2および腸の炎症の予防
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】ベータカゼインA2および腸の炎症の予防
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/19 20160101AFI20230210BHJP
   A23C 9/00 20060101ALI20230210BHJP
   A23C 9/12 20060101ALI20230210BHJP
   A23C 13/00 20060101ALI20230210BHJP
   A23C 15/00 20060101ALI20230210BHJP
   A23C 19/00 20060101ALI20230210BHJP
   A23G 9/38 20060101ALI20230210BHJP
   A23K 10/20 20160101ALI20230210BHJP
   A23K 10/28 20160101ALI20230210BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
A23L33/19
A23C9/00
A23C9/12
A23C13/00
A23C15/00
A23C19/00
A23G9/38
A23K10/20
A23K10/28
A61K38/17
A61P1/04
A61P1/14
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019106371
(22)【出願日】2019-06-06
(62)【分割の表示】P 2016516476の分割
【原出願日】2014-05-30
(65)【公開番号】P2019165746
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2019-07-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】61/829,764
(32)【優先日】2013-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515332160
【氏名又は名称】ズィ・エイツー・ミルク・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,アンドリュー・ジョン
【合議体】
【審判長】大島 祥吾
【審判官】磯貝 香苗
【審判官】平塚 政宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-501299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0070469(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物においてベータカゾモルフィン-7によって引き起こされる炎症性応答を媒介する原因となる1またはそれより多くの遺伝子に対する後成的変化を予防または最小化することにより、腸の慢性炎症の危険性を予防または低減するための組成物であって、該組成物は牛乳または牛乳製品であってベータカゼインを含有し、そしてここで当該ベータカゼインは、ベータカゼインのアミノ酸配列の67位にプロリンを有するベータカゼインのバリアントを少なくとも50重量%含む、前記組成物。
【請求項2】
ベータカゼインが、少なくとも50重量%のベータカゼインA2を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ベータカゼインが、動物の消化管における酵素消化によりベータカゾモルフィン-7を生成することができるベータカゼインのバリアントを50重量%より少なく含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1またはそれより多くの遺伝子に対する後成的変化を予防または最小化することが、腸炎症を生じる危険性を低減する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
腸炎症が、炎症性腸疾患における炎症である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
炎症性腸疾患が、クローン病または潰瘍性大腸炎である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
腸炎症が、過敏性腸症候群における炎症である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
1またはそれより多くの遺伝子が、MPO、IL1R、IL10、およびNFカッパBからなる群より選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
該ベータカゼインが、少なくとも90重量%のベータカゼインA2を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
ベータカゼインが、少なくとも99重量%のベータカゼインA2を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ベータカゼインが、50重量%未満のベータカゼインA1を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
ベータカゼインが、10重量%未満のベータカゼインA1を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ベータカゼインが、1重量%未満のベータカゼインA1を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
牛乳が、新鮮な乳、粉乳、粉末から再構成された液乳、脱脂乳、ホモジナイズされた乳、練乳、無糖練乳、低温殺菌乳、非低温殺菌乳、またはUHT乳である、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
牛乳製品が、クリーム、ヨーグルト、乳餅、チーズ、バター、またはアイスクリームである、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
動物が、ヒト、イヌ、またはネコである、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
動物においてベータカゾモルフィン-7によって引き起こされる炎症性応答を媒介する原因となる遺伝子に対する後成的変化を予防または最小化することにより、腸の慢性炎症の危険性を予防または低減するための組成物の製造における牛乳の使用であって、当該牛乳はベータカゼインを含有し、そしてここで当該ベータカゼインは、ベータカゼインのアミノ酸配列の67位にプロリンを有するベータカゼインのバリアントを少なくとも50重量%含む、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳タンパク質ベータカゼインA2の、腸の炎症の危険性を予防または低減するための使用に関する。特に、本発明は、乳および乳由来食物製品ならびに腸の即時および進行中の(ongoing)炎症の両方を引き起こすことが示されている高レベルのタンパク
質ベータカゼインA1を含有する乳および乳製品の消費の回避に関する。本発明は、一般的な腸の過敏(irritation)ならびに炎症性腸疾患および過敏性腸症候群を含む腸炎症の予防に関する。
【背景技術】
【0002】
腸の炎症は、結腸および小腸の炎症を特徴とする様々な障害または病気の結果もたらされ得る。そのような障害または病気は、炎症性腸疾患(IBD)および過敏性腸症候群(IBS)を含む。IBDは、一般に臨床的に定義された持続性の病気、主にクローン病および潰瘍性大腸炎を指す。IBDは、一般に体自身の免疫系が消化系の要素を攻撃する自己免疫疾患であると考えられている。IBSは、腹痛または腹部不快感ならびに変化した腸の習慣(通常は慢性または再発性の下痢、便秘、または両方)を特徴とする障害である。IBSは、米国だけで2500~4500万人の人々を冒していると言われている。IBS罹患者3人ごとにおおよそ2人が女性である。IBSは、子供を含め全ての年齢の人々を冒す。世界人口のおおよそ10~25%がIBSを患っていると推定されている。IBSの影響は、軽度の不便から重症の衰弱にまで及び得る。中程度~重症のIBSを有する人々は、しばしば彼らの身体的、感情的、経済的、教育的および社会的幸福を損なう症状で苦労する。
【0003】
腸炎症の正確な原因は、十分に理解されていない。しかし、特にIBSの場合は食事が重要であるようである。乳および特に乳脂は、1つの寄与因子であると考えられている。多くの腸炎症状態は、治療されるというよりむしろ管理されている。しばしば、その処置は、食事ケア、ストレス管理、および薬物療法の組み合わせを含む。
【0004】
世界中の人々に消費されている乳、主に牛乳は、ヒトの食事におけるタンパク質の主な源である。牛乳は、典型的には1リットルあたり約30グラムのタンパク質を含む。カゼインは、そのタンパク質の最大の構成要素(80%)を構成する。過去20年間に、カゼインタンパク質、特にベータカゼインがいくつかの健康障害に関与していることを示すますます増える証拠が存在している。
【0005】
ベータカゼインは、ベータカゼインA1およびベータカゼインA2として分類され得る。これらの2種類のタンパク質は、ほとんどのヒトの集団において消費される乳中の主なベータカゼインである。ベータカゼインA1は、ベータカゼインA2と1個のアミノ酸が異なる。ヒスチジンアミノ酸がベータカゼインA1の209アミノ酸配列の67位に位置しており、一方でプロリンがベータカゼインA2の同じ位置に位置している。しかし、この1個のアミノ酸の違いは、腸中でのベータカゼインの酵素消化に決定的に重要である。67位におけるヒスチジンの存在は、ベータカゾモルフィン-7(BCM-7)として知られる7アミノ酸を含むタンパク質断片が酵素消化で生成されることを可能にする。従って、BCM-7は、ベータカゼインA1の消化産物である。ベータカゼインA2の場合、67位はプロリンで占められており、それはその位置におけるアミノ酸結合の切断を妨げる。従って、BCM-7はベータカゼインA2の消化産物ではない。
【0006】
他のベータカゼインのバリアント、例えばベータカゼインBおよびCも、67位においてヒスチジンを有し、他のバリアント、例えばA3、DおよびEは、67位においてプロ
リンを有する。しかし、これらのバリアントは、欧州起源の雌ウシからの乳中に非常に低いレベルでしか存在しないか、または全く存在しない。従って、本発明の文脈において、ベータカゼインA1という用語は、67位においてヒスチジンを有するあらゆるベータカゼインを指し、ベータカゼインA2という用語は、67位においてプロリンを有するあらゆるベータカゼインを指す。
【0007】
BCM-7は、オピオイドペプチドであり、体全体でオピオイド受容体を強力に活性化することができる。BCM-7は、胃腸壁を越えて循環に入る能力を有し、これはそれがオピオイド受容体を介して全身および細胞性活性に影響を及ぼすことを可能にする。出願者らは、以前に、乳および乳製品中のベータカゼインA1の消費ならびにI型糖尿病(国際公開第1996/014577号)、冠動脈性心疾患(国際公開第1996/036239号)および神経障害(国際公開第2002/019832号)を含む特定の健康状態の発生率の間の関連を決定している。
【0008】
BCM-7は消化機能にも影響を及ぼし得るという推測が存在してきた。オピオイド受容体は、胃腸運動性、粘液産生およびホルモン産生の制御を含む胃腸機能の調節において役割を果たしていることが報告されている(例えば、Mihatsch, W.A, et al., Biol. Neonate, 2005, 87(3):160-3)。乳中にあるカゼインは、腸運動性の阻害と関係していると
考えられており、それは便秘をもたらす可能性があり(Gunn T.R. and Stunzer D., NZ Med. J., 1986, 99(813):843-6)、便秘および合成カゾモルフィン誘導体に関する研究は、
BCM-7がこのオピオイド受容体に媒介される作用に寄与していることを示している(Charlin V. et al., Rev. Med. Chil., 1992, 120(6):666-9)。しかし、カゾモルフィンおよび腸における通過時間の間の関連に関するいくらかのインビトロの証拠は存在するが、その作用は必ずしもヒトにおけるインビボの作用に外挿され得るわけではないことは明らかである。例えば、少なくとも1つの研究は、ベータカゼインA1またはベータカゼインA2の消費および便秘の間の関係を実証することができなかった(Crowley, E.T., Nutrients, 2013, 5, 253-266)。BCM-7は、ミュー-オピエート受容体に媒介される経路を介して粘液の産生を刺激し(Zoghbi, S., Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 2006, 290(6):G1105-13)、免疫系と関係する細胞である粘膜固有層リンパ球の増殖を
調節する(Elitsur, Y. and Luk, G.D., Clin. Exp. Immunol., 1991, 85(3):493-7)こと
が示されている。
【0009】
上記の報告は、カゼインおよびカゾモルフィン(BCM-7を含む)ならびに胃腸機能の間の関連を示している。これらの報告は、乳タンパク質もしくは一般にカゼインを用いる研究またはBCM-7自体を用いる研究に基づいている。しかし、今までに、ベータカゼインA1の消費を腸炎症に直接関連付ける報告は存在しなかった。加えて、ベータカゼインA2の含有率が高い(そして逆にベータカゼインA1の含有率が低い)乳を飲んだ後の胃腸機能の改善に言及する消費者からの逸話的な報告が存在してきたが、これらは非科学的な報告であり、それらは機能におけるあらゆる改善の原因に関して非特異的である。さらに、そのような乳の消費において改善作用がないことの多くの逸話的な報告も存在する。これらの報告は、それらが便秘から下痢までの消化作用の連続体(continuum)にわ
たる報告を含む点で、矛盾している。結論は、特に潜在的に結果に影響を及ぼし得る変数の数が非常に大きい食物製品および生理機能の場合には、逸話的な報告から確信をもって出されることはできない。
【0010】
出願者は、ここで、ベータカゼインA2の消費と比較した、ベータカゼインA1の消費および腸の炎症の間の直接的な関連に関する決定的な科学的証拠を見出した。腸の健康に影響を及ぼし得るヒトの食事における無数の要因、ならびに乳および乳製品が多岐にわたるタンパク質構成要素および他の構成要素を含有することを考慮すると、出願者のベータカゼインA1の消費および腸の炎症状態の間の明確な直接的関係の発見は、驚くべきもの
である。特に、出願者は、ベータカゼインA1の摂取への急性腸炎症応答の証拠だけでなく、ベータカゼインA1への短期曝露の結果としてもたらされる腸の長期の進行中の炎症の証拠も見出している。
【0011】
従って、腸の炎症の危険性を予防もしくは低減するための方法を提供すること、または少なくとも既存の予防もしくは処置療法に対する有用な代替案を提供することが、本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第1996/014577号
【文献】国際公開第1996/036239号
【文献】国際公開第2002/019832号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Mihatsch, W.A, et al., Biol. Neonate, 2005, 87(3):160-3
【文献】Gunn T.R. and Stunzer D., NZ Med. J., 1986, 99(813):843-6
【文献】Charlin V. et al., Rev. Med. Chil., 1992, 120(6):666-9
【文献】Crowley, E.T., Nutrients, 2013, 5, 253-266
【文献】Zoghbi, S., Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 2006, 290(6):G1105-13
【文献】Elitsur, Y. and Luk, G.D., Clin. Exp. Immunol., 1991, 85(3):493-7
【発明の概要】
【0014】
本発明の第1観点において、動物において腸の炎症の危険性を予防または低減するための組成物の使用が提供され、ここで、その組成物は、ベータカゼインを含有し、ここで、そのベータカゼインは、少なくとも50重量%のベータカゼインA2を含む。
【0015】
本発明の第2観点において、動物において腸の炎症の危険性を予防または低減するための組成物が提供され、ここで、その組成物は、ベータカゼインを含有し、ここで、そのベータカゼインは、少なくとも50重量%のベータカゼインA2を含む。
【0016】
本発明の別の観点において、動物の腸の炎症の危険性を予防または低減するための組成物の製造における乳の使用が提供され、ここで、その乳は、ベータカゼインを含有し、ここで、そのベータカゼインは、少なくとも50重量%のベータカゼインA2を含む。
【0017】
本発明のさらなる観点において、動物において腸の炎症の危険性を予防もしくは低減する方法であって、その動物によるベータカゼインを含有する組成物の消費、またはその組成物のその動物への消費のための提供を含む方法が提供され、ここで、そのベータカゼインは、少なくとも50重量%のベータカゼインA2を含む。
【0018】
ベータカゼインA2の量は、ベータカゼインの50重量%~100重量%の範囲のあらゆる量、例えば少なくとも90%、少なくとも99%、またはさらには100%であることができる。
【0019】
本発明の特定の態様において、組成物は、乳または乳製品である。乳は、粉乳または液乳であることができる。液乳は、新鮮な乳、粉末から再構成された液乳、脱脂乳、ホモジナイズされた乳、練乳、無糖練乳、低温殺菌乳もしくは非低温殺菌乳、UHT乳の形態、または乳のあらゆる他の形態であることができる。乳製品は、クリーム、ヨーグルト、乳
餅、チーズ、バター、アイスクリーム、またはあらゆる他の乳製品であることができる。
【0020】
腸の炎症は、炎症性腸疾患または過敏性腸症候群であることができるが、それらに限定されない。炎症性腸疾患は、クローン病または潰瘍性大腸炎であることができるが、それらに限定されない。
【0021】
本発明のほとんどの態様において、動物はヒトである。しかし、他の態様において、動物は、イヌ、ネコ、または飼料に乳が補われるあらゆる他の飼育動物であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1の飼料を与えられたラットにおける結腸ミエロペルオキシダーゼ活性を示す。
図2図2は、実施例1の飼料を与えられたラットにおける空腸ミエロペルオキシダーゼ活性を示す。
図3図3は、実施例1の飼料を与えられたラットにおける血漿中の血清アミロイドAのレベルを示す。
図4図4は、実施例1の飼料を与えられたラットから採取された腸切片に関する組織学スコアを示す。
図5図5は、神経細胞およびGI上皮細胞における、モルヒネおよびBCM-7濃度依存性のシステインの取り込みを示す。
図6図6は、時間の経過にわたる神経細胞およびGI上皮細胞におけるシステインの取り込みを示す。
図7図7は、時間の経過にわたるBCM-7およびモルヒネのシステイン、GSH/GSSGおよびSAM/SAHへの作用を示す。
図8図8は、BCM-7の影響下での炎症反応に関与していることが示されている遺伝子(NFカッパBおよびIL10)におけるCpGメチル化の変化を示す。
図9図9は、炎症反応に関与していることが示されている遺伝子(MPO)および免疫応答に関与していることが示されている遺伝子(IL1R)におけるCpGメチル化の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、タンパク質ベータカゼインを含有する組成物および腸の炎症を予防する、または少なくとも腸の炎症の発現の危険性を低減するためのその使用に関する。重要なことだが、そのベータカゼインは、ベータカゼインのA2バリアントであり、またはその組成物中に存在する総ベータカゼインバリアントの少なくとも50重量%を構成する。その組成物中のA2バリアントの優勢(predminance)の重要性は、出願者がA1バリアントお
よびヒトにおける腸の炎症に関する生物学的マーカーの間の直接的な関連が存在することを示してきたという事実による。従って、A1バリアントの消費が回避される場合、腸の健康における向上が予想され得る。
【0024】
用語“腸の炎症”は、本明細書において用いられる際、結腸および/または小腸の急性、移行期または慢性および進行中の炎症を特徴とするあらゆる疾患、障害または病気を意味することが意図されている。そのような疾患、障害または病気は、炎症性腸疾患(IBD)および過敏性腸症候群(IBS)を、腸の非特異的過敏に加えて含むが、それらに限定されない。IBDは、一般に臨床的に定義された持続性の病気、主にクローン病および潰瘍性大腸炎を指す。
【0025】
用語“A1乳”は、本明細書において用いられる際、ベータカゼインを含有する乳を意味することが意図されており、ここで、そのベータカゼインは、主にベータカゼインA1
(またはその209アミノ酸配列の67位においてヒスチジンを有するあらゆる他のベータカゼインバリアント)の形態である。A1乳は、50%より多い、典型的には90%より多い(理想的には100%である)ベータカゼイン構成要素ベータカゼインA1を有し得る。
【0026】
用語“A2乳”は、本明細書において用いられる際、ベータカゼインを含有する乳を意味することが意図されており、ここで、そのベータカゼインは、主にベータカゼインA2(またはその209アミノ酸配列の67位においてプロリンを有するあらゆる他のベータカゼインバリアント)の形態である。A2乳は、50%より多い、典型的には90%より多い(理想的には100%である)ベータカゼイン構成要素ベータカゼインA2を有し得る。
【0027】
ほとんどのヒト集団の食事におけるベータカゼインの主な(それのみではないとしても)源は、乳または乳に由来する製品であるため、そして消費されるほとんどの乳はベータカゼインのA1およびA2バリアントの混合物のみを含有するため、高含有率のA2バリアントを有する乳(またはそのような乳から作られた製品)の消費は、必然的に、A1バリアントの消費が低いことを意味するであろう。この分析をさらに進めると、ベータカゼインの唯一の食事での源がA2バリアントを含有し、他のバリアントを含有しない場合、A1バリアントの食事での摂取は排除され、従ってベータカゼインA1の消費に起因する腸炎症の有害な健康の結果も排除されることが予想され得る。
【0028】
従って、本出願の発明は、動物(特にヒト)の食事におけるベータカゼインA1の低減または排除に基づいており、これは、ベータカゼインを含有する食物組成物、特に乳および乳製品中のベータカゼインが、主に、さらには排他的にベータカゼインA2であることを確実にすることにより達成される。
【0029】
理想的には、組成物中のベータカゼインは、100%ベータカゼインA2である。従って、ベータカゼインA1の完全な排除は、ベータカゼインA1(およびBCM-7)により引き起こされる腸の炎症の危険性を低減または完全に排除することにより、関係する健康の利益を最大化する。しかし、危険性は、ベータカゼインが主にベータカゼインA2である、すなわち、50重量%~100%のあらゆる量であるあらゆる組成物において低減される可能性があり、それには60重量%、70重量%、75重量%、80重量%、90重量%、95重量%、98重量%および99重量%が含まれるが、それらに限定されない。
【0030】
本発明は、ベータカゼインを含有する組成物の使用に関し、ここでそのベータカゼインは、少なくとも50重量%のベータカゼインA2を含み、上記で説明されたように、ベータカゼインA1およびベータカゼインA2は、本質的にほとんどの人々により消費される乳中に存在する唯一のベータカゼインバリアントであるため、本発明は、ベータカゼインを含有する組成物の使用にも関し、ここでそのベータカゼインは、50重量%未満のベータカゼインA1を含む。好ましくは、その組成物は、60重量%、70重量%、75重量%、80重量%、90重量%、95重量%、98重量%または99重量%未満のベータカゼインA1を含有し、理想的にはベータカゼインA1を全く含有しない。
【0031】
本発明の組成物は、典型的には乳であるが、あらゆる乳由来の製品、例えばクリーム、ヨーグルト、乳餅、チーズ、バター、またはアイスクリームであることもできる。組成物は、乳から得られたベータカゼインを含有する非乳製品であることもできる。組成物は、ベータカゼイン自体であることができ、またはベータカゼインから調製されることができ、そのベータカゼインは、粉末もしくは顆粒のような固体形態、または固体のケーキの形態であることができる。
【0032】
乳は、ヒト、ヤギ、ブタおよびバッファローを含むあらゆる哺乳類から得ることができ、本発明の好ましい態様において、その乳は牛乳である。
【0033】
乳は、新鮮な乳、粉乳、粉末から再構成された液乳、脱脂乳、ホモジナイズされた乳、練乳、無糖練乳、低温殺菌乳もしくは非低温殺菌乳、UHT乳の形態、または乳のあらゆる他の形態であることができる。
【0034】
本発明の組成物は、主にヒトによる消費に適用可能であるが、健康の利益は一部の他の動物、例えばネコ、イヌおよび他の飼育動物にも関連していることは、理解されるべきである。
【0035】
本発明に関する支持は、実施例において記載される実験において見出される。
【0036】
特に、実施例2は、ベータカゼインA1およびベータカゼインA2飼料のラットの結腸におけるミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性への作用に関する。MPO活性は、炎症に関するマーカーである(Krawisz, et al., Gastroenterology, 1984, 87(6):1344-1350 and Dommels, Y.E.M., et al., Genes Nutr., 2007, 2(2):209-223)。結腸のMPO活性
は、ベータカゼインA1を与えられたラットにおいて、ベータカゼインA2を与えられたラットと比較して増大することが分かり、これはベータカゼインA1を与えられたラットにおける好中球の増大したレベルを示しており、それは今度は炎症反応の指標である。その作用は、ナロキソン(既知のオピオイド受容体拮抗薬)で処置されたラットでは観察されず、これは、その作用がBCM-7のμ-オピエート受容体との相互作用により媒介されていることを示している。
【0037】
実施例3は、空腸におけるMPO活性への作用に関する。その結果は、ベータカゼインA1の消費において小腸における炎症の観察可能な増大はなかったことを示している。これは、結腸における炎症を示した実施例2とは対照的である。実施例3の結果は、ベータカゼインA1の消費により誘導される炎症は、結腸に局在しており、腸全体にわたるものではないことを確証している。
【0038】
実施例4は、血清アミロイドA(SAA)の濃度に関し、それは、主に肝臓により、炎症の急性期の間に分泌されるタンパク質である(Uhlar, C.M. and Whitehead, A.S., Eur.
J. Biochem., 1999, 265(2):501-523)。SAAのレベルは、全身性炎症の指標である。
実施例4は、処置群の全ての間に血漿SAA濃度において有意差がなかったことを示している。換言すると、この研究からは全身性炎症の明確な証拠がなかった。
【0039】
組織学研究に関する実施例5は、結腸における炎症がわずかであり、その見え方(how it presents)において無症候性であり得ることを反映している。組織の炎症反応を確証
するMPOデータにもかかわらず、これは、広範囲にわたるデータセットに由来する有意性の欠如により証明されるように、視覚的に明らかではなかった。
【0040】
SAAおよび小腸MPO実験の重要性は、どちらの全身性炎症の研究においても証拠が観察されなかったことである。これは、BCM-7に媒介される炎症反応と一致している。理論により束縛されることを望むわけでは一切ないが、これは、BCM-7により媒介される腸の炎症が局在する炎症反応であるため、説明され得る。換言すると、全身性炎症の証拠の欠如(SAAおよび組織学研究)は、局在する炎症の証拠(MPO研究)と合わせて、ベータカゼインA1を含有する食物の摂取に由来するBCM-7は腸の炎症を引き起こすが、全身性の作用も小腸への作用も有しないことの強い指標である。
【0041】
その発見は、BCM-7が炎症に対抗し得るという公開された証拠を考慮すると、さらに驚くべきものである。例えば、BCM-7は腎臓における酸化的ストレスを低減することが報告されている(Zhang, W., et al., http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23658831)。酸化的ストレスは、炎症性作用である。従って、BCM-7がこの炎症性作用を低減するという報告された発見は、BCM-7の健康に関連する生理的プロセスにおける因子としての予測不可能性を指し示している。
【0042】
実施例6は、ベータカゼインA1を含有する乳が、ベータカゼインA2を含有する乳と比較して、胃腸症状への作用を有するかどうかを調べるための試験を記載している。重要な発見は、100%ベータカゼインA1乳および100%ベータカゼインA2乳の消費後の便の硬度における統計的有意差(p=0.038)である。これに関する統計的証拠は、女性のみを考えた場合にさらに強い(p=0.013)。その証拠は、自身が乳に不耐性であると考えていた人を分析から除いた場合でも、強いままである(p=0.044)。ベータカゼインA2乳の投与計画と比較したベータカゼインA1乳の投与計画は、全体的により軟らかい便(faeces)をもたらしたすことは明らかである。より軟らかい便(faeces)をもたらす弱められた水吸収機能は、ベータカゼインA1が消費された際のベータカゼインA2と比較してより高いレベルの腸炎症の証拠である。
【0043】
出願者は、(ベータカゼインA1からの)BCM-7および炎症の指標、例えばシステインおよびグルタチオン(GSH)レベルの間の直接的な関係も調べ、見出した。
【0044】
酸素を含有する化学的に反応性の分子である活性酸素種(ROS)、例えば酸素イオンおよび過酸化物ならびにIBDの間の関係は、増大したROSレベルおよび低下した抗酸化物質レベルはIBD、クローン病および潰瘍性大腸炎における発症機序への主な寄与因子であるという証拠から推測され得る。ROSはまた、IBDにおける免疫反応を、炎症性白血球を増加させることにより増強し得る。さらに、炎症および炎症性疾患の進行は、粘膜抗酸化防御、特に粘膜のGSHレベルにおける欠陥とも関係している。抗酸化特性を有する薬物は、IBDの処置において有益な作用を示すことが報告されている。
【0045】
システインおよびセレンの血中レベルは、GSH合成の支持および維持のために決定的に重要であり、これらは、今度は、食物由来の硫黄含有アミノ酸であるシステインおよびメチオニンの胃腸(GI)管からの腸上皮境界表面上の異なるトランスポーターを介する吸収に依存している。
【0046】
必須微量元素であるセレン(Se)における欠乏は、クローン病を含むヒトにおける酸化的ストレスおよび炎症と関係するいくつかの慢性疾患に関する危険因子であると考えられている。Seは、グルタチオンペルオキシダーゼGPX2またはGPX1の活性に必須であり、その両方が、脳および粘膜におけるGSHのレベルの制御に関わる重要な酵素である。GPX1は、IBDと関係していることが知られており、その活性は、Seの存在に依存する。
【0047】
GI上皮細胞における様々なアミノ酸トランスポーターの中で、EAAT3(興奮性アミノ酸トランスポーター3、EAAC1)は、システイン輸送に選択的であり、最初にGI上皮細胞からクローニングされた。EAAT3は、小腸において、特に末端回腸において最も顕著に発現しており、最高レベルは腺窩細胞およびより低い絨毛領域(lower villus regions)においてである。これは、腸の上皮内層を支持する多能性幹細胞に関する主要な部位である。従って、低下したEAAT3依存性のシステインの吸収が、より低いGSHレベルの局所的および全身性の結果と共に存在する。
【0048】
上記で記載された作用は、特にGI管におけるEAAT3のあらゆる調節因子により媒
介される変化の急性の作用である。しかし、必須のGSH前駆体であるシステインの損なわれたGI吸収は、結果として局所的および全身性の酸化的ストレスをもたらすだけでなく、それに続く遺伝子発現の正常な後成的制御の混乱も誘導するであろう。これは、メチオニンシンターゼ酵素活性およびS-アデノシルメチオニン(SAM)レベルの制御により行われる。SAMは、DNAおよびヒストンのメチル化に関するメチル供与体として作用し、S-アデノシルホモシステイン(SAH)に変わる。細胞のメチル化能力は、SAM/SAHとして言及される。酸化還元状態における変化への適応性の後成的応答は、様々な疾患、特に抗酸化恒常性への干渉に由来し得る疾患、例えば一般にGI管の炎症、より具体的にはIBDおよびクローン病において重要な役割を果たしているようである。
【0049】
実施例7は、BCM-7は、システインの取り込みを濃度依存性の様式で阻害することができ、有効性の順序は、モルヒネがBCM-7より大きく、IC50値は、それぞれ神経細胞において0.16および1.31nM、GI上皮細胞において6.38および15.95nMであることを示している(図5)。システイン取り込みの阻害は、30分の時点で完全に発現され、48時間のモルヒネまたはBCM-7曝露を通して持続し(図6)、これは、BCM-7への1回の曝露後のシステイン取り込みへの長期の慢性作用を示している。これらの作用は、選択的μ-拮抗薬の存在下での遮断により示されるように、μ-オピオイド受容体により媒介され、デルタオピオイド受容体によっては媒介されなかった。
【0050】
実施例8は、BCM-7およびモルヒネが、システインおよびGSHレベルにおける時間依存性の低下を引き起こしたことを示している。神経細胞におけるシステインの細胞内レベル、細胞の酸化還元状態(グルタチオン(GSH)の、その酸化型であるグルタチオンジスルフィド(GSSG)に対するGSH/GSSG比により反映される)も低下し(図7)、これは、酸化的ストレス状態を示している可能性がある。さらに、SAM/SAH(メチル化能力)の比率も、BCM-7処理により、異なる時点において影響を受けた(図7)。従って、BCM-7は、主な細胞内抗酸化物質レベル、特にGSHレベルにおける低減を誘導し、酸化的ストレスシグナル伝達経路を介して炎症性変化をもたらす可能性を有する。さらに、SAMレベルにおいて媒介される変化は、炎症経路の原因である遺伝子における後成的変化を誘導し得る。
【0051】
実施例9は、原型的オピオイドであるモルヒネが、結果として7,592種類の差次的に発現された転写産物(DET)をもたらし、一方でBCM-7処置は、1,467種類のDETをもたらしたことを説明している。501種類のDETが、モルヒネおよびBCM-7の両方により共有されていた。加えて、この結果は、全体的なDNAメチル化における観察された変化と有意に関係していることが分かった疾患および障害を示している。BCM-7で差次的にメチル化されたプロモーターの転写産物(DMT)は、炎症性疾患と関係していた(表5)。従って、BCM-7のGSH抗酸化レベルおよび酸化的ストレスへの急性作用は、本質的に、慢性の適応性遺伝子発現変化に変換される。BCM-7の影響下で後成的に変化した遺伝子は、細胞機能ならびに炎症性疾患経路の制御に直接関わっており、転写的に制御された遺伝子は、細胞機能および酸化還元恒常性にも関わっている(表5)。
【0052】
実施例10は、BCM-7の影響下での炎症反応の媒介の原因である遺伝子におけるDNAメチル化の変化を示している。サイトカイン、例えばNFカッパBおよびインターロイキン、例えばIL1(図8)は、BCM-7曝露後にそれらの後成的状態において変化している。従って、酸化還元状態における変化は、サイトカインの後成的状態における長期の変化を媒介した。これは、分子的損傷(molecular insults)の記憶の役目を果たす
と考えられ、それは疾患、例えばIBDにおける長期の慢性的変化および炎症反応に寄与している可能性がある。加えて、変化した後成的状態は、実施例10から明らかである。
従って、BCM-7は、ベータカゼインA1を与えた研究から明らかであるように、MPO活性を変化させるだけでなく、それは、MPO遺伝子の後成的状態も変化させる(図9)。
【0053】
これらの研究は、ベータカゼインA1の消費および腸の炎症の間の関連の最初の明確な科学的証拠である。以前に、(ベータカゼインA1自体ではなく)BCM-7に関連する非決定的かつ矛盾する逸話的報告が、当業者の間で混乱をもたらしており、多くがそのような関連はなかったと信じている。出願者の発見により、長年世界中で多くの人々が患ってきた様々な炎症性の腸の病気により引き起こされる問題に対する代替の可能性のある解決策、すなわち、食事におけるベータカゼインA1の回避が、ここで提供される。これは、腸の炎症に関連する病気または症状の危険性を処置、回避または低減するために利用可能な、主にベータカゼインA2を含有する(そしてベータカゼインA1を含有しない)そのベータカゼイン含有率を有する乳を生産し、そのような乳およびその乳に由来する製品を作製することにより達成され得る。雌ウシの乳は、ベータカゼインA1およびベータカゼインA2の相対的割合に関して試験されることができる。あるいは、雌ウシは、ベータカゼインA1またはベータカゼインA2または両方の組み合わせを含有する乳を生産するそれらの能力に関して遺伝学的に試験されることができる。これらの技法は、周知である。
【0054】
本発明は、炎症性の腸の病気を処置または予防するための既存の技法または方法を超える明確な利点を有する。ほとんどの既存の技法または方法は、医薬、ストレス管理または食事の修正による医療介入に頼っており、その多くは、しばしば限られた実際の成功しか有さず、または実際の成功を有しない。本発明は、比較的管理するのが容易である解決策、すなわち、食事における“通常の”(ベータカゼインA1を含有する)乳を、ベータカゼインA2の含有率が高いことが知られている、好ましくは存在する全てのベータカゼインがベータカゼインA2である乳で置き換えることにより、ベータカゼインA1を含有しない食事に変えることを提供する。本発明は、医薬的介入よりもかかる費用がかなり少なく、大規模な食事の修正、例えば乳製品または他の一般的な食物製品の回避に関するあらゆる必要性も回避する。
【0055】
本明細書における先行技術文書へのあらゆる参照は、そのような先行技術が広く知られている、またはその分野における共通の一般的な知識の一部を形成するという自認と考えられるべきではない。
【0056】
本明細書で用いられる際、単語“含む”、“含むこと”、および類似の単語は、排他的または包括的な意味で解釈されるべきではない。換言すると、それらは、“含んでいるが、それに限定されない”を意味することが意図されている。
【0057】
本発明は、以下の実施例への参照によりさらに記載される。特許請求されるような本発明が、これらの実施例により限定されることは決して意図されていないことは、理解されるであろう。
【実施例
【0058】
実施例1:給餌方法論
72匹の離乳させた(4週齢)オスのウィスターラットを用いた。対照試料での7日間の順化期間の後、ラットに、12または60時間のどちらかの間、3種類の飼料:100%A1飼料、100%A2飼料、対照試料の1種類を与えた(処置あたりn=6)。飼料のタンパク質構成要素は、(A1およびA2飼料に関して)脱脂乳および(非乳タンパク質対照試料に関して)卵白に由来し、エネルギーおよび多量栄養素の組成に関して釣り合いが取られた(表1参照)。期間の終了の15分前に、ラットにナロキソンまたは生理食
塩水(対照)のどちらかを腹腔内注射により与え、次いで非消化性トレーサーである二酸化チタンを経口強制摂取させた。便および尿試料を、その後の24時間にわたって7つの時点で採取し、それらが分析されるまで-20℃(便)または-80℃(尿)で保管した。
【0059】
【表1】
【0060】
実施例2:結腸MPO活性
実施例1に従って給餌したラットからの結腸組織を、ミエロペプチダーゼ(MPO)活性に関して、確立された方法(Grisham, M.B., et al., Methods Enzymol., 1990, 186:729-742)に基づいて定量化した。結腸組織(50mg)をホモジナイズし、遠心分離により分配し、超音波プローブにより破壊し、凍結融解サイクルを施した。内在性MPOは、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン基質のH依存性の酸化を触媒し、それは562nmにおいて比色測定で測定される。活性は、同じホモジネートに関するビシンコニン酸(BCA)(Smith, P.K., et al., Anal. Biochem., 1985, 150(1):76-85)タン
パク質決定により標準化された。結果を図1において示す。
【0061】
実施例3:空腸MPO活性
この実施例では、空腸から採取した組織試料を分析した。用いた方法論は、実施例2に関するものと同じであった。結果を表2および図2において示す。
【0062】
【表2】
【0063】
実施例4:血清アミロイドAレベル
SAAレベルを、実施例1に従って給餌したラットから採取した血漿において測定した。測定は、商業的に入手可能なELISAキット(Tridelta Development Limited、メイヌース、アイルランド)を用いて行われた。結果を表3および図3において示す。
【0064】
【表3】
【0065】
実施例5:腸の組織学
ラットの胃腸管における形態における変化を測定するために用いられた手順は、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色された組織切片の、光学顕微鏡下での組織学的評価に基づく(Knoch, B. et al., J. Nutrigenet. Nutrigenomics, 2009, 2(1):9-28 and Barnett, M.P., BMC Immunol., 2010, 11:39)。この方法を、100%A1または100%A2のどちらかを与えられたラットの結腸組織由来の切片に適用し、ベータカゼインバリアントの腸炎症への作用を決定した。結果を図4において示す。データ(平均±SEM)は、60時間ナロキソン群中のベータカゼインA1を与えられたラットおよびベータカゼインA2を与えられたラットの間で有意(P<0.05)差が存在し、ベータカゼインA2を与えられたラットは有意に高いスコアを有することを示した。しかし、これらの組織学スコアの大きさは、炎症を示しておらず、全体的な分析は、飼料、時間、またはナロキソン処置の組織学スコアへの作用の証拠を示していない。
【0066】
実施例6:胃腸症状
この8週間のランダム化されたクロスオーバー試験において、参加者(n=41)を、2週間の乳系のウォッシュアウト(dairy washout)の後、2つの群の1つへとランダム
化した:1)A1乳(n=21);または2)A2乳(n=20)。参加者は、2回目の2週間の乳系のウォッシュアウトを受け、次いで、8週間の試験の終了時に全ての参加者(n=37)が両方の乳介入を完了しているように、もう一方の介入乳アーム(arm)にクロスオーバーされた。19~68才の男性(12人)および29人の女性(29人)が募集された。除外基準は以下のものであった:(1)乳アレルギー;2)医学的に診断されたラクトース不耐性;3)妊娠および授乳期;4)過去6ヶ月間における心血管事象;5)オピオイドの消費;6)前の8週間における抗生物質処置;ならびに7)スクリーニングの前4週間における免疫抑制薬物療法または抗炎症薬。参加者は、A1乳またはA
2乳のどちらかにおける2週間にランダム化される前に、(酪農乳が供給されたライスミルクで置き換えられた)14日間の乳系のウォッシュアウト期間を開始した。試験の第1アームを完了した後、参加者は、他方の乳介入へのクロスオーバーの前に、2回目の2週間のウォッシュアウトを完了した。
【0067】
ウォッシュアウト用ライスミルク-参加者は、14日間のウォッシュアウト期間の間全ての酪農乳を供給されたライスミルクで置き換え、試験の期間の間全ての他の乳系食品を避けるように指導された。彼らは、乳系の隠れた源、例えばビスケットおよびチョコレートに関する情報を提供され、乳系を含まない代替物のリストを提供された。参加者は、14日間のウォッシュアウト期間のそれぞれに関して、750mLのライスミルク/日を消費するために十分なライスミルク(So Natural Rice Milk,Freedom Foods,オーストラリア)も供給された。ライスミルクは、1リットルの超高温(UHT)パッケージで供給され、100mLあたり以下の栄養プロフィールを有していた:エネルギー212kJ、総タンパク質0.3g、総脂肪1.0gおよび炭水化物10.4g。
【0068】
A1乳-参加者は、全ての酪農乳を、供給されたA1乳で置き換え、全ての他の乳系食品および乳系の隠れた源を避けるように指導された。2週間のA1乳介入の間、参加者は、750mL/日(約7.5gのベータカゼインA1)のA1乳を、1日にわたって分散させて消費するように指導された。A1乳のNano-LC ESI MS分析(APAF、シドニー)は、総ベータカゼインのA1比率はA1乳において99%より大きいことを見出した。
【0069】
A2乳-参加者は、全ての酪農乳を、供給されたA2乳で置き換え、全ての他の乳系食品および全ての乳系の隠れた源を避けるように指導された。2週間のA2乳介入の間、参加者は、750mL/日(約7.5gのベータカゼインA2)のA2乳を、1日にわたって分散させて消費するように指導された。A2乳のNano-LC ESI MS分析(APAF、シドニー)は、総ベータカゼインのA1比率は0.1~0.5%であることを見出した。
【0070】
A1乳およびA2乳は両方とも、参加者に1リットルUHTパッケージで供給され、100mLあたり以下の栄養プロフィールを有していた:エネルギー189kJ、総タンパク質3.1g、総脂肪2.5gおよび炭水化物(ラクトースを含む)5.2g。参加者は、1日あたりに消費した乳の量を、コンプライアンスカレンダーに記録した。コンプライアンスは、消費された乳の量を、毎日の期待される乳の消費量で割り、100を掛けることにより、百分率として計算された。A1乳およびA2乳は、同一の無地の包装で提供され、従って参加者は、彼らが受けている乳介入に関して分からなくされた。
【0071】
ブリストル便スケール(Lewis S.J. and Heaton K.W., Scand. J. Gastroenterol. 1997, 32(9):920-4)を、結腸通過時間の代用尺度として用いた。結果を表4において示す。
【0072】
【表4】
【0073】
実施例7:BCM-7のシステインの取り込みへの作用
放射能標識された[35S]-システインの取り込みアッセイを、Caco-2-GI上皮細胞および神経細胞において、A1乳から放出されたBCM-7の存在下で実施し、未処理の対照ならびにモルヒネ(原型的オピオイド受容体作動薬)に対して比較した。細胞における前処理を、以前に記載されたように(Trivedi M., et al.; Mol. Pharm., 2014)、30分、4、24および48時間の異なる時点に関して実施した。簡潔には、SH-
SY5Yヒト神経細胞およびCaco-2腸上皮細胞を、6ウェルプレートに蒔き、薬物で前処理し、取り込みを測定する前に様々な時間の間インキュベートした。培地を吸引し、細胞を600μLのHBSSで37℃において洗浄した。非放射活性HBSSを吸引し、600μLの、[35S]-システイン(1μCi/1mL)、10μMの未標識のシステインおよび100μMのDTTを含有する37℃のHBSSで置き換え、細胞を5分間インキュベートした。その[35S]-システイン/HBSS混合物を吸引し、氷冷HBSSによる2回の洗浄により処理を終了した。次いで、細胞を600μLのdHOで溶解させ、剥がし、1.5mLの微量遠心チューブ中に集め、10秒間超音波処理した。それぞれの試料の100μLを、タンパク質アッセイのために取り分けた。それぞれの試料の200μL(三つ組で(in triplicate))を、4mLのシンチレーション流体を含
むシンチレーションバイアル中に取り分け、ボルテックスし、放射活性に関して計数し、タンパク質含有量に対して標準化した。加えて、モルヒネおよびBCM-7のシステイン取り込み作用を、選択的μ-拮抗薬であるD-Phe-Cys-Tyr-D-Trp-Arg-Thr-Pen-Thr(CTAP)、およびデルタ拮抗薬ナルトリンドール(NTI)の存在下でも特性付けた。結果を図5および6において示す。これらの図中のそれぞれの記号は、未処理の対照に対して比較した統計的有意差(p<0.05)を示し、それぞれの#記号は、未処理の対照に対して比較した統計的有意差(p<0.005)を示す。
【0074】
実施例8:BCM-7のGSHレベルへの作用
この実施例は、実施例7において観察されたようなシステイン取り込みにおける低下が、潜在的にGSHの変化に変換され、抗酸化レベルに影響を及ぼし得るかどうかを調べた。GSHの細胞内レベルを、BCM-7ならびにモルヒネを用いて、異なる時間(30分間、4時間、および24時間)の間、HPLCおよび以前に用いられた電気化学勾配検出法(Hodgson et al., J. Alzh. Dis. 2013, Trivedi M., et al., Mol. Pharm. 2014)の使
用により測定した。簡潔には、SH-SY5Y神経細胞を、α-MEM中でコンフルエントまで増殖させた。培地を吸引し、細胞を1mLの氷冷HBSSで2回洗浄した。HBSSを吸引し、0.6mLの氷冷dHOを細胞に添加した。細胞を、フラスコ/ディッシュから剥がし、dHO中で懸濁した。細胞懸濁液を、氷上で15秒間超音波処理し、懸濁液の100μLを、タンパク質含有量を決定するために用いた。残りの溶解物を、微量遠心チューブに入れ、等量の0.4N過塩素酸を添加し、続いて氷上で5分間インキュベートした。試料を5,000×gで遠心分離し、上清を新しい微量遠心チューブに移した。100μLの試料を、円錐形のマイクロオートサンプラーバイアルに入れ、オートサンプラーの冷却トレー中で4℃で維持した。この試料の10μLを、HPLCシステム中に注入した。
【0075】
酸化還元およびメチル化経路の代謝産物の分離を、Agilent Eclipse XDB-C8分析カラム(3×150mm;3.5μm)およびAgilent Eclipse XDB-C8(4.6×12.5mm;5μm)ガードカラムを用いて成し遂げた。2つの移動層を用いた:移動層Aは、0%アセトニトリル、25mMリン酸ナトリウム、1.4mM 1-オクタンスルホン酸であり、リン酸によりpH2.65に調節した。移動層Bは、50%アセトニトリルであった。流速は、最初0.6mL/分に設定し、段階的な勾配を用いた:0~9分0%B、9~19分50%B、19~30分50%B。次いで、カラムを、次の運転の前に5%Bで12分間平衡化した。温度を27℃で維持した。電気化学検出器は、BDD Analytical cell Model 5040を有するESA CoulArrayであり、作動電位は1500mVに設定した。試料濃
度を、代謝産物のピーク面積から、標準的な較正曲線およびESAに供給されたHPLCソフトウェアを用いて決定した。試料濃度を、タンパク質含有量に対して標準化した。一部の場合において、試料を必要に応じて移動相中で希釈し、または50μlまでの試料を注入して、チオールレベルが標準曲線の範囲内であることを確実にした。結果を図7において示す。
【0076】
実施例9:BCM-7のDNAメチル化および遺伝子発現レベルへの作用
SAM/SAHにおける変化は、全体的なDNAメチル化に影響を及ぼし、様々な機能に関わる遺伝子に影響を与える可能性がある。BCM-7により誘導される全体的なDNAメチル化のレベルを、以前に記載された(Trivedi M., et al., Mol. Pharm. 2014)ようなメチル-CpG結合ドメイン(MBD)タンパク質富化ゲノム配列決定(MBD-seq)を用いて調べ、一方で、未処理の対照SH-SY5Y細胞および1μMのBCM-7で4時間処理した細胞からのmRNA翻訳マイクロアレイデータを、Agilent V3マイクロアレイチップを用いて得た。
【0077】
簡潔には、ゲノムDNAを、試料から、Easy DNAキット(Invitrogen K1800-01)によ
り、細胞株に関する適切なプロトコルを用いて抽出した。断片化を、Covaris S2上で、以下の設定を用いて実施した:衝撃周期10%、強度5、200秒の間にバーストあたり200サイクル。200bpの平均の長さを有する断片を得た。パワーモードは周波数掃引、温度は6~8℃、水位は12である。最大で5μgを、マイクロチューブ中の130μlのトリス-EDTA中に、AFA増感剤(AFA intensifier)と共に装填した。より少
ないDNA入力(500ngまで)を有する試料に関して、DNAをトリスEDTA中で1:5希釈した。5~3μgの入力を有するDNAを、Agilent2100上で、DNA1000チップを用いて分析した。3μgより少ない入力を有するDNAを、ロータリーエバポレータ中で25μlまで濃縮し、断片の分布を高感度DNAチップ上でチェックした。メチル化されたDNAを、MethylCapキット(Diagenode,ベルギー)を用いて捕捉した。収量は、典型的には捕捉されたDNA全体で0.5~8ngであった。続いて、断片を、Illumina Genome Analyzer IIを用いて配列決定した。断片化され、捕捉されたDNAの濃度を、Quant-iT PicoGreen dsDNAアッセイキット(Invitrogen P7589)を用いて、Fluostar Optimaプレートリーダー上で480/520nmにおいて決定した。
【0078】
DNAライブラリーを調製するため、DNA Sample Prep Master Mix Set 1(NEB E6040
)を、Multiplexing Sample Preparation Oligo Kit(96試料,Illumina PE-400-1001
)との組み合わせで用いた。全部の断片化されたDNAを利用し、Multiplexing Sample Preparation Oligo Kitにおいて提供されたmultiplexing配列決定アダプターを用いて、
NEBのプロトコルに従った。ライブラリーのサイズ選択を、2%アガロースゲル(Low Range Ultra Agarose Biorad 161-3107)上で実施した。1Kb Plusラダー(Invitrogen 10787-018)を用いて、ゲルを120Vで2時間運転した。300bp+/-50
bpの断片を切り出し、Qiagen Gel Extraction Kitカラム(Qiagen 28704)上で溶離し
、23μlEB中に溶離した。
【0079】
Illuminaライブラリー増幅指標プロトコルを、以下の変更を加えて用いた:22μlのDNAを用いて、21サイクルの運転を実施した。試料を、Qiaquick PCR Purification
カラム(Qiagen 28101)上で精製し、50μlのEB中で溶離し、1:5希釈し、ロータリーエバポレーター中で10μlに濃縮した。1μlをAgilent 2100 HS DNAチップに適
用し、Agilent 2100上でのスメア分析により濃度を決定した。試料を10nMに希釈した。NaOHによる変性後、試料を16pMまで希釈した。Paired-Endフローセルを、Cluster Stationユーザーガイドに従って調製した。配列決定を、HiSeqユーザーガイド
(Multiplexed PE Runの実施)に従って、paired end運転に関して2×51サイクルで実施した。
【0080】
全ゲノムマイクロアレイハイブリダイゼーションに関して、それぞれの試料からの総RNA500ngを、蛍光色素(Cy3;Amersham Biosciences Corp,ニュージャージー
州ピスカタウェイ)で、Low RNA Input Linear Amplification Labellingキット(Agilent Technologies,カリフォルニア州パロアルト)を製造業者のプロトコルに従って用いて標識した。蛍光標識されたcRNAの量および質を、NanoDrop ND-1000分光光度計およびAgilent Bioanalyzerを用いて評価した。製造業者の指定に従って、1.6mgのCy3
標識したcRNAを、Agilent Human Whole Genome Oligo Microarray(Agilent Technologies,Inc.,カリフォルニア州パロアルト)に17時間ハイブリダイズさせた後、洗浄し、走査した。データを、走査された画像から、Feature Extraction Software(Agilent Technologies,Inc.,カリフォルニア州パロアルト)を用いて抽出した。
【0081】
全ゲノムDNAのMBD-seqは、偽発見率(FDR)<0.1およびmRNAマイクロアレイデータにより定められるような、差次的にメチル化されたプロモーターの転写産物(DMT)を明らかにし、FDR<0.1により定められる差次的に発現された転写産物(DET)を明らかにした。転写産物は、差次的にメチル化/転写された遺伝子および非コードRNAの両方を含んでいた。BCM-7により特定の生物学的または機能的に関連する経路において誘導された後成的変化ならびに転写変化を、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)ツールを用いて評価し、最高の影響を示す経路を同定した。結果を表5において示す。
【0082】
【表5】
【0083】
実施例10:BCM-7のサイトカインの後成的状態への作用
いくつかの個々のサイトカインは、IBDおよびクローン病のような疾患における炎症反応の媒介に関わっていることが報告されている。NFカッパBが1つの例である。同様に、インターロイキン、例えばIL1、IL10、IL33等も、IBDにおける炎症応答の媒介に関わっていることが報告されている。BCM-7のインターロイキンおよびNFカッパBへの後成的作用を、上記で実施例9において記載した方法を用いて調べた。図8および9は、BCM-7の、これらの遺伝子、すなわちMPO、IL1R、IL10およびNFカッパB活性化タンパク質の遺伝子内またはプロモーター領域付近のDNAメチル化の変化への作用を示す。“CpG”は、その特定の遺伝子座において記述されたCpGアイランド(シトシン-グアニンが高頻度である部位)の正常なレベルを意味する。“対照”は、未処置の対照を示す。
【0084】
本発明は、例として記載されてきたが、特許請求の範囲において定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく変更および修正を行うことができることは、理解されるべきである。さらに、特定の特徴に対して既知の均等物が存在する場合、そのような均等物は、あたかも本明細書において具体的に言及されたかのように、組み込まれる。
発明の態様
[態様1]動物において腸の炎症の危険性を予防または低減するための組成物の使用であって、該組成物がベータカゼインを含有し、そして該ベータカゼインが少なくとも50重量%のベータカゼインA2を含む、前記使用。
[態様2]該ベータカゼインが、少なくとも90重量%のベータカゼインA2を含む、態様1に記載の使用。
[態様3]該ベータカゼインが、少なくとも99重量%のベータカゼインA2を含む、態様1または態様2に記載の使用。
[態様4]該ベータカゼインが、50重量%未満のベータカゼインA1を含む、態様1に記載の使用。
[態様5]該ベータカゼインが、10重量%未満のベータカゼインA1を含む、態様4に記載の使用。
[態様6]該ベータカゼインが、1重量%未満のベータカゼインA1を含む、態様3または態様4に記載の使用。
[態様7]該組成物が、乳または乳製品である、態様1~6のいずれかに記載の使用。
[態様8]該乳が、新鮮な乳、粉乳、粉末から再構成された液乳、脱脂乳、ホモジナイズされた乳、練乳、無糖練乳、低温殺菌乳、非低温殺菌乳、またはUHT乳である、態様7に記載の使用。
[態様9]該乳製品が、クリーム、ヨーグルト、乳餅、チーズ、バター、またはアイスクリームである、態様7に記載の使用。
[態様10]該腸の炎症が炎症性腸疾患である、態様1~9のいずれかに記載の使用。
[態様11]該炎症性腸疾患がクローン病または潰瘍性大腸炎である、態様10に記載の使用。
[態様12]該腸の炎症が過敏性腸症候群である、態様1~9のいずれかに記載の使用。
[態様13]該動物がヒト、イヌ、またはネコである、態様1~12のいずれかに記載の使用。
[態様14]動物において腸の炎症の危険性を予防または低減するための組成物であって、該組成物がベータカゼインを含有し、そして該ベータカゼインが少なくとも50重量%のベータカゼインA2を含む、前記組成物。
[態様15]動物において腸の炎症の危険性を予防または低減するための組成物の製造における乳の使用であって、該乳がベータカゼインを含有し、そして該ベータカゼインが少なくとも50重量%のベータカゼインA2を含む、前記使用。
[態様16]動物において腸の炎症の危険性を予防または低減する方法であって、該動物によるベータカゼインを含有する組成物の消費、または該組成物の該動物への消費のための提供を含み、該ベータカゼインが少なくとも50重量%のベータカゼインA2を含む、前記方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9