(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】パチン錠及び可搬式コンテナ
(51)【国際特許分類】
E05B 65/52 20060101AFI20230210BHJP
【FI】
E05B65/52 P
(21)【出願番号】P 2019133946
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591261602
【氏名又は名称】サーモス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231888
【氏名又は名称】日本調理機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 衛
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-302270(JP,A)
【文献】特開平11-227780(JP,A)
【文献】実開昭54-147910(JP,U)
【文献】実開平03-105568(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B1/00-85/28
B65D35/44-35/54
39/00-55/16
E05C1/00-21/02
F16B2/00-2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ピンを有し、被装着面に固定されるベース部材と、
前記支持ピンを中心に前記ベース部材に対して回転可能に支持されるレバー部材と、
前記レバー部材に回転可能に支持され、被係止部材に係止可能なフック部材と、
前記レバー部材を前記ベース部材に向けて付勢するトーションばねと、を備え、
前記トーションばねは、
前記支持ピンが挿通されるコイル部と、
前記コイル部の一端に位置し、前記ベース部材に連結する第1ばね端部と、
前記コイル部の他端に位置し、前記フック部材又は前記レバー部材に連結する第2ばね端部と、を備え、
前記第1ばね端部及び前記第2ばね端部の少なくとも何れか一方は、接触する前記ベース部材、前記フック部材又は前記レバー部材に形成される被挿通部が挿通されるリング状に形成される、
パチン錠。
【請求項2】
前記ベース部材は、
板状のベース本体部と、
前記ベース本体部の端面に対して隙間を持って前記コイル部の軸方向に沿う幅方向に延び、リング状の前記第1ばね端部内に挿通される前記被挿通部であるバー部と、
前記バー部の端部に設けられ、前記幅方向において前記隙間を閉じるように、前記ベース本体部の前記端面に接近又は接触する抜け止め部と、を備える、
請求項1に記載のパチン錠。
【請求項3】
前記レバー部材は、
板状のレバー本体部と、
前記レバー本体部の縁部に形成され、前記コイル部の軸方向に沿う幅方向に並び、互いに対面する一対の側壁と、を備え、
前記フック部材は、
前記一対の側壁に形成される貫通孔に挿通され、前記一対の側壁の間において対向する前記被挿通部である一対のフック端部を備え、
リング状の前記第2ばね端部内には前記一対のフック端部の何れか一方が挿通される、
請求項1又は2に記載のパチン錠。
【請求項4】
前記支持ピンは前記ベース部材の上部に位置し、
前記レバー部材は、前記コイル部の上部を囲む防護壁を備え、
前記防護壁は、前記コイル部の軸方向に沿う幅方向において、前記第1ばね端部と前記第2ばね端部の間であって、前記コイル部よりも小さく形成される、
請求項1から3の何れか1項に記載のパチン錠。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のパチン錠と、
収容物が収容され、開口部を有する容器本体と、
前記フック部材が係止される被係止部材を有し、前記容器本体の前記開口部を塞ぐ蓋と、
前記パチン錠の前記ベース部材が固定される前記被装着面を有し、前記容器本体の外周面に固定される台座部材と、を備え、
前記パチン錠は、前記フック部材が前記被係止部材に係止された状態で、前記レバー部材が前記ベース部材に向けて閉じられることにより、前記蓋を前記容器本体に固定する、
可搬式コンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチン錠及び可搬式コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品等の収容物を収容した状態で、運搬される可搬式コンテナが知られている。例えば、特許文献1に記載のコンテナは、上面に開口を有するコンテナ本体と、コンテナ本体の開口を覆う蓋と、蓋をコンテナ本体に固定するパチン錠と、を備える。パチン錠は、コンテナ本体の基板取付け台に固定される基板と、基板に対して支持軸を中心に回動可能に軸支されるレバーと、レバーに回転可能に支持され、蓋に係止するフックと、レバーを基板に対して閉方向に付勢するねじりコイルばねと、を備える。ねじりコイルばねは支持軸に装着され、ねじりコイルばねの一端は基板側に当接し、ねじりコイルばねの他端はレバー側に当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成では、レバーの開閉が繰り返されたり、ねじりコイルばねに意図しない外力が加えられたりすること等により、ねじりコイルばねの一端又は他端が基板又はレバーから外れて、レバーの開閉時に、ねじりコイルばね(トーションばね)が空回りするおそれがある。この場合、ねじりコイルばねが機能しなくなり、これにより、パチン錠により蓋をコンテナ本体に固定することが困難となる。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、より確実に、トーションばねを機能させることができるパチン錠及び可搬式コンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るパチン錠は、支持ピンを有し、被装着面に固定されるベース部材と、前記支持ピンを中心に前記ベース部材に対して回転可能に支持されるレバー部材と、前記レバー部材に回転可能に支持され、被係止部材に係止可能なフック部材と、前記レバー部材を前記ベース部材に向けて付勢するトーションばねと、を備え、前記トーションばねは、前記支持ピンが挿通されるコイル部と、前記コイル部の一端に位置し、前記ベース部材に連結する第1ばね端部と、前記コイル部の他端に位置し、前記フック部材又は前記レバー部材に連結する第2ばね端部と、を備え、前記第1ばね端部及び前記第2ばね端部の少なくとも何れか一方は、接触する前記ベース部材、前記フック部材又は前記レバー部材に形成される被挿通部が挿通されるリング状に形成される。
【0007】
また、前記ベース部材は、板状のベース本体部と、前記ベース本体部の端面に対して隙間を持って前記コイル部の軸方向に沿う幅方向に延び、リング状の前記第1ばね端部内に挿通される前記被挿通部であるバー部と、前記バー部の端部に設けられ、前記幅方向において前記隙間を閉じるように、前記ベース本体部の前記端面に接近又は接触する抜け止め部と、を備える、ことが好ましい。
【0008】
また、前記レバー部材は、板状のレバー本体部と、前記レバー本体部の縁部に形成され、前記コイル部の軸方向に沿う幅方向に並び、互いに対面する一対の側壁と、を備え、前記フック部材は、前記一対の側壁に形成される貫通孔に挿通され、前記一対の側壁の間において対向する前記被挿通部である一対のフック端部を備え、リング状の前記第2ばね端部内には前記一対のフック端部の何れか一方が挿通される、ことが好ましい。
【0009】
また、前記支持ピンは前記ベース部材の上部に位置し、前記レバー部材は、前記コイル部の上部を囲む防護壁を備え、前記防護壁は、前記コイル部の軸方向に沿う幅方向において、前記第1ばね端部と前記第2ばね端部の間であって、前記コイル部よりも小さく形成される、ことが好ましい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る可搬式コンテナは、前記パチン錠と、収容物が収容され、開口部を有する容器本体と、前記フック部材が係止される被係止部材を有し、前記容器本体の前記開口部を塞ぐ蓋と、前記パチン錠の前記ベース部材が固定される前記被装着面を有し、前記容器本体の外周面に固定される台座部材と、を備え、前記パチン錠は、前記フック部材が前記被係止部材に係止された状態で、前記レバー部材が前記ベース部材に向けて閉じられることにより、前記蓋を前記容器本体に固定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パチン錠及び可搬式コンテナにおいて、より確実に、トーションばねを機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る可搬式コンテナの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る(a)はレバー部材が閉じたときのパチン錠の斜視図であり、(b)はレバー部材が開いたときのパチン錠の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るパチン錠の分解斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るレバー部材が閉じたときのパチン錠の一部を拡大した斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るレバー部材が開いたときのパチン錠の一部を拡大した斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るトーションばねの斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るベース部材のリング保持部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るパチン錠及び可搬式コンテナの一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る可搬式コンテナは、学校給食又は社員食堂等において、大量の食品等の収容物を収納し運搬するためのものである。
【0014】
図1に示すように、可搬式コンテナ1は、容器10と、蓋20と、一対のパチン錠40と、一対のハンドル50と、を備える。
容器10は、容器本体11と、パチン錠40が固定される一対の台座部材15と、ハンドル50を支持する一対のハンドル支持部材18と、を備える。
容器本体11は、上方向に向けて開口する有底の円筒状に形成されている。容器本体11は、ステンレス等の金属により形成される。
一対の台座部材15は、ステンレス等の金属により形成される略コ字状(略U字状)の金具である。台座部材15の開口側の端部は容器本体11の外周面に溶接等で固定されている。一対の台座部材15は、容器10の径方向に互いに対向する位置に配置される。台座部材15には、パチン錠40がねじ等を通じて固定されている。
【0015】
一対のハンドル支持部材18は、ステンレス等の金属により形成され、容器本体11の外周面に向けて開口する略コ字状の金具である。一対のハンドル支持部材18の開口側の端部は容器本体11の外周面に溶接等で固定されている。一対のハンドル支持部材18は、容器10の径方向に互いに対向する位置に配置される。各ハンドル支持部材18における容器本体11の周方向に並ぶ2つの壁部18bには貫通する孔18aが形成されている。ハンドル支持部材18の各孔18aには、ハンドル50が回転可能にハンドル50の端部が挿入されている。例えば、一対のハンドル支持部材18が並ぶ方向と一対の台座部材15が並ぶ方向は直交している。
【0016】
図1に示すように、蓋20は、ステンレス等の金属により、容器本体11の開口部を塞ぐ略円板状をなす。蓋20は、蓋20の外周面に位置し、パチン錠40の後述するフック部材44が係止される一対の被係止部材23を備える。被係止部材23は略J字状の金具である。一対の被係止部材23は、蓋20の径方向に沿って互いに対向する位置に配置される。
【0017】
一対のハンドル50は人の手により把持可能な略U字状に形成される。ハンドル50の開口側の端部は、ハンドル支持部材18の孔18aに挿入されるように内側に折り曲げられてなる。よって、ハンドル50は孔18aを中心に回転可能にハンドル支持部材18に支持される。
【0018】
図2(a),(b)に示すように、パチン錠40は、ベース部材41と、レバー部材43と、フック部材44と、トーションばね47と、を備える。
【0019】
図3に示すように、ベース部材41は、板状に形成されるベース本体部41aと、支持ピン45と、支持ピン45の両端を支持するピン支持壁41b,41cと、リング保持部41dと、を備える。
ピン支持壁41b,41cは、ベース本体部41aの上端に位置し、幅方向Wに沿って並べられ、互いに対面する。ピン支持壁41b,41cには、それぞれ、支持ピン45が挿通される貫通孔41hが形成される。
【0020】
図4に示すように、リング保持部41dは、ベース本体部41aの上端であって、ピン支持壁41b,41cの間に位置する。リング保持部41dは、ベース本体部41aの上端面との間に隙間S1を有するL字状に形成されている。リング保持部41dは、幅方向Wに沿って延びるバー部41fと、バー部41fに対して屈曲し、高さ方向Hに沿って延びる抜け止め部41gと、を備える。バー部41fにおける抜け止め部41gから遠い基端部41iは、ピン支持壁41cにおけるベース本体部41a側の端部に設けられる。バー部41fの基端部41iは、バー部41fにおける基端部41i以外の部位よりも高さ方向Hの厚さが薄い薄肉部として形成される。このため、
図7に示すように、リング保持部41dは、外力により、薄肉部である基端部41iを中心に回転容易となる。この際、リング保持部41dの基端部41iは塑性変形する。
【0021】
図4に示すように、バー部41fは、ベース本体部41aの上端面に対して隙間S1を持って幅方向Wに延びる。トーションばね47の後述する第1ばね端部47bは、隙間S1を通って、バー部41fの周囲を囲む。抜け止め部41gは、バー部41fの先端部からベース本体部41aの上端面に向けて延びて、ベース本体部41aの上端面に接触又は接近する。抜け止め部41gとベース本体部41aの上端面の隙間S3(
図7参照)は、トーションばね47の線材径Dよりも小さく設定される。抜け止め部41gの先端面は膨らむように湾曲した形状をなす。ベース本体部41aの上端面には、抜け止め部41gの先端面に応じた湾曲した凹部41jが形成される。
【0022】
図2(a),(b)に示すように、レバー部材43は、ベース部材41の支持ピン45を中心に回転可能に支持されつつ、フック部材44を回転可能に支持する。
レバー部材43は、レバー本体部43aと、一対の側壁43b,43cと、一対の回転支持壁43d,43eと、防護壁43fと、操作部43gと、を備える。
レバー本体部43aは高さ方向Hに長い長方形板状をなす。操作部43gは、レバー本体部43aにおける支持ピン45から遠い先端側に位置し、レバー本体部43aと同じ方向に延びる板状をなす。
【0023】
一対の側壁43b,43cは、レバー本体部43aの幅方向Wの両縁部に沿って延び、幅方向Wに沿って並べられ、互いに対面する。一対の側壁43b,43cは、幅方向Wにおいて、ベース部材41のピン支持壁41b,41cを外側から挟み込むように位置する。側壁43b,43cにおけるレバー本体部43aを基準とした高さは、操作部43gに近づくにつれて低くなる。
図2(b)に示すように、側壁43b,43cには、それぞれ、フック部材44の後述するフック端部44a,44bが通過する貫通孔43hが形成される。
【0024】
図2(a)に示すように、レバー部材43がベース部材41に対して閉じられたときに、一対の側壁43b,43cにおけるレバー本体部43aから遠い端面43sはベース部材41のベース本体部41aの上面に接触する。これにより、レバー部材43が閉じられたときにおける操作部43gと容器本体11の外周面の距離を保つことができる。よって、レバー部材43を開く際に、操作部43gと容器本体11の外周面の間に手指を挿入させやすく、レバー部材43を開く操作が容易となる。
【0025】
図3に示すように、防護壁43fは、レバー本体部43aにおける操作部43gと反対側の縁部に設けられ、回転支持壁43d,43eの間に位置する。防護壁43fは、トーションばね47の後述するコイル部47aの周囲を囲むJ字又はC字状をなす。言い換えると、防護壁43fは、レバー部材43が閉じられた状態で、防護壁43fの先端に向かうにつれてベース部材41に近づくように湾曲する。防護壁43fは、異物がトーションばね47に接触することを抑制する機能を有する。
【0026】
図3に示すように、回転支持壁43d,43eは、それぞれ、側壁43b,43cの上部に位置し、幅方向Wに沿って並べられ、互いに対面する。回転支持壁43d,43eは、幅方向Wにおいて、ピン支持壁41b,41cを挟み込むように位置する。回転支持壁43d,43eには、回転支持壁43d,43eの厚さ方向に貫通する貫通孔43jが形成されている。回転支持壁43d,43eの一対の貫通孔43jの中心軸と、ピン支持壁41b,41cの一対の貫通孔41hの中心軸は幅方向Wに一致する。
【0027】
図2(b)に示すように、フック部材44は線材が略矩形状をなすように折り曲げられてなる。フック部材44は、レバー部材43の内部空間において互いに対向する一対のフック端部44a,44bを備える。フック端部44a,44bは、フック部材44の長手方向(高さ方向H)に対して直交する方向に互いに近づくように屈曲されている。
【0028】
図5に示すように、フック端部44a,44bは、レバー部材43の一対の側壁43b,43cの貫通孔43hに挿通される。一対のフック端部44a,44bは、一対の被挿通部の一例であり、幅方向Wにおいて隙間S2を持って対向するように位置する。一対のフック端部44a,44bの間の隙間S2には、一対のフック端部44a,44bを接続する連結部44dが設けられる。隙間S2は、トーションばね47の線材径Dよりも大きく形成される。連結部44dは、溶接に伴う溶加材が硬化することにより形成される。フック部材44は、側壁43b,43cの各貫通孔43hを中心に回動可能である。
図1に示すように、フック部材44におけるレバー部材43から遠い先端部44cは、蓋20の被係止部材23に係止される。
【0029】
図2(b)に示すように、トーションばね47は、レバー部材43をベース部材41に向けて閉じる方向に付勢する。トーションばね47は1本の線材が巻かれることにより形成される。
詳しくは、
図6に示すように、トーションばね47は、コイル部47aと、第1ばね端部47bと、第2ばね端部47cと、を備える。
図4に示すように、コイル部47a内には支持ピン45が挿通される。よって、コイル部47aは支持ピン45の周囲に位置する。コイル部47aの周囲の上部には防護壁43fが位置する。幅方向Wにおいて、コイル部47aの長さは防護壁43fよりも長く形成されている。すなわち、高さ方向Hから見て、コイル部47aの幅方向Wの両端は防護壁43fからはみ出している。
【0030】
図6に示すように、第1ばね端部47bは、コイル部47aの一端部に位置し、リング状に形成される。第1ばね端部47bの中心軸は、コイル部47aの中心軸から離れた位置に形成される。コイル部47aの中心軸に沿う方向から見て、コイル部47a及び第1ばね端部47bは8の字状をなす。第1ばね端部47bは、コイル部47aの一端から延びる線材が360°~540°にわたって巻かれることにより形成される。第1ばね端部47bの先端部47b1は下方向を向くように設定される。これにより、第1ばね端部47bの先端部47b1に、異物、手指又は手袋等が引っ掛かることが抑制される。
図4に示すように、第1ばね端部47b内には、ベース部材41のリング保持部41dが挿通される。
【0031】
図6に示すように、第2ばね端部47cは、コイル部47aの他端部に位置し、リング状に形成される。第2ばね端部47cの中心軸は、コイル部47aの中心軸から離れた位置に形成される。第2ばね端部47cは、第1ばね端部47bに比べて、コイル部47aから遠い位置に設けられる。第2ばね端部47cは、コイル部47aの他端から延びる線材が360°~540°にわたって巻かれることにより形成される。第1ばね端部47bと第2ばね端部47cで巻かれる方向は互いに逆となる。
図5に示すように、第2ばね端部47c内にはフック部材44のフック端部44bに挿通される。
【0032】
次に、パチン錠40の組み立て方法について説明する。この組み立て作業は、人により行われる。この組み立て開始前には、一対のフック端部44a,44bの間の隙間S2に連結部44dが形成されていない。また、
図7に示すように、ベース部材41のリング保持部41dの抜け止め部41gは、ベース本体部41aの上端面の凹部41jから隙間S3だけ離れている。隙間S3は、トーションばね47の第1ばね端部47bが通過可能に、トーションばね47の線材径Dよりも大きく形成される。
【0033】
まず、
図5に示すように、フック部材44をフック端部44a,44bが互いに離れるように弾性変形させた状態で、フック端部44a,44bをそれぞれレバー部材43の外側から一対の貫通孔43hに挿入する。
次に、トーションばね47の第2ばね端部47cを一対のフック端部44a,44bの間の隙間S2を通過させて、第2ばね端部47c内にフック端部44bを挿通させる。また、
図7に示すように、トーションばね47の第1ばね端部47b内に、リング保持部41dのバー部41fを挿通する。
【0034】
次に、
図3に示すように、回転支持壁43d、43eの間にピン支持壁41b、41eを配置し、支持ピン45を回転支持壁43d,43eの一対の貫通孔43jとピン支持壁41b,41cの一対の貫通孔41hに挿入する。この際、支持ピン45をトーションばね47のコイル部47a内に通す。そして、支持ピン45の両端部をつぶすことにより、支持ピン45の両端部を貫通孔41h,43jの径よりも大きくする。これにより、支持ピン45は、貫通孔41h,43j内に抜け止め状態となる。
【0035】
次に、
図7に示すように、リング保持部41dの抜け止め部41gがベース本体部41aの凹部41jに近づくように、基端部41iを中心にリング保持部41dを回転させる。これにより、抜け止め部41gと凹部41jの間の隙間S3がトーションばね47の線材径D未満となる。また、幅方向Wにおいて、第1のばね端部47bは、バー部41fとベース本体部41aの上端面の間の隙間S1内でのみ保持された状態となる。従って、第1ばね端部47bがトーションばね47から脱落した場合であっても、第1ばね端部47b内にバー部41fが挿通された状態が維持される。よって、第1ばね端部47bが破片としてパチン錠40から離脱することが抑制される。
そして、
図5に示すように、フック端部44a,44bの間の隙間S2を溶接により連結部44dで埋める。従って、第2ばね端部47cがトーションばね47から破断し、脱落した場合であっても、第2ばね端部47c内にフック端部44bが挿通された状態が維持される。よって、第2ばね端部47cが破片としてパチン錠40から離脱することが抑制される。なお、連結部44dは必ずしも溶接する必要はなく、フック端部44a、44bの間の隙間S2を第2ばね端部47cの線材径D以下としてもよい。
以上で、パチン錠40の組み立てが完了となる。
【0036】
次に、パチン錠40により蓋20を容器本体11に固定する手順について説明する。
容器本体11に食品を収容した後、蓋20を閉める。そして、
図2(b)に示すように、パチン錠40において、トーションばね47の弾性力に抗して、レバー部材43をベース部材41に対して離れる方向に開く。
図1に示すように、フック部材44の先端部44cを蓋20の被係止部材23に引っ掛ける。この状態で、
図2(a)に示すように、レバー部材43をベース部材41に近づける方向に閉じる。これにより、蓋20が容器本体11に固定される。
【0037】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)パチン錠40は、支持ピン45を有し、被装着面である台座部材15に固定されるベース部材41と、支持ピン45を中心にベース部材41に対して回転可能に支持されるレバー部材43と、レバー部材43に回転可能に支持され、被係止部材23に係止可能なフック部材44と、レバー部材43をベース部材41に向けて付勢するトーションばね47と、を備える。トーションばね47は、支持ピン45が挿通されるコイル部47aと、コイル部47aの一端に位置し、ベース部材41に連結する第1ばね端部47bと、コイル部47aの他端に位置し、フック部材44に連結する第2ばね端部47cと、を備える。第1ばね端部47bは、リング状に形成され、連結するベース部材41に形成される被挿通部に相当するバー部41fに挿通される。第2ばね端部47cは、リング状に形成され、連結するフック部材44に形成される被挿通部に相当するフック端部44bに挿通される。
この構成によれば、トーションばね47の第1ばね端部47bがベース部材41から外れること、ひいては、トーションばね47が空回りすることが抑制される。
また、トーションばね47の第2ばね端部47cがフック部材44から外れること、ひいては、トーションばね47が空回りすることが抑制される。
以上により、レバー部材43の開閉に伴い、トーションばね47が空回りすることが抑制され、これにより、より確実に、トーションばね47を機能させることができ、パチン錠40により蓋20を容器本体11に固定することが可能となる。
また、第1ばね端部47b及び第2ばね端部47cはリング状をなす。このため、第1ばね端部47b及び第2ばね端部47cの先端は外部に向かって突出しない。このため、第1ばね端部47b及び第2ばね端部47cの先端が手指等に接触することが抑制される。これにより、作業者が手袋を着用している場合、第1ばね端部47b及び第2ばね端部47cの先端により手袋に傷がつくことが抑制される。
【0038】
(2)ベース部材41は、板状のベース本体部41aと、ベース本体部41aの端面に隙間S1を持ってコイル部47aの軸方向に沿う幅方向Wに延び、リング状の第1ばね端部47b内に挿通される被挿通部であるバー部41fと、バー部41fの端部に設けられ、幅方向Wにおいて隙間S1を閉じるように、ベース本体部41aの端面に接近又は接触する抜け止め部41gと、を備える。
この構成によれば、トーションばね47の第1ばね端部47bが折れた場合でも、リング状の第1ばね端部47bはバー部41fの外周に保持される。
【0039】
(3)レバー部材43は、板状のレバー本体部43aと、レバー本体部43aの縁部に形成され、コイル部47aの軸方向に沿う幅方向Wに並び、互いに対面する一対の側壁43b,43cと、を備える。フック部材44は、一対の側壁43b,43cに形成される貫通孔43hに挿通され、一対の側壁43b,43cの間において対向する被挿通部である一対のフック端部44a,44bを備える。リング状の第2ばね端部47c内には一対のフック端部44a,44bのうち一方のフック端部44bが挿通される。
この構成によれば、トーションばね47の第2ばね端部47cが折れた場合でも、リング状の第2ばね端部47cはフック端部44a,44bの外周に保持される。
さらに、一対のフック端部44a,44bは、トーションばね47の線材径Dよりも大きい隙間S2を持って対向し、フック部材44は、一対のフック端部44a,44bを連結する連結部44dを備える。
この構成によれば、隙間S2が大きくなるようにフック部材44を弾性変形させることなく、トーションばね47の第2ばね端部47cは一対のフック端部44a,44bの間の隙間S2を介してフック端部44bの外周に容易に装着可能となる。第2ばね端部47cをフック端部44bに装着した後に、一対のフック端部44a,44bの間の隙間S2が連結部44dにより埋められる。これにより、トーションばね47の第2ばね端部47cが折れた場合でも、第2ばね端部47cが隙間S2を通過することがより確実に抑制される。
【0040】
(4)支持ピン45はベース部材41の上部に位置する。レバー部材43は、コイル部47aの上部を囲む防護壁43fを備える。防護壁43fは、コイル部47aの軸方向に沿う幅方向Wにおいて、第1ばね端部47bと第2ばね端部47cの間であって、コイル部47aよりも小さいサイズで形成される。
この構成によれば、防護壁43fにより、手指や工具等の異物がトーションばね47に意図せず接触することが抑制される。また、防護壁43fは、幅方向Wにおいて、コイル部47aよりも短いサイズに設定されている。このため、レバー部材43が開かれる際、防護壁43fが第1ばね端部47b及び第2ばね端部47cに接触することを抑制する。
【0041】
(5)可搬式コンテナ1は、パチン錠40と、収容物が収容され、開口部を有する容器本体11と、フック部材44が係止される被係止部材23を有し、容器本体11の開口部を塞ぐ蓋20と、パチン錠40のベース部材41が固定される被装着面を有し、容器本体11の外周面に固定される台座部材15と、を備える。パチン錠40は、フック部材44が被係止部材23に係止された状態で、レバー部材43がベース部材41に向けて閉じられることにより、蓋20を容器本体11に固定する。
この構成によれば、可搬式コンテナ1において、パチン錠40により蓋20を容器本体11に固定することが可能となる。
【0042】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0043】
(変形例)
上記実施形態においては、容器10は円筒状に形成されていたが、これに限らず、角筒状に形成されてもよい。
【0044】
上記実施形態において、パチン錠40は、容器10の外周面に設けられていたが、これに限らず、蓋20の外周面に設けられていてもよい。この場合、被係止部材23は、容器10の外周面に設けられる。
【0045】
上記実施形態においては、ハンドル50とパチン錠40は、容器10の外周面において異なる位置に設けられていたが、これに限らず、パチン錠40は、コ字状のハンドル50内の中央に位置していてもよい。
【0046】
上記実施形態においては、容器本体11の外周面に2組の台座部材15とパチン錠40が設けられていたが、台座部材15とパチン錠40の数はこれに限定されない。例えば、3組の台座部材15とパチン錠40が容器本体11の外周面に120度間隔で配置されてもよいし、4組の台座部材15とパチン錠40が容器本体11の外周面に90度間隔で配置されてもよい。
【0047】
上記実施形態においては、第2ばね端部47c内にはフック部材44のフック端部44bが挿通されていたが、これに限らず、レバー部材43の一部である被挿通部が挿通されてもよい。
【0048】
上記実施形態においては、トーションばね47はリング状の第1ばね端部47b及び第2ばね端部47cを備えていたが、第1ばね端部47b及び第2ばね端部47cの何れか一方はリング状でなく、棒状に形成されてもよい。例えば、第2ばね端部47cが棒状に形成された場合、レバー部材43がベース部材41に向けて閉じられるように、第2ばね端部47cが常にフック端部44bを押す。この棒状の第2ばね端部47cがフック端部44bを押している状態は、概念上、第2ばね端部47cがフック端部44bに連結した状態に含まれる。第1ばね端部47bが棒状に形成された場合もこれと同様である。
【0049】
上記実施形態においては、リング保持部41dは抜け止め部41gを備えていたが、抜け止め部41gは省略されてもよい。
上記実施形態においては、バー部41fの基端部41iは、バー部41fにおける基端部41i以外の部位よりも高さ方向Hの厚さが薄い薄肉部として形成されていたが、これに限らず、基端部41i以外の部位と同等の厚さに形成されてもよい。
【0050】
上記実施形態においては、一対のフック端部44a,44bの間の隙間S2は、トーションばね47の線材径Dよりも大きく設定されていたが、これに限らず、トーションばね47の線材径D以下に設定されてもよい。この場合、隙間S2が大きくなるようにフック部材44を弾性変形させた状態で、トーションばね47の第2ばね端部47cをフック端部44bの外周に装着すればよい。さらに、フック部材44は連結部44dを備えていたが、連結部44dは省略されてもよい。この場合でも、一対のフック端部44a,44bの間の隙間S2がトーションばね47の線材径D以下に設定されることにより、トーションばね47の第2ばね端部47cが折れた場合でも、第2ばね端部47cが隙間S2を通過することが抑制される。
【0051】
上記実施形態においては、被係止部材23は、蓋20の本体部とは別体で構成されていたが、これに限らず、蓋20の本体部と一体で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…可搬式コンテナ、10…容器、11…容器本体、15…台座部材、18…ハンドル支持部材、18a…孔、18b…壁部、20…蓋、23…被係止部材、40…パチン錠、41…ベース部材、41a…ベース本体部、41b,41c…ピン支持壁、41d…リング保持部、41f…バー部、41g…抜け止め部、41h,43h,43j…貫通孔、41i…基端部、41j…凹部、43…レバー部材、43a…レバー本体部、43b,43c…側壁、43d,43e…回転支持壁、43f…防護壁、43g…操作部、43s…端面、44…フック部材、44a,44b…フック端部、44c…先端部、44d…連結部、45…支持ピン、47…トーションばね、47a…コイル部、47b…第1ばね端部、47c…第2ばね端部、50…ハンドル、D…線材径、H…高さ方向、S1,S2,S3…隙間、W…幅方向、