(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】エレベーターの制御ケーブル撮影システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20230210BHJP
B66B 7/12 20060101ALI20230210BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
B66B5/02 C
B66B7/12
B66B3/00 R
(21)【出願番号】P 2019191064
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 茂和
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-083765(JP,A)
【文献】特開2009-091100(JP,A)
【文献】特開平08-048475(JP,A)
【文献】特開平11-139718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0239280(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
B66B 7/00 - 7/12
B66B 3/00 - 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの昇降路を移動する乗りかごの下端部と、前記昇降路の上側の機械室に設置されたエレベーター制御装置とに接続された制御ケーブルの、前記乗りかごの移動に応じて上下に移動するU字状に垂れ下がった下端部を撮影する撮影システムであって、
前記乗りかごの下端とピット床との間で張られたガイドケーブルであって、前記乗りかご及び前記ピット床の一方に配置された第1巻取り器で巻き取り可能であるガイドケーブルと、
前記乗りかごの下端に固定された第2巻取り器から引き出されたカメラ吊り上ケーブルと、
前記カメラ吊り上ケーブルの下端に固定されることにより吊り下げられ、前記ガイドケーブルで上下方向の移動がガイドされ、前記制御ケーブルの下端部を撮影するカメラと、
前記ピット床に配置された第3巻取り器から引き出され、上端が前記カメラに固定され、前記カメラと前記第3巻取り器との間で張られているカメラ吊り下ケーブルと、
前記第1巻取り器と、前記第2巻取り器または前記第3巻取り器の一方側巻取り器との間に接続され、前記第1巻取り器が1回転するときに前記一方側巻取り器が1/2回転するように前記一方側巻取り器の回転を調整する回転調整機構と、を備え、
前記第1巻取り器、前記第2巻取り器及び前記第3巻取り器が、対応する前記ケーブルを巻き取る方向に付勢されている、
エレベーターの制御ケーブル撮影システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターの制御ケーブル撮影システムにおいて、
前記第1巻取り器は、前記ピット床に配置され、
前記回転調整機構は、前記第1巻取り器と前記第3巻取り器との間に接続される、
エレベーターの制御ケーブル撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの制御ケーブル撮影システムに関し、特に乗りかごの移動に応じて移動する制御ケーブルのU字状に垂れ下がった下端部を良好に撮影しやすくすることに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの制御ケーブルは、エレベーターの昇降路を移動する乗りかごの下端部と、昇降路の上側の機械室に設置されたエレベーター制御装置とに接続され、乗りかごの移動に応じて上下に移動する。この制御ケーブルが乗りかごの移動時に前後や左右に振れやすくなると、昇降路の壁や、壁付近に配置された部品に当たって損傷しやすくなる。このことから、従来から乗りかごの移動時の制御ケーブルの動きを、昇降路の下端のピットにいる作業者が見て、その動きに異常がないか否かを確認することが行われている。
【0003】
特許文献1には、乗りかごの下側に設置された監視カメラを使って制御ケーブルの動特性の映像を確認することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ピットにいる作業者が乗りかごの移動時の制御ケーブルの動きを見て、異常の有無を確認する作業では、乗りかごの移動中にピットに作業者がいなければならないので、作業者に負担がかかる。また、作業者がピットから制御ケーブルを見上げるので、制御ケーブルの下端が高い位置にあるときの動きを確認しにくい。
【0006】
一方、特許文献1に記載された構成では、制御ケーブルの一端が、エレベーター制御装置に接続され、その位置は固定されている。これにより、制御ケーブルの他端が接続された乗りかごが移動する場合に、U字状に垂れ下がった制御ケーブルの下端は、乗りかごの移動距離の1/2しか上下に移動しない。このため、乗りかごの移動時の位置によって、乗りかごに固定されたカメラが向く位置と、制御ケーブルの下端の位置とがずれるので、制御ケーブルの下端部を良好に撮影できないおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、エレベーターの制御ケーブル撮影システムにおいて、乗りかごの移動時に乗りかごの移動位置に関係なく、制御ケーブルの下端部を良好に撮影しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエレベーターの制御ケーブル撮影システムは、エレベーターの昇降路を移動する乗りかごの下端部と、前記昇降路の上側の機械室に設置されたエレベーター制御装置とに接続された制御ケーブルの、前記乗りかごの移動に応じて上下に移動するU字状に垂れ下がった下端部を撮影する撮影システムであって、前記乗りかごの下端とピット床との間で張られたガイドケーブルであって、前記乗りかご及び前記ピット床の一方に配置された第1巻取り器で巻き取り可能であるガイドケーブルと、前記乗りかごの下端に固定された第2巻取り器から引き出されたカメラ吊り上ケーブルと、前記カメラ吊り上ケーブルの下端に固定されることにより吊り下げられ、前記ガイドケーブルで上下方向の移動がガイドされ、前記制御ケーブルの下端部を撮影するカメラと、前記ピット床に配置された第3巻取り器から引き出され、上端が前記カメラに固定され、前記カメラと前記第3巻取り器との間で張られているカメラ吊り下ケーブルと、前記第1巻取り器と、前記第2巻取り器または前記第3巻取り器の一方側巻取り器との間に接続され、前記第1巻取り器が1回転するときに前記一方側巻取り器が1/2回転するように前記一方側巻取り器の回転を調整する回転調整機構と、を備え、前記第1巻取り器、前記第2巻取り器及び前記第3巻取り器が、対応する前記ケーブルを巻き取る方向に付勢されている。
【0009】
本発明のエレベーターの制御ケーブル撮影システムによれば、乗りかごが移動するときにガイドケーブルが、乗りかごの移動距離と同じだけ引き出されるか、または巻き取られる。このとき、回転調整機構によって、ガイドケーブルの引き出し長さの変化の1/2だけ、一方側巻取り器から引き出されるケーブルの引き出し長さが変化する。さらに、第2巻取り器または第3巻取り器の他方側巻取り器の巻取り方向への付勢によって、他方側巻取り器から引き出されるケーブルが他方側巻取り器とカメラとの間で張られる。これにより、カメラは、一方側巻取り器からのケーブルの引き出し長さの変化分である、乗りかごの移動距離の1/2だけ、乗りかごの移動方向に移動する。このため、乗りかごの移動時に、カメラの移動距離と、U字状に垂れ下がった制御ケーブルの下端の移動距離とが同じになるので、乗りかごの移動位置に関係なく、カメラが制御ケーブルの下端部に向いた状態を維持しやすくなり、その下端部を良好に撮影しやすくなる。
【0010】
本発明のエレベーターの制御ケーブル撮影システムにおいて、前記第1巻取り器は、前記ピット床に配置され、前記回転調整機構は、前記第1巻取り器と前記第3巻取り器との間に接続される構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1巻取り器及び回転調整機構がピット床に配置され、乗りかごに第1巻取り器及び回転調整機構を配置する必要がなくなる。これにより、乗りかごに固定される部品の重量を低減できるので、乗りかごを駆動させるためのエネルギを少なくできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエレベーターの制御ケーブル撮影システムによれば、乗りかごの移動時に乗りかごの移動位置に関係なく、制御ケーブルの下端を良好に撮影しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の制御ケーブル撮影システムを適用するエレベーターの全体構成図である。
【
図2】
図1のエレベーターに制御ケーブル撮影システムを組み合わせ、一部を断面で示している
図1のA部拡大相当図であって、乗りかごの上昇時の状態を示す図である。
【
図4】
図2において乗りかごの下降時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、実施形態を説明する。以下で説明する形状、材料、数などは説明のための例示であって、制御ケーブル撮影システムまたはエレベーターの使用により適宜変更が可能である。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。
【0015】
まず、実施形態の制御ケーブル撮影システムを適用するエレベーターを説明する。
図1は、エレベーター10の全体構成図である。エレベーター10は、昇降路80に移動可能に配置された乗りかご11を備えている。昇降路80は、エレベーター10が設置される建物の内部に上下方向に延びるように配置される。乗りかご11の上端には主ロープ12の一端が接続され、主ロープ12の他端には釣合い錘13が接続される。昇降路80の上部にある機械室81には巻き上げ機82が設置される。巻き上げ機82には、主ロープ12が巻き掛けられる。主ロープ12は、巻き上げ機82が駆動されることにより長手方向に移動する。巻き上げ機82は、機械室81に設置されたエレベーター制御装置84により制御される。これにより、昇降路80内で乗りかご11が上下方向に移動する。
【0016】
乗りかご11の下側からは制御ケーブル15が導出され、その制御ケーブル15の下端部がU字状に垂れ下がっている。制御ケーブル15は、乗りかご11の下端部と、エレベーター制御装置84とに接続される。制御ケーブル15は、例えば乗りかご11とエレベーター制御装置84との間で制御信号を送受信するための信号線や、乗りかご11に電力を供給するための電力線が束ねられ、絶縁材料により被覆され1本のケーブルとして構成される。乗りかご11の移動に応じて、制御ケーブル15の下端部Gは上下に移動する。
【0017】
このような制御ケーブル15が大きく揺れ動く場合には、昇降路80の壁面に制御ケーブル15が衝突し、昇降路80に設置した機器や部材に衝突して損傷したり、制御ケーブル15自体も損傷するおそれがある。本例の制御ケーブル撮影システム20(
図2)は、乗りかご11の移動時における制御ケーブル15の下端部を撮影するために用いられる。制御ケーブル撮影システム20で取得された撮影画像は、点検を行う作業者が乗りかご11の移動時の制御ケーブル15の動きに異常がないか否かを確認するために用いられる。制御ケーブル15の下端部Gの動きに、大きく揺れる等の異常が発見された場合には、エレベーター10を停止した状態で、制御ケーブル15や、制御ケーブル15の支持部品の点検、修理または交換が行われる。
【0018】
図2は、エレベーター10に制御ケーブル撮影システム20を組み合わせ、一部を断面で示している
図1のA部拡大相当図であって、乗りかご11の上昇時の状態を示す図である。
図3は、
図2のB―B断面図である。以下、制御ケーブル撮影システム20は撮影システム20と記載する。
【0019】
撮影システム20は、ガイドケーブル21と、カメラ吊り上ケーブル31と、カメラ41と、カメラ吊り下ケーブル51と、回転調整機構61とを含んで構成される。撮影システム20は、カメラ41によって制御ケーブル15の下端部Gを撮影する。
【0020】
ガイドケーブル21は、乗りかご11の下端と昇降路80の下端であるピット床85との間で張られる。ガイドケーブル21は、ピット床85に配置された第1巻取り器22で巻き取り可能である。
【0021】
第1巻取り器22は、ピット床85に固定された2つの板状の第1支持部23に両端の軸部が回転可能に支持された第1巻取り体24を含む。第1巻取り体24は、外周面にガイドケーブル21を巻取り可能である。第1巻取り体24は、第1支持部23との間に配置された第1付勢手段26により、対応するケーブルであるガイドケーブル21を巻き取る方向(
図3の矢印α方向)に付勢されている。第1付勢手段26は、例えばゼンマイバネである。ガイドケーブル21の上端は、乗りかご11の下端に固定されている。ガイドケーブル21は、後述のようにカメラ41に形成されたガイド孔42を貫通して、カメラ41の上下方向の移動をガイドするために設けられる。本例では、第1巻取り器22がピット床85に配置されているが、後述するように、第1巻取り器22は、乗りかご11に配置することもできる。
【0022】
カメラ吊り上ケーブル31は、乗りかご11の下端に固定された第2巻取り器32から下側に引き出される。第2巻取り器32は、乗りかご11の下端に固定された2つの板状の第2支持部33に両端の軸部が回転可能に支持された第2巻取り体34を含む。第2巻取り体34は、外周面にカメラ吊り上ケーブル31を巻取り可能である。第2巻取り体34は、第2支持部33との間に配置された第2付勢手段36により、対応するケーブルであるカメラ吊り上ケーブル31を巻き取る方向に付勢されている。第2付勢手段36は、例えばゼンマイバネである。第2巻取り器32から引き出されたカメラ吊り上ケーブル31の下端は、後述のカメラ41の上端に固定されている。
【0023】
ガイドケーブル21、カメラ吊り上ケーブル31は、それぞれケーブル状の部材であり、例えばスチールテープ、スチールワイヤなどの可撓性があり、張力に対する剛性が高い金属製の部材により形成される。ガイドケーブル21、カメラ吊り上ケーブル31は、それぞれ釣り糸等に用いられる高強度の樹脂線としてもよい。例えば各ケーブル21、31として、極細のポリエチレンを編み込んで1本の線とした樹脂線を使用できる。各ケーブル21,31として、高強度のロープが用いられてもよい。
【0024】
カメラ吊り下ケーブル51は、ピット床85に配置された第3巻取り器52から引き出され、カメラ吊り下ケーブル51の上端がカメラ41の長手方向一方側(
図2の右側)における、下端の幅方向(
図2の紙面の表裏方向)の中央に固定される。これにより、カメラ吊り下ケーブル51は、カメラ41と第3巻取り器52との間で張られている。カメラ吊り下ケーブル51は、カメラ吊り上ケーブル31と同様に構成される。
【0025】
第3巻取り器52は、第1巻取り器22と同様に、ピット床85に固定された2つの板状の第3支持部53に両端の軸部が回転可能に支持された第3巻取り体54を含む。第3巻取り体54は、外周面にカメラ吊り下ケーブル51を巻取り可能である。第3巻取り体54の軸部は、第1巻取り体24の軸部と平行に配置される。第3巻取り体54は、第3支持部53との間に配置された第3付勢手段56により、対応するケーブルであるカメラ吊り下ケーブル51を巻き取る方向(
図3の矢印β方向)に付勢されている。第3付勢手段56は、例えばゼンマイバネである。なお、第1付勢手段26及び第3付勢手段56の一方を省略してもよい。例えば、第3付勢手段56を省略した場合でも、第1付勢手段26によって、後述の回転調整機構61(
図2)を介して、第3巻取り体54を、カメラ吊り下ケーブル51の巻取り方向β(
図3)に付勢することができる。これにより、付勢手段を少なくできる。
【0026】
回転調整機構61は、第1巻取り器22と第3巻取り器52との間に接続される。具体的には、回転調整機構61は、歯車機構であり、第1巻取り体24の軸部の一端部に固定された第1歯車62と、第3巻取り体54の軸部の一端部に固定された第3歯車63とにより構成され、第1歯車62及び第3歯車63が噛み合っている。第1巻取り体24のケーブル巻取り部と、第3巻取り体54のケーブル巻取り部とは、回転調整機構61を挟んで両側に配置される。第3巻取り器52は、第2巻取り器32または第3巻取り器52の一方側巻取り器に相当する。回転調整機構61は、第1巻取り器22が1回転するときに第3巻取り器52が1/2回転するように、第3巻取り器52の回転を調整する。このために、例えば、
図3に示すように、第1歯車62の歯数を第3歯車63の歯数の1/2とする。
【0027】
上記の撮影システム20の場合、第1巻取り器22、第2巻取り器32及び第3巻取り器52の軸方向が、カメラ41の長手方向と平行である。
【0028】
カメラ41は、水平方向に沿う長手方向一方側(
図2の右側)において、上端の幅方向(
図2の紙面の表裏方向)の中央で、カメラ吊り上ケーブル31の下端に固定されることにより、乗りかご11の下側に吊り下げられる。この状態で、カメラ41は、長手方向他端(
図2の左端)に配置されたレンズ43が、制御ケーブル15のU字状の下端部側(
図2の左側)に向いて、この下端部Gを撮影する。
【0029】
カメラ41は、長手方向他方側(
図2の左側)において、水平方向に沿う幅方向(
図2の紙面の表裏方向)の中央部に上下方向に貫通するガイド孔42を有する。ガイドケーブル21は、このガイド孔42に貫通している。ガイド孔42の長手方向(
図2の上下方向)に直交する断面は、ガイドケーブル21の断面の外形とほぼ同じか、わずかに大きい円形または矩形である。これにより、カメラ41は、ガイドケーブル21によって上下方向の移動がガイドされると共に、ガイド孔42と異なる位置でカメラ41がカメラ吊り上ケーブル31で吊り下げられることによって、カメラ41の姿勢を安定化させることができる。
【0030】
カメラ41は、遠隔操作装置(図示せず)と無線通信が可能な通信部を有してもよい。遠隔操作装置の操作により、カメラ41のスイッチをオンし、カメラ41を撮影モードとすることができる。カメラ41は、静止画を間欠的に撮影する機能や、動画を撮影する機能を有する構成とすることができる。カメラ41で撮影した画像は、例えばカメラ41内のメモリ等の内部記憶装置や、SDカードのようなメモリカード等の記録媒体に記録することができる。カメラ41での撮影が終了すると、点検を行う作業者は、乗りかご11を最下階まで下降させてカメラ41や記録媒体を取り外す。そして、カメラ41に外部の装置であるコンピュータや、スマートフォン、PDA等の携帯情報端末を接続して内部記憶装置に記録された撮影画像を外部の装置で確認したり、記録媒体を外部の装置に接続して、記録媒体に記録された撮影画像を確認する。
【0031】
カメラ41で撮影された画像を、無線通信でコンピュータや、スマートフォン等の携帯情報端末等の外部の装置に送信させることにより、カメラや記録媒体を取り外すことなく、作業者が撮影画像を確認できる構成としてもよい。
【0032】
上記の撮影システム20によれば、乗りかご11が移動するときにガイドケーブル21が、乗りかご11の移動距離と同じだけ引き出されるか、または巻き取られる。このとき、回転調整機構61によって、ガイドケーブル21の引き出し長さの変化の1/2だけ、第3巻取り器52から引き出されるカメラ吊り下ケーブル51の引き出し長さが変化する。さらに、第2巻取り器32の巻取り方向への付勢によって、第2巻取り器32から引き出されるカメラ吊り上ケーブル31が第2巻取り器32とカメラ41との間で張られる。これにより、カメラ41は、第3巻取り器52からのカメラ吊り下ケーブル51の引き出し長さの変化分である、乗りかご11の移動距離の1/2だけ、乗りかご11の移動方向に移動する。
【0033】
例えば、
図2に示すように、乗りかご11が2Lだけ上昇する場合を考える。このときには、ガイドケーブル21が、乗りかご11の移動距離と同じだけ、すなわち2L分、第1巻取り器22から引き出される。このとき、回転調整機構61によって、ガイドケーブル21の引き出し長さの変化の1/2だけ、すなわちLだけ、第3巻取り器52から引き出されるカメラ吊り下ケーブル51の引き出し長さが増大する(引き出される)。さらに、ガイドケーブル21の引き出し長さとカメラ吊り下ケーブル51の引き出し長さの差分を補うように、第2巻取り器32からのカメラ吊り上ケーブル31の引き出し長さがLだけ増える(引き出される)。これにより、カメラ41は、第3巻取り器52からのカメラ吊り下ケーブル51の引き出し長さの変化分である、乗りかご11の移動距離の1/2、すなわちLだけ、乗りかご11の移動方向である
図2の上側に移動する。このとき、乗りかご11の上昇によって、U字状に垂れ下がった制御ケーブル15の下端部Gも、乗りかご11の移動距離の1/2、すなわちLだけ、
図2の上側に移動する。
【0034】
図4は、
図2において乗りかご11の下降時の状態を示す図である。
図4に示すように乗りかご11が2Lだけ下降する場合を考える。このときには、ガイドケーブル21が、乗りかご11の移動距離と同じだけ、すなわち2L分、第1巻取り器22に巻き取られる。このとき、回転調整機構61によって、ガイドケーブル21の引き出し長さの変化の1/2だけ、すなわちLだけ、第3巻取り器52から引き出されるカメラ吊り下ケーブル51の引き出し長さが減少する(巻き取られる)。さらに、第2巻取り器32の巻取り方向への付勢によって、第2巻取り器32から引き出されるカメラ吊り上ケーブル31が第2巻取り器32とカメラ41との間で張られる。このとき、ガイドケーブル21の引き出し長さとカメラ吊り下ケーブル51の引き出し長さの差分を補うように、カメラ吊り上ケーブル31の引き出し長さがLだけ減少する(巻き取られる)。これにより、カメラ41は、第3巻取り器52からのカメラ吊り下ケーブル51の引き出し長さの変化分である、乗りかご11の移動距離の1/2、すなわちLだけ、乗りかご11の移動方向である
図4の下側に移動する。このとき、乗りかご11の下降によって、U字状に垂れ下がった制御ケーブル15の下端部Gも、乗りかご11の移動距離の1/2、すなわちLだけ、
図4の下側に移動する。
【0035】
上述したように本例の場合には、乗りかご11が移動する場合に、カメラ41の移動距離と、U字状に垂れさがった制御ケーブル15の下端Gの移動距離とが同じになるので、乗りかご11の移動位置に関係なく、カメラ41が制御ケーブル15の下端部に向いた状態を維持しやすくなり、その下端部Gを良好に撮影しやすくなる。
【0036】
また、カメラ41のガイド孔42にガイドケーブル21が貫通し、ガイドケーブル21でカメラ41の上下方向の移動がガイドされているので、カメラ41の移動時の姿勢を安定させやすい。また、カメラ41がカメラ吊り下ケーブル51とカメラ吊り上ケーブル31で固定されていることと相まって、カメラ41の横揺れを抑制できる。これによっても、制御ケーブル15の下端部Gを良好に撮影しやすくなる。
【0037】
さらに、本例の場合には、第1巻取り器22は、ピット床85に配置され、回転調整機構61は、第1巻取り器22と第3巻取り器52との間に接続される。これにより、乗りかご11に第1巻取り器22及び回転調整機構61を配置する必要がなくなるので、乗りかご11に固定される部品の重量を低減できる。このため、乗りかご11を駆動させるためのエネルギを少なくできる。
【0038】
なお、本例において、第1巻取り器22はピット床85に配置しているが、第1巻取り器22を乗りかご11に配置してもよい。例えば、乗りかご11の下端に第1巻取り器22の第1支持部23を固定して、第1巻取り器22から引き出したガイドケーブル21の下端をピット床85に固定し、乗りかご11の下端とピット床85との間でガイドケーブル21を張ってもよい。このガイドケーブル21によって、カメラ41の上下方向の移動がガイドする。
【0039】
ガイドケーブル21が長尺帯状であり、ガイドケーブル21が貫通するカメラ41のガイド孔42を断面矩形状とする場合には、カメラ41を断面円形のガイドケーブルでガイドする場合に比べて、カメラ41の横揺れを抑制しやすくなる。
【0040】
なお、上記の
図1~
図4の例において、回転調整機構は、プーリベルト機構等の歯車機構以外としてもよい。例えば第1巻取り器22側の小径プーリと、第3巻取り器52側の大径プーリと、小径プーリ及び大径プーリに巻きかけられたベルトとを含むプーリベルト機構としてもよい。このとき、大径プーリのベルト巻きかけ部の直径を、小径プーリのベルト巻きかけ部の直径の2倍とすることにより、回転調整機構が、第1巻取り器22が1回転するときに第3巻取り器52が1/2回転するように第3巻取り器52の回転を調整する。
【0041】
10 エレベーター、11 乗りかご、12 主ロープ、13 釣合い錘、15 制御ケーブル、20,20a 制御ケーブル撮影システム(撮影システム)、21 ガイドケーブル、22 第1巻取り器、23 第1支持部、24 第1巻取り体、26 第1付勢手段、31 カメラ吊り上ケーブル、32 第2巻取り器、33 第2支持部、34 第2巻取り体、36 第2付勢手段、41 カメラ、42 ガイド孔、43 レンズ、51 カメラ吊り下ケーブル、52 第3巻取り器、61 回転調整機構、62 第1歯車、63 第3歯車、80 昇降路、81 機械室、82 巻き上げ機、84 エレベーター制御装置、85 ピット床。