(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】ガリエララクトンのスルホンアミド類似体
(51)【国際特許分類】
C07D 209/94 20060101AFI20230210BHJP
C07D 307/93 20060101ALI20230210BHJP
A61K 31/422 20060101ALI20230210BHJP
C07D 413/12 20060101ALI20230210BHJP
C07D 405/12 20060101ALI20230210BHJP
C07D 409/12 20060101ALI20230210BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20230210BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20230210BHJP
A61K 31/403 20060101ALI20230210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230210BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230210BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230210BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230210BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230210BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230210BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230210BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20230210BHJP
A61K 31/635 20060101ALI20230210BHJP
A61K 31/443 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
C07D209/94 CSP
C07D307/93
A61K31/422
C07D413/12
C07D405/12
C07D409/12
C07D401/12
A61K31/4439
A61K31/403
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/06
A61P25/28
A61P31/12
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/365
A61K31/635
A61K31/443
(21)【出願番号】P 2019527915
(86)(22)【出願日】2017-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2017081505
(87)【国際公開番号】W WO2018104295
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-10-23
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】313007002
【氏名又は名称】グラクトーン ファーマ デヴェロップメント アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シュテルナー オロフ
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/132396(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/149192(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 209/94
C07D 307/93
A61K 31/422
C07D 413/12
C07D 405/12
C07D 409/12
C07D 401/12
A61K 31/4439
A61K 31/403
A61P 35/00
A61P 29/00
A61P 37/06
A61P 25/28
A61P 31/12
A61K 45/00
A61P 43/00
A61K 31/365
A61K 31/635
A61K 31/443
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物であって、
【化1】
式中、
「X」は、O、NH、NC1~5アルキレン-アリール、NC1~5アルキレン-ヘテロアリール、N-アリール、NC1~C3アルキル及びNC(O)C1~C3アルキルからなる群から選択され、前記アリールは非置換であり、又は前記アリールはC1~C5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、C1~5アルキレンOC1~5アルキル、シアノ、NH
2、NHC1~5アルキル、N(C1~5アルキル)
2、ここで前記C1~5アルキルは同じでも異なってもよい、及びニトロからなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、前記ヘテロアリールは非置換であり、又は前記ヘテロアリールはC1~C5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、オキソ、OH、OC1~5アルキル、C1~5アルキレンOC1~5アルキル、シアノ、NH
2、NHC1~5アルキル、N(C1~5アルキル)
2、ここで前記C1~5アルキルは同じでも異なってもよい、及びニトロからなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、
R
1は、水素、C1~C5アルキル、C1~C5フルオロアルキル、及び
【化2】
からなる群から選択され、式中、
「B」は、C1~C5アルキレンであり、
「C」は、-O-、-NH-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OSO
2-、-NHSO
2-、-C(O)NR
11-及び-N(R
11)C(O)-からなる群から選択され、式中、R
11はH又はC1~C4アルキルであり、
「D」は、水素、C1~C5アルキル、C1~C5フルオロアルキル及び-ECy
2からなる群から選択され、ただし、「C」が-OSO
2-又は-NHSO
2-である場合には「D」は水素ではなく、
「E」は直接の結合又はC1~C5アルキレンであり、Cy
2はアリール又はヘテロアリールであって、Cy
2は非置換であり、又はCy
2はC1~5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、ニトロ、シアノ、NH
2、NHC1~5アルキル及びN(C1~5アルキル)
2からなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、ここで前記C1~5アルキルは同じでも異なってもよく、
R
2、R
2’、R
3及びR
3’は、H、F、OH、C1~5アルキル及びC1~5フルオロアルキルからなる群から独立に選択され、
R
4及びR
4’は、H、C1~5アルキル、ハロ及びG-Cy
3からなる群から独立に選択され、「G」は結合又はメチレンであり、Cy
3はアリール又は5若しくは6員ヘテロアリールであって、Cy
3は非置換であり、又はCy
3はC1~5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、C1~5アルキレンOC1~5アルキル、ニトロ、シアノ、NH
2及びN(C1~5アルキル)
2からなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、ここで前記C1~5アルキルは同じでも異なってもよく、
「A」は、結合、C1~5アルキレン、NH、NC1~5アルキル、C1~3アルキレンN(R
10)C1~5アルキレン及びN(R
10)C1~3アルキレンからなる群から独立に選択され、R
10はH又はC1~C4アルキルであり、
Cy
1は、5及び6員単環式ヘテロアリール、フェニル、一方又は両方の環が芳香族である二環式ヘテロアリール、ナフチル、3~8員非芳香族複素環、並びにC3~8非芳香族炭素環からなる群から選択され、
「m」は0(ゼロ)、1、2、3、4又は5である整数であり、
R
5は、C1~8アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、シアノ、メチレンシアノ、OH、OC1~5アルキル、C1~8アルキレンOH、C1~8アルキレンOC1~5アルキル、SH、SC1~5アルキル、SO
2C1~5アルキル、C1~3アルキレンSO
2C1~5アルキル、OC1~3フルオロアルキル、C1~3アルキレンOC1~3フルオロアルキル、NH
2、NHC1~3アルキル、N(C1~5アルキル)
2、ここで前記C1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C1~3アルキレンNH
2、C1~3アルキレンNHC1~3アルキル、C1~3アルキレンN(C1~5アルキル)
2、ここで前記C1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C(O)OH、C(O)OC1~5アルキル、C1~3アルキレンC(O)OH、C1~3アルキレンC(O)OC1~5アルキル、OC(O)C1~5アルキル、C1~3アルキレンOC(O)C1~5アルキル、NHC(O)C1~3アルキル、N(C1~3アルキル)C(O)C1~3アルキル、C1~3アルキレンNHC(O)C1~3アルキル、C1~3アルキレンN(C1~3アルキル)C(O)C1~3アルキル、C(O)NH
2、C(O)NHC1~3アルキル、C(O)N(C1~5アルキル)
2、ここで前記C1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C1~3アルキレンC(O)NH
2、C1~3アルキレンC(O)NHC1~3アルキル、C1~3アルキレンC(O)N(C1~5アルキル)
2、ここで前記C1~5アルキルは同じでも異なってもよい、ニトロ、C(O)C1~C5アルキル、NHSO
2C1~C3アルキル、N(C1~C3アルキル)SO
2C1~C3アルキル、NHSO
2C1~C3フルオロアルキル、N(C1~C3アルキル)SO
2C1~C3フルオロアルキル、OC2~C3アルキレンN(C1~C3アルキル)
2、ここで前記C1~3アルキルは同じでも異なってもよい、及びC3~8非芳香族炭素環からなる群から独立に選択され、
Cy
1が3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環であり、「m」が少なくとも2である場合、前記3~8員非芳香族複素環又は前記C3~8非芳香族炭素環上の同じ炭素原子に結合した2個のR
5は、互いに連結されて3、4又は5員スピロ環を形成することができ、前記スピロ環は非芳香族炭素環又は非芳香族複素環であり、
Cy
1が3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環であり、「m」が少なくとも2である場合、前記3~8員非芳香族複素環又は前記C3~8非芳香族炭素環中の異なる原子に結合した2個のR
5は、互いに連結されて結合又はC1~5アルキレン架橋を形成することができ、Cy
1はしたがって二環式残基であり、
Cy
1が単環式ヘテロアリール、二環式ヘテロアリール、3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環である場合、R
5は、前記ヘテロアリール又は環中の炭素又は硫黄原子に結合した二重結合酸素(=O)とすることができ、
R
6は、水素及びC1~C5アルキルからなる群から選択される、
前記化合物。
【請求項2】
R
1が、水素、メチル、C1フルオロアルキル、及び
【化3】
からなる群から独立に選択され、式中、
「B」はメチレンであり、
「C」は、-O-、-NH-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHSO
2-、-C(O)NR
11-及び-N(R
11)C(O)-からなる群から選択され、式中、R
11はH又はC1~C3アルキルであり、
「D」は、水素、C1~C3アルキル、C1~C3フルオロアルキル及び-ECy
2からなる群から選択され、ただし「C」が-NHSO
2-である場合には「D」は水素ではなく、「E」は直接の結合又はメチレンであり、Cy
2はアリール又はヘテロアリールであって、Cy
2は非置換であり、又はCy
2はメチル、C1フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、シアノ、NH
2、NHC1~5アルキル及びN(C1~5アルキル)
2からなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、ここで前記C1~5アルキルは同じでも異なってもよい、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
2、R
2’、R
3及びR
3’が、H、F及びOHからなる群から独立に選択され、
R
4及びR
4’が、H、メチル及びG-Cy
3からなる群から独立に選択され、式中、「G」は結合又はメチレンであり、Cy
3は非置換アリールであり、
R
6が水素又はメチルである、
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
「A」が結合及びメチレンからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Cy
1が、フェニル、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、及びオキサジアゾールからなる群から選択される5員ヘテロアリール、並びに6員ヘテロアリールからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Cy
1が、フェニル、チオフェニル、フラニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル及びチアゾリルからなる群から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記整数「m」
が1又は2である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R
5が、メチル、C1フルオロアルキル、ハロ、シアノ、OH、-OMe、C1~2アルキレンOH、SO
2C1~3アルキル、OC1フルオロアルキル、NH
2、NHC1~3アルキル、N(C1~3アルキル)
2、ここで前記C1~3アルキルは同じでも異なってもよい、C(O)OH、C(O)OC1~3アルキル、NHC(O)C1~3アルキル、N(C1~3アルキル)C(O)C1~3アルキル、C(O)NH
2、C(O)NHC1~3アルキル、C(O)N(C1~3アルキル)
2、ここで前記C1~3アルキルは同じでも異なってもよい、C(O)C1~C3アルキル、NHSO
2C1~C3アルキル、N(C1~C3アルキル)SO
2C1~C3アルキル、OC2~C3アルキレンN(C1~C3アルキル)
2、ここで前記C1~3アルキルは同じでも異なってもよい、及びC3~8非芳香族炭素環からなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
R
5が、メチル、-NH
2、フッ素、-CF
3、-CHF
2、臭素及び塩素からなる群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
R
1が、メチル、CH
2OH及びCH
2OC1~C3アルキルからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
R
2、R
2’、R
3及びR
3’がすべて水素である、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R
4とR
4’の両方が水素である、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
「X」がO及びNCH
2フェニルからなる群から選択され、前記フェニルが非置換であり、又は前記フェニルがメチル、CF
3、ハロ、OH、OMe、CH
2OCMe、シアノ、NH
2、NHメチル、及びN(メチル)
2、及びニトロからなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換される、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
「X」がOである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物が、
【化4】
【化5】
からなる群から選択され、
示された立体配置が相対又は絶対立体配置である、
請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物と少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物が更に少なくとも1種の追加の治療薬を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
療法に使用される、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
固形癌、血液癌、良性腫瘍、過剰増殖疾患、炎症、自己免疫疾患、移植片又は移植拒絶、移植片又は移植組織の生理機能の遅延、神経変性疾患及びウイルス感染症からなる群から選択される疾患又は障害の処置に使用される、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
STAT3シグナル伝達関連障害の処置に使用される、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
ガリエララクトンよりも高い効力でSTAT3転写因子の活性を阻害するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガリエララクトンの類似体、こうした化合物を含む医薬組成物、及びこうした化合物の使用によって症状、特に癌を処置又は軽減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、異質な疾患である。処置は、腫瘍の場所及び遺伝子構造によって決定される所与の癌タイプに対して選ばれなくてはならない。しかし、癌のすべての形態は、抑制されない増殖及び自己複製を含めた幾つかの基本的な類似性を示し、これは、遺伝子発現のパターンによってある程度駆動される。多種多様なシグナルが、原因にかかわらず、転写因子に収束するので、また、転写因子の活性化は遺伝子転写の節点であるので、転写因子は、癌を処置するための収束的な標的であるはずである。
【0003】
転写因子は、ゲノム中の転写応答配列に結合し、それによって特定の標的遺伝子の転写を開始することによって、発生上及び環境上のものを含めて、種々の細胞外シグナルを媒介する必須細胞成分である。異常な転写因子機能は、しばしば、種々の疾患に関連し、増大した、又は過剰な遺伝子転写をもたらす。多数のシグナル及び活性化機序が単一の転写因子に収束するので、それらは、例えば癌の処置のための、効率的薬物標的になり得る。
【0004】
潜在細胞質転写因子(LCTFs:Latent cytoplasmic transcription factors)は、しばしば細胞表面受容体-リガンド相互作用の形で、外部シグナルによって活性化されるまで、不活性化状態で細胞質中に存在する転写因子である。これらの転写因子の中には、シグナル伝達性転写因子(STAT:Signal Transducer and Activator of Transcription)タンパク質のファミリーがある。STATタンパク質は、細胞質を介してシグナルのトランスデューサーとして作用することができ、核における転写因子としても機能することができるので、二重の役割を有する。
【0005】
STAT3は、転写因子のSTATファミリーの6つのメンバーの一つである。それは、約770アミノ酸長のタンパク質であり、6個のサブユニット又はドメインを有する;N末端、コイルドコイル、DNA結合、リンカー、SH2及びトランス活性化ドメイン。STAT3は、サイトカイン、増殖因子及び非受容体媒介シグナル伝達によって活性化される。STAT3活性化の基準の機序は、SH2ドメインにおけるチロシン705(Y705)のキナーゼ媒介リン酸化である。これは、STAT3単量体の2個のSH2ドメインの相互認識を誘発して、STAT3二量体の形成をもたらす。この二量体は、インポーチンの助けで核に移動し、DNAとの結合によって、標的遺伝子の転写が活性化される。核に移動する途中で、STAT3は、セリンリン酸化、リジンアセチル化又は低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO:Small Ubiquitin-like Modifier)タンパク質付着によって更に修飾することができ、これらの修飾は、STAT3の転写活性を調節するように働く。
【0006】
リン酸化によるSTAT3活性化及び二量体化は、少なくとも3つの反応によって行われ得る。STAT3は、サイトカイン受容体に恒常的に結合するJAKキナーゼによってリン酸化され得る。リガンド結合すると、受容体は凝集し、JAK2タンパク質はリン酸化によって相互活性化を受け、それらは次いでSH2ドメインと結合することによって、STAT3を動員し、活性化し得る。あるいは、増殖因子受容体がSTAT3を直接動員し、STAT3と結合して、その受容体チロシンキナーゼ活性を通してSTAT3活性化をもたらし得る。最後に、非受容体キナーゼ、例えば、Srcファミリーキナーゼ及びAblもSTAT3を活性化し得る。さらに、非リン酸化STAT3は、核に輸送され、恐らくは別のタンパク質に結合して機能的ヘテロマー転写因子を形成することによって、転写に関与し得る。
【0007】
核においては、STAT3は、別の転写因子、例えばNF-κBを含めて、幾つかの別のタンパク質と相互作用し得る。
【0008】
STAT3は、種々のキナーゼによるセリン727上のリン酸化によっても活性化され得る。このリン酸化によって転写活性が高くなる。恒常的にリン酸化されたセリン727は、慢性リンパ性白血病(CLL:chronic lymphocytic leukemia)患者からの細胞に広範に存在する。
【0009】
正常な状態でのSTAT3活性化は一過性であるので、複数の負のフィードバック系が存在する。STAT3シグナル伝達は、厳しく調節され、正常組織において恒常的に活性化されない。STAT3シグナル伝達に対する幾つかの内在する負の調節因子が発見されており、これらには、サイトカインシグナル抑制因子(SOCS:Suppressor of cytokine signaling、JAKに結合し、JAKを不活性化する)及び活性化STAT抑制タンパク質(PIAS:protein inhibitor of activated STAT)が含まれる。SOCSは、STAT3転写の遺伝子産物でもあり、これを負のフィードバックループとして示す。PIAS若しくはSOCS機能の喪失、又は発現の低下は、STAT3活性化を高め、これらの制御因子の変異が、STAT3シグナル伝達の増加に関連した疾患において見いだされた。
【0010】
最後に、STAT3は、種々のホスファターゼによって核内で脱リン酸化され、脱リン酸化されたSTAT3単量体は、核から搬出され、そこで再度潜伏する。
【0011】
STAT3転写の標的遺伝子は、細胞増殖及び細胞周期制御(例えば、サイクリンD1、c-Myc、p27)、アポトーシス(例えば、MCl-1、サバイビン、Bcl-2及びBcl-xL)、血管新生(VEGF)、転移(例えば、MMP-2、MMP-3)及び免疫に関与する。
【0012】
STAT3は、IL6、LIF、IL-10、IL-1、IL-12、EGF、TGFアルファ、PDGF及びG-CSFを含めたサイトカイン及び増殖因子、並びにJAK、JAK2、JAK3、TYK2、Src、Src、Lck、Hck、Lyn、Fyn、Fgr、EGFR、ErbB-2、Grb2、JNK、P38MAPK及びERKを含めた種々のチロシン及びセリンキナーゼによって活性化され得る。
【0013】
STAT3は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳癌、前立腺癌、肺癌(非小細胞)、腎細胞癌 肺癌、肝細胞癌、胆管癌、卵巣癌、膵臓腺癌、黒色腫、頭頚部扁平上皮癌を含めた幾つかの癌形態における実験的に有効な標的である(非特許文献1)。STAT3シグナル伝達は、癌細胞の増殖、生存、転移、薬剤耐性及び移動に関与し、更に炎症と癌を関連付ける。STAT3は、腫瘍開始と悪性化の両方に重要な役割を果たし得る腫瘍促進微小環境の一因にもなる。
【0014】
これは、多数の研究において生体外で初代細胞若しくは不死化細胞系を用いて、又は生体内で異種移植モデルを用いて実証され(例えば、非特許文献2及び3参照)、したがって、癌治療の理想的な標的であると考えられる(非特許文献4)。
【0015】
STAT3阻害に対する多数の癌細胞系の感受性は、癌遺伝子シグナル伝達依存を示している。
【0016】
炎症及び免疫も癌の病因の重要な部分である。癌細胞は、腫瘍微小環境における炎症を促進し、自然免疫系を回避することができる。STAT3シグナル伝達は、このプロセスにおいて重要な二重の役割を果たす。STAT3は、炎症誘発性サイトカインシグナル伝達によって活性化され、STAT3活性化は、ヘルパーT細胞抗腫瘍反応に対抗する。STAT3シグナル伝達の消失は、強力な免疫学的抗腫瘍反応をもたらす。STAT3は、正常組織よりも腫瘍浸潤免疫細胞において活性化され、STAT3を標的にすることは、治療学的抗腫瘍免疫を生じる。
【0017】
要約すると、異常で無秩序なSTAT3は、乳房、肺、脳、結腸、前立腺、リンパ腫及び白血病を含めて、固形腫瘍と血液腫瘍の両方において、細胞増殖及び細胞生存を促進する。STAT3の直接阻害剤又はSTAT3シグナル伝達の阻害剤は、したがって、これらの病理状態を軽減又は治癒することができると思われる。
【0018】
例えば癌のような疾患の防止、取消し又は抑制のための処置は、多くの点で不十分である。したがって、上記STAT3シグナル伝達を調節又は阻害するのに有効な化合物が望まれる。
【0019】
STAT3の直接阻害は、STAT3二量体化(STAT3は、2つのタンパク質の二量体である)に関与するタンパク質-タンパク質相互作用を阻害することによって、又は転写開始のためにDNAに結合したSTAT3に必要なタンパク質-DNA相互作用を遮断することによって、行うことができる。あるいは、STAT3の産生(生合成)を遮断することができる。
【0020】
直接STAT3阻害の別法は、STAT3活性化の原因であるシグナル伝達カスケードにおける上流分子(例えば、JAKキナーゼ)を阻害することである。この手法の欠点は、STAT3を活性化する複数の方法が存在することである。
【0021】
STAT3 SH2は、STAT3-STAT3二量体化を遮断するペプチド模倣薬及び非ペプチド小分子(例えば、S3I-M2001)を用いて標的にされており、DNA結合は、オリゴデオキシヌクレオチドデコイを用いて遮断され、一方STAT3の産生は、アンチセンスによって阻害されている。
【0022】
癌及び他の疾病において調節不全であるSTAT3などの転写因子は、潜在的薬物の重要な標的であるが、正常細胞における別の転写因子によって果たされる多数の役割のために、高度の選択性を有する転写因子遮断薬を開発することが重要になり、多数の転写因子が類似の活性化様式及び構造上の類似性を有するので、これは、達成が困難であり得る。
【0023】
(-)-ガリエララクトンは、IL-6/STAT3シグナル伝達をマイクロモル以下で阻害する、木材に生息する真菌から単離された天然物である。
【0024】
【0025】
特許文献1には、例えば炎症過程の処置用医薬品としてのガリエララクトンの使用が開示されている。
【0026】
(-)-ガリエララクトンの生物学的効果は、外見的には、STAT3二量体がそれらの調節エレメントに結合するのを直接阻害することによる(非特許文献5参照)。この提案された作用機序に基づいて、ガリエララクトンが抗癌剤として評価された。Hellstenらは、非特許文献6において、ガリエララクトンが、DU145前立腺癌細胞を発現するSTAT3の増殖を阻害することを報告した。さらに、非特許文献7は、ガリエララクトンがSTAT3に直接共有結合し、したがって転写活性を阻害することを示した。ガリエララクトンは、したがって、癌処置のための候補薬物である。また、Thaperら(非特許文献8)は、ガリエララクトンがエンザルタミド耐性細胞においてSTAT3活性を遮断し、増殖及びPSA産生を減少させ得ることを示した。
【0027】
しかし、ガリエララクトンは、経口投与後に生体内で得ることが困難かもしれない濃度において、抗増殖及びSTAT3阻害効果を示す。また、効力が低いと、望ましくない副作用をもたらす用量を必要とする可能性がある。したがって、STAT3阻害能力が保持され、又は好ましくは改善され、同時に物理的化学的性質を変えて薬物様性質全般を改善することができる、ガリエララクトンに基づいた新しい化合物を開発することが望ましい。
【0028】
ガリエララクトンの活性及び性質を改変する試みが当該技術分野において報告された。Nussbaumらは、非特許文献9において、(-)-ガリエララクトンの個々の官能基の改変について報告した。しかし、得られた類似体の大部分は、完全に不活性であるか、又は(-)-ガリエララクトンよりもはるかに低活性であることが判明した。特に、共役二重結合の改変は不活性化合物を生成することが報告された。特許文献2は、STAT3及びNF-kBシグナル伝達を阻害するガリエララクトン骨格に基づく三環化合物の調製及び使用を開示している。
【0029】
さらに、ガリエララクトン及びその類似体の物理的化学的性質が、そのプロドラッグを提供することによって扱われた(特許文献3参照)。さらに、ガリエララクトンのエーテル類似体が特許文献4に報告された。
【0030】
それでも、ガリエララクトンに基づいたSTAT3のより強力な阻害剤が依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【文献】米国特許第6,512,007号
【文献】国際公開第2012/010555号
【文献】国際公開第2015/132396号
【文献】国際公開第2016/193332号
【非特許文献】
【0032】
【文献】Johnston,P.A;Grandis,J.R.Mol Interv.2011 11(1):18~26
【文献】Sansone,P;Bromberg,J.J Clin Oncol.2012;30(9):1005~14
【文献】Miklossy,G.;Hilliard,T.S.;Turkson,J.Nat Rev Drug Discov.2013 12(8):611~29
【文献】Yu,H.;Lee,H.;Herrmann,A.;Buettner,R.;Jove,R.Nat Rev Cancer.2014 14(11):736~46、STAT Inhibitors in Cancer、Alister C.Ward編、Humana Press、2016
【文献】Weidlerら、FEBS Letters 2000、484、1~6
【文献】Hellstenら、Prostate 68:269~280(2008)
【文献】Don-Doncow,N.;Escobar,Z.;Johansson,M.;Kjellstroem,S.;Garcia,V.;Munoz,E.;Sterner,O.;Bjartell,A.;Hellsten,R.;J.Biol.Chem.2014 289(23):15969~78
【文献】「GPA500 inhibits the STAT3 activity and suppresses ENZ-resistant Prostate Cancer in vitro」Daksh Thaper、Sepideh Vahid、Jennifer Bishop、Martin Johansson及びAmina Zoubeidi.AACR Annual Meeting 2015、Abstract nr 728
【文献】Nussbaumら、Eur.J.Org.Chem.2004、2783~2790
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、化合物、一態様によれば、式(I)の化合物を提供することによって、上記欠陥の1つ以上などの少なくとも1つを緩和、軽減、回避又は除去しようとするものである。
【0034】
【0035】
式中、
「X」は、O、NH、NC1~5アルキレン-アリール、NC1~5アルキレン-ヘテロアリール、N-アリール、NC1~C3アルキル及びNC(O)C1~C3アルキルからなる群から選択され、前記アリールは非置換であり、又は前記アリールはC1~C5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、C1~5アルキレンOC1~5アルキル、シアノ、NH、NHC1~5アルキル、及びN(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、並びにニトロからなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、前記ヘテロアリールは非置換であり、又は前記ヘテロアリールはC1~C5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、オキソ、OH、OC1~5アルキル、C1~5アルキレンOC1~5アルキル、シアノ、NH、NHC1~5アルキル、N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、及びニトロからなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、
R1は、水素、C1~C5アルキル、C1~C5フルオロアルキル、及び
【0036】
【0037】
からなる群から選択され、
式中、
「B」は、C1~C5アルキレンであり、
「C」は、-O-、-NH-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OSO2-、-NHSO2-、-C(O)NR11-及び-N(R11)C(O)-からなる群から選択され、式中、R11はH又はC1~C4アルキルであり、
「D」は、水素、C1~C5アルキル、C1~C5フルオロアルキル及び-ECy2からなる群から選択され、ただし、「C」が-OSO2-又は-NHSO2-である場合には「D」は水素ではなく、
「E」は直接の結合又はC1~C5アルキレンであり、Cy2はアリール又はヘテロアリールであって、Cy2は非置換であり、又はCy2はC1~5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、ニトロ、シアノ、NH、NHC1~5アルキル及びN(C1~5アルキル)2からなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよく、
R2、R2’、R3及びR3’は、H、F、OH、C1~5アルキル及びC1~5フルオロアルキルからなる群から独立に選択され、
R4及びR4’は、H、C1~5アルキル、ハロ及びG-Cy3からなる群から独立に選択され、「G」は結合又はメチレンであり、Cy3はアリール又は5若しくは6員ヘテロアリールであって、Cy3は非置換であり、又はCy3はC1~5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、C1~5アルキレンOC1~5アルキル、ニトロ、シアノ、NH2及びN(C1~5アルキル)2からなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよく、
「A」は、結合、C1~5アルキレン、NH、NC1~5アルキル、C1~3アルキレンN(R10)C1~5アルキレン及びN(R10)C1~3アルキレンからなる群から独立に選択され、R10はH又はC1~C4アルキルであり、
Cy1は、5及び6員単環式ヘテロアリール、フェニル、一方又は両方の環が芳香族である二環式ヘテロアリール、ナフチル、3~8員非芳香族複素環、並びにC3~8非芳香族炭素環からなる群から選択され、
「m」は0(ゼロ)、1、2、3、4又は5である整数であり、
R5は、C1~8アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、シアノ、メチレンシアノ、OH、OC1~5アルキル、C1~8アルキレンOH、C1~8アルキレンOC1~5アルキル、SH、SC1~5アルキル、SO2C1~5アルキル、C1~3アルキレンSO2C1~5アルキル、OC1~3フルオロアルキル(fluroroalkyl)、C1~3アルキレンOC1~3フルオロアルキル(fluroroalkyl)、NH2、NHC1~3アルキル、N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C1~3アルキレンNH2、C1~3アルキレンNHC1~3アルキル、C1~3アルキレンN(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C(O)OH、C(O)OC1~5アルキル、C1~3アルキレンC(O)OH、C1~3アルキレンC(O)OC1~5アルキル、OC(O)C1~5アルキル、C1~3アルキレンOC(O)C1~5アルキル、NHC(O)C1~3アルキル、N(C1~3アルキル)C(O)C1~3アルキル、C1~3アルキレンNHC(O)C1~3アルキル、C1~3アルキレンN(C1~3アルキル)C(O)C1~3アルキル、C(O)NH2、C(O)NHC1~3アルキル、C(O)N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C1~3アルキレンC(O)NH2、C1~3アルキレンC(O)NHC1~3アルキル、C1~3アルキレンC(O)N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、ニトロ、C(O)C1~C5アルキル、NHSO2C1~C3アルキル、N(C1~C3アルキル)SO2C1~C3アルキル、NHSO2C1~C3フルオロアルキル、N(C1~C3アルキル)SO2C1~C3フルオロアルキル、OC2~C3アルキレンN(C1~C3アルキル)2、ここでC1~3アルキルは同じでも異なってもよい、及びC3~8非芳香族炭素環からなる群から独立に選択され、
Cy1が3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環であり、「m」が少なくとも2である場合、前記3~8員非芳香族複素環又は前記C3~8非芳香族炭素環上の同じ炭素原子に結合した2個のR5は、互いに連結されて3、4又は5員スピロ環を形成することができ、前記スピロ環は非芳香族炭素環又は非芳香族複素環であり、
Cy1が3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環であり、「m」が少なくとも2である場合、前記3~8員非芳香族複素環又は前記C3~8非芳香族炭素環中の異なる原子に結合した2個のR5は、互いに連結されて結合又はC1~5アルキレン架橋を形成することができ、Cy1はしたがって二環式残基であり、
Cy1が単環式ヘテロアリール、二環式ヘテロアリール、3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環である場合、R5は、前記ヘテロアリール又は環中の炭素又は硫黄原子に結合した二重結合酸素(=O)とすることができ、
R6は、水素及びC1~C5アルキルからなる群から選択される。
【0038】
別の一態様によれば、式(I)の化合物と少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。こうした化合物及び組成物は、療法に有用である。
【0039】
別の一態様によれば、式(I)の化合物、及びこうした化合物を含む組成物は、STAT3シグナル伝達関連障害の処置において、特に、固形癌、血液癌、良性腫瘍、過剰増殖疾患、炎症、自己免疫疾患、移植片又は移植拒絶、移植片又は移植組織の生理機能の遅延、神経変性疾患、並びに固形癌及び血液癌由来などのウイルス感染症からなる群から選択される疾患及び障害の処置において、有用である。
【0040】
さらに、本発明の様々な実施形態の有利な特徴は、従属請求項及び以下の詳細な説明に明示されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】LNCaP-IL6及びLNCaP前立腺癌細胞系におけるp-STAT3(tyr705)及び全STAT3のウエスタンブロット分析の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
定義:
別段の記載がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。
【0043】
本願及び本発明の状況においては、以下の定義を適用する。
【0044】
「付加塩」という用語は、有機酸若しくは無機酸などの薬学的に許容される酸、又は薬学的に許容される塩基の添加によって形成される塩を意味するものとする。有機酸は、酢酸、プロパン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸又はマレイン酸であり得るが、それらに限定されない。無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸又はリン酸であり得るが、それらに限定されない。塩基は、アンモニア、及びアルカリ又はアルカリ土類金属の水酸化物であり得るが、それらに限定されない。「付加塩」という用語は、水和物及びアルコラートなどの水和物及び溶媒付加体も含む。
【0045】
本明細書では「ハロ」又は「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指す。
【0046】
本明細書では、単独で又は接尾辞若しくは接頭辞として使用される「アルキル」は、1~12個の炭素原子を有する分枝及び直鎖飽和脂肪族炭化水素基を含むように意図され、又は指定数の炭素原子が与えられる場合、その特定の数が意図される。例えば、「C1~6アルキル」は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルキルを表す。アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル及びヘキシルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0047】
本明細書では、単独で又は接尾辞若しくは接頭辞として使用される「アルキレニル」又は「アルキレン」は、1~12個の炭素原子を有する直鎖飽和脂肪族炭化水素基を含むように意図され、又は指定数の炭素原子が与えられる場合、その特定の数が意図される。例えば、「C1~6アルキレニル」又は「C1~6アルキレン」は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルキレニル又はアルキレンを表す。本明細書では、アルキレン又はアルキレニル基によって結合される基は、好ましくは、アルキレン又はアルキレニル基の最初及び最後の炭素に結合することが意図される。メチレンの場合、最初と最後の炭素は同じである。例えば、「H2N(C2アルキレン)NH2」、「H2N(C3アルキレン)NH2」、「N(C4アルキレン)」、「N(C5アルキレン)」及び「N(C2アルキレン)2NH」は、それぞれ1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、ピロリジニル、ピペリジニル及びピペラジニルと同じである。組合せ「N(C4~5アルキレン)」とは、ピロリジニルとピペリジニルを指す。アルキレン又はアルキレニルの例としては、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)及びブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0048】
本明細書では「アルコキシ」又は「アルキルオキシ」は、酸素架橋を介して結合した指定数の炭素原子を有する上記アルキル基を意味するものとする。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、シクロプロピルメトキシ、アリルオキシ及びプロパルギルオキシが挙げられるが、それらに限定されない。同様に、「アルキルチオ」又は「チオアルコキシ」は、硫黄架橋を介して結合した指定数の炭素原子を有する上記アルキル基を表す。
【0049】
本明細書では、単独で又は接尾辞若しくは接頭辞として使用される「フルオロアルキル」、「フルオロアルキレン」及び「フルオロアルコキシ」とは、対応するアルキル、アルキレン及びアルコキシ基の炭素のいずれかに結合した1、2又は3個の水素がフルオロで置換された基を指す。
【0050】
フルオロアルキルの例としては、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-フルオロエチル及び3-フルオロプロピルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0051】
フルオロアルキレンの例としては、ジフルオロメチレン、フルオロメチレン、2,2-ジフルオロブチレン及び2,2,3-トリフルオロブチレンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0052】
フルオロアルコキシの例としては、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、3,3,3-トリフルオロプロポキシ及び2,2-ジフルオロプロポキシが挙げられるが、それらに限定されない。
【0053】
本明細書では「非芳香族炭素環」は、単独であろうと、接尾辞又は接頭辞としてであろうと、シクロプロパニル、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、シクロペンテニル及びシクロヘキセニルなどの3~8個の環炭素原子を有する非芳香族飽和及び不飽和炭素単環を意味するものとする。C3~C6などの接頭辞が与えられる場合、前記炭素環が指定数の炭素原子、例えば、3、4、5又は6個の炭素原子を含むとき。したがって、「C6非芳香族炭素環」としては、例えば、シクロヘキシル及びシクロヘキセニルが挙げられる。非芳香族不飽和炭素環は、アリールと区別される。アリールとは、少なくとも1個の芳香環を含む芳香環構造を指す。
【0054】
本明細書では「シクロアルキル」は、単独であろうと、接尾辞又は接頭辞としてであろうと、シクロプロパニル、シクロペンタニル及びシクロヘキサニルなどの3~8個の環炭素原子を有する飽和炭素単環を意味するものとする。C3~C6などの接頭辞が与えられる場合、前記シクロアルキルが指定数の炭素原子、例えば、3、4、5又は6個の炭素原子を含むとき。したがって、C6シクロアルキルはシクロヘキシルに対応する。
【0055】
本明細書では「シクロアルケニル」は、単独であろうと、接尾辞又は接頭辞としてであろうと、シクロペンテニル及びシクロヘキセニルなどの4~8個の環炭素原子を有する一不飽和炭素単環を意味するものとする。C3~C6などの接頭辞が与えられる場合、前記シクロアルケニルが指定数の炭素原子、例えば、3、4、5又は6個の炭素原子を含むとき。したがって、C6シクロアルケニルはシクロヘキセニルに対応する。
【0056】
本明細書では「置換可能」という用語は、水素が共有結合し得る原子、及び別の置換基が水素の代わりに存在し得る原子を指す。置換可能な原子の非限定的例としては、ピリジンの炭素原子が挙げられる。ピリジンの窒素原子は、この定義によれば置換可能ではない。さらに、同じ定義によれば、イミダゾール中の3位のイミン窒素は置換可能ではなく、一方1位のアミン窒素は置換可能である。
【0057】
本明細書では「アリール」という用語は、5~14個の炭素原子で構成された、少なくとも1個の芳香環を含む環構造を指す。5、6又は7個の炭素原子を含む環構造は、単環芳香族基、例えばフェニルである。8、9、10、11、12、13又は14個の炭素原子を含む環構造は、多環、例えばナフチルである。芳香環は、1個以上の環位置において置換され得る。「アリール」という用語は、2個以上の炭素が2個の隣接する環に共通である2個以上の環式環を有する多環式環構造であって(環は「縮合環」である)、環の少なくとも1個が芳香族であり、例えば、その他の環式環(単数又は複数)がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又はヘテロシクリルであり得る、多環式環構造も含む。
【0058】
オルト、メタ及びパラという用語は、それぞれ1,2-、1,3-及び1,4-二置換ベンゼンに適用される。例えば、1,2-ジメチルベンゼンとオルト-ジメチルベンゼンという名称は同義である。
【0059】
本明細書では「ヘテロアリール」又は「ヘタリール」とは、芳香族特性(例えば、6個の非局在電子)を有する少なくとも1個の環又は芳香族特性(例えば、4n+2個の非局在電子、「n」は整数である)を有する少なくとも2個の共役環を有し、最高約14個の炭素原子を含み、芳香族特性を有する環中に硫黄、酸素又は窒素などの少なくとも1個のヘテロ原子環メンバーを有する、芳香族複素環を指す。ヘテロアリール又はヘタリール基としては、単環系及び(例えば、2個の縮合環を有する)二環系が挙げられる。ヘテロアリール又はヘタリール基は、1個以上の環位置において置換され得る。
【0060】
ヘテロアリール又はヘタリール基の例としては、ピリジル(すなわち、ピリジニル)、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、フリル(すなわち、フラニル)、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル、テトラヒドロイソキノリル、チエニル、イミダゾリル、チアゾリル、インドリル、ピロリル、オキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インダゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、イソチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾイミダゾリル、インドリニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
本明細書では「非芳香族複素環」とは、硫黄、酸素又は窒素などの少なくとも1個のヘテロ原子環メンバーを含む単環を指す。こうした単環式環は、飽和でも不飽和でもよい。不飽和の場合、非芳香族複素環は、1、2若しくは3個の二重結合又は1若しくは2個の三重結合を含むことができる。しかし、非芳香族複素環は、ヘテロアリール基から区別されるべきものである。
【0062】
非芳香族複素環基の例としては、アゼピニル、ジオキソラニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、3H-ジアジリン-3-イル、オキシラニル、アジリジニル、ピペリジニル、ピペリジニル-N-オキシド、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロ-2H-ピラニル、テトラヒドロチオフラニル、チアモルホリニルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0063】
「オキソ」基とは「=O」基を指す。
【0064】
本明細書では、例えば構造の図面を例えば参照するときなどの「相対立体配置」という用語は、例えば構造の置換基又は基の相対空間配置に関係している。例えば、相対立体配置が、分子の置換基又は基をある方向に描くことによって示される場合、その分子の対応する鏡像は同じ相対立体配置を有する。一方、「絶対立体配置」が、分子の置換基又は基をある方向に描くことによって示される場合、その分子の特定の鏡像異性体が意図される。
【0065】
化合物
一実施形態は、式(I)の化合物に関する。
【0066】
【0067】
式中、
「X」は、O(酸素)、NH、NC1~5アルキレン-アリール、NC1~5アルキレン-ヘテロアリール、N-アリール、NC1~C3アルキル及びNC(O)C1~C3アルキルからなる群から選択され、前記アリールは非置換であり、又は前記アリールはC1~C5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、C1~5アルキレンOC1~5アルキル、NH、NHC1~5アルキル、及びN(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、並びにシアノ及びニトロからなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、前記ヘテロアリールは非置換であり、又は前記ヘテロアリールはC1~C5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、オキソ、OH、OC1~5アルキル、C1~5アルキレンOC1~5アルキル、シアノ、NH、NHC1~5アルキル、N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、及びニトロからなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、
R1は、水素、C1~C5アルキル、C1~C5フルオロアルキル、及び
【0068】
【0069】
からなる群から選択され、
式中、
「B」は、C1~C5アルキレンであり、
「C」は、-O-、-NH-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OSO2-、-NHSO2-、-C(O)NR11-及び-N(R11)C(O)-からなる群から選択され、式中、R11はH又はC1~C4アルキルであり、
「D」は、水素、C1~C5アルキル、C1~C5フルオロアルキル及び-ECy2からなる群から選択され、ただし、「C」が-OSO2-又は-NHSO2-である場合には「D」は水素ではなく、
「E」は直接の結合又はC1~C5アルキレンであり、Cy2はアリール又はヘテロアリールであって、Cy2は非置換であり、又はCy2はC1~5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、ニトロ、シアノ、NH、NHC1~5アルキル及びN(C1~5アルキル)2からなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよく、
R2、R2’、R3及びR3’は、H、F、OH、C1~5アルキル及びC1~5フルオロアルキルからなる群から独立に選択され、
R4及びR4’は、H、C1~5アルキル、ハロ及びG-Cy3からなる群から独立に選択され、「G」は結合又はC1~3アルキレン、例えばメチレンであり、Cy3はアリール、例えばフェニル、又は5若しくは6員ヘテロアリールであって、Cy3は非置換であり、又はCy3はC1~5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、C1~5アルキレンOC1~5アルキル、ニトロ、シアノ、NH2及びN(C1~5アルキル)2からなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよく、
「A」は、結合、C1~5アルキレン、NH、NC1~5アルキル、C1~3アルキレンN(R10)C1~5アルキレン及びN(R10)C1~3アルキレンからなる群から独立に選択され、R10はH又はC1~C4アルキルであり、
Cy1は、5及び6員単環式ヘテロアリール、フェニル、一方又は両方の環が芳香族である二環式ヘテロアリール、ナフチル、3~8員非芳香族複素環、並びにC3~8非芳香族炭素環からなる群から選択され、
「m」は0(ゼロ)、1、2、3、4又は5である整数であり、
R5は、C1~8アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、シアノ、メチレンシアノ、OH、OC1~5アルキル、C1~8アルキレンOH、C1~8アルキレンOC1~5アルキル、SH、SC1~5アルキル、SO2C1~5アルキル、C1~3アルキレンSO2C1~5アルキル、OC1~3フルオロアルキル(fluroroalkyl)、C1~3アルキレンOC1~3フルオロアルキル(fluroroalkyl)、NH2、NHC1~3アルキル、N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C1~3アルキレンNH2、C1~3アルキレンNHC1~3アルキル、C1~3アルキレンN(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C(O)OH、C(O)OC1~5アルキル、C1~3アルキレンC(O)OH、C1~3アルキレンC(O)OC1~5アルキル、OC(O)C1~5アルキル、C1~3アルキレンOC(O)C1~5アルキル、NHC(O)C1~3アルキル、N(C1~3アルキル)C(O)C1~3アルキル、C1~3アルキレンNHC(O)C1~3アルキル、C1~3アルキレンN(C1~3アルキル)C(O)C1~3アルキル、C(O)NH2、C(O)NHC1~3アルキル、C(O)N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C1~3アルキレンC(O)NH2、C1~3アルキレンC(O)NHC1~3アルキル、C1~3アルキレンC(O)N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、ニトロ、C(O)C1~C5アルキル、NHSO2C1~C3アルキル、N(C1~C3アルキル)SO2C1~C3アルキル、NHSO2C1~C3フルオロアルキル、N(C1~C3アルキル)SO2C1~C3フルオロアルキル、OC2~C3アルキレンN(C1~C3アルキル)2、ここでC1~3アルキルは同じでも異なってもよい、及びC3~8非芳香族炭素環からなる群から独立に選択され、
Cy1が3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環であり、「m」が少なくとも2である場合、前記3~8員非芳香族複素環又は前記C3~8非芳香族炭素環上の同じ炭素原子に結合した2個のR5は、互いに連結されて3、4又は5員スピロ環を形成することができ、前記スピロ環は非芳香族炭素環又は非芳香族複素環であり、
Cy1が3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環であり、「m」が少なくとも2である場合、前記3~8員非芳香族複素環又は前記C3~8非芳香族炭素環中の異なる原子に結合した2個のR5は、互いに連結されて結合又はC1~5アルキレン架橋を形成することができ、Cy1はしたがって二環式残基であり、
Cy1が単環式ヘテロアリール、二環式ヘテロアリール、3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環である場合、R5は、前記ヘテロアリール又は環中の炭素又は硫黄原子に結合した二重結合酸素(=O)とすることができ、
R6は、水素及びC1~C5アルキルからなる群から選択される。
【0070】
化合物は、プロドラッグ、遊離塩基、非荷電プロトン化形態の酸、薬学的に許容される付加塩、溶媒和化合物、その塩の溶媒和化合物、純粋なジアステレオマー、純粋な鏡像異性体、ジアステレオマー混合物、ラセミ混合物、鏡像異性体の不均一混合物(scalemic mixture)、2つのヘテロ原子間の水素移動に起因する対応する互変異性体、及び/又はケト-エノール互変異性に起因する対応する互変異性体などの種々の形態で提供することができる。さらに、当業者によって認識されるように、式(I)の化合物中の1個以上の原子を対応する同位体で置換することができ、例えば、水素を重水素又はトリチウムで置換することができ、炭素12を炭素13又は14で置換することができる。
【0071】
一実施形態によれば、式(I)の化合物は、本質的に純粋な鏡像異性体として提供される。本質的に純粋な鏡像異性体として提供される場合、式(I)の化合物は、少なくとも98%、更には99%などの少なくとも95%の鏡像体過剰率とすることができる。
【0072】
さらに、式(I)の化合物をプロドラッグとして提供することができる。一例として、国際公開第2015/132396号に開示されたように、チオールを使用して、式(I)の化合物をプロドラッグに転化することができる。
【0073】
スルホンアミドが環状置換基を有する場合、ガリエララクトンのメチル基にスルホンアミドを2個導入すると、その効力を維持しながら、又は改善さえしながら、その物理的化学的性質を変えることが見いだされた。
【0074】
ガリエララクトンでは、メチル基は4位に位置する(R1参照)。一実施形態によれば、R1はしたがってメチルである。しかし、好ましい選択によれば、R1は、水素、メチル、C1フルオロアルキル、及び
【0075】
【0076】
からなる群から独立に選択することもできる。
式中、
Bは-CH2-(メチレン)であり、
Cは、-O-、-NH-、-C(O)O-、-OC(O)-、-NHSO2-、-C(O)NR11-及び-N(R11)C(O)-からなる群から選択され、式中、R11はH又はC1~C3アルキルであり、
Dは、水素、C1~C3アルキル、C1~C3フルオロアルキル、ただし「C」が-NHSO2-である場合には「D」は水素ではない、及び-ECy2からなる群から選択され、Eは直接の結合又はメチレンであり、Cy2はアリール又はヘテロアリールであって、Cy2は非置換であり、又はCy2はメチル、C1フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、シアノ、NH2、NHC1~5アルキル及びN(C1~5アルキル)2からなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換され、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい。さらに、R1は、メチル、CH2OH及びCH2OC1~C3アルキル、例えば、CH2OMe、CH2OEt、CH2OnPr又はCH2OiPrからなる群から独立に選択することができる。ガリエララクトンのメチル基を改変する合成法については、本明細書の更に後で開示する。
【0077】
ガリエララクトンにおいては、メチル基及びヒドロキシル基を除いて更なる置換基は三環式骨格上に存在しない。一実施形態によれば、R2、R2’、R3及びR3’は、したがって、すべて水素である。国際公開第2012/010555号に開示されたように、置換基をR4及び/又はR4’と同様にR2、R2’、R3及び/又はR3’として導入することができる。好ましくはあるが、R2、R2’、R3及びR3’は水素であることに限定されず、H、F、OH、C1~5アルキル及びC1~5フルオロアルキルからなる群から、好ましくはH、F及びOHからなる群から選択することができる。さらに、R4及びR4’もガリエララクトンでは水素である。一実施形態によれば、R4とR4’の両方が水素である。さらに、R4及びR4’は、H、メチル及びG-Cy3からなる群から独立に選択することができ、式中、「G」は結合又は-CH2-(メチレン)であり、Cy3は非置換アリールである。
【0078】
ガリエララクトンはラクトンであるが、当業者によって認識されるように、ラクタムは、加水分解性的により安定ではあるが、ラクトンと密接に関連する。式(I)の化合物は、したがって、「X」がO(酸素)であるラクトンであり、同様に、例えば、「X」がNH、NC1~5アルキレン-アリール、例えば、NCH2-アリール、NC1~5アルキレン-ヘテロアリール、N-アリール、又はNC1~C3アルキルである、ラクタムであり得る。さらに、XはNC(O)C1~C3アルキルとすることができる。NC1~5アルキレン-アリール及びN-アリール中のアリールは、それぞれ、非置換とすることができ、又はC1~C5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、OH、OC1~5アルキル、C1~5アルキレンOC1~5アルキル、シアノ、NH、NHC1~5アルキル、N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、及びニトロからなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換することができる。同様に、NC1~5アルキレン-ヘテロアリール中のヘテロアリールは、非置換とすることができ、又はC1~C5アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、オキソ(すなわち、カルボニル基を含むヘテロアリール)、OH、OC1~5アルキル、C1~5アルキレンOC1~5アルキル、シアノ、NH、NHC1~5アルキル、N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、及びニトロからなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換することができる。ヘテロアリールは、好ましくは、単環式5又は6員ヘテロアリールである。NC1~5アルキレン-アリール及びNC1~5アルキレン-ヘテロアリール中のアルキレンリンカーの長さは、それぞれ変わり得るが、アルキレンリンカーは、好ましくはメチレンである。さらに、NC1~5アルキレン-アリール中のアリールは、好ましくはフェニルである。フェニルが置換される場合、フェニルは、好ましくはパラ位が一置換される。
【0079】
一実施形態によれば、「X」は、O及びNCH2-フェニルからなる群から選択される。NCH2-フェニル中のフェニルは、非置換とすることができ、又はメチル、CF3、ハロ、OH、OMe、CH2OCMe、シアノ、NH、NHメチル、及びN(メチル)2、及びニトロからなる群から独立に選択される1個若しくは幾つかの置換基で置換することができる。さらに、式(I)の化合物はラクトンとすることができ、「X」はしたがって「O」(酸素)である。
【0080】
式中、「A」はリンカーであり、環状基Cy1をスルホンアミド基(-NHSO2-)に連結する。リンカー「A」は、結合、すなわち4位の導入基は-NHSO2-Cy1-(R5)mである、C1~5アルキレン、例えばメチレン、NH、NC1~5アルキル、C1~3アルキレンN(R10)C1~5アルキレン、及びN(R10)C1~3アルキレンからなる群から独立に選択することができ、式中、R10はH又はC1~C4アルキルである。好ましくは、リンカー「A」は、結合及び-CH2-(メチレン)からなる群から選択され、すなわち、4位の導入基は-NHSO2-Cy1-(R5)m又は-NHSO2-CH2-Cy1-(R5)mである。スルホンアミド自体に関して、窒素の置換が効力に負の影響を及ぼすことが判明した。したがって、スルホンアミド中の窒素は、好ましくは非置換である。
【0081】
既述したように、スルホンアミドは、環状置換基(Cy1参照)を有するべきである。環状基は、芳香族でも非芳香族でもよい。さらに、該基は単環に限定されず、別の環、例えば二環も含む。しかし、芳香環、すなわちアリール、例えばフェニル、及びヘテロアリール、例えば5員ヘテロアリールが好ましい。一実施形態によれば、Cy1は、フェニル、5員ヘテロアリール及び6員ヘテロアリールからなる群から選択される。5員ヘテロアリールは、好ましくは、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール及びオキサジアゾールからなる群から選択される。6員ヘテロアリールは、好ましくは、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル及びピラジニルからなる群から選択される。好ましくは、Cy1は、フェニル、ピリジニル、チオフェニルなど、フェニル、チオフェニル、フラニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル及びチアゾリルからなる群から選択される。
【0082】
環状置換基Cy1は、非置換とすることができ、すなわち、整数「m」は0(ゼロ)であり、R5は存在しない、又は置換することができ、すなわち、整数「m」は1以上であり、R5が存在する。一実施形態によれば、環状置換基Cy1は置換され、整数「m」は1、2、3、4又は5である。置換基の数は一般にかなり少なく、したがって整数「m」は1、2又は3、例えば1、2であり得る。
【0083】
存在する場合、置換基R5は、「m」が2以上である場合、独立に、C1~8アルキル、C1~5フルオロアルキル、ハロ、シアノ、メチレンシアノ、OH、OC1~5アルキル、C1~8アルキレンOH、C1~8アルキレンOC1~5アルキル、SH、SC1~5アルキル、SO2C1~5アルキル、C1~3アルキレンSO2C1~5アルキル、OC1~3フルオロアルキル(fluroroalkyl)、C1~3アルキレンOC1~3フルオロアルキル(fluroroalkyl)、NH2、NHC1~3アルキル、N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C1~3アルキレンNH2、C1~3アルキレンNHC1~3アルキル、C1~3アルキレンN(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C(O)OH、C(O)OC1~5アルキル、C1~3アルキレンC(O)OH、C1~3アルキレンC(O)OC1~5アルキル、OC(O)C1~5アルキル、C1~3アルキレンOC(O)C1~5アルキル、NHC(O)C1~3アルキル、N(C1~3アルキル)C(O)C1~3アルキル、C1~3アルキレンNHC(O)C1~3アルキル、C1~3アルキレンN(C1~3アルキル)C(O)C1~3アルキル、C(O)NH2、C(O)NHC1~3アルキル、C(O)N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、C1~3アルキレンC(O)NH2、C1~3アルキレンC(O)NHC1~3アルキル、C1~3アルキレンC(O)N(C1~5アルキル)2、ここでC1~5アルキルは同じでも異なってもよい、ニトロ、C(O)C1~C5アルキル、NHSO2C1~C3アルキル、N(C1~C3アルキル)SO2C1~C3アルキル、NHSO2C1~C3フルオロアルキル、N(C1~C3アルキル)SO2C1~C3フルオロアルキル、OC2~C3アルキレンN(C1~C3アルキル)2、ここでC1~3アルキルは同じでも異なってもよい、及びC3~8非芳香族炭素環からなる群から選択される。さらに、Cy1が3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環であり、「m」が少なくとも2である場合、前記3~8員非芳香族複素環又は前記C3~8非芳香族炭素環上の同じ炭素原子に結合した2個のR5は、互いに連結されて3、4又は5員スピロ環を形成することができ、スピロ環は非芳香族炭素環又は非芳香族複素環である。さらに、Cy1が3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環であり、「m」が少なくとも2である場合、前記3~8員非芳香族複素環又は前記C3~8非芳香族炭素環中の異なる原子に結合した2個のR5は、互いに連結されて結合又はC1~5アルキレン架橋を形成することができ、Cy1はしたがって二環式残基である。さらに、Cy1が単環式ヘテロアリール、二環式ヘテロアリール、3~8員非芳香族複素環又はC3~8非芳香族炭素環である場合、R5は、前記ヘテロアリール又は環中の炭素又は硫黄原子に結合した二重結合酸素(=O)とすることができる。
【0084】
好ましくは、R5は大きくない置換基である。したがって、R5は、メチル、C1フルオロアルキル、例えば-CF3又は-CHF2、ハロ、シアノ、OH、-OMe、C1~2アルキレンOH、例えばCH2OH、SO2C1~3アルキル、OC1フルオロアルキル(fluroroalkyl)、NH2、NHC1~3アルキル、N(C1~3アルキル)2、ここでC1~3アルキルは同じでも異なってもよい、例えばNMe2、C(O)OH、C(O)OC1~3アルキル、例えばC(O)OMe、NHC(O)C1~3アルキル、例えばNHC(O)Me、N(C1~3アルキル)C(O)C1~3アルキル、C(O)NH2、C(O)NHC1~3アルキル、C(O)N(C1~3アルキル)2、ここでC1~3アルキルは同じでも異なってもよい、例えばC(O)NMe2、C(O)C1~C3アルキル、例えばC(O)Me、NHSO2C1~C3アルキル、N(C1~C3アルキル)SO2C1~C3アルキル、OC2~C3アルキレンN(C1~C3アルキル)2、ここでC1~3アルキルは同じでも異なってもよい、及びC3~8非芳香族炭素環からなる群から選択することができる。より好ましいR5は、メチル、-NH2、フッ素、-CF3、-CHF2、臭素及び塩素からなる群から選択される。
【0085】
ガリエララクトンにおいては、ラクトン又はラクタムの隣の第三級炭素は非置換である(すなわち、R6は水素である)。しかし、更に以下で概説するように、この第三級炭素は、実際には、適切なグリニャール試薬をガリエララクトンのオキソ誘導体に添加し、続いてラクトン化することによって置換することもできることが判明した。したがって、R6は、メチルなどのC1~C5アルキルでもよい。R6は、好ましくは水素又はメチルであり、より好ましくは水素である。R6がC1~C5アルキルである化合物は、水性媒体中の安定性が改善されることが判明した。
【0086】
好ましい化合物の具体例は、
【0087】
【0088】
からなる群から選択される化合物を含む。
【0089】
医薬組成物
本明細書に開示される化合物、例えば式(I)の化合物、又はその好ましい選択物は、従来の医薬組成物、例えば医薬品に処方することができる。一実施形態によれば、したがって、本明細書に開示される化合物と少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0090】
この状況においては、「薬学的に許容される」とは、使用した投与量及び濃度において、投与された患者に望ましくない作用を引き起こさない賦形剤又は担体を意味するものとする。こうした薬学的に許容される担体及び賦形剤は、当該技術分野でよく知られている。さらに、本明細書に記載の医薬組成物は、薬学的に希釈剤、安定剤などを含むこともできる。
【0091】
薬学的に許容される担体は、固体でも液体でもよい。
【0092】
医薬組成物は、一般に、固体又は液体製剤として提供することができる。
【0093】
固体製剤としては、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤などが挙げられるが、それらに限定されない。散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤は、経口投与に適切な固体剤形として使用することができ、一方坐剤は、直腸投与に使用することができる。
【0094】
固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤又は錠剤崩壊剤としても作用し得る1種以上の物質とすることができる。固体担体は、カプセル化材料とすることもできる。適切な担体としては、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0095】
散剤においては、担体は、通常、微粉固体であり、それは、やはり一般に微粉である本明細書に開示される化合物との混合物である。錠剤においては、有効成分を必要な結合性を有する担体と適切な割合で混合し、所望の形状及びサイズに圧縮成形することができる。
【0096】
坐剤組成物を調製するために、脂肪酸グリセリドとカカオ脂の混合物などの低融点ワックスをまず溶融させ、次いで本発明の化合物のような活性成分を、例えば撹拌によって、その中に分散させることができる。次いで、溶融均一混合物を好都合なサイズの型に注入し、冷却し、凝固させることができる。
【0097】
組成物という用語は、カプセルを与える担体としてカプセル化材料を用いた有効成分の処方も含むものとし、(担体と一緒の、又は担体のない)有効成分は、担体で包囲され、したがって担体は有効成分に接している。同様に、カシェ剤も含まれる。
【0098】
液体製剤としては、溶液剤、懸濁液剤及び乳濁液剤が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、滅菌水又は水とプロピレングリコールの混合物中の本明細書に開示される化合物の溶解又は分散は、非経口投与に適切な液体製剤を与えることができる。液体組成物は、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液として処方することもできる。
【0099】
経口投与用水溶液剤は、本発明の化合物のような有効成分を水に溶解し、適切な着色剤、香味剤、安定剤及び増粘剤を所望のとおりに添加することによって調製することができる。経口用水性懸濁液剤は、天然合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、医薬製剤技術に公知の別の懸濁化剤などの粘稠性材料と一緒に、微粉有効成分を水に分散させることによって製造することができる。経口用の例示的組成物は、1種以上の着色剤、甘味剤、香味剤及び/又は防腐剤を含むことができる。
【0100】
本明細書に開示される実施形態に係る医薬組成物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、鼻腔内、皮下、舌下、経直腸的、経口的に、また、吸入、吹入など、ただしそれらに限定されない、様々な経路で投与することができる。
【0101】
投与方法に応じて、医薬組成物は、約0.05wt%(重量パーセント)~約99wt%、例えば約0.10wt%~約50wt%、約0.5wt%~約30、又は約1.0wt%~約25wt%の本明細書に開示される化合物を含むことができ、すべての重量百分率は、組成物の総重量に基づく。
【0102】
療法
本明細書に開示される化合物、例えば式(I)の化合物、又はその好ましい選択物、並びにこうした化合物を含む医薬組成物を、療法に使用することができる。
【0103】
本明細書に開示される化合物、例えば式(I)の化合物、又はその好ましい選択物、並びにこうした化合物を含む医薬組成物は、ヒト又はイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、別の哺乳動物、特に家畜哺乳動物などの哺乳動物における種々の疾患又は症状の処置に使用することができる。ヒトと同じ疾患及び症状について哺乳動物を処置することができる。
【0104】
療法に使用するときには、本明細書の実施形態に係る医薬組成物を患者に薬学的に有効な用量で投与することができる。「薬学的に有効な用量」とは、投与される症状に対して所望の効果を生じるのに十分な用量を意味する。正確な用量は、化合物の活性、投与様式、障害及び/又は疾患の性質及び重症度、並びに患者の年齢及び体重などの一般的条件に依存し得る。
【0105】
本発明の実施のための治療有効量は、当業者が個々の患者の年齢、体重及び反応を含めた公知の基準によって決定することができ、処置又は防止する疾患の状況内で解釈することができる。
【0106】
STAT3シグナル伝達関連障害の処置、癌細胞増殖の阻害、及び癌に関連した免疫抑制機序の阻害
親化合物ガリエララクトン及び関連化合物(国際公開第2012/010555号及び国際公開第2016/193332号参照)は、STAT3の共有結合性阻害剤であり、STAT3に直接結合し、DNA結合を防止すると思われる。上述したように、転写因子STAT3は、種々の癌、例えば、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC:castration resistant prostate cancer)の処置のための極めて有望な標的として出現した。CRPCにおいては、STAT3の恒常的活性化が、薬剤耐性、アンドロゲン非依存性増殖の進行、転移、免疫回避、及び腫瘍増殖に関係する。
【0107】
ガリエララクトンは、実際、DU145前立腺癌細胞の増殖を阻害することが見いだされた(Hellstenら;Prostate 68;269~280、2008参照)。いかなる理論にも拘泥するものではないが、ガリエララクトンは、STAT3関連遺伝子を下方制御することによってアポトーシスを誘導すると考えられる。ガリエララクトンは、癌、例えば前立腺癌である役割を果たす免疫抑制細胞も阻害する。ガリエララクトンは、MDSCマーカーを提示する単球集団のDU145及びLNCaP-IL6+前立腺癌細胞系誘導を阻害できることが示された(「Prostate cancer cell-induced differentiation of human monocytes into MDSCs ex vivo is inhibited by targeting STAT3(「GPA500 inhibits the STAT3 activity and suppresses ENZ-resistant Prostate Cancer in vitro」Rebecka Hellsten、Karin Leandersson、Anders Bjartell及びMartin H.Johansson)。
【0108】
本化合物は、STAT3阻害剤としてガリエララクトンと同等以上の効力のあることが判明した(実験参照)。さらに、それらは、確かに、別の好都合な物理的化学的及び薬物様性質を有する。それらは、したがって、STAT3シグナル伝達関連障害の処置又は防止に使用することができる。特に、本化合物は、癌細胞の増殖を阻害し、腫瘍微小環境に存在し得る免疫細胞の免疫抑制機能を遮断するので、癌の処置に使用することができる。
【0109】
一実施形態は、したがって、STAT3シグナル伝達関連障害の処置又は防止に使用される、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物、例えば式(I)の化合物、又はその好ましい選択物に関する。STAT3シグナル伝達関連障害の例としては、固形癌及び血液癌などの種々の癌、良性腫瘍、過剰増殖疾患、炎症、自己免疫疾患、移植片又は移植拒絶、移植片又は移植組織の生理機能の遅延、神経変性疾患、又は固形癌及び血液癌由来などのウイルス感染症が挙げられる。
【0110】
一実施形態によれば、式(I)の化合物の好ましい選択物は、STAT3転写因子の活性を阻害するのにガリエララクトンよりも効力の大きい式(I)の化合物である。
【0111】
STAT3に対する効果に加えて、ガリエララクトンは、TGF-ベータシグナル伝達を遮断すること(Rudolphら、Cytokine.2013 Jan;61(1):285~96)、及びアレルギー性喘息のインビボマウスモデルにおいて有効であること(Hausdingら、Int Immunol.2011 Jan;23(1):1~15)も示された。
【0112】
STAT3シグナル伝達をそれらが妨害するかしないかにかかわらず、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物を、癌の処置又は防止に使用することができる。別の一実施形態は、したがって、固形癌又は血液癌などの癌の防止又は処置に使用される本明細書に開示される化合物及び医薬組成物に関する。
【0113】
固形癌の例としては、肉腫、乳癌、前立腺癌、頭頚部癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、肺癌、膵癌、子宮頚癌、卵巣癌、黒色腫、胃癌、腎細胞癌、子宮体癌、肉腫及び肝細胞癌が挙げられるが、それらに限定されない。血液癌の例としては、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、未分化大細胞型リンパ腫及びバーキットリンパ腫が挙げられるが、それらに限定されない。
【0114】
さらに、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物によって処置される癌は、一実施形態によれば、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、乳癌、前立腺癌、肺癌(非小細胞)、腎細胞癌、肺癌、肝細胞癌、胆管癌、卵巣癌、膵臓腺癌、黒色腫、神経膠芽腫及び頭頚部扁平上皮癌からなる群から選択される。さらに、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物によって処置される癌は、一実施形態によれば、前立腺癌である。
【0115】
STAT3シグナル伝達をそれらが妨害するかしないかにかかわらず、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物を良性腫瘍の処置又は防止に使用することができる。別の一実施形態は、したがって、例えば心臓粘液腫及びキャッスルマン病を含めて、良性腫瘍の防止又は処置に使用される本明細書に開示される化合物及び医薬組成物に関する。
【0116】
本明細書に開示される化合物及び医薬組成物は、増殖若しくは血管新生を阻害し、アポトーシスを誘導し、アポトーシスに対して感作させ、又は癌幹細胞、例えば、白血病、前立腺及び乳癌幹細胞を含めて、癌細胞の細胞毒性を生じ得る。好ましくは、癌は、高い若しくは異常なSTAT3シグナル伝達若しくは活性、恒常的にリン酸化された若しくは活性なSTAT3、又は高いSTAT3タンパク質発現を示す。一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物は、したがって、細胞の増殖又は移動を阻害するのに使用される。これらの細胞は、高い若しくは異常なSTAT3シグナル伝達若しくは活性、恒常的にリン酸化された若しくは活性なSTAT3、又は高いSTAT3タンパク質発現を示し得る。したがって、過剰増殖疾患などの関連疾患及び障害を、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物を使用して処置又は防止することができる。別の一実施形態は、したがって、過剰増殖疾患の防止又は処置に使用される本明細書に開示される化合物及び医薬組成物に関する。
【0117】
IL-6は、STAT3シグナル伝達にしばしば関与する。STAT3シグナル伝達の効果に関与する、しないとは無関係に、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物は、急性期タンパク質の産生に関連した疾患及び障害などのIL-6媒介炎症及び/又は自己免疫疾患及び障害の処置又は防止に使用することができる。別の一実施形態は、したがって、IL-6媒介炎症及び/又は自己免疫疾患及び障害の防止又は処置に使用される本明細書に開示される化合物及び医薬組成物に関する。こうした疾患及び障害としては、アテローム性動脈硬化症、2型糖尿病、認知症、骨粗しょう症、高血圧症、冠動脈疾患、肥満が挙げられるが、それらに限定されない。
【0118】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物は、関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、アレルギー、例えばアトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス、ぶどう膜炎及びCOPDを含めて、ただしそれらに限定されない、炎症性及び/又は自己免疫疾患の防止又は処置に使用される。さらに、本発明の化合物は、移植片及び移植拒絶の抑制に、又は移植後のこうした移植片及び移植組織の生理機能の開始の改善に使用することができる。
【0119】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物は、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、脳卒中及び虚血再潅流傷害を含めて、ただしそれらに限定されない、CNSに影響する炎症性、自己免疫性及び神経変性疾患の防止又は処置に使用される。
【0120】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物は、C型肝炎、ヘルペス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV:Kaposis Sarcoma-associated herpes virus)に起因する感染症、及びエプスタインバーウイルス関連感染症を含めて、ただしそれらに限定されない、慢性ウイルス感染症の防止又は処置に使用される。
【0121】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物は、乾癬を含めて、ただしそれに限定されない、過剰増殖疾患の防止又は処置である。
【0122】
療法に使用するときには、本明細書の実施形態に係る医薬組成物を、患者に薬学的に有効な用量で投与することができる。「薬学的に有効な用量」とは、投与される症状に対して所望の効果を生じるのに十分な用量を意味する。特定の疾患又は障害の治療又は予防処置に必要な用量は、処置される宿主、投与経路、及び処置される疾病の重症度に応じて必然的に変わる。さらに、正確な用量は、化合物の活性、投与様式、障害及び/又は疾患の性質及び重症度、並びに患者の年齢及び体重などの一般的条件に依存し得る。
【0123】
本発明の実施のための治療有効量は、当業者が個々の患者の年齢、体重及び反応を含めた公知の基準によって決定することができ、処置又は防止する疾患の状況内で解釈することができる。
【0124】
明白なことではあるが、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物は、本明細書に開示されるこうした処置及び防止に使用される医薬品の製造に使用することができる。
【0125】
同様に、本明細書に開示される化合物及び組成物は、本明細書に開示されたこうした疾患及び障害を処置又は防止する方法に使用できることも明らかである。こうした方法は、有効量の化合物又は医薬組成物をこうした処置を必要とする対象に投与するステップを含む。
【0126】
本明細書の文脈において「療法」及び「処置」という用語は、それと反対の具体的表示がない限り、防止又は予防を含む。「治療学的」及び「治療学的に」という用語は、それにしたがって解釈されるべきである。
【0127】
一実施形態によれば、処置は、前処置、すなわち予防処置も包含する。
【0128】
本明細書で使用するとき、「防止する/防止すること」は、防止するための本明細書に開示される実施形態に係る化合物又は医薬組成物の使用後に、症状及び/又は疾患が決して再度発生しない可能性があることを意味すると解釈されるべきではない。さらに、この用語は、前記症状を防止するこうした使用の後に、症状が少なくともある程度起こらない可能性があることを意味すると解釈されるべきでもない。そうではなく、「防止する/防止すること」とは、防止すべき症状が、こうした使用にもかかわらず発生した場合、こうした使用のない場合よりも重篤ではないことを意味するものとする。
【0129】
併用療法
既述のように、本明細書に開示される医薬組成物は、療法に使用することができ、開示される化合物、例えば式(I)の化合物、又はその好ましい選択物は、主要な治療薬として作用する。
【0130】
しかし、開示される化合物のいずれかに、追加の治療有効薬剤(単数又は複数)を補充することもできる。一実施形態によれば、本医薬組成物は、まさに、1種以上の追加の治療薬(単数又は複数)を含む。好ましくは、1種以上の追加の治療薬は、本明細書に開示される化合物の作用機序とは異なる作用機序を有する治療薬の中から選択される。その場合、治療薬と本明細書に開示される化合物との有利な相乗効果が生じる可能性があり、こうした治療薬又は本明細書に開示される化合物のみが使用される場合よりも、例えば疾患との戦いをより有効にすることができる。追加の治療薬は、抗癌剤、例えば化学療法剤とすることができる。さらに、本明細書に記載の別の疾患及び症状に有効である、当該技術分野でよく知られている別の治療薬も、例えば相乗効果を得るために、本明細書に開示される化合物と有利に併用することができる。
【0131】
一実施形態によれば、本明細書に開示される化合物又は医薬組成物は、化学療法、免疫療法、放射線療法、遺伝子療法、細胞療法及び手術を含めて、別の処置又は療法、特に癌治療と併用される。一例として、本明細書に開示される化合物は、抗腫瘍性免疫介在性細胞毒性を高め、又は抵抗性を逆転させることができる。したがって、本明細書に開示される化合物と別の処置若しくは療法又は免疫介在性反応との相乗効果が都合良く生じ得る。
【0132】
一実施形態によれば、本明細書の実施形態に係る医薬組成物は、単独で、又は別の治療薬と組み合わせて、投与することができる。これらの薬剤は、同じ医薬組成物の一部として組み込むことができ、又は別々に投与することができる。同じ医薬品における機構的に無関係な治療薬の組合せが、例えば、異常な免疫調節、異常な血球新生、炎症又は発癌を特徴とする症状又は疾患の処置において有益な効果を有し得ることは、当該技術分野でよく知られている。
【0133】
別の治療薬の例としては、Abraxane、アビラテロン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、三酸化ヒ素、アザシチジン、ベンダムスチン塩酸塩、ベバシズマブ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、ブレオマイシン、カバジタキセル、カペシタビン、カルボプラチン、セツキシマブ、シスプラチン、クロファラビン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デガレリクス、デニロイキン ジフチトクス、デクスラゾキサン塩酸塩、ドセタキセル、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、エルトロンボパグ オラミン、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、エルロチニブ塩酸塩、エトポシド、リン酸エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、フィルグラスチム、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、イブリツモマブ チウキセタン、メシル酸イマチニブ、イミキモド、イリノテカン塩酸塩、イクサベピロン、トシル酸ラパチニブ、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイプロリド酢酸塩、リポソームシタラビン、メトトレキサート、ネララビン、ニロチニブ、オファツムマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パニツムマブ、パゾパニブ塩酸塩、ペガスパルガーゼ、ペメトレキセドジナトリウム、プレリキサホル、プララトレキサート、ラロキシフェン塩酸塩、ラスブリカーゼ、組換えHPV二価ワクチン、組換えHPV四価ワクチン、リツキシマブ、ロミデプシン、ロミプロスチム、シプロイセル-T、ソラフェニブトシル酸塩、スニチニブリンゴ酸塩、タルク、クエン酸タモキシフェン、タスキニモド、TAK700、テモゾロマイド、テムシロリムス、サリドマイド、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トシツモマブ及びI131ヨウ素トシツモマブ、トラスツヅマブ、ビンクリスチン硫酸塩、ボリノスタット、ARN-509、ODM-201、クスチルセン、AT101、シスプラチン、アボザンチニブ(abozantinib)、ダサチニブ、MK2206、アキシチニブ、サラカチニブ、チバンチニブ、リンシチニブ、GSK2636771、BKM120、ボリノスタット、パノビノスタット、アザシチジン、IPI-504、STA9090、レナリドミド、OGX-427、ゾレドロン酸及びXofigo、MEDI4736、トレメリムマブ、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブなどの抗癌剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【0134】
本明細書に開示される実施形態に係る化合物を、医薬品などの医薬組成物中で抗癌剤などの少なくとも別の治療薬と組み合わせるときには、治療有効量の医薬組成物は、同じ疾患又は症状の防止又は処置に単独で投与されるときの成分、すなわち本発明に係る化合物又は治療薬のそれぞれの確立された治療有効量の1~1/10倍を含むことができる。
【0135】
したがって、本明細書に開示される実施形態に係る化合物を抗癌剤などの別の治療薬と組み合わせることによって、本発明に係る化合物、又は別の治療薬のみが、単独で投与された場合に比べて、相乗効果を得ることが可能であり得る。
【0136】
例えば、本明細書に開示される化合物、例えば式(I)の化合物は、薬剤耐性を逆転させ、奏効率を高め、及び/又は抗癌剤の効果を高めるのに使用することができ、したがって副作用を回避するために抗癌剤の用量を減少させる可能性をもたらし、並びに/又は効力及び奏効率を高めることができる。
【0137】
調製方法
本発明の別の一実施形態は、式(I)の化合物を調製するプロセスに関する。さらに、更なる実施形態は、式(I)の化合物の合成に有用である合成中間体に関係する。こうした中間体の具体的及び一般的例については後述する。さらに、こうした中間体は、式(I)の別の化合物を製造するのに使用することができる式(I)の化合物を含むことができる。
【0138】
こうしたプロセスの以下の記述を通して、適切な場合は、有機合成の当業者によって容易に理解される様式で、適切な保護基が種々の反応物及び中間体に付加され、続いてそれから除去されることを理解されたい。こうした保護基を使用する従来の手順及び適切な保護基の例は、当該技術分野でよく知られている。さらに、こうした手順及び基は、「Protective Groups in Organic Synthesis」、3版、T.W.Green、P.G.M.Wuts、Wiley-Interscience、ニューヨーク(1999)などの文献に記載されている。
【0139】
化学操作による基又は置換基の別の基又は置換基への変換は、最終生成物に向かう合成経路上で任意の中間体又は最終生成物に対して行うことができ、可能な変換タイプは、その段階の分子が保有する別の官能基の固有の不適合性によってのみ、変換に使用される条件又は試薬に限定されることも理解されたい。こうした固有の不適合性、並びに適切な変換及び合成ステップを適切な順序で行うことによってそれらを回避する方法は、有機合成の当業者に容易に理解されるであろう。
【0140】
変換の例については後述するが、記述された変換は、変換が例示された一般的な基又は置換基のみに限定されないことを理解されたい。
【0141】
他の適切な変換についての参考文献及び記述は、例えば、「Comprehensive Organic Transformations - A Guide to Functional Group Preparations」、2版、R.C.Larock、Wiley-VCH、ニューヨーク(1999)にある。他の適切な反応の参考文献及び記述は、「March’s Advanced Organic Chemistry」、5版、M.B.Smith、J.March、John Wiley&Sons(2001)又は「Organic Synthesis」、2版、M.B.Smith、McGraw-Hill、(2002)などの当業者に周知の有機化学の教科書に記載されている。
【0142】
中間体及び最終生成物の精製技術としては、例えば、当業者によって容易に理解される、カラム又は回転プレート上の順相及び逆相クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、再結晶化、蒸留、並びに液体-液体又は固体-液体抽出が挙げられる。
【0143】
「室温」及び「周囲温度」という用語は、別段の記載がない限り、温度16~25℃を意味するものとする。「還流」という用語は、別段の記載がない限り、指定溶媒の沸点と同じ又はそれよりもわずかに高い温度を用いて使用溶媒に関して意味するものとする。マイクロ波を反応混合物の加熱に使用することができると理解される。
【0144】
「フラッシュクロマトグラフィ」又は「フラッシュカラムクロマトグラフィ」という用語は、有機溶媒又はその混合物を移動相として用いたシリカ上の分取クロマトグラフィを意味するものとする。
【0145】
以下の種々のスキームにおいては、R基などの一般的な基は、特に定義しない場合、本明細書で上述したのと同じものを表す。
【0146】
STAT3阻害化合物ガリエララクトンのC-4位(すなわち、メチル基で置換された位置)は、イソガリエララクトンから始まりセレン試薬を用いて官能性を持たせることができるが、この変換は立体中心を反転させることが示されている(PCT/EP2016/062437参照)。
【0147】
興味深いことに、イソガリエララクトンをアジリジン化試薬、続いて適切な塩基で逐次処理すると、スルホンアミド基がC-4位に導入され、メチル基の相対立体配置が保持されることが見いだされた。
【0148】
【0149】
この反応は、ガリエララクトンの4位へのスルホンアミド基の立体選択的付加を可能にし、したがって性質が改善された新規ガリエララクトン系STAT3阻害剤を合成することができる。
【0150】
驚くべきことに、イソガリエララクトンをアリル酸化の標準条件下で(ジオキサン又はTHF中、周囲温度以上で)SeO2で処理すると、所望のアリルアルコールもアルデヒドも得られなかった。しかし、イソガリエララクトンの希釈溶液をベンゼン(0.05M以下)中でSeO2と一緒に加熱すると、所望のアルデヒドが生成する。
【0151】
【0152】
したがって、これらの反応条件を使用して酸化中間体を調製し、これを更に誘導体化して、構造IのSTAT3阻害剤を製造することができる。
【0153】
N-クロロ-スルホンアミド中間体IIIを用いたIIのアジリジン化とそれに続く塩基処理による式Iの最終化合物の調製方法(スキーム1)
【0154】
【0155】
式Iの化合物の形成は、適切な触媒、例えばI2又はPhN+Me3BR3
-の存在下で、周囲条件下で、中間体N-クロロスルホンアミドIIIを(塩又は親化合物として)用いてIIをアジリジン化し、続いて、単離してもしなくてもよい中間体IVを適切な塩基で処理して、位置選択的アジリジン開環を行うことによって、達成することができる。
【0156】
N-ヨード-スルホンアミド中間体Vを用いたIIのアジリジン化とそれに続く塩基処理による式Iの最終化合物の調製方法(スキーム2)
【0157】
【0158】
式Iの化合物の形成は、適切な触媒、例えばCu(CF3SO3)2の存在下で、適切な条件下で、中間体N-ヨードアリールVを用いてIIをアジリジン化し、続いて適切な塩基で処理して、位置選択的アジリジン開環を行うことによって、達成することができる。
【0159】
式IIIの中間体の調製方法(スキーム3)
【0160】
【0161】
式IIIの中間体は、例えば、水酸化ナトリウムの存在下で次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸tertブチルで処理することによって、VIから調製することができ、ナトリウム塩として単離することができる。
【0162】
式IIの中間体の調製方法(スキーム4)
【0163】
【0164】
スキーム4に模式的に示したように、イソガリエララクトン及びその誘導体中のメチル基を、様々な方法で官能化することができる。一例として、
【0165】
-中間体IIb(R1=-CH2Br)、IIf(R1=-C(O)H)及びIId(R1=-CH2OH)は、それぞれ、NBSを用いたラジカルアリル臭素化、及びSeO2を用いたアリルヒドロキシル化によって調製することができる。
【0166】
-アルコールIIdは、IIbのヒドロキシル化によっても調製することもできる。
【0167】
-アルコールIIdは、適切な酸化試薬を使用して、カルボン酸IIe及びアルデヒドIIfに酸化することができる。
【0168】
-エステルIIc及びアミドIIkは、それぞれ、IIeからアルコール及びアミンのそれへのカップリングによって調製することができる。
【0169】
-アルケンIIg及びアルキンIIHは、アルデヒドIIfから調製することができる。
【0170】
-アミンIIjは、IIb及びIId及びアミンから出発した求核置換反応によって、又はアルデヒドIIfとアミンとの間の還元的アミノ化によって、調製することができる。
【0171】
式IIの中間体の調製方法(スキーム5)
【0172】
【0173】
式IIの中間体は、適切な塩基、例えばDBUで処理して、式VIIの化合物の異性化によって調製することができる。式VIIの化合物は、Organic Letters 12、22、5100~3510 2010及びJournal of Antibiotics 55、7、663~665 2002に記載の合成法によって調製することができる。
【0174】
スルホンアミド加水分解とそれに続くスルホニル化による式Iの最終化合物の調製方法(スキーム6)
【0175】
【0176】
式VIIIの中間体は、Rが例えばtert-ブチル、-4-メチルフェニル、-4-ニトロフェニル、-2,4-ジニトロフェニルである式Iの化合物のスルホンアミド加水分解又は開裂によって調製することができる。Rがtert-ブチルであるときには、トリフリック酸及びアニソールを使用することができる。Rが-4-メチルフェニルであるときには、ナトリウム/NH3、HBr/HOAc又はSmI2を使用することができる。Rが-4-ニトロフェニル又は-2,4-ジニトロフェニルであるときには、チオフェノールを使用することができる。構造Iの最終化合物は、構造IXの塩化スルホニルを用いた中間体VIIIのスルホニル化によって調製することができる。
【0177】
ラクトン加水分解とそれに続く逐次酸化/グリニャール付加反応による式Iの最終化合物の調製方法(スキーム7)
【0178】
【0179】
式Xの中間体は、適切な塩基(例えば、トリメチルアミン)を用いたメタノール中のラクトン加水分解によって調製することができる。次の中間体XIは、第二級ヒドロキシル基からケトンへの酸化によって調製することができる。スワーン酸化条件、TEMPO酸化を使用することができる。構造Iの最終化合物は、R6がC1~C5アルキルであり、XがCl、Br又はIである、適切なグリニャール試薬の添加によって調製することができる。
【0180】
還元的アミノ化反応による式Iの最終化合物の調製方法(スキーム8)
【0181】
【0182】
構造Iの最終化合物は、適切なアミン(例えば、ベンジルアミン)を還元剤(例えば、NaBH4、NaCNBH3又はNaBH(OAc)3)と順次又は同時に添加する還元的アミノ化によって、イミン形成を誘導する薬剤を用いて、又は用いずに、構造XIの中間体から調製することができる。
【0183】
化合物例
略語
AIBN アゾビスイソブチロニトリル
AZADO 2-アザ-アダマンタン-N-オキシル
DBU 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
DMF N,N’-ジメチルホルムアミド
DMP デス-マーチンペルヨージナン
NBS N-ブロモスクシンイミド
THF テトラヒドロフラン
DMSO ジメチルスルホキシド
sat 飽和水溶液
Boc t-ブトキシカルボニル
TFA トリフルオロ酢酸
DMAP 4-ジメチルアミノピリジン
h 時間
r.t. 室温
equiv 当量
quant 定量(quantative)
aq 水溶液
Ph フェニル
tol トルエン
pyr ピリジン
【0184】
一般材料及び方法
分取HPLCを、UV検出器を備えたGilsonシステムで、XBridge Prep C-18 5μm OBD、19x50mmカラムを用いて行った。分析HPLC-MSを、エレクトロスプレーインターフェース及びUVダイオードアレイ検出器を備えたAgilent 1100シリーズ液体クロマトグラフ/質量選択検出器(MSD:Mass Selective Detector)(単一四重極)を用いて行った。ACE3C8(3.0×50mm)カラムを用いて0.1%TFA水溶液中のアセトニトリルの勾配で3分間及び流量1mL/min、又はXbridge C18(3.0×50mm)カラムを用いて10mM炭酸水素アンモニウム中のアセトニトリルの勾配で3分間及び流量1mL/minの2つの方法で分析を行った。1H-NMRスペクトルを、Varian400MHz装置を用いて25℃で記録した。化合物を、ソフトウェアMarvinSketch14.11.24.0を用いて命名した。さらに、商品名又は慣用名を、市販出発材料及び試薬に使用した。
【0185】
中間体の調製
以下は、式Iの化合物の調製に有用な中間体の合成の非限定的例である。
【0186】
中間体1
ナトリウムN-クロロ-2-ニトロ-ベンゼンスルホンアミド
【0187】
【0188】
水(1.2mL)中の水酸化ナトリウム(98.9mg、2.47mmol)の撹拌溶液に、2-ニトロベンゼンスルホンアミド(0.50g、2.47mmol)を0℃で添加した。次いで、反応混合物に次亜塩素酸ナトリウム(11~14%)(1.6mL、2.6mmol)を0℃で添加した。次いで、反応物を室温で67時間撹拌した。沈殿を濾別し、水で洗浄し、乾燥させて、生成物360mg(56%)を白色固体として得た。LCMSm/z235[M-H]--Na。
【0189】
ナトリウムN-クロロ-2-ニトロ-ベンゼンスルホンアミド(1)の場合に記述したように中間体2~12を調製した。反応時間は一般に4~48時間であり、反応をLCMSで追跡した。
【0190】
【0191】
方法B
中間体14
次亜塩素酸tert-ブチル
【0192】
【0193】
生成物は熱及び光に敏感なので、反応及び後処理を暗所で爆発遮蔽物の後で行った。激しく撹拌したNaOCl溶液(1.39mL、2.70mmol)(11~14%)に0℃で2-メチルプロパン-2-オール(7)(254uL、2.70mmol)と酢酸(164uL、2.83mmol)との混合物を一括添加した。反応物を0℃で15分間激しく撹拌した。反応物を分液漏斗に注いだ。有機相(生成物)を分離し、10%炭酸カリウム水溶液で連続的に洗浄し、塩化カルシウムを用いて脱水して、生成物約190μLを黄色液体として得た。次のステップに更に精製せずに使用した。
【0194】
中間体15
ナトリウムN-クロロ-5-メチル-ピリジン-2-スルホンアミド
【0195】
【0196】
1M NaOH水溶液(0.63mL、0.63mmol)中の5-メチルピリジン-2-スルホンアミド(109mg、0.63mmol)の混合物に、次亜塩素酸tert-ブチル(86uL、0.76mmol)を添加し、反応物を、室温で1.5時間暗所で撹拌した。反応物を乾燥させ、所望の生成物をジエチルエーテルで洗浄し、減圧乾燥して、粗生成物を得た。次のステップに更に精製せずに使用した。反応は定量的収率を与えたと考えられた。LCMSm/z207[M+H]+-Na。
【0197】
ナトリウムN-クロロ-5-メチル-ピリジン-2-スルホンアミド(15)の場合に記述したように中間体16~18を調製した。反応時間は一般に1~5時間であり、反応をLCMSで追跡した。
【0198】
【0199】
中間体19
ナトリウムN-クロロ-4-(4,5-ジヒドロオキサゾル-2-イル)ベンゼンスルホンアミド
【0200】
【0201】
a)4-(4,5-ジヒドロオキサゾル-2-イル)ベンゼンスルホンアミド
参考文献:J.Org.Chem.2014、79、8668~8677.
メタノール(2mL)溶液に2-アミノエタノール(0.83mL、13.7mmol)及び炭酸カリウム(379mg、2.74mmol)を添加し、溶液を30分間撹拌した。4-シアノベンゼンスルホンアミド(0.50g、2.74mmol)を添加し、反応物を80℃で24時間撹拌した。メタノールを減圧除去し、2M NH4Cl(aq.)を添加し、沈殿を濾別し、水及びジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させて、粗生成物556mg(90%)を得た。LCMS(ESI+)m/z225[M-H]-。
【0202】
b)ナトリウムN-クロロ-4-(4,5-ジヒドロオキサゾル-2-イル)ベンゼンスルホンアミド
ナトリウムN-クロロ-2-ニトロ-ベンゼンスルホンアミドに従って調製した。4-(4,5-ジヒドロオキサゾル-2-イル)ベンゼンスルホンアミド(154mg、0.68mmol)から出発して標記化合物90mg(47%)を得た。LCMS(ESI+)m/z261[M+H]+-Na。
【0203】
最終化合物の調製
実施例1
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-4-メチルベンゼン-1-スルホンアミド
【0204】
【0205】
a)(1R,4R,8R,10S,12S)-12-ヒドロキシ-10-メチル-9-[(4-スルホンアミド)スルホニル]-5-オキサ-9-アザテトラシクロ[5.4.1.04,12.08,10]ドデカン-6-オン
参考文献:Org.Biomol.Chem.2008、6、4299~4314.
窒素下でイソガリエララクトン((4R,7R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-9-エン-2-オン)(414mg、2.13mmol、1当量)及びクロラミン-T(660mg、2.35mmol)をアセトニトリル(5mL)中に懸濁させた。次いで、トリメチルフェニルアンモニウム三臭化物(80mg、0.21mmol)を撹拌下添加し、反応物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、粗製物をそのまま次のステップに使用した。
【0206】
b)N-[(4R,7R,9S,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-4-メチルベンゼン-1-スルホンアミド
窒素下で(1R,4R,8R,10S,12S)-12-ヒドロキシ-10-メチル-9-[(4-スルホンアミド)スルホニル]-5-オキサ-9-アザテトラシクロ[5.4.1.04,12.08,10]ドデカン-6-オン(774mg、2.13mmol)の濃縮反応混合物にTHF(5mL)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(0.32mL、2.13mmol)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。ジクロロメタンを反応混合物に添加した。次いで、有機相を1M HCl水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、濾過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィ(溶離剤:EtOAc:ヘプトラン(Heptrane)2:1)によって精製した。生成物を含む画分を収集し、濃縮した。しかし、完全に純粋な画分はなく、画分は副生物を含んだ([M+H]+=535、[M-H]-=533)。濃縮画分をアセトニトリルに溶解し、分取HPLC(溶離剤:アセトニトリル5%~35%/TFA(aq(0.1%))によって精製した。画分を素早く収集し、室温で減圧濃縮した。ジクロロメタンを添加し、水相をCH2Cl2で2回抽出した。有機相をMgSO4で脱水し、濾過し、濃縮して、生成物200mg(収率26%、純度99%)を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3):δ=1.28(s、1H)、1.34(s、3H)、1.69(m、2H)、1.81(m、1H)、2.06(m、1H)、2.25(m、2H)、2.42(s、3H)、2.50(m、1H)、2.75(dd、J=15.44Hz、J=6.18Hz、1H)、3.83(dd、J=8.17Hz、J=2.30Hz、1H)、5.16(、1H、NH)、6.33(s、1H)、7.30(d、J=8.29Hz、2H)、7.67(d、J=8.29Hz、2H)。LCMS(ESI+)m/z362[M-H]-。
【0207】
以下は、式Iの最終化合物の合成の非限定的例である。
【0208】
一般的方法
一般的方法A
下記スキーム7には、実施例2~20を提供するのに用いた4-Nガリエララクトンスルホンアミドの合成の一般的手順を示す。
【0209】
【0210】
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-4-メチルベンゼン-1-スルホンアミド(実施例1)の場合に記述したように実施例2~20を調製した。一般に、生成物を分取HPLCによって精製した。
【0211】
イソガリエララクトン(1.0当量)及び対応するN-クロロスルホンアミド(1.1当量)をアセトニトリルに懸濁させた。次いで、トリメチルフェニルアンモニウム三臭化物(0.1当量)を撹拌下添加し、反応物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、粗製物をそのまま次のステップに使用した。
【0212】
前のステップからの濃縮粗製反応生成物をTHFに窒素雰囲気で溶解し、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(1.0当量)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。ジクロロメタンを反応混合物に添加した。次いで、有機相を1M HCl水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、濾過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィ(溶離剤:EtOAc:ヘプトラン(Heptrane)2:1)によって精製したか又は分取HPLC(溶離剤:アセトニトリル5%~35%/TFA(aq(0.1%))によって精製した。
【0213】
(各化合物の収率及び分析データ)。
【0214】
表4 実施例2~20
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0215】
実施例21
4-アミノ-N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]ベンゼン-1-スルホンアミド
【0216】
【0217】
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-4-ニトロベンゼン-1-スルホンアミド(16.4mg、0.042mmol)を無水DMF(0.04mL)中で混合し、塩化スズ(II)二水和物(187.7mg、0.832mmol)を添加した。反応混合物を室温で終夜撹拌した。アセトニトリルを反応混合物に添加し、粗生成物をアセトニトリル(勾配5~35%で12分):TFA(aq(0.1%)を用いて分取HPLCによって精製した。生成物を収集し、CH2Cl2で抽出した(3×)。有機相を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧濃縮して、標記化合物15mg(98%)を得た。LCMS(ESI+)m/z363[M-H]-。
【0218】
実施例22
【0219】
【0220】
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-4-(ヒドロキシメチル)ベンゼン-1-スルホンアミド
【0221】
【0222】
a)4-(ブロモメチル)-N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]ベンゼン-1-スルホンアミド
四塩化炭素(3mL)中のN-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-4-メチルベンゼン-1-スルホンアミド(30.0mg、0.080mmol)の懸濁液を排気し、窒素を数回充填した。次いで、NBS(16.9mg、0.090mmol)及びAIBN(1.3mg、0.01mmol)を添加し、反応物を窒素下で2時間加熱還流させた。約70%転化(254nm)及び幾らかの二臭素化生成物も形成された(約15%)。反応を停止し、蒸発させた。アセトニトリルを添加し、粗製物を分取HPLC(0.1%TFA20~50/アセトニトリル、ACEカラム)によって精製した。収集画分をCH2Cl2で抽出した(3×)。混合有機相を水及び塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、濃縮して、生成物10.5mg(27%)を得た。LCMS(ESI+)m/z440、442[M-H]-。
【0223】
b)N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-4-(ヒドロキシメチル)ベンゼン-1-スルホンアミド
4-(ブロモメチル)-N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]ベンゼン-1-スルホンアミド(7.35mg、0.02mmol)の無水DMF(0.04mL)溶液を、ニトロメタン(0.1mL)中のAgBF4(4.21mg、0.02mmol)撹拌溶液に窒素下で添加した。反応物を室温で終夜撹拌した。LCMSに従って終了した。(LCMS(ESI+)m/z406[M-H]-)。ベンジル型アルコールの幾らかも第1ステップで認められた(LCMS(ESI+)m/z378[M-H]-)。混合物をほぼ乾燥状態まで濃縮し、メタノール(0.2mL)、続いてシュウ酸(8.1mg、0.09mmol)を添加し、反応物を室温で窒素下2.5時間撹拌した。アセトニトリルに溶解し、アセトニトリル(勾配5~45%で12分):TFA(aq(0.1%)を用いて分取HPLCによって精製した。生成物を含む画分を収集し、CH2Cl2で抽出した(3×)。有機相を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧濃縮して、標記化合物3.2mg(50%)を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3):δ=7.61(d、J=8.9Hz、2H)、6.87(d、J=8.9Hz、2H)、6.20(s、1H)、5.18(s、1H)、4.82(dd、J=8.1Hz、J=2.1Hz、1H)、2.71(dd、J=15.1Hz、J=6.4Hz、1H)、2.46(m、1H)、2.03(m、1H)、1.95(s、2H)、1.76(m、1H)、1.65(m、2H)、1.31(s、3H)、1.23(m、1H)。LCMS(ESI+)m/z378[M-H]-。
【0224】
実施例23
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-N,4-ジメチルベンゼン-1-スルホンアミド
【0225】
【0226】
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-4-メチルベンゼン-1-スルホンアミド(12.6mg、0.03mmol)のDMF溶液に、ヨウ化メチル(0.mL、0.0300mmol)及び炭酸カリウム(4.79mg、0.03mmol)を添加した。反応混合物を20時間室温で撹拌し、次いでCeliteのパッドに通して濾過し、濃縮乾固させて、標記化合物12mg(91%)を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3):δ=7.67(d、J=8.4Hz、2H)、7.33(d、J=8.4Hz、2H)、6.68(s、1H)、4.81(dd、J=7.5Hz、J=3.38Hz、1H)、2.95(s、3H)、2.73(dd、J=14.9Hz、J=6.4Hz、1H)、2.47(m、1H)、2.44(s、3H)、2.08(m、1H)、1.91(m、1H)、1.69~1.56(m、2H)、1.42(s、3H)、1.32(s、1H)、LCMS(ESI+)m/z376[M-H]-。
【0227】
実施例24
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]プロパン-2-スルホンアミド
4.0mg(12%)、314[M-H]-
【0228】
【0229】
実施例25
【0230】
【0231】
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-3-[(4-メトキシフェニル)メチル]-9-メチル-2-オキソ-3-アザトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-4-メチルベンゼン-1-スルホンアミド
【0232】
【0233】
a)メチル(3R,3aS,6R,7aR)-3,3a-ジヒドロキシ-6-メチル-6-(4-メチルベンゼンスルホンアミド)-2,3,3a,6,7,7a-ヘキサヒドロ-1H-インデン-4-カルボキシラート
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-4-メチルベンゼン-1-スルホンアミド(83mg、0.23mmol)を、4Å分子ふるいを含む無水メタノール(0.5mL)に溶解した。トリエチルアミン(0.064mL、1.53mmol)を添加し、混合物を室温で24時間撹拌した。残留物を濃縮し、減圧乾燥して(8時間)、粗生成物(HPLC純度67%)を得た。粗生成物を更に精製せずに次の段階に直接使用した。
LCMS(ESI+)m/z413[M+OH+H]+、LCMS(ESI-)m/z394[M-H]-。
【0234】
b)メチル(3aS,6R,7aR)-3a-ヒドロキシ-6-メチル-6-(4-メチルベンゼンスルホンアミド)-3-オキソ-2,3,3a,6,7,7a-ヘキサヒドロ-1H-インデン-4-カルボキシラート
メチル(3R,3aS,6R,7aR)-3,3a-ジヒドロキシ-6-メチル-6-(4-メチルベンゼンスルホンアミド)-2,3,3a,6,7,7a-ヘキサヒドロ-1H-インデン-4-カルボキシラート(90mg、0.23mmol)とデス-マーチンペルヨージナン(DMP)(212mg、0.50mmol)の粗製反応混合物を、無水CH2Cl2(0.5mL)に溶解した。次いで、CH2Cl2(0.1mL)と混合された水(4μL、0.23mmol)を徐々に添加した。透明溶液は、添加終了近くで濁った。混合物を室温で4時間撹拌した。残留物をCH2Cl2 30mLに取り、NaHCO3飽和水溶液15mL、続いて水10mL及び塩水10mLで洗浄した。有機層を濃縮した。アセトニトリルに溶解し、アセトニトリル(勾配5~45%で12分):50mM NH4HCO3/NH3 pH10を用いて分取HPLCによって精製した。生成物を含む画分をすぐに収集し、CH2Cl2(3×10mL)で抽出した。有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧濃縮し、減圧乾燥して、標記化合物41mg(46%)を得た。LCMS(ESI+)m/z411[M+OH+H]+、LCMS(ESI-):m/z392[M-H]-。
【0235】
c)N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-3-[(4-メトキシフェニル)メチル]-9-メチル-2-オキソ-3-アザトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-4-メチルベンゼン-1-スルホンアミド
メチル(3aS,6R,7aR)-3a-ヒドロキシ-6-メチル-6-(4-メチルベンゼンスルホンアミド)-3-オキソ-2,3,3a,6,7,7a-ヘキサヒドロ-1H-インデン-4-カルボキシラート(41mg、0.10mmol)をTHF(0.5mL)に溶解した。(4-メトキシフェニル)メタンアミン(0.014mL、0.10mmol)及び酢酸(0.06mL、0.10mmol)を添加した。反応混合物を、蓋をしたフラスコ中で室温で9時間撹拌した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(24mg、0.11mmol)を添加し、混合物を更に24時間室温で撹拌した。反応混合物を濃縮し、アセトニトリルに溶解し、アセトニトリル(勾配5~45%で12分):50mM NH4HCO3/NH3 pH10を用いて分取HPLCによって精製した。生成物を含む画分をすぐに収集し、ジクロロメタン(3×10mL)で抽出した。有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧濃縮し、減圧乾燥して(2日間)、標記化合物5.5mg(11%)を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.65(m、2H)、7.26(m、2H)、7.12(m、1H)、6.79(m、1H)、6.13(s、1H)、4.70(m、1H)、4.10(m、1H)、3.76(m、1H)、3.74(s、1H)、3.72(s、3H)、3.67(m、1H)、2.62(m、1H)、2.36(s、3H)、2.35~2.31(m、1H)、1.74~1.63(m、2H)、1.51(m、1H)、1.47~1.36(m、1H)、1.26(s、3H)、1.21~1.18(m、1H)。
LCMS(ESI+)m/z483[M+H]+、LCMS(ESI-)m/z481[M-H]-。
【0236】
実施例26
【0237】
【0238】
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-3-[(4-メトキシフェニル)メチル]-9-メチル-2-オキソ-3-アザトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2スルホンアミド
【0239】
【0240】
a)メチル(3R,3aS,6R,7aR)-3,3a-ジヒドロキシ-6-メチル-6-[5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-スルホンアミド]-2,3,3a,6,7,7a-ヘキサヒドロ-1H-インデン-4-カルボキシラート
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-スルホンアミド(320mg、0.76mmol)を、4Å分子ふるいを含む無水メタノール(2mL)に溶解した。トリエチルアミン(0.213mL、1.53mmol)を添加し、混合物を室温で24時間撹拌した。残留物を濃縮し、減圧乾燥して(8時間)、粗生成物(HPLC純度83%)を得た。粗生成物を更に精製せずに次の段階に直接使用した。
LCMS(ESI+)m/z451[M+H]+、LCMS(ESI-)m/z449[M-H]-。
【0241】
b)メチル(3aS,6R,7aR)-3a-ヒドロキシ-6-メチル-3-オキソ-6-[5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-スルホンアミド]-2,3,3a,6,7,7a-ヘキサヒドロ-1H-インデン-4-カルボキシラート
KBr(17mg、0.14mmol)及びBu4NBr(75mg、0.23mmol)を含むCH2Cl2(7.4mL)及びNaHCO3飽和水溶液(2.1mL)中のメチル(3R,3aS,6R,7aR)-3,3a-ジヒドロキシ-6-メチル-6-[5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-スルホンアミド]-2,3,3a,6,7,7a-ヘキサヒドロ-1H-インデン-4-カルボキシラート(652mg、1.45mmol)とAZADO(22mg、0.14mmol)との撹拌混合物に、NaOCl水溶液(12%Cl)(2.23mL)とNaHCO3飽和水溶液(3.2mL)との予混合溶液(1:1.4v/v)を、0℃で6分間滴下した。混合物を20分間0℃で激しく撹拌し、次いでNa2S2O3飽和水溶液(4mL)でクエンチした。水層を分離し、CH2Cl2で抽出した。混合有機層を塩水で洗浄し、MgSO4を用いて乾燥し、減圧濃縮した。粗製物をTFA(aq)0.1%中のMeCN(勾配5~45%で12分)を用いて分取HPLC(ACE5 C8 100x21.2mm)によって精製した。生成物を含む画分を(すぐに)収集し、CH2Cl2(3x10mL)で抽出した。有機相を脱水し(MgSO4)、減圧濃縮し、減圧乾燥して、標記化合物を得て、減圧乾燥して、標記化合物を得た(371mg、収率57%)。
1H NMR(400MHz、CDCl3):d=8.97(s、1H)、8.08(m、2H)、6.78(m、1H)、5.28(s、1H)、3.76(s、3H)、2.63~2.43(m、3H)、2.15(m、1H)、1.97(m、1H)、1.69~1.51(m、2H)、1.45(s、3H)。
LCMS(ESI-):m/z=447[M-H]-
【0242】
c)N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-3-[(4-メトキシフェニル)メチル]-9-メチル-2-オキソ-3-アザトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2スルホンアミド
メチル(3aS,6R,7aR)-3a-ヒドロキシ-6-メチル-3-オキソ-6-[[5-(トリフルオロメチル)-2-ピリジル]スルホニルアミノ]-1,2,7,7a-テトラヒドロインデン-4-カルボキシラート(47mg、0.15mmol)をTHF(2mL)に溶解した。(4-メトキシフェニル)メタンアミン(0.018mL、0.14mmol)及びチタン(IV)イソプロポキシド(0.040mL、0.14mmol)を添加した。反応混合物を、蓋をしたフラスコ中で室温で10時間撹拌した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(28.9mg、0.14mmol)を添加し、反応混合物を更に24時間室温で撹拌した。反応混合物を濃縮し、アセトニトリルに溶解し、アセトニトリル(勾配5~45%で12分):50mM NH4HCO3/NH3 pH10を用いて分取HPLCによって精製した。生成物を含む画分をすぐに収集し、ジクロロメタン(3x10mL)で抽出した。有機相を、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧濃縮して、標記化合物20mg(35%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3)δ8.91(m、1H)、8.21(m、1H)、8.09(d、J=8.2Hz、1H)、7.17(m、1H)、6.86(m、1H)、6.00(s、1H)、5.77(brs、1H)、4.74(m、1H)、4.09(s、1H)、3.80(s、3H)、3.67(m、1H)、2.69(m、1H)、2.42(m、1H)、1.82~1.69(m、2H)、1.64(m、1H)、1.47(s、3H)、1.39~1.29(m、2H)。
LCMS(ESI+)m/z538[M+H]+、LCMS(ESI-)m/z536[M-H]-。
【0243】
実施例27
N-[(4R,7R,9R,11S)-3-[(4-シアノフェニル)メチル]-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-アザトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-スルホンアミド
【0244】
【0245】
10.4mg(44%)
LCMS(ESI-)m/z=531[M-H]-
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ=8.93(brs、1H)、8.22(m、1H)、8.09(m、1H)、7.64(m、2H)、7.36(m、2H)、6.04(s、1H)、5.60(s、1H)、4.87(m、1H)、4.21(m、1H)、3.69(m、1H)、2.73(m、1H)、2.45(m、1H)、1.86~1.71(m、3H)、1.71(m、1H)、1.47(s、3H)、1.40~1.31(m、1H)。
【0246】
実施例28
【0247】
【0248】
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-4,9-ジメチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-スルホンアミド
【0249】
【0250】
N-[(4R,7R,9R,11S)-11-ヒドロキシ-9-メチル-2-オキソ-3-オキサトリシクロ[5.3.1.04,11]ウンデカ-1(10)-エン-9-イル]-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-スルホンアミド(10mg、0.022mmol)及び塩化セリウム(III)(無水)(17mg、0.067mmol)を、THF(2mL)中で窒素下で混合し、生成した混合物を-78℃に冷却した。臭化メチルマグネシウム(3M Et2O溶液)(45uL、0.13mmol)を、-78℃で滴下した。反応混合物を、蓋をしたフラスコ中で室温で24時間撹拌した。反応混合物を分取TLC(ヘプタン:EtOAc1:1)で精製し、生成物バンドを単離し、MeCNで抽出し、濾過し、減圧濃縮し、減圧乾燥して、標記化合物(1.05mg、収率11%)を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ=8.94(s、1H)、8.19(m、1H)、8.04(m、1H)、6.10(s、1H)、5.58(s、1H)、2.77(m、1H)、2.46(m、1H)、1.94~1.70(m、4H)、1.50(s、3H)、1.48(s、3H)、1.20~1.16(m、1H)。
LCMS(ESI+):LCMS(ESI-):m/z=431[M-H]-
【0251】
生物学的実施例
選択された実施例化合物を、STAT3ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイを含む細胞アッセイでインビトロで評価した。
【0252】
実施例化合物の抗STAT3活性
STAT3ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ
ガリエララクトンと比較した実施例化合物のSTAT3シグナル伝達を阻害する能力を、STAT3ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイによって評価した。
【0253】
化合物の用量反応活性を試験して、IC50を8つの異なる用量(0.03、0.1、0.3、1、3、10、30及び100μM)で3つ組でSTAT3レポーター系について測定した。
【0254】
手短に述べると、STAT3レポーター/HEK293細胞系を、96ウェル白色プレート中で16時間培養した。細胞を、化合物で1時間前処理した。次いで、細胞をIL-6で処理して、STAT3活性化を16時間誘導した。ルシフェラーゼ活性を測定し、分析した。
【0255】
結果を下表5にIC50値として示す。
【0256】
【0257】
表5に見られるように、実施例の幾つかは、ガリエララクトンに比べて効力が増加した。また、表5に見られるように、明瞭な構造活性相関が存在し、ある構造改変は、STAT3レポーターアッセイにおいて活性のかなりの低下又は全損失を招く(実施例23及び24)。これは、STAT3タンパク質との特異的結合を示している。
【0258】
Cy1がフェニル、ピリジル又はチエニルであり、R5がパラ位のメチル、塩素又はトリフルオロメチルである化合物は、これらの置換基の存在が効力を高めるように見えるので、特に興味深いことが判明した。上の表1に見られるように、実施例1(R5=メチル)は、IC50値が親化合物ガリエララクトンよりも低い化合物を与える。R5がパラ位のメチル、塩素又はトリフルオロメチルである化合物は、したがって、幾つかの実施形態によれば好ましい。こうした実施形態においては、R1は一般にメチルである。さらに、アルキルスルホンアミド(実施例23化合物参照)及びN置換スルホンアミド(実施例24化合物参照)は、活性がない又は低いことが判明し、環状置換基の重要性及び窒素が非置換であることの重要性を示唆している。
【0259】
ガリエララクトンのスルホンアミド類似体の性質を更に評価し、STAT3阻害効力の増加が、STAT3シグナル伝達に依存する癌細胞の増殖の阻害を高めることになることを示すために、IL-6で刺激されたLNCaP前立腺癌細胞を実施例1で処理した。
【0260】
表6 MTTアッセイで測定されたIL-6刺激LNCaP細胞増殖の阻害
【表13】
【0261】
実施例1(表6参照)は、ガリエララクトンに比べて、IL-6で刺激されたLNCaP前立腺癌細胞の増殖を阻害する能力が高いことが判明した。この知見は、表1のデータと一致し、新規スルホンアミド類似体がガリエララクトンよりもSTAT3依存性STAT3細胞の増殖を阻止する効力が高いことを更に支持するものである。
【0262】
したがって、一実施形態は、ガリエララクトンと同等以上の効力でSTAT3受容体の活性を阻害するための、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物、例えば、式(I)の化合物、又はその好ましい選択物に関する。
【0263】
前立腺癌細胞におけるpSTAT3のウエスタンブロット分析
試料を、7.5%プレキャストゲル(Mini-PROTEAN TGX;BioRad)又は8%Tris Bisセルフキャストゲル上で分離させた。ゲルをPVDF膜にブロットし、5%乳又は5%BSAでブロックした。膜を、5%乳又は5%BSAで希釈された一次抗体と一緒に1時間室温で、又は終夜4℃で、STAT3及びpSTAT3 tyr-705(Cell Signaling Technology)に対する抗体と一緒にインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗マウス又は抗ウサギ抗体(GE Healthcare Life Sciences)と一緒にインキュベーション後、膜を高感度化学発光試薬(Santa Cruz Biotechnology又はMillipore)で処理し、続いてX線フィルムに曝露し、又はChemidoc XRSシステム(BioRad)を用いて可視化した。
【0264】
図1に示すように、LNCaP-IL6細胞のみが活性なpSTAT3を発現する。これは、LNCaP-IL6がSTAT3駆動細胞系であるのに対して、LNCaPが非STAT3駆動細胞系であり、pSTAT3が増殖の駆動体であることを示している。
【0265】
インビボ薬物動態学
薬物動態学的(PK)研究をCD1マウスで実施して、ガリエララクトン(GL)及び実施例1の単一経口用量の投与後の血漿曝露を確立した。試料分析はLC-MS/MSによった。用量溶液を50mMクエン酸緩衝剤(クエン酸/クエン酸ナトリウムpH4.0)中の5%DMSO中の薬物濃度0.5mg/mLで調製し、20mL/kg経口経管栄養(10mg/kg)として投与した。
【0266】
10mg/kgで経口投与後、定量化可能濃度を、少なくとも1匹の動物において各時点から最終8時間の試料まで検出した。Tmaxは、腸からの急速な吸収を示唆するすべての場合における最初の時点であった。
【0267】
【0268】
GLよりも高い曝露が実施例1で測定され、この化合物の生物学的利用能が改善されたことを示唆している(表7)。
【0269】
これは、4位のスルホンアミド部分の付加がSTAT3阻害効力に影響するだけでなく、薬物様性質をかなり改善することもできることを裏づけている。
【0270】
化学的安定性
溶液状態の実施例20及び28の化学的安定性を、以下に概説するようにリン酸緩衝液(PBS:phosphate buffer solution)中で37℃で求めた。
【0271】
50%DMSO中の試験化合物の100μM原液の4μl体積を、PBS396μlに添加して、1μM試験濃度を得た。試験化合物を、PBS中で37℃で600rpmで振盪しながらインキュベートした。インキュベーションを、2倍の体積の冷アセトニトリルを用いてクエンチし(30、60及び120分)、分析した。試料(0、30、60及び120分)を、Thermo Q-Exactive Focus Orbitrap及びWaters HSS T3(2.1×50mm、粒径1.7μm)カラムを備えたWaters Acquity UPLCを使用して分析した。
【0272】
実施例20はt1/2が349分であるのに対して、実施例28のt1/2は789分を超えることがわかった。
【0273】
見てわかるように、メチル基(R6=Me)の付加は、化学的安定性をかなり増加させる。この認められた効果は、加水分解に対するラクトン環の安定性の増加に起因する可能性が高い。