(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】垂直離陸型航空機のヨー角及びロール角を制御する制御方法
(51)【国際特許分類】
B64C 27/28 20060101AFI20230210BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20230210BHJP
G05D 1/10 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
B64C27/28
B64C13/18 Z
G05D1/10
(21)【出願番号】P 2019568250
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2018064934
(87)【国際公開番号】W WO2018224567
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】102017112452.7
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519434112
【氏名又は名称】ウイングコプター・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ヘッセルバルト・ヨナタン
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-231253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0261523(US,A1)
【文献】特表2013-506812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/28
B64C 13/18
G05D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直離陸型航空機(1)の対向する側の領域に、当該航空機の機体から離されて配置されている少なくとも2つの駆動グループ(3)を備え、駆動グループ(3)のそれぞれが、少なくとも1つの第1駆動ユニット(4、5)を備え、第1駆動ユニット(4、5)は、旋回角αで水平飛行位置及び垂直飛行位置に旋回可能に機体から離されて配置されている、垂直離陸型航空機(1)のヨー角γ
z及びロール角γ
xを制御する制御方法であって、
駆動ユニット(4、5、6、7)によって生成される出力は、所定の目標ヨー角w
γz及び所定の目標ロール角w
γxを達成するべく調整され、
決定ステップにおいて、第1ヨー制御変数g
1と第2ヨー制御変数g
2と第1ロール制御変数r
1と第2ロール制御変数r
2を決定し、ここで、第1ヨー制御変数g
1及び第1ロール制御変数r
1は、垂直飛行位置において目標ヨー角w
γz及び目標ロール角w
γxを達成するための垂直制御変数であり、第2ヨー制御変数g
2及び第2ロール制御変数r
2は、水平飛行位置において目標ヨー角w
γz及び目標ロール角w
γxを達成するための水平制御変数であり、
後続の重ね合わせステップで、旋回角αに応じて垂直制御変数と水平制御変数とから、各駆動ユニット(4、5、6、7)の重ね合わせ規則によって、駆動変数が決定され、
次いで、駆動ユニット(4、5、6、7)の電力が、駆動変数を考慮して決定される、制御方法。
【請求項2】
駆動グループ(3)はそれぞれ第1駆動ユニット(4、5)と第2駆動ユニット(6、7)とを備え、第1駆動ユニット(4、5)と第2駆動ユニット(6、7)とのそれぞれが、水平飛行位置及び垂直飛行位置に旋回角αで旋回可能に機体から離されて配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
第2ヨー制御変数g
2は、第1ヨー制御変数g
1に基づいてヨー係数を乗じて決定されることと、第2ロール制御変数r
2は、第1ロール制御変数r
1にロール係数を乗じて決定されることとの少なくとも一方を特徴とする、請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項4】
決定するステップでは、実ヨー角y
γz及び実ロール角y
γxが決定され、各制御変数は、目標ヨー角w
γzと、目標ロール角w
γxと、実ヨー角y
γzと、実ロール角y
γxとに基づく制御アルゴリズムによって、決定されることを特徴とする
、請求項
1から3のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
第1ヨー制御変数g
1は、目標ヨー角w
γzと実ヨー角y
γzとに基づいて
第1ヨー制御アルゴリズム(PD
2
)を用いて決定されること
と、
第2ヨー制御変数
g
2
は、目標ヨー角w
γzと実ヨー角y
γzとに基づいて第2ヨー制御アルゴリズム(PD
4)を用い
て決定されること
と、
第1ロール制御変数r
1は、目標ロール角w
γxと実ロール角y
γxに基づいて第1ロール制御アルゴリズム(PD
1)を用いて決定されること
と、
第2ロール制御変数r
2は、目標ロール角w
γxと実ロール角y
γxとに基づいて第2ロール制御アルゴリズム(PD
3)を用いて決定されること
と
のいずれか少なくとも1つを行うことを特徴とする、請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
第1ヨー制御アルゴリズム(PD
2)と、
第2ヨー制御アルゴリズム(PD
4)と、
第1ロール制御アルゴリズム(PD
1)と、
第2ロール制御アルゴリズム(PD
3)と
のいずれか少なくとも1つは、P制御部分又はPD制御部分を備えた線形制御部であることを特徴とする、請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
重ね合わせステップでは、垂直制御変数と水平制御変数にそれぞれ駆動ユニット固有及び旋回角度依存の評価関数を乗じて、各駆動ユニット(4、5、6、7)の駆動変数は
駆動ユニット固有かつ旋回角度依存の評価関数が乗算された垂直制御変数と、駆動ユニット固有かつ旋回角度依存の評価関数が乗算された水平制御変数との線形結合を乗じて旋回角度依存評価関数を決定できることを特徴とする
、請求項
1から6のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項8】
垂直制御変数の評価関数は旋回角αの余弦関数であり、水平制御変数の評価関数は旋回角αの正弦関数であることを特徴とする、請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
ヨー角γ
zとロール角γ
xは、それぞれ航空機(1)の垂直軸又は長軸を中心に時計回りに定義され、航空機の上面から長軸の左側に配置された第1駆動ユニット(4)の駆動変数AP
1は、重ね合わせステップで次の式
AP
1=cos(α)・r
1+cos(α)・g
1-sin(α)・r
2+sin(α)・g
2,
に従って計算され、
ここで、重ね合わせステップでは、航空機の上面からみて長軸の右側に配置された第1駆動ユニット(5)の駆動変数AP
2が、次の式
AP
2=-cos(α)・r
1-cos(α)・g
1+sin(α)・r
2-sin(α)・g
2,
に従って計算され、
ここで、重ね合わせステップでは、航空機の上面からみて長軸の左側に配置された第2の駆動ユニット(6)の駆動変数AP
3は、次の式
AP
3=cos(α)・r
1-cos(α)・g
1+sin(α)・r
2+sin(α)・g
2,
に従って計算され、
重ね合わせステップでは、航空機の上面からみて長軸の右側に配置された第2駆動ユニット(7)の駆動変数AP
4が、次の式
AP
4=-cos(α)・r
1+cos(α)・g
1-sin(α)・r
2-sin(α)・g
2.
に従って計算されることを特徴とする、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
個々の駆動ユニット(4、5、6、7)の所望の電力を達成するために駆動ユニット(4、5、6、7)を制御する駆動ユニット(4、5、6、7)の電力作動値(u
1、u
2、u
3、u
4)は、パフォーマンス要件量Fとピッチ変数nを考慮して、次の式
u
1=F-n+AP
1,
u
2=F-n+AP
2,
u
3=F+n+AP
3,
u
4=F+n+AP
4.
で計算されることを特徴とする、請求項9に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直離陸型航空機の胴体に配置された機体の対向する側部領域に少なくとも2つ配置された垂直離陸機のヨー角及びロール角を制御する制御方法に関し、各駆動グループは少なくとも1つの第1駆動ユニットを有し、第1駆動ユニットは、水平姿勢及び垂直姿勢に旋回角度αだけ旋回可能に、機体から離して配置されている。
【背景技術】
【0002】
垂直離陸機は、とりわけ、ドローンとして、そして軍事部門で使用される。これらの垂直離陸機は通常、胴体の両側に配置された2つの翼を備え、剛性的に翼に接続され、使用目的に適合されている、ゴンドラのような翼支持要素に旋回可能に支承されて配置された2つの駆動ユニットがある。また、別個の胴体が形成されていない、翼が長手方向軸線に沿って対称に設計された2つのハーフウィングで形成されている航空機も知られていて、ハーフウィングは、支持要素に旋回可能に支承されて配置され、使用目的に適合された2つの駆動ユニットを備える。
【0003】
加えて、垂直に始動する航空機は、先行技術から既知であり、そこでは、駆動ユニットは、例えば翼に延在する支持構造体に、翼に直接に支承され旋回可能に支承されている。そのような飛行機の垂直離陸は、特許文献1に記載されている。この航空機の垂直離陸では、水平飛行位置では第1駆動ユニットが翼面の上に配置され、第2駆動ユニットが翼の翼面の下に配置され、垂直飛行位置では第1駆動ユニットと第2駆動ユニットはほぼ水平面に配置されている。このようにして、特に離陸及び着陸段階で、より滑らかな飛行挙動が達成されるように、地面に近い垂直飛行段階で、第1及び第2駆動ユニットの均一な地面効果が達成される。水平飛行位置では、第1駆動ユニットが互いに逆回転しないため、効率が低下しない。
【0004】
ヨー角及びロール角を制御するために、特にマルチコプターでは、マルチコプター上で旋回しない駆動ユニットの適切な制御によって所望のヨー角及びロール角が達成される制御方法が知られている。このようにして生成されたリフト差とトルク差を使用してヨーとロールを生成するために、各ドライブユニットによって提供される出力が駆動部に対して個別に指定される。
【0005】
3次元空間での航空機の向きは、通常、ロール角、ピッチ角、ヨー角で表される。さまざまな角度は、ゼロ位置から始まる航空機の回転角度を表す。ゼロ位置は、例えば、航空機の長軸、横軸、及び垂直軸を中心とした地上にある航空機の向きに対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的として、垂直飛行と、垂直飛行から水平飛行への移行中も同様に、水平飛行との両方の制御が可能であり、垂直離陸機の駆動ユニットの適切な制御によってヨー角及びロール角の制御に対応する制御方法を提供することが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、この目的は、冒頭に記載したタイプの垂直離陸航空機のヨー角及びロール角を制御する制御方法によって達成される。
・ここで、駆動ユニットによって生成される動力は、所定の目標ヨー角及び所定の目標ロール角を達成するために適合される。
・ここで、決定ステップでは、第1ヨー制御変数g1及び第2ヨー制御変数g2と、第1ロール制御変数r1及び第2ロール制御変数r2とが決定され、第1ヨー制御変数及び第1ロール制御変数は、垂直飛行位置での目標ヨー角及び目標ロール角を達成するための垂直制御変数であり、第2ヨー制御変数と第2ロール制御変数は、水平飛行姿勢で目標ヨー角と目標ロール角を達成するための水平制御変数である。
・各駆動ユニットの制御変数は、重ね合わせ則を使用して、旋回角度の関数としての垂直制御変数と水平制御変数から、後続の重ね合わせステップで決定される。
・そして、引続いて制御変数を考慮して駆動ユニットの出力がそれから指定される。
【0009】
所望のヨー及びロール動作を実現するために、駆動ユニットの全ての旋回位置で異なる制御変数が必要である。本発明による水平制御変数及び垂直制御変数の連続計算、並びに水平飛行及び垂直飛行を対象とする変数の重ね合わせにより、制御方法は、2つの極端な水平飛行位置及び垂直飛行位置に対してのみ設計されなければならないだけなので、制御方法は特に簡単な方法で実装できる。従来技術から既知の制御及び調整方法を使用して、水平制御変数及び垂直制御変数を決定してもよい。本発明によれば、制御変数は、例えば、パイロットによって要求される電力要件に対応する目標ヨー及びロール角を達成するために駆動ユニットが必要とする総電力からの偏差を記述する電力差値であってよい。制御変数は、水平飛行及び垂直飛行における必要な出力差値の絶対値を表すロール制御変数及びヨー制御変数から有利に決定される。
【0010】
本発明によれば、有利には、各駆動グループは第1駆動ユニットと、第2駆動ユニットとを有し、第1駆動ユニット及び第2駆動ユニットは、水平飛行位置及び垂直飛行位置に、航空機胴体から離して、旋回角度αだけ旋回可能に配置される。本発明により、有利には、第1の駆動ユニット及び/又は第2の駆動ユニットは、航空機の互いに対向する翼に配置される。本発明によれば、しかしながら、駆動ユニットは、有利には適切な支持フレームによって胴体上に配置されることで、胴体から離して、提供することも可能である。本発明により、有利には、駆動ユニットはロータを有してもよい。
【0011】
記載された方法の簡略化において、有利には、第2のヨー制御変数は、ヨー係数の乗算によって第1のヨー制御変数に基づいて決定されること、及び/又は第2のロール制御変数は、ロール係数の乗算によって第1のロール制御変数に基づいて決定されることが提供される。
本発明によれば、各第2の制御変数に関連する係数を乗じることにより、各第1の制御変数が決定されることの提供も可能である。
【0012】
本発明によれば、決定ステップにおいて、実ヨー角及び実ロール角が決定され、制御アルゴリズムを用いて、制御変数がそれぞれ、実ヨー角及び実ロール角とからだけでなく、目標ヨー角及び所望のロール角とからも、決定されることが有利に提供される。実ヨー角及び実ロール角は、適切なセンサを用いて有利に検出され、制御アルゴリズム及び/又は制御方法を実行するマイクロコントローラ又はフライトコントローラに転送される。
【0013】
本発明によれば、有利には、以下が提供される。
第1ヨー制御変数は、第1ヨー制御アルゴリズムを用いて目標ヨー角と実ヨー角とに基づいて決定されること、及び/又は
第2ヨー制御変数は、目標ヨー角と実ヨー角とに基づいて第2ヨー制御アルゴリズムを用いて決定されること、及び/又は
第1ロール制御変数は、目標ロール角と実ロール角に基づいて第1ロール制御アルゴリズムを用いて決定されること、及び/又は
第2ロール制御変数は、目標ロール角と実ロール角とに基づいて第2ロール制御アルゴリズムを用いて決定されること。
複数の独立した制御アルゴリズムを使用して制御変数ーを決定することにより、SISO(単入力単出力)システムのみを考慮するだけなので、個々の制御アルゴリズムの設計を大幅に簡素化できる。次に、出力変数間の結合は、異なる複数の制御変数の有利な非線形重ね合わせにより、選択的に考慮してもよい。
【0014】
本発明による方法の特に有利な実施形態では、第1ヨー制御アルゴリズム及び/又は第2ヨー制御アルゴリズム及び/又は第1ロール制御アルゴリズム及び/又は第2ロール制御アルゴリズムは、P(比例)制御部分又はPD(比例微分)制御部分を有する線形コントローラであることが提供される。P制御部分又はPD制御部分を備えた線形コントローラの使用は特に簡単である。有利には、制御アルゴリズムは、I(積分)制御部分も持ってもよい。
【0015】
有利には、第1ヨー制御パラメータg1は、適切なセンサを用いて有利には決定される実ヨー角yγzからと、これも有利には検知される実ヨー速度
【0016】
【0017】
と、予め定めた目標ヨー角wγzとに基づいて、PDコントローラを用いて以下の式にしたがって決定される。
【0018】
【0019】
係数Pg1はPDコントローラのP制御割合を表し、係数Dg1は第1ヨー制御変数g1を決定するためのPDコントローラのD制御部分を表す。同様な方法で、第1ロール制御変数r1と、第2ヨー制御変数g2と、第2ロール制御変数r2とは、以下の式に従って決定される。
【0020】
【0021】
ここでは、適切なセンサで有利には検出される実ロール角y
γxと、同様に有利にはセンサで検出される実ロール速度
【数4】
【0022】
と、予め定めた目標ロール角wγxとが加味されている。
【0023】
本発明によれば、第1ヨー制御変数g1を決定するためのP制御部分Pg1及びD制御部分Dg1が、第2ロール制御変数r2を決定するPDコントローラのP制御部分Pr2及びD制御部分Dr2に対応することと、第1ロール制御変数r1を決定するためのP制御部分Pr1及びD制御部分Dr1が、第2ヨー制御変数g2を決定するためのPDコントローラのP制御部分Pg2及びD制御部分Dg2に対応することとが有利に提供される。
【0024】
実ロール角yγxと、実ロール速度
【0025】
【0026】
【0027】
とを決定するために、航空機は、ジャイロスコープ、加速度センサ、コンパスを有利には備えていて、必要な角度及び速度が、これらのセンサで検出された測定変数から、例えばカルマンフィルタなどの従来技術で既知の方法に基づいて決定される。
【0028】
本発明によれば、水平制御変数及び垂直制御変数は、1つ又は共通の制御アルゴリズムを使用して連続的に決定されることも提供される。それぞれの場合に使用される制御アルゴリズムは、線形コントローラでも、又は非線形コントローラでもありえる。
【0029】
有利には、重ね合わせステップでは、垂直制御変数及び水平制御変数それぞれに駆動ユニット固有かつ旋回角度依存の評価関数が乗算され、各駆動ユニットの駆動変数は、駆動ユニット固有かつ旋回角度依存の評価関数が乗算された垂直制御変数と、駆動ユニット固有かつ旋回角度依存の評価関数が乗算された水平制御変数との線形結合を乗じることで決定される。評価関数は、有利には、旋回角の関数としての非線形関数である。非線形評価と後続の線形結合により、特に複数の独立したコントローラを使用して第1及び第2のヨー及びロール制御変数を決定する場合、制御システム間の考慮されない結合も、有利には考慮可能である。
【0030】
本発明によれば、有利には、垂直制御変数パラメータの評価関数が旋回角度の余弦関数であり、水平制御変数の評価関数が旋回角度の正弦関数であることが提供される。正弦関数と余弦関数を使用した重ね合わせにより、特に垂直飛行位置から水平飛行位置へ、又はその逆に移行する際に、特に安定した飛行動作が可能になることがわかった。
【0031】
本発明による方法の特に有利な実施形態では、航空機の垂直軸及び長軸を中心にヨー角及びロール角がそれぞれ時計回りに定義され、重ね合わせステップにおいて、上面からみたときの、航空機の長軸左側に配置された第1駆動ユニットの駆動変数AP1は、次の数式モデル(1)に従って計算される。
AP1=cos(α)・r1+cos(α)・g1-sin(α)・r2+sin(α)・g2, (1)
【0032】
ここで、重ね合わせステップでは、上面からみたときの、航空機の長軸右側に配置された第1駆動ユニットの駆動変数AP2は、次の数式モデル(2)に従って計算される。
AP2=-cos(α)・r1-cos(α)・g1+sin(α)・r2-sin(α)・g2, (2)
【0033】
ここで、重ね合わせステップでは、上面からみたときの、航空機の長軸左側に配置された第2の駆動ユニットの駆動変数AP3は、次の数式モデル(3)に従って計算される。
AP3=cos(α)・r1-cos(α)・g1+sin(α)・r2+sin(α)・g2, (3)
【0034】
ここで、重ね合わせステップでは、上面からみたときの、航空機の長軸右側に配置された第2の駆動ユニットの駆動変数AP4は、次の数式モデル(4)に従って計算される。
AP4=-cos(α)・r1+cos(α)・g1-sin(α)・r2-sin(α)・g2. (4)
【0035】
駆動ユニットにロータがある場合、制御変数を決定する際にロータの回転方向は、有利には考慮される。
【0036】
駆動変数は、それによって個々の駆動ユニットがその後作動される。それら駆動変数を決定するためには、有利には電力差の値を示す、決定された駆動変数に基づいて、本発明によると、駆動ユニットを作動するのに用いる、駆動ユニットの電力作動値u1、u2、u3、u4は、個々の駆動ユニットに必要な電力を生成するために電力要件変数Fとピッチ変数nを考慮して、次の数式(5)から(8)のように計算される。
u1=F-n+AP1, (5)
u2=F-n+AP2, (6)
u3=F+n+AP3, (7)
u4=F+n+AP4. (8)
【0037】
本発明によると、性能要件変数は、例えば、パイロットによって要求される総性能であってもよい。ピッチ変数は、有利には、所定の目標ピッチ角を達成するために必要な電力差のn値を記述する。
【0038】
本発明によると、有利には、水平飛行位置では、第1の駆動ユニットが第2の駆動ユニットから垂直軸の方向に距離を置いて配置され、垂直飛行位置では、第1の駆動ユニットが第2の駆動ユニットから長軸の方向に距離を置いて配置される。本発明によると、水平飛行位置では第1駆動ユニットが翼の上部翼面の上に配置され、第2駆動ユニットは翼の下側翼面の下に配置され、垂直飛行位置では、有利には、第1駆動ユニット及び第2駆動ユニットが水平飛行方向で翼の前後に配置される。
【0039】
本発明による方法の他の有利な態様は、図面に示した実施例を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、垂直離陸型航空機とその制御関係の概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、垂直離陸型航空機1を概略的に示す。航空機1は、航空機1の対向する翼2に配置された2つの駆動グループ3を有し、各駆動グループ3は、第1の駆動ユニット4、5及び第2の駆動ユニット7を有する。第1の駆動ユニット4、5及び第2の駆動ユニット6、7はそれぞれ、翼2に配置され、水平飛行位置及び垂直飛行位置に旋回角αで旋回可能に取り付けられている。図では、駆動ユニット4、5、6、7は水平飛行位置下にある。第1の駆動ユニット4、5は、翼2の上部翼面8の上方に配置され、第2の駆動ユニット6、7は、翼2の下部翼面9の下方に配置されている。駆動ユニット4、5、6、7が垂直飛行位置に旋回されると、第1駆動ユニット4、5及び第2駆動ユニット6、7は、水平飛行方向において翼2の前後に配置される。ヨー角γ
z、ロール角γ
x及びピッチ角γ
yは、それぞれ、航空機1の垂直軸、長軸及び横軸を中心に時計回りに定義されている。
【0042】
駆動ユニット4、5、6、7はそれぞれロータを備える。第1駆動ユニット4及び第2駆動ユニット7のロータは反時計回りであり、第1駆動ユニット5及び第2駆動ユニット6のロータは時計回りである。
【0043】
ヨー角γz及びロール角γxを制御するために、本発明による制御方法の決定ステップでは、まず、線形コントローラPD1、PD2、PD3、及びPD4を用いて、予め定める目標ヨー角wγz及び予め定める目標ロール角wγxから、第1及び第2のヨー及びロール制御変数g1、g2、r1、r2が決定される。続いて、制御変数u1、u2、u3、u4は、各駆動ユニット4、5、6、7に、重ね合わせのステップでロール制御変数g1、g2、r1、r2から決定される。この図は、第1の駆動ユニット4の制御変数u1の決定の例を示す。この決定は、先述の式1から8を使用して実行される。