(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】緩衝装置
(51)【国際特許分類】
F16F 7/00 20060101AFI20230210BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20230210BHJP
B62D 25/12 20060101ALI20230210BHJP
F16B 1/02 20060101ALI20230210BHJP
F16B 21/06 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
F16F7/00 B
E05F5/02 G
B62D25/12 M
F16B1/02 L
F16B21/06 A
(21)【出願番号】P 2020016797
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】浜本 拓哉
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-280916(JP,A)
【文献】特開平02-076915(JP,A)
【文献】実開昭63-109055(JP,U)
【文献】特開2004-251421(JP,A)
【文献】特表2004-513024(JP,A)
【文献】特表2002-516962(JP,A)
【文献】特開2002-021900(JP,A)
【文献】特開2019-183629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00
E05F 5/02
B62D 25/12
F16B 1/02
F16B 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の開口部を閉じ位置で塞ぐ可動部材の前記閉じ位置を調整可能とする緩衝装置であって、
取り付け用のグロメット体と、
前記グロメット体に、前記グロメット体の中心軸に沿う向きに移動可能な状態で少なくとも一部を納められる雌部材と、
前記雌部材内に納められる軸部の一端に前記雌部材外に位置される緩衝用頭部を備えてなる雄部材とを備えてなると共に、
前記雌部材には、弾性変形を生じ易い変形可能部が形成されていると共に、この変形可能部の外側に前記グロメット体の内部に形成させた被係合部に対して前記移動後の各位置においてそれぞれ係合可能となる係合部が形成されており、
前記雄部材に、捻回前位置からの所定の捻回位置への回動操作に伴って前記雌部材の前記変形可能部の内面に押しつけられて前記変形可能部の弾性変形を規制する規制部を備えさせてなる、緩衝装置。
【請求項2】
前記捻回位置への回動に伴って、前記雌部材内から前記雄部材の前記軸部を所定寸法分繰り出させるようにしてなる、請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
前記雌部材と前記雄部材とが、これらの一方に形成された摺接部をこれらの他方に形成された案内部に接しさせて組み合わされていると共に、前記案内部を前記中心軸を巡る仮想の螺旋に沿うように形成させてなる、請求項2に記載の緩衝装置。
【請求項4】
前記雌部材に、前記雄部材に形成された被ロック部に前記雄部材の前記捻回位置への回動操作に伴って係合して前記雄部材の前記捻回前位置への復動を規制する、ロック部を備えさせてなる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【請求項5】
前記雄部材の前記捻回位置を超えた往動を規制する往動規制手段を備えてなる、請求項4に記載の緩衝装置。
【請求項6】
前記雄部材が前記捻回前位置にある状態を仮保持する仮保持手段を備えてなる、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車を構成するトランクリッド、テールゲート(バックドア)、ボンネット、ドアなどの自動車の開口部を閉じ位置で塞ぐ可動部材の前記閉じ位置を調整可能とする緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフレーム又はパネルに取り付けられるレセプタクルと、頭部と軸部とから構成されこの頭部をレセプタクル内に差し込んでレセプタクルと組み合わされるスタッドとからなる自動車用のリッドバンパー(緩衝装置)として特許文献1に示されるものがある。
【0003】
レセプラクルの内部にはスタッドに形成された小さいリブ及び大きいリブのいずれか一方に選択的にかみ合うリブが形成されている。スタッドの小さいリブはレセプタクルのリブにラチェット作用を生じさせるようにかみ合うようになっている。これにより、レセプタクルからのスタッドの突出量が調整できる。この調整後、スタッドをその中心軸を回動中心とするようにして捻回するとスタッドの大きいリブがレセプタクルのリブに強くかみ合い、レセプタクルに対しスタッドは前記調整後の位置で保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の緩衝装置によって自動車の前記可動部材の閉じ位置を調整した状態を、より適切且つ安定的に保持し得る構造を、この種の緩衝装置に付与できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、この発明にあっては、緩衝装置を、自動車の開口部を閉じ位置で塞ぐ可動部材の前記閉じ位置を調整可能とする緩衝装置であって、
取り付け用のグロメット体と、
前記グロメット体に、前記グロメット体の中心軸に沿う向きに移動可能な状態で少なくとも一部を納められる雌部材と、
前記雌部材内に納められる軸部の一端に前記雌部材外に位置される緩衝用頭部を備えてなる雄部材とを備えてなると共に、
前記雌部材には、弾性変形を生じ易い変形可能部が形成されていると共に、この変形可能部の外側に前記グロメット体の内部に形成させた被係合部に対して前記移動後の各位置においてそれぞれ係合可能となる係合部が形成されており、
前記雄部材に、捻回前位置からの所定の捻回位置への回動操作に伴って前記雌部材の前記変形可能部の内面に押しつけられて前記変形可能部の弾性変形を規制する規制部を備えさせてなる、ものとした。
【0007】
かかる緩衝装置を前記開口部側又は前記可動部材側に設置した状態で、前記可動部材を閉じる操作をすると、雄部材の緩衝用頭部が開口部側又は可動部材側に当たり、これにより雌部材がグロメット体内に押し込まれるようにすることができる。
雌部材は、グロメット体に、前記中心軸方向に移動可能で、かつ、この移動後の各位置において前記被係合部に係合される係合部を変形可能部に備えていることから、前記可動部材の閉じる操作により雌部材はグロメット体内に所定寸法分押し込まれ、押し込まれた位置で前記係合により保持される。
この後、雄部材を所定の捻回位置へ回動操作すると、雄部材の規制部が雌部材の変形可能部の内面に押しつけられて変形可能部の弾性変形が規制される。これにより、前記雌部材が前記グロメット体内に所定寸法分押し込まれた状態を強固に維持して、雄部材の緩衝用頭部を一定の位置に位置づけることが可能となる。
そして、これにより、再度可動部材を閉じる操作をしたときには、緩衝装置によってこの可動部材の閉じ位置が決められる。
【0008】
前記捻回位置への回動に伴って、前記雌部材内から前記雄部材の前記軸部を所定寸法分繰り出させるようにしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0009】
また、前記雌部材と前記雄部材とが、これらの一方に形成された摺接部をこれらの他方に形成された案内部に接しさせて組み合わされていると共に、前記案内部を前記中心軸を巡る仮想の螺旋に沿うように形成させるようにしておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記雌部材に、前記雄部材に形成された被ロック部に前記雄部材の前記捻回位置への回動操作に伴って係合して前記雄部材の前記捻回前位置への復動を規制する、ロック部を備えさせておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0011】
また、前記雄部材の前記捻回位置を超えた往動を規制する往動規制手段を備えておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【0012】
また、前記雄部材が前記捻回前位置にある状態を仮保持する仮保持手段を備えさせておくことが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、緩衝装置によって自動車の前記可動部材の閉じ位置を調整した状態をより適切且つ安定的に保持し得る構造を、かかる緩衝装置に合理的に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態にかかる緩衝装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、前記緩衝装置を構成するグロメット体の斜視図である。
【
図3】
図3は、前記緩衝装置を構成する雌部材の斜視図である。
【
図4】
図4は、前記緩衝装置を構成する雄部材の斜視図である。
【
図6】
図6は、前記緩衝装置の使用状態を示した要部破断側面図であり、雄部材は捻回前位置(基準位置)にある。
【
図8】
図8は、前記緩衝装置の斜視図であり、雄部材は所定の捻回位置にある。
【
図11】
図11は、前記緩衝装置を構成する雌部材をその基部側から見た平面図である。
【
図13】
図13は、前記緩衝装置を構成する雄部材のキャップを外した状態で、この雄部材の緩衝用頭部側を見て示した平面図であり、雄部材が捻回前位置にあるときの雌部材のロック部および仮保持手段を想像線で表して示している。
【
図14】
図14は、前記緩衝装置を構成する雄部材のキャップを外した状態の要部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1~
図14に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる緩衝装置1は、自動車を構成するトランクリッド、テールゲート(バックドア)、ボンネット、ドアなどの、自動車の開口部を閉じ位置で塞ぐ可動部材を閉じる操作をしたときに、前記開口部側Oと前記可動部材側Lとが当接予定のない部分同士で突き当たることがないように緩衝すると共に、前記閉じ位置を調整可能とするものである。
【0016】
かかる緩衝装置1は、かかる緩衝装置1を前記開口部側O又は前記可動部材側Lに設置した状態で、前記可動部材を閉じる操作をすることで、後述の雄部材4を介して後述の雌部材3が後述のグロメット体2内に押し込まれるようになっている(
図6参照)。この後、後述の雄部材4を所定の捻回位置へ回動操作することで、前記雌部材3と前記グロメット体2との係合が解かれないようにすることが可能となっている。これにより、再度可動部材を閉じる操作をしたときには、緩衝装置1によってこの可動部材の閉じ位置が決められる。例えば、可動部材がトランクリッドである場合、その閉じ位置でのトランクリッドの高さを緩衝装置1によって決めることができるようになる。また、かかる緩衝装置1は、後述の雄部材4の前記捻回操作(回動操作)により、雌部材3から雄部材4が所定寸法分繰り出すようになっており(
図9参照)、この所定寸法分を可動部材のオーバーストローク分と実質的に一致させるようにしておくことで、かかるオーバーストローク分を吸収して閉じ位置において可動部材によってガタなく開口部を塞ぐことができるようになっている。
【0017】
かかる緩衝装置1は、グロメット体2と、雌部材3と、雄部材4とから構成されている。
【0018】
グロメット体2は、緩衝装置1を、前記開口部側O又は前記可動部材側Lに取り付けるためのものである。
【0019】
図示の例では、グロメット体2は、一端2bを開放させると共に、他端2cを閉塞させた筒状部2aの前記一端に、外鍔2dを形成させた形態となっている。筒状部2aは、その中心軸、すなわち、グロメット体2の中心軸x(
図2、
図6、
図10参照)に直交する向きの断面形状を、いずれの位置においても四角形とする角筒状を呈している。また、前記外鍔2dの輪郭は円形となっている。グロメット体2の四つの側部2eのうち、対向位置にある二つの側部2eにそれぞれ、係合片2fが形成されている。係合片2fは、前記一端2b側において、前記中心軸xに沿う向きに延びて、溝一端を前記一端2bに位置させる一対の縦溝2gと、この一対の縦溝2gの溝一端間に亘る横溝2hとによって区分された前記側部2eの一部によって構成されている。係合片2fの外面には、前記一端2b側に近づくに連れて前記中心軸xからの距離を漸増させる傾斜が形成されている。図示の例では、前記開口部側O又は前記可動部材側Lに形成された四角形の取付穴Hであって、前記筒状部2aの断面形状に倣った取付穴Hに前記他端2c側からグロメット体2を差し込むと、この差し込みの過程で一対の係合片2fがその外面を取付穴Hの穴縁に摺接させて前記中心軸x側に撓みこの差し込みを許容すると共に、差し込み終了位置で弾性復帰して前記取付穴Hの穴縁に係合されるようになっている。これにより、グロメット体2は、前記取付穴Hの形成されたパネルを前記外鍔2dと前記係合片2fとで挟み付けるようにして、取り付けられる(
図6)。
【0020】
また、グロメット体2の内部には、後述の雌部材3の変形可能部3aの外側に形成された係合部3bに対する被係合部2iが形成されている。被係合部2iは、グロメット体2の四つの側部2eのうち、前記係合片2fが形成されていない二つの側部2eにそれぞれ形成されている。図示の例では、被係合部2iは、前記グロメット体2の中心軸x方向の中程の位置に形成されている。図示の例では、被係合部2iは、前記側部2eの幅方向に亘るリブ2jを前記中心軸x方向に隣り合うリブ2jとの間に隙間を開けて複数条形成させることで形成されており、被係合部2i位置でのグロメット体2の前記中心軸xに沿う向きの断面形状はジグザグ状となっている。
【0021】
次いで、雌部材3は、前記グロメット体2に、前記グロメット体2の中心軸xに沿う向きに移動可能な状態で少なくとも一部を納められるようになっている。それと共に、雌部材3には、弾性変形を生じ易い変形可能部3aが形成されていると共に、この変形可能部3aの外側に前記グロメット体2の内部に形成させた前記被係合部2iに前記移動後の各位置において係合可能となる係合部3bが形成されている。
【0022】
図示の例では、雌部材3は、前記中心軸xに沿う向きに長い一対の板状主体3dと、この一対の板状主体3dの一端間をつなぐ一対の基部構成板3fと、この一対の板状主体3dの他端間をつなぐヒンジ片3hとを備えた構成となっている。
【0023】
基部構成板3fは、前記中心軸xに沿う向きの辺部3gを板状主体3dの一端側の縁部に一体化させており(
図3参照)、一対の板状主体3dと一対の基部構成板3fとにより、前記中心軸xに直交する向きの断面を四角形の枠状とする基部3iが構成されている。
【0024】
ヒンジ片3hは、前記中心軸xに直交する向きの一辺を一対の板状主体3dの一方の他端に一体化させると共に、前記中心軸xに直交する向きの他辺を一対の板状主体3dの他方の他端に一体化させている。ヒンジ片3hは、その中央を前記基部3i側に突き出させるように屈曲されている。ヒンジ片3hは、この屈曲内側の角度を狭める向きの弾性変形を生じ易い構成となっている。
【0025】
かかる構成により、雌部材3は、前記基部3iより先の箇所を前記変形可能部3aとしている。具体的には、変形可能部3aは、前記基部3iとの連接箇所を変形中心として、一対の板状主体3d間の間隔を前記ヒンジ片3hに近づくに連れて狭める向きの弾性変形を生じ易い構成となっている。
【0026】
一対の板状主体3dの外面にそれぞれ、前記係合部3bが形成されている。図示の例では、係合部3bは、前記板状主体3dの幅方向に亘るリブ3cを前記中心軸x方向に隣り合うリブ3cとの間に隙間を開けて複数条形成させることで形成されており、係合部3b位置での板状主体3dの前記中心軸xに沿う向きの断面形状はジグザグ状となっている。
【0027】
前記板状主体3dにおける前記基部3iとヒンジ片3hとの間には、ヒンジ片3h側に段差3kを形成させる内側膨出部3jが形成されている。係合部3bは板状主体3dにおけるこの内側膨出部3jの形成位置と前記ヒンジ片3hとの間となる箇所に形成されている。
【0028】
前記基部3iの内部には、後述の雄部材4の案内部4oに接する摺接部3mが形成されている。図示の例では、摺接部3mは、前記中心軸xを挟んだ一方側と他方側とにそれぞれ形成された前記中心軸xを実質的に180度の範囲で巡り、かつ、前記中心軸xを巡る仮想の螺旋に沿うように形成されたリブ状を呈している。図示の例では、後述の案内部4oも、同様に前記中心軸xを巡る仮想の螺旋に沿うように形成されたリブ状を呈しており、雄部材4と組み合わされた雌部材3は、二箇所の摺接部3mのそれぞれの前記ヒンジ片3h側と反対の側の側部に、対応する案内部4oを接しさせるようになっている(
図6)。
【0029】
前記基部3iにおける前記ヒンジ片3h側と反対の縁部には、後述の雄部材4に形成された被ロック部4iにこの雄部材4の後述の捻回位置への回動操作に伴って係合してこの雄部材4の後述の捻回前位置への復動を規制する、ロック部3nが形成されている。
【0030】
また、前記基部3iにおける前記ヒンジ片3h側と反対の縁部には、後述の雄部材4が後述の捻回前位置にある状態を仮保持する仮保持手段3oが備えられている。
【0031】
図示の例では、前記基部3iの前記ヒンジ片3h側と反対の縁部のうち、前記基部構成板3fによって構成される縁部に前記ロック部3nが形成され、前記板状主体3dによって構成される縁部に前記仮保持手段3oが形成されている。
【0032】
前記ロック部3nは、前記中心軸xに対して実質的に45度の角度をもって交叉する仮想の直線に沿う向きに前記縁部から上方に突き出す腕状を呈している。
【0033】
一方、前記仮保持手段3oは、前記板状主体3dに形成した肉抜き部3qによって前記板状主体3dの縁部の一部を前記中心軸xに直交する向きに延びる腕状とすると共に、その自由端に前記ヒンジ片3h側と反対の側に突き出す爪部3pを形成させた構成となっている。
【0034】
図示の例では、前記中心軸xを周回する方向において、同じ方向に向けて、図示の例では、
図3における反時計回りの方向rに向けて、二箇所の前記ロック部3nと、二箇所の前記仮保持手段3oとがそれぞれ、延び出すようになっている。
【0035】
次いで、雄部材4は、前記雌部材3内に納められる軸部4cの一端に前記雌部材3外に位置される緩衝用頭部4aを備えてなる。
それと共に、前記雄部材4には、捻回前位置からの所定の捻回位置への回動操作に伴って前記雌部材3の前記変形可能部3aの内面3eに押しつけられて前記変形可能部3aの弾性変形を規制する規制部4kが備えられている。
図示の例では、雄部材3は、雌部材4内に、前記中心軸xに軸部4cの軸中心線を実質的に一致させるように、軸部4cを納め、前記中心軸xを中心として捻回前位置から所定の捻回位置に回動操作できるようになっている。
【0036】
図示の例では、雄部材4の緩衝用頭部4aは、円板部4bを備え、この円板部4bの一面の中心に前記軸部4cの一端が一体化されている。円板部4bの他面には、短寸筒状部4dが形成されている。図示の例では、この短寸筒状部4dを内側に収めるようにして、この短寸筒状部4dにゴム又はゴム状弾性を備えた合成樹脂製のキャップ4eを嵌め付けることで、緩衝用頭部4aのストライク部分4fが形成されている。
図7、
図10、
図14中、符号4gで示されるのは、キャップ4eの内側に形成された係合部に係合してキャップ4eの嵌め付け状態を維持する係合爪である。
【0037】
緩衝用頭部4aを構成する円板部4bには、その中心を挟んだ位置にそれぞれ、雄部材4が捻回前位置にある状態において仮保持手段3oの爪部3pが入り込む係合穴4hが形成されている。この係合穴4hは前記被ロック部4iともなる。また、円板部4bには、この円板部4bの中心を周回する方向において一対の係合穴4hの間となる位置にそれぞれ、雄部材4が捻回前位置にある状態においてロック部3nが入り込む収容穴4jが形成されている。
【0038】
図示の例では、雄部材4の軸部4cは、その他端からその長さ方向中程の位置までを前記規制部4kとし、この長さ方向中程の位置から一端までの箇所に前記摺接部3mに接する案内部4oを備えている。
【0039】
前記規制部4kでは、軸部4cは、軸部4cの長さ方向に直交する向きの断面を実質的に長方形状としている。すなわち、規制部4kは長さ側の面4mと、幅側の面4nとを備えている。規制部4kの一対の幅側の面4n間の距離は、雌部材3の板状主体3dにおける係合部3bの形成箇所の内面3e間の距離と実質的に一致している。一方、規制部4kの一対の長さ側の面4m間の距離は、雌部材3の板状主体3dの係合部3bの形成箇所の内面3e間の距離よりも小さくなっている。
【0040】
図示の例では、雄部材4の軸部4cは、前記規制部4kの長さ側の面4mを雌部材3の板状主体3dの内面3eに向き合わせる向きでのみ、雌部材3内に差し込み可能となっている。図示の例では、雌部材3の二箇所の摺接部3mの端末間にやや隙間3rが形成されており(
図11参照)、この隙間3rに規制部4kの幅側を入り込ませる向きでのみ、雌部材3の基部3i側から雌部材3内に、前記中心軸xに雄部材4の軸部4cの軸中心線を沿わせるようにして、雄部材4を差し込み可能になっている。
【0041】
雄部材4の軸部4cの長さ方向中程の位置には、太径部4pが形成されている。雌部材3に形成された内側膨出部3jに軸部4cの太径部4pが突き当たる位置まで雄部材4の軸部4cが雌部材3内に差し込まれると、雌部材3の変形可能部3aが外向きに撓みそれより先への軸部4cの差し込みが許容される。太径部4pが内側膨出部3jよりもヒンジ片3h側に入り込むと、弾性変形可能部3aが弾性復帰して太径部4pよりも基部3i側に内側膨出部3jが位置される。これにより、雄部材4を前記捻回前位置に位置づけた状態での雌部材3と雄部材4との組み合わせ状態が維持されるようになっている(
図6参照)。
【0042】
また、前記組み合わせ状態において、雄部材4の各部と雌部材3の各部とは以下のように連係されるようになっている。
(1)二箇所の前記案内部4oのそれぞれに、対応位置にある前記摺接部3mが前記のように接する。
(2)二箇所の前記仮保持手段3oの爪部3pがそれぞれ、対応位置にある係合穴4hに入り込み係合される(
図13参照)。
(3)二箇所のロック部3nがそれぞれ、対応位置にある収容穴4jに入り込む(
図13参照)。
【0043】
雄部材4の案内部4oは、前記中心軸xを挟んだ一方側と他方側とにそれぞれ形成された前記中心軸xを実質的に180度の範囲で巡り、かつ、前記中心軸xを巡る仮想の螺旋に沿うように形成されたリブ状を呈している。二箇所の案内部4oはそれぞれ、全長をほぼ同じくし、軸部4cの長さ方向における一定の範囲において形成されている。
【0044】
図示の例では、緩衝装置1は、グロメット体2内に雌部材3における基部3iより先を差し込むと共に、この雌部材3内に雄部材4の軸部4cを差し込んで前記のように雌部材3と雄部材4とを組み合わせることで、構成されている。
【0045】
図示の例では、雌部材3の板状主体3dのヒンジ片3h側に、基部3i側を向いた段差3tを形成させる突き出し部3sが形成されている。また、グロメット体2内における被係合部2iよりもグロメット体2の一端2b側にあって、この被係合部2iに隣接した部分に、前記段差3tに対する当接部2kが形成されている。
【0046】
グロメット体2内に雌部材3は、前記変形可能部3aを弾性変形させることで、前記係合部を前記被係合部2iにかみ合わせるようにして、基部3iより先を差し込まれるようになっている。図示の例では、係合部3b及び被係合部2iの双方が前記中心軸xに沿う向きの断面をジグザグ状とすることから、両者をかみ合わせることで雌部材3は前記移動後の各位置において保持される。図示は省略するが、かかる保持機能は係合部及び被係合部2iの一方を前記のようにジグザグ状としていれば、他方が単一の突起であっても構わない。また、この差し込みにあたり、前記突き出し部3sが当接部2kに当たるようになっている。それと共に、突き出し部3sが当接部2kに当たったときに、変形可能部3aを弾性変形させることで、突き出し部3sが当接部2kを乗り越える位置までの差し込みが許容されるようにしている。突き出し部3sが当接部2kを乗り越える位置までグロメット体2内に雌部材3が差し込まれると、変形可能部3aの弾性復帰により、段差3tの上方に当接部2kが位置される。これにより、グロメット体2と雌部材3との組み合わせ状態も維持される(
図14参照)。
【0047】
かかる緩衝装置1を前記開口部側O又は前記可動部材側Lに設置した状態で、前記可動部材を閉じる操作をすると、雄部材4の緩衝用頭部4aが開口部側O又は可動部材側Lに当たり、これにより雌部材3がグロメット体2内に押し込まれるようにすることができる。
図示の例では、案内部4oと摺接部3mとを介して、可動部材を閉じ操作したときに雌部材3がグロメット体2内に押し込まれるようになっている。
【0048】
雌部材3は、グロメット体2に、前記中心軸x方向に移動可能で、かつ、この移動後の各位置において前記被係合部2iに係合される係合部3bを変形可能部3aに備えていることから、前記可動部材の閉じる操作により雌部材3はグロメット体2内に所定寸法分押し込まれ、押し込まれた位置で前記係合により保持される。
【0049】
この後、雄部材4を所定の捻回位置へ回動操作すると、雄部材4の規制部4kが雌部材3の板状主体3dの内面3e、すなわち、変形可能部3aの内面3eに押しつけられて変形可能部3aの弾性変形が規制される。これにより、前記雌部材3が前記グロメット体2内に所定寸法分押し込まれた状態を強固に維持して、雄部材4の緩衝用頭部4aを一定の位置に位置づけることが可能となる。
図示の例では、回動前位置にある雄部材4を
図6において反時計回りの向きrに実質的に90度捻回すると、規制部4kの幅側の面4nが変形可能部3aの内面3eに密着して変形可能部3aの内向きへの変形が規制され、これにより、係合部と被係合部2iの係合が解かれなくなるようになっている(
図9)。
【0050】
そして、これにより、再度可動部材を閉じる操作をしたときには、緩衝装置1によってこの可動部材の閉じ位置が決められる。
【0051】
また、この実施の形態にあっては、雄部材4の前記捻回操作により、雌部材3から雄部材4が所定寸法分繰り出すようになっている。
図示の例では、前記案内部4oに前記摺接部3mを接しさせることで、回動前位置にある雄部材4を
図6において反時計回りの向きrに実質的に90度捻回したときに、雌部材3内から例えば数ミリ程度、雄部材4を繰り出し可能となっている(
図9)。
この繰り出し寸法を可動部材のオーバーストローク分と実質的に一致させるようにしておくことで、かかるオーバーストローク分を吸収することが可能となる。
【0052】
また、この実施の形態にあっては、雄部材4が前記捻回前位置にある状態を、前記仮保持手段3oによって仮に保持することができ、意図せず雄部材4が所定の捻回位置まで捻回される事態が生じないようにしている。
図示の例では、前記爪部3pが前記係合穴4hから抜け出されるように腕状の仮保持手段3oを弾性変形させる大きさの力を雄部材4に作用させない限り、雄部材4を捻回操作できないようにしてある。
【0053】
また、この実施の形態にあっては、雄部材4が所定の捻回位置まで捻回された後は、雄部材4が捻回前位置に前記ロック部3nによって復動しないようにしている。
図示の例では、雄部材4を
図6において反時計回りの向きrに実質的に90度捻回すると、この捻回の過程で収納穴4jに納まっていたロック部3nが弾性変形して抜け出し、捻回終了位置での弾性復帰により被ロック部4iとなる係合穴4hにその自由端を入り込ませて係合し、これにより、前記復動が阻止されるようになっている(
図8、
図10)。なお、図示の例では、前記仮保持手段3oの爪部3pは、雄部材4の前記捻回終了位置では緩衝用頭部4a下に位置されるようになっている(
図8)。
【0054】
また、この実施の形態にあっては、雄部材4が所定の捻回位置まで捻回された後は、雄部材4の捻回位置を超えた往動を規制する往動規制手段が備えられている。
図示の例では、雄部材4を
図6において反時計回りの向きrに実質的に90度捻回すると、雄部材4の軸部4cの太径部4pが雌部材3の板状主体3dの内側膨出部3jの段差3kにヒンジ片3h側から突き当たり、前記案内部4oと摺接部3mとによって雌部材3と連係されている雄部材4をそれ以上雌部材3内から繰り出すことができないようにして、すなわち、それ以上捻回できないようにしている。
【0055】
これにより、開閉部材を閉じ操作してグロメット体2内雌部材3を所定寸法分押し込ませ、ついで、雄部材4を捻回操作して雄部材4を雌部材3内から所定寸法分繰り出させた緩衝装置1によって可動部材の閉じ位置を制御した状態は安定的に維持される。
【0056】
なお、図示の例では、前記キャップ4eを外すことで雄部材4の被ロック部4iとしての係合穴4hを露出させることが可能となっており(
図13)、この露出状態において工具を使って被ロック部4iとしての係合穴4hから自由端を抜け出させる向きにロック部3nを押し込み弾性変形させることで、ロック部3nと被ロック部4iとの係合を解いて雄部材4を捻回前位置まで復動させ、緩衝装置1を初期状態に復帰させることもできるようになっている。
【0057】
なお、以上に説明した緩衝装置1における弾性変形特性を備えるべき部分へのこの特性の付与は、これを構成する各部材の全部又は一部を合成樹脂により構成することで、容易に実現可能である。
【0058】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0059】
x 中心軸
2 グロメット体
2i 被係合部
3 雌部材
3a 変形可能部
3b 係合部
3e 内面
4 雄部材
4a 緩衝用頭部
4c 軸部
4k 規制部