(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】電空レギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05D 16/20 20060101AFI20230210BHJP
F15B 5/00 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
G05D16/20 Z
F15B5/00 A
(21)【出願番号】P 2020072907
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2022-01-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 CKD製品カタログ デジタル電空レギュレータEVDシリーズ(発行日:令和2年2月、発行者:CKD株式会社)
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 勢太
(72)【発明者】
【氏名】長崎 功
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 治彦
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/00-16/20
F15B 1/00- 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力を調整するための給気弁と排気弁とを備える主弁部と、
前記主弁部により制御された制御圧力を測定する圧力センサと、
前記給気弁と前記排気弁に駆動力を付与するダイアフラムと、
前記ダイアフラムを変位させるパイロット流体の供給を制御する給気用電磁弁と、
前記パイロット流体の排気を制御する排気用制御弁と、
前記制御圧力の設定値を示す設定制御圧力と、前記圧力センサが測定した前記制御圧力との差分に応じて前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁の開閉動作をPWM制御する制御部と、
を備える電空レギュレータにおいて、
前記制御部は、
0を示す前記設定制御圧力を受け付けた場合に、前記制御圧力を0に制御した後、前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁とに開閉動作を行わせる第1モードと、0を示す前記設定制御圧力を受け付けた場合に、前記制御圧力を0に制御した後、前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁とに閉動作を行わせる第2モードとの設定を受け付けるモード設定処理を実行し、
0を示す前記設定制御圧力を受け付け、前記圧力センサが0を示す前記制御圧力を測定する場合に、前記モード設定処理にて受け付けたモードに応じて前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁の開閉動作を制御すること、
を特徴とする電空レギュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載する電空レギュレータにおいて、
外部装置と通信可能に接続される通信部を有し、
前記外部装置から出力された前記第1モード又は前記第2モードの設定を前記通信部を介して受け付けること、
を特徴とする電空レギュレータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する電空レギュレータにおいて、
情報の入力操作を受け付ける操作部を有し、
前記第1モード又は前記第2モードの設定を前記操作部を介して受け付けること、
を特徴とする電空レギュレータ。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載する電空レギュレータにおいて、
前記制御部は、
前記モード設定処理にて前記第2モードの設定を受け付けた場合に、前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁とに開閉動作を再開させる時刻の予約を受け付ける予約時刻受付処理と、
前記予約時刻受付処理にて受け付けた前記時刻になった場合に、前記第2モードを前記第1モードに自動的に切り替える第1自動切替処理と、
を実行すること、
を特徴とする電空レギュレータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1つに記載する電空レギュレータにおいて、
前記制御部は、
前記モード設定処理にて前記第2モードの設定を受け付けた場合に、前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁の開閉動作を停止する停止時間の設定を受け付ける停止時間受付処理と、
前記停止時間受付処理にて受け付けた前記停止時間が経過した場合に、前記第2モードを前記第1モードに自動的に切り替える第2自動切替処理と、
を実行すること、
を特徴とする電空レギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力を無段階で制御する電空レギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生産設備の空圧制御に、流体の圧力を無段階で制御する電空レギュレータが使用されている。電空レギュレータは、主弁部の給気弁と排気弁とを用いて流体の圧力を制御する。電空レギュレータは、給気弁と三方弁を駆動させるパイロット機構を備える。パイロット機構は、パイロット圧力を供給する給気用電磁弁と、パイロット圧力を排気する排気用電磁弁と、パイロット圧力に応じて三方弁に駆動力を付与するダイアフラムとを備える(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「CKD製品カタログ デジタル電空レギュレータEVDSeries」,CKD株式会社,2019年,p.586-p.595
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には以下の問題があった。従来の電空レギュレータは、設定制御圧力が0である場合にも、応答性を維持するために、パルス幅を極力小さくして給気用電磁弁と排気用電磁弁とに開閉動作を行わせていた。そのため、給気用電磁弁と排気用電磁弁が劣化しやすかった。一方、ユーザが電空レギュレータに求める機能は、様々である。例えば、電空レギュレータに高応答性を求める場合もあれば、応答性が多少悪くなっても製品寿命を延ばしたい場合もある。よって、1台の電空レギュレータがその両方の要求を満たすことができれば、便利である。このように、従来の電空レギュレータには、使い勝手を改善する余地があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、流体の圧力を無段階で制御する電空レギュレータにおいて、使い勝手を良くする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。(1)流体の圧力を調整するための給気弁と排気弁とを備える主弁部と、前記主弁部により制御された制御圧力を測定する圧力センサと、前記給気弁と前記排気弁に駆動力を付与するダイアフラムと、前記ダイアフラムを変位させるパイロット流体の供給を制御する給気用電磁弁と、前記パイロット流体の排気を制御する排気用制御弁と、前記制御圧力の設定値を示す設定制御圧力と、前記圧力センサが計測した前記制御圧力との差分に応じて前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁の開閉動作をPWM制御する制御部と、を備える電空レギュレータにおいて、前記制御部は、0を示す前記設定制御圧力を受け付けた場合に、前記制御圧力を0に制御した後、前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁とに開閉動作を行わせる第1モードと、0を示す前記設定制御圧力を受け付けた場合に、前記制御圧力を0に制御した後、前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁とに閉動作を行わせる第2モードとの設定を受け付けるモード設定処理を実行し、0を示す前記設定制御圧力を受け付け、前記圧力センサが0を示す前記制御圧力を測定する場合に、前記モード設定処理にて受け付けたモードに応じて前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁の開閉動作を制御すること、を特徴とする。
【0007】
上記構成の電空レギュレータは、第1モードが設定されている場合には、0を示す設定制御圧力を受け付けたとき、給気用電磁弁と排気用電磁弁とに開閉動作を行わせる。そのため、設定制御圧力が変更された場合、給気用電磁弁と排気用電磁弁とを直ちに動作させ、入力ポートに供給された流体を変更後の設定制御圧力に応答性良く制御できる。一方、電空レギュレータは、第2モードが設定されている場合には、0を示す設定制御圧力を受け付けたとき、給気用電磁弁と排気用電磁弁とに閉動作を行わせる。この場合、給気用電磁弁と排気用電磁弁が開閉しないので、第1モードと比べて給気用電磁弁と排気用電磁弁の寿命を長くできる。よって、上記構成の電空レギュレータによれば、第1モードと第2モードの設定を切り替えることで、1台で高応答性と高寿命化の要求を満たすことができるので、使い勝手がよい。
【0008】
(2)(1)に記載する電空レギュレータにおいて、外部装置と通信可能に接続される通信部を有し、前記外部装置から出力された前記第1モード又は前記第2モードの設定を前記通信部を介して受け付けること、が好ましい。
【0009】
上記構成の電空レギュレータは、外部装置から出力された第1モード又は第2モードの設定を通信部を介して受け付けることで、外部装置からの指示に応じて第1モードと第2モードとを切り替えることができる。
【0010】
(3)(1)又は(2)に記載する電空レギュレータにおいて、情報の入力操作を受け付ける操作部を有し、前記第1モード又は前記第2モードの設定を前記操作部を介して受け付けること、が好ましい。
【0011】
上記構成の電空レギュレータは、操作部に入力された第1モード又は第2モードの設定を操作部を介して受け付けることで、自装置で第1モードと第2モードとを切り替えることができる。
【0012】
(4)(1)から(3)の何れか1つに記載する電空レギュレータにおいて、前記制御部は、前記モード設定処理にて前記第2モードの設定を受け付けた場合に、前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁とに開閉動作を再開させる時刻の予約を受け付ける予約時刻受付処理と、前記予約時刻受付処理にて受け付けた前記時刻になった場合に、前記第2モードを前記第1モードに自動的に切り替える第1自動切替処理と、を実行すること、が好ましい。
【0013】
上記構成の電空レギュレータは、第2モードが設定されて、給気用電磁弁と排気用電磁弁とを停止させる場合に、予約した時刻になると、第2モードが第1モードに切り替えられて、給気用電磁弁と排気用電磁弁とが開閉動作を再開する。よって、上記構成の電空レギュレータは、例えば、給気用電磁弁と排気用電磁弁とに閉動作を長時間行わせた場合でも、給気用電磁弁と排気用電磁弁とを自動的に暖めてから、圧力制御を再開できるようになり、高寿命化と高応答性の両方を実現することが可能になる。
【0014】
(5)(1)から(4)の何れか1つに記載する電空レギュレータにおいて、前記制御部は、前記モード設定処理にて前記第2モードの設定を受け付けた場合に、前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁の開閉動作を停止する停止時間の設定を受け付ける停止時間受付処理と、前記停止時間受付処理にて受け付けた前記停止時間が経過した場合に、前記第2モードを前記第1モードに自動的に切り替える第2自動切替処理と、を実行すること、が好ましい。
【0015】
上記構成の電空レギュレータは、第2モードが設定されて、給気用電磁弁と排気用電磁弁とを停止させる場合に、停止時間が経過すると、第2モードが第1モードに切り替えられて、給気用電磁弁と排気用電磁弁とが開閉動作を再開する。よって、上記構成の電空レギュレータは、例えば、給気用電磁弁と排気用電磁弁とを長時間停止させた場合でも、給気用電磁弁と排気用電磁弁とを自動的に暖めてから、圧力制御を再開できるようになり、高寿命化と高応答性の両方を実現することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
よって、本発明によれば、流体の圧力を無段階で制御する電空レギュレータにおいて、使い勝手を良くする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る電空レギュレータの外観斜視図である。
【
図4】
図1に示す電空レギュレータの制御ブロック図である。
【
図5】
図1に示す電空レギュレータにおける昇圧動作を説明する図である。
【
図6】
図1に示す電空レギュレータにおける減圧動作を説明する図である。
【
図7】第1モード選択時の動作を説明するタイミングチャートである。
【
図8】第2モード選択時の動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る電空レギュレータの実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電空レギュレータ1の外観斜視図である。電空レギュレータ1は、流路ブロック10とカバー2を結合して、直方体形状の外観が構成されている。本形態では、流路ブロック10は金属で形成され、カバー2は樹脂で形成されている。なお、流路ブロック10とカバー2の材質は同じでもよい。
【0019】
カバー2の上面には、外部装置に通信可能に接続されるコネクタ3を備える。コネクタ3は「通信部」の一例である。
【0020】
カバー2は、4つの側面のうちの正面に、操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、表示部5と、操作部6とを含む。操作部6は、情報の入力操作を受け付けるボタン群で構成されている。
【0021】
図2は、
図1のA-A断面図である。電空レギュレータ1は、ブースタ20とパイロット制御部30が内設されている。ブースタ20は、流体の圧力を調整するための給気弁26と排気弁27とを備え、流路ブロック10内に配置されている。ブースタ20は「主弁部」の一例である。パイロット制御部30は、給気弁26と排気弁27を操作するものであり、ブースタ20の図中上方に配置されている。
【0022】
流路ブロック10は、立方体形状をなし、入力ポート11と出力ポート14とが対向する側面に開設されている。入力ポート11は、連通流路12と、フィードバック室13とを介して出力ポート14に連通している。流路ブロック10は、連通流路12の図中奥側に、ブースタ20の可動軸21が図中上下方向に移動可能に配置されている。
【0023】
給気弁26は、入力ポート11と出力ポート14との間に配置されている。給気弁26は、弁座16と、弁体211と、圧縮ばね23とを含む。弁座16は、連通流路12の開口端部に沿って設けられている。弁体211は、可動軸21に一体に設けられ、弁座16に当接又は離間する。流路ブロック10の下面には、ボトムプラグ25がOリング24を介して螺設されている。圧縮ばね23は、弁体211とボトムプラグ25との間に縮設され、弁体211に弁座16方向の付勢力を常時付与している。
【0024】
図3は、
図1のC-C断面図である。流路ブロック10は、フィードバック室13とボトムプラグ25との間に貫通穴71が形成されている。ボトムプラグ25には、排気ポート15が設けられている。可動軸21は、中空穴213を備える筒形状をなす。可動軸21は、図中上端部がフィードバック室13に配置され、図中下端部がボトムプラグ25内に配置されるように貫通穴71に貫き通され、フィードバック室13が中空穴213を介して排気ポート15と連通している。
【0025】
排気弁27は、出力ポート14と排気ポート15との間に配置されている。排気弁27は、弁座面212と、鋼球34とを含む。弁座面212は、可動軸21の図中上端面に設けられている。鋼球34は、弁座面212に当接又は離間可能に設けられた弁体である。鋼球34は、後述するダイアフラム組立31に保持され、ダイアフラム32の変位に従って図中上下方向に移動する。中間部材22は、ゴム等で形成された圧縮変形可能な部材である。中間部材22は、弁体211とボトムプラグ25とに密着する状態で弁体211とボトムプラグ25との間に配置され、ボトムプラグ25と可動軸21との間の隙間などから流体が漏れることを防いでいる。
【0026】
図3に示すように、パイロット制御部30は、ダイアフラム組立31と、給気用電磁弁36と、排気用電磁弁37と、圧力センサ39と、バルブベース72と、パイロットチャンバ73とを含む。バルブベース72は、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37が取り付けられている。また、
図2に示すように、パイロット制御部30は、制御基板38と、圧力センサ39を含む。制御基板38は、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の図中上方の位置にて、ケース2に保持されている。圧力センサ39は、バルブベース72に取り付けられている。バルブベース72は、パイロットチャンバ73と結合されている。
【0027】
ダイアフラム組立31は、ダイアフラム32と、リリーフシート33と、鋼球34とを備える。ダイアフラム32は、パイロットチャンバ73と流路ブロック10との間で外縁部を挟持され、フィードバック室13とパイロット室35とを気密に区画している。リリーフシート33は、金属など剛性のある部材であり、ダイアフラム32の受圧面側(図中下側に位置する面)に一体的に取り付けられている。リリーフシート33は、弁座面212と対向する位置にて鋼球34を保持している。
【0028】
図4は、
図1に示す電空レギュレータ1の制御ブロック図である。電空レギュレータ1は、入力ポート11をパイロット用排気ポート41に接続するパイロット流路42を備える。パイロット用排気ポート41は、例えば、カバー2の側面のうち、操作パネル4が設けられた正面と反対側に位置する背面に、設けられている。パイロット流路42には、上流側(入力ポート11側)から順に、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37が配設されている。パイロット流路42は、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37との間の位置から給排気流路43が分岐し、パイロット室35(例えば
図3参照)と連通している。
【0029】
制御基板38は、コネクタ3を介して受け付けた設定制御圧力と、圧力センサ39が測定する制御圧力との差分に基づいて、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の開閉動作をPWM制御することで、パイロット室35の圧力を調整し、ブースタ20の給気弁26と排気弁27を操作して制御圧力を設定制御圧力に制御する。
【0030】
具体的に説明すると、制御基板38は、コネクタ3を介して上位コントローラ100に通信可能に接続されている。制御基板38は、上位コントローラ100から出力された指令値をコネクタ3を介して入力することができる。指令値は、例えば、設定制御圧力を決定するための入力信号を含む。指令値は、例えば、制御基板38が実行するモードを指定するモード信号を含んでもよい。また、制御基板38は、上位コントローラ100に出力信号をコネクタ3を介して出力することができる。出力信号は、例えば、電空レギュレータ1の動作に関する動作情報や、電空レギュレータ1の設定に関する設定情報を含む。
【0031】
制御基板38は、比較部51と制御回路52とを備える。制御回路52は、周知のマイクロコンピュータであって、CPUやメモリを含む。メモリは、不揮発性メモリと揮発性メモリを含む。メモリには、電空レギュレータ1の動作を制御するための制御プログラムや、各種設定が記憶される。メモリは、制御プログラムの処理を実行する際にデータを一時的に記憶する記憶領域としても使用される。制御回路52は、表示部5と操作部6が接続されている。制御回路52は、操作部6を介して、設定制御圧力やモードを受け付けることができる。また、制御回路32は、表示部5を用いて、動作状態や設定内容を表示することができる。
【0032】
制御回路52は、電源が投入されると、CPUがメモリに記憶される制御プログラムを起動し、電空レギュレータ1の動作を制御する制御処理を開始する。制御回路52のCPUは、電源が切断されると、制御処理を終了する。
【0033】
制御処理について説明する。制御処理では、制御圧力の設定値を示す設定制御圧力と、圧力センサ39が測定した制御圧力との差分を求める。すなわち、比較部51は、コネクタ3を用いて受信した設定制御圧力と、圧力センサ39が測定した制御圧力とを比較し、その比較結果を制御回路52に渡す。なお、比較部51は、操作部6を介して受け付けた設定制御圧力と、圧力センサ39が測定した制御圧力とを比較し、その比較結果を制御回路52に渡してもよい。
【0034】
制御処理では、受け付けた設定制御圧力が0を示すか否かを判断する。受け付けた設定制御圧力が0を示さない場合、制御回路52は、求めた差分に応じて、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の開閉動作をPWM制御する。すなわち、制御回路52は、比較部51から受け取った比較結果に基づいて、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37に出力するパルス信号P1,P2を生成し、出力する。パルス信号P1,P2は、一定のパルス周期Tで出力され、開動作を指示する「ON信号」と閉動作を指示する「OFF信号」とを含む。「ON信号」のパルス幅は、設定制御圧力と制御圧力との差分に応じて設定される。給気用電磁弁36と排気用電磁弁37は、パルス信号P1,P2に従って開閉動作を行う。本形態では、制御基板38が「制御部」の一例であるが、制御回路52を「制御部」としてもよい。
【0035】
これに対して、受け付けた設定制御圧力が0を示す場合、制御回路52は、第1モードと第2モードの何れか設定されているか判断する。第1モードは、コネクタ3又は操作部6を介して0を示す設定制御圧力を受け付けた場合に、制御圧力を0に制御した後、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とに開閉動作を行わせるモードである。第2モードは、コネクタ3又は操作部6を介して0を示す設定制御圧力を受け付けた場合に、制御圧力を0に制御した後、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とに閉動作を行わせるモードである。制御回路52は、制御処理と別のモード設定処理にて、第1モードと第2モードとの設定を受け付けることができる。
【0036】
制御回路52は、モード設定処理にて第1モードが設定されている場合、0を示す設定制御圧力を受け付け、圧力センサ39が0を示す制御圧力を測定すると、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とに開閉動作を行わせる。一方、制御回路52は、モード設定処理にて第2モードが設定されている場合、0を示す設定制御圧力を受け付け、圧力センサ39が0を示す制御圧力を測定すると、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とに閉動作を行わせる。
【0037】
ここで、制御回路52は、モード設定処理にて第2モードが設定された場合、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とに開閉動作を再開させる時刻の予約を受け付けることができる。この処理は「予約時刻受付処理」の一例である。制御回路52は、上位コントローラ100から出力された予約時刻をコネクタ3を介して受け付けてもよいし、操作部6を用いて入力された予約時刻を受け付けてもよい。制御回路52は、第2モードの設定を受け付け、予約時刻を受け付けた場合、予約時刻になると、第2モードを第1モードに自動的に切り替える。この処理は「第1自動切替処理」の一例である。
【0038】
また、制御回路52は、第2モードが設定された場合、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の開閉動作を停止する停止時間の設定を受け付けることができる。この処理は「停止時間受付処理」の一例である。制御回路52は、上位コントローラ100から出力された停止時間をコネクタ3を介して受け付けてもよいし、操作部6を用いて入力された停止時間を受け付けてもよい。制御回路52は、第2モードの設定を受け付け、停止時間の設定を受け付けた場合、受け付けた停止時間が経過すると、第2モードを第1モードに自動的に切り替える。この処理は「第2自動切替処理」の一例である。
【0039】
続いて、電空レギュレータ1の動作を説明する。
図5は、
図1に示す電空レギュレータ1における昇圧動作を説明する図である。電空レギュレータ1は、圧力センサ39が計測した圧力が設定制御圧力より低い場合、給気用電磁弁36にパルス信号P1を出力して開閉動作を行わせ、排気用電磁弁37にパルス信号P2を出力せず、閉動作させる。入力ポート11からパイロット流路42に流入した流体が給気用電磁弁36を介してパイロット室35に供給され、パイロット室35の圧力が上昇する。パイロット室35のパイロット圧力がフィードバック室13の制御圧力より高くなると、ダイアフラム32が図中下向きに変位する。
【0040】
鋼球34は、ダイアフラム32の図中下向きの変位により、弁座面212に対して図中下向きに押し付けられ、排気弁27が弁閉される。弁座面212に作用する図中下向きの力が、弁体211に作用する流体の圧力と圧縮ばね13のばね力との図中上向きに作用する合力より大きくなると、可動軸21は、ダイアフラム32の変位に応じて、圧縮ばね23と中間部材22を圧縮させながら図中下向きに移動する。これに伴い、可動軸21に一体に設けられた弁体211が弁座16から離間し、給気弁26が弁開する。これにより、入力ポート11に供給された流体が連通流路12、フィードバック室13を介して出力ポート14に供給される。また、流体は、貫通穴71と可動軸21との間の隙間を介してフィードバック室13に供給される。よって、出力ポート14の制御圧力が上昇する。
【0041】
図6は、
図1に示す電空レギュレータ1における減圧動作を説明する図である。電空レギュレータ1は、圧力センサ39が測定した圧力が設定制御圧力より高い場合、排気用電磁弁37にパルス信号P2を出力して開閉動作を行わせ、給気用電磁弁36にパルス信号P1を出力せず、閉動作させる。パイロット室35の流体は、排気用電磁弁37を介してパイロット用排気ポート41から排気され、パイロット室25の圧力が低下する。パイロット室35の圧力がフィードバック室13の圧力(つまり、出力ポート14の制御圧力)より低くなると、ダイアフラム32が図中上向きに変位する。
【0042】
可動軸21は、弁体211に作用する流体の圧力と圧縮ばね23のばね力との合力によって、ダイアフラム32の図中上向きの変位に追従して図中上向きに移動する。給気弁26は、弁体211が弁座16に当接することで、弁閉される。可動軸21は、弁体211が弁座16に当接すると、それ以上、図中上向きに移動できなくなる。鋼球34は、弁体211が弁座16に当接した後も、ダイアフラム32の図中上向きの変位に従って図中上向きに移動することで、可動軸21の弁座面212から離間し、排気弁27が弁開される。これにより、出力ポート14の流体は、フィードバック室13、中空穴213を介して排気ポート15から排気される。よって、出力ポート14の制御圧力が低下する。
【0043】
このように、ブースタ20は、ダイアフラム32の変位に応じて給気弁26と排気弁27とが相対的に開閉されることで、流体の圧力を無段階で制御することができる。
【0044】
続いて、第1モードが選択されている場合の電空レギュレータ1の動作を
図7を参照して説明する。
【0045】
本形態では、電空レギュレータ1のメモリに圧力制御範囲が登録されており、入力信号が示す割合によって、設定制御圧力が決定される。例えば、圧力制御範囲が「0~100kPa」であり、入力信号が「0%~100%」の範囲で設定されるとする。この場合、入力信号が100%である場合、設定制御圧力は、圧力制御範囲の上限値である「100kPa」とされる。入力信号が50%である場合、設定制御圧力は、圧力制御範囲の上限値に対して50%の値となる「50kPa」とされる。また、入力信号が0%である場合、設定制御圧力は、圧力制御範囲の上限値に対して0%の値となる「0kPa」とされる。なお、本形態では、入力信号が1%以下の場合も、設定制御圧力は、「0kPa」とされる。
【0046】
例えば、図中t1に示すように、入力信号が0%から100%に切り替えられた場合、給気用電磁弁36にパルス信号P1が出力され、排気用電磁弁37にパルス信号P2が出力されない。これにより、図中X1,X2,X3に示すように、制御圧力が0kPaから設定制御圧力まで上昇する。パルス信号P1は、圧力センサ39が測定する制御圧力の設定制御圧力に対する割合が100%に近づくにつれて、つまり、制御圧力が設定制御圧力に近づくにつれて、パルス周期Tに対するパルス幅t2が小さくなる。
【0047】
図中X3に示すように、圧力センサ39が測定する制御圧力の設定制御圧力に対する割合が100%になると、つまり、制御圧力が設定制御圧力に到達すると、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37に、極力短いパルス幅のパルス信号P1,P2が同期して出力される。これにより、制御圧力が設定制御圧力に維持される。
【0048】
図中t4に示すように、入力信号が100%から0%に切り替えられた場合、給気用電磁弁36にパルス信号P1が出力されず、排気用電磁弁37にパルス信号P2が出力される。これにより、図中X4、X5に示すように、制御圧力が設定制御圧力から0kPaまで低下する。パルス信号P2は、圧力センサ39が測定する制御圧力の設定制御圧力に対する割合が0%に近づくにつれて、つまり、制御圧力が0kPaに近づくにつれて、パルス周期Tに対するパルス幅t1が小さくなる。
【0049】
図中X5に示すように、圧力センサ39が測定する制御圧力の設定制御圧力に対する割合が0%になると、つまり、制御圧力が0kPaに到達すると、図中Y3に示すように、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37に、極力短いパルス幅のパルス信号P1,P2が同期して出力される。これにより、図中Y1に示すように、制御圧力が0kPaに維持される。
【0050】
次に、第2モードが設定されている場合の電空レギュレータ1の動作を
図8を参照して説明する。
図8に示す動作では、図中t4に示すように、入力信号が100%から0%に切り替えられ、図中Y1に示すように、制御圧力が0kPaに制御された場合における図中Y5に示す動作が、
図7の図中Y3に示す動作と異なる。すなわち、図中Y5に示すように、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37は、0%の入力信号を入力し(0を示す設定制御圧力を受け付け)、圧力センサ39が測定する制御圧力の設定制御圧力に対する割合が0%である(制御圧力が0kPaである)場合、パルス信号P1,P2が停止されている。この他は、
図7の動作と同じなので説明を省略する。
【0051】
このように、本形態の電空レギュレータ1は、第1モードが設定されている場合には、0%の入力信号を受信したとき(0を示す設定制御圧力を受け付けたとき)、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とに開閉動作を行わせる。そのため、入力信号が0%から100%に変更され、設定制御圧力が変更された場合、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37を速やかに動作させ、入力ポート11に供給された流体を変更後の設定制御圧力に応答性良く制御できる。一方、電空レギュレータ1は、第2モードが設定されている場合には、0%の入力信号を受信したとき(0を示す設定制御圧力を受け付けたとき)、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とに閉動作を行わせる。この場合、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37が開閉しないので、第1モードと比べて給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の寿命を長くできる。また、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の動作に伴う騒音を低減できる。よって、本形態の電空レギュレータ1によれば、第1モードと第2モードの設定を切り替えることで、1台で高応答性と高寿命化の要求を満たすことができるので、使い勝手がよい。
【0052】
具体的に説明すると、例えば、昼休憩の際には、第1モードを電空レギュレータ1に設定する。この場合、昼休憩後、或いは、昼休憩終了前に作業を再開しても、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37が、開閉動作により暖められているので、速やかに動作を開始することができ、流体を設定制御圧力に応答性良く制御できる。また、休憩中の入力信号が1%であり、再開後の入力信号が1.5%である場合でも、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37が応答性良く動作できる。このように、第1モードが設定されることで、電空レギュレータ1は、いつでも同じ圧力制御性能を実現できる。
【0053】
これに対して、例えば、メンテナンスなどのためにラインを半日止める場合には、第2モードを電空レギュレータ1に設定する。これにより、メンテナンス時に使用する必要がない給気用電磁弁36や排気用電磁弁37が停止されるため、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37が無駄に動作せず、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の劣化が抑制される。また、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の開閉動作に伴う騒音がなくなるので、メンテナンス等の作業者にかかるストレスを軽減できる。
【0054】
もっとも、第2モードが設定されている場合、圧力制御を再開する際に、停止していた給気用電磁弁36と排気用電磁弁37が冷えている。給気用電磁弁36と排気用電磁弁37は、冷えている時でも仕様の性能は満足するが、暖められることで安定して性能を満足するようになる。
【0055】
そこで、電空レギュレータ1は、第2モードが設定されて、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とを停止させる場合に、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の開閉動作を再開する時刻の予約を受け付ける。電空レギュレータ1は、予約した時刻になると、第2モードを第1モードに自動的に切り替える。これにより、予約した時刻から給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とが開閉動作を再開され、暖められる。そのため、電空レギュレータ1は、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とに閉動作を長時間行わせた場合でも、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とを自動的に暖めてから、圧力制御を再開できるようになり、高寿命化と高応答性の両方を実現することが可能になる。
【0056】
また、電空レギュレータ1は、第2モードが設定されて、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とを停止させる場合に、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の開閉動作を停止する停止時間の設定を受け付ける。電空レギュレータ1は、設定された停止時間が経過すると、第2モードを第1モードに自動的に切り替える。これにより、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とを停止してから、停止時間が経過すると、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とが開閉動作を再開され、暖められる。そのため、電空レギュレータ1は、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とを半日もの長時間停止させた場合でも、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37とを自動的に暖めてから、圧力制御を再開できるようになり、高寿命化と高応答性の両方を実現することが可能になる。
【0057】
電空レギュレータ1は、コネクタ3を介して上位コントローラ100に接続されているため、上位コントローラ100から出力された第1モードと第2モードの設定や、予約時間の設定や、停止時間の設定を受け付け、それに従って給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の開閉動作を制御できる。
【0058】
また、電空レギュレータ1は、操作部6を介して第1モードと第2モードの設定や、予約時間の設定や、停止時間の設定を自装置で受け付け、それに従って給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の開閉動作を制御できる。
【0059】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。電空レギュレータ1は、入力信号に代えて、設定制御圧力を上位コントローラ100から直接取得してもよい。
【0060】
例えば、第2モードの設定を受け付けた場合に、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の開閉動作を再開させる時刻の予約を受け付けなくてもよい。また、第2モードの設定を受け付けた場合に、給気用電磁弁36と排気用電磁弁37の停止時間の設定を受け付けなくてもよい。つまり、第1モードと第2モードは、上位コントローラ100或いは操作部6から設定が変更されたときをトリガとして、切り替えられてもよい。
【0061】
電空レギュレータ1は、上位コントローラ100等の外部装置と通信する機能がなくてもよい。
【0062】
電空レギュレータ1は、表示部5や操作部6がなくてもよい。但し、表示部5や操作部6を備えることにより、電空レギュレータ1毎に情報の表示や入力を行うことができ、便利である。
【0063】
ブースタ20の構造は上記形態と異なっても差し支えない。また、ダイアフラム組立31は、ダイアフラム32に弁座面212に当接する弁体部を一体的に設けてもよい。ただし、金属等で形成したリリーフシート33を介して弁座面212に当接又は離間する鋼球34をダイアフラム32に取り付けることにより、排気弁27の動作を安定させることができる。
【0064】
給気用電磁弁36や排気用電磁弁37や圧力センサ39や制御基板38の配置は上記形態と異なっても差し支えない。
【符号の説明】
【0065】
1 電空レギュレータ
3 コネクタ
6 操作部
20 ブースタ
26 給気弁
27 排気弁
32 ダイアフラム
36 給気用電磁弁
37 排気用電磁弁
38 制御基板
39 圧力センサ