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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/16 20060101AFI20230210BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20230210BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230210BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230210BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20230210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
C07D471/16 CSP
A61K31/4985
A61K45/00
A61K47/54
A61P1/14
A61P3/02 101
A61P3/04
A61P15/00
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/06
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
A61P25/30
A61P25/32
A61P25/36
A61P43/00 123
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020503840
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 US2018043102
(87)【国際公開番号】W WO2019023063
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】62/537,292
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/647,492
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ペン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ハイリン・ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・デイビス
(72)【発明者】
【氏名】シャロン・メイツ
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー・バノーバー
(72)【発明者】
【氏名】グレッチェン・スナイダー
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/145192(WO,A1)
【文献】特表2003-502331(JP,A)
【文献】特表2015-512951(JP,A)
【文献】特表2011-523949(JP,A)
【文献】特表2016-539144(JP,A)
【文献】特表2013-525352(JP,A)
【文献】特表2019-503383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/00-471/22
A61K 31/4985
A61K 47/54
A61P 1/14
A61P 3/02
A61P 3/04
A61P 15/00
A61P 25/00
A61P 25/04
A61P 25/06
A61P 25/14
A61P 25/16
A61P 25/18
A61P 25/20
A61P 25/22
A61P 25/24
A61P 25/28
A61P 25/30
A61P 25/32
A61P 25/36
A61P 43/00
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
I:
【化1】
式I
[式中、
は、-C(O)-O-C(R)(R)(R)、-C(O)-O-CH-O-C(R)(R)(R)または-C(R)(R)-O-C(O)-Rであり;
Zは、Oまたは-C(O)-であり;
は、-C(R)(R)(R)、-O-C(R)(R)(R)または-N(R)(R)であり;
、RおよびRは、各々独立して、HおよびC1-24アルキルより選択され;
およびRは、各々独立して、HおよびC1-24アルキルより選択され;
およびRは、各々独立して、H、C1-6アルキル、カルボキシおよびC1-6アルコキシカルボニルより選択される]
で示される化合物、またはその医薬的許容される塩
【請求項2】
ZがOである、請求項1に記載の化合物またはその医薬的許容される塩
【請求項3】
Zが-C(O)である、請求項1に記載の化合物またはその医薬的許容される塩
【請求項4】
が-C(O)-O-C(R)(R)(R)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的許容される塩
【請求項5】
が-C(O)-O-CH-O-C(R)(R)(R)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的許容される塩
【請求項6】
が-C(R)(R)-O-C(O)-Rであり、Rが-C(R)(R)(R)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的許容される塩
【請求項7】
が-C(R)(R)-O-C(O)-Rであり、Rが-O-C(R)(R)(R)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的許容される塩
【請求項8】
が-C(R)(R)-O-C(O)-Rであり、Rが-N(R)(R)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的許容される塩
【請求項9】
II:
【化2】
式II
[式中、
Zは、Oまたは-C(O)-であり;
、R、RおよびRは、各々独立して、HおよびC1-6アルキルより選択され;
nは、1~23の整数である]
で示される化合物、またはその医薬的許容される塩
【請求項10】
求項1~9のいずれか一項に記載の化合物の医薬的許容される塩
【請求項11】
医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されて、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項12】
組成物が、長時間作用型注射として製剤化される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
長時間作用型注射が、筋肉注射または皮下注射用に製剤化される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
中枢神経系障害の治療または予防を必要とする患者における中枢神経系障害の治療または予防のための、請求項11~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
該中枢神経系障害が、肥満、不安、うつ病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、疼痛および疼痛に関連する状態、慢性疲労、広場恐怖症、社会恐怖症、認知症における激越、自閉症における激越、消化管障害、認症;気分障害;薬物依存、および薬物またはアルコール依存からの離脱;オピエート過剰摂取;薬物依存に関連する併存疾患;過食性障害;および強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)および関連障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
該中枢神経系障害が、特発性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛、薬物依存、薬物依存からの離脱、およびオピエート過剰摂取からなる群より選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
該中枢神経系障害が、セロトニン5-HT2A、セロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)、ドーパミンD1および/またはD2経路および/またはμオピオイド受容体が関連する障害である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
該中枢神経系障害が、(i)うつ病に罹患している患者における精神病;(2)精神病に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病に関連する気分障害;(4)精神病に関連する睡眠障害;および(5)物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害より選択される障害である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
該中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害、およびそれらの組合せより選択される障害である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項20】
該中枢神経系障害が、頭痛、特発性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛、線維筋痛症、および慢性疲労、およびオピエート依存、コカイン依存、アンフェタミン依存、および/またはアルコール依存、および薬物またはアルコール依存からの離脱;およびオピエート過剰摂取より選択される障害である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項21】
μオピエート、κオピエート、δオピエートおよび/またはノシセプチン/オルファニン受容体のアゴニストもしくはパーシャルアゴニストまたはインバースアゴニストもしくはアンタゴニストと組み合わせて投与するためのものである、請求項14~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
μオピエート、κオピエート、δオピエートおよび/またはノシセプチン/オルファニン受容体のアゴニストもしくはパーシャルアゴニストまたはインバースアゴニストもしくはアンタゴニストが、ブプレノルフィン、メサドン、ナロキソンまたはナルトレキソンから選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年7月26日出願の米国仮出願第62/537,292号、および2018年3月23日出願の第62/647,492号に基づく優先権を主張し、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、本明細書に記載の遊離、固体、医薬的に許容される塩および/または実質的に純粋な形態の置換複素環融合γ-カルボリンの特定のプロドラッグ、その医薬組成物、ならびに5-HT2A受容体、セロトニントランスポーター(SERT)、ドーパミンDおよび/またはD受容体シグナル伝達系に関連する経路、および/またはμオピオイド受容体が関連する疾患、例えば、不安、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、疼痛(例えば頭痛、神経障害性疼痛および急性鎮痛)に関連する状態、線維筋痛症、慢性疲労、社会恐怖症、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全および肥満;うつ病および気分障害、例えば精神病またはパーキンソン病に関連するもの;精神病、例えばうつ病に関連する統合失調症;双極性障害;薬物依存、例えばオピエート依存およびアルコール依存、薬物離脱症状;強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、および関連障害;および他の精神および神経学状態などの疾患または障害の治療における使用方法、ならびに他の薬物との組合せに関する。いくつかの実施態様において、疾患または障害は、治療抵抗性うつ病、コカイン依存、および/またはアンフェタミン依存、オピオイド使用障害およびオピオイド離脱症状を含み得る。
【背景技術】
【0003】
置換複素環縮合γ-カルボリンは、中枢神経系障害の処置において5-HT受容体、特に5-HT2Aおよび5-HT2C受容体のアゴニストまたはアンタゴニストであることが知られている。これらの化合物は、米国特許第6,548,493号;第7,238,690号;第6,552,017号;第6,713,471号;第7,183,282号;米国再発行特許第39680号および米国再発行特許第39679号に、5-HT2A受容体調節に関連する障害、例えば肥満、不安、うつ病、精神病、統合失調症、睡眠障害、性障害、片頭痛、頭痛に関連する状態、社会恐怖症、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全、および肥満の治療に有用な新規な化合物として記載されている。国際特許出願第PCT/US08/03340号(国際公開第2008/112280号)、およびそれに対応する米国特許出願公開第2010/113781号および米国特許出願第10/786,935号(米国特許出願公開第2004/209864号として公開)はまた、置換複素環縮合γ-カルボリンの製造方法、および中枢神経系障害、例えば嗜癖行動および睡眠障害の制御または予防に有用なセロトニンアゴニストおよびアンタゴニストとしてのこれらγ-カルボリンの使用を開示する。
【0004】
また、国際公開第2009/145900号(およびそれに対応する米国特許出願公開第2011/071080号)は、精神病およびうつ病性障害ならびに精神病またはパーキンソン病の患者における睡眠、うつ病性および/または気分障害の組合せの治療のための特定の置換複素環縮合γ-カルボリンの使用を開示する。精神病および/またはうつ病に関連する障害に加えて、この特許出願は、ドーパミンD受容体に影響を及ぼすことなくまたは影響を最小限とし、これにより高い占有率のドーパミンD経路に関連する副作用、または慣用の睡眠鎮静薬(例えばベンゾジアゼピン)に関連する他の経路(例えばGABA受容体)の副作用(薬物依存、筋緊張低下、脱力、頭痛、かすみ目、回転性めまい、悪心、嘔吐、上腹部不快感、下痢、関節痛および胸部痛の発症を含むがこれらに限定されない)なしに睡眠障害の処置に有用な、5-HT2A受容体に選択的に拮抗する、低用量におけるこれら化合物の使用を開示し、クレームする。国際公開第2009/114181号(およびそれに対応する米国特許出願公開第2011/112105号)はまた、これら置換複素環縮合γ-カルボリンのトルエンスルホン酸付加塩結晶の製造方法を開示する。
【0005】
また、最近の証拠は、上記置換複素環縮合γ-カルボリンが、ケタミンと同様の方法で、mTOR1シグナル伝達を介したNMDA受容体拮抗作用によって部分的に作動することを示している。ケタミンは、選択的NMDA受容体アンタゴニストである。ケタミンは、一般的な心因性モノアミン(セロトニン、ノルエピネフリンおよびドーパミン)と関連しないシステムによって作用し、これはその極めて迅速な効果の主な理由であるシステムによって作用する。ケタミンは、シナプス外グルタミン酸作動性NMDA受容体に直接拮抗し、これはまた、AMPA型グルタミン酸受容体の活性化を間接的にもたらす。下流の効果は、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびmTORC1キナーゼ経路を含む。ケタミンと同様に、最近の証拠は、本開示の化合物と関連する化合物が、D1受容体の活性化によりラット内側前頭前皮質錐体ニューロンのNMDAおよびAMPA誘発電流両方を増加させること、およびこれが、mTORC1シグナル伝達の増加に関連することを示唆する。
【0006】
関連する刊行物国際公開第2017/132408号および米国特許出願公開第2017/319580号は、上記刊行物で開示されている化合物の新規なオキソ代謝産物を開示している。これらの新規オキソ代謝産物は、セロトニン受容体阻害、SERT阻害およびドーパミン受容体調節を含む、親化合物の独特な薬理活性の多くを保持している。しかしながら、これらのオキソ代謝産物は、予想外にも、μオピエート受容体にて有意な活性も示すことが分かった。
【0007】
強迫性障害(OCD)および関連障害は、極めて一般的になっており、治療が困難である。OCDは、人々の約2.3%が生涯のある時点で発症すると推定され、所与の年の間に、世界中の人の1.2%が障害に罹患していると推定される。OCDに罹患している人の半分は、20歳より前に症状を示し始め、これは、適切で効果的な教育を受ける能力に深刻な影響を及ぼし得る。しかしながら、効果的な治療がなければ、疾患は数十年持続し得る。薬理的OCD治療の中心となるものは、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)によるものである。第2の治療法は、クロミプラミン、リスペリドン、クエチアピンおよびオランザピンなどの抗精神病薬によるものである。相当数の患者は、これらの薬物に反応しないか、またはこれらの薬物により引き起こされる副作用に対処できない。さらに最近では、オピオイド鎮痛薬のトラマドールがOCDの処置に有効であり得ることが報告されている。オピエートは、従来のOCD治療薬と全く異なる経路により作動し、それ故に従来のセロトニン性薬物を服用できないかまたはこれらの薬物が有効でない人に治療の可能性を提供する。しかしながら、強力なオピエート薬は耽溺性があり得て、その使用は一部の患者では禁忌であり得る。したがって、疼痛、OCDおよび他の障害の新しい治療が必要に迫られたままである。
【0008】
オピエート使用障害(OUD)などの薬物依存障害は、治療成功が困難である障害の別群である。オピオイド過剰摂取によって米国で毎日約100人の命が失われているといわれており、オピオイドの流行は、米国で広がり続けている。メサドン、ブプレノルフィンおよびナルトレキソンは、OUDの治療で最も頻繁に用いられている。メサドンは、μオピオイド受容体(MOP)アゴニストであり、ブプレノルフィンは、MOPパーシャルアゴニストであり、ナルトレキソンは、MOPアンタゴニストである。これらの薬物の成功は限定的であり、OUDのために処方される治療法に対する長期アドヒアランスは低いままである。また、これらの治療は、OUDに関連する一般的な併存疾患、例えば気分および不安障害を悪化させることが多く、これはさらに寛解のリスクを増加させる。急激なオピオイド濫用離脱(すなわち、「コールドターキー(cold turkey)」になること)はまた、不快感、抑うつおよび不安を含む重度の副作用に関連しており、一般的な治療薬は、これらの問題に対処せず、悪化させ得る。したがって、OUD治療の改善が必要に迫られている。
【発明の概要】
【0009】
以下に示す式AおよびBの化合物は、強力なセロトニン5-HT2A受容体アンタゴニストおよびμオピエート受容体パーシャルアゴニストまたはバイアスアゴニストである。これらの化合物はまた、ドーパミン受容体、特にドーパミンD1受容体と相互作用する。
【化1】
式Aおよび/またはBで示される化合物はまた、そのD1受容体活性により、NMDAおよびAMPA介在性シグナル伝達をmTOR経路を通って向上させ得ると考えられる。式AおよびBで示される化合物およびその類似体は、中枢神経系障害の治療または予防に有用であるが、患者に投与されたとき、これらの化合物の治療濃度の改善または薬物動態分布または動態の改善を提供できる式AおよびBで示される化合物のプロドラッグが当該技術分野において必要とされている。式AおよびBで示される化合物およびその類似体のプロドラッグである式IおよびII以降で示される化合物を提供することにより、本開示はこれを満たすものである。その有用な代謝および薬物動態プロファイルにより、本開示の化合物は、患者に投与されたとき、長時間にわたる化合物AおよびBおよびその類似体の治療量濃度の改善を提供する長時間作用型または持続放出組成物としての製剤に特に適している。
【0010】
第1態様において、本開示は、
【化2】
式I
[式中、
は、-C(O)-O-C(R)(R)(R)、-C(O)-O-CH-O-C(R)(R)(R)または-C(R)(R)-O-C(O)-Rであり;
Zは、Oまたは-C(O)-であり;
は、-C(R)(R)(R)、-O-C(R)(R)(R)または-N(R)(R)であり;
、RおよびRは、各々独立して、HおよびC1-24アルキルより選択され;
およびRは、各々独立して、HおよびC1-24アルキルより選択され;
およびRは、各々独立して、H、C1-6アルキル、カルボキシおよびC1-6アルコキシカルボニルより選択される]
で示され、
遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)である、化合物(化合物I)に関する。
【0011】
本開示は、遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)の、
1.1 ZがOである、化合物I;
1.2 Zが-C(O)である、化合物I;
1.3 Rが-C(O)-O-C(R)(R)(R)である、化合物I、1.1または1.2;
1.4 RがHであり、RおよびRが、各々独立して、C1-24アルキル、例えばC1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキルまたはC11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルより選択される、化合物1.3;
1.5 RおよびRがHであり、RがC1-24アルキル、例えばC1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキルまたはC11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルである、化合物1.3;
1.6 R、RおよびRが、各々独立して、C1-24アルキル、例えばC1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキルまたはC11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルより選択される、化合物1.3;
1.7 R、RおよびRが各々Hである、化合物1.3;
1.8 ZがOであり、RおよびRがHであり、RがC10-14アルキルである(例えば、RがCH(CH10またはCH(CH14である)、化合物1.3;
1.9 Rが-C(O)-O-CH-O-C(R)(R)(R)である、化合物I、1.1または1.2;
1.10 RがHであり、RおよびRが、各々独立して、C1-24アルキル、例えばC1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキルまたはC11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルより選択される、化合物1.9;
1.11 RおよびRがHであり、RがC1-24アルキル、例えばC1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキルまたはC11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルである、化合物1.9;
1.12 R、RおよびRが、各々独立して、C1-24アルキル、例えばC1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキルまたはC11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルより選択される、化合物1.9;
1.13 R、RおよびRが各々Hである、化合物1.9;
1.14 Rが-C(R)(R)-O-C(O)-Rであり、Rが-C(R)(R)(R)である、化合物I、1.1または1.2;
1.15 Rが-C(R)(R)-O-C(O)-Rであり、Rが-O-C(R)(R)(R)である、化合物I、1.1または1.2;
1.16 RがHであり、RおよびRが、各々独立して、C1-24アルキル、例えばC1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキルまたはC11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルより選択される、化合物1.14または1.15;
1.17 RおよびRがHであり、RがC1-24アルキル、例えばC1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキルまたはC11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルである、化合物1.14または1.15;
1.18 R、RおよびRが、各々独立して、C1-24アルキル、例えばC1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキルまたはC11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルより選択される、化合物1.14または1.15;
1.19 R、RおよびRが各々Hである、化合物1.14または1.15;
1.20 ZがOであり、RがHであり、RがC1-3アルキルであり(例えば、Rがメチルまたはイソプロピルである)、RがC10-14アルキルである(例えば、RがCH(CH10またはCH(CH14である)、化合物1.14;
1.21 Rが-C(R)(R)-O-C(O)-Rであり、Rが-N(R)(R)である、化合物I、1.1または1.2;
1.22 RがHであり、Rが、独立して、C1-24アルキル、例えばC1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキルまたはC11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルより選択される、化合物1.21;
1.23 RおよびRは、各々独立して、C1-24アルキル、例えば、C1-20アルキル、C5-20アルキル、C9-18アルキル、C10-16アルキルまたはC11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキルまたはC16アルキルより選択される、化合物1.21;
1.24 RおよびRが各々Hである、化合物1.21;
1.25 RがHであり、RがHである、化合物1.14~1.24のいずれか;
1.26 RがC1-6アルキルおよびRがC1-6アルキルである、化合物1.14~1.24のいずれか;
1.27 RがHであり、RがC1-6アルキルである、化合物1.14~1.24のいずれか;
1.28 RがHであり、Rがカルボキシである、化合物1.14~1.24のいずれか;
1.29 RがHであり、RがC1-6アルコキシカルボニル、例えばエトキシカルボニルまたはメトキシカルボニルである、化合物1.14~1.24のいずれか;
1.30 遊離形態の、化合物Iまたは1.1~1.29のいずれか;
1.31 塩形態、例えば医薬的に許容される塩の、化合物Iまたは1.1~1.29のいずれか;
1.32 実質的に純粋なジアステレオマー形態である(すなわち、他のジアステレオマーを実質的に含まない)、化合物Iまたは1.1~1.31のいずれか;
1.33 70%超、好ましくは80%超、より好ましくは90%超および最も好ましくは95%超のジアステレオマー過剰率を有する、化合物Iまたは1.1~1.31のいずれか;
1.34 固体形態の化合物Iまたは1.1~1.33のいずれか
を含む、遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)の式Iで示される化合物の更なる例示的実施態様を提供する。
【0012】
第2態様において、本開示は、式II:
【化3】
式II
[式中、
Zは、Oまたは-C(O)-であり;
、R、RおよびRは、各々独立して、HおよびC1-6アルキルより選択され;
nは、1~23の整数である]
で示され、
遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)である、化合物に関する。
【0013】
本開示は、遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)の、
2.1 ZがOである、化合物II;
2.2 Zが-C(O)である、化合物II;
2.3 RおよびRがHであり、RおよびRが、各々独立して、C1-6アルキル、例えばC1-4アルキル、C1-3アルキルまたはC1-2アルキルより選択される、化合物II、2.1または2.2;
2.4 RおよびRがHであり、RおよびRが、各々独立して、C1-6アルキル、例えばC1-4アルキル、C1-3アルキルまたはC1-2アルキルより選択される、化合物II、2.1または2.2;
2.5 R、R、RおよびRが、各々独立して、C1-6アルキル、例えばC1-4アルキル、C1-3アルキルまたはC1-2アルキルより選択される、化合物II、2.1または2.2;
2.6 R、R、RおよびRが各々Hである、化合物II、2.1または2.2;
2.7 nが、1~21、例えば、3~21または3~15または5~15または7~13または7~11の整数である、化合物IIまたは化合物2.1~2.6のいずれか;
2.8 遊離形態の、化合物IIまたは2.1~2.7のいずれか;
2.9 塩形態、例えば医薬的に許容される塩形態の、化合物IIまたは2.1~2.7のいずれか;
2.10固体形態の、化合物IIまたは2.1~2.7のいずれか
を含む、遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)の式IIで示される化合物の更なる例示的実施態様を提供する。
【0014】
第3態様において、本開示は、医薬的に許容される塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)の、前記の化合物Iもしくは1.1~1.34または化合物IIもしくは2.1~2.10、(以下まとめて、「式I~II以降の化合物」または「本開示の本開示の化合物」)の各々を提供する。本開示は、
5.1 塩が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセチルサリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などより選択される酸付加塩である、式I~II以降の化合物;
5.2 塩がフマル酸付加塩である、式I~II以降の化合物;
5.3 塩がリン酸付加塩である、式I~II以降の化合物;
5.4 塩がトルエンスルホン酸付加塩である、式I~II以降の化合物;
5.5 塩が固体形態である、5.1~5.4のいずれか
を含む、式I~II以降の化合物の更なる例示的実施態様を提供する。
【0015】
第5態様において、本開示は、化合物Iもしくは1.1~1.34または化合物IIもしくは2.1~2.10(まとめて、式I~II以降の化合物または本開示の化合物)のいずれかによる化合物を、例えば医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されて含む、医薬組成物(医薬組成物6)を提供する。本開示は、
6.1 化合物Iまたは1.1~1.34のいずれかを含む、医薬組成物6;
6.2 化合物IIまたは2.1~2.10のいずれかを含む、医薬組成物6;
6.3 式I~II以降の化合物が、固体形態である、医薬組成物6または6.1~6.2のいずれか;
6.4 式I~II以降の化合物が、化合物5.1~5.5に記載の医薬的に許容される塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)である、医薬組成物6または6.1~6.3のいずれか;
6.5 式I~II以降の化合物が、医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されている、医薬組成物6または6.1~6.4のいずれか
を含む、医薬組成物6の更なる例示的実施態様を提供する。
【0016】
更なる実施態様において、本開示の医薬組成物は、持続または遅延放出のためのものであり、例えばデポー製剤である。一の実施態様において、デポー製剤(デポー製剤6.6)は、好ましくは遊離または医薬的に許容される塩形態であって、好ましくは医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されている、6.1~6.5のいずれかの医薬組成物であり、例えば注射可能なデポーとして持続または遅延放出を提供する。
【0017】
特定の実施態様において、デポー製剤6.6は、遊離塩基または医薬的に許容される塩形態、所望により結晶形態の、化合物Iまたは1.1~1.34、または化合物IIまたは2.1~2.10のいずれか1つによる化合物を含み、ここで、該化合物は、マイクロ粒子またはナノ粒子サイズ、例えば、0.5~100μm、例えば5~30μm、10~20μm、20~100μm、20~50μmまたは30~50μmの体積ベースの粒子径(例えば直径またはDv50)を有する粒子または結晶に粉砕されているかまたは結晶化される。このような粒子または結晶は、適切な医薬的に許容される希釈剤または担体、例えば水と組み合されて、注射用デポー製剤を形成し得る。例えば、デポー製剤は、4~6週間の治療に適した投与量の薬物を有する筋肉内または皮下注射に製剤化され得る。いくつかの実施態様において、粒子または結晶は、.1~5m/g、例えば0.5~3.3m/gまたは0.8~1.2m/gの表面積を有する。
【0018】
別の一実施態様において、本開示は、医薬組成物6または6.1~6.6のいずれかであり、式I~II以降の化合物がポリマーマトリックス中である、医薬組成物6.7を提供する。一の実施態様において、本開示の化合物は、ポリマーマトリックス内に分散または溶解している。更なる実施態様において、ポリマーマトリックスは、デポー製剤において用いられる標準的ポリマー、例えばヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体より選択されるポリマー、またはアルキルα-シアノアクリレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリオルトエステル、ポリカルボネート、ポリオルト-カルボネート、ポリアミノ酸、ヒアルロン酸エステルおよびその混合物のポリマーを含む。更なる実施態様において、ポリマーは、ポリ乳酸、ポリd,l-乳酸、ポリグリコール酸、PLGA50:50、PLGA85:15およびPLGA90:10のポリマーからなる群より選択される。別の一実施態様において、ポリマーは、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカルボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどより選択される。好ましい実施態様において、ポリマーマトリックスは、ポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)を含む。
【0019】
(医薬)組成物6および6.1~6.7は、持続または遅延放出に特に有用であり、ここで、本開示の化合物は、ポリマーマトリックスの分解時に放出される。これらの組成物は、最大180日間、例えば約14から約30から約180日間にわたる本開示の化合物の制御および/または持続放出のために(例えばデポー組成物として)製剤化され得る。例えば、ポリマーマトリックスは、約30、約60または約90日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。別の一例において、ポリマーマトリックスは、約120または約180日間にわたって本開示の化合物を分解および放出し得る。
【0020】
さらに別の一実施態様において、本開示の医薬組成物、例えば本開示のデポー組成物、例えば医薬組成物6.6または6.7は、注射による投与のために製剤化される。
【0021】
第5態様において、本開示は、国際公開第2000/35419号(米国特許出願公開第2001/0036472号)および欧州特許出願公開第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)に記載の浸透圧による制御放出経口送達システム(OROS)において前記式I~II以降の化合物を提供し、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。したがって、第7態様の一実施態様において、本開示は、(a)遊離または医薬的に許容される塩形態の式I~II以降いずれかの化合物または前記の本発明の医薬組成物を含有するゼラチンカプセル;(b)カプセルから外側へ向かう順序で、(i)バリア層、(ii)膨張層および(iii)半透過層を含む、ゼラチンカプセル上に重ねられた多層壁;および(c)および壁を通って形成されているかまたは形成可能なオリフィスを含む、医薬組成物またはデバイス(医薬組成物P.1)を提供する。
【0022】
別の一実施態様において、本発明は、液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式I~II以降の化合物または本発明の医薬組成物、例えば医薬組成物6または6.1~6.7のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む医薬組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層、および壁に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれている、医薬組成物(医薬組成物P.2)を提供する。
【0023】
第5態様のさらに別の一実施態様において、本発明は液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式I~II以降の化合物または本発明の医薬組成物、例えば医薬組成物6または6.1~6.7のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層に接触している膨張層、膨張層を包含する半透過層、および壁に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスを含む複合壁によって囲まれており、該バリア層が膨張層と出口オリフィスでの環境との間にシールを形成する、組成物(医薬組成物P.3)を提供する。
【0024】
第5態様のさらに別の一実施態様において、本発明は、液体、遊離または医薬的に許容される塩形態の式I~II以降の化合物または本発明の医薬組成物、例えば医薬組成物6または6.1~6.7のいずれかを含有するゼラチンカプセルを含む組成物であって、該ゼラチンカプセルが、ゼラチンカプセルの外表面に接触しているバリア層、バリア層の一部に接触膨張層、少なくとも膨張層を包含する半透過層、およびゼラチンカプセル表面から使用環境まで延びている投与剤形に形成されているかまたは形成可能な出口オリフィスによって囲まれている、組成物(医薬組成物P.4)を提供する。膨張層は、1つ以上の個別のセクション、例えばゼラチンカプセルの対向する側部または端部に位置する2つのセクションに形成され得る。
【0025】
第5態様の特定の態様において、浸透圧による制御放出経口送達システム(すなわち組成物P.1~P.4)中の本開示の化合物は、液体製剤中であり、ここで、該製剤は、純粋な液体活性剤、溶液、懸濁液、エマルションもしくは自己乳化組成物中の液体活性剤、または同類のものであり得る。
【0026】
ゼラチンカプセル、バリア層、膨張層、半透過層;およびオリフィスの特徴を含む浸透圧による制御放出経口送達システム組成物の更なる情報は、国際公開第2000/35419号およびUS 2001/0036472に見ることができ、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0027】
式I~II以降の化合物または本開示の医薬組成物のための他の浸透圧による制御放出経口送達システムは、欧州特許出願公開第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)に見ることができ、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。したがって、第7態様の別の一実施態様において、本発明は、(a)第1層および第2層を含む2つ以上の層であって、該第1層が遊離もしくは医薬的に許容される塩形態の式I~II以降の化合物または前記医薬組成物を含み、該第2層がポリマーを含む、2つ以上の層;(b)2つ以上の層を囲む外壁;および(c)該外壁におけるオリフィスを含む、組成物またはデバイス(医薬組成物P.5)を提供する。
【0028】
医薬組成物P.5は、好ましくは、3層コアを囲む半透膜を利用し;これらの実施態様において、第1層は、第1薬物層と称され、少量の薬物(例えば式I~II以降の化合物)および塩などの浸透圧調整剤を含有し、中間層は、第2薬物層と称され、多量の薬物、添加剤を含有し、塩を含有せず:第3層は、プッシュ層と称され、浸透圧調整剤を含有し、薬物を含有しない(医薬組成物P.6)。少なくとも1つのオリフィスは、カプセル型錠剤の第1薬物層端部の膜を通して穿孔される。
【0029】
医薬組成物P.5またはP.6は、区画を画定する膜であって、該膜が内部保護サブコート、そこに形成されているかまたは形成可能な少なくとも1つの出口オリフィスおよび半透過性の膜の少なくとも一部を囲む膜;出口オリフィス遠く離れて区画内に位置する膨張層であって、膜の半透過性部分と流体連結している膨張層;出口オリフィスと隣接して位置する第1薬物層;および第1薬物層と膨張層間の区画内に位置する第2薬物層であって、本発明の化合物を遊離またはその医薬的に許容される塩で含む薬物層を含み得る(医薬組成物P.7)。第1薬物層および第2薬物層の相対粘度に応じて、異なる放出プロファイルが得られる。各層の最適な粘度を同定するのは必須である。本発明において、粘度は、塩、塩化ナトリウムの添加によって調節される。コアからの送達プロファイルは、各薬物層の重量、処方、厚さに依存する。
【0030】
特定の実施態様において、本発明は、第1薬物層が塩を含み、第2薬物層が塩を含まない、医薬組成物P.7を提供する。医薬組成物P.5~P.7は、所望により、膜と薬物層との間に流動促進層を含み得る。
【0031】
医薬組成物P.1~P.7は、一般的に、浸透圧による制御放出経口送達システム組成物と称される。
【0032】
第6態様において、本発明は、中枢神経系障害の治療または予防方法であって、それを必要とする患者に式I~II以降の化合物または医薬組成物6または6.1~6.7またはP.1~P.7を投与することを含む、方法(方法1)、例えば、投与される化合物または組成物が、
1.1 遊離または医薬的に許容される塩形態の化合物Iまたは1.1~1.34のいずれか;
1.2 遊離または医薬的に許容される塩形態の化合物IIまたは2.1~2.10のいずれか;
1.3 実施態様5または5.1~5.5のいずれかの化合物;
1.4 医薬組成物6および6.1~6.7のいずれかに記載の医薬組成物;
1.5 デポー組成物6.6または6.7に記載のデポー組成物;
1.6 医薬組成物P.1~P.7;
1.7 前記浸透圧による制御放出経口送達システム組成物;
である、方法1を提供する。
【0033】
第8態様の更なる実施態様において、本開示は、方法が、
1.8 中枢神経系障害が、肥満、不安(例えば全般性不安、社交不安、およびパニック障害)、うつ病(例えば難治性うつ病およびMDD)、精神病(例えば認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚または偏執性妄想)、統合失調症、睡眠障害(特に統合失調症および他の精神および神経疾患に関連する睡眠障害)、性障害、片頭痛、疼痛および疼痛に関連する状態、例えば頭痛、特発性疼痛、慢性疼痛(例えば、他の病気のために24時間の長時間治療を必要とする患者における中等度から中重度の慢性疼痛)、神経障害性疼痛、歯痛、線維筋痛症、慢性疲労、広場恐怖症、社会恐怖症、認知症における激越(例えばアルツハイマー病における激越)、自閉症および関連する自閉症障害における激越、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全、および認知症、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病における認知症;気分障害;薬物依存、例えばオピエート依存および/またはアルコール依存、および薬物またはアルコール依存(例えばオピエート依存)からの離脱;オピエート過剰摂取;薬物依存に関連する併存疾患、例えばうつ病、不安および精神病;過食性障害;および強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)および関連障害;またはオピエート使用障害(OUD)からなる群より選択される障害である、方法1または方法1.1~1.7のいずれか;
1.9 中枢神経系障害が、国際公開第2009/145900号および米国特許出願公開第2011/071080号(これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に同様に記載される、セロトニン5-HTA、ドーパミンD1および/またはD2受容体系および/またはセロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)経路が関連する障害である、方法1または方法1.1~1.8のいずれか;
1.10 中枢神経系障害が、μオピオイド受容体関連障害である、方法1または方法1.1~1.9のいずれか;
1.11 中枢神経系障害が、(i)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病および/または薬物依存、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する睡眠障害;および(5)物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害より選択される障害であり、所望により、患者が不安または不安障害の残遺症状に罹患しており、所望により、うつ病が治療抵抗性うつ病である、方法1または方法1.1~1.10のいずれか;
1.12 中枢神経系障害が精神病、例えば統合失調症であり、該患者がうつ病に罹患している患者である、方法1または方法1.1~1.11のいずれか;
1.13 該患者が、慣用の抗精神病薬、例えばクロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジンプロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドンの副作用に耐えることができない、方法1または方法1.1~1.12のいずれか;
1.14 該患者が、非麻薬性鎮痛薬および/またはオピエートおよびオピオイド薬の副作用に耐えられない、あるいはオピエート薬の使用が、例えば物質濫用のためまたは物質濫用の可能性が高いため、該患者では禁忌であり、オピエートおよびオピオイド薬が、例えばモルヒネ、コデイン、テバイン、オリパビン、ジプロピオン酸モルヒネ、ジニコチン酸モルヒネ、ジヒドロコデイン、ブプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォン、フェンタニル、α-メチルフェンタンチル、アルフェンタニル、トレファンチニル、ブリフェンタニル、レミフェンタニル、オクトフェンタニル、スフェンタニル、カルフェンタニル、メペリジン、プロジン、プロメドール、ロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、メサドン、ジフェノキシレート、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、トラマドール、タペンタドールおよびアニレリジン、またはそれらの任意の組合せを含む、方法1または方法1.1~1.13のいずれか;
1.15 該患者が、慣用の抗精神病薬、例えばハロペリドール、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンおよびジプラシドンの副作用に耐えることができない、方法1または方法1.1~1.14のいずれか;
1.16 該障害がうつ病であり、該患者が精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に罹患している患者である、方法1または方法1.1~1.15のいずれか;
1.17 該障害が睡眠障害であり、該患者がうつ病に罹患している、方法1または方法1.1~1.15のいずれか;
1.18 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者が精神病、例えば統合失調症に罹患している、方法1または方法1.1~1.15のいずれか;
1.19 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者がパーキンソン病に罹患している、方法1または方法1.1~1.15のいずれか;
1.20 該1つ以上の障害が睡眠障害であり、該患者がうつ病および精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に罹患している、方法1または方法1.1~1.15のいずれか;
1.21 該患者が薬物依存障害に罹患しており、所望により前記障害のいずれかに関連して、例えば、該患者がオピエート依存、コカイン依存、アンフェタミン依存および/またはアルコール依存、または薬物またはアルコール依存(例えばオピエート、コカインまたはアンフェタミン依存)からの離脱に罹患しており、所望により患者が併存疾患、例えば不安、うつ病または精神病、または不安または不安障害および/または気分変化(例えばうつ病)の残遺症状に罹患しており;さらに所望により患者がオピエート過剰摂取に罹患している、方法1または1.1~1.20のいずれか;
1.22 有効量が、1mg~1000mg、好ましくは2.5mg~50mg、あるいは長時間作用型製剤については、25mg~1500mg、例えば50mg~500mgまたは250mg~1000mgまたは250mg~750mgまたは75mg~300mgである、前記方法のいずれか;
1.23 有効量が、1日当たり1mg~100mg、例えば1日当たり2.5mg~50mgである、前記方法のいずれか;
1.24 治療されるべき状態が、例えば、ドーパミン作動薬、例えばレボドパおよびレボドパアジュバント(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドーパミンアゴニス、および抗コリン作動薬より選択される医薬、例えばレボドパを投与されている患者における、ジスキネジアである、前記方法のいずれか;
1.25 患者がパーキンソン病に罹患している、前記方法のいずれか
をさらに含む、方法1または方法1.1~1.7のいずれかを提供する。
【0034】
物質使用障害および物質誘発障害は、DSMの第5版(精神障害の診断と統計マニュアル、またはDSM-V)により定義される物質関連障害の2つのカテゴリーである。物質使用障害は、個人が、結果をして問題を経験するにもかかわらず摂取を継続する物質の使用により生じる症状のパターンである。物質誘発障害は、物質の使用により誘発される障害である。物質誘発障害は、中毒、離脱、物質誘発精神障害、例えば物質誘発精神病、物質誘発双極性および関連障害、物質誘発うつ病性障害、物質誘発不安障害、物質誘発強迫性および関連障害、物質誘発睡眠障害、物質誘発性機能不全、物質誘発せん妄および物質誘発神経認知障害を含む。
【0035】
DSM-Vは、物質使用障害を軽度、中等度または重度に分類する基準を含む。本明細書に記載の方法のいくつかの実施態様において、物質使用障害は、軽度物質使用障害、中等度物質使用障害または重度物質使用障害より選択される。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、軽度物質使用障害である。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、中等度物質使用障害である。いくつかの実施態様において、物質使用障害は、重度物質使用障害である。
【0036】
不安およびうつ病は、物質使用または物質濫用の治療を受けている患者において極めて一般的な併存障害である。物質濫用障害の一般的治療は、オピオイドパーシャルアゴニストであるブプレノルフィンとオピオイドアンタゴニストであるナロキソンとの組合せであるが、これらの薬物はいずれも、不安またはうつ病に対して顕著な効果がなく、それ故に、第3の薬物、例えばベンゾジアゼピン系抗不安薬またはSSRI抗うつ薬もまた処方されなければならないという共通の結果をもたらす。これは、治療レジメンおよび患者コンプライアンスをより困難にする。対照的に、本開示の化合物は、セロトニン拮抗作用およびドーパミン調節と共にオピエート拮抗作用を提供する。これにより、不安および/またはうつ病と併存して物質使用または濫用障害を有する患者の治療が顕著に増強され得る。
【0037】
本開示の化合物は、併存不安に罹患している患者の抗不安薬での治療の必要性を軽減する抗不安特性を有し得る。したがって、いくつかの実施態様において、本開示は、中枢神経系障害が、例えば不安の症状に罹患している患者または併存障害または残遺障害として不安と診断された患者における、物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害または物質濫用障害であり、該方法が、抗不安薬、例えばベンゾジアゼピンの更なる投与を含まない、方法1、または方法1.1~1.25のいずれかによる方法を提供する。ベンゾジアゼピンは、GABA調節化合物であり、これは、下記方法3.1および3.2を参照して説明されるものを含む。
【0038】
第6態様の別の一実施態様において、本開示は、方法がさらに、
1.26 中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害、およびそれらの組合せより選択される障害である、方法1または方法1.1~1.25のいずれか;
1.27 中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害および衝動制御障害より選択される、方法1または方法1.1~1.25のいずれか;
1.28 中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)または強迫性パーソナリティ障害(OCPD)である、方法1または方法1.1~1.25のいずれか;
1.29 該患者が、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、例えばシタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリンでの治療に反応しないか、またはその副作用に耐えられない、いずれかの前記方法;
1.30 該患者が、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、例えばベンラフェキシン、シブトラミン、デュロキセチン、アトモキセチン、デスベンラファキシン、ミルナシプランおよびレボミルナシプランでの治療に反応しないか、またはその副作用に耐えられない、いずれかの前記方法;
1.31 該患者が、抗精神病薬、例えばクロミプラミン、リスペリドン、クエチアピンおよびオランザピンでの治療に反応しないか、またはその副作用に耐えられない、いずれかの前記方法;
1.32 中枢神経系障害が、疼痛障害、例えば疼痛に関連する状態、例えば頭痛、特発性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛(例えば、他の病気のために24時間の長期治療を必要とする患者における中等度から中重度の慢性疼痛)、線維筋痛症、歯痛、外傷性疼痛または慢性疲労である、方法1または方法1.1~1.25のいずれか;
1.33 患者が、非麻薬性鎮痛薬および/またはオピエートおよびオピオイド薬に反応しないか、またはその副作用に耐えられない、あるいはオピエート薬の使用が、例えば物質濫用のためまたは物質濫用の可能性が高いため、該患者では禁忌であり、オピエートおよびオピオイド薬が、例えばモルヒネ、コデイン、テバイン、オリパビン、ジプロピオン酸モルヒネ、ジニコチン酸モルヒネ、ジヒドロコデイン、ブプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォン、フェンタニル、α-メチルフェンタンチル、アルフェンタニル、トレファンチニル、ブリフェンタニル、レミフェンタニル、オクトフェンタニル、スフェンタニル、カルフェンタニル、メペリジン、プロジン、プロメドール、ロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、メサドン、ジフェノキシレート、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、トラマドール、タペンタドールおよびアニレリジン、またはそれらの任意の組合せを含む、いずれかの前記方法;
1.34 中枢神経系疾患または障害が、薬物依存(例えばオピエート依存(すなわちオピオイド使用障害)、コカイン依存、アンフェタミン依存、および/またはアルコール依存)、または薬物またはアルコール依存(例えばオピエート、コカインまたはアンフェタミン依存)からの離脱であり、患者が、併存疾患、例えば不安、うつ病または精神病にも罹患しており;所望により患者が、オピエート過剰摂取にも罹患している、方法Iまたは方法1.1~1.33のいずれか;
1.35 有効量が、1mg~1000mg、好ましくは2.5mg~50mg、あるいは長時間作用型製剤については、25mg~1500mg、例えば50mg~500mgまたは250mg~1000mgまたは250mg~750mgまたは75mg~300mgである、前記方法のいずれか;
1.36 有効量が、1日当たり1mg~100mg、好ましくは1日当たり2.5mg~50mgである、前記方法のいずれか
である、方法1または方法1.1~1.7のいずれかを提供する。
【0039】
さらに別の一実施態様において、本開示は、障害が統合失調症または睡眠障害である、前記方法1または1.1~1.36のいずれかを提供する。いくつかの実施態様において、該統合失調症はうつ病に関連する。
【0040】
さらに別の一実施態様において、本開示は、本発明のデポー組成物(例えば製剤6.6~6.7のいずれかのデポー組成物)、または(医薬)組成物6または6.1~6.7、または医薬組成物P.1~P.7が、約14日間、約30~約180日間にわたる、好ましくは約30、約60または約90日間にわたる本発明の化合物の制御および/または持続放出のために投与される、方法1.1~1.36のいずれかを提供する。制御および/または持続放出は、治療、特に、投薬レジメンのノンコンプライアンスまたはノンアドヒアランスがよく起こることである抗精神病薬治療の早期中止を回避するために特に有用である。
【0041】
さらに別の一実施態様において、本発明は、本開示のデポー組成物が一定時間の本発明の化合物の制御および/または持続放出のために投与される、前記方法1または1.1~1.36のいずれかを提供する。
【0042】
第6態様の別の一実施態様において、本発明は、患者が消化管障害および/または肺障害に罹患している、方法1、または方法1.1~1.36のいずれか、例えば任意の疼痛治療方法を提供する。従来のオピオイド鎮痛薬は、消化管障害(例えば悪心、嘔吐および便秘)および呼吸抑制の2つの主な副作用を被る。長期間疼痛治療のためにオピオイドを服用している患者の90~95%は、重度の便秘を発症し、緩下剤および/または浣腸剤の長期使用を必要とする。より強いオピオイド、例えばモルヒネ、オキシコドンおよびヒドロモルフォンは、他のオピオイドよりより重度の便秘を引き起こす。呼吸抑制は、特に患者が他の合法または不法呼吸抑制薬(アルコールを含む)と組み合わせて(意図的または不注意で)処方されている場合、死亡のリスクを生じるため、オピオイド治療の最も深刻な副作用である。したがって、疼痛治療、特に慢性疼痛治療を必要とする患者は、既存の消化管または肺障害に罹患している場合、副作用の特定のリスクがある。従来のオピオイド鎮痛薬とはことなり、本発明の化合物は、著しい消化管副作用および著しい呼吸抑制無しに鎮痛緩和を提供する。したがって、このような化合物は、これら既存のGIおよび肺障害を有する疼痛治療を必要とする患者に改善された安全性および有効性を提供する。更なる実施態様において、本発明の化合物は、従来のオピエート薬と組み合されて、従来のオピエート薬に関する用量節約効果(および付随する副作用のリスクの軽減)を伴う改善された疼痛コントロールを提供し得る。
【0043】
したがって、特定の実施態様において、本発明は、
1.37 患者が、既存または併存消化管障害および/または肺障害に罹患している、方法1または1.1~1.36のいずれか;
1.38 既存または併存障害が、過敏性腸症候群、基盤底障害、憩室炎、炎症性腸疾患、結腸または結腸直腸癌、セリアック病、非セリアック・グルテン過敏症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸困難、肺炎、うっ血性心不全、間質性肺疾患、気胸、気管支炎、肺塞栓症および外傷性胸部傷害(例えば胸骨または肋骨骨折、肋間筋損傷)からなる群より選択される、方法1.37;
1.39 中枢神経系障害が、疼痛障害、例えば疼痛に関連する状態、例えば頭痛、特発性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛(例えば、他の病気のために24時間の長期治療を必要とする患者における中等度から中重度の慢性疼痛)、線維筋痛症、歯痛、外傷性疼痛または慢性疲労である、方法1.37または1.38;
1.40 中枢神経系障害が、オピエート使用障害、オピエート離脱またはオピエート依存であり、方法が、離脱誘発症状(例えば、消化管症状、例えば下痢、不安、うつ病、疼痛、睡眠障害、またはそれらの任意の組合せ)の軽減を提供する、方法1または1.1~1.39のいずれか;
1.41 方法が、別のオピエートまたはオピオイド薬の同時投与の並行投与、例えば、同時に、別個にまたは連続して投与されることをさらに含む、方法1または1.1~1.40のいずれか;
1.42 更なるオピエートまたはオピオイド薬が、モルヒネ、コデイン、テバイン、オリパビン、ジプロピオン酸モルヒネ、ジニコチン酸モルヒネ、ジヒドロコデイン、ブプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォン、フェンタニル、α-メチルフェンタンチル、アルフェンタニル、トレファンチニル、ブリフェンタニル、レミフェンタニル、オクトフェンタニル、スフェンタニル、カルフェンタニル、メペリジン、プロジン、プロメドール、ロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、メサドン、ジフェノキシレート、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、トラマドール、タペンタドールおよびアニレリジン、またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される、方法1.41;
1.43 方法が、NMDA受容体アンタゴニストの並行投与、例えば、同時に、別個にまたは連続して投与されることをさらに含む、方法1または1.1~1.42のいずれか;
1.44 NMDA受容体アンタゴニストが、ケタミン(例えばS-ケタミンおよび/またはR-ケタミン)、ヒドロキシノルケタミン、メマンチン、デキストロメトルファン、デキストロアロルファン、デキストロルファン、アマンタジンおよびアグマチン、またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される、方法1.43;
1.45 化合物が、式Iの化合物であり、式中Zが-O-である、方法1.37~1.44のいずれか
をさらに提供する。
【0044】
第7態様において、本発明は、1つ以上の睡眠障害の予防または治療方法であって、それを必要とする患者に式I~II以降の化合物または医薬組成物6または6.1~6.7またはP.1~P.7を投与することを含む、方法(方法2)、例えば投与される化合物または組成物が、
2.1 遊離または医薬的に許容される塩形態の化合物Iまたは1.1~1.34;
2.2 遊離または医薬的に許容される塩形態の化合物IIまたは2.1~2.10;
2.3 化合物5または5.1~5.5;
2.4 組成物6および6.1~6.7のいずれかに記載の医薬組成物;
2.5 デポー組成物6.6または6.7に記載のデポー組成物;
2.6 医薬組成物P.1~P.7;
2.7 前記浸透圧による制御放出経口送達システム組成物
である、方法2を提供する。
【0045】
第7態様の更なる実施態様において、本発明は、睡眠障害が、睡眠維持障害、頻繁な覚醒、および休息できていないと感じる目覚めを含む、方法2、または2.1~2.7;例えば、
2.8 睡眠障害が、睡眠維持障害である、前記方法のいずれか;
2.9 有効量が、1日当たり1mg~5mg、好ましくは2.5~5mgである、前記方法のいずれか;
2.10 有効量が、1日当たり2.5mgまたは5mgである、前記方法のいずれか;
2.11 睡眠障害が、ジスキネジアに罹患しているかまたはそのリスクがある患者、例えばレボドパおよびレボドパアジュバント(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドーパミンアゴニストおよび抗コリン作動薬より選択されるドーパミン作動薬、例えばレボドパを投与されている患者におけるものである、前記方法のいずれか;
2.12 患者がパーキンソン病に罹患している、前記方法のいずれか
を提供する。
【0046】
第7態様の更なる実施態様において、本発明は、睡眠障害が、睡眠維持障害、頻繁な覚醒、および休息できていないと感じる目覚めを含む、方法2、または2.1~2.12のいずれかを提供する。
【0047】
本開示の化合物、本開示の医薬組成物または本開示のデポー組成物は、慣用の単剤療法において通常生じる望ましくない副作用を引き起こすことなく組み合される薬物の治療活性を高めるように、特に個々の薬物が単剤療法として用いられる場合より低い投与量にて、第2治療薬と組み合され得る。したがって、本開示の化合物は、他の抗うつ薬、抗精神病薬、他の睡眠薬、および/またはパーキンソン病または気分障害を治療するのに用いられる薬物と同時に(simultaneously)、連続してまたは同期間に(contemporaneously)投与され得る。別の一例において、副作用は、本開示の化合物を1つ以上の第2治療薬と組み合わせて遊離または塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)で投与することにより軽減または最小化し得て、ここで、(i)第2治療薬または(ii)本開示および第2治療薬両方の化合物の投与量は、薬物/化合物が単剤療法として投与される場合より低い。特定の実施態様において、本開示の化合物は、例えばレボドパおよびレボドパアジュバント(カルビドパ、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤)、ドーパミンアゴニストおよび抗コリン作動薬より選択されるドーパミン作動薬を投与されている患者においてジスキネジアを治療するのに有用であり、例えばパーキンソン病の治療において用いられる。
【0048】
本開示のいくつかの更なる実施態様において、本開示の医薬組成物または本開示のデポー組成物は、望ましくない副作用を引き起こすことなく組み合される薬物の治療活性を高めるように、特に個々の薬物が単剤療法として用いられる場合より低い投与量にて、第2治療薬と組み合され得て、ここで、第2治療薬は、オピエートアンタゴニストまたはインバースアゴニスト(例えばナロキソン)である。本開示の化合物は、このようなオピエートアンタゴニストまたはオピエートインバースアゴニストと同時に、連続してまたは同期間に投与され得る。
【0049】
したがって、第8態様において、本開示は、1つ以上の治療薬の患者への投与をさらに含む方法であって、1つ以上の治療薬が、遊離または医薬的に許容される塩形態の、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABA伝達の促進する)化合物、GABA-Bアゴニスト、5-HT受容体モジュレーター(例えば5-HT1Aアゴニスト、5-HT2Aアンタゴニスト、5-HT2Aインバースアゴニストなど)、メラトニン受容体アゴニスト、イオンチャネルモジュレーター(例えばブロッカー)、セロトニン-2受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(例えば、5-HT拮抗作用およびセロトニン再取り込み阻害の療法を有する化合物、すなわちSARI)、オレキシン受容体アンタゴニスト、H3アゴニストまたはアンタゴニスト、ノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニスト、ガラニンアゴニスト、CRHアンタゴニスト、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアゴニスト、エストロゲン、エストロゲンアゴニスト、ニューロキニン-1薬、抗うつ薬、およびオピエートアゴニストおよび/またはオピエートパーシャルアゴニスト(例えばμ、κまたはδオピエート受容体アゴニストまたはパーシャルアゴニスト)、またはオピエートアンタゴニストおよび/またはオピエートインバースアゴニスト(例えばμ、κまたはδオピエート受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニスト)、ノシセプチンアゴニスト、および抗精神病薬、例えば非定型抗精神病薬より選択される、方法1、または方法1.1~1.45のいずれか、または方法2または2.1~2.12のいずれか(それぞれ方法1-Aおよび2-A;まとめて「方法3」)を提供する。第8態様の更なる実施態様において、本開示は、前記より選択される、およびさらにμオピエート、κオピエート、δオピエートおよび/またはノシセプチン/オルファニン受容体のアゴニストもしくはパーシャルアゴニストまたはアンタゴニストもしくはインバースアゴニストより選択される1つ以上の治療薬を患者に投与することをさらに含む、方法1、または方法1.1~1.45のいずれか、または方法2または2.1~2.12のいずれかを提供する。第8態様の更なる実施態様において、本開示はまた、セロトニンHT6受容体アンタゴニスト、およびmGluR-2、-3または-5受容体アゴニストまたはアンタゴニスト(例えば正と負の両方のモジュレーターおよびパーシャルアゴニストを含む)より選択される1つ以上の治療薬を患者に投与することをさらに含む、方法1、または方法1.1~1.45のいずれか、または方法2または2.1~2.12のいずれかを提供する。
【0050】
第8態様の更なる実施態様において、本発明は、患者に1つ以上の治療薬を以下のように:
3.1 治療薬が、GABA活性を調節する(例えば、活性を増強し、GABA伝達の促進する)化合物である、方法1-Aまたは2-A;
3.2 GABA化合物が、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(EvotecPharmaceuticals)およびエスタゾラムの1つ以上からなる群より選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.1;
3.3 治療薬が更なる5HT2a受容体アンタゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
3.4 該更なる5HT2a受容体アンタゴニストが、ピマバンセリン、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis、France)、プルバンセリン、MDL100907(Sanofi-Aventis、France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmaceuticals、San Diego、CA)およびAVE8488(Sanofi-Aventis、France)の1つ以上より選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.3;
3.5 治療薬がメラトニン受容体アゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
3.6 メラトニン受容体アゴニストが、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、Takeda Pharmaceuticals、Japan)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals、Rockville、MD)、PD-6735(Phase II Discovery)およびアゴメラチンの1つ以上からなる群より選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.5;
3.7 治療薬がイオンチャネルブロッカーである、方法1-Aまたは2-A;
3.8 該イオンチャネルブロッカーが、ラモトリジン、ギャバペンチンおよびプレガバリンの1つ以上である、方法I-Aまたは2-Aまたは3.7;
3.9 治療薬がオレキシン受容体アンタゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
3.10 オレキシン受容体アンタゴニストが、オレキシン、1,3-ジアリールウレア、SB-334867-a(GlaxoSmithKline、UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)およびベンズアミド誘導体からなる群より選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.9;
3.11 治療薬が、セロトニン-2受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)である、方法1-Aまたは2-A;
3.12 セロトニン-2受容体アンタゴニスト/再取り込み阻害剤(SARI)が、1つ以上のOrg50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、サーゾーンおよびトラゾドンからなる群より選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.11;
3.13 治療薬が5HTIaアゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
3.14 5HTIaアゴニストが、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロンおよびMN-305(MediciNova、San Diego、CA)の1つ以上からなる群より選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.13;
3.15 治療薬がニューロキニン-1薬である、方法1-Aまたは2-A;
3.16 ニューロキニン-1薬がカソピタント(GlaxoSmithKline)である、方法1-Aまたは2-Aまたは3.15;
3.17 治療薬が抗精神病薬である、方法1-Aまたは2-A;
3.18 抗精神病薬が、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジンプロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群より選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.17;
3.19 治療薬が抗うつ薬である、方法1-Aまたは2-A;
3.20 抗うつ薬が、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンおよびベンラフェキシンより選択される、方法1-Aまたは2-Aまたは3.19;
3.21 抗精神病薬が非定型抗精神病薬である、方法1-Aまたは2-A、3.17または3.18;
3.22 非定型抗精神病薬が、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群より選択される、方法1-Aまたは2-A、または3.17~3.21のいずれか;
3.23 治療薬が、3.1~3.22のいずれかより選択され、例えば、モダフィニル、アルモダフィニル、ドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラム、ピマバンセリン、ケタンセリン、リスペリドン、エプリバンセリン、ボリナンセリン(Sanofi-Aventis、France)、プルバンセリン、MDL100907(Sanofi-Aventis、France)、HY10275(Eli Lilly)、APD125(Arena Pharmaceuticals、San Diego、CA)、AVE8488(Sanofi-Aventis、France)、レピノタン、サリゾタン、エプタピロン、ブスピロン、MN-305(MediciNova、San Diego、CA)、メラトニン、ラメルテオン(ROZEREM(登録商標)、TakedaPharmaceuticals、Japan)、VEC-162(Vanda Pharmaceuticals、Rockville、MD)、PD-6735(Phase II Discovery)、アゴメラチン、ラモトリジン、ギャバペンチン、プレガバリン、オレキシン、1,3-ジアリールウレア、SB-334867-a(GlaxoSmithKline、UK)、GW649868(GlaxoSmithKline)、ベンズアミド誘導体、Org50081(Organon-Netherlands)、リタンセリン、ネファゾドン、サーゾーン、トラゾドン、カソピタント(GlaxoSmithKline)、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミン、ベンラフェキシン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ドロペリドール、フルフェナジン、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、プロクロルペラジンプロマジン、チオリダジン、チオチキセン、トリフロペラジン、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンおよびパリペリドンからなる群より選択される、方法1-Aまたは2-A;
3.24 治療薬がH3アゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
3.25 治療薬がH3アンタゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
3.26 治療薬がノルアドレナリンアゴニストまたはアンタゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
3.27 治療薬がガラニンアゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
3.28 治療薬がCRHアンタゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
3.29 治療薬がヒト成長ホルモンである、方法1-Aまたは2-A;
3.30 治療薬が成長ホルモンアゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
3.31 治療薬がエストロゲンである、方法1-Aまたは2-A;
3.32 治療薬がエストロゲンアゴニストである、方法1-Aまたは2-A;
3.33 治療薬がニューロキニン-1薬である、方法1-Aまたは2-A;
3.34 治療薬が、式(I)の化合物と組み合され、治療薬が抗パーキンソン病薬、例えばL-ドーパ、コカレルドーパ、デュオドーパ、スタレボ、シンメトレル、ベンズトロピン、ビペリデン、ブロモクリプチン、エンタカポン、ペルゴリド、プラミペキソール、プロシクリジン、ロピニロール、セレギリンおよびトルカポンである、方法1-Aまたは2-A;
3.35 治療薬が、オピエートアゴニストまたはオピエートパーシャルアゴニスト、例えばμアゴニストまたはパーシャルアゴニスト、またはκアゴニストまたはパーシャルアゴニスト、例えば混合アゴニスト/アンタゴニスト(例えばμパーシャルアゴニスト活性およびκアンタゴニスト活性を有する薬物)である、方法1-Aまたは2-A;
3.36 治療薬がブプレノルフィンであり、所望により、該治療が抗不安薬、例えばGABA化合物またはベンゾジアゼピンの併用治療を含まない、方法3.35;
3.37 列記した疾患および/またはパーキンソン病に罹患している患者において、式(I)の化合物を用いて、睡眠障害、うつ病、精神病、またはそれらの任意の組合せを治療し得る、方法1-Aまたは2-A;
3.38 障害が、精神病、例えば統合失調症、うつ病、気分障害、睡眠障害(例えば睡眠維持および/または睡眠開始)またはそれらの障害の任意の組合せの少なくとも1つ以上より選択される、方法1-Aまたは2-A;
3.39 治療薬が、オピエート受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニスト、例えば完全なオピエートアンタゴニストであり、例えばナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、メサドン、ナロルフィン、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、シプロジムまたはノルビナルトフィミンより選択される、方法1-Aまたは2-A;
3.40 障害が睡眠障害である、前記方法のいずれか;
3.41 障害が精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する睡眠障害である、前記方法のいずれか;
を遊離または医薬的に許容される塩形態で投与することをさらに含む、方法3(すなわち方法1-Aまたは2-A)を提供する。
【0051】
本発明の第9態様において、方法1-A、2-Aまたは方法3または3.1~3.41のいずれかに記載の本開示の化合物と1つ以上の第2治療薬の組合せは、前記の医薬組成物またはデポー組成物として患者に投与され得る。組合せ組成物は、組み合わせた薬物の混合物、ならびに薬物の2つ以上の別個の組成物を含み得て、ここで個々の組成物が、患者に例えば一緒に共投与され得る。
【0052】
特定の実施態様において、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を、非定型抗精神病薬、例えばブレクスピプラゾール、カリプラジン、アセナピン、ルラシドン、クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドンまたはパリペリドンより選択される化合物と組み合わせて、遊離または医薬的に許容される塩形態で投与することを含み、ここで、例えば非定型抗精神病薬の投与量を減少させる、および/または副作用を減少させる。
【0053】
別の一実施態様において、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を、抗うつ薬、例えば、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、デュロキセチン、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、イミプラミン、イソカルボキサジド、マプロチリン、ミルタザピン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、パロキセチン、硫酸フェネルジン、プロトリプチリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミンまたはベンラフェキシンと組み合わせて、遊離または医薬的に許容される塩形態で投与することを含む。あるいは、抗うつ薬は、本発明の化合物に加えて補助薬として投与され得る。
【0054】
さらに別の一実施態様において、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を、GABA活性を調節する化合物、例えばドキセピン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、インディプロン、ゾピクロン、エスゾピクロン、ゼレプロン、ゾルピデム、ガボキサドール、ビガバトリン、チアギャビン、EVT201(Evotec Pharmaceuticals)、エスタゾラムより選択される化合物またはそれらの任意の組合せと組み合わせて、遊離または医薬的に許容される塩形態で投与することを含む。他の実施態様において、本明細書に記載の方法は、GABA化合物、ベンゾジアゼピンまたは任意の他の抗不安薬の投与をさらに含まない。
【0055】
好ましい別の一実施態様において、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を、ドキセピンと組み合わせて、遊離または医薬的に許容される塩形態で投与することを含む。ドキセピンの投与量は、当業者に公知の任意の範囲で変化し得る。一例において、10mg用量のドキセピンが、任意の投与量の本発明の化合物と組み合され得る。
【0056】
別の一実施態様において、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を(例えば1日の投与レジメンの一部として)非定型刺激薬、例えばモダフィニル、アドラフィニルまたはアルモダフィニルと組み合わせて投与することを含む。本発明の化合物をこのような薬物と共に組み込むレジメンは、例えば双極性うつ病、統合失調症に関連する認知、およびパーキンソン病および癌などの状態における過剰な眠気および疲労の治療において、より規則的な睡眠を促進し、このような薬物のより高いレベルと関連する精神病または躁病などの副作用を回避する。
【0057】
別の一実施態様において、方法1-A、2-A、3または3.1~3.41は、それを必要とする患者に、本発明の化合物を(例えば1日の投与レジメンの一部として)オピエート受容体アンタゴニストまたはインバースアゴニスト、例えば完全なオピエートアンタゴニスト、例えばナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、メサドン、ナロルフィン、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、シプロジムまたはノルビナルトフィミンより選択されるものと組み合わせて投与することを含む。
【0058】
前記実施態様のいくつかにおいて、式I~II以降の化合物;医薬組成物6および6.1~6.5;デポー組成物6.6および6.7;組成物P.1~P.7;方法1および1.1~1.45;および方法2および2.1~2.12;本開示の化合物の各々は、式Aの化合物を実質的に含まない、および/または式Bの化合物を実質的に含まない。
【0059】
第10態様において、本発明は、前記1つ以上の障害の治療または予防のための(医薬製造における)、
11.1 遊離または医薬的に許容される塩形態の化合物Iまたは1.1~1.34;
11.2 遊離または医薬的に許容される塩形態の化合物IIまたは2.1~2.10;
11.3 化合物 5または5.1~5.5;
11.4 医薬組成物6および6.1~6.7;
11.5 医薬組成物P.1~P.7;
11.6 前記浸透圧による制御放出経口送達システム組成物
例えば方法1または1.1~1.45のいずれか、方法2および2.1~2.12のいずれか、および方法3または3.3~3.41、または本発明の第9態様に記載の任意の方法における、化合物の使用を提供する。
【0060】
第11態様において、本発明は、前記1つ以上の障害の治療または予防、例えば方法1および1.1~1.33のいずれか、方法2および2.1~2.12、方法I-A、II-A、3または3.1~3.41または本発明の第9もしくは10態様に記載の任意の方法における使用のための前記医薬組成物、例えば、
12.1 医薬組成物6および6.1~6.7;
12.2 医薬組成物P.1~P.7;
12.3 前記浸透圧による制御放出経口送達システム組成物
を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0061】
他に明記されていないかまたは内容から明らかでない場合、本明細書で用いられる下記の用語は、下記意味を有する:
【0062】
本開示の化合物は、化合物内に配置される生物学的に不安定な官能基を有し、それ故に、天然の代謝活性が不安定な官能基を除去し、式Aの化合物および/または式Bの化合物をもたらす。したがって、それを必要とする患者への本開示の化合物の投与により、該患者の組織へ式Aの化合物および/または式Bの化合物を即時および遅延両方の放出をすることができる。本開示の化合物は、それ自体に有意な薬理活性を有しないが、薬理学的に活性な式Aおよび/または式Bの化合物のリザーバーとして機能することが予想される。このように、本開示の化合物は、長時間作用型注射用(LAI)製剤または「デポー」医薬組成物に特に適する。理論に拘束されるものではないが、本開示の化合物を含む注射された「デポー」は、体内組織へ該化合物を徐々に放出し、組織で該化合物は徐々に分解され、式Aの化合物および/または式Bの化合物を生じる。該デポー製剤は、本開示の化合物の溶解および放出速度を制御するのに適した成分の選択によりさらに調整され得る。
【0063】
式AおよびBの化合物は、様々な有用な医薬特性を有することが示されており、その各々が本開示の化合物によって共有されることが予想される。例えば、式AおよびBの化合物は、中等度のD、DおよびSERT拮抗作用と共に強力な5-HT2A、Dおよびμオピエート拮抗作用を有する。さらに、このような化合物が、「バイアス」μオピエートリガンドとして作動し得ることを予想外にも見出した。これは、化合物がμオピエート受容体と結合するとき、G-タンパク質共役シグナル伝達によりμパーシャルアゴニストとして作動し得るが、β-アレスチンシグナル伝達によりμアンタゴニストとして作動し得ることを意味する。これは、G-タンパク質シグナル伝達およびβ-アレスチンシグナル伝達の両方を強力に活性化する傾向がある従来のオピエートアゴニストモルヒネおよびフェンタニルと対照的である。このような薬物によるβ-アレスチンシグナル伝達の活性化は、典型的にオピエート薬が介在する消化管機能不全および呼吸器抑制を介在すると考えられる。したがって、本発明による化合物、特に式Iの化合物は、既存のオピエート鎮痛薬より重度消化管および呼吸器副作用の少ない疼痛改善をもたらすと予想される。この効果は、バイアスμアゴニストのオリセリジンの前臨床試験および第2相、第3相臨床試験において示されている。オリセリジンは、モルヒネと比較してβ-アレスチンシグナル伝達が低下したG-タンパク質共役シグナル伝達によりバイアスμアゴニズムをもたらすことを示し、これは、モルヒネと比較して呼吸器副作用が低下した鎮痛を生じるその能力に関連している。さらに、これらの化合物は、β-アレスチン経路に拮抗するため、疼痛緩和を提供しながら最も重度のオピエート副作用を阻害するため、オピエート過剰摂取の治療に有用であると予想される。さらに、これらの化合物はまた、そのセロトニン作動活性により睡眠維持効果を有する。慢性疼痛に罹患している多くの人々は、疼痛により睡眠が困難であるため、これらの化合物は、セロトニン作動活性とオピエート受容体活性の相乗効果によりこのような患者が一晩中眠ることを助け得る。
【0064】
したがって、特定の実施態様において、本開示の化合物は、オピエート使用障害(OUD)、オピエート過剰摂取またはオピエート離脱を、いずれか単独で、またはオピエートアンタゴニストまたはインバースアゴニスト(例えばナロキソンまたはナルトレキソン)と組み合わせて処置する方法において用いられ得る。本開示の化合物は、薬物離脱(例えば気分および不安障害、睡眠障害)に関連する不快感および精神医学的併存疾患を緩和する強力な能力を示すと予想され、それはまた、強力な鎮痛を提供するが、副作用(例えばGI効果および肺抑制)および他のオピオイド治療(例えばオキシコドン、メサドンまたはブプレノルフィン)で見られる濫用の可能性がない。これらの化合物の独特な薬理特性はまた、薬物間相互作用(例えばアルコール)のリスクを緩和する。したがって、これらの化合物は、オピエート使用障害およびオピエート離脱に関連する症状の治療に特に適する。μ受容体活性に対する化合物の直接的な効果に加えて、セロトニン作動性経路に対する化合物の効果は、抗うつ薬、睡眠維持および抗不安作用をもたらす。うつ病および不安が第一にオピオイドの使用に影響されやすい患者を導く重要な因子であるため、本開示の化合物は、オピオイド使用を促進する精神医学的併存疾患を減少させると同時にオピエート離脱の症状を減少させる(寛解のリスクを減少させる二面戦略)。これらの化合物により提供される睡眠維持は、OUD治療を受けている患者のクオリティ・オブ・ライフをさらに改善する。
【0065】
本明細書で用いられる「アルキル」は、他に明記されない限り、例えば他に断らない限り長さが1~21個の炭素原子の、飽和または不飽和炭化水素部分であり、直鎖または分岐鎖(例えばn-ブチルまたはtert-ブチル)であり得て、好ましくは直鎖である。例えば、「C1-21アルキル」は、1~21個の炭素原子を有するアルキルを意味する。一の実施態様において、アルキルは、1つ以上のヒドロキシまたはC1-22アルコキシ(例えばエトキシ)基で置換されていてもよい。別の一実施態様において、アルキルは、好ましくは直鎖で、所望により飽和または不飽和の、1~21個の炭素原子を含み、例えば、Rが、1~21個の炭素原子、好ましくは6~15個の炭素原子、16~21個の炭素原子を含むアルキル鎖であるいくつかの実施態様において、例えばそれが結合する-C(O)-と一緒になって、例えば式Iの化合物から切断されたとき、天然または非天然の、飽和または不飽和脂肪酸の残基を形成する。
【0066】
用語「医薬的に許容される希釈剤または担体」は、医薬製剤において有用であり、アレルゲン性、発熱性または病原性である物質および病気を潜在的に引き起こすかもしくは促進することが知られている物質を含まない希釈液および担体を意味することが意図される。したがって、医薬的に許容される希釈液または担体は、体液、例えば血液、尿、髄液、唾液など、ならびにその構成成分、例えば血液細胞および循環タンパク質を除外する。適切な医薬的に許容される希釈液および担体は、医薬製剤に関するいくつかの周知の論文のいずれか、例えばAnderson, Philip O.; Knoben, James E. ; Troutman, William G, eds., Handbook of Clinical Drug Data, Tenth Edition, McGraw-Hill, 2002;Pratt and Taylor, eds., Principles of Drug Action, Third Edition, Churchill Livingston, New York, 1990;Katzung, ed., Basic and Clinical Pharmacology, Ninth Edition, McGraw Hill, 20037ybg;Goodman and Gilman, eds., The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition, McGraw Hill, 2001;Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins., 2000;およびMartindale, The Extra Pharmacopoeia, Thirty-Second Edition (The Pharmaceutical Press, London, 1999) に見ることができ、これらすべては、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0067】
化合物についての「精製された」、「精製された形態の」および「単離および精製された形態の」なる用語は、合成プロセス(例えば反応混合物)または天然源またはそれらの組合せから単離された後の該化合物の物理的状態を指す。したがって、化合物についての「精製された」、「精製された形態の」および「単離および精製された形態の」なる用語は、本明細書に記載または当業者に周知の標準的な分析技術により特徴付けるのに十分な純度の、精製プロセスまたは本明細書に記載もしくは当業者に周知のプロセス(例えばクロマトグラフィー、再結晶化、LC-MSおよびLC-MS/MS技術など)から得られた後の該化合物の物理的状態を指す。
【0068】
他に断らない限り、本開示の化合物、例えば化合物Iまたは1.1~1.34または化合物IIまたは2.1~2.10(まとめて、式I~II以降の化合物)は、遊離または塩、例えば酸付加塩形態で存在し得る。十分に塩基性である本発明の化合物の酸付加塩は、例えば無機または有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、トルエンスルホン酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン、パモ酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセチルサリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などとの酸付加塩である。また、十分に酸性である本発明の化合物の塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムまたはマグネシウム塩、アンモニウム塩、または生理学的に許容されるカチオンを提供する有機塩基との塩、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ピペリジン、モルホリンまたはトリス-(2-ヒドロキシエチル)-アミンとの塩である。特定の実施態様において、本発明の化合物の塩は、トルエンスルホン酸付加塩である。別の特定の実施態様において、本発明の化合物の塩は、フマル酸付加塩である。特定の実施態様において、本発明の化合物の塩は、リン酸付加塩である。
【0069】
本開示の化合物は、医薬品としての使用が意図され、それ故に医薬的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば本発明の遊離化合物の単離または精製に有用であり得て、それ故に本開示の化合物の範囲に含まれる。
【0070】
本開示の化合物は、1つ以上のキラル炭素原子を含み得る。したがって、化合物は、個々の異性体、例えばエナンチオマーまたはジアステレオマー形態で、または個々の形態の混合物、例えばラセミ/ジアステレオマー混合物として存在する。不斉中心が(R)-、(S)-、または(R,S)-配置にあるあらゆる異性体が存在し得る。本発明は、個々の光学活性異性体両方およびその混合物(例えばラセミ/ジアステレオマー混合物)を包含すると理解されるべきである。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物であってもよく、または、例えば主に純粋、または実質的に純粋な異性体形態、例えば70%超のエナンチオマー/ジアステレオマー過剰率(「ee」)、好ましくは80%超のee、より好ましくは90%超のee、最も好ましくは%超のeeであってもよい。
【0071】
二重結合または環についての置換基の性質による幾何異性体は、シス(Z)またはトランス(E)体であり得て、両方の異性体が本発明の範囲に包含される。
【0072】
本開示の化合物は、安定または不安定な同位体を包含することも意図される。安定同位体は、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して1つの追加の中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物はまた非同位体類似体の薬物動態の測定に関して有用性を有することが予想される。例えば、本開示の化合物の特定位置における水素原子は、重水素(非放射性の安定な同位体)で置き換えられ得る。公知の安定同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、同種の豊富な核種(すなわち元素)と比較して複数の追加の中性子を含有する放射性同位体である不安定同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する豊富な種に置き換わり得る。本発明の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本発明の化合物の放射性イメージングおよび/または薬物動態試験に有用である。また、より重い同位体で分布する天然同位体を有する原子の置換は、これらの置換が代謝的に起こりやすい部位でなされるとき、薬物動態速度において所望の変化をもたらし得る。例えば、水素の位置における重水素(H)の組込みは、水素の位置が酵素または代謝活性の部位であるとき、代謝分解を遅くし得る。
【0073】
本開示の化合物は、デポー製剤、例えば組成物6および6.1~6.7のいずれかに記載のポリマーマトリックス中に本発明の化合物を分散、溶解または被包させることにより、デポー製剤として含まれ得て、化合物は、ポリマーが時間とともに分解するにつれて持続的に放出される。ポリマーマトリックスからの本発明の化合物の放出は、化合物を例えば医薬デポー組成物から、その医薬デポーが投与される対象体、例えば温血動物、例えばヒトへ制御および/または遅延および/または持続放出することを提供する。したがって、医薬デポーは、本発明の化合物を対象体へ特定の疾患または病状の治療に有効な濃度にて長時間、例えば14~180日間、好ましくは約30、約60または約90日間にわたって送達する。
【0074】
本発明の組成物(例えば本発明のデポー組成物)におけるポリマーマトリックスに有用なポリマーは、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルおよびその誘導体、または他の化学物質、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸、ε-カプロラクトン開環重合体、乳酸-グリコール酸共重合体、2-ヒドロキシ酪酸-グリコール酸共重合体、ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体またはポリグリコール酸-ポリエチレングリコー共重合体)、アルキルα-シアノアクリレート(例えばポリ(ブチル2-シアノアクリレート))、ポリアルキレンオキサレート(例えばポリトリメチレンオキサレートまたはポリテトラメチレンオキサレート)、ポリオルトエステル、ポリカルボネート(例えばポリエチレンカルボネートまたはポリエチレンプロピレンカルボネート)、ポリオルト-カルボネート、ポリアミノ酸(例えばポリ-γ-L-アラニン、ポリ-γ-ベンジル-L-グルタミン酸またはポリ-y-メチル-L-グルタミン酸)、ヒアルロン酸エステルなどのポリマーを含み得て、これらポリマーの1つ以上が用いられ得る。
【0075】
ポリマーが共重合体である場合、それは、ランダム、ブロックおよび/またはグラフト共重合体のいずれかであり得る。上記α-ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸およびヒドロキシトリカルボン酸が、その分子中に光学活性を有する場合、D-異性体、L-異性体および/またはDL-異性体のいずれか1つが用いられ得る。とりわけ、α-ヒドロキシカルボン酸ポリマー(好ましくは、乳酸-グリコール酸重合体)、そのエステル、ポリ-α-シアノアクリル酸エステルなどが用いられ得て、乳酸-グリコール酸共重合体(ポリ(乳酸-α-グリコール酸)またはポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)とも称され、以下PLGAを称する)が好ましい。したがって、一態様において、ポリマーマトリックスに有用なポリマーは、PLGAである。本明細書で用いられる、用語PLGAは、乳酸の重合体を含む(ポリ乳酸、ポリ(乳酸)またはPLAとも称される)。最も好ましくは、ポリマーは、生分解性ポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)ポリマーである。
【0076】
好ましい実施態様において、本発明のポリマーマトリックスは、生体適合性および生分解性である。用語「生体適合性」は、毒性がなく、発癌性がなく、そして体組織において著しく炎症を誘導しない高分子物質と定義される。マトリックス物質は、生分解性であるべきであり、ここで、高分子物質は、身体で容易に排泄可能な生成物に体内プロセスによって分解されるべきであり、体内に蓄積されるべきでない。生体分解の生成物はまた、ポリマーマトリックスが身体と生体適合性であるという点で身体と生体適合性であるべきである。ポリマーマトリックス物質の特定の有用な例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-乳酸、前記の共重合体、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカルボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸-カプロラクトン)、ポリ無水物、および天然ポリマー、例えばアルブミン、カゼイン、およびワックス、例えばグリセロールモノおよびジステアレートなどが挙げられる。本発明の実施において用いるのに好ましいポリマーは、dl(ポリ乳酸-グリコール酸共重合体)である。このような共重合体におけるラクチド対グリコリドのモル比は、およそ75:25から50:50の範囲であることが好ましい。
【0077】
有用なPLGAポリマーの重量平均分子量は、約5,000~500,000ダルトン、好ましくは約150,000ダルトンであり得る。達成すべき分解速度に依存して、種々の分子量のポリマーを用い得る。薬物放出の拡散メカニズムについて、ポリマーは、すべての薬物がポリマーマトリックスから放出されるまで無傷のままであるべきであり、その後分解するべきである。薬物はまた、高分子添加剤が生体浸食する(bioerode)場合、ポリマーマトリックスから放出され得る。
【0078】
PLGAは、任意の慣用の方法により製造されてもよく、または商業的に入手してもよい。例えば、PLGAは、環状ラクチド、グリコリドなどから適切な触媒での開環重合により製造され得る(欧州特許第58481号;Effects of polymerization variables on PLGA properties: molecular weight, composition and chain structure参照)。
【0079】
PLGAは、生理学的条件下で(例えば、ヒトなどの温血動物の組織に見ることができる水および生物学的酵素の存在下で)加水分解可能であって酵素的に切断可能であるエステル結合の分解により固形ポリマー組成物全体が分解して乳酸およびグリコール酸を形成することによって生分解性であると考えられる。乳酸およびグリコール酸のいずれも、水溶性で、通常の代謝の無毒性の生成物であり、これは、さらに分解されて、二酸化炭素と水を形成する。言い換えれば、PLGAは、水の存在下で、例えばヒトなどの温血動物の体内でそのエステル基の加水分解によって分解されて、乳酸およびグリコール酸を生じ、酸性微小環境を作ると考えられる。乳酸およびグリコール酸は、通常の生理学的条件下のヒトなどの温血動物の体内における様々な代謝経路の副産物であり、それ故に良好な忍容性を示し、最小の全身毒性をもたらす。
【0080】
別の一実施態様において、本発明に有用なポリマーマトリックスは、ポリエステルの構造が星形である星形ポリマーを含み得る。これらのポリエステルは、酸性残基鎖により囲まれる中心部分として単一のポリオール残基を有する。ポリオール部分は、例えばグルコースまたはマンニトールであり得る。これらのエステルは、公知であって、英国特許出願公開第2,145,422号および米国特許第5,538,739号に記載されており、これら各出願の内容は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0081】
星形ポリマーは、ポリヒドロキシ化合物、例えばポリオール、例えばグルコースまたはマンニトールを開示剤として用いて製造され得る。ポリオールは、少なくとも3つのヒドロキシ基を含有し、最大約20,000ダルトンの分子量を有し、エステルの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、例えば平均3つのヒドロキシ基を有するポリオールはエステル基の形態であり、これらはポリラクチドまたはコ-ポリラクチド鎖を含有する。分岐ポリエステル、例えばポリ(d,l-乳酸-グリコール酸共重合体)は、複数のポリラクチド直鎖を有する中心グルコース部分を有する。
【0082】
前記の本発明のデポー組成物(例えばポリマーマトリックスにおける組成物6および6.1~6.10)は、本発明の化合物が分散または被包しているマイクロ粒子もしくはナノ粒子の形態または液体形態のポリマーを含み得る。「マイクロ粒子」は、粒子のマトリックスとして作用するポリマー内に本発明の化合物が分散または溶解している溶液または固体形態のいずれかで本発明の化合物を含有する固形粒子を意味する。ポリマーマトリックスの適切な選択により、得られたマイクロ粒子が拡散放出性および生分解放出性の両方を示すマイクロ粒子製剤が作られ得る。
【0083】
ポリマーがマイクロ粒子形態であるとき、マイクロ粒子は、任意の適切な方法を用いて、例えば溶媒蒸発法または溶媒抽出法により製造され得る。例えば、溶媒蒸発法において、本発明の化合物およびポリマーを、揮発性有機溶媒(例えば、アセトンなどのケトン、クロロホルムまたは塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族性炭化水素、ジオキサンなどの環状エーテル、酢酸エチルなどのエステル、アセトニトリルなどのニトリル、またはエタノールなどのアルコール)に溶解させて、適切なエマルション安定化剤(例えばポリビニルアルコール、PVA)を含有する水相に分散させ得る。その後、有機溶媒を蒸発させて、本発明の化合物が被包されたマイクロ粒子を提供する。溶媒抽出法において、本発明の化合物およびポリマーを、極性溶媒(例えばアセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチルまたはギ酸メチル)に溶解させて、その後、水相(例えば水/PVA溶液)に分散させ得る。エマルションを調製して、本発明の化合物が被包されたマイクロ粒子を提供する。スプレードライは、マイクロ粒子を製造するための別の製剤技術である。
【0084】
本発明のマイクロ粒子を製造する別の方法はまた、米国特許第4,389,330号および米国特許第4,530,840号の両方に記載されている。
【0085】
本発明のマイクロ粒子は、注射可能な組成物における使用に許容されるサイズ範囲のマイクロ粒子を製造できる任意の方法によって製造され得る。一の好ましい製造方法は、米国特許第4,389,330号に記載されているものである。この方法において、活性剤を適切な溶媒に溶解または分散させる。活性剤含有溶媒に、所望の活性剤負荷を有する生成物を提供する活性成分と相対的な量のポリマーマトリックス物質を加える。所望により、マイクロ粒子生成物の成分すべてを溶媒媒体中で一緒に混合し得る。
【0086】
本発明の化合物および本発明の実施において用いられ得るポリマーマトリックス物質の溶媒としては、有機溶媒、例えばアセトン;ハロゲン化炭化水素、例えばクロロホルム、塩化メチレンなど;芳香族炭化水素化合物;ハロゲン化芳香族炭化水素化合物;環状エーテル;アルコール、例えばベンジルアルコール;酢酸エチルなどが挙げられる。一の実施態様において、本発明の実施における使用のための溶媒は、ベンジルアルコールと酢酸エチルの混合物であり得る。本発明に有用なマイクロ粒子の製造に関する更なる情報は、米国特許出願公開第2008/0069885号に見ることができ、該出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0087】
マイクロ粒子に組み込まれる本開示の化合物の量は、通常約1重量%~約90重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~40重量%の範囲である。重量%は、マイクロ粒子の総重量当たりの本開示の化合物部分を意味する。
【0088】
医薬デポー組成物は、医薬的に許容される希釈剤または担体、例えば水混和性の希釈剤または担体を含み得る。
【0089】
浸透圧による制御放出経口送達システム組成物の詳細は、欧州特許出願公開第1539115号(米国特許出願公開第2009/0202631号)および国際公開第2000/35419号(米国特許出願公開第2001/0036472号)に見ることができ、これら各出願の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0090】
「治療有効量」は、疾患または障害に罹患している対象体に投与されるとき、治療に予定している時間にわたって疾患または障害の軽減、寛解または退行を生じるのに有効な(例えば医薬デポーにおいて含有されるような)本発明の化合物の量である。
【0091】
本発明の実施に用いられる投与量は、例えば治療されるべき特定の疾患または状態、用いられる本発明の特定の化合物および所望の療法に応じて当然変化する。他に断らない限り、投与のための本発明の化合物の量(遊離塩基または塩形態として投与される)は、遊離塩基形態の本発明の化合物の量を指すかまたはそれに基づく(すなわち、量の計算は遊離塩基量に基づく)。
【0092】
本発明の化合物は、経口、非経腸(静脈内、筋肉内または皮下)または経皮を含む任意の満足な経路によって投与され得る。特定の実施態様において、本発明の化合物は、例えばデポー製剤中であり、好ましくは非経腸、例えば注射、例えば筋肉内または皮下注射により投与される。
【0093】
一般に、方法1および1.1~1.45、方法2および2.1~2.12ならびに方法3および3.1~3.41、または前記の本開示の化合物の使用、例えば、少なくともうつ病、精神病の組合せ、例えば、上記の(1)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する睡眠障害;および(5) 物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害などの疾患の組合せの治療についての満足な結果は、好ましくは経口投与により、1日1回約1mg~100mg程度、好ましくは2.5mg~50mg、例えば1日1回2.5mg、5mg、l0mg、20mg、30mg、40mgまたは50mgの投与量にて経口投与することで得られることが示されている。
【0094】
方法2または2.1~2.12または前記の本開示の化合物の使用、例えば睡眠障害単独の治療についての満足な結果は、好ましくは経口投与により、1日1回遊離または医薬的に許容される塩形態で本発明の化合物を約2.5mg~5mg程度、例えば2.5mg、3mg、4mgまたは5mgの投与量にて経口投与することで得られることが示されている。
【0095】
方法1-Aまたは方法2-A、または3.1~3.41のいずれかについての満足な結果は、1日1回、l00mg未満、好ましくは50mg未満、例えば未満、40mg未満、30mg未満、20mg未満、l0mg未満、5mg未満、2.5mg未満にて得られることが示されている。方法II-Aまたは3.1~3.41のいずれかついての満足な結果は、5mg未満、好ましくは2.5mg未満にて得られることが示されている。
【0096】
デポー組成物がより長期間の作用を達成するために用いられる本明細書に記載の障害の治療のために、投与量は、短期作用組成物と比較して高く、例えば1~100mgより高く、例えば25mg、50mg、100mg、500mg、1,000mg、または1000mg超である。本開示の化合物の作用持続時間は、ポリマー組成、すなわちポリマー:薬物の比率およびマイクロ粒子サイズの操作により制御され得る。本発明の組成物がデポー組成物である場合、注射による投与が好ましい。
【0097】
本開示の化合物の医薬的に許容される塩は、慣用の化学方法により塩基性または先生部分を含有する親化合物から合成され得る。一般に、このような塩は、これら化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と水もしくは有機溶媒またはその2つの混合物中で反応させることにより製造され得て;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。これら塩、例えばアモルファスまたは結晶形態のトルエンスルホン酸塩の製造についての更なる詳細については、国際特許出願第PCT/US08/03340号および/または米国仮出願第61/036,069号)(米国特許出願公開第2011/112105号に各々対応する)に見ることができる。
【0098】
本開示の化合物を含む医薬組成物は、従来の希釈液または添加剤(例としてゴマ油が挙げられるがこれに限定されない)およびガレヌス分野で公知の技術を用いて製造され得る。したがって、経口剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などが挙げられ得る。
【0099】
用語「並行して(concurrently)」は、治療上の使用を指すとき、2つ以上の活性剤が同一または異なる時に与えられるか、あるいは同一または異なる投与経路により与えられるかを問わず、疾患または障害の治療のためのレジメンの一部として2つ以上の活性成分を患者に投与することを意味する。2つ以上の活性成分の並行投与は、同じ日の異なる時間に、または異なる日に、または異なる頻度であり得る。
【0100】
用語「同時に(simultaneously)」は、治療上の使用を指すとき、同一投与経路による同時またはほぼ同時の2つ以上の活性成分の投与を意味する。
【0101】
用語「別個に(separately)」は、治療上の使用を指すとき、異なる投与経路による同時またはほぼ同時の2つ以上の活性成分の投与を意味する。
【実施例
【0102】
本発明の化合物の製造方法:
式Aで示される化合物およびその合成方法は、国際公開第2017/132408号として公開された国際出願PCT/US2017/15178、および米国特許出願公開第2017/319580号に記載されている。Zが-O-である本開示の化合物は、例えば、必要に応じて下記のスキーム1に従って、式Aで示される化合物を好適なアルキル化およびアシル化剤と反応させることにより製造することができる。同様の変換を行う他の方法は当業者に知られている。
【化4】
【0103】
本開示の他の化合物は、当業者に知られている類似の手順によって製造することができる。
【0104】
本発明の化合物のジアステレオマーの単離または精製は、当該技術分野で知られている慣用方法、例えば、カラム精製法、分取薄層クロマトグラフィー、分取HPLC、結晶化、トリチュレーション、擬似移動床法などによって行うことができる。
【0105】
本開示の化合物の塩は、米国特許第6,548,493号;第7,238,690号;第6,552,017号;第6,713,471号;第7,183,282号;米国再特許第39680号;米国再特許第39679号;および国際公開第2009/114181号(米国特許公開第2011/112105号)(それぞれの記載内容は全体として出典明示により本明細書の一部とする)に同様に記載されているように製造することができる。
【0106】
製造された化合物のジアステレオマーは、例えば、室温でCHIRALPAK(登録商標)AY-H(5μ、30×250mm)を用いてHPLCによって分離し、10%エタノール/90%ヘキサン/0.1%ジメチルエチルアミンで溶出することができる。230nmでピークを検出して、98~99.9%eeのジアステレオマーを生成することができる。
【0107】
実施例1: 4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オンの合成
【化5】
(6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-カルボン酸エチルエステル(6.4g、21.2mmol)を室温でHBr酢酸溶液(64mL、33%w/w)に懸濁する。混合物を50℃で16時間加熱する。冷却し、酢酸エチル(300mL)で処理した後、混合物を濾過する。濾過ケーキを酢酸エチル(300mL)で洗浄し、次いで、真空乾燥する。次いで、得られたHBr塩をメタノール(200mL)に懸濁し、イソプロパノール中にてドライアイスで冷却する。強撹拌下にて、該懸濁液にアンモニア溶液(10mL、メタノール中7N)を徐々に添加して、混合物のpHを10に調整する。得られた混合物を、さらなる精製を行わずに真空乾燥して、粗(6bR、10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(8.0g)を得、これを次工程に直接使用する。MS (ESI) m/z 230.2 [M+H]+
【0108】
該粗(6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン(1.4g)をDMF(14mL)に溶解し、次いで、KI(2.15g)および4-クロロ-4'-フルオロブチロフェノン(2mL)を連続して添加する。混合物をアルゴンで脱気した後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、2mL)を添加する。該混合物を78℃で2時間加熱する。冷却後、溶媒を減圧除去する。暗褐色(dark brown)の残留物をジクロロメタン(100mL)に懸濁し、次いで、水(30mL)で抽出する。有機層を分取し、K2CO3で乾燥させる。濾過後、溶媒を減圧除去する。得られた粗生成物を、0.1%のメタノール中7Nアンモニアを含有する酢酸エチル中0~10%のメタノールで溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、4-((6bR,10aS)-2-オキソ-2,3,6b,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H,7H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-8-イル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-ブタン-1-オンを淡黄色(light yellow)固体として得る(767mg)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.3 (s, 1H), 8.1 - 8.0 (m, 2H), 7.3 (dd, J = 8.86 Hz, 2H), 6.8 (d, J = 7.25 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 7.55 Hz, 1H), 6.6 (d, J = 7.74 Hz, 1H), 3.8 (d, J = 14.49 Hz, 1H), 3.3 - 3.3 (m, 1H), 3.2 - 3.2 (m, 1H), 3.1 - 3.0 (m, 1H), 3.0 (t, J = 6.88 Hz, 2H), 2.8 - 2.8 (m, 1H), 2.6 - 2.5 (m, 1H), 2.3 - 2.2 (m, 2H), 2.1 - 2.0 (m, 1H), 1.9 - 1.8 (m, 1H), 1.8 (t, J = 6.99 Hz, 2H), 1.6 (t, J = 11.25 Hz, 2H). MS (ESI) m/z 394.2 [M+H]+
【0109】
実施例2: (6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンの合成
【化6】
(6bR,10aS)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オン(100mg、0.436mmol)、1-(3-クロロプロポキシ)-4-フルオロベンゼン(100μL、0.65mmol)およびKI(144mg、0.87mmol)のDMF(2mL)中混合物をアルゴンで3分間脱気し、DIPEA(150μL、0.87mmol)を添加する。得られた混合物を78℃に加熱し、この温度で2時間撹拌する。該混合物を室温に冷却し、次いで、濾過する。濾過ケーキを、溶離液としてメタノール/メタノール中7N NH2(1:0.1v/v)の混合物中0~100%の酢酸エチルの勾配液を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、部分的に精製したプロドラッグを生成し、これをさらに、0.1%のギ酸を含有する水中0~60%のアセトニトリルの勾配液を使用する半分取HPLCシステムで16分間精製して、標記生成物を固体として得る(50mg、収率30%)。MS (ESI) m/z 406.2 [M+1] +. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 10.3 (s, 1H), 7.2 - 7.1 (m, 2H), 7.0 - 6.9 (m, 2H), 6.8 (dd, J = 1.03, 7.25 Hz, 1H), 6.6 (t, J = 7.55 Hz, 1H), 6.6 (dd, J = 1.07, 7.79 Hz, 1H), 4.0 (t, J = 6.35 Hz, 2H), 3.8 (d, J = 14.74 Hz, 1H), 3.3 - 3.2 (m, 3H), 2.9 (dd, J = 6.35, 11.13 Hz, 1H), 2.7 - 2.6 (m, 1H), 2.5 - 2.3 (m, 2H), 2.1 (t, J = 11.66 Hz, 1H), 2.0 (d, J = 14.50 Hz, 1H), 1.9 - 1.8 (m, 3H), 1.7 (t, J = 11.04 Hz, 1H)。
【0110】
実施例3: 細胞および核受容体機能アッセイ(Cellular and Nuclear Receptor Functional Assay)
細胞および核受容体機能アッセイは、Wang, J.B. et al. (1994), FEBS Lett., 338:217-222の手順に従って、実施例1の化合物について行われる。該化合物をいくつかの濃度で試験して、IC50またはEC50を決定する。細胞アゴニスト効果は、各標的について公知の基準アゴニストに対する対照応答のパーセントとして算出され、細胞アンタゴニスト効果は、各標的について対照基準アゴニスト応答の阻害パーセントとして算出される。
【0111】
以下のアッセイは、μ(MOP)(h)受容体に対する実施例1の化合物の効果を決定するために行われる:
【表1】
【0112】
アンタゴニストについて、見かけの解離定数(KB)は、改変したチェンプルソフ式(Cheng Prusoff equation):
【数1】
[式中、A=アッセイにおける基準アゴニストの濃度、およびEC50A=基準アゴニストのEC50値]
を用いて算出される。
【0113】
実施例1の化合物は、1.3×10-6MのIC50および1.4×10-7MのKBをもって、μ(MOP)(h)(アンタゴニスト効果)を有することが判明する。
【0114】
アゴニスト活性結果は、実施例1の化合物の存在下で得られた、対照アゴニスト応答のパーセント:
【数2】
として表され、また、アンタゴニスト活性は対照アゴニスト最大応答の阻害パーセント:
【数3】
として表される。
【0115】
EC50値(最大半量応答を生じる濃度)およびIC50値(対照アゴニスト応答の最大半量阻害を生じる濃度)は、ヒル式(Hill equation)カーブフィッティング:
【数4】
[式中、Y=応答、A=曲線の左漸近線、D=曲線の右漸近線、C=化合物濃度、およびC50=EC50またはIC50、およびnH=傾斜因子]
を用いて平均反復値を用いて作成した濃度応答曲線の非線形回帰分析によって決定される。該分析は、自社で開発したソフトウェアを用いて行われ、市販のソフトウェアSigmaPlot(登録商標)4.0 for Windows(登録商標)(SPSS Inc.による著作権1997)によって作成されたデータとの比較によって正当性が認められる。
【0116】
実施例4: 受容体結合プロファイル
受容体結合は、実施例1および2の化合物について決定される。下記の文献(各文献は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)の手順が使用される:5-HT2A:Bryant, H.U. et al. (1996), Life Sci., 15:1259-1268;D2:Hall, D.A. and Strange, P.G. (1997), Brit. J. Pharmacol., 121:731-736;D1:Zhou, Q.Y. et al. (1990), Nature, 347:76-80; SERT: Park, Y.M. et al. (1999), Anal. Biochem., 269:94-104;μオピエート受容体:Wang, J.B. et al. (1994), FEBS Lett., 338:217-222。
【0117】
一般に、結果は、試験化合物の存在下で得られた、対照特異的結合のパーセント:
【数5】
として、また、対照特異的結合の阻害パーセント:
【数6】
として表される。
【0118】
IC50値(対照特異的結合の最大半量阻害を生じる濃度)およびヒル係数(nH)は、ヒル式カーブフィッティング:
【数7】
[式中、Y=特異的結合、A=曲線の左漸近線、D=曲線の右漸近線、C=化合物濃度、C50=IC50、およびnH=傾斜因子]
を用いて平均反復値を用いて作成した競合曲線の非線形回帰分析によって決定される。この分析は、自社ソフトウェアを用いて行われ、市販のソフトウェアSigmaPlot(登録商標)4.0 for Windows(登録商標)(SPSS Inc.による著作権1997)によって作成されたデータとの比較によって正当性が認められる。阻害定数(Ki)は、チェンプルソフ式:
【数8】
[式中、L=アッセイにおける放射性リガンドの濃度、およびKD=受容体に対する放射性リガンドの親和性]
を用いて算出された。KDを決定するためにスキャッチャードプロットが用いられる。
【0119】
以下の受容体親和性の結果が得られる:
【表2】
【0120】
実施例5: マウスのDOI誘発性頭部攣縮モデル
R-(-)-2,5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン(DOI)は、セロトニン5-HT2受容体ファミリーのアゴニストである。それは、マウスに投与されると、高頻度の頭部攣縮と関連する行動プロファイルを生じる。所定の期間中のこれら頭部攣縮の頻度は、脳内の5-HT2受容体アゴニズムの推定値として取ることができる。逆に、この行動アッセイは、アンタゴニストを用いるかまたは用いずにDOIを投与し、アンタゴニストの投与後のDOI誘発性頭部攣縮の減少を記録することによって、脳内の5-HT2受容体アンタゴニズムを決定するために使用することができる。
【0121】
若干の改変を伴ってDarmani et al., Pharmacol Biochem Behav. (1990) 36:901-906(この内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)の方法が使用される。(±)-DOI HClを皮下注射し、該マウスをすぐに慣用のプラスチックケージに収容する。DOI投与の1分後から始めて6分間、頭部攣縮の回数をカウントする。DOI注射の0.5時間前に被験化合物を経口投与する。結果は、DOI誘発性頭部攣縮を減少させるためのEC50として算出される。結果は下記の表に示される:
【表3】
結果は、式AおよびCで示される参照化合物と比べて、実施例1および2の化合物がDOI頭部攣縮を強くブロックし、実施例4に示されるインビトロ5-HT2A結果と一致することを示している。
【0122】
実施例6: マウステールフリック(tail flick)アッセイ
マウステールフリックアッセイは、拘束されたマウスの疼痛反射閾値によって示される鎮痛作用の測定である。雄性CD-1マウスを、高強度赤外熱源の収束ビーム下にその尾がくるように配置し、尾が加熱される。動物は不快になるといつでも熱源から尾を引き抜くことができる。加熱装置を付けた時と熱源の経路の外側にマウスの尾をフリックした時との間の時間量(潜時(latency))を記録する。モルヒネの投与により、鎮痛作用がもたらされ、これにより、熱に対するマウスの反応の遅延が生じる(潜時の増大)。モルヒネ受容体(MOR)アンタゴニスト、すなわち、ナロキソン(NAL)の前投与により、この効果は逆転し、正常な潜時となる。この試験は、μオピエート受容体のアンタゴニズムを計測するための機能アッセイとして使用される。
【0123】
実施例6a: 実施例1および2の化合物によるモルヒネ誘発性鎮痛作用のアンタゴニズム
5つの処置グループの各々に10匹の雄性CD-1マウス(約8週齢)が割り当てられる。グループは以下のとおり処置される:グループ(1)[陰性対照]:テールフリック試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクルが経口投与され、テールフリック試験の30分前にセイラインビヒクルが投与される;グループ(2)[陽性対照]:該試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクルが経口投与され、該試験の30分前にセイライン中モルヒネ5mg/kgが投与される;グループ(3)[陽性対照]:該試験の50分前にセイライン中ナロキソン3mg/kgが投与され、該試験の30分前にセイライン中モルヒネ5mg/kgが投与される;グループ(4)~(6):該試験の60分前に0.25%メチルセルロースビヒクル中被験化合物0.1mg/kg、0.3mg/kgまたは1mg/kgが経口投与され、該試験の30分前にモルヒネ5mg/kgが投与される。実験は実施例1および実施例2の化合物について繰り返される。結果は、秒で測定した平均潜時として下記の表に示される:
【表4】
【0124】
結果は、実施例1および実施例2の化合物がともにモルヒネ誘発性μオピエート受容体活性の用量依存的遮断を発揮することを示している。
【0125】
実施例6b: ナロキソンによって阻害される、実施例2の化合物による鎮痛作用
上記のマウステールフリックアッセイを用いる第2の研究において、さらに、3mg/kg(腹腔内)のナロキソンによる前投与を行った場合および行わなかった場合で、実施例2の化合物を1.0mg/kg、3.0mg/kgおよび10mg/kgの投与量で、5mg/kgのモルヒネと比較する。前処置グループでは、テールフリック試験の20分前にナロキソンを投与する。非前処置対照では、テールフリック試験の20分前にセイラインを投与する。各グループにおいて、ビヒクル、テールフリック試験の30分前にモルヒネまたは実施例2の化合物を投与する。結果を平均潜時(秒)として下記の表に示す:
【表5】
【0126】
全ての投与量での実施例2の化合物の投与がテールフリックに対する潜時を有意に増加させること、およびこの効果がナロキソンによる前処置により弱まることが分かる。この結果は、実施例2の化合物によって生じる用量依存的鎮痛効果を示しており、さらに、この効果がμオピオイド受容体アゴニズムによって媒介されることを示唆している。
【0127】
実施例6c: 鎮痛作用の経時変化、実施例2の化合物
上記のテールフリックアッセイを繰返して、実施例2の化合物の投与により得られる鎮痛作用の経時変化を決定する。マウスに、(1)アッセイの30分前にビヒクルを、(2)アッセイの30分前に5mg/kgのモルヒネを、または(3)~(7)アッセイの30分前、2時間前、4時間前、8時間前または24時間前に1mg/kgの実施例3の化合物を、皮下投与する。結果を平均潜時(秒)として下記の表に示す:
【表6】
【0128】
結果は、実施例2の化合物がテールフリックアッセイの30分前または2時間前に投与された場合に有効な鎮痛作用をもたらすことを示している(ANOVA、対ビヒクルP<0.001)。テールフリックアッセイの4時間前、8時間前または24時間前に投与した場合、1mg/kgの実施例2の化合物は、ビヒクル対照と有意に異なる鎮痛効果をもたらさない。したがって、実施例2の化合物は長期の鎮痛作用をもたらさず、これは、実施例3の化合物が、他のオピエート鎮痛薬と比較して、乱用の可能性が低く、かつ、薬物間相互作用のリスクが低いことを意味する。
【0129】
実施例6d: 実施例2の化合物の慢性投与による鎮痛作用
動物が14日慢性処置レジメンを受け、次いで、テールフリックアッセイの30分前に急性処置を受ける試験モデルを用いて、上記のテールフリックアッセイを繰り返す。マウスを、それぞれマウス10匹を有する6つのサブグループをもつ3つの大きなグループに分ける。この3つのグループに、慢性処置として、(A)ビヒクル、(B)0.3mg/kgの実施例2の化合物、または(C)3.0mg/kgの実施例2の化合物のいずれかを投与する。さらに、各サブグループに、急性処置として、(1)ビヒクル、または(2)~(6)0.01、0.03、0.1、0.3または1.0mg/kgの実施例2の化合物のいずれかを投与する。全ての処置は皮下投与される。結果を、テールフリックに対する平均潜時(秒)として下記の表に示す:
【表7】
【0130】
実施例2の化合物による0.1、0.3および1.0mg/kg急性処置が、ビヒクルによるグループ内急性処置と比較して統計的に有意な用量依存性鎮痛効果をもたらすことが分かる。これは、慢性グループ(A)、(B)および(C)にあてはまる。ビヒクルによる前処置と比較して、0.3mg/kgまたは3.0mg/kgの実施例2の化合物による前処置は、同一急性処置サブグループを比較した場合、一般的にテールフリック潜時の統計的に有意な減少を示した。これらの結果は、14日間の慢性処置の後に実施例2の化合物の鎮痛効果に対するある程度の耐性が生じるが、得られた鎮痛作用は慢性前処置にもかかわらず有効なままであることを示している。
【0131】
実施例7: CNSリンタンパク質プロファイル
実施例1および実施例2の化合物の中枢神経系(CNS)プロファイルを試験するために、包括的な分子リン酸化研究も行われる。マウスの側坐核において、選択された重要な中枢神経系タンパク質についてのタンパク質リン酸化の程度が測定される。被験タンパク質としてはERK1、ERK2、Glu1、NR2BおよびTH(チロシンヒドロキシラーゼ)が挙げられ、実施例1および3の化合物を統合失調症治療薬であるリスペリドンおよびハロペリドールと比較した。
【0132】
3mg/kgの実施例1もしくは2の化合物、または2mg/kgのハロペリドールでマウスを処置した。マウスを、注射後30分~2時間で、収束したマイクロ波全脳照射によって屠殺し、死亡時に脳のリンタンパク質は存在しているのでそれを貯蔵する。次いで、各マウスの脳から側坐核を解体し、スライスし、液体窒素で凍結させた。Zhu H, et al., Brain Res. 2010 Jun 25; 1342:11-23に記載されるように、SDS-PAGE電気泳動に次いでリンタンパク質特異的イムノブロット法によるリンタンパク質分析のために、さらに試料を調製した。各部位でのリン酸化を定量化し、該タンパク質(非リン酸化)の全レベルに正規化し、ビヒクル処置した対照マウスにおけるリン酸のレベルのパーセントとして表した。
【0133】
結果は、THリン酸化において400%を超える増加を生じるハロペリドールおよび500%を超える増加を生じるリスペリドンとは対照的に、実施例1および実施例2のいずれの化合物も、30分目および60分目に、Ser40でのチロシンヒドロキシラーゼリン酸化に対して有意な効果を有しないことを示している。これは、本発明の化合物がドパミン代謝を妨害しないことを示している。
【0134】
結果は、さらに、実施例1および実施例2のいずれの化合物も、30~60分でのTyr1472でのNR2Bリン酸化に対して有意な効果を有しないことを示している。該化合物は、Ser845でGluR1リン酸化のわずかな増加を生じ、Thr183およびTyr185でERK2リン酸化のわずかな減少を生じる。特定のタンパク質の様々な部位でのタンパク質リン酸化は、タンパク質輸送、イオンチャネル活性、シナプスシグナル伝達の強度および遺伝子発現の変化などの細胞の様々な活動に関連していることが知られている。NMDAグルタミン酸受容体におけるTyr1472のリン酸化は、神経障害性疼痛の維持に不可欠であることが示されている。GluR1 AMPA型グルタミン酸受容体のSer845のリン酸化は、シナプス伝達の強化と受容体のシナプス局在の強化のいくつかの側面に関連しており、認知能力に関連する長期増強をサポートする。この残基のリン酸化により、チャネルが開く確率が高くなることも報告されている。MAPキナーゼカスケードのメンバーであるERK2キナーゼの残基T183およびY185でのリン酸化は、このキナーゼの完全な活性化に必要であり、ERK2は、細胞の増殖、生存、および転写の調節を含む細胞生理学の多くの側面に関与する。このキナーゼは、シナプス形成と認知機能において重要であると報告されている。
【0135】
実施例8: マウスのビー玉埋め(marble-burying)研究(OCDモデル)
げっ歯類の反復行動および不安関連行動を測定するためにビー玉埋め試験が使用される。これは、ラットおよびマウスが有害または無害な物体を寝具に埋めるという観察に基づいており、OCDなどの反復行動の処置における薬理学的介入の効果を測定するための動物モデルとして使用されている。
【0136】
まず、マウスを4つの処置グループに分ける:(1)ビヒクル陰性対照、(2)実施例2の化合物0.3mg/kg、(3)実施例2の化合物1.5mg/kg、および(4)MPEP(2-メチル-6-(フェニルエチニル)ピリジン)20mg/kg陽性対照。MPEPは、選択的mGluR5グルタミン酸受容体アンタゴニストである。(2)および(3)のマウスには試験の30分前に0.5%メチルセルロース水性ビヒクル中の所定の投与量で実施例2の化合物を経口投与する。グループ(1)のマウスにはビヒクルを経口投与し、グループ(4)のマウスには試験直前にMPEPの腹腔内注射を行う。
【0137】
試験は、気を散らすものを最小限にするために窓のシェードを下げてドアを閉めた部屋の中で、4~5cmのウッドチップ寝具を備えた長方形のケージ内で行う。15個のきれいなビー玉を、ビー玉5個の列3つで寝具の上に均等に配置される。各ケージにマウス1匹を収容する。マウスとケージを30分間そのままにしておく。試験の最後に、マウスを取り出し、少なくとも2/3の深さまで埋まっているビー玉の数を数える。結果を下記の表に示す:
【表8】
【0138】
結果は、対照と比較して、実施例2の化合物0.3mg/kg(p<0.01)および実施例2の化合物1.5mg/kg(p<0.001)で処置したマウスのビー玉埋めが統計学的に有意に減少することを示している。さらに、明らかな用量反応関係が明らかである。この結果は、OCD治療適応における実施例2の化合物の有用性を示唆している。
【0139】
実施例9: μオピエート受容体活性アッセイ
HTRFベースのcAMPアッセイキット(CisbioからのcAMP Dynamic2 Assay Kit、#62AM4PEB)を使用して、hOP3(ヒトμオピエート受容体μ1サブタイプ)を発現するCHO-K1細胞において実施例1および2の化合物を試験する。凍結細胞を37℃の水浴で解凍し、10%FBSを含有するHam F-12培地10mLに再懸濁する。遠心分離により細胞を回収し、アッセイバッファー(5nM KCl、1.25mM MgSO4、124mM NaCl、25mM HEPES、13.3mM グルコース、1.25mM KH2PO4、1.45mM CaCl2、0.5g/L プロテアーゼ不含BSA、1mM IBMX添加)に再懸濁する。μオピエート受容体部分アゴニストであるブプレノルフィン、およびμオピエート受容体アンタゴニストであるナロキソン、および合成オピオイドペプチド完全アゴニストであるDAMGOを対照として使用する。
【0140】
アゴニストアッセイのために、384ウェル白色プレートのウェル中にて、細胞懸濁液12μL(2500細胞/ウェル)をフォルスコリン6μL(最終アッセイ濃度10μM)と混合し、漸増濃度の試験化合物6μLを合わせ、該プレートを室温で30分間インキュベートする。溶解バッファーを添加し、さらに1時間インキュベートした後、キットの説明書に従ってcAMP濃度を測定する。全てのアッセイポイントは、3回測定される。XLfitソフトウエア(IDBS)を用いてカーブフィッティングを行い、4パラメータロジスティックスフィットを用いてEC50値を決定する。アゴニストアッセイは、フォルスコリン刺激cAMP蓄積を阻害する試験化合物の能力を測定する。
【0141】
アンタゴニストアッセイのために、細胞懸濁液12μL(2500細胞/ウェル)を漸増濃度の試験化合物6μLと混合し、384ウェル白色プレートのウェル中にて合わせ、該プレートを室温で10分間インキュベートする。DAMGO(D-Ala-N-MePhe-Gly-オール-エンケフェリン、最終アッセイ濃度10nM)とフォルスコリン(最終アッセイ濃度10μM)との混合物6μLを添加し、該プレートを室温で30分間インキュベートする。溶解バッファーを添加し、さらに1時間インキュベートした後、キットの説明書に従ってcAMP濃度を測定する。全てのアッセイポイントは、3回測定される。XLfitソフトウエア(IDBS)を用いてカーブフィッティングを行い、4パラメータロジスティックスフィットを用いてIC50値を測定する。改変Cheng-Prusoff式を用いて見かけの解離定数(KB)を算出する。アンタゴニストアッセイは、DAMGOによって引き起こされるフォルスコリン誘発cAMP蓄積の阻害を逆転させる試験化合物の能力を測定する。
【0142】
結果を下記の表に示す。結果は、実施例2の化合物が、ナロキソンと比較して非常に高いIC50を示す、μ受容体の弱いアンタゴニストであること、および、それが中程度に高い親和性であるが、DAMGOに比べて(DAMGOに比べて約79%のブプレノルフィンの活性と比較して)約22%のアゴニスト活性しか示さない、部分アゴニストであることを示している。実施例1の化合物はまた、中程度に強い部分アゴニスト活性を有することも示されている。
【表9】
【0143】
ブプレノルフィンは、慢性疼痛処置およびオピエート離脱に使用される薬物であるが、その高い部分アゴニスト活性のために、使用者は中毒になり得るという問題を抱えている。これを相殺するために、ブプレノルフィンとナロキソンの市販の組合せが使用されている(Suboxoneとして販売されている)。理論に拘束されるものではないが、ブプレノルフィンよりも弱い部分μアゴニストであり、ある程度の中程度のアンタゴニスト活性を有する本発明の化合物により、患者を、より低い中毒リスクをもって、疼痛および/またはオピエート離脱に対してより効果的に処置できると考えられる。
【0144】
組換えヒトMOP-β停止シグナル伝達経路を使用する追加の関連研究では、実施例2の化合物が、10μMまでの濃度ではMOP受容体を介するβ停止シグナル伝達を刺激しないが、IC50が0.189μMであるアンタゴニストであることが見出されている。対照的に、完全オピオイドアゴニストであるMet-エンケファリンは、0.08μMのEC50でβ停止シグナル伝達を刺激する。
【0145】
実施例10: ラット耐性/依存性研究
実施例2の化合物を、雄性スプラーグドーリーラットへの反復(28日)毎日皮下投与中に評価して、投薬に対する薬物効果をモニターし、薬理学的耐性が生じるかどうかを判定する。さらに、化合物が離脱への身体的依存症を誘発するかどうかを判断するために、反復投与の突然の中止の後にラットの行動的、身体的および生理学的兆候をモニターする。また、耐性および依存性研究で使用される特定の用量での化合物の血漿薬物曝露レベルを決定するために、耐性および依存性研究と並行して薬理学的研究を行う。該モデルの有効性を確保するための陽性対照として、また、類似の薬理学的クラスからの参考対照薬として、モルヒネを使用する。
【0146】
実施例2の化合物を、1日4回皮下投与される2つの用量、0.3および3mg/kgで評価する。反復投与により、0.3mg/kgの投与では15~38ng/mL(平均、n=3)、また、3mg/kgの投与では70~90ng/mL(平均、n=3)のピーク血漿濃度が得られることが見出される。投与後30分から1.5時間でピーク濃度に達し、同等の結果が投与1日目、14日目および28日目に得られる。
【0147】
実施例2の両方の用量で、投与期間または離脱期のいずれかの間、動物の体重、食物および水の摂取、または体温に有意な影響がないことが見出される。0.3mg/kgでの反復投与により引き起こされる主な行動的および身体的影響は、投与期の間、猫背の姿勢(hunched posture)、ストラウブ挙尾(Straub tail)および立毛(piloerection)であることが見出される。高用量では、観察される主な行動的および身体的兆候は、猫背の姿勢、不活発な行動(subdued behavior)、ストラウブ挙尾、テールラトル(tail rattle)および立毛である。
【0148】
研究の28日目に化合物を突然に休止した後に行動的および身体的兆候の同様のプロファイルが観察される。0.3mg/kgでの投与期間中に立ち上がり(rearing)および身体の緊張の高まり(increased body tone)は観察されないが、離脱期の間は有意に増大することが見出される。高用量では、投与期間中に軽度の立ち上がりが観察されるが、離脱期の間は、立ち上がりがより顕著になり、身体の緊張の高まりが観察される。
【0149】
陽性対照として、モルヒネ30mg/kgを1日2回経口投与する。この投薬レジメンは、予想とおり、体重、食物および水の摂取、および直腸温の変化、ならびに耐性および離脱誘発性依存症の発症と一致する臨床的兆候に関連していることが観察される。体重は、2日目および3日目に、ビヒクル処置対照グループと比較して有意に増加したが、5日目に有意に減少した。モルヒネは1~9日目に食物摂取を有意に減少させた。その後、食物摂取は、一般的に、対照グループよりも少ないことが観察されるが、9、13、14、16、18、21、22および25日目には対照と有意な差はなかった。体重および食物摂取に対するこれらの影響は、モルヒネの影響に対する耐性を示している。
【0150】
モルヒネ処置グループの水摂取もまた、投与期間の間、28日間のうち25日で対照グループよりも有意に少ないことが見出される。体温もまた、一般的に、投与期間の間、対照グループよりも有意に低く、20日目、21日目および27日目に顕著である。投与期間中にモルヒネにより誘発される主な行動的影響が、ストラウブ挙尾、ジャンピング、ディギング(digging)、身体の緊張の高まり、自発運動活性の増大、爆発的動作(explosive movement)および眼球突出(exopthalmus)であることが観察される。
【0151】
さらにまた、28日目のモルヒネ投与の離脱は、食物摂取の初期のさらなる減少、その後の反跳性過食をもたらし、33日目に対照グループと比較して食物摂取が有意に増加することが観察される。食物摂取は35日目までに対照レベルに戻る。同様に、以前にモルヒネを投与されていたラットもまた、29日目に水摂取の初期の減少、その後の反跳性多渇症(rebound hyperdipsia)(水消費量は31日目までに対照レベルに戻る)が観察される。さらに、投与中に直腸体温の統計学的に有意な低下が観察されるが、離脱期の間、体温は対照レベルに戻る。
【0152】
さらにまた、モルヒネからの離脱期の間、新しい行動的および身体的兆候が観察され、これは、依存性の存在を示している。これらの兆候として、立毛、運動失調/千鳥足(rolling gait)、激しい震え(wet dog shakes)および腹部の縮こまり(pinched abdomen)が挙げられる。投与期間中に観察される他の異常な行動は、離脱期に徐々に消失する。35日目までに、立ち上がりが、以前にモルヒネを投与されたラットにおいて高い発生率で観察された唯一の行動または身体的兆候となった。
【0153】
したがって、モルヒネの反復投与は、体重、食物および水の摂取、および直腸温の変化、ならびに耐性および離脱誘発性依存症の発症と一致する臨床的兆候とともに、この研究において耐性および依存症の明確な兆候を引き起こすことが示される。これは、投与中および投与休止の間の生理学的変化の検出における該研究方法の妥当性を示している。
【0154】
対照的に、0.3および3mg/kgのどちらでも、実施例2の化合物の4回の反復投与は、28日間の皮下投与の間、耐性を引き起こさない。さらに、離脱時に、高用量では、行動的および身体的兆候の同様であるが減少するプロファイルが観察されるが、これは臨床的意義をもつとは考えられない。したがって、全体として、実施例2の化合物は、投与中止への身体的依存症症候群を引き起こさないことが判明した。
【0155】
実施例11: マウスにおけるオキシコドン依存性離脱研究
オキシコドンを、雄性C57BL/6Jマウスに、1~2日目、3~4日目、5~6日目、および7~8日目にそれぞれ9、17.8、23.7、および33mg/kg b.i.d.(注射の間隔は7時間)の漸増用量レジメンで8日間投与する。9日目の朝に、マウスに0.3、1または3mg/kgのいずれかの実施例3の化合物を皮下投与する。30分後に、ビヒクルの注射または3mg/kgのナロキソンの注射を行う。別のコホートのマウスは陰性対照として機能し、これらのマウスには、オキシコドンの代わりに、1~8日目にセイラインを投与する。9日目に、これらのマウスにビヒクル(上記のように、ナロキソンが続く)または3mg/kg(s.c.)の実施例2の化合物(上記のように、ナロキソンが続く)のいずれかを投与する。
【0156】
9日目に、ナロキソン(またはビヒクル)の注射直後に、マウスを個別に透明なプラスチックケージに収容し、30分間連続して観察する。マウスを、ジャンピング、激しい震え、足振戦(paw tremor)、後退り(backing)、眼瞼下垂および下痢を包含するオピエート離脱の一般的な身体的兆候についてモニターする。そのような行動はすべて、少なくとも1秒間隔があいた場合または正常な行動によって中断された場合には新しい発生として記録される。ナロキソン(またはビヒクル)注射の直前および30分後の動物の体重もまた記録する。ANOVA、適切な場合には、次いで、多重比較のためのTukey検定によりデータを解析する。有意なレベルはp<0.05で確立される。
【0157】
結果を下記の表に示す:
【表10】
【0158】
兆候の総数には、足振戦、ジャンプ、および激しい震えが含まれる。オキシコドン処置マウスにおいて、ナロキソンがかなりの総数の兆候、足振戦、ジャンプおよび体重変化(それぞれについてp≦0.0001)を誘発することが判明する。実施例2の化合物は、試験した全ての用量で、兆候の総数および足振戦の有意な減少をもたらす。さらに、該化合物は、3.0mg/kgでは、ジャンプの有意な減少および体重減少の減衰(attenuated body weight loss)ももたらす。
【0159】
これらの結果は、実施例2の化合物が、オピエート依存性ラットにおいてオピエート投与の突然の休止後のオピエート離脱の兆候および症状を用量依存的に減少させることを示している。
【0160】
実施例12: ホルマリン足試験(Formalin Paw Test)(炎症性疼痛モデル)
ホルマリンなどの化学刺激の足底下投与は、マウスに即時の痛みと不快感を引き起こし、次いで、炎症を引き起こす。2.5%ホルマリン溶液(37wt%ホルムアルデヒド水溶液、セイラインで希釈した)を後足に皮下注射することにより、二相性反応:急性疼痛反応および遅延炎症反応が生じる。したがって、この動物モデルは、同一の動物において急性疼痛および亜急性/強直性疼痛のどちらに関する情報も提供する。
【0161】
C57マウスを観察チャンバー内で慣らす。ホルマリン投与の30分前に、ビヒクルを皮下注射により、5mg/kgのモルヒネ(セイライン中)を皮下注射により、または0.3、1.0もしくは3.0mg/kgのいずれかの実施例2の化合物(45%w/vシクロデキストリン水溶液)を皮下注射により、マウスに投与する。さらに、別のセットのマウスを対照ビヒクルまたは3.0mg/kgの実施例2の化合物で、皮下注射ではなく経口投与により処置する。
【0162】
次いで、マウスの左後ろ足の足底表面に2.5%ホルマリン溶液20μLを皮下注射する。次の40分間にわたって、処置した後足のリッキング(licking)またはバイティング(biting)に費やされた合計時間を記録する。最初の10分間は急性侵害受容反応を表し、後の30分間は遅延炎症反応を表す。1ミンター(minter)間隔で、0~4のスケールでスコア付けされる「平均行動評価(Mean Behavioral Rating)」を使用して各動物の行動を評価する:
0: 反応なし、動物は眠っている
1: 動物は処置した足で、例えばつま先で、軽快に歩いている
2: 動物は処置した足を上げている
3: 動物は処置した足を震わせている
4: 動物は処置した足をリッキングまたはバイティングしている
ANOVA、適切な場合には、次いで、Fisher検定を用いるポストホック比較によりデータを解析する。有意性はp<0.05で確立される。
【0163】
結果を下記の表に示す。
【表11】
【0164】
結果は、初期段階(0~10分)および後期段階(11~40分)のどちらの反応期間中でも有意な処置効果を示している。ポストホック比較は、ビヒクル処置と比較して、モルヒネまたは実施例2の化合物(3mg/kg)の皮下注射が、ホルマリン注射によって引き起こされる疼痛行動評価を有意に減衰させ、リッキング時間を有意に減少させることを示す。ポストホック比較もまた、モルヒネまたは実施例2の化合物(3mg/kg)の皮下注射、および実施例2の化合物(3mg/kg)の経口投与により、リッキングに費やされた時間を有意に減少させることを示す。1.0mg/kgの化合物の皮下使用、および3.0mg/kgの経口使用で平均疼痛行動評価も低下したが、これらの効果はこの研究では統計学的に有意ではなかった。1.0mg/kgの実施例2の化合物の皮下使用でリッキング時間も同様に減少したが、結果は、この研究では統計学的に有意ではなかった。体重の有意な変化を受けた研究のマウスはどの研究グループにもいなかったことが判明した。
【0165】
実施例13: ヘロイン維持ラットにおける自己投与
ヘロイン中毒ラットが実施例2の化合物を自己投与するかどうかを決定するために研究が行われ、それらがそうしないことが判明し、さらに、本開示の化合物の非中毒性の性質が強調される。
【0166】
研究は3段階で行われる。第1段階では、ラットは、まず食物のレバーを押すように訓練され、次に、静脈内頚静脈カテーテルが留置され、ヘロインを自己投与するように訓練される。合図(ケージ内のライトの点灯)に応答して、動物がレバーを3回押すことにより、カテーテルを介してヘロインが1回注射される。ヘロインは、初期用量0.05mg/kg/注射で提供され、その後、0.015mg/kg/注射に増加する。次いで、ヘロインの供給をセイラインに置き換えることにより、この訓練された反応を消失させる。第2段階では、セイライン溶液を、0.0003mg/kg/注射、0.001mg/kg/注射、0.003mg/kg/注射および0.010mg/kg/注射の4つのうちの1つの用量での実施例2の化合物の溶液に置き換える。個々のマウスに、1種類または2種類の用量の化合物を上昇する方法で投与する。次いで、この反応をセイライン注射で消失させ、その後、0.015mg/kg/注射でのヘロインの使用を繰り返す第3段階を行う。第3段階の目的は、研究の終わりに依然としてラットがヘロインへの嗜癖行動を示すことを実証することである。研究結果を下記の表に示す:
【表12】
【0167】
結果は、ヘロインを投与している場合にラットがレバーを押す回数が統計学的に有意に増加するが、セイラインまたは実施例2の化合物を投与している場合には有意な差はなかったことを示している。したがって、結果は、ラットが実施例2の化合物の中毒にならないことを示唆している。
【0168】
実施例14: 動物の薬物動態データ
標準手順を使用して、数匹の動物において実施例2の化合物の薬物動態プロファイルを研究する。
【0169】
実施例14a: ラットPK研究
第1の研究では、ラットに実施例2の化合物を、45%Trapposolビヒクル中1mg/kgの静脈内ボーラス投与(IV)で投与するかまたは0.5%CMCビヒクル中10mg/kgで経口(PO)投与する(各グループ、N=3)。第2の研究では、ラットに実施例2の化合物を、それぞれ45%Trapposolビヒクル中、10mg/kgでPO投与するかまたは3mg/kgで皮下(SC)投与する(各グループについて、N=6)。投与後0~48時間の時点で薬物の血漿濃度を測定する。代表的な結果を下記の表に示す(*は、血漿濃度が測定可能な定量レベルを下回ることを示す):
【表13】
【0170】
実施例14b: マウスPK研究
実施例2の化合物の10mg/kgPO投与を使用して、マウスにおける同様の研究を行い、以下の結果が得られる:Tmax=0.25時間;Cmax=279ng/mL;AUC(0~4h)=759ng-hr/mL;血液-血漿比(0.25~4h)は3.7~6.6にわたる。該研究は0.1mg/kgSCの用量でも行われる。代表的な結果を下記の表に示す:
【表14】
【0171】
これらの結果は、総合して、実施例2の化合物が十分に吸収され、脳および組織に分布し、適度に長い半減期で保持されて、治療用量の1日1回投与を可能にすることを示している。
【0172】
実施例15: 胃腸機能
活性炭ボーラス投与の腸通過割合をモニターすることにより、ラットの胃腸運動に対する実施例2の化合物の影響を調べる。ラットを、15%活性炭水溶液の経口ボーラス投与の30分前に、(1)カルボキシメチルセルロース水性ビヒクル、(2)モルヒネ(5mg/kg、SC)または(3)実施例3の化合物(0.3、1.0または3.0mg/kg、SC)のいずれかで処置する。測定結果は、該炭が移動した距離を動物の腸の全長の割合として算出した運動率である。結果を下記の表に示す:
【表15】
【0173】
これらの結果は、実施例2の化合物が3mg/kgまでの用量では胃腸運動に対して有意な影響を及ぼさないことを示している。対照的に、予想どおりに、モルヒネは、胃運動を約50%低下させる。
【0174】
さらなる実験において、ラットを炭ボーラス投与の60分前にビヒクル、モルヒネ(5mg/kg)または実施例2の化合物(3mg/kg)のいずれかで各々SCで前処置し、次いで、モルヒネ(5mg/kg)、モルヒネ+実施例2の化合物(0.3mg/kgまたは3mg/kg)、または実施例2の化合物(3mg/kg)単独のいずれかで処置する。結果を下記の表に示す。グループ2および3では、まずモルヒネを注射し、その直後に実施例2の化合物を注射した:
【表16】
【0175】
結果は、実施例2の化合物が、モルヒネと同時に投与されたかまたはモルヒネの前に連続投与された場合にはモルヒネによって引き起こされる胃腸運動の阻害を逆転させ、前処置を用いた場合にはモルヒネの効果の遮断が強くなることを示している。
【0176】
理論に拘束されることなく、これらの差は、実施例2の化合物がMOPバイアスリガンドとして作用すること、および、それが、便秘および呼吸抑制を含むオピエート関連副作用を媒介することが示されている経路である下流のβアレスチンシグナル伝達経路を活性化させないことから生じると考えられる。
【0177】
実施例16: 肺機能
0.3、1.0および3.0mg/kgの実施例2の化合物を皮下投与した後のラットの呼吸数、一回換気量および毎分換気量をビヒクル対照と比較してモニターすることにより、ラットの肺機能に対する実施例2の化合物の影響を調べる。化合物の投与後0分、15分、60分、120分および240分で測定を行う。いずれの時点でも、ビヒクルといずれの試験グループとの間に有意な差がないことが判明する。得られた結果の典型である、60分間の結果を下記の表に示す:
【表17】
【0178】
実施例17: 1-(アシルオキシ)アルキル誘導体の合成
前駆化合物14から出発して、Zが-O-であり、R5が-C(R6)(R7)-O-C(O)-R8であり、R6、R7およびR8が以下の通りである式Iで示される一連の化合物を製造する:
【表18】
【0179】
化合物17aである(6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-2(3H)-オンを適切なクロロメチルアルキレート17x(R8CO2C(R6)(R7)Cl)と反応させることにより各化合物が製造される。必要なクロロメチルアルキレートは、それぞれ対応する酸塩化物であるR8COClから製造される。
【化7】
【0180】
例えば、ドデカン酸クロロメチル(CH3(CH2)10-C(O)O-CH2Cl)を以下のとおり製造する。アルゴン下にて、塩化亜鉛(II)(294mg、2.16mmol)およびパラホルムアルデヒド(842mg、28.08mmol)の0℃の無水アセトニトリル(4mL)中撹拌懸濁液に塩化ラウリル(5.0mL、21.6mmol)を滴下する。該懸濁液を0℃で10分間撹拌し、次いで、室温で10分間撹拌し、次いで、70℃まで24時間加熱する。次いで、反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタン(100mL)中に注ぐ。得られた懸濁液を真空濾過し、ジクロロメタン(2×10mL)で洗浄する。合わせた濾液に飽和重炭酸ナトリウム(100mL)を添加し、該混合物を室温で1.5時間撹拌する。ジクロロメタン相を分取し、飽和重炭酸ナトリウム(2×60mL)で洗浄し、減圧下で蒸発乾固させる。得られた残留物を高真空下でさらに乾燥させて、クロロメチルドデカノエートを淡い橙色(light orange)の油状物として得る(4.523g、収率84%)。この粗生成物を、さらなる精製を行わずに直接次反応に使用する。ドデカン酸クロロメチルを化合物17bの製造に使用する。化合物17cの製造のために、塩化パルミトイルおよびパラホルムアルデヒドから製造されるパルミチン酸クロロメチルを使用する。類似化合物17xは、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドまたはイソブチルアルデヒドなどの他のアルデヒドとともに塩化オクタノイルまたは塩化ステアリルなどの他の酸塩化物を用いて同様に製造することができる。
【0181】
化合物17b。ヨウ化カリウム(131mg、0.786mmol)、炭酸カリウム(181mg、1.31mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(137μL、0.786mmol)、N,N-ジメチルピリジン-4-アミン(64mg、0.524mmol)、ドデカン酸クロロメチル(522mg、2.10mmol)および17a(212mg、0.556mmol)の無水DMF(1.5mL)中懸濁液にアルゴンを5分間通気する。得られた懸濁液を超音波により125℃まで5時間加熱し、溶媒を減圧除去する。得られた粗生成物を、溶離液としてヘキサン中0~100%酢酸エチルの勾配液を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、ドデカン酸((6bR,10aS)-8-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-2-オキソ-6b,7,8,9,10,10a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3',4':4,5]ピロロ[1,2,3-de]キノキサリン-3(2H)-イル)メチル(17b)を淡い橙色の固体として得る(150mg、収率45%)。MS (ESI) m/z 594.4089 [M + H]+。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 6.96 (dd, J = 9.1, 8.2 Hz, 2H), 6.90 (s, 1H), 6.82 (d, J = 7.0 Hz, 4H), 6.16 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 5.70 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 4.05 (d, J = 14.5 Hz, 1H), 3.99 (d, J = 6.6 Hz, 2H), 3.42 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 3.38 - 3.25 (m, 1H), 2.91 (d, J = 28.2 Hz, 1H), 2.74 (s, 1H), 2.50 (s, 2H), 2.34 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.28 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 1.96 (s, 3H), 1.86 (s, 1H), 1.70 - 1.59 (m, 2H), 1.54 (s, 1H), 1.35 - 1.16 (m, 17H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 3H)。
【0182】
適切なハロゲン化物14xを使用して類似の方法で化合物17cを製造する。例えば、パルミチン酸クロロメチルを使用して化合物17cを得る。MS (ESI) m/z 650.4348 [M + H]+。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 6.96 (dd, J = 9.1, 8.2 Hz, 2H), 6.89 (dd, J = 5.5, 2.8 Hz, 1H), 6.86 - 6.78 (m, 4H), 6.16 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 5.70 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 4.05 (d, J = 14.5 Hz, 1H), 3.97 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 3.41 (d, J = 14.5 Hz, 1H), 3.32 (d, J = 5.6 Hz, 2H), 2.97 - 2.89 (m, 1H), 2.74 (d, J = 11.3 Hz, 1H), 2.57 - 2.42 (m, 2H), 2.34 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.30 - 2.20 (m, 1H), 2.00 - 1.91 (m, 3H), 1.85 (t, J = 11.0 Hz, 1H), 1.62 (p, J = 7.4 Hz, 2H), 1.53 (s, 2H), 1.35 - 1.18 (m, 23H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 3H)。
【0183】
実施例18: アルコキシカルボニル(カルバメート)誘導体の合成
Zが-O-であり、R5が-C(O)-O-C(Ra)(Rb)(Rc)であり、Ra、RbおよびRcが以下の通りである式Iで示される一連の化合物を製造する:
【表19】
【0184】
化合物17aを適切なアルコキシカルボニルクロリドであるRcCH2O(CO)Clと反応させることにより各化合物が製造される:
【化8】
【0185】
化合物18b。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(219μL、1.572mmol)、N,N-ジメチル-ピリジン-4-アミン(64mg、0.524mmol)、ヘキサデシルオキシカルボニルクロリド(320mg、1.05mmol)および17a(200mg、0.524mmol)の無水DMF(3mL)中混合物にアルゴンを5分間通気する。該混合物を室温で5時間撹拌し、溶媒を減圧除去する。得られた残留物を、溶離液としてヘキサン中0~100%酢酸エチルの勾配液を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物を淡い橙色の固体として得る(197mg、収率58%)。MS (ESI) m/z 650.4970 [M + H]+。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.04 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.96 (dd, J = 9.2, 8.2 Hz, 2H), 6.91 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.86 - 6.76 (m, 3H), 4.40 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 4.04 - 3.94 (m, 3H), 3.35 (d, J = 14.1 Hz, 2H), 3.26 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 2.92 (s, 1H), 2.74 (s, 1H), 2.50 (s, 2H), 2.24 (d, J = 14.8 Hz, 1H), 2.00 - 1.86 (m, 4H), 1.83 - 1.74 (m, 2H), 1.48 - 1.38 (m, 2H), 1.26 (s, 25H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 3H)。
【0186】
化合物18a。ドデカンオキシカルボニルクロリドを使用して類似の方法で化合物18aを得る。MS (ESI) m/z 594.4180 [M + H]+。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.06 (dd, J = 8.2, 0.9 Hz, 1H), 6.99 - 6.91 (m, 3H), 6.86 - 6.76 (m, 3H), 4.41 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 4.00 - 3.96 (m, 2H), 3.53 (s, 1H), 3.36 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 3.29 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 3.12 (s, 1H), 2.96 (s, 1H), 2.70 (d, J = 11.9 Hz, 2H), 2.48 (s, 1H), 2.19 (s, 1H), 2.13 - 2.02 (m, 2H), 2.03 - 1.94 (m, 1H), 1.83 - 1.72 (m, 2H), 1.47 - 1.39 (m, 2H), 1.27 (d, J = 6.3 Hz, 18H), 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 3H)。
【0187】
実施例19: 化合物17bおよび18aの薬物動態分析
実施例14aで用いたプロトコールと同じプロトコールに実質的に従ってラットPK研究を行う。ラットに実施例2の化合物、化合物17bまたは化合物18aを、通常のセイライン(0.9%NaCl)中3%CMC、0.1%Tween20からなるビヒクル中30mg/kgで皮下投与する(各グループについて、N=4)。血漿サンプルを2分目、5分目、15分目および30分目、ならびに1時間目、2時間目、6時間目、8時間目、12時間目、24時間目、48時間目、72時間目、96時間目、120時間目、144時間目、168時間目、240時間目、336時間目、504時間目および720時間目に採取する。サンプルを、投与した化合物(実施例2、化合物17bまたは18a)の濃度について、および実施例2の化合物(化合物17bおよび18aの加水分解代謝物である)について、分析する。代表的な結果を下記の表に示す(*は、分析物レベルが測定可能な定量レベルを下回ることを示す):
【表20】
【0188】
これらの結果は、本開示の化合物が有効な代謝加水分解を受けて、活性薬物部分、実施例2の化合物、の治療的血漿濃度が得られることを示している。さらに、該結果は、これらの化合物が、測定可能な血漿濃度の実施例2の化合物が見られる時間枠を有意に延長する漸進的インビボ加水分解を受けることを示している(実施例14aで示される結果との比較による)。例えば、実施例2の化合物を3mg/kgの治療有効用量でラットに皮下投与した場合、薬物の血漿濃度は投与後24時間でほぼベースラインレベルまで低下する(実施例14aを参照)。対照的に、プロドラッグ化合物17bを30mg/kgの用量で投与した場合、有意な血漿濃度の実施例2の化合物が336時間後まで得られる。
また、本願は、以下の態様も包含する。
[態様1]
式I:
【化9】
式I
[式中、
は、-C(O)-O-C(R )(R )(R )、-C(O)-O-CH -O-C(R )(R )(R )または-C(R )(R )-O-C(O)-R であり;
Zは、Oまたは-C(O)-であり;
は、-C(R )(R )(R )、-O-C(R )(R )(R )または-N(R )(R )であり;
、R およびR は、各々独立して、HおよびC 1-24 アルキルより選択され;
およびR は、各々独立して、HおよびC 1-24 アルキルより選択され;
およびR は、各々独立して、H、C 1-6 アルキル、カルボキシおよびC 1-6 アルコキシカルボニルより選択される]
で示され、
遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)である、化合物。
[態様2]
ZがOである、態様1に記載の化合物。
[態様3]
Zが-C(O)である、態様1に記載の化合物。
[態様4]
が-C(O)-O-C(R )(R )(R )である、態様1または2に記載の化合物。
[態様5]
が-C(O)-O-CH -O-C(R )(R )(R )である、態様1または2に記載の化合物。
[態様6]
が-C(R )(R )-O-C(O)-R であり、R が-C(R )(R )(R )である、態様1または2に記載の化合物。
[態様7]
が-C(R )(R )-O-C(O)-R であり、R が-O-C(R )(R )(R )である、態様1または2に記載の化合物。
[態様8]
が-C(R )(R )-O-C(O)-R であり、R が-N(R )(R )である、態様1または2に記載の化合物。
[態様9]
式II:
【化10】
式II
[式中、
Zは、Oまたは-C(O)-であり;
、R 、R およびR は、各々独立して、HおよびC 1-6 アルキルより選択され;
nは、1~23の整数である]
で示され、
遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)、例えば単離または精製された遊離または塩形態(例えば医薬的許容される塩形態)である、化合物。
[態様10]
塩形態、例えば医薬的に許容される塩形態の、態様1~9のいずれか一つに記載の化合物。
[態様11]
医薬的に許容される希釈剤または担体と混合されて、遊離または医薬的に許容される塩形態(例えば医薬的に許容される塩形態)の態様1~10のいずれか一つに記載の化合物を含む医薬組成物。
[態様12]
組成物が、長時間作用型注射、例えば筋肉内または皮下注射として製剤化される、態様11に記載の医薬組成物。
[態様13]
組成物が、遊離もしくは医薬的に許容される塩形態または結晶形態の化合物を含み、該化合物が、0.5~100μm、例えば5~30μm、10~20μm、20~100μm、20~50μmまたは30~50μmの体積ベースの粒子径を有する粒子または結晶に形成され;粒子が、0.1~5m /g、例えば0.5~3m /gまたは0.8~1.2m /gの表面積を有してもよい、態様12に記載の医薬組成物。
[態様14]
遊離もしくは医薬的に許容される塩形態の態様1~10のいずれか一つに記載の化合物、または態様11~13のいずれか一つに記載の医薬組成物を、治療または予防を必要とする患者に投与することを含む、中枢神経系障害の治療または予防方法。
[態様15]
該障害が、肥満、不安(例えば全般性不安、社交不安およびパニック障害)、うつ病(例えば難治性うつ病およびMDDまたは治療抵抗性うつ病)、精神病(例えば認知症に関連する精神病、例えば進行性パーキンソン病における幻覚または偏執性妄想)、統合失調症、睡眠障害(特に統合失調症および他の精神および神経疾患に関連する睡眠障害)、性障害、片頭痛、疼痛および疼痛に関連する状態、例えば頭痛、特発性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛、線維筋痛症、慢性疲労、広場恐怖症、社会恐怖症、認知症における激越(例えばアルツハイマー病における激越)、自閉症および関連する自閉症障害における激越、消化管障害、例えば消化管運動の機能不全、および認知症、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病における認知症;気分障害;薬物依存、例えばオピエート依存、コカイン依存、アンフェタミン依存、および/またはアルコール依存、および薬物またはアルコール依存(例えばオピエート依存)からの離脱;オピエート過剰摂取;薬物依存に関連する併存疾患、例えばうつ病、不安および精神病;過食性障害;および強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)および関連障害、例えば強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害、およびそれらの組合せからなる群より選択される、態様14に記載の方法。
[態様16]
該障害が、セロトニン5-HT 2A 、セロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)、ドーパミンD1および/またはD2経路および/またはμオピオイド受容体が関連する障害である、態様14に記載の方法。
[態様17]
該障害が、(i)うつ病に罹患している患者における精神病、例えば統合失調症;(2)精神病、例えば統合失調症に罹患している患者におけるうつ病;(3)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する気分障害;(4)精神病、例えば統合失調症またはパーキンソン病に関連する睡眠障害;および(5)物質嗜癖、物質使用障害および/または物質誘発障害より選択される障害である、態様14に記載の方法。
[態様18]
該中枢神経系障害が、強迫性障害(OCD)、強迫性パーソナリティ障害(OCPD)、全般性不安障害、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、強迫性ギャンブル障害、強迫性摂食障害、身体醜形障害、心気症、病的身繕い障害、窃盗症、放火症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、衝動制御障害、および関連障害、およびそれらの組合せより選択される障害である、態様14に記載の方法。
[態様19]
該中枢神経系障害が、疼痛および疼痛に関連する状態、例えば頭痛、特発性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疼痛、線維筋痛症、および慢性疲労、および薬物依存、例えばオピエート依存、コカイン依存、アンフェタミン依存、および/またはアルコール依存、および薬物またはアルコール依存(例えばオピエート依存)からの離脱;およびオピエート過剰摂取より選択される障害である、態様14に記載の方法。
[態様20]
μオピエート、κオピエート、δオピエートおよび/またはノシセプチン/オルファニン受容体のアゴニストもしくはパーシャルアゴニストまたはインバースアゴニストもしくはアンタゴニスト、例えばブプレノルフィン、メサドン、ナロキソンまたはナルトレキソンを投与することをさらに含む、態様14~19のいずれか一つに記載の方法。
[態様21]
中枢神経系障害の治療または予防のための医薬の製造における、遊離もしくは医薬的に許容される塩形態の態様1~10のいずれか一つに記載の化合物、または遊離もしくは医薬的に許容される塩形態の態様11~13のいずれか一つに記載の医薬組成物の使用。