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▶ コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】タルク入りポリカーボネート組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20230210BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230210BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K3/34
C08L33/26
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020534200
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018084599
(87)【国際公開番号】W WO2019121253
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】17208726.4
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティム、フンガーラント
(72)【発明者】
【氏名】タニヤ、カッセル
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-32140(JP,A)
【文献】特表2012-521447(JP,A)
【文献】国際公開第2014/188609(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合時におけるタルク含有ポリカーボネート組成物中の芳香族ポリカーボネートの分子量の低下を低減するための、少なくとも1つのポリメチルメタクリルイミド(PMMIコポリマーの使用であって、
前記PMMIコポリマーが、いずれの場合も前記PMMIコポリマーの総重量に対して、メチルメタクリレート単位を3重量%~65重量%、メチルメタクリルイミド単位を少なくとも30重量%、メチルメタクリル酸単位およびメチルメタクリル酸無水物単位を合計15重量%以下有し、DIN 53240-1:2013-06に従って測定される酸価が15~50mgKOH/gである、使用
【請求項2】
A)少なくとも60重量%の芳香族ポリカーボネートと、
B)5重量%~35重量%のタルクと、
C)0.1重量%~8重量%のPMMIコポリマーと、
D)必要に応じて更なる添加剤と
を含
前記PMMIコポリマーが、いずれの場合も前記PMMIコポリマーの総重量に対して、メチルメタクリレート単位を3重量%~65重量%、メチルメタクリルイミド単位を少なくとも30重量%、メチルメタクリル酸単位およびメチルメタクリル酸無水物単位を合計15重量%以下有し、DIN 53240-1:2013-06に従って測定される酸価が15~50mgKOH/gである、組成物。
【請求項3】
前記組成物が、
A)少なくとも68重量%の芳香族ポリカーボネートと、
B)10重量%~30重量%のタルクと、
C)0.2重量%~6重量%のPMMIコポリマーと、
D)必要に応じて更なる添加剤と
を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
A)少なくとも68重量%の芳香族ポリカーボネートと、
B)10重量%~30重量%のタルクと、
C)0.2重量%~6重量%のPMMIコポリマーと、
D)必要に応じて、難燃剤、タレ防止剤、衝撃改質剤、成分B以外の充填剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、カーボンブラック、潤滑剤および/または離型剤、熱安定剤、ブレンドパートナー、相溶化剤、UV吸収剤および/またはIR吸収剤からなる群から選択される1つ以上の更なる添加剤とのみからなる、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、前記組成物全体に対して、少なくとも1.5重量%のPMMIコポリマーを含む、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、15重量%~25重量%のタルクと、少なくとも2重量%のPMMIコポリマーとを含む、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記PMMIコポリマーが、メチルメタクリレート単位、メチルメタクリルイミド単位、メチルメタクリル酸単位およびメチルメタクリル酸無水物単位を有する、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
いずれの場合も、組成物中に存在する前記PMMIコポリマーの総重量に対して、メチルメタクリルイミド単位の割合が少なくとも30重量%であり、メチルメタクリレート単位の割合が3重量%~65重量%であり、メチルメタクリル酸単位およびメチルメタクリル酸無水物単位の割合が合計で15重量%以下である、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
DIN 53240-1:2013-06に従って測定される、前記PMMIコポリマーの酸価が15~50mgKOH/gである、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
タルクの割合が前記組成物全体に対して15重量%~25重量%であり、タルクに対するPMMIコポリマーの比率が0.15~0.6である、請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
最終組成物中のPMMIコポリマーの割合が2重量%~6重量%である、請求項~1のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項~1のいずれか一項に記載の組成物製である成形品。
【請求項13】
前記成形品が、電子部品用のヒートシンク、電気・電子分野のハウジングまたはハウジングの部品である、請求項1に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱変形性への影響を最小限としながら、タルク含有ポリカーボネート組成物中の芳香族ポリカーボネートを分子量の低下に対して安定化させること、およびそれに応じてこの目的のための新規添加剤の使用、ならびに芳香族ポリカーボネートおよびタルクを含有する対応する組成物に関し、したがって、タルクの添加に起因するポリカーボネートの分解を防止または低減する方法にも関する。本発明はまた、これらの組成物製である成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
標準的な処理条件下での配合により充填剤入りポリカーボネート組成物を製造すると、充填剤に応じて、ポリカーボネートの分子量が低下する。タルク含有組成物の場合、この充填剤は非常に多数の反応性基(例えば塩基性ヒドロキシル基)を表面に有するため、この影響は特に顕著である。
【0003】
分子量の低下は、ポリカーボネート組成物の光学的、レオロジー的、機械的および熱的特性に悪影響を及ぼす。したがって、ポリマー鎖の分解、分子量の低下を抑制するプロセス安定剤を組成物に添加する必要がある。
【0004】
ホスファイトまたはホスホナイト等の従来のプロセス安定剤は、充填剤によって誘発される分解を抑制するためには不適切であることがわかっている。充填剤入り熱可塑性物質では、特に、酸化された酸変性ポリオレフィン(コ)ポリマー(例えば三井化学社のHiWax、またはHoneywellのA-C製品)を使用することができる。国際公開第2016/087477A1号は、ポリカーボネート中の酸化ポリエチレンワックスの使用、および他の特性の中でも耐熱変形性に対するその影響を記載している。これらの添加剤は、融点が低いため、少量でも熱的および機械的特性を低下させる可能性がある。充填剤入りポリカーボネート組成物の安定化には、充填剤の含有量に応じて、1重量%を超えるワックス濃度が必要である。しかしながら、より高い濃度では、そのような添加剤は可塑化効果を有し、よって充填剤の強化効果を低下させ、したがってその主な目的が弱まる。さらに、これらのオレフィンワックスとポリカーボネートとの混和性は、含有量の増加に伴い急速に低下し、これにより、配合物に著しい濁りが生じる。さらに、充填剤を添加する場合、これはまた、着色性に悪影響を及ぼし、材料の表面での剥離効果をもたらす。さらに、そのようなワックスは、長時間の熱応力下では不安定であり、この熱応力により材料がより急速に黄変する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、対処される課題は、タルク入りポリカーボネート組成物中の芳香族ポリカーボネートの分子量の低下を抑制し、充填剤の実際の強化効果に悪影響を及ぼさない適切な新規安定剤を特定し、対応する組成物を提供することであった。それに加えて、新規安定剤を欠く組成物と比較して、ポリカーボネート組成物の熱的、光学的およびレオロジー的特性に対する影響が最小限であり、最良の場合には悪影響が全くないというものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、驚くべきことに、PMMIコポリマーをポリカーボネート組成物に添加することによって解決される。PMMIコポリマーの添加は、ポリカーボネート組成物の耐熱変形性ならびに機械的およびレオロジー的特性を著しく悪化させることはなく、実際にはそれらを改善する場合がある。
【0007】
したがって、本発明は、配合時における、特に共混練機を用いた配合時におけるタルク入りポリカーボネート組成物中の芳香族ポリカーボネートの分子量の低下を抑制するための、すなわち少なくとも低減、好ましくは防止するための、PMMIコポリマーの使用を提供する。
【0008】
配合とは、ポリマー(ここでは芳香族ポリカーボネート)への、混合物(特に充填剤および添加剤)の添加である。これは、押出機を用いて、押出機内の温度260℃超で通常は行われる。
【0009】
したがって、本発明はまた、
A)芳香族ポリカーボネートと、
B)タルクと、
C)PMMIコポリマーと、
D)必要に応じて更なる添加剤と
を含有する組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、個々の成分について詳細に説明する。
成分A
組成物の成分Aは、芳香族ポリカーボネートである。
【0011】
本発明の文脈における芳香族ポリカーボネートには、ホモポリカーボネートだけでなく、コポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネートも含まれる。ポリカーボネートは、既知の態様で線状または分岐状であってよい。本発明によれば、ポリカーボネートの混合物も使用することができる。
【0012】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート等の熱可塑性ポリカーボネートは、重量平均分子量MWが、好ましくは15000~40000g/mol、より好ましくは34000g/mol以下、特に好ましくは17000~33000g/mol、とりわけ19000~32000g/molであり、これは、ビスフェノールAポリカーボネート標準に対して較正され、溶離液としてジクロロメタンを使用したゲル浸透クロマトグラフィー(PSS Polymer Standards Service GmbH(ドイツ)からの既知のモル質量分布を有する線状ポリカーボネート(ビスフェノールAとホスゲンとから形成)による較正、およびCurrenta GmbH & Co.OHG、Leverkusenからの2301-0257502-09D法(2009年ドイツ語版)による較正)によって測定される。溶離液は、ジクロロメタンである。架橋スチレン-ジビニルベンゼン樹脂のカラムの組合せ。分析カラムの直径:7.5mm;長さ:300mm。カラム材料の粒子サイズ:3μm~20μm。溶液の濃度:0.2重量%。流速:1.0ml/分、溶液の温度:30℃。UVおよび/またはRI検出を使用する。
【0013】
本発明に従って使用されるポリカーボネート中のカーボネート基の80モル%以下、好ましくは20モル%~50モル%の部分は、芳香族ジカルボン酸エステル基に置き換えられていてもよい。炭酸からの酸基と芳香族ジカルボン酸からの酸基との両方を分子鎖に組み込んだこの種のポリカーボネートは、芳香族ポリエステルカーボネートと呼ばれる。本発明の文脈において、それらは、熱可塑性芳香族ポリカーボネートという包括的用語に包含される。
【0014】
ポリカーボネートは、ジヒドロキシアリール化合物、炭酸誘導体、必要に応じて連鎖停止剤および必要に応じて分岐剤から既知の方法で調製され、ポリエステルカーボネートは、炭酸誘導体の一部を、芳香族ポリカーボネート中のカーボネート構造単位が芳香族ジカルボン酸エステル構造単位によって置き換えられる範囲に応じた程度まで、芳香族ジカルボン酸または当該ジカルボン酸の誘導体で置き換えることにより調製される。
【0015】
ポリカーボネートの調製に適したジヒドロキシアリール化合物は、式(1)のものである。
HO-Z-OH (1)
【0016】
式(1)中、Zは、1つ以上の芳香環を含むことができ、置換されていてもよく、脂肪族もしくは脂環式基、もしくはアルキルアリール、または架橋要素としてヘテロ原子を含んでもよい、炭素数6~30の芳香族基である。
【0017】
好ましくは、式(1)中のZは、式(2)の基である。
【化1】
【0018】
式(2)中、
6およびR7は、独立してH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ、ClもしくはBr等のハロゲン、またはいずれの場合も必要に応じて置換されたアリールもしくはアラルキルであり、好ましくはHまたはC1~C12アルキルであり、より好ましくはHまたはC1~C8アルキルであり、最も好ましくはHまたはメチルであり、
Xは、単結合、-SO2-、-CO-、-O-、-S-、C1~C6アルキレン、C2~C5アルキリデンまたはC5~C6シクロアルキリデン(これはC1~C6アルキル、好ましくはメチルまたはエチルにより置換されていてもよい)、そしてまた、更なるヘテロ原子を含む芳香環に必要に応じて縮合していてもよいC6~C12アリーレンである。
【0019】
好ましくは、Xは、単結合、C1~C5アルキレン、C2~C5アルキリデン、C5~C6シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO2-、または式(3)の基である。
【0020】
【化2】
【0021】
ジヒドロキシアリール化合物(ジフェノール)の例は、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)アリール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、ならびにこれらの環アルキル化および環ハロゲン化化合物である。
【0022】
本発明に従って使用されるポリカーボネートおよびコポリカーボネートの調製に適したジヒドロキシアリール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、ならびにこれらのアルキル化、環アルキル化および環ハロゲン化化合物が挙げられる。コポリカーボネートは、いわゆるSiコポリカーボネートを得るために、Si含有テレケリックを用いて調製することもできる。
【0023】
好ましいジヒドロキシアリール化合物は、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、ならびに式(I)~(III)のビスフェノールである。
【0024】
【化3】
【0025】
上記式中、R’は、いずれの場合も、C1~C4アルキル基、アラルキル基またはアリール基であり、好ましくはメチル基またはフェニル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0026】
特に好ましいジヒドロキシアリール化合物は、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、ならびに式(I)、(II)および/または(III)のジヒドロキシアリール化合物である。
【0027】
これらの、および更なる適切なジヒドロキシアリール化合物は、例えば、米国特許第2999835A号、同第3148172A号、同第2991273A号、同第3271367A号、同第4982014A号および同第2999846A号、独国公開明細書第1570703A号、同第2063050A号、同第2036052A号、同第2211956A号および同第3832396A号、仏国特許第1561518A1号、モノグラフ「H.Schnell、Chemistry and Physics of Polycarbonates、Interscience Publishers、New York 1964、p.28 ff.;p.102 ff.」および「D.G.Legrand、J.T.Bendler、Handbook of Polycarbonate Science and Technology、Marcel Dekker New York 2000、p.72ff.」に記載されている。
【0028】
ホモポリカーボネートの場合、1つのジヒドロキシアリール化合物のみが使用される。コポリカーボネートの場合、2つ以上のジヒドロキシアリール化合物が使用される。
【0029】
特に好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネート、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくホモポリカーボネート、ならびに2つのモノマーであるビスフェノールAおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、または2つのモノマーであるビスフェノールAおよび4,4’-ジヒドロキシジフェニルに基づくコポリカーボネート、ならびに式(I)、(II)および/または(III)のジヒドロキシアリール化合物から誘導されるホモまたはコポリカーボネートであり、特にビスフェノールAを用いるものである。
【0030】
【化4】
【0031】
上記式中、R’は、いずれの場合も、C1~C4アルキル、アラルキルまたはアリールであり、好ましくはメチルまたはフェニルであり、最も好ましくはメチルである。
【0032】
使用されるジヒドロキシアリール化合物は、合成に添加される他の全ての化学物質および補助剤と同様に、それら自身の合成、取り扱いおよび保管に由来する不純物で汚染されている可能性がある。しかしながら、可能な限り最高の純度の原料を使用することが望ましい。
【0033】
一般式(IV)のシロキサンの1つ以上のモノマー単位を有するコポリカーボネートも好ましい。
【化5】
【0034】
式(IV)中、
19は、水素、Cl、BrまたはC1~C4アルキル基であり、好ましくは水素またはメチル基であり、より好ましくは水素であり、
17およびR18は、同一であるか異なり、それぞれ独立してアリール基、C1~C10アルキル基またはC1~C10アルキルアリール基であり、好ましくはそれぞれメチル基であり、
Xは、単結合、-CO-、-O-、C1~C6アルキレン基、C2~C5アルキリデン基、C5~C12シクロアルキリデン基、またはC6~C12アリーレン基(これはヘテロ原子を含む更なる芳香環に必要に応じて縮合していてもよい)であり、Xは、好ましくは単結合、C1~C5アルキレン基、C2~C5アルキリデン基、C5~C12シクロアルキリデン基、-O-または-CO-であり、さらに好ましくは単結合、イソプロピリデン基、C5~C12シクロアルキリデン基または-O-であり、最も好ましくはイソプロピリデン基であり、
nは、1~500、好ましくは10~400、より好ましくは10~100、最も好ましくは20~60の数であり、
mは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の数であり、
pは、0または1であり、好ましくは1であり、
n×mの値は、好ましくは12~400、さらに好ましくは15~200であり、
ここで、シロキサンは、pKAが3~7(25℃)である弱酸の有機または無機塩の存在下で、ポリカーボネートと好ましくは反応する。
【0035】
式(IV)のモノマー単位を有するコポリカーボネート、および特にその調製も、国際公開第2015/052106A2号に記載されている。
【0036】
コポリカーボネート中の式(I)、(II)、(III)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルおよび/またはビスフェノールTMCに基づくモノマー単位の合計割合は、使用されるジヒドロキシアリール化合物のモルの合計に対して、好ましくは0.1~88モル%、より好ましくは1~86モル%、さらにより好ましくは5~84モル%、特に10~82モル%である。
【0037】
コポリカーボネートは、ブロックおよびランダムコポリカーボネートの形態であってよい。ランダムコポリカーボネートが特に好ましい。
【0038】
コポリカーボネート中のジフェノキシドモノマー単位の度数の比は、ここで、使用されるジヒドロキシアリール化合物のモル比から計算される。
【0039】
ISO 1628-4:1999に従って測定されるコポリカーボネートの相対溶液粘度は、好ましくは1.15~1.35の範囲である。
【0040】
分子量を調整するために必要な単官能性連鎖停止剤、例えばフェノールもしくはアルキルフェノール、特にフェノール、p-tert-ブチルフェノール、イソオクチルフェノール、クミルフェノール、これらのクロロ炭酸エステル、もしくはモノカルボン酸の塩化アシル、またはこれらの連鎖停止剤の混合物は、ホスゲンもしくはクロロ炭酸の末端基が反応混合物中に依然として存在しているのであれば、または連鎖停止剤として塩化アシルおよびクロロ炭酸エステルの場合は、得られるポリマーにおける充分なフェノール性末端基が利用可能であれば、ビスフェノラートとの反応に供給されるか、あるいは、合成中の所望の時点で添加される。しかしながら、連鎖停止剤を、ホスゲンがもはや存在しないが触媒がまだ系中に計量されていない場所もしくは時点でホスゲン化の後に添加する場合、または触媒の前、もしくは触媒と一緒にもしくは並行して、それらを系中に計量する場合が好ましい。
【0041】
使用される任意の分岐剤または分岐剤混合物は、同じ方法で、ただし通常は連鎖停止剤の前に合成に添加される。通常は、トリスフェノール、クォーターフェノール、またはトリもしくはテトラカルボン酸の酸塩化物、あるいはポリフェノールまたは酸塩化物の混合物が使用される。
【0042】
分岐剤として使用可能な、3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有するいくつかの化合物は、例えば、フロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタ-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタンである。
【0043】
他の3官能性化合物のいくつかは、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールである。
【0044】
好ましい分岐剤は、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールおよび1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0045】
使用される分岐剤の量は、それぞれの場合に使用されるジフェノールのモルに対して、0.05モル%~2モル%である。
【0046】
分岐剤は、当初装入されているアルカリ性水相にジフェノールおよび連鎖停止剤と共に含めるか、またはホスゲン化の前に有機溶媒に溶解させて添加することができる。
【0047】
ポリカーボネートの調製のためのこれら全ての手段は、当業者によく知られている。
【0048】
ポリエステルカーボネートの調製に適した芳香族ジカルボン酸は、例えば、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、tert-ブチルイソフタル酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、トリメチル-3-フェニルインダン-4,5’-ジカルボン酸である。
【0049】
芳香族ジカルボン酸の中でも、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を使用することが特に好ましい。
【0050】
ジカルボン酸の誘導体は、ハロゲン化ジカルボニルおよびジカルボン酸ジアルキル、特に塩化ジカルボニルおよびジカルボン酸ジメチルである。
【0051】
カーボネート基は、本質的に化学量論的に、また定量的に芳香族ジカルボン酸エステル基に置き換えられているため、共反応物のモル比も最終ポリエステルカーボネートに反映される。芳香族ジカルボン酸エステル基は、ランダムにまたはブロックで組み込むことができる。
【0052】
本発明に従って用いるポリカーボネート(例えばポリエステルカーボネート)の好ましい調製態様は、既知の界面プロセスおよび既知の溶融エステル交換プロセスである(例えば、国際公開第2004/063249A1号、国際公開第2001/05866A1号、米国特許第5,340,905A号、米国特許第5,097,002A号、米国特許第5,717,057A号を参照)。
【0053】
前者の場合、使用される酸誘導体は、好ましくはホスゲンおよび必要に応じて塩化ジカルボニルであり、後者の場合、好ましくは炭酸ジフェニルおよび必要に応じてジカルボン酸エステルである。ポリカーボネート製造/ポリエステルカーボネート製造のための触媒、溶媒、後処理、反応条件等は、いずれの場合も充分に説明されており、知られている。
【0054】
本発明の文脈における組成物は、好ましくは「ポリカーボネート組成物」または「ポリカーボネート系組成物」である。これらは、ベース材料、すなわち存在する主な成分がポリカーボネートである組成物である。ここで「主な」とは、組成物全体に対して、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも68重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも74重量%の芳香族ポリカーボネートを意味する。
【0055】
成分B
本発明によれば、サイジングされた(sized)またはサイジングされていない(unsized)タルクを成分B)として使用する。本発明によれば、サイジングされていないタルクは、更なる成分と混合される前にいかなるサイズ(size)も含まないものである。サイジングされていないタルクが使用される組成物の場合には特に、PMMIコポリマーを使用することが好ましい。
【0056】
本発明の文脈におけるタルクは、本質的に同じ化学組成、粒径、多孔度および/またはBET表面積を持つタルク、またはタルク混合物であることが好ましい。
【0057】
タルクは、一般的に層状ケイ酸塩である。これは、一般的な化学組成Mg3[Si410(OH)2]を有するケイ酸マグネシウム水和物として説明できる。しかしながら、異なる種類のタルクは異なる不純物を含むので、この一般的な組成とは異なる場合がある。
【0058】
タルクは、ポリマーとの親和性を向上させるためにサイズを含んでもよい。本発明の文脈において、サイズとは、タルク(特にMg3[Si410(OH)2])以外の分子の、表面での制御された(化学吸着または物理吸着した)富化であると考えられる。したがって、サイジングされていないタルクは、表面処理されていないタルクであり、つまり、所望の粒径のタルク粒子を回収し、必要に応じて圧縮した後に、化学吸着または物理吸着による制御された方法でタルクの表面を変える更なる処理工程をタルクが好ましくは受けていないことを意味する。しかしながら、タルクの表面が特にpHに関連してその特性を大幅に失うことが無いのであれば、これは、タルクの更なる処理中に表面の一部に不純物、埃または類似の粒子が意図せずに付着することを除外しない。
【0059】
タルクは、好ましくは8~10、より好ましくは8.5~9.8、さらにより好ましくは9.0~9.7のpHを有し、pHはEN ISO 787-9:1995に従って測定される。EN ISO 787-9:1995では、分析される固体の分散を向上させるために、エタノールまたは他の有機溶媒を加えるオプションについても言及されていることに留意すべきである。本発明に応じて、EN ISO 787-9:1995に従いpHを測定するために、蒸留水のみを使用することが好ましい。
【0060】
成分B)における酸化鉄(II)および/または酸化鉄(III)の含有量は、好ましくは0.2重量%~2.5重量%、より好ましくは0.3重量%~2.3重量%、最も好ましくは0.3重量%~2.0重量%である。この含有量は、好ましくは、蛍光X線または原子吸光分析法によって測定する。タルク中の酸化鉄の含有量は、ポリカーボネートの分解の程度に影響を与えることが見出された。本発明に従って特定された酸化鉄の含有量の範囲内で、ポリカーボネートの分解の低減に関して特に良好な結果が得られる。
【0061】
同様に好ましくは、成分B)における酸化アルミニウムの含有量は、0.01重量%~0.5重量%、より好ましくは0.05重量%~0.48重量%、最も好ましくは0.15重量%~0.45重量%である。
【0062】
成分B)のメジアン粒径D50は、好ましくは0.01~9.5μm、より好ましくは0.25~8.00μm、さらに好ましくは0.5~6.00μm、最も好ましくは0.6μmから3.0μm以下であり、ここで、粒径D50は、沈降分析によって測定される。メジアンD50は、平均粒径(粒子の50%が当該値よりも小さい)を意味すると当業者に理解されている。好ましくは、粒径D50は、ISO 13317-3:2001に従って測定される。
【0063】
成分B)のBET表面積は、好ましくは7.5~20.0m2/g、より好ましくは9.0~15.0m2/g、最も好ましくは9.5~14.0m2/gである。ガス吸着を用いたBrunauer、EmmettおよびTellerに従う表面積の測定は、それ自体当業者に知られている。BET表面積は、ISO 4652:2012に従って測定することが好ましい。この好ましいBET表面積は、より好ましくは、タルクの上記メジアン粒径D50に関連している。
【0064】
タルクの含有量は、より好ましくは96重量%以上、より好ましくは97重量%以上、最も好ましくは98重量%以上である。
【0065】
タルクの1050℃での強熱減量は、同様に好ましくは5.0重量%~7.0重量%、より好ましくは5.2~6.5重量%、最も好ましくは5.3~6.2重量%である。強熱減量は、DIN 51081:2002によって測定することが好ましい。
【0066】
成分B)のタルクまたはタルク混合物は、好ましくは圧縮形態である。
【0067】
成分C
成分Cは、PMMIコポリマーである。これらは、部分的にイミド化されたメタクリルポリマーである熱可塑性物質である。PMMIコポリマーは、特に、反応器における分散液中または溶融液中でのPMMAとメチルアミンとの反応によって得られる。適切なプロセスは、例えば、独国特許第1,077,872A1号に記載されている。ここでは、ポリマー鎖に沿ってイミド構造が生成し、反応の程度に応じて、無水メタクリル酸と遊離のメタクリル酸官能基とが形成される。コポリマー中のイミド官能基の割合は、その耐熱変形性を決定する。変換の程度は、制御可能である。
【0068】
PMMIコポリマーは、メタクリレート単位(MMA、4a)、メチルメタクリルイミド単位(MMI、6)、メチルメタクリル酸単位(MMS、4b)、およびメチルメタクリル酸無水物単位(MMAH、5)を有する。PMMIコポリマーの総重量に対して、PMMIコポリマーの好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%が、MMA、MMI、MMSおよびMMAH単位である。より好ましくは、PMMIコポリマーは、これらの単位のみからなる。
【0069】
【化6】
MMA:4a(R=R’=CH3)、MMS:4b(R=CH3、R’=H)、MMAH:5(R=CH3)、MMI:6(R=R’=CH3)。
【0070】
PMMIコポリマー中の単位およびその割合は、R’シグナルの明瞭な化学シフトに基づいて、定量的1H NMR分光法によって特に特定できる。酸および無水物モノマー単位のシグナルの帰属は、明確に可能であるわけではないため、これらの単位をまとめて検討することが望ましい。
【0071】
PMMIコポリマーのMMI含有量は、PMMIコポリマーの総重量に対して、好ましくは少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%、より好ましくは35重量%~96重量%、特に好ましくは36重量%~95重量%である。
【0072】
コポリマーのMMA含有量は、PMMIコポリマーの総重量に対して、好ましくは3重量%~65重量%、好ましくは4重量%~60重量%、特に好ましくは4.0重量%~55重量%である。
【0073】
MMSとMMAHとの合計割合は、PMMIコポリマーの総重量に対して、好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは12重量%以下、より好ましくは0.5重量%~12重量%である。
【0074】
DIN 53240-1:2013-06に従って測定されるPMMIコポリマーの酸価は、好ましくは15~50mgKOH/g、より好ましくは20~45mgKOH/g、さらにより好ましくは22~42mgKOH/gである。
【0075】
とりわけ非常に好ましいPMMIコポリマーは、いずれの場合もPMMIコポリマーの総重量に対して、1H NMR分光法によって特定された、36.8重量%のMMI含有量、51.7重量%のMMA含有量および11.5重量%のMMS+MMAH含有量を有し、DIN 53240-1:2013-06に従って測定された22.5mgKOH/gの酸価を有する。
【0076】
あるいは、とりわけ非常に好ましいPMMIコポリマーは、いずれの場合もPMMIコポリマーの総重量に対して、1H NMR分光法によって特定された、83.1重量%のMMI含有量、13.6重量%のMMA含有量および3.3重量%のMMS+MMAH含有量を有し、DIN 53240-1:2013-06に従って測定された22.5mgKOH/gの酸価を有する。
【0077】
同様に代替として、とりわけ非常に好ましいPMMIコポリマーは、いずれの場合もPMMIコポリマーの総重量に対して、1H NMR分光法によって特定された、94.8重量%のMMI含有量、4.6重量%のMMA含有量および0.6重量%のMMS+MMAH含有量を有し、DIN 53240-1:2013-06に従って測定された41.5mgKOH/gの酸価を有する。
【0078】
適切なPMMIは、例えば、「PLEXIMID(登録商標)」ブランドでEvonik Industries AGから入手可能である。
【0079】
タルク含有ポリカーボネート組成物において、PMMIコポリマーのための添加量は、いずれの場合もポリカーボネート組成物の総重量に対して、好ましくは少なくとも1.5重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、さらにより好ましくは少なくとも3重量%、特に好ましくは4重量%であり、非常に特に好ましくは6重量%以下である。
【0080】
PMMIコポリマーのガラス転移温度は、好ましくは130~170℃である。したがって、PMMIコポリマーは、ポリカーボネートにとって通常の処理条件下(高い熱安定性のポリカーボネートコポリマーにとって通常のものを含めて)で安定である。
【0081】
成分D
本発明の組成物は、本文脈において集合的に「成分D」と呼ばれる1つ以上の更なる添加剤を含有してもよい。
【0082】
添加剤は、本発明の組成物中に必要に応じて存在し(0重量%)、20重量%以下、より好ましくは10.0重量%以下、さらにより好ましくは0.10重量%~8.0重量%の範囲、特に好ましくは0.2重量%~3.0重量%の範囲であり、これらの重量百分率は、組成物の総重量に基づく。
【0083】
ポリカーボネートの場合に通常添加されるこれらの添加剤は、例えば、欧州特許出願公開第0839623A1号、国際公開第96/15102A2号、欧州特許出願公開第0500496A1号、または「Plastics Additives Handbook」、Hans Zweifel、第5版、2000、Hanser、Verlag、Munichに記載されている。適切な添加剤は、特に難燃剤、タレ防止剤、衝撃改質剤、成分B以外の充填剤、帯電防止剤、顔料およびカーボンブラック等の有機および無機着色剤、潤滑剤および/または離型剤、熱安定剤、ブレンドパートナー(例えばABS、ポリエステル(例えばPETおよび/またはPBT)またはSAN)、相溶化剤、UV吸収剤および/またはIR吸収剤である。
【0084】
好ましい離型剤は、脂肪族長鎖カルボン酸と一価または多価の脂肪族および/または芳香族ヒドロキシル化合物とのエステルである。ペンタエリスリトールテトラステアレート、グリセロールモノステアレート、ステアリルステアレートおよびプロパンジオールジステアレート、またはこれらの混合物が特に好ましい。
【0085】
好ましいUV安定剤は、400nm未満に最小透過率を、400nm超に最大透過率を有する。本発明の組成物での使用に特に適した紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノンおよび/またはアリール化シアノアクリレートである。
【0086】
特に適切な紫外線吸収剤は、2-(3’,5’-ビス(1,1-ジメチルベンジル)-2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)234、チバスペシャルティケミカルズ、Basle)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-(tert-オクチル)フェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)329、チバスペシャルティケミカルズ、Basle)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-(2-ブチル)-5’-(tert-ブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)350、チバスペシャルティケミカルズ、Basle)、ビス(3-(2H-ベンゾトリアゾリル)-2-ヒドロキシ-5-tert-オクチル)メタン(Tinuvin(登録商標)360、チバスペシャルティケミカルズ、Basle)等のヒドロキシベンゾトリアゾール、(2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール(Tinuvin(登録商標)1577、チバスペシャルティケミカルズ、Basle)、ならびにベンゾフェノン 2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(Chimassorb(登録商標)22、チバスペシャルティケミカルズ、Basle)および2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(Chimassorb(登録商標)81、チバ、Basle)、2-シアノ-3,3-ジフェニル-2-プロペン酸2-エチルヘキシルエステル、2,2-ビス[[(2-シアノ-1-オキソ-3,3-ジフェニル-2-プロペニル)オキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルエステル(9CI)(Uvinul(登録商標)3030、BASF AG ルートヴィヒスハーフェン)、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-エチルヘキシル)オキシ]フェニル-4,6-ジ(4-フェニル)フェニル-1,3,5-トリアジン(CGX UVA 006、チバスペシャルティケミカルズ、Basle)またはテトラエチル2,2’-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロネート(Hostavin(登録商標)B-Cap、クラリアント AG)である。
【0087】
特に好ましい特定のUV安定剤は、例えば、Tinuvin(登録商標)360、Tinuvin(登録商標)350、Tinuvin(登録商標)329、Hostavin(登録商標)B-CAPであり、より好ましくはTIN 329およびHostavin(登録商標)B-Capである。これらの紫外線吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0088】
UV吸収剤が存在する場合、組成物は、組成物全体に対して、好ましくは0ppm~6000ppm、より好ましくは500ppm~5000ppm、さらにより好ましくは1000ppm~2000ppmの量の紫外線吸収剤を含む。
【0089】
適切なIR吸収剤は、例えば、欧州特許出願公開第1559743A1号、欧州特許出願公開第1865027A1号、独国特許出願公開第10022037A1号、独国特許出願公開第10006208A1号、および伊国特許出願第RM2010A000225号、第RM2010A000227号および第RM2010A000228号に開示されている。引用した文献で言及されているIR吸収剤のうち、ホウ化物およびタングステン酸塩に基づくもの(特にタングステン酸セシウムまたは亜鉛ドープされたタングステン酸セシウム)、またITOおよびATO系吸収剤、ならびにこれらの組合せが好ましい。
【0090】
適切な着色剤は、顔料、すなわち有機および無機顔料、カーボンブラックおよび/または染料であり得る。本発明の文脈における着色剤または顔料は、カドミウムレッドもしくはカドミウムイエロー等の硫黄含有顔料、プルシアンブルー等の鉄シアン化物系顔料、二酸化チタン、酸化亜鉛、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化クロム、チタンイエロー、亜鉛/鉄系ブラウン、チタン/コバルト系グリーン、コバルトブルー、銅/クロム系ブラックおよび銅/鉄系ブラック等の酸化物顔料、またはクロムイエロー等のクロム系顔料、銅フタロシアニンブルーもしくは銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン由来染料、アゾ系(例えばニッケルアゾイエロー)、硫黄インジゴ染料、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン由来、ジオキサジン系、イソインドリノン系およびキノフタロン由来の誘導体、アントラキノン系複素環系等の縮合多環式染料および顔料である。
【0091】
市販製品の具体例は、例えば、MACROLEX(登録商標)Blue RR、MACROLEX(登録商標)Violet 3R、MACROLEX(登録商標)Violet B(Lanxess AG、ドイツ)、Sumiplast(登録商標)Violet RR、Sumiplast(登録商標)Violet B、Sumiplast(登録商標)Blue OR(住友化学株式会社)、Diaresin(登録商標)Violet D、Diaresin(登録商標)Blue G、Diaresin(登録商標)Blue N(三菱化学株式会社)、Heliogen(登録商標)BlueまたはHeliogen(登録商標)Green(BASF AG、ドイツ)である。これらの中でも、シアニン誘導体、キノリン誘導体、アントラキノン誘導体、フタロシアニン誘導体が好ましい。
【0092】
成分B)以外の充填剤も、それらがその性質および量によって本発明の特性のレベルを損わないのであれば、同様に添加することができる。この目的のために原則として有用な材料としては、微粉砕された、全ての有機および無機材料が挙げられる。これらは、例えば、粒子状、フレーク状、または繊維状の特徴を有し得る。これらとしては、例えば、チョーク、石英粉末、二酸化チタン、ケイ酸塩/アルミノケイ酸塩(例えばウォラストナイト)、雲母/粘土層状鉱物、モンモリロナイト(特にイオン交換により修飾された有機親和性形態)、カオリン、ゼオライト、バーミキュライトが挙げられ、酸化アルミニウム、シリカ、ガラス繊維、炭素繊維、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムも挙げられる。異なる無機材料の混合物を使用することも可能である。有用な無機充填剤としては、組成物全体の合計に対して通常は0重量%~2.5重量%の量での二酸化チタン、または硫酸バリウムが特に挙げられる。
【0093】
加えて、その性質およびその量によって本発明の特性のレベルを損わない更なる構成成分を添加することが可能である。
【0094】
本発明による好ましい組成物は、
A)少なくとも60重量%の芳香族ポリカーボネートと、
B)5重量%~35重量%のタルクと、
C)0.1重量%~8重量%のPMMIコポリマーと、
D)必要に応じて更なる添加剤と
を含む。
【0095】
本発明によるさらに好ましい組成物は、
A)少なくとも68重量%の芳香族ポリカーボネートと、
B)10重量%~30重量%のタルクと、
C)0.2重量%~6重量%のPMMIコポリマーと、
D)必要に応じて更なる添加剤と
を含む。
【0096】
本発明によるさらにより好ましい組成物は、
A)少なくとも68重量%の芳香族ポリカーボネートと、
B)10重量%~30重量%のタルクと、
C)0.2重量%~6重量%のPMMIコポリマーと、
D)必要に応じて、難燃剤、タレ防止剤、衝撃改質剤、成分B以外の充填剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、カーボンブラック、潤滑剤および/または離型剤、熱安定剤、相溶化剤、UV吸収剤および/またはIR吸収剤からなる群から選択される1つ以上の更なる添加剤と
のみからなる。
【0097】
本発明による非常に特に好ましい組成物は、
A)少なくとも68重量%の芳香族ポリカーボネートと、
B)15重量%~25重量%のタルクと、
C)1.5重量%~6重量%、特に4重量%~6重量%のPMMIコポリマーと、
D)必要に応じて、難燃剤、タレ防止剤、衝撃改質剤、成分B以外の充填剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、カーボンブラック、潤滑剤および/または離型剤、熱安定剤、相溶化剤、UV吸収剤および/またはIR吸収剤からなる群から選択される1つ以上の更なる添加剤10.0重量%以下と
のみからなる。
【0098】
特に、いずれの場合も、組成物中に存在するPMMIコポリマーの総重量に対して、メチルメタクリルイミド単位の割合は少なくとも30重量%、メチルメタクリレート単位の割合は3重量%~65重量%、およびメチルメタクリル酸単位とメチルメタクリル酸無水物単位との割合は合計で15重量%以下であり、DIN 53240-1:2013-06に従って測定される酸価は、15~50mgKOH/g、最も好ましくは20~45mgKOH/gである。
【0099】
混合成分A)、B)、C)および必要に応じてD)、ならびに必要に応じて更なる構成成分を含有する本発明のポリマー組成物は、粉末プレミックスを使用して製造することができる。本発明による添加剤と、ペレットまたはペレットおよび粉末とのプレミックスを使用することも可能である。適切な溶媒中の混合成分の溶液から製造されたプレミックスを使用することも可能であり、その場合、必要に応じて溶液中で均質化を行い、次いで溶媒を除去する。より具体的には、成分Dと呼んでいる添加剤および本発明の組成物の更なる構成成分は、既知の方法によって、またはマスターバッチの形態で導入することができる。マスターバッチは、添加剤および更なる構成成分を導入するために使用することが特に好ましく、その場合、特にそれぞれのポリマーマトリックスに基づくマスターバッチを使用する。
【0100】
本発明の組成物は、例えば、押出成形することができる。押出成形後、押出物を冷却して粉砕することができる。溶融物におけるプレミックスの組合せおよび混合は、射出成形機の可塑化ユニットでも行うことができる。この場合、溶融物は、後続の工程で成形品に直接変形させる。
【0101】
本発明の組成物は、押出物の製造、好ましくはプロファイルおよびシートの押出成形に特に適していることが特に見出された。
【0102】
タルク入りポリカーボネート組成物は、熱伝導率が高いため、例えば、ランプホルダーにおける、または他の電子部品用の放熱器(ヒートシンク)として使用することが好ましい。
【0103】
さらに、組成物は、例えば、電気メーター、モバイル電子機器(携帯電話、ラップトップ、タブレット等)のための、また同様にTVハウジングのための電気/電子分野におけるハウジング材料として使用することも可能であり、また家電製品(掃除機、エアコン、シェーバー等)のための材料、特にハウジング材料として使用することも可能である。
【0104】
本発明の組成物はまた、例えば光学用途において、例えば反射体のために、高い表面品質を必要とする用途にも適している。
【0105】
特定の難燃特性を有する必要があるポリカーボネート組成物では、燃焼特性を向上させるためにタルクが添加剤として使用されることがある。ここでも、適切なタルク安定剤を使用する必要がある。
【0106】
本発明の組成物は、複合材製造のためのマトリックス材料としても適している。
【0107】
ポリカーボネート組成物のPMMIコポリマーによる安定化は、特に、滞留時間が長い場合(すなわち滞留時間が数分の場合)、すなわち例えば共混練機の場合、好ましい。
【実施例
【0108】
ポリマー:
PC:MVRが19cm3/10分(300℃/1.2kg、ISO 1133-1:2011)、軟化温度(VST/B 120;ISO 306:2013)が145℃の、ビスフェノールA系の市販のポリカーボネート(Covestro Deutschland AGのMakrolon(登録商標)2408)。下記のように測定されたMwは約23900g/mol。
【0109】
安定剤:
PMMI1:軟化温度(VST/B 50;ISO 306:2013)が130℃の、Evonik(Pleximid(登録商標)8803)のポリ(N-メチルメタクリルイミド)コポリマー。DIN 53240-1(2013年6月)に従って測定した酸価:22.5mgKOH/g。MMI(メチルメタクリルイミド)の割合:36.8重量%、MMA(メチルメタクリレート)の割合:51.7重量%、MMS(メチルメタクリル酸)+MMAH(メチルメタクリル酸無水物)の割合:11.5重量%;いずれの場合もPMMIの総重量に基づき、定量的1H NMR分光法によって特定した。
【0110】
PMMI2:軟化温度(VST/B 50;ISO 306:2013)が150℃の、Evonik(Pleximid(登録商標)TT50)のポリ(N-メチルメタクリルイミド)コポリマー。DIN 53240-1(2013年6月)に従って測定した酸価:22.5mgKOH/g。MMIの割合:83.1重量%、MMAの割合:13.6重量%、MMS(メチルメタクリル酸)+MMAHの割合:3.3重量%;いずれの場合もPMMIの総重量に基づき、定量的1H NMR分光法によって特定した。
【0111】
PMMI3:軟化温度(VST/B 50;ISO 306:2013)が170℃の、Evonik(Pleximid(登録商標)TT70)のポリ(N-メチルメタクリルイミド)コポリマー。DIN 53240-1(2013年6月)に従って測定した酸価:41.5mgKOH/g。MMIの割合:94.8重量%、MMAの割合:4.6重量%、MMS+MMAHの割合:0.6重量%;いずれの場合もPMMIの総重量に基づき、定量的1H NMR分光法によって特定した。
【0112】
Stab1:平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィー、オルトジクロロベンゼン中、150℃、ポリスチレン較正)Mw=6301g/mol、Mn=1159g/mol、および酸価52.6mgKOH/g(試験方法JIS K0070)の、Mitsui Chemical America,Inc.の酸変性エチレンワックス(HiwaxTM1105A)。無水マレイン酸含有量:ターポリマーの総重量に対して4.4重量%。
【0113】
Stab2:平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィー、オルトジクロロベンゼン中、150℃、ポリスチレン較正)Mw=20700g/mol、Mn=1460g/mol、および酸価78mgKOH/g(ASTM D-1386)の、Honeywellの無水マレイン酸変性ポリプロピレンコポリマー(AC907P)。
【0114】
充填剤:
タルク:タルク含有量が99重量%、酸化鉄含有量が0.4重量%、酸化アルミニウム含有量が0.4重量%、強熱減量が6.0重量%、D50(沈降分析、Sedigraph5120)が0.65μm;BET表面積が13.5m2/g、密度(DIN 53193に従って測定)が2.8g/cm3の、IMI Fabiの圧縮タルク(HTPultra5C)。
【0115】
製造パラメータ:
使用した押出機は、容量15cm3のDSM Micro-Extruder MIDI 2000であった。押出機内の溶融温度は290℃、速さは150rpm、滞留時間(DT)は5分または10分であった。射出成形にはDSM射出成形機を使用した。射出成形における溶融温度は300℃、金型温度は80℃であった。
【0116】
測定方法:
w:ビスフェノールAポリカーボネート標準に対して較正され、溶離液としてジクロロメタンを使用したゲル浸透クロマトグラフィー。PSS Polymer Standards Service GmbH(ドイツ)からの既知のモル質量分布を有する線状ポリカーボネート(ビスフェノールAとホスゲンとから形成)による較正、Currenta GmbH & Co.OHG、Leverkusenからの2301-0257502-09D法(2009年からドイツ語)による較正。溶離液はジクロロメタンである。架橋スチレン-ジビニルベンゼン樹脂のカラムの組合せ。分析カラムの直径:7.5mm;長さ:300mm。カラム材料の粒子サイズ:3μm~20μm。溶液の濃度:0.2重量%。流速:1.0ml/分、溶液の温度:30℃。注入量;100μl。UV検出器による検出。
【0117】
黄色度指数(Y.I.)は、ASTM E313-10に従って測定した。透過率(Ty)は、ASTM-E-308に従って測定した。Y.I.およびTyの両方は、D65、10°として評価した(光源:D65/オブザーバー:10°)。分析したサンプルの形状は、6.0mm×3.5mm×1.5mmであった。
【0118】
ポリマー溶融物の粘度は、溶融温度300℃でISO 11443:2005に従って測定した。
【0119】
組成物のビカット軟化温度(VST/B/50)は、ISO 306:2013に従った試験片について測定した。
【0120】
組成物の引張係数および引張強度は、ISO 527-1:2012に従った試験片について測定した。
【0121】
組成物の貫通力および貫通変形は、ISO 6603-2:2000に従った試験片について測定した。
【0122】
結果:
例:
【0123】
【表1】
【0124】
未充填のポリカーボネートでは、ポリマー鎖の分解は本質的にない。したがって、安定剤は必要ない。表1から明らかなように、充填剤を含まないポリカーボネートにPMMIを添加しても、モル質量に悪影響はない。平均モル質量は、測定精度の範囲内で一定レベルである。表1からわかるように、光学特性(Y.I.)および色の安定性(ΔY.I.(5分/10分))は、PMMIコポリマーの含有量の増加に伴い低下する。しかしながら、これらの値を、Stab1およびStab2を含む表4の組成物(例20Cおよび21C)と比較すると、PMMIによる黄変はほとんど目立たない。さらに、Stab1とStab2との両方により、未充填のポリカーボネートの透過率が大幅に低下する。
【0125】
【表2】
【0126】
タルク含有ポリカーボネート組成物を検討すると、タルクを含まないポリカーボネート組成物と比較して明確な違いが明らかである。タルクを添加すると、滞留時間5分の後でも、ポリマーの分子量(Mw)が約23900g/molから約15000g/molに大幅に低下する。しかしながら、PMMIの含有量を増やすと、ポリマーの分解を明確に低減することができる。添加されるPMMIが(組成物全体に対して)2重量%で、効果はすでに魅力的である。添加されるPMMIが約4~6重量%で、最適となる(表5の実施例30~33も参照)。分子量の低下は、経済的に魅力的な量のPMMIの添加では完全に回避することはできないが、無視できるほどの分子量の小さな低下を意味するレベルにすることはできる。さらに、高温での5分という滞留時間は、実際の処理条件下での極端な例の多くを構成することを考慮に入れる必要がある。これは、これらの今回の結果が、滞留時間が長い押出機(例えば共混練機)でも特に、良好な安定化が達成可能であることを示すこともできることを意味する。第一に、タルク入りポリカーボネートにPMMIを添加すると、常にY.I.値が増加し、光学特性が低下する。しかしながら、非充填系とは異なり、Y.I.値の大幅な減少が、約3重量%から、好ましくは約4重量%から始まるプラトー領域で観察できる(表2の例13および14を参照)ことは驚くべきことであり、これにより、5分というより短い滞留時間で、未充填のポリカーボネートの値に匹敵する許容可能なY.I.値となる。
【0127】
【表3】
【0128】
使用されるPMMI種では、MMI、MMA、酸および無水物の含有量が異なる。
【0129】
驚くべきことに、タルク入りポリカーボネートで発見されたものは、MMIの含有量が最も低いPMMI(PMMI1)が最高の親和性(最小のモル質量の低下と最小の黄変)を予想どおりにもたらすのではなく、むしろMMI含有量が最も高く、同時に酸含有量が最も低いPMMI(PMMI3)がそうであったことである。滞留時間5分の後のY.I.値の測定から、MMI含有量の増加に伴い(PMMI1<PMMI2<PMMI3)、黄変も減少することがわかる。しかしながら、滞留時間5分および10分のΔY.I.値を比較すると、短い/長い滞留時間の対比において、MMI含有量の増加に伴い、黄変の程度がより大幅に増加することがわかる。PMMIを含まないタルク入りポリカーボネートの当初のY.I.レベルが最小であっても、滞留時間5分および10分におけるその差は最大である(ΔY.I.=16)。このことから、PMMIコポリマー+タルク+PC系の色の安定性は、MMIの含有量と材料への熱応力の持続時間とに依存すると結論付けることができる。
【0130】
【表4】
【0131】
タルクと各例での添加剤1重量%との組合せにおいて、Stab2は、特に滞留時間が長い場合に最高の安定性を示すが、光学特性への悪影響が現れる。Stab1およびStab2が添加された組成物は、はるかに強く黄変(より大きいΔY.I.)する傾向がある。ポリオレフィンコポリマーを含有する組成物では、未充填PC中に1重量%であっても、透過率も明確に低下し、これは着色性に悪影響を与える。
【0132】
【表5-1】
【0133】
【表5-2】
【0134】
充填剤含有量10重量%または20重量%において、PMMI1による安定化効果は、PMMIコポリマー含有量の増加とともに向上する。これは、20重量%で顕著である。しかしながら、タルク30重量%において、3重量%~7.5重量%の範囲において試験されたPMMIコポリマーによる安定化は、PMMIコポリマーの含有量に関係なく、常に良好なレベルに留まるようである。したがって、本発明に従う条件は、タルクの割合が15重量%~25重量%であり、タルクに対するPMMIコポリマーの比率が0.1~0.6、特に0.2~0.5である場合が特に好ましい。
【0135】
【表6-1】
【0136】
【表6-2】
【0137】
[1]組成物は、Berstorffの2軸押出機(ZE 25 AX 40D-UTX、速さ100rpm、処理量10kg/h、溶融温度300℃)で製造した。タルクは、サイド押出機(処理ユニットの長さの約半分)を用いて添加した。[2]溶融粘度は、ISO 11443:2005に従って、300℃、せん断速度1000s-1で測定した。[3]押出機中のポリカーボネート-タルク混合物の滞留時間は約25秒であった(サイド押出機によるタルクの添加から測定)。
【0138】
材料の引張係数は、PMMI1含有量の増加に伴い向上する。同様に、引張強度、したがって充填剤およびポリマーマトリックス間の相互作用が向上する。同様に、PMMI1含有量の増加に伴い、ビカット軟化温度を用いて評価される耐熱変形性を向上させることも可能である。これは、第一に、充填剤のより効率的な安定化によるもの、したがってポリマーマトリックスの分解が低減されることによるものである。第二に、組成物の粘度は、粘度がより高い添加剤自体の結果として増加する。比較すると、Stab1含有量の増加に伴い、引張係数および引張強度の両方が低下する。2重量%を超えると、特に配合物の機械的特性において、ポリオレフィンコポリマーの可塑化効果が現れる。これは、ワックス含有量(Stab1)の増加に伴う粘度の低下にも示される。ワックス含有量の増加は、射出成形における剥離の増加(例43~45)によって明らかになるが、これは、PMMI1を使用した場合(例38~42)にはそれほど顕著ではない。表6に示すように、PMMIの添加による安定化の傾向は、標準的な押出機でも把握できる。滞留時間が約25秒と大幅に短いため、絶対値は前回の一連の試験の測定結果を上回っている。ここでも、1重量%を超えるPMMI1が最適である。
【0139】
貫通試験の結果を比較すると、最終組成物に対して2重量%~6重量%のPMMI1で、エネルギー入力および最大変形に関して最適となっている。引張係数とビカット温度とが高く、分子量の低下が小さく、混合物は表面での剥離なく均質である。
【0140】
表5および表6の結果を比較すると、20重量%のタルクを用いたポリカーボネートは、5~8重量%のPMMI1を添加すると、充分に安定化される(分子量で測定)。その上、この範囲内で、材料の耐熱変形性が著しく向上し、機械的特性が向上している。