(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】酸性自己安定化ジョイントを有する抗体薬物複合体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20230210BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230210BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230210BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2020550685
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(86)【国際出願番号】 CN2018091621
(87)【国際公開番号】W WO2018233571
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】201710462790.9
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522263714
【氏名又は名称】バイリ-バイオ(チェンドゥ)ファーマスーティカル シーオー.,エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】朱義
(72)【発明者】
【氏名】王一茜
(72)【発明者】
【氏名】李傑
(72)【発明者】
【氏名】卓識
(72)【発明者】
【氏名】万維李
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516035(JP,A)
【文献】特表2017-512752(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147031(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 39/00-39/44
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
(式中、丸は、足場を示し、
C
1
-
3
の炭化水素基又はフェニレン基であり、
Lは、抗体
又は抗体断片
を含み、
Mは、スクシンイミド基、又は加水分解して開環したスクシンイミド基を含み、
Acは、前記抗体薬物複合体を安定させる酸性ユニットを含み、少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つの酸性基からなる断片又は複数のアミノ酸からなるオリゴペプチド基を含み、Acは、アミノ基を介して丸に結合され、
Dは、薬物ユニットを含み、
Aは、リンカーを含み、
mは1-20から選ばれる整数であり、nは1又は2である。)
【請求項2】
前記抗体は、細胞表面受容体及び腫瘍関連抗原に対する抗体である、請求項1に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
Acを構成する酸性ユニットは、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基又はスルホン酸基からなる群より選択される、請求項1に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記Acは、アミノ酸基又は酸性オリゴペプチド基を含む、請求項1に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
前記オリゴペプチド基は、2-5個の天然アミノ酸ユニット、2-5個の非天然アミノ酸ユニット、又は2-5個の天然アミノ酸ユニットと非天然アミノ酸ユニットを含む、請求項4に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記薬物ユニットDは、細胞毒性薬、自己免疫疾患の治療薬、又は抗炎症薬を含む、請求項1に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記薬物ユニットDは、メイタンシン
薬物、アウリスタチン
薬物、ベンゾジピロール
薬物、ピロロベンゾジアゼピン
薬物、アマニタトキシン、カンプトテシン
及び/又はこれらの薬学的に許容される
塩からなる群より選択される、請求項
6に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
前記足場は、C
1-3アルキレン基を含む、請求項
1に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
前記Acは、(D/L)グリシン、(D/L)アラニン、(D/L)ロイシン、(D/L)イソロイシン、(D/L)バリン、(D/L)フェニルアラニン、(D/L)プロリン、(D/L)トリプトファン、(D/L)セリン、(D/L)チロシン、(D/L)システイン、(D/L)メチオニン、(D/L)アスパラギン、(D/L)グルタミン、(D/L)トレオニン、(D/L)アスパラギン酸、(D/L)グルタミン酸、又は以下の構造式で表される化合物からなる群より選択される、請求項1に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【化3】
(式中、波線は、足場までの結合部位を示し、Rは、アミノ基とリン酸基との間の任意の構造を示す。)
【請求項10】
下式で表される構造を有するジョイント-薬物結合体。
【化4】
(式中、Acは、少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つの酸性基からなる断片、又は複数のアミノ酸ユニットからなるオリゴペプチドを含み、Acは、アミノ基を介してヒドロカルビル基に結合され、
Dは薬物ユニットを含み、
Aはリンカーを含み、
qは
0-2の整数であり、nは1又は2である。)
【請求項11】
請求項1に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩の使用方法であって、
請求項1に記載の抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩を組み込むことによりがん、免疫疾患、炎症を治療するための薬物を製造することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体薬物複合体を用いて腫瘍又は他の疾患を治療することに関し、特に特殊な親水性酸性安定化ジョイントを用いて抗体薬物複合体を製造し、血漿中の薬物の安定性を向上させ、薬物代謝動態(PK)を顕著に改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
抗体薬物複合体(ADC)は、新しい標的薬として、一般的には抗体又は抗体リガンド、低分子医薬品、及び抗体と薬物とを結合するリンカー(linker)の3つの部分からなる。抗体薬物複合体は、抗原に対する抗体の特異的識別により薬物分子を標的細胞の近傍まで輸送し、薬物分子を放出することにより治療の目的を達成する。2011年8月に、米国食品医薬品局(FDA)は、シアトルジーンコーポレーションによって開発された、ホジキンリンパ腫及び再発性変性大細胞リンパ腫(ALCL)の治療のための新しいADC薬であるAdecteisTMの販売を承認した。臨床応用により、この薬物の安全性と有効性が証明されている。
【0003】
抗体薬物複合体において、薬物分子と抗体を効率的に結合するために、現在臨床試験中の複合体は、通常リンカーをリガンド表面のリジン残基又は抗体ヒンジ領域のシステイン残基(鎖間ジスルフィド結合部分を還元して得られるもの)に結合する。しかし、抗体表面に大量のリジン残基(80個超え)が存在すること及び結合の非選択性により、結合の数とサイトの不確実をもたらし、抗体薬物複合体の不均一性を引き起こす。チオール基による結合により製品品質の均一性が低いとの問題を有効に回避することができる。マレイミドは、ジョイントとして抗体のチオール基と温和な条件下で迅速かつ高選択的にマイケル付加反応を起こしてチオエーテル生成物を形成する。
【0004】
【0005】
しかし、より多くの研究により、スクシンイミドとチオール基との付加反応は可逆的プロセス(逆マイケル付加)であることが示されており、付加生成物が血漿に入った後、血漿中に遊離チオール基を含むタンパク質が大量存在するため、付加生成物がアルブミンのチオール基と交換反応を起こし、薬物分子が脱落することがはっきりと観察された。脱落した薬物分子は、有毒な副作用を引き起こすとともに、抗体薬物複合体の薬効を低下させる(Shen et al.「Conjugation site modulate the vivo stability and therapeutic activity of antibody-drug conjugates」 Nature Biotech(2012)30:184-189;Baldwin&Kiick,Bioconj.Chem 2011,22,1946-1953;Alley et al.Bioconjugate Chem.2008,19,759-765)。
【0006】
多くの文献には、血漿中の抗体薬物複合体の安定性の向上、及びチオール基の逆マイケル付加作用の低下について検討されている。マレイミドとチオール基により形成される環状チオエーテル付加生成物が水含有環境において加水分解してチオエーテル開環生成物を形成できることが報告されている。環状チオエーテル付加生成物と異なり、チオエーテル開環生成物は血漿中で安定し、他のチオール基と交換しなくなる。そこで、抗体薬物複合体が生体内に入る前に全て開環構造に変換できれば、チオール基置換の発生を効果的に回避することができる。
【0007】
【0008】
付加開環反応の速度は、反応条件のPH、温度及び構造自体の様々な要因に影響される。PHと温度に対する抗体の感度により、ジョイント構造を最適化することでそれを抗体が耐えられるPH、温度下で迅速に開環させることが好ましい。国際出願WO2016025752にはスクシンイミド環外に強電子吸引基を導入する方法が開示されている。この方法は、電子吸引効果によりチオエーテル付加生成物とアルブミンの置換を弱くするが、電子吸引基の存在のため、スクシンイミドと薬物との結合体は全体として自然条件下で保存されにくく、強電子吸引基を有するスクシンイミドは加水分解して開環しやすいので、さらにチオール基と付加することができなくなる。
【0009】
【0010】
米国Seattle Genetics社の特許出願US20130309256には、スクシンイミドの近傍に塩基性基及び1つの電子吸引基を導入し、塩基性基の促進により付加生成物がアルブミンの置換率を効果的に低下でき、血漿中の安定性が顕著に向上するジョイントが開示されている。知られているように、人体の血漿のPHは弱塩基性であり、塩基性基の導入によりスクシンイミドの開環を促進できるが、分子親水性の改善には不利である。これは、Seattle Geneticsの国際出願WO2015057699によって実証されている。この発明者は、分子に塩基性基を有する安定化ジョイントを導入したところ、比較的高い薬物担持量の場合、疎水性の原因で、抗体薬物複合体分子全体はマウス体内で依然として快速に分解されることを発見した(国際出願WO2015057699の第225頁を参照)。この問題を改善するために、この発明者は、分子の側鎖に複雑なポリエチレングリコール構造を導入して分子の集まりを改善した(国際出願WO2015057699を参照)。
【0011】
アルブミン置換を低下させ、血漿安定性を向上させる以外、抗体薬物複合体の設計のために重量な要素は、各標的化剤が送達可能な薬物の量(即ち、各標的化剤(例えば、抗体)に結合する細胞毒性薬の数。薬物担持量(drug load)と呼ばれる)である。比較的高い薬物担持量の薬効は、比較的低い薬物担持量の薬効よりも高いとの仮説が提案されている(例えば、8-単位担持量は、4-単位担持量に対して生体内及び生体外においてより良好な薬効を有するはずである)。その理論的根拠は、薬物担持量が比較的高い複合体は、標的細胞により多くの薬物(細胞毒性薬)を送達できることである。生体外実験結果も比較的高い薬物担持量を有する複合体が生体外で細胞系に対してより高い活性を有することを証明した。しかし、その後のいくつかの研究により、この仮説は、動物体内モデルでは実証できなかったことが示されている。また、あるアウリスタチン薬物の4単位及び8単位薬物担持量を有する複合体は、マウスモデルにおいて予想外に類似する活性を有し、8単位薬物担持がより高い薬効有することが観察されなかった(Hamblett et al.,Clinical Cancer Res.10:7063-70(2004)を参照)。Hamblettらは上記実験現象の原因を述べ、より高い担持量を有するADCが動物モデルにおいてより速く循環システムからクリアされることをさらに発表した。これは、比較的高い担持量を有する複合体のPKが比較的低い担持量を有する複合体のPKよりも不安定であることを示している。また、比較的高い担持量を有する複合体は、マウスにおいてMTDが比較的低いため、治療指数が比較的狭い。一方、モノクローナル抗体におけるエンジニアリングされた部位での薬物担持量が2であるADCは、4-単位担持量のADCと同等又はよりよいPK性質及び治療指数を有することが報告されている(Junutula et al.,Clinical Cancer Res.16:4769(2010)を参照)。
【0012】
理論的には、薬物担持量を向上させることで単一抗体が標的細胞内に運搬できる薬物数を増加できるが、薬物の疎水性のため、薬物の数が増加すると、ADC薬物の疎水性が高くなり、その結果、ADC薬物が体内で集まり、治療指数が低くなる。比較的高い担持量を有するADCのPK低下傾向を克服するための代替的な方法は、ADC構造に可溶化基を導入することを含む。例えば、リンカー(例えば、薬物と抗体の結合部位の間)にポリエチレングリコールポリマー又は他の水溶性ポリマーを増加して集まり傾向を克服してみた。例えば、Seattle Genetics社は、塩基性基を導入してジョイントを安定化する技術を開発した後においても、ジョイント-薬物複合体に側鎖PEGを導入する等の方法により高薬物担持量での薬物分子のPKを改善する必要がある。しかし、可溶化基の導入により、このような複合体の調製はより複雑になる恐れがある。
【0013】
そのため、高薬物担持量(DAR)による悪影響を改善する新しいADC分野において、スクシンイミドのチオール基の置換を克服して血漿安定性を向上させるとともに、高DARの抗体薬物複合体の薬物動態学的性質を改善できる新しい方法が必要である。本発明の酸性安定化ジョイントは、これらの需要を驚くほど満たしている。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、特殊な親水性酸性安定化ジョイント-薬物複合体を提供することを目的とする。発明者は、実験により、US20130309256に記載の塩基性基の導入と異なり、酸性のアミノ酸又はオリゴペプチドユニットの導入によりスクシンイミドと抗体複合体のチオール基との交換を減少でき、血漿において高安定性を保持できることを発見した。また、実験により、アミノ酸の導入により、設計された複合体は未結合標的化試薬と類似した親水性を有するため、体内における未結合標的化試薬と類似した薬物動態(PK)学的性質が保留されることを証明した。従って、酸性安定化ジョイントが存在する場合、上記2つの経路により血漿中の薬物の安定性を同時に向上させ、薬物代謝動態(PK)を改善することにより、薬効が向上する。
【0015】
酸性安定化ジョイントの導入により、薬物担持量が比較的低い複合体に比べ、本発明の複合体は比較的高い薬物担持量(即ち、各標的化試薬におけるより多い親水性薬物ジョイント)を有するとともに、所望のPK性質を保留し、体内で同等又はそれ以上の活性を有する。(例えば、4-単位担持量又は8-単位担持量の複合体は、それぞれその2又は4単位担持量の対応物と同等又はそれ以上のPK性質を有することができる。このような4-単位担持量又は8-単位担持量複合体は、それぞれその2又は4単位担持量の対応物と同等又はそれ以上のPK性質を有することができる)。
【0016】
具体的には、本発明は、式Iで表される抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化4】
式中、Lは、抗体、抗体断片又はタンパク質であり、
Mは、スクシンイミド又は加水分解スクシンイミドであり、
Acは、アミノ基と酸性基からなる断片、又は複数のアミノ酸からなるオリゴペプチドであり、アミノ基を介して丸に結合され、
Dは、薬物ユニットであり、
Aは、リンカーであり、
丸は、足場を示し、置換若しくは非置換のC
1-8アルキレン基、C
1-8ヘテロアルキレン基、C
6-10アリーレン基又はC
4-10ヘテロアリーレン基であり、
mは、1-20の整数であり、nは1又は2である。
【0017】
このましくは、前記抗体は、細胞表面受容体及び腫瘍関連抗原に対する抗体である。
【0018】
このましくは、Acは、全体的に酸性を呈するアミノ酸ユニット又は酸性オリゴペプチドである。
【0019】
より好ましくは、Acは、等電点7.0以下の天然アミノ酸若しくは非天然アミノ酸、又はこれらのアミノ酸からなるオリゴペプチドである。
【0020】
好ましい実施例において、前記オリゴペプチドユニットは2-5個のアミノ酸から構成される。
【0021】
好ましい実施例において、前記Aは、切断可能なリンカー又は切断不可能なリンカーである。
【0022】
好ましい実施例において、前記薬物は、細胞毒性薬、自己免疫疾患の治療薬、又は抗炎症薬である。
【0023】
より好ましくは、薬物Dは、メイタンシン系薬物、アウリスタチン系薬物、ベンゾジピロール系薬物、ピロロベンゾジアゼピン系薬物、アマニタトキシン又はその誘導体、カンプトテシン系化合物からなる群より選択される。
【0024】
好ましい実施例において、Aは下式で表される構造を有する。
【化5】
式中、Cは、末端の拡張可能なユニットであり、Eは、切断可能なユニットであり、Fは、スペーサーユニットを示し、下付き文字e、fは0又は1である。波線は、酸性自己安定化ジョイント及び薬物ユニットまでの結合部位を示す。
【0025】
好ましい実施例において、丸は、C1-8アルキレン基又はC1-8ヘテロアルキレン基を示す。
【0026】
より好ましくは、丸は、C
1-3アルキレン基を示す。
好ましい実施例において、前記Acは、(D/L)グリシン、(D/L)アラニン、(D/L)ロイシン、(D/L)イソロイシン、(D/L)バリン、(D/L)フェニルアラニン、(D/L)プロリン、(D/L)トリプトファン、(D/L)セリン、(D/L)チロシン、(D/L)システイン、(D/L)メチオニン、(D/L)アスパラギン、(D/L)グルタミン、(D/L)トレオニン、(D/L)アスパラギン酸、(D/L)グルタミン酸又は以下の構造式で表される化合物からなる群より選択される。
【化6】
式中、波線は、足場までの結合部位を示し、Rは、アミノ基とリン酸基との間の任意の連結断片を示す。
【0027】
本発明の別の態様において、下式で表される構造を有するジョイント-薬物結合体が提供される。
【化7】
Acは、等電点が7未満なアミノ酸ユニットであり、
Dは、薬物ユニットであり、
Aは、リンカーであり、
qは、1-8の整数であり、nは1又は2である。
【0028】
本発明によれば、抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される希釈剤、担体又は賦形剤の薬物組成物が提供される。
【0029】
がん、免疫疾患、炎症を治療するための薬物の製造における抗体薬物複合体又はその薬学的に許容される塩の使用。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2A】H-11のSEC-HPLC検出結果である。
【
図2B】H-20のSEC-HPLC検出結果である。
【
図2C】H-29のSEC-HPLC検出結果である。
【
図2D】H-39のSEC-HPLC検出結果である。
【
図2E】H-41のSEC-HPLC検出結果である。
【
図2F】H-43のSEC-HPLC検出結果である。
【
図2G】MC-VC-PAB-MMAEのSEC-HPLC検出結果である。
【
図2H】DPR-VC-PAB-MMAEのSEC-HPLC検出結果である。
【
図3】未結合抗体、酸性安定化ジョイントを有するADC、及び対照ADCのマウス体内安定性の研究結果である。
【
図4】酸性安定化ジョイントを有するADC及び1種類の対照ADCのHICクロマトグラフィー結果である。
【
図5】酸性安定化ジョイントを有するADC及び1種類の対照ADCの体内薬効結果である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明者は、鋭意な研究を行ったところ、酸性安定化ジョイントを有する抗体薬物複合体が血漿においてより優れた安定性を有し、従来の抗体薬物複合体に比べ、より良好な親水性を有し、結合した構造がより高い薬物担持量を有しながら、低担持量である場合の構造の薬物動態学を保持できることを発見した。また、より高い薬物担持量は、より高い活性及び治療効果をもたらす。
【0032】
具体的には、本発明に係る酸性安定化ジョイントを有する抗体薬物複合体は、マレイミドユニットを有し、抗体のチオール基と結合した後、安定化酸性基の存在下で、マレイミドが加水分解して開環し、形成された構造は血漿における他のチオール基含有高分子と置換しないので、薬物分子の脱落が回避される。
【0033】
【化8】
また、親水性酸性基の存在により、形成された開環構造の抗体薬物複合体の親水性はより良好で、薬物担持量の増加による活性の低下等の問題を回避できる。
【0034】
生成した抗体薬物複合体は、標的薬を標的細胞、例えば、腫瘍細胞に送達することに適用できる。抗体薬物複合体は、細胞表面タンパク質に特異的に結合することができ、生成した結合体は、細胞にランダムに取り込まれる。細胞内において、薬物は、活性薬物として放出されて作用する。抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体;抗原に結合可能な抗体断片、抗体Fc融合タンパク質、又はタンパク質を含む。薬物は、高活性の薬物であり、メイタンシン類(Maytansinoids)、アウリスタチン系薬物(Auristatins)、カリケアミシン類(Calicheamicins)、ドキソルビシン類(doxorubicins)、ベンゾジピロール系抗生物質(Duocarmycins及びCC-1065)、ピロロベンゾジアゼピン二量体類(PBDS)、アマニタトキシン類、カンプトテシン及びその誘導体、例えば、SN38、イリノテカン、エキサテカン等を含むが、これらに限定されない。
【0035】
発明の詳細な説明
略語と定義
特に明記しない限り、本明細書で使用される以下の用語および語句は、以下の意味を有するものとする。本明細書でブランド名が使用されている場合、特に明記しない限り、ブランド名にはこのブランド名の製品処方、一般薬、有効成分が含まれる。
【0036】
用語「アルキレン基」とは、炭素数1-20の二価直鎖飽和ヒドロカルビル基であり、炭素数1-10の基を含む。アルキレン基の例には、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-CH2-CH2-)、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基及びn-ヘキシル基等が含まれるが、これらに限定されない。特に明記しない限り、用語「アリール基」とは、多価不飽和基、一般的には、芳香族基であり、単環、縮合環又は共有結合した多環式基(最大三環式基)であってもよい。用語「ヘテロアリール基」とは、N、O又はSから選択されるヘテロ原子を1-5個含むアリール基(又は環)であり、前記N及びS原子は必要に応じて酸化されてもよく、前記N原子は必要に応じて四級化されてもよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子により分子の他の部分に結合してもよい。アリール基の例には、フェニル基、ナフチル基、及びジフェニル基が含まれるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基の例には、ピリジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基(pyrimindinyl)、トリアジニル基、キノリニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シノリニル基、フタラジニル基(phthalaziniyl)、ベンゾトリアジニル基、プリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾイソアゾール基、イソベンゾフラニル基、イソインドリル基、インダジニル基、ベンゾトリアジニル基、チエノピリジル基、チエノピリミジニル基、ピリドピリミジニル基、イミダゾピリジン基、ベンゾチアゾリル基(benzothiaxolyl)、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、プテリジニル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピロリル基、チアゾリル基、フラニル基、及びチエニル基等が含まれるが、これらに限定されない。「置換されている」と記載されている場合、上記の芳香環およびヘテロ芳香環系の置換基は、以下の許容される置換基から選択される。
【0037】
本明細書では、アリーレン基とは、上記のアリール構造において、プロ位、メタ位またはパラ位に2つの共有結合構造が存在することをいう。
【0038】
特に明記しない限り、ヒドロカルビル基(通常、アルキレン基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基と呼ばれるものを含む)の置換基は、-ハロゲン、-OR'、-NR'R''、-SR'、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NR'S(O)2R''、-CN及び-NO2からなる群より選択される。置換基の数は0から(2m'+1)であり、m'はこの基中の炭素の相数である。R'、R''及びR'''は、それぞれ独立して水素、非置換のC1-8アルキル基、非置換の芳基、1-3個のハロゲンで置換されているアリール基、非置換のC1-8アルキル基、C1-8アルコキシ基若しくはC1-8チオアルコキシ基、又は非置換のアリール-C1-4アルキル基である。R'とR''が同一の窒素原子に結合される場合、それらはこの窒素原子と一緒になって3、4、5、6又は7員環を形成してもよい。例えば、-NR'R''は、1-ピロリジニル基及び4-モルホリニル基を含む。
【0039】
本明細書で用いる化合物の「誘導体」とは、化学構造が化合物と類似するが、少なくとも1つの化合物に存在しない化学基を含む、及び/又は少なくとも1つの化合物に存在する化学基が欠如した物質をいう。誘導体に対応する化合物は、「母体」化合物と呼ばれる。通常、「誘導体」は、1つ又は複数の化学反応工程において母体化合物から生成することができる。
【0040】
抗体、抗体断片及びタンパク質
本発明の実施例における抗体、抗体断片及びタンパク質ユニットは、標的部分に特異的に結合する標的化剤である。本発明に記載の抗体は、細胞成分又は他の目的の標的分子に特異的に結合することができる。抗体ユニットの作用は、薬物ユニットをリガンドユニットと作用する特定の標的細胞群に送達することである。リガンドは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及び非タンパク質(例えば、糖)を含むが、これらに限定されない。適切なリガンドユニットは、抗体、例えば、全長(完全)抗体及びその抗原結合断片を含む。リガンドユニットが非抗体標的化試薬である実施形態において、リガンドユニットは、ペプチド若しくはポリペプチド、又は非タンパク質分子であってもよい。このような標的化試薬の例には、インターフェロン、リンホカイン、ホルモン、成長因子、コロニー刺激因子、ビタミン、栄養トランスポーター、又は他の細胞結合分子若しくは物質が含まれる。いくつかの実施形態において、リンカーは、リガンドの硫黄原子に共有結合する。いくつかの実施形態において、硫黄原子は、システイン残基の硫黄原子であり、抗体の鎖間ジスルフィド結合を形成する。他の実施形態において、硫黄原子は、既にリガンドユニットに導入されたシステイン残基の硫黄原子であり、抗体の鎖間ジスルフィド結合を形成する。別の実施形態において、硫黄原子は、既にリガンドユニットに(例えば、部位特異的変異誘発又は化学反応により)導入されたシステイン残基の硫黄原子である。別の実施形態において、リンカーに結合した硫黄原子は、抗体を形成する鎖間ジスルフィド結合のシステイン残基又は既にリガンドユニットに(例えば、部位特異的変異誘発又は化学反応により)導入されたシステイン残基から選択される。いくつかの実施形態において、Kabat (Kabat E.A.,et al.,(1991) Sequences of proteins of Immunological Interest, Fifth Edition,NIH Publication 91-3242)に記載のEUインデックス番号付けシステムが使用される。
【0041】
本明細書において、「抗体」又は「抗体ユニット」は抗体結合の任意部分を含む。このユニットは、受容体、抗原、又は標的細胞群体に含まれる他の受容体ユニットに結合、反応的に関連、又は複合することができる。抗体は、任意のタンパク質又はタンパク質類分子であってもよく、治療又は生物学的改造される細胞群体の一部に結合、複合又は反応することができる。
【0042】
本発明に用いる抗体は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む。ポリクローナル抗体である場合、免疫動物の血清の抗体分子異種群体に由来する。モノクローナル抗体は、マウス、ヒトのモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体又はキメラモノクローナル抗体、及び他の物種に由来の抗体を含むが、これらに限定されない。当該技術分野で知られている技術によりヒトモノクローナル抗体を製造することができる(Teng et al.,1983,proc.Nat1.Acad.Sci.USA.80:7308-7312.Olsson et al.,1982,MEthan,Enzymol 92:3-16)。
【0043】
本発明の抗体薬物複合体を構成する抗体は、野生状態での元の抗原結合能力を維持することが好ましい。したがって、本発明の抗体は、抗原に特異的に結合できるものであることが好ましい。抗原は、例えば、腫瘍関連抗原(TAA)、細胞表面受容体タンパク質及び他の細胞表面分子、細胞生存レギュレーター、細胞増殖レギュレーター、組織の成長と分化に関連する分子(例えば、機能性を有することが知られているか又は予測されるもの)、リンホカイン、サイトカイン、細胞周期調節に関与する分子、血管新生に関与する分子、及び血管新生関連分子(例えば、機能性を有することが知られているか又は予測されるもの)を含む。腫瘍関連因子は、クラスター分化因子(例えば、CDタンパク質)であってもよい。
【0044】
本発明において、抗体薬物複合体に用いる抗体は、細胞表面受容体及び腫瘍関連抗原に対する抗体を含むが、これらに限定されない。このような腫瘍関連抗原は、当該技術分野で知られているものであり、既知の抗体製造方法及び情報に従って製造することができる。がん診断及び治療に適用できる有効な細胞標的を開発するために、研究者は膜貫通ポリペプチド又は他の腫瘍関連ポリペプチドを探している。これらの標的は、1種又は複数種のがん細胞表面で特異的に発現することができ、1種又は複数種の非がん細胞表面でほとんど又は完全に発現しない。通常、非がん細胞表面に対して、このような腫瘍関連ポリペプチドは、がん細胞表面でより過度に発現する。このような腫瘍関連因子は、抗体によるがん治療の特異的標的化特性を大幅に向上できることが確認された。
【0045】
本発明において、抗体薬物複合体の製造に用いるペプチド又はタンパク質は、エピトープ又は対応する受容体に対して親和力を有する任意のペプチド又はタンパク質であってよく、必ず免疫グロブリンファミリーに属するわけではない。これらのペプチドは、ファージディスプレイ抗体に使用される技術によって単離することができる(Szardenings,J Recept Signal Transduct Res.2003:23(4):307-49)。このようなランダムペプチドライブラリーからのペプチドの使用は、抗体及び抗体断片の使用と同様であり得る。ペプチド又はタンパク質の結合分子は、高分子又は材料(例えば、アルブミン、ポリマー、リポソーム、ナノ粒子、デンドリマーが挙げられるが、これらに限定されない)に結合又は接続することができる。前記結合により、ペプチド又はタンパク質がその抗原結合特異性を保持できればよい。
【0046】
腫瘍関連抗原は、当該技術分野で知られている抗原を含む。腫瘍関連抗原に対応する核酸及びタンパク質配列は、公に利用可能なデータベース、例えば、Genbankに開示されている。抗体標的化に対応する腫瘍関連抗原は、全てのアミノ酸配列の変異体及びホモログを含み、参考文献に確認された配列と少なくとも70%、80%、85%、90%若しくは95%の同一性を有し、又は参考文献の腫瘍関連抗原の配列と完全に一致する生物学的特性と特徴を有する。
【0047】
用語「抑制」又は「の抑制」とは、検出可能な量が減少されること、又は完全に阻害されることを指す。
【0048】
用語「がん」とは、無秩序な細胞増殖を特徴とする生理学的病状又は疾患を指す。「腫瘍」は、がん細胞を含む。
【0049】
用語「自己免疫疾患」とは、個体自身の組織又はタンパク質に起因する疾患又は障害を指す。
【0050】
本明細書では、用語「薬学的に許容される塩」とは、化合物(例えば、薬物、薬物-ジョイント又はリガンド-ジョイント-薬物複合体)の薬学的に許容される有機塩又は無機塩を指す。この化合物は、少なくとも1つのアミノ基又はカルボキシル基を含んでもよく、対応する酸又は塩基と付加塩を形成することができる。例示的な例には、硫酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が含まれるが、これらに限定されない。また、薬学的に許容される塩は、その構造に複数の荷電原子を有する。複数の荷電原子は、薬学的に許容される塩の一部の例であり、複数の対イオンを有することができる。例えば、薬学的に許容される塩は、1つ若しくは複数の荷電原子及び/又は1つ若しくは複数の対原子を有する。
【0051】
好ましい薬物は、がんの治療に適用する細胞毒性薬であり、メイタンシン又はメイタンシノイド、ドラスタチン10(Dolastatin10)の類似体、カリケアミシン類薬物、ドキソルビシン類ベンゾジピロール系抗生物質(duocarmycins,CC-1065等)、ピロロベンゾジアゼピン系(pyrrolo[2,1-c][1,4]benzodi-azepines,PBDs)又はPBD二量体類(PBD dimmers)及び誘導体、アマニタトキシン又はその誘導体を含むが、これらに限定されない。カンプトテシン系化合物は、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、SN-38、エキサテカン、イリノテカン等を含む。
【0052】
一方、薬物は、上述した種類に限定されず、抗体薬物複合体に適用できる薬物の全て含む。
【0053】
いくつかの実施例において、本発明は、酸性自己安定化ジョイントにより結合する薬物は、以下の放射性同位元素をさらに含む。3H,11C,18F,32P,35S,64Cu,68Ga,86Y,99Tc,111In,123I,125I,131I,133Xe,177Lu,211At及び213Biを含むが、これらに限定されない。
【0054】
細胞内での薬物放出のメカニズムによって、本明細書でいう「リンカー」又は「抗体薬物複合体のリンカー」は、切断不可能なリンカーと切断可能なリンカーの2種類に分けられる。
【0055】
切断不可能なリンカーを含む抗体薬物複合体では、その薬物放出メカニズムは、複合体が抗原に結合して細胞に取り込まれた後、抗体がリソソーム中で酵素加水分解され、低分子医薬品、リンカー及び抗体アミノ酸残基からなる活性分子が放出されることである。これによる薬物分子構造の変化は、その細胞毒性を低下させないが、活性分子は荷電(アミノ酸残基)であるため、隣接する細胞に入ることができない。そのため、このような活性薬物は、標的抗原(抗原陰性細胞)を発現しない隣接する腫瘍細胞を殺すことができない(傍観者効果、bystander effect)(Ducry et al.,2010,Bioconjugate Chem.21:5-13)。
【0056】
切断可能なリンカーは、標的細胞内で切断されて活性薬物(低分子医薬品それ自体)を放出することができる。切断可能なリンカーは、主に化学的不安定リンカーと酵素不安定リンカーの2種類に分けられる。
【0057】
化学的不安定リンカーは、血漿及び細胞性質によって選択的に切断され得る。このような特性は、pH値、グルタチオン濃度等を含む。
【0058】
いくつかの実施例において、リンカーは、pH値に敏感なリンカーであり、通常酸切断リンカーとも呼ばれる。このようなリンカーは、血液の中性環境(pH7.3-7.5)下で相対的に安定するが、弱酸性のエンドソーム(pH5.0-6.5)及びリソソーム(pH4.5-5.0)内では加水分解される。第一世代の抗体薬物複合体は、ほとんどこのようなリンカー(例えば、ヒドラゾン、カーボネート、アセタール、ケタール類)を使用する。酸切断リンカーの限られた血漿安定性のため、このようなリンカーを用いた抗体薬物複合体は、通常、半減期が比較的短い(2-3日)。このような短い半減期のため、ある程度にpH敏感リンカーの次世代抗体薬物複合体における応用が制限される。
【0059】
グルタチオンに敏感なリンカーは、ジスルフィド結合リンカーとも呼ばれる。薬物放出は、細胞内のグルタチオンの高濃度(ミリモル範囲)と血液中の比較的低いグルタチオン濃度(マイクロモル範囲)の差に引き起こされる。特に腫瘍細胞では、その低酸素含有量によりレダクターゼ活性が増強するため、グルタチオン濃度がより高くなる。ジスルフィド結合は、熱力学的安定性を有するため、血漿中で良好な安定性を有する。
【0060】
酵素不安定リンカー、例えば、ペプチドリンカーは、薬物放出をより良好に制御することができる。ペプチドリンカーは、リソソーム内のプロテアーゼ、例えば、カテプシン(Cathepsin B)又はプラスミン(いくつかの腫瘍組織においてこのような酵素の含有量が増加する)により効果的に切断され得る。このようなペプチドリンカーは、血漿循環において非常に安定すると考えられている。これは、細胞外の不適宜なpH値及び血清プロテアーゼ阻害剤によりプロテアーゼ通常活性を有しないためである。比較的高い血漿安定性及び良好な細胞内切断選択性と有効性により、酵素不安定リンカーは、抗体薬物複合体の切断可能なリンカーとして幅広く使用されている。典型的な酵素不安定リンカーはVal-Cit(vc)、Phe-Lys等を含む。
【0061】
スペーサーユニットは、一般的に切断可能なリンカーと活性薬物との間に嵌合され、又はそれ自体が切断可能なリンカーの一部である。スペーサーユニットの作用メカニズムとして、切断可能なリンカーが適宜な条件下で切断された後、スペーサーユニットは自発的に構造再構成し、それに結合された活性薬物を放出することができる。一般的なスペーサーユニットは、p-アミノベンジルアルコール類(PAB)及びβ-グルクロニド類(β-Glucuronide)、置換又は非置換のエチレンジアミン等を含む。
【0062】
略語と定義
Boc:tert-ブトキシカルボニル
DCC:シクロジヘキシルカルボジイミド
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:ジイソプロピルカルボジイミド
DMF:N、N-ジメチルホルムアミド
DMAP:4-(N、N-ジメチルアミノ)ピリジン
HATU:O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
PEG:ポリエチレングリコール
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
PBS:リン酸緩衝液(PH7.0-7.5)。
【0063】
薬学的に許容される賦形剤は、いかなる担体、希釈剤、アジュバント又は賦形剤、例えば、防腐剤及び酸化防止剤、フィラー、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、溶剤、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤、抗真菌剤、吸収遅延剤等を含む。これらの媒体及び薬剤の薬物活性物質における使用は、当該技術分野では知られているものである。従来の媒体又は試薬と有効成分との不適合性に加えて、治療用組成物におけるその使用も考慮に入れられてきた。治療的組み合わせの適切な形態として、補足的な有効成分もまた、前記組成物に組み込むことができる。
【0064】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
1、本発明の酸性安定化ジョイントを有する抗体薬物複合体は、複合体が体内でアルブミンチオール基と交換する可能性を大幅に減少させ、血漿安定性を顕著に向上させる。
【0065】
2、本発明の酸性安定化ジョイントは、酸性基の導入により、分子がより良好な水溶性を有し、抗体薬物複合体のPK性質を効果的に改善でき、より良好な体内薬効を有する。
【0066】
3、本発明の酸性安定化ジョイントを有する抗体薬物複合体は、血漿安定性を増強させるとともに、最終的な複合体のPK性質を改善することができる。これらの利点は、高薬物担持量の需要を満たすことができ、高薬物担持量下での抗体薬物複合体の集まりを減少させ、低薬物担持量より高い薬効を得ることができる。
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明し、これらの実施例は本発明を例示するためだけに使用され、本発明の範囲を限定することを意図しないことを理解されたい。以下の実施例で特定の条件が指定されていない試験方法は、通常、従来の条件下又は製造元が推奨する条件下で行われる。特に明記しない限り、すべての百分率、比例、比率、又は割合は質量で示される。別段の定義がない限り、以下の本文で使用される専門用語および科学用語はすべて、当業者に一般的に理解されている意味を持つことを意図している。さらに、記載されたものと同様または同等の任意の方法および材料は、本発明によって構成される方法に適用することができる。以下の好ましい実施例の方法及び材料は、例示的なものである。
【0068】
本発明の以下の実施例で用いる一般手順は以下の通りである。
一般手順A
予備精製されたモノマー比が95%超えの抗体分子を、限外濾過用遠沈管によりEDTAを含むリン酸緩衝液(濃度10mg/ml)に移す。抗体モル数の10倍のTCEPを加え、室温で8時間反応させる。抗体鎖間ジスルフィド結合を開き、Ellman方法により遊離チオール基の数を測定し、ジスルフィド結合が完全に開かれたか否かを確認する。そして、抗体モル数の10倍のpayloadを加え、室温で8時間反応させる。反応終了後、カットオフ分子量が30KDaの限外濾過用遠沈管によりPBSに移し、未結合のpayloadを除去する。
【0069】
一般手順B
薬物動態学の研究
血清中の抗体を検出するELISA方法
抗体2ug/mlでコーティングし、4℃で一晩静置し、PBSTでプレートを3回洗浄し、1%BSA+PBST 37℃で1時間ブロックする。血清サンプルをインキュベートし、PBSTでプレートを3回洗浄する。37℃で検出抗体(抗Fcのモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体(HRP標識))を1時間インキュベートし、PBSTでプレートを3回洗浄し、TMBで発色し、2M H2SO4で反応を停止させ、マイクロプレートリーダーで測定する。
【0070】
一般手順C
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)による測定
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によりADCを分析する。0-100%移動相B(MPB)により溶出する。移動相A(MPA)は、1.5M硫酸アンモニウム及び.025Mリン酸ナトリウムからなり、MPBは、0.025Mリン酸ナトリウム、25%イソプロパノールからなる。サンプルの注入量は約20μgであり、グラジエント溶出は15分間内で完成する。UV280nmで検出し、疎水性が強いほど、サンプルのピークが遅く出現する。
【0071】
一般手順D
血漿安定性の研究
所定量のADCサンプルを取り、ヒトIgGが除去されたヒト血漿に加え、各ADCについて3チューブずつ準備する。37℃の水浴でインキュベートする。それぞれ0時間、72時間後にADCサンプルを取り出し、各チューブにProteinA(MabSelect SuReTM LX Lot:#10221479 GE,PBSで洗浄済)100ulを加え、縦型混合器で2時間振盪しながら吸着させ、洗浄した後、インキュベートされたADCを得る。所定時間インキュベートされたADCサンプルをRP-HPLCにより検出し、サンプルの血漿安定性を判定する。
【0072】
一般手順E
部位特異的結合によるADCの調製
予備精製されたモノマー比が95%超えの抗体分子を、限外濾過用遠沈管によりEDTAを含むリン酸緩衝液(濃度10mg/ml)に移す。抗体モル数の10倍のTCEPを加え、室温で2時間反応させる。限外濾過用遠沈管によりpH6.5のリン酸緩衝液に移し、抗体モル数の10倍のDHAAを加え、室温で2時間反応させる。そして、抗体モル数の3倍のpayloadを加え、室温で4時間反応させる。反応終了後、カットオフ分子量が30KDaの限外濾過用遠沈管によりPBSに移し、未結合のpayloadを除去し、部位特異的結合ADC(DAR=2)を得る。
【0073】
実施例1
化合物1の調製
【化9】
化合物(S)-N-ベンジルオキシカルボニル-N'-tert-ブトキシカルボニル-2,3-ジアミノプロピオン酸50gを500mLジクロロメタンに溶解し、トリフルオロ酢酸50mLを加え、室温で一晩撹拌しながら反応させた。反応終了後、減圧下で濃縮して乾燥させ、酢酸エチルを加え、溶解し、さらにn-ヘキサンを加え、撹拌して固体を析出され、濾過し、乾燥させ、21gの固体を得た。LC-MS m/z(ES
+):239.1(M+H)
+
【0074】
実施例2
化合物2の調製
【化10】
200mLベンジルアルコールを反応フラスコに入れ、水浴下で塩化チオニル(6.69mL、92.4mmol)をゆっくりと滴下し、滴下終了後、1時間撹拌し、化合物1(20g、84mmol)をバッチで添加した後、室温で一晩撹拌した。反応終了後、オイルポンプによりベンジルアルコールを減圧留出し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン:メタノール=150:1)により分離し、製品22gを得た。LC-MS m/z(ES
+):329.1(M+H)
+
【0075】
実施例3
化合物3の調製
【化11】
化合物2(10g、30.4mmol)を150mLアセトニトリルに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA,4.72mL,36.58mmol)を加え、氷水浴下でtert-ブチルブロモアセテート(4.75g,24.4mmol)を滴下した後、30分間反応させた後、室温に移して反応させ、TLC(展開剤DCM:MeOH=10:1)によりモニタリングした。反応終了後、減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン:メタノール=100:1)により分離し、製品5.9gを得た。LC-MS m/z(ES
+):443.3(M+H)
+
【0076】
実施例4
化合物4の調製
【化12】
化合物3(5.9g,13.3mmol)、30mL1,4-ジオキサン、30mL水を反応フラスコに入れ、さらに、DIEA(3.3mL,20mmol)を入れ、室温下でBoc無水物(14.5g,66.7mmol)を滴下し、反応液は黄色になり、滴下終了後、室温で3-4時間反応させ、TLC(展開剤DCM:MeOH=30:1)によりモニタリングした。反応終了後、減圧濃縮によりジオキサンを除去し、DCMを加えて抽出し、減圧濃縮し、黄色油状物の粗製品を取得し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン:メタノール=300:1)により分離し、製品6.6gを得た。LC-MS m/z(ES
+):443.3(M+H)
+-Boc,543.2(M+H)
+
【0077】
実施例5
化合物5の調製
【化13】
6.6g化合物4を50mlメタノールに溶解し、1.32g5%Pd/Cを加え、水素ガスで2~3回置換し、室温で反応させ、TLC(展開剤DCM:MeOH=5:1)によりモニタリングした。反応終了後、濾過し、40℃で減圧濃縮し、得られた製品4.4gをそのまま次の反応に用いた。
【0078】
実施例6
化合物6の調製
【化14】
化合物5(4.4g,13.8mmol)を40mL氷酢酸に溶解し、無水マレイン酸(2.71g,27.6mmol)を加え、室温で撹拌しながら反応させた。TLC(DCM:MeOH=3:1)により反応をモニタリングした。完全に反応した後、減圧濃縮し、残留物を高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
【0079】
(カラム:YMC-C18,100mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速200mL/min,λ=215nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-10min 90%A,10-25min,90%A~45%A,25-55min,45%A~40%A
保持時間が43minの留分を収集し、凍結乾燥させ、白色固体1.51gを得た。LC-MS m/z(ES+):317.9(M+H)+-Boc,417.9(M+H)+
【0080】
実施例7
化合物7の調製
【化15】
化合物6(1.2g,2.88mmol)を25mL乾燥トルエン及び2.5mLDMA溶液に溶解し、トリエチルアミン(1.2mL,8.65mmol)(いくつかの乾燥した分子篩を加えてもよい)を加え、窒素で置換し、120℃まで昇温して反応させ、TLC(展開剤DCM:MeOH=3:1)により反応をモニタリングした。反応終了後、オイルポンプにより減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール:20/1-10/1)により分離し、製品700mgを得た。LC-MS m/z(ES
+):299.2(M+H)
+-Boc,399.3(M+H)
+
【0081】
実施例8
化合物8の調製
【化16】
700mg(1.7mmol)化合物7を3.5mLDMFに溶解し、531mg(2.11mmol)EEDQ、733mg(1.93mmol)Val-Cit-PABOHを加え、室温で反応させた。TLC(展開剤DCM:MeOH=5:1)によりモニタリングした。反応終了後、45℃でオイルポンプにより濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール:50/1-20/1)により分離し、520mg製品を得た。LC-MS m/z(ES
+):660.3(M+H)
+-Boc,760.4(M+H)
+
【0082】
実施例9
化合物9の調製
【化17】
520mg(0.685mmol)化合物8、1.04g(3.42mmol)NCPを順に反応フラスコに入れ、10mLDMFを加えて溶解し、さらに0.33mL(2.05mmol)DIEAを加え、室温で反応させた。TLC(展開剤DCM:MeOH=5:1)によりモニタリングした。反応終了後、45℃でオイルポンプにより濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール=30/1)により分離し、530mg製品を得た。LC-MS m/z(ES
+):825.3(M+H)
+-Boc,925.2(M+H)
+
【0083】
実施例10
化合物10の調製
【化18】
530mg(0.57mmol)化合物9、13.5mg(0.1mol)HOBTを5mLDMFに溶解し、0.17mL(1.04mmol)DIEAを加え、室温で1時間活性化させた後、373mg(0.52mmol)MMAEを加え、室温で一晩反応させた。HPLCによりモニタリングし、原料MMAEが完全に反応した後、高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
(カラム:YMC-C18,50mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速50mL/min,λ=205nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-10min,90%A,10-25min,90%A~45%A,25-55min,45%A~40%A
保持時間が34minの留分を収集し、凍結乾燥し、製品200mgを得た。LC-MS m/z(ES
+):1503.2(M+H)
+
【0084】
実施例11
化合物11の調製
【化19】
70mg化合物10を10mL乾燥ジクロロメタンに溶解し、4mLトリフルオロ酢酸を加え、室温で1時間反応させ、高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
(カラム:YMC-C18,30mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速25mL/min,λ=205nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-10min 95%A,10-30min 95%A~80%A,30-50min 80%A~50%A
保持時間が33minの留分を収集し、凍結乾燥させ、製品34mgを得た。LC-MS m/z(ES
+):1347.8(M+H)
+
【0085】
実施例12
化合物12の調製
【化20】
化合物L-グルタミン酸ジ-tert-ブチル(8g,,30.8mmol)を150mLアセトニトリルに溶解し、DIEA(6mL,37mmol)を加え、氷水浴下で2-ブロモ-N-ベンジルオキシカルボニル-L-アラニンベンジルエステル(10.2g,26.1mmol)を滴下し、滴下終了後、40min反応させた後、室温に移して反応させ、TLC(展開剤DCM:MeOH=10:1)によりモニタリングした。反応終了後、減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール=100/1)により分離し、製品8.1gを得た。LC-MS m/z(ES
+):571.2(M+H)
+
【0086】
実施例13
化合物13の調製
【化21】
8.1g(14.2mmol)化合物12、50mL1,4-ジオキサン、50mL水を反応フラスコに入れ、さらに3.5 mL(21.3mmol)DIEAを加え、室温下で14.5g(66.7mmol)Boc無水物を滴下し、反応液は黄色になり、滴下した後、室温で反応させ、TLC(展開剤DCM:MeOH=30:1)によりモニタリングした。反応終了後、減圧濃縮によりジオキサンを除去し、DCMを加えて抽出し、減圧濃縮し、黄色油状物の粗製品を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール=300/1)により分離し、製品8.55gを得た。LC-MS m/z(ES
+):471.1(M+H)
+-Boc,571.3(M+H)
+.
【0087】
実施例14
化合物14の調製
【化22】
8.5g化合物13を70mlメタノールに溶解し、1.7g 5%Pd/Cを加え、水素ガスで2~3回置換し、室温で反応させ、TLC(展開剤DCM:MeOH=5:1)によりモニタリングした。反応終了後、濾過し、40℃で減圧濃縮し、得られた製品5gをそのまま次の反応に用いた。
【0088】
実施例15
化合物15の調製
【化23】
5g(11.2mmol)化合物14を40mL氷酢酸に溶解し、2.19g(22.4mmol)無水マレイン酸を加え、室温で撹拌しながら反応させた。TLC(DCM:MeOH=3:1)により反応をモニタリングした。完全に反応した後、減圧濃縮し、残留物を高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
(カラム:YMC-C18,100mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速200mL/min,λ=215nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-10min 90%A,10-25min 90%A~45%A,25-55min 45%A~40%A
保持時間が48minの留分を収集し、凍結乾燥させ、製品2.3gを得た。LC-MS m/z(ES
+):445.2(M+H)
+-Boc,545.3(M+H)
+。
【0089】
実施例16
化合物16の調製
【化24】
2g(3.80mmol)化合物15を25mL乾燥トルエン及び2.5mLDMA溶液に溶解し、1.58mL(11.4mmol)トリエチルアミンを加え、窒素で置換し、120℃まで昇温して反応させ、TLC(展開剤DCM:MeOH=3:1)により反応をモニタリングした。反応終了後、オイルポンプにより減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール20/1~10/1)により分離し、製品1.19gを得た。LC-MS m/z(ES
+):427.1(M+H)
+-Boc,527.3(M+H)
+
【0090】
実施例17
化合物17の調製
【化25】
1.19g(1.7mmol)化合物16を3.5mLDMFに溶解し、531mg(2.11mmol)EEDQ、733mg(1.93mmol)Val-Cit-PABOHを加え、室温で反応させた。TLC(展開剤DCM:MeOH=5:1)によりモニタリングした。反応終了後、45℃でオイルポンプにより濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール50/1~25/1)により分離し、製品753mgを得た。LC-MS m/z(ES
+):788.5(M+H)
+-Boc,888.4(M+H)
+.
【0091】
実施例18
化合物18の調製
【化26】
753mg(0.849mmol)化合物17、1.28g(4.24mmol)NCPを順に反応フラスコに入れ、15mLDMFを加えて溶解し、さらに0.35mL(2.55mmol)DIEAを加え、室温で反応させた。TLC(展開剤DCM:MeOH=5:1)によりモニタリングした。反応終了後、45℃でオイルポンプにより濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール=25/1)により分離し、製品762mgを得た。LC-MS m/z(ES
+):1053.6(M+H)
+
【0092】
実施例19
化合物19の調製
【化27】
762mg(0.71mmol)化合物18、13.5mg(0.1mol)HOBTを8mLDMFに溶解し、0.23mL(1.42mmol)DIEAを加え、室温で1時間活性化させた後、463mg(0.645mmol)MMAEを加え、室温で一晩反応させた。HPLCによりモニタリングし、原料MMAEが完全に反応した後、高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
【0093】
(カラム:YMC-C18,100mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速200mL/min,λ=215nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-10min 90%A,10-25min 90%A~45%A,25-55min 45%A~40%A
保持時間が30minの留分を収集し、凍結乾燥させ、製品300mgを得た。LC-MS m/z(ES+):1631.6(M+H)+
【0094】
実施例20
化合物20の調製
【化28】
100mg化合物19を10mL乾燥ジクロロメタンに溶解し、4mLトリフルオロ酢酸を加え、室温で2時間反応させ、高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
【0095】
(カラム:YMC-C18,30mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速25mL/min,λ=215nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-10min 95%A,10-25min 95%A~80%A,25-55min 80%A~55%A
保持時間が30minの留分を収集し、凍結乾燥させ、製品45mgを得た。LC-MS m/z(ES+):1419.1(M+H)+
【0096】
実施例21-29
化合物21-29の合成
【化29】
【0097】
実施例21
化合物21の調製
【化30】
化合物3-ニトロ-4アミノ安息香酸15gを100mlメタノールに溶解し、3g 5%Pd/Cを加え、常圧で5時間水素化し、濾過し、濾過ケーキをメタノールで2回洗浄し、高真空、室温で濃縮して乾燥させ、精製せずにそのまま次の反応に用いた。
【0098】
実施例22
化合物22の調製
【化31】
化合物3,4-ジアミノ安息香酸(10g,65.7mmol)を100mLDMFに溶解し、炭酸カリウム粉末(13.6g,98.55mol)及びヨウ化カリウム(2.2g,1.31mmol)を加え、窒素ガスの保護下でtert-ブチルブロモアセテート(12.8g,65.7mol)を加え、滴下終了後、室温で反応させた。TLC(展開剤DCM:MeOH=10:1)によりモニタリングした。反応終了後、水、酢酸エチルを加えて抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール=150/1~100/1)により精製し、分離し、製品を得た3.46g。LC-MS m/z(ES
+):267.4(M+H)
+;HNMR:7.51-7.53,dd,1H;7.44-7.45,d,1H;6.66-6.69,d,1H;4.69,s,2H;1.49,s,9H.
【0099】
実施例23
化合物23の調製
【化32】
3g(11.2mmol)化合物22、15mL氷酢酸、無水マレイン酸(0.55g,5.6mmol)、水を反応フラスコに加え、室温で反応させ、HPLCによりモニタリングした。反応終了後、減圧濃縮により氷酢酸を除去し、高速液体クロマトグラフィー(カラム:YMC-C18,100mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速200mL/min,λ=214nmで検出)により分取精製した。
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-5min 80%A,5-35min 80%A~65%A,35-45min 65%A~60%A
保持時間が37min-42minの留分を収集し、凍結乾燥させ、製品2gを得た。LC-MS m/z(ES
+):365.4(M+H)
+,309.3(M+H)
+-tBu。HNMR:10.48,s,1H;7.41-7.44,dd,1H;7.35-7.36,d,1H;6.92,s,2H;6.70-6.72,d,1H;4.68,s,2H;1.42,s,9H.
【0100】
実施例24
化合物24の調製
【化33】
化合物23(2g,5.49mmol)を30mlTHFに溶解し、Boc無水物(1.44g,6.59mmol),DMAP(1.32g,10.9mmol)及びDIEA(1.8mL,10.98mmol)を加え、室温で反応させた。TLC(展開剤DCM:MeOH=10:1)によりモニタリングした。反応終了後,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール=100/1~20/1)により分離し、製品2.2gを得た。LC-MS m/z(ES
+):365.4(M+H)
+-Boc。HNMR:10.50,s,1H;7.46-7.48,dd,1H;7.41-7.42,d,1H;6.95,s,2H;6.73-6.75,d,1H;4.69,s,2H;1.48,s,9H;1.40,s,9H.
【0101】
実施例25
化合物25の調製
【化34】
2g(4.31mmol)化合物24を15mLトルエン及び2mLDMAに溶解し、(1.2mL,8.62mmol)トリエチルアミンを加え、120℃で反応させた。TLC(DCM:MeOH=10:1)により反応をモニタリングした。完全に反応した後、減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール=100/1~50/1)により精製し、分離し、製品1.63gを得た。LC-MS m/z(ES
+):347.4(M+H)
+-Boc。HNMR:7.50-7.51,dd,1H;7.43-7.44,d,1H;6.97,s,2H;6.75-6.77d,1H;4.67,s,2H;1.48,s,9H;1.40,s,9H.
【0102】
実施例26
化合物26の調製
【化35】
1.6g(3.58mmol)化合物25を10mLDMFに溶解し、1.77g(7.17mmol)EEDQ、2.98g(7.89mmol)Val-Cit-PABOHを加え、室温で反応させた。TLC(展開剤DCM:MeOH=10:1)によりモニタリングした。反応終了後、45℃でオイルポンプにより濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール=100/1~25/1)により分離し、製品2.1gを得た。LC-MS m/z(ES
+):709.8(M+H)
+-Boc,809.7(M+H)
+.
【0103】
実施例27
化合物27の調製
【化36】
2g(2.47mmol)化合物26、3.71g(12.3mmol)NCPを順に反応フラスコに入れ、20mLDMFを加えて溶解し、さらに1.2mL(7.41mmol)DIEAを加え、室温で反応させた。TLC(展開剤DCM:MeOH=15:1)によりモニタリングした。反応終了後、45℃でオイルポンプにより濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール=100/1)により分離し、製品2.1gを得た。LC-MS m/z(ES
+):973.3(M+H)
+
【0104】
実施例28
化合物28の調製
【化37】
1g(1mmol)化合物27、13.5mg(0.1mol)HOBTを8mLDMFに溶解し、0.33mL(2mmol)DIEAを加え、室温で1時間活性化させた後、646mg(0.9mmol)MMAEを加え、室温で一晩反応させた。HPLCによりモニタリングし、原料MMAEが完全に反応した後、高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
(カラム:YMC-C18,100mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速200mL/min,λ=214nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-10min 90%A,10-25min 90%A~45%A,25-55min 45%A~40%A
保持時間が30minの留分を収集し、凍結乾燥させ、製品560mgを得た。LC-MS m/z(ES
+):1551.7(M+H)
+
【0105】
実施例29
化合物29の調製
【化38】
100mg化合物28を10mL乾燥ジクロロメタンに溶解し、4mLトリフルオロ酢酸を加え、室温で2時間反応させ、高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
(カラム:YMC-C18,30mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速25mL/min,λ=214nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-10min 95%A,10-25min 95%A~80%A,25-55min 80%A~55%A
保持時間が30minの留分を収集し、凍結乾燥させ、製品45mgを得た。LC-MS m/z(ES
+):1395.7(M+H)
+
【0106】
実施例30-39
化合物30-39合成
【化39】
【0107】
実施例30
化合物30の調製
【化40】
500mlの丸底フラスコにおいて、炭酸カリウム(24.7g,179.24mmol)を220ml純水に溶解し、さらに(S)-3-アミノ-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸(16g,67.16mmol)を加え、大部分が溶解するまで撹拌した後、2-ブロモエチル-リン酸ジエチル(10.98g,44.81mmol)を加え、その後、80℃のオイルバスに入れ、6時間撹拌しながら反応させた。反応液を高速液体クロマトグラフィーにより分取精製した。
(カラム:YMC-C18,100mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速200mL/min,λ=214nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-10min 5%B~15%B,10-15min 15%B,15-25min 15%B~20%B,25-50min 20%B~30%B,50-55min 30%B~50%B,55-65min 50%B~90%B
保持時間が42~49minの留分を収集し、凍結乾燥させ、無色油状物の製品8.38gを得た。収率は46.5%であった。
1H NMR data(CDCl
3,400 MHz):7.39-7.28(m,5H),6.54-6.41(m,1H),5.12-5.01(m,2H),4.63-4.53(m,1H),4.16-4.03(m,4H),3.48-3.36(m,2H),3.35-3.25(m,2H),2.35-2.23(m,2H),1.29(t,J=6.8 Hz,6H);LCMS[M+H]
+ m/z 403.3(calcd for C
17H
27N
2O
7P,402.16)。
【0108】
実施例31
化合物31の調製
【化41】
100mlの三つ口フラスコにおいて、50mlジクロロメタン溶媒により化合物30(8.3g,20.85mmol)を溶解させ、窒素ガスの保護下で0℃の低温反応器に置き、撹拌しながらDIEA塩基(6.7g,52.11mmol)を滴下し、30分間後、Boc無水物(5.0g,22.935mmol)を滴下し、滴下終了後、室温に移し、2時間撹拌しながら反応させ、TLC検出(展開剤DCM:MeOH=4:1)により反応が完了したことを確定した。後処理:反応液に水を加えて3回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮し、残留物を高速液体クロマトグラフィーにより分取精製した。(カラム:YMC-C18,100mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速200mL/min,λ=214nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0min 40%B,0-10min 40%B,10-20min 40%B~45%B,20-30min 45%B,30-45min 45%B~80%B,45-50min 80%B~95%B。
保持時間が26~29.5minの留分を収集し、凍結乾燥させ、4.02gの無色油状液体を得た。収率は38.3%であった。
1H NMR data(CDCl
3,400 MHz):7.36-7.28(m,5H),5.09(s,2H),4.63-4.43(m,1H),4.14-4.01(m,4H),3.92-3.65(m,2H),3.61-3.29(m,2H),2.34-1.95(m,2H),1.45(s,9H),1.36-1.22(m,6H);LCMS[M+H]
+ m/z 503.4(calcd for C
22H
35N
2O
9P,502.21)。
【0109】
実施例32
化合物32の調製
【化42】
150mlの丸底フラスコにおいて、50mlメタノールで化合物31(4.0g,8.0mmol)を溶解させ、さらに800mgのPd/C(Pd含有量:5%)を加え、水素ガスで置換した後、室温で4時間撹拌しながら反応させ、TLC検出(展開剤DCM:MeOH=4:1)により反応が完了したことを確定した後、反応を停止させた。有機膜によりパラジウム炭素を濾別し、減圧濃縮し、残留物を精製せずに、そのまま次の反応に用いた。LCMS[M+H]
+ m/z 369.4(calcd for C
14H
29N
2O
7P,368.17)。
【0110】
実施例33
化合物33の調製
【化43】
100mlの丸底フラスコに30ml氷酢酸を加えて精製されていない化合物32を溶解させ、さらに撹拌しながら無水マレイン酸(1.57g,16.0mmol)を加え、室温で一晩撹拌しながら反応させた。翌日に反応を停止させ、45℃でオイルポンプにより減圧濃縮して氷酢酸を除去し、残留物を高速液体クロマトグラフィーにより分取精製した。
(カラム:YMC-C18,100mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速200mL/min,λ=214nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0min 5%B,0-10min 5%B~15%B,10-20min 15%B~30%B,20-35min 30%B~55%B,35-45min 55%B,45-55min 55%B~80%B,55-60min 80%B~98%B
保持時間が25~26.5minの留分を収集し、凍結乾燥させ、3.35g油状物を得た。2段階収率は90%であった。
1H NMR data(CDCl
3,400 MHz):6.40(d,J=12 Hz,1H),6.35(d,J=12 Hz,1H),4.96-4.82(m,1H),4.19-3.99(m,4H),3.98-3.61(m,2H),3.60-3.36(m,2H),2.22-2.00(m,2H),1.45(s,9H),1.33(t,J=7.0 Hz,3H),1.32(t,J=7.0 Hz,3H);LCMS[M+H]
+ m/z 467.3(calcd for C
18H
31N
2O
10P,466.17)。
【0111】
実施例34
化合物34の調製
【化44】
100mlの丸底フラスコにおいて、40mlトルエン及び4mlのDMAで化合物33(3.3g,7.07mmol)を撹拌して溶解させ、さらにトリエチルアミン(2.1g,21.2mmol)を加え、水分離器及び還流冷却器を取り付け、120℃で3時間還流撹拌しながら反応させ、TLC検出(展開剤DCM:MeOH=4:1)により反応が完了したことを確定した。後処理:45℃で減圧濃縮してトルエンを除去し、残留物を高速液体クロマトグラフィーにより分取精製した。
(カラム:YMC-C18,100mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速200mL/min,λ=214nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0min 5%B,0-10min 5%B~15%B,10-20min 15%B~30%B,20-35min 30%B~55%B,35-45min 55%B,45-55min 55%B~80%B,55-60min 80%B~98%B
保持時間が27~29minの留分を収集し、凍結乾燥させ、2.12gの白色粉末状固体(すぐに吸湿して粘稠油状物になった)を得た。収率は67%であった。LCMS[M+H]
+ m/z 449.3(calcd for C
18H
29N
2O
9P,448.16).
【0112】
実施例35
化合物35の調製
【化45】
化合物34(2.1g,4.69mmol)が入った100ml丸底フラスコにおいて、オイルポンプにより可能な残留水分を完全に除去し、20mlの乾燥DMFを加え、撹拌して溶解し、その後、DIEA(1.8g,14.07mmol)を加え、さらに順にEDCI(1.81g,9.38mmol)及びHoAt(1.28g,9.38mmol)を加え、室温で撹拌して化合物5を30分間活性化させ、化合物6(2.66g,7.03mmol)を加え、室温で一晩撹拌しながら反応させ、翌日に反応を停止させた。後処理:45℃でオイルポンプにより減圧濃縮してDMF溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン:メタノール=20:1~10:1~5:1)により精製し、1.01g白色粉末状固体を得た。収率は26.6%であった。LCMS[M+H]
+ m/z 810.4(calcd for C
36H
56N
7O
12P,809.37)。
【0113】
実施例36
化合物36の調製
【化46】
50mlの丸底フラスコにおいて、15mlの乾燥DMFで化合物35(1.0g,1.24mmol)を撹拌して溶解し、さらにDIEA(961mg,7.44mmol)及びNPC(1.88g,6.2mmol)を加え、その後、室温で一晩撹拌しながら反応させ、翌朝にTLC検出(展開剤ジクロロメタン:メタノール=5:1)により反応が完了したことを確認し、反応を停止させた。後処理:45℃でオイルポンプにより減圧濃縮し、残留物を分取薄層クロマトグラフィー(展開剤ジクロロメタン:メタノール=6:1)により分取精製し、1.02gの白色粉末状固体を得た。収率は84.5%であった。LCMS[M+H]
+ m/z 975.3(calcd for C
43H
59N
8O
16P,974.38)。
【0114】
実施例37
化合物37の調製
【化47】
100mlの丸底フラスコにおいて、10mlの乾燥DMFで化合物36(1.0g,1.03mmol)を溶解させ、さらにHoBt(28mg,0.21mmol)及びDIEA(266mg,2.06mmol)を加え、30分間撹拌しながら反応させた後、MMAE(740mg,1.03mmol)を加え、室温で一晩撹拌しながら反応させた。後処理:反応液を分取液体クロマトグラフィーにより分取精製した。
(カラム:YMC-C18,50mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速50mL/min,λ=214nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0min 5%B,0-10min 5%B~15%B,10-20min 15%B~30%B,20-35min 30%B~55%B,35-45min 55%B~70%B,45-55min 70%B,55-60min 70%B~98%B
保留時間が38-40minの留分を収集し、凍結乾燥させ、320mg白色粉末状固体を得た。収率は20%であった。LCMS[M+H]
+ m/z 1553.8(calcd for C
76H
121N1
2O
20P,1552.85)。
【0115】
実施例38
化合物38の調製
【化48】
25mlの丸底フラスコにおいて5mlの再蒸留したジクロロメタンで化合物37(260mg,0.17mmol)を溶解させ、窒素ガスの保護下で氷浴においてブロモトリメチルシラン(78mg,0.51mmol)を加え、その後、室温に移して一晩撹拌しながら反応させ、翌朝に1mlメタノールを加え、室温で1時間撹拌しながら反応させ、液相分析により化合物37が完全に反応したことを確認した。後処理:反応液を減圧濃縮し、残留物を高速液体クロマトグラフィーにより分取精製した。
(カラム:YMC-C18,30mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速25mL/min,λ=214nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0min 5%B,0-10min 5%B~15%B,10-20min 15%B~30%B,20-35min 30%B~55%B,35-45min 55%B~70%B,45-55min 70%B,55-60min 70%B~98%B
保持時間が20-23minの留分を収集し、凍結乾燥させ、140mgの白色粉末状固体を得た。収率は55%であった。
【0116】
実施例39
化合物39の調製
【化49】
25mlの丸底フラスコにおいて、2mlジクロロメタンで化合物38(120mg,0.08mmol)を撹拌して溶解させ、氷浴で800μlトリフルオロ酢酸を滴下し、その後、室温に移して1時間撹拌しながら完全に反応させた。後処理:反応液を減圧濃縮し、残留物を高速液体クロマトグラフィーにより分取精製した。
(カラム:YMC-C18,30mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速25mL/min,λ=214nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0min 5%B,0-10min 5%B~15%B,10-20min 15%B~30%B,20-35min 30%B~55%B,35-45min 55%B~70%B,45-55min 70%B,55-60min 70%B~98%B
保持時間が18-19.5minの留分を収集し、凍結乾燥させ、55mg白色粉末状固体を得た。収率は49%であった。LC-MS m/z(ES
+):1397.8(M+H)
+
【0117】
実施例40
化合物40の調製
【化50】
化合物7(332mg,0.836mmol)を乾燥ジクロロメタンに溶解し、ペンタフルオロフェノール(184mg,1mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(2mmol)を加え、化合物7がなくなるまで室温で3時間撹拌した。MMAF(460mg,0.585mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA,0.27mL,1.67mmol)を加え、15mL乾燥ジクロロメタン溶液に溶解し、窒素ガスの保護下、室温で4時間反応させた。減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール=50/1)により分離し、製品を得た290mg。LC-MS m/z(ES
+):1168.8(M+H)
+
【0118】
実施例41
化合物41の調製
【化51】
100mg化合物39を10mL乾燥ジクロロメタンに溶解し、4mLトリフルオロ酢酸を加え、室温で2時間反応させ、高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
(カラム:YMC-C18,30mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速25mL/min,λ=215nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-10min 95%A,10-25min 95%A~70%A,25-55min 70%A~40%A
保持時間33minの留分を収集し、凍結乾燥させ、製品50mgを得た。LC-MS m/z(ES
+):956.6(M+H)
+
【0119】
実施例42
化合物42の調製
【化52】
化合物16(400mg,0.76mmol)を乾燥ジクロロメタンに乾燥し、ペンタフルオロフェノール(184mg,1mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(2mmol)を加え、化合物16がなくなるまで室温で4時間撹拌した。MMAF(389mg,0.49mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA,0.25mL,1.52mmol)を加え、15mL乾燥ジクロロメタンに溶解し、窒素ガスの保護下、室温で4時間反応させた。減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメタン/メタノール=50/1)により分離し、製品を得た330mg。LC-MS m/z(ES
+):1296.8(M+H)
+
【0120】
実施例43
化合物43の調製
【化53】
100mg化合物41を10mL乾燥ジクロロメタンに溶解し、4mLトリフルオロ酢酸を加え、室温で2時間反応させ、高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
(カラム:YMC-C18,30mm*450mm,10μm,アセトニトリル/水(0.2%TFA),流速25mL/min,λ=215nmで検出)
溶媒A:0.2%TFA水
溶媒B:アセトニトリル
勾配:0-10min 95%A,10-25min 95%A~70%A,25-55min 70%A~40%A
保持時間が30minの留分を収集し、凍結乾燥させ、製品48mgを得た。LC-MS m/z(ES
+):1028.5(M+H)
+
【0121】
実施例44
抗体薬物複合体H-11は、一般的な方法Bと同様にして調製され、逆相高速液体クロマトグラフィーにより測定した結果、その平均薬物抗体比(DAR)の値はであった。7.2
【0122】
実施例45
抗体薬物複合体H-20は、一般的な方法Bと同様にして調製され、逆相高速液体クロマトグラフィーにより測定した結果、その平均薬物抗体比(DAR)の値は7.2であった。
【0123】
実施例46
抗体薬物複合体H-29は、一般的な方法Bと同様にして調製され、逆相高速液体クロマトグラフィーにより測定した結果、その平均薬物抗体比(DAR)の値は6.8であった。
【0124】
実施例47
抗体薬物複合体H-39は、一般的な方法Bと同様にして調製され、逆相高速液体クロマトグラフィーにより測定した結果、その平均薬物抗体比(DAR)の値は7.0であった。
【0125】
実施例48
抗体薬物複合体H-41は、一般的な方法Bと同様にして調製され、逆相高速液体クロマトグラフィーにより測定した結果、その平均薬物抗体比(DAR)の値は7.5であった。
【0126】
実施例49
抗体薬物複合体H-43は、一般的な方法Bと同様にして調製され、逆相高速液体クロマトグラフィーにより測定した結果、その平均薬物抗体比(DAR)の値は7.7であった。
【0127】
実施例50
引き続き合成して以下に示される薬物-ジョイント結合体が得られた。
【化54】
【化55】
式中、Acは、非塩基性アミノ酸又はオリゴペプチドを示し、アミノ酸におけるアミノ基がアルキル基に結合される。n=1,2,3...である。
【0128】
異なるアミノ酸及びオリゴペプチドの薬物ジョイントの合成及び特性を表1に示す。同表において、左側の第1列は化合物番号、第2列はアミノ酸の種類、第3列はnの値、第4列は一般的な合成方法、第5、6列は薬物ジョイントの計算質量及び質量分析によって決定された質量である。
【0129】
【表1】
略語
Gly:L-グリシン、Ala:L-アラニン、Phe:L-フェニルアラニン、Trp:L-チロシン、Asp:L-アスパラギン酸、Ser:L-セリン、Val:L-バリン
【化56】
【0130】
実施例52-56
酸性自己安定化ジョイントを用いて製造されたADCの安定性、親水性及び薬理活性を評価するために、実施例に従って酸性安定化ジョイントを有する薬物-ジョイント結合体を製造した。このような結合体は、いずれも酸性安定化ジョイントを有し、切断可能又は切断不可能なリンカーを介して細胞毒性薬MMAE又はMMAFに結合される。対照として、文献に記載の方法に従って典型的な非自己安定化薬物-ジョイント結合体(本明細書ではMC-VC-PAB-MMAEと呼ばれる)及び塩基性自己安定化ジョイントを有する薬物-ジョイント結合体(本明細書ではDPR-VC-PAB-MMAEと呼ばれる)を合成した。
【0131】
【0132】
実施例52:生体外血漿安定性
一般手順Dに従って血漿安定性を研究し、結果を下表に示す。実験結果から明らかなように、酸性安定化ジョイントを有するADCは、血漿においてインキュベートされた過程において薬物の損失がほとんどなかった一方、典型的なMCジョイントADCは、72時間インキュベートされた後、DARが顕著に低下した。これは、酸性安定化ジョイントは、ADC薬物血漿安定性を向上できることを示している。
【0133】
【0134】
実施例53:SEC-HPLC検出
複合して得られたADCサンプルを14000rpmで5分間遠心分離し、上清を取り、注入して分析した。
装置:Waters e2695(2489UV/Vis)
カラム:TSKgel G3000SWXL(7.8×300mm,5μm)
移動相A:50mM PB,300mM NaCl,200mM Arg,5%IPA,pH6.5
移動相A:30minイソクラティック溶離,流速:0.714ml/min,カラム温度25℃,検出波長:280nm。
【0135】
SEC-HPLCにより各ADCの凝集度が得られた。SEC-HPLCピーク図を2A-2Hに示す。データを下表に示す。酸性安定化ジョイントを導入したADCでは、モノマー比は顕著に向上し、凝集度は顕著に低下した。
【表3】
【0136】
実施例54
マウス体内のPK実験
マウスモデルにおいて、ADC薬物(薬物担持量8)のPK特性を測定した。投与量2mg/kgでマウスの尾に単回静脈内注射し、一般手順Bに従って血液中の総抗体(Total Ab)濃度を検出した。結果を
図3に示す。実験結果から明らかなように、マウス体内において、酸性安定化ジョイントADCはPKを顕著に改善し、血液中の総抗体がより高い濃度をより長く維持できる。
【0137】
実施例55
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)による測定
一般手順Aに従って抗IgG1抗体の全てを1抗体あたり8チオールに還元した後、非部位特異的結合により対応する抗体薬物複合体を製造した。疎水性相互作用クロマトグラフィーにより1抗体あたり8薬物の酸性安定化ジョイントを有するADCと従来のジョイントADC(即ちMC-VC-PAB-MMAE)を分離して精製し、一般手順Cに従って、疎水性相互作用クロマトグラフィーHICによりADCを分析した。より高い疎水性又はより多くの薬物/分子を有するADCは、より遅い保持時間に溶出された。実験結果を
図4に示す。酸性ジョイントを有するADCは、HICにおいて保持時間が比較的短く、MC-VC-PAB-MMAEの抗体複合体は、保持時間が最も長かった。実験結果から明らかなように、酸性安定化ジョイントを有するADC分子は、より高い親水性を有する。
【0138】
実施例56
生体内薬効実験(Cell Proliferation Assay)
ヒト膵臓腺がん細胞BxPc3を生体外で培養し、細胞数5×10
6でBALB/cヌードマウスの背中の皮下に接種し、腫瘍が100~200mm
3まで増殖した後、群に分け、3mg/kgでADC薬物を単回投与(尾静脈注射)した。また、溶媒対照群を構築し、定期的に体重を測り、腫瘍の体積を測定し、ADC薬物の抗腫瘍効果等の指標を考察することにより、BxPc3モデルに対する薬物の薬効を評価した。実験結果を
図5、6に示す。結果から明らかなように、酸性安定化ジョイントを有するADC薬物は、DAR=2である場合、Dpr-MC-VC-PAB-MMAEと類似する薬効を有し、Mc-VC-PAB-MMAEよりも顕著に高い。また、高い薬物担持量DAR=8である場合、BxPc3マウス皮下移植腫瘍モデルにおいて高い薬効を有する。