(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】ワークの面取り加工装置、それを備えた歯加工センタ、およびワークの面取り加工装置を用いた加工方法
(51)【国際特許分類】
B23F 19/10 20060101AFI20230210BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20230210BHJP
B23F 23/08 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
B23F19/10
B23Q17/22 A
B23F23/08
(21)【出願番号】P 2021110170
(22)【出願日】2021-07-01
(62)【分割の表示】P 2019070346の分割
【原出願日】2019-04-02
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】10 2018 108 622.9
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594012634
【氏名又は名称】リープヘル-フェアツァーンテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイクスラー ヨハン
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-224228(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0089737(US,A1)
【文献】実開昭62-144118(JP,U)
【文献】特開昭55-031571(JP,A)
【文献】特開2016-168648(JP,A)
【文献】特開平05-269621(JP,A)
【文献】実開平03-029225(JP,U)
【文献】実開昭51-069194(JP,U)
【文献】特開2018-047548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯付きワークの少なくとも2つの縁部を面取り加工するための装置であって、
前記装置は、前記ワークを支持するために回転可能に取り付けられたワークホルダを備える少なくとも1つのワークスピンドルと、少なくとも1つの動作軸を通って前記ワークホルダに対して可動な機械加工ヘッドと、を備え、
前記機械加工ヘッドには、少なくとも1つの第1の面取りフライスカッターを支持するために回転可能に取り付けられた第1の工具ホルダを備える少なくとも1つの第1の工具スピンドルが、前記ワークホルダに支持されたワークの歯部の第1の縁部を面取り加工するために設けられる装置であって、
前記第1の面取りフライスカッターは、複数の切歯及び複数の溝を外周に有する円板状の工具又はホブピーリング工具であり、
前記機械加工ヘッドには、底フライスカッターを支持するために回転可能に取り付けられた第2の工具ホルダを備える第2の工具スピンドル
が、前記ワークホルダに支持された前記ワークの歯部の第2の縁部を面取り加工する
ために設けられ、
前記第1の工具スピンドル及び前記第2の工具スピンドルは、共通の前記機械加工ヘッドに設けられる
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記ワークホルダ及び前記第1の工具ホルダは、前記第1の縁部を面取りするために同期して駆動することができ
る
ことを特徴とする、装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、
前記少なくとも1つの動作軸は、前記第2の縁部を面取り加工するために前記装置の制御器によって作動させられ得るNC軸であり、前記第2の工具ホルダに支持される底フライスカッターが、機械加工対象の前記第2の縁部の輪郭に沿って案内される一方、前記ワークホルダに支持された前記ワークがその回転軸の周りに回転
し、
前記第2の工具ホルダの回転軸は、+/-55°と+/-30°との間、又は+/-45°と+/-30°との間の範囲にある角度で、前記ワークホルダの回転軸に対して垂直に延在する平面と位置合わせされるか、又は、位置合わせされ得る
ことを特徴とする、装置。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1つに記載の装置において、
前記少なくとも1つの動作軸は、少なくとも1つの第1の直線軸X及び/又は少なくとも1つの第2の直線軸Zであり、前記第1の直線軸Xを通って、前記機械加工ヘッドは、前記ワークホルダの回転軸及び前記第1の工具ホルダの回転軸に垂直な方向に往来可能であり、前記第2の直線軸Zを通って、前記機械加工ヘッドは、前記ワークホルダの回転軸に対して平行な方向に往来可能であることと、
前記機械加工ヘッドは、前記ワークホルダの回転軸及び前記第1の工具ホルダの回転軸に垂直な方向に延在する回動軸Aの周りに回動可能であることと、
前記機械加工ヘッドは、前記第1の直線軸Xに垂直な平面に延在する第3の直線軸Y又はVを通って往来可能であることとのうち少なくとも1つに該当する
ことを特徴とする、装置。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1つに記載の装置において、
前記機械加工ヘッドに
はセンサが配置され、
前
記センサは、前記第1の縁部を面取り加工するための第1の面取りフライスカッターを
前記第1の縁部に対して位置決めする目的と、前記第2の縁部を面取り加工するための前記底フライスカッターを
前記第2の縁部に対して位置決めする目的との両方のために使用でき、
前
記センサは、非接触
式センサである
ことを特徴とする、装置。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1つに記載の装置において、
前記第2の工具スピンドルは、回動軸を通って前記機械加工ヘッドに配置され、前記第2の工具スピンドルは、下縁部を機械加工するための第1の機械加工位置から上縁部を機械加工するための第2の機械加工位置へ前記回動軸を中心として回動可能であり、
前記回動軸は調整軸であり、及び/又は、
調整可能なストッパが前記第1の機械加工位置及び前記第2の機械加工位置を調整するために設けられる
ことを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1つに記載の装置において、
前記第2の工具スピンドルは、前記機械加工ヘッド上に
、配置され、
前記面取り角度を調整するために、前記機械加工ヘッドに対する前記第2の工具ホルダの回転軸の角度位置を調整する調整装置が設けられるか、又は、前記第2の工具スピンドルは、少なくとも1つのNC軸である回動軸を通って前記機械加工ヘッド上に配置されるかのいずれかである、装置。
【請求項8】
請求項1~
7のうちいずれか1つに記載の装置において、
複数の第1の面取りフライスカッターを前記第1の工具ホルダのマンドレルに一緒に支持可能であり、
前記装置は、前記第1の面取りフライスカッターによって複数の前記第1の縁部を面取り加工できるようにする制御器を備える
ことを特徴とする、装置。
【請求項9】
請求項1~
8のうちいずれか1つの記載の装置において、
前記少なくとも1つの第1の面取りフライスカッターと一緒に、ブラシを前記第1の工具ホルダのマンドレルに支持可能であり、
前記装置は、前記第1の面取りフライスカッター又は前記底フライスカッターによって面取り加工された縁部のバリ取りを前記ブラシによって行うことができる制御器を備え、この目的のために、前記機械加工ヘッドは、前記ワークホルダの回転軸及び前記第1の工具ホルダの回転軸に対して垂直に延在する回動軸Aを中心として回動可能である
ことを特徴とする、装置。
【請求項10】
請求項1~
9のうちいずれか1つに記載の装置において、
前記第2の縁部の部分領域のみに面取り部を形成することと、シャフトの歯部を面取り加工するために、前記第2の縁部の異なる部分領域を、前記底フライスカッターの異なる領域
であるシェル領域及び頂部領域を用いて、機械加工することとのうち少なくとも一方を可能にする制御器を備える
ことを特徴とする、装置。
【請求項11】
請求項1~1
0のうちいずれか1つに記載の装置において、
前記ワークの前記歯部の前記縁部を自動的に面取りするために前記装置の軸を作動させるための制御器を備えることを特徴とする、装置。
【請求項12】
請求項1~1
1のうちいずれか1つに記載の装置と、歯切盤と、ワーク交換器と、を備える歯加工センタであって、
前記ワークの歯の機械加工及び面取りが並行するサイクルタイムで行われる
ことを特徴とする、歯加工センタ。
【請求項13】
歯付きワークを支持するために回転可能に取り付けられた少なくとも1つのワークホルダと、少なくとも1つの動作軸を通って前記ワークホルダに対して可動な機械加工ヘッドと、を備える装置を用いて、前記歯付きワークの少なくとも2つの縁部を面取り加工するための方法であって、
前記機械加工ヘッドには、回転可能に取り付けられた少なくとも1つの第1の工具ホルダが設けられ、
前記ワークホルダに支持されたワークの歯部の第1の縁部を、前記第1の工具ホルダに支持される第1の面取りフライスカッターにより面取り加工し、
前記第1の面取りフライスカッターは、複数の切歯及び複数の溝を外周に有する円板状の工具又はホブピーリング工具であり、
前記機械加工ヘッドには、回転可能に取り付けられた第2の工具ホルダが設けられ、
前記第1の工具ホルダ及び前記第2の工具ホルダは、共通の前記機械加工ヘッドに設けられ、
前記ワークホルダに支持された前記ワークの歯部の第2の縁部の面取り加工は、前記第2の工具ホルダに支持された底フライスカッターにより行われる
ことを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
複数の歯部の少なくとも2つの縁部が、前記第1の工具ホルダに支持された1つ以上の第1の面取りフライスカッターによって面取り加工され、歯部の少なくとも1つの縁部が、前記第2の工具ホルダに支持された前記底フライスカッターによって面取り加工される、複数の歯部を有するワークを面取り加工するための
、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯付きワークの少なくとも2つの縁部を面取りするための装置に関する。この装置は、ワークを支持するために回転可能に取り付けられたワークホルダを備える少なくとも1つのワークスピンドルと、少なくとも1つの動作軸を通ってワークホルダに対して可動な機械加工ヘッドと、を備える。機械加工ヘッドには、少なくとも1つの第1の面取りフライスカッターを支持するために回転可能に取り付けられた第1の工具ホルダを備える少なくとも1つの第1の工具スピンドルが、ワークホルダに支持されたワークの歯部の第1の縁部を面取り加工するために設けられる。具体的には、面取りフライスカッターは、面取り切断機であってもよい。
【背景技術】
【0002】
ワークを機械加工してワークブランク上に歯を形成すると、鋭い縁を有する材料突出部が、機械加工されたワーク縁部に形成される。「バリ」と呼ばれるこれらの突出部は、歯部の縁部のバリ取りをすることによって除去されなければならない。なぜなら、これらの突出部は、後の工程で邪魔になるか、又は、部品を手で取り扱いする際に機械の操作者を負傷させる危険性があるからである。さらに、歯部の縁部には、しばしば、特殊な保護用面取り部も設けられている。
【0003】
ワークの面取りは、通常、ワークブランクに歯を形成した後に、特別に適合された面取り工具によって行われる。この面取りプロセスでは、従来、複数の方法を採用することができる。連続生産では、とりわけ、独国特許出願公開第8328237号明細書に記載のプレスバリ取り方法、独国特許出願公開第20320294号明細書に記載の面取りフライスバリ取り方法、及び独国特許出願公開第202007026740号明細書に記載の面取りフライスバリ取り方法が使用される。
【0004】
独国特許出願公開第20320294号明細書には、いわゆる面取り切断機による面取りフライスバリ取りが記載されている。このような面取り切断機は、その外周に(好ましくは、それぞれ同じ円周方向の間隔を有する)複数の切歯及び複数の溝を含む円板状の面取り工具である。これらの切歯は円周方向に螺旋状に延在する。面取り切断機は、1ねじ山ごとに歯が1本設けられている多条ねじ式のものである。しかしながら、回転方向における複数の歯の前側に形成された複数の切刃は、共通の飛行円(flight circle)上に配置される。
【0005】
上述の面取り方法は、通常、外側歯部を有するワークを面取りするために用いられる。ここでは、例えば、面取り工具は、フライスカッターとともに同じ工具マンドレルに固定され、フライス削り作業後に、歯部の縁部と係合させられる。工具スピンドルで使用される唯一の工具が面取りフライスカッター(具体的には、面取り切断機)である面取りフライスステーションを使用することも、独国特許出願公開第102013015240号明細書から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、面取りフライスカッター(具体的には、面取り切断法)による面取りフライス作業では、機械加工対象の歯縁部の近傍に邪魔になる輪郭があってはならないという問題がある。なぜなら、フライスカッターの歯の飛行円の大部分が、歯部の前面よりも上方又は下方、且つ、面取り対象である縁部を有する歯部の歯底円内に延在するからである。
【0007】
従って、具体的には、複数の歯部又は複数の歯付きシャフトの場合、面取り切断法は、すべての歯縁部に対して使用できるわけではないことが多い。
【0008】
従って、このような場合には、邪魔になる輪郭によってブロックされた歯縁部のバリ取りをプレスバリ取りによって行うことが今まで可能であったに過ぎない。しかしながら、この方法では、材料が歯フランクに押し込まれることにより、特にホーニング作業時に、歯縁部の領域において工具がかなり摩耗してしまう。
【0009】
本発明の目的は、歯付きワークの少なくとも2つの縁部を面取り加工するための改良装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載の装置によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0011】
本発明は、歯付きワークの少なくとも2つの縁部を面取り加工するための装置を含む。この装置は、ワークを支持するために回転可能に取り付けられたワークホルダを備える少なくとも1つのワークスピンドルと、少なくとも1つの動作軸を通ってワークホルダに対して可動な機械加工ヘッドと、を備える。機械加工ヘッドには、少なくとも1つの第1の面取りフライスカッターを支持するために回転可能に取り付けられた第1の工具ホルダを備える少なくとも1つの第1の工具スピンドルが、ワークホルダに支持されたワークの歯部の第1の縁部を面取り加工するために設けられる。本発明は、機械加工ヘッドには、底フライスカッターを支持するために回転可能に取り付けられた第2の工具ホルダを備える第2の工具スピンドルが設けられ、ワークホルダに支持されたワークの歯部の第2の縁部を面取り加工することを特徴とする。
【0012】
したがって、本発明によれば、第1の面取りフライスカッターによって機械加工できない縁部は、底フライスカッターを用いて機械加工できる。この後、邪魔な輪郭が存在しない残りの縁部は、少なくとも1つの第1の面取りフライスカッターを用いて機械加工される。底フライスカッターによる機械加工は、面取りフライスカッターによる加工よりも時間がかかるが、これによって初めて、邪魔な輪郭のために機械加工が困難な縁部を求められる品質で機械加工が可能になる。第1の面取りフライスカッター用の第1の工具ホルダを有する第1の工具スピンドルが配置される機械加工ヘッドに、底フライスカッター用の第2の工具ホルダを有する第2の工具スピンドルを配置することにより、底フライスカッターは、機械加工ヘッドの少なくとも1つの動作軸を通って歯縁部に対して位置決めでき、この歯縁部と係合できる。
【0013】
本発明の可能な実施形態では、ワークホルダ及び第1の工具ホルダは、第1の縁部を面取りするために同期して駆動することができる。好ましくは、ワークホルダ及び第1の工具ホルダのそれぞれの回転運動を生成するために、NC軸を用いる。これらの軸の回転運動は、第1の縁部の面取りフライス加工を実行するために、装置の制御器によって同期させることができる。
【0014】
好ましくは、ワークホルダ及び第1の工具ホルダは、連結させることにより駆動できる。これにより、特に有効な面取りフライス加工が可能である。
【0015】
本発明の可能な実施形態では、第1の面取りフライスカッターは、複数の切歯及び複数
の溝を外周に有する円板状のバリ取り工具である。切歯の刃先は、好ましくは、機械加工対象の縁部の形状に具体的に適合される。異なる歯部を面取りフライス加工するためには
、対応する別々の第1の面取りフライスカッターが必要とされる。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つの第1の面取りフライスカッターは、面取り切断機及び/又はホブピーリング工具である。このような面取り切断機は、好ましくは、それぞれ同じ円周方向の間隔を有する複数の切歯及び複数の溝を外周に有する円板状のバリ取り工具である。これらの切歯は円周方向に螺旋状に延在する。面取り切断機は、1ねじ山ごとに歯が1本設けられている多条ねじ式のものである。しかしながら、回転方向における複数の歯の前側に形成された複数の切刃は、共通の飛行円(flight circle)上に配置される。
【0017】
具体的には、面取り切断機は、独国特許出願公開第10330474号明細書に記載されたバリ取り工具のように構成することができる。さらに好ましくは、バリ取り作業のために独国特許出願公開第10330474号明細書に記載されているように、第1の縁部を面取り切断機によって面取りする。しかしながら、独国特許出願公開第10330474号明細書には示されていないが、本発明に係る面取り切断機は、好ましくは、歯部を形成するための工具とともに使用されることはなく、同じ工具マンドレル上に固定されているが、別の工具ホルダに固定される。
【0018】
好ましくは、機械加工ヘッドの少なくとも1つの動作軸は、第2の縁部を面取り加工するために装置の制御器によって作動させられ得るNC軸であり、第2の工具ホルダに支持される底フライスカッターが、機械加工対象の第2の縁部の輪郭に沿って案内される一方、ワークホルダに支持されたワークがその回転軸の周りに回転する。したがって、機械加工ヘッドの少なくとも1つのNC軸の往来運動は、好ましくは、第2の縁部を面取り加工するときに、機械加工対象の歯部の各歯について繰り返される。
【0019】
具体的には、少なくとも1つの動作軸は、第2の縁部を面取り加工を行うためのものであり、少なくとも1つの第1の直線軸X及び/又は少なくとも1つの第2の直線軸Zである。直線軸Xを通って、機械加工ヘッドは、ワークホルダの回転軸及び第1の工具ホルダの回転軸に垂直な方向に往来可能であり、直線軸Zを通って、機械加工ヘッドは、ワークホルダの回転軸に対して平行な方向に直線軸Zを通って往来可能である。
【0020】
さらに、機械加工ヘッドは、回動軸Aを中心として回動可能であってもよい。この回動軸Aは、ワークホルダの回転軸及び第1の工具ホルダの回転軸に対して垂直に延在する。本発明の第1の実施形態では、この回動軸Aは、第2の縁部を面取り加工する間には作動されない。しかしながら、第2の実施形態では、回動軸Aは、各歯に対する反復動作中に回動してもよい。
【0021】
さらに、機械加工ヘッドは、第1の直線軸Xに垂直な平面内で延在する第3の直線軸Y又はVを通って往来可能であってもよい。
【0022】
第3の直線軸Y又はVは、2つの縁部を別々の工具によって機械加工する位置の間において機械加工ヘッドを往来させて、対応する工具をワークと係合させる目的で使用できる。
【0023】
本発明の第1の実施形態では、第3の直線軸Y又はVは、少なくとも1つの縁部(具体的には、第2の縁部)を面取り加工する間には作動されない。
【0024】
本発明の可能な実施形態では、機械加工ヘッドにねじ込みセンサが配置され、ねじ込みセンサは、第1の縁部を面取り加工するための第1の面取りフライスカッターをねじ込む目的と、第2の縁部を面取り加工するための底フライスカッターをねじ込む目的との両方のために使用できる。好ましくは、このセンサは非接触式センサである。例えば、誘導性センサ及び/又は光センサを使用できる。
【0025】
本発明の可能な実施形態では、第2の工具スピンドルは、回動軸を通って機械加工ヘッドに配置され、第2の工具スピンドルは、下縁部を機械加工するための第1の機械加工位置から上縁部を機械加工するための第2の機械加工位置へ回動軸を中心として回動可能である。
【0026】
好ましくは、回動軸は調整軸である。NC軸の使用は、ここでは必要ではない。なぜなら、この軸は動的に往来させられず、面取り加工動作前に正しい機械加工位置へと回動させられて、ワークの前面に対してある角度(面取り部の所望の角度に対応する角度)で位置合わせされるに過ぎないからである。
【0027】
しかしながら、好ましくは、調整可能なストッパを第1及び第2の機械加工位置を調整するために設けて、面取り部の角度を調整できるようにする。
【0028】
好ましくは、回動軸は、アクチュエータ(具体的には、空気圧シリンダ)を介して作動させることができる。しかしながら、代替的に、回動軸は手動でのみ作動可能であってもよい。
【0029】
しかしながら、別の実施形態では、第2の工具スピンドルは、機械加工ヘッドに動かないように配置してもよい。第2の工具スピンドルを、下縁部を機械加工するための第1の機械加工位置から上縁部を機械加工するための第2の機械加工位置へと、機械加工ヘッドのA軸を中心として回動させることができる。
【0030】
可能な実施形態では、第2の工具ホルダの回転軸は、+/-55°と+/-30°との間、好ましくは+/-45°と+/-30°との間の範囲にある角度で、ワークホルダの回転軸に対して垂直に延在する平面と位置合わせされるか、及び/又は、位置合わせされ得る。具体的には、第2の工具ホルダの回転軸は、ワークホルダの回転軸に対して垂直に延在する平面に対して少なくとも30°の第2の工具ホルダの角度で、縁部を機械加工できるように構成できる。好ましくは、この角度は、30°と55°との間の範囲内の値を有する。
【0031】
本発明の可能な実施形態では、面取り加工作業は、第2の工具ホルダの位置合わせとともに行われ、これにより、第2の工具ホルダに支持された底フライスカッターは、工具ホルダから歯の間隙を通って機械加工する歯部の縁部まで延びることとなる。この場合、底フライスカッターは、機械加工する歯部を備えた縁部を有するワークの端面に先端がある状態で、延在しているだけであることが好ましい。これにより、邪魔な輪郭が存在する場合でも縁部を機械加工できる。
【0032】
可能な実施形態では、第2の工具スピンドルは、機械加工ヘッド上に、又は、1つ以上の調整軸のみを通って、動かないように配置される。しかしながら、好ましくは、面取り角度を調整するために、機械加工ヘッドに対する第2の工具ホルダの回転軸の角度位置を調整する調整装置が設けられる。
【0033】
あるいは、第2の工具スピンドルは、少なくとも1つのNC軸(具体的には回動軸)を通って機械加工ヘッド上に配置してもよい。
【0034】
第2の工具ホルダの回転軸は、空気圧式、油圧式及び電気式のうち少なくとも1つで駆動でき、好ましくは、空気圧式に駆動できる。
【0035】
可能な実施形態では、複数の第1の面取りフライスカッターを第1の工具ホルダのマンドレルに一緒に支持可能であり、装置は、第1の面取りフライスカッターによって複数の第1の縁部を面取り加工できるようにする制御器を備える。このための第1の面取りフライスカッターの切歯の形状は、好ましくは、機械加工される縁部の形状に具体的に適合される。
【0036】
可能な実施形態では、少なくとも1つの第1の面取りフライスカッターと一緒に、ブラシを第1の工具ホルダのマンドレルに支持可能であり、装置は、第1の面取りフライスカッター又は底フライスカッターによって面取り加工された縁部のバリ取りをブラシによって行うことができる制御器を備える。
【0037】
好ましくは、このための機械加工ヘッドは、回動軸Aを中心として回動可能である。この回動軸Aは、ワークホルダの回転軸及び第1の工具ホルダの回転軸に対して垂直に延在する。これにより、第2の縁部をブラシ加工するために、第1の工具ホルダの回転軸を、ワークホルダの軸に対して平行になるように位置合わせできる。
【0038】
可能な実施形態では、装置は、第2の縁部の部分領域のみに面取り部を形成することを可能にする制御器を含む。具体的には、面取り加工動作中に、面取り部を形成するのに十分な材料がないような縁部領域を除外してもよい。
【0039】
したがって、底フライスカッターは、シャフトの歯部にも使用することができる。シャフトでは、歯の基部が実質的にシャフトの半径に相当するため、この領域には歯縁部が全く存在しないためである。NC制御の下でフライスカッターは、ワークの回転に伴って歯縁部に沿って案内されるので、例えば歯の基部を省略することによって、歯先及び歯フランクのみをここではバリ取りすることができる。
【0040】
可能な実施形態では、この装置は、第2の縁部の異なる部分領域を、底フライスカッターの異なる領域を用いて、具体的にはシェル領域及び頂部領域を用いて、機械加工することを可能にする制御器を備える。
【0041】
これにより、例えば、側面及びヘッドの領域内で、底フライスカッターの外周を使用してもよいが、歯の基部の領域では、底フライスカッターの丸みを帯びた頭部を用いて、相対的に狭い面取りが得られるようにしてもよい。
【0042】
したがって、本発明により、具体的には、シャフトの歯部を面取り加工することも可能になる。
【0043】
底フライスカッターとしては任意の形状が使用される。具体的には、底フライスカッターは、円筒形又は円錐形の構造としてもよい。ヘッドは、場合によっては丸くしてもよい。さらに、球状ヘッドを備えた底フライスカッターを使用することも考えられる。
【0044】
本発明の可能な実施形態では、装置は、20°未満(好ましくは10°未満)の円錐角を有する円筒形シェル面又は円錐形シェル面を有する底フライスカッターを使用するように設計される。
【0045】
可能な実施形態では、底フライスカッターは、丸みを帯びたヘッドを有してもよい。
【0046】
可能な実施形態では、装置は、ワークの歯部の縁部を自動的に面取りするための装置の軸を作動させるための制御器を備える。
【0047】
装置の制御器は、好ましくは、本発明に係る装置が、その動作モード、アプリケーション、及び以下に記載される方法のうち少なくとも1つに関して上述されたステップを自動的に実行するようにプログラムされる。
【0048】
具体的には、制御器は、マイクロプロセッサと、装置を作動させるための制御プログラムが記憶されているメモリと、を含む。このプログラムはマイクロプロセッサによって実行される。
【0049】
本発明は、とりわけ、詳細に上述されている装置を保護する。この装置は、第1の面取りフライスカッター(具体的には、面取り切断機)を第1の工具ホルダで支持することと、底フライスカッターを第2の工具ホルダで支持することと、上述のアプリケーションを実行することとに適している。具体的には、この装置は、第1及び第2の縁部を面取り加工するためのこのような工具を使用するための制御器を備える。
【0050】
しかしながら、本発明は、同様に、上述されているような装置を備え、この装置においては、少なくとも1つの第1の面取りフライスカッター(具体的には、面取り切断機)が第1の工具ホルダに支持され、底フライスカッターが第2の工具ホルダに支持される。
【0051】
第1の実施形態では、装置は独立した面取り装置であってもよい。
【0052】
他方、第2の実施形態では、本発明に係る装置は、歯加工センタに一体化された面取り装置である。
【0053】
本発明はさらに、上述したような装置を備えた歯加工センタと、歯切盤と、ワーク交換器とに関する。好ましくは、歯切盤は、歯車形削り盤、ホブピーリング盤、又は、歯車ホブ盤である。好ましくは、歯加工センタにおいて、ワークの歯加工及び面取りは、並行するサイクルタイムで行われる。具体的には、歯切盤によって歯を形成されたワークは、次のワークが歯切盤により歯付けされている間に面取りされるように、面取り目的のために、ワーク交換器を介して本発明に係る装置まで移動させられる。荒削り工程と仕上げ工程との間でワークの面取りを行うことも考えられ、この目的のために、ワークは、好ましくは、歯切盤から本発明に係る装置まで移動させられ、再度戻される。
【0054】
好ましくは、ワーク交換器はリング自動制御装置であり、さらに好ましくは、本発明に係る面取り装置及び歯切盤は、リング自動制御装置の異なる角度位置に配置される。
【0055】
好ましくは、歯切盤及び本発明に係る装置は、別々のワークホルダを含む。この場合、ワーク交換器は、歯切盤の歯加工動作後、面取りの目的で、ワークホルダから本発明に係る装置のワークホルダまでワークを移動させる。
【0056】
しかしながら、別の実施形態では、歯加工センタは、歯加工及び面取り加工のためにワークが保持される複数のワークホルダを含んでもよい。この場合、ワークホルダは、好ましくは、歯切盤から本発明に係る装置まで、及び/又は、その逆方向に移動させられる。
【0057】
ワーク交換器は、複数のワークを、外部搬送路又は他の加工ステーションから1つ又は複数のワークホルダに装填したり、これらのワークをワークホルダから取り外したりするために使用されることが好ましい。
【0058】
本発明の別の態様によれば、本発明に係る装置はまた、別体の独立した機械として設計することもできる。好ましくは、ワークを面取りするために、装置は、搬送路及び/又は自動制御装置から歯付きワークを受け入れる。その後、これに応じて機械加工されたワークは、好ましくは、再び、搬送路及び/又は自動制御装置に引き渡される。
【0059】
本発明は、先に示した装置とは独立して、歯付きワークを支持するための少なくとも1つの回転可能に取り付けられたワークホルダと、少なくとも1つの動作軸を通って前記ワークホルダに対して可動な機械加工ヘッドと、を備える装置を用いて、歯付きワークの少なくとも2つの縁部を面取り加工するための方法であって、機械加工ヘッドには、回転可能に取り付けられた少なくとも1つの第1の工具ホルダが設けられ、ワークホルダに支持されたワークの歯部の第1の縁部を、第1の工具ホルダに支持される面取りフライスカッターにより面取り加工する方法を含む。本発明によれば、回転可能に取り付けられた第2の工具ホルダが設けられ、ワークホルダに支持されたワークの歯部の第2の縁部の面取り加工は、第2の工具ホルダに支持された底フライスカッターにより行われる。
【0060】
好ましくは、本発明に係る方法及び本発明に係る装置は、複数の歯部を有するワークを面取り加工するために使用される。
【0061】
本発明の可能な実施形態では、複数の歯部の少なくとも2つの縁部が、第1の工具ホルダに支持された1つ以上の第1の面取りフライスカッターによって面取り加工され、歯部の少なくとも1つの縁部が、第2の工具ホルダに支持された底フライスカッターによって面取り加工される。
【0062】
本発明に係る方法及び本発明に係る装置は、外側歯部を有するワークの縁部と内側歯部を有するワークの縁部とを面取り加工するため、及び/又は、反復性の構造を有するインボリュート又は非インボリュート輪郭の縁部を機械加工するために使用できる。
【0063】
好ましくは、本発明に係る方法は、既に上で詳細に説明したような装置によって、及び/又は、既に上述したような方法で実行される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】ワークを面取り加工するための本発明に係る装置の例示的な実施形態を示す。
【
図2】
図1に示す例示的な実施形態の部分拡大図を示す。
【
図3】本発明に係る第2の工具ホルダに支持された底フライスカッターによる第2の縁部の面取り加工を示す。
【
図4】本発明に係る第1の工具ホルダに支持された面取りフライスカッターによる第1の縁部の面取り加工を示す。
【
図5】本発明に係る第1の工具ホルダに支持された別の面取りフライスカッターによる別の第1の縁部の面取り加工を示す。
【
図6】本発明に係る第1の工具ホルダに支持された別の面取りフライスカッターによる別の第1の縁部の面取り加工を示す。
【
図7】ワークの第1の歯部の面取り加工を準備するためのねじ込みセンサの使用を示す。
【
図8】ワークの第2の歯部の面取り加工を準備するためのねじ込みセンサの使用を示す。
【
図9】第1の工具ホルダに支持されたブラシを用いて、底フライスカッターで面取りされた第2の縁部のブラシ加工動作を示す。
【
図10A】3つの歯を有するワークの内側歯部の上縁部における底フライスカッターによる面取り加工動作を示す。
【
図10B】3つの歯を有するワークの内側歯部の下縁部における底フライスカッターによる面取り加工動作を示す。
【
図11】ワーク交換器及びリング自動制御装置を含む本発明に係る加工センタ内のワークを面取り加工するための本発明に係る装置の使用を示す。
【0065】
以下に、本発明について例示的実施形態及び図面を参照しながら説明する。
【0066】
図1及び
図2は、ワークを面取り加工するための本発明に係る装置の例示的な実施形態を示している。
【0067】
この装置は、回転軸C2を中心として回転可能なワークホルダ4を備えたワークスピンドルを含む。ワークホルダに支持されたワーク7を面取り加工するために、機械加工ヘッド3が設けられる。この機械加工ヘッド3は、機械軸X、Z、V/Y及びAを通ってワークホルダ4に対して可動である。この機械加工ヘッド3には、少なくとも1つの第1の面取りフライスカッター6を支持するための工具ホルダ1を有する第1の工具スピンドルが設けられている。例示的な実施形態では、複数の面取りフライスカッター6は、共通の工具マンドレル5上で第1の工具ホルダ1に支持されている。面取りフライスカッター6は、第1の工具スピンドルの駆動装置により、回転軸B2を中心として回転させることができる。
【0068】
この例示的実施形態では、工具ホルダ4は、機械ベッド10上に配置され、垂直方向に延在している。機械加工ヘッドは、動作軸X、Z、A、及びV又はYを通って懸架されるようにフレーム11に配置されている。しかしながら、他の機械的構成及び他の運動学的な構成も可能である。例えば、工具ホルダ4は、機械テーブル上に配置してもよい。機械加工ヘッドは、工具スタンド上に配置してもよい。
【0069】
この例示的実施形態では、面取りフライスカッター6は、いわゆる面取り切断機である。この面取り切断機は、複数の切歯及び複数の溝を外周に有する円板状のバリ取り工具である。これらの切歯は円周方向に螺旋状に延在する。面取り切断機は、1ねじ山ごとに歯が1本設けられている多条ねじ式のものである。しかしながら、回転方向における複数の歯の前側に形成された複数の切刃は、共通の飛行円(flight circle)上に配置される。
【0070】
このような面取り切断機により、歯縁部のバリ取りを非常に効率よく行うことができる。なぜなら、面取り切断機の各切歯により、歯部の完全な歯溝が面取り加工で形成されるからである。この目的のために、面取り切断機は、最初に、機械加工ヘッドの動作軸を通って歯縁部に対して適切な位置に前進させられる。次に、第1の工具ホルダとワークホルダとを同期して回転させることにより、面取り切断機の連続する各切歯により、歯部の連続する歯溝が面取り加工で形成される。
【0071】
しかしながら、この面取り切断方法は、加工対象の縁部の近傍の領域において、面取り切断機のために比較的広いスペースが必要とされるという欠点を有する。したがって、例えば、別の歯部の形を採る邪魔な輪郭が加工対象の縁部の近傍に存在する場合、縁部は、面取り切断方法によって加工できない。
【0072】
このような縁部も面取り加工できるように、本発明に係る機械加工ヘッド3には、底フライスカッター8を支持するための工具ホルダ2を備えた第2の工具スピンドルが設けられている。
【0073】
底フライスカッターによりワークの第2の縁部が面取り加工される。この際、回転軸C2を中心としてワークが回転しながら、底フライスカッターは、機械加工ヘッド3の動作軸に基づいて、加工対象の第2の歯縁部に沿って往来させられる。底フライスカッター8は、第2の工具スピンドルの対応する駆動装置によって、回転軸B3を中心として回転させられる。このスピンドルは、好ましくは、空気圧で動作する。
【0074】
この例示的実施形態では、機械加工ヘッドは動作軸Xを有する。この動作軸Xは、直線軸として設計され、ワークホルダ4の回転軸C2及び第1の工具ホルダ1の回転軸B2に直交する。この動作軸Xにより、ワークホルダ4と第1の工具ホルダ1との間の軸距離が調整できる。第2の直線軸Zがさらに設けられる。機械加工ヘッド3は、この直線軸Zを通ってワークホルダ4の回転軸C2と平行に往来可能である。これにより、第1の工具ホルダ1に支持された第1の面取りフライスカッターを、歯の幅方向に沿って、対応する歯縁部まで移動できる。
【0075】
これらの動作軸X及びZの一方又は両方を用いて、底フライスカッター8を歯縁部に沿って案内すると同時に、ワークを回転軸C2を中心として回転させることができる。歯部の各歯について、歯の輪郭に追従するX軸及び/又はZ軸の往来動作が行われる。これにより、底フライスカッターは、ワークの回転運動によって通過していく歯の縁部の輪郭に沿って動作し、ワークに面取り部が形成される。
【0076】
機械加工ヘッドはさらにV軸を有する。このV軸を通って、機械加工ヘッドは、第1の工具ホルダの回転軸B2と平行に往来できる。これにより、一方では、各縁部を加工するために使用される面取り切断機を、第1の工具ホルダと係合させることができる。他方では、この軸により、底フライスカッターを縁部と係合する位置に移動させることもできる。代替的に又は追加的に、Y軸を使用してもよい。Y軸を通って、機械加工ヘッドをX軸及びY軸に垂直な方向に移動させることができる。この場合、Y軸及びZ軸の重なり動作(superimposed movement)を用いて、第1の工具ホルダの回転軸B2がY軸と平行に配置されていないときに、この回転軸B2と平行になるように機械加工ヘッドを移動させる。
【0077】
機械加工ヘッドは、回動軸Aをさらに有する。この回動軸Aは、ワークホルダの回転軸C2及び第1の工具ホルダの回転軸B2に対して垂直に、及び/又は、X軸に対して平行に延在する。これにより、ワークと第1の工具ホルダに支持された面取りフライスカッターとの間の軸方向の角度は調整可能である。
【0078】
V軸(又はY軸)及びA軸は、実際の面取り加工動作を行う前に、各工具と歯縁部との相対位置を調整する役割を果たすだけである。一方、X軸及び/又はZ軸は、底フライスカッターによる第2の歯縁部の面取り加工中に動的に調整されることにより、ワークと底フライスカッターとの間の相対位置を変化させ、それによって加工対象の歯縁部に沿って底フライスカッターを往来させる。第1の面取りフライスカッターにより第1の縁部を面取り加工する間、X軸及びZ軸は、同様に、ワークと工具との相対位置を調整する役割を果たすに過ぎないが、この相対的な動作は、ワーク及び工具の同期回転によってのみ実施される。
【0079】
機械加工ヘッドがワークホルダに対して往来可能な動作軸は、好ましくは、NC軸である。さらに、ワークスピンドルの回転軸及び第1の工具スピンドルの回転軸は、好ましくは、NC軸として構成される。その一方で、第2の工具スピンドルの回転軸は、底フライスカッターの回転運動が他の運動と同期する必要はないので、NC軸として構成されていない。従って、この例示的実施形態では、第2の工具スピンドルは、実質的に、回動軸A2を通って機械加工ヘッドに配置されたアングルグラインダである。
【0080】
本発明は、具体的には、
図1~9に示されるようなワーク7を機械加工するために使用でき、このワークは、(少なくとも)2つの歯部7a及び7bを有する。具体的には
図3に明示されている2つの歯部7a及び7bを有するワークの構成により、2つの歯部の加工対象の合計4つの縁部のうち3つは、容易に到達可能であるので、第1の面取りフライスカッター(具体的には、面取り切断機)によって面取り加工できる。例示的な実施形態では、これらの縁部は、大径の第1の歯部7aの下縁部12及び上縁部13、並びに、小径の第2の歯部7bの上縁部15である。他方では、第1の歯部7aの縁部がここでは邪魔になるので、小径の第2の歯部7bの内側下縁部14は、面取り切断方法によって加工できない。
【0081】
したがって、
図3に示すように、この第2の縁部14は、第2の工具ホルダ2に支持された底フライスカッター8によって本発明に従って面取りされている。機械加工は、既に上述したように行われる。面取りフライスカッターの回転軸B3は、好ましくは、ワークホルダの回転軸C2に垂直な平面に対して角度を有する。この角度は、10°と40°との間、好ましくは10°と15°との間の範囲内にある。そのために、底フライスカッター用の第2の工具ホルダを備えた第2のワークスピンドルは、それに対応するように機械工作ヘッドに配置されるか、又は、配置されてもよい。
【0082】
図4~6に示すように、第1の工具ホルダ1に支持された面取りフライスカッター6によって、縁部12、13、及び15(本発明における第1の縁部)が面取り加工される。面取りフライスカッターを各縁部の形状に具体的に適合させる必要があるので、第1の工具ホルダ1に複数の第1の面取りフライスカッター6を設ける。そうすることで、縁部12、13、及び15をそれぞれ機械加工するために、別々の第1の面取りフライスカッター6を使用できる。第1の面取りフライスカッター6による面取りフライス動作は、ワークホルダの回転軸C2と第1の工具ホルダの回転軸B2とを同期回転させることによって既に上述したように行われる。
【0083】
本発明に係る装置は、面取り加工に用いられるに過ぎず、歯部を形成するためのものではないので、ワークをワークホルダ4に固定した後の各歯部7a及び7bの位置は、通常、まだ不明である。したがって、機械加工ヘッド3には、それぞれの歯部7a及び7bの歯の位置を検出するためのねじ込みセンサ9が設けられている。
図7は、第1の歯部7aの歯の位置の検出を示し、
図8は、第2の歯部7bの歯の検出を示している。検出のためのねじ込みセンサ9は、機械加工ヘッドの動作軸を通って歯部まで前進させられ、好ましくは、歯部は、ワークホルダを回転させることによってセンサを通過するように動かされる。検出は、好ましくは非接触的な方法で、例示的な実施形態では誘導性センサにより、行われる。
【0084】
次いで、ねじ込みセンサによって得られる歯部の歯の位置に関する位置情報は、第1の面取りフライスカッターを第1の縁部に対して位置決めするとともに底フライスカッター8を第2の縁部に対して位置決めするために使用される。
【0085】
図9は、本発明の変形例を示す。この変形例では、第1の工具ホルダの工具マンドレル5にブラシ20がさらに設けられる。底フライス加工は二次的なバリを形成し得るので、この変形例においては、第2の縁部を底フライスカッターで面取り加工した後にブラシ20を使用することによって、二次的なバリを除去する。このために、機械加工ヘッドは、A軸の周りに回動させられ、第1の工具ホルダの回転軸がワークホルダの回転軸に対して実質的に平行に延在する位置になるようにし、ブラシは、第2の歯部7b又は第2の縁部14の内側前方に当接するように配置される。第1の縁部も、基本的にはブラシによってブラッシングできるが、面取り切断加工動作における縁部の品質が高いので、ブラッシングは、通常、必要ではない。
【0086】
図10a及び10bは、本発明に従って面取り加工することができるワーク27の別の実施例を示す。ワークは、3つの歯部27a~27cを有する。ここで、2つの外側歯部27a及び27cの縁部は、第1の面取りフライスカッターによってそれぞれ機械加工できる。なぜなら、外側歯部27a及び27cは、内側歯部27bよりも直径が大きいからである。一方、内側歯部27bの上縁部と下縁部とは、どちらも第1の面取りフライスカッターによって面取り加工できない。なぜなら、対応する外側歯部の縁部が邪魔になるからである。したがって、本発明におけるこれら2つの第2の縁部は、
図10a及び10bに示すように、第2の工具ホルダに支持された底フライスカッター8によって面取り加工される。
【0087】
内側歯部27bの上縁部及び下縁部を機械加工するために、ワークに対する底フライスカッターの機械加工位置がそれぞれ異なること(具体的には、ワークのそれぞれの前面に対する底フライスカッターの方向が逆であること)が必要である。
【0088】
したがって、第2の工具ホルダ2が設けられる第2の工具スピンドルは、回動軸A2を通って機械加工ヘッドに配置されている。しかしながら、例示的な実施形態では、回動軸A2はNC軸ではなく、単なる調整軸である。この調整軸を用いて、歯部27bの上縁部を機械加工するための
図10aに示す第1の機械加工位置から下縁部を機械加工するための
図10bに示す第2の機械加工位置に第2の工具ホルダを回動させることができる。
【0089】
例示的実施形態では、このための空気圧シリンダが位置16で作用し、この位置を中心として、第1の機械加工位置と第2の機械加工位置との間で回動動作が行われる。手動調整又は別の駆動装置の使用も同様に考えられる。
【0090】
2つの機械加工位置はそれぞれストッパによって規定される。第2の工具ホルダは、ストッパにおいて各位置に静止する。好ましくは、2つのストッパは、ワークホルダの回転軸に垂直な平面に対する第2の工具ホルダの回動軸A2の角度αを所定の範囲内で調整できるように調整可能である。好ましくは、角度αは、少なくとも10°と55°との間の範囲内で調整可能である。
【0091】
本発明に係る底フライスカッターは、シャフトの歯部を面取りするためにも使用できる。ここでは、歯の基部が実質的にシャフトの半径に相当し、したがって、この領域には歯縁部は全く存在しないか、又は、ごくわずかしか存在しない。NC制御の下で底フライスカッターは、ワークの回転に伴って歯縁部に沿って案内されるので、例えば歯の基部を省略することによって、歯先及び歯フランクのみをここではバリ取りすることができる。
【0092】
さらに、例えば、歯先のフランクの領域では底フライスカッターの外周を使用することが考えられるが、歯の基部の領域では、底フライスカッターの丸みを帯びた頭部を用いて、この場合には、相対的に狭い面取りが得られるようにする。
【0093】
本発明に係る面取り加工装置は、第1の変形例で独立した解決手段として設計し、それに応じて自動制御装置に接続することで、装置に対するワークの供給および排出を行うようにしてもよい。
【0094】
しかしながら、本発明に係る装置は、好ましくは、歯加工ステーションと並行するサイクルタイムで、加工センタにおいて使用される。歯加工ステーションは、例えば、フライス加工ステーション、インパクト加工ステーション、またはホブピーリング加工ステーションであり得る。邪魔な輪郭に関しては、インパクト加工ステーション及び/又はホブピーリング加工ステーションを使用することが好ましい。
【0095】
本発明に係る装置を加工センタにこのように組み込むことは、
図11に示されている。加工センタは、ワークを1つのステーションから次のステーションへと移動させることができる把持具30を備えたリングローダ31を含む。右側には、ワークホルダ4と、第1の工具ホルダ1及び第2の工具ホルダ2を備えた機械加工ヘッド3と、を備えた本発明に係る装置が示されている。さらに、工具ホルダ4用のカウンタベアリング4’も見られる。
【0096】
歯加工ステーションのワークホルダ32は、90°ずらして示されている。一方、歯加工機の機械加工ヘッドは図示されていない。
【0097】
歯加工ステーションでは、ワークの1つの歯部又は複数の歯部のうち1つが形成されるが、本発明による装置では、製造された別のワークの歯部のバリ取りを並行するサイクルタイムで行うことができる。
【0098】
本発明に係る装置及び加工センタは、記載された全てのプロセスが自動的に実行されるようにする制御器を含む。
【0099】
例示的実施形態で使用される面取り切断機の代わりに、ホブピーリング工具を第1の面取りフライスカッターとして使用して、歯部の第1の縁部を機械加工することもできる。上述した面取り方法は、面取り切断機の使用について上述したように、ホブピーリング工具を用いて同様に実施することもできる。
【0100】
本発明に係る装置及び本発明に係る方法は、外側歯部付きワークを機械加工するために提供される例示的な実施形態に基づいて記載されている。しかしながら、本発明は、内側歯部を有するワークに対しても同様に使用することができる。この場合、機械加工ヘッドは、第1の面取りフライスカッター及び好ましくは底フライスカッターも、歯部の内部へと移動することができるように設計される必要がある。