(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】手持ち型外科用器具、手持ち型外科用器具用の絶縁挿入部、及び手持ち型外科用器具の操作方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20230210BHJP
【FI】
A61B18/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021118066
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】10 2020 118 965.6
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ブロックマン
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0193792(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351826(US,A1)
【文献】米国特許第06358200(US,B1)
【文献】特開2009-183581(JP,A)
【文献】特開2007-021200(JP,A)
【文献】特開2005-118101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 - 17/94
A61B 18/12 - 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち型外科用器具用
の管状の絶縁挿入部(23)であり、前
記絶縁挿入部(23)の近位端部領域(24)が前記手持ち型器具の管状シャフト(13)の遠位端(25)に取外し可能に連結されているものであって、前記絶縁挿入部(23)の前記近位端部領域(24)が少なくとも2つの弾性のある固定手段(26)を有し、これらがそれぞれ1つの、前記絶縁挿入部(23)の内部空間に向かう係合要素(29)を有
し、
前記固定手段(26)がスナップフックとして形成され、
前記スナップフックが、前記絶縁挿入部(23)の前記近位端部領域(24)の壁(27)から形成されている舌状のばね要素(28)を有し、前記係合要素(29)が前記ばね要素(28)の自由端に配置されていることを特徴とする、手持ち型外科用器具用の絶縁挿入部(23)。
【請求項2】
2つ又は4つ又は6つ又はより多くの固定手段(26)が前記近位端部領域(24)の周囲に対向配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の手持ち型外科用器具用の絶縁挿入部(23)。
【請求項3】
3つの固定手段(26)が互いに120°の角度で、又はより多くの固定手段(26)が互いに等角度で前記近位端部領域(24)の周囲に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の手持ち型外科用器具用の絶縁挿入部(23)。
【請求項4】
前記絶縁挿入部(23)の壁(27)は、前記近位端部領域(24)の壁(27)と、前記近位端部領域(24)よりも遠位領域側で前記近位端部領域(24)と隣接する遠位領域の壁(27)とで形成され、
前記ばね要素(28)
における前記係合要素(29)と前記絶縁挿入部(23)の
前記遠位領域の前記壁(27)
との間の壁は、前記絶縁挿入部(23)の前記遠位領域の前記壁(27)と比べて厚さが低減されていることを特徴とする、請求項
1から3のいずれか1項に記載の手持ち型外科用器具用の絶縁挿入部(23)。
【請求項5】
前記絶縁挿入部(23)の壁(27)の前記近位端部領域(24)
における、前記固定手段(26)の間の領域が、前記絶縁挿入部(23)
の前記遠位領域の前記壁(27)と比べて厚さが低減されていること
、前記絶縁挿入部(23)の前記壁(27)の前記近位端部領域(24)
における前記固定手段(26)の間の領域が
、前記ばね要素(28)と厚さが同じであることを特徴とする、請求項
4に記載の手持ち型外科用器具用の絶縁挿入部(23)。
【請求項6】
前記固定手段(26)は偶数個であり、前記近位端部領域(24)の周囲において、前記固定手段(26)が
相互にそれぞれ等しい角距離で配置されていることを特徴とする、請求項1
または請求項
2に記載の手持ち型外科用器具用の絶縁挿入部(23)。
【請求項7】
前記係合要素(29)
は楔形であって、前記絶縁挿入部(23)の
前記遠位領域の前記壁(27)の厚さと一致する高さを有することを特徴とする、請求項
4に記載の手持ち型外科用器具用の絶縁挿入部(23)。
【請求項8】
内側シャフト(13)つまりシャフト管と、外側シャフト(12)つまり外套管と、請求項1に記載の絶縁挿入部(23)とを備えた手持ち型外科用器
具であり、前記絶縁挿入部(23)が前記内側シャフト(13)と取外し可能に連結可能であり、前記外側シャフト(12)が前記内側シャフト(13)及び前記絶縁挿入部(23)上に移動可能である、手持ち型外科用器具。
【請求項9】
前記絶縁挿入部(23)の近位端部領域(24)の
内周の寸法が、前記領域が前記内側シャフト(13)の遠位端(25)上に摺動可能であるように定められていることを特徴とする、請求項
8に記載の手持ち型外科用器具。
【請求項10】
前記内側シャフト(13)の壁(27)に、前記絶縁挿入部(23)を前記内側シャフト(13)と取外し可能に連結するために前記絶縁挿入部(23)の固定手段(26)の係合要素(29)が嵌合する開口部(33)が設けられていることを特徴とする、請求項
8又は請求項
9に記載の手持ち型外科用器具。
【請求項11】
前記外側シャフト(12)の内側と前記絶縁挿入部(23)の外側との間の間隔が、前記絶縁挿入部(23)の前記固定手段(26)の係合要素(29)の高さより小さいことを特徴とする、請求項
8から請求項
10のいずれか1項に記載の手持ち型外科用器具。
【請求項12】
前記内側シャフト(13)及び/又は前記絶縁挿入部(23)を通して、例えば光学系(15)、電極器具(14)又はその他の用具といった更なる構成要素が案内され得る、つまり導かれ得ることを特徴とする、請求項
8から請求項
10のいずれか1項に記載の手持ち型外科用器具。
【請求項13】
内側シャフト(13)つまりシャフト管と、外側シャフト(12)つまり外套管と、特に請求項1に記載の絶縁挿入部(23)とを備えた、請求項
8に記載の手持ち型外科用器具
の使用準備および使用後の操作方法であって、前記手持ち型器具の使用準備のために、まず前記絶縁挿入部(23)の近位端(24)が前記内側シャフト(13)の遠位端(25)に連結され、その後、前記内側シャフト(13)が前記絶縁挿入部(23)と共に前記外側シャフト(12)の中に導かれ、前記手持ち型器具の使用後に、前記内側シャフト(13)が前記絶縁挿入部(23)と共に前記外側シャフト(12)から外に導かれ、その後、前記絶縁挿入部(23)が前記内側シャフト(13)との連結から解除されることを特徴とする、手持ち型外科用器具の操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前提部に記載の手持ち型外科用器具用の絶縁挿入部に関する。更に、本発明は請求項10に記載の手持ち型外科用器具、及び請求項15に記載の手持ち型外科用器具の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該範疇に属する手持ち型外科用器具、特にレゼクトスコープは、とりわけ泌尿器科において電気外科的作業に使用される。該器具は通常、組織、例えば下部尿路内の組織の切除及び蒸散に使用される。この目的で、該手持ち型器具、特にレゼクトスコープには、長手方向に移動可能で、遠位作業端部が該手持ち型器具の被治療体内への挿入後に、該手持ち型器具のシャフト管の遠位端から押し出され得る、電気外科用通過器具が含まれ得る。該電気外科用通過器具つまり電極器具は遠位端に電気外科用電極を備える。該電極は例えばループ又はボタン又はそれに類する形状を有し得る。
【0003】
上述の使用のために該電極には高周波電流が供給される。電極が該手持ち型器具のシャフト管、特に外側シャフト管つまり外套管と電気的に接触することを回避する必要がある。そのような電気的接触が起これば、短絡によって器具に不具合が発生する、あるいは被治療体内において不測の損傷が生じる可能性がある。そのような短絡を回避するために、通常、該手持ち型器具つまりレゼクトスコープの遠位端部領域には、電気絶縁材料で製造された部分が含まれる。通常、該部分は絶縁チップ又は絶縁挿入部とも呼ばれる。該絶縁挿入部は内側シャフトつまり電極支持体を導くシャフト管、又は外側シャフトつまり外套管のいずれかに固定され得る。該手持ち型器具つまりレゼクトスコープは複数回使用が予定されていて、それに応じて定期的な滅菌つまりオートクレープ滅菌を行わなければならないことから、絶縁挿入部は耐久性と再利用可能性に関する高い要求を満たす必要がある。したがって、通常、材料の選択は例えば窒化ケイ素といった比較的高価な高機能セラミックスに限定されている。該セラミックスの代替として、電気絶縁プラスチックが使用される。該プラスチックは、電極と接触した場合に直ちに溶解しないように、特に耐熱性を有する。
【0004】
問題となるのは、そのような絶縁挿入部の、該手持ち型器具のシャフトとの取外し可能な連結である。絶縁挿入部とシャフトの間の結合が取外し可能である場合、基本的に治療中に意図せず結合が解除されるという危険が存在する。これはいかなる状況においても回避する必要があり、それは、それによって器具自体が損傷し得るだけでなく、被治療者も負傷し得ることによる。絶縁挿入部の例えば内側シャフトにおける周知の固定機構においては、固定力と固定解除力の間に常に妥協点が確立されなければならない。一方では、絶縁挿入部の固定は、意図しない固定解除を回避するために、十分強固でなければならない。他方では、操作者がまだ妥当な労力で絶縁挿入部をシャフト端から取り外すことができなければならない。固定機構を強固に形成しすぎれば、確かに意図しない固定解除に対する安全性は高まるが、当然操作者には上述の目的での絶縁挿入部の取外しが困難になる。当然絶縁挿入部の内側シャフト上での取付けが緩すぎれば、既述したように意図しない固定解除の危険が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明には、手持ち型外科用器具、絶縁挿入部、及び安全な、かつ容易に取外し可能な方法で該絶縁挿入部が該手持ち型器具のシャフトと結合され得る、手持ち型外科用器具の操作方法を提供するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題の1つの解決策は請求項1の特徴によって説明される。それにより、手持ち型外科用器具用、特にレゼクトスコープ用の絶縁挿入部が管状に形成されていて、その近位端部領域が該手持ち型器具の管状シャフトの遠位端に取外し可能に連結されていることが予定されている。絶縁挿入部の近位端部領域は少なくとも2つの弾性(弾力性)のある固定手段を有し、これらはそれぞれ1つの、絶縁挿入部の内部空間に向かう係合要素を有する。この少なくとも2つの固定手段によって、絶縁挿入部が該手持ち型器具のシャフトと十分堅固に連結可能であることが保証され得る。同様に、該固定手段は、操作者によって必要に応じて補助具を用いて、容易かつ迅速な方法で連結が解除され得る。該弾性のある固定手段によって、絶縁挿入部の固定も、該手持ち型外科用器具からの絶縁挿入部の取外しも可能である。
【0007】
好ましくは、本発明によって、2つ、4つ、6つ又はより多くの固定手段が近位端部領域の周囲に対向配置されていることが予定される。代替として、3つの固定手段が互いに120°の角度で、又はより多くの固定手段が互いに等角度で絶縁挿入部の近位端部領域の周囲に配置されていることが更に考えられ得る。特に、内側シャフト上における絶縁挿入部の形態つまり位置決めの形態が同心円状つまり軸方向でない場合に、この、絶縁挿入部の周囲における固定手段の相対的位置決めによって、確実な機械的結合が確立され得る。シャフトに対して絶縁挿入部が僅かに傾斜した場合でも、該固定手段の位置決めによって望まない固定解除が回避され得る。したがって、上記の固定手段の配置によって、高度な安全性と同時に容易な操作が保証され得る。
【0008】
本発明の更なる好ましい実施例によって、固定手段がスナップフックとして絶縁挿入部の周囲に形成されていることが予定され得る。該スナップフックには、自由端に係合要素が配置された舌状ばね要素が含まれ得る。該舌状ばね要素は該挿入部の近位端部領域の壁から突出して形成されている。その舌状つまり縦長の形態によって、該ばね要素はシャフトに対して、つまり該挿入部に対して径方向に自由なばね経路を有する。そのようにして、該挿入部がシャフトと結合するために、該ばね要素にはまず外側方向に予め張力を与えることができ、最終的には該係合要素がシャフトの相補的開口部に固定された状態になる。ばね要素のばね張力が作用することによって、外力による影響無しでは、係合している固定位置から外に該要素を移動することはできない。絶縁挿入部をシャフトとの連結から解除するには、ばね要素の弾性的復元力とは逆方向の力が用いられなければならない。この力は材料の寸法決定により比較的僅かであることから、操作者によって問題なく適用され得る。
【0009】
主としてばね要素は絶縁挿入部の壁と比べて厚さが低減されている。同様に、絶縁挿入部の壁の近位端部領域つまり固定手段の領域つまり固定手段の間の領域は、絶縁挿入部の壁と比べて厚さが低減されていること、主として、絶縁挿入部の壁の近位端部領域は、固定手段、特にばね要素と厚さが同じであることが考えられ得る。それによって、絶縁挿入部の内壁に環状の段部が生じる。該段部によって絶縁挿入部は、固定手段が配置された壁の厚さが低減されている領域と、壁の厚さがより厚い領域に分割される。該環状段部が内側シャフトの管状開口部と当接するように、絶縁挿入部が内側シャフト上に摺動されることが考えられ得る。それによって、絶縁挿入部とシャフトの最適な相対的位置合わせが保証される。ずれつまり相対的傾斜又はぐらつきが、これによって回避され得る。好ましくは、絶縁挿入部の遠位領域の厚さは、内側シャフトの内壁が、絶縁挿入部の内壁へと無段で、すなわち一平面上で移行されるように計算されている。
【0010】
本発明の更なる好ましい実施例により、近位端部領域の周囲において、固定手段が一対で並行配置され、また該対自体は対向配置されていることが予定され得る。この、固定手段の一対での配置によって、取外し可能な結合の安全性が更に向上され得る。
【0011】
更なる実施例によって、特に楔形である係合要素が絶縁挿入部の壁の厚さと一致する高さを有することが、特に予定される。更に、係合要素の高さは、内側シャフトと取外し可能に結合された時に、内側シャフトの内部空間の中に突出しないように計算されている。係合要素の側面つまり横断面は尖った、又は面取りした、つまり角を丸くした楔形であり得る。角を丸くした、つまり面取りした楔形は、洗浄目的及びそれに類する目的で絶縁挿入部を内側シャフトから手で引き抜くのに有利であり得る。同様に、横断面が三角形又は横断面が鋸歯状の係合要素は、望まない連結解除に対してより高い安全性を提供する。ばね要素の連結と固定のための力は係合要素の形状と寸法決定によっても異なる。係合要素の角度調節によって複数のばね要素の連結と固定のための力は互いに独立して調節され得る。
【0012】
好ましくは、本明細書に記載の絶縁挿入部はプラスチック製である。該プラスチックは電気絶縁性でも耐熱性でもある。同様に、絶縁挿入部が被覆金属で製造されていることが考えられ得る。金属製絶縁挿入部の被覆によって十分大きい電気絶縁性が提供される。絶縁挿入部の金属製の実施態様は特に該挿入部の高耐用性に有利であり得る。
【0013】
上述の課題を解決するための手持ち型外科用器具は、請求項10の特徴を有する。該手持ち型外科用器具の対象となるのは特にレゼクトスコープ又はそれに類する器具である。請求された手持ち型外科用器具は内側シャフトつまりシャフト管、及び外側シャフトつまり外套管を有する。外套管は内側シャフトの周囲に配置されている。内側シャフトの遠位端には、本発明により、請求項1に記載の絶縁挿入部が取外し可能に組み込まれている。この、内側シャフト及び外側シャフトの遠位端における絶縁挿入部の配置によって、電気外科用具、つまり内側シャフトを通って絶縁挿入部から外へ導かれる電極が、金属製のシャフト管と電気的に接触することが回避され得る。絶縁挿入部が電気絶縁材料で製造されていることから、電気外科用具が絶縁挿入部と接触しても危険はない。
【0014】
主として、絶縁挿入部の近位端部領域の外周の寸法は、該領域が内側シャフトの遠位端上に摺動可能であるように定められていることが予定されている。絶縁挿入部の壁の厚さが異なることによって、該挿入部の内壁に環状に包囲する段部が設けられ、内側シャフト上への摺動時に該段部が該シャフトの環状端部と当接することを予定しておくことができる。それによって、該シャフトにおける絶縁挿入部の最適な位置合わせが達成され得る。追加として、内側シャフトの壁には、取外し可能に連結するために絶縁挿入部の固定手段の係合要素が嵌合する開口部が設けられている。該開口部は該シャフトの壁において、円周上に配置、又は対向配置しておくことができる。該開口部は円形、長方形つまり多面体、又は長円形の形状を有し得る。該シャフトの壁における該開口部は、これが係合要素の形状すなわち横断面と一致するように形成されている。該壁の該開口部は、係合要素がスナップ嵌合できる、壁内の穴、あるいは壁内の単なる樋状の凹部であり得る。
【0015】
更に、外側シャフトの内側と絶縁挿入部の外側との間の間隔が、絶縁挿入部の固定手段の係合要素の高さより小さいことが考えられ得る。絶縁挿入部と外側シャフトとの間における、少なくとも平均での環状間隙の幅が、係合要素の高さより小さいことによって、内側シャフトに連結された絶縁挿入部が外側シャフトによって固定される。上記の、絶縁挿入部の外径又は外側シャフトの直径の寸法決定により、過失によって固定手段が内側シャフトの開口部から外れることはあり得ない。固定手段つまり係合要素が力の作用によって動かされるような場合でも、固定手段つまりばね要素は外側シャフト管の内壁に、厳密には係合要素が内側シャフトの開口部から外れることなく、押圧されることになる。したがって、内側シャフトからの絶縁挿入部の取外しは、内側シャフトが絶縁挿入部と共に外側シャフトから引き出されている場合にのみ可能である。しかし、シャフトは治療中常に互いに組み合わさって位置していることから、治療中つまり手術中に意図せず絶縁挿入部が内側シャフトから外れることはない。
【0016】
更に、内側シャフト及び/又は絶縁挿入部を通して、例えば光学系、電極器具又はその他の用具といった更なる構成要素が案内され得る、つまり導かれ得ることが考えられ得る。特に電極支持体が相応の案内路つまり収容部によって絶縁挿入部の壁の中に導かれることも考えられ得る。
【0017】
上述の課題を解決するための手持ち型外科用器具の操作方法は、請求項15の措置を有する。それにより、請求項10に記載の手持ち型器具において請求項1に記載の絶縁挿入部を結合するために、つまり該手持ち型器具の使用準備のために、まず絶縁挿入部の近位端が内側シャフトの遠位端に連結され、その後、内側シャフトが絶縁挿入部と共に外側シャフトの中に導かれ、該手持ち型器具の使用後に、内側シャフトが絶縁挿入部と共に外側シャフトから外に引き出され、その後に初めて、絶縁挿入部が内側シャフトとの連結から解除されることが予定されている。単にこの、該手持ち型器具の取付けつまり組立ての順序によって、絶縁挿入部の、内側シャフトからの望まない連結解除が回避され得る。外側シャフトが、組み立てられた状態において固定手段が外れないように絶縁挿入部を固定する。外側シャフトが内側シャフトから引き離され次第、絶縁挿入部は周知の容易な方法で内側シャフトとの連結から解除され得る。
【0018】
本発明の好ましい実施例が図面を基に以下により詳細に解説される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】手持ち型外科用器具、特にレゼクトスコープの概略図である。
【
図2】手持ち型外科用器具の遠位端部領域の概略図である。
【
図4】内側シャフトを含む絶縁挿入部の斜視図である。
【
図5】内側シャフトを含む絶縁挿入部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、レゼクトスコープ10の概略側面断面図が示される。該レゼクトスコープ10は単に請求された手持ち型外科用器具の可能な実施例としてのみ示されることを、明文をもって指摘しなければならない。同様に、該手持ち型外科用器具の対象が本明細書に記載のレゼクトスコープ10以外の器具であることが考えられ得る。
【0021】
レゼクトスコープ10は、図示された外側シャフト12つまり外套管を含むレゼクトスコープシャフト11を有する。外側シャフト12の内部には管状の内側シャフト13が延在する。内側シャフト13の内部に電極器具14が示されていて、光学系15は示唆的に示されている。更に、例えば独立した洗浄管及びそれに類するものといった、図面に示されていない更なる要素がレゼクトスコープ10内に延在し得る。
【0022】
電極器具14は、遠位端に電気外科用具つまり電極16を有する。図面に示された電極はループとして示されているが、ボタン又はそれに類するものとしても形成しておくことができる。
図1において、電極器具14が部分円形状の横断面を有する固定要素17によって、移動すなわちレゼクトスコープシャフト11の長手方向から逸れる移動が防止されていることが認識できる。電極器具14は内側シャフト13の中に長手方向に移動可能に保持されている。固定要素17は内側シャフト13の内壁又は光学系15の外壁に対して形状補完的に形成されていて、部分円筒形状を有する。
【0023】
電極器具14はハンドグリップ18の操作によって遠位及び近位方向に軸上を強制的に移動され得る。該器具は内側シャフト13と外側シャフト12の遠位端を越えて押し出され得る。そのようにして、術者がレゼクトスコープ先端部によって除去された組織を更に処理することも可能になる。この目的で、更に内側シャフト13及び/又は電極器具14をその長手軸を中心に回転可能に保持しておくことができる。組織を処理するために電極16には高周波電流が供給される。
【0024】
図1に示されたレゼクトスコープ10には、スライド19がレゼクトスコープシャフト11の近位に配置されたグリップ部分20と21の相対移動により、ばねブリッジ22によって適用されたばね力に対抗して遠位の第1グリップ部分21に向かって遠位方向に移動される、受動的移動装置が備わっている。スライド19がグリップ部分21に向かって遠位方向に移動されると、電極器具14は図示されない方法で遠位方向に移動される。ハンドグリップ部分20、21が解放されると、ばねブリッジ22によって生み出されたばね力によってスライド19はその出発位置に強制的に戻され、電極器具14は近位方向に引かれる。スライド19の逆方向への移動時に、術者の手の力無しで、つまり受動的に、電極16を用いた電気外科的処置が行われ得る。
【0025】
周知の手持ち型外科用器具の場合、絶縁挿入部はシャフトに固定的に結合されている。しかし、これは再利用つまり滅菌つまり洗浄に不利であることから、絶縁挿入部がシャフトの遠位端に取外し可能に結合されている実施形態も存在する。しかし、周知の取外し可能な絶縁挿入部の場合は、これが手術中に外れる危険が存在する。他方で、シャフトにおける該挿入部の結合がより強固に形成されていれば、操作者は該挿入部の取外しに過大な労力を要することが明らかになる。
【0026】
本明細書に記載の本発明による絶縁挿入部23は、その近位端24が内側シャフト13の遠位端25に取外し可能に連結される(
図2、図面では当該器具の遠位領域のみ示される)。この目的で、絶縁挿入部23はその近位端25に固定手段26を有することが予定されている(
図3、
図4)。該固定手段はスナップフックとして形成されていて、絶縁挿入部23の壁27から形成されている。固定手段26は主として一対で、絶縁挿入部23の対向する位置に存在する(
図7)。更に、複数の固定手段26が互いに等しい角距離で絶縁挿入部23の壁27に組み込まれていることが考えられ得る(
図6)。
図7に示された絶縁挿入部23の実施例においては、それぞれ2つの固定手段26が一対で該挿入部23の壁27の対向する側に配置されている。
図3~
図6による絶縁挿入部23の実施例においては、複数の固定手段26が壁27の対向する位置に存在する。固定手段26は相互にそれぞれ等しい角距離を有する。それによって、特に堅固な結合かつ正確な位置での結合が確立され得る。
【0027】
図7に示された絶縁挿入部23に対する実施例において、壁27には、電極器具14用の収容部35が配置された拡張部が設けられている。図面に示された収容部35は孔状つまり穿孔状の通路として形成されていて、当該器具10の構成要素を組み合わせる際に、該通路を通って電極器具14が導かれ得る。
【0028】
スナップフックとして形成された固定手段26は、基本的に舌状のばね要素28と、ばね要素28の自由端に配置された係合要素29から成る。該係合要素29は
図2の横断面に示されるように、楔形に形成しておくことができる。しかし、係合要素29は角を丸くして形成されていることも考えられ得る。
【0029】
固定手段26つまりばね要素28の間にある絶縁挿入部23の近位端24に配置されている、壁27の領域は、一方では固定手段26が自由に跳ね返ることができるように固定手段との境界になっていて、他方では該領域はばね要素28と同じ厚さを有する。それによって、絶縁挿入部23の内側30に段部31が生じる。該段部31は絶縁挿入部23の内側30全体を巡る環状に延在する。絶縁挿入部23を内側シャフト13と結合する際は、段部31が内側シャフト13の遠位端25に突き当たるまで、絶縁挿入部23がシャフト13上に摺動される(
図4及び
図5)。
【0030】
内側シャフト13の壁32は、遠位端25に開口部33を有する(
図4及び
図5)。該開口部33は、シャフト13と絶縁挿入部23を押し合わせる際に、絶縁挿入部23の複数の固定手段26つまり複数の係合要素29が共にスナップ係合されるように寸法と位置が定められている。上記の、絶縁挿入部23と内側シャフト13との滑合わせ時に、ばね要素28がまず係合要素29によって外側方向に移動、拡張され、最終的に係合要素29が開口部33にスナップ係合する。段部31との共同作用で、絶縁挿入部23は内側シャフト13の遠位端25において最適な位置に存在する。そこで、分解するには、操作者は係合要素29を開口部33から引き離す、すなわちばね要素28を拡張し、絶縁挿入部23を内側シャフト13から引き抜くだけでよい。
【0031】
しかし特に手術中に、絶縁挿入部23の、内側シャフト13からの望まない連結解除が起こらないように、組合せ後、外側シャフト12が内側シャフト13上に、また部分的に絶縁挿入部23上にも摺動される(
図2)。本発明により、外側シャフト12の内径又は絶縁挿入部23の外径は、間隙34つまり外側シャフト12の内壁と絶縁挿入部23の壁27との間の環状空間が、係合要素29の高さより小さくなるように形成されている。この狭い間隙34つまりこの僅かな遊隙によって係合要素29は開口部33内に固定される。絶縁挿入部23に機械的力が加えられる場合でも、固定手段26つまりばね要素28は、絶縁挿入部23が内側シャフト13から外れるように拡張されることはない。この外側シャフト12の包囲効果が絶縁挿入部23の周囲に作用することによって、該挿入部23は内側シャフト13に対する相対的位置合わせにおいて固定が維持される。外側シャフト12が再び内側シャフト13から引き抜かれるまでは、操作者は絶縁挿入部23を内側シャフト13から取り外すことはできない。
【0032】
好ましい実施例によって例えば、絶縁挿入部23が複数の固定要素26を有し、内側シャフト13が相応に複数の開口部33を有することが予定され得る。本明細書に記載の絶縁挿入部23の形態の他に、例えば直線遠位端といった更なる形態もまた考えられ得る。
【符号の説明】
【0033】
10 レゼクトスコープ
11 レゼクトスコープシャフト
12 外側シャフト
13 内側シャフト
14 電極器具
15 光学系
16 電極
17 固定要素
18 ハンドグリップ
19 スライド
20 グリップ部分
21 グリップ部分
22 ばねブリッジ
23 絶縁挿入部
24 近位端
25 遠位端
26 固定手段
27 壁
28 ばね要素
29 係合要素
30 内側
31 段部
32 壁
33 開口部
34 間隙
35 収容部