(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】換気システム、空気調和装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/08 20060101AFI20230210BHJP
F24F 1/0038 20190101ALI20230210BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20230210BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20230210BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20230210BHJP
F24F 110/22 20180101ALN20230210BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20230210BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20230210BHJP
【FI】
F24F7/08 101J
F24F1/0038 441
F24F7/007 B
F24F11/70
F24F7/08 101L
F24F110:12
F24F110:22
F24F110:10
F24F110:20
(21)【出願番号】P 2021158045
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】厳 辰旭
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宏治
(72)【発明者】
【氏名】松村 賢治
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026256(WO,A1)
【文献】特開2021-055922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/08
F24F 1/0038
F24F 7/007
F24F 11/70
F24F 110/12
F24F 110/22
F24F 110/10
F24F 110/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給排気を制御する換気システムであって、
室外の空気を室内に供給する給気手段を備える給気風路と、
室内の空気を室外へ排出する排気手段を備える排気風路と、
前記給気風路および前記排気風路の途中に配置され、前記室内の空気と前記室外の空気との間で少なくとも熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器を迂回して前記室外の空気を前記室内へ供給し、または前記室内の空気を前記室外へ排出するバイパス風路と、
前記バイパス風路の入口と前記熱交換器への入口のいずれか一方を開放し、他方を閉鎖する開閉手段と、
前記給気風路内に導入された空気の状態量を測定する
第1の測定手段と、
前記排気風路内に前記室内から導入された空気の状態量を測定する第2の測定手段と、
前記第1の測定手段により測定された前記状態量と、前記第2の測定手段により測定された前記状態量とを用いて、前記熱交換器を通過した後の空気の状態量を演算し、前記給気手段が前記室内へ供給する空気の風量に応じて、
演算した前記熱交換器を通過した後の空気の状態量を補正し、補正した
前記熱交換器を通過した後の空気の状態量に基づき、前記開閉手段により給気または排気の経路を切り替える制御手段と
を含む、換気システム。
【請求項2】
段階的に風量を切り換える前記給気手段の各段階の風量に対応する補正量を記憶する補正量記憶手段を含み、
前記制御手段は、前記給気手段の風量の前記段階に対応する補正量を前記補正量記憶手段から取得し、取得した前記補正量により前記
熱交換器を通過した後の空気の状態量を補正する、請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
連続的に風量を切り換える前記給気手段の風量に対応するパラメータを検出する検出手段を含み、
前記制御手段は、前記検出手段により検出された前記パラメータに基づいて補正量を算出し、算出した前記補正量により前記
熱交換器を通過した後の空気の状態量を補正する、請求項1に記載の換気システム。
【請求項4】
前記室内の状態量の目標値を記憶する目標値記憶手段を含み、
前記制御手段は、補正した前記
熱交換器を通過した後の空気の状態量と、前記目標値記憶手段に記憶された前記目標値とに基づき、前記開閉手段により給気または排気の経路を切り替える、請求項1~3のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項5】
前記
第1の測定手段は、前記給気風路内の前記熱交換器と前記給気手段との間に設置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項6】
前記第2の測定手段は、前記室内に設置される機器を操作する機器操作装置、もしくは前記換気システムを操作する換気システム操作装置、または前記室内に設置され、該室内の空気質を測定する空気質測定装置のいずれかに実装される、請求項
1~5のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項7】
前記給気風路内には、前記給気手段と、加湿手段もしくは加熱手段またはその両方とが設置され、前記給気手段が前記室内へ供給する空気の風量に加え、前記加湿手段による加湿量、もしくは前記加熱手段による加熱量、またはその両方に応じて、前記
熱交換器を通過した後の空気の状態量を補正する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の換気システム。
【請求項8】
室内機と、室外機と、前記室内機と接続される換気システムとを含む空気調和装置であって、
前記換気システムが、
室外の空気を室内に供給する給気手段を備える給気風路と、
室内の空気を室外へ排出する排気手段を備える排気風路と、
前記給気風路および前記排気風路の途中に配置され、前記室内の空気と前記室外の空気との間で少なくとも熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器を迂回して前記室外の空気を前記室内へ供給し、または前記室内の空気を前記室外へ排出するバイパス風路と、
前記バイパス風路の入口と前記熱交換器への入口のいずれか一方を開放し、他方を閉鎖する開閉手段と、
前記給気風路内に導入された空気の状態量を測定する
第1の測定手段と、
前記排気風路内に前記室内から導入された空気の状態量を測定する第2の測定手段と、
前記第1の測定手段により測定された前記状態量と、前記第2の測定手段により測定された前記状態量とを用いて、前記熱交換器を通過した後の空気の状態量を演算し、前記給気手段が前記室内へ供給する空気の風量に応じて、
演算した前記熱交換器を通過した後の空気の状態量を補正し、補正した
前記熱交換器を通過した後の空気の状態量に基づき、開閉手段により給気または排気の経路を切り替える制御手段と
を含む、空気調和装置。
【請求項9】
換気システムにより給排気を制御する方法であって、
前記換気システムは、
室外の空気を室内に供給する給気手段を備える給気風路と、
室内の空気を室外へ排出する排気手段を備える排気風路と、
前記給気風路および前記排気風路の途中に配置され、前記室内の空気と前記室外の空気との間で少なくとも熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器を迂回して前記室外の空気を前記室内へ供給し、または前記室内の空気を前記室外へ排出するバイパス風路と、
前記バイパス風路の入口と前記熱交換器への入口のいずれか一方を開放し、他方を閉鎖する開閉手段と、
第1の測定手段と、
第2の測定手段と、
制御手段と
を含み、
前記
第1の測定手段が、前記給気手段により前記給気風路内に導入された空気の状態量を測定するステップと、
前記第2の測定手段が、前記排気風路内に前記室内から導入された空気の状態量を測定するステップと、
前記制御手段が、
前記第1の測定手段により測定された前記状態量と、前記第2の測定手段により測定された前記状態量とを用いて、前記熱交換器を通過した後の空気の状態量を演算し、前記給気手段が前記室内へ供給する空気の風量に応じて、
演算した前記熱交換器を通過した後の空気の状態量を補正し、補正した
前記熱交換器を通過した後の空気の状態量に基づき、開閉手段により給気または排気の経路を切り替えるステップと
を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給排気を制御する換気システム、空気調和装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、ビル、病院等の建物は、省エネルギー化や快適性等のために気密性が向上している。建物の気密性が向上すると、室内で発生する水蒸気や二酸化炭素、各種のにおい成分等が汚染物質として蓄積し、室内の空気質(IAQ:Indoor Air Quality)が悪化しやすくなる。このため、これらの汚染物質を室外へ排出し、室外の新鮮な空気を取り入れ、空気質を良好に保つべく、換気システムの必要性が高まっている。
【0003】
換気システムには、近年の省エネルギー化に伴い、給排気において熱と湿度を移動させることが可能な全熱交換器を備えたシステムがある。このシステムは、優位性が世の中に知れ渡り、普及が進んでいる。
【0004】
全熱交換器は、内部に温湿度センサが設置され、外気(OA:Outdoor Air)と室内から排気される空気(RA:Return Air(還気))の温湿度情報を比較し、全熱交換器を通して給排気を行う全熱交換モードと、全熱交換器を迂回して給排気を行う普通換気モードとを切り替える制御が一般的である。
【0005】
従来において、室内と室外の比エンタルピーにより換気モードを切り替える技術や、室内目標比エンタルピーを予め記憶している記憶部を備え、室内と室外の比エンタルピーに加え、記憶部に記憶された室内目標比エンタルピーも使用して換気モードを切り替える技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-071184号公報
【文献】特開2015-206570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来の技術では、給気ファンが備えるモータの発熱等による給気温湿度への影響が考慮されていないため、給気ファンの動作により変化した全熱交換後の空気状態変化を正確に推定することができない。これでは、給排気制御の精度が低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、給排気を制御する換気システムであって、
室外の空気を室内に供給する給気手段を備える給気風路と、
室内の空気を室外へ排出する排気手段を備える排気風路と、
給気風路および排気風路の途中に配置され、室内の空気と室外の空気との間で少なくとも熱交換を行う熱交換器と、
熱交換器を迂回して室外の空気を室内へ供給し、または室内の空気を室外へ排出するバイパス風路と、
バイパス風路の入口と熱交換器への入口のいずれか一方を開放し、他方を閉鎖する開閉手段と、
給気風路内に導入された空気の状態量を測定する測定手段と、
給気手段が室内へ供給する空気の風量に応じて、測定手段により測定された状態量を補正し、補正した状態量に基づき、開閉手段により給気または排気の経路を切り替える制御手段と
を含む、換気システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給排気制御の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】制御回路のハードウェア構成の一例を示した図。
【
図3】センサの設置位置と全熱交換器内における空気の温湿度の理論的な動きを例示した図。
【
図4】全熱交換器内における空気の温湿度の実際の動きを例示した図。
【
図5】モード切り替えを行うか否かを判定する従来の方法の第1の例について説明する図。
【
図6】各モードにおけるダンパー動作について説明する図。
【
図7】モード切り替えを行うか否かを判定する本方法の第1の例について説明する図。
【
図9】モード切り替えを行うか否かを判定する従来の方法の第2の例について説明する図。
【
図10】モード切り替えを行うか否かを判定する本方法の第2の例について説明する図。
【
図11】センサ取り付け位置を変えた例を示した図。
【
図12】センサを1つのみとした場合の例を示した図。
【
図13】室内の空気の状態量を測定するセンサの例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る換気システムの第1の構成例を示した図である。換気システムは、建物の室内の空気の空気質を確保するため、室内の空気と室外の空気を入れ替えるシステムである。空気質は、室内の空気中の対象物質の成分量を示し、対象物質は、二酸化炭素、一酸化炭素、PM2.5やPM10等の粉塵、揮発性有機化合物等である。
【0012】
換気システムは、
図1に示すように、箱体10と、箱体10内に配置される熱交換器11とを備える。箱体10の長手方向の一端には、室外の空気(OA)を導入する給気導入口12と、室内の空気をEA(Exhaust Air)として室外へ排気する排気排出口13とが設けられる。箱体10の長手方向の他端には、給気導入口12から導入された空気をSA(Supply Air)として室内へ供給する給気吹出口14と、室内の空気(RA)を取り込む排気導入口15とが設けられる。箱体10内には、仕切板16、17が設けられ、室外の空気を、熱交換器11を介して給気導入口12と給気吹出口14とを連通させる給気風路18を形成し、室内の空気を、熱交換器11を介して排気排出口13と排気導入口15とを連通させる排気風路19を形成する。給気風路18と排気風路19は、熱交換器11で交差するように形成されている。
【0013】
箱体10内には、給気風路18、排気風路19のほか、熱交換器11を迂回して排気排出口13と排気導入口15とを連通させるバイパス風路20が形成される。バイパス風路20は、熱交換器11の室外側であって、排気風路19内に設置される排気ファン21の吸い込み側に連通している。バイパス風路20は、排気導入口15側に開閉する開閉手段としてのダンパー22が設けられ、ダンパー22を閉じることにより熱交換器11を介して室内の空気を流すことができ、ダンパー22を開くことにより熱交換器11を迂回して室内の空気を流すことができる。なお、
図1では、バイパス風路20の給気導入口12側が給気風路18内で開いているように表されているが、これは、バイパス風路20が排気ファン21の吸い込み側に繋がっており、途中にバイパス風路20を閉鎖するものが何も存在しないことを表すものである。したがって、バイパス風路20内へ給気導入口12から導入された外気が入ることもなければ、バイパス風路20を流れる排気が給気風路18内へ漏れることもなく、給気と外気がこの部分で混ざり合うことはない。このことは、以下で説明する
図3等でも同様である。
【0014】
給気風路18内には、室外の空気(OA)を室内に導入する給気手段として、給気ファン23が設置される。給気ファン23は、給気風路18内の熱交換器11と給気吹出口14との間に設置される。
【0015】
排気ファン21は、室内の空気(RA)を室外へ排気する排気手段として、排気風路19内の熱交換器11と排気排出口13との間に設置される。
【0016】
熱交換器11は、給気風路18を流れる空気と、排気風路19を流れる空気の熱のみを交換する顕熱式の熱交換器であってもよいし、熱だけではなく、湿気(湿度)も交換する全熱交換器であってもよい。以下、熱交換器11を全熱交換器として説明する。
【0017】
全熱交換器は、全熱交換エレメントを含む。全熱交換エレメントは、各面が矩形のエレメントであり、箱体10の長手方向に対し、エレメントの隣り合う2つの側面により形成される4つの角部のうちの1つが、箱体10に、別の1つがバイパス風路20に、さらに別の2つが仕切板16、17のそれぞれの一端に隣接するように設置される。
【0018】
全熱交換エレメントは、紙、不織布、樹脂等により作製され、複数の層を備え、給気風路18の一部を構成する給気通路と、排気風路19の一部を構成する排気通路とが90°ほど角度を変えて互い違いに重ね合わせた構造とされている。したがって、全熱交換エレメントは、上から順に第1層が0°方向から180°方向へ向かう給気通路であれば、第2層が90°方向から270°方向へ向かう排気通路、第3層が再び0°方向から180°方向へ向かう給気通路、というように給気と排気が流れる通路が交互に形成されたものとなっている。これにより、熱交換器11は、紙等を介して熱および湿気の透過を可能にしつつ、給気と排気とを分離し、給気と排気とが混ざり合わないようになっている。
【0019】
換気システムは、室内機と室外機とを備える空気調和装置と連動して動作することができる。なお、換気システムは、室内機および室外機と連動して動作し、空気調和装置の一部として構成されていてもよい。換気システムは、給気吹出口14が管により室内機と接続され、室内機内へSAを吹き出すことができる。これにより、室内機は、室内ファンにより吸い込まれた室内の空気と給気吹出口14から吹き出されたSAとを混合し、室内に吹き出すことができる。
【0020】
換気システムは、給気導入口12から導入された外気(OA)の状態量として、温度(乾球温度)および湿度(相対湿度:RH)を測定する第1のセンサ24と、排気導入口15から導入された室内の空気(RA)の状態量として、温度および湿度を測定する第2のセンサ25とを備える。第1のセンサ24は、給気風路18内の熱交換器11と給気導入口12との間の位置に設置され、第2のセンサ25は、排気風路19内の熱交換器11と排気導入口15との間の位置に設置される。ここでは、第1および第2のセンサ24、25が、状態量として、温度および湿度を測定するものとして説明するが、二酸化炭素濃度、PM2.5等の粒子濃度等も測定することができる。
【0021】
換気システムは、制御手段としての制御回路26を備える。制御回路26は、排気ファン21、ダンパー22、給気ファン23、第1のセンサ24および第2のセンサ25と接続され、第1のセンサ24および第2のセンサ25により測定された温度、湿度、二酸化炭素濃度等に基づき、給気ファン23および排気ファン21の風量を制御し、ダンパー22の開閉により換気モードの切り替えを行う。なお、二酸化炭素等を測定するセンサは、空気質(IAQ)センサとして、第1のセンサ24および第2のセンサ25とは別に設けられていてもよく、例えば給気ファン23と給気吹出口14との間に設置することができる。
【0022】
換気モードは、ダンパー22を閉じ、熱交換器11を介して排気する全熱交換モードと、ダンパー22を開き、熱交換器11を迂回し、バイパス風路20を介して排気する普通換気モードとがある。
【0023】
制御回路26は、第1のセンサ24および第2のセンサ25により測定された温度および湿度等の状態量から全熱交換後の、もしくは熱交換器11を迂回させた場合の理論上のSAの状態量を算出する。算出される空気の状態量は、SAの乾球温度や比エンタルピー等である。
【0024】
ここでは、換気システムを、ダンパー22が排気導入口15側に設けられ、ダンパー22の開閉により排気導入口15から導入された空気(RA)を、熱交換器11を迂回してバイパス風路20を通して流し、または熱交換器11を介して流す構成として説明したが、これに限られるものではない。したがって、ダンパー22を給気導入口12側に設け、ダンパー22の開閉により外気(OA)を、熱交換器11を迂回してバイパス風路20を通して流し、または熱交換器11を介して流す構成としてもよい。また、換気システムは、熱交換器11にエレメントフィルタを備えていてもよく、給気風路18内に給気導入口12から導入された外気中に含まれるPM2.5や花粉等の微粒子を捕集する捕集手段としてのフィルタが設置されていてもよい。
【0025】
従来においては、理論上のSAの状態量に基づき、最適な換気モードを決定している。しかしながら、理論上のSAの状態量は、実際のSAの状態量を表さない。これは、熱交換器11と給気吹出口14との間には、給気ファン23が設置され、給気ファン23が備えるモータの発熱等によりSAの状態量が変わるからである。
【0026】
そこで、制御回路26は、熱交換器11と給気吹出口14との間に設置されるユニットの発熱量により理論上のSAの状態量を補正することにより実際のSAの状態量を推定し、推定した実際のSAの状態量に基づき、最適な換気モードを決定する。これにより、全熱交換後の空気状態変化を正確に推定し、換気モードの切り替え等の高精度な制御を実現することが可能となる。
【0027】
制御回路26は、空気調和装置の室外機に搭載される制御回路と同様の構成とされ、
図2に示すように、CPU30と、フラッシュメモリ31と、RAM(Random Access Memory)32と、通信I/F33と、制御I/F34とを備える。CPU30等の構成要素は、バス35に接続され、バス35を介して情報等のやりとりを行う。
【0028】
CPU30は、換気システム全体の制御を行う。フラッシュメモリ31は、CPU30による制御に使用されるプログラムや各種のデータ等を記憶する。RAM32は、CPU30に対して作業領域を提供する。通信I/F33は、IAQセンサから空気質の情報を受信する。制御I/F34は、給気ファン23、ダンパー22、排気ファン21と接続し、それぞれのユニットの制御を行う。
【0029】
ここでは、制御回路26は、CPU30がフラッシュメモリ31からプログラムを読み出し、そのプログラムを実行することにより、空気状態の演算、モード切り替え等の制御を実現するが、これに限られるものではなく、回路等の専用のハードウェアを使用して実現してもよい。
【0030】
図3(a)は、センサ設置位置を例示した図である。一般的な全熱交換器を備える換気システムにおける従来のモード制御は、
図3(a)に示す位置に第1のセンサ40、第2のセンサ41を設置し、ダンパー42を閉じ、全熱交換を行う場合、それらのセンサにより測定された空気の状態量(OA空気情報およびRA空気情報ともいう。)と、事前に制御回路が備えるフラッシュメモリ等の記憶部に保存される全熱交換器を構成する全熱交換エレメントの交換効率とを用いて、全熱交換後のSAの状態量(SA空気情報ともいう。)を算出することができる。一方、ダンパー42を開き、バイパス風路43を通して空気を流し、全熱交換を行わない場合は、OA空気情報をそのままSA空気情報として用いることができる。
【0031】
全熱交換後のSA空気情報、もしくは全熱交換なしの普通換気のSA空気情報を、換気システムから吹き出す空気の空気情報として、換気システムに連動する空気調和装置へ送信し、空気調和装置を適切な冷暖房運転をさせてシステム制御を行う。
【0032】
図3(b)は、全熱交換器内における空気の温湿度の理論的な動きを例示した図である。空気情報は、空気の温度および湿度等である。空気線図は、乾球温度、相対湿度、水蒸気分圧、絶対湿度、比エンタルピー、露点温度、湿球温度等の状態量のいずれか2つを座標軸として作成される空気の状態変化を解析するために使用される図である。
図3(b)では、2つの座標軸として、横軸を乾球温度(℃)とし、縦軸を絶対湿度(kg/kg)としている。
【0033】
乾球温度(℃)は、一般的な温度計が示す空気の温度である。相対湿度(%)は、ある温度の空気に含有可能な最大水蒸気量に対する実際に含有されている水蒸気量を百分率で表したものである。本明細書では、特に断りがない限り、温度は乾球温度を表し、湿度は相対湿度を表す。
【0034】
水蒸気分圧(Pa)は、空気中に含まれる水蒸気の圧力である。絶対湿度(kg/kg)は、乾き空気1kgに対する湿り空気に含まれる水蒸気量(kg)を表したものである。比エンタルピー(kJ/kg)は、1kgの物質がもっているエンタルピー(kJ)である。
【0035】
露点温度(℃)は、空気を冷却していった場合に飽和状態になり、結露が生じる温度である。湿球温度(℃)は、風があり、水で湿った表面において、その水が蒸発することにより冷却されるその表面の最低温度である。
【0036】
図3(b)に示す空気線図は、各相対湿度を表す曲線と、比エンタルピーを表す曲線上の各点と各乾球温度および各絶対湿度とを繋ぐ直線とを有する。このため、例えば乾球温度と相対湿度が分かれば、絶対湿度や比エンタルピーを求めることができる。
図3(b)では、OA空気情報とRA空気情報が「OA」、「RA」で示される点を表し、全熱交換エレメントの交換効率を用いて計算されたSA空気情報およびEA空気情報を「SA」、「EA」で示される点で表している。「OA」の点で示される外部からシステム内に取り込んだ外気は、「SA」の点へ推移し、「EA」の点で示される室内からシステム内に取り込んだ空気は、「RA」の点へ推移している。
【0037】
理論上の空気状態の変化は、
図3(b)に示すような変化となるが、実際のSA空気情報は、給気ファンのモータの発熱等により理論上のSA空気情報から変化する。
【0038】
OA空気情報とRA空気情報は、第1のセンサ40と第2のセンサ41により測定された空気情報であるが、実際に室内に吹き出される空気(SA)の空気情報は、理論上のSA空気情報よりモータの発熱等を加味した空気情報となる。具体的には、
図4に示すように、点「SA」から絶対湿度が変わらないまま、乾球温度と比エンタルピーが増加した点「SA
*」の状態となる。同様に、点「EA」も、排気ファン21のモータの発熱等により室外に排出される空気(EA)の空気情報も、モータの発熱等を加味した空気情報となり、乾球温度と比エンタルピーが増加した点「EA
*」の状態となる。なお、EA空気情報、EA
*空気情報については、室内環境の空気調和に影響がないため、以下、これらの説明については省略する。
【0039】
適切なモード切り替え、正確な吹き出し空気情報を連動する他の設備の制御部へ送信し、最適な空気調和のシステム制御を行うためには、給気ファンのモータの発熱等を考慮する必要があり、その発熱量でSA空気情報を補正する必要がある。
【0040】
モード切り替えの一般的な方法としては、連動する空気調和装置が冷房運転の場合、外気温度>室内温度、あるいは外気比エンタルピー>室内比エンタルピーであれば、外気導入による負荷を低減させるべく、全熱交換モードとし、外気温度<室内温度、あるいは外気比エンタルピー<室内比エンタルピーであれば、外気を熱交換なしでそのまま導入し、室内環境を冷やすべく、普通換気モードとする方法がある。この方法では、暖房運転の場合、外気温度>室内温度、あるいは外気比エンタルピー>室内比エンタルピーであれば、外気を熱交換なしで直接導入し、室内環境を暖めるべく、普通換気モードとし、外気温度<室内温度、あるいは外気比エンタルピー<室内比エンタルピーであれば、換気のよる室内を出来るだけ冷やさないようにするべく、全熱交換モードとする。
【0041】
図5は、冷房運転の場合、暖房運転の場合の換気モードの切り替えを行うか否かを判定する従来の方法の第1の例について説明する図である。第1のセンサ40と第2のセンサ41により測定されたRA空気情報に含まれるRA温度、あるいはRA比エンタルピーと、OA空気情報に含まれるOA温度、あるいはOA比エンタルピーとを用い、それら2つの空気状態が示す点が、全熱交換モードと普通換気モードのいずれの領域内にあるかを判定することで、適切なモードを決定することができる。
【0042】
ちなみに、冷房運転において冷やし過ぎ、暖房運転において暖め過ぎで、普通換気を行うような極端なケースは滅多にないため、
図5(a)は主に冷房運転の場合、
図5(b)は主に暖房運転の場合としている。
【0043】
図6は、各モードにおけるダンパー42の動作について説明する図である。
図6(a)は、全熱交換モードの場合のダンパー42の動作を示し、バイパス風路43の入口をダンパー42で閉じ、熱交換器44の入口を開いている。これにより、全熱交換モードでは、熱交換器44を介して室内の空気を室外へ排出する。
【0044】
図6(b)は、普通換気モードの場合のダンパー42の動作を示し、バイパス風路43の入口を開き、熱交換器44の入口をダンパー42で閉じている。これにより、普通換気モードでは、熱交換器44を迂回して室内の空気を室外へ排出する。
【0045】
図5に示したモード判定に使用される図は、従来の給気ファンのモータの発熱等を考慮しない場合の図である。モータの発熱等を考慮した場合、発熱量でSAの空気状態を補正し、得られたSA
*空気情報とRA空気情報とを比較し、モード判定を行うことになる。
【0046】
図7は、冷房運転の場合、暖房運転の場合の換気モードの切り替えを行うか否かを判定する本方法の第1の例について説明する図である。
図1に示した第1のセンサ24と第2のセンサ25によりRA空気情報とOA空気情報とを取得し、RA空気情報とOA空気情報と熱交換器11の交換効率とからSA空気情報を演算し、給気ファン23のモータの発熱等の発熱量でSA空気情報を補正してSA
*空気情報を求める。
【0047】
SA*空気情報に含まれるSA*の温度、あるいは比エンタルピーと、RA空気情報に含まれるRAの温度、あるいは比エンタルピーとを用い、それらの2つの空気状態が示す点が、全熱交換モードと普通換気モードのいずれの領域内にあるかを判定することで、適切な換気モードを決定することができる。
【0048】
ここで、SA*の算出および給気ファン23の発熱量に関して、以下の式1、式2が成立する。
【0049】
【0050】
【0051】
上記の式1、式2は、下記式3、4のように書き換えることができる。
【0052】
【0053】
【0054】
上記式3、式4中、TOAは、OAの乾球温度(℃)であり、TRAは、RAの乾球温度(℃)である。HOAは、OAの比エンタルピー(kJ/kg(DA))であり、HRAは、RAの比エンタルピー(kJ/kg(DA))であり、いずれの比エンタルピーも、乾燥空気(DA:Dry Air)の単位質量当たりの比エンタルピーである。Effsenは、顕熱交換効率(%)であり、EffHは、全熱交換効率(%)である。また、TSAは、SAの乾球温度(℃)であり、HSAは、SAの比エンタルピー(kJ/kg(DA))である。
【0055】
給気ファン23の発熱による温度補正量をΔTi(℃)とし、給気ファン23の発熱による比エンタルピー補正量をΔHi(kJ/kg(DA))とし、補正後のSAの実乾球温度(℃)をTSA
*とし、補正後のSAの実比エンタルピー(kJ/kg(DA))をHSA
*とすると、TSA
*は、下記式5のように表すことができ、HSA
*は、下記式6のように表すことができる。
【0056】
【0057】
【0058】
上記の温度補正量や比エンタルピー補正量は、給気ファン23が、例えば「強」、「中」、「弱」等の段階的な風量パターンを有する場合、各風量パターンに応じた補正量を予め決定し、記憶部に記憶することができる。これにより、そのときの風量パターンに応じた補正量を記憶部から読み出し、上記式5、式6に適用して、SAの実乾球温度および実比エンタルピーを計算することができる。
【0059】
なお、
図7を使用して換気モードを決定する場合、比エンタルピーを比較基準にすればよいが、これに限定されるものではなく、比エンタルピー情報の取得、算出手段がない場合、乾球温度情報だけを用いて、上記式3、式5によりSAの実乾球温度T
SA
*のみを計算すればよい。
【0060】
図8を参照して、換気モードの切り替え制御について説明する。換気システムに電源が投入され、換気システムが起動することにより、ステップ100からこの制御を開始する。給気ファン23、排気ファン21が起動し、第1のセンサ24、第2のセンサ25が動作を開始する。実際には、空気質の測定も行い、ファンの風量制御等も行うが、ここでは換気モードの切り替え制御についてのみ説明する。
【0061】
ステップ101では、第1のセンサ24および第2のセンサ25でOAおよびRAの状態量を測定する。OAおよびRAの状態量は、例えばOAおよびRAの温度や湿度である。ステップ102では、OAおよびRAの状態量、熱交換器11の交換効率を使用し、SAの状態量を算出する。例えば、上記式4を使用し、SAの比エンタルピーを算出する。
【0062】
ステップ103では、SAの状態量を補正してSA
*の状態量を算出する。ステップ104では、SA
*の状態量に基づき、換気モードを決定する。換気モードは、例えば
図7を参照し、RAの状態量と算出されたSA
*の状態量とを用いて決定することができる。
【0063】
ステップ105では、換気モードの切り替えが必要か否かを判断する。換気モードの切り替えが必要か否かは、現在設定し、動作している換気モードが、決定した換気モードと異なるか否かにより判断することができる。現在設定している換気モードが、決定した換気モードとは異なり、換気モードの切り替えが必要と判断した場合、ステップ106へ進み、決定した換気モードに切り替える。ステップ105で換気モードの切り替えが必要ないと判断した場合、ステップ106で換気モードを切り替えた後、ステップ101へ戻り、換気システムの電源が切断されるまで、繰り返される。なお、電源切断だけではなく、管理者がシステムを停止した場合やシステムにエラーが発生した場合等においても制御を停止することができる。
【0064】
上記では、第1のセンサ24および第2のセンサ25で測定したOA空気情報およびRA空気情報を用い、上記式4および式6によりSAの実比エンタルピーを算出し、
図7を参照して換気モードを決定することについて説明した。また、前述の通り、比エンタルピー情報の取得が困難な場合、乾球温度を制御の比較基準にしてもよい。
【0065】
空気調和装置等の設備は、遠隔から操作を可能にするため、リモコンを備え、ユーザは、リモコンを使用して自由に目標温度を設定することができる。換気システムも、このような設備と同様の室内目標値という概念を導入し、室内目標比エンタルピーや室内目標乾球温度を設定し、その設定値に基づき制御を行う方法もある。以下、室内目標値として室内目標比エンタルピーを例に挙げて説明する。
【0066】
この方法では、室内目標比エンタルピーは記憶部に記憶され、第1のセンサ24から得られた室外の温度および相対湿度から室外比エンタルピーを求め、第2のセンサ25から得られた室内の温度および相対湿度から室内比エンタルピーを求め、室内比エンタルピーと、室外比エンタルピーと、記憶部に記憶された室内目標比エンタルピーとに基づき、換気モードを決定する。この方法の詳細については、上記の特許文献2を参照されたい。なお、上記の室内目標比エンタルピーを記憶する記憶部は、上記の補正量等を記憶する記憶部と同じ記憶部であってもよいし、異なる記憶部であってもよい。
【0067】
この方法では、室内目標比エンタルピー<室外比エンタルピー<室内比エンタルピー、もしくは室外比エンタルピー<室内目標比エンタルピー<室内比エンタルピーの場合、室内空気より比エンタルピーが低い室外空気を熱交換せず、導入すると、室内比エンタルピーを低下させ、室内目標比エンタルピーに近づけることができるため、普通換気モードとする。
【0068】
室内比エンタルピー<室外比エンタルピー<室内目標比エンタルピーの場合、室内比エンタルピー以上の室外比エンタルピーを熱交換せず、導入すると、室内比エンタルピーを上昇させ、室内目標比エンタルピーに近づけることができるため、普通換気モードとする。
【0069】
室外比エンタルピー<室内比エンタルピー<室内目標比エンタルピーの場合、室内空気より比エンタルピーが低い外気を、熱交換を行って導入することで、室内比エンタルピーの低下を抑制し、室内目標比エンタルピーに近づけることができるため、全熱交換モードとする。
【0070】
室内目標比エンタルピー<室内比エンタルピー<室外比エンタルピー、もしくは室内比エンタルピー<室内目標比エンタルピー<室外比エンタルピーの場合、室内空気以上の比エンタルピーをもつ外気を、熱交換を行って導入することで、室内比エンタルピーの上昇を抑制し、室内目標比エンタルピーに近づけることができるため、全熱交換モードとする。
【0071】
このようにして、各比エンタルピーを比較し、室内目標比エンタルピーに近づけるように換気モードを切り替えている。
【0072】
図9は、モード切り替えを行うか否かを判定する従来の第2の例について説明する図である。横軸は、RAの比エンタルピーを示し、縦軸は、OAの比エンタルピーを示す。横軸、縦軸、傾き1の原点を通る直線の3つを破線で示し、3つの破線により形成される領域A1~A4が普通換気モードの領域で、領域B1、B2が全熱交換モードの領域である。
【0073】
このモード判定では、給気ファン23の発熱を考慮していないため、不適切となる場合がある。不適切となる場合について、以下に例を挙げて説明する。
【0074】
第1のセンサ24および第2のセンサ25により測定された乾球温度および相対湿度を用い、空気線図からOAの比エンタルピーおよびRAの比エンタルピーを求める。記憶部には、室内目標比エンタルピーおよび熱交換器11の交換効率Effsen、EffHが記憶されている。
【0075】
例えば、ある時点の空気条件は、OAの比エンタルピーが48(kJ/kg(DA))、RAの比エンタルピーが49(kJ/kg(DA))と求まり、室内目標比エンタルピーが50(kJ/kg(DA))、交換効率が50(%)であったとする。これらの値を上記式4に代入し、全熱交換モードにおけるHSAを算出すると、HSA=48.5(kJ/kg(DA))と算出される。普通換気モードでは、HSA=HOAであるため、HSA=48(kJ/kg(DA))となる。HRAが49(kJ/kg(DA))であるから、HSAとHRAにより決定される該当条件点は、領域B2内となり、全熱交換モードと判定される。
【0076】
しかしながら、現実的な最適制御を行う場合、給気ファン23の発熱等の発熱量を考慮しなければならない。発熱量を考慮した補正量がΔHi=2と設定されている場合、実際のSA*の比エンタルピーHSA
*は、全熱交換モードでは、上記式6によりHSA
*=48.5+2=50.5となり、普通換気モードでは、HSA
*=48+2=50となる。両者を比較すると、室内目標比エンタルピー50(kJ/kg(DA))と同じ値となる普通換気モードの方が有利である。
【0077】
このように給気ファン23の発熱を考慮しない従来のモード判定では、最適な制御に対応できないことが分かる。
【0078】
そこで、給気ファン23の発熱を考慮した異なる制御基準を採用する。
図10は、モード切り替えを行うか否かを判定する本方法の第2の例について説明する図である。縦軸は、補正後の全熱交換モードのSA
*の比エンタルピーであり、横軸は、補正後の普通換気モードのSA
*の比エンタルピーである。4つの破線により形成される領域A1~A4が普通換気モードの領域で、領域B1~B4が全熱交換モードの領域である。
【0079】
記憶部には、室内目標比エンタルピーに代えて目標SA比エンタルピーを記憶する。記憶部に記憶された目標SA比エンタルピーと、補正後の全熱交換モードのSA*の比エンタルピーと、補正後の普通換気モードのSA*の比エンタルピーとを比較し、モード切り替え制御(ダンパー制御)を行う。
【0080】
補正後の各換気モードのSA*の比エンタルピーは、第1のセンサ24および第2のセンサ25により測定されたOAの乾球温度および相対湿度、RAの乾球温度および相対湿度から、OAおよびRAの比エンタルピーを算出し、交換効率EffHを用いて上記式4によりHSAを算出し、記憶部に記憶された補正量を用いて上記式6により算出することができる。
【0081】
本方法に上記の例を適用すると、全熱交換モードではHSA
*=50.5、普通換気モードではHSA
*=50であるから、該当条件点は領域B1内となり、最適な換気モードが全熱交換モードと判定される。
【0082】
設計段階で給気ファン23の風量パターンと発熱量の関係を機種ごとに設定し、記憶部に記憶させておくことで、異なる種類のファンを使用する場合でも対応することが可能となる。
【0083】
これまで、給気ファン23を、風量パターンを切り換えることにより風量を増減させる場合の各風量パターンに対応した補正量を記憶部に記憶しておき、実際の風量パターンに応じた補正量を読み出し、各換気モードにおけるHSA
*の比エンタルピーを計算したが、これに限られるものではない。したがって、センサでファンの発熱量を実測し、その実測値に基づいて補正を行い、各換気モードにおけるHSA
*の比エンタルピーを計算してもよい。
【0084】
また、第1のセンサ24と第2のセンサ25の設置位置は、給気風路18内の給気導入口12と熱交換器11との間、排気風路19内の排気導入口15と熱交換器11との間に限定されるものではない。したがって、
図11に示すように、第1のセンサ24を、給気風路18内の熱交換器11と給気ファン23との間に設置してもよい。
【0085】
この場合、第1のセンサ24により熱交換器11を通過した後の空気(SA)の乾球温度や相対湿度を測定するため、上記3および式4によりTSAやHSAを算出する必要がなくなる。よって、上記式5および式6のみでTSA
*やHSA
*を算出することができる。
【0086】
また、給気ファン23は、風量パターンで段階的に風量を増減する制御を行うファンに限定されるものではない。したがって、給気ファン23は、風量を連続的に変化させることができ、連続的に風量を増減する制御を行うファンであってもよい。この場合、風量に対応するパラメータとしてファン回転数を検出するセンサによりファン回転数を検出し、換気量とファン回転数の関係式を利用し、風量に対応する補正量を計算することができる。これにより、計算した補正量を用いて補正を行い、各換気モードにおけるHSA
*の比エンタルピーを計算することができる。
【0087】
これまでの説明では、第1のセンサ24と第2のセンサ25の2つのセンサを設置し、2つのセンサの測定結果を用いて演算を行い、換気モードを判定するための各換気モードにおけるH
SA
*の比エンタルピーを計算してきた。しかしながら、換気システム内に必ず2箇所にセンサを備えなければならないわけではなく、室内の空気(RA)の空気情報が室内で取得可能であれば、
図12(a)、(b)に示すように、換気システム内には、第1のセンサ24のみが設置された構成であってもよい。
【0088】
図12(a)は、第1のセンサ24が、給気風路18内の給気導入口12と熱交換器11との間に設置される場合を示し、第1のセンサ24によりOAの空気情報を測定することができる。
図12(b)は、第1のセンサ24が、給気風路18内の熱交換器11と給気ファン23との間に設置される場合を示し、第1のセンサ24により直接SAの空気情報を測定することができる。
【0089】
第2のセンサ25の代替としては、
図13(a)に示すように、換気システム50を操作するための換気システム用リモコン51、もしくは連動する空気調和装置52を操作するための空気調和装置用リモコン53に内蔵されたセンサを用いることができる。換気システム50と空気調和装置52とは通信用結線54により接続され、空気調和装置用リモコン53に内蔵されたセンサにより室内の空気情報を測定した場合、換気システム50は、測定結果を空気調和装置52、通信用結線54を介して取得することができる。
【0090】
また、室内の空気情報は、
図13(b)に示すように、換気システム用リモコン51や空気調和装置用リモコン53以外の、換気システム50と通信可能な外置き環境センサ55等により測定してもよい。外置き環境センサ55は、空気の空気質を測定するセンサで、温度、湿度、二酸化炭素濃度、一酸化炭素濃度、ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)、PM2.5、花粉、黄砂等を測定することができる。
【0091】
換気システム50と換気システム用リモコン51との間、空気調和装置52と空気調和装置用リモコン53との間の通信は、赤外線等を使用した無線通信とすることができる。換気システム50と空気調和装置52との間の通信は、通信用結線54を使用した有線通信に限られるものではなく、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)等を使用した無線通信であってもよい。また、換気システム50と外置き環境センサ55との間の通信も、有線、無線のいずれの通信形態であってもよい。
【0092】
このように、代替のセンサを利用することで、換気システムに搭載するセンサの数を減らし、ユニットの製造工数と原価を低減させることができる。
【0093】
また、補正量を、給気ファン23の発熱量に対する補正量として説明してきたが、補正量は、ファン発熱量に対する補正量に限定されるものではない。給気風路18内の熱交換器11と給気吹出口14との間には、他のユニットが設置されている場合もあり、当該ユニットが発する熱量に対する補正量等としてもよい。
【0094】
図14は、本実施形態に係る換気システムの第2の構成例を示した図である。
図14に示した構成は、
図1に示した構成とほぼ同じであるが、給気風路18内に、他のユニットとして、直膨式熱交換器60、電気ヒータ61、自然蒸発式加湿器62が設置されている。直膨式熱交換器60は、空気調和装置に使用される空気と直接熱交換する熱交換器等であり、空気と熱交換する冷媒が流される伝熱管(コイル)を含む。自然蒸発式加湿器62は、フィルタや陶器等の気化部と貯水部とを含む。貯水部は、水を貯水し、気化部は、毛細管現象により貯水部から水を吸い上げ、自然に気化させることにより加湿する。ここでは、自然蒸発式加湿器を例示しているが、これに限られるものではなく、電気ヒータを備え、電気ヒータで水を加熱し、蒸気を発生させて加湿するスチーム式、超音波発生器により水に振動を与え、ミスト状にして噴霧することにより加湿する超音波式、電気ヒータと超音波発生器とを備えたハイブリッド式等の加湿器を使用してもよい。
【0095】
電気ヒータ61は、SAの空気情報としての温度を上昇させる機器である。直膨式熱交換器60および自然蒸発式加湿器62は、SAの空気情報としての温湿度を変化させる機器である。
【0096】
給気風路18内の熱交換器11と給気吹出口14との間に、給気ファン23以外に他のユニットを備える場合も同様に、記憶部に補正量を事前に記憶しておいてもよいし、当該ユニットにセンサを取り付け、熱量等を直接測定し、測定結果に対応する補正量を演算により算出してもよい。
【0097】
給気風路18内の熱交換器11と給気吹出口14との間に、給気ファン23と他のユニットが設置されている場合、給気ファン23の発熱量と、他のユニットが発する熱量等とを合算した量に対応する補正量で補正を行うことができる。
【0098】
図14では、3つのユニットを備える例を示したが、これに限られるものではなく、1つ、もしくは2つ、または4つ以上のユニットを備えていてもよい。
【0099】
以上に説明してきたように、本制御によれば、給気ファンの動作等により変化した全熱交換後の空気の温度と比エンタルピーの変化を考慮し、正しい給気温度と比エンタルピーを推定することで、効率的なモード切り替えが可能となる。
【0100】
これまで本発明の換気システム、空気調和装置および制御方法について上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0101】
10…箱体
11…熱交換器
12…給気導入口
13…排気排出口
14…給気吹出口
15…排気導入口
16、17…仕切板
18…給気風路
19…排気風路
20…バイパス風路
21…排気ファン
22…ダンパー
23…給気ファン
24…第1のセンサ
25…第2のセンサ
26…制御回路
30…CPU
31…フラッシュメモリ
32…RAM
33…通信I/F
34…制御I/F
35…バス
40…第1のセンサ
41…第2のセンサ
42…ダンパー
43…バイパス風路
44…熱交換器
50…換気システム
51…換気システム用リモコン
52…空気調和装置
53…空気調和装置用リモコン
54…通信用結線
55…外置き環境センサ
60…直膨式熱交換器
61…電気ヒータ
62…自然蒸発式加湿器
【要約】 (修正有)
【課題】室内に実際に供給される空気質を測定することができ、適切に給排気の制御を行うことが可能な換気システム、空気調和装置および制御方法を提供すること。
【解決手段】換気システムは、室外の空気を室内に供給する給気ファン23を備える給気風路18と、室内の空気を室外へ排出する排気ファン21を備える排気風路19と、室内の空気と室外の空気との間で少なくとも熱交換を行う熱交換器11と、熱交換器11を迂回するバイパス風路20と、バイパス風路20の入口と熱交換器11への入口のいずれか一方を開放し、他方を閉鎖するダンパー22と、給気風路18内に導入された空気の状態量を測定する第1のセンサ24と、給気ファン23が室内へ供給する空気の風量に応じて、第1のセンサ24により測定された状態量を補正し、補正した状態量に基づき、ダンパー22により給気または排気の経路を切り替える制御回路26とを含む。
【選択図】
図1