(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】不純物検出装置、不純物検出方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 25/72 20060101AFI20230210BHJP
G01N 33/00 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
G01N25/72 Z
G01N33/00 B
(21)【出願番号】P 2021541911
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019034007
(87)【国際公開番号】W WO2021038811
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】595129636
【氏名又は名称】株式会社マクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】淺賀 竜治
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105389(JP,A)
【文献】特開2017-150034(JP,A)
【文献】特開2003-315156(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0356346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/72
G01J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する容器体内の流体物に混在する不純物を検出する不純物検出装置であって、
前記容器体の前記開口部に対応する開口部領域の範囲を示す情報を記憶する記憶部と、
温度センサによって測定された前記流体物の実温度を取得する実温度取得部と、
赤外線撮像装置によって撮影された前記流体物の表面の放射率の影響を受けた温度分布画像を取得する温度分布取得部と、
前記温度分布画像
のうちの前記開口部領域における前記流体物の
平均温度
、最低温度又は最高温度を算出し、
算出された前記平均温度、最低温度又は最高温度と前記実温度との温度差
が閾値以上である場合、所定量を超える不純物が前記流体物に混在している
と判定し、算出された前記平均温度、最低温度又は最高温度と前記実温度との温度差が前記閾値以上でない場合、前記所定量を超える不純物が前記流体物に混在していないと判定する
、判定部と、
を有することを特徴とする不純物検出装置。
【請求項2】
前記温度分布取得部は、撮影対象物の放射率として前記流体物の放射率が設定された前記赤外線撮像装置によって撮影された前記温度分布画像を取得
する、
請求項1に記載の不純物検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記温度分布画像の
前記開口部領域における前記流体物の
前記平均温度と前記実温度との温度差が第1の閾値以上であり、かつ、前記温度分布画像の
前記開口部領域における前記流体物の最高温度と前記実温度との温度差が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上である場合に、
前記所定量を超える不純物が前記流体物に混在していると判定する、
請求項
1又は2に記載の不純物検出装置。
【請求項4】
前記判定部によって
前記所定量を超える不純物が前記流体物に混在していると判定された場合に、前記流体物に混在している不純物の除去を指示する信号を出力する出力部を更に有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の不純物検出装置。
【請求項5】
前記出力部によって不純物の除去を指示する信号が出力されてから所定時間が経過した後、
前記実温度取得部は、前記温度センサによって測定された前記流体物の
前記実温度を再取得し、
前記温度分布取得部は、前記赤外線撮像装置によって撮影された前記流体物の表面の放射率の影響を受けた
前記温度分布画像を再取得し、
前記判定部は、
再取得された前記温度分布画像における前記流体物の
前記平均温度、最低温度又は最高温度を
再算出し、
再算出された前記平均温度、最低温度又は最高温度と
再取得された前記実温度との温度差
が前記閾値以上である場合、
前記所定量を超える不純物が前記流体物に混在している
と再判定し、再算出された前記平均温度、最低温度又は最高温度と再取得された前記実温度との温度差が前記閾値以上でない場合、前記所定量を超える不純物が前記流体物に混在していないと再判定する、
請求項4に記載の不純物検出装置。
【請求項6】
記憶部を有し、開口部を有する容器体内の流体物に混在する不純物を検出する不純物検出装置にお
ける不純物検出方法であって、
前記記憶部には、前記容器体の前記開口部に対応する開口部領域の範囲を示す情報が記憶され、
前記不純物検出装置が、
温度センサによって測定された前記流体物の実温度を取得し、
赤外線撮像装置によって撮影された前記流体物の表面の放射率の影響を受けた温度分布画像を取得し、
前記温度分布画像
のうちの前記開口部領域における前記流体物の
平均温度
、最低温度又は最高温度を算出し、
算出された前記平均温度、最低温度又は最高温度と前記実温度との温度差
が閾値以上である場合、所定量を超える不純物が前記流体物に混在している
と判定し、算出された前記平均温度、最低温度又は最高温度と前記実温度との温度差が前記閾値以上でない場合、前記所定量を超える不純物が前記流体物に混在していないと判定する
こと、
を含む不純物検出方法。
【請求項7】
記憶部を有し、開口部を有する容器体内の流体物に混在する不純物を検出する不純物検出装置
を制御する制御プログラムであって、
前記記憶部には、前記容器体の前記開口部に対応する開口部領域の範囲を示す情報が記憶され、
前記不純物検出装置に、
温度センサによって測定された前記流体物の実温度を取得し、
赤外線撮像装置によって撮影された前記流体物の表面の放射率の影響を受けた温度分布画像を取得し、
前記温度分布画像
のうちの前記開口部領域における前記流体物の
平均温度
、最低温度又は最高温度を算出し、
算出された前記平均温度、最低温度又は最高温度と前記実温度との温度差
が閾値以上である場合、所定量を超える不純物が前記流体物に混在している
と判定し、算出された前記平均温度、最低温度又は最高温度と前記実温度との温度差が前記閾値以上でない場合、前記所定量を超える不純物が前記流体物に混在していないと判定する
こと、
を実行させる
ためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体物に混在する不純物を検出するための不純物検出装置、不純物検出方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用ロボットを用いて製品の製造工程の一部又は全ての工程を自動化させた製造工場が普及している。例えば、特許文献1には、鋳造製造の溶解工程において、高温の金属材料の溶湯に混在する金属酸化物等の不純物を、産業用ロボットを用いて除去する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置は、産業用ロボットを用いて、流体物(溶湯)に混在する不純物を容器体(溶解炉)から除去する作業を自動化しているが、容器体内の流体物に不純物が混在するか否については、依然として作業者が確認する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、流体物に混在する不純物を検出することが可能な不純物検出装置、不純物検出方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る不純物検出装置は、流体物に混在する不純物を検出する不純物検出装置であって、温度センサによって測定された流体物の実温度を取得する実温度取得部と、赤外線撮像装置によって撮影された流体物の表面の放射率の影響を受けた温度分布画像を取得する温度分布取得部と、温度分布画像における流体物の温度と実温度との温度差に基づいて、所定量を超える不純物が流体物に混在しているか否かを判定する判定部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、上記の不純物検出装置において、温度分布取得部は、撮影対象物の放射率として流体物の放射率が設定された赤外線撮像装置によって撮影された温度分布画像を取得し、判定部は、温度分布画像の所定領域における流体物の平均温度、最低温度又は最高温度と、実温度との温度差が閾値以上である場合に、所定量を超える不純物が流体物に混在していると判定することが好ましい。
【0008】
また、上記の不純物検出装置において、判定部は、温度分布画像の所定領域における流体物の平均温度と実温度との温度差が第1の閾値以上であり、かつ、温度分布画像の所定領域における流体物の最高温度と実温度との温度差が第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上である場合に、所定量を超える不純物が流体物に混在していると判定することが好ましい。
【0009】
また、上記の不純物検出装置は、判定部によって所定量を超える不純物が流体物に混在していると判定された場合に、流体物に混在している不純物の除去を指示する信号を出力する出力部を更に有することが好ましい。
【0010】
また、上記の不純物検出装置において、出力部によって不純物の除去を指示する信号が出力されてから所定時間が経過した後、実温度取得部は、温度センサによって測定された流体物の実温度を再取得し、温度分布取得部は、赤外線撮像装置によって撮影された流体物の表面の放射率の影響を受けた温度分布画像を再取得し、判定部は、温度分布画像における流体物の温度と実温度との温度差に基づいて、所定量を超える不純物が流体物に混在しているか否かを再判定することが好ましい。
【0011】
本発明に係る不純物検出方法は、流体物に混在する不純物を検出する不純物検出装置において用いられる不純物検出方法であって、温度センサによって測定された流体物の実温度を取得し、赤外線撮像装置によって撮影された流体物の表面の放射率の影響を受けた温度分布画像を取得し、温度分布画像における流体物の温度と実温度との温度差に基づいて、所定量を超える不純物が流体物に混在しているか否かを判定する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るコンピュータプログラムは、流体物に混在する不純物を検出する不純物検出装置において、温度センサによって測定された流体物の実温度を取得し、赤外線撮像装置によって撮影された流体物の表面の放射率の影響を受けた温度分布画像を取得し、温度分布画像における流体物の温度と実温度との温度差に基づいて、所定量を超える不純物が流体物に混在しているか否かを判定する、ことをプロセッサに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流体物に混在する不純物を検出することが可能な不純物検出装置、不純物検出方法、及びコンピュータプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】不純物除去システム1の概要の一例を説明するための模式図である。
【
図2】不純物検出方法の一例を説明するための模式図である。
【
図3】不純物検出装置5の概略構成の一例を示す図である。
【
図4】不純物検出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】不純物検出処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0016】
図1は、不純物除去システム1の概要の一例を説明するための模式図である。不純物除去システム1は、容器体2、温度センサ3、赤外線撮像装置4、不純物検出装置5、及び不純物除去ロボット6を備える。
【0017】
容器体2は、特定の製造工程において生成される流体物を加熱、冷却、又は加工等するために該流体物を保持するものである。一例として
図1に示された容器体2は、鋳造工程において高温の金属材料の溶湯を保持する溶解炉である。容器体2は、上部に開口部21を有し、この開口部21から容器体2に保持された流体物の表面が観察できる。
【0018】
なお、例えば、製造工程が溶融工程である場合、容器体2は溶融炉であり、流体物はガラス融液等であってもよい。また、製造工程が水処理工程である場合、容器体2は加圧浮上槽であり、流体物は下水等であってもよい。また、製造工程が食品製造工程である場合、容器体2は加熱容器であり、流体物はスープ、カレー等であってもよい。また、製造工程が飲料製造工程である場合、容器体2は煮沸釜であり、流体物はビール等であってもよい。
【0019】
温度センサ3は、所定周期(例えば1秒)ごとに容器体2に保持された流体物の温度を測定し、測定した温度データを、温度センサ3が内蔵する通信回路を介して、無線又は有線通信により不純物検出装置5に出力する。流体物は容器体2内において概ね一定の温度を有しているため、温度センサ3は容器体2内の流体物のどの場所の温度を測定してもよい。温度センサ3は、流体物の表面の放射率の影響を受けない実温度を測定可能なものであればよい。
【0020】
一例として
図1に示された温度センサ3は、容器体2の開口部21から観察される溶湯の温度を、溶湯に接触することなく遠方から測定することが可能な2色放射温度計である。2色放射温度計は、流体物の表面から放射される異なる2つの測定波長における熱放射の強度比に基づいて流体物の温度を測定するため、流体物の表面の放射率の影響を受けず、不純物22の有無に関わらず流体物の実温度を測定することができる。この場合、温度センサ3は
図1に示されるように、容器体2の開口部21から溶湯の温度を測定可能な、容器体2の上方の所定位置に設置される。
【0021】
なお、容器体2内の流体物が高温でない場合には、温度センサ3として、流体物に接触して流体物の温度を測定する熱電対又はサーミスタ等の半導体温度センサが用いられてもよい。
【0022】
赤外線撮像装置4は、所定周期(例えば1秒)ごとに容器体2に保持された流体物の表面の温度分布画像41を撮影し、撮影した温度分布画像41を、赤外線撮像装置4が内蔵する通信回路を介して、無線又は有線通信により不純物検出装置5に出力する。
【0023】
一例として
図1に示された赤外線撮像装置4は、流体物の表面から放射される赤外線のスペクトルに基づいて流体物の表面の温度分布を測定し、測定した温度分布を色分布として表した温度分布画像41を出力する赤外線サーモグラフィカメラである。赤外線サーモグラフィカメラは、前述の2色放射温度計とは異なり、流体物の表面の放射率の影響を受ける。このため、赤外線撮像装置4によって撮影される温度分布画像41は、不純物22の有無に応じて温度分布を表す色分布が変化する。赤外線撮像装置4は、
図1に示されるように、温度分布画像41の撮影範囲に容器体2の開口部21が含まれるように、容器体2の上方の所定位置に設置される。
【0024】
不純物検出装置5は、赤外線撮像装置4によって撮影された温度分布画像41における流体物の温度と、温度センサ3によって測定された流体物の実温度との温度差に基づいて、所定量を超える不純物22が流体物に混在しているか否かを判定する。この所定量は、例えば、流体物に混在する不純物22が製造物の品質に影響を与えないような不純物22の最大許容量とされる。具体的な不純物検出方法については、この後、
図2を参照して説明する。不純物検出装置5は、所定量を超える不純物22が流体物に混在していることを検出すると、流体物に混在している不純物22の除去を指示するための信号を、不純物除去ロボット6のロボット制御装置61に出力する。
【0025】
不純物検出装置5は、例えば、サーバ装置、タブレット端末、タブレットPC(Personal Computer)、多機能携帯電話(所謂「スマートフォン」)、携帯情報端末(Personal Digital Assistant, PDA)、ノートPC等とされる。
【0026】
不純物除去ロボット6は、不純物検出装置5から出力される不純物除去を指示するための信号に応じて、容器体2内の流体物に混在する不純物22を除去する産業用ロボットである。不純物除去ロボット6は、容器体2の周辺に、鉛直軸を中心として回動可能に設置される。不純物除去ロボット6は、関節部によって互いに接続された複数の腕部を備え、流体物に混在する不純物22を取得するために、不純物取得部材62を容器体2内に挿入する動作を実施し得る。不純物除去ロボット6は、流体物に混在する不純物22を不純物取得部材62により取得すると、不純物取得部材62を容器体2の外側に移動させて、取得した不純物22を容器体2から除去する。
【0027】
不純物除去ロボット6は、流体物に混在する不純物22の容器体2内の具体的な位置が分からなくとも、所定量を超える不純物22が流体物に混在している場合には、不純物取得部材62を用いて不純物22を容器体2から除去することができるように構成される。容器体2内には、不純物除去ロボット6が不純物22を取得しやすくするために、不純物22を凝固させるための凝固剤等が入れられてもよい。
【0028】
ロボット制御装置61は、不純物検出装置5から不純物除去指示の信号を受信するための受信回路と、受信した信号に応じて不純物除去ロボット6を制御するための制御回路を少なくとも有する。ロボット制御装置61は、不純物除去ロボット6の外部に設置されてもよい。
【0029】
図2(a)及び
図2(b)は、不純物検出方法の一例を説明するための模式図である。
図2(a)は、所定量を超えない不純物22が流体物に混在している場合に撮影される温度分布画像41の一例を示し、
図2(b)は、所定量を超える不純物22が流体物に混在している場合に撮影される温度分布画像41の一例を示している。
【0030】
前述のとおり、赤外線撮像装置4によって撮影される温度分布画像41は、撮影対象物の放射率の影響を受ける。例えば、製造工程が金属材料の溶解工程である場合、不純物22である金属酸化物等の放射率は、流体物である溶湯の放射率よりも大きい。この場合、流体物の温度と不純物22の温度が同じであっても、温度分布画像41は、不純物22が多く混在している領域ほど相対的に温度が高く見えるように撮影される。
【0031】
一般的な赤外線サーモグラフィカメラ等の温度分布画像41では、撮影対象物の有する放射率を予め設定することが可能であり、温度分布画像41は、この設定された放射率を撮影対象物が有するものとして撮影される。例えば、撮影対象物の放射率として流体物の放射率が設定された赤外線撮像装置4によって撮影された温度分布画像41では、不純物22が混在していない領域は、温度センサ3によって測定された実温度と同じ温度で表示される。一方、不純物22が混在している領域は、温度センサ3によって測定された実温度よりも高い温度で表示される。
【0032】
そこで、不純物検出装置5は、赤外線撮像装置4によって撮影された温度分布画像41における流体物の温度と、温度センサ3によって測定された実温度との温度差に基づいて、所定量を超える不純物22が流体物に混在しているか否かを判定することができる。具体的には、不純物検出装置5は、温度分布画像41の所定領域における流体物の平均温度と、流体物の実温度との温度差が閾値以上である場合に、所定量を超える不純物22が流体物に混在していると判定することができる。この所定領域は、例えば、容器体2の開口部21に対応する温度分布画像41上の領域として設定される。また、この閾値は、例えば実測等に基づいて、所定量の不純物22が流体物に混在しているときに撮影される温度分布画像41の、所定領域における流体物の平均温度と実温度との温度差として設定される。
【0033】
図2(a)に示す温度分布画像41は、所定量を超えない不純物22が流体物に混在している場合の一例を示しており、所定領域の平均温度(1600K)と実温度(1500K)との温度差は100Kである。一方、
図2(b)に示す温度分布画像41は、所定量を超える不純物22が流体物に混在している場合の一例を示しており、所定領域の平均温度(1700K)と実温度(1500K)との温度差は200Kである。この場合、不純物検出装置5は、温度分布画像41の所定領域における流体物の平均温度と流体物の実温度との温度差が第1の閾値(=200K)以上である場合に、所定量を超える不純物22が流体物に混在していると判定することができる。
【0034】
なお、
図2(a)及び
図2(b)において、平均温度の代わりに最高温度が用いられてもよい。すなわち、不純物検出装置5は、所定領域の最高温度(1900K)と実温度(1500K)との温度差が、第1の閾値よりも大きい第2の閾値(=400K)以上である場合に、所定量を超える不純物22が流体物に混在していると判定してもよい。更に、平均温度と最高温度の両方が用いられてもよい。すなわち、不純物検出装置5は、所定領域の平均温度と実温度との温度差が第1の閾値以上であり、かつ、所定領域の最高温度と実温度との温度差が第2の閾値以上である場合に、所定量を超える不純物22が流体物に混在していると判定してもよい。なお、不純物22の放射率が流体物の放射率よりも小さい場合には、最高温度の代わりに最低温度が用いられる。
【0035】
図2(a)に示されるように所定量を超えない不純物22が流体物に混在している場合、不純物22が製造物の品質に与える影響は小さく、また、この状況で不純物除去ロボット6が不純物除去処理を実施しても作業効率が低い。したがって、不純物検出装置5は、所定量を超えない不純物22が流体物に混在していると判定した場合には、不純物除去を指示するための信号をロボット制御装置61に出力しない。
【0036】
一方、
図2(b)に示されるように所定量を超える不純物22が流体物に混在している場合、不純物22が製造物の品質に与える影響は大きい。したがって、不純物検出装置5は、所定量を超える不純物22が流体物に混在していると判定した場合には、不純物除去を指示するための信号をロボット制御装置61に出力する。
【0037】
図3は、不純物検出装置5の概略構成の一例を示す図である。不純物検出装置5は、通信部51、記憶部52、及び処理部53を有する。
【0038】
通信部51は、無線LAN(Local Area Network)等のアクセスポイント(図示せず)を介して、温度センサ3、赤外線撮像装置4、及びロボット制御装置61と無線通信を行うための通信インターフェース回路を有する。この無線通信方式として、例えば、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.11規格に準拠した無線通信方式が用いられる。なお、通信部51は、基地局(図示せず)等により割り当てられるチャネルを介して、基地局との間でLTE(Long Term Evolution)方式、又は第5世代(5G)移動通信システム等による無線通信回線を確立し、基地局との間で通信を行ってもよい。また、通信部51は、有線LANの通信インターフェース回路を備えてもよい。
【0039】
記憶部52は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリを備える。記憶部52は、処理部53における処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部52は、ドライバプログラムとして、通信部51を制御する通信デバイスドライバプログラムを記憶する。また、記憶部52は、アプリケーションプログラムとして、後述する不純物検出処理を処理部53に実行させるためのコンピュータプログラムを記憶する。
【0040】
記憶部52は、データとして、通信部51を介して温度センサ3から受信した実温度データ31を記憶する。また、記憶部52は、通信部51を介して赤外線撮像装置4から受信した温度分布画像41を記憶する。また、記憶部52は、その他の各種処理に係るデータ等を一時的に記憶してもよい。
【0041】
処理部53は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部53は、不純物検出装置5の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。処理部53は、記憶部52に記憶されているオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、及びアプリケーションプログラム等に基づいて、不純物検出装置5における各種処理を実行する。また、処理部53は、記憶部52に記憶されているコンピュータプログラム等に基づいて、通信部51等の動作を制御する。処理部53は、複数のコンピュータプログラムを並列に実行することが可能である。
【0042】
処理部53は、実温度取得部531、温度分布取得部532、判定部533、及び出力部534を有する。処理部53が有するこれらの各部は、処理部53が備えるプロセッサで実行されるコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。或いは、処理部53が有するこれらの各部は、ファームウェアとして不純物検出装置5に実装されてもよい。
【0043】
図4及び
図5は、処理部53が有する実温度取得部531、温度分布取得部532、判定部533、及び出力部534によって実行される不純物検出処理の一例を示すフローチャートである。
図4及び
図5に示すフローチャートは、処理部53が有する各部によって、所定周期(例えば1秒)ごとに実行される。
【0044】
まず、実温度取得部531は、実温度データ31を記憶部52から取得する(ステップS101)。実温度データ31は、所定のタイミングにおいて温度センサ3によって測定された、容器体2内の流体物の実温度のデータである。この所定のタイミングは、例えば、容器体2に流体物が流入してから一定時間が経過したタイミングであってもよく、容器体2に凝固剤が入れられたタイミングであってもよく、作業者による撮影操作に応じたタイミングであってもよい。前述のとおり、温度センサ3は、所定周期ごとに測定した実温度のデータを不純物検出装置5に送信する。温度センサ3から送信された実温度のデータは、通信部51を介して処理部53によって受信されて、記憶部52に実温度データ31として記憶される。
【0045】
次に、温度分布取得部532は、温度分布画像41を記憶部52から取得する(ステップS102)。温度分布画像41は、実温度データ31と同様に、所定のタイミングにおいて赤外線撮像装置4によって撮影された、容器体2内の流体物の表面の温度分布を色分布として表した画像データである。温度分布画像41は、静止画であってもよく、動画であってもよい。前述のとおり、赤外線撮像装置4は、所定周期ごとに撮影した温度分布画像41を不純物検出装置5に送信する。赤外線撮像装置4から送信された温度分布画像41は、通信部51を介して処理部53によって受信されて、記憶部52に記憶される。
【0046】
次に、判定部533は、温度分布取得部532によって取得された温度分布画像41の所定領域における平均温度を算出する(ステップS103)。この所定領域は、例えば、前述のように、容器体2の開口部21に対応する温度分布画像41上の領域とされる。判定部533は、温度分布画像41の所定領域における平均温度を算出するために、温度分布画像41上の所定領域の範囲を予め記憶部52に記憶しておき、取得された温度分布画像41から所定領域を切り出す画像処理を実行してもよい。これにより、温度分布画像41の撮影範囲に含まれる容器体2又は容器体2外の物体の温度が、温度分布画像41の所定領域における平均温度の算出に影響することが避けられる。
【0047】
次に、判定部533は、放射率の影響を受けた温度分布画像41における流体物の温度と、放射率の影響を受けていない実温度との温度差に基づいて、所定量を超える不純物が流体物に混在しているか否かを判定する。例えば、判定部533は、温度分布画像41の所定領域における流体物の平均温度と、流体物の実温度との温度差が閾値以上である場合に、所定量を超える不純物が流体物に混在していると判定する(ステップS104)。前述のとおり、平均温度とともに或いは代わりに、最高温度又は最低温度が用いられてもよい。
【0048】
判定部533によって所定量を超える不純物が流体物に混在していると判定された場合(ステップS104-Yes)、出力部534は、不純物除去を指示するための信号を、ロボット制御装置61に出力する(ステップS105)。一方、判定部533によって所定量を超える不純物が流体物に混在していないと判定された場合(ステップS104-No)、出力部534は不純物検出処理を終了する。
【0049】
次に、出力部534は、不純物除去指示がロボット制御装置61に送信されてから、不純物除去ロボット6が不純物を除去するために必要とされる所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS106)。そして、出力部534は、所定時間が経過するまで待機する(ステップS106-No)。
【0050】
所定時間が経過すると(ステップS106-Yes)、実温度取得部531は、ステップS101と同様にして、最新の実温度データ31を記憶部52から再取得する(ステップS107)。また、温度分布取得部532は、ステップS102と同様にして、最新の温度分布画像41を記憶部52から再取得する(ステップS108)。
【0051】
次に、判定部533は、温度分布取得部532によって再取得された温度分布画像41の所定領域における平均温度を再算出する(ステップS109)。そして、判定部533は、放射率の影響を受けた温度分布画像41における流体物の温度と、放射率の影響を受けていない実温度との温度差に基づいて、所定量を超える不純物が流体物に混在しているか否かを再判定する(ステップS110)。これにより、判定部533は、不純物除去ロボット6によって不純物除去作業が実施された後に、依然として所定量を超える不純物が流体物に混在しているか否かを判定することができる。
【0052】
判定部533によって所定量を超える不純物が流体物に混在していると判定された場合(ステップS110-Yes)、出力部534は、不純物除去を指示するための信号を、ロボット制御装置61に再出力する(ステップS111)。一方、判定部533によって所定量を超える不純物が流体物に混在していないと判定された場合(ステップS110-No)、出力部534は不純物検出処理を終了する。
【0053】
次に、出力部534は、不純物除去指示がロボット制御装置61に送信されてから、不純物除去ロボット6が不純物を除去するために必要とされる所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS112)。そして、出力部534は、所定時間が経過するまで待機する(ステップS112-No)。
【0054】
所定時間が経過すると(ステップS112-Yes)、実温度取得部531は、ステップS107に処理を戻す。これにより、不純物検出装置5は、所定量を超える不純物が流体物に混在しなくなるまで、不純物除去ロボット6に不純物除去作業を継続させることができる。
【0055】
以上、詳述したように、不純物検出装置は、流体物に混在する不純物を検出する不純物検出装置であって、温度センサによって測定された流体物の実温度を取得する実温度取得部と、赤外線撮像装置によって撮影された流体物の表面の放射率の影響を受けた温度分布画像を取得する温度分布取得部と、温度分布画像における流体物の温度と実温度との温度差に基づいて、所定量を超える不純物が流体物に混在しているか否かを判定する判定部と、を有することを特徴とする。これにより、流体物に混在する不純物を検出することが可能な不純物検出装置、不純物検出方法、及びコンピュータプログラムが提供される。
【0056】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、出力部534は、不純物除去ロボット6の周辺に人物が存在しない場合に限り、不純物除去指示をロボット制御装置61に送信するようにしてもよい。これにより、不純物除去ロボット6の周辺に作業員等が存在する可能性がある場合に、不純物除去ロボット6の動作により事故が発生することを未然に防止することが可能となる。
【0057】
不純物除去ロボット6の周辺に人物が存在するか否かは、例えば、不純物除去ロボット6の周辺を撮影する不図示の撮像装置によって撮影された画像データ内に、人物を示す画像が含まれるか否かによって判定することができる。画像データ内に人物を示す画像が含まれるか否かの判定は、公知の画像処理方法によって実行される。例えば、不純物検出装置5は、撮像装置によって取得された、人物が含まれない画像データを背景画像データとして予め記憶しておく。そして、不純物検出装置5は、撮像装置によって取得された画像データと背景画像データとを比較して、両者に相違がある画像領域が所定範囲以上である場合に、撮像装置によって撮影された画像データ内に人物を示す画像が含まれると判定する。
【0058】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0059】
1 不純物除去システム
2 容器体
3 温度センサ
4 赤外線撮像装置
5 不純物検出装置
6 不純物除去ロボット
21 開口部
22 不純物
31 実温度データ
41 温度分布画像
51 通信部
52 記憶部
53 処理部
61 ロボット制御装置
62 不純物取得部材
531 実温度取得部
532 温度分布取得部
533 判定部
534 出力部