(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】車両の上げ下げシーケンスを制御する方法、及びシャーシ構造体と荷重運搬本体とを備える車両
(51)【国際特許分類】
B60P 1/04 20060101AFI20230210BHJP
B60P 1/16 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
B60P1/04 C
B60P1/16 Z
(21)【出願番号】P 2021559680
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2019059502
(87)【国際公開番号】W WO2020207599
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ハガースカンス,ヨーナス
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0236606(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0336883(US,A1)
【文献】国際公開第87/002128(WO,A1)
【文献】特開2017-094859(JP,A)
【文献】特開2008-213685(JP,A)
【文献】特開2001-105954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/00- 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシ構造体(10)と、車両(1)のピッチ軸(Y)又はロール軸(X)のうちの何れかに実質的に平行である枢動(pivotally)軸に関して、前記シャーシ構造体(10)上に枢動可能に取り付けられた荷重運搬本体(20)とを備える車両の、該荷重運搬本体(20)の上げ下げシーケンスを制御する方法であって、
前記車両(1)は、前記シャーシ構造体上に設けられた、該シャーシ構造体のロール角及びピッチ角を測定する検知手段(11)と、前記荷重運搬本体上に設けられた、該荷重運搬本体のロール角及びピッチ角を測定する検知手段(21)とを備えるものであり、
前記検知手段によって、前記上げ下げシーケンス中に前記シャーシ構造体及び前記荷重運搬本体のロール角及びピッチ角を測定するステップ(S1)と、
或る基準に対する、それぞれ前記シャーシ構造体及び前記荷重運搬本体の絶対ロール角及び絶対ピッチ角を求めるステップ(S2)と、
前記荷重運搬本体が前記ピッチ軸に実質的に平行である前記枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記シャーシ構造体及び前記荷重運搬本体の前記測定されたロール角同士を比較することによって、前記シャーシ構造体と前記荷重運搬本体との間の相対ロール角(α
1)を求めるか、又は、前記荷重運搬本体が前記ロール軸に実質的に平行である前記枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記シャーシ構造体及び前記荷重運搬本体の前記測定されたピッチ角同士を比較することによって、前記シャーシ構造体と前記荷重運搬本体との間の相対ピッチ角を求めるステップ(S3)と、
少なくとも前記求められた絶対角度及び前記求められた相対角度に基づいて前記上げ下げシーケンスを制御するステップ(S4)と、を含
み、
更に、前記荷重運搬本体が前記ピッチ軸に実質的に平行である前記枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記相対ロール角が第1の所定の相対ロール角閾値以上であるとき、前記荷重運搬本体を緊急的に下げるか、又は、前記荷重運搬本体が前記ロール軸に実質的に平行である前記枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記相対ピッチ角が第1の所定の相対ピッチ角閾値以上であるとき、前記荷重運搬本体を緊急的に下げるステップを含む、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記上げ下げシーケンスは、制御ループによって制御され、前記測定されたロール角及び前記測定されたピッチ角は、入力として提供され、少なくとも前記荷重運搬本体を上げる第1の要求及び好ましくは前記荷重運搬本体を下げる第2の後続の要求が出力として提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シャーシ構造体又は前記荷重運搬本体の前記絶対ロール角が第1の所定の絶対ロール角閾値以上である場合、前記荷重運搬本体を緊急的に下げ、及び/又は前記荷重運搬本体を上げることを防止するステップを更に含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シャーシ構造体の前記絶対ピッチ角が第1の所定の絶対ピッチ角閾値以上である場合、前記荷重運搬本体を緊急的に下げ、及び/又は前記荷重運搬本体を上げることを防止するステップを更に含む、請求項1~
3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記荷重運搬本体の前記絶対ピッチ角が第2の所定の絶対ピッチ角閾値以上である場合、前記荷重運搬本体を緊急的に下げるステップを更に含む、請求項1~
4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記荷重運搬本体が前記ピッチ軸に実質的に平行である前記枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記シャーシ構造体及び前記荷重運搬本体の前記測定されたピッチ角同士を比較することによって、前記シャーシ構造体と前記荷重運搬本体との間の相対ピッチ角を求めるか、又は、前記荷重運搬本体が前記ロール軸に実質的に平行である前記枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記シャーシ構造体及び前記荷重運搬本体の前記測定されたロール角同士を比較することによって、前記シャーシ構造体と前記荷重運搬本体との間の相対ロール角を求めるステップを更に含む、請求項1~
5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記荷重運搬本体が前記ピッチ軸に実質的に平行である前記枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記相対ピッチ角が第2の所定の相対ピッチ角閾値以上であるとき、前記荷重運搬本体が完全に上げられていると判断するか、又は、前記荷重運搬本体が前記ロール軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記相対ロール角が第2の所定の相対ロール角閾値以上であるとき、前記荷重運搬本体が完全に上げられていると判断するステップを更に含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記荷重運搬本体が完全に上げられていると判断された場合、該荷重運搬本体を上げる要求を中止するステップを更に含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記荷重運搬本体が前記ピッチ軸に実質的に平行である前記枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記相対ピッチ角が第3の所定の相対ピッチ角閾値以下であるとき、前記上げ下げシーケンスが完了したと判断するか、又は、前記荷重運搬本体が前記ロール軸に実質的に平行である前記枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記相対ロール角が第3の所定の相対ロール角閾値以下であるとき、前記上げ下げシーケンスが完了したと判断するステップを更に含む、請求項
6~
8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記上げ下げシーケンスが完了したと判断された場合、前記車両の運転を開始する要求を提供するステップを更に含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記荷重運搬本体が前記ピッチ軸に実質的に平行である前記枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記検知手段によって、前記上げ下げシーケンス中に前記荷重運搬本体のピッチ角速度を測定し、前記測定されたピッチ角速度に基づいて前記上げ下げシーケンスを更に制御するか、又は、前記荷重運搬本体が前記ロール軸に実質的に平行である前記枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、前記検知手段によって、前記上げ下げシーケンス中に前記荷重運搬本体のロール角速度を測定し、前記測定されたロール角速度に基づいて前記上げ下げシーケンスを更に制御するステップを更に含む、請求項1~
10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
車両(1)の荷重運搬本体(20)の上げ下げシーケンスを制御する制御ユニット(100)であって、請求項1~
11の何れか1項に記載の方法のステップを実行するように構成される、制御ユニット。
【請求項13】
シャーシ構造体(10)と、ピッチ軸(Y)又はロール軸(X)のうちの何れかに実質的に平行である枢動軸に関して、前記シャーシ構造体上に枢動可能に取り付けられた荷重運搬本体(20)とを備える車両(1)であって、
前記シャーシ構造体上に設けられた、該シャーシ構造体のロール角及びピッチ角を測定する検知手段(11)、及び、前記荷重運搬本体上に設けられた、該荷重運搬本体のロール角及びピッチ角を測定する検知手段(21)と、
請求項
12に記載の制御ユニット(100)と、
を備える、車両。
【請求項14】
前記シャーシ構造体及び/又は前記荷重運搬本体の前記検知手段は、傾斜センサ、加速度計、ジャイロスコープ等のうちの1つである、請求項
13に記載の車両。
【請求項15】
自律車両である、請求項
13又は
14に記載の車両。
【請求項16】
コンピュータプログラムであって、コンピュータ上で実行されると、請求項1~
11の何れか1項に記載のステップを実行するプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム。
【請求項17】
コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると、請求項1~
11の何れか1項に記載のステップを実行するプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラムを担持しているコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャーシ構造体と、このシャーシ構造体上に枢動(pivotally)可能に取り付けられた荷重運搬本体とを備える車両の、該荷重運搬本体の上げ下げシーケンスを制御する方法に関する。また、本発明は、車両の上げ下げシーケンスを制御する制御ユニット、この制御ユニットを備える車両、コンピュータプログラム、及びコンピュータプログラムを担持しているコンピュータ可読媒体に更に関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス及び建設機械等の大型車両(heavy-duty vehicle)において適用することができる。また、本発明は、ティッパートラック(tipper truck)に関して主に説明されるが、この特定の車両に制限されず、荷重運搬本体を備えるトレーラ、及び荷重運搬本体を備える建設機械車両等の他の車両において使用することもできる。
【背景技術】
【0003】
例えば、ダンプトラックとしても知られているティッパートラックは、通例、砂、砂利及び解体廃棄物等のばら材料(loose material)を運搬するのに使用される。これらのトラックは、一般的には、シャーシ構造体と、このシャーシ構造体上に枢動可能に取り付けられたティッパー本体の形態の荷重運搬本体とを備える。ティッパー本体は、上記で言及された砂、砂利及び解体材料等の荷重を運搬するのに適している。
【0004】
大半のタイプの車両の一般的な傾向は、例えば、道路上に留まるように運転者をサポートするシステム、アダプティブ・クルーズ・コントロールシステム等のより高度な運転支援システムが実施されるという方向に移っているというものである。また、車両は、より自律的になる傾向があり、車両が、人間による直接の関与を一切伴わずに少なくとも限られた期間にわたって移動すると共に或る特定のタスクを実行することが可能になる。これらの傾向は、比較的小型の車両のみについて見受けられるものではなく、例えばティッパートラックを含む商用車両についても見受けられる。
【0005】
ティッパートラックは、傾けシーケンス中に運転者をサポートするための或る特定のタイプのセンサを備える場合がある。例えば、米国特許出願公開第2014/0336883号は、シャーシ及び本体を備える第2のフレームにカップリングによって接続された第1のフレームを備える関節式作業機械を開示している。第1のフレーム及び本体の相対配向は、第1のフレーム及び本体上に取り付けられた慣性センサからの出力を使用することによって求めることができる。この関節式作業機械は、本体及びフレームの互いに対する位置を計算するためにセンサの出力同士を比較するように構成されたコントローラを更に備える。様々な角度の安全限度を設定することによって、運転者をサポートするために角度情報を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2014/0336883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、自律車両又は半自律車両の場合、通常、例えば、傾けシーケンスをモニタリングすることができる運転者は存在しない。したがって、ティッパー本体等の荷重運搬本体を有する自律車両又は半自律車両のためのより高度な制御システムを開発する努力がなされている。
【0008】
本発明の目的は、車両の、荷重運搬本体の安全かつ効率的な上げ下げシーケンスを提供する改善された方法を提供することである。別の目的は、安全かつ効率的な方法において枢動可能に取り付けられた荷重運搬本体の上げ下げシーケンスを自動的に実行することができる改善された車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様によれば、上記目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。第2の態様によれば、上記目的は、請求項13に記載の制御ユニットによって達成される。第3の態様によれば、上記目的は、請求項14に記載の車両によって達成される。第4の態様によれば、上記目的は、請求項17に記載のコンピュータプログラムによって達成される。第5の態様によれば、上記目的は、請求項18に記載のプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラムを担持しているコンピュータ可読媒体によって達成される。
【0010】
第1の態様によれば、上記目的は、シャーシ構造体と、車両のピッチ軸又はロール軸のうちの何れかに実質的に平行である枢動(pivotally)軸に関して、シャーシ構造体上に枢動可能に取り付けられた荷重運搬本体とを備える車両の、荷重運搬本体の上げ下げシーケンスを制御する方法であって、車両は、シャーシ構造体上に設けられた、シャーシ構造体のロール角及びピッチ角を測定する検知手段と、荷重運搬本体上に設けられた、荷重運搬本体のロール角及びピッチ角を測定する検知手段とを備えることを特徴とし、以下の方法によって達成される。上記方法は、検知手段によって、上げ下げシーケンス中にシャーシ構造体及び荷重運搬本体のロール角及びピッチ角を測定することと、或る基準に対して、シャーシ構造体及び荷重運搬本体の絶対ロール角及び絶対ピッチ角をそれぞれ求めることと、荷重運搬本体がピッチ軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、シャーシ構造体及び荷重運搬本体の測定されたロール角同士を比較することによって、シャーシ構造体と荷重運搬本体との間の相対ロール角を求めるか、又は、荷重運搬本体がロール軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、シャーシ構造体及び荷重運搬本体の測定されたピッチ角同士を比較することによって、シャーシ構造体と荷重運搬本体との間の相対ピッチ角を求めることと、少なくとも求められた絶対角度及び求められた相対角度に基づいて上げ下げシーケンスを制御することと、を含む。
【0011】
本明細書において使用される「ロール角」及び「ピッチ角」は、当業者によって既知の表現である。例えば、ロール角は、車両の長手方向において延在する車両の第1の軸、すなわち、ロール軸の回りの回転角と定義することができ、ピッチ角は、第1の軸に垂直でありかつ第1の軸と交差し、車両の横方向において延在する車両の第2の軸、すなわち、ピッチ軸の回りの回転角と定義することができる。
【0012】
本明細書において、荷重運搬本体に使用される「上げ下げシーケンス」という表現は、荷重運搬本体が任務を遂行するために、例えば、荷重を傾ける及び/又はシャーシ構造体から荷重運搬本体を解放するためにシャーシ構造体に対して少なくとも枢動する動作を意味する。したがって、上げ下げシーケンスは、荷重運搬本体が、シャーシ構造体と荷重運搬本体との間の枢動取り付けによってシャーシ構造体に対して枢動されるときに実行される。1つの好ましい実施の形態によれば、上げ下げシーケンスは、荷重運搬本体がティッパー本体である傾けシーケンスである。
【0013】
本明細書において使用される「荷重運搬本体」という表現は、荷重を運搬するように適合され、荷重用のレセプタクル及び/又はコンテナである本体を意味する。好ましい実施の形態によれば、荷重運搬本体は、ティッパー本体である。
【0014】
任意選択で、絶対ロール角及び絶対ピッチ角を求めるのに使用される基準は、例えば地球の重力に基づく基準軸及び/又は基準平面とすることができ、これにより、絶対ロール角及び絶対ピッチ角は、例えば、人工水平儀を基準にして測定してもよい。
【0015】
本明細書において開示される方法によって、荷重運搬本体のより安全かつより効率的な上げ下げシーケンスが提供される。より詳細には、シャーシ構造体及び荷重運搬本体の双方に対してロール角及びピッチ角を測定する検知手段を有することによって、上げ下げシーケンスをより効率的に制御することができる。なぜならば、これにより、より関連した角度情報が提供されるためである。実際、本発明者は、上げ下げシーケンスを制御するために絶対ロール角及び絶対ピッチ角のみが重要であるのではなく、いかに荷重運搬本体がシャーシ構造体上に枢動可能に取り付けられるのか、すなわち、車両のピッチ軸に実質的に平行であるか、又はロール軸に実質的に平行であるかの何れかに応じて、シャーシ構造体と荷重運搬本体との間の相対ロール角又は相対ピッチ角も重要であることを認識した。これは、上げ下げシーケンスが自律的に、すなわち、人間による直接の関与を一切伴わずに行われる場合、又は、例えば自律車両において上げ下げシーケンスをモニタリングすることができる運転者が存在しない場合、特に重要であることを示している。相対ロール角情報又は相対ピッチ角情報は、上げ下げシーケンス中に致命的なエラーを効率的に検出するのに使用することができる。例えば、リフトアーム、例えば、油圧シリンダは、シーケンス中に損傷又は破損する場合があり、これは、いかに荷重運搬本体がシャーシ構造体上に枢動可能に取り付けられるのかに応じて、上げ下げシーケンス中に相対ロール角又は相対ピッチ角を観測することによって識別することができる。
【0016】
任意選択で、上げ下げシーケンスは、制御ループによって制御することができ、測定されたロール角及び測定されたピッチ角は、入力として提供され、少なくとも荷重運搬本体を上げる第1の要求及び好ましくは荷重運搬本体を下げる第2の後続の要求が出力として提供される。実際、本方法は、人間による直接の関与を一切伴わない上げ下げシーケンスの自動制御に特に適していることが分かっている。それにより、上記のような制御ループにおいて上げ下げシーケンスを実施することによって、上げ下げシーケンスは、安全性を妥協することなく効率的に実行することができる。
【0017】
任意選択で、本方法は、荷重運搬本体がピッチ軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、相対ロール角が第1の所定の相対ロール角閾値以上であるとき、荷重運搬本体を緊急的に下げるか、又は、荷重運搬本体がロール軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、相対ピッチ角が第1の所定の相対ピッチ角閾値以上であるとき、荷重運搬本体を緊急的に下げるステップを更に含むことができる。したがって、上げ下げシーケンス中、荷重運搬本体がピッチ軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、相対ロール角が第1の所定の相対ロール角閾値以上であることが検出されたとき、荷重運搬本体が下げられ、好ましくは初期位置に下げられ、それにより、致命的なエラーのリスクが低下する。
さらに、上げ下げシーケンス中、荷重運搬本体がロール軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、相対ピッチ角が第1の所定の相対ピッチ角閾値以上であることが検出されたとき、荷重運搬本体が下げられ、好ましくは初期位置に下げられ、それにより、致命的なエラーのリスクが低下する。例えば、そのようなエラーは、荷重運搬本体を上げるのに使用される故障している油圧シリンダによって引き起こされ得る。
また、任意選択で、上げ下げシーケンスが自律的に実行されるイベントにおいて、本方法は、相対ロール角又は相対ピッチ角が閾値以上であることに関するエラーに関して通知するエラー信号をリモートセンタに提出するステップを更に含むことができる。それにより、リモートセンタは、事故に関して通知を受け、それにより、例えば、車両にサービスセンタ等の特定の位置へ走行することを要求する等、必要なアクションを講じることができる。
【0018】
任意選択で、本方法は、シャーシ構造体又は荷重運搬本体の絶対ロール角が第1の所定の絶対ロール角閾値以上である場合、荷重運搬本体を緊急的に下げ、及び/又は荷重運搬本体を上げることを防止するステップを更に含むことができる。例えば、荷重運搬本体及び/又はシャーシ構造体の絶対ロール角は、車両が転倒するリスクを低下させるために或る特定の角度を超過しないようにすることができる。それにより、絶対シャーシ構造体及び/又は荷重運搬本体ロール角(複数の場合もある)が閾値未満であることをモニタリングすることによって、転倒保護を図ることができる。
【0019】
任意選択で、本方法は、シャーシ構造体の絶対ピッチ角が第1の所定の絶対ピッチ角閾値以上である場合、荷重運搬本体を緊急的に下げ、及び/又は荷重運搬本体を上げることを防止するステップを更に含むことができる。上記と類似の理由のため、シャーシ構造体の絶対ピッチ角をモニタリングすることにより、車両が例えば上げ下げシーケンス前及び/又は中に傾斜地面に位置する場合に車両が転倒することが防止され得る。また、任意選択で、本方法は、荷重運搬本体の絶対ピッチ角が第2の所定の絶対ピッチ角閾値以上である場合、荷重運搬本体を緊急的に下げるステップを更に含むことができる。
【0020】
任意選択で、本方法は、荷重運搬本体がピッチ軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、シャーシ構造体及び荷重運搬本体の測定されたピッチ角同士を比較することによって、シャーシ構造体と荷重運搬本体との間の相対ピッチ角を求めるか、又は、荷重運搬本体がロール軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、シャーシ構造体及び荷重運搬本体の測定されたロール角同士を比較することによって、シャーシ構造体と荷重運搬本体との間の相対ロール角を求めるステップを更に含むことができる。それにより、上げ下げシーケンス中、現在の上げ下げ角度を、好ましくは上記で言及された制御ループへの入力として提供することができる。現在の上げ下げ角度は、一実施の形態において、シャーシ構造体に対する現在の傾き角と定義することができる。
【0021】
任意選択で、本方法は、荷重運搬本体がピッチ軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、相対ピッチ角が第2の所定の相対ピッチ角閾値以上であるとき、荷重運搬本体が完全に上げられていると判断するか、又は、荷重運搬本体がロール軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、相対ロール角が第2の所定の相対ロール角閾値以上であるとき、荷重運搬本体が完全に上げられていると判断するステップを更に含むことができる。
代替的に、本方法は、荷重運搬本体がピッチ軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、シャーシ構造体の相対ピッチ角及び絶対ピッチ角が第2の所定の相対ピッチ角閾値以上であるとき、荷重運搬本体が完全に上げられていると判断するステップ、又は、荷重運搬本体がロール角に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、シャーシ構造体の相対ロール角及び絶対ロール角が第2の所定の相対ロール角閾値以上であるとき、荷重運搬本体が完全に上げられていると判断するステップを更に含むことができる。それにより、荷重運搬本体が完全に上げられていると判断された場合、荷重運搬本体を上げる要求を中止することができる。
したがって、また、本方法は、任意選択で荷重運搬本体が完全に上げられていると判断された場合、荷重運搬本体を上げる要求を中止するステップを更に含むことができる。上げる要求を中止することにより、上げ下げシーケンス中のエネルギー消費が削減され得る。例えば、油圧シリンダが荷重運搬本体を上げ下げするのに使用される場合、上げる要求を中止することによって、消費するエネルギーが少なくなり得る。これは、上げ下げ動作が上記で言及された制御ループによって実行される場合、及び上げ下げシーケンスをモニタリングする運転者が存在しない場合、有利であることが分かった。
【0022】
任意選択で、本方法は、荷重運搬本体がピッチ軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、相対ピッチ角が第3の所定の相対ピッチ角閾値以下であるとき、上げ下げシーケンスが完了したと判断するか、又は、荷重運搬本体がロール軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、相対ロール角が第3の所定の相対ロール角閾値以下であるとき、上げ下げシーケンスが完了したと判断するステップを更に含むことができる。
また、任意選択で、本方法は、上げ下げシーケンスが完了したと判断された場合、車両の運転を開始する要求を提供するステップを更に含むことができる。例えば、要求は、自律運転制御ユニットに提供することができ、この自律運転制御ユニットは車両上に設けることができ、この自律運転制御ユニットは、次に、上げ下げシーケンスが完了したとみなされた後、車両の走行を開始する。これに関して、車両は、必ずしも上げ下げシーケンス中に静止する必要はなく、したがって、提供される運転要求は、むしろ、上げ下げシーケンスが実行されたロケーションから離れるように走行することに関する追加の運転要求とすることができることに留意する必要がある。
【0023】
任意選択で、本方法は、荷重運搬本体がピッチ軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、検知手段によって、上げ下げシーケンス中に荷重運搬本体のピッチ角速度を測定し、測定されたピッチ角速度に基づいて上げ下げシーケンスを更に制御するか、又は、荷重運搬本体がロール軸に実質的に平行である枢動軸に関して枢動可能に取り付けられる場合、検知手段によって、上げ下げシーケンス中に荷重運搬本体のロール角速度を測定し、測定されたロール角速度に基づいて上げ下げシーケンスを更に制御するステップを更に含むことができる。すなわち、上げ下げシーケンスを効率的かつ安全に制御するために絶対角度及び相対角度のみが関心対象であり得るわけではないことが認識されている。荷重運搬本体のピッチ角速度又はロール角速度を、例えば、例として、上記で言及された制御ループにおいて荷重運搬本体を上げる第1の要求及び/又はこれを下げる第2の要求を制御することによって、上げ下げシーケンス中にピッチ角速度又はロール角速度を制御するのに使用することができる。したがって、これは、上げ下げシーケンスが自律的に実行される場合に特に適し得る。
【0024】
第2の態様によれば、上記目的は、車両の、荷重運搬本体の上げ下げシーケンスを制御する制御ユニットによって達成され、制御ユニットは、第1の態様の実施の形態のうちの何れか1つによる方法のステップを実行するように構成される。第2の態様によって提供される利点及び効果は、本発明の第1の態様によって提供される利点及び効果とほぼ同様である。第1の態様の全ての実施の形態は、第2の態様の全ての実施の形態と互換的であり、逆もまた然りであることにも留意する必要がある。
【0025】
第3の態様によれば、上記目的は、シャーシ構造体と、車両のピッチ軸又はロール軸のうちの何れかに実質的に平行である枢動軸に関して、シャーシ構造体上に枢動可能に取り付けられた荷重運搬本体とを備える車両であって、シャーシ構造体上に設けられた、シャーシ構造体のロール角及びピッチ角を測定する検知手段、及び、荷重運搬本体上に設けられた、荷重運搬本体のロール角及びピッチ角を測定する検知手段と、本発明の第2の態様の実施の形態のうちの何れか1つによる制御ユニットとを備える、車両によって達成される。第3の態様によって提供される利点及び効果は、本発明の第1の態様及び第2の態様によって提供される利点及び効果とほぼ同様である。第1の態様及び第2の態様の全ての実施の形態は、第3の態様の全ての実施の形態と互換的であり、逆もまた然りであることにも留意する必要がある。
【0026】
任意選択で、シャーシ構造体及び/又は荷重運搬本体の検知手段は、傾斜センサ、加速度計、ジャイロスコープ等のうちの1つとすることができる。
【0027】
任意選択で、車両は、自律車両とすることができる。本明細書において使用される「自律車両」という表現は、車両が、人間による直接の関与を一切伴わずに少なくとも限られた期間にわたって移動すると共に或る特定のタスクを実行するように適合される車両を意味する。したがって、長手方向及び/又は横方向モーション制御を含む車両の制御、及び本明細書において開示される上げ下げシーケンス等の或る特定のタスクの制御は、運転者の制御なしで自律的に実行することができる。むしろ、上げ下げシーケンス及び任意選択で車両モーション制御は、少なくとも1つの制御ユニットによって実行され、制御ユニットは、車両上に位置することもできるし、車両からリモートに位置することもできる。
【0028】
第4の態様によれば、上記目的は、コンピュータプログラムであって、該プログラムがコンピュータ上で実行されると、第1の態様の実施の形態うちの何れかのステップを実行するプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラムによって達成される。
【0029】
本発明の第5の態様によれば、上記目的は、コンピュータプログラムであって、該プログラムの製品がコンピュータ上で実行されると、第1の態様の実施の形態のうちの何れかのステップを実行するプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラムを担持しているコンピュータ可読媒体によって達成される。
【0030】
本発明の更なる利点及び有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態による車両の全体図である。
【
図2】本発明の一実施形態による方法のフローチャートである。
【
図3a】本発明の一実施形態による上げ下げシーケンス中の車両の概略図である。
【
図3b】本発明の一実施形態による上げ下げシーケンス中の車両の概略図である。
【
図3c】本発明の一実施形態による上げ下げシーケンス中の車両の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態による複数の車両を含む限定エリアの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、例として挙げる本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0033】
添付図面は、本発明の実施形態を例示する図を示し、それゆえ、必ずしも縮尺通りに描かれているとは限らない。図示及び記載される実施形態は、例示であること、及び、本発明は、これらの実施形態に限定されないことを理解する必要がある。また、図面におけるいくつかの細部は、本発明をより良好に記載及び図示するために誇張される場合があることに留意する必要がある。別段に述べられない限り、本明細書全体を通して、同一の参照符号は、同一の要素を指す。
【0034】
図1において、ティッパートラックの形態の車両1の全体図が示されている。実際、ティッパートラックの形態である車両1は、1つの好ましい実施形態である。ダンプトラック(dump truck)とも称される場合があるティッパートラックは、通常、シャーシ構造体10と、車両のピッチ軸Y又はロール軸Xのうちの何れかに実質的に平行である枢動軸に関して、シャーシ構造体10上に枢動可能に取り付けられたティッパー本体20とを備える重量トラックである。
図1に示される車両は、車両のピッチ軸Yに実質的に平行である枢動軸に関して、シャーシ構造体10上に枢動可能に取り付けられる荷重運搬本体20を有する。しかしながら、本発明は、この構成のみに限定されるのではなく、荷重運搬本体が、ロール軸Xに実質的に平行である枢動軸に関して、シャーシ構造体上に枢動可能に取り付けられる車両にも適用可能である。
一実施形態によれば、ティッパー本体20の形態であり得る荷重運搬本体は、シャーシ構造体10上に直接枢動可能に取り付けられ、例えば、荷重運搬本体は、枢動接続を介してシャーシ構造体に取り付けることができる。しかしながら、本発明は、
図1に示されるこのタイプの車両のみに制限されるのではなく、他の車両、例えば、枢動可能に取り付けられた荷重運搬本体を有するトレーラ、枢動可能に取り付けられたコンテナを有するトラック、解放可能かつ枢動可能に取り付けられた荷重運搬本体を有するトラック、枢動可能に取り付けられた荷重運搬本体を有する作業機械、ごみ収集トラック、コンクリートトラック等についても同様に実施することができる。
【0035】
さらに、以下で説明される実施形態は、主に自律車両の一部として説明され、これは、1つの好ましい実施形態であるが、本発明は、そのような車両のみに適用可能であるわけではなく、他の車両、例えば、車両が少なくとも限られた期間にわたって自律モードである半自律車両、及び/又は少なくとも上げ下げシーケンスが人間による直接の関与を一切伴わずに実行される車両についても使用することができる。本発明は、人間が荷重運搬本体の上げ下げシーケンスの少なくとも一部を制御することに関与する車両の場合でさえ有用であり得る。
【0036】
図1において、ティッパートラックの形態の車両1の全体図が示されている。ティッパートラック1は、長手方向及び横方向モーション制御を含むモーション制御、及び上げ下げシーケンスを、例えば運転者による制御を一切伴わずに自動的に実行することができる自律車両である。上げ下げシーケンスは、その代わりに、ティッパートラック1上に設けられる制御ユニット100によって実行され、これは、以下で更に説明される。ティッパートラック1は、運転室14を備えるシャーシ構造体10と、同様にここではティッパー本体である荷重運搬本体20とを備える。ティッパートラック1は、シャーシ構造体10上に設けられた、シャーシ構造体10のロール角及びピッチ角を測定する検知手段11と、荷重運搬本体上に設けられた、荷重運搬本体のロール角及びピッチ角を測定する検知手段21とを更に備える。ティッパートラック1の上げ下げシーケンスは、ここでは、傾けシーケンスであり、ティッパー本体20は、荷重、例えば、砂、砂利、解体廃棄物等を放出するために上げ下げすることができる。
【0037】
検知手段11及び21は、ティッパートラック1の長手方向軸Xに関するロール角及びティッパートラック1の横方向軸Yに関するピッチ角を測定するように適合される。長手方向軸X及び横方向軸Yは、例えば、デカルト座標系の一部とすることができる。検知手段11及び21は、制御ユニット100と通信状態にある。通信は、例えば、車両のコントローラエリアネットワーク(CAN)システム、無線通信、例えば、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等によって行うことができる。
【0038】
図1において、ティッパートラック1は、水平面に対して角度β
2だけ傾斜している傾斜地面A上で傾けシーケンスを実行している。角度β
2は、ピッチ角、すなわち、水平面に対するY軸に関する回転角である。ここでは、この絶対角度は、シャーシ構造体上の検知手段11によって求められ、検知手段11は例えば傾斜センサであってもよい。さらに、ティッパー本体20は、シャーシ構造体10とティッパー本体20との間の相対ピッチ角β
1が存在するように上げられている。この角度は、シャーシ構造体10に対する現在の傾け角度としても定義することができる。相対ピッチ角β
1は、それぞれ検知手段11及び21によって測定され、シャーシ構造体10のピッチ角β
2及びティッパー本体20のピッチ角β
3を比較することによって求められる。角度β
3は、ここでは、水平面に対する絶対角度である。この角度は、ティッパー本体から荷重を降ろすときの傾けシーケンスのために求めるのに有益であり得る。なぜならば、ティッパー本体内の荷重が、重力を利用して放出されるためである。見て分かるように、ティッパー本体20は、Y軸に平行である枢動軸の回りにシャーシ構造体10に対して枢動可能である。
【0039】
図2において、ティッパートラック1の傾けシーケンスを制御する方法のフローチャートが開示され、この方法は、以下のステップから成り、
S1:検知手段11及び12によって、傾けシーケンス中にシャーシ構造体10及びティッパー本体20のロール角及びピッチ角を測定するステップと、
S2:水平面に対する、それぞれシャーシ構造体10及びティッパー本体20の絶対ロール角及び絶対ピッチ角β
2を求めるステップと、
S3:シャーシ構造体10及びティッパー本体20の測定されたロール角同士を比較することによって、シャーシ構造体10とティッパー本体20との間の相対ロール角α
1を求めるステップと、及び、
S4:少なくとも求められた絶対角度及び相対角度に基づいて、傾けシーケンスを制御するステップと、を含む。
【0040】
図3a、
図3b及び
図3cは、シャーシ構造体10と、荷重運搬本体20とを備える車両1の正面図を示している。
図1に示される運転室14は、ここでは、シャーシ構造体10と荷重運搬本体20との間の相互作用をより良好に示すために、破線を用いて示されている。車両1は、特に車両1が自律車両である場合、運転室14を備えていないことがあることに留意する必要がある。シャーシ構造体10は、左側及び右側に設けられ、ここでは車輪の形態の地面係合手段12及び13を更に備える。車両1は、シャーシ構造体10上に設けられた検知手段11と、荷重運搬本体20上に設けられた検知手段21とを更に備える。荷重運搬本体20は、油圧シリンダの形態であり得る作動部材30によって、シャーシ構造体10に対して枢動可能に上げ下げすることができる。シャーシ構造体10に対して荷重運搬本体20を枢動させるのに、任意のタイプ及び任意の数の作動部材(複数の場合もある)を使用することができることに留意する必要がある。作動部材は、例えば、シャーシ構造体10に対する荷重運搬本体20の枢動及び並進モーションを提供するように適合される作動アームの形態とすることもできる。
【0041】
図3aにおいて、X軸に関するシャーシ構造体10及び荷重運搬本体20の相対ロール角は、ゼロ度である。
図3bにおいて、相対ロール角は、α
1であり、これは、ここでは、致命的なエラーのリスクが存在する状況、すなわち、作動部材30が故障しかけている状況を示している。角度α
1は、好ましくは、相対ロール角閾値と比較され、これにより、荷重運搬本体20は、好ましくは、角度が相対ロール角閾値以上である場合、緊急的に下げられる。それにより、致命的なエラーを回避することができる。
【0042】
図3cは、荷重運搬本体20が下げられた位置にある、すなわち、シャーシ構造体10と荷重運搬本体20との間の相対ピッチ角がゼロ度である状況を示している。しかしながら、車両1は、ここでは、水平面に対して絶対ロール角α
2だけ傾斜している地面A1上を走行している。絶対ロール角α
2は、シャーシ構造体10上に設けられた検知手段11によって測定される。一方、相対ロール角はゼロであるので、同じ角度情報を、荷重運搬本体上の検知手段21によって提供することもできる。図示の状況において、シャーシ構造体の絶対ロール角α
2は、第1の所定の絶対ロール角閾値以上であり、それにより、荷重運搬本体20を上げることは、制御ユニット100(
図3cには示さず)によって防止される。
【0043】
図4は、本発明の例示の実施形態による1つ以上の自律車両1が動作することができる限定エリアA1を上から見た概略図を示している。限定エリアA1は、建設エリア、採掘エリア、土工作業エリア等のうちの任意の1つとすることができる。特に、限定エリアA1は、1つ以上の商用車両1が動作しているエリアとすることができる。限定エリアA1は、例えば、物理的なフェンス及び/又は自律車両1によって認識される仮想フェンスによって画定することができる。車両1は、自律的にのみ動作する完全自律車両とすることができ、又は、車両1は、ユーザ(図示せず)が車両1を動作させる手動モードと自律モードとの間で切り替わるように適合することができる。ユーザは、リモートロケーションにおいて、例えばリモートセンタ200から、車両を動作させることもできるし、車両内に位置する、すなわち運転者であることもできる。例示の実施形態によれば、荷重運搬本体20とシャーシ構造体10との間の相対ロール角が所定の閾値以上であると判断されたイベントにおいて、車両1がサービスステーションA2に戻るという要求を発行することができ、サービスステーションA2は、ここでは限定エリアA1内に位置する。したがって、車両1は、そのようなイベントの後、検査及び/又はサービスを受ける必要がある場合がある。それにより、上記と同様に相対ロール角をモニタリングすることによって、検査/サービスを必要とする致命的なエラーを早期段階において検出することができ、これにより、車両1は、その後即座にサービスステーションA2に戻ることができる。
【0044】
リモートセンタ200は、シャーシ構造体10及び荷重運搬本体20の何れかの角度(絶対及び/又は相対)が本明細書において示されたような設定された所定の限度に到達したか又はこれを超過したか否かに関する情報を受信することもでき、これにより、それに基づいて或る特定のアクションを開始することができる。例えば、或る角度が所定の値以上になった場合、車両1がサービスステーションA2に戻るという要求が発行されてもよい。その上、リモートセンタ200は、車両1が上げ下げシーケンスを完了したこと、及び、したがって、新たな任務に関する新たな命令を受信する準備が整っていることを示す信号を受信することができる。上げ下げシーケンスの完了は、上述したように、相対ピッチ角が第3の所定の相対ピッチ角閾値以下であることで識別することができる。また、任意選択で、車両1は、車両1が所定のロケーションに到達したときに上げ下げシーケンスを開始するように適合することができる。ロケーションの識別は、例えば、車両上に設けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)システム(全地球航法衛星システム)の使用によって判断することができる。またさらに、上げ下げシーケンスは、リモートセンタ200からの要求に応答して開始することができる。
【0045】
車両1とリモートセンタ200との間の通信は、好ましくは、無線通信、例えば、WiFi(登録商標)、3G、4G、5G、Bluetooth(登録商標)等によって実行することができる。したがって、リモートセンタ200は、好ましくは、コンピュータ、例えば、車両1上の制御ユニット100と、直接又は間接的に無線通信するように適合される少なくとも1つの処理ユニット及びメモリユニットを備える。
【0046】
本発明は、上記で説明され、図面に示されている実施形態に限定されず、むしろ、添付の特許請求の範囲の適用範囲内で、多くの変更及び修正を行うことができることを当業者が認識することを理解すべきである。